JP6274690B2 - 燃料噴射制御方法及びコモンレール式燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
例えば、ディーゼルエンジンにおける燃費の向上、排気清浄等の観点から1機関サイクル中に複数の燃料噴射を行う、いわゆる多段噴射制御に関する技術が種々、提案、実用化されている(例えば、特許文献1等参照)。
また、仮に実際のインジェクタの特性が、標準とされたインジェクタと同一であるとしても、使用時間の経過と共にノズル劣化を招き、それに起因して燃料噴射特性を劣化させるという問題もある。例えば、インジェクタの使用時間の経過と共に、ノズルニードルが着座するシート部分の摩耗が発生し、シート径の拡大を招き、その結果、ノズル開弁圧を上昇させるため、噴射遅れを生じさせ、噴射量の減少を招くことが良く知られている。
すなわち、噴射終了時のタイミングが本来よりも遅延することとなるため、先に述べたインターバル時間の領域を侵してしまい、補正量が大となるに従って適切なインターバル時間の確保ができなくなるという問題を招く。
インジェクタの噴射特性のずれに起因するパイロット燃料噴射量のずれを補正するパイロット燃料噴射量補正制御が実行可能に構成されてなるコモンレール式燃料噴射制御装置における燃料噴射制御方法であって、
前記パイロット燃料噴射量の補正が行われ、補正されたパイロット燃料噴射量によるパイロット噴射がなされた際に、前記パイロット噴射終了後に生ずる前記インジェクタに設けられたソレノイドバルブの閉弁タイミングを取得し、前記パイロット燃料噴射量の補正前における前記ソレノイドバルブの予め取得されている閉弁タイミングとの時間差である閉弁時間偏差を算出し、以後、パイロット噴射における前記インジェクタの通電開始時を、前記閉弁時間偏差分だけ先行せしめるよう構成されてなるものである。
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係るコモンレール式燃料噴射制御装置は、
内燃機関の動作制御を実行する電子制御ユニットであって、インジェクタの噴射特性のずれに起因するパイロット燃料噴射量のずれを補正するパイロット燃料噴射量補正制御が実行可能に構成されてなる電子制御ユニットを有してなるコモンレール式燃料噴射制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
前記パイロット燃料噴射量の補正が行われ、補正されたパイロット燃料噴射量によるパイロット噴射がなされた際に、前記パイロット噴射終了後に生ずる前記インジェクタに設けられたソレノイドバルブの閉弁タイミングを取得し、前記パイロット燃料噴射量の補正前における前記ソレノイドバルブの予め取得されている閉弁タイミングとの時間差である閉弁時間偏差を算出し、以後、パイロット噴射における前記インジェクタの通電開始時を、前記閉弁時間偏差分だけ先行せしめるよう構成されてなるものである。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における燃料噴射制御方法が適用される燃料噴射制御装置の一構成例について、図1を参照しつつ説明する。
かかる構成自体は、従来から良く知られているこの種の燃料噴射制御装置の基本的な構成と同一のものである。
かかる構成において、燃料タンク9の燃料は、供給ポンプ5により汲み上げられ、調量弁6を介して高圧ポンプ7へ供給されるようになっている。調量弁6には、電磁式比例制御弁が用いられ、その通電量が電子制御ユニット4に制御されることで、高圧ポンプ7への供給燃料の流量、換言すれば、高圧ポンプ7の吐出量が調整されるものとなっている。
また、供給ポンプ5は、高圧ポンプ装置50の上流側に高圧ポンプ装置50と別体に設けるようにしても、また、燃料タンク9内に設けるようにしても良いものである。
このソレノイド式のインジェクタは、良く知られているようにインジェクタ2−1〜2−nのノズルニードル(図示せず)の先端側と反対側に形成される制御室と称される燃料だまりへの燃料の流入、流出を制御するソレノイドバルブ(図示せず)を駆動することによりノズルニードル(図示せず)のシート部への着座、離間を制御可能としたものである。
まず、本発明の実施の形態におけるコモンレール式燃料噴射制御装置は、いわゆる多段噴射制御が実行されるものを前提としており、その例として、パイロット噴射と主噴射が、それぞれ1段ずつ行われるものであることを前提とする。
本発明の実施の形態において前提とされるパイロット燃料噴射量補正制御は、従来装置においても行われているもので、インジェクタ2−1〜2−nの劣化や故障等に起因して、特に、パイロット噴射における燃料噴射量の本来の燃料噴射量からずれを補正するものである。
