図1は、本発明の実施形態であるプローバ用チャック1の構成を示す概略図である。図1(a)は断面図を示し、図1(b)は斜視図を示す。
プローバ用チャック1は、絶縁基板2と、第1導電層3と、第2導電層4とを備える。絶縁基板2は、セラミックスなどの絶縁材料で構成される。絶縁基板2の形状は特に限定されないが、たとえば、平面視形状が矩形の板状または円形の円板状に形成される。本実施形態では、図1(b)の斜視図に示すように、絶縁基板2は、円板状部材である。
絶縁基板2として使用できるセラミックスとしては、たとえば、アルミナ、ジルコニアなどの金属酸化物系セラミックス、炭化ケイ素などの炭化系セラミックス、および窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化系セラミックスなどが挙げられる。各セラミックスは、絶縁抵抗などの電気特性、熱抵抗などの伝熱特性、機械的強度などの材料特性がそれぞれ異なるので、検査の対象となる半導体基板の種類、検査の内容などに応じて適宜必要な特性を有するセラミックスを選択すればよい。これらの中でもアルミナは、各特性が総じてプローバ用チャックの絶縁基板として良好であることから、好ましく用いられる。
絶縁基板2の寸法は、特に限定されず、保持しようとする半導体基板よりも広くても狭くても同一寸法でもよいが、半導体基板よりも広い方が半導体基板をより安定して支持できるため、好ましい。絶縁基板2の厚みは、たとえば、2mm〜30mmであればよい。
第1導電層3は、導電性材料からなり、絶縁基板2の一方主面に形成された層状部材である。第1導電層3を構成する導電性材料としては、絶縁基板2の主面に形成可能な材料であれば種々の材料を用いることができる。たとえば、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、ニッケル、チタン、白金、パラジウムなどを用いることができる。第1導電層3は、複数の層からなるものであってもよく、それぞれの層は異なる金属で形成される。たとえば、絶縁基板2の一方主面上にクロム層を形成し、クロム層上にさらにニッケル層を形成してもよく、絶縁基板2の一方主面上にクロム層を形成し、クロム層上にさらに金層を形成してもよい。このように絶縁基板2とニッケル層または金層との間にクロム層を介在させると、第1導電層3と絶縁基板2との接着強度を高めることができる。また、絶縁基板2の一方主面上にチタン層、白金層および金層を順次積層してもよい。
第1導電層3を絶縁基板2の一方主面に形成する形成方法としては、絶縁基板2の材料および第1導電層3の材料によって適宜選択すればよく、たとえば、スパッタリング、イオンプレーティング、めっきなど、予め作製した絶縁基板2の一方主面に対して、所定の厚みとなるように形成すればよい。第1導電層3が、複数の層からなる場合は、原料となる金属の種類を変えて同じ形成方法または異なる方法で層の形成を複数回行えばよい。
第1導電層3は、保持しようとする半導体基板の裏面に形成された端子に接触可能なように絶縁基板2の一方主面に形成されている。第1導電層3は、一方主面の全面に形成されていることが好ましいが、半導体基板の裏面に形成された前記端子に接触できれば、一方主面の一部の領域に形成してもよく、前記一方主面の全面に必ずしも形成されていなくてよい。また、第1導電層3の厚みは、たとえば、0.1μm〜500μmに形成される。
第2導電層4は、第1導電層3と同様の構成であり、用いる材料、他方主面に形成する領域、層の厚みなどは、上記の範囲内から適宜選択される。上記の範囲内であれば、第1導電層3と異なっていてもよく、同じであってもよい。
本実施形態のプローバ用チャック1は、絶縁基板2の端面が所定の算術平均粗さRaとなるように構成されている。本件発明者らは、絶縁基板2の絶縁抵抗値が、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaに影響されることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaと、絶縁抵抗値との関係は、算術平均粗さRaを小さくするほど、絶縁抵抗値が高くなり、算術平均粗さRaを大きくするほど、絶縁抵抗値が低くなるというものである。
したがって、絶縁基板2としては、材料を変えることも無く、放電性などの絶縁抵抗値以外の特性の変化を抑えて、絶縁抵抗値を所定の値に調整することが可能となる。調整可能な絶縁抵抗値の範囲としては、たとえば、算術平均粗さRaを0.2μm〜1.5μmまで変化させたときに、絶縁抵抗値が1011Ω〜1016Ωの範囲で調整することができる。
半導体基板の検査において、たとえば第1導電層3に電圧が印加された場合、わずかながら第2導電層4へのリーク電流が発生する。検査内容にもよるが、特に高精度の検査を行う場合に、このリーク電流が検査結果に影響を与える可能性がある。そのため、リーク電流を小さくする必要がある。リーク電流は、絶縁基板2の絶縁抵抗値を高くすることで小さくできる。
