JP6275935B2 - 光拡散素子、光拡散素子付偏光板、およびこれらを用いた液晶表示装置 - Google Patents
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Description
本発明の別の実施形態による光拡散素子は、マトリクスと該マトリクス中に分散された光拡散性微粒子とを有し、該マトリクスと該光拡散性微粒子との界面またはその近傍にて屈折率の異なる2つの領域が微細凹凸状でかつ球殻状の境界を形成している。
好ましい実施形態においては、上記マトリクスは樹脂成分および超微粒子成分を含み、上記微細凹凸状でかつ球殻状の境界が、該マトリクス中の該超微粒子成分が分散している領域と分散していない領域とにより形成されている。
好ましい実施形態においては、上記微細凹凸状でかつ球殻状の境界は、上記光拡散性微粒子の表面の凹凸により形成されている。
好ましい実施形態においては、上記超微粒子成分の平均1次粒子径は1nm〜100nmである。
好ましい実施形態においては、上記光拡散素子は、ヘイズが90%〜99.9%である。
好ましい実施形態においては、上記光拡散素子は、厚みが4μm〜50μmである。
好ましい実施形態においては、上記光拡散素子は、光拡散半値角が10°〜150°である。
本発明の別の局面によれば、光拡散素子付偏光板が提供される。この光拡散素子付偏光板は、上記の光拡散素子と偏光子とを有する。
本発明のさらに別の局面によれば、液晶表示装置が提供される。この液晶表示装置は、液晶セルと、該液晶セルに向かってコリメート光を出射する平行光光源装置と、該液晶セルを通過したコリメート光を透過および拡散させる、上記の光拡散素子と、を備える。
A−1.全体構成
本発明の光拡散素子は、第1の屈折率を有する第1の領域と第2の屈折率を有する第2の領域とを有する。本発明の光拡散素子は、第1の領域と第2の領域との屈折率差により、光拡散機能を発現する。本発明においては、第1の領域および第2の領域が微細凹凸状でかつ球殻状の境界を形成している。したがって、本発明の光拡散素子においては、外見的には、微細凹凸状でかつ球殻状の境界で包囲された第1の領域が、第2の領域に分散した状態となっている。当該境界の微細凹凸のサイズは、好ましくは光の波長以下である。すなわち、屈折率の異なる第1の領域と第2の領域との間に光の波長以下のサイズの微細凹凸状の境界を形成することにより、凹凸の高さに応じた実質的な屈折率の変調領域が形成される。
上記のとおり、マトリクス10は、好ましくは樹脂成分11および超微粒子成分12を含む。上記のように、ならびに、図1Aおよび図1Bに示すように、超微粒子成分12は、マトリクス10と光拡散性微粒子20との界面近傍に屈折率変調領域30を形成するようにして、樹脂成分11に分散している。
樹脂成分11は、上記微細凹凸状の境界(結果として屈折率変調領域)が形成される限りにおいて、任意の適切な材料で構成される。好ましくは、上記のように、樹脂成分11は、光拡散性微粒子と同系の化合物であってかつ超微粒子成分とは異なる系の化合物で構成される。これにより、マトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍(光拡散性微粒子の表面近傍)に屈折率変調領域を良好に形成することができる。さらに好ましくは、樹脂成分11は、光拡散性微粒子と同系の中でも相溶性の高い化合物で構成される。これにより、所望の屈折率勾配を有する屈折率変調領域を形成することができる。
|nP−nA|<|nP−nB|・・・(1)
式(1)中、nAはマトリクスの樹脂成分の屈折率を表し、nBはマトリクスの超微粒子成分の屈折率を表し、nPは光拡散性微粒子の屈折率を表す。さらに、樹脂成分は下記式(2)も満足し得る:
|nP−nA|<|nA−nB|・・・(2)
樹脂成分の屈折率は、好ましくは1.40〜1.60である。
