JP6302814B2 - 脱硫反応に供する炭化水素油の評価方法、炭化水素油の脱硫方法、及び脱硫油の製造方法 - Google Patents

脱硫反応に供する炭化水素油の評価方法、炭化水素油の脱硫方法、及び脱硫油の製造方法 Download PDF

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本発明は、脱硫反応に供する炭化水素油の評価方法、炭化水素油の脱硫方法、及び脱硫油の製造方法に関する。
近年、石油製品の需要は軽質化傾向にあり、重油の需要が低迷している。そのため、原油から軽油を製造するに際し、重油の基材として利用されていた留分を軽油に活用することが検討されている。
また、重油の基材としては、常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、減圧軽油、接触分解軽油等も挙げられ、これらの利用も検討されている。例えば、特許文献1には、深度脱硫装置に直留軽油及び分解軽油を混合通油して得られる深度脱硫軽油基材に、少量の分解軽油を配合してなるディーゼル軽油組成物が開示されている。
特開平8−259966号公報
上述のとおり、重油基材についても軽油として有効活用することが望まれている。しかし、重油基材を水素化精製処理に供すると、水素化精製触媒の劣化速度が速くなり、触媒寿命が短くなる等の問題が生じる場合があった。また、水素化精製処理に供する炭化水素油の種類によって、上記水素化精製触媒の劣化速度に大きな違いがある一方、炭化水素油による水素化精製触媒の劣化の程度を、事前に評価する適切な方法はこれまで知られていなかった。
本発明の目的の一つは、従来の脱硫反応に好適に適用し得る否かを評価する、炭化水素油の評価方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記評価方法によって従来の脱硫反応に不適と評価された炭化水素油を原料油として用いながらも、水素化精製触媒の劣化を十分に抑制することが可能な、炭化水素油の脱硫方法を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、上記評価方法により評価された炭化水素油を原料油として用いて、効率よく脱硫油を得ることが可能な、脱硫油の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、水素化精製触媒の劣化の一因が、芳香族分から形成された高密度コークの堆積にあることを見出し、また、事前に塩基性窒素分を含む炭化水素油を水素化精製触媒に供することで、上記高密度コークによる触媒劣化を抑制できることを見出した。さらに、本発明者らは、炭化水素油と接触させた後の水素化精製触媒を熱処理し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することによって、炭化水素油が高密度コークの堆積を生じ易いか否かを評価できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の一側面は、脱硫反応に供する炭化水素油の評価方法に関する。該評価方法は、炭化水素油の一部を水素化精製触媒に接触させる接触工程と、上記接触工程を経た上記水素化精製触媒を熱処理する熱処理工程と、熱処理された上記水素化精製触媒を透過型電子顕微鏡で観察してグラファイト格子像の有無を観察する観察工程と、を備えるものである。
上記評価方法において、グラファイト格子像が観測される炭化水素油は、脱硫反応において水素化精製触媒上に高密度コークを形成し易く、水素化精製触媒を劣化させやすい。一方、グラファイト格子像が観測されない炭化水素油は、脱硫反応において高密度コークを形成し難く、水素化精製触媒の劣化の程度が小さい。すなわち、上記評価方法によれば、炭化水素が、脱硫反応における水素化精製触媒の劣化を生じさせやすいものであるか否かを容易に評価することができる。
本発明の他の側面は、炭化水素油の脱硫方法に関する。該脱硫方法は、第一の炭化水素油を水素化精製触媒に接触させる第一の工程と、上記第一の工程を経た上記水素化精製触媒に、第二の炭化水素油を接触させる第二の工程と、を備える。該脱硫方法において、上記第二の炭化水素油は、上記評価方法でグラファイト格子像が観察された上記炭化水素油の他部を含む。また、該脱硫方法において、上記第一の炭化水素油は、塩基性窒素分を含有し、塩基性窒素分の含有割合が、上記第二の炭化水素油における塩基性窒素分の含有割合より高い。さらに、該脱硫方法において、上記第一の炭化水素油における芳香族分の含有割合が、上記第二の炭化水素油における芳香族分の含有割合より低い。
上記脱硫方法によれば、第一の工程を経た水素化精製触媒を用いることで、上記評価方法でグラファイト格子像が観測された第二の炭化水素油の脱硫処理(水素化精製処理)を、水素化精製触媒の劣化を十分に抑制しながら行うことができる。すなわち、上記脱硫方法によれば、従来の脱硫反応には触媒劣化の観点から適用が難しかった炭化水素油(第二の炭化水素油)を原料油として用いながら、水素化精製触媒の劣化を十分に抑制しつつ水素化精製処理を行うことができる。
一態様において、上記塩基性窒素分は、アニリン類を含んでいてよい。
一態様において、上記芳香族分は、ナフタレン類及びビフェニル類からなる群より選択される少なくとも1種の2環芳香族分を含んでいてよい。
一態様において、上記第一の炭化水素油は、直接脱硫軽油を含むものであってよい。
一態様において、上記脱硫方法では、上記第一の工程と上記第二の工程とを交互に複数回実施することができる。
本発明のさらに他の側面は、脱硫油の製造方法に関する。該製造方法では、上記脱硫方法で原料油を脱硫して脱硫油を得ることができる。
上記製造方法によれば、上記評価方法でグラファイト格子像が観測された第二の炭化水素油を原料油として用いてながら、効率よく脱硫油を得ることができる。
本発明のさらに他の側面は、さらなる脱硫油の製造方法に関する。該製造方法では、上述した評価方法で、グラファイト格子像が観察されなかった上記炭化水素油の他部を、水素化精製触媒に接触させる工程を含む。
上記製造方法によれば、水素化精製触媒の劣化速度が小さいと評価された炭化水素油を水素化精製触媒に接触させることにより、水素化精製触媒の劣化を十分に抑制しながら効率よく脱硫油を得ることができる。
本発明によれば、従来の脱硫反応に好適に適用し得るか否かを評価することが可能な、炭化水素油の評価方法を提供することができる。また、本発明によれば、上記評価方法によって従来の脱硫反応に不適と評価された炭化水素油を原料油として用いながらも、水素化精製触媒の劣化を十分に抑制することが可能な、炭化水素油の脱硫方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、上記評価方法により評価された炭化水素油を原料油として用いて、効率よく脱硫油を得ることが可能な、脱硫油の製造方法を提供することができる。
包括的2次元GCシステムを説明するための概略図である。 炭化水素油の塩基性窒素分の含有割合及びアニリン類の含有割合を求めるときの手順の一例を示すフロー図である。 包括的2次元GCシステム(検出器:NCD)によって得られる2次元チャートの一例を示す図である。 実施例1におけるTEM観察結果を示す図である。 実施例3におけるTEM観察結果を示す図である。 図5の拡大図である。 図6で観察された格子像の強度プロファイルを示す図である。