図2は、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaが、絶縁抵抗値に影響を与えることを説明するための模式図である。図2は、絶縁基板2の端面の断面を模式的に表わしたものである。図2(a)は、算術平均粗さRaが大きい場合を示し、図2(b)は、算術平均粗さRaが小さい場合を示す。
まず、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaが、絶縁抵抗値に影響を与えるメカニズムについて推定される部分も含めて説明する。
大気中の水分(水蒸気)は、純粋に水だけではなく、有機物や硫黄化合物などを溶解した状態で取り込んでいる。大気中の水分が、絶縁基板2の端面に吸着すると、吸着した水分は、周囲の温度の上昇、湿度の低下に伴って、端面から離脱する。水分は離脱するが、吸着した水分に含まれていた有機物や硫黄化合物などは、そのまま端面に残留することになる。
端面に残留した有機物、硫黄化合物などは、アルミナよりも絶縁抵抗が低いため、残留物が付着した状態の絶縁基板2の絶縁抵抗値は、残留物に影響を受けて低くなる。
そして、絶縁抵抗に影響を与える残留物の量は、端面の表面粗さに依存する。図2(a)の模式図に示すように、表面粗さが大きければ、端面に付着する付着物5の量が多くなるうえに、洗浄によっても十分に除去できず、残留物の量が多くなる。その結果、端面の表面粗さが大きいと絶縁抵抗値が低くなる。特に、長期間大気中に放置すると、温度および湿度が一定でも、付着量が多くなって、さらに絶縁抵抗値が低下することになる。図2(b)の模式図に示すように、表面粗さが小さければ、端面に付着する付着物5の量が少なくなり、洗浄によっても十分に除去できるので、残留物の量が少なくなる。その結果、端面の表面粗さが小さいと絶縁抵抗値が高くなる。
したがって、高精度検査に用いられるプローバ用チャック1としては、絶縁基板2の絶縁抵抗値を高くすることが好ましい。絶縁基板2の絶縁抵抗値を高くするためには、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaを小さくすることが好ましく、たとえば、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaが、絶縁基板2の一方主面および他方主面の算術平均粗さRaよりも小さくすることが好ましい。
一方主面および他方主面の算術平均粗さRaは、アンカー効果によって第1導電層3および第2導電層4の接合強度を大きくするために、大きくすることが好ましく、絶縁抵抗値を高くするために端面の算術平均粗さRaは小さくすることが好ましい。
以下では、絶縁基板2を構成するセラミックス材料としてアルミナを主成分として用いた場合を例に説明する。
アルミナは、上記のように総じて各特性が良好であり、プローバ用チャック1の絶縁基板2を構成する材料としてよく用いられる。
アルミナを主成分とする絶縁基板2において、端面の算術平均粗さRaを、絶縁基板2の一方主面および他方主面の算術平均粗さRaよりも小さくする。端面の算術平均粗さRaとしては、0.7μm以下とし、一方主面および他方主面の算術平均粗さRaとしては、0.7μmよりも大きくする。
検査時には、たとえば、第1導電層3に接触するように半導体基板を載置し、第2導電層4を接地し、第1導電層3に所定の電圧を印加して使用する。絶縁基板2の絶縁抵抗は、このような使用状態を再現して測定する。第1導電層3に所定に電圧を印加した初期の段階では安定しないため、一定の時間(たとえば12時間)が経過したのちの値を絶縁抵抗の測定値とする。
絶縁基板2としてのアルミナ基板に第1導電層3および第2導電層4を形成し、絶縁抵抗値を測定したところ、端面の算術平均粗さRaが0.7μm以下であれば絶縁抵抗値が1.0×1014Ω程度となり、リーク電流を小さく抑えて高精度検査が可能なプローバ用チャック1となる。
絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaの調整は、研磨に使用する砥石を適宜取り替えることで可能となる。絶縁基板2の端面を研磨するための砥石は、アルミニウム製基体にダイヤモンド製砥粒を分散させた樹脂層を設けている。ダイヤモンド製の砥粒の粒径を適宜変更することで、研磨後の絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaを所望の値に調整することができる。
算術平均粗さRaを0.2μmとするには、たとえば、砥粒径が140〜170μmである番手#140の砥石で絶縁基板2の端面を研磨し、ついで砥粒径が25μm〜35μmである番手#600の砥石で前記端面を研磨し、最後に砥粒径が5〜10μmである番手#2000の砥石で前記端面を研磨すればよい。同様に、算術平均粗さRaを0.5μmとするには、番手#140の砥石、番手#600の砥石で順次絶縁基板2の端面を研磨した後、砥粒径が11〜20μmである番手#1200の砥石で端面を研磨すればよい。また、算術平均粗さRaを0.7μmとするには、番手#140の砥石、番手#600の砥石で順次絶縁基板2の端面を研磨した後、砥粒径が18〜25μmである番手#800の砥石を用いればよい。また、算術平均粗さRaを1.5μmとするには、番手#140で絶縁基板2の端面を研磨した後、番手#600の砥石を用いる。