超微粒子成分12は、上記のように、好ましくは上記樹脂成分および後述の光拡散性微粒子とは異なる系の化合物で構成され、より好ましくは無機化合物で構成される。好ましい無機化合物としては、例えば、金属酸化物、金属フッ化物が挙げられる。金属酸化物の具体例としては、酸化ジルコニウム(ジルコニア)(屈折率:2.19)、酸化アルミニウム(屈折率:1.56〜2.62)、酸化チタン(屈折率:2.49〜2.74)、酸化ケイ素(屈折率:1.25〜1.46)が挙げられる。金属フッ化物の具体例としては、フッ化マグネシウム(屈折率:1.37)、フッ化カルシウム(屈折率:1.40〜1.43)が挙げられる。これらの金属酸化物および金属フッ化物は、光の吸収が少ない上に、電離線硬化型樹脂や熱可塑性樹脂などの有機化合物では発現が難しい屈折率を有しているので、光拡散性微粒子との界面から離れるにつれて超微粒子成分の重量濃度が相対的に高くなることにより、屈折率を大きく変調させることができる。光拡散性微粒子とマトリクスとの屈折率差を大きくすることにより、薄膜であっても高ヘイズを実現でき、かつ、屈折率変調領域が形成されるので後方散乱防止の効果も大きい。特に好ましい無機化合物は、酸化ジルコニウムである。
光拡散性微粒子20もまた、上記微細凹凸状の境界(結果として屈折率変調領域)が良好に形成される限りにおいて、任意の適切な材料で構成される。好ましくは、上記のように、光拡散性微粒子20は、上記マトリクスの樹脂成分と同系の化合物で構成される。例えば、マトリクスの樹脂成分を構成する電離線硬化型樹脂がアクリレート系樹脂である場合には、光拡散性微粒子もまたアクリレート系樹脂で構成されることが好ましい。より具体的には、マトリクスの樹脂成分を構成するアクリレート系樹脂のモノマー成分が例えば上記のようなPETA、NPGDA、DPHA、DPPAおよび/またはTMPTAである場合には、光拡散性微粒子を構成するアクリレート系樹脂は、好ましくは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリレート(PMA)、およびこれらの共重合体、ならびにそれらの架橋物である。PMMAおよびPMAとの共重合成分としては、ポリウレタン、ポリスチレン(PS)、メラミン樹脂が挙げられる。特に好ましくは、光拡散性微粒子は、PMMAで構成される。マトリクスの樹脂成分および超微粒子成分との屈折率や熱力学的特性の関係が適切であるからである。さらに、好ましくは、光拡散性微粒子は、架橋構造(三次元網目構造)を有する。架橋構造の粗密(架橋度)を調整することにより、光拡散性微粒子表面において微粒子を構成するポリマー分子の自由度を制御することができるので、超微粒子成分の分散状態を制御することができ、結果として、所望の形状を有する微細凹凸状の境界により屈折率変調領域を形成することができる。例えば、後述の塗工液を塗布する際の光拡散性微粒子の樹脂成分前駆体(溶媒を含んでいてもよい)に対する膨潤度は、好ましくは100%〜200%である。ここで、「膨潤度」とは、架橋度の指標であり、膨潤前の粒子の平均粒径に対する膨潤状態の粒子の平均粒径の比率をいう。
本実施形態の光拡散素子の製造方法は、マトリクスの樹脂成分またはその前駆体と超微粒子成分と光拡散性微粒子とを揮発性溶剤中に溶解または分散させた塗工液を基材に塗布する工程(工程Aとする)と、該基材に塗布された塗工液を乾燥させる工程(工程Bとする)と、を含む。
樹脂成分またはその前駆体、超微粒子成分、および光拡散性微粒子については、それぞれ、上記A−2−1項、A−2−2項およびA−3項で説明したとおりである。代表的には、上記塗工液は前駆体および揮発性溶剤中に超微粒子成分および光拡散性微粒子が分散した分散体である。超微粒子成分および光拡散性微粒子を分散させる手段としては、任意の適切な手段(例えば、超音波処理、攪拌機による分散処理)が採用され得る。
上記塗工液の乾燥方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥が挙げられる。好ましくは、加熱乾燥である。加熱温度は、例えば60℃〜150℃であり、加熱時間は、例えば30秒〜5分である。
