本発明の偏波回転回路の一態様では、偏波変換回路における導波路を、その断面形状が凸型となっているリブ構造とすることで、導波路構造の非対称性を生み出している。さらにリブ構造の中央コア部分の導波路幅を非常に狭くすることによって、光波の強度が中央コア部分だけに集中せず、より構造的な非対称性の影響を受け易い構成としている。この構成により、窒化シリコン層等を形成することなく、シリコン導波路だけの構造でありながら、効率よく偏波変換を生じさせることができる。
すなわち、本発明の偏波回転回路は、中央部コアと、前記中央部コアよりも薄い周辺部コアとから成り、前記周辺部コアのコア幅が徐々に拡大するテーパ形状を有するリブ型シリコン導波路によって構成され、TM偏波の基底モード光をTE偏波の1次モード光に変換する偏波変換回路と、前記偏波変換回路に光学的に接続し、TE偏波の1次モード光をTE偏波の基底モード光に変換するモード変換回路とを備える。以下、本発明の偏波回転回路の様々な実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る偏波回転回路について説明する。本実施形態は、本発明の偏波回転回路の基本的な構成を示すものであり、チャネル型導波路の入出力導波路を持つ構成例である。
図1は、本発明の偏波回転回路の第1の実施形態の構成を示す図であり、デバイス上の回路構成面を見た図である。以下、本発明を説明する各図では、各導波路および領域の境界を明示的な点線(光の進行方向に垂直な区画)によって分けて描いているが、各部の機能ごとに便宜的に区画が描かれているのであって、構成材料の不連続や実際に境界線があるわけではないことに留意されたい。偏波回転の主な動作は、偏波変換回路104およびモード変換回路113によって行われる。図上左端の入出力導波路101から入力したTM偏波の基底モード光111を、本発明の偏波変換回路によってTE偏波の1次モード光112に変換して右端の入出力導波路110より出力する。偏波変換回路は比較的コアの厚い中央部と、比較的コアの薄い周辺部から成るリブ型シリコン導波路104で形成され、周辺部のコア幅は幅がw1からw2まで広がるテーパ導波路104になっている。
モード変換回路113は、中央部の無いリブ型シリコン導波路106、107で形成され、幅の異なる2つの導波路から成る非対称方向性結合器となっている。モード変換回路113は、一方のリブ型シリコン導波路106へ図1上の左側から入力したTE偏波の1次モード光を、TE偏波の基底モード光に変換して、他方のリブ型シリコン導波路107の右側から出力する。したがって、モード変換回路は、異なる幅の2つの導波路から成る非対称方向性結合器で構成され、前記異なる幅の2つの導波路は、中央部の無いリブ型シリコン導波路であって、前記異なる幅の2つの導波路の内の幅の広い導波路の一端が、前記偏波変換回路に光学的に接続されている。
偏波変換回路104とリブ型シリコン導波路106の間には、中間導波路105を備える。中間導波路105は、中央部のないリブ型シリコン導波路で形成され、偏波変換回路104およびリブ型シリコン導波路106を滑らかに接続するテーパ導波路になっている。偏波回転回路全体の両端には、入出力導波路101、110が備えられ、矩形のコアから成るチャネル型導波路で形成されている。入出力導波路101および偏波変換回路104の間、および、入出力導波路110およびリブ型シリコン導波路107の間には、リブ型−チャネル型変換導波路102、103およびリブ型−チャネル型変換導波路108、109をそれぞれ備える。
それぞれのリブ型−チャネル型変換導波路は、チャネル型からリブ型に導波路構造を変換する部分102、109と、リブ型導波路の中央部のコア幅を変化させる部分103、108から構成されている。これらリブ型−チャネル型変換導波路は、偏波回転の機能には直接寄与しないが、前後に接続される導波路の構造不連続性を解消し、光過剰損失を抑制する効果があり、設置されることが好ましい。特に、リブ型導波路の中央部のコア幅を変化させる部分103、108は、伝搬する光波の強度が集中している中央のコア部分の不連続性を小さくするため、光過剰損失を抑制する効果も高い。
偏波変換回路104の長さは100μm、中央部のコア幅は0.15μm、周辺部のコア幅はw1=0.9μm、w2=1.8μmである。
モード変換回路である非対称方向性結合器113を形成する導波路106は幅が2.0μm、導波路107は幅が0.8μmである。両導波路の長さはともに50μmである、2つの導波路間のギャップは0.4μmである。
中間導波路105の長さは15μmである。入出力導波路101、110の幅はそれぞれ0.5μmである。リブ型−チャネル型変換導波路102、103においては、導波路102の長さは50μm、中央部のコア幅は0.5μm、周辺部のコア幅は0.5μmから0.9μmに変化させている。また、導波路103の長さは200μm、中央部のコア幅は0.5μmから0.15μmに変化させており、周辺部のコア幅は0.9μmである。またリブ型−チャネル型変換導波路108、109においては、導波路108の長さは200μm、中央部のコア幅は0.15μmから0.5μmに変化させており、周辺部のコア幅は0.8μmである。導波路109の長さは50μm、中央部のコア幅は0.8μm、周辺部のコア幅は0.8μmから0.5μmに変化させている。
図2は、図1の上面図における入出力導波路上のA−A´線の断面の構造を示す図である。シリコン基板123の上には、石英ガラスで形成されている下部クラッド122が備えられている。下部クラッド122の上には、シリコンで形成されているチャネル型導波路のコア101が作成される。さらに、コア101を覆うように、石英ガラスで形成されている上部クラッド121が備えられる。導波路101のコア厚さは0.22μm、上部クラッド121の厚さは1.5μm、下部クラッド122の厚さは2μmである。特に示さないが、図1の上面図における入出力導波路110上のD−D´断面の回路構造も、図2に示したA−A´断面の構造と全く同様である。
図3は、図1の上面図における偏波変換回路上のB−B´線の断面の構造を示す図である。シリコン基板133の上には、石英ガラスで形成されている下部クラッド132が備えられている。下部クラッド122の上には、シリコンで形成されたリブ型導波路の中央部コア104aおよび周辺部コア104b、104cが作成される。さらに、各コアを覆うように、石英ガラスで形成されている上部クラッド131が備えられる。中央部104aのコア厚さは0.22μm、周辺部104b、104cのコア厚さは0.06μm、上部クラッド131の厚さは1.5μm、下部クラッド132の厚さは2μmである。
図4は、図1の上面図におけるモード変換回路上のC−C´線の断面の構造を示す図である。シリコン基板143の上には、石英ガラスで形成されている下部クラッド142が備えられている。下部クラッド142の上には、シリコンで形成された中央部の無いリブ型導波路のコア106、107が作成される。さらに、両コアを覆うように、石英ガラスで形成されている上部クラッド141が備えられる。導波路106、107のコア厚さは0.06μm、上部クラッド141の厚さは1.5μm、下部クラッド142の厚さは2μmである。
前述のように、偏波回転回路において伝搬する光波に対して偏波変換を生じさせるには、導波路に非対称性を持たせることが必要である。本発明における偏波変換回路104は、導波路を、その断面形状が凸型となっているリブ構造にすることで、基本的に非対称性を生み出している。ただし、通常のリブ導波路は、中央コア部分の幅が0.5μm程度であり、この中央コア部分に光波の強度が集中するような構造となっている。このため、周辺の薄いコアを備えることだけでは殆ど非対称性が得られず、ある程度の偏波変換を生じさせることができても、偏波変換の効率が良くない。
本発明の偏波回転回路では、さらに中央コア部分の導波路幅を0.15μm程度まで狭くすることによって、光波の強度が中央コア部分だけに集中せず、より構造的な非対称性の影響を受け易いようにしている。この構成により、窒化シリコン層等を形成することなく、シリコン導波路だけの構造でありながら、効率良く偏波変換を生じさせることができる。
本実施形態では、偏波変換回路104およびリブ型−チャネル型変換導波路102、103を、それぞれの機能を担う回路として別個に設けている。偏波変換および導波路構造の変換の2つの機能は、中央コア部分の幅と周辺部コアの幅と同時に変化させるテーパ構造によって、同時に実現することも可能である。しかしながら、1つのテーパ構造によって実現しようとする場合、偏波変換を効率的に生じさせる中央コア部分の幅の変化量と周辺部コアの幅の変化量は限られた設計条件となる。デバイスの作製誤差による±0.05μm程度のコア幅のずれによって大幅に変換効率が劣化する可能性がある。一方、本発明の構造による偏波変換回路104では、中央コア部分または周辺部コアの幅が±0.05μm程度変化しても同一の特性を得ることができる。したがって、デバイス作製時により高いトレランスを持つ(許容誤差の大きい)構造として、偏波変換回路104と、リブ型−チャネル型変換導波路102、103とを独立して設けることが好ましい。
したがって、本発明は、TM偏波の基底モード光を入力する入出力導波路と、中央部コアと、前記中央部コアよりも薄い周辺部コアとから成り、前記周辺部コアのコア幅が徐々に拡大するテーパ形状を有するリブ型シリコン導波路によって構成され、TM偏波の基底モード光をTE偏波の1次モード光に変換する偏波変換回路と、前記入出力導波路および前記偏波変換回路との間に位置し、前記入出力導波路の導波路と、前記偏波変換回路の前記中央部コアのとの間でコア幅を連続的に変化させるコア幅変換導波路と、前記偏波変換回路に光学的に接続し、TE偏波の1次モード光をTE偏波の基底モード光に変換するモード変換回路とを備えたことを特徴とする偏波回転回路として実現できる。
図5は、本発明の第1の実施形態の偏波変換回路の動作を説明する図である。リブ型導波路の周辺部コア幅w(横軸)に対する、実効屈折率(縦軸)の計算結果である。計算のために使用した偏波変換回路の各部の材料および導波路の断面構造は、図3に示したB−B´断面のものと同様として、周辺部のコア幅wだけを変化させて実効屈折率を3つのモードまで算出している。周辺部のコア幅wは、図3の断面図において、周辺部コア104bの左側端から周辺部コア104cの右側端までの長さである。
ここで、四角プロットで示した第1モードは、周辺部のコア幅wによらずTE偏波の基底モードが保持されている。一方で、ひし形プロットで示した第2モードおよび三角プロットで示した第3モードは、周辺部のコア幅wの変化によってTE偏波成分およびTM偏波成分が混合した複合モードになっている。周辺部のコア幅wが0.8μm付近のときは、第2モードはほぼTM偏波の基底モードに、第3モードはほぼTE偏波の1次モードになっている。一方、周辺部のコア幅wが2.4μm付近のときは、第2モードはTM偏波の基底モードからほぼTE偏波の1次モードに、第3モードはTE偏波の1次モードからほぼTM偏波の基底モードに入れ替わる。
図6は、図5に示した本発明の偏波変換回路におけるTE偏波成分およびTM偏波成分の強度比を表した図である。図5に示した動作例の第2モードの計算結果から、リブ型導波路の周辺部コア幅w(横軸)に対する、TE偏波成分およびTM偏波成分の強度比(縦軸)を示している。図6から、周辺部コア104b、104cの幅wが増大するにつれて、TM偏波成分の強度比が減少し、一方で、TE偏波成分の強度比が増加し、2つの成分が入れ替わる様子がわかる。図1に示した偏波変換回路104は、狭い側のコア幅w1および広い側のコア幅w2が、図6で示した第2モードの偏波成分が入れ替わる領域をなるべく含むように設計される。具体的に本実施形態では、w1=0.9μm、w2=1.8μmである。図1において偏波変換回路104の左からTM偏波の基底モード光111を入力した場合、コア幅がw1からw2に徐々に拡大することによって、偏波変換回路104を伝搬する光波はTE偏波の1次モードに変換され、偏波変換回路104の右側から出力する。
