以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下の図面は、模式的なものである。従って、細部は省略されることがあり、また、寸法比率等は現実のものと必ずしも一致しない。
また、各図には、説明の便宜のために、直交座標系xyzを付している。なお、直交座標系xyzは、センサ素子(圧電体)の形状に基づいて定義されている。すなわち、x軸、y軸及びz軸は、結晶の電気軸、機械軸及び光軸を示すとは限らない。
同一又は類似する構成については、「第1駆動腕11A」、「第2駆動腕11B」のように、同一名称に対して互いに異なる番号及びアルファベットを付して呼称することがあり、また、この場合において、単に「駆動腕11」といい、これらを区別しないことがある。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るセンサ素子1の構成を示す斜視図である。図2は、センサ素子1の平面図である。
センサ素子1は、例えば、y軸回りの角速度を検出する角速度センサ101を構成するものである。角速度センサ101は、圧電振動式のものであり、センサ素子1は、x軸方向に励振され、z軸方向にコリオリの力が生じるように構成されている。具体的には、以下のとおりである。
センサ素子1は、圧電体3と、圧電体3に電圧を印加するための第1励振電極5A及び第2励振電極5B(図1)と、圧電体3に生じた電気信号を取り出すための第1検出電極7A(図1)及び第2検出電極7B(図1)とを有している。
圧電体3は、その全体が一体的に形成されている。圧電体3は、単結晶であってもよし、多結晶であってもよい。また、圧電体3の材料は適宜に選択されてよく、例えば、水晶(SiO2)、LiTaO3、LiNbO3、PZTである。
圧電体3において、電気軸乃至は分極軸(以下、両者を代表して分極軸のみに言及することがある。)は、x軸に一致するように設定されている。なお、分極軸は、所定の範囲(例えば15°以内)でx軸に対して傾斜していてもよい。また、圧電体3が単結晶である場合において、機械軸及び光軸は、適宜な方向とされてよいが、例えば、機械軸はy軸方向、光軸はz軸方向とされている。
圧電体3は、x軸方向に延びる基部9と、基部9からy軸方向の正側へ延びる第1駆動腕11A〜第4駆動腕11Dと、基部9からy軸方向の負側へ延びる第1検出腕13A及び第2検出腕13Bとを有している。
駆動腕11は、電圧(電界)が印加されることによってx軸方向(以下、「励振方向」ということがある。)に励振される部分である。検出腕13は、コリオリの力によってz軸方向(以下、「検出方向」ということがある。)に振動され、角速度に応じた電気信号を生成する部分である。基部9は、これら駆動腕11及び検出腕13を支持する部分である。これらの位置及び形状等は、例えば、以下のように設定されている。
圧電体3は、例えば、全体として厚さ(z軸方向)が一定にされており、また、例えば、y軸方向に延びる中心線CL0(図2)に対して線対称の形状に形成されている。
基部9は、例えば、概ね直方体状とされている。基部9の3軸方向の寸法比率は適宜に設定されてよい。例えば、基部9は、x軸方向の大きさ>y軸方向の大きさ>z軸方向の大きさに設定されている。すなわち、基部9は、x軸方向を長手方向とし、z軸方向を厚み方向とする概ね長方形の板状とされている。なお、例えば、x軸方向の大きさ>z軸方向の大きさ≧y軸方向の大きさとされてもよい。
基部9の両端部9aは、x軸方向において、全ての駆動腕11及び全ての検出腕13よりも外側に位置している。なお、逆説的であるが、本実施形態において端部9aの範囲は、例えば、全ての駆動腕11及び全ての検出腕13からx軸方向において外側へ突出している部分である。両端部9aのz軸方向の正側又は負側(本実施形態では正側)には、励振電極5及び検出電極7と接続された第1パッド15A〜第4パッド15Dが設けられている。このパッド15は、後述する実装基体に設けられたパッドに対向し、当該パッドに対して半田乃至は導電性接着剤からなるバンプにより接着される。これにより、センサ素子1と実装基体との電気的な接続がなされ、また、センサ素子1(圧電体3)は、駆動腕11及び検出腕13が振動可能な状態で支持される。
複数の駆動腕11は、互いに同一方向(y軸方向の正側)に互いに並列に(平行に)延びている。駆動腕11の数は、偶数(本実施形態では4)である。偶数本の駆動腕11は、中心線CL0に対して互いに線対称に配置されている。また、偶数本の駆動腕11は、その形状も、中心線CL0に対して線対称とされている。すなわち、第1駆動腕11Aと第4駆動腕11Dとは、中心線CL0に対して互いに線対称の配置及び形状とされ、第2駆動腕11Bと第3駆動腕11Cとは、中心線CL0に対して互いに線対称の配置及び形状とされている。また、例えば、これら全ての駆動腕11の形状は、互いに同一とされている。従って、(基部9の影響を無視すれば)全ての駆動腕11の励振方向(x軸方向)等の固有振動数は互いに同一である。
駆動腕11の具体的形状等は適宜に設定されてよい。例えば、駆動腕11は、y軸方向を長手方向とする直方体において、z軸方向の正側及び負側の面にy軸方向に延びる凹溝11a(図3(a)も参照)が形成された形状とされている。凹溝11aの断面形状は例えば矩形である。駆動腕11のxz断面の形状及び寸法は、例えば、駆動腕11の長手方向(y軸方向)の全体に亘って一定である。
駆動腕11が励振方向(x軸方向)に大きくなると励振方向における固有振動数は高くなり、駆動腕11が延在方向(y軸方向)に大きくなると励振方向における固有振動数は低くなる。従って、駆動腕11の幅(x軸方向)及び長さ(y軸方向)の寸法比率は、励振させたい周波数に応じて設定される。なお、xz断面の形状及び寸法は、駆動腕11のx軸方向の固有振動数とz軸方向の固有振動数とが等しくなるように設定されることが好ましい。