好ましくは、上記製造方法は、上記塗布工程の後に上記前駆体を重合させる工程(工程C)をさらに含む。重合方法は、樹脂成分(したがって、その前駆体)の種類に応じて任意の適切な方法が採用され得る。例えば、樹脂成分が電離線硬化型樹脂である場合には、電離線を照射することにより前駆体を重合する。電離線として紫外線を用いる場合には、その積算光量は、好ましくは50mJ/cm2〜1000mJ/cm2である。電離線の光拡散性微粒子に対する透過率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上である。また例えば、樹脂成分が熱硬化型樹脂である場合には、加熱することにより前駆体を重合する。加熱温度および加熱時間は、樹脂成分の種類に応じて適切に設定され得る。好ましくは、重合は電離線を照射することにより行われる。電離線照射であれば、屈折率変調領域を良好に保持したまま塗膜を硬化させることができるので、良好な拡散特性の光拡散素子を作製することができる。前駆体を重合することにより、光拡散性微粒子との界面近傍において屈折率の異なる2つの領域が微細凹凸状の境界を形成し、それにより屈折率変調領域30が形成されているマトリクス10が形成される。
図6は、本発明の別の実施形態による光拡散素子の概略断面図である。図6の光拡散素子100’は、マトリクス10と、マトリクス10中に分散された光拡散性微粒子20とを有する。光拡散性微粒子20は、その外郭が微細凹凸形状に形成されており、当該外郭部分により微細凹凸形状でかつ球殻状の境界が形成され、当該境界が屈折率変調領域30を構成する。すなわち、本実施形態においては、微細凹凸形状でかつ球殻状の境界(したがって、屈折率変調領域)は、光拡散性微粒子の表面の凹凸により形成されている。光拡散性微粒子の表面の凹凸は、任意の適切な手段により形成され得る。例えば、光拡散性微粒子の表面を適切な溶媒で処理することにより、微細な凹凸形状を形成することができる。表面処理に用いられる溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)のようなケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル系溶媒が挙げられる。マトリクス10は、例えば、超微粒子成分を用いる形態の樹脂成分に関して上記A−2−1項に記載したような樹脂で構成され得る。なお、本実施形態においては、マトリクス10は、超微粒子成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。また、微細凹凸形状でかつ球殻状の境界は、光拡散性微粒子の表面の凹凸のみにより形成されてもよく、光拡散性微粒子の表面の凹凸と超微粒子成分の分散濃度の勾配との組み合わせにより形成されてもよい。屈折率変調領域30においては、好ましくは、屈折率が実質的に連続的に変化する。なお、本実施形態においては、光拡散性微粒子が上記第1の領域に対応し、マトリクスが上記第2の領域に対応する。
B−1.光拡散素子付偏光板の全体構成
本発明の光拡散素子付偏光板は、代表的には、液晶表示装置の視認側に配置される。図7は、本発明の好ましい実施形態による光拡散素子付偏光板の概略断面図である。この光拡散素子付偏光板200は、光拡散素子100と偏光子110とを有する。光拡散素子100は、上記A−1項〜A−5項に記載した本発明の光拡散素子である。光拡散素子100は、光拡散素子付偏光板が液晶表示装置の視認側に配置された場合に最も視認側となるように配置されている。1つの実施形態においては、光拡散素子100の視認側に低反射層または反射防止処理層(アンチリフレクション処理層)が配置されている(図示せず)。図示例においては、光拡散素子付偏光板200は、偏光子の両側に保護層120および130を有する。光拡散素子、偏光子および保護層は、任意の適切な接着剤層または粘着剤層を介して貼り付けられている。保護層120および130の少なくとも1つは、目的、偏光板の構成および液晶表示装置の構成に応じて省略されてもよい。例えば、光拡散素子を形成する際に用いられる基材が保護層として機能し得る場合には、保護層120が省略され得る。本発明の光拡散素子付偏光板は、コリメートバックライトフロント拡散システムを採用した液晶表示装置における視認側偏光板として特に好適に用いられ得る。
上記偏光子110としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、1〜80μm程度である。
上記保護層120および130は、偏光板の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
