以下に本発明の一実施の形態に係る緩衝器について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。
図1に示すように、本実施の形態に係る緩衝器Aは、車輪側に連結されて液体を収容するシリンダ1と、車体側に連結されて上記シリンダ1内に軸方向に移動可能に挿入されるロッド2と、上記シリンダ1の上側開口部に取り付けられて上記ロッド2が貫通するヘッド部材3と、このヘッド部材3に保持されて上記ロッド2を軸支する環状の軸受4と、上記ヘッド部材3に保持されて上記ロッド2の外周をシールする環状のシール部材5と、上記シリンダ1外に形成されて液体が貯留されるリザーバRとを備えている。
そして、上記ヘッド部材3は、内周に上記軸受4を保持する環状の頂部30aとこの頂部30aからシリンダ1側に延びる筒状の筒部30bとを備えてキャップ状に形成されるシリンダヘッド30と、上記筒部30bの内周に螺合されて内周に上記シール部材5を保持する環状のバルブシート31と、このバルブシート31に形成されて上記シリンダ1内と上記リザーバRとを連通する通路31aと、上記シリンダヘッド30と上記バルブシート31との間に内周部を挟まれながら上記通路31aを開閉する環板状のリーフバルブ32とを備えている。
以下、詳細に説明すると、本実施の形態において、本発明に係る緩衝器Aは、自動二輪車等の鞍乗型車両において前輪を懸架するフロントフォークに利用されている。当該フロントフォークの構成は周知であるので、詳細な図示を省略するが、前輪を両側から支える一対の緩衝器(一方の緩衝器Aのみを図示し、他方の緩衝器を省略する)と、これら緩衝器Aを連結するとともに車体の骨格となる車体フレームに連結される車体側ブラケット(図示せず)と、各緩衝器Aを前輪の車軸に連結する車輪側ブラケットBとを備えている。本発明は、一方または両方の緩衝器Aに具現化されており、以下、本発明が具現化された緩衝器Aの構成について詳細に説明する。なお、本発明に係る緩衝器Aがフロントフォーク以外の緩衝器として利用されるとしてもよく、例えば、鞍乗型車両の後輪を懸架するリアクッションに利用されるとしてもよい。
緩衝器Aは、当該緩衝器Aの外殻となるテレスコピック型のチューブ部材Tと、このチューブ部材T内に収容されて減衰力を発生する正立型のダンパDと、チューブ部材TとダンパDとの間に形成されるリザーバRに設けられ車体を弾性支持する懸架ばねSとを備えている。リザーバRには、液体が貯留されて液溜室が形成されるとともに、この液体の液面(図示せず)を介して上側には、気体が封入されて気室が形成されている。本実施の形態において、懸架ばねSは、コイルばねからなるが、上記気室に気体を圧縮しながら封入し、当該圧縮気体をエアばねとして利用するとしてもよい。
チューブ部材Tは、図示しない車体側ブラケットに連結されるアウターチューブt1と、車輪側ブラケットBに連結されてアウターチューブt1に出入りするインナーチューブt2とを備えてテレスコピック型となっており、路面凹凸による衝撃が車輪に入力されると、インナーチューブt2がアウターチューブt1に出入りして緩衝器Aが伸縮作動するようになっている。
チューブ部材Tの上端開口は、上側の封止部材である図示しないキャップ部材で塞がれており、チューブ部材Tの下側開口は、下側の封止部材を構成する筒状の車輪側ブラケットBと、この車輪側ブラケットBの下側から挿入されるボトムキャップCとで塞がれている。さらに、アウターチューブt1とインナーチューブt2の重複部の間に形成される筒状隙間の下側開口は、アウターチューブt1の下部内周に保持されてインナーチューブt2の外周面に摺接する環状のオイルシールOS及びダストシールDSで塞がれている。このため、チューブ部材T内に収容される液体や気体がチューブ部材T外に漏れ出ないようになっている。