複数の検出腕13は、複数の駆動腕11の延びる方向とは反対方向(y軸方向の負側)に互いに並列に(平行に)延びている。検出腕13の数は、偶数(本実施形態では2)であり、また、例えば、駆動腕11の数よりも少ない。偶数本の検出腕13は、中心線CL0に対して互いに線対称に配置されている。また、偶数本の検出腕13は、その形状も、中心線CL0に対して互いに線対称とされている。この2本の検出腕13の検出方向(z軸方向)等における固有振動数は互いに同一である。
検出腕13の具体的形状等は適宜に設定されてよい。例えば、検出腕13の概略形状は、直方体とされている。この直方体においては、例えば、y軸方向の大きさ>x軸方向の大きさ>z軸方向の大きさである。すなわち、検出腕13は、y軸方向を長手方向とし、z軸方向を厚み方向とする概ね長方形の板状とされている。従って、検出腕13は、相対的に、励振方向(x軸方向)には振動しにくく、検出方向(z軸方向)に振動しやすくなっている。
また、例えば、検出腕13は、当該検出腕13をz軸方向に貫通し、y軸方向に延びる1又は複数(本実施形態では複数)の貫通溝13a(図3(b)も参照)が形成された形状とされている。別の観点では、検出腕13は、基部9からy軸方向に延び、x軸方向に並べられ、先端が互いに固定された複数の分割腕13bを有している。分割腕13b(貫通溝13a)のxz断面の形状は例えば矩形である。貫通溝13aの根元側端部は、好ましくは基部9に到達している。
駆動腕11のx軸方向の位置と検出腕13のx軸方向の位置との相対関係は、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bの振動によって第1検出腕13Aを振動させ、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dの振動によって第2検出腕13Bを振動させることが可能に適宜に設定されている。
例えば、図2に示すように、第1駆動腕11Aと第2駆動腕11Bとの中間位置を通る線(CL1)と、第1検出腕13Aの中心線CL13Aとは一致している。同様に、第3駆動腕11Cと第4駆動腕11Dとの中間位置を通る線(CL2)と、第2検出腕13Bの中心線CL13Bとは一致している。
なお、各腕の中心線は、例えば、xz断面の重心をy軸方向に連ねた線である。例えば、中心線CL13Aは、第1検出腕13Aのxz断面の重心をy軸方向に連ねた線である。また、複数の腕全体としての中心線を定義することもできる。例えば、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bの全体のxz断面の重心をy軸方向に連ねた線を中心線CL1と定義できる。
上記のように複数の腕全体としての中心線を定義すると、本実施形態では、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bの全体としての中心線CL1と、第1検出腕13Aの中心線CL13Aとが一致し、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dの全体としての中心線CL2と、第2検出腕13Bの中心線CL13Bとが一致していると捉えることができる。
駆動腕及び検出腕の本数が本実施形態とは異なる場合も、本実施形態と同様に、中心線同士を一致させてよい。例えば、1本の検出腕13に対応する駆動腕11の数が3本の場合に、3本の駆動腕全体の中心線を考え、この中心線を検出腕13の中心線と一致させてよい。また、例えば、3本の駆動腕11と2本の検出腕13とが対応している場合に、3本の駆動腕11全体の中心線と、2本の検出腕全体の中心線とを一致させてよい。
中心線CL0に対するx軸方向の一方側及び他方側のそれぞれにおいて、2本の駆動腕11間の距離(例えば図2に示す中心間距離D1)は適宜に設定される。なお、中心間距離は、中心線間の距離である。
本実施形態では、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bは、その全体としてのx軸方向の外側面(第1駆動腕11Aのx軸方向の負側の面及び第2駆動腕11Bのx軸方向の正側の面)が、第1検出腕13Aのx軸方向の外側面に一致するように配置されている。第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dも同様である。これにより、検出腕13の幅方向(x軸方向)全体に振動を伝達させやすくなる。また、駆動腕11の配置範囲は検出腕13の配置範囲に収まり、圧電体3が小型化される。もちろん、駆動腕11間の距離は、本実施形態よりも短くされるなどしてもよい。
また、中心線CL0に対するx軸方向の一方側及び他方側のそれぞれにおいて、複数本(本実施形態では2本)の駆動腕11の中心間距離D1は、検出腕13同士の中心間距離D2(図2)よりも短くされている。すなわち、中心線CL0の一方側及び他方側のそれぞれにおける、2本の駆動腕11間の相互影響は、中心線CL0を挟んで互いに隣接する2本の検出腕13間の相互影響よりも大きい。
図3(a)は、図2のIIIa−IIIa線における断面図である。図3(a)においては、第4駆動腕11Dの断面を示しているが、他の駆動腕11の断面も同様である。
図1、図2及び図3(a)に示すように、励振電極5は、駆動腕11の表面に形成された層状電極である。励振電極5は、例えば、Cu,Al等の適宜な金属によって形成されている。
図3(a)に示すように、第1励振電極5Aは、各駆動腕11において、z軸方向の正側の面及びz軸方向の負側の面にそれぞれ設けられている。これらの面には、上述のように凹溝11aが形成されており、各面において、第1励振電極5Aは、凹溝11aの底面及び2つの内壁面を覆っている。また、第2励振電極5Bは、各駆動腕11において、x軸方向の正側の面及びx軸方向の負側の面にそれぞれ設けられている。
2つの第1励振電極5A及び2つの第2励振電極5Bは、例えば、駆動腕11の各面を概ね覆うように設けられている。ただし、第1励振電極5A及び第2励振電極5Bは、互いに短絡しないように、少なくとも一方(本実施形態では第1励振電極5A)が各面よりも幅方向において小さく形成されている。
