以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下の図面は、模式的なものである。従って、細部は省略されることがあり、また、寸法比率等は現実のものと必ずしも一致しない。
また、各図には、説明の便宜のために、直交座標系xyzを付している。なお、直交座標系xyzは、センサ素子(圧電体)の形状に基づいて定義されている。すなわち、x軸、y軸及びz軸は、結晶の電気軸、機械軸及び光軸を示すとは限らない。
同一又は類似する構成については、「第1駆動腕11A」、「第2駆動腕11B」のように、同一名称に対して互いに異なる番号及びアルファベットを付して呼称することがあり、また、この場合において、単に「駆動腕11」といい、これらを区別しないことがある。
図1は、本発明の実施形態に係るセンサ素子1の圧電体3を示す斜視図である。図2は、圧電体3上の電極配置を説明するためのセンサ素子1の斜視図である。図2において、圧電体3は、一部が省略されることなどにより、図1よりも模式的に示されている。
センサ素子1は、例えば、y軸回りの角速度を検出する角速度センサ101を構成するものである。角速度センサ101は、圧電振動式のものであり、センサ素子1は、x軸方向に励振され、z軸方向にコリオリの力が生じるように構成されている。具体的には、以下のとおりである。
センサ素子1は、圧電体3と、圧電体3に電圧を印加するための第1励振電極5A及び第2励振電極5B(図2)と、圧電体3に生じた電気信号を取り出すための第1検出電極7A及び第2検出電極7B(図2)とを有している。
圧電体3は、その全体が一体的に形成されている。圧電体3は、単結晶であってもよいし、多結晶であってもよい。また、圧電体3の材料は適宜に選択されてよく、例えば、水晶(SiO2)、LiTaO3、LiNbO3、PZTである。
圧電体3において、電気軸乃至は分極軸(以下、両者を代表して分極軸のみに言及することがある。)は、x軸に一致するように設定されている。なお、分極軸は、所定の範囲(例えば15°以内)でx軸に対して傾斜していてもよい。また、圧電体3が単結晶である場合において、機械軸及び光軸は、適宜な方向とされてよいが、例えば、機械軸はy軸方向、光軸はz軸方向とされている。
圧電体3は、x軸方向に延びる基部9と、基部9からy軸方向の正側又は負側に延びる各種の腕(10A〜10D(図1)、11A〜11D、12A〜12D(図1)、13A及び13B、並びに、14A〜14D(図1))とを有している。
第1駆動腕11A〜第4駆動腕11Dは、電圧(電界)が印加されることによってx軸方向(以下、「励振方向」ということがある。)に励振される部分である。第1検出腕13A及び第2検出腕13Bは、コリオリの力によってz軸方向(以下、「検出方向」ということがある。)に振動され、角速度に応じた電気信号を生成する部分である。基部9は、これら駆動腕11及び検出腕13を支持する部分である。第1実装腕10A〜第4実装腕10Dは、基部9を支持する部分である。第1駆動側フレーム腕12A〜第4駆動側フレーム腕12Dは、駆動腕11の根元付近を衝撃に対して強くするためのものである。第1検出側フレーム腕14A〜第4検出側フレーム腕14Dは、検出腕13の根元付近を衝撃に対して強くするためのものである。これらの位置及び形状等は、例えば、以下のように設定されている。
圧電体3は、例えば、全体として厚さ(z軸方向)が一定にされており、また、例えば、y軸方向に延びる中心線CL0(図1)に対して線対称の形状に形成されている。
基部9は、例えば、概ね直方体状とされている。基部9の3軸方向の寸法比率は適宜に設定されてよい。例えば、基部9は、x軸方向の大きさ>y軸方向の大きさ>z軸方向の大きさに設定されている。すなわち、基部9は、x軸方向を長手方向とし、z軸方向を厚み方向とする概ね長方形の板状とされている。なお、例えば、x軸方向の大きさ>z軸方向の大きさ≧y軸方向の大きさとされてもよい。
4本の実装腕10は、基部9の両端部9aからy軸方向の両側に延びている。換言すれば、4本の実装腕10は、他の全ての腕のx軸方向の外側にて他の腕に並列に延びている。4本の実装腕10は、例えば、x軸方向及びy軸方向のいずれにおいても線対称の配置及び形状となるように設けられている。実装腕10の具体的形状は適宜に設定されてよい。例えば、実装腕10は、概略矩形の板状に形成されている。
実装腕10の先端部のz軸方向の正側又は負側(本実施形態では正側)の面には、第1パッド15A〜第4パッド15D(模式図である図2において基部9の4隅に示す。なお、本実施形態とは異なり、実装腕10を設けずに、図2のようにパッド15を設けてもよい。)が設けられている。パッド15は、不図示の実装基体(例えばプリント配線基板)に設けられたパッドに対向し、当該パッドに対して半田乃至は導電性接着剤からなるバンプにより接着される。これにより、センサ素子1と実装基体との電気的な接続がなされ、また、センサ素子1(圧電体3)は、駆動腕11及び検出腕13が振動可能な状態で支持される。なお、実装腕10の先端は、不図示の実装基体に固定されるから、自由端ではない。
なお、基部9及び実装腕10は、駆動腕11及び検出腕13等を揺動可能に支持する支持部8を構成している。
複数の駆動腕11は、互いに同一方向(y軸方向の正側)に互いに並列に(平行に)延びており、その先端は自由端とされている。駆動腕11の数は、偶数(本実施形態では4)である。偶数本の駆動腕11は、中心線CL0に対して互いに線対称に配置されている。また、偶数本の駆動腕11は、その形状も、中心線CL0に対して線対称とされている。すなわち、第1駆動腕11Aと第4駆動腕11Dとは、中心線CL0に対して互いに線対称の配置及び形状とされ、第2駆動腕11Bと第3駆動腕11Cとは、中心線CL0に対して互いに線対称の配置及び形状とされている。
後述するように、中心線CL0の一方側の複数の駆動腕11(11A及び11B)は、共に同一側へ湾曲するように振動するから、全体として一つの仮想駆動腕を構成する。同様に、中心線CL0の他方側の複数の駆動腕11(11C及び11D)は、全体として一つの仮想駆動腕を構成する。上述のような線対称の形状及び配置の結果、2本の仮想駆動腕は、振動に係る特性が互いに線対称である。換言すれば、中心線CL0に対して互いに対称に横方向の正負を定義すれば、両者の振動に係る特性は互いに同一であり、固有振動数等も互いに同一である。
