JP6309848B2 - 1軸延伸多層積層フィルムおよびそれからなる光学部材 - Google Patents
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Description
しかしながら、従来検討されているような多層構造を用いた反射偏光性ポリマーフィルムは、多層ポリマー間の密着性が十分でないことがあり、加工などの際に多層部が剥離してしまうなどの問題があった。
しかし、上述のポリマーの組合せでは、多層積層フィルムに後加工を行う際に、応力がかかること等が原因となって多層部に剥離が生じやすく、層間の密着性向上が望まれていた。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、第1層が第2層よりも相対的に高屈折率特性を有する層、第2層が第1層よりも相対的に低屈折率特性を有する層であり、それぞれの層に以下の特定の種類のポリエステルを用いることによって、かかる屈折率の関係が発現する。
本発明におけるP偏光とは、1軸延伸多層積層フィルムにおいて、フィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分と定義される。また本発明におけるS偏光とは、1軸延伸多層積層フィルムにおいて、フィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分と定義される。
本発明において、延伸方向(X方向)の屈折率はnX、延伸方向と直交する方向(Y方向)の屈折率はnY、フィルム厚み方向(Z方向)の屈折率はnZと記載することがある。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムを構成する第1層はポリエステルを含む層であって、該ポリエステルを構成する繰り返し単位を基準としてエチレンナフタレート単位を80モル%以上100モル%以下の範囲で含有する。
第1層のポリエステルを構成するジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸成分を含有し、その含有量は該ポリエステルを構成するジカルボン酸成分を基準として80モル%以上100モル%以下である。
ナフタレンジカルボン酸成分の含有量の下限値は、好ましくは85モル%、より好ましくは90モル%である。また、ナフタレンジカルボン酸成分の含有量の上限値は、好ましくは100モル%未満、より好ましくは98モル%以下、さらに好ましくは95モル%以下である。
一方、ナフタレンジカルボン酸成分の割合が下限値に満たないと、非晶性の特性が大きくなり、延伸フィルムにおける延伸方向(X方向)の屈折率nXと、Y方向の屈折率nYとの差異が小さくなるため、P偏光成分について十分な反射性能が得られないことがある。
第1層のポリエステルを構成するジオール成分として、エチレングリコール成分が用いられ、その含有量は該ポリエステルを構成するシオール成分を基準として80モル%以上100モル%以下であることが好ましく、より好ましくは85モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは90モル%以上100モル%以下、特に好ましくは90モル%以上98重量%以下である。該ジオール成分の割合が下限値に満たない場合は、前述の1軸配向性が損なわれることがある。
第1層に用いられるポリエステルの融点は、好ましくは220〜290℃℃の範囲、より好ましくは230〜280℃℃の範囲、さらに好ましくは240〜270℃℃の範囲である。融点はDSCで測定して求めることができる。
該ポリエステルの融点が上限値を越えると、溶融押出して成形する際に流動性が劣り、吐出などが不均一化しやすくなることがある。一方、融点が下限値に満たないと、製膜性は優れるものの、ポリエステルの持つ機械的特性などが損なわれやすくなり、また本発明の屈折率特性が発現し難い。
かかるポリエステルを第1層に用いて1軸延伸を施すことにより、第1層のX方向の屈折率nXについて、1.80〜1.90の高屈折率特性が発現する。第1層におけるX方向の屈折率がかかる範囲にある場合、第2層との屈折率差が大きくなり、反射偏光性能を発揮することができる。
また、Y方向の1軸延伸後の屈折率nYとZ方向の1軸延伸後の屈折率nZとの差は0.05以下であることが好ましい。
本発明において、1軸延伸多層積層フィルムの第2層を形成するポリマーとして、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、エチレングリコール成分およびトリメチレングリコール成分を共重合成分として含む共重合ポリエステルを用いることが必要である。
本発明における共重合成分とはポリエステルを構成するいずれかの成分であることを意味しており、従たる成分としての共重合成分に限定されず、主たる成分も含めて用いられる。
