以下の説明においては、まず、本実施の形態の実施のために無線網内で使用される既存の様々なネットワーク接続形態について説明する。次に、本実施の形態が実現される無線通信システム全体のネットワーク構成と当該無線通信システム内においてユーザが使用する無線端末のハードウェア構成を図2および図3を使用して説明する。続いて、図2に示すネットワーク構成および図3に示す無線端末の装置構成を前提として本実施の形態が実現するポリシー制御の概要を、従来技術におけるポリシー制御との間の相違点を中心に説明する。続いて、図4を使用して、本実施の形態に係るポリシー制御の仕組みを図2に示すネットワーク構成と図3に示す無線端末の上でそれぞれ実現するための機能モジュール構成を説明する。続いて、図4〜図9を参照しながら、本実施の形態に係るポリシー制御の動作の流れと共に、無線端末が当該ポリシー制御動作と連携しながら、異なるRATに対応する複数の無線ベアラ間で通信を切り替えることによりオフロード制御を実現する仕組みを説明する。
<1>オフロード制御に使用される様々なネットワーク接続形態
オフロード制御に使用される第1のネットワーク接続形態を図1(A)に示す。この接続形態においては、無線端末10は、無線LANアクセスポイント90Aを介して無線LANと接続しており、Home Appliance 20と無線端末10とは、共に無線LANアクセスポイント90Aが提供するLANセグメントに属しているものとする。この場合、同一のLANセグメントに属するHome Appliance 20と無線端末10とは、同一のサブネットワーク・アドレスを共有し、かつ同一のブロードキャスト・ドメインに属する。従って、無線LANアクセスポイント90Aは、Home Appliance 20と無線端末10との間で通信されるエンド・ツー・エンド・トラフィックを、当該LANセグメント内でローカルに転送することが可能である。その結果、無線LANアクセスポイント90Aは、当該エンド・ツー・エンド・トラフィックをコア網やISP網等のLANセグメント外のネットワークへ転送する必要が無い。
無線LANアクセスポイント90Aは、無線端末10が送受信するエンド・ツー・エンド・トラフィックが当該LANセグメント内でのローカル転送により完結するものであるか否かを適宜判断し、ローカル転送可能であると判断した場合には、コア網やISP網等から当該エンド・ツー・エンド・トラフィックをオフロードすることが可能である。上述したオフロード制御に使用されるこのようなローカル転送機能はLIPA(Local IP Access)として知られている。
オフロード制御に使用される第2のネットワーク接続形態を図1(B)に示す。この接続形態においては、無線端末10Aは、フェムトセル基地局90Bを介して無線通信事業者網91と接続しており、無線端末10Bは、マクロセル基地局90Cを介して無線通信事業者網91と接続している。無線端末10Aおよび無線端末10Bは、無線通信事業者網91を介してインターネット網80とエンド・ツー・エンド通信することが可能である。同時に、フェムトセル基地局90Bおよびマクロセル基地局90Cはそれぞれ無線通信事業者網91を介さずにインターネット網80に直接トラフィックを転送するためのネットワーク接続であるSIPTO接続を有する。SIPTO接続は、例えば、以下のようにして実現される。個人の自宅内に設置された例示的なフェムトセル基地局は、当該個人がインターネットとの接続のために契約しているISP(Internet Service Provider)が提供するISP網を介して無線通信事業者網に接続すると共に、インターネットにも直接接続している。従って、当該フェムトセル基地局は、当該自宅内において自身が通信中の無線端末が送受信する音声呼トラフィックを、ISP網を介して無線通信事業者網に転送すると同時に、無線通信事業者網を介さずに、インターネット通信トラフィックをインターネット網に直接転送することが出来る。
フェムトセル基地局90Bは、無線端末10Aとの間で通信するトラフィックがインターネット通信トラフィックであるか音声呼トラフィックであるかを判別し、インターネット通信トラフィックであれば、SIPTO接続を介して当該トラフィックをインターネット網80に直接転送する。その結果、当該インターネット通信トラフィックが無線通信事業者網91からオフロードされる。同様に、マクロセル基地局90Cは、無線端末10Bとの間で通信するトラフィックがインターネット通信トラフィックであるか音声呼トラフィックであるかを判別し、インターネット通信トラフィックであれば、SIPTO接続を介して当該トラフィックをインターネット網80に直接転送する。その結果、当該インターネット通信トラフィックが無線通信事業者網91からオフロードされる。なお、上述した無線通信事業者者網91は、WSP(Wireless Service Provider)網とも呼ばれ、コア網やその背後にあるPDNを含むことが可能である。
オフロード制御に使用される第3のネットワーク接続形態を図1(C)に示す。この接続形態においては、無線LANアクセスポイント90Dは、通信事業者によって運用される公衆無線LANサービスを提供し、広域網92を介して通信事業者網91と接続される。無線LANアクセスポイント90Dは、自身の通信カバレージ・エリア内に在圏する無線端末との間で通信されるトラフィックを広域網92および通信事業者網91を介してインターネット網80に転送することが出来る。他方、個人の自宅内に設置された無線LANアクセスポイント90Eは、当該個人が契約したISPが提供するISP網接続93を介してインターネット網80に接続されている。無線LANアクセスポイント90Dによりサービスされる無線端末が無線LANアクセスポイント90Eのキャリアを所定の品質で受信可能なエリア内に在圏している場合、当該無線端末が無線LANアクセスポイント90Dから90Eへとハンドオーバーすることにより、通信事業者網91内を流れる当該無線端末のトラフィックを通信事業者網91からISP網接続93へとオフロードすることが出来る。
<2>本実施の形態に係る無線通信システムのネットワーク構成
以下、図2を使用して、本実施の形態に係る無線通信システムのネットワーク構成を説明する。図3の無線通信システムは、UE10、一つ以上の無線アクセス網40A〜40C、無線アクセス網40A〜40Cとコア網ゲートウェイ61〜62を介して接続された一つ以上のコア網(CN: Core Network)51/52、コア網51/52とPDNゲートウェイ71/72を介して接続されたインターネット網80およびインターネット網80に接続されたサーバ20から構成される。
無線アクセス網40A〜40Cは、無線通信を介したコア網への無線アクセス経路をUE10に対して提供するネットワークであり、無線アクセス網40A〜40Cの各々は、互いに異なるRATに基づくことが可能である。例えば、無線アクセス網40Aは、3GPPが標準化を進めるE−UTRAN標準に基づいたLTE網とすることが出来、無線アクセス網40Bは、IEEE802.16e標準に基づいたWiMAX網とすることが出来、無線アクセス網40Cは、Wi−Fiのような無線LAN網とすることが出来る。なお、無線アクセス網40Cは、一つ以上の無線LANアクセスポイントとそれらを結ぶイーサネット・ハブ、ブロードバンド・ルータおよびケーブルモデム等から構成されることが可能である。
コア網51および52は、無線通信サービス提供事業者内において多数のルータ機器やネットワーク制御用サーバ機器を高速回線で接続することによって形成され、UEのインターネットへの接続(E−UTRANのコア網においてはP−GW(PDN-Gateway)の機能に相当する)、UEの端末モビリティ管理(E−UTRANのコア網においてはMMEの機能に相当する)またはUEの通信サービス認証(E−UTRANのコア網においてはHSSの機能に相当する)などの機能を実行する。例えば、コア網51は、無線アクセス網40Aおよびコア網ゲートウェイ61を介してUE10から無線アクセスが可能である。他方、コア網52は、無線アクセス網40Bおよびコア網ゲートウェイ62を介してUE10から無線アクセスが可能である。図2には示されていないが、2つ以上の異なる無線アクセス網を介して同一のコア網に無線アクセスすることも可能である。
