(実施形態1)
図1に、本実施形態の電力制御システム1の概要構成を示す。電力制御システム1は、宅内に設置される一つ以上の電気機器180(図1では180A、180B、180Cの三つ)によって消費される電力量を監視し、電気機器180等を制御する。宅内に設置される電気機器180の数及び種類は任意である。
宅内には、HEMS(Home Energy Management System)コントローラ100、需要家端末120、自立切替盤130、電力計測装置140、発電設備150、蓄電設備160、電気自動車(EV)170、電気機器180、スマートメータ30が含まれる。電力制御システム1全体のうち、宅内に含まれる部分を宅内システムと呼ぶ。また、HEMSコントローラ100を“電力制御装置”とも呼ぶ。
なお、需要家は電気自動車170を電力制御システム1から切り離して使用する(運転する)ことができ、また、スマートメータ30は一般に需要家ではなく電力小売事業者によって管理されるのであるが、便宜上、電気自動車170とスマートメータ30も宅内システムに含めることとする。
図1には一つの宅内システムしか記載されていないが、電力制御システム1は複数の宅内システムを備えることができる。典型的には、一つの需要家(ユーザともいう)に一つの宅内システムが対応付けられる。
デマンドレスポンスオートメーションサーバ(以下、「DRAS」と略す)10は、電力の需要と供給、あるいは電力の市場価格の変動等に基づいて、需要家に消費電力の調整を要請するために使用されるサーバである。DRAS10は、電力を生成して需要家へ供給する電力小売事業者によって管理される。
デマンドレスポンス(以下、「DR」と略す)とは、電力の市場価格が高騰したときや、電力小売事業者の電力の供給能力の信頼性が低下するおそれがあるときに、電力小売事業者からの要請に応じて、価格の変更又は需要家へのインセンティブの提供を伴って、宅内システムが消費電力を調整しながら電気機器180や蓄電設備160等を制御することである。
DRの具体的な方法には、例えば、CPP(Critical Peak Pricing)、PTR(Peak Time Rebate)、RTP(Real Time Pricing)がある。
CPPでは、電力の需要がピークに達する時間帯における小売価格が、他の時間帯における小売価格よりも相対的に高く設定される。ピーク時間帯に電気料金が高くなるので、需要家がピーク時間帯に電力の使用を控えることが見込まれる。結果として、総需要量に対して総供給量が不足する心配が薄れ、電力の供給能力の信頼性が担保される。
PTRでは、需要家がピーク時間帯に電力の使用量を減らすと、その減らした量に応じて電気代の一部が払い戻される。需要家がピーク時間帯に電力の使用を抑えればその分支払うべき電気代が安くなるので、需要家がピーク時間帯に電力の使用を控えることが見込まれる。結果として、総需要量に対して総供給量が不足する心配が薄れ、電力の供給能力の信頼性が担保される。
RTPでは、電力小売事業者が総需要量と総供給量の変動の見込みに基づいて近い将来(例えば翌日)の電力の小売価格を変動させる。小売価格が相対的に高く設定された時間帯において需要家が電力の使用を控えることが見込まれる。結果として、総需要量に対して総供給量が不足する心配が薄れ、電力の供給能力の信頼性が担保される。
なお、DRの具体的な方法はこれらに限定されない。例えば、電力小売事業者が予め時間帯ごとに異なる電気料金を設定したり、電力の需給バランスに応じて刻一刻と電気料金を変動させたりしてもよい。
情報収集サーバ20は、複数の宅内システムに関する情報を収集する。例えば、情報収集サーバ20は、通信ネットワーク50に接続された複数の宅内システムからDRに応じるか否かを示す参加状況に関する情報を収集し、DRへの参加率等の情報を需要家に提供する。
スマートメータ30は、電気機器180等による消費電力量を計測し、DRAS10へ、及び/又は、通信ネットワーク50を介して電力会社が管理するサーバ(図示せず)へ、計測結果を送信する。
通信ネットワーク50は、宅内システムとDRAS10と情報収集サーバ20とを通信可能に接続する。典型的には、通信ネットワーク50はインターネットである。
HEMSコントローラ100は、DRAS10から送信される、DRを実施することを予告する予告通知、DRを実施することを示す実施通知、DRの実施をキャンセルすることを示すキャンセル通知を受信し、受信した予告通知又は実施通知又はキャンセル通知に基づいて、宅内システムを制御する。予告通知と実施通知とキャンセル通知をまとめてDR指令という。
DRには、電力の需要を抑える要請だけでなく、蓄電設備160への充電等によって電力の需要を増やす要請もある。商用電源に余剰が発生し、電力の消費を増やす要請の予告通知、あるいは、電力の消費を増やす要請の実施通知をDRAS10から受信すると、HEMSコントローラ100は、商用電源から電力を買って蓄電設備160へ充電する処理を開始する。
勿論、HEMSコントローラ100は、DR指令とは関係なく、例えば需要家の指示に従って、宅内システムに含まれる電気機器180や蓄電設備160等を制御することもできる。
需要家端末120は、例えば、携帯電話機、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、タブレット型端末等である。需要家は、需要家端末120を使って電力制御システム1の状態を示す情報や、受信した要請に関する情報等を見たり、HEMSコントローラ100へ指示を入力したりすることができる。
自立切替盤130は、宅内電力線を外部の商用電源と繋げたり、宅内電力線を外部の商用電源から切り離したりする。
宅内システムの運転モードには二種類ある。一つは、自立切替盤130によって宅内電力線が商用電源と繋げられ、商用電源から電力の供給を受ける連携モードである。連携モードでは、発電設備150によって発電された電力を商用電源へ供給する(売電する)ことも可能である。
もう一つは、自立切替盤130によって宅内電力線が商用電源から切り離され、商用電源から電力の供給を受けずに、発電設備150によって発電された電力、及び/又は、蓄電設備160に蓄えられた電力を宅内に供給する自立モードである。
運転モードの切り替えは、自立切替盤130によって検出される、商用電源からの電力の供給状態を示す検出結果に基づいて、自立切替盤130によって行われる。典型的には、商用電源が停電すると自立モードに設定され、商用電源が停電していない間には連携モードに設定される。
宅内システムには一つ以上の電力計測装置140が設置されている。電力計測装置140は、発電設備150から宅内電力線へ流れる電力量、蓄電設備160から宅内電力線へもしくは宅内電力線から蓄電設備160へ流れる電力量、電気機器180により消費される消費電力量、等を計測する。電力計測装置140による計測結果はHEMSコントローラ100に随時送信される。HEMSコントローラ100は計測結果を受信して保存する。
発電設備150は、太陽光発電を行い、生成した電力を宅内電力線もしくは蓄電設備160に供給する。なお、発電方法は太陽光発電でなくてもよい。
蓄電設備160は、商用電源から供給された電力もしくは発電設備150により生成された電力を蓄える。
電気自動車170は、電気を動力源とした自動車である。電気自動車170は、宅内システムに接続されていれば、任意のタイミングで充放電が可能な蓄電池としても機能する。電気自動車170は、宅内システムに接続されていなければ、バッテリーに蓄えた電力を使って走行可能な車両となる。
電気機器180は、宅内電力線に接続されており、商用電源と発電設備150と蓄電設備160とのうち少なくともいずれか一つから電力の供給を受けることにより動作する。
電気機器180は、具体的には、空気調和機、電気調理器、テレビジョン受像機、換気設備、給湯設備、床暖房設備等である。ただし、電気機器180の種類はこれらに限られず、電気によって動作し、HEMSコントローラ100によって制御可能であればよい。
次に、HEMSコントローラ100のハードウェア構成について、図2を用いて説明する。
通信部201は、NIC(Network Interface Card)を備え、宅内システム内の需要家端末120、自立切替盤130、電力計測装置140、発電設備150、蓄電設備160、電気自動車170、電気機器180、及び、スマートメータ30と通信する。
また、通信部201はDRAS10と通信する。通信部201は、スマートメータ30を介してDRAS10と通信することもあるし、通信ネットワーク50を介してDRAS10と通信することもある。本実施形態では、通信部201は、主に、通信ネットワーク50を介してDRAS10と通信するものとする。
画像処理部202は、ディスプレイ251に表示する画面データを生成し、例えば電力制御システム1の現在の動作状態を示す画面等、様々な画面を表示する。
音声処理部203は、記憶部205から音声データを取得し、再生し、音声をスピーカ252から出力する。
入力部204は、ボタンやタッチパネル等、需要家からの指示入力を受け付ける入力デバイスを備える。
記憶部205は、ハードディスク等の記憶装置を備え、HEMSコントローラ100を制御する各種のプログラム、電力計測装置140から受信した電力量を示すデータ、電気機器180の運転状態を示すデータ、オペレーティングシステム(OS)、画像データ、音声データ、テキストデータ等を記憶する。
制御部206は、CPU、ROM、RAMを備え、HEMSコントローラ100全体を制御する。
次に、需要家端末120のハードウェア構成について、図3を用いて説明する。
通信部301は、NICを備え、HEMSコントローラ100と通信する。
画像処理部302は、ディスプレイ351に表示する画面を構成するデータを生成し、表示する。