本実施形態に係る、脱硫反応に供する炭化水素油の評価方法は、炭化水素油の一部を水素化精製触媒に接触させる接触工程と、接触工程を経た水素化精製触媒を熱処理する熱処理工程と、熱処理された水素化精製触媒を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察してグラファイト格子像の有無を観察する観察工程と、を備える。
上記評価方法によれば、脱硫反応に供する炭化水素油による水素化精製触媒の劣化の程度を評価することができる。
上記評価方法において、グラファイト格子像が観測される炭化水素油は、脱硫反応において水素化精製触媒上に高密度コークを形成し易く、水素化精製触媒の劣化の程度が大きい。一方、グラファイト格子像が観測されない炭化水素油は、脱硫反応において高密度コークを形成し難く、水素化精製触媒の劣化の程度が小さい。すなわち、上記評価方法によれば、炭化水素が、脱硫反応における水素化精製触媒の劣化を生じさせやすいものであるか否かを、容易に評価することができる。このように炭化水素油を評価できる理由は、水素化精製触媒の劣化の一因が、芳香族分から形成された高密度コークの堆積にあり、上記接触工程及び熱処理工程を経た水素化精製触媒をTEM観察することで高密度コークの堆積のし易さを評価できるためと考えられる。
より詳細には、上述の効果について、本発明者らは以下のとおり推察している。
まず、炭化水素油の脱硫による水素化精製触媒の劣化は、反応過程において触媒上に堆積するコーク(炭素質)により脱硫反応が阻害されるため起こると考えられている。コークは、脱硫触媒の担体表面上の酸点に堆積し、コークが堆積するに従って、炭化水素油中の硫黄分が活性種へ近づくのが阻害されるために反応性が低下すると考えられる。
ここで、触媒上のコーク堆積挙動についてコークの生成過程と成長過程とに分けて考えた場合、コーク生成過程では原料油に含まれる芳香族分や塩基性窒素分が触媒担体表面に堆積(吸着)すると考えられる。触媒担体(例えば、アルミナなど)表面に存在するルイス酸点への吸着挙動は、塩基性窒素分であればEnd−on(η1配位)、芳香族分であればSide−on(η6配位)になると考えられる。End−on吸着したコークの成長は担体表面に対して垂直方向への成長と考えられるのに対して、Side−on吸着したコークの成長は担体表面と平行に積み重なると考えられる。また、End−onで吸着・成長したコーク種はそれぞれ担体表面上でまちまちの方向を向くため、表面上でのコーク密度が低くなると推定される。一方、Side−onで吸着・成長したコーク種は担体表面で積層するため、コーク密度が高くなると推定される。このような違い、すなわちコーク生成過程における吸着挙動の違いが、その後のコークの成長過程でのコーク堆積量に影響し、その結果として、触媒の劣化の挙動に違いが生じると考えられる。
また、芳香族分に由来する高密度コークは、触媒の活性種近傍に積み重なって堆積することで、硫黄分の活性種への接近を著しく阻害すると考えられる。これに対して、塩基性窒素分に由来するコークは、担体表面上に積み重なって堆積しない密度の低いコークとして形成されるため、活性種近傍に堆積していても反応性低下の要因にはなり難いと考えられる。
上記評価方法は、上述したようなコークの堆積挙動の違いに着目し、水素化精製触媒の活性低下の要因となる高密度コークの堆積とTEM観察におけるグラファイト格子像との関係を見出したうえで、水素化精製処理に供する炭化水素油の評価に応用したものである。
以下、上記評価方法の各工程について、詳細に説明する。
(接触工程)
接触工程は、炭化水素油の一部を水素化精製触媒に接触させる工程である。
本明細書中、炭化水素油は、炭化水素を主成分(少なくとも75質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは98質量%以上)とし、温度15℃及び1気圧において液状であるものを示す。
炭化水素油は、例えば、15℃における密度が0.83〜0.89g/cmであってよい。また、炭化水素油の15℃における密度は、好ましくは0.83〜0.88g/cmであり、より好ましくは0.84〜0.87g/cmであり、さらに好ましくは0.86〜0.87g/cmである。炭化水素油の密度が上記範囲であると、製品軽油の燃費向上という効果が奏される。なお、本明細書中、15℃における密度は、JIS K 2249に規定する「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表(抜粋)」の「振動式密度試験方法」に準拠して測定される密度を示す。
炭化水素油は、例えば、90容量%留出温度が320〜370℃であってよい。炭化水素油の90容量%留出温度は、好ましくは320〜360℃であり、より好ましくは330〜355℃である。炭化水素油の90容量%留出温度が上記範囲であると、製品軽油の粒子状物質(PM)の抑制という効果が奏される。
また、炭化水素油は、例えば、10容量%留出温度が200〜280℃であってよい。炭化水素油の10容量%留出温度は、好ましくは210〜275℃であり、より好ましくは220〜270℃である。炭化水素油の10容量%留出温度が上記範囲であると、製品軽油の酸化安定性が高いという効果が奏される。
なお、本明細書中、90容量%留出温度、10容量%留出温度等の炭化水素油の蒸留性状は、JIS K 2254に規定する「石油製品−蒸留試験方法」に準拠して測定される。
接触工程において、炭化水素油の一部と水素化精製触媒とを接触させる際の条件は、特に制限されない。例えば、接触時の温度条件は、250〜420℃であることが好ましく、270〜400℃であることがより好ましい。また、接触工程におけるLHSV(液空間速度、触媒充填容積に対する炭化水素油の供給速度の比)は、例えば0.1〜5h−1とすることができ、好ましくは0.5〜3h−1である。
また、接触工程では、炭化水素油と共に水素を流通させてもよい。接触工程における水素分圧は、例えば1〜10MPaとすることができ、好ましくは3〜8MPaである。また、水素オイル比(水素/オイル比)は、例えば30〜500NL/Lとすることができ、好ましくは60〜300NL/Lである。
また、接触工程において炭化水素油を脱硫処理する場合、例えば、水素分圧1〜10MPa、より好ましくは3〜8MPa、LHSV0.1〜5h−1、水素オイル比30〜500NL/L、より好ましくは60〜300NL/L、反応温度250〜420℃、より好ましくは270〜400℃の条件で、炭化水素油を水素化精製触媒に接触させることが好ましい。
炭化水素油は、例えば原油由来の炭化水素油を含むものであってよい。例えば原油から得られる、直留軽油(LGO)、接触分解軽油(LCO)、並びに常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、減圧軽油、溶剤脱れき油等の水素化精製物を用いることができる。
上記直留軽油は、原油を常圧蒸留することで得られる軽油留分を指す。
上記接触分解軽油としては、常圧蒸留残油、減圧軽油、溶剤脱れき油、又はそれらの水素化精製油を流動接触分解装置により接触分解して得られる軽油留分が挙げられる。