駆動腕11の具体的形状等は適宜に設定されてよい。例えば、駆動腕11は、いわゆるハンマ形状とされている。すなわち、駆動腕11は、基部9から延びる本体部11cと、その先端に位置し、本体部11cよりも幅(x方向)が広い幅広部11dとを有している。
本体部11cは、例えば、y軸方向を長手方向とする直方体において、z軸方向の正側及び負側の面にy軸方向に延びる凹溝11a(図3(a)も参照)が形成された形状とされている。凹溝11aの断面形状は例えば概略矩形である。駆動腕11のxz断面の形状及び寸法は、例えば、駆動腕11の長手方向(y軸方向)の全体に亘って概略一定である。なお、凹溝11aは、1又は複数列で複数の凹部が駆動腕11に沿って配列されることによって構成されていてもよい。
幅広部11dは、例えば、幅方向(x方向)の一方のみに広がっており、また、その広がる方向は、隣接する駆動腕11同士において互いに逆側である。これにより、中心線CL0の一方側及び他方側のそれぞれにおいては、互いに隣接する2つの駆動腕11(11A及び11B、又は、11C及び11D)の本体部11cを互いに近付けることができる。なお、幅広部は、両側に広がるように形成されてもよいし、全く設けられなくてもよい。
本体部11cの幅(x軸方向)が大きくなると、駆動腕11の励振方向(x軸方向)における固有振動数は高くなり、本体部11cの長さ(質量)又は幅広部11dの質量が大きくなると、駆動腕11の励振方向における固有振動数は低くなる。従って、駆動腕11の各種の寸法は、励振させたい周波数に応じて設定される。なお、駆動腕11のx軸方向の固有振動数とz軸方向の固有振動数とは等しくされることが好ましい。
複数の検出腕13は、複数の駆動腕11の延びる方向とは反対方向(y軸方向の負側)に互いに並列に(平行に)延びており、その先端は自由端とされている。検出腕13の数は、偶数(本実施形態では2)であり、また、例えば、駆動腕11の数よりも少ない。偶数本の検出腕13は、中心線CL0に対して互いに線対称に配置されている。また、偶数本の検出腕13は、その形状も、中心線CL0に対して互いに線対称とされている。
従って、駆動腕11と同様に、中心線CL0の一方側と他方側とで、検出腕13の振動特性は、互いに対称である。換言すれば、中心線CL0に対して互いに対称に横方向の正負を定義すれば、両者の振動に係る特性は互いに同一であり、固有振動数等も互いに同一である。
検出腕13の具体的形状等は適宜に設定されてよい。例えば、検出腕13は、駆動腕11と同様に、いわゆるハンマ形状とされている。すなわち、検出腕13は、基部9から延びる本体部13cと、その先端に位置し、本体部13cよりも幅(x方向)が広い幅広部13dとを有している。
本体部13cの概略形状は、直方体とされている。この直方体においては、例えば、y軸方向の大きさ>x軸方向の大きさ>z軸方向の大きさである。すなわち、本体部13cは、y軸方向を長手方向とし、z軸方向を厚み方向とする概ね長方形の板状とされている。従って、検出腕13は、相対的に、励振方向(x軸方向)には振動しにくく、検出方向(z軸方向)に振動しやすくなっている。
また、例えば、検出腕13の本体部13cは、当該本体部13cをz軸方向に貫通し、y軸方向に延びる1又は複数(本実施形態では複数)の貫通溝13a(図3(b)も参照)が形成された形状とされている。別の観点では、本体部13cは、基部9からy軸方向に延び、x軸方向に並べられ、先端が互いに固定された複数の分割腕13bを有している。分割腕13b(貫通溝13a)のxz断面の形状は例えば概略矩形である。貫通溝13aの根元側端部は、好ましくは基部9に到達している。
検出腕13の幅広部13dは、例えば、検出腕13の中心線に対して線対称の形状となるように、幅方向(x方向)の両側に広がっている。なお、検出腕の幅広部は、一方にのみ広がるように形成されてもよいし(特に本実施形態とは異なり検出腕の本数が4本以上の場合)、全く設けられなくてもよい。
駆動腕11と同様に、検出腕13の各種の寸法は、固有振動数を規定することから、コリオリの力による振動の方向であるz軸方向の固有振動数が適宜なものとなるように設定される。なお、当該固有振動数は、駆動腕11のx軸方向の固有振動数と等しくされる(離調周波数が小さくされる)ことが好ましい。
駆動腕11のx軸方向の位置と検出腕13のx軸方向の位置との相対関係は、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bの振動によって第1検出腕13Aを振動させ、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dの振動によって第2検出腕13Bを振動させることが可能に適宜に設定されている。
例えば、第1駆動腕11Aと第2駆動腕11Bとの中間位置を通るこれらの腕に平行な線(不図示)と、第1検出腕13Aの中心線(不図示)とは一致している。同様に、第3駆動腕11Cと第4駆動腕11Dとの中間位置を通るこれらの腕に平行な線(不図示)と、第2検出腕13Bの中心線(不図示)とは一致している。ただし、これらはずれていてもよい。
なお、各腕の中心線は、例えば、本体部のxz断面の重心をy軸方向に連ねた線である。また、中心線CL0の一方側又は他方側の複数の腕全体(仮想腕)としての中心線を定義することもできる。例えば、第1駆動腕11Aの本体部11c及び第2駆動腕11Bの本体部11cの全体のxz断面の重心をy軸方向に連ねた線を、中心線CL0の一方側の駆動腕11全体(仮想駆動腕)の中心線と定義できる。
上記のように複数の腕全体としての中心線を定義すると、本実施形態では、中心線CL0の一方側及び他方側のそれぞれにおいて、複数の駆動腕11の全体としての中心線(不図示)と、1以上の検出腕13の中心線(不図示)とが一致していると捉えることができる。この概念は、駆動腕及び検出腕の本数が本実施形態とは異なる場合にも適用できる。例えば、1本の検出腕13に対応する駆動腕11の数が3本の場合に、3本の駆動腕全体の中心線を考え、この中心線を検出腕13の中心線と一致させてよい。また、例えば、3本の駆動腕11と2本の検出腕13とが対応している場合に、3本の駆動腕11全体の中心線と、2本の検出腕全体の中心線とを一致させてよい。
中心線CL0に対するx軸方向の一方側及び他方側のそれぞれにおいて、2本の駆動腕11間の距離(例えば、中心間距離:各駆動腕11の中心線同士の距離)は適宜に設定される。