本発明における第2層の共重合ポリエステルは、さらにジオール成分としてトリメチレングリコール成分を含有する。トリメチレングリコール成分を含まないと、層構造の弾性が不足し、層間剥離が生じる。
かかる2,6−ナフタレンジカルボン酸成分は、第2層の共重合ポリエステルを構成する全カルボン酸成分の30モル%〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは30モル%〜80モル%、さらに好ましくは40モル%〜70モル%である。2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の含有量が下限に満たないと相溶性の観点から密着性が低下することがある。2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の含有量の上限は特に制限されないが、第1層との屈折率の関係を調整するために他のジカルボン酸成分を共重合させてもよい。
トリメチレングリコール成分は、第2層の共重合ポリエステルを構成する全ジオール成分の3モル%〜50モル%であることが好ましく、さらに5モル%〜40モル%であることが好ましく、より好ましくは10モル%〜40モル%、特に好ましくは10モル%〜30モル%である。トリメチレングリコール成分の含有量が下限に満たないと層間密着性の確保が難しく、上限を超えると所望の屈折率とガラス転移温度の樹脂とすることができない。
第2層がかかる平均屈折率を有し、しかも延伸によって各方向の屈折率差の小さい光学等方性材料であることにより、第1層と第2層の層間における延伸後のX方向の屈折率差が大きく、同時にY方向の層間の屈折率差が小さい屈折率特性を得ることができ、偏光性能が発現する。
本発明における第2層は、本発明の目的を損ねない範囲であれば、第2層の重量を基準として10重量%以下の範囲内で該共重合ポリエステル以外の熱可塑性樹脂を第2のポリマー成分として含有してもよい。
第2層の共重合ポリエステルの具体例として、(1)ジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を含み、ジオール成分としてエチレングリコール成分およびトリメチレングリコール成分を含む共重合ポリエステル、(2)ジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸成分およびテレフタル酸成分を含み、ジオール成分としてエチレングリコール成分およびトリメチレングリコール成分を含む共重合ポリエステル、が挙げられる。
第2層に用いられる共重合ポリエステルは、共重合成分としてトリメチレングリコール成分を用いるため、製膜性が低下することがあり、該共重合ポリエステルの固有粘度を上述の範囲とすることで製膜性をより高めることができる。第2層として上述する共重合ポリエステルを用いる場合の固有粘度は、製膜性の観点からはより高い方が好ましいものの、上限を超える範囲では第1層のポリエステルとの溶融粘度差が大きくなり、各層の厚みが不均一になることがある。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、下記式(1)で表される偏光度(P)が80%以上であることが好ましく、さらに85%以上であることが好ましい。
偏光度(P)={(Ts−Tp)/(Tp+Ts)}×100 ・・・(1)
(式(1)中、Tpは400〜800nmの波長範囲におけるP偏光の平均透過率、Tsは400〜800nmの波長範囲におけるS偏光の平均透過率をそれぞれ表す)
上式(1)で特定される偏光度が高いほど、反射偏光成分の透過を抑制し、その直交方向の透過偏光成分の透過率が高いことを意味しており、偏光度がより高いほど反射偏光成分のわずかな光漏れも低減できる。本発明の1軸延伸多層積層フィルムがかかる偏光度を有することにより、輝度向上部材などの反射偏光特性が求められる用途に用いることができる。また、99.5%以上の偏光度を有する場合は、従来は吸収型偏光板でなければ適用が難しかったコントラストの高い液晶ディスプレイの偏光板として、反射偏光板単独で適用することができる。
かかる偏光度特性は第1層と第2層を構成するポリマーとして上述した種類のものを用い、1軸延伸によってX方向、Y方向、Z方向の層間の屈折率を特定の関係にすることで得られる。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムの400〜800nmの波長範囲におけるS偏光の平均透過率Tsは60%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、特に好ましくは80%以上である。
本発明におけるS偏光平均透過率は、1軸延伸多層積層フィルムにおいて、フィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分について、入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均透過率を表している。