絶縁基板2の端面の研磨は、公知の研磨方法で行うことができ、たとえば、円筒研削機などを用いることができる。
さらに、絶縁基板2は、複数の空隙が存在し、この空隙が絶縁抵抗値に影響を与えることも明らかとなった。この空隙(ボイド)は、絶縁基板2の製造時の諸条件によって増減する。たとえば、成形時にかける圧力(成形圧力)を高くすればボイドの量が減少して絶縁抵抗を高くすることができる。さらに、熱間静水圧成形(Hot Isostatic Pressing, 以下、「HIP」という。)を行うことでさらに絶縁抵抗を高くすることも可能である。
ボイド量は、絶縁基板2の任意の断面において、ボイドが占める面積の割合であるボイド率によって評価する。ボイドは、空隙であるため、ある断面において、ボイド部分は凹部となって現れる。したがって、ある断面の測定領域において、凹部の開口面積を計測し、測定領域の全体面積に対する開口面積の和の比を百分率で表したものがボイド率である。
ボイド率の測定方法は、まず絶縁基板を任意の断面で切断し、その切断面を鏡面研磨する。そして該鏡面研磨した切断面で凹部の開口面積を計測し、切断面の全体面積に対する開口面積の比率からボイド率を算出する。
なお、鏡面研磨は、ボイド部分の凹部を視認できる程度に行う。たとえば、鏡面研磨は、1次研磨、2次研磨および3次研磨の工程を経て行われる。1次研磨では、平板状の粗仕上げ用砥石を用いる。ここで用いる砥石は、平均粒径45μmのダイヤモンド砥粒が、樹脂に分散した状態で固定されたものである。2次研磨では、銅製の定盤を用いて2次研磨する。平均粒径3μmのダイヤモンド製砥粒および水性の研磨液を、定盤と絶縁基板の前記切断面との間に介在させた状態で切断面を定盤に押し当て、定盤と絶縁基板とを摺動させて研磨する。研磨時間は、たとえば1時間である。3次研磨では、錫製の定盤を用いて3次研磨する。平均粒径1μmのダイヤモンド製砥粒および水性の研磨液を、定盤と絶縁基板との間に介在させた状態で試験片を定盤に押し当て、定盤と絶縁基板とを摺動させて研磨する。研磨時間は、たとえば1時間である。
このように評価したボイド率は、0.9%以下とすることが好ましい。ボイド率を0.9%以下とすることで、絶縁抵抗を高くできるとともに、より短時間で絶縁抵抗を安定化させることができる。
図3は、プローバ用チャック1を備える検査装置10の構成を示す概略図である。
検査装置10は、プローバ用チャック1と、XYZθステージ11と、プローバ12と、制御部13と、電圧印加部14と備え、プローバ用チャック1の表面に保持した半導体基板15の各種検査を行う。
XYZθステージ(以下では単に「ステージ」ともいう)11は、上部にプローバ用チャック1を固定し、プローバ用チャック1を水平方向(X−Y方向)、鉛直方向(Z方向)に移動させるとともに、プローバ用チャック1を水平面内の回転方向θで回転させる。プローバ用チャック1は、半導体基板15を保持するので、プローバ用チャック1を移動、回転させることで、半導体基板15を移動、回転させ、半導体基板15の検査に必要な姿勢に変更することができる。
プローバ12は、半導体基板15が有する半導体素子の入出力端子に当接するプローブ12aを複数備え、制御部13からの指示に応じて半導体素子に対して検査用の電気信号を供給する。
制御部13は、たとえば情報処理装置などからなり、予め記憶されたプログラムに応じて、半導体素子に対して検査用の電気信号を供給するとともに、半導体素子から出力される電気信号を解析して半導体素子が良品か不良品かを判断する。判断結果は、さらに他の情報処理装置や表示装置に出力してもよい。
電圧印加部14は、プローバ用チャック1の第1の導電層3と第2の導電層4との間に電圧を印加する。本実施形態では、第2導電層4は接地されており、第1導電層3には直流電圧Vdcを印加する。
プローバ用チャック1は、第1導電層3が上部側になるようにステージ11に固定され、半導体基板15を、第1導電層3に接触するように保持する。
プローバ12は、プローブ12aが、予め定める半導体素子の端子に接触するように配置され、制御部13によって電気信号の供給および検出が行われる。このとき、プローバ用チャック1の第1導電層3と第2導電層4との間には、電圧印加部14によって直流電圧Vdcが印加される。
なお、プローバ用チャック1の絶縁抵抗値を安定させるために、プローバ12による電気信号供給よりも前に電圧印加部14によるプローバ用チャック1への電圧印加を所定時間行ってもよい。
絶縁抵抗を変えるためにプローバ用チャックの絶縁基板の材料などを変化させた場合、プローバ用チャックの特性が変化するために、検査装置の測定条件なども変更することが必要となってしまうが、本実施形態のプローバ用チャック1は、絶縁抵抗値以外の特性の変化を抑えることができるので、検査装置10の測定条件を変更する必要がなく、より高精度の検査を行うことが可能である。