本実施形態では、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bは、その全体としてのx軸方向の外側面(第1駆動腕11Aのx軸方向の負側の面及び第2駆動腕11Bのx軸方向の正側の面)が、第1検出腕13Aのx軸方向の外側面に一致するように配置されている。第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dも同様である。これにより、検出腕13の幅方向(x軸方向)全体に振動を伝達させやすくなる。また、駆動腕11の配置範囲は検出腕13の配置範囲に収まり、圧電体3が小型化される。ただし、駆動腕11間の距離は、本実施形態よりも短くされたり、長くされたりしてもよい。
また、中心線CL0に対するx軸方向の一方側及び他方側のそれぞれにおいて、互いに隣接する駆動腕11同士の中心間距離は、例えば、中心線CL0を挟んで互いに隣接する駆動腕11同士の中心間距離よりも短くされている。これにより、中心線CL0に対するx軸方向の一方側又は他方側において隣接する駆動腕11間の相互影響は、中心線CL0を挟んで互いに隣接する駆動腕11間の相互影響よりも大きい。ただし、中心線CL0に対するx軸方向の一方側及び他方側のそれぞれにおける駆動腕11同士の中心間距離が中心線CL0を挟んで互いに隣接する駆動腕11同士の中心間距離よりも長くてもよい。
また、中心線CL0に対するx軸方向の一方側及び他方側のそれぞれにおいて、複数本(本実施形態では2本)の駆動腕11の中心間距離は、検出腕13同士の中心間距離よりも短くされている。これにより、中心線CL0の一方側及び他方側のそれぞれにおける、2本の駆動腕11間の相互影響は、中心線CL0を挟んで互いに隣接する2本の検出腕13間の相互影響よりも大きい。ただし、中心線CL0に対するx軸方向の一方側及び他方側のそれぞれにおける駆動腕11間の中心間距離は、検出腕13間の中心間距離よりも長くてもよい。
駆動側フレーム腕12は、駆動腕11の隣に並び、駆動腕11と平行に延びており、その先端は自由端とされている。駆動側フレーム腕12の数及び配置位置は、駆動腕11の数、配置及び振動の態様等に応じて適宜に設定されてよい。例えば、本実施形態では、駆動側フレーム腕12は、中心線CL0の一方側及び他方側のそれぞれにおいて、複数(2本)の駆動腕11全体の両側に配置されており、合計で4本設けられている。
4本の駆動側フレーム腕12は、例えば、中心線CL0に対して線対称の配置及び形状とされている。また、中心線CL0の一方側及び他方側のそれぞれにおいて、2本の駆動側フレーム腕12は、例えば、その間の駆動腕11に対して線対称の配置及び形状とされている。
駆動側フレーム腕12の具体的形状は適宜に設定されてよい。図1の例では、駆動側フレーム腕12は、基部9からy軸方向に延びる本体部12cと、本体部12cの先端から駆動腕11側に突出する突部12dとを有する形状とされている。
駆動側フレーム腕12の本体部12cの形状は、例えば、y軸方向を長手方向とする直方体状である。駆動側フレーム腕12の本体部12cは、例えば、駆動腕11の本体部11cよりも短く、その先端は駆動腕11の幅広部11dよりも基部9側に位置している。また、駆動側フレーム腕12は、例えば、幅方向(x軸方向)において、駆動腕11の幅広部11dの幅に収まっている。
駆動側フレーム腕12の突部12dの形状は、例えば、直方体状である。突部12dの先端は、駆動腕11の本体部11cから適宜な距離で離れている。なお、突部12dは設けられなくてもよい。
駆動側フレーム腕12(本体部12c及び突部12d)と駆動腕11(本体部11c)とのx軸方向の距離(中心間距離又は隙間の幅)は、後述する作用効果の少なくともいずれかが好適に奏されるように適宜に設定されてよい。例えば、本体部12cと本体部11cとの中心間距離は、中心線CL0の一方側又は他方側における、駆動腕11の本体部11c同士の中心間距離の1/2以上3/2以下(例えば同等)とされる。
なお、駆動側フレーム腕12と駆動腕11との、これらの先端側におけるx軸方向の最短距離(本実施形態では突部12dと駆動腕11の本体部11cとの距離)は、駆動腕11を励振させたときに駆動腕11が駆動側フレーム腕12に接しないように設定される。例えば、当該最短距離は、駆動腕11の先端の振幅よりも大きくされる。
駆動側フレーム腕12の寸法は、駆動側フレーム腕12の固有振動数を規定する。当該寸法は、例えば、駆動側フレーム腕12のx軸方向及び/又はz軸方向の固有振動数が、駆動腕11のx軸方向における固有振動数、及び、z軸方向における固有振動数、並びに、検出腕13のz軸方向における固有振動数からある程度ずれていることが好ましい。これにより、駆動側フレーム腕12の振動がセンサ素子1の検出精度に及ぼす影響が低減される。
駆動側フレーム腕12の固有振動数と上述した他の固有振動数との差は、センサ素子1に要求される検出精度、上述した他の固有振動数の絶対値、各腕の減衰比(機械抵抗)等を考慮して、適宜に設定されてよい。例えば、駆動側フレーム腕12の固有振動数は、上述した各固有振動数に対してその固有振動数の1/10以上の振動数でずれている(より好ましく上述した各固有振動数よりも大きい)ことが望ましい。
センサ素子1においては、検出精度を向上させるために、駆動腕11の励振方向の固有振動数と検出腕13の検出方向の固有振動数との差は小さくされる。例えば、駆動腕の励振方向の固有振動数が10kHz〜300kHzの場合においては、両者の差は、0.5kHz〜3kHzとされる。換言すれば、両者の差は、駆動腕の励振方向の固有振動数に対して最大でも1/20程度である。従って、例えば、駆動側フレーム腕12の励振方向の固有振動数が、駆動腕11の励振方向の固有振動数に対して、駆動腕11の励振方向の固有振動数の1/10以上の差でずれ、且つ、駆動側フレーム腕12の検出方向の固有振動数が、検出腕13の検出方向の固有振動数に対して検出腕13の検出方向の固有振動数の1/10以上の差でずれていれば、駆動側フレーム腕12が検出精度に及ぼす影響はある程度低減されているといえる。
また、駆動側フレーム腕12の固有振動数を上述した他の腕の固有振動数よりも大きくする調整は、例えば、駆動側フレーム腕12を比較的短くすることによって実現できるので、センサ素子1の小型化に有利である。
中心線CL0の一方側及び他方側のそれぞれにおいて、駆動側フレーム腕12の、駆動腕11とは反対側(外側)の基部9との接続位置は、駆動側フレーム腕12とこれに隣接する駆動腕11との間の股、及び、互いに隣接する2本の駆動腕11の間の股よりも深い位置とされている。これにより、例えば、駆動側フレーム腕12は、駆動腕11側よりもその反対側へ傾斜しやすくなっている。ただし、前記の接続位置は、前記の股と同一の深さに位置していてもよい。