ISP網53は、無線LAN網40Cをルータ網(PDN: Packet Data Network)54に接続するためのFTTH(Fiber-To-The-Home)回線、DSL(Digital Subscriber Line)回線、LAN間接続広域網、広域イーサネット等とすることが可能である。
PDNゲートウェイ71/72は、コア網51/52をルータ網(PDN: Packet Data Network)54にそれぞれ接続し、これにより、コア網51/52は、ルータ網(PDN: Packet Data Network)54を経由してインターネット網80との間でトラフィックを通信することが可能となる。コア網51がE−UTRAN標準に基づいて構成されている場合には、PDNゲートウェイ71は、P−GW(PDN-Gateway)とすることが可能である。
ルータ網(PDN: Packet Data Network)54は、コア網51/52とインターネット網80との間およびISP網53とインターネット網80との間に介在するパケット交換型のネットワークであり、無線通信事業者網間でのローミング・トラフィックの転送制御も提供する。
図2に示すネットワーク構成において、無線網内の通信に対するポリシー制御動作を管理するポリシー制御サーバをコア網51/52内、ルータ網(PDN: Packet Data Network)54内またはインターネット網80内に設置することが可能である。コア網51/52が3GPPリリース7の規定に従って構成されている場合、当該ポリシー制御サーバはコア網51/52内のP−GW(PDN-Gateway)の機能の一部として実装することが可能である。この場合、P−GW(PDN-Gateway)は図2のコア網51内に設置された外部接続ゲートウェイ71としても良い。なお、本実施の形態に係るポリシー制御サーバは特定のコア網や特定の無線アクセス網に限定されないポリシー制御を実行する。そのため、当該ポリシー制御サーバが例えば、コア網51内に設置されている場合であっても、当該ポリシー制御サーバは、インターネット網80を介して他のコア網内のネットワーク機器との間でポリシー制御に関する通信を実行することが可能である。また、当該ポリシー制御サーバがインターネット網80内に設置される場合、当該ポリシー制御サーバは、コア網51/52との間でポリシー情報を通信するためにTCP/IPプロトコル層構造と互換性を有するCOPS(Common Open Policy Service)プロトコルを使用しても良い。また、コア網51内に設置されたポリシー制御サーバがインターネット網80を介して他のコア網52内のネットワーク機器との間でポリシー情報を通信するために、TCP/IPプロトコル層構造と互換性を有するCOPS(Common Open Policy Service)プロトコルを使用しても良い。
図2において、無線ベアラ30Aは、UE10をLTE網である無線アクセス網40Aに接続する無線接続手段である。同様に、無線ベアラ30Bは、UE10をWiMAX網である無線アクセス網40Bに接続する無線接続手段である。無線ベアラ30Cは、UE10をWi−Fi網である無線アクセス網40Cに接続する無線接続手段である。
図2において、UE10は、無線ベアラ30A〜30Cのいずれか一つ以上を使用して、無線アクセス網40A〜40Cのいずれか一つ以上と無線接続する。続いて、UE10は、無線アクセス網、コア網51/52およびインターネット網80を経由してサーバ20との間でTCP/IPに基づくエンド・ツー・エンド通信を行う。
<3>本実施の形態において使用されるUEのハードウェア構成
以下、図3を使用して、本実施の形態に係る無線通信システム内において使用されるUE10のハードウェア構成を説明する。
図3において、UEは、無線信号を送受信するアンテナ101、アンテナ101と接続された無線インターフェース102a〜102n、メモリ103、制御プロセッサ104、制御プロセッサ104との間で入出力データをやり取りしながらユーザとUE10との間のユーザ・インターフェースを制御するユーザ入出力装置105、およびUE10の設定パラメータなどを記憶する永続的な記憶媒体であるストレージ106およびバス107から構成される。上述したメモリ103、制御プロセッサ104、ユーザ入出力装置105、およびストレージ106は、バス107を介して相互に接続されている。
無線インターフェース102a〜102nの各々は、受信したRF信号を周波数ダウンコンバートしてデジタル化し、復調し、そして復号化することにより、デジタル情報に変換して後続の情報処理のために提供する。これとは逆に、無線インターフェース102a〜102nの各々は、UE10内で生成されたデジタル情報を、符号化し、変調し、そして周波数アップコンバートすることによりRF信号に変換して無線送信のためにアンテナ101に提供する。無線インターフェース102a〜102nの各々は、LTE、WiMAXまたは無線LANなどのような複数の異なる種類のRATに対応した信号処理を実行可能となるように構成されている。すなわち、無線インターフェース102a〜102nの各々は、n種類のRATの各々と一対一に対応する。例えば、無線インターフェース102aは、LTE網に対応した無線信号の送受信処理を実行可能に構成され、無線インターフェース102bは、WiMAX網に対応した無線信号の送受信処理を実行可能に構成され、無線インターフェース102cは、無線LAN網に対応した無線信号の送受信処理を実行可能に構成されている。
メモリ103は、無線インターフェース102a〜102nが後述する制御プロセッサ104との間でやり取りするデジタル情報やUE10全体を制御するプログラムなどを記憶する。
制御プロセッサ104は、メモリ103からプログラムを読み出してUE10全体の制御、無線インターフェース102a〜102nを介してアンテナ101から送信されるデジタル情報の生成、無線インターフェース102a〜102nを介してアンテナ101から受信したデジタル情報の更なる処理などを実行する。
制御プロセッサ104は、無線インターフェース102a〜102nの中のいずれか一つ以上を選択的にイネーブルし、バス107を介して当該イネーブルされた無線インターフェースのみを介してデジタル情報をやり取りすることにより、特定のRATを選択的に使用して通信することが出来る。また、制御プロセッサ104は、無線インターフェース102a〜102nの全てをイネーブルし、バス107を介して全ての無線インターフェース102a〜102nを介してデジタル情報をやり取りすることにより、同時利用可能な全てのRAT(無線アクセス網)を同時に使用して通信することが出来る。
ユーザ入出力装置105は、UE10上に設けられた画面表示ディスプレイやキーパッドと制御プロセッサ104との間で入出力データのやり取りを行うと同時に、ユーザとUE10の間のユーザ・インターフェースの制御を行う。加えて、ユーザ入出力装置105は、UE10上に設けられた画面表示ディスプレイやキーパッドのデバイス状態や入出力ステータスが変化した際に、バス107を介して当該変化と関係付けられた割り込み処理を制御プロセッサ104に対して指示する。このような割り込み制御を可能とするために、ユーザ入出力装置105は、自身が管理する画面表示ディスプレイやキーパッドなどの入出力デバイス状態を電気的にモニタリングする機能を備えている。
<4>無線通信システム内における通信経路のポリシー制御の概要
(4−1)無線網内におけるポリシー制御の一般的な説明
ポリシー制御におけるポリシーは、運用ポリシーと機器設定ポリシーの2種類に大別される。運用ポリシーは無線網のネットワーク運用管理者が定めた網運用指針を記述するもの、無線網上で実行される個々の通信アプリケーション毎に、当該通信アプリケーションが要求する通信サービスの機能や品質を記述するもの等である。また運用ポリシーは、無線端末の通信制御機能の中でユーザが選択したい機能を記述するものであっても良い。他方、機器設定ポリシーは、運用ポリシーを無線網内の個々のネットワーク機器の動作に反映させるために、ポリシー制御の主体が運用ポリシーを解析した結果から生成するものであり、ポリシー制御主体によって個々のネットワーク機器に対して設定されるポリシーである。