図8を参照して、本発明の光拡散素子付偏光板の製造方法の一例について簡単に説明する。図8において、符号111および112は、それぞれ、偏光板および光拡散素子/基材の積層体を巻回するロールであり、符号122は搬送ロールである。図示例では、偏光板(保護層130/偏光子110/保護層120)と、光拡散素子100/基材101の積層体とを矢印方向に送り出し、それぞれの長手方向を揃えた状態で貼り合わせる。その際、光拡散素子100と偏光板の保護層120とが隣接するように貼り合わせる。その後、必要に応じて基材101を剥離することにより、図7に示すような光拡散素子付偏光板200が得られ得る。図示しないが、例えば、偏光板(保護層130/偏光子110)と光拡散素子100/基材101の積層体とを、基材101と偏光子110とが隣接するように貼り合わせ、基材が保護層として機能する光拡散素子付偏光板を作製することもできる。このように、本発明によれば、いわゆるロール・トゥ・ロールを採用することができるので、光拡散素子付偏光板を非常に高い製造効率で製造することができる。さらに、このロール・トゥ・ロール工程は、上記A−4項に記載の光拡散素子の製造工程から連続して行うことができるので、このような手順を採用すれば、光拡散素子付偏光板の製造効率をさらに向上させることができる。
図9は、本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。液晶表示装置500は、液晶セル510と、液晶セルの両側に配置された偏光板520および530と、偏光板530の外側に設けられたバックライトユニット540と、偏光板520の外側(視認側)に設けられた光拡散素子100とを備える。目的に応じて任意の適切な光学補償板(位相差板)が、液晶セル510と偏光板520および/または530との間に配置され得る。液晶セル510は、一対の基板(代表的には、ガラス基板)511および512と、基板511および512間に配された、表示媒体としての液晶を含む液晶層513とを有する。
マイクロゲージ式厚み計(ミツトヨ社製)にて基材と光拡散素子との合計厚みを測定し、当該合計厚みから基材の厚みを差し引き、光拡散素子の厚みを算出した。
(2)微細凹凸状の境界の確認ならびに凹凸平均ピッチおよび凹凸平均高さの算出
透過型電子顕微鏡(TEM)(日立製作所製、商品名「H−7650」、加速電圧100kV)を用いて、2次元および3次元の画像を観察した。2次元画像については、実施例および比較例で得られた光拡散素子と基材との積層体を液体窒素で冷却しながら、ミクロトームにて0.1μmの厚さにスライスして測定試料とし、当該測定試料の光拡散素子部分の微粒子の状態および当該微粒子とマトリクスとの界面の状態を観察した。3次元画像については、上記で得られた測定試料に撮影位置補正用のマーカーとして直径5nmの金粒子を付着させ、−60°から60°にわたって1°ごとに連続傾斜TEM画像(121枚)を撮影した。この121枚のTEM画像について、Fiducial Marker法により位置補正を行い、3次元画像を再構成した。再構成ソフトとしてIMOD 3.9.3 1を、表示ソフトとしてMercuury Computer Systems,Amiraを用いた。上記のようにして得られた3次元再構成像から、光拡散性微粒子とマトリクスとの界面(実界面)を抽出し、当該実界面に対して近似曲面によるフィッティングを行い、実界面において近似曲面から30nm以上突出している凸部間の距離および凸部の平均高さから微細凹凸状の境界の凹凸の平均ピッチおよび凹凸平均高さを求めた。なお、フィッティングの近似曲線には下記の式を用いた。
z=ax2+by2+cxy+dx+ey+f
(3)ヘイズ
JIS 7136で定める方法により、ヘイズメーター(村上色彩科学研究所社製、商品名「HN−150」)を用いて測定した。
(4)光拡散半値角
光拡散素子の正面からレーザー光を照射し、拡散した光の拡散角度に対する拡散輝度を、ゴニオフォトメーターで1°おきに測定し、図12に示すように、レーザーの直進透過光を除く光拡散輝度の最大値から半分の輝度となる拡散角度を、拡散の両側で測定し、当該両側の角度を足したもの(図12の角度A+角度A’)を光拡散半値角とした。
(5)後方散乱率