検出側フレーム腕14の形状及び配置の説明は、概略、上述した駆動側フレーム腕12の説明において、駆動腕11を検出腕13に置き代えたものである。具体的には、以下のとおりである。
検出側フレーム腕14は、検出腕13の隣に並び、検出腕13と平行に延びており、その先端は自由端とされている。検出側フレーム腕14の数及び配置位置は、検出腕13の数、配置及び振動の態様等に応じて適宜に設定されてよい。例えば、本実施形態では、検出側フレーム腕14は、中心線CL0の一方側及び他方側のそれぞれにおいて、1以上の検出腕13全体(本実施形態では1本の検出腕13)の両側に配置されており、合計で4本設けられている。
4本の検出側フレーム腕14は、例えば、中心線CL0に対して線対称の配置及び形状とされている。また、中心線CL0の一方側及び他方側のそれぞれにおいて、2本の検出側フレーム腕14は、例えば、その間の検出腕13に対して線対称の配置及び形状とされている。
検出側フレーム腕14の具体的形状は適宜に設定されてよい。図1の例では、検出側フレーム腕14は、基部9からy軸方向に延びる直方体状とされている。ただし、検出側フレーム腕14は、駆動側フレーム腕12と同様に、先端から検出腕13側に突出する突部を有していてもよい。
検出側フレーム腕14(その本体部)は、例えば、例えば、検出腕13の本体部13cよりも短く、その先端は検出腕13の幅広部13dよりも基部9側に位置している。また、検出側フレーム腕14は、例えば、幅方向(x軸方向)において、検出腕13の幅広部13dの幅に収まっている。
検出側フレーム腕14と検出腕13(本体部13c)とのx軸方向の距離(中心間距離又は隙間の幅)は、後述する作用効果の少なくともいずれかが好適に奏されるように適宜に設定されてよい。例えば、検出側フレーム腕14と検出腕13の本体部13cとの中心間距離は、分割腕13b同士の中心間距離の1/2以上3/2以下(例えば同等)とされる。また、例えば、本実施形態とは異なり、検出腕13が駆動腕11と同様に、中心線CL0の一方側及び他方側のそれぞれにおいて複数本設けられる場合においては、検出側フレーム腕14と検出腕13の本体部13cとの距離は、中心線CL0の一方側又は他方側における検出腕13同士の中心間距離の1/2以上3/2以下(例えば同等)とされてもよい。
なお、検出側フレーム腕14と検出腕13との、これらの先端側におけるx軸方向の最短距離は、駆動腕11を励振させたときに、その影響を受けて振動する検出腕13が検出側フレーム腕14に接しないように設定される。
検出側フレーム腕14の寸法は、検出側フレーム腕14の固有振動数を規定する。当該寸法は、例えば、検出側フレーム腕14のx軸方向及び/又はz軸方向の固有振動数が、駆動腕11のx軸方向における固有振動数、及び、z軸方向における固有振動数、並びに、検出腕13のz軸方向における固有振動数からある程度ずれていることが好ましい。これにより、検出側フレーム腕14の振動がセンサ素子1の検出精度に及ぼす影響が低減される。
検出側フレーム腕14の固有振動数と上述した他の固有振動数との差は、駆動側フレーム腕12の場合と同様の理由により、その他の固有振動数の1/10以上であることが望ましく、また、検出側フレーム腕14の固有振動数が上述した他の固有振動数よりも大きいことが望ましい。例えば、検出側フレーム腕14の励振方向の固有振動数は、駆動腕11の励振方向の固有振動数に対して、駆動腕11の励振方向の固有振動数の1/10以上の差でずれ、且つ、検出側フレーム腕14の検出方向の固有振動数は、検出腕13の検出方向の固有振動数に対して検出腕13の検出方向の固有振動数の1/10以上の差でずれている。
検出側フレーム腕14の検出腕13とは反対側(外側)の基部9との接続位置は、駆動側フレーム腕12とは異なり、検出側フレーム腕14と検出腕13との間の股、及び、複数の分割腕13bの間の股と同等の位置とされている。ただし、当該接続位置は、駆動側フレーム腕12と同様に、前記の股よりも深い位置とされてもよい。
図3(a)は、図1のIIIa−IIIa線における断面図である。図3(a)においては、第4駆動腕11Dの断面を示しているが、他の駆動腕11の断面も同様である。
図2及び図3(a)に示すように、励振電極5は、駆動腕11の表面に形成された層状電極である。励振電極5は、例えば、Cu,Al等の適宜な金属によって形成されている。なお、励振電極5は、駆動腕11にのみ設けられており、駆動側フレーム腕12及び検出側フレーム腕14には設けられていない。
図3(a)に示すように、第1励振電極5Aは、各駆動腕11において、z軸方向の正側の面及びz軸方向の負側の面にそれぞれ設けられている。これらの面には、上述のように凹溝11aが形成されており、各面において、第1励振電極5Aは、凹溝11aの底面及び2つの内壁面を覆っている。また、第2励振電極5Bは、各駆動腕11において、x軸方向の正側の面及びx軸方向の負側の面にそれぞれ設けられている。
2つの第1励振電極5A及び2つの第2励振電極5Bは、例えば、駆動腕11の各面を概ね覆うように設けられている。ただし、第1励振電極5A及び第2励振電極5Bは、互いに短絡しないように、少なくとも一方(本実施形態では第1励振電極5A)が各面よりも幅方向において小さく形成されている。
各駆動腕11において、2つの第1励振電極5Aは、例えば互いに同電位とされる。例えば、2つの第1励振電極5Aは、圧電体3上の配線等により互いに接続されている。また、各駆動腕11において、2つの第2励振電極5Bは、例えば互いに同電位とされる。例えば、2つの第2励振電極5Bは、圧電体3上の配線等により互いに接続されている。
なお、励振電極5の付加符号A、Bは、直交座標系xyzに基づいて付されている。従って、例えば、後述するように、一の駆動腕11の第1励振電極5Aと、他の駆動腕11の第1励振電極5Aとは同電位とは限らない。
図3(b)は、図1のIIIb−IIIb線における断面図である。図3(b)においては、第2検出腕13Bの一部の分割腕13bの断面を示しているが、第2検出腕13Bの他の分割腕13b、及び、第1検出腕13Aの分割腕13bの断面も同様である。
図2及び図3(b)に示すように、検出電極7は、検出腕13(分割腕13b)の表面に形成された層状電極である。検出電極7は、例えば、Cu,Al等の適宜な金属によって形成されている。なお、検出電極7は、検出腕13にのみ設けられており、駆動側フレーム腕12及び検出側フレーム腕14には設けられていない。