該S偏光平均透過率が下限に満たないと、輝度向上部材、反射型偏光板などに用いた場合、反射偏光成分をフィルムで吸収せずに光源側に反射させ、再度その光を有効活用する光リサイクル機能を考慮しても、輝度向上効果の優位性が十分ではないことがある。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、かかる第1層、第2層以外に、中間層および/または最外層を含んでいてもよい。中間層および/または最外層は層厚みが5μm以上50μm以下の厚さであることが好ましく、かかる中間層を第1層と第2層の交互積層構成の内部に有していてもよい。
該中間層は本発明において内部厚膜層などと称することがあるが、本発明において交互積層構成の内部に存在する厚膜の層を指す。また本発明において、多層積層フィルムの製造の初期段階で101層以上の交互積層体の両側に厚膜の層(厚み調整層、バッファ層と称することがある)を形成し、その後ダブリングにより積層数を増やす方法が好ましく用いられるが、その場合はバッファ層同士が2層積層されて中間層が形成される方法が好ましく、かかる方法によって得られる一番外側の厚膜の層を中間層に代えて最外層と称する。
さらに1軸延伸多層積層フィルムの両表層に、第2層の組成からなる上述の厚さの厚膜層(最外層)を有する場合、第1層よりも相対的に低いガラス転移点の最外層がクッション材として機能し、1軸延伸多層積層フィルムに対する外的応力の一部を緩和でき、さらに層間の剥離を抑制できるため好ましい。
該中間層の形成方法は特に限定されないが、例えば1軸延伸多層積層フィルムの製造方法欄において説明する、ダブリングを行う前の交互積層体の両側に厚膜の層(バッファ層)を設け、それをレイヤーダブリングブロックと呼ばれる分岐ブロックを用いて2分割し、それらを再積層することで内部厚膜層(中間層)を1層設けることができる。同様の手法で3分岐、4分岐することにより中間層を複数設けることもできる。
本発明において、1軸延伸多層積層フィルムの最外層の少なくともいずれかの面にさらに塗布層を有し、該塗布層がアクリル系バインダーを含むことが好ましい。
また、塗布層厚みは密着性確保の観点で0.02〜0.50μmであることが好ましく、さらに0.02〜0.20μmであることが好ましい。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムの場合、第2層の組成からなる厚膜層を多層積層の最外層として設ける態様が多層積層の製造上の観点で好ましいものの、該第2層が無配向状態であることなどから、さらにその表層に塗布層を設けるにあたり、第2層を構成するポリエステルと相溶性の高いポリエステル樹脂および/またはウレタン樹脂をもちいると、塗膜が第2層を構成するポリエステルと混合してしまうため、塗布層に粒子を添加しても巻き取り性が十分に確保できないことがある。
そのため、第2層の組成からなる厚膜層を多層積層の最外層として設け、その少なくともいずれかの面にさらに塗布層を設ける場合、かかる最外層との密着性と巻き取り性を高めるために、塗布層がアクリル系バインダーを含むことが好ましく、さらに所定サイズの粒子を含有することが好ましい。
またさらに後述するようにプリズム層あるいは拡散層を本発明の1軸延伸多層積層フィルムの少なくとも一方の面に積層する場合、プリズム層として一般的に無溶剤型UV硬化性アクリル樹脂が用いられるため、プリズム層との密着性の観点からも、塗布層がアクリル系バインダーを含むことが好ましい。
従たる共重合成分の(メタ)アクリレートとしては、例えば以下に例示されるものを用いることができる。すなわち、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシルアクリレート、2−ヒドロキシルメタクリレート、2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシルブチルアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、エチルアクリルアミド、ブチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ヒドロキシジエチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリロニトリル、メタアクリルニトリル、アクリロイルモルホリン、オキセタンメタクリレートなどがあげられる。
その中でも、アクリロニトリル、N−メチロールアクリルアミド、2−ヒドロキシルエチルアクリレートなどが好ましい。
かかるエマルジョンの粒径は、20〜80nmの範囲であることが好ましい。エマルジョンの粒径が80nmを超えると塗膜の透明性が低下することがある。一方で、エマルジョンの粒径が20nmに満たないと水溶性のアクリル系バインダーに近くなり、プリズム層との密着性が低下することがある。