各駆動腕11において、2つの第1励振電極5Aは、例えば互いに同電位とされる。例えば、2つの第1励振電極5Aは、圧電体3上の配線等により互いに接続されている。また、各駆動腕11において、2つの第2励振電極5Bは、例えば互いに同電位とされる。例えば、2つの第2励振電極5Bは、圧電体3上の配線等により互いに接続されている。
なお、励振電極5の付加符号A、Bは、直交座標系xyzに基づいて付されている。従って、例えば、後述するように、一の駆動腕11の第1励振電極5Aと、他の駆動腕11の第1励振電極5Aとは同電位とは限らない。
図3(b)は、図2のIIIb−IIIb線における断面図である。図3(b)においては、第2検出腕13Bの一部の分割腕13bの断面を示しているが、第2検出腕13Bの他の分割腕13b、及び、第1検出腕13Aの分割腕13bの断面も同様である。
図1、図2及び図3(b)に示すように、検出電極7は、検出腕13(分割腕13b)の表面に形成された層状電極である。検出電極7は、例えば、Cu,Al等の適宜な金属によって形成されている。
検出電極7は、各分割腕13bに設けられている。すなわち、検出電極7は、検出腕13のx軸方向の外側面だけでなく、複数の貫通溝13aの内壁面にも設けられている。
より具体的には、第1検出電極7Aは、各分割腕13bにおいて、x軸方向の負側の面のうちのz軸方向の正側の領域、及び、x軸方向の正側の面のうちのz軸方向の負側の領域にそれぞれ設けられている。第2検出電極7Bは、各分割腕13bにおいて、x軸方向の負側の面のうちのz軸方向の負側の領域、及び、x軸方向の正側の面のうちのz軸方向の正側の領域にそれぞれ設けられている。第1検出電極7A及び第2検出電極7Bは、互いに短絡しないように適宜な間隔を空けて、分割腕13bに沿って延びている。
各検出腕13において、複数の第1検出電極7Aは、例えば、圧電体3上の配線等により接続されている。各検出腕13において、複数の第2検出電極7Bは、例えば、圧電体3上の配線等により接続されている。
なお、励振電極5と同様に、検出電極7の付加符号A、Bは、直交座標系xyzに基づいて付されている。従って、例えば、後述するように、第1検出腕13Aの第1検出電極7Aと、第2検出腕13Bの第1検出電極7Aとは、(本実施形態では)接続されない。
図3(a)及び図3(b)に示すように、角速度センサ101は、励振電極5に電圧を印加する励振回路103と、検出電極7からの電気信号を検出する検出回路105とを有している。
励振回路103は、例えば、発振回路や増幅器を含んで構成されており、所定の周波数の交流電圧を第1励振電極5Aと第2励振電極5Bとの間に印加する。なお、周波数は、角速度センサ101内にて予め定められていてもよいし、外部の機器等から指定されてもよい。
検出回路105は、例えば、増幅器や検波回路を含んで構成されており、第1検出電極7Aと第2検出電極7Bとの電位差を検出し、その検出結果に応じた電気信号を外部の機器等に出力する。より具体的には、例えば、上記の電位差は、交流電圧として検出され、検出回路105は、検出した交流電圧の振幅に応じた信号を出力する。この振幅に基づいてy軸回りの角速度が特定される。また、検出回路105は、励振回路103の印加電圧と検出した電気信号との位相差に応じた信号を出力する。この位相差に基づいてy軸回りの回転の向きが特定される。
なお、励振回路103及び検出回路105は、全体として制御回路107を構成している。制御回路107は、例えば、チップICによって構成されており、センサ素子1が実装される回路基板又は適宜な形状の実装基体に実装されている。
(動作説明)
図4(a)は、駆動腕11における電位等を説明する図であり、図3(a)に対応する模式図である。図4(b)は、検出腕13における電位等を説明する図であり、図3(b)に対応する模式図である。
第1励振電極5Aに正の電位が付与され、第2励振電極に負の電位(又は基準電位)が付与されると、同図において矢印で示すような電界が生じる。一方、分極軸は、x軸方向に一致している。従って、電界のx軸方向の成分に着目すると、駆動腕11のうちx軸方向の一方側部分においては電界の向きと分極軸の向きは一致し、他方側部分においては電界の向きと分極軸の向きは逆になる。
その結果、駆動腕11のうちx軸方向の一方側部分はy軸方向において収縮し、他方側部分はy軸方向において伸長する。そして、駆動腕11は、バイメタルのようにx軸方向の一方側へ湾曲する。第1励振電極5A及び第2励振電極5Bに印加される電圧が逆にされると、駆動腕11は逆方向に湾曲する。このような原理により、交流電圧が第1励振電極5A及び第2励振電極5Bに印加されると、駆動腕11はx軸方向において振動する。
ここで、上述のように、第1励振電極5Aが設けられる駆動腕11のz軸方向の正側及び負側の面には、凹溝11aが形成されている。従って、第1励振電極5Aは、x軸方向において第2励振電極5Bと対向する部分(凹溝11aの内壁に位置する部分)を有することになり、また、全体として面積が大きくなる。その結果、駆動腕11内におけるx軸方向の電界の強さを大きくし、効率的に駆動腕11を振動させることができる。
センサ素子1がy軸回りに回転されると、x軸方向において振動している駆動腕11には、慣性力の一つである、その角速度に応じた大きさのコリオリの力が加わる。その結果、駆動腕11はz軸方向において振動する。駆動腕11及び検出腕13は基部9によって連結され、互いに力の相互作用を及ぼすから、検出腕13は、z軸方向において、駆動腕11とは逆位相で振動する(駆動腕11の湾曲方向とは逆方向に湾曲する。)。
検出腕13がz軸方向に湾曲すると、図4(b)において矢印で示すように、z軸方向に平行な電界が生じる。電界の向きは、x軸(電極軸)方向の正側部分と負側部分とで互いに逆である。また、電界の向きは、電極軸の向きと、湾曲の向き(z軸方向の正側又は負側)とで決定される。この電圧(電界)が第1検出電極7A及び第2検出電極7Bに出力される。検出腕13がz軸方向に振動すると、電圧は交流電圧として検出される。