実施例および比較例で得られた光拡散素子と基材との積層体を、透明粘着剤を介して黒アクリル板(住友化学社製、商品名「SUMIPEX」(登録商標)、厚み2mm)の上に貼り合わせ、測定試料とした。この測定試料の積分反射率を分光光度計(日立計測器社製、商品名「U4100」)にて測定した。一方、上記光拡散素子用塗工液から微粒子を除去した塗工液を用いて、基材と透明塗工層との積層体を作製して対照試料とし、上記と同様にして積分反射率(すなわち、表面反射率)を測定した。上記測定試料の積分反射率から上記対照試料の積分反射率(表面反射率)を差し引くことにより、光拡散素子の後方散乱率を算出した。
超微粒子成分としてのジルコニアナノ粒子(平均1次粒子径10nm、平均粒子径60nm、屈折率2.19)を62%含有するハードコート用樹脂(JSR社製、商品名「オプスターKZ6661」(MEK/MIBK含有))100部に、樹脂成分の前駆体としてのペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコート#300」、屈折率1.52)の50%メチルエチルケトン(MEK)溶液を11部、光重合開始剤(BASFジャパン社製、商品名「イルガキュア907」)を0.5部、レベリング剤(DIC社製、商品名「GRANDIC PC 4100」)を0.5部、および、光拡散性微粒子としてのポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子(積水化成品工業社製、商品名「SAX−102」、平均粒径2.5μm、屈折率1.495)を15部添加した。攪拌機(浅田鉄工株式会社製、商品名「デスパ(DESPA)」)を用いてこの混合物を30分間攪拌して分散処理を行い、上記の各成分が均一に分散した塗工液を調製した。この塗工液の固形分濃度は55%であった。当該塗工液を調製後ただちに、バーコーターを用いてTACフィルム(富士フィルム社製、商品名「フジタック」、厚み40μm)からなる基材上に塗工し、100℃にて1分間乾燥後、積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射し、厚み11μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子におけるマトリクスの平均屈折率nMと光拡散性微粒子の屈折率nPとの差は0.12(nM>nP)であった。得られた光拡散素子を上記(1)〜(5)の評価に供した。結果を、後述の実施例2〜10および比較例1〜3の結果と併せて表1に示す。さらに、得られた光拡散素子をTEMで観察した。結果を図13に示す。当該TEM画像から3次元画像を再構成し、さらに当該3次元再構成像を2値化した。その結果、図2B〜図2Eに示すような微細凹凸状の境界が形成されていることを確認した。加えて、当該TEM画像から、光拡散性微粒子表面からの距離と超微粒子成分の分散濃度(存在比率)との関係を算出した。その結果、図3に示すように、超微粒子成分の分散濃度の勾配が形成されていることを確認した。
光拡散性微粒子としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子(積水化成品工業社製、商品名「XX−131AA」、平均粒径2.5μm、屈折率1.495)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。形成された微細凹凸状の境界において、凸部間の最大距離は32nm、であり、平均ピッチは19nmであった。また、凹凸の最大高さは78nmであり、凹凸平均高さは52nmであった。
光拡散性微粒子としてのポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子(根上工業社製、商品名「アートパールJ4P」、平均粒径2.5μm、屈折率1.495)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
超微粒子成分としてチタニアナノ粒子(平均1次粒子径10nm、平均粒子径60nm、屈折率2.3)を60%含有するハードコート用樹脂(JSR社製、MEK/PGME含有)100部を用いたこと以外は実施例3と同様にして、厚み11μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
樹脂成分の前駆体としてヒドロキシエチルアクリルアミド(株式会社興人製、商品名「HEAA」、屈折率1.52)の50%MEK溶液11部を用いたこと以外は実施例3と同様にして、厚み11μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