音声処理部303は、記憶部306から音声データを取得し、再生し、音声をスピーカ352から出力する。
I/O部304は、USB(Universal Serial Bus)等のインタフェースを備え、メモリカード、外付けハードディスク等を需要家端末120に接続する。
入力部305は、ボタンやタッチパネル等、需要家から指示入力を受け付ける入力デバイスを備える。
記憶部306は、ハードディスク等の記憶装置を備え、需要家端末120を制御する各種のプログラム、OS、画像データ、音声データ、テキストデータ等を記憶する。
制御部307は、CPU、ROM、RAMを備え、需要家端末120全体を制御する。
次に、DRAS10のハードウェア構成について、図4を用いて説明する。
通信部401は、NICを備え、HEMSコントローラ100と通信する。例えば、通信部401は、上述のDR指令をHEMSコントローラ100へ送信したり、DR指令が示す要請に応じるか否かの応答を示す応答データを受信したりする。また、通信部401は、通信ネットワーク50を介して情報収集サーバ20と通信する。
記憶部402は、DR指令が示す要請に応じるか否かを示す情報を、コントローラ100の識別情報と対応付けて記憶する。つまり、記憶部402には、各需要家が要請に応じるか否かを示す情報が記憶される。
制御部403は、CPU、ROM、RAMを備え、DRAS10全体を制御する。
なお、情報収集サーバ20のハードウェア構成は、DRAS10と同等であるので、詳しい説明を省略する。情報収集サーバ20は、少なくとも、外部と通信する通信部と、様々なデータを記憶する記憶部と、情報収集サーバ20全体を制御する制御部とを有していればよい。
次に、本実施形態の電力制御システム1によって実行される処理の詳細について説明する。
HEMSコントローラ100の制御部206は、需要家の電力小売事業者との契約形態あるいは電力小売事業者からの要請に合わせ、蓄電設備160への充電と蓄電設備160からの放電を制御する。また、制御部206は、充放電の実行を許可するか否かの需要家からの指示入力に基づいて、蓄電設備160による充放電を制御する。
(充電の開始)
制御部206は、蓄電設備160が満充電でない場合において、予め決められた充電開始条件が満たされると、発電設備150によって生成された電力及び/又は商用電源からの電力を蓄電設備160に蓄える制御を開始する。
例えば、充電開始条件は「電力に余剰が発生したこと」である。制御部206は、発電設備150による発電量が電気機器180等による消費電力量を上回り、発電設備150による発電量に余剰が発生すると、発電設備150によって生成された電力を蓄電設備160に蓄える制御を開始する。
あるいは、充電開始条件は「発電量に余剰が発生し、且つ、売電価格が買電価格より安いこと」でもよい。制御部206は、発電設備150による発電量に余剰が発生し、且つ、電力小売事業者から電力を買うための価格(売電価格)が、電力小売事業者に電力を売るための価格(買電価格)を下回る場合に、発電設備150によって生成された電力を蓄電設備160に蓄える制御を開始する。
充電開始条件は「買電価格が相対的に安い時間帯であること」でもよい。制御部206は、電力小売事業者から電気料金データを取得して買電価格と売電価格を判別し、買電価格が相対的に安い時間になると、商用電源からの電力を蓄電設備160に蓄える制御を開始する。つまり買電して充電する。
充電開始条件は「電力小売事業者から充電を要請されたこと」でもよい。制御部206は、DRAS10から蓄電設備160への充電を要請するDR指令を受信すると、商用電源からの電力を蓄電設備160に蓄える制御を開始する。つまり買電して充電する。
充電開始条件は「需要家から充電開始の指示があったこと」でもよい。制御部206は、蓄電設備160に充電する旨の指示が需要家から入力されると、発電設備150によって生成された電力及び/又は商用電源からの電力を蓄電設備160に蓄える制御を開始する。
充電開始条件は「充電を開始するスケジュールが予め登録されており、充電を開始する時刻になったこと」でもよい。制御部206は、スケジュールが示す充電を開始する時刻になると、発電設備150によって生成された電力及び/又は商用電源からの電力を蓄電設備160に蓄える制御を開始する。
(充電の終了)
また、制御部206は、充電の開始後、予め決められた充電終了条件が満たされると、発電設備150によって生成された電力及び/又は商用電源からの電力を蓄電設備160に蓄える制御を終了する。
例えば、充電終了条件は「蓄電設備160が満充電になったこと」である。制御部206は、蓄電設備160の充電量が規定の容量に達すると、電力を蓄電設備160に蓄える制御を終了する。
あるいは、充電終了条件は「発電量の余剰が無くなったこと」でもよい。制御部206は、発電設備150による発電量が電気機器180等による消費電力量を下回る等、発電設備150による発電量に余剰が無くなると、制御部206は、発電設備150によって生成された電力を蓄電設備160に蓄える制御を終了する。充電の終了後、発電設備150によって生成された電力に余剰が発生するのであれば、発電設備150によって生成された電力の一部又は全部を商用電源へ供給する処理を開始し、売電してもよい。
充電終了条件は「売電価格が買電価格より高いこと」でもよい。制御部206は、売電価格が買電価格を上回る場合に、発電設備150によって生成された電力を蓄電設備160に蓄える制御を終了する。充電の終了後、発電設備150によって生成された電力に余剰が発生するのであれば、発電設備150によって生成された電力の一部又は全部を商用電源へ供給する処理を開始し、売電してもよい。
充電終了条件は「買電価格が相対的に高い時間帯であること」でもよい。制御部206は、電力小売事業者から電気料金データを取得して買電価格と売電価格を判別し、買電価格が相対的に高い時間になると、商用電源からの電力を蓄電設備160に蓄える制御を終了する。つまり電気代が高く付く時間帯には買電を控える。
充電終了条件は「電力小売事業者からの充電の要請がキャンセルされたこと」でもよい。制御部206は、DRAS10から蓄電設備160への充電の要請をキャンセルするDR指令を受信すると、商用電源からの電力を蓄電設備160に蓄える制御を終了する。
充電終了条件は「需要家から充電終了の指示があったこと」でもよい。制御部206は、蓄電設備160への充電を終了する旨の指示が需要家から入力されると、発電設備150によって生成された電力及び/又は商用電源からの電力を蓄電設備160に蓄える制御を終了する。
充電終了条件は「充電を終了するスケジュールが予め登録されており、充電を終了する時刻になったこと」でもよい。制御部206は、スケジュールが示す充電を終了する時刻になると、発電設備150によって生成された電力及び/又は商用電源からの電力を蓄電設備160に蓄える制御を終了する。
制御部206は、充電開始条件と充電終了条件を任意に変更することができる。また、充電開始条件と充電終了条件は上述したものに限られず、他の条件を定義してもよい。
(放電の開始)
制御部206は、蓄電設備160の残容量がカラでない場合において、予め決められた放電開始条件が満たされると、発電設備150によって生成された電力を蓄電設備160から宅内電力線又は商用電力線へ放出する制御を開始する。
例えば、放電開始条件は「電力小売事業者から放電を要請されたこと」である。制御部206は、蓄電設備160からの放電を要請するDR指令をDRAS10から受信すると、蓄電設備160に蓄えられた電力を商用電力線へ放出する(逆潮流させる)制御を開始する。
放電開始条件は「電力小売事業者から電力の消費を抑制する旨が要請されたこと」でもよい。制御部206は、消費電力の抑制を要請するDR指令をDRAS10から受信すると、蓄電設備160に蓄えられた電力を商用電力線又は宅内電力線へ放出する制御を開始する。
放電開始条件は「発電設備150による発電量が予め決められた量未満になったこと」でもよい。例えば現在時刻が夕方や夜や早朝等であったり天候が悪かったりして、太陽光発電が不可能あるいは発電効率が極端に悪いと判別すると、制御部206は、蓄電設備160に蓄えられた電力を宅内電力線へ放出する制御を開始する。つまり買電と放電により電力を賄う。
放電開始条件は「買電価格が相対的に高い時間帯であること」でもよい。制御部206は、電力小売事業者から電気料金データを取得して買電価格と売電価格を判別し、買電価格が相対的に高い時間になると、蓄電設備160に蓄えられた電力を宅内電力線へ放出する制御を開始する。つまり電気代が高く付く時間帯には買電を控え、なるべく放電により電力を賄う。
放電開始条件は「売電価格が相対的に高い時間帯であること」でもよい。制御部206は、電力小売事業者から電気料金データを取得して買電価格と売電価格を判別し、売電価格が相対的に高い時間帯になると、蓄電設備160に蓄えられた電力を商用電力線へ放出する制御を開始する。つまり売電を開始する。
放電開始条件は「需要家から放電開始の指示があったこと」でもよい。制御部206は、蓄電設備160からの放電を開始する旨の指示が需要家から入力されると、発電設備150に蓄えられた電力を蓄電設備160から放出する制御を開始する。
放電開始条件は「放電を開始するスケジュールが予め登録されており、放電を開始する時刻になったこと」でもよい。制御部206は、スケジュールが示す放電を開始する時刻になると、発電設備150に蓄えられた電力を蓄電設備160から放出する制御を開始する。
(放電の終了)
また、制御部206は、放電を開始した後、予め決められた放電終了条件が満たされると、発電設備150に蓄えられた電力を宅内電力線又は商用電力線へ放出する制御を終了する。