ここで、上述のように、検出腕13には複数の貫通溝13aが形成されており、検出電極7は、検出腕13のx軸方向の正側及び負側の面だけでなく、その貫通溝13aの内壁面にも設けられている。従って、検出電極7は、検出腕13のx軸方向の外側面だけに設けられている場合に比較して、全体としての面積が大きくなっている。その結果、検出腕13において生じる電荷を効率的に電気信号として取り出すことができる。
図5(a)は、4本の駆動腕11のx軸方向における励振を説明するための模式的な平面図である。
第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bは、励振方向(x軸方向)において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。例えば、第1駆動腕11Aの第1励振電極5Aと第2駆動腕11Bの第1励振電極5Aとは接続され、第1駆動腕11Aの第2励振電極5Bと第2駆動腕11Bの第2励振電極5Bとは接続され、これらの第1励振電極5Aと、第2励振電極5Bとの間に交流電圧が印加される。
同様に、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dは、励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。この励振も、上記と同様に、2本の駆動腕11間において、第1励振電極5A同士が接続され、第2励振電極5B同士が接続されることなどにより実現されてよい。
第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bのグループと、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dのグループとは、励振方向において互いに逆側へ変形するように互いに逆の位相(180°ずれた位相)で励振される。例えば、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bの第1励振電極5Aと、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dの第2励振電極5Bとが接続され(第1の電極群)、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bの第2励振電極5Bと、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dの第1励振電極5Aとが接続され(第2の電極群)、第1の電極群と第2の電極群との間に交流電圧が印加される。
なお、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bのグループと、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dのグループとは、x軸方向において逆位相で振動していることから、圧電体3全体としては、これらグループのx軸方向の力は互いに打ち消し合う。
図5(b)は、4本の駆動腕11及び2本の検出腕13のz軸方向における振動を説明するための模式的な斜視図である。より具体的には、図5(b)は、図5(a)に示したように駆動腕11が湾曲している圧電体3が、中心線CL0回り(y軸回り)に矢印y5で示す方向へ回転した場合における、駆動腕11及び検出腕13の湾曲状態を示す斜視図である。
第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bは、回転中心(中心線CL0)に対して、その半径方向(x軸方向)の同一側に配置されている。また、両駆動腕11は、図5(a)に示したように、その半径方向(励振方向、x軸方向)において共に外側又は内側へ湾曲するように励振される。従って、両駆動腕11においてコリオリの力の向きは互いに同一である。その結果、図5(b)に示すように、両駆動腕11はz軸方向において同一側へ共に湾曲するように振動する。同様に、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dは、コリオリの力によって、z軸方向において同一側へ共に湾曲するように振動する。
第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bのグループと、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dのグループとは、回転中心(中心線CL0)に対して、その半径方向(x軸方向)において互いに逆側に配置されており、ひいては、回転によるz軸方向の移動の向きは互いに逆である。また、図5(a)に示したように、一方のグループが半径方向において外側(又は内側)へ湾曲するとき、他方のグループも半径方向において外側(又は内側)へ湾曲するように、両グループは励振される。従って、両グループにおいてコリオリの力の向きは互いに逆となる。その結果、図5(b)に示すように、両グループはz軸方向において互いに逆側へ湾曲するように振動する。
駆動腕11及び検出腕13は、基部9によって連結されている。従って、駆動腕11の振動は、基部9を介して検出腕13に伝達され、検出腕13も振動する。具体的には、第1検出腕13Aは、z軸方向において第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bとは逆側へ湾曲するように振動する。また、第2検出腕13Bは、z軸方向において第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dとは逆側へ湾曲するように振動する。