樹脂成分の前駆体としてアクリロイルモルホリン(株式会社興人製、商品名「ACMO」、屈折率1.52)の50%MEK溶液11部を用いたこと以外は実施例3と同様にして、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
光拡散性微粒子としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)に親水基を付与した微粒子(積水化成品工業製、商品名「XX−157−AA」、平均粒子径2.5μm、屈折率1.495)15部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
光拡散性微粒子としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)とポリスチレン(PS)の共重合微粒子(積水化成品工業製、商品名「XX−164−AA」、平均粒子径2.5μm、屈折率1.495)15部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
超微粒子成分としてのジルコニアナノ粒子のハードコート用樹脂中の含有量を25%としたこと以外は実施例1と同様にして、厚み9μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
超微粒子成分としてシリカナノ粒子(平均1次粒子径10nm、平均粒子径40nm、屈折率1.49)を30%含有するハードコート用樹脂(JSR社製、商品名「Z7540」)100部に、光拡散性微粒子としてポリスチレン(PS)微粒子(綜研化学社製、商品名「SX−350H」、平均粒子径3.5μm、屈折率1.595)15部を添加したこと、ならびに、当該PS微粒子の表面をMEKで処理して微細凹凸形状としたこと(PS微粒子を金平糖のような形状としたこと)以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。さらに、得られた光拡散素子の光拡散性微粒子近傍のTEM画像を図14に示す。このTEM画像から、微細凹凸状の境界が形成されていることを確認した。
光拡散性微粒子としてPMMA微粒子の代わりにシリコーン樹脂微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名「トスパール120」、平均粒径2.0μm、屈折率1.43)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み13μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
超微粒子成分としてのジルコニアナノ粒子を含まないハードコート用樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。さらに、得られた光拡散素子の光拡散性微粒子近傍のTEM画像を図15に示す。このTEM画像から、光拡散性微粒子とマトリクスとの界面は明確であり、微細凹凸状の境界は形成されていないことがわかる。
光拡散性微粒子としてシリカにメチル修飾を施した微粒子(日本触媒製、商品名「シーホスターKE−250」)15部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
マルチドメイン型VAモードの液晶セルを備える市販の液晶テレビ(SONY社製、ブラビア20型、商品名「KDL20J3000」)から液晶セルを取り出した。当該液晶セルの両側に、市販の偏光板(日東電工社製、商品名「NPF−SEG1423DU」)を、それぞれの偏光子の吸収軸が直交するようにして貼り合わせた。より具体的には、バックライト側偏光板の偏光子の吸収軸方向が垂直方向(液晶パネルの長辺方向に対して90°)となり、視認側偏光板の偏光子の吸収軸方向が水平方向(液晶パネルの長辺方向に対して0°)となるようにして貼り合わせた。さらに、視認側偏光板の外側に、実施例1の光拡散素子を基材から転写して貼り合わせ、液晶パネルを作製した。