無線端末が無線網を経由して通信するトラフィック・フローに対してポリシーに基づく通信経路制御を行う場合、ポリシー制御動作の各々は、判断段階と施行段階とに分けられる。判断段階は、無線端末側または無線網側からの要求によって開始され、無線端末側または無線網側から受信したトラフィック・フロー記述情報や無線網内のネットワーク機器の稼動情報に基づいて、当該トラフィック・フローに適用すべきポリシーの具体的内容を判断する。施行段階は、判断段階において決定されたポリシーの具体的内容を無線端末または無線網内のいずれか一つ以上のネットワーク機器に設定し、設定されたポリシーに従ってトラフィック・フローを転送するように、当該無線端末または当該ネットワーク機器に対して指示する。
上述したポリシー制御動作を無線網内において実装するためには、(1)ポリシー制御の対象となるネットワーク機器上において、外部から受信した機器設定ポリシーにより設定されたポリシー内容に従って、トラフィック・フローを転送するためのポリシー実施機能を実装し、さらに(2)無線網内において、ポリシー制御の対象となるネットワーク機器に対して設定すべき機器設定ポリシーを運用ポリシーの解析結果と状況に応じて判断し、当該ネットワーク機器に対して当該判断した機器設定ポリシーを設定するポリシー制御機構を実装することが必要となる。3GPPリリース7の規定によれば、3GPPコア網(図2のコア網51など)内において、ポリシー制御の対象となるネットワーク機器(図2のコア網ゲートウェイ61〜63など)に対して設定すべき機器設定ポリシーを運用ポリシーと状況に応じて判断する主体は、PCRF(ポリシーおよび課金ルール機能)であり、ネットワーク機器に対して当該判断した機器設定ポリシーを設定する主体は、PCEF(ポリシーおよび課金施行機能)である。PCRFおよびPCEFは、コア網(図2のコア網51など)内においてポリシー制御機構を実装するポリシー制御サーバ(図2の外部接続ゲートウェイ71/72など)の機能として実現することが出来る。
(4−2)本実施の形態が従来技術における通信経路ポリシー制御と相違する点
3GPPコア網内でのポリシー制御フレームワークであるPCCアーキテクチャを実装基盤として、無線端末が通信するトラフィック・フローの通信経路制御のために実行される特許文献1記載のポリシー制御は、本実施の形態とは以下の2つの点で異なっている。
(a)第1の相違点
本実施の形態においては、無線網内のポリシー制御機構から設定された機器設定ポリシーに従って通信経路制御の動作を調整するのは無線端末(図2および図3に示すUE10)のみである。これに対して、特許文献1を含む従来の通信経路ポリシー制御においては、無線網内のポリシー制御機構から設定された機器設定ポリシーに従って通信経路制御の動作を調整する対象となる機器は無線端末のみならず、無線端末の通信経路上に位置する無線網(図2のコア網51/コア網52など)内の全てのルータ機器やネットワーク機器(図2のコア網ゲートウェイ61〜63など)も含まれる。例えば、無線端末の通信経路上に位置する各ルータ機器は、ポリシー制御機構から異なる機器設定ポリシーを設定されることにより、同一の無線端末が通信するトラフィック・フローを異なる出力側網インターフェースにルーティングする場合がある。
(b)第2の相違点
また、本実施の形態においては、ポリシー制御フレームワークに基づく通信経路の制御とは、無線端末が異なるRATにそれぞれ接続するための複数の無線ベアラを無線端末上で切り替えたり同時使用したりする通信経路制御であり、無線アクセス網の先にあるコア網(図2のコア網51など)内での通信経路制御には関知しない。加えて、本実施の形態においては、無線端末上での複数の無線ベアラ間の切り替えや同時使用の設定変更動作は、無線網側のポリシー制御機構から一方的に指示されるものではなく、無線端末が当該ポリシー制御機構から受信したポリシーを参照しながら無線端末側の主導の下に実行される。従って、本実施の形態においては、通信経路制御に関する現在のポリシー設定状態は無線端末上でのみ管理すればよいので、本実施の形態に係るポリシー制御は端末主導型の通信経路ポリシー制御であると言える。
これに対して、特許文献1を含む従来の通信経路ポリシー制御においては、無線端末の通信経路上に位置するコア網(図2のコア網51など)内の全てのルータ機器やネットワーク機器(図2のコア網ゲートウェイ61〜63など)のルーティング動作が制御される。この場合、ルータ機器やネットワーク機器(図2のコア網ゲートウェイ61〜63など)に対するルーティング動作の設定変更は、無線網側のポリシー制御機構から一方的に指示されるものであり、ポリシー設定対象となるルータ機器やネットワーク機器(図2のコア網ゲートウェイ61〜63など)が自律的に判断するものではない。また、このような従来の通信経路ポリシー制御においては、無線端末が通信するトラフィック・フローに対して実行されるポリシー制御によってコア網(図2のコア網51など)内の通信経路自体が直接の制御対象とされる。その結果、ポリシー制御によってコア網内の通信経路が変更されると、当該変更を無線端末に対応するコア網(図2のコア網51など)内のモビリティ・アンカー(3GPPコア網においては、MMEまたはPDN−GWとして実装される)や無線ベアラ終端ノード(3GPPコア網においては、GGSNとして実装される)に反映させる必要が生じる。そのため、当該無線端末は、当該モビリティ・アンカーや当該無線ベアラ終端ノードとの間で、ポリシー設定変更に関する同期をとらなくてはならなくなる。言い換えれば、特許文献1を含む従来の通信経路ポリシー制御は、ポリシー設定変更をコア網全体で同期をとりながら管理する必要のあるネットワーク主導型のポリシー制御であると言える。
<5>本実施の形態に係るポリシー制御機能を実現する機能モジュール構成
以下、図4を参照しながら、図2に示すネットワーク構成と図3に示す無線端末の上で、本実施の形態に係るポリシー制御の仕組みを実現するための機能モジュール構成を説明する。
(5−1)全体構成の概観
図4において、上記(ii)で述べた無線網側のポリシー制御機構に相当するポリシー制御機構200は、外部ベアラ設定部210、外部情報取得部220およびオペレーション・システム(網運用管理システム)230の3つの機能モジュールから構成される。外部ベアラ設定部210および外部情報取得部220は、無線網内に設置されたポリシー制御サーバが、専用のサーバ・ソフトウェアを実行することにより実現される。図4に示すポリシー制御機構200は特定の無線コア網や特定の無線アクセス網に限定されない共通のポリシー制御の仕組みを、無線端末(UE)10から利用可能な全ての無線網に対して提供する。そのため、ポリシー制御機構200を実装するポリシー制御サーバはインターネット網80や特定の無線コア網から独立したルータ網(PDN(Packet Data Network))54の中に設置するのが好適である。ポリシー制御サーバが特定のコア網内に設置される場合は、当該ポリシー制御サーバは、他のコア網内のポリシー設定対象機器との間でCOPSプロトコルなどを使用してポリシー情報のやり取りをする。
図4に示すとおり、ポリシー制御機構200は、無線ベアラ1、無線ベアラ2、…、無線ベアラNを介して無線端末(UE)10と接続されており、無線ベアラ1〜無線ベアラNを介したN本の無線通信経路は、それぞれN個の異なる無線アクセス網(第1のRAT〜第NのRAT)を経由し、さらにそれら無線アクセス網の背後にある一つ以上の無線コア網のいずれかを経由する。ポリシー制御機構200が特定の無線ベアラと関連した機器設定ポリシーを無線端末(UE)10に設定する際には、当該特定の無線ベアラを介して当該機器設定ポリシーを配信する。図4においては、無線ベアラ1〜無線ベアラNがそれぞれ接続する無線アクセス網を、それらの背後にある無線コア網とまとめた形で、無線網3001〜無線網300nとして図示している。
(5−2)無線網側のポリシー制御機構200の機能モジュール構成
次に、ポリシー制御機構200の機能モジュール構成を以下のとおりに説明する。