チューブ部材Tに収容されるダンパDは、正立型に設定されており、インナーチューブt2の軸心部に起立する筒状のシリンダ1と、このシリンダ1内に軸方向に移動可能に挿入されるロッド2と、シリンダ1の上側開口部に取り付けられてロッド2が貫通するヘッド部材3と、このヘッド部材3に上下直列に保持されてロッド2の外周面に摺接する環状の軸受4及び環状のシール部材5と、ロッド2の下端部外周に保持されてシリンダ1の内周面に摺接する環状のピストン6と、シリンダ1の下側開口部内周に基部7aが螺合されるベースロッド7と、このベースロッド7の基部7aの中心から上側に延びる軸部7bの上端部外周に保持される環状のベース部材8とを備えている。そして、シリンダ1は、ベースロッド7とボトムキャップCを介して車輪側の車輪側ブラケットBに連結されており、ロッド2は、図示しないキャップ部材及びアウターチューブt1を介して車体側の車体側ブラケット(図示せず)に連結されている。
シリンダ1内には、ピストン6で区画されて液体が満たされる上側の伸側室L1及び下側の圧側室L2と、ベース部材8で圧側室L2と区画される中間室L3とが形成されている。シリンダ1におけるベース部材8よりも下側でベースロッド7の基部7aよりも上側には、シリンダ1の肉厚を貫通してシリンダ1内外を連通する孔1aが形成されており、中間室L3とリザーバRの液溜室とが孔1aを介して常に連通されている。
ロッド2は、筒状のロッド本体20と、このロッド本体20の下側に連結されて外周にピストン6を保持するセンターロッド21とを備えて構成されている。このセンターロッド21には、伸側室L1に開口し、ロッド本体20の内側に連なるセンターロッド通路21aが形成されており、このセンターロッド通路21aは、ロッド本体20の内側に形成されるロッド本体通路20aと、図示しないキャップ部材に形成されてリザーバRに開口するキャップ部材通路とともに伸側室L1とリザーバRとを連通するバイパス路23を構成する。このバイパス路23は、伸側室L1からリザーバRへ向かう液体の流れのみが許容される一方通行の通路であるとともに、このバイパス路23の途中には、図示しないが、このバイパス路23を流れる液体の流量を制御する電磁弁が設けられている。
ピストン6は、ロッド2に保持されてシリンダ1内を軸方向に移動可能であり、ピストン6には、伸側室L1と圧側室L2とを連通する伸側ピストン通路6aと圧側ピストン通路6bとが形成されている。ピストン6の下側には、伸側ピストン通路6aを開閉するリーフバルブ60が積層されており、このリーフバルブ60は、伸長作動時にのみ伸側ピストン通路6aを開く。また、ピストン6の上側には、圧側ピストン通路6bを開閉するリーフバルブ61が積層されており、このリーフバルブ61は、圧縮作動時にのみ圧側ピストン通路6bを開く。
本実施の形態において、伸側ピストン通路6aを開閉する下側のリーフバルブ60と、圧側ピストン通路6bを開閉する上側のリーフバルブ61のクラッキング圧は、比較的高く設定されており、リーフバルブ60,61が、それぞれ、減衰弁として機能するように設定されている。なお、伸側ピストン通路6aや圧側ピストン通路6bを開閉するリーフバルブ60,61の設定は、所望の減衰力の特性に応じて適宜変更することが可能である。また、伸側と圧側の各ピストン通路6a,6bを開閉するための弁体としてポペット弁をリーフバルブ60,61の代用とするとしてもよく、液体の流れに抵抗を与えための構成としてオリフィスを利用するとしてもよい。
シリンダ1の下部内側に取り付けられるベース部材8には、圧側室L2と中間室L3とを連通する伸側ベース通路8aと圧側ベース通路8bとが形成されている。ベース部材8の上側には、伸側ベース通路8aを開閉するリーフバルブ80が積層されており、このリーフバルブ80は伸長作動時にのみ伸側ベース通路8aを開く。また、ベース部材8の下側には、圧側ベース通路8bを開閉するリーフバルブ81が積層されており、このリーフバルブ81は、圧縮作動時にのみ圧側ベース通路8bを開く。