図4は、プローバ用チャック1の製造方法を示す概略工程図である。
本実施形態の製造方法は、絶縁基板2を作製する作製工程S1と、絶縁基板2の絶縁抵抗値を調整するために、絶縁基板2の端面を研磨する研磨工程S2と、絶縁基板2の一方主面および他方主面にそれぞれ第1導電層3および第2導電層4を形成する形成工程S3とを有する。
作製工程S1は、従来公知のセラミックス基板の作製工程を適用することができる。原料としてセラミックス粉末を準備し、これを冷間静水圧成形(Cold Isostatic Pressing,以下、「CIP」という。)などで成形する。成形体を、原料セラミックスに応じた焼成温度で焼成する。焼成時にHIP処理、アニール処理などを施してもよい。ボイド率は、この作製工程S1の条件によって調整できる。焼成して得られた絶縁基板2は、必要に応じて寸法合わせなどのために研削処理を施してもよい。
研磨工程S2では、作製された絶縁基板2の端面を所望の算術平均粗さRaとなるように研磨処理する。
絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaと、プローバ用チャック1の絶縁抵抗値との相関関係は、予め測定結果などから決定しておき、絶縁基板2に求められるプローバ用チャック1の絶縁抵抗値に応じた算術平均粗さRaに端面を研磨する。端面研磨は、円筒研削機などを用い、算術平均粗さRaに予め対応付けられた砥石を用いて行う。
なお必要に応じて、絶縁基板2の少なくとも一方主面または他方主面にも研磨処理を施してもよい。このとき、一方主面および他方主面の算術平均粗さRaは、端面の算術平均粗さRaよりも大きくなるように研磨処理を行う。
研磨処理後は、酸洗浄、超音波洗浄、溶剤洗浄など必要に応じて洗浄を行ってもよい。
形成工程S3では、端面に研磨処理が施された絶縁基板2の一方主面および他方主面に、それぞれ第1導電層3および第2導電層4を形成する。第1導電層3および第2導電層4の形成は、スパッタリング、イオンプレーティング、めっきなどにより行うが、めっきは、めっき液に含まれる成分が、絶縁基板2の端面に残留して絶縁抵抗に影響を及ぼすこともあるため、スパッタリング、イオンプレーティングが好ましい。
図5は、本発明の他の実施形態であるプローバ用チャック1Aの構成を示す概略図である。図5(a)は断面図を示し、図5(b)は斜視図を示す。
本実施形態のプローバ用チャック1Aは、絶縁基板2と絶縁基板2の一方主面に形成された第1導電層3とを備え、前述のプローバ用チャック1とは、第2導電層4を備えていないことのみが異なっている。
上記のように、プローバ用チャックは、絶縁基板を挟む2つの導電層の間に電圧印加して使用するものである。プローバ用チャック1Aが、第2導電層4を備えていない代わりに、プローバ用チャック1Aを用いる検査装置では、載置台であるステージに、第3導電層が備えられている。プローバ用チャック1Aを使用する際には、絶縁基板2の他方主面、すなわち導電層が形成されていない側の主面がステージの第3導電層に当接するようにステージ上に載置する。したがって、機能的には第3導電層は、プローバ用チャック1の第2導電層4と同様の機能を発揮する。
第3導電層は、第2導電層4と同様の材料で形成されるが、絶縁基板2に形成されるものではないので、層の厚みなどは、ステージに合わせて適宜選択される。
第3導電層は、半導体素子を検査する際には、第2導電層4と同じく接地される。第3導電層が、検査装置のステージに設けられるので、絶縁基板2に設けるよりも接地電位をより安定させることができ、より高精度の検査を行うことができる。
図6は、本発明のさらに他の実施形態であるプローバ用チャック1Bの構成を示す概略図である。
本実施形態のプローバ用チャック1Bは、絶縁基板2の端面に部分的に形成され、第1導電層3と電気的に接続された給電用パターン層3aを備えている。給電用パターン層3aは、絶縁基板2の端面に1または複数設けられ、電源と接続することにより、第1導電層3に給電することができる。たとえば、電圧印加部14とこの給電用パターン層3aとが電気的に接続され、電圧印加部14によって第1導電層3に直流電圧Vdcが印加される。
給電用パターン層3aは矩形状に形成され、矩形のいずれか1辺が第1導電層3の外縁部に沿うように、第1導電層3に接続される。給電用パターン層3aは、第1導電層3と同一の工程で形成することが好ましい。図7は、給電用パターン層3aを形成する形成方法を示す模式図である。
予め作製した絶縁基板2の端面にヘリサートを挿入するための挿入孔6を設ける(図7(a))。挿入孔6は、絶縁基板2の成形時に予め形成してもよく、焼結後に研削加工してもよい。絶縁基板2の端面全体にマスクテープ9を貼り付け(図7(b))、給電用パターン層3aを形成したい部分のみマスクテープ9を除去する(図7(c))。ここでは、挿入孔6の開口を内側に含む矩形状の露出部分を設ける。なお、マスクテープ9は、例えばポリイミド樹脂によって形成される。