モード変換回路である非対称方向性結合器113においては、一方の導波路106におけるTE偏波の1次モード実効屈折率と、他方の導波路107におけるTE偏波の基底モード実効屈折率がほぼ同じになるように、導波路106および導波路107それぞれのコア幅を設計している。これにより、一方の導波路106に入力されたTE偏波の1次モード光は、他方の導波路107のTE偏波の基底モードに結合し、TE偏波の基底モード光が導波路107から出力される。
本実施形態の偏波回転回路において、入出力導波路101から回路に入力されたTM偏波の基底モード光111は、リブ型−チャネル型変換導波路102、103を介して偏波変換回路104に入力し、TE偏波の1次モード光に変換される。偏波変換回路104からのTE偏波の1次モード光は、中間導波路105を介してモード変換回路である非対称方向性結合器の一方の導波路106に入力する。導波路106において、TE偏波の基底モード光に変換されて他方の導波路107から出力される。その後、リブ型−チャネル型変換導波路108、109を経由して、入出力導波路110からTE偏波の基底モード光112として出力される。本実施形態の偏波回転回路は相反的であり、入出力導波路110からTE偏波の基底モード光112が逆向きの入力された場合、上述の一連の経路とは逆の経路を経て、TM偏波の基底モード光111が入出力導波路101に出力される。
このように本実施形態の偏波回転回路は、従来技術の偏波回転回路と同様の機能を実現する。しかしながら、本発明の偏波回転回路は従来技術のように窒化シリコン層または窒化シリコンの構成部分を備える必要はなく、シリコン導波路のみで構成されており、窒化シリコン層等の付加的なプロセス工程を必要としない大きな利点がある。本実施形態の偏波回転回路に対しては、様々な変形を加えた構成を適用可能である。例えば次に述べるように、ノイズ光を減らし反射減衰量特性を改善する構成を付加することができる。
図1に示した偏波回転回路において、非対称方向性結合器113の一方導波路106の右側、および他方の導波路107の左側には導波路構造はなく、終端されている。設計上、入出力導波路101から光を入力した場合、伝搬する光はすべて一方の導波路106から他方の導波路107へ結合し、導波路106の右端に達することはない。逆に入出力導波路110から光を入力した場合も、伝搬する光はすべて一方の導波路107から他方の導波路106へ結合し、導波路107の左端に達することはない。しかしながら、実際の回路製造では導波路サイズ等がある程度設計からずれる。このため、伝搬光の一部は不要なノイズ光として導波路106の右端、または、導波路107の左端に達する可能性がある。
このような場合、導波路106の右端または導波路107の左端ではノイズ光が反射し、それぞれ、光が入力された入出力導波路101または入出力導波路110に戻っていく。結果として、偏波回転回路の反射減衰量特性が劣化する可能性がある。
上述の反射減衰量特性の劣化の問題を避けるためには、導波路106の右側端部、および、導波路107の左側端部の少なくとも一方に、さらに導波路構造ならびに光終端または放射の構造を付加するのが好ましい。
図7は、本発明の偏波回転回路に適用できる光放射の構造の一例を示した図である。図7では、図1に示した非対称方向性結合器113の2つの導波路106、107に付加される構成のみを描いてある。2つの導波路106、107端部には、中央部の無いリブ型シリコン導波路で形成されたテーパ導波路161、162が新たに付加される。ここでテーパ導波路161、162の長さはそれぞれ200μm、先端部のコア幅はそれぞれ0.15μmである。したがって、テーパ導波路の先端の形状は、導波路が途切れたかのようなものとなっている。導波路106、107から伝わるノイズ光は、それぞれ、テーパ導波路162、161に入力されて伝搬する。しかしながら、テーパ導波路161、162は先端に向かうにつれて光の閉じ込めが弱くなり、徐々に光を放射して減衰し、ノイズ光が反射して入出力導波路101、110まで戻ることはない。
したがって、上述の光放射の構造では、非対称方向性結合器の内の幅の広い導波路の一端および幅の狭い導波路の一端の少なくとも一方に、テーパ導波路が接続されており、前記テーパ導波路は徐々に幅が狭まり、先端が途切れていることになる。
本実施形態の偏波回転回路では、入出力導波路101からはTM偏波の基底モード光111が入力されることを前提としている。入出力導波路101からTE偏波の基底モード光が入力された場合、TE偏波の基底モード光は偏波変換回路104をTE偏波の基底モード光のまま伝搬する。さらに、モード変換回路113においては、伝搬光は導波路107にほとんど結合することなく、導波路106をTE偏波の基底モード光のまま伝搬する。したがって、図1においてモード変換回路113の内の導波路106の延長上に入出力導波路を新たに付加することよって、本発明の偏波回転回路は、偏波分離回路としても機能させることができる。
図8は、本発明の偏波回転回路に偏波分離機能を付加することができる導波路構造を示した図である。偏波分離機能を加えるために、図1に示したモード変換回路の非対称方向性結合器113の内の導波路106の右側に接続して付加する導波路構造を、図1の一部とともに示している。非対称方向性結合器113の導波路106の延長上には、中央部のないリブ型導波路で形成された中間導波路171、リブ型−チャネル型変換導波路172、173および入出力導波路174が順次接続されている。リブ型−チャネル型変換導波路は、リブ型導波路の中央部のコア幅を変化させる部分172およびチャネル型に導波路構造を変換する部分173から構成される。また、入出力導波路174は、矩形のコアから成るチャネル型導波路で形成されている。
より具体的には、中間導波路171は長さが15μmで、コア幅が2.0μmから1.2μmに変化するテーパ導波路である。リブ型−チャネル型変換導波路における導波路172は長さが200μmで、中央部のコア幅は0.15μmから0.5μmに変化し、周辺部のコア幅は1.2μmで一定である。リブ型−チャネル型変換導波路173は長さが50μmで、中央部のコア幅は0.5μmで一定であり、周辺部のコア幅は1.0μmから0.5μmに変化する。入出力導波路174のコア幅は0.5μmである。
図8に示した導波路構造が付加された本実施形態の偏波回転回路では、図1の入出力導波路101から入力されたTM偏波の基底モード光を、偏波変換回路およびモード変換回路を経て、TE偏波の基底モード光176に変換して入出力導波路110から出力する(偏波変換機能)。これと同時に、入出力導波路101から入力されたTE偏波の基底モード光は、偏波変換回路およびモード変換回路を経ても変換を受けずに、TE偏波の基底モード光175のままで入出力導波路174から出力する(偏波分離機能)。すなわち偏波回転回路の機能および偏波分離回路の機能を、同時に実現することができる。
本実施形態の回路は相反的であり、入出力導波路110から逆向きに入力したTE偏波の基底モード光176をTM偏波の基底モードに変換し、入出力導波路101に出力する。また、入出力導波路174から逆向きに入力したTE偏波の基底モード光175はそのまま、入出力導波路101に出力する。すなわち、偏波回転回路の機能および偏波合流回路の機能を同時に実現する。
以上詳細に述べたように、本発明の偏波変換回路によって、従来技術のように窒化シリコン層または窒化シリコンの構成部分を備える必要なしに、シリコン導波路のみで偏波変換回路を構成することができる。窒化シリコン層等の付加的なプロセス工程を必要としないため、製造時間の増大の問題や、製造装置の複雑化の問題を生じることもない。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る偏波回転回路について説明する。本実施形態の偏波回転回路の構造は、第1の実施形態とほぼ同様であるが、入出力導波路としてリブ型導波路を採用している点で相違している。本発明の偏波回転回路は、チャネル型導波路だけでなく、光信号の多様な入出力導波路の形態にも適応できる。
図9は、本発明の第2の実施形態の偏波回転回路の構成を示す図である。本実施形態の偏波回転回路において、コア幅を変化させるリブ型−チャネル型変換導波路103からコア幅を変化させるリブ型−チャネル型変換導波路108までの構成は、図1に示した構成と全く同一であり、説明は省略する。本実施形態に偏波回転回路では、入出力導波路181、184が、リブ型導波路によって形成されている。したがって、入出力導波路181およびリブ型−チャネル型変換導波路103の間に、リブ型導波路で形成された中間導波路182を備えている。同様に、入出力導波路184およびリブ型−チャネル型変換導波路108の間に、リブ型導波路で形成された中間導波路183を備えている。
入出力導波路181、184の中央のコア幅はそれぞれ0.5μmであり、周辺部のコア幅はそれぞれ2.5μmである。中間導波路182の長さは50μm、中央のコア幅は0.5μmであり、周辺部のコア幅は2.5μmから0.9μmに変化する。もう1つの中間導波路183の長さは50μm、中央のコア幅は0.5μmであり、周辺部のコア幅は0.8μmから2.5μmに変化する。導波路181〜導波路182、導波路183〜導波路184の中央部のコア厚さは0.22μm、周辺部のコア厚さは0.06μmである。
本実施形態の偏波回転回路において、入出力導波路181から回路に入力されたTM偏波の基底モード光185は、中間導波路182を介して偏波変換回路104に入力し、TE偏波の1次モード光に変換される。偏波変換回路104からの出力は、中間導波路105を介してモード変換回路113である非対称方向性結合器の導波路106に入力し、TE偏波の基底モード光に変換されて導波路107から出力される。変換された光は、中間導波路183を介して入出力導波路184からTE偏波の基底モード光186として出力される。本実施形態の偏波回転回路は相反的であり、入出力導波路184からTE偏波の基底モード光186が逆向きに入力された場合、上述の経路とは逆の経路を経て、TM偏波の基底モード光185が入出力導波路181に出力される。
上述のように本実施形態の偏波回転回路は、入出力導波路がリブ型導波路である場合に対応し、従来技術の偏波回転回路と同様の機能を実現する。本発明の偏波変換回路は、シリコン導波路のみで構成され、窒化シリコン層等の付加的なプロセス工程を必要としない。また本実施形態の偏波変換回路においても、第1の実施形態の図7において説明した反射減衰量特性の劣化防止構造や、第1の実施形態の図8において説明した偏波分離または合流回路の機能を同時に実現する構造を適用可能である。
上述の第1の実施形態および第2の実施形態におけるモード変換回路113では、リブ型導波路による非対称方向性結合器の設計パラメータについて特定の値を例として説明したが、本発明の偏波回転回路では、これらパラメータに限定されない。2つの導波路の幅は、導波路コアの厚さと、上部クラッド、および下部クラッドの各材料の屈折率によって条件が決まる。したがって、細い幅の導波路107におけるTE偏波の基底モードの実効屈折率と、太い幅の導波路106におけるTE偏波の1次モードの実効屈折率とが、近い値となるように、非対称方向性結合器の設計パラメータが設定されれば良い。