本実施の形態において、伸側ベース通路8aを開閉する上側のリーフバルブ80のクラッキング圧は、比較的低く設定されており、当該リーフバルブ80が逆止弁として機能するように設定されている。他方、圧側ベース通路8bを開閉する下側のリーフバルブ81のクラッキング圧は、比較的高く設定されており、当該リーフバルブ81が減衰弁として機能するように設定されている。なお、伸側ベース通路8aや圧側ベース通路8bを開閉するリーフバルブ80,81の設定は、所望の減衰力の特性に応じて適宜変更することが可能である。また、伸側と圧側の各ベース通路8a,8bを開閉するための弁体としてポペット弁をリーフバルブ80,81の代用とするとしてもよく、液体の流れに抵抗を与えるための構成としてオリフィスを利用するとしてもよい。
シリンダ1の上側開口部に取り付けられるヘッド部材3は、図1,2に示すように、環状の頂部30aと筒状の筒部30bとを備えるキャップ状(有頂筒状)のシリンダヘッド30と、このシリンダヘッド30の頂部30aの内側に挿入される環状のカラー33と、シリンダヘッド30の筒部30bの内周に螺合される環状のバルブシート31と、このバルブシート31の上側に積層される環板状のリーフバルブ32と、このリーフバルブ32の上側に積層される環状の間座34とを備えて構成されており、シリンダヘッド30の頂部30aとバルブシート31との間に、カラー33、間座34及びリーフバルブ32の内周部を挟んで固定できるようになっている。
また、カラー33の内側に軸受4が圧入固定されるとともに、バルブシート31の内側にシール部材5が軽圧入されているので、バルブシート31をシリンダヘッド30に螺合すると、軸受4が嵌合するカラー33、シリンダヘッド30、間座34、リーフバルブ32、及び、シール部材5が軽圧入されるバルブシート31がヘッド部材3として一体化される。このとき、軸受4がシリンダヘッド30で支えられ、シール部材5がバルブシート31で保持されており、ヘッド部材3において、軸受4を支える部材と、シール部材5を保持する部材とを分けている。当該構成によれば、軸受4とシール部材5とを上下直列に配置したとしても、ヘッド部材3の上端となるシリンダヘッド30の上端からヘッド部材3においてシリンダ1内に対向する端面となるバルブシート31の下端までの長さXを短くしてヘッド部材3が軸方向に嵩張ることを抑制できるので、ヘッド部材3をコンパクトにできる。
さらには、上記したように一体化されたヘッド部材3をシリンダ1の上端に重なるばねシートワッシャ10の上からシリンダ1に被せ、シリンダヘッド30の筒部30b内周にシリンダ1の上側開口部を捻じ込むことで、ヘッド部材3をシリンダ1の上側開口部に取り付けることができ、ヘッド部材3、軸受4及びシール部材5の組み付け作業を容易にできる。
図2に示すように、シリンダヘッド30は、環状の頂部30aと、この頂部30aの外周部から下側に延びる筒状の筒部30bとを備えてキャップ状に形成されている。そして、頂部30a及び筒部30bの内側にロッド2のロッド本体20が挿通されるとともに、頂部30aの外側に懸架ばねSを支える環状のばねシートSSが嵌合している。本実施の形態において、シリンダヘッド30はアルミからなり、これにより、軽量化できるが、シリンダヘッド30の素材は適宜変更することが可能である。
シリンダヘッド30における頂部30aの外周は、部分的に径方向に突出しており、この突出部30cの間に形成される隙間とばねシートSSとの間を通ってリザーバR内の液体が上下に移動できるようになっている。また、頂部30aの内周には、環状の段差面30dが形成されており、頂部30aにおける段差面30dよりも下側の内径が上側の内径よりも大きくなるように形成されている。そして、頂部30aにおいて、段差面30dよりも下側の内側に、軸受4が圧入固定されたカラー33が挿入されている。
本実施の形態において、カラー33はスチールからなり、軸受4を直接シリンダヘッド30に挿入しない構造となっているが、シリンダヘッド30の素材によっては軸受4を直接シリンダヘッド30に挿入するようにしてもよい。