次に、たとえばスパッタリングにより絶縁基板2の露出部分にクロムからなる金属層を成膜する(図7(d))。絶縁基板2の一方主面は、マスクしていないので、クロム層が形成される。端面の露出部分にも一方主面と同様にクロム層が形成される。同様にしてクロム層の上にさらに金層を成膜する。金層はクロム層が形成された領域と同一の領域に形成される。これにより、絶縁基板2の一方主面には、クロム−金からなる第1導線層3が形成され、端面にはクロム−金からなる給電用パターン層3aが形成される(図7(e))。このとき、挿入孔6の開口はマスクテープ9によって閉塞しないので、挿入孔6の内壁面には、第1導線層3および給電用パターン層3aと同様のクロム−金層が、給電用パターン層3aと一体的に形成される。
図7(f)は、給電用パターン層3a周辺の断面図である。第1導線層3および給電用パターン層3aが形成されたのち、挿入孔6には、SUS等からなるヘリサート6aが挿入される。
実際に電圧印加部14と電気的に接続する場合、給電用パターン層3aに電圧印加部14に設けられた配線を直接接続しようとすると、はんだなどで接続する必要があるので、複数回使用することが難しい。そこで、容易に配線を着脱するために、給電用パターン層3aに接続用端子7を取付け、接続用端子7に配線を接続することが好ましい。
接続用端子7は、たとえば、SUS等からなり、厚みが0.2〜1.5mmの矩形板状部材を長手方向一端部で2回の90度曲げ加工を施したフック状の金属部材であるが、電圧印加部14または後述する抵抗計の測定端子と電気的に接続可能であればよく、材質および形状などはこれらに限定されない。詳細には、端面の接線方向に延びる当接部分7aと、当接部分7aに平行で、当接部分7aと間隔を空けて設けられる曲げ部分7bと、当接部分7aおよび曲げ部分7bのそれぞれの端部にわたって設けられる接合部分7cとからなる。当接部分7aには、挿入孔6に対応する箇所に貫通孔が形成される。当接部分7aを給電用パターン層3に当接させた状態で、当接部分7aの貫通孔にSUSまたはチタン等からなるボルト8を挿入し、ヘリサート6aに螺嵌して、接続用端子7を絶縁基板2に締結固定する(図7(g))。
接続用端子7は、当接部分7aが給電用パターン層3aに当接することで、給電用パターン層3aと電気的に接続するとともに、ボルト8、ヘリサート6aおよび挿入孔6の内壁面に形成されたクロム−金層を介して給電用パターン層3aに電気的に接続される。
なお、給電用パターン層3aは、1または複数設けることができ、検査装置の仕様、検査方法などによって給電する位置および数が適宜変更することができるように、予め複数の給電用パターン層3aを設けておくことが好ましい。また、上記では第1導電層3に電気的に接続され、第1導電層3に給電するための給電用パターン層3aについて説明したが、第2導電層4に電気的に接続され、第2導電層4に給電するための給電用パターン層を設けてもよい。第2導電層4に接続する給電用パターン層は、第1導電層3に接続する給電用パターン層3aと同様に構成される。
また、プローバ用チャックに求められる電気的特性として第1導電層3、第2導電層4の導体抵抗の低減がある。第1導電層3、第2導電層4をそれぞれ独立した導体層としたときに、第1導電層3、第2導電層4それぞれの導体抵抗が低いほうがプローバ用チャックの電気的特性として好ましい。
上記のように、半導体素子を検査する際には、第1導電層3に電圧印加するために電圧印加部14と接続用端子7とを接続する。プローバ用チャックに求められる電気的特性は、実際に半導体素子の検査を行うときの電気特性であるから、接続用端子7を用いた場合の導体抵抗を低減させる必要がある。
プローバ用チャック1Bのように、接続用端子7を接続するための給電用パターン層3aが設けられている場合、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaを小さくすれば、第1導電層3の導体抵抗を低くすることができる。
たとえば、第1導電層3および給電用パターン層3aが、クロム−金からなる場合、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaが1.6μm未満の場合に、第1導電層3の導体抵抗を低減することができ、好ましくは算術平均粗さRaが1.0μm以下である。
このように、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaが第1導電層3の導体抵抗に影響を及ぼすのは、接続用端子7と給電用パターン層3aとの接触抵抗が、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaによって影響を受けるからであると考えられる。
図8は、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaが、導体抵抗値に影響を与えることを説明するための模式図である。図8は、給電用パターン層3aが設けられた絶縁基板2の端面において、主面に平行に切断した時の断面を模式的に表わしたものである。図8(a)は、算術平均粗さRaが大きい場合を示し、図8(b)は、算術平均粗さRaが小さい場合を示す。