例えば、放電終了条件は「電力小売事業者からの放電の要請がキャンセルされたこと」である。制御部206は、DRAS10から蓄電設備160からの放電の要請をキャンセルするDR指令を受信すると、蓄電設備160に蓄えられた電力を商用電力線へ放出する制御を終了する。
放電終了条件は「電力小売事業者から電力の消費を抑制する要請がキャンセルされたこと」でもよい。制御部206は、DRAS10から電力の消費を抑制する要請をキャンセルするDR指令を受信すると、蓄電設備160に蓄えられた電力を商用電力線又は宅内電力線へ放出する制御を終了する。
放電終了条件は「発電設備150による発電量が予め決められた量以上になったこと」でもよい。例えば昼間に悪天候のため発電量が少なかったものの、天気が良くなって発電量が多くといったように、単位時間あたりの発電量もしくは発電効率が予め決められた量以上になると、制御部206は、蓄電設備160に蓄えられた電力を宅内電力線へ放出する制御を終了する。つまり充電を優先する。
放電終了条件は「買電価格が相対的に安い時間帯であること」でもよい。電力小売事業者から電気料金データを取得して買電価格と売電価格を判別し、買電価格が相対的に安い時間帯になると、蓄電設備160に蓄えられた電力を商用電力線へ放出する制御を終了し、商用電源からの電力を宅内電力線へ供給する制御を開始する。つまり売電を終了する代わりに買電を開始する。
放電終了条件は「需要家から放電終了の指示があったこと」でもよい。制御部206は、蓄電設備160からの放電を終了する旨の指示が需要家から入力されると、発電設備150に蓄えられた電力を蓄電設備160から放出する制御を終了する。
放電終了条件は「放電を終了するスケジュールが予め登録されており、放電を終了する時刻になったこと」でもよい。制御部206は、スケジュールが示す放電を終了する時刻になると、発電設備150に蓄えられた電力を蓄電設備160から放出する制御を終了する。
なお、制御部206は、蓄電設備160の充放電に加えて、もしくは、蓄電設備160の充放電の代わりに、電気自動車170が有する蓄電池の充放電を制御することもできる。制御部206は、蓄電設備160に適用する充電開始条件と、電気自動車170に適用する充電開始条件とを異ならせてもよいし、同じとしてもよい。充電終了条件、放電開始条件、放電終了条件についても同様である。
制御部206は、放電開始条件と放電終了条件を任意に変更することができる。また、放電開始条件と放電終了条件は上述したものに限られず、他の条件を定義してもよい。
(情報提供処理)
次に、DR指令が示す要請に応じるか否か、充電をすべきか否か、もしくは、放電をすべきか否か等を需要家が判断するための判断材料を需要家に提供する情報提供処理について説明する。
例えば、買電価格が相対的に安い時間帯において蓄電設備160の残容量が少ないのであれば、一般には、その安い時間帯に買電して充電しておくことが望ましい。しかし、需要家の都合等の理由により、充電しなくてもよい、もしくは充電しないほうがよい、という場合もある。また、需要家によっては、又は、機会によっては、金銭的なコストを抑えることを何より優先したいという場合があるし、金銭的なコストが増えてでも快適さを優先したいという場合もある。そこで、本実施形態の電力制御システム1は、需要家にとっての判断材料となる複数の要因のそれぞれを評価して需要家に提示することにより、需要家の好みに合った電力制御を実現する。
本実施形態では、上記の要因として、経済的な要因、環境的な要因、快適さの要因、の三つを定義する。
経済的な要因とは、買電金額と売電価格に代表されるように、金銭的なコストの大きさのことである。経済的な要因を重視する実行計画(電力制御計画)によれば、充電の可否及び放電の可否は、金銭的なコストがより少なくなるように決定される。
この経済的な要因には、現在の買電金額と売電価格の他に、将来の買電金額の見込みと売電価格の見込み、発電設備160を使用することによるランニングコスト、ある期間における買電価格及び/又は売電価格の変動の度合い、買電価格及び/又は売電価格が見込みに反して変動するリスク、等も含まれる。
環境的な要因とは、発電による二酸化炭素の排出量のように、環境に与える影響の大きさのことである。環境的な要因を重視する実行計画によれば、充電の可否及び放電の可否は、環境的な負荷がより少なくなるように決定される。
快適さの要因とは、例えば暑いときにもっと部屋を涼しくしたい、寒いときにもっと部屋を暖かくしたいといったように、需要家の要望や嗜好にどれだけ合うかということである。快適さの要因を重視する実行計画によれば、充電の可否及び放電の可否は、需要家の要望や嗜好になるべく合致するように決定される。
経済的な要因と環境的な要因と快適さの要因のすべてを同時に最適化することは通常困難である。そのため、経済的な要因を重視するならば、その分環境的な要因と快適さの要因をある程度犠牲にせざるを得ないし、環境的な要因を重視するならば、その分経済的な要因と快適さの要因をある程度犠牲にせざるを得ないし、快適さの要因を重視するならば、その分経済的な要因と環境的な要因をある程度犠牲にせざるを得ない。需要家は、経済的な要因を考慮した第1種の評価値(経済性を示す評価値)と、環境的な要因を考慮した第2種の評価値(環境性を示す評価値)と、快適さの要因を考慮した第3種の評価値(快適性を示す評価値)とのバランスを、要請に応じる場合と応じない場合とで見比べながら、DR指令に基づく要請に応じるか否かを選択することになる。
HEMSコントローラ100の制御部206が実行計画を作成する上で参照される情報には、例えば次のような情報がある。
・発電設備160による発電量の過去の実績値と将来の予測値。
・宅内システムによる消費電力量の実績値と予測値。
・電力小売事業者から提供される、買電価格と売電価格を示す電気料金データ。
・要請に応じることにより需要家が得ることができるインセンティブ。
・需要家によって設定された電気機器180等の運転スケジュール。
・需要家の行動予定。
・現在の天気、外気の温度と湿度、部屋の中の温度と湿度等の気象データ。
・将来予想される天気、外気の温度と湿度、部屋の中の温度と湿度等の気象データ。
・要請に対する他の需要家による参加の状況。
・他の需要家による売電量と買電量の実績値と予測値。
以上列記した情報に限らず、HEMSコントローラ100は様々な情報を元に実行計画を作成することができる。
本実施形態では、HEMSコントローラ100の制御部206は、DR指令を受信すると、DR指令が示す要請に応じる第1実行計画(第1の実行計画)600と、DR指令が示す要請に応じない(要請を無視する)第2実行計画(第2の実行計画)700とを作成し、それぞれの実行計画に対する、経済的な要因を考慮した第1種の評価値と、環境的な要因を考慮した第2種の評価値と、快適さの要因を考慮した第3種の評価値とを計算し、需要家に提示する。需要家は、提示された評価値を参考に、要請に応じるか否かを選択する。制御部206は、需要家による選択結果に基づいて蓄電設備160や発電設備150や電気機器180等を制御する。
(実行計画の作成と評価値の計算)
次に、制御部206によって行われる、実行計画を作成する処理、及び、評価値を計算する処理について説明する。
図5に、需要家により設定されたスケジュールを示すスケジュール情報500の例を示す。需要家は、入力部204もしくは需要家端末120を操作して、需要家自身のスケジュールや電気機器180を動作させるスケジュールを入力する。制御部206は、需要家からの入力に基づいて、スケジュールに対応付けられる需要家を示す識別情報又は電気機器180を示す識別情報と、スケジュールの内容を示す情報と、スケジュールの開始日時と、スケジュールの終了日時と、を対応付けて記憶部205に記憶する。
制御部206は、需要家と電気機器180との対応付けを示すデータを記憶部205に予め記憶しており、スケジュールに示される需要家に対応付けられる電気機器180を判別する。そして、制御部206は、判別した電気機器180をスケジュールに指定された動作の内容に従って制御する実行計画を作成する。DR指令が示す要請を考慮しない、スケジュール通りの実行計画は、上述の第2実行計画700となる。
スケジュールに動作対象の電気機器180が直接指定されている場合には、制御部206は、指定された電気機器180を指定された動作の内容に従って制御する実行計画を作成する。
スケジュールが示す期間の一部又は全部が、DR指令が示すDR期間(需要を減少させる要請であれば、需要の減少が要請される期間;需要を増加させる要請であれば、需要の増加が要請される期間)と重なる場合、制御部206は、DR指令が示す期間と重ならない期間については、入力されたスケジュール通りに制御し、DR指令が示す期間と重なる期間については、要請に従って消費電力等を調整して制御する、という実行計画を作成する。DR指令が示す要請に基づいて作成した実行計画は、上述の第1実行計画600となる。
節電を要請する予告通知を受信すると、制御部206は、入力されたスケジュールが示す全期間のうち、DR指令が示す期間と重なる期間(重複期間)において、スケジュールに対応付けられる電気機器180の動作を停止あるいは使用可能な機能を制限したり、蓄電設備160から放電させたりすることにより、重複期間での消費電力量及び/又は買電量を減らす第1実行計画600を作成する。
制御部206は、DR指令が示す要請に応じる場合に各電気機器180に動作させるべき処理を予め定めておき、重複期間ではその予め定めた処理を電気機器180に行わせる第1実行計画600を作成する。