[第3の実施形態]
本発明の偏波回転回路のさらに別の第3の実施形態の構成および動作について説明する。本実施形態の偏波変換回路は、図1に示した第1の実施形態と比べて、モード変換回路の構成が大きく相違している。チャネル型導波路の入出力導波路および偏波変換を行う回路の部分の構成については、第1の実施形態と同様である。
図10は、本発明の第3の実施形態の偏波回転回路の構成を示す図である。デバイス上の回路構成面を見た図である。偏波回転の主な動作は、偏波変換回路204およびモード変換回路215によって行われる。図上の左端の入出力導波路201から入力したTM偏波の基底モード光213を、本発明の偏波変換回路によってTE偏波の1次モード光214に変換して右端の入出力導波路212より出力する。偏波変換回路204は、比較的コアの厚い中央部と、比較的コアの薄い周辺部から成るリブ型シリコン導波路で形成され、周辺部のコア幅がw1からw2まで徐々に広がるテーパ導波路になっている。第1および第2の実施形態と同様の構成である。
モード変換回路215は、リブ型シリコン導波路で形成された光スプリッタ206、リブ型−チャネル型変換導波路207、208、チャネル型導波路で形成された遅延回路209、210、チャネル型導波路で形成された光カプラ211から構成される。モード変換回路215は、図上で光スプリッタ206の左側から入力したTE偏波の1次モード光を、TE偏波の基底モード光に変換して光カプラ211の右側より出力する。したがって、モード変換回路は、偏波変換回路に光学的に接続された光スプリッタ、2つの導波路から成る遅延回路、および光カプラから構成されることになる。
偏波変換回路204およびモード変換回路215の間は、中間導波路205によって接続される。本実施形態では、中間導波路205は中央部のないリブ型シリコン導波路で形成され、偏波変換回路204および光スプリッタ206を滑らかに接続するテーパ導波路になっている。偏波回転回路全体の両端には入出力導波路201、212が備えられ、それぞれ矩形のコアから成るチャネル型導波路で形成されている。入出力導波路201および偏波変換回路204の間には、リブ型−チャネル型変換導波路202、203をそれぞれ備える。それぞれのリブ型−チャネル型変換導波路は、チャネル型からリブ型に導波路構造を変換する部分202と、リブ型導波路の中央部のコア幅を変化させる部分203から構成されている。偏波変換回路204の長さは50μm、中央部のコア幅は0.15μm、周辺部のコア幅はw1=0.9μm、w2=1.8μmである。
モード変換回路215において、光スプリッタ206は長さ200μmで、比較的コアの厚い部位が2つあり、この部位はそれぞれコア幅が0.15μmから0.5μmに広がるテーパ構造になっている。この2つのテーパ構造の間隔は1.15μmである。また、光スプリッタ206の比較的コアの薄い周辺部のコア幅は2.3μmである。リブ型−チャネル型変換導波路207、208はそれぞれ長さが50μmで、中央部のコア幅は0.5μmで一定である。さらに、リブ型−チャネル型変換導波路207、208の周辺部のコア幅は1.0μmから0.5μmまで変化するテーパ構造になっている。
モード変換回路215において、遅延回路209、210は、導波路209の長さが導波路210に対して0.314μm長くなるように設計されている。光カプラ211は、ここではマルチモード干渉回路(MMI:Multi-Mode Interference)によって実現されており、MMIの長さは3.5μm、幅は2.0μmであって、MMIに接続する部分の導波路209、210の間隔は1.0μmである。また入出力導波路212はMMIの中央に接続している。
中間導波路205の長さは15μmである。入出力導波路201、212の幅はそれぞれ0.5μmである。リブ型−チャネル型変換導波路202、203においては、導波路202の長さは50μm、中央部のコア幅は0.5μm、周辺部のコア幅は0.5μmから0.9μmまで変化させている。また、導波路203の長さは200μm、中央部のコア幅は0.5μmから0.15μmまで変化させており、周辺部のコア幅は1.0μmである。
図11は、図10の上面図における入出力導波路上のA−A´線の断面の構造を示す図である。シリコン基板223の上には、石英ガラスで形成されている下部クラッド222が備えられている。下部クラッド222の上には、シリコンで形成されているチャネル型導波路のコア201が作成される。さらに、コア201を覆うように、石英ガラスで形成されている上部クラッド221が備えられる。導波路201のコア厚さは0.22μm、上部クラッド221の厚さは1.5μm、下部クラッド222の厚さは2μmである。
図12は、図10の上面図における偏波変換回路上のB−B´線の断面の構造を示す図である。シリコン基板233の上には、石英ガラスで形成されている下部クラッド232が備えられている。下部クラッド232の上には、シリコンで形成されたリブ型導波路の中央部コア204aおよび周辺部コア204b、204cが作成される。さらに、各コアを覆うように、石英ガラスで形成されている上部クラッド231が備えられる。中央部204aのコア厚さは0.22μm、周辺部204b、204cのコア厚さは0.06μm、上部クラッド231の厚さは1.5μm、下部クラッド232の厚さは2μmである。
図13は、図10の上面図におけるモード変換回路上のC−C´線の断面の構造を示す図である。シリコン基板243の上には、石英ガラスで形成されている下部クラッド242が備えられている。下部クラッド242の上には、シリコンで形成されたリブ型導波路のコアの厚い部位206a、206bおよびコアの薄い周辺部コア206c、206d、206eが作成される。さらに、両コアを覆うように、石英ガラスで形成されている上部クラッド241が備えられる。コアの厚い部位206a、206bのコア厚さは0.22μm、周辺部コア206c、206d、206eのコア厚さは0.06μm、上部クラッド241の厚さは1.5μm、下部クラッド242の厚さは2μmである。
本実施形態における偏波変換回路204は、第1の実施形態の偏波変換回路104と同様の設計となっており、狭い側のコア幅w1は0.9μm、広い側のコア幅w2は1.8μmである。図10において偏波変換回路204の左からTM偏波の基底モード光が入力した場合、コア幅がw1からw2に徐々に拡大することによって、伝搬する光波はTE偏波の1次モードに変換され、偏波変換回路204の右側から出力する。
モード変換回路215においては、偏波変換回路204から光スプリッタ206に入力されたTE偏波の1次モード光は、2つのTE偏波の基底モード光に等強度で分割される。2つのTE偏波の基底モード光は、それぞれリブ型−チャネル型変換導波路207、208を介して遅延回路209、210に入力される。この時点で、本実施形態の偏波変換回路の使用中心波長を1.55μmとすると、2つのTE偏波の基底モード光の間には、互いに波長の1/2の位相差が生じている。さらに、遅延回路209、210を通過することによって波長の1/2の遅延が付加される。このため、光カプラ211に入力する時点では、2つのTE偏波の基底モード光の間の位相差はゼロの状態になっている。光カプラ211において、位相の揃った2つのTE偏波の基底モード光が合流し、TE偏波の基底モード光として入出力導波路212から出力される。
他の実施形態と同様に、本実施形態の偏波回転回路も相反的であり、入出力導波路212からTE偏波の基底モード光214が逆向きに入力された場合、上述の経路とは逆の経路を経て、TM偏波の基底モード光213が入出力導波路201に出力される。
本実施形態の偏波回転回路では、入出力導波路201からTE偏波の基底モード光が入力された場合、TE偏波の基底モード光は偏波変換回路204をTE偏波の基底モード光のまま伝搬する。さらに、光スプリッタ206において2つのTE偏波の基底モード光に等強度で分割されが、2つのTE偏波の基底モード光の間には、位相差は生じない。
そこで、遅延回路209、210において付加される遅延を使用中心波長の1/4とし、光カプラ211を2入力2出力のMMIに変更すると、変更した実施形態の偏波回転回路に入力されたTM偏波の基底モード光は、MMIの1つの出力からTE偏波の基底モード光に回転されて出力する。同時に、変更した実施形態の偏波回転回路に入力されたTE偏波の基底モード光は、MMIのもう1つの出力からTE偏波の基底モード光のまま出力する。すなわち、図10の偏波回転回路をわずかに変形することで、偏波回転回路および偏波分離回路を同時に実現することもできる。
上述のように本実施形態の偏波回転回路でも、従来技術の偏波回転回路と同様の偏波回転、偏波分離偏波合流などの各機能を実現することができる。一方で、本発明の偏波変換回路は、シリコン導波路のみで構成され、従来技術による偏波回転回路のように窒化シリコン層等の付加的なプロセス工程を必要としない。本実施形態の偏波変換回路においても、第1の実施形態において図7で説明した反射減衰量特性の劣化防止構造を、適用可能であるのは言うまでもない。
本実施形態の偏波回転回路におけるモード変換回路215では、光スプリッタ206、遅延回路209の各設計パラメータを特定の値を例として説明をしてきたが、これらのパラメータ値だけに限定されない。さらに、光カプラとしてはMMI回路を例として説明をしたが、Y分岐回路など、光合流を実現する他のどのような回路も本発明に適用可能である。
[第4の実施形態]
本発明の偏波回転回路のさらに別の第4の実施形態の構成および動作について説明する。本実施形態では、モード変換回路、および、偏波変換回路とモード変換回路との間を接続する中間導波路の構成がこれまでの実施形態と異なっている。
図14は、本発明の第4の実施形態の偏波回転回路の構成を示す図である。デバイス上の回路構成面を見た図である。偏波回転の主な動作は、偏波変換回路304およびモード変換回路314によって行われる。図上の左端の入出力導波路301から入力したTM偏波の基底モード光311を、本発明の偏波変換回路によってTE偏波の1次モード光312に変換して右端の入出力導波路310より出力する。偏波変換回路304は、比較的コアの厚い中央部と、比較的コアの薄い周辺部から成るリブ型シリコン導波路で形成される。周辺部のコア幅は、幅がw1からw2まで広がるテーパ導波路になっている。
モード変換回路314は、各々がチャネル型シリコン導波路で形成され、幅の異なる2つの導波路から成る非対称方向性結合器308、309で構成される。モード変換回路は、図14上で、一方の導波路308の左から入力したTE偏波の1次モード光を、TE偏波の基底モード光に変換して他方の導波路309の右より出力する。
本実施形態では、偏波変換回路304およびモード変換回路314の間を接続する中間導波路313の構成に他の実施形態とは異なる特徴がある。中間導波路313は、3種類の導波路305、306、307が順次接続されている。導波路305は中央部のないリブ型シリコン導波路で形成され、偏波変換回路304および次の中間導波路306の間を滑らかに接続するテーパ導波路になっている。中間導波路306、307はリブ型−チャネル型変換導波路であり、リブ型導波路の中央部のコア幅を変化させる導波路部分306と、リブ型からチャネル型に導波路構造を変換する導波路部分307とから構成されている。