外部ベアラ設定部210は、異なるRATに接続する複数の無線ベアラを無線端末(UE)10が選択する動作をポリシーに基づいて制御するために、当該無線端末に対して所定の機器設定ポリシーを設定する。この時、当該無線端末に対する機器設定ポリシーの設定は、以下のようにして達成される。まず最初に、当該ポリシー制御サーバが当該無線端末に対してCOPSプロトコルなどのポリシー伝達プロトコルを使用して設定すべき機器設定ポリシーの内容を送信する。続いて、当該無線端末内のポリシー実施機構が、当該送信された機器設定ポリシーの内容に従って、自身の動作制御パラメータなどを設定変更する。
外部ベアラ設定部210は、取得情報分析部211とポリシー配信部212とから構成される。取得情報分析部211は、無線網のネットワーク運用管理者が手動で設定した運用ポリシーや無線網を構成する多数のネットワーク機器から収集したネットアーク機器情報を分析して個々の無線端末(UE)10に設定すべき機器設定ポリシーの内容を決定する。加えて、取得情報分析部211は、無線網を構成する多数のネットワーク機器から収集したネットアーク機器情報を分析して個々の無線端末(UE)10に送信すべき基地局情報を決定する。基地局情報が果たす役割とその具体的な構成については後述する。ポリシー配信部212は、無線ベアラ1〜無線ベアラNのいずれか一つ以上を介して無線端末(UE)10と接続される。ポリシー配信部212は、取得情報分析部211が決定した機器設定ポリシーをポリシー制御対象となる無線端末に設定するために、無線端末(UE)10に対して当該決定された機器設定ポリシーを、無線ベアラ1〜無線ベアラNのいずれか一つ以上を介して配信する。同時に、ポリシー配信部212は、取得情報分析部211が決定した基地局情報を無線端末(UE)10に対して伝達するために、当該基地局情報を無線ベアラ1〜無線ベアラNのいずれか一つ以上を介して配信する。
外部情報取得部220は、ネットワーク情報取得部221とオペレーター・ポリシー取得部222から構成される。ネットワーク情報取得部221は、無線網内の各ネットワーク機器からその機器の現在の稼動状態や現在の通信能力に関するネットワーク機器情報を収集する。例えば、ネットワーク情報取得部221は、無線ベアラ1〜無線ベアラNがそれぞれ接続する無線網3001〜無線網300nを構成するルータ機器やネットワーク機器から、その機器の構成、機能、稼働状況および通信性能に関するネットワーク機器情報を収集する。オペレーター・ポリシー取得部222は、無線網のネットワーク運用管理者が手動で設定した運用ポリシーを取得する。外部情報取得部220は、ネットワーク情報取得部221とオペレーター・ポリシー取得部222がそれぞれ取得したネットワーク機器情報と運用ポリシーを取得情報分析部211に伝達する。
オペレーション・システム230は、個々の無線通信事業者網毎に設けられ、無線時通信事業者網の個数分だけ存在する(図4の230A〜230N)。無線通信事業者網毎のオペレーション・システム230は、自身の管理下にある無線通信事業者網内の全てのネットワーク機器からそれらのネットワーク機器の構成や機能を記述する情報である「ネットワーク機器情報」を収集し、外部情報取得部220内のネットワーク情報取得部221に報告する。一実施形態においては、n個の無線通信事業者網は、図4の無線網3001〜300nにそれぞれ対応しても良い。この場合、無線網3001を構成する全てのネットワーク機器の構成、機能、稼働状況および通信性能を記述するネットワーク機器情報は、図4のオペレーション・システム230Aによって収集され、無線網3002を構成する全てのネットワーク機器のネットワーク機器情報は、図4のオペレーション・システム230Bによって収集され、…、無線網300n内のネットワーク機器情報は、図4のオペレーション・システム230Nによって収集される。なお、個々のオペレーション・システム230は、個々の無線通信事業者網に設置されたネットワーク運用管理サーバによって実現されることが可能である。一実施例においては、当該ネットワーク運用管理サーバは、当該無線通信事業者網を構成する各ネットワーク機器のMIB(Module Information Base)をSNMPプロトコルでアクセスすることにより、各ネットワーク機器の構成、機能、稼働状況および通信性能を記述するネットワーク機器情報を収集することが可能である。オペレーション・システム230A〜230Nが収集した無線網3001〜300n内の全てのネットワーク機器に関するネットワーク機器情報は外部情報取得部220内のネットワーク情報取得部221によって収集される。
(5−3)無線端末(UE)10側の機能モジュール構成
次に、図4における無線端末(UE)10側の機能モジュール構成について説明する。この機能モジュール構成は、無線網側から供給されるポリシーを参照しながら、無線端末(UE)10上において異なるRATにそれぞれ接続する複数の無線ベアラの切り替えや同時並列アクセスを制御するための上記(i)の仕組みに相当する。無線端末(UE)10側の機能モジュール構成は、内部ベアラ設定部110および内部情報取得部120の2つの機能モジュールから構成される。無線端末(UE)10側の上述した機能モジュールは、無線端末(UE)10内の制御プロセッサ104が、ストレージ106からメモリ103上に読み込んだ専用のソフトウェア・プログラムを実行することによって実現される。
内部ベアラ設定部110は、無線端末(UE)10から同時利用可能な無線ベアラ1〜無線ベアラNの中から無線端末(UE)10が無線網に接続するために使用する一つ以上の無線ベアラを選択する機能を実行する。この際、無線端末(UE)10が無線網に接続するために、内部ベアラ設定部110により2つ以上の無線ベアラが選択された場合には、内部ベアラ設定部110はさらに、当該2つの無線ベアラ上で通信するトラフィック量を当該2つの無線ベアラの間で最適に配分する動作を実行する。この時、内部ベアラ設定部110が上述のとおり実行する無線ベアラの選択、および当該選択された無線ベアラ間でのトラフィック最適配分は、オフロード効果を最大化するような基準に従って実行される。この場合のオフロード効果とは、無線端末(UE)10がインターネット網80と通信する際において無線網3001〜300nなどの無線通信事業者網からトラフィックがオフロードされことにより、無線通信事業者網内のネットワーク機器の通信負荷が軽減される度合いである。
内部ベアラ設定部110は、まず最初に、ポリシー配信部212から配信された基地局情報および機器設定ポリシーを受信する。続いて、内部ベアラ設定部110は、当該機器設定ポリシーと当該基地局情報とに基づいて各無線ベアラ上での通信によって生じると予想されるオフロード効果を無線ベアラ毎に評価する。すなわち、内部ベアラ設定部110は、当該機器設定ポリシーと当該基地局情報とに基づいて、無線端末10から同時利用可能な無線ベアラ1〜無線ベアラNの各々について、予想されるオフロード効果を評価する。続いて、同時利用可能な無線ベアラ1〜無線ベアラNの中から無線端末10が通信に使用する無線ベアラを取捨選択する動作の実行を切替部111または同時通信処理部112のいずれか一方に実行させるため、内部ベアラ設定部110は、無線ベアラ毎に評価したオフロード効果の評価値を切替部111または同時通信処理部112のいずれか一方に伝達する。無線ベアラを取捨選択する動作の実行を、内部ベアラ設定部110が切替部111または同時通信処理部112のいずれが実行すべきかは、後述するようにアクティベート部113によって決定される。
内部ベアラ設定部110は、切替部111、同時通信処理部112およびアクティベート部113から構成される。