あるいは、電気機器180は、DR指令が示す要請に応じる場合に実行すべき処理を定義する情報を予め記憶しておき、HEMSコントローラ100から要請に応じる旨が通知されると、この予め定義された実行すべき処理を実行するようにしてもよい。この場合、HEMSコントローラ100は、すべての電気機器180について、要請に応じる場合に実行させるべき具体的な処理を予め定義しておく必要はなく、要請に応じる旨を電気機器180に通知するだけでよい。
また、電気機器180が、要請に応じるときに適用される第1動作モードと、要請に応じない場合もしくは要請が無いときに適用される第2動作モードと、の二種類の動作モードを有し、HEMSコントローラ100の制御部206が、要請に応じるならば、電気機器180に第1動作モードで動作することを指示し、要請に応じないならば、電気機器180に第2動作モードで動作させることを指示するようにしてもよい。
第1動作モードにおいて電気機器180が行う具体的な処理内容と、第2動作モードにおいて電気機器180が行う具体的な処理内容は、本発明によって限定されず、任意である。
図6に、制御部206によって作成された、要請に応じる第1実行計画600の例を示す。制御部206は、電気機器180等のそれぞれについて、稼働させるか否か、稼働させる場合にはその稼働内容(空気調和機であれば風量や目標温度等)を決定して第1実行計画600を作成し、第1実行計画600を示すデータを記憶部205に格納する。
図7に、制御部206によって作成された、要請に応じない第2実行計画700の例を示す。制御部206は、作成した第2実行計画700を示すデータを記憶部205に格納する。
図6と図7には、DR期間を含む一日間だけの実行計画が示されているが、制御部206は、DR期間より前の期間、及び/又は、DR期間より後の期間、を含む二日以上の実行計画を作成することができる。
制御部206は、スケジュール情報500を用いずに、第1実行計画600と第2実行計画700とを作成することもできる。
具体的には、DR期間と重複するスケジュールが設定されていない場合、制御部206は、DR指令が示す期間外に需要家からの電気機器180への直接的な操作を検知すると第2動作モードで電気機器180を動作させ、DR指令が示す期間中に需要家からの電気機器180への直接的な操作を検知すると第1動作モードで電気機器180を動作させる、という第1実行計画600を作成する。また、制御部206は、DR期間にかかわらず、需要家からの電気機器180への直接的な操作を検知すると第2動作モードで電気機器180を動作させる第2実行計画700を作成する。
直接的な操作とは、スケジュール情報500に因らず、ディスプレイ251に表示される画面が需要家により操作されることによって、もしくは電気機器180が備える入力デバイスが需要家により操作されることによって、電気機器180に何らかの指示が入力されることである。
また、スケジュールが登録されておらず、且つ、需要家からの直接的な操作が無い場合でも、制御部206は、第1実行計画600と第2実行計画700とを作成することができる。
すなわち、HEMSコントローラ100の制御部206は、実行通知又は予告通知をDRAS10から受信すると、要請に応じて蓄電設備160のDR期間中の動作を変更する第1実行計画600と、要請に応じずに蓄電設備160の動作を変更しない第2実行計画700とを作成する。
例えば、節電を要請する実行通知又は予告通知をDRAS10から受信した時点で空気調和機が暖房運転中であった場合に、制御部206は、DR期間中に蓄電設備160から放電し、且つ、目標温度を予め決められた温度だけ低く設定するかあるいは暖房を停止させる第1実行計画600と、DR期間中もそのまま空気調和機の運転を続ける第2実行計画700と、を作成する。
なお、制御部206は、DR期間に要請に応じて制御した後、DR期間に入る前に動作していたときの設定に戻して電気機器180を動作させる第1実行計画600を作成してもよい。
更に、制御部206は、作成した第1実行計画600及び第2実行計画700と、第1実行計画600により予測される消費電力量と、第2実行計画700により予測される消費電力量と、電気料金を示す電気料金データとに基づいて、第1実行計画600に従って制御した場合の消費電力の予測値及び電気代の予測値と、第2実行計画700に従って制御した場合の消費電力の予測値及び電気代の予測値とを計算する。
そして、制御部206は、(A1)第1実行計画600に対する経済的な要因を考慮した第1種の評価値VECO1と、(B1)第1実行計画600に対する環境的な要因を考慮した第2種の評価値VENV1と、(C1)第1実行計画600に対する快適さの要因を考慮した第3種の評価値VCFT1と、をそれぞれ計算する。
同様に、制御部206は、(A2)第2実行計画700に対する経済的な要因を考慮した第1種の評価値VECO2と、(B2)第2実行計画700に対する環境的な要因を考慮した第2種の評価値VENV2と、(C2)第2実行計画700に対する快適さの要因を考慮した第3種の評価値VCFT2と、をそれぞれ計算する。
第1種の評価値VECOn(n=1又は2)と、第2種の評価値VENVn(n=1又は2)と、第3種の評価値VCFTn(n=1又は2)の具体的な計算式は任意であるが、次に一例を示す。
VECOn = (Xn+Yn−Zn)/(X+Y−Z) ・・・[式1]
VENVn = CA・Wn ・・・[式2]
VCFTn = Σ(CBX・ΔTn) ・・・[式3]
演算子“/”は除算を表し、演算子“・”は乗算を表し、演算子Σは総和を表す。
Xnは計算された電気代(予測値)である。Xは過去の同時期にかかった電気代である。
Ynは充電又は放電にかかる費用(予測値)である。Yは過去の同時期に充電又は放電にかかった費用である。
Znは需要家が得るインセンティブの金額である。Zは過去の同時期に充電又は放電によって得たインセンティブの金額である。充電の場合、一般にZnとZはゼロである。放電の場合、一般にZnとZは正の値である。
第1種の評価値VECOnが大きいほど、コストが高いことを示す。
計算された電気代の予測値Xnを、第1種の評価値VECOnとしてもよい。
Wnは計算された消費電力量(単位はキロワット時。予測値)である。CAは二酸化炭素排出係数(例えば0.384(単位はkg-CO2/kWh))である。
第2種の評価値VENVnが大きいほど、環境への影響が大きいことを示す。
ΔTnは、要請に応じることにより変更される空気調和機の目標温度の変化量(予測値)である。例えば、節電により第1の空気調和機の目標温度を2度変更し第2の空気調和機の目標温度を1度変更する場合には、ΔT1=2、ΔT2=1、VCFTn=2CB1+CB2、となる。CBX(Xは電気機器180を示す番号)は予め決められた重み係数である。
上記[式3]では、空気調和機のみ考慮されているが、空気調和機に加えて、もしくは空気調和機の代わりに、他の機器におけるパラメータの変更量、例えば照明設備の明るさの変化量や床暖房設備の目標温度の変更量等を用いた計算式を採用してもよい。
第3種の評価値VCNFnが大きいほど、需要家の嗜好から離れている(需要家がより快適に感じない)ことを示す。
なお、第1実行計画600についての第1種の評価値VECO1と第2種の評価値VENV1と第3種の評価値VCNF1をまとめて第1評価値とも呼び、第2実行計画700についての第1種の評価値VECO2と第2種の評価値VENV2と第3種の評価値VCNF2をまとめて第2評価値とも呼ぶ。
(電力制御処理)
次に、電力制御システム1によって行われる電力制御処理の流れについて説明する。
図8に、電力制御システム1によって行われる電力制御処理を説明するためのフローチャートを示す。図9に、HEMSコントローラ100の機能的な構成を示す。
制御部206は、図8に示す電力制御処理を、例えば10分間隔等、定期的なタイミングで繰り返し実行する。
まず、制御部206は、電気機器180による消費電力量、発電設備150による発電量、蓄電設備160による蓄電量、等を示す運転データを取得し、取得した日時又は計測した日時と対応付けて記憶部205に記憶する(ステップS801)。記憶部205には、消費電力量、発電量、蓄電量の履歴を示す情報が蓄積される。なお、制御部206は、運転データだけでなく、天候、温度、湿度等の気象データを取得し、運転データと共に記憶部205に記憶してもよい。
制御部206は、DR指令をDRAS10から受信したか否かを判別する(ステップS802)。ここでは、DR指令は、指定したDR期間に節電を要請する予告通知又は実行通知、指定したDR期間に蓄電設備160への充電を要請する予告通知又は実行通知、指定したDR期間に蓄電設備160からの放電を要請する予告通知又は実行通知、のいずれかであるとする。
HEMSコントローラ100の制御部206と通信部201が協働して、DR指令により指定されたDR期間における蓄電設備160からの放電の要請、又は、DR指令により指定されたDR期間における蓄電設備160への充電の要請を示す通知をDRAS10から受信する受信部901として機能する。
DR指令を受信していない場合(ステップS802;NO)、ステップS804へ移る。一方、DR指令を受信した場合(ステップS802;YES)、制御部206は、DR指令が示す要請に応じる第1実行計画600と、DR指令が示す要請に応じない第2実行計画700とを作成する(ステップS803)。HEMSコントローラ100の制御部206が、要請に応じる第1実行計画600と、要請に応じない第2実行計画700とを作成する計算部902として機能する。
例えば、制御部206は、需要家から入力され記憶部205に記憶されているスケジュール情報500に基づいて、第1実行計画600と第2実行計画700を作成する。HEMSコントローラ100の記憶部205が、需要家によって入力されたスケジュールを示すスケジュール情報500を記憶するスケジュール記憶部903として機能する。