したがって、本実施形態では、モード変換回路は、異なる幅の2つの導波路から成る非対称方向性結合器308、309で構成され、前記異なる幅の2つの導波路は、チャネル型シリコン導波路であって、前記異なる幅の2つの導波路の内の幅の広い導波路308の一端が、中間導波路313を介して前記偏波変換回路304に光学的に接続されており、前記中間導波路は、2つの比較的コアの厚い部分と、比較的コアの薄い周辺部から成るリブ型シリコン導波路306で構成され、前記の比較的コアの厚い部分は、テーパ構造をしていることになる。
偏波変換回路の全体の両端には、矩形のコアから成るチャネル型導波路で形成された入出力導波路301、310が備えられている。入出力導波路301および偏波変換回路304の間には、入出力導波路301と偏波変換回路304を滑らかに接続するリブ型−チャネル型変換導波路302、303が備えられている。すなわち、チャネル型からリブ型に導波路構造を変換する導波路部分302と、リブ型導波路の中央部のコア幅を変化させる導波路部分303とから構成されている。
偏波変換回路304の長さは50μm、中央部のコア幅は0.15μm、周辺部のコア幅はw1=0.9μm、w2=1.8μmである。
モード変換回路である非対称方向性結合器314を形成する一方の導波路308は幅が1.0μm、他方の導波路309は幅が0.5μmで、長さはともに20μm、2つの導波路間のギャップは0.4μmである。
中間導波路313において、導波路305の長さは15μmであり、周辺部のコア幅は1.8μmから1.0μmに変化させている。またリブ型−チャネル型変換導波路306、307については、導波路部分306の長さは200μmで、比較的コアの厚い部位が2つあり、それぞれコア幅が0.15μmから0.485μmに変化するテーパ構造になっている。2つのテーパ構造の間隔は0.5μmである。周辺部のコア幅も1.0μm から2.5μmまで変化するテーパ構造になっている。導波路部分307の長さは50μm、中央部のコア幅は1.0μmで一定であり、周辺部のコア幅は2.5μmから1.0μmに変化させている。
入出力導波路301、310の幅は、それぞれ0.5μmである。リブ型−チャネル型変換導波路302、303については、導波路部分302の長さは50μm、中央部のコア幅は0.5μm、周辺部のコア幅は0.5μmから1.0μmに変化させている。導波路部分303の長さは200μm、中央部のコア幅は0.5μmから0.15μmに変化させており、周辺部のコア幅は1.0μmである。
図15は、図14の上面図における入出力導波路上のA−A´線の断面の構造を示す図である。シリコン基板323の上には、石英ガラスで形成されている下部クラッド322が備えられている。下部クラッド322の上には、シリコンで形成されているチャネル型導波路のコア301が作成される。さらに、コア301を覆うように、石英ガラスで形成されている上部クラッド321が備えられる。導波路301のコア厚さは0.22μm、上部クラッド321の厚さは1.5μm、下部クラッド322の厚さは2μmである。
図16は、図14の上面図における偏波変換回路上のB−B´線の断面の構造を示す図である。シリコン基板333の上には、石英ガラスで形成されている下部クラッド332が備えられている。下部クラッド332の上には、シリコンで形成されたリブ型導波路の中央部コア304aおよび周辺部コア304b、304cが作成される。さらに、各コアを覆うように、石英ガラスで形成されている上部クラッド331が備えられる。中央部304aのコア厚さは0.22μm、周辺部304b、304cのコア厚さは0.06μm、上部クラッド331の厚さは1.5μm、下部クラッド332の厚さは2μmである。
図17は、図14の上面図における中間導波路上のC−C´線の断面の構造を示す図である。シリコン基板343の上には、石英ガラスで形成されている下部クラッド342が備えられている。下部クラッド342の上には、シリコンで形成されたリブ型導波路のコアの厚い部位306a、306bおよび周辺部コア306c、306d、306eが作成される。さらに、両コアを覆うように、石英ガラスで形成されている上部クラッド341が備えられる。コアの厚い部位306a、306bのコア厚さは0.22μm、周辺部コア306c、306d、306eのコア厚さは0.06μm、上部クラッド341の厚さは1.5μm、下部クラッド342の厚さは2μmである。
図18は、図14の上面図における非対称方向性結合器上のD−D´線の断面の構造を示す図である。シリコン基板353の上には、石英ガラスで形成されている下部クラッド352が備えられている。下部クラッド352の上には、シリコンで形成されたチャネル型導波路のコア308、309が作成される。さらに、各コアを覆うように、石英ガラスで形成されている上部クラッド351が備えられる。導波路308、309のコア厚さは0.22μm、上部クラッド351の厚さは1.5μm、下部クラッド352の厚さは2μmである。
本実施形態の偏波変換回路304は、第1の実施形態の偏波変換回路104と同様の設計になっており、狭い側のコア幅w1は0.9μm、広い側のコア幅w2は1.8μmである。図14において偏波変換回路304の左側からTM偏波の基底モード光311が入力された場合、コア幅がw1からw2に徐々に拡大することによって、伝搬する光波はTE偏波の1次モードに変換され、偏波変換回路304の右側から出力する。変換されたTE偏波の1次モード光は、中間導波路313を経て、モード変換回路に入力する。
モード変換回路である非対称方向性結合器308、309においては、一方の導波路308におけるTE偏波の1次モード実効屈折率と、他方の導波路309におけるTE偏波の基底モード実効屈折率がほぼ同じになるよう、導波路308、導波路309それぞれのコア幅を設計している。これによって、一方の導波路308に入力されたTE偏波の1次モード光は、他方の導波路309のTE偏波の基底モードに結合し、TE偏波の基底モード光が導波路309から出力される。変換された光は、入出力導波路310からTE偏波の基底モード光312として出力される。
中間導波路313におけるリブ型−チャネル型変換導波路306、307は、中央部の無いリブ型導波路である305から入力されたTE偏波の1次モード光が、非対称方向性結合器のチャネル型導波路308にTE偏波の1次モード光のまま入力するように設計されている。
他の実施形態と同様に、本実施形態の偏波回転回路も相反的であり、入出力導波路310からTE偏波の基底モード光312が逆向きに入力された場合、上述の経路とは逆の経路を経て、TM偏波の基底モード光311が入出力導波路301に出力される。
本実施形態の偏波回転回路においても、従来技術の偏波回転回路と同様の偏波回転、偏波分離偏波合流などの各機能を実現することができる。一方で、本発明の偏波変換回路は、シリコン導波路のみで構成され、従来技術による偏波回転回路のように窒化シリコン層等の付加的なプロセス工程を必要としない。本実施形態の偏波変換回路においても、第1の実施形態において図7で説明した反射減衰量特性の劣化防止構造や、第1の実施形態において図8で説明した偏波分離または合流回路の機能を同時に実現する構造を適用可能である。
上述の第4の実施形態の偏波回転回路におけるモード変換回路では、チャネル型導波路による非対称方向性結合器の設計パラメータを特定の値のものとして説明してきたが、これらのパラメータ値に限定されない。2つの導波路308、309の幅は、導波路コアの厚さと、上部クラッドおよび下部クラッドの各材料の屈折率によって条件が決まる。細い幅の導波路309におけるTE偏波の基底モードの実効屈折率と、太い幅の導波路308におけるTE偏波の1次モードの実効屈折率とが近い値となるように、非対称方向性結合器の設計パラメータが設定されれば良い。
上述のいずれの実施形態の偏波変換回路でも、上部クラッドおよび下部クラッドの材料として石英ガラスを用いたものとして説明したが、石英ガラスだけに限定されない。シリコンより屈折率の低い材料で形成されれば良い。
また、上述のいずれの実施形態の偏波変換回路でも、上部クラッドおよび下部クラッドの厚さとして特定の数値の場合を例示したが、これらの数値に限定されるものではなく、コアと同程度以上の厚さがあれば良い。
さらに、上述のいずれの実施形態の偏波変換回路でも、シリコン導波路の設計パラメータが特定の値の場合を例示したが、これらパラメータ値に限定されない。TMの基底モード光およびTEの1次モード光の間で変換が生じるシリコン導波路の周辺部のコア幅は、中央部コアの厚さおよび幅、周辺部コアの厚さと、上部クラッドおよび下部クラッドの材料の屈折率等によって決まる。偏波変換回路104、204、304におけるテーパ導波路の両端部の導波路幅w1、w2は、偏波変換が生じる導波路幅変化領域をなるべく包含するよう設定されれば良い。
また効率的な偏波変換のため、偏波変換回路104、204、304の中央部コア幅は狭く設定し、光波が十分に影響を受けるような、上下構造の大きな非対称性を持たせることが好ましい。この観点から、中央部コアの幅は中央部コア厚の2倍以下であることが好ましい。上述のいずれの実施形態でも、偏波変換回路の導波路の中央部コア厚は0.22μm、コア幅は0.15μmと設定されており、上述の中央部コアの幅が中央部コア厚の2倍以下の条件を十分に満足する。また、リブ導波路における周辺部コアの厚さも実施形態の値に限定されないが、中央部のコアの厚さに匹敵する厚さになると、1次モード以上の不要な高次モードが発生し、偏波変換特性の劣化を招く可能性がある。したがって、高次モード抑制の観点からは、周辺部コアの厚さは、中央部のコアの厚さの1/3程度以下に設定するのが好ましい。
第1、第2および第4の各実施形態では、モード変換回路として非対称方向性結合器を利用した例を、第3の実施形態では光スプリッタ、遅延回路および光カプラから成る干渉回路を利用した例を示した。一般にモード変換回路としては、断熱的な変換回路を利用することも可能であるが、回路の大きさは数100μm程度まで長くなる傾向にある。一方、シリコン導波路による非対称方向性結合器や干渉回路の回路長は高々数〜数10μm程度に収まる。したがって、回路の小型化の観点からは、本発明の各実施形態にあるように非対称方向性結合器や干渉回路を利用するのが好ましい。
また上述のいずれの実施形態の偏波変換回路においても、他の回路との接続性の観点から、入出力導波路はシングルモード導波路であるか、または、シングルモード導波路に光学的に接続していることが好ましい。シリコン導波路のシングルモード条件は、上部クラッド、および下部クラッドの各材料の屈折率によって異なるが、最も一般的な石英をクラッドに用いた場合、チャネル型であれば、概ね導波路コアの断面積が0.2μm2以下であることが必要である。またリブ型であれば、概ね中央部(コアの厚い領域)の導波路コアの断面積が0.2μm2以下であることが必要である。
以上詳細に述べたように、本発明の偏波変換回路により、窒化シリコン層等の付加的なプロセス工程を必要とせずに、シリコン導波路のみで構成される偏波回転回路を提供することができる。
以降では、本発明の偏波回転回路の別の態様として、別の視点からさらに簡略化した構成を持ち、製造時においてより緩和されたトレランスが許容可能であって、回路長全体を短縮可能な実施形態について説明する。上述の各実施形態では、偏波変換回路の中央部のコア幅において、テーパ導波路の幅が0.15μmに達する構成が含まれているが、テーパ導波路の幅が回路の特性に与える影響は十分小さく、製造時の許容誤差(トレランス)の点でも問題はない。