図8(a)に示すように、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaが大きいと、給電用パターン層3aの表面状態に、この端面の表面粗さが反映され、給電用パターン層3aの表面粗さも大きくなる。表面粗さが大きな給電用パターン層3aに、接続用端子7を接続した場合、給電用パターン層3aの凸部分が接続用端子7の当接部分7aと接触するため、十分な接触面積が得られず、接続用端子7と給電用パターン層3aとの接触抵抗が高くなってしまう。これにより、接続用端子7および給電用パターン層3aを含めた第1導電層3の導体抵抗が高くなる。図8(b)に示すように、給電用パターン層3aの表面粗さを小さくすると、給電用パターン層3aと接続用端子7の当接部分7aとの接触面積が広くなり接触抵抗を低くすることができる。これにより、接続用端子7および給電用パターン層3aを含めた第1導電層3の導体抵抗を低減できる。
なお、第2導電層4についても、第2導電層4に給電するための給電用パターン層が設けられ、接続用端子を使用する場合には、第1導電層3と同様に、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaを小さくすれば、第2導電層4の導体抵抗を低くすることができる。
また、第1導電層3、第2導電層4それぞれの導体抵抗について、特にクロムを下地層としたクロム−ニッケル、クロム−金などの構成では、クロムの層厚みを小さくすれば、第1導電層3、第2導電層4それぞれの導体抵抗を低くすることができる。
プローバ用チャックを用いて半導体素子を検査するときの検査条件として、たとえば300℃程度に加熱して検査する場合がある。特にこのような高温条件下では、第1導電層3、第2導電層4の導体抵抗が上昇する傾向があり、クロムの層厚みを小さくすることで、導体抵抗の上昇を抑えることができる。
クロムの層厚みを0.4μm以下とすることで、第1導電層3、第2導電層4の導体抵抗の上昇を抑えることができる。
本発明のさらに他の実施形態として、絶縁基板2の外周縁部を面取り加工(C面加工)したものがある。図9は、絶縁基板2の外周縁部2aを示す断面図である。図9は、絶縁基板2を主面に直交するように切断したときの断面図である。給電用パターン層3aを設ける場合に、第1導電層3と給電用パターン層3aとの接続部分は、絶縁基板2の外周縁部であり、外周縁部は端面と主面との成す角度が約90度の角部となっている。イオンプレーティングなどにより第1導電層3および給電用パターン層3aを設けた場合に、角部を被覆する接続部分の層厚みが薄くなり、亀裂が生じたり、剥がれが生じる場合がある。亀裂などが生じると、接続部分の導体抵抗が大きくなり、結果的に第1導電層3の導体抵抗が大きくなってしまう。絶縁基板2の外周縁部2aの角部を面取りすることで、面取り部分と、端面および主面との成す角度が鈍角となるので、接続部分における亀裂など抵抗を上昇させる不具合の発生を防止できる。
面取り加工は、たとえば、焼成後の絶縁基板2に対して切削により行うことができる。また、面取り部分の算術平均粗さRaは、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaよりも大きいことが好ましい。そうすることにより、第1導電層3と給電用パターン層3aとの接続部分と面取り部分との接着強度を高めることができる。また、面取り部分の算術平均粗さRaは、絶縁基板2の主面の算術平均粗さRaと同等であることが好ましく、たとえば主面のRaに対して±10%の範囲内となることが好ましい。そうすることにより、第1導電層3と給電用パターン層3aとの接続部分における導体抵抗を第1導電層3と同等にすることができる。
<絶縁抵抗>
以下では、実際にアルミナ基板を絶縁基板2としてプローバ用チャック1を作製し、端面の算術平均粗さRaと絶縁抵抗値との関係、ボイド率と絶縁抵抗値との関係について測定した。算術平均粗さRaは、JIS B 0651:2001に準拠し、触針式表面粗さ計を用いて測定した。
アルミナは、純度99.7%の高純度アルミナを使用し、CIPにより成形体を得た。成形体を焼成温度1600度で焼成し、絶縁基板2を得た。必要に応じてHIP処理およびアニール処理を行った。第1導電層3および第2導電層4は、イオンプレーティングによって、厚み0.1〜0.2μmのクロム層の上に、厚み1.0〜2.0μmのニッケル層を形成した。
円筒研削機(三宝精機工業株式会社製、studer S30−12)を用いて、絶縁基板2を100rpmの回転速度で回転させながら、砥石で絶縁基板2の端面研磨を行った。用いた砥石の番手を適宜変更することで所望の算術平均粗さRaを得た。
絶縁抵抗値の測定は、図10に示すような測定方法によって測定した。接地したシールドボックス100の内部にPID温度制御ヒータ101を設け、ヒータ上にアルミナ製絶縁板102を載置し、その上にプローバ用チャック1を、第1導電性3が上部側になるように設置する。