なお、インジェクタ2−1〜2−nの劣化現象の代表的なものとしては、ノズルニードルが着座するシート部の使用による摩耗と、ソレノイドバルブ(図示せず)のアマチュアリフトの増加を挙げることができる。
シート部の摩耗は、シート径増大による開弁圧の上昇を招くため、噴射タイミングの遅れを生じさせ燃料噴射量の減少を招くこととなる。
また、ソレノイドバルブ(図示せず)のアマチュアリフトの増加は、上述のシート部の摩耗と同様な現象が、アマチュアの先端部分で生ずることに起因するもので、かかるアマチュアリフトの増加は、インジェクタ2−1〜2−nの通電終了時からアマチュアが着座するまでの時間を遅延を招くこととなる。
本発明の実施の形態において前提とされるパイロット燃料噴射量補正制御は、上述のようなシート径増大やアマチュアリフトの増加に起因する本来の燃料噴射量からのずれを補正するものである。
次いで、その変動周波数成分を基に、その時に実際に噴射されたであろう燃料量の推定値(推定噴射量)が算出される。
なお、このようなパイロット燃料噴射量補正制御は、例えば、本願出願人による提案(特開2013−15076号公報)等により、既に公知となっている技術である。
パイロット燃料噴射量補正制御における補正量を求める手法は、必ずしも上述のような手法に限定される必要はなく、結果として、補正量に応じてインジェクタ2−1〜2−nの通電時間が延長又は短縮されるのであれば、本発明を同様に適用することが可能である。
以下、具体的に、図2を参照しつつ説明すれば、先ず、電子制御ユニット4により、先に述べたように車両の所定の運転状態の下、パイロット燃料噴射量補正処理が実行される(図2のステップS102参照)。
すなわち、ステップS102の処理に基づいてパイロット燃料噴射量補正が施されたパイロット噴射量でのパイロット噴射が実行され、その際のインジェクタ2−1〜2−n内部に構成されたソレノイドバルブ(図示せず)の閉弁タイミングが電子制御ユニット4により次述するようにして計測、取得されることとなる。
図3(A)において、二点鎖線で表された波形は、パイロット燃料噴射量補正前のパイロット噴射時のインジェクタ2−1〜2−nの通電波形と、インジェクタ2−1〜2−nのソレノイドバルブ(図示せず)が閉弁した際に生ずる逆起電流波形を模式的に示したものである。同図において、時刻tp1はインジェクタ2−1〜2−nへの通電開始時であり、時刻tp2はインジェクタ2−1〜2−nへの通電終了時である。
なお、上述の時刻tp1、tp2は、エンジン3内のピストン(図示せず)が上死点(TDC)にあるタイミングを基準として定められるものであり、図3の他の時刻についても同様である。
なお、図3においては、通電終了時の時刻tp2と閉弁タイミングの時刻ta1との時間間隔を「W1」と表記している。
本発明の実施の形態においては、電流モニタ回路12により上述の逆起電流が検出されて、その検出信号が電子制御ユニット4を構成するマイクロコンピュータ(図示せず)に入力されることで、インジェクタ2−1〜2−nの閉弁時間の取得が可能となっている。
この通電時間の延長に伴い、閉弁時間(閉弁タイミング)もパイロット燃料噴射量補正前に比して遅くなり、時刻ta2の時点となる(図3(A)参照)。
なお、閉弁タイミングは、単に通電時間の延長に伴う分だけ遅くなるだけではなく、先に述べたようにインジェクタの劣化によるアマチュアリフトの増加に伴い遅延が生ずる。したがって、パイロット燃料噴射量補正後における通電終了時の時刻tp3と閉弁タイミングの時刻ta2との時間間隔W2(図3参照)は、先の補正前の時間間隔W1と比較すると、一般的にW2>W1となる。
この閉弁時間の時刻ta2のデータは、先に述べたように電流モニタ回路12を介して電子制御ユニット4に取得されるようになっている。
すなわち、閉弁時間偏差ΔTは、電子制御ユニット4において、Δt=ta2−ta1として算出される。なお、パイロット燃料噴射量補正前の閉弁時間ta1は、装置の使用開始の時点において実測データとして取得され、電子制御ユニット4の適宜な記憶領域に予め記憶されており、上述の演算処理に供されるようになっている。
すなわち、これ以後、パイロット噴射の通電開始時間が、先のステップS106の処理で求められた閉弁時間偏差ΔTだけ早められることとなる。図3(B)には、パイロット噴射の通電開始時間が閉弁時間偏差ΔTだけ早められた状態におけるインジェクタ2−1〜2−nの通電波形及びソレノイドバルブ(図示せず)の閉弁時に生ずる逆起電流波形が模式的に示されており、時刻tc1は、通電開始時であり、この通電開始時は、パイロット燃料噴射量補正前の時刻tp1に対して閉弁時間偏差ΔTだけ先行した時点となっている。