切替部111は、まず最初に、無線ベアラ毎に評価したオフロード効果の評価値に基づいて、最もオフロード効果の高い無線ベアラを選択する。続いて、切替部111は、当該選択された無線ベアラを介して上りリンク信号を送信する。なお、切替部111は、無線ベアラ1〜無線ベアラNの一つ以上を介して下りリンク信号を無線網側から受信する場合にも、上記と同様の制御を行う。同時通信処理部112は、まず最初に、無線ベアラ毎に評価したオフロード効果の評価値に基づいて、無線ベアラ毎に伝送可能な情報信号のビット数を割り当てる。続いて、同時通信処理部112は、各無線ベアラを介して、各無線ベアラに割り当てたビット数だけ上りリンク信号を送信する。なお、同時通信処理部112は、無線ベアラ1〜無線ベアラNの一つ以上を介して下りリンク信号を無線網側から受信する場合にも、上記と同様の制御を行う。この時、無線ベアラ1〜無線ベアラNの中で、上りリンク信号または下りリンク信号の送受信のために選択されない無線ベアラに関しては、同時通信処理部112は、伝送可能な情報信号のビット数として0ビットを割り当てることにより、当該無線ベアラを選択対象から外すことができる。以上のようにして、同時通信処理部112は、上述したオフロード効果を最大化するような態様で、複数の無線ベアラ間での上りリンクおよび下りリンクのトラフィック配分を最適化する。
即ち、切替部111は、オフロード効果が最大となる単一の無線ベアラの上で選択的に通信するための無線ベアラ選択を実行する一方、同時通信処理部112は、オフロード効果が高い複数の無線ベアラの間でのトラフィック最適配分を実行する。
アクティベート部113は、無線ベアラ1〜無線ベアラNの中から通信に使用する単一の無線ベアラを選択する機能を実行開始するタイミングを切替部111に対して指示する。代替的に、アクティベート部113は、無線ベアラ1〜無線ベアラNの中から通信に使用する一つ以上の無線ベアラの間でトラフィックの最適配分を実行開始するタイミングを同時通信処理部112に対して指示する。例えば、アクティベート部113は、切替部111または同時通信処理部112による無線ベアラ間の取捨選択動作の実行を一定時間間隔で周期的に指示することが可能であり、この場合、切替部111または同時通信処理部112による無線ベアラの取捨選択動作は一定時間間隔で周期的に起動される。また、別の実施態様として、アクティベート部113は、無線端末(UE)10内のソフトウェアまたはハードウェアにより生成される所定のイベント事象の発生を検出し、当該イベント事象の発生に応じて無線ベアラの取捨選択動作の実行を切替部111または同時通信処理部112に対して指示することが可能である。
また、アクティベート部113は、無線端末10が通信に使用する無線ベアラを取捨選択する動作を切替部111または同時通信処理部112のいずれに実行させるかを決定する。当該決定動作は、ユーザが無線端末10に設定した機器設定ポリシーに従って、アクティベート部113が実行してもよい。
内部情報取得部120は、無線端末10内部の通信性能、通信設定、および通信状態などを計測し、当該計測の結果を内部情報として内部に記憶しておき、当該記憶しておいた内部情報を内部ベアラ設定部110からの要求に応じて内部ベアラ設定部110に伝達する。内部情報取得部120が、無線端末10内部の通信性能、通信設定、および通信状態などを計測する動作は、以下のように実現することが出来る。例えば、無線端末10内において、内部情報取得部120を実行中の制御プロセッサ104(図3)が、メモリ103(図3)上に常駐するオペレーティング・システムによって提供される通信動作モニタリング用のAPIを呼び出して実行することにより上述した計測を行える。内部情報取得部120から内部ベアラ設定部110に伝達された無この内部情報は、内部ベアラ設定部110がポリシー配信部212から配信された機器設定ポリシーを無線端末10内部の通信性能、通信設定、および通信状態などを勘案して修正するために使用される。この点に関する詳細は後述する。
<6>ポリシー制御動作の流れ
以下、図4〜図9を参照しながら、図4に示された無線網側と無線端末側の機能モジュール群が互いに連携してポリシー制御動作を実現する際の動作の流れを説明する。
(6−1)ポリシー制御機構200側の動作の流れ
以下の説明のために参照する図5は、ポリシー制御機構200から無線端末10に配信される基地局情報の具体例を示す図であり、図6は、図4に示された無線網側と無線端末側の機能モジュール群の間での情報の流れを示すイベントフロー図である。
まず、最初に、外部ベアラ設定部210内のポリシー配信部212は、無線端末(UE)10に設定するために生成した機器設定ポリシーを無線ベアラ1〜無線ベアラNのいずれかを介して無線端末10に配信する(図6のステップS1000)。この時に無線端末10に配信される機器設定ポリシーの役割と情報内容に関しては後述する。続いて、オペレーション・システム230A〜230Nの各々は、自身の管理下にある無線網内の全てのネットワーク機器の構成や機能を記述する情報を収集する(図6のステップS1001)。例えば、オペレーション・システム230Aは、無線網3001を構成する全てのネットワーク機器のネットワーク機器情報を収集し、オペレーション・システム230Bは、無線網3002を構成する全てのネットワーク機器のネットワーク機器情報を収集し、…、オペレーション・システム230Nは、無線網300n内のネットワーク機器情報を収集する。続いて、外部情報取得部220内のネットワーク情報取得部221は、無線網3001〜300n内の全てのルータ機器やネットワーク機器のネットワーク機器情報をオペレーション・システム230A〜230Nから収集する(図6のステップS1002およびS1003)。図4の無線網3001は、LTE網などのセルラー無線網とその背後にある無線コア網やルータ網を一体的に図示するものであり、図4の無線網300nは、無線LANとその背後にある無線コア網やルータ網を一体的に図示するものである。
続いて、ネットワーク情報取得部221は、オペレーション・システム230から取得したネットワーク機器情報を外部ベアラ設定部210内の取得情報分析部211に送信する(図6のステップS1004)。
これと並行して、オペレーター・ポリシー取得部222は、ネットワーク運用管理者から無線網の運用ポリシーを手動で入力されると、当該入力された運用ポリシーを取得情報分析部211に送信する(図4のP3)。
続いて、取得情報分析部211は、無線網3001〜300n内において各無線ベアラの通信経路上に位置するネットワーク機器から収集したネットワーク機器情報から基地局情報を生成する。基地局情報とは、無線網3001〜300n内に存在する基地局や無線アクセスポイントの各々について、無線網3001〜300n内においてオフロードが可能なオフロード対象領域やオフロード対象リソースを表形式で列挙した情報である。なお、無線網3001〜300n内に存在する全ての基地局や無線アクセスポイントについて基地局情報を生成すると、基地局情報の情報量が膨大となる。そのため、取得情報分析部211は、無線端末10が位置する地理的位置を中心として所定の範囲内にある基地局や無線アクセスポイントのみについて基地局情報を生成することが可能である。それにより、無線端末10が近い将来接続する可能性のある基地局または無線アクセスポイントについてだけ、基地局情報が生成される。基地局情報の具体例を図5に示す。
以下、図2に示したネットワーク構成を前提として、図5に例示した基地局情報について説明する。無線端末10から無線ベアラ30Aにより接続可能なLTE網40Aは、それぞれがセルID=100、セルID=101、…となる複数個のLTE基地局(eNodeB)を備えており、図5の表中には上述したセルIDを有する複数のLTE基地局に対応する行が含まれている。同様に、無線端末10から無線ベアラ30Cにより接続可能な無線LAN網40Cは、それぞれがセルID=200、セルID=201、…となる複数個の無線LANアクセスポイントを備えており、図5の表中には上述したセルIDを有する複数の無線LANアクセスポイントに対応する行が含まれている。また、無線端末10から無線ベアラ30Bにより接続可能なWiMAX網40Cは、それぞれがセルID=300、セルID=301、…となる複数個のWiMAX基地局を備えており、図5の表中には上述したセルIDを有する複数のWiMAX基地局に対応する行が含まれている。無線網3001〜300n内においてオフロードが可能な網領域やリソースは、図5の表中においてそれぞれ「周波数」、「無線設備」、「コア設備」および「ルータ網」と示された各列に対応する。