第1検出腕13A及び第2検出腕13Bは、z軸方向において互いに逆側に湾曲するように振動する。従って、両者は、z軸方向の一方側部分(又は他方側部分)において生じる電圧がx軸方向において互いに逆向きである。従って、例えば、第1検出腕13Aの第1検出電極7Aと第2検出腕13Bの第2検出電極7Bとが接続され、第1検出腕13Aの第2検出電極7Bと第2検出腕13Bの第1検出電極7Aとが接続されることにより、両検出腕13において生じた電気信号は加算される。
(配線の一例)
上記の動作説明においては、複数の励振電極5及び複数の検出電極7の接続関係について言及した。この接続関係を実現する配線の一例を図6に示す。
図6は、センサ素子1の斜視図である。ただし、この図は、配線を視認しやすいようにセンサ素子1を模式的に示している。例えば、圧電体3の形状は単純化されて示され、また、各種の電極は小さく示されている。
この例において、第1パッド15A及び第2パッド15Bは、複数の励振電極5に印加される電圧が入力されるパッドである。また、第3パッド15C及び第4パッド15Dは、複数の検出電極7からの信号を出力するためのパッドである。
第1パッド15Aからは、第1配線17Aが延びている。第1配線17Aは、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bの第1励振電極5A、並びに、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dの第2励振電極5Bに接続されている。また、第2パッド15Bからは、第2配線17Bが延びている。第2配線17Bは、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bの第2励振電極5B、並びに、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dの第1励振電極5Aに接続されている。
第3パッド15Cからは、第3配線17Cが延びている。第3配線17Cは、第1検出腕13Aの第1検出電極7A及び第2検出腕13Bの第2検出電極7Bに接続されている。また、第4パッド15Dからは、第4配線17Dが延びている。第4配線17Dは、第1検出腕13Aの第2検出電極7B及び第2検出腕13Bの第1検出電極7Aに接続されている。
配線17は、互いに交差しないように、基部9の4面及び各種の腕部の根元側部分及び先端側部分の4面等に適宜に配置され、また、適宜に分岐又は合流している。
なお、図6に示す配線は、あくまで一例であり、他の種々のパターンによって、動作説明において言及した電極の接続関係が実現されてよい。基部9の2つの端部9aと、4種のパッド15との組み合わせも変更されてよい。配線17は、絶縁体を介して互いに立体交差するように設けられてもよい。
(実装構造の一例)
図7は、センサ素子1の実装構造の一例を示す図であり、図2のVII−VII線に対応する断面図である。
角速度センサ101は、例えば、センサ素子1の他、センサ素子1が実装される回路基板109と、回路基板109に実装されるIC111とを有している。
回路基板109は、例えば、リジッド式のプリント配線板により構成されており、絶縁基板112(絶縁基体)と、絶縁基板112の主面に設けられた複数のパッド113とを有している。なお、特に図示しないが、回路基板109は、この他に、パッド113同士を接続する配線等を有している。
センサ素子1は、パッド15とパッド113とが半田等からなるバンプ115により接着されることによって、回路基板109に実装される。センサ素子1と回路基板109との間は、バンプ115並びにパッド15及び113の厚みで隙間が形成されている。従って、駆動腕11及び検出腕13はz軸方向に回路基板109に衝突することなく振動可能である。
IC111は、例えば、既に述べた励振回路103及び検出回路105等を有している。IC111は、例えば、センサ素子1と同様に、バンプ115によりパッド113に接着されて実装される。IC111とセンサ素子1とは回路基板109を介して接続されている。
以上のとおり、本実施形態では、角速度センサ101は、圧電体3と、圧電体3の複数の駆動腕11に電圧を印加して複数の駆動腕11をその並び方向(x軸方向、励振方向)に励振する励振回路103と、延在方向(y軸方向)及び並び方向(x軸方向)に交差する検出方向(z軸方向)における複数の検出腕13の振動によって生じる電気信号を検出する検出回路105とを有している。複数の駆動腕11は、4本以上の偶数本で、且つ、延在方向(y軸方向)に延びる対称軸(中心線CL0)に対して線対称に配置されている。複数の検出腕13は、2本以上の偶数本で、且つ、対称軸(中心線CL0)に対して線対称に配置されている。励振回路103は、線対称の一方側の複数の駆動腕(第1駆動腕11A及び第2駆動腕11B)が励振方向において互いに同一側へ共に変形するようにこれら駆動腕11を互いに同一の位相で励振し、線対称の他方側の複数の駆動腕(第3駆動腕11C及び第4駆動腕11D)が励振方向において互いに同一側へ共に変形するようにこれら駆動腕11を互いに同一の位相で励振し、線対称の一方側の複数の駆動腕(11A及び11B)と、線対称の他方側の複数の駆動腕(11C及び11D)とが、励振方向において互いに逆側に変形するように、線対称の一方側の複数の駆動腕と線対称の他方側の複数の駆動腕とを互いに逆の位相で励振する。
従って、例えば、起動時間が20ms〜50msとなり従来と比較して短くなる。この起動時間が短くなる理由としては、例えば、以下の事項が考えられる。駆動腕11の本数が比較的多く設けられ、ひいては、駆動腕11同士が比較的近くに配置されることから、複数の駆動腕11は振動に関して相互影響が比較的大きい(独立に振動し難い)。その結果、唸りが早期に収束する。また、並列に電圧印加がなされる駆動腕11の本数が比較的多くされることから、全体としての抵抗値(共振インピーダンス、R1、CI)が低下する。起動時間は抵抗値に依存するから、抵抗値の低下によって起動時間が短くなる。また、複数の駆動腕11は、線対称に配置され、線対称の一方側と他方側とで互いに逆方向に湾曲するように振動されるから、基部9の中央が振動の節となる。換言すれば、比較的多く設けられた駆動腕11に対して振動の節が共通化される。その結果、複数の駆動腕11が独立に振動することが抑制され、振動が早期に安定する。