上記水素化精製物としては、例えば、常圧蒸留残油を水素化精製して得られる直接脱硫軽油(RDS−GO)、減圧蒸留残油を水素化精製して得られる間接脱硫軽油、減圧軽油を水素化精製して得られる減圧軽油の水素化精製油、溶剤脱れき油(DAO)を水素化精製して得られる溶剤脱れき油の水素化精製油等が挙げられる。
水素化精製触媒としては、炭化水素油の脱硫反応に用いられる水素化精製触媒であれば、特に制限なく用いることができる。
上述の低密度コークの形成による触媒劣化抑制の効果が顕著に発現する観点からは、水素化精製触媒は、無機酸化物担体を含む触媒、すなわち無機酸化物担体に活性金属が担持された触媒であることが好ましい。また、無機酸化物担体は、接触面積が増えて上述の効果がより顕著に発現する観点から、多孔質体であることが好ましい。
無機酸化物担体としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ボリア等の酸化物;アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ボリア等から選ばれる2種以上の複合酸化物、具体例としては、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−マグネシア、シリカ−アルミナ−チタニア、シリカ−アルミナ−ジルコニア等の複合酸化物;Y型ゼオライト、安定化Y型ゼオライト、β型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト及びMCM−22等のゼオライト;などの無機酸化物を含む担体が挙げられる。さらに、無機酸化物担体には、触媒活性向上の観点から、リンを酸化物として含有してもよい。
活性金属としては、例えば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)等が挙げられる。
(熱処理工程)
熱処理工程は、接触工程を経た水素化精製触媒を熱処理する工程である。
水素化精製触媒を熱処理することにより、水素化精製触媒に堆積した高密度コークが積層構造を発現し、後述する観察工程におけるTEM観察において、熱処理前では認められなかったグラファイトの格子像が観察される。
熱処理工程において、水素化精製触媒を熱処理する際の条件は、特に制限されない。例えば、後述する観察工程におけるTEM観察においてグラファイト格子像が効果的に観察される観点から、熱処理時の温度条件は、450〜700℃であることが好ましく、480〜600℃であることがより好ましい。また、同様の観点から、熱処理に要する時間は、0.5〜12時間であることが好ましく、1〜6時間であることがより好ましい。また、熱処理は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
より具体的には、熱処理の条件は、窒素雰囲気下で、室温から500℃まで1時間かけて昇温した後、500℃で1時間保持し、その後500℃から室温まで8時間かけて冷却する方法が好ましい。
(観察工程)
観察工程は、熱処理工程において熱処理された水素化精製触媒を、TEM観察してグラファイト格子像の有無を観察する工程である。グラファイト格子像の有無を観察することにより、水素化精製触媒に供した炭化水素油についての水素化精製触媒に対する劣化の程度を評価することができる。
熱処理された水素化精製触媒のTEM観察用試料の作製は、例えば、以下に示す集束イオンビーム(FIB)加工等の方法により行われる。FIB加工は、熱処理された水素化精製触媒の一部を取出したペレット状触媒を、Ptコーティング等で保護し、Gaイオン照射等により掘削し、100nm程度に薄膜化する手順により行われる。
TEM観察は以下の手順により行うことができる。
(TEM観察)
TEMを用いて下記の条件で水素化精製触媒のTEM写真を撮影する。
電子銃 :LaB6
加速電圧:200kV
撮影倍率:150万倍
得られるTEM写真で格子像が観察される場合、格子像の面間隔を読み取り、グラファイト(002)面の面間隔に相当するか調べる。
本明細書において、グラファイト格子像は、(002)面の面間隔約0.35nmに相当する格子像をいう。この格子像による積層構造が観察されるか否かを上述した方法に従ってTEM観察によって観察する。
以上、本実施形態に係る評価方法について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
次に、本発明に係る炭化水素油の脱硫方法について説明する。本発明に係る炭化水素油の脱硫方法は、上述した評価方法でグラファイト格子像が観察された炭化水素油を脱硫する場合と、上述した評価方法でグラファイト格子像が観察されなかった炭化水素油を脱硫する場合とで、脱硫方法が異なる。以下、それぞれの場合について説明する。
第一実施形態に係る炭化水素油の脱硫方法は、第一の炭化水素油を水素化精製触媒に接触させる第一の工程と、第一の工程を経た水素化精製触媒に、第二の炭化水素油を接触させる第二の工程と、を備える。
ここで、第二の炭化水素油は、上述した評価方法でグラファイト格子像が観察された炭化水素油の他部を含む。すなわち、当該炭化水素油は、水素化精製触媒の劣化させやすい炭化水素油である。
また、第一の炭化水素油は、塩基性窒素分を含有し、第一の炭化水素油における塩基性窒素分の含有割合が、第二の炭化水素油における塩基性窒素分の含有割合より高く、第一の炭化水素油における芳香族分の含有割合が、第二の炭化水素油における芳香族分の含有割合より低い。
上記脱硫方法では、予め塩基性窒素分を多く含む第一の炭化水素油を水素化精製触媒に接触させる第一の工程を経ることにより、触媒の活性種近傍に低密度コークが堆積されるため、その後、芳香族分を多く含む第二の炭化水素油を接触させた際の高密度コークの堆積が抑制され、結果として触媒の劣化が抑制されるものと考えられる。
以下、上記脱硫方法の各工程について、詳細に説明する。
(第一の工程)
第一の工程は、塩基性窒素分を含有する第一の炭化水素油を、水素化精製触媒に接触させる工程である。第一の工程で第一の炭化水素油を水素化精製触媒に接触させることにより、水素化精製触媒の活性種近傍に低密度コークが形成された、後述の第二の工程における触媒劣化が抑制される。
本明細書において、塩基性窒素分は、UOP試験法 No.269−90に準拠した測定で検出される化合物を示す。
塩基性窒素分は、塩基性窒素(すなわち、ルイス塩基としてはたらく窒素原子)を有する成分であり、このような塩基性窒素分は、触媒担体表面のルイス酸点に窒素原子の非共有電子対を介して結合して、上述の低密度コークを形成することができる。
第一の炭化水素油は、塩基性窒素分として少なくともアニリン類を含有することが好ましい。アニリン類によれば、上述の低密度コークがより好適に形成され、第二の工程における触媒劣化が一層顕著に抑制される。
なお、本明細書中、アニリン類とは、アニリン、又は、アニリンが有する水素原子の1つ若しくは2以上が置換基に置換された構造を有する化合物を示す。アニリン類は、ベンゼン環とそれと結合する窒素原子からなるアニリン骨格を有し、当該アニリン骨格によって上述の低密度コークが好適に形成されると考えられる。
アニリン類は上記置換基として、例えば炭素数1〜8の炭化水素基を有していてよい。また、アニリン類が置換基として2以上の炭化水素基を有する場合、その炭化水素基の炭素数の合計は10以下であることが好ましい。