界面活性剤は、エマルジョンの分散性向上および安定化させる一方で、プリズム層との密着性が低下することがある。そのため、界面活性剤の含有量は効果を発現する範囲内で最小限の使用量にとどめることが好ましく、具体的には水性塗液の重量を基準として0.02〜0.30重量%の添加量にとどめることが好ましい。
かかる塗布層組成物の添加量は、固形分換算で組成物重量に対して1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。1重量%未満だと塗膜の安定性が低下することがあり、塗布筋やハジキなどの塗布欠点が発生しやすくなり、10重量%より大きいとプリズムと塗布層との密着性が低下することがある。
かかる粒子として、シリカ粒子などの不活性無機粒子、アクリル粒子などの不活性有機粒子、もしくは有機無機複合粒子を添加することが好ましい。また平均粒径100nm以上1000nm以下の粒子(以下、大粒子と称することがある)を用いることが好ましい。平均粒径が100nm未満の粒子では巻取り性が十分に発現しないことがある。また平均粒径が1000nmより大きいと塗布層の透明性が低下することがある。
塗布層に用いられる前記粒子の添加量は、塗布層組成物の固形物全成分を100重量%とした際、0.1重量%以上3.0重量%以下とすることが好ましい。添加量が0.1重量%未満だと巻取り性が十分に発現しないことがあり、3.0重量%より多いと塗布層の透明性が低下することがある。
(積層数)
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、上述の第1層および第2層が交互に合計101層以上積層されていることが好ましい。積層数が100層以下であると、延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分の平均反射率特性について、波長400〜800nmにわたり一定の平均反射率が得られないことがある。
積層数の上限値は、生産性およびフィルムのハンドリング性など観点から2001層以下が好ましいが、目的とする平均反射率特性が得られれば生産性やハンドリング性の観点からさらに積層数を減らしてもよく、例えば1001層、501層、301層であってもよい。目的とする反射特性を満たす範囲内で、より少ない積層数とすることにより、本発明で得られる光学部材の厚みをより薄くすることができる。
第1層および第2層の各層の厚みは0.01μm以上0.5μm以下であることが好ましい。また第1層の各層の厚みは、より好ましくは0.01μm以上0.1μm以下、第2層の各層の厚みは、より好ましくは0.01μm以上0.3μm以下である。各層の厚みは透過型電子顕微鏡を用いて撮影した写真をもとに求めることができる。
本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、輝度向上部材や液晶ディスプレイ等の反射型偏光板として用いる場合、その反射波長帯は可視光域から近赤外線領域であることが好ましく、第1層および第2層の各層の厚みをかかる範囲とすることにより、かかる波長域の光を層間の光干渉によって選択的に反射することが可能となる。一方、層厚みが0.5μmを超えると反射帯域が赤外線領域になる。他方、層厚みが0.01μm未満であると、ポリエステル成分が光を吸収し反射性能が得られなくなる。
本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、第1層および第2層におけるそれぞれの最大層厚みと最小層厚みの比率がいずれも2.0以上5.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.0以上4.0以下、さらに好ましくは2.0以上3.5以下、特に好ましくは2.0以上3.0以下である。かかる層厚みの比率は、具体的には最小層厚みに対する最大層厚みの比率で表わされる。第1層、第2層におけるそれぞれの最大層厚みと最小層厚みは、透過型電子顕微鏡を用いて撮影した写真をもとに求めることができる。
多層積層フィルムは、層間の屈折率差、層数、層の厚みによって反射する波長が決まるが、積層された第1層および第2層のそれぞれが一定の厚みでは、特定の波長のみしか反射することができず、延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分の平均反射率特性について、波長400〜800nmの幅広い波長帯にわたって均一に平均反射率を高めることができないため、厚みの異なる層を用いることが好ましい。
第1層および第2層の層厚みは、段階的に変化してもよく、連続的に変化してもよい。このように積層された第1層および第2層のそれぞれが変化することで、より広い波長域の光を反射することができる。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムにおける多層構造を積層する方法は特に限定されないが、例えば、第1層用ポリエステルを138層、第2層用ポリエステルを137層に分岐させた第1層と第2層が交互に積層され、その流路が連続的に2.0〜5.0倍までに変化する多層フィードブロック装置を使用する方法が挙げられる。