次に、制御部206は、充電開始条件が満たされるか否かを判別する(ステップS804)。充電開始条件が満たされると判別した場合(ステップS804;YES)、制御部206は、図10に示す充電開始処理を実行する(ステップS805)。充電開始条件が満たされないと判別した場合(ステップS804;NO)、ステップS806へ移る。
制御部206は、放電開始条件が満たされるか否かを判別する(ステップS806)。放電開始条件が満たされると判別した場合(ステップS806;YES)、制御部206は、図12に示す放電開始処理を実行する(ステップS807)。放電開始条件が満たされないと判別した場合(ステップS806;NO)、ステップS808へ移る。
制御部206は、充電終了条件が満たされるか否かを判別する(ステップS808)。充電終了条件が満たされると判別した場合(ステップS808;YES)、制御部206は、図14に示す充電終了処理を実行する(ステップS809)。充電終了条件が満たされないと判別した場合(ステップS808;NO)、ステップS810へ移る。
制御部206は、放電終了条件が満たされるか否かを判別する(ステップS810)。放電終了条件が満たされると判別した場合(ステップS810;YES)、制御部206は、図16に示す放電終了処理を実行する(ステップS811)。放電終了条件が満たされないと判別した場合(ステップS810;NO)、電力制御処理を終了する。
(充電開始処理)
次に、充電開始処理の詳細について、図10,図11を用いて説明する。
まず、制御部206は、DR指令をDRAS10から受信したか否かを判別する(ステップS1001)。
DR指令を受信した場合(ステップS1001;YES)、制御部206は、ステップS803にて作成した第1実行計画600についての第1評価値(本実施形態では上述の第1種の評価値VECO1と第2種の評価値VENV1と第3種の評価値VCFT1の三つ)を計算する(ステップS1002)。
同様に、制御部206は、ステップS803にて作成した第2実行計画700についての第2評価値(本実施形態では上述の第1種の評価値VECO2と第2種の評価値VENV2と第3種の評価値VCFT2の三つ)を計算する(ステップS1003)。HEMSコントローラ100の制御部206が、要請に応じる第1実行計画600についての第1評価値を計算し、要請に応じない第2実行計画700についての第2評価値を計算する計算部902として機能する。
制御部206は、計算した第1評価値と第2評価値をディスプレイ251に表示する(ステップS1004)。HEMSコントローラ100の制御部206と画像処理部202が協働して、計算された第1評価値と計算された第2評価値とを表示する表示部904として機能する。
図11に、計算した第1評価値と第2評価値の表示例を示す。制御部206は、計算した第1評価値と第2評価値を含むアドバイス情報1100をディスプレイ251に表示する。アドバイス情報1100には次に掲げる情報が含まれる。
・充電の要請に応じる場合に予想される蓄電設備160の残容量の推移を示すデータ1110。
・充電の要請に応じる場合に予想される消費電力量の推移を示すデータ1120。
・充電の要請に応じる場合の第1種の評価値VECO1を示す画像1131。
・充電の要請に応じる場合の第2種の評価値VENV1を示す画像1132。
・充電の要請に応じる場合の第3種の評価値VCNF1を示す画像1133。
・充電の要請に応じない場合に予想される蓄電設備160の残容量の推移を示すデータ1140。
・充電の要請に応じない場合に予想される消費電力量の推移を示すデータ1150。
・充電の要請に応じない場合の第1種の評価値VECO2を示す画像1161。
・充電の要請に応じない場合の第2種の評価値VENV2を示す画像1162。
・充電の要請に応じない場合の第3種の評価値VCNF2を示す画像1163。
・充電の要請に応じることをDRAS10に通知する処理に対応付けられるボタン1170。
・充電の要請に応じないことをDRAS10に通知する処理に対応付けられるボタン1180。
画像1131,1161は、第1種の評価値VECOnが小さいほど、長く表示される。画像1132,1162は、第2種の評価値VENVnが小さいほど、長く表示される。画像1133,1163は、第3種の評価値VCNFnが小さいほど、長く表示される。nは1又は2である。
需要家は、アドバイス情報1100を閲覧しながら、DR指令が示す要請に応じるか否かを決めることができる。需要家は、要請に応じる場合にはボタン1170を操作し、要請に応じない場合にはボタン1180を操作すればよい。HEMSコントローラ100の制御部206と入力部204が協働して、要請に応じるか否かの指示入力を需要家から受け付ける入力受付部905として機能する。
ただし、本実施形態では、需要家は、DR指令を受信した際にDR指令が示す要請に応じるか否かを事前に決めておくことができる。つまり、制御部206は、DR指令を受信する前に、DR指令が示す要請に応じるか否かを指定する入力を需要家から受け付けて、DR指令が示す要請に応じるか否かを示す設定情報を記憶部205に予め記憶しておく。そして、制御部206は、DR指令をDRAS10から受信すると、需要家からの入力を受け付けることなく自動的に、記憶部205に予め記憶されている設定情報に基づいて、DR指令が示す要請に応じるか否かを決定し、DRAS10に通知する。
設定情報に基づいてDR指令が示す要請に応じるか否かを決定する場合、制御部206は、アドバイス情報1100の中にボタン1170,1180を表示しなくてよい。この自動設定により、利便性が高まる。HEMSコントローラ100の記憶部205が、要請を受信する前に予め需要家から受け付けた指示入力を示す設定情報を記憶する設定情報記憶部906として機能する。
次に、制御部206は、DR指令が示す要請に応じるか否かが設定情報により指定されているか否か、すなわち自動設定がなされているか否かを判別する(ステップS1005)。
自動設定がなされている場合(ステップS1005;YES)、ステップS1007の処理へ移る。自動設定がなされていない場合(ステップS1005;NO)、制御部206は、要請に応じる指示が需要家から入力されたか否か、言い換えればボタン1170が操作されたか否かを判別する(ステップS1006)。
要請に応じる指示が需要家によって入力されない場合(ステップS1006;NO)、制御部206は充電開始処理を終了する。
要請に応じる指示が需要家によって入力された場合(ステップS1006;YES)、ステップS1007へ移る。
制御部206は、要請に応じるか否かを判別する(ステップS1007)。制御部206は、自動設定により要請に応じる旨の設定情報が記憶部205に記憶されている場合、もしくは、要請に応じる指示が需要家によって入力された場合、要請に応じると判別する。一方、制御部206は、自動設定により要請に応じない旨の設定情報が記憶部205に記憶されている場合、もしくは、要請に応じない指示が需要家によって入力された場合、要請に応じないと判別する。
要請に応じると判別した場合(ステップS1007;YES)、制御部206は、要請に応じる旨の応答データをDRAS10へ送信する(ステップS1008)。HEMSコントローラ100の制御部206と通信部201が協働して、要請に応じるか否かの需要家からの指示を示す応答データをDRAS10へ送信する送信部907として機能する。
そして、制御部206は、要請による蓄電設備160への充電の開始を含む第1実行計画600を決定し(ステップS1009)、第1実行計画600に基づいて宅内システムを制御する。
一方、要請に応じないと判別した場合(ステップS1007;NO)、制御部206は、充電開始処理を終了する。この場合、制御部206は、第2実行計画700に基づいて宅内システムを制御することになる。なお、要請に応じないと判別した場合に、制御部206が要請に応じない旨の応答データをDRAS10へ送信してもよい。
HEMSコントローラ100の制御部206が、要請に応じない旨の指示入力が需要家から入力されると第1実行計画600に基づいて電気機器180と蓄電設備160を制御し、要請に応じない旨の指示入力が需要家から入力されると、第2実行計画700に基づいて電気機器180と蓄電設備160を制御する機器制御部908として機能する。
ステップS1001においてDR指令を受信していない場合(ステップS1001;NO)には、ステップS804にて充電開始条件が満たされているので、制御部206は、蓄電設備160への充電を蓄電設備160に開始させる(ステップS1010)。例えば、蓄電設備160を充電する旨の需要家からの明示的な指示があったために充電開始条件が満たされ、且つ、DR指令を受信していない場合が、これに該当する。
(放電開始処理)
次に、放電開始処理の詳細について、図12,図13を用いて説明する。
まず、制御部206は、DR指令をDRAS10から受信したか否かを判別する(ステップS1201)。
DR指令を受信した場合(ステップS1201;YES)、制御部206は、ステップS803にて作成した第1実行計画600についての第1評価値(本実施形態では上述の第1種の評価値VECO1と第2種の評価値VENV1と第3種の評価値VCFT1の三つ)を計算する(ステップS1202)。
同様に、制御部206は、ステップS803にて作成した第2実行計画700についての第2評価値(本実施形態では上述の第1種の評価値VECO2と第2種の評価値VENV2と第3種の評価値VCFT2の三つ)を計算する(ステップS1203)。
制御部206は、計算した第1評価値と第2評価値をディスプレイ251に表示する(ステップS1204)。