しかしながら、方向性結合器における導波路間隔の変動は、回路特性に大きく影響を与える。従来技術として説明をした偏波回転回路における非対称方向性結合器では、導波路間隔が0.15μmに達する構成が含まれていた。このような非対称方向性結合器における導波路間隔の変動は回路特性に大きく影響を与えるため、製造時の許容誤差(トレランス)の点で依然として課題があった。
[第5の実施形態]
以下、本発明の第5の実施形態における偏波回転回路について図19〜図21を参照しながら説明する。第5の実施形態以降の各実施形態では、偏波変換回路において方向性結合器を使用しない構成例、また、導波路間隔の比較的広い方向性結合器を使用しながら偏波回転回路の後段のモード変換回路の構成に着目した様々な新しい構成例を提示する。
[偏波回転回路の構成]
図19は、本実施形態の偏波回転回路の構成例を示す図である。図19の本実施形態の偏波変換回路1102では、図中左側から入力されたTM偏波の基底モード光が、TE偏波の1次モード光に変換して図中右側から出力される。
偏波変換回路1102は、コアの厚い中央部と、コアの薄い周辺部とから成るリブ型シリコン導波路で形成される。中央部の導波路のコア幅は0.5μmである。周辺部の導波路のコア幅はw1〜w2である。
チャネル型導波路で形成された遅延回路1103、1104と、チャネル型導波路で形成された光カプラ(光結合器)1105とによって、モード変換回路が形成される。偏波変換回路1102から出力されたTE偏波の1次モード光は、モード変換回路の各遅延回路1103、1104へ入力される。このとき、TE偏波の1次モード光は、互いに逆位相を持つ2つのTE偏波の基底モードに分離される。モード変換回路では、光カプラ1105が、分離された2つのTE偏波の基底モードを、1つのTE偏波の基底モード光に変換して出力する。
偏波変換回路1102において、長さは30μm、中央部の厚いコアの幅w1は0.5μm、その周囲の薄いコアの幅w2は1.5μmである。
遅延回路1103、1104の各長さは100μmである。光カプラ1105の長さは3.5μm、幅は2.1μmである。遅延回路の導波路1103、1104の厚さはともに0.22μmであり、各遅延回路の導波路1103、1104はチャネル型導波路で構成される。
なお、遅延回路の導波路1103は、もう一方の導波路1104よりも0.314μmだけ長くなるように設定される。後述するように、遅延回路の長い導波路1103では遅延が生じるため遅延導波路とも呼ぶ。
図20は、図19に示したA−A´線を含む偏波回転回路の断面を示す図である。シリコン基板1203上には、基板側から、下部クラッド1202および上部クラッド1201が形成されている。各クラッド1201、1202は石英で形成されている。
導波路1101のコア厚さは0.22μm、上部クラッド1201の厚さは1.5μm、下部クラッド1202の厚さは2μmである。
図21は、図19に示したB−B´線を含む偏波回転回路の断面を示す図である。なお、図21の構成要素1102a、1211〜1213は、それぞれ、図20の導波路1101、上部クラッド1201、下部クラッド1202、シリコン基板1203に対応している。
シリコン基板1213上には、基板側から、下部クラッド1212および上部クラッド1211が形成されている。各クラッド1211、1212は石英で形成されている。偏波変換回路1102において、中央部1102aのコア厚は0.22μm、周辺部1102bのコア厚は0.15μm、上部クラッド1211の厚さは1.5μm、下部クラッド1212の厚さは2μmである。
図22は、チャネル導波路のコア幅に対する固有モードの実効屈折率を有限差分法により計算した結果の一例を説明する図である。図22に示した例では、導波路の断面構造は、図20に示したものと同様に、導波路1101のコア材料をSi、各クラッド1201、1202の材料をSiO2とする。そして、導波路幅(コア幅)を変えて、第1モードから第3モードまでの実効屈折率を算出した。
第1モードは、コア幅にかかわらずTE偏波の基底モードが維持される。
第2モードおよび第3モードについては、導波路幅が0.66μmより小さいときは、第2モードはTM偏波の基底モードに、第3モードはTE偏波の1次モードになった。一方、導波路幅が0.66μmより大きいときは、第2モードはTE偏波の1次モードとなり、第3モードはTM偏波の基底モードとなった。
導波路路幅が0.66μmより小さい幅から、および導波路路幅が0.66μmより大きい幅へ、コア幅が徐々に拡がるテーパ導波路を光が伝搬する場合、TM偏波の基底モードとして入力された光はTM偏波の基底モードのまま伝搬し、TE偏波の1次モードとして入力された光はTE偏波の1次モードのまま伝搬する。これは、チャネル導波路では厚さ方向および幅方向に対してそれぞれ屈折率構造が対称であり、TE偏波成分とTM偏波成分とが完全に直交しているためである。
非特許文献2に示されているように導波路の厚さ方向に非対称な構造であれば、TE偏波成分とTM偏波成分との間の直交性がなくなり、あるコア幅(およそ0.7μm)付近でTE偏波成分とTM偏波成分とが混合した複合モードが発生する。このコア幅(0.7μm)付近では、第2モードと第3モードの各実効屈折率は一致しない。
断熱的かつ複合モードが発生するコア幅よりある程度小さい幅から、複合モードが発生するコア幅よりある程度大きい幅まで、コア幅が徐々に拡がるテーパ構造とすることにより、TM偏波の基底モードとして入力された光は、第2モードを保持したままテーパ導波路を伝搬し、TE偏波の1次モードとして出力され、偏波変換を行うことができる。
図23は、図19に示したB−B´線近傍におけるリブ導波路の周辺部コア幅に対する固有モードの実効屈折率を、有限差分法により計算した結果の一例を説明する図である。図23の例では、導波路の断面構造は、図21に示したものと同様であり、周辺部1102bのコア幅w2を変えて、第1モードから第3モードまでの実効屈折率を算出した。なお、中央部1102aのコアの幅は0.5μmとした。
第1モードは、周辺部コア幅w2の値にかかわらずTE偏波の基底モードが保持される。
一方、第2モードおよび第3モードは、周辺部コア幅w2の値を変えることによって、TE偏波成分とTM偏波成分とが混合した複合モードになっており、第2モードおよび第3モードの各実効屈折率が一致することはない。
周辺部コア幅w2の値が0.5μm付近のときは、第2モードはほぼTM偏波の基底モードとなり、第3モードはほぼTE偏波の1次モードになる。一方、w2の値が1.0μm付近のときは、第2モードはほぼTE偏波の1次モードに、第3モードはほぼTM偏波の基底モードに、それぞれ入れ替わる。このように、本実施形態のリブ型導波路であっても、非特許文献2と同様、厚さ方向に対して非対称な構造を持つ。したがって、図19の偏波変換回路1102のように、伝搬方向に対して断熱的かつ複合モードが発生する導波路幅 (およそ0.7μm)を含むように、導波路幅が徐々に拡がるテーパ構造とすることで、TM偏波の基底モードとして入力された光は、第2モードを保持したまま伝搬し、TE偏波の1次モードとして出力され、偏波変換を行うことができる。
図24は、図23に示した第2モードの計算結果から、TE偏波成分とTM偏波成分との強度比を計算した結果を示す図である。周辺部コア幅w2の値が増大するにつれ、TM偏波成分の強度比は減少する一方でTE偏波成分の強度比は増加し、偏波成分が入れ替わることが分かる。
偏波変換回路1102では、各コア幅w1、w2は、第2モードの偏波成分の入れ替わる領域をなるべく含むように設定される。本実施形態の例では、w1=0.5μm、w2=2.5μmとする。
図25は、図21に示した偏波変換回路1102のリブ型導波路の薄い周辺部コアの厚みhに対する第2モードのTE偏波成分とTM偏波成分との強度比の計算結果を示している。
なお、中央部コアの幅はw1=0.5μm、 周辺部コアの幅はw2=1.5μmとする。
周辺部コアの厚みhが増大するにつれ、TE偏波成分が増加する一方TM偏波成分が減少し、h=0.06μm付近でTE偏波成分とTM偏波成分とが入れ替わる。したがって、偏波変換回路1102の周辺部コアの厚みは0.06μm以上に設定される。
図26は、偏波変換回路1102の周辺部コアの厚みhをパラメータとして周辺部コアの幅w2に対する、第2モードのTE偏波成分の強度比率を計算した結果を示している。
周辺部コアの厚みhが大きいほど、TE偏波成分とTM偏波成分との強度比が入れ替わるのに必要な周辺部コア幅w2が小さいことが分かる。コアの厚みhが大きいほど、周辺部コア幅w2を小さくしても偏波変換が行える。このため、偏波変換回路1102の周辺部コアのテーパ拡がり角を同一とすれば、回路長をより短縮できる。
図27は、TM偏波の基底モード光を入力したときの偏波変換回路1102の周辺部コアの厚みhに対する、偏波変換回路1102の出力光に含まれる各モード成分の強度比の計算結果を示す図である。各モード成分の強度比を、3次元有限差分時間領域(Finite Difference Time Domain: FDTD)法および固有モードの重なり積分により計算した結果を示している。
コア厚hが大きくなるほど、TE偏波の1次モード成分が減少し、逆にTM偏波の基底モード成分が多くなっており、偏波の変換効率が低下する。
図26および図27に示した計算結果から、回路長の短縮化および高い変換効率を両立するため、本実施形態の偏波回転回路では、偏波変換回路1102の周辺部コアの厚さをh=0.15μmとしている。
また、本実施形態では、モード変換回路である遅延回路1103、1104を配置するため、偏波変換回路1102の周辺部コアの幅をw2=1.6μmとしている。
再度図19を参照して説明する。偏波変換回路1102にTM偏波の基底モード光を入力した場合、コア幅がw1からw2に徐々に拡大することで、伝搬する光はTE偏波の1次モードに変換されて出力する。
モード変換回路1103〜1105では、偏波変換回路1102から出力されるTE偏波の1次モードが、互いに逆位相を持つ2つのTE偏波の基底モードとして導波路1103、1104にそれぞれ分岐されて入力される。このとき、導波路1103を伝搬する光は、導波路1104を伝搬する光に対して位相がさらに1/2波長分遅れ、導波路1103、1104を伝搬した後では2つの光の位相が一致する。
光カプラ1105は、マルチモード干渉導波路(MMI)である。光カプラ1105は、導波路1103、1104から入力された2つの同位相のTE偏波の基底モード光を、1つのTE偏波の基本モード光に合波する。そして、光カプラ1105は、合波された基本モード光を入出力導波路1106に出力する。
本実施形態の偏波回転回路において、入出力導波路1101から入力されたTM偏波の基底モード光は、偏波変換回路1102に入力され、TE偏波の1次モード光に変換される。偏波変換回路1102からの出力は、互いに逆位相な2つのTE偏波の基底モード光に分離されて遅延導波路1103、1104に入力される。導波路1103に入力された光は、1/2波長分の遅延により導波路1104に入力された光と同位相のTE偏波の基底モードとなる。
遅延導波路1103、1104から出力される光は、2つの同位相なTE偏波の基底モードとしてMMIである光カプラ1105に入力され、1つのTE偏波の基底モードとして入出力導波路1106に出力される。
このように本実施形態の偏波回転回路は、従来技術の偏波回転回路と同様の機能を実現する。ここで、回路はシリコン導波路のみで構成され、通常のシリコン導波路回路作製には適用されない窒化シリコン層等の付加的なプロセス工程を必要としない利点がある。
また、偏波変換回路1102の周囲において周辺部コア厚を比較的厚めにとることで、コア厚が薄いものと比較して、偏波変換回路1102の右端部の幅w2をより小さく設定することができるので、偏波変換回路1102の回路長を短くすることができる。