軸受4は、環状に形成されており、その内側に挿通されるロッド本体20の外周面に摺接し、ロッド2を軸方向に移動自在に軸支する。当該軸受4は、組付時において、下部4aがカラー33及びシリンダヘッド30の頂部30aから突出するように設定されており、当該突出した下部4aの外周に間座34とリーフバルブ32が設けられ、軸受4が間座34とリーフバルブ32の内周を支持する支持部材としても機能するようになっている。当該構成によれば、軸受4と間座34及びリーフバルブ32とを軸方向に重複させることができ、軸受4と間座34とリーフバルブ32の組付長を軸受4の長さ分に短縮できる。したがって、軸受4を長くしてロッド2をより安定的に軸支できるようにしたとしても、ヘッド部材3の上端(シリンダヘッド30の上端)から、ヘッド部材3のシリンダ1内に対向する端面(バルブシート31の下端)までの長さXが長くなることを抑制できる。
シリンダヘッド30における筒部30bの上部には、当該筒部30bの肉厚を貫通して筒部30bの内外を連通する孔30eが形成されている。また、筒部30bの内周にも、環状の段差面30fが形成されており、筒部30bにおける段差面30fよりも下側の内径が上側の内径よりも大きくなるように形成され、段差面30fの上側と下側の両方の内周にそれぞれ螺子溝が形成されている。そして、シリンダヘッド30の筒部30bにおいて、段差面30fよりも上側の内周にバルブシート31が螺合されており、当該バルブシート31は、リーフバルブ32、間座34及びカラー33を介して頂部30aの段差面30dに突き当たって位置決めされるようになっている。このバルブシート31の位置決め時において、バルブシート31とシリンダヘッド30の頂部30aとの間に隙間L4が形成されるようになっており、当該隙間L4は、筒部30bの孔30eを介して常にリザーバRと連通する。他方、シリンダヘッド30の筒部30bにおいて、段差面30fよりも下側の内周にシリンダ1の上側開口部が螺合され、上記段差面30fとシリンダ1との間にばねシートワッシャ10の外周部が挟まれて固定されている。
バルブシート31は、環状に形成されて内側にロッド2のロッド本体20が挿通されている。当該バルブシート31は、外径が大きくシリンダヘッド30の筒部30bの内周に螺合する螺子部31bと、この螺子部31bの下側に連なり外径が螺子部31bの外径よりも小さい脚部31cとを備えている。この脚部31cとシリンダヘッド30の筒部30bとの間には、環状の隙間L5が形成されており、当該隙間L5は後述するばねシートワッシャ10の通孔10fを介して常に伸側室L1と連通する。また、脚部31cの外周形状は、六角ボルト状とされており、バルブシート31をシリンダヘッド30に捻じ込む際に、工具を引っ掛けられるようになっている。
バルブシート31には、その上部に周方向に沿って形成される環状の環状溝31dと、この環状溝31dから脚部31cの外側にかけて開穿されて隙間L5に連なる通路31aと、環状溝31dの内周を囲う環状のボス部31eと、環状溝31dの外周を囲う環状の弁座31fとが形成されており、バルブシート31の位置決め時において、カラー33、間座34及びリーフバルブ32の内周部がシリンダヘッド30の頂部30aの段差面30dとバルブシート31のボス部31eとの間に挟まれて固定され、バルブシート31をシリンダヘッド30に捻じ込む際の軸力がリーフバルブ32の内周部にかかるとともに、上記軸力を安定させることができる。
バルブシート31の上下の内径は、部分的に拡径されており、当該拡径された部分の境界にそれぞれ環状の段差面31g,31hが形成されている。そして、バルブシート31において、上側の段差面31gよりも上側の内側に軸受4が挿入されており、組付時において上側の段差面31gが軸受4に到達しないように設定されている。本実施の形態のように、軸受4をバルブシート31の内側に挿入することで、軸受4からリーフバルブ32が外れることを防ぐことができるが、軸受4からリーフバルブ32が外れなければ軸受4がバルブシート31の内側に挿入されていなくてもよい。また、リーフバルブ32が軸受4以外の部材で内周支持される場合や、リーフバルブ32が外周支持される場合にも、軸受4をバルブシート31の内側に挿入する必要はない。他方、バルブシート31において、下側の段差面31hよりも下側の内側にシール部材5が軽圧入されている。