図13に、計算した第1評価値と第2評価値の表示例を示す。制御部206は、計算した第1評価値と第2評価値を含むアドバイス情報1300をディスプレイ251に表示する。アドバイス情報1300には次に掲げる情報が含まれる。
・放電の要請に応じる場合に予想される蓄電設備160の残容量の推移を示すデータ1310。
・放電の要請に応じる場合に予想される消費電力量の推移を示すデータ1320。
・放電の要請に応じる場合の第1種の評価値VECO1を示す画像1331。
・放電の要請に応じる場合の第2種の評価値VENV1を示す画像1332。
・放電の要請に応じる場合の第3種の評価値VCNF1を示す画像1333。
・放電の要請に応じない場合に予想される蓄電設備160の残容量の推移を示すデータ1340。
・放電の要請に応じない場合に予想される消費電力量の推移を示すデータ1350。
・放電の要請に応じない場合の第1種の評価値VECO2を示す画像1361。
・放電の要請に応じない場合の第2種の評価値VENV2を示す画像1362。
・放電の要請に応じない場合の第3種の評価値VCNF2を示す画像1363。
・放電の要請に応じることをDRAS10に通知する処理に対応付けられるボタン1370。
・放電の要請に応じないことをDRAS10に通知する処理に対応付けられるボタン1380。
画像1331,1361は、第1種の評価値VECOnが小さいほど、長く表示される。画像1332,1362は、第2種の評価値VENVnが小さいほど、長く表示される。画像1333,1363は、第3種の評価値VCNFnが小さいほど、長く表示される。nは1又は2である。
需要家は、アドバイス情報1300を閲覧しながら、DR指令が示す要請に応じるか否かを決めることができる。需要家は、要請に応じる場合にはボタン1370を操作し、要請に応じない場合にはボタン1380を操作すればよい。
ただし、本実施形態では、需要家は、DR指令を受信した際にDR指令が示す要請に応じるか否かを事前に決めておくことができる。つまり、制御部206は、DR指令を受信する前に、DR指令が示す要請に応じるか否かを指定する入力を需要家から受け付けて、DR指令が示す要請に応じるか否かを示す設定情報を記憶部205に予め記憶しておく。そして、制御部206は、DR指令をDRAS10から受信すると、需要家からの入力を受け付けることなく自動的に、記憶部205に予め記憶されている設定情報に基づいて、DR指令が示す要請に応じるか否かを決定し、DRAS10に通知する。設定情報に基づいてDR指令が示す要請に応じるか否かを決定する場合、制御部206は、アドバイス情報1300の中にボタン1370,1380を表示しなくてよい。この自動設定により、利便性が高まる。
次に、制御部206は、DR指令が示す要請に応じるか否かが設定情報により指定されているか否か、すなわち自動設定がなされているか否かを判別する(ステップS1205)。
自動設定がなされている場合(ステップS1205;YES)、ステップS1207の処理へ移る。自動設定がなされていない場合(ステップS1205;NO)、制御部206は、要請に応じる指示が需要家から入力されたか否か、言い換えればボタン1370が操作されたか否かを判別する(ステップS1206)。
要請に応じる指示が需要家によって入力されない場合(ステップS1206;NO)、制御部206は放電開始処理を終了する。
要請に応じる指示が需要家によって入力された場合(ステップS1206;YES)、ステップS1207へ移る。
制御部206は、要請に応じるか否かを判別する(ステップS1207)。制御部206は、自動設定により要請に応じる旨の設定情報が記憶部205に記憶されている場合、もしくは、要請に応じる指示が需要家によって入力された場合、要請に応じると判別する。一方、制御部206は、自動設定により要請に応じない旨の設定情報が記憶部205に記憶されている場合、もしくは、要請に応じない指示が需要家によって入力された場合、要請に応じないと判別する。
要請に応じると判別した場合(ステップS1207;YES)、制御部206は、要請に応じる旨の応答データをDRAS10へ送信し(ステップS1208)、要請による蓄電設備160からの放電の開始を含む第1実行計画600を決定し(ステップS1209)、第1実行計画600に基づいて宅内システムを制御する。
要請に応じないと判別した場合(ステップS1207;NO)、制御部206は、放電開始処理を終了する。この場合、制御部206は、第2実行計画700に基づいて宅内システムを制御することになる。なお、要請に応じないと判別した場合に、制御部206が要請に応じない旨の応答データをDRAS10へ送信してもよい。
なお、ステップS1201においてDR指令を受信していない場合(ステップS1201;NO)には、ステップS806にて放電開始条件が満たされているので、制御部206は、蓄電設備160からの放電を蓄電設備160に開始させる(ステップS1210)。例えば、蓄電設備160から放電する旨の需要家からの明示的な指示があったために放電開始条件が満たされ、且つ、DR指令を受信していない場合が、これに該当する。
(充電終了処理)
次に、充電終了処理の詳細について、図14,図15を用いて説明する。
まず、制御部206は、蓄電設備160に、蓄電設備160への充電を終了させる(ステップS1401)。
制御部206は、ステップS1401にて終了させた充電が、DR指令が示す要請による充電だったか否かを判別する(ステップS1402)。
ステップS1401にて終了させた充電が、DR指令が示す要請による充電ではなかったと判別した場合(ステップS1402;NO)、制御部206は、充電終了処理を終了する。
ステップS1401にて終了させた充電が、DR指令が示す要請による充電だったと判別した場合(ステップS1402;YES)、制御部206は、要請に応じたことによる充電の実績値をディスプレイ251に表示する(ステップS1403)。
図15に、計算した実績値の表示例を示す。制御部206は、計算した実績値を含むアドバイス情報1500をディスプレイ251に表示する。アドバイス情報1500には次に掲げる情報が含まれる。
・充電の開始前における目標充電量(見込み値)。
・充電にかかる電力の購入単価(見込み値)。
・充電にかかる電力の購入費用(見込み値)。
・第1種の評価値VECO1(見込み値)を示す画像1131。
・第2種の評価値VENV1(見込み値)を示す画像1132。
・第3種の評価値VCNF1(見込み値)を示す画像1133。
・実際の充電量(実績値)。
・充電にかかった電力の購入単価(実績値)。
・充電にかかった電力の購入費用(実績値)。
・第1種の評価値VECO1(実績値)を示す画像1531。
・第2種の評価値VENV1(実績値)を示す画像1532。
・第3種の評価値VCNF1(実績値)を示す画像1533。
・次回の要請に応じることを設定情報に記憶させる処理に対応付けられるボタン1570。
・次回の要請に応じないことを設定情報に記憶させる処理に対応付けられるボタン1580。
画像1131,1531は、第1種の評価値VECO1が小さいほど、長く表示される。画像1132,1532は、第2種の評価値VENV1が小さいほど、長く表示される。画像1133,1533は、第3種の評価値VCNF1が小さいほど、長く表示される。
第1種の評価値VECO1と第2種の評価値VENV1と第3種の評価値VCNF1の見込み値は、上述した充電開始処理において計算されたものと同じである。
第1種の評価値VECO1と第2種の評価値VENV1と第3種の評価値VCNF1の実績値は、上述の[式1][式2][式3]において、Xn,Yn,Zn,ΔTnの予測値の代わりに、Xn,Yn,Zn,ΔTnの実績値を用いることにより、見込み値と同様に計算される。
需要家は、アドバイス情報1500を閲覧することにより、DR指令に応じた結果を知ることができる。また、アドバイス情報1500を参考に、次にDR指令を受信したときに自動的に要請に応じるか否かを決めることができる。需要家は、次回も要請に応じる場合にはボタン1570を操作し、次回は要請に応じない場合にはボタン1580を操作すればよい。
ボタン1570が操作された場合、制御部206は、次回のDR指令による要請に応じる旨を設定情報に記憶する。ボタン1580が操作された場合、制御部206は、次回のDR指令による要請に応じない旨を設定情報に記憶する。
(放電終了処理)
次に、放電終了処理の詳細について、図16,図17を用いて説明する。
まず、制御部206は、蓄電設備160に、蓄電設備160からの放電を終了させる(ステップS1601)。
制御部206は、ステップS1601にて終了させた放電が、DR指令が示す要請による放電だったか否かを判別する(ステップS1602)。
図17に、計算した実績値の表示例を示す。制御部206は、計算した実績値を含むアドバイス情報1700をディスプレイ251に表示する。アドバイス情報1700には次に掲げる情報が含まれる。
・放電の開始前における目標放電量(見込み値)。
・放電によって需要家が得るインセンティブ(見込み値)。
・充電によって需要家が得るインセンティブの合計(見込み値)。
・第1種の評価値VECO1(見込み値)を示す画像1331。
・第2種の評価値VENV1(見込み値)を示す画像1332。
・第3種の評価値VCNF1(見込み値)を示す画像1333。
・実際の放電量(実績値)。
・放電によって需要家が得られたインセンティブ(実績値)。
・放電によって需要家が得られたインセンティブの合計(実績値)。
・第1種の評価値VECO1(実績値)を示す画像1731。
・第2種の評価値VENV1(実績値)を示す画像1732。
・第3種の評価値VCNF1(実績値)を示す画像1733。
・次回の要請に応じることを設定情報に記憶させる処理に対応付けられるボタン1770。