図19において、偏波変換回路1102は、中央部の厚いコアと周辺部の薄いコアからなるリブ型導波路で形成されており、モード変換回路1103〜1105は、薄いコアを持たないチャネル型導波路で形成されている。したがって、偏波変換回路1102とモード変換回路1103〜1105とは、その導波路構造が異なり、伝搬する光が反射したり放射したりすることにより損失が発生する。
(変形例1)
上記の損失を抑制するには、図19の偏波回転回路において偏波変換回路1102とモード変換回路1103〜1105との間を光学的に接続するため、偏波変換回路1102の出力側と遅延回路1103、1104の入力側にそれぞれ厚いコアと薄いコアとからなるリブ型構造を持つテーパ導波路を付加するのが好ましい。
図28は、損失を抑制することができるテーパ構造の一例を示す図である。テーパ導波路1403、1404、1405は比較的厚いコアを有しており、その周辺部1406は薄いコアを有する。テーパ導波路1403〜1405の長さは全て10μmであり、周辺部の薄いコア1406の長さは20μm、幅は1.6μmである。また、テーパ導波路1403の終端部およびテーパ導波路1404、1405の終端部の幅は全て0.2μmである。
偏波変換回路1402から出力されたTE偏波の1次モード光は、テーパ導波路1403および周辺部のコア1406へ入力される。テーパ導波路1403の幅は出力側(図面の右端)に向かって徐々に小さくなり、光の電力の大部分がコア1406に集中するように構成される。そして、コア1406からの光は、テーパ導波路1404、1405に入力される。コア1406に電力の集中したTE偏波の1次モード光は、テーパ導波路1404、1405に入力されるとき、テーパ導波路1404、1405の各々にそれぞれ等強度で分割される。このとき、テーパ導波路1404、1405へ、互いに逆位相を持つ2つのTE偏波の0次モードとして出力される。
このように、テーパ導波路1403と、各テーパ導波路1404、1405とは光の伝搬方向に対して構造上不連続となるが、光は主に周辺部の薄いコアを介して伝搬するため、反射や放射を低減することができる。
テーパ導波路1403の出力側(図面上で右端)の端部、および、テーパ導波路1404、1405の入力側(図面上で左端)の端部の各コア幅は、製造プロセスで実現できる最小のコア幅に依存する。例えば、上述の各端部のコア幅は、0.2μmより狭く設定するのが好ましい。
尚、本実施形態の偏波回転回路は、図10に示した第3の実施形態の偏波回転回路において、偏波変換回路204および中間導波路205を削除したものとなっている。第3の実施形態における偏波変換回路の機能は、本実施形態におけるテーパ導波路1402によって行われる。
本実施形態の偏波回転回路では、偏波変換回路1402において損失抑制のためのテーパ導波路1403〜1405を備えているため、偏波回転回路の全長が長くなる。また、図27で説明したように、偏波変換回路1402の周囲のコアの厚さを0.15μmより厚く設定すると、偏波変換回路1402の回路長は短くすることができるものの、TM偏波の基底モード光からTE偏波の1次モード光への変換効率が低下し、入力光の一部はTM偏波の基底モード光のまま出力されてしまう。
偏波変換回路1402の中央部のコアをテーパ構造とすることで、テーパ導波路1403が不要となる。このため、偏波変換回路1402の長大化を抑えつつ損失を抑制することが可能となり、さらには、偏波変換回路1402の偏波の変換効率を向上することができる。
図29は、偏波変換回路の中央部のコアをテーパ構造とした偏波回転回路の一例を示す平面図である。本構成により、回路の長大化を抑え同時に損失を抑制しながら偏波の変換効率を向上することができる。
偏波変換回路1502の長さは32μm、入力端の幅w1は0.5μmであり、中央部の厚いコアの出力端の幅w2は0.2μm、周辺部の薄いコアの出力端の幅w3は1.6μmである。偏波変換回路1502へ入力されたTM偏波の基底モード光は、偏波変換回路1502の出力端では、TE偏波の1次モード光に変換され、その電力のほとんどが周辺部のコアに集中する。
図30は、偏波変換回路1502へTM偏波の基底モードが入力されたときの周辺部コアの厚さhに対する、偏波変換回路1502の出力光に含まれる各モード成分の強度比の計算結果を示す図である。各モード成分の強度比を、3次元有限差分時間領域(Finite Difference Time Domain: FDTD)法および固有モードの重なり積分により計算した結果を示している。
図30の計算結果を図27の計算結果と比較すると、周辺部コアの厚さがh=0.15μm付近における出力光中のTE偏波の1次モード成分が増加し、TM偏波の基底モード成分が減少している。したがって、図19で説明した第5の実施形態の偏波変換回路1102と比較して、周辺部のコア厚を厚くしても、高い偏波変換効率を維持することができる。
図29に示した中間テーパ導波路1503、1504は、薄いコアの矩形導波路と、厚いコアのテーパ導波路とをそれぞれ備える。このテーパ導波路は、チャネル型の矩形導波路から形成される遅延導波路1505、1506と、それぞれ光学的に接続される。
厚いコアのテーパ導波路において、入力端(図面左側)の幅は0.2μmで、出力端(図面右側)の幅は0.5μmである。薄いコアの矩形導波路の幅は0.5μmである。
薄いコアに電力が集中したTE偏波の1次モード光は、偏波変換回路1502から出力され、厚いコアのテーパ導波路によってチャネル型の矩形導波路1505、1506に断熱的に伝搬する。上述した厚いコアのテーパ導波路の先端(図面左端)のコア幅は、製造プロセスで実現できる最小のコア幅に依存する。0.2μmより狭い幅とすることが可能であれば、そのようにするのが好ましい。
モード変換回路1505、1506、1507において、中間テーパ導波路1503、1504から出力されるTE偏波の1次モード光は、等強度で互いに逆位相を持つ2つのTE偏波の基底モード光として、遅延導波路1505および導波路1506にそれぞれ分割されて入力される。
遅延導波路1505および導波路1506は遅延回路である。一方の遅延導波路1505は、他方の導波路1506に対して0.314μmだけ長くなるように設定される。
遅延導波路1505に入力されたTE偏波の基底モード光は、導波路1506に結合して透過した後に、導波路1506に入力された逆位相のTE偏波の基底モードに対して1/2波長分遅れることにより導波路1506出力端で同位相となる。
マルチモード干渉導波路(MMI)1507において、遅延回路1505、1506から出力された同位相の2つの等強度なTE偏波の基底モード光は、1つのTE偏波の基底モード光に合波され、入出力導波路1508に出力される。
偏波変換回路1502のテーパ導波路の幅は、入力端から出力端に向けて線形的に広がるように設定されている。偏波変換回路1502と入出力導波路1501との境界において、テーパ部分の幅が変化する割合が不連続になっている。この不連続点で、入力導波路1501から偏波変換回路1502に光が伝搬する際に、TM偏波の1次以上、または、TE偏波の2次以上の高次モードが発生し、変換損失を生じる。この不要な高次モードを抑制するためには、偏波変換回路1502の全長を伸ばすことで、テーパの広がり角を小さくすることができる。別法として、例えば、周辺部のコアを、線形的なテーパではなく、曲線的なテーパによって幅を広げることにより、偏波変換回路1502の長大化を抑えつつ、高次モードを抑制することもできる。
図31は、回路の長大化を抑えつつ高次モードを抑制するため、薄いコアからなる曲線的なテーパ1603を用いて幅を広げた偏波変換回路を用いた偏波回転回路である。
図31では、テーパ1603の構成例を示している。テーパ1603は、2次関数的に形成された曲線を2つ組み合わせたものである。すなわち、テーパ全長の半分の位置から入力端側の16μmの位置までは、凹状のテーパとなり、テーパ全長の半分の位置から出力端側に対しては、テーパ周辺方向に凸状の2次曲線を有するテーパである。このテーパの様子を図32に示す。
図32は、テーパ1603のテーパ形状を示す図である。図32において、横軸xは光の伝搬方向の距離(μm)、縦軸yは光の伝搬方向に垂直な面方向の距離(μm)、をそれぞれ示す。yは、図31の紙面上方向を正とする。図32に示したテーパ1603のテーパ曲線A〜Dは以下の式で表される。
曲線A:0≦x≦16、y=(0.275/256)x2+0.25
曲線B:16≦x≦32、y=−(x−32)2/(0.275/256)+0.8
曲線C:0≦x≦16、y=−(0.275/256)x2−0.25
曲線D:16≦x≦32、y=(x−32)2/(0.275/256)−0.8
なお、入力導波路1601は、テーパ1602と光学的に接続される。テーパ1602は、厚いコアからなり、幅が線形的に狭まるように形成される。テーパ1602において、入力端の幅w1は0.5μm、出力端の幅w2は0.2μmである。テーパ1603の出力側の幅w3は1.6μmである。
テーパ1603のテーパ形状は、2次関数的な曲線形状について説明したが、これに限られず、より高次の多項式や三角関数により導き出される曲線状としても良い。
本実施形態の偏波回転回路は、偏波変換回路と、遅延回路および合波回路とからなるモード変換回路とから構成されている。そのうちの合波回路には、2×1型のマルチモード干渉導波路(MMI)を使用し、互いに同位相な2つのTE偏波の基底モード光を1つのTE偏波の基底モード光として出力する機能を有している。ここで、合波回路を2×2型のMMIに変更し、遅延回路の遅延量を1/4波長分とすることで、偏波変換回路を偏波変換分離回路として動作させることができる。
図33は、合波回路に2×2型のMMI1808を用いた偏波変換分離回路の構成例を示す平面図である。入力導波路1801、偏波変換回路1802、1803および中間テーパ1804、1805の構成は、図31で示したものとそれぞれ同様である。
遅延回路1806、1807の構成は図31に示した遅延回路1606、1607と同様であるが、遅延導波路1806の遅延量は1/4波長分となるよう、導波路1807に対し0.157μmだけ長く設定される。
モード変換回路1808は、厚さが0.22μmのチャネル型導波路によって形成され、幅2.1μmおよび長さが7.0μmのMMIである。
出力導波路1809、1810は、厚さ0.22μm、幅0.5μmのチャネル型導波路である。
入力導波路1801から入力されるTM偏波の基底モード光は、偏波変換回路1802、1803によってTE偏波の1次モード光に変換され、中間テーパ1804、1805を介して、互いに逆位相を持つ2つのTE偏波の基底モードとして等強度に分割されて遅延回路1806、1807に入力される。
一方の遅延導波路1806を伝搬する光は、他方の導波路1807を伝搬する光に対してさらに1/4波長分位相が遅れ、MMI1808に入力される。MMI1808に入力される2つのTE偏波の基底モード光のうち、導波路1807を伝搬する光は遅延導波路1806に対して1/4波長分位相が進む。そして、MMI1808によって、導波路1806、1807からの光が、1つのTE偏波の基底モード光に合波され、出力導波路1810に出力される。