本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比が0.5倍以上4.0倍以下の範囲であることが好ましい。第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比の下限値は、より好ましくは0.8である。また、第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比の上限値は、より好ましくは3.0である。最も好適な範囲は、1.1以上3.0以下である。
第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比を最適な厚み比にすることにより、多重反射による光漏れをより改良できる。ここでいう最適な厚み比とは、(第1層の延伸方向の屈折率)×(第1層の平均層厚み)で表される値と、(第2層の延伸方向の屈折率)×(第2層の平均層厚み)で表される値(光学厚さ)とが均等になる厚みであり、本発明の各層の屈折率特性から換算すると、第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比の好ましい範囲は1.1〜3.0程度である。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、目的とする反射偏光フィルムとしての光学特性を得るために、少なくとも1軸方向に延伸されている。本発明における1軸延伸には、1軸方向にのみ延伸したフィルムの他、2軸方向に延伸されたフィルムであって、一方向により延伸されたフィルムも含まれる。1軸延伸方向(X方向)は、フィルム長手方向、幅方向のいずれの方向であってもよい。また、2軸方向に延伸されたフィルムであって、一方向により延伸されたフィルムの場合は、より延伸される方向(X方向)はフィルム長手方向、幅方向のいずれの方向であってもよく、延伸倍率の低い方向は、1.03〜1.20倍程度の延伸倍率にとどめることが偏光性能を高める点で好ましい。2軸方向に延伸され、一方向により延伸されたフィルムの場合、偏光や屈折率との関係での「延伸方向」とは、より延伸された方向を指す。
延伸方法としては、棒状ヒータによる加熱延伸、ロール加熱延伸、テンター延伸など公知の延伸方法を用いることができるが、ロールとの接触によるキズの低減や延伸速度などの観点から、テンター延伸が好ましい。
第1層と第2層のX方向の屈折率差は0.10〜0.45であることが好ましい。X方向の屈折率差がかかる範囲にあることにより、反射特性を効率よく高めることができ、より少ない積層数で高い反射率を得ることができるので好ましい。
また、第1層と第2層のY方向の屈折率差は0.05以下であることが好ましい。Y方向の層間の屈折率差がかかる範囲にあることにより、偏光性能が高まり好ましい。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムのフィルム厚みは15μm以上200μm以下であることが好ましく、さらに35μm以上150μm以下であることが好ましい。
つぎに、本発明の1軸延伸多層積層フィルムの製造方法について詳述する。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、第1層を構成するポリマーと第2層を構成するポリマーとを溶融状態で交互に重ね合わせて合計で101層以上の交互積層体を作成し、その両面に厚膜の層(バッファ層)を設け、レイヤーダブリングと呼ばれる装置を用いて該バッファ層を有する交互積層体を例えば2〜4分割し、該バッファ層を有する交互積層体を1ブロックとしてブロックの積層数(ダブリング数)が2〜4倍になるように再度積層する方法で積層数を増やすことができる。かかる方法により、多層構造の内部にバッファ層同士が2層積層された中間層と、バッファ層1層からなる最外層を両面に有する1軸延伸多層積層フィルムを得ることができる。
かかる交互積層体は、各層の厚みが段階的または連続的に2.0〜5.0倍の範囲で変化するように積層される。
また、延伸後にさらに(Tg)〜(Tg+30)℃の温度で熱固定を行いながら、5〜15%の範囲で延伸方向にトーアウト(再延伸)させることにより、得られた1軸延伸多層積層フィルムの配向特性を高度に制御することができる。