図5の表において「無線設備」と示された列は、各行に示されたセルIDにそれぞれ対応する基地局や無線アクセスポイントが、無線アクセス網40A〜40Cのいずれかを流れるトラフィックを他のネットワーク接続へオフロードする能力に対応する。図5の表において「コア設備」と示された列は、各行に示されたセルIDにそれぞれ対応する基地局や無線アクセスポイントが、コア網51/52のいずれかを流れるトラフィックを他のネットワーク接続へオフロードする能力に対応する。図5の表において「ルータ網」と示された列は、各行に示されたセルIDにそれぞれ対応する基地局や無線アクセスポイントが、ルータ網54を流れるトラフィックを他のネットワーク接続へオフロードする能力に対応する。図5の表において「周波数」と示された列は、各行に示されたセルIDにそれぞれ対応する基地局や無線アクセスポイントが、周波数リソースのオフロードを実行する能力に対応する。周波数リソースのオフロードとは、図5の表中の各セルIDに対応する基地局などが、近隣の他の基地局によって消費される周波数リソースを、セル間干渉を生じない形で、自局のセル内の無線チャネルや周波数帯域に関するリソース再割り当てとしてオフロードする操作である。これにより、各セルIDに対応する基地局などは、他の基地局などによって消費された無線チャネルや周波数帯域に関するリソース消費を、セル間干渉を生じない形でオフロードし、他の基地局のセル内における無線チャネルや周波数帯域に関する空きリソースを増やすことが出来る。
例えば、セルID=101を有するLTE基地局に対応する行内のコア設備およびルータ網と示される列に記載された「○」は、セルID=101を有するLTE基地局において、トラフィック負荷をコア網51とルータ網54からSIPTO接続にオフロードすることが可能であることを表す。同様に、セルID=201を有する無線LANアクセスポイントに対応する行内のコア設備と示される列に記載された「○」は、セルID=201を有する無線LANアクセスポイントにおいて、トラフィック負荷をコア網51/52からISP網接続53にオフロードすることが可能であることを表す。無線網3001〜300n内の様々な網領域内からのトラフィック負荷のオフロードは、各基地局や各無線アクセスポイントにおいて、例えば、図1の(A)〜(C)に示したLIPA接続、SIPTO接続またはハンドオーバーなどによって実現することが出来る。なお、セルID=300またはセルID=301に対応するWiMAX基地局に関しては、上述した4つの列の全てについて「×」が付いているので、これらのWiMAX基地局において、全ての形態のオフロードが一切不可能であることが分かる。
続いて、外部ベアラ設定部210内の取得情報分析部211は、ネットワーク情報取得部221から取得した無線網内のネットワーク機器のネットワーク機器情報およびオペレーター・ポリシー取得部222から取得した運用ポリシーに基づいて、各無線ベアラ(無線ベアラ1〜無線ベアラNの各々)についての無線端末10に設定すべき機器設定ポリシーを決定する。以下、外部ベアラ設定部210から無線端末10に設定される機器設定ポリシーの具体的な内容について説明する。当該機器設定ポリシーは、無線網3001〜300nに属する基地局のうち、無線ベアラ1〜無線ベアラNを介して無線端末10から接続する可能性のある全ての基地局の各々について、図5の表に示すオフロード対象領域およびオフロード対象リソースの各々に適用される重み係数の組を含む。すなわち、無線端末10から接続する可能性のある基地局毎に、図5に示す4つの列「無線設備」、「コア設備」、「ルータ網」および「周波数」にそれぞれ対応する4種類のオフロード対象に関して評価されるオフロード効果は、当該機器設定ポリシーに含まれる4つの重み付け係数によって無線端末10上で重み付けされる。この時、基地局毎に上述した4種類のオフロード対象に関してそれぞれ評価されるオフロード効果は、各基地局について図5の表中における対応する列の値が「○」であるか「×」であるかに応じて、「1」または「0」とすることが可能である。図5の表に示すオフロード対象である「無線設備」、「コア設備」、「ルータ網」および「周波数」の各々に適用される4種類の重み付け係数の値の大きさは、上述した4種類のオフロード対象の各々におけるオフロード効果の相対的な大きさおよびオフロード実行の相対的な重要性を表す。すなわち、上述した4種類のオフロード対象のうち、オフロード実行による通信負荷の低減効果が大きいことが予想されるオフロード対象については、これに対応する重み付け係数が大きく設定される。また、上述した4種類のオフロード対象のうち、ネットワーク運用ポリシーに鑑みて、オフロード実行が重要とされているオフロード対象についても、これに対応する重み付け係数が大きく設定される。
取得情報分析部211は、無線端末10に設定すべき機器設定ポリシーに含まれる重み付け係数を無線端末10が接続する可能性のある全ての基地局の各々について決定することが可能である。取得情報分析部211は、例えば、以下の(S1)〜(S4)のようにして当該重み付け係数を基地局毎に決定することが可能である。
(S1)取得情報分析部211は、まず、一つ以上の無線通信事業者網に対応する無線網3001〜300nのそれぞれから収集したネットワーク機器情報を分析する。収集したネットワーク機器情報(例えば、網運用管理プロトコルSNMPによって規定されるMIB情報)は、無線網3001〜300nのそれぞれを構成するルータ機器やネットワーク機器の構成、機能、稼働状況および通信性能を表す。
(S2)続いて、取得情報分析部211は、当該分析の結果から、無線網3001〜300nを構成する無線アクセス網、コア網またはルータ網と各基地局との間のエンド・ツー・エンド通信経路上での接続関係を導出する。例えば、取得情報分析部211は、上記(S1)の分析の結果から、無線網3001〜300n内のルータ機器間の接続トポロジーやエンド・ツー・エンド通信経路を流れるパケットの追跡情報を抽出することができる。そして、取得情報分析部211は、これらの抽出結果に基づいて無線網3001〜300nを構成する無線アクセス網、コア網またはルータ網と各基地局との間のエンド・ツー・エンド通信経路上での接続関係を導出することが可能である。
(S3)続いて、取得情報分析部211は、各基地局を通るエンド・ツー・エンド通信経路毎に無線アクセス網、コア網またはルータ網のいずれの部分で通信負荷や通信オーバーヘッドが増大しているかを判定する。例えば、取得情報分析部211は、上記(S1)の分析の結果から、各基地局を通るエンド・ツー・エンド通信経路上にある無線アクセス網、コア網またはルータ網について、通信負荷などを推定する。具体的には、各網を構成するルータ機器やネットワーク機器の現在のパケット転送レートと最大パケット転送レートとの比を計算し、網全体に渡って当該比を平均し、この平均値を網全体の通信負荷の指標とすることが出来る。
(S4)その上で、取得情報分析部211は、当該判定の結果に応じて、上述した4種類のオフロード対象に対応する4つの重み付け係数を決定することができる。例えば、取得情報分析部211は、各基地局を通るエンド・ツー・エンド通信経路毎に無線アクセス網、コア網またはルータ網のそれぞれについて現在の通信負荷が高いか通信負荷が増加傾向にあれば重み付け係数を大きく設定し、逆に、現在の通信負荷が低いか通信負荷が減少傾向にあれば重み付け係数を小さく設定する。同時に、各基地局について、セル内の周波数帯域や無線チャネルに関する空きリソースが少なければ、図5の表中の「周波数」に対応するオフロード対象に関する重み付け係数を大きく設定し、空きリソースが多ければ、当該重み付け係数を小さく設定する。なお、取得情報分析部211が、上述した4種類のオフロード対象に対応する4つの重み付け係数を決定するに当たっては、オペレーター・ポリシー取得部222から取得した運用ポリシーを加味して決定しても良い。
最後に、外部ベアラ設定部210内のポリシー配信部212は、無線端末(UE)10に設定するために生成した機器設定ポリシーと取得情報分析部211から受け取った基地局情報を無線ベアラ1〜無線ベアラNのいずれかを介して無線端末10に配信する(図6のステップS1005)。無線端末10に配信された基地局情報と機器設定ポリシーは、同時使用可能な複数の無線ベアラの中から無線端末10が通信に使用するものを取捨選択するために、無線端末10によって使用され、その結果、無線網側のオフロード効果が改善される(図6のステップS1006)。