第一の炭化水素油中の塩基性窒素分の含有割合は、後述する第二の炭化水素油中の塩基性窒素分の割合より高ければよい。第二の炭化水素油より塩基性窒素分の多い第一の炭化水素油を予め水素化精製触媒に接触させることで、上述の触媒劣化を抑制する効果を得ることができる。なお、本明細書中、塩基性窒素分の含有割合は、UOP試験法 No.269−90に準拠した測定方法により測定されるものである。
第一の炭化水素油の塩基性窒素分の含有割合は、低密度コークをより効率的に堆積させる観点からは、第一の炭化水素油の全量に対して、50質量ppm以上であることが好ましく、60質量ppm以上であることがより好ましい。
第一の炭化水素油は後述のとおり硫黄分を含有していてよく、第一の工程において第一の炭化水素油から脱硫油を得てもよい。この場合、第一の炭化水素油中の塩基性窒素分の含有割合は、第一の炭化水素油の全量に対して、150質量ppm以下であることが好ましく、100質量ppm以下であることがより好ましい。塩基性窒素分が多すぎると、第一の炭化水素油の脱硫反応が十分に進行しない場合がある。すなわち、第一の炭化水素油中の塩基性窒素分の含有割合を上記上限値以下とすることで、第一の炭化水素油の脱硫反応を効果的に実施しながら、第二の工程における触媒劣化の抑制効果を充分に得ることができる。
第一の炭化水素油は、上述のとおり塩基性窒素分としてアニリン類を含むことが好ましい。第一の炭化水素油中のアニリン類の含有割合は、第一の炭化水素油の全量に対して、30質量ppm以上であることが好ましく、40質量ppm以上であることがより好ましい。また、第一の炭化水素油において、塩基性窒素分の全量に対するアニリン類の含有割合は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
なお、第一の炭化水素油の全量に対するアニリン類の含有割合及び塩基性窒素分の全量に対するアニリン類の含有割合を求める方法について説明する。
図1は、本実施形態に係る方法で用いられる包括的2次元GCシステムを説明するための概略図である。図1に示される包括的2次元GCシステム100は、試料導入部10と、試料導入部10から導入された試料を分離するための第1カラム12、モジュレーションカラム14及び第2カラム18と、分離された試料を検出器に送るためのスプリッター20と、検出器として水素炎イオン化検出器(FID)22、化学発光窒素検出器(NCD)24及び質量分析計(MS)30と、を備えている。また、包括的2次元GCシステム100は、モジュレーションカラム14を加熱ガスで加熱するための加熱部15及び液体窒素で冷却するための冷却部16を有するモジュレータ部50を備えている。
包括的2次元GCシステム100では、試料導入部10から導入された試料が第1カラム12にて沸点毎に分離される。分離された成分は、モジュレータ部50で液体窒素により冷却され、一時的にモジュレーションカラム14でトラップされる。次に、分離成分をトラップしたモジュレーションカラム14に一定の時間間隔で加熱ガスを吹きかけることで、その都度トラップされた成分が第2カラム18に移動する。第2カラム18に移動した成分は極性毎に分離され、スプリッター20にて3種類の検出器に送り込まれる。
次に、包括的2次元GCシステムを用いる測定及び分析について説明する。
図2は、炭化水素油の塩基性窒素分の含有割合及びアニリン類の含有割合を求めるときの手順の一例を示すフロー図である。ステップS21で、2次元GCを用いて試料のNCDデータ及びMSデータを得る。ステップS22で、得られたNCDデータ及びMSデータを2次元処理する。ステップS23では、アニリン類のピークをMSデータに基づき同定し、該当するNCDピークの体積比を求める。ステップS24で、検出された全ピークの体積値を求める。ステップS25で、全NCDピークの体積比に対するアニリン類のNCDピークの体積値の比率を算出する。ステップS26で、JIS−K 2609 原料及び石油製品−窒素分試験方法により、試料中の全窒素濃度を求める。ステップS27で、求められた全窒素濃度とアニリン類の比率を用いて試料中のアニリン類の濃度(質量ppm)を算出する。ステップS28で、UOP試験法 No.269−90により、試料中の塩基性窒素の濃度を求める。ステップS29で、塩基性窒素の濃度及びアニリン類の濃度に基づき、全塩基性窒素分の総含有量に対するアニリン類の比率を算出する。この例では、各ステップが図2に示される順に行われるが、一部のステップが同時に行われてもよく、順序が変更されてもよい。
ステップS21では、例えば、表1に示される分析条件で測定を行うことができる。
試料は所定の前処理をすることができる。例えば、アニリン類を分析する場合、試料のメタノール抽出物を測定用の試料とすることができる。メタノール抽出は、以下の手順で行うことができる。まず、メタノール及び試料を等量で容器に採取し、5分間激しく振とうする。その後、1時間以上静置してメタノール層を採取し、これを測定用の試料とする。
ステップS22では、解析ソフトGC Imageを用いて2次元処理を行うことができる。これにより、例えば、図3に示される2次元チャートが得られる。
図3は、包括的2次元GCシステム(検出器:NCD)によって得られる2次元チャートの一例を示す図である。図3のチャートには、沸点順及び極性順に分解された塩基性窒素分のピークが示されている。MSデータに基づき、アニリン類に該当するピークを同定し、そのピークの体積値を得ることができる。このようにしてステップS23を実施することができる。
ステップS24では、全ピークの体積値を求めるが、このときステップS23で体積値を求めるときと同様のしきい値を設定することが好ましい。
第一の炭化水素油は、塩基性窒素分以外の窒素分を含有していてもよい。第一の炭化水素油における窒素分の含有割合(塩基性窒素分を含む窒素分の含有割合)は、例えば、第一の炭化水素油の全量に対して50質量ppm以上であってよく、60質量ppm以上であってもよい。また、第一の炭化水素油における窒素分の含有割合は、例えば、第一の炭化水素油の全量に対して300質量ppm以下であってよく、200質量ppm以下であってもよい。窒素分の含有割合が高いと触媒の初期活性が低いという傾向がある。また、窒素分の含有割合が低いと窒素による触媒被毒の影響が小さいため、初期の触媒活性が高いという傾向がある。なお、本明細書中、窒素分の含有割合は、JIS K 2609「原油及び石油製品−窒素分試験方法」に準拠して測定される。
第一の炭化水素油は、芳香族分を含有していてもよいが、第一の炭化水素油中の芳香族分の含有割合は、第二の炭化水素油中の芳香族分の含有割合より少ない。第一の炭化水素油中の芳香族分の含有割合は、例えば、第一の炭化水素油の全量に対して、33容量%以下であることが好ましく、30容量%以下であることがより好ましい。また、第一の炭化水素油中の芳香族分の含有割合は、第一の炭化水素油の全量に対して、10容量%以上であってもよく、20容量%以上であってもよい。このような範囲であれば、第一の炭化水素油が芳香族分を含んでいても、触媒活性種近傍に塩基性窒素分による低密度コークが十分に形成され、上述の効果を顕著に得ることができる。