比較例1の光拡散素子を用いたこと以外は実施例11と同様にして液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について暗所にて白表示および黒表示を行い、その表示状態を目視にて観察した。その結果、斜め方向から見た場合、暗所の白表示の輝度は高かったが、明所での黒表示は白ぼけて見えた。
比較例2の光拡散素子を用いたこと以外は実施例11と同様にして液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について暗所にて白表示および黒表示を行い、その表示状態を目視にて観察した。その結果、斜め方向から見た場合、暗所の白表示の輝度は高かったが、明所での黒表示は白ぼけて見えた。
実施例1の光拡散素子の代わりに実施例2の光拡散素子を用いたこと以外は実施例11と同様にして液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について暗所にて白表示および黒表示を行い、その表示状態を目視にて観察した。その結果、斜め方向から見た場合、明所での黒表示が黒くかつ暗所の白表示の輝度が高いという良好な表示特性を示した。
実施例1の光拡散素子の代わりに実施例3の光拡散素子を用いたこと以外は実施例11と同様にして液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について暗所にて白表示および黒表示を行い、その表示状態を目視にて観察した。その結果、斜め方向から見た場合、明所での黒表示が黒くかつ暗所の白表示の輝度が高いという良好な表示特性を示した。
表1から明らかなように、微細凹凸状の境界が形成された実施例の光拡散素子は、ヘイズが高く、かつ、後方散乱率が低かった。また、実施例の光拡散素子は、厚みが9μm〜11μmであり、非常に薄い。さらに、実施例の光拡散素子は、コリメートバックライトフロント拡散システムの液晶表示装置のフロント拡散素子として用いた場合に、非常に優れた表示特性を示した。一方、微細凹凸状の境界が形成されない比較例1の光拡散素子は、ヘイズは高いが後方散乱率が高く、比較例2の光拡散素子は、後方散乱率は低いがヘイズはきわめて不十分であった。比較例の光拡散素子は、コリメートバックライトフロント拡散システムの液晶表示装置のフロント拡散素子として用いた場合に、明所での黒表示が白ぼけるという問題が認められた。
11 樹脂成分
12 超微粒子成分
20 光拡散性微粒子
25 微細凹凸状の境界
30 屈折率変調領域
100、100’ 光拡散素子
110 偏光子
120 保護層
130 保護層
200 光拡散素子付偏光板
500 液晶表示装置
Claims (9)
- マトリクスと該マトリクス中に分散された光拡散性微粒子とを有し、
該マトリクスが樹脂成分および超微粒子成分を含み、
該マトリクスと該光拡散性微粒子との界面またはその近傍にて屈折率の異なる2つの領域が微細凹凸状でかつ球殻状の境界を形成しており、該微細凹凸状でかつ球殻状の境界が、該マトリクス中の該超微粒子成分が分散している領域と分散していない領域とにより形成されており、
該境界において屈折率の変調領域が形成されており、該屈折率の変調領域において屈折率が連続的に変化する、
光拡散素子。 - 前記マトリクスがレベリング剤をさらに含む、請求項1に記載の光拡散素子。
- 前記微細凹凸状でかつ球殻状の境界が、前記光拡散性微粒子の表面の凹凸により形成されている、請求項1または2に記載の光拡散素子。
- 前記超微粒子成分の平均1次粒子径が1nm〜100nmである、請求項1から3のいずれかに記載の光拡散素子。
- ヘイズが90%〜99.9%である、請求項1から4のいずれかに記載の光拡散素子。
- 厚みが4μm〜50μmである、請求項1から5のいずれかに記載の光拡散素子。
- 光拡散半値角が10°〜150°である、請求項1から6のいずれかに記載の光拡散素子。
- 請求項1から7のいずれかに記載の光拡散素子と偏光子とを有する、光拡散素子付偏光板。
- 液晶セルと、
該液晶セルに向かってコリメート光を出射する平行光光源装置と、
該液晶セルを通過したコリメート光を透過および拡散させる、請求項1から7のいずれかに記載の光拡散素子と、を備える
液晶表示装置。
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