・次回の要請に応じないことを設定情報に記憶させる処理に対応付けられるボタン1780。
画像1331,1731は、第1種の評価値VECO1が小さいほど、長く表示される。画像1332,1732は、第2種の評価値VENV1が小さいほど、長く表示される。画像1333,1733は、第3種の評価値VCNF1が小さいほど、長く表示される。
第1種の評価値VECO1と第2種の評価値VENV1と第3種の評価値VCNF1の見込み値は、上述した放電開始処理において計算されたものと同じである。
第1種の評価値VECO1と第2種の評価値VENV1と第3種の評価値VCNF1の実績値は、上述の[式1][式2][式3]において、Xn,Yn,Zn,Wn,ΔTnの予測値の代わりに、Xn,Yn,Zn,Wn,ΔTnの実績値を用いることにより、見込み値と同様に計算される。
需要家は、アドバイス情報1700を閲覧することにより、DR指令に応じた結果を知ることができる。また、アドバイス情報1700を参考に、次にDR指令を受信したときに自動的に要請に応じるか否かを決めることができる。需要家は、次回も要請に応じる場合にはボタン1770を操作し、次回は要請に応じない場合にはボタン1780を操作すればよい。
ボタン1770が操作された場合、制御部206は、次回のDR指令による要請に応じる旨を設定情報に記憶する。ボタン1780が操作された場合、制御部206は、次回のDR指令による要請に応じない旨を設定情報に記憶する。
以上のように、本実施形態によれば、電力制御システム1は、電力小売事業者から充放電の要請があると、要請に応じる場合の評価値と応じない場合の評価値とを需要家に分かりやすく提供する。従って、需要家は要請に応じるか否かを判断し易くなり、電力制御システム1は需要家の要望に合った制御を行うことができる。また、需要家のデマンドレスポンスへの関心を高めることができ、デマンドレスポンスへより多くの需要家が参加することが期待される。
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。本実施形態では、DRAS10は、複数の需要家のHEMSコントローラ100へDR指令を送信し、DR指令が示す要請に対する需要家の参加状況等の情報に基づいて、需要家全体の消費電力量や放電量を予測する。HEMSコントローラ100は、予測結果に基づいて、DRに関する更なる詳しい情報を需要家に提供する。
供給電力の不足により、電力の安定した供給への信頼度が低下するおそれがあると、DRAS10の制御部403は、電力の消費を抑えるように需要家へ要請する旨のDR指令、又は、蓄電設備160に充電された電力を放電する旨のDR指令を、各需要家のHEMSコントローラ100へ送信する。また、供給電力の過多により、電力の安定した供給への信頼度が低下するおそれがあると、DRAS10の制御部403は、電力を購入して蓄電設備160に充電する旨のDR指令を、各需要家のHEMSコントローラ100へ送信する。
より詳細には、DRAS10の制御部403は、HEMSコントローラ100が設置されている地域の将来の天気、気温、湿度等を示す気象データを、公的機関や民間気象会社が管理するサーバ(図示せず)から取得し、記憶部402に記憶する。
また、DRAS10の制御部403は、宅内システムによる消費電力量と発電量の実績値を示す運転データを、HEMSコントローラ100から定期的に取得し、記憶部402に記憶する。記憶部402には、各HEMSコントローラ100から取得した消費電力量と発電量の履歴が蓄積される。
DRAS10の制御部403は、取得した気象データと、取得した運転データとに基づいて、各需要家による将来の消費電力量を予測する。本実施形態のDRAS10の制御部403は、需要家全体による、数日先までの消費電力量の推移を事前に予測する。
そして、制御部403は、電力小売事業者による発電量(供給量)の予測値と、需要家による消費電力量の予測値とに基づいて、電力の供給量が不足する(又は不足するおそれがある)時間帯、又は、電力の供給量が過多になる(又は過多になるおそれがある)時間帯を判別する。
なお、各HEMSコントローラ100が、将来の消費電力量と発電量とを予測して予測結果をDRAS10へ送信し、DRAS10の制御部403が、各HEMSコントローラ100から予測結果を受信して集計した後、将来の電力需要を予測してもよい。
電力の供給量が不足する時間帯があると判別すると、DRAS10の制御部403は、判別した時間帯に消費電力量を抑える要請を示す予告通知、又は、判別した時間帯に蓄電設備160から放電することを要請する予告通知を、各HEMSコントローラ100へ送信する。
蓄電設備160から放電することを要請する場合、DRAS10の制御部403は、判別した時間帯での放電の要請だけでなく、要請に応じた需要家に支払われるインセンティブを示すインセンティブ情報も合わせてHEMSコントローラ100へ送信する。
DRAS10の制御部403は、各HEMSコントローラ100から、需要家が要請に応じるか否かを示す応答データを受信し、記憶部402に記憶する。そして、制御部403は、受信した応答データに基づいて、電力の供給量の不足又は過多が解消されるか否かを予測する。
電力の供給量の不足が解消されないと予測した場合、DRAS10の制御部403は、電力の供給量の不足が解消されないことによるリスクを示すリスク情報を生成し、生成したリスク情報を各HEMSコントローラ100へ送信する。
例えば、リスク情報には、電力の不足分を他の電力小売事業者から購入するための費用、その費用全体に対する一需要家あたりの負担額、電力の過多分に相当する損失額、停電が起きる可能性を示す警告、等の情報が含まれる。
電力供給の過多も、安定的な電力供給を損なう原因となり得る。DRAS10の制御部403は、電力供給の過多が解消されないと予測した場合、電力供給の過多が解消されないことによるリスクを示すリスク情報を生成し、生成したリスク情報をHEMSコントローラ100へ送信する。
なお、電力の供給量の不足又は過多が解消されると予測した場合にも、DRAS10の制御部403は、電力の供給量の不足又は過多が解消されないことによるリスクを示すリスク情報を生成し、生成したリスク情報を各HEMSコントローラ100へ送信してもよい。
HEMSコントローラ100の制御部206は、リスク情報を含む予告通知をDRAS10から受信する。消費電力量を抑える要請を示す予告通知を受信すると、制御部206は、上述した電力制御処理において放電開始条件が満たされると判別し、放電開始処理を実行する。また、蓄電設備160から放電することを要請する予告通知を受信すると、上述した電力制御処理において充電開始条件が満たされると判別し、充電開始処理を実行する。
ディスプレイ251には、図11と図13に例示したアドバイス情報1100,1300を表示し、要請に応じるか否かを示す入力を需要家から受け付ける。自動設定になっている場合には、制御部206は、要請に応じるか否かを示す設定情報を記憶部205から取得する。
HEMSコントローラ100の制御部206は、要請に応じるか否かを示す応答データをDRAS10へ送信する。DRAS10の制御部403は、応答データをHEMSコントローラ100から受信し、記憶部402に記憶する。
更に、DRAS10の制御部403は、各HEMSコントローラ100から受信した応答データに基づいて、判別した時間帯での電力の供給量の不足又は過多が解消するか否かを再び予測する。
再び予測した後、電力の供給量の不足が解消しないと判別すると、DRAS10の制御部403は、判別した時間帯に消費電力量を抑える要請を示す予告通知、又は、判別した時間帯に蓄電設備160から放電することを要請する予告通知を、各HEMSコントローラ100へ再び送信する。また、再び予測した後、電力の供給量の過多が解消しないと判別すると、DRAS10の制御部403は、蓄電設備160に充電する要請を示す予告通知を、各HEMSコントローラ100へ再び送信する。ここで送信される予告通知にもリスク情報が含まれる。
DRAS10の制御部403は、同様の処理を、電力の供給量の不足又は過多が解消されると判別するまで、繰り返す。
既に要請に応じる旨の応答データを送信したHEMSコントローラ100に再び予告通知を送信しても、電力の供給量の不足又は過多の解消には繋がらない可能性が高い。そこで、DRAS10の制御部403は、再び予告通知を送信する場合には、既に要請に応じる旨の応答データを送信したHEMSコントローラ100を送信対象から除外し、要請に応じない旨の応答データを送信したHEMSコントローラ100、及び、応答データを未だ送信していないHEMSコントローラ100に予告通知を再び送信することが望ましい。
一方、電力の供給量の不足又は過多が解消すると判別した場合、DRAS10の制御部403は、電力の供給量の不足又は過多が解消すると判別した時点で、予告通知の再送信を終了してもよい。つまり、要請に応じる需要家は先着順に決まる。
あるいは、電力の供給量の不足又は過多が解消すると判別した場合、DRAS10の制御部403は、電力の供給量の不足又は過多が解消すると判別した後も、予告通知の再送信を続け、要請に応じるか否かを競りによって決定してもよい。
例えば、DRAS10の制御部403は、応募者が上限値より多い場合、需要者に提供するインセンティブを変更し、変更後のインセンティブであっても要請に応じるか否かを示す予告通知をHEMSコントローラ100へ送信する。一般には、需要者が得られるインセンティブは減少することになる。HEMSコントローラ100の制御部206は、変更されたインセンティブを示す情報を含むアドバイス情報1100,1300をディスプレイ251に表示する。HEMSコントローラ100の制御部206は、要請に応じるか否かの指示入力をユーザから受け付け、あるいは、要請に応じるか否かの設定情報を記憶部205から取得し、応答データをDRAS10へ送信する。DRAS10の制御部403は、応答データを受信し、記憶部402に記憶し、電力の供給量の不足又は過多が解消されるか否かを予測する。