第一の炭化水素油は、硫黄分を含有していてもよい。第一の炭化水素油として、硫黄分を含有する炭化水素油を用いる場合、第一の工程においても炭化水素油の脱硫反応を実施することができる。このように、第一の工程で第一の炭化水素油の脱硫反応を実施しながら低密度コークを形成し、第二の工程で第二の炭化水素油の脱硫反応を実施することにより、一層高効率の脱硫油製造プロセスが実現できる。
第一の炭化水素油中の硫黄分の含有割合は、例えば、第一の炭化水素油の全量に対して0.5質量%以上であってよく、0.8質量%以上であってもよい。また、第一の炭化水素油中の硫黄分の含有割合は、第一の炭化水素油の全量に対して、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下である。硫黄分の含有割合が多いと触媒寿命が短くなるという傾向がある。また、硫黄分の含有割合が少ないと硫黄分が低い高価な炭化水素油を使用する必要があり、経済性が悪い。なお、本明細書中、硫黄分の含有割合は、JIS K 2541−1992に規定する「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」の「放射線式励起法」に準拠して測定される。
第一の炭化水素油は、例えば、15℃における密度が0.83〜0.89g/cmであってよい。また、第一の炭化水素油の15℃における密度は、好ましくは0.83〜0.88g/cmであり、より好ましくは0.84〜0.87g/cmであり、さらに好ましくは0.84〜0.86g/cmである。第一の炭化水素油の密度が上記範囲であると、製品軽油の燃費向上という効果が奏される。なお、本明細書中、15℃における密度は、JIS K 2249に規定する「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表(抜粋)」の「振動式密度試験方法」に準拠して測定される密度を示す。
第一の炭化水素油は、例えば、90容量%留出温度が320〜370℃であってよい。第一の炭化水素油の90容量%留出温度は、好ましくは320〜360℃であり、より好ましくは330〜355℃である。第一の炭化水素油の90容量%留出温度が上記範囲であると、製品軽油の粒子状物質(PM)の抑制という効果が奏される。
また、第一の炭化水素油は、例えば、10容量%留出温度が200〜280℃であってよい。第一の炭化水素油の10容量%留出温度は、好ましくは210〜275℃であり、より好ましくは220〜270℃である。第一の炭化水素油の10容量%留出温度が上記範囲であると、製品軽油の酸化安定性が高いという効果が奏される。
第一の工程において、第一の炭化水素油と水素化精製触媒とを接触させる際の条件は、特に制限されない。例えば、低密度コークがより効率的に形成される観点からは、接触時の温度条件は、250〜420℃であることが好ましく、270〜400℃であることがより好ましい。また、第一の工程におけるLHSV(液空間速度、触媒充填容積に対する炭化水素油の供給速度の比)は、例えば0.1〜5h−1とすることができ、好ましくは0.5〜3h−1である。なお、触媒によってはアニリン類が触媒上に吸着しやすくするために、第一の工程の反応温度を第二の工程の反応温度より10〜30℃高温で処理することが好ましい。
また、第一の工程では、第一の炭化水素油と共に水素を流通させてもよい。第一の工程における水素分圧は、例えば1〜10MPaとすることができ、好ましくは3〜8MPaである。また、水素オイル比(水素/オイル比)は、例えば30〜500NL/Lとすることができ、好ましくは60〜300NL/Lである。
また、第一の工程において第一の炭化水素油を脱硫処理する場合、製品軽油中の硫黄分規制を満足するため、第一の工程で水素化精製触媒に接触させた後の第一の炭化水素油(第一の生成油)の硫黄分の含有割合を7〜15質量ppmとなるように運転してもよい。このとき、7〜10質量ppmとなるよう運転することが好ましい。このように運転することで、第一の生成油を製品軽油として好適に用いることができる。また、第一の工程の運転期間は、10日間以上であることが好ましく、20日間以上であることがより好ましい。この期間が長くなることで、低品質の原料油を処理する期間が長くなり、経済性が向上する。
炭化水素油は、例えば原油由来の炭化水素油を含むものであってよい。例えば原油から得られる、直留軽油(LGO)、接触分解軽油(LCO)、並びに常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、減圧軽油、溶剤脱れき油等の水素化精製物を用いることができる。
上記直留軽油は、原油を常圧蒸留することで得られる軽油留分を指す。
上記接触分解軽油としては、常圧蒸留残油、減圧軽油、溶剤脱れき油、又はそれらの水素化精製油を流動接触分解装置により接触分解して得られる軽油留分が挙げられる。
上記水素化精製物としては、例えば、常圧蒸留残油を水素化精製して得られる直接脱硫軽油(RDS−GO)、減圧蒸留残油を水素化精製して得られる間接脱硫軽油、減圧軽油を水素化精製して得られる減圧軽油の水素化精製油、溶剤脱れき油(DAO)を水素化精製して得られる溶剤脱れき油の水素化精製油等が挙げられる。
第一の炭化水素油は、例えば、塩基性窒素分を含まない又は塩基性窒素分の含有量が少ない炭化水素油に、塩基性窒素分を添加して調製されたものであってよい。また、第一の炭化水素油は、例えば、塩基性窒素分を含まない又は塩基性窒素分の含有量が少ない炭化水素油に、塩基性窒素分を多く含む炭化水素油を添加して調製されたものであってもよい。
一態様において、第一の炭化水素油としては、直留軽油に直接脱硫軽油を添加した炭化水素油を好適に用いることができる。直接脱硫軽油は、塩基性窒素分(特にアニリン類)を多く含む炭化水素油であり、直留軽油に直接脱硫軽油を添加することで、第一の炭化水素油として好適な炭化水素油を容易に調製することができる。
上記態様では、直留軽油に直接脱硫軽油を添加した炭化水素油を用いることで、第一の工程において、軽油として好適に適用可能な脱硫油を製造することができる。すなわち、上記態様では、第二の工程における触媒劣化を抑制するとともに、従来、重油基材として用いられていた直接脱硫軽油を軽油の原料として用いることができる。このため、上記態様によれば、高効率で軽油の製造プロセスを実施することができる。
また、上記態様に係る第一の工程は、例えば、従来の原料油(直留軽油)を脱硫して軽油を得る製造プロセスにおいて、原料油に直接脱硫軽油を添加することによって、容易に実施することができる。これによれば、既存の軽油の製造プロセスの高効率化を図ることができる。
第一の炭化水素油として、直留軽油に直接脱硫軽油を添加した炭化水素油を用いるとき、直接脱硫軽油の添加量は、上述の好適な塩基性窒素分の含有割合範囲を満たすように適宜調整することができる。直接脱硫軽油の添加量は、例えば、直留軽油100質量部に対して5〜50質量部とすることができ、好ましくは10〜30質量部とすることができ、より好ましくは15〜20質量部とすることができる。
(第二の工程)
第二の工程は、第一の工程を経た水素化精製触媒に、第二の炭化水素油を接触させる工程である。第二の工程では、第一の工程で水素化精製触媒の活性種近傍に低密度コークが形成されているため、第二の炭化水素油が芳香族分を含有していても、触媒の劣化が十分に抑制される。
第二の炭化水素油は、上述した評価方法でグラファイト格子像が観察された炭化水素油の他部を含んでいれば特に制限されることはないが、例えば、第二の炭化水素油は、以下のような性質を有するものであってもよい。