検出電極7は、各分割腕13bに設けられている。すなわち、検出電極7は、検出腕13のx軸方向の外側面だけでなく、複数の貫通溝13aの内壁面にも設けられている。
より具体的には、第1検出電極7Aは、各分割腕13bにおいて、x軸方向の負側の面のうちのz軸方向の正側の領域、及び、x軸方向の正側の面のうちのz軸方向の負側の領域にそれぞれ設けられている。第2検出電極7Bは、各分割腕13bにおいて、x軸方向の負側の面のうちのz軸方向の負側の領域、及び、x軸方向の正側の面のうちのz軸方向の正側の領域にそれぞれ設けられている。第1検出電極7A及び第2検出電極7Bは、互いに短絡しないように適宜な間隔を空けて、分割腕13bに沿って延びている。
各検出腕13において、複数の第1検出電極7Aは、例えば、圧電体3上の配線等により接続されている。各検出腕13において、複数の第2検出電極7Bは、例えば、圧電体3上の配線等により接続されている。
なお、励振電極5と同様に、検出電極7の付加符号A、Bは、直交座標系xyzに基づいて付されている。従って、例えば、後述するように、第1検出腕13Aの第1検出電極7Aと、第2検出腕13Bの第1検出電極7Aとは、(本実施形態では)接続されない。
図3(a)及び図3(b)に示すように、角速度センサ101は、励振電極5に電圧を印加する励振回路103と、検出電極7からの電気信号を検出する検出回路105とを有している。
励振回路103は、例えば、発振回路や増幅器を含んで構成されており、所定の周波数の交流電圧を第1励振電極5Aと第2励振電極5Bとの間に印加する。なお、周波数は、角速度センサ101内にて予め定められていてもよいし、外部の機器等から指定されてもよい。
検出回路105は、例えば、増幅器や検波回路を含んで構成されており、第1検出電極7Aと第2検出電極7Bとの電位差を検出し、その検出結果に応じた電気信号を外部の機器等に出力する。より具体的には、例えば、上記の電位差は、交流電圧として検出され、検出回路105は、検出した交流電圧の振幅に応じた信号を出力する。この振幅に基づいてy軸回りの角速度が特定される。また、検出回路105は、励振回路103の印加電圧と検出した電気信号との位相差に応じた信号を出力する。この位相差に基づいてy軸回りの回転の向きが特定される。
なお、励振回路103及び検出回路105は、全体として制御回路107を構成している。制御回路107は、例えば、チップICによって構成されており、センサ素子1が実装される回路基板又は適宜な形状の実装基体に実装されている。
(動作説明)
図4(a)は、駆動腕11における電位等を説明する図であり、図3(a)に対応する模式図である。図4(b)は、検出腕13における電位等を説明する図であり、図3(b)に対応する模式図である。
第1励振電極5Aに正の電位が付与され、第2励振電極5Bに負の電位(又は基準電位)が付与されると、同図において矢印で示すような電界が生じる。一方、分極軸は、x軸方向に一致している。従って、電界のx軸方向の成分に着目すると、駆動腕11のうちx軸方向の一方側部分においては電界の向きと分極軸の向きは一致し、他方側部分においては電界の向きと分極軸の向きは逆になる。
その結果、駆動腕11のうちx軸方向の一方側部分はy軸方向において収縮し、他方側部分はy軸方向において伸長する。そして、駆動腕11は、バイメタルのようにx軸方向の一方側へ湾曲する。第1励振電極5A及び第2励振電極5Bに印加される電圧が逆にされると、駆動腕11は逆方向に湾曲する。このような原理により、交流電圧が第1励振電極5A及び第2励振電極5Bに印加されると、駆動腕11はx軸方向において振動する。
ここで、上述のように、第1励振電極5Aが設けられる駆動腕11のz軸方向の正側及び負側の面には、凹溝11aが形成されている。従って、第1励振電極5Aは、x軸方向において第2励振電極5Bと対向する部分(凹溝11aの内壁に位置する部分)を有することになり、また、全体として面積が大きくなる。その結果、駆動腕11内におけるx軸方向の電界の強さを大きくし、効率的に駆動腕11を振動させることができる。
センサ素子1がy軸回りに回転されると、x軸方向において振動している駆動腕11には、慣性力の一つである、その角速度に応じた大きさのコリオリの力が加わる。その結果、駆動腕11はz軸方向において振動する。駆動腕11及び検出腕13は基部9によって連結され、互いに力の相互作用を及ぼすから、検出腕13は、z軸方向において、駆動腕11とは逆位相で振動する(駆動腕11の湾曲方向とは逆方向に湾曲する。)。
検出腕13がz軸方向に湾曲すると、図4(b)において矢印で示すように、z軸方向に平行な電界が生じる。電界の向きは、x軸(電極軸)方向の正側部分と負側部分とで互いに逆である。また、電界の向きは、電極軸の向きと、湾曲の向き(z軸方向の正側又は負側)とで決定される。この電圧(電界)が第1検出電極7A及び第2検出電極7Bに出力される。検出腕13がz軸方向に振動すると、電圧は交流電圧として検出される。
ここで、上述のように、検出腕13には複数の貫通溝13aが形成されており、検出電極7は、検出腕13のx軸方向の正側及び負側の面だけでなく、その貫通溝13aの内壁面にも設けられている。従って、検出電極7は、検出腕13のx軸方向の外側面だけに設けられている場合に比較して、全体としての面積が大きくなっている。その結果、検出腕13において生じる電荷を効率的に電気信号として取り出すことができる。
図5(a)は、4本の駆動腕11のx軸方向における励振を説明するための模式的な平面図である。
第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bは、励振方向(x軸方向)において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。例えば、第1駆動腕11Aの第1励振電極5Aと第2駆動腕11Bの第1励振電極5Aとは接続され、第1駆動腕11Aの第2励振電極5Bと第2駆動腕11Bの第2励振電極5Bとは接続され、これらの第1励振電極5Aと、第2励振電極5Bとの間に交流電圧が印加される。
同様に、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dは、励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。この励振も、上記と同様に、2本の駆動腕11間において、第1励振電極5A同士が接続され、第2励振電極5B同士が接続されることなどにより実現されてよい。