(6−2)無線端末10側の動作の流れ
まず、内部ベアラ設定部110内において、アクティベート部113は、無線ベアラ1〜無線ベアラNの中から通信に使用する単一の無線ベアラを選択する機能を実行開始するタイミングを切替部111に対して指示する。代替的に、アクティベート部113は、無線ベアラ1〜無線ベアラNの中から通信に使用する一つ以上の無線ベアラの間でトラフィックの最適配分を実行開始するタイミングを同時通信処理部112に対して指示する。例えば、アクティベート部113は、切替部111または同時通信処理部112による無線ベアラ間の取捨選択動作の実行を一定時間間隔で周期的に指示することが可能であり、この場合、切替部111または同時通信処理部112による無線ベアラの取捨選択動作は一定時間間隔で周期的に起動される。また、別の実施態様として、アクティベート部113は、無線端末(UE)10内のソフトウェアまたはハードウェアにより生成される所定のイベント事象の発生を検出し、当該イベント事象の発生に応じて無線ベアラの取捨選択動作の実行を切替部111または同時通信処理部112に対して指示することが可能である。
また、アクティベート部113は、無線端末10が通信に使用する無線ベアラを取捨選択する動作を切替部111または同時通信処理部112のいずれに実行させるかを決定する。当該決定動作は、ユーザが無線端末10に設定した機器設定ポリシーに従って、アクティベート部120が実行してもよい。
続いて、内部ベアラ設定部110内において、アクティベート部113によって起動された切替部111または同時通信処理部112は、無線端末10が同時使用可能な一つ以上の無線ベアラの中から実際に通信に使用する無線ベアラを取捨選択する動作を実行する。具体的には、切替部111は、まず最初に、無線ベアラ毎に評価したオフロード効果の評価値に基づいて、最もオフロード効果の高い無線ベアラを選択する。続いて、切替部111は、当該選択された無線ベアラを介して上りリンク信号を送信する。他方、同時通信処理部112は、まず最初に、無線ベアラ毎に評価したオフロード効果の評価値に基づいて、無線ベアラ毎に伝送可能な情報信号のビット数を割り当てる。続いて、同時通信処理部112は、各無線ベアラを介して、各無線ベアラに割り当てたビット数だけ上りリンク信号を送信する。それにより、同時通信処理部112は、上述したオフロード効果を最大化するような態様で、複数の無線ベアラ間での上りリンクおよび下りリンクのトラフィック配分を最適化する。
切替部111または同時通信処理部112が無線ベアラを取捨選択する動作は、ポリシー配信部212から無線端末10の内部ベアラ設定部110に対して配信された機器設定ポリシーと基地局情報を使用して実行される。その結果、切替部111または同時通信処理部112は、無線網側でのオフロード効果の高い無線ベアラを優先的に使用して無線端末10が通信を行えるように無線ベアラの取捨選択を実行する。続いて、起動された切替部111または同時通信処理部112は、各無線ベアラについて、無線端末10内部の通信性能、通信設定、および通信状態などに関する計測値を、内部情報取得部120から取得する。内部情報取得部120から取得した各無線ベアラについての通信性能、通信設定、および通信状態などを表す情報には、(1)各無線ベアラ毎に通信バッファー内で伝送待ち状態となって滞留している下りリンク方向と上りリンク方向の伝送データの量、(2)各無線ベアラ毎の通信制御パラメータや通信モードの現在の設定内容、(3)各無線ベアラ毎の現在までの通信スループット達成値および(4)各無線ベアラ毎に達成されている通信サービス品質の度合い(通信遅延、ジッターおよび誤り再送頻度など)などが含まれる。
続いて、起動された切替部111または同時通信処理部112は、内部情報取得部120から取得した無線端末10内部の通信性能、通信設定、および通信状態などに関する計測値を加味して上述した無線ベアラ間の取捨選択動作をさらに調整することが可能である。例えば、同時通信処理部112は、オフロード効果が高いと評価される無線ベアラであっても、当該無線ベアラ上での通信サービス品質が著しく低い、または当該無線ベアラ上でのフレーム伝送に関する誤り再送頻度が著しく高い場合には、当該無線ベアラへのトラフィック配分を減らすことが可能である。
<7>切替部111による無線ベアラ選択動作
以下、無線端末10が同時使用可能な一つ以上の無線ベアラの中から、オフロード効果が最大となる無線ベアラを切替部111が選択する方法について、図7のフローチャートに沿って説明する。切替部111がアクティベート部113によって起動されると、切替部111はまずステップS2001を実行し、無線端末10が同時使用可能な全ての(m個の)無線ベアラを識別する。同時に、無線網3001〜300nに属する基地局や無線アクセスポイントのうち、上記識別されたm個の無線ベアラの各々が直接的に接続する基地局や無線アクセスポイントをセルIDにより識別する。上記識別されたm個の無線ベアラとそれらが各々接続する基地局や無線アクセスポイントのセルIDは、図9に示すような表の形で対応付けられる。上記識別された無線ベアラとそれらが接続する基地局や無線アクセスポイントとの間の対応関係を示す図9の表は端末側通信条件と呼ばれる。図9の表においては、無線端末10から同時使用可能であるとして識別された無線ベアラの本数mは4である。図9の表において、LTE網との接続に使用される一本の無線ベアラはセルID=105となるLTE基地局(eNodeB)に接続されていることがわかる。また、図9の表において、無線LAN(WiFi)との接続に使用される2本の無線ベアラの一方は、セルID=115となる無線LANアクセスポイントに接続され、他方はセルID=125となる無線LANアクセスポイントに接続されていることがわかる。また、図9の表において、WiMAX網との接続に使用される一本の無線ベアラはセルID=135となるWiMAX基地局に接続されていることがわかる。
続いて、処理はステップS2002に進み、切替部111は、図9において列挙された基地局または無線アクセスポイントのセルIDを検索キーとして、ポリシー配信部212から受信した基地局情報に含まれる図5の表を検索する。続いて、処理はステップS2003に進み、切替部111は、上記検索の結果とポリシー配信部212から機器設定ポリシーとして受信した4種類の重み付け係数を使用して、無線ベアラ毎のオフロード効果を評価する。具体的には、表9に列挙された各セルIDに対応する基地局または無線アクセスポイントの各々においてオフロードを実行することによって、どの程度のオフロード効果を生じるかを切替部111が評価する。最後に処理はステップS2004に進み、切替部111は、最大のオフロード効果を生じると評価された基地局または無線アクセスポイントに接続する無線ベアラを選択し、当該選択した無線ベアラの上でユーザ・トラフィックを伝送する。例えば、図9の表に列挙された基地局または無線アクセスポイントのうち、セルID=105となる基地局が最大のオフロード効果を生じると評価された場合、切替部111は、図9の表においてセルID=105に対応する無線ベアラを選択する。
次に、図7のステップS2002およびステップS2003において切替部111が実行する処理の詳細な内容を図8のフローチャートに沿って説明する。