本発明において上述の塗布層を設ける場合、1軸延伸多層積層フィルムへの塗布は任意の段階で実施することができるが、フィルムの製造過程で実施することが好ましく、延伸前のフィルムに対して塗布することが好ましい。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、第1層、第2層それぞれに上述の組成のポリエステルを用い、交互に多層に積層し、一方向に延伸することにより、一方の偏光成分を選択的に反射し、該偏光成分と垂直方向の偏光成分を選択的に透過させる性能を奏するため、液晶ディスプレイなどの輝度向上部材として用いることができる。輝度向上部材として用いた場合に良好な輝度向上率が得られ、透過しなかった偏光成分を光源側に反射させることによって光を再利用できる。
また、本発明の1軸延伸多層積層フィルムの少なくとも一方の面にプリズム層あるいは拡散層を積層してもよい。その際、上述した塗布層を介してプリズム層あるいは拡散層が積層されることが好ましい。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムを輝度向上部材として用いる場合、図1に示すような構成で液晶ディスプレイ装置に用いることができる。
具体的には、液晶ディスプレイの光源5と、偏光板1/液晶セル2/偏光板3で構成される液晶パネル6との間に輝度向上部材4を配置する態様の液晶ディスプレイ装置が例示される。プリズム層をさらに設ける場合は液晶パネル6側にプリズム層を配置することが好ましい。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムのうち、99.5%以上の高偏光度を有するものについて、吸収型偏光板を併用することなく、単独で液晶セルに隣接して用いられる液晶ディスプレイの偏光板として用いることができる。
本発明には、本発明の液晶ディスプレイ用偏光板からなる第1の偏光板、液晶セル、および第2の偏光板がこの順で積層された液晶ディスプレイ用光学部材(液晶パネル)も発明の一態様として含まれる。
従来は液晶セルの両側の偏光板として、吸収型偏光板を少なくとも有することにより高い偏光性能が得られていたところ、本発明の1軸延伸多層積層フィルムを用いた偏光板であれば、従来の多層積層フィルムでは到達できなかった高偏光性能が得られるため、吸収型偏光板に代えて液晶セルと隣接して用いられる偏光板として用いることができる。
なお、実施例中の物性や特性は、下記の方法にて測定または評価した。
得られた1軸延伸多層積層フィルムを偏光度測定装置(日本分光株式会社製「VAP7070S」)を用いて偏光度を測定した。
偏光フィルタの透過軸をフィルムの延伸方向(X方向)と合わせるように配置した場合の測定値をP偏光とし、偏光フィルタの透過軸をフィルムの延伸方向と直交するように配置した場合の測定値をS偏光としたときの偏光度(P,単位%)は以下の式(1)で表される。
偏光度(P)={(Ts−Tp)/(Tp+Ts)}×100 ・・・(1)
(式(1)中、Tpは400〜800nmの波長範囲におけるP偏光の平均透過率、Tsは400〜800nmの波長範囲におけるS偏光の平均透過率をそれぞれ表す)
なお、測定光の入射角は0度に設定して測定を行った。
プリズムレンズのパターンを形成したガラス型に、下記組成からなる紫外線硬化型アクリル樹脂を流し込み、その上に得られたポリエステルフィルムの塗布層面を該樹脂側にして密着させ、ガラス製の型の面側の30cmの距離から紫外線ランプ(照射強度80W/cm、6.4KW)を用いて30秒間照射し樹脂を硬化させ、頂角90度、ピッチ50μm、高さが30μmのプリズムレンズ層を形成して輝度向上シートを得た。得られた輝度向上シートの加工面に、碁盤目のクロスカット(1mm2のマス目を100個)を施し、その上に24mm幅のセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付け、90°の剥離角度で急激に剥がした後、剥離面を観察し、下記の基準で評価した。
エチレンオキシド変性ビスフェノールAジメタクリレート(日立化成工業社製FA−321M) 46重量%
ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート(日本化薬化学工業社製R−604) 25重量%
フェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業社製ビスコート192) 27重量%
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(メルク社製Darocur1173) 2重量%
<密着性評価基準>
◎:剥離面積が0%以上5%未満 (接着力が極めて良好)
○:剥離面積が5%以上20%未満 (接着力が良好)
×:剥離面積が20%以上 (接着力が不良)
各層試料を10mgサンプリングし、DSC(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC Q400)を用い、20℃/min.の昇温速度で、各層を構成するポリマーの融点およびガラス転移点を測定する。
フィルムの各層について、1H−NMR測定よりポリマー成分ならびに共重合成分および各成分量を特定した。