バルブシート31の上側に積層されるリーフバルブ32は、環板状に形成されて弾性変形可能であり、内側に軸受4が挿通されている。そして、リーフバルブ32の内周部が、間座34とカラー33を介してシリンダヘッド30の段差面30dとバルブシート31のボス部31eとの間に挟まれて固定されている。他方、リーフバルブ32の外周部は、弁座31fに離着座可能となっており、リーフバルブ32は、間座34よりも外周側を上側に撓ませて通路31aを開き、上下の隙間L4,L5を連通させることで、伸側室L1とリザーバRとを連通させることができる。
本実施の形態において、リーフバルブ32は、緩衝器Aの伸長作動時において伸側室L1の圧力が所定以上になったとき、通路31aを開いて伸側室L1とリザーバRとの連通を許容するリリーフ弁である。本実施の形態においては、上記したように、リーフバルブ32にかかる軸力を安定させることができるので、リーフバルブ32のクラッキング圧のバラツキを抑制できる。
また、本実施の形態において、バルブシート31の弁座31fがボス部31eよりも高い位置に設けられ、リーフバルブ32の外周が内周よりも上側になるようにリーフバルブ32に初期撓みを与えて、リーフバルブ32のクラッキング圧が高くしているが、当該リーフバルブ32のクラッキング圧は、所望の減衰力の特性に応じて適宜変更することが可能である。また、通路31aを開閉するリリーフ弁の構成も適宜変更することが可能であり、複数枚のリーフバルブ32からなるとしてもよく、リリーフ弁を構成するリーフバルブ32に初期撓みを与えないようにしてもよい。また、リーフバルブ32の外周部をシリンダヘッド30とバルブシート31で挟んで固定し、リーフバルブ32の内周部を撓ませて通路31aを開くようにしてもよい。
バルブシート31の内側に軽圧入されるシール部材5は、本実施の形態において、上下直列に設けられ背中合わせに配置される環状のUパッキン50,51からなり、ロッド本体20の外周面に摺接し、ロッド2の外周をシールしてシリンダ1内の密閉性を高めている。Uパッキン50,51は、共に、軸方向の一端部に周方向に沿う溝5aを備えており、Uパッキン50を上向きに取り付けるとは、溝5aが上を向くように取り付けることをいい、Uパッキン51を下向きに取り付けるとは、溝5aが下を向くように取り付けることをいう。そして、Uパッキン50,51を背中合わせに配置するとは、溝5aの反対側が向かい合うようにUパッキン50,51を配置することをいうものである。
上記構成によれば、リザーバR内の圧力が高まったとき、この圧力で上側のUパッキン50がロッド2の外周面に押し付けられてロッド2とUパッキン50との間に隙間が生じることを防ぐとともに、シリンダ1内の圧力が高まったとき、この圧力で下側のUパッキン51がロッド2の外周面に押し付けられてロッド2とUパッキン51との間に隙間が生じることを防ぐことができる。
なお、シール部材5の構成は、上記の限りではなく、適宜変更することが可能であり、Uパッキン以外のパッキン、Oリング、金属とゴムとを組み合わせて作られるオイルシール等からなるとしてもよい。
バルブシート31の下側に設けられ、シリンダヘッド30の段差面30fとシリンダ1の上端との間に挟まれて固定されるばねシートワッシャ10は、ロッド2のロッド本体20の挿通を許容する中心孔10aを備える円板状のワッシャ部10bと、このワッシャ部10bの内周縁から上側に起立してバルブシート31の内側に挿入される環状の突出部10cと、ワッシャ部10bの内周縁から下側に延びる環状のばね支持部10dとを備えており、このばね支持部10dの外周に緩衝器Aの最伸長時の衝撃を緩和する伸切ばね11が嵌合している。
突出部10cは、バルブシート31の脚部31cの内側に挿入され、突出部10cと脚部31cには、相対向してばねシートワッシャ10の内側と隙間L5とを連通しエア溜まりを防ぐ切欠10e,31iが形成されており、ワッシャ部10bには、軸方向に貫通する通孔10fが形成されている。当該通孔10fは、通路31aに連なる隙間L5と伸側室L1とを常に連通する。そして、リーフバルブ32の外周部が上側に撓んで弁座31fから離れ、リーフバルブ32が通路31aを開くと、伸側室L1の液体が、ばねシートワッシャ10とロッド2との間、切欠10e,31i、通孔10f、隙間L5、通路31a、隙間L4及び孔30eを通過してリザーバRに移動する。