第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bのグループと、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dのグループとは、励振方向において互いに逆側へ変形するように互いに逆の位相(180°ずれた位相)で励振される。例えば、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bの第1励振電極5Aと、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dの第2励振電極5Bとが接続され(第1の電極群)、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bの第2励振電極5Bと、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dの第1励振電極5Aとが接続され(第2の電極群)、第1の電極群と第2の電極群との間に交流電圧が印加される。
なお、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bのグループと、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dのグループとは、x軸方向において逆位相で振動していることから、圧電体3全体としては、これらグループのx軸方向の力は互いに打ち消し合う。
図5(b)は、4本の駆動腕11及び2本の検出腕13のz軸方向における振動を説明するための模式的な斜視図である。より具体的には、図5(b)は、図5(a)に示したように駆動腕11が湾曲している圧電体3が、中心線CL0回り(y軸回り)に矢印y5で示す方向へ回転した場合における、駆動腕11及び検出腕13の湾曲状態を示す斜視図である。
第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bは、回転中心(中心線CL0)に対して、その半径方向(x軸方向)の同一側に配置されている。また、両駆動腕11は、図5(a)に示したように、その半径方向(励振方向、x軸方向)において共に外側又は内側へ湾曲するように励振される。従って、両駆動腕11においてコリオリの力の向きは互いに同一である。その結果、図5(b)に示すように、両駆動腕11はz軸方向において同一側へ共に湾曲するように振動する。同様に、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dは、コリオリの力によって、z軸方向において同一側へ共に湾曲するように振動する。
第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bのグループと、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dのグループとは、回転中心(中心線CL0)に対して、その半径方向(x軸方向)において互いに逆側に配置されており、ひいては、回転によるz軸方向の移動の向きは互いに逆である。また、図5(a)に示したように、一方のグループが半径方向において外側(又は内側)へ湾曲するとき、他方のグループも半径方向において外側(又は内側)へ湾曲するように、両グループは励振される。従って、両グループにおいてコリオリの力の向きは互いに逆となる。その結果、図5(b)に示すように、両グループはz軸方向において互いに逆側へ湾曲するように振動する。
駆動腕11及び検出腕13は、基部9によって連結されている。従って、駆動腕11の振動は、基部9を介して検出腕13に伝達され、検出腕13も振動する。具体的には、第1検出腕13Aは、z軸方向において第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bとは逆側へ湾曲するように振動する。また、第2検出腕13Bは、z軸方向において第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dとは逆側へ湾曲するように振動する。
第1検出腕13A及び第2検出腕13Bは、z軸方向において互いに逆側に湾曲するように振動する。従って、両者は、z軸方向の一方側部分(又は他方側部分)において生じる電圧がx軸方向において互いに逆向きである。従って、例えば、第1検出腕13Aの第1検出電極7Aと第2検出腕13Bの第2検出電極7Bとが接続され、第1検出腕13Aの第2検出電極7Bと第2検出腕13Bの第1検出電極7Aとが接続されることにより、両検出腕13において生じた電気信号は加算される。
(配線の一例)
上記の動作説明においては、複数の励振電極5及び複数の検出電極7の接続関係について言及した。この接続関係を実現する配線の一例を図6に示す。
図6は、センサ素子1の斜視図である。ただし、この図は、配線を視認しやすいようにセンサ素子1を図2よりも更に模式的に示している。例えば、圧電体3の形状は単純化されて示され、また、各種の電極は小さく示されている。
この例において、第1パッド15A及び第2パッド15Bは、複数の励振電極5に印加される電圧が入力されるパッドである。また、第3パッド15C及び第4パッド15Dは、複数の検出電極7からの信号を出力するためのパッドである。
第1パッド15Aからは、第1配線17Aが延びている。第1配線17Aは、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bの第1励振電極5A、並びに、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dの第2励振電極5Bに接続されている。また、第2パッド15Bからは、第2配線17Bが延びている。第2配線17Bは、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bの第2励振電極5B、並びに、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dの第1励振電極5Aに接続されている。
第3パッド15Cからは、第3配線17Cが延びている。第3配線17Cは、第1検出腕13Aの第1検出電極7A及び第2検出腕13Bの第2検出電極7Bに接続されている。また、第4パッド15Dからは、第4配線17Dが延びている。第4配線17Dは、第1検出腕13Aの第2検出電極7B及び第2検出腕13Bの第1検出電極7Aに接続されている。