反対に、応募者が下限値より少ない場合、DRAS10の制御部403は、需要者に提供するインセンティブを変更し、変更後のインセンティブであれば要請に応じるか否かを示す予告通知をHEMSコントローラ100へ送信する。一般には、需要者が得られるインセンティブは増加することになる。HEMSコントローラ100の制御部206は、変更されたインセンティブを示す情報を含むアドバイス情報1100,1300をディスプレイ251に表示する。HEMSコントローラ100の制御部206は、要請に応じるか否かの入力をユーザから受け付け、あるいは、要請に応じるか否かの設定情報を記憶部205から取得し、応答データをDRAS10へ送信する。DRAS10の制御部403は、応答データを受信し、記憶部402に記憶し、電力の供給量の不足又は過多が解消されるか否かを予測する。
次に、本実施形態の電力制御システム1によって実行される処理の流れを、図18を用いて説明する。
まず、DRAS10の制御部403は、気象データを取得する(ステップS1801)。
HEMSコントローラ100の制御部206は、消費電力量と発電量の実績値を示す運転データをDRAS10へ送信する(ステップS1802)。DRAS10の制御部403は、HEMSコントローラ100から運転データを受信し(ステップS1803)、記憶部402に記憶する。DRAS10の制御部403は、各需要家のHEMSコントローラ100から運転データを受信する。
なお、運転データを送受信するステップS1802とステップS1803を、別のプロセスとしてバックグラウンドで実行するようにしてもよい。
DRAS10の制御部403は、気象データと運転データとに基づいて、電力の供給不足又は供給過多が将来予測されるか否かを判別する(ステップS1804)。
電力の供給不足が予測される場合(ステップS1804;YES)、DRAS10の制御部403は、判別した時間帯に消費電力量を抑える要請を示す予告通知、又は、判別した時間帯に蓄電設備160から放電することを要請する予告通知を、各HEMSコントローラ100へ送信する(ステップS1805)。
あるいは、電力の供給過多が予測される場合(ステップS1804;YES)、DRAS10の制御部403は、判別した時間帯に電力を購入して蓄電設備160に充電する要請を示す予告通知を、各HEMSコントローラ100へ送信する(ステップS1805)。
HEMSコントローラ100の制御部206は、予告通知をDRAS10から受信する(ステップS1806)。
HEMSコントローラ100の制御部206は、実施形態1で説明した電力制御処理を繰り返し実行している。HEMSコントローラ100の制御部206は、第1実行計画600を作成し、第1実行計画600についての第1評価値(第1種の評価値VECO1と第2種の評価値VENV1と第3種の評価値VCNF1)を計算する。同様に、HEMSコントローラ100の制御部206は、第2実行計画700を作成し、第2実行計画700についての第2評価値(第1種の評価値VECO2と第2種の評価値VENV2と第3種の評価値VCNF2)を計算する。
HEMSコントローラ100の制御部206は、計算した第1評価値と第2評価値をディスプレイ251に表示する(ステップS1807)。
HEMSコントローラ100の制御部206は、要請に応じるか否かを判別する。制御部206は、自動設定により要請に応じる旨の設定情報が記憶部205に記憶されている場合、もしくは、要請に応じる指示が需要家によって入力された場合、要請に応じると判別する。一方、制御部206は、自動設定により要請に応じない旨の設定情報が記憶部205に記憶されている場合、もしくは、要請に応じない指示が需要家によって入力された場合、要請に応じないと判別する。
要請に応じると判別した場合、HEMSコントローラ100の制御部206、要請に応じる旨の応答データをDRAS10に送信し(ステップS1808)、要請による蓄電設備160からの放電又は要請により蓄電設備160への充電の開始を含む第1実行計画600を決定し、第1実行計画600に基づいて宅内システムを制御する。
要請に応じないと判別した場合、HEMSコントローラ100の制御部206は、要請に応じない旨の応答データをDRAS10に送信し(ステップS1808)、要請に応じない第2実行計画700を決定し、第2実行計画700に基づいて宅内システムを制御する。
DRAS10の制御部403は、各HEMSコントローラ100から応答データを受信し(ステップS1809)、気象データと運転データ、及び、応答データに基づいて、電力の供給不足又は供給過多が将来予測されるか否かを再び判別する(ステップS1804)。
DRAS10とHEMSコントローラ100は、電力の供給不足又は供給過多が解消されるとDRAS10によって判別されるまで、ステップS1804からステップS1809までの処理を繰り返す。
ステップS1804において電力の供給不足又は供給過多が予測される場合、DRAS10とHEMSコントローラ100は、需要家へのインセンティブを変更し、要請に応じる需要家を競りによって決定してもよい。
すなわち、ステップS1804からステップS1809までの処理を繰り返した結果、要請に応じる需要家の数が上限値よりも多い場合や、要請に応じる需要家の数が下限値よりも少ない場合、DRAS10の制御部403は、インセンティブを変更した上で、再び予告通知をHEMSコントローラ100へ送信してもよい。
なお、DRAS10の制御部403は、ステップS1804からステップS1809までの1回目の処理において供給不足又は供給過多が解消しないと予測した後、ステップS1804からステップS1809までの2回目の処理において供給不足又は供給過多が解消すると予測した場合、1回目の処理において要請に応じると返答した需要家には当初提示したインセンティブ(減らされていないインセンティブ)を適用し、2回目の処理において要請に応じると返答した需要家には当初提示したインセンティブを変更した新たなインセンティブ(減らされたインセンティブ)を適用する、としてもよい。
そして、ステップS1804において、電力の供給不足又は供給過多が予測されないと判別した場合(ステップS1804;NO)、DRAS10の制御部403は、電力の需給計画を決定する(ステップS1810)。
本実施形態によれば、電力制御システム1は、要請に応じる場合の評価値と応じない場合の評価値とを需要家に分かりやすく提供することにより、需要家の要望に合った制御を行うことができる。需要家は要請に応じるか否かを判断し易くなり、電力制御システム1は需要家の要望に合った制御を行うことができる。また、需要家のデマンドレスポンスへの関心を高めることができ、デマンドレスポンスへより多くの需要家が参加することが期待される。
また、デマンドレスポンスへの参加を競りによって決定することにより、電力小売事業者の負担が減り、また、需要者が早めにデマンドレスポンスに応じるように誘導することができる。
本発明は、上述した実施形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。また、上述した実施形態の各構成要素を自由に組み合わせることも可能である。
上記各実施形態では、需要家に提示される評価値として、経済的な要因を考慮した第1種の評価値VECOnと、環境的な要因を考慮した第2種の評価値VENVnと、快適さを考慮した第3種の評価値VCNFnと、の三つを採用した。しかし、HEMSコントローラ100は、これら三つの評価値をすべて需要家に提示する代わりに、これら三つのうち少なくともいずれか一つを含む評価値を需要家に提示してもよい。また、評価値はこれらに限定されず、任意に定義することができる。
上記の第1種の評価値VECOnの計算式と第2種の評価値VENVnの計算式と第3種の評価値VCNFnの計算式は一例であり、任意に変更可能である。
(変形例)
上記の実施形態では、HEMSコントローラ100が宅内に配置された場合について説明したが、HEMSコントローラ100を宅外に配置するようにしてもよい。例えば、インターネット上のサーバをHEMSコントローラ100として機能させてもよい。
例えば、図19に示すように、宅内には、HEMSコントローラ100の代わりに、ルータ190が配置されている。一方、宅外の通信ネットワーク上には、HEMSコントローラ100として機能する管理サーバ1900が配置されている。この場合、ルータ190と管理サーバ1900とが協働して、HEMSコントローラ100の役割を果たす。
上記のHEMSコントローラ100の全部又は一部としてコンピュータを動作させるためのプログラムを、メモリカード、CD−ROM、DVD、MO(Magneto Optical disk)などのコンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、これを別のコンピュータにインストールし、上述の手段として動作させ、あるいは、上述の工程を実行させてもよい。
更に、インターネット上のサーバ装置が有するディスク装置等にプログラムを格納しておき、例えば、搬送波に重畳させて、コンピュータにダウンロード等するものとしてもよい。
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
以上のように、上記各実施形態によれば、需要家の要望に合った制御を行うことができる電力制御装置、電力制御方法、及び、プログラムを提供することができる。