温度計103は、絶縁板102とプローバ用チャック1との境界部分に検出プローブを配置して、温度変化を検出した。湿度計104により、シールドボックス100の内部の湿度を測定した。
測定時には、シールドボックス100の内部は、N2ガスの導入により窒素雰囲気とした。抵抗測定器105は、第1導電層3に250Vの直流電圧を印加し、第2導電層4のリーク電流の経時変化を測定することで、電圧値と電流値からオームの法則により絶縁抵抗値を算出した。
まず、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaを0.2μm(実施例1)、0.5μm(実施例2)、0.7μm(実施例3)、1.0μm(実施例4)、1.5μm(実施例5)としたプローバ用チャック1を作製し、直流電圧の電圧印加時間と絶縁抵抗値との関係を測定した。なお、絶縁基板2の一方主面および他方主面の算術平均粗さRaは、0.8μmとし、ボイド率は、0.8%とした。
図11は、算術平均粗さRaを変化させたときの電圧印加時間と絶縁抵抗値との関係を示すグラフである。横軸は、電圧印加時間[hr]を示し、縦軸は、絶縁抵抗値[Ω]を示す。
算術平均粗さRaが0.2μm(実施例1)の測定結果を「□」のプロットで示し、算術平均粗さRaが0.5μm(実施例2)の測定結果を「◇」のプロットで示し、算術平均粗さRaが0.7μm(実施例3)の測定結果を「△」のプロットで示し、算術平均粗さRaを1.0μm(実施例4)の測定結果を「×」のプロットで示し、算術平均粗さRaを1.5μm(実施例5)の測定結果を「*」のプロットで示す。
また、測定値について表1に示す。
グラフから、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaを小さくすると、絶縁抵抗値が大きくなることがわかる。半導体基板用の検査装置にプローバ用チャックを用いることを想定すると、絶縁抵抗値としては5×1013Ω程度の絶縁抵抗値が要求されるので、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaは0.7μm以下とすることが好ましい。また絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaが0.5μm以下の場合であれば、算術平均粗さRaが0.7μmの場合と比較して、絶縁抵抗値が約10倍以上の値となっており、顕著に絶縁抵抗値が高くなっているため、より好ましい。
次に、HIP処理せずにボイド率を0.8%(実施例6)、0.9%(実施例7)、1.5%(実施例8)としたプローバ用チャック1およびHIP処理(1550℃、195MPa)によりボイド率を0.1%未満とし、アニール処理の処理温度を1400℃(実施例9)、1500℃(実施例10)としたプローバ用チャック1を作製し、直流電圧の電圧印加時間と絶縁抵抗値との関係を測定した。なお、端面の表面粗さRaは、全て0.5μmとした。
ボイド率は、抵抗測定が終了したものからボイド率測定用サンプル(10mm×10mm×5mm)を切り出し、鏡面加工した。これを画像解析装置(三谷商事株式会社製、WIN LOOF ver.5.7)を用いて、ボイドによる開口面積を測定し、解析対象の領域の面積に対する開口面積の和の割合を百分率で表した。
図12は、ボイド率を変化させたときの電圧印加時間と絶縁抵抗値との関係を示すグラフである。横軸は、電圧印加時間[hr]を示し、縦軸は、絶縁抵抗値[Ω]を示す。
ボイド率が1.5%(実施例8)の測定結果を「□」のプロットで示し、ボイド率が0.9%(実施例7)の測定結果を「◇」のプロットで示し、ボイド率が0.8%(実施例6)の測定結果を「△」のプロットで示し、ボイド率が0.1%未満、アニール処理温度1400℃(実施例9)の測定結果を「○」のプロットで示し、ボイド率が0.1%未満、アニール処理温度1500℃(実施例10)の測定結果を「×」のプロットで示す。
また、測定値について表2に示す。
グラフからわかるように、端面の算術平均粗さRaが0.5μmの場合であるため、ボイド率の大小に関わらず、5×1013以上の高い絶縁抵抗値を維持している。また、ボイド率が0.9%以下の場合、約1×1015の絶縁抵抗値を達成できており、特に好ましい。
<導体抵抗>
以下では、実際にアルミナ基板を絶縁基板2としてプローバ用チャック1Bを作製し、端面の算術平均粗さRaと導体抵抗値との関係、クロムの層厚みと導体抵抗値との関係について測定した。算術平均粗さRaは、上記と同様に、JIS B 0651:2001に準拠し、触針式表面粗さ計を用いて測定した。
アルミナは、純度99.7%の高純度アルミナを使用し、CIPにより成形体を得た。成形体を焼成温度1600度で焼成し、絶縁基板2を得た。必要に応じてHIP処理およびアニール処理を行った。
算術平均粗さRaは、上記と同様に円筒研削機(三宝精機工業株式会社製、studer S30−12)を用い、砥石の番手を適宜変更することで所望の算術平均粗さRaを得た。