各層を構成する個々の樹脂について、それぞれ溶融させてダイより押出し、キャスティングドラム上にキャストしたフィルムをそれぞれ用意した。また、得られたフィルムを(樹脂のガラス転移温度)+20℃にて一軸方向に5.5倍延伸した延伸フィルムを用意した。得られたキャストフィルムと延伸フィルムについて、それぞれ延伸方向(X方向)とその直交方向(Y方向)、厚み方向(Z方向)のそれぞれの屈折率(それぞれnX、nY、nZとする)を、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmで測定して求めた。第2層を構成するポリエステルの平均屈折率については、延伸後のそれぞれの方向の屈折率の平均値を平均屈折率とした。
1軸延伸多層積層フィルムをフィルム長手方向2mm、幅方向2cmに切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂(リファインテック(株)製エポマウント)にて包埋した。包埋されたサンプルをミクロトーム(LEICA製ULTRACUT UCT)で幅方向に垂直に切断し、5nm厚の薄膜切片にした。透過型電子顕微鏡(日立S−4300)を用いて加速電圧100kVにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定した。
1μm以上の厚さの層について、多層構造の内部に存在しているものを中間層、最表層に存在しているものを最外層とし、それぞれの厚みを測定した。また中間層が複数存在する場合は、それらの平均値より中間層厚みを求めた。
また、得られた各層の厚みをもとに、第1層における最小層厚みに対する最大層厚みの比率、第2層における最小層厚みに対する最大層厚みの比率をそれぞれ求めた。
また得られた各層の厚みをもとに、第1層の平均層厚み、第2層の平均層厚みをそれぞれ求め、第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みを算出した。
なお、第1層と第2層の厚みを求めるに際し、中間層および最外層は第1層と第2層から除外した。
フィルムサンプルをスピンドル検出器(安立電気(株)製K107C)にはさみ、デジタル差動電子マイクロメーター(安立電気(株)製K351)にて、異なる位置で厚みを10点測定し、平均値を求めフィルム厚みとした。
VA型液晶ディスプレイパネル(シャープ製AQUOS LC−20E90 2011年製)を用いて、プリズムフィルムと上側の拡散フィルムを取り除き、得られたプリズム層付輝度向上フィルムと置き換え、白色表示したときの液晶ディスプレイ画面の正面輝度をオプトデザイン社製FPD視野角測定評価装置(ErgoScope88)で測定し、置き換える前の構成に対する輝度の上昇率を算出し、輝度向上効果を下記の基準で評価した。
◎:輝度向上効果が150%以上
○:輝度向上効果が120%以上、150%未満
×:輝度向上効果が120%未満
1軸延伸多層積層フィルムを厚さ10mmの透明光学ガラスに粘着フィルムを介して貼り付け、初期の偏光度を測定した。加熱用オーブン(エスペック(株)社製、型番SH241)で、90℃500時間処理したのち、フィルムを取り出し、1時間室温に放置し、偏光度測定をした。90℃耐久性は下記の基準で評価した。
◎:初期対比、耐久性後の偏光度低下率が2%未満
○:初期対比、耐久性後の偏光度低下率が2%以上4%未満
×:初期対比、耐久性後の偏光度低下率が4%以上
第1層用ポリエステルとして、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、そしてエチレングリコールを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、酸成分の95モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分(表中、PENと記載)、酸成分の5モル%がテレフタル酸成分(表中、DMTと記載)、グリコール成分がエチレングリコールである共重合ポリエステル(DMT5PEN)(固有粘度0.64dl/g)を準備した。
また、第2層用ポリエステルとして、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、そしてエチレングリコールとトリメチレングリコールを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、酸成分の50モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分(表中、PENと記載)、酸成分の50モル%がテレフタル酸成分(表中、DMTと記載)、グリコール成分の15モル%がトリメチレングリコールである共重合ポリエステル(DMT50C3G15PEN)(固有粘度0.63dl/g)を準備した。
この未延伸の多層積層フィルムの片面に固形分濃度4%で下記に示すアクリルバインダー組成の塗液Aを、延伸乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにロールコーターで均一に塗布した。