以下、本実施の形態に係る緩衝器Aの作動について説明する。
インナーチューブt2がアウターチューブt1から退出し、ロッド2がシリンダ1から退出する緩衝器Aの伸長作動時において、ピストン速度が低い低速領域では、ピストン6のリーフバルブ60もヘッド部材3のリーフバルブ32も開弁しないので、縮小される伸側室L1の液体は、バイパス路23を通ってリザーバRに移動する。そして、ピストン速度が高くなって中速領域に達すると、ピストン6のリーフバルブ60が開弁し、伸側室L1の液体が伸側ピストン通路6aを通って拡大する圧側室L2に移動するようになり、さらにピストン速度が高くなって高速領域に達すると、ヘッド部材3のリーフバルブ32も開弁し、伸側室L1の液体がバルブシート31の通路31aを通ってリザーバRに移動するようになる。
上記した緩衝器Aの伸長作動時においては、ベース部材8のリーフバルブ80が開くので、シリンダ1内で不足する分の液体が伸側ベース通路8aを通ってリザーバRから圧側室L2に補給される。このように、中間室L3から圧側室L2に液体が移動すると、この移動した分の作動液が、孔1aを通ってリザーバRから中間室L3に流入する。
また、本実施の形態において、リーフバルブ61が減衰弁、リーフバルブ80が逆止弁とされるので、緩衝器Aは、主に、液体がバイパス路23や、伸側ピストン通路6aや、通路31aを通過する際の抵抗に起因する伸側減衰力を発生する。より詳しくは、低速領域における伸側減衰力は、主にバイパス路23を液体が通過する際の抵抗に起因し、中速領域における伸側減衰力は、主にバイパス路23と伸側ピストン通路6aを液体が通過する際の抵抗に起因し、高速領域における伸側減衰力は、主にバイパス路23と伸側ピストン通路6aと通路31aを液体が通過する際の抵抗に起因する。
さらに、本実施の形態において、シール部材5が下向きのUパッキン51を備えているので、伸長作動時に伸側室L1が昇圧されても上記Uパッキン51で伸側室L1の液体がロッド2の外周を通ってリザーバRに漏れ出ないようになっている。しかしながら、例えば、図3(a)や図3(b)の緩衝器においては、シール部材500が下向きのシールを備えておらず、上向きのシールのみで構成されている。このような場合には、伸側室L1が昇圧されたとき、伸側室L1の圧力で上向きのシール部材500とロッド2との間に隙間ができて、この隙間から液体がリザーバRに漏れる場合があり、当該シール部材500のクラッキング圧や隙間を通る流量を予測し難く、伸側減衰力の調整が困難になるという不具合がある。
これに対して、本実施の形態の上記構成によれば、シール部材5部分からリザーバRに向かう液体の流れをなくすことができる。したがって、伸側減衰力を調整する際、予測することが容易なピストン6のリーフバルブ60やヘッド部材3のリーフバルブ32を通る液体の流量のみを考慮して、バイパス路23を通過する液体の流量を電磁弁で制御すればよく、伸側減衰力を所望の減衰力に容易に調節することが可能となる。さらには、ピストン速度零付近から大きな伸側減衰力を発生させることが可能になるとともに、バイパス路23を閉じることで伸側室L1をロックすることもできるので、このことを利用して車高を調整するようにしてもよい。
なお、上記説明において、ピストン速度の領域を低速領域、中速領域、高速領域に区画しているが、各領域の閾値はそれぞれ任意に設定することが可能である。
反対に、インナーチューブt2がアウターチューブt1に進入し、ロッド2がシリンダ1に進入する緩衝器Aの圧縮作動時において、縮小される圧側室L2の液体がピストン6のリーフバルブ61を開き、圧側ピストン通路6bを通って拡大する伸側室L1に移動する。
この緩衝器Aの圧縮作動時において、シリンダ1内で余剰となる分の液体がベース部材8のリーフバルブ81を開き、圧側ベース通路8bを通って圧側室L2から中間室L3に移動する。このように、圧側室L2から中間室L3に液体が移動すると、この移動した分の液体が孔1aを通って中間室L3からリザーバRに排出される。