導体抵抗値の測定は、図13に示すような測定方法によって測定した。測定装置としては、抵抗計(日置電機株式会社製、ミリオームハイテスタ―3540)200を用いた。プローバ用チャック1Bは、給電用パターン層3aを、絶縁基板2の中心を挟んだ両側にそれぞれ設け、各給電用パターン層3aには接続用端子7を接続した。
また、第1導電層の複数箇所において導体抵抗を測定するために、抵抗計200の一方の測定端子(クリップ式)を一方の接続端子7に接続し、他方の測定端子を接触式のスプリングプローブ201に接続した。さらにスプリングプローブ201を、第1導電層3の表面に沿って一方向に移動可能となるようスライド装置202を設けた。
スライド装置202によって、スプリングプローブ201を、プローバ用チャック1Bの直径に沿って一方の接続端子から他方の接続端子までの間を移動させ、予め定める複数の測定位置にスプリングプローブ201を接触させる。このとき、抵抗計200では、一方の接続端子7からスプリングプローブ201の接触点までの導体抵抗が測定される。
まず、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaを変化させたときの第1導電層3の導体抵抗値を測定した。
絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaを0.2μm(実施例11)、0.5μm(実施例12)、0.8μm(実施例13)、1.0μm(実施例14)、1.6μm(実施例15)としたプローバ用チャック1Bを作製し、2つの接続端子7間の導通抵抗値を測定した。
なお、絶縁基板2の一方主面および他方主面の算術平均粗さRaは、0.5μmとし、ボイド率は、0.9%とした。第1導電層3および給電用パターン層3aは、層厚みが0.1〜0.2μmのクロム層上に層厚みが1.5μmの金層を形成した。
測定結果を表3に示す。
表1に示すように、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaを小さくすると、導体抵抗値が小さくなることがわかる。算術平均粗さRaが0.2μmから1.0μmまでは、算術平均粗さRaの増加に伴って緩やかに導体抵抗値が上昇しているが、算術平均粗さRaが1.6μmになると導体抵抗値が急激に上昇した。絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaを1.6μm未満とすることが好ましく、より好ましくは算術平均粗さRaが1.0μm以下とする。
次に、クロム層の層厚みを変化させたときの第1導電層3の導体抵抗値を測定した。
クロム層の層厚みを0.1μm(実施例16)、0.4μm(実施例17)、0.5μm(実施例18)、2.0μm(実施例19)としたプローバ用チャック1Bを作製し、第1導電層3の複数の測定値における導通抵抗値を測定した。クロム層上に形成した金層の層厚みは、実施例16〜19いずれも1.5μmとした。
なお、絶縁基板2の端面の算術平均粗さRaは、0.4μmとし、一方主面および他方主面の算術平均粗さRaは、0.4μmとし、ボイド率は、0.9%とした。
導通抵抗値は、常温条件下と加熱条件下でそれぞれ測定した。加熱条件は、300℃の雰囲気中にプローバ用チャック1Bを24時間静置した。
図14は、クロム層の層厚みを変化させたときの導体抵抗値の変化を示すグラフである。横軸は、測定位置[−]を示し、縦軸は、導体抵抗値[Ω]を示す。スプリングプローブ201を接触させる測定位置には、プローバ用チャック1Bに接続された一方の接続用端子7から近い順に1〜10の番号を付し、一方の接続用端子7から最も離れた測定位置を10とした。さらに、他方側の接続用端子7にスプリングプローブ201を接触させたときの導体抵抗値も測定した。
クロム層の層厚みが0.1μm(実施例16)の測定結果を「○」のプロットで示し、クロム層の層厚みが0.4μm(実施例17)の測定結果を「△」のプロットで示し、クロム層の層厚みが0.5μm(実施例18)の測定結果を「×」のプロットで示し、クロム層の層厚みが2.0μm(実施例19)の測定結果を「□」のプロットで示す。
常温条件下での測定結果を破線の折れ線で表わし、加熱条件下での測定結果を実線の折れ線で示す。
また、測定値について表4に示す。
グラフから、測定位置の番号が大きくなるほど、すなわち一方の接続用端子からの距離が離れるほど導体抵抗値が大きくなることが確認できた。このような条件下で、クロム層の層厚みを小さくすると、導体抵抗値が小さくなることがわかる。また、クロム層の層厚みが0.5μm以上になると常温条件下に比べて加熱条件下での導体抵抗値の上昇が顕著となった。このことから、クロム層の層厚みは0.4μm以下とすることが好ましい。
クロム層は、たとえば空気中で酸化されやすいため、クロムが金層に拡散して酸化クロムに変性することで導体抵抗が上昇する。したがって、クロム層の厚みが大きいと酸化による導体抵抗の上昇による影響をより強く受けるために、クロム層の層厚みが大きいほど第2導電層3の導体抵抗値が大きくなったものと考えられる。また、加熱条件下では、クロムの酸化がより促進されるので、導体抵抗の上昇がより顕著となる。