一方、通電終了時は、時刻tc1から、補正された通電時間(図3(A)の”補正後ET”参照)だけ経過した時点となる。
まず、本発明の実施の形態におけるコモンレール式燃料噴射制御装置においては、先に述べたように従来同様、パイロット噴射の後に主噴射が行われるようになっている。
この場合、パイロット噴射と主噴射との時間間隔(インターバル時間)は、標準とされるインジェクタの噴射特性を基に、パイロット噴射の噴射開始時と主噴射の噴射開始時の時間間隔として、或いは、パイロット噴射の噴射終了時と主噴射の噴射開始時の時間間隔として定められるものとなっている。なお、以下の説明の便宜上、上述のようにして定められたインターバル時間を特に「基準インターバル時間」と称する。
したがって、実際のインターバル時間は、基準インターバル時間と必ずしも一致するものではないが、噴射特性が先の許容範囲にある間は、実際のインターバル時間と基準インターバル時間とのずれは、燃料噴射にさほどの影響を与えることはない。
そのため、通常、パイロット噴射と主噴射との間隔を定めるインターバル時間は、上述のようなインジェクタ内の圧力変動や、それに起因する燃料噴射量の変動の影響が極力最小となるよう定められるが、インターバル時間のみではこれらの主噴射への影響を十分に低減することは困難である。それ故、通常は、パイロットの噴射に起因して生ずる主噴射における燃料噴射量の変動を補正するため、主噴射の燃料噴射量補正処理が行われるが、インターバル時間が設定通りであるとの前提の下、その補正量が演算算出されて設定されるようになっている。
なお、上述の主噴射に対する燃料噴射量補正制御は、例えば、本願出願人による提案(特開2011−122479号公報)等により、既に公知となっている技術である。
そこで、本発明の実施の形態においては、パイロット燃料噴射補正制御の実行によるパイロット燃料噴射量の補正を確保しつつも、インターバル時間に影響を与えることなく、必要とされるインターバル時間を確保するべく、先に述べたように閉弁時間差ΔTだけ通電開始時を先行させることで、インジェクタ2−1〜2−nのソレノイドバルブ(図示せず)の閉弁時間をパイロット燃料噴射量補正の有無に関わらず一致させるようにしたものである。
2−1〜2−n…インジェクタ
3…エンジン
4…電子制御ユニット
12…電流モニタ回路
Claims (2)
- インジェクタの噴射特性のずれに起因するパイロット燃料噴射量のずれを補正するパイロット燃料噴射量補正制御が実行可能に構成されてなるコモンレール式燃料噴射制御装置における燃料噴射制御方法であって、
前記パイロット燃料噴射量の補正が行われ、補正されたパイロット燃料噴射量によるパイロット噴射がなされた際に、前記パイロット噴射終了後に生ずる前記インジェクタに設けられたソレノイドバルブの閉弁タイミングを取得し、前記パイロット燃料噴射量の補正前における前記ソレノイドバルブの予め取得されている閉弁タイミングとの時間差である閉弁時間偏差を算出し、以後、パイロット噴射における前記インジェクタの通電開始時を、前記閉弁時間偏差分だけ先行せしめることにより、前記パイロット燃料噴射量の補正前後における、パイロット噴射後のソレノイドバルブの閉弁タイミングと前記パイロット噴射の後に行われる主噴射の通電開始タイミングとの間隔を一定に保つことを特徴とする燃料噴射制御方法。 - 内燃機関の動作制御を実行する電子制御ユニットであって、インジェクタの噴射特性のずれに起因するパイロット燃料噴射量のずれを補正するパイロット燃料噴射量補正制御が実行可能に構成されてなる電子制御ユニットを有してなるコモンレール式燃料噴射制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
前記パイロット燃料噴射量の補正が行われ、補正されたパイロット燃料噴射量によるパイロット噴射がなされた際に、前記パイロット噴射終了後に生ずる前記インジェクタに設けられたソレノイドバルブの閉弁タイミングを取得し、前記パイロット燃料噴射量の補正前における前記ソレノイドバルブの予め取得されている閉弁タイミングとの時間差である閉弁時間偏差を算出し、以後、パイロット噴射における前記インジェクタの通電開始時を、前記閉弁時間偏差分だけ先行せしめることにより、前記パイロット燃料噴射量の補正前後における、パイロット噴射後のソレノイドバルブの閉弁タイミングと前記パイロット噴射の後に行われる主噴射の通電開始タイミングとの間隔を一定に保つよう構成されてなることを特徴とするコモンレール式燃料噴射制御装置。
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