第二の炭化水素油は、例えば、硫黄分及び芳香族分を含んでいてよい。第二の炭化水素油中の芳香族分の含有割合は、例えば、第二の炭化水素油の全量に対して、30容量%以上であってよく、発明の効果が一層顕著に奏される観点からは、33容量%以上であることが好ましい。
また、第二の炭化水素油中の芳香族分の含有割合は、70容量%以下であることが好ましく、50容量%以下であることがより好ましい。第二の炭化水素油中の芳香族分の含有割合が高すぎると、コークの生成による触媒劣化という問題が生じる傾向がある。すなわち、第二の炭化水素油中の芳香族分の含有割合を上記上限値以下とすることで、過度のコーク生成を抑制できるという効果が奏される。
第二の炭化水素油は、芳香族分として、ナフタレン類及びビフェニル類からなる群より選択される少なくとも一種の2環芳香族分を含んでいてもよい。これらの2環芳香族分は、上述した高密度コークを形成し易く、従来の製造プロセスにこのような2環芳香族分を含む炭化水素油を適用すると、触媒劣化の速度が著しく向上するという課題があった。これに対して、本実施形態に係る脱硫方法では、上述のとおり、予め第一の工程で触媒活性種近傍に低密度コークを形成しているため、第二の炭化水素油が上記2環芳香族分を含有していても、触媒劣化が十分に抑制される。
なお、本明細書中、ナフタレン類とは、ナフタレン、又は、ナフタレンが有する水素原子の1つ若しくは2以上が置換基に置換された構造を有する化合物を示す。また、ビフェニル類とは、ビフェニル、又は、ビフェニルが有する水素原子の1つ若しくは2以上が置換基に置換された構造を有する化合物を示す。ナフタレン類及びビフェニル類における上記置換基としては、例えば炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。具体例として、1−メチルナフタレン、1−エチルナフタレン、2,3−ジメチルナフタレン、1,4−ジメチルナフタレン、2,6−ジメチルナフタレン、1−プロピルナフタレン、1,2,6−トリメチルナフタレン、1,4,5−トリメチルナフタレン、1−ブチルナフタレン、1,2,3,4−テトラメチルナフタレン、2−メチルビフェニル、4−メチルビフェニル、2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジメチルビフェニル、2−エチルビフェニル、2−プロピルビフェニル、2,4,6−トリメチルビフェニル、2−ブチルビフェニル、2,2’−ジエチルビフェニル等が挙げられる。
第二の炭化水素油における上記2環芳香族分の含有割合は、第二の炭化水素油の全量に対して、10容量%以上であってよく、12容量%以上であってもよい。
第二の炭化水素油における上記2環芳香族分の含有割合は、第二の炭化水素油の全量に対して、20容量%以下であることが好ましく、15容量%以下であることがより好ましい。第二の炭化水素油中の上記2環芳香族分の含有割合が高すぎると、コークの生成による触媒劣化という問題が生じる傾向がある。すなわち、第二の炭化水素油中の上記2環芳香族分の含有割合を上記上限値以下とすることで、過度のコーク生成を抑制できるという効果が奏される。
第二の炭化水素油は、芳香族分として上記2環芳香族分以外の成分を含有していてもよい。例えば、第二の炭化水素油は、単環芳香族分、3環以上の多環芳香族分等を含有していてもよい。単環芳香族分は、ベンゼン環を分子内に一つ有する化合物であり、例えば、テトラリン、インダン等が挙げられる。3環以上の多環芳香族分としては、例えば、フェナントレン、アントラセン、ピレン、クリセン等が挙げられる。
第二の炭化水素油における硫黄分の含有割合は、例えば、第二の炭化水素油の全量に対して0.5質量%以上であってよく、0.8質量%以上であってもよい。また、第二の炭化水素油における硫黄分の含有割合は、第二の炭化水素油の全量に対して、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下である。硫黄分の含有割合が多いと触媒寿命が短くなるという傾向がある。また、硫黄分の含有割合が少ないと硫黄分が低い高価な炭化水素油を使用する必要があり、経済性が悪い。
第二の炭化水素油は、窒素分を含有していてもよい。第二の炭化水素油における窒素分の含有割合は、例えば、第二の炭化水素油の全量に対して50質量ppm以上であってよく、60質量ppm以上であってもよい。また、第二の炭化水素油における窒素分の含有割合は、例えば、第二の炭化水素油の全量に対して300質量ppm以下であってよく、200質量ppm以下であってもよい。窒素分の含有割合が高いと触媒寿命が短くなるという傾向がある。また、窒素分の含有割合が低いと窒素による触媒被毒の影響が小さいため、初期の触媒活性が高いという傾向がある。
第二の炭化水素油は、塩基性窒素分を含有していてもよい。第二の炭化水素油における塩基性窒素分の含有割合は、第一の炭化水素油における塩基性窒素分の含有割合より低いことが好ましく、例えば、第二の炭化水素油の全量に対して50質量ppm以下であってよく、45質量ppm以下であってもよい。また、第二の炭化水素油における塩基性窒素分の含有割合は、第二の炭化水素油の全量に対して10質量ppm以上であってよく、30質量ppm以上であってもよい。
第二の炭化水素油は、例えば、15℃における密度が0.83〜0.89g/cmであってよい。また、第二の炭化水素油の15℃における密度は、好ましくは0.83〜0.88g/cmであり、より好ましくは0.84〜0.87g/cmであり、さらに好ましくは0.86〜0.87g/cmである。第二の炭化水素油の密度が上記範囲であると、製品軽油の燃費向上という効果が奏される。
第二の炭化水素油は、例えば、90容量%留出温度が320〜370℃であってよい。第二の炭化水素油の90容量%留出温度は、好ましくは320〜360℃であり、より好ましくは330〜355℃である。第二の炭化水素油の90容量%留出温度が上記範囲であると、製品軽油のPMの抑制という効果が奏される。
また、第二の炭化水素油は、例えば、10容量%留出温度が200〜280℃であってよい。第二の炭化水素油の10容量%留出温度は、好ましくは210〜255℃であり、より好ましくは220〜270℃である。第二の炭化水素油の10容量%留出温度が上記範囲であると、製品軽油の酸化安定性が高いという効果が奏される。
第二の工程では、第二の炭化水素油を水素化精製触媒に接触させて、脱硫反応を行う。このため、第二の工程では、好適には、水素の存在下に第二の炭化水素油を水素化精製触媒に接触させる。
脱硫反応の条件は、公知の種々の条件を適用できる。第二の工程において、水素分圧は、例えば1〜10MPaとすることができ、好ましくは3〜8MPaである。また、LHSVは、例えば0.1〜5h−1とすることができ、好ましくは0.5〜3h−1である。また、水素オイル比は、例えば30〜500NL/Lとすることができ、好ましくは60〜300NL/Lである。また、反応温度は、例えば250〜420℃とすることができ、好ましくは270〜400℃である。