この未延伸の多層積層フィルムを130℃の温度で幅方向に5.5倍に延伸した。得られた1軸延伸多層積層フィルムの厚みは85μmであった。
表1に示すとおり、各層の樹脂組成や層厚み、延伸条件を変更した以外は実施例1と同様にして、1軸延伸多層積層フィルムを得た。このようにして得られた1軸延伸多層積層フィルムの各層の樹脂構成、各層の特徴を表1に、1軸延伸多層積層フィルムの物性を表1に示す。
(アクリルバインダー)
メチルメタクリレート60モル%/エチルアクリレート30モル%/2−ヒドロキシエチルアクリレート5モル%/N−メチロールアクリルアミド5モル%で構成されている(Tg=40℃)。四つ口フラスコに、イオン交換水302部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硫酸水素ナトリウム0.2部を添加し、更にモノマー類である、メチルメタクリレート46.7部、エチルアクリレート23.3部、2−ヒドロキシエチルアクリレート4.5部、N−メチロールアクリルアミド3.4部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるよう調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、撹拌しながら反応を継続させ、次いで冷却して固形分が25重量%のアクリルの水分散体を得た。
(界面活性剤) ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル
(粒子) アクリル真球状粒子(平均粒子径:150nm:株式会社日本触媒製、商品名「エポスターMX−100W」)
これらを以下の組成比で調合した。
アクリルバインダー:界面活性剤:粒子=89重量%:10重量%:1重量%(固形分換算での添加量)
2 液晶セル
3 偏光板
4 輝度向上部材
5 光源
6 液晶パネル
Claims (10)
- 第1層と第2層とが交互に積層された1軸延伸多層積層フィルムであって、1)該第1層はポリエステルを含む層であって、該ポリエステルを構成する繰り返し単位を基準としてエチレンナフタレート単位を80モル%以上100モル%以下の範囲で含有し、2)該第2層を形成するポリマーが2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、エチレングリコール成分、およびトリメチレングリコール成分を共重合成分として含む共重合ポリエステルであることを特徴とする1軸延伸多層積層フィルム。
- 該1軸延伸多層積層フィルムの下記式(1)で表される偏光度(P)が80%以上である、請求項1に記載の1軸延伸多層積層フィルム。
偏光度(P)={(Ts−Tp)/(Tp+Ts)}×100 ・・・(1)
(式(1)中、Tpは400〜800nmの波長範囲におけるP偏光の平均透過率、Tsは400〜800nmの波長範囲におけるS偏光の平均透過率をそれぞれ表す) - 該トリメチレングリコール成分は、第2層の共重合ポリエステルを構成する全ジオール成分の3モル%〜50モル%であり、第2層の共重合ポリエステルのガラス転移点が85℃以上である、請求項1または2に記載の1軸延伸多層積層フィルム。
- 第2層の平均屈折率が1.55以上1.65以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の1軸延伸多層積層フィルム。
- 該第1層は、さらにジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分を0モル%を超え、20モル%以下の範囲で含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の1軸延伸多層積層フィルム。
- 該1軸延伸多層積層フィルムの積層数が101層以上である請求項1〜5のいずれかに記載の1軸延伸多層積層フィルム。
- 該1軸延伸多層積層フィルムの両表層に第2層の組成からなる厚さ5μm以上50μm以下の厚膜層をさらに有する、請求項1〜6のいずれかに記載の1軸延伸多層積層フィルム。
- 該膜厚層の少なくともいずれかの面にさらに塗布層を有し、該塗布層がアクリル系バインダーを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の1軸延伸多層積層フィルム。
- 輝度向上部材あるいは反射型偏光板として用いられる、請求項1〜8のいずれかに記載の1軸延伸多層積層フィルム。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の1軸延伸多層積層フィルムの少なくとも一方の面にプリズム層あるいは拡散層が積層された光学部材。
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