偏波変換回路1802、1803では、入力導波路1801からTE偏波の基底モード光が入力されると、偏波の変換は行われず、TE偏波の基底モードのまま中間テーパ1804、1805に入力される。そして、中間テーパ1804、1805からの光は、互いに同位相を持つ2つのTE偏波の基底モード光に等強度に分割され、遅延回路1806、1807に入力される。遅延導波路1806を伝搬する光は、導波路1807を伝搬する光に対して1/4波長分位相が遅れ、MMI1808に入力される。MMI1808に入力される2つのTE偏波の基底モード光のうち、遅延導波路1806を伝搬する光は、もう一方の導波路1807に対して1/4波長分位相が遅れており、MMI1808によって1つのTE偏波の基底モード光に合波され、出力導波路1809から出力される。このように、偏波回転回路の遅延回路の遅延量を1/4波長分とし、合波回路を2×2型MMIとすることによって、入力光がTE偏波のときに光が出力される導波路と、TM偏波のときで光が出力される導波路が異なることになる。すなわち、本実施形態の偏波回転回路は、偏波回転回路としてだけではなく偏波分離回路としても動作できる。
以上のように、本実施形態の偏波回転回路でも、通常のシリコン導波路回路作製には適用されない窒化膜の作製のような付加的なプロセスを必要としない。また、方向性結合器の導波路間隔も0.2μmであるため、非特許文献2に示したものと比較して製造トレランスの向上が期待できる。
[第6の実施形態]
第6の実施形態に係る偏波回転回路は、第5の実施形態に示したものとほぼ同様の構成であるが、遅延回路およびMMI合波回路を用いたモード変換回路の全長をより短くできるように、遅延回路および方向性結合器を備える。
図34は、本実施形態における偏波回転回路の構成例を示す平面図である。偏波変換回路2102の構成およびサイズは、図19に示した偏波変換回路1102と同様である。
遅延回路2103、2104および方向性結合器2105、2106は、それぞれ、偏波変換回路2102と同様の断面構造をもつリブ型導波路で形成される。厚いコアの厚さは0.22μm、薄いコアの厚さは0.15μmである。
入力導波路2101および出力導波路2107、2108は、チャネル型導波路で形成される。なお、出力導波路2107、2108は、2つの導波路2107、2108間の光結合のない領域である。つまり、この領域は方向性結合器として動作しない領域である。
遅延回路2103、2104の厚いコアの入力端および出力端の各幅は0.2μmであり、薄いコアの幅は0.5μmである。遅延回路全体の長さは8.9μmである。
なお、遅延導波路2103の厚いコアは、中間部へ向けて徐々に幅が大きくなる長さ3.5μmの入力側のテーパ、出力端へ向けて徐々に幅が小さくなる長さ3.5μmの出力側のテーパ、およびその中間の幅0.5μm、長さ1.9μmの矩形導波路から形成される。
方向性結合器2105、2106において、厚いコアは、入力端の幅が0.2μm、および出力端の幅が0.5μmとなるテーパ構造をもつ。
薄いコアは幅0.5μmの矩形導波路である。方向性結合器2105、2106の長さは15μmである.また、入出力導波路2101、2107、2108の幅は0.5μmである。
本実施形態の偏波回転回路において、TM偏波の基底モード光は、入出力導波路2101から偏波変換回路2102に入力され、TE偏波の1次モード光として出力される。
偏波変換回路2102から出力されたTE偏波の1次モード光は、互いに逆位相を持つ2つの等強度のTE偏波の基底モードとして遅延回路2103、2104に入力される。遅延導波路2103は、そのテーパ構造により中央部の厚いコアの幅が拡大され、導波路2104と比較して伝搬する光の実効屈折率および群屈折率が大きくなる。そのため、遅延導波路2103を伝搬する光は、導波路2104を伝搬する光に対し1/4波長分位相が遅れて方向性結合器2105、2106に入力される。
方向性結合器における導波路2105に入力された光は、導波路2106に結合して透過した後に、導波路2105に入力され透過した光と比較して、更に1/4波長分位相遅れを生じる。結果として、導波路2103、2105を経由した光の位相は、導波路2104、2106を経由した光の位相と比べて1/2波長分遅れる。導波路2106では、光が同位相となって干渉し、出力導波路2108から出力される。
このように本実施形態の偏波回転回路は、従来の偏波回転回路と同様の機能を実現する。ここで、偏波回転回路はシリコン導波路のみで構成され、窒化シリコン層等の付加的なプロセス工程を必要としない。更に、第5の実施形態に示したものとよりも回路全長を短くすることができる。
図34において、入力導波路2101においてTE偏波の基底モード光を入力したとき、偏波変換回路2102によって偏波は変換されず、TE偏波の基底モード光のまま遅延回路2103、2104に対して、互いに同位相の2つのTE偏波の基底モード光として等強度に分割して入力される。
遅延導波路2103を伝搬する光は、導波路2104に対して1/4波長分位相が遅れて方向性結合器2105、2106に入力される。
方向性結合器の導波路2106に入力する光は、導波路2106に到達する際に、更に1/4波長分位相遅れを生じるので、結果として、導波路2104、2106を経由した光の位相が1/2波長分遅れる。
導波路2105では、光が同位相となって干渉し、出力導波路2107から出力される。このように、本実施形態の偏波回転回路は、入力光がTE偏波の場合およびTM偏波の場合で、光が出力される導波路が異なり、偏波回転回路としてだけではなく偏波分離回路としても動作する。
(変形例2)
図35は、第6の実施形態の偏波変換回路の周辺部コアを曲線テーパとした変形例の構成を示す図である。変形例2は、周辺部コアを曲線テーパとするように構成した偏波回転回路である。図35の変形例では、図31で示したものと同様に、2次曲線を用いた薄いコアから成るテーパ構造を有する偏波変換回路2202を有する偏波回転回路を示している。これにより、偏波分離回路として動作するほか、高次モードの発生を抑制することができる。
以上のように、本実施形態の偏波回転回路でも、通常のシリコン導波路回路作製には適用されない窒化膜の作製のような付加的なプロセスを必要としない。また、方向性結合器の導波路間隔も0.2μmで済むため、第6の実施形態と比較して製造トレランスの向上が期待できる。
[第7の実施形態]
本実施形態の偏波回転回路におけるモード変換回路は、第6の実施形態のモード変換回路と同様であるが、本実施形態の偏波変換回路は、3段リブ構造としている。この3段リブ構造によって、より高次モードの発生を抑制しつつ回路全長を短縮化できる。
図36は、本実施形態における偏波回転回路の構成を示す平面図である。遅延回路3103、3104と方向性結合器3105、3106の構成およびサイズは、図34に示した遅延回路2103、2104と方向性結合器2105、2106と同様である。また、出力導波路3107、3108は、図34に示した出力導波路2107、2108と同様である。
偏波変換回路3102において、全長は25μm、入力端側の中央部の厚いコアの幅w1は0.5μm、周辺部の薄いコアの幅w2は0.7μm、出力端側の中央部の厚いコアの幅w3は0.2μm、周辺部の薄いコアの幅w4は1.6μm、および、薄いコアの幅w5は1.8μmである。
入力導波路3101は、偏波変換回路3102の周辺部の最も薄いコアと光学的に接続するため、周辺部に薄いコアから成るテーパを備える。なお、偏波変換回路3102の周辺部の2つの薄いコアは、ともに2次曲線を組み合わせたテーパ構造となっており、厚さ0.15μmのコアは、図31に示したテーパ構造と同じ関数で与えられる曲線により形成される。
最も薄い厚さ0.06μmの周辺部コアのテーパは、厚さ0.15μmの周辺部コアのテーパの曲線を、入力導波路3101との接続部で幅0.7μmに、遅延回路との接続部で幅1.8μmへと拡大したものである。
図37は、図36に示した偏波変換回路3102のC−C´ 線を含む断面図である。
シリコン基板3203上には、基板側から、下部クラッド3202、上部クラッド3201の順に形成される。上部クラッド3201および下部クラッド3202はともに、石英ガラスで形成される。
中央部コア3102aは、シリコンで形成されたリブ型導波路のコアであり、その周辺には周辺部コア3102b、3102cが形成される。
中央部コア3102aのコア厚は0.22μm、周辺部コア3102bのコア厚は0.15μmである。周辺部コア3102cのコア厚は0.06μm、上部クラッド3201の厚さは1.5μm、下部クラッド3202の厚さは2μmである。
本実施形態の偏波回転回路において、入力導波路3101から入力されるTM偏波の基底モード光は、偏波変換回路3102に入力され、TE偏波の1次モード光として出力される。偏波変換回路3102から出力されるTE偏波の1次モード光は、互いに逆位相を持つ2つの等強度のTE偏波の0次モードとして分割されて、遅延回路3103、3104に入力される。
遅延導波路3103は、そのテーパ構造によって、中央部のコアの幅が拡大され、導波路3104と比較して伝搬する光の実効屈折率が大きくなる。そのため、一方の遅延導波路3103に入力された光は、他方の導波路3104を伝搬する光に対し1/4波長分位相が遅れて方向性結合器3105、3106に入力される。
方向性結合器の導波路3105を入力した光は、導波路3106に到達する際に、更に1/4波長分位相遅れを生じるので、結果として、導波路3103、3105を経由した光の位相が1/2波長分遅れる。
遅延回路3103、3104に入力した光は、元々は互いに逆位相であるので、方向性結合器3105、3106において光が結合することで、導波路3106では光が同位相となって干渉し出力導波路3108から出力される。
このように本実施形態の偏波回転回路は、従来の偏波回転回路と同様の機能を実現する。偏波回転回路はシリコン導波路のみで構成され、通常のシリコン導波路回路作製には適用されない窒化シリコン層等の付加的なプロセス工程を必要としない。さらに本実施形態の偏波回転回路は、第5の実施形態または第6の実施形態と比較して、回路全長をより短くすることができる。
なお、偏波変換回路3102の中央の厚さ0.22μmのコアからなるテーパの右端部や、遅延回路3103、3104の厚さ0.22μmのコアの入出力端部、および、方向性結合器の厚さ0.22μmのコアの出力部の幅は、製造プロセスで実現できる最小のコア幅に依存する。0.2μmより狭い幅が作製可能であれば、より好ましい。
図36において、偏波変換回路3102における周辺部の厚さ0.15μmのコア、および、厚さ0.06μmのコアはともに、2次曲線を組み合わせた曲線によって与えられるテーパである。
図38は、第7の実施形態の偏波変換回路の周辺部コアを線形テーパとした構成を示す図である。テーパは、図38に示した偏波変換回路3302のように、偏波変換回路の薄い周辺部コアのうち、厚さが0.06μmのコアのみを、直線のみで与えられるテーパと矩形導波路とを組み合わせたものにすることで、より高次モードを抑制できる。入力導波路3301にテーパ構造が不要になるため、さらに回路全長を短縮化できる。
直線のみで与えられるテーパの長さは、L1=10μm、L2=7μmであり、偏波変換回路の全長は17μmである。
なお、本実施形態においても、第6の実施形態と同様に、図36に示した入力導波路3101からTE偏波の基底モード光が入力されると、出力導波路3107からTE偏波の基底モードが出力される。このため、入力光がTE偏波の場合とTM偏波の場合とで光が出力される導波路が異なり、偏波回転回路としてだけではなく偏波分離回路としても動作できる。図38に示した偏波回転回路も同様に、偏波分離回路として動作する。