第二の工程における脱硫反応の条件は、第二の炭化水素油の性状、所望する脱硫油の性等に応じて適宜変更することができる。また、第二の工程において第二の炭化水素油を脱硫処理する場合、製品軽油中の硫黄分規制を満足するため、第二の工程で水素化精製触媒に接触させた後の第二の炭化水素油(第二の生成油)の硫黄分の含有割合を7〜15質量ppmとなるよう運転することが好ましい。さらに、当該生成油の硫黄分の含有割合が7〜10質量ppmとなるよう運転してもよい。7質量pppm未満で脱硫すると、触媒が劣化しやすくなる傾向がある。一方、15質量ppmを超えると製品軽油の硫黄分規制を満足できなくなる場合がある。また、第二の工程の運転期間は、10日間以上であることが好ましく、20日間以上であることがより好ましい。この期間が長くなることで、低品質の原料油を処理する期間が長くなり、軽油製造プロセスの経済性が向上する。
第二の炭化水素油は、例えば原油由来の炭化水素油を含むものであってよい。例えば原油から得られる、直留軽油(LGO)、接触分解軽油(LCO)、並びに常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、減圧軽油、溶剤脱れき油等の水素化精製物を用いることができる。
上記直留軽油は、原油を常圧蒸留することで得られる軽油留分を指す。
上記接触分解軽油としては、常圧蒸留残油、減圧軽油、溶剤脱れき油、又はそれらの水素化精製油を流動接触分解装置により接触分解して得られる軽油留分が挙げられる。
上記水素化精製物としては、例えば、常圧蒸留残油を水素化精製して得られる直接脱硫軽油(RDS−GO)、減圧蒸留残油を水素化精製して得られる間接脱硫軽油、減圧軽油を水素化精製して得られる減圧軽油の水素化精製油、溶剤脱れき油(DAO)を水素化精製して得られる溶剤脱れき油の水素化精製油等が挙げられる。
第二の炭化水素油は、例えば、芳香族分を含まない又は芳香族分の含有量が少ない炭化水素油に、芳香族分を添加して調製されたものであってよい。また、第二の炭化水素油は、芳香族分を含まない又は芳香族分の含有量が少ない炭化水素油に、芳香族分を多く含む炭化水素油を添加して調製されたものであってもよい。
一態様において、第二の炭化水素油としては、直留軽油に接触分解軽油を添加した炭化水素油を好適に用いることができる。接触分解軽油は、芳香族分(特に、2環芳香族分)を多く含む炭化水素油であり、直留軽油に接触分解軽油を添加することで、第二の炭化水素油として好適な炭化水素油を容易に調製することができる。
上記態様では、直留軽油に接触分解軽油を添加した炭化水素油を用いることで、従来、重油基材として用いられていた接触分解軽油を軽油の原料として好適に利用することができる。
また、上記態様に係る第二の工程は、例えば、従来の原料油(直留軽油)を脱硫して軽油を得る製造プロセスにおいて、原料油に接触分解軽油を添加することによって容易に実施することができる。これによれば、既存の軽油の製造プロセスの高効率化を図ることができる。
第二の炭化水素油として、直留軽油に接触分解軽油を添加した炭化水素油を用いるとき、接触分解軽油の添加量は、上述の好適な芳香族分の含有割合範囲を満たすように適宜調整することができる。接触分解軽油の添加量は、例えば、直留軽油100質量部に対して5〜50質量部とすることができ、好ましくは10〜30質量部とすることができ、より好ましくは15〜20質量部とすることができる。
本実施形態に係る脱硫方法において、第一の工程は、第二の工程の実施前に一度だけ実施される工程であってよい。また、本実施形態に係る脱硫方法では、第二の工程の実施後に、再度、第一の工程を実施してもよい。さらに、本実施形態に係る脱硫方法では、第一の工程及び第二の工程を、交互に繰り返し実施してもよい。
第二の工程では、上述のとおり触媒劣化が抑制されてはいるものの、経時的に徐々に触媒活性は低下する。第二の工程の実施後に、再度第一の工程を実施することによって、低下した触媒活性が回復する傾向がある。すなわち、第一の工程及び第二の工程を交互に実施することによって、良好な触媒活性を長期間維持しつつ、炭化水素油の脱硫反応を行うことができる。
上述の効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、第二の工程において、低密度コークが徐々に剥離し、代わりに高密度コークが堆積して触媒活性が低下していたところ、再度の第一の工程において、高密度コークが剥離され、剥離後の触媒担体表面に再度低密度コークが形成されるためと考えられる。
以上、本実施形態に係る脱硫方法について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の他の側面は、上記脱硫方法で炭化水素油を脱硫して脱硫油を得る、脱硫油の製造方法であってよい。当該製造方法によれば、原料油の炭化水素油が芳香族分を含有していても、触媒劣化を抑えて効率よく脱硫を得ることができる。
また、本発明のさらに他の側面は、水素化精製触媒の活性低下を抑制する抑制方法であってよい。当該抑制方法の一態様は、硫黄分及び芳香族分を含む炭化水素油を、水素化精製触媒に接触させて、上記炭化水素油を脱硫する脱硫工程における、触媒の活性低下を抑制する方法であって、上記脱硫工程の前に、上記炭化水素油より塩基性窒素分の含有割合が高く、且つ芳香族分の含有割合が低い炭化水素油を、上記水素化精製触媒に接触させることを特徴とするものである。このような抑制方法によれば、芳香族分を含む炭化水素油を脱硫する脱硫工程において、水素化精製触媒の劣化を抑制することができる。
また、上記脱硫方法で脱硫された脱硫油は、軽油基材として好適に利用することができる。すなわち、本発明の一側面は、上記脱硫方法で脱硫された脱硫油を含む軽油基材に関するものということができ、また本発明の他の側面は、上記脱硫方法で脱硫油を得る工程を備える、軽油基材の製造方法ということができる。
第二実施形態に係る炭化水素油の脱硫方法は、上述した評価方法で、グラファイト格子像が観察されなかった炭化水素油の他部を、水素化精製触媒に接触させる工程を含む。すなわち、当該炭化水素油は、水素化精製触媒の劣化速度が遅い炭化水素油である。
このような炭化水素油の脱硫方法については、特に制限されず、公知の脱硫方法を採用することができるが、さらに水素化精製触媒の劣化速度を抑える観点から、上述した第一実施形態に係る炭化水素油の脱硫方法を採用することもできる。
以下実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<水素化精製触媒の調製>
(触媒A)
アルミナ−シリカ−リン酸化物担体に、触媒全量を基準として、Coを金属元素換算で2.4質量%、Moを金属元素換算で15.0質量%となるように担持して、BET比表面積が210m/gである触媒Aを得た。
(触媒B)
アルミナ−シリカ−チタニア担体に、触媒全量を基準として、Coを金属元素換算で2.4質量%、Moを金属元素換算で15.0質量%となるように担持して、BET比表面積が230m/gである触媒Bを得た。
<原油由来の炭化水素油の準備>
表2に示される中東系原油を処理して得られた直留軽油A、直留軽油B、接触分解軽油A、直接脱硫軽油Aをそれぞれ準備し、各炭化水素油を表3に示される混合比率(質量比)で混合して、表3に示す混合軽油A〜Eを準備した。
なお、本実施例において蒸留性状、密度、硫黄分、窒素分は、以下のように得られる。
蒸留性状:JIS K 2254に規定する「石油製品−蒸留試験方法」によって得られるものである。