配線17は、互いに交差しないように、基部9の4面及び各種の腕部の根元側部分及び先端側部分の4面等に適宜に配置され、また、適宜に分岐又は合流している。
なお、図6に示す配線は、あくまで一例であり、他の種々のパターンによって、動作説明において言及した電極の接続関係が実現されてよい。4本の実装腕10と、その上に設けられる4種のパッド15(図6では便宜上、基部9の2つの端部9a上に示している。)との組み合わせも変更されてよい。配線17は、絶縁体を介して互いに立体交差するように設けられてもよい。
以上のとおり、本実施形態では、角速度センサ101は、圧電体3と、圧電体3の駆動腕11に電圧を印加して駆動腕11を励振する励振回路103と、圧電体3の検出腕13の振動によって生じる電気信号を検出する検出回路105と、を有している。圧電体3は、検出腕13に並んで検出腕13と平行に延び、先端が自由端とされた検出側フレーム腕14(及び/又は、駆動腕11に並んで駆動腕11と平行に延び、先端が自由端とされた駆動側フレーム腕12)を有している。励振回路103は、駆動腕11及び検出側フレーム腕14(及び/又は駆動側フレーム腕12)のうち駆動腕11のみを励振する。検出回路105は、検出腕13及び検出側フレーム腕14(及び/又は駆動側フレーム腕12)のうち検出腕13のみについて電気信号を検出する。
別の観点では、本実施形態では、センサ素子1は、圧電体3と、圧電体3の駆動腕11の表面に設けられた励振電極5と、圧電体3の検出腕13の表面に設けられた検出電極7と、励振電極5及び検出電極7に接続された複数のパッド15と、を有している。圧電体3は、検出腕13に並んで検出腕13と平行に延びる検出側フレーム腕14(及び/又は、駆動腕11に並んで駆動腕11と平行に延びる駆動側フレーム腕12)を有している。励振電極5は、駆動腕11及び検出側フレーム腕14(及び/又は駆動側フレーム腕12)のうち駆動腕11にのみ設けられている。検出電極7は、検出腕13及び検出側フレーム腕14(及び/又は駆動側フレーム腕12)のうち検出腕13にのみ設けられている。複数のパッド15は、支持部8(本実施形態では基部9及び実装腕10)及び検出側フレーム腕14(及び/又は駆動側フレーム腕12)のうち支持部8にのみ設けられている。
従って、落下等によりセンサ素子1に衝撃が加えられたときに、検出腕13(及び/又は駆動腕11)が破損するおそれが低減される(以下、駆動腕11及び駆動側フレーム腕12に関して、作用効果の説明を省略することがあるが、検出腕13及び検出側フレーム腕14と同様である。)。
具体的には、x軸方向に衝撃が加えられると、検出腕13は基部9に対して倒れようとし(撓もうとし)、検出腕13及びこれを支持する基部9には応力が生じる。この応力は、検出腕13の根元側、且つ、検出腕13の側面(x軸方向の外側)の位置において最も大きい。また、この位置においては、検出腕13の表面と基部9の表面とが交差することから、応力集中も生じやすい。従って、この位置において破損が生じやすい。そして、当該位置における破損のおそれが検出側フレーム腕14によって低減される。
このような破損のおそれの低減の作用は、例えば、以下のような事由のいずれか又は全てによって生じる。
上述のように、x軸方向の衝撃によって検出腕13が基部9に対してx軸方向に撓もうとするとき、検出側フレーム腕14も検出腕13と同一方向に撓む。その結果、基部9の、検出側フレーム腕14の根元の周辺部分も検出側フレーム腕14からのモーメントによって変形する。この変形により、基部9と検出腕13との間の応力が緩和され、検出腕13の根元側における破損のおそれが低減される。
また、例えば、検出腕13に検出側フレーム腕14が隣接することによって、両腕の根元側においては、両腕の間に残渣が掛け渡される。従って、検出腕13が基部9に対してx軸方向に倒れようとし、その傾斜が検出側フレーム腕14の傾斜よりも大きいと、検出腕13の変形が残渣を介して検出側フレーム腕14によって抑制される。その結果、検出腕13の根元側における破損のおそれが低減される。
また、例えば、検出腕13が基部9に対してx軸方向に撓み、その検出側フレーム腕14の先端と同一位置(y軸方向)の変位が、検出側フレーム腕14の先端の変位よりも大きいと、検出腕13は検出側フレーム腕14の先端に当接する。その結果、検出腕13の基部9に対する傾斜が抑制され(検出側フレーム腕14がストッパとして機能し)、検出腕13の根元側における破損のおそれが低減される。
なお、検出側フレーム腕14及び駆動側フレーム腕12は、励振回路によって励振されない(換言すれば励振電極が設けられない)点において駆動腕11とは区別され、振動による電気信号が検出されない(換言すれば検出電極が設けられない)点において検出腕13とは区別される。また、これに加えて、先端が自由端とされる点又はパッドが設けられない点において、検出側フレーム腕14及び駆動側フレーム腕12は、支持部8の実装腕10とも区別される。また、検出側フレーム腕14は、検出腕13と平行に延びていることから、検出腕13の根元の残渣低減のために検出腕13に対して傾斜して延びる梁とも区別される。
また、本実施形態では、検出腕13は、検出腕13に沿って延びる貫通溝13aを有し、検出側フレーム腕14は、貫通溝13aの側方となる方向において検出腕13に並んでいる。
従って、例えば、貫通溝13aの壁面に検出電極7を設けることによって電極面積を大きくできる。一方、貫通溝13aが設けられることにより、検出腕13の衝撃に対する強度は低下する。例えば、検出腕13全体を基部9に対してx軸方向へ倒そうとする慣性力は、貫通溝13aが設けられていない場合に比較して、x軸方向の両端の分割腕13bに集中的に作用し、ひいては、検出腕13に破損が生じるおそれが高くなる。しかし、検出側フレーム腕14が貫通溝13aの側方となる方向において検出腕13に並んでいることにより、この比較的大きい応力による破損のおそれを低減できる。
なお、本実施形態では、駆動腕11は、駆動腕11に沿って延びる凹溝11aを有し、駆動側フレーム腕12は、凹溝11aの側方に位置している。この作用効果も、上記と同様である。
また、本実施形態では、駆動側フレーム腕12は、先端に駆動腕11側に突出する突部12dを有している。