以上のように、本実施形態の偏波回転回路でも、通常のシリコン導波路回路作製には適用されない窒化膜の作製のような付加的なプロセスを必要としない。また、方向性結合器の導波路間隔も0.2μmで済むため、非特許文献2の場合と比較して製造トレランスが向上する。
[第8の実施形態]
前述の図36および図38において、偏波変換回路3102、3302は、3段リブ型導波路構造で形成されている場合について説明したが、2段リブ型導波路構造としても良い。この場合、遅延回路(図36の3103、3104、および図38の3303、3304)および方向性結合器(3105、3106、3305、3306)は、厚さ0.22μmの中央部コアおよび厚さ0.15μmの周辺部コアから成る2段リブ型導波路構造により形成されている。したがって、偏波変換回路(3102、3302)と遅延回路(3103、3104、3303、3304)との間でモードミスマッチが発生し、損失として反射・放射される。本実施形態の偏波回転回路における偏波変換回路は、第7の実施形態の偏波変換回路と同様の構成であるが、遅延回路および方向性結合器は、偏波変換回路との間でのモードミスマッチを抑制するために、以下のように構成される。すなわち、厚さが0.22μm、0.15μmおよび0.06μmの各コアから成る3段リブ型導波路を用いた、遅延回路と方向性結合器とが一体化するようにモード変換回路が構成される。
図39は、本実施形態の偏波回転回路の構成例を示す平面図である。
偏波変換回路4102は、図36に示した偏波変換回路3102と同様の構成であるが、コアの幅と長さが異なる。すなわち、厚さ0.22μmのコアの出力端の幅は0.2μm、厚さ0.15μmのコアの出力端の幅は1.0μm、厚さ0.06μmのコアの幅は1.2μmである。
偏波変換回路4102において、長さは25μmである。厚さ0.15μmのコアと、厚さ0.06μmのコアとによって与えられる曲線の関数は、これらのコア幅を満たす2次曲線の組み合わせとする。
モード変換回路4103は、遅延回路および方向性結合器を一体化した回路である。図39において、紙面上側の厚さ0.22μmのコアの付近に集中する光は、紙面下側の厚さ0.22μmのコアの付近に集中する光に対して1/4波長分だけ位相が遅れるように、上側の厚さ0.22μmの導波路幅の一部の幅を紙面上方向に拡大する。厚さ0.15μmのコアと厚さ0.06μmのコアの一部の幅も同様に拡大させる。
図40は、図39に示した遅延回路と方向性結合器とを一体化させたモード変換回路4103のみを拡大して示した図である。図40において、上段および下段にそれぞれ配置された厚さ0.22μmのコアの入力端の幅はw1=0.2μmである。コアの中心間の距離は0.8μmである。厚さ0.15μmのコアの幅はw2=1.0μmである。
厚さ0.06μmのコアの幅はw3=0.12μmである。厚さ0.22μm、0.15μm、0.06μmのいずれのコアにおいても、拡幅テーパ部の長さはL1=1.5μmである。厚さ0.22μmのコアのうち、紙面上側に配置されたコアの拡幅部において、拡幅矩形部の長さはL2=2.9μm、幅はw4=0.4μmである。
厚さ0.22μmのコアのうち、紙面下側に配置されたコアは全域で矩形導波路であり、その幅はw1=0.2μmである。厚さ0.15μmのコアの拡幅矩形部の幅はw5=1.2μm、長さはL3=3.0μm、右端部の幅はw7=0.5μmである。
厚さ0.06μmのコアの拡幅矩形部において、幅はW6=1.4μmで、長さはL4=3.1μmである。モード変換回路全体の長さL5は任意であり、拡幅部の全長よりも長ければ良く、本実施形態では、例えば、L5=6.0μmとする。
終端テーパ4104は、厚さ0.22μm、0.15μmおよび0.06μmの3段リブ型導波路で形成される。終端テーパ4104は、モード変換回路4103と入出力導波路4105とに光学的に接続される。
中央の厚さ0.22μmのコアはテーパ構造であり、入力端の幅は0.2μm、出力端の幅は0.5μmである。周辺部の厚さ0.15μmのコアは、矩形導波路であり、幅は0.5μmである。周辺部の厚さ0.06μmのコアはテーパ構造であり、入力端の幅は1.2μm、出力端の幅は0.5μmである。
終端テーパ4104の長さは5μmである。出力導波路4105は、厚さ0.22μmのコアから成るチャネル型の導波路であり、幅0.5μmの矩形導波路である。
図39の偏波回転回路において、TM偏波の基底モード光は、入力導波路4101を介して偏波変換回路4102に入力され、TE偏波の1次モード光として出力される。
偏波変換回路4102から出力されたTE偏波の1次モード光は、互いに逆位相を持つ2つのTE偏波の0次モード光としてモード変換回路4103に入力される。2つのTE偏波の0次モード光のうち、図39の紙面上側を伝搬する光は、図39の紙面下側を伝搬する光に対して1/4波長分位相が遅れる。紙面下側の導波路にTE偏波の0次モード光として合波され、終端テーパ4104を介して出力導波路4105から出力される。
このように本実施形態の偏波回転回路は、従来技術の偏波回転回路と同様の機能を実現する。一方で、本実施形態の偏波回転回路はシリコン導波路のみで構成され、通常のシリコン導波路回路作製には適用されない窒化シリコン層等の付加的なプロセス工程を必要としない。
また、3段リブ型構造をもつモード変換回路4103を利用することで、図19に示したもの(遅延回路1103、1104および合波回路1105)や図34に示したもの(遅延回路2103、2104および方向性結合器2105、2106)のように、導波路を分割する必要がない。したがって、本実施形態の偏波回転回路では、回路の幅を小さくすることができるとともに、方向性結合器の結合長も短くなり、回路長を短くすることができる。
また、回路の幅が小さくなれば、偏波変換回路の全長も短くすることができ、図36に示した偏波変換回路3102と比較して更に回路長を短くできる。したがって、本実施形態のように3段リブ型のモード変換回路4103を用いることで、第5の実施形態〜第7の実施形態と比較して、回路長および回路面積をより小さくすることができる。
図39に示した本実施形態の偏波回転回路では、偏波変換回路の全長は25μmで、モード変換回路の全長は6μm、入出力テーパ導波路全長は5μmである。偏波回転回路の全長は36μmとなり、非特許文献2に開示された偏波回転回路おける全長71μmと比較して、大幅に回路を小型・短縮化することが可能になる。
なお、偏波変換回路4102の中央の厚さ0.22μmのコアからなるテーパの入力端、モード変換回路の厚さ0.22μmのコア、および終端テーパの厚さ0.22μmの出力端の各幅は、それぞれ、製造プロセスで実現できる最小のコア幅に依存する。0.2μmより狭い幅が作製可能であれば、より好ましい。
図39に示した本実施形態の偏波回転回路の偏波変換回路4102において、周辺部の厚さ0.15μmのコアと、厚さ0.06μmのコアは、ともに2次曲線を組み合わせた曲線によって与えられるテーパであるが、別の形態のテーパ形状とすることもできる。
図41は、第8の実施形態の偏波回転回路の周辺部コアを線形テーパとした構成を示す図である。図41に示したように、偏波変換回路の薄い周辺部コアのうち厚さ0.06μmのコアのみを、直線のみで与えられるテーパと矩形導波路とを組み合わせたものにすることで、より高次モードを抑制できる。これによって、入力導波路4301にテーパ構造が不要になる。これにより、回路全長が短縮化できる。直線のみで与えられるテーパの長さは、L1=10μm、L2=7μmであり、偏波変換回路の全長は17μmであり、回路全長は28μmとなり、非特許文献2における71μmと比較して大幅に回路の短縮化ができる。
本実施形態の偏波回転回路において、モード変換回路の出力側に分岐回路を配置することによって、第5の実施形態〜第7の実施形態のように、偏波分離回路として動作することも可能である。
図42は、モード変換回路の出力側に分岐回路を配置した偏波分離回路の構造を示す平面図である。モード変換回路4403は、図39および図41で示した偏波回転回路のモード変換回路4103、4303の各図紙面下側の厚さ0.22μmのコアからなる導波路の長さを、各図紙面上側の厚さ0.22μmのコアからなる導波路と一致させたものであり、その長さは6μmである。
図42に示した分岐回路4404は、厚さ0.22μm、0.15μm、0.06μmの各コアからなる3段リブ型構造を有する。紙面上側の導波路と紙面下側の導波路の間でのモードの結合がないように設定される。
入力導波路4401から入力されたTM偏波の基底モード光は、偏波変換回路4402によってTE偏波の1次モード光に変換され、モード変換回路4403へ入力される。モード変換回路4403へ入力されたTE偏波の1次モード光は、互いに逆位相を持つ2つのTE偏波の基底モード光に等強度で分割される。紙面上側の厚さ0.22μmのコア部分を伝搬する光は、紙面下側の厚さ0.22μmのコア部分を伝搬する光に対し1/4波長分位相が遅れて、紙面下側の厚さ0.22μmのコア部分を伝搬する光と干渉し、分岐回路4404の紙面下側の導波路より出力される。
入力導波路4401から入力されたTE偏波の基底モード光は、偏波変換回路4402によって偏波が変換されることなく、TE偏波の基底モード光のままモード変換回路4403へ入力される。モード変換回路4403へ入力されたTE偏波の基底モード光は互いに同位相な2つのTE偏波の基底モード光に等強度で分割される。上側の厚さ0.22μmのコア部分を伝搬する光は、紙面下側の厚さ0.22μmのコア部分を伝搬する光に対し1/4波長分位相が遅れて、紙面下側の厚さ0.22μmのコア部分を伝搬する光と干渉し、分岐回路4404の紙面上側の導波路より出力される。
このように、図42に示した偏波回転回路は、入力光がTE偏波のときとTM偏波のときで光が出力される導波路が異なり、偏波回転回路としてだけではなく偏波分離回路としても動作する。
以上のように、本実施形態の偏波回転回路でも、通常のシリコン導波路回路作製には適用されない窒化膜の作製のような付加的なプロセスを必要としない。また、最小加工寸法も0.2μmで済むため、非特許文献2に開示された偏波回転回路の場合と比較して製造トレランスが向上する。
上述の第1〜第8の各実施形態および変形例では、上部クラッドおよび下部クラッドの材料として石英ガラスを用いたが、この材料に限定されるものではなく、シリコンより屈折率の小さい材料で形成されれば良い。また、上部クラッドおよび下部クラッドの厚さなどの各値は、上記各実施形態および変形例のものに限定されない。
上述の第1〜第8の各実施形態の偏波変換回路では、シリコン導波路の設計パラメータを特定の値に限定したが、これらのパラメータにも限定されない。TM偏波の基底モード光とTE偏波の1次モード光との間で変換が生じるシリコン導波路の幅は、導波路のコアの厚さと、上部クラッドおよび下部クラッドの材料の屈折率によって決まる。偏波変換回路におけるテーパ導波路の両端部の導波路幅は、変換が生じる導波路幅変化領域をなるべく包含するよう設定されれば良い。
第5の実施形態のモード変換回路では、光カプラとしてMMI回路を適用しているが、Y分岐回路など、光合流を実現する他の回路のいずれも適用可能である。また、第5の実施形態のモード変換回路では、遅延導波路1103、1104において導波路の長さの差によって位相差を生成しているが、導波路の幅の差によって位相差を生成することも可能である。
以上詳細に説明してきたように、本発明により、窒化シリコン層等の付加的なプロセス工程を必要とせずに、シリコン導波路のみで構成される偏波回転回路を提供することができる。さらに本発明によれば、導波路の近接した配置における加工精度の条件を緩和することができる。