密度:15℃における密度は、JIS K 2249に規定する「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表(抜粋)」の「振動式密度試験方法」に準拠して測定されるものである。
硫黄分:JIS K 2541−1992に規定する「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」の「放射線式励起法」に準拠して測定されるものである。
窒素分:JIS K 2609「原油及び石油製品−窒素分試験方法」に準拠して測定されるものである。
塩基性窒素分:UOP試験法No.269−90に準拠して測定されるものである。
全芳香族分及び2環芳香族分:石油学会試験法JPI−5S−49−2007「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠して測定されるものである。
また、アニリン類の濃度(質量ppm)及び含塩基性窒素化合物中のアニリン類比率(%)は、図1に示されるものと同様の構成を有する2次元GCシステム(ZOEX社製 KT2006(GC及び検出器はAgilent社製))を用い、図2に示されるフロー図と同様の手順で求めた。
(実施例1〜5)
<炭化水素油の水素化精製(接触工程)>
表3に示す混合軽油A〜Eを原料油としてそれぞれ、表4に示される生成油硫黄分をターゲットとして下記範囲で反応温度を調整し、下記水素化処理触媒量及び運転条件にて水素化精製(脱硫)した。
水素化処理触媒量:100mL
反応温度:340〜380℃
LHSV:1.0h−1
水素分圧:5.5MPa
水素/オイル比:200NL/L
<触媒の熱処理(熱処理工程)>
上記条件で各原料油(混合軽油A〜E)を水素化精製した触媒を反応器から抜出し、窒素雰囲気下で、室温から表4に記載の所定の熱処理温度(℃)まで表4に記載の所定の熱処理昇温速度(℃/分)で昇温した後、所定の熱処理温度(℃)で所定の熱処理時間(時間)保持し、その後、当該熱処理温度から室温まで表4に記載の所定の熱処理冷却速度(℃/分)で冷却する、という条件で触媒をそれぞれ熱処理した。
<熱処理触媒のTEM観察(観察工程)>
上記条件で熱処理した触媒について、以下の条件でTEM観察を行い、グラファイト格子像の有無を確認した。
(前処理)
触媒の表層部を、集束イオンビームを用いて切り出し、厚さ約100nmのTEM観察用の薄片試料を得た。
イオン源:Ga
加速電圧:粗加工40kV、仕上げ加工 10kV
デポジット:Pt
(TEM観察)
上記前処理により得られた試料について、TEMを用いて下記の条件で触媒のTEM写真を撮影した。
電子銃 :LaB6
加速電圧:200kV
撮影倍率:150万倍
実施例1及び3におけるTEM観察結果を図4及び図5に示す。なお、図5中の白丸で囲んだ部分は、グラファイト格子像が認められた部分である。また、図5の拡大図を図6に示す。得られた写真に格子像が認められた場合、面間隔を計測してグラファイトの(002)面の面間隔約0.35nmであったら、触媒にグラファイトありと判定する。
なお、観察された格子像の結晶面に垂直な方向に格子像の強度プロファイルを計測し(図7)、強度プロファイルにおいて観測された連続する3本のピークを抽出し、両端のピーク間の距離(図7中のA)を計測して、2で除した数値を面間隔とした。結果を表4に示す。
混合軽油A及び混合軽油Bについてはグラファイト格子像が観察されなかったが、混合軽油C、混合軽油D及び混合軽油Eについてはグラファイト格子像が観察された。
(実施例6〜10、比較例1〜3)
<炭化水素油の水素化精製>
表3に示す混合軽油A〜Eについて、表5及び表6に示す生成油硫黄分をターゲットとして下記範囲で反応温度を調整し、下記水素化処理触媒量及び運転条件にて、表5及び表6に記載の水素化精製(脱硫)した。その際の触媒の劣化速度を表5及び表6に併記する。
水素化処理触媒量:100mL
反応温度:340〜380℃
LHSV:1.0h−1
水素分圧:5.5MPa
水素/オイル比:200NL/L
<水素化精製触媒の劣化速度の算出>
反応時間と、処理後の軽油留分(脱硫軽油)中の硫黄分を8質量ppmとするために必要な反応温度との関係を得て、運転期間初日の必要反応温度と最終日の必要反応温度の差を運転期間で割ることにより、水素化精製触媒の劣化速度(℃/日)を算出した。結果を表5及び表6に示す。
上記実施例1〜5で述べたように、混合軽油A及び混合軽油Bは水素化精製触媒が劣化し難く、混合軽油C、混合軽油D及び混合軽油Eは水素化精製触媒が劣化されやすいと判定された。実施例6、7と比較例1〜3の触媒劣化速度(℃/日)の結果から、この判定が正しいことが分かる。
また、第一の炭化水素油として触媒が劣化され難いと判定された混合軽油A又はBを水素化精製触媒に接触させた後に、第二の炭化水素油として触媒が劣化されやすいと判定された混合軽油C又はDを水素化精製触媒に接触させた実施例8〜10は、水素化精製触媒の劣化が抑制され、運転期間を大幅に長くできることが分かる。
10…試料導入部、12…第1カラム、14…モジュレーションカラム、15…加熱部、16…冷却部、18…第2カラム、20…スプリッター、22…水素炎イオン化検出器(FID)、24…化学発光窒素検出器(NCD)、30…質量分析計(MS)、50…モジュレータ部、100…包括的2次元GCシステム。

Claims (8)

  1. 脱硫反応に供する炭化水素油の評価方法であって、
    前記炭化水素油の一部を水素化精製触媒に接触させる接触工程と、
    前記接触工程を経た前記水素化精製触媒を熱処理する熱処理工程と、
    熱処理された前記水素化精製触媒を透過型電子顕微鏡で観察してグラファイト格子像の有無を観察する観察工程と、を備える、評価方法。
  2. 第一の炭化水素油を水素化精製触媒に接触させる第一の工程と、
    前記第一の工程を経た前記水素化精製触媒に、第二の炭化水素油を接触させる第二の工程と、を備え、
    前記第二の炭化水素油が、請求項1に記載の評価方法でグラファイト格子像が観察された前記炭化水素油の他部を含み、
    前記第一の炭化水素油は、塩基性窒素分を含有し、
    前記第一の炭化水素油における塩基性窒素分の含有割合が、前記第二の炭化水素油における塩基性窒素分の含有割合より高く、
    前記第一の炭化水素油における芳香族分の含有割合が、前記第二の炭化水素油における芳香族分の含有割合より低い、
    炭化水素油の脱硫方法。
  3. 前記塩基性窒素分が、アニリン類を含む、請求項2に記載の炭化水素油の脱硫方法。
  4. 前記芳香族分が、ナフタレン類及びビフェニル類からなる群より選択される少なくとも1種の2環芳香族分を含む、請求項2又は3に記載の炭化水素油の脱硫方法。
  5. 前記第一の炭化水素油が、直接脱硫軽油を含む、請求項2〜4のいずれか一項に記載の炭化水素油の脱硫方法。
  6. 前記第一の工程と、前記第二の工程とを、交互に複数回実施する、請求項2〜5のいずれか一項に記載の炭化水素油の脱硫方法。
  7. 請求項2〜6のいずれか一項に記載の炭化水素油の脱硫方法で、脱硫油を得る、脱硫油の製造方法。
  8. 請求項1に記載の評価方法で、グラファイト格子像が観察されなかった前記炭化水素油の他部を、水素化精製触媒に接触させる工程を含む、脱硫油の製造方法。
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