また、起動時間の短縮以外にも種々の効果が奏される。例えば、角速度センサ101では、駆動腕11の数が多くされ、ひいては、駆動腕11全体としての質量が大きくされることから、駆動腕11に作用するコリオリの力が大きくなる。その結果、角速度センサ101の感度が向上する。また、駆動腕11の数を増やして質量を大きくすることから、駆動腕11を大型化して駆動腕11の質量を大きくする場合に比較して、センサ素子1の小型化が期待される。
また、本実施形態では、複数の駆動腕11の本数は、複数の検出腕13の本数よりも多い。従って、例えば、検出腕13に対する駆動腕11の質量を大きくしつつ、小型化を図ることができる。その結果、感度向上が期待される。
また、本実施形態では、線対称の一方側において互いに隣接する駆動腕11(11A及び11B)同士の中心間距離D1、及び、線対称の他方側において互いに隣接する駆動腕11(11C及び11D)同士の中心間距離D1は、対称軸(中心線CL0)を挟んで互いに隣接する検出腕13(13A及び13B)同士の中心間距離D2よりも短い。
従って、例えば、既に述べたように、線対称の一方側及び他方側それぞれにおける複数の駆動腕11同士の振動に関する相互影響は、対称軸を挟んで互いに隣接する検出腕13同士の振動に関する相互影響よりも大きい。その結果、線対称の一方側及び他方側それぞれにおいて、複数の駆動腕11の振動のばらつきが収束しやすくなり、ひいては、起動時間が短くなる。
また、本実施形態では、複数の駆動腕11の本数は、複数の検出腕13の本数よりも多い。一方で、線対称の一方側の複数の駆動腕11全体の中心線CL1と、線対称の一方側の1又は複数の検出腕13全体(本実施形態では1本の検出腕13)の中心線CL13Aとは一致する。線対称の他方側においても同様である。
従って、例えば、複数の駆動腕11の本数を検出腕13の本数よりも多くしたことによる上述した効果を得つつ、駆動腕11と検出腕13との相互影響を大きくし、駆動腕11の振動を検出腕13に適切に伝達することができる。その結果、例えば、検出感度の向上が期待される。
また、本実施形態では、複数の検出腕13それぞれには、検出方向(z軸方向)に面する面に、延在方向(y軸方向)に延びる貫通溝13aが形成されている。複数の検出腕13それぞれにおいて、貫通溝13aの内壁面及び当該内壁面とは反対側に面する外側面には、検出回路105に接続される検出電極7が設けられている。
従って、既に述べたように、検出腕13において生じた電荷を効率的に出力信号として出力することができる。そして、駆動腕11の本数の増加等による感度向上の効果と相俟って、全体として小型且つ高感度の角速度センサ101が実現される。
また、本実施形態では、角速度センサ101は、絶縁基体(絶縁基板112)と、絶縁基体に設けられたパッド113とを有する実装基体(回路基板109)とを有している。基部9の両端部9aは、駆動腕11及び検出腕13の並び方向(x軸方向)において全ての駆動腕11及び全ての検出腕13よりも外側に位置している。圧電体3は、基部9の両端部9aにてパッド113に接着されている。
従って、例えば、まず、圧電体3の支持のための部分が、駆動腕11等と一体的に形成されることになり、構成が簡素である。また、例えば、基部9の内部側が固定される場合に比較して、基部9の変形が阻害されにくいから、駆動腕11及び検出腕13の振動が容易化される。その結果、感度の向上が期待される。
<第2の実施形態>
図8は、本発明の第2の実施形態に係るセンサ素子201の構成を示す斜視図である。図9は、センサ素子201の平面図である。
センサ素子201の構成の概要は、第1の実施形態のセンサ素子1の構成の概要と同様である。すなわち、センサ素子201は、第1の実施形態のセンサ素子1と同様に、圧電体203と、励振電極5と、検出電極7とを有している。また、圧電体203は、第1の実施形態の圧電体3と同様に、基部209と、複数(4本)の駆動腕211と、複数(2本)の検出腕213とを有し、中心線CL0に対して線対称の形状とされている。
センサ素子201の動作の概要も、第1の実施形態のセンサ素子201の動作の概要と同様である。すなわち、第1駆動腕211A及び第2駆動腕211Bは同一位相でx軸方向に励振され、第3駆動腕211C及び第4駆動腕211Dは同一位相でx軸方向に励振される。第1駆動腕211A及び第2駆動腕211Bのグループと、第3駆動腕211C及び第4駆動腕211Dのグループとは逆位相で励振される。そして、圧電体203がy軸回りに回転されると、駆動腕211及び検出腕213はコリオリの力によってz軸方向に振動する。
以下では、主として、第2の実施形態の、第1の実施形態との相違部分について説明する。
図9に示すように、第2の実施形態においては、対称軸(中心線CL0)を挟んで互いに隣接する駆動腕211(211B及び211C)同士の中心間距離D3は、線対称の一方側及び他方側のそれぞれにおいて互いに隣接する駆動腕211同士の中心間距離D1よりも長い。
このような構成により、例えば、線対称の一方側及び他方側のそれぞれにおいて、駆動腕11同士の相互影響を大きくすることができる。その結果、振動が早期に安定し、起動時間が短くなることが期待される。
また、中心間距離D3が小さい場合、対称軸(中心線CL0)を挟んで互いに隣接する第2駆動腕211B及び第3駆動腕211Cの振幅は小さくなる。その結果、線対称の一方側及び他方側のそれぞれにおいて、駆動腕211同士の振幅にばらつきが生じる。例えば、第2駆動腕211Bの振幅は、第1駆動腕211Aの振幅よりも小さくなる。その結果、例えば、起動時間が長くなるおそれがある。しかし、上記のように中心間距離D3を比較的長くすることによって、そのような不都合を解消できる。