また、上記したように、本実施の形態に係るリーフバルブ61,81は、共に、減衰弁とされるので、緩衝器Aは、液体が圧側ピストン通路6b及び圧側ベース通路8bを通過する際の抵抗に起因する圧側減衰力を発生する。 また、本実施の形態において、リザーバR内で気体と液体が液面を介して接しており、気体と液体が隔壁体等で分離されていないので、緩衝器Aの圧縮作動に伴いリザーバ容積が縮小されてリザーバR内の圧力が高くなると、より多くの気体が液体中に溶解する。そして、緩衝器Aが伸長作動に転じたときに、多くの気体が溶解された液体が孔1aを通ってシリンダ1内に吸い込まれる。
そして、緩衝器Aの伸縮作動に伴いシリンダ1内を移動する液体の流速が高くなる部分では、低圧となって液体中に溶けていた気体が析出するが、当該気体はシリンダ1内を上側に移動するのでヘッド部材3付近に集まり、ヘッド部材3のリーフバルブ32が開弁したとき、気体が優先的に排出される。したがって、シール部材5を設け、シリンダ1内の密閉性を高めたとしても、シリンダ1内の気体が排出されずに、減衰力発生応答性が低下することを防ぎ、緩衝器Aの性能を良好に保つことができる。
以下、本実施の形態に係る緩衝器Aの作用効果について説明する。
本実施の形態において、ヘッド部材3のリーフバルブ32は、内周部をシリンダヘッド30とバルブシート31に挟まれて固定されるとともに、外周が内周よりも上側になるように初期撓みが与えられている。
上記構成によれば、リーフバルブ32のクラッキング圧を高くし、伸側室L1の圧力が高圧になったときに伸側室L1の液体をシリンダ1内に析出した空気とともにリザーバRに排出させることができる。また、リーフバルブ32に初期撓みを与える場合において、図3(a)に示す緩衝器のように、リーフバルブ302が軸力を受けることなく周辺部品の間に挟まれているだけの場合、リーフバルブ302と周辺部品との間に遊びがあると、リーフバルブ302の初期撓みの量が小さくなり、クラッキング圧にバラツキを生じさせ易くするという不具合がある。
これに対して、本発明においては、リーフバルブ32に軸力をかけ、この軸力を安定化させることができるので、リーフバルブ32に初期撓みを与える場合においても、初期撓みの撓み量を安定化させ、クラッキング圧にバラツキが発生することを抑制できる。なお、リーフバルブ32のクラッキング圧は、所望の減衰力の特性に応じて適宜変更することが可能であり、リーフバルブ32に初期撓みを与えなくてもよい。
また、本実施の形態において、シール部材5は、背中合わせに配置される上下一対のUパッキン50,51からなる。
上記構成によれば、上向きのUパッキン50を設けることで、リザーバR内の圧力が高まったとしても、リザーバRの液体や気体がシリンダ1内に侵入することを防ぐことができ、下側のUパッキン51を設けることで、伸側室L1内の圧力が高まったとしても、伸側室L1の液体がリザーバRに漏れることを防ぐことができる。このため、本実施の形態のように、伸側減衰力を電磁弁で調整しようとする場合、予測がし難いシール部材5部分からの漏れを考慮しなくて済むので、伸側減衰力を所望の減衰力に調整することが容易に可能となる。
また、上記したように、方向性のあるシール(本実施の形態においては、Uパッキン50,51)を上向きと下向きに設ける場合、これら一対のシールと軸受4とを上下直列に配置しなければならない。このため、例えば、図3(a)のバルブシート300や図3(b)のガイド部材310にさらに下向きのシールを追加した場合、ヘッド部材3A,3Bが軸方向に一層嵩張るという不具合がある。また、このようなヘッド部材3A,3Bにおいて、バルブシート300やガイド部材310の軸方向長さを短くしようとすると、軸受4が短くなったり、シール部材500と軸受4とが干渉し易くなったりする不具合がある。