まず、ステップS3001において、切替部111は、図9において列挙された基地局または無線アクセスポイントのセルIDを上から順番に取り出す。続いて、切替部111は、取り出した各セルIDを検索キーとして基地局情報内に含まれる図5の表を検索し、図5の表において検索キーにマッチするセルIDを有する行の中の「周波数」、「無線設備」、「コア設備」および「ルータ網」の各々に「○」が付いているか「×」が付いているかを参照する。この時、「コア設備」の欄に「○」が付いていれば、該当する基地局によるトラフィックのオフロード効果を1と評価し、「×」が付いていれば、該当する基地局によるトラフィックのオフロード効果を0と評価することが可能である。代替的に、「コア設備」の欄に「○」が付いていれば、該当する基地局によるトラフィックのオフロード効果の評価値を、SIPTO接続などを介してオフロードされるトラフィックのデータ転送レートに等しい値とし、「×」が付いていれば、該当する基地局による周波数リソースのオフロード効果を0と評価することが可能である。検索キーにマッチする行の中の「無線設備」、「周波数」および「ルータ網」の欄の各々についても上記と同様の方法でオフロード効果を評価する。以上により、図9において列挙された基地局または無線アクセスポイントの各々に関して、切替部111は、「周波数」、「無線設備」、「コア設備」および「ルータ網」の4種類のオフロード対象のそれぞれにおけるオフロード効果を評価する。
続いて、処理はステップS3002に進み、図9において列挙された基地局または無線アクセスポイントの各々に関して、切替部111は、トータルのオフロード効果評価値を算出する。具体的には、切替部111は、上述した4種類のオフロード対象(「周波数」、「無線設備」、「コア設備」および「ルータ網」)におけるオフロード効果の評価値を4つの重み付け係数によって重み付けした上で合計し、トータルのオフロード効果評価値を算出する。上述した4つの重み付け係数は、内部ベアラ設定部110が、ポリシー配信部212から無線端末10に設定すべき機器設定ポリシーとして受信したポリシーの中に含まれていた重み付け係数である。以上のようにして、図9において列挙された基地局または無線アクセスポイントの各々に関して、オフロード効果のトータルの評価値を求めることが可能である。
続いて、処理はステップS3002に進み、図9の表(端末側通信条件)に列挙された基地局または無線アクセスポイントの全てについてトータルのオフロード効果評価値が算出されたか否かを判定する。図9の表に列挙された基地局または無線アクセスポイントの全てについてトータルのオフロード効果評価値が算出されているならば、図8のフローチャートの全体処理を終了して図7のフローチャートのステップS2004に進み、そうでなければ、図8のステップS3001に戻る。
<8>同時通信処理部112による無線ベアラの選択とトラフィック配分の動作
以下、無線端末10によって同時使用可能な複数の無線ベアラの中からユーザ・トラフィックの伝送に使用する2つ以上の無線ベアラを選択し、当該選択された2つ以上の無線ベアラの間でトラフィックを最適配分するために同時通信処理部112が実行する方法を、図10のフローチャートに沿って説明する。
同時通信処理部112がアクティベート部113によって起動されると、同時通信処理部112はまずステップS4001に進み、無線端末10が同時使用可能な全ての(m個の)無線ベアラを識別する。同時に、無線網3001〜300nに属する基地局や無線アクセスポイントのうち、上記識別されたm個の無線ベアラの各々が直接的に接続する基地局や無線アクセスポイントをセルIDにより識別する。上記識別されたm個の無線ベアラとそれらが各々接続する基地局や無線アクセスポイントのセルIDは、図9に示すような表の形で対応付けられる。上記識別された無線ベアラとそれらが接続する基地局や無線アクセスポイントとの間の対応関係を示す図9の表は端末側通信条件と呼ばれる。
続いて、処理はステップS4002に進み、同時通信処理部112は、内部ベアラ設定部110がポリシー配信部212から機器設定ポリシーとして受信した4種類の重み付け係数と内部ベアラ設定部110がポリシー配信部212から受信した図5に示す基地局情報を取得する。
続いて、処理はステップS4003に進み、同時通信処理部112は、図9に示す端末側通信条件、上述した重み付け係数および上述した基地局情報を使用して、図9において列挙された基地局や無線アクセスポイントの各々に関して、トータルのオフロード効果評価値を算出する。トータルのオフロード効果評価値を算出する具体的な方法は、図8のフローチャートに関連して上述した方法と同様であるので、説明を省略する。これにより、同時通信処理部112は、端末側通信条件として図9の表に列挙された無線ベアラの各々を使用してユーザ・トラフィックを伝送する場合に、無線網側で生じるオフロード効果の大きさを評価することが可能となる。
続いて、処理はステップS4004に進み、同時通信処理部112は、伝送待ちのために通信バッファー内に格納する送受信データの量を決定する。この送受信データ量は、内部情報取得部120から同時通信処理部112が取得した情報を考慮して決定される。例えば、同時通信処理112は、内部情報取得部120から取得した上りリンクの実効スループットまたは下りリンクの実効スループット、あるいは伝送信号品質や通信サービス品質を考慮して送受信データ量を決定する。
続いて、処理はステップS4005に進み、同時通信処理部112は、無線ベアラ毎に算出したトータルのオフロード効果評価値に基づいて、各無線ベアラ上でのユーザ・トラフィック伝送のために各無線ベアラに対して割り当てる伝送ビット数を決定する。その結果、同時通信処理部112は、無線網側で生じるオフロード効果を最大化するような態様で、複数の無線ベアラ間でトラフィック量を最適配分することが出来る。
上述したステップS4005の処理は、各無線ベアラ毎に実行されるので、上述したステップS5の処理は、ステップS4001において無線端末10から同時使用可能であるとして識別された無線ベアラの本数(m本)と等しい回数だけ繰り返し実行される。
以上のようにして、同時通信処理部112が、複数の無線ベアラ間でトラフィック量を最適配分する結果、無線網側でのオフロード効果が大きい無線ベアラほど、送受信のために割り当てられる伝送ビット量が多くなる。
続いて、処理はステップS4006に進み、同時通信処理部112は、上りリンク伝送に関し、通信バッファー内に残っている伝送待ちデータの有無を調べる。続いて、ステップS4007において、同時通信処理部112は、各無線ベアラ毎に、伝送待ちデータが残っていれば、そのデータをステップS4005において決定された無線ベアラ間トラフィック配分比率に従って対応する無線ベアラ上で送信する。
同時に、ステップS4006において、同時通信処理部112は、下りリンク伝送に関し、通信バッファー内に空き容量が残っているか否かを調べる。続いて、ステップS4007において、同時通信処理部112は、各無線ベアラ毎に、通信場ファー内に十分な空き容量が残っていれば、ステップS4005において決定された無線ベアラ間トラフィック配分比率に従って下りリンクデータを対応する無線ベアラ上で受信する。
上述したステップS4006およびステップS4007の処理は、各無線ベアラ毎に実行されるので、上述したステップS4006およびステップS4007の処理は、ステップS4001において無線端末10から同時使用可能であるとして識別された無線ベアラの本数(m本)と等しい回数だけ繰り返し実行される。
<9>本実施の形態の効果
以上より、本実施の形態は、無線端末10が通信中の基地局や無線アクセスポイントがSIPTO接続、LIPA接続またはこれらと同等の網接続手段を有しない場合、このような網接続手段を有する近隣の他の基地局や無線アクセスポイントを探索してそこへ自動的にハンドオーバーするような仕組みを実現することができる。具体的には、通信中の基地局や無線アクセスポイントがSIPTO接続、LIPA接続またはこれらと同等の網接続手段を有しない場合、無線端末10は、既存の無線ベアラを切断した上で、このような網接続手段を有する近隣の他の基地局や無線アクセスポイントに無線ベアラを優先的に接続することができる。加えて、本実施の形態は、コア網51/52内またはルータ網54内を通る通信経路の最適化や再配置をポリシー制御に基づいて行うのではなく、コア網51/52全体またはルータ網54全体を迂回するオフロード制御を、無線網と無線端末10の両側からのポリシー制御に基づいて行う仕組みを実現することができる。加えて、本実施の形態は、上述した経路制御に関し、同一のポリシー制御ノードによって管理される無線網において、接続する無線端末の数およびポリシー制御動作の実行頻度が増大しても、無線網内の制御オーバーヘッドが増大しないようなポリシー制御を実現することができる。