また、第2の実施形態では、複数の駆動腕211の本数は、複数の検出腕213の本数よりも多く、対称軸(中心線CL0)を挟んで互いに隣接する駆動腕211(211B及び211C)同士の中心間距離D3は、対称軸を挟んで互いに隣接する検出腕213同士の中心間距離D2以上の長さ(図9ではD3=D2)である。
すなわち、上述した中心間距離D1との比較とは別の観点でも、中心間距離D3は比較的長くされている。従って、例えば、上述したように、対称軸の一方側及び他方側それぞれにおいて、駆動腕211間における振幅のばらつきを抑制することができ、ひいては、起動時間の短縮が期待される。
なお、このように中心間距離D3を大きくしたとしても、駆動腕211の振動を検出腕213に効率的に伝達する観点から、中心間距離D3の基準となる第2駆動腕211Bは、その中心線CL11Bがx軸方向において第1検出腕213Aの幅の範囲内に収まっていることが好ましい。より好ましくは、図9に示すように、中心線CL11Bは第1検出腕213Aの中心線CL13Aと一致する。第3駆動腕211Cについても同様に、その中心線CL11Cはx軸方向において第2検出腕213Bの幅の範囲内に収まっていることが好ましく、より好ましくは、図9に示すように、中心線CL11Cは第2検出腕213Bの中心線CL13Bと一致する。
また、第2の実施形態では、駆動腕211及び検出腕213は、根元から先端まで一定の幅ではなく、先端に幅広となる部分を有している。すなわち、駆動腕211及び検出腕213は、ハンマー形状とされている。従って、駆動腕211及び検出腕213の質量をその先端において確保することができるから、圧電体203を小型化することができる。
また、第2の実施形態では、駆動腕211のz軸方向の正側及び負側の面には凹溝が形成されておらず、これらの面は平坦である。従って、構成が簡素であり、製造コストが削減される。
また、第2の実施形態では、センサ素子201は、センサ素子201を実装基体(例えば図7の回路基板109)に実装するための第1実装腕219A〜第4実装腕219Dを有している。具体的には、以下のとおりである。
基部209の両端部209aは、第1の実施形態の基部9の両端部9aと同様に、全ての駆動腕211及び全ての検出腕213よりもx軸方向の外側に位置している。4本の実装腕219は、基部209の両端部209aからy軸方向の両側に延びている。すなわち、4本の実装腕219は、全ての駆動腕211及び全ての検出腕213のx軸方向の外側に位置し、駆動腕211及び検出腕213に並列に延びている。そして、4本の実装腕219の先端は圧電体203の4隅に位置している。
第1実装腕219A及び第3実装腕219Cは、例えば、中心線CL0を対称軸として、その配置及び形状が互いに線対称になるように形成されている。同様に、第2実装腕219B及び第4実装腕219Dは、例えば、中心線CL0を対称軸として、その配置及び形状が互いに線対称になるように形成されている。第1実装腕219A及び第3実装腕219Cと、第2実装腕219B及び第4実装腕219Dとは、例えば、基部209のx軸方向に延びる中心線(不図示)を対称軸として、その配置及び形状が互いに線対称になるように形成されている。
実装腕219の先端部のz軸方向の正側又は負側(本実施形態では正側)の面には、第1パッド215A〜第4パッド215Dが設けられている。パッド215は、第1の実施形態のパッド15と同様に、バンプ115(図7)を介して実装基体(例えば回路基板109)パッド113と接続される。これにより、センサ素子201と実装基体との電気的な接続がなされ、また、圧電体203は、駆動腕211及び検出腕213が振動可能な状態で支持される。なお、実装腕219の先端部の範囲は、例えば、実装腕219の先端面から実装腕219の長さの2/5まで又は1/3までの範囲である。
実装腕219の具体的形状等は適宜に設定されてよい。例えば、実装腕219は、xz断面の形状が長手方向に亘って一定とされ、また、当該xz断面は矩形である。また、例えば、実装腕219の幅(乃至は断面積)は、駆動腕211及び検出腕213の幅(乃至は断面積)以上とされている。また、例えば、実装腕219の長さは、駆動腕211及び検出腕213の長さと同等とされている。
以上のように、実装腕219にてセンサ素子1を固定することにより、まず、第1の実施形態において基部9の両端部9aにてセンサ素子1を固定したことによって奏された効果と同様の効果が奏される。例えば、圧電体203の支持のための部分が、駆動腕211等と一体的に形成されることになり、構成が簡素である。また、例えば、基部209の内部側が固定される場合に比較して、基部209の変形が阻害されにくいから、駆動腕211及び検出腕213の振動が容易化される。
さらに、本実施形態においては、実装腕219が設けられることにより、第1の実施形態では奏されない効果が奏される。例えば、固定される部分(実装腕219の先端部)が駆動腕211及び検出腕213から比較的離れているから、駆動腕211及び検出腕213の振動が固定される部分に伝わりにくい。その結果、例えば、接着剤からなるバンプ115が経時変化によって劣化しても、実装腕219が実装基体から離れてしまうことが抑制される。すなわち、角速度センサの寿命を長くすることができる。また、例えば、固定される部分が4方に且つ比較的離れて位置していることから、センサ素子201を実装基体に対して平行に配置しやすくなる。その結果、角速度の検出精度が向上する。
なお、センサ素子201における配線構造は、第1の実施形態のセンサ素子1における配線構造と概ね同様でよい。例えば、図6に例示した配線構造を採用可能である。ただし、センサ素子201においては、パッド215が実装腕219の先端部に位置しており、これに応じて配線は長くされる(実装腕219に沿って延びる部分が設けられる。)。
(センサ素子の製造方法)