従って、例えば、駆動腕11が駆動側フレーム腕12に当接するタイミングを調整することが容易化される。例えば、駆動側フレーム腕12の固有振動数等を考慮して、駆動側フレーム腕12の本体部12cの幅、及び、駆動側フレーム腕12の本体部12cと駆動腕11の本体部11cとの距離等を設定した上で、突部12dの突出量によって当接タイミングを調整できる。
また、本実施形態では、検出腕13は、基部9から延びる本体部13cと、本体部13cの先端に位置し、本体部13cよりも幅広な幅広部13dと、を有している。検出側フレーム腕14は、本体部13cよりも短く、且つ、幅広部13dの幅内に収まっている。
従って、検出側フレーム腕14を設けることによって、センサ素子1の大型化は生じない。また、検出側フレーム腕14は、幅広部13dの幅内に収まるほどに検出腕13の本体部13cに近い。従って、上述の検出腕13の根元側における破損抑制の効果が好適に奏される。
また、本実施形態では、駆動側フレーム腕12の駆動腕11が励振される方向における固有振動数は、駆動腕11の、励振される方向における固有振動数に対して、駆動腕11の固有振動数の1/10以上の差でずれている。また、検出側フレーム腕14の、検出腕13において電気信号が検出される振動の方向における固有振動数は、検出腕13の検出される振動の方向における検出腕13の固有振動数に対して、検出腕13の固有振動数の1/10以上の差でずれている。
従って、角速度センサ101のセンサ素子1における、駆動腕11の励振方向の固有振動数と検出腕13の検出方向の固有振動数との差は、駆動腕11の励振方向の固有振動数に対して最大で1/20程度となっているので、上記のような構成にすることで、駆動側フレーム腕12が検出精度に及ぼす影響を低減させつつ、検出側フレーム腕14が検出精度に及ぼす影響を低減させることが可能となる。この結果、本実施形態では、検出精度を向上させることができる。
また、本実施形態では、4本以上の偶数本のみの駆動腕11が、所定の対称軸(中心線CL0)に平行に延び、中心線CL0の側方に並べられ、中心線CL0に対して線対称に配置されている。また、2本以上の偶数本のみの検出腕13が、駆動腕11とは反対方向に延び、駆動腕11の並び方向(x軸方向)に並べられ、中心線CL0に対して線対称に配置されている。そして、励振回路103は、線対称の一方側の複数の駆動腕(11A及び11B)がx軸方向において互いに同一側へ共に変形するようにこれら駆動腕11を互いに同一の位相で励振し、線対称の他方側の複数の駆動腕(11C及び11D)がx軸方向において互いに同一側へ共に変形するようにこれら駆動腕11を互いに同一の位相で励振し、線対称の一方側の複数の駆動腕(11A及び11B)と、線対称の他方側の複数の駆動腕(11C及び11D)とが、x軸方向において互いに逆側に変形するように、線対称の一方側の複数の駆動腕11と線対称の他方側の複数の駆動腕11とを互いに逆の位相で励振する。別の観点では、センサ素子1は、偶数本の駆動腕11間で互いに同一の位置に設けられた複数の第1励振電極5Aと、偶数本の駆動腕11間で互いに同一の位置に設けられ、複数の第1励振電極5Aとの間に電圧が印加されることにより、偶数の駆動腕11をその並び方向に励振可能な複数の第2励振電極5Bと、を有し、線対称の一方側の複数の駆動腕11における複数の第1励振電極5A、及び、線対称の他方側の複数の駆動腕11における複数の第2励振電極5Bは互いに接続されており、線対称の一方側の複数の駆動腕11における複数の第2励振電極5B、及び、線対称の他方側の複数の駆動腕11における複数の第1励振電極5Aは互いに接続されている。そして、センサ素子1においては、駆動腕11に並ぶ駆動側フレーム腕12が設けられている。
このような構成においては、例えば、駆動腕11の本数を多くすることによって駆動腕11全体としての質量を確保しているから、y軸方向において小型化しつつ検出感度を向上させることができる。その一方で、例えば、対称軸(中心線CL0)の一方側(又は他方側)において隣接する駆動腕11同士においては、一方の駆動腕11に対して他方の駆動腕11が駆動側フレーム腕12のように作用するから、駆動側フレーム腕12の総数を減じることができる。その結果、小型化がより効果的になされる。
また、上記のような構成においては、例えば、起動時間が20ms〜50msとなり従来と比較して短くなる。この起動時間が短くなる理由としては、例えば、以下の事項が考えられる。駆動腕11の本数が比較的多く設けられ、ひいては、駆動腕11同士が比較的近くに配置されることから、複数の駆動腕11は振動に関して相互影響が比較的大きい(独立に振動し難い)。その結果、唸りが早期に収束する。また、並列に電圧印加がなされる駆動腕11の本数が比較的多くされることから、全体としての抵抗値(共振インピーダンス、R1、CI)が低下する。起動時間は抵抗値に依存するから、抵抗値の低下によって起動時間が短くなる。また、複数の駆動腕11は、線対称に配置され、線対称の一方側と他方側とで互いに逆方向に湾曲するように振動されるから、基部9の中央が振動の節となる。換言すれば、比較的多く設けられた駆動腕11に対して振動の節が共通化される。その結果、複数の駆動腕11が独立に振動することが抑制され、振動が早期に安定する。
なお、以上の実施形態において、駆動側フレーム腕12及び検出側フレーム腕14はそれぞれフレーム腕の一例であり、凹溝11a及び貫通溝13aはそれぞれ溝の一例である。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
本発明のフレーム腕は、駆動腕及び検出腕を有するあらゆる角速度センサに適用可能である。従って、角速度センサの基本構成(例えば、駆動腕及び検出腕の本数、位置及び形状、並びに、電極の位置及び接続関係)は、実施形態に例示したものに限定されない。例えば、角速度センサは、実施形態と同様に、y軸方向の互いに逆側に延びる1以上の駆動腕及び1以上の検出腕を含む圧電体を有し、実施形態とは異なり、x軸又はz軸の回転を検出するように電極及び回路が構成されたものであってもよい。また、例えば、角速度センサは、y軸方向の同一側に延びる1以上の駆動腕及び1以上の検出腕を含む圧電体を有し、x軸回り、y軸回り又はz軸回りの回転を検出するように電極及び回路が構成されたものであってもよい。駆動腕及び検出腕の一方が他方に対して傾斜するものであってもよい。駆動腕及び検出腕の本数も適宜に設定されてよい。駆動腕に実施形態の検出電極のような2側面の4領域に形成される励振電極が形成されてもよいし、検出腕に実施形態の駆動電極のような4側面に形成される検出電極が形成されてもよい。駆動腕に貫通溝が形成されたり、