これに対して、本発明においては、軸受4をシリンダヘッド30で支えるとともにシール部材5をバルブシート31に保持させて、軸受4を支える部材とシール部材5を支える部材とを分けているので、ヘッド部材3が軸方向に嵩張ることを抑制できる。このため、本実施の形態のように方向性のあるシールを上向きと下向きに設けた場合において、ヘッド部材3が軸方向に嵩張ることを抑制しながら軸受4の長さを充分に長くしても、シール部材5と軸受4の干渉を抑制することが容易に可能となる。
なお、シール部材5の構成は、上記の限りではなく、例えば、シール部材5がOリングのような方向性のないシールからなるとしてもよく、図3(a)や図3(b)の緩衝器のように、上向きのシールのみからなるシール部材500を備えるとしてもよい。
また、本実施の形態において、ヘッド部材3のリーフバルブ32の内側に軸受4が挿通されており、上記リーフバルブ32は、上記軸受4で内周を支持されている。
上記構成によれば、軸受4とリーフバルブ32とを軸方向に重ねて組み付けることができるので、ヘッド部材3を一層コンパクトにできる。
また、本実施の形態において、リーフバルブ32は、軸受4で内周支持されるとともに、内周部をカラー33と間座34を介してシリンダヘッド30とバルブシート31の間に挟まれて固定されている。当該構成によれば、シリンダヘッド30をアルミで形成し、カラー33をスチールで形成した場合、カラー33の外径を小さくしてカラー33を小型化できるので、軽量化の効果が高いが、リーフバルブ32の外周部がカラーと間座を介してシリンダヘッド30とバルブシート31に挟まれて固定され、間座よりも内周側を上側に撓ませて通路31aを開くように設定されるとしてもよい。
また、本実施の形態のように、シリンダヘッド30とカラー33と間座34を別体とすることで、各部材の素材選択自由度を向上させることができるが、間座34とカラー33を一体化したり、間座34とカラー33とシリンダヘッド30とを一体化したりしてもよい。
また、本実施の形態において、緩衝器Aは、車輪側に連結されて液体を収容するシリンダ1と、車体側に連結されて上記シリンダ1内に軸方向に移動可能に挿入されるロッド2と、上記シリンダ1の上側開口部に取り付けられて上記ロッド2が貫通するヘッド部材3と、このヘッド部材3に保持されて上記ロッド2を軸支する環状の軸受4と、上記ヘッド部材3に保持されて上記ロッド2の外周をシールする環状のシール部材5と、上記シリンダ1外に形成されて液体が貯留されるリザーバRとを備えている。
そして、上記ヘッド部材3は、内周に上記軸受4を保持する環状の頂部30aとこの頂部30aからシリンダ1側に延びる筒状の筒部30bとを備えてキャップ状に形成されるシリンダヘッド30と、上記筒部30bの内周に螺合されて内周に上記シール部材5を保持する環状のバルブシート31と、このバルブシート31に形成されて上記シリンダ1内と上記リザーバRとを連通する通路31aと、上記シリンダヘッド30と上記バルブシート31との間に内周部を挟まれながら上記通路31aを開閉する環板状のリーフバルブ32とを備えている。
上記構成によれば、バルブシート31をシリンダヘッド30に捻じ込む際の軸力がリーフバルブ32の内周部にかかるので、バルブシート31にかかる軸力を安定化させてリリーフ弁として機能するリーフバルブ32のクラッキング圧のバラツキを抑制できる。
さらには、リーフバルブ32にかかる軸力を捻じ込みにより安定化したとしても、軸受4をシリンダヘッド30で支え、シール部材5をバルブシート31で支えるようにしているので、ヘッド部材3の上端となるシリンダヘッド30の上端から、ヘッド部材3においてシリンダ1内に対向する端面となるバルブシート31の下端までの長さXを短くすることができる。したがって、ヘッド部材3が軸方向に嵩張ることを抑制し、ヘッド部材3をコンパクトにすることが可能となる。
なお、上記効果は、リーフバルブ32の外周部をシリンダヘッド30とバルブシート31との間に挟み、リーフバルブ32の外周部に捻じ込みによる軸力をかけるようにした場合にも、同様に得ることができる。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。