第1の実施形態のセンサ素子1及び第2の実施形態のセンサ素子201は、いずれも、公知のセンサ素子の製造方法によって作製されてよい。ただし、センサ素子201においては、中心間距離D3が比較的長く、ひいては、第2駆動腕211Bと第3駆動腕211Cとの間の隙間が大きいことから、以下に説明する製造方法を採用してもよい。
図10(a)〜図10(f)は、センサ素子201の製造方法の要部を示す模式図であり、図9のX−X線に対応する断面図である。
まず、図10(a)に示すように、圧電体203となる圧電基板202を用意する。圧電基板202は、例えば、センサ素子201が多数個取りされる母基材(ウェハ)である。
次に、図10(b)に示すように、圧電基板202をエッチングし、基部209、駆動腕211、検出腕213及び実装腕219を形成する(エッチング工程)。ただし、この時点では、各種電極、パッド及び配線が配置される表面が形成されればよい。例えば、複数の駆動腕211の先端部分が互いに繋がっていたり、圧電基板202内において互いに隣接する圧電体203同士が繋がっていたりしてもよい。
また、この時点では、圧電基板202のエッチングによって、第2駆動腕211Bと第3駆動腕211Cとの間に、支持腕221が形成されている。支持腕221の幅は、後述する支持作用が奏されるように適宜に設定されてよい。支持腕221の長さは、例えば、第1励振電極5Aが形成される長さに亘る長さであり、例えば、駆動腕211と同等の長さである。支持腕221は、基部209及び/又は駆動腕211の先端同士を繋ぐ部分に支持されている。
次に、図10(c)に示すように、第1励振電極5A等が形成される部分に開口が形成されたマスク223を形成する(マスク形成工程)。具体的には、例えば、レジストからなるフィルムを圧電体203に貼り付け、そのフィルムを露光及び現像によってパターニングし、これによりマスク223を形成する。マスク223は、駆動腕211上及び支持腕221上に位置するとともに、これらの間の隙間の上にも位置している。
次に、図10(d)に示すように、導電膜225を形成する(導電膜形成工程)。導電膜225は、マスク223上及び圧電体203のうちマスク223から露出した部分に亘って形成される。
次に、図10(e)に示すように、適宜な溶剤を用いることなどによって、マスク223及びマスク223上の導電膜225を除去する(除去工程)。これにより、第1励振電極5A等が形成される。
その後、図10(f)に示すように、適宜な時期に、エッチング等によって支持腕221を除去する。これにより、センサ素子201が作製される。
以上のとおり、図10に例示した製造方法においては、第2駆動腕211Bと第3駆動腕211Cとの間に一時的に支持部材(支持腕221)を配置し、支持腕221によってマスク223を支持する。従って、第2駆動腕211Bと第3駆動腕211Cとの間の比較的広い隙間においてマスク223が撓んだり破断したりすることが抑制される。なお、支持腕221は、圧電基板202とは別個の部材であってもよい。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
第1の実施形態及び第2の実施形態は適宜に組み合わされてよい。例えば、第1の実施形態の駆動腕の溝は第2の実施形態の駆動腕に設けられてもよいし、第2の実施形態の駆動腕のハンマ形状は第1の実施液体の駆動腕に適用されてもよいし、第1の実施形態において実装腕が設けられてもよいし、第2の実施形態において実装腕が省略されてもよい。
検出腕及び駆動腕の本数は、実施形態に例示したものに限定されない。例えば、駆動腕の本数は、4本ではなく、6本であってもよい。また、例えば、検出腕の本数は、駆動腕の本数と同数であってもよい。
センサ素子を実装基体に固定する部分は、圧電体に一体的に形成されなくてもよい。例えば、実装基体に板ばねからなる端子を設け、当該端子によってセンサ素子を支持してもよい。また、実装腕が設けられる場合において、実装腕は、駆動腕及び検出腕に平行でなくてもよく、例えば、駆動腕及び検出腕に対して圧電体の外側へ傾斜して延びていてもよい。センサ素子の実装基体への固定と、センサ素子と実装基体との電気的な接続とは別個になされてもよい。例えば、基部又は実装腕を実装基体に固定しつつ、ボンディングワイヤによってセンサ素子と実装基体とを電気的に接続してもよい。
駆動腕の凹溝は、検出腕の貫通溝のように、先端の手前まで延びる貫通溝とされてもよい。この場合であっても、駆動腕はバイメタルのように振動可能である。また、検出腕の貫通溝は凹溝とされてもよい。この場合、駆動腕の凹溝のようにz軸方向の両面に凹溝を形成して各凹溝の内壁面に検出電極を設けてもよいし、z軸方向の一方の面に深い凹溝を形成してその内壁面に検出電極を設けてもよい。
本発明は、必ずしも起動時間の短縮の効果を奏することができなくてもよい。本発明の構成は、起動時間の短縮以外にも、種々の効果を奏することができ、ひいては、技術的意義が見い出されることができる。例えば、既に述べたように、本発明は、感度の向上の効果を奏することができる。
本願からは、実装腕に着目した以下の別発明を抽出可能である。
絶縁基体と、絶縁基体に設けられたパッドと、を有する実装基体と、
圧電体と、前記圧電体に設けられた励振電極と、前記圧電体に設けられた検出電極とを有し、前記実装基体に実装されたセンサ素子と、
を有し、
前記圧電体は、
基部と、
前記基部から所定の延在方向において延び、前記励振電極が設けられる1又は複数の駆動腕と、
前記基部から前記延在方向において延びる1又は複数の検出腕と、
前記基部のうち全ての前記駆動腕及び全ての前記検出腕の両側外側となる部位から前記延在方向の一方側及び他方側に延びる4本の実装腕と、を有し、
前記圧電体は前記実装腕の先端部にて前記パッドに接着されている
角速度センサ。
上記の別発明においては、駆動腕と検出腕とは延在方向の互いに逆側に延びている必要は無いし、駆動腕及び検出腕それぞれは1本でもよいし、複数の駆動腕又は複数の検出腕が設けられた場合にこれらは線対称に配置されなくてもよい。振動のモードも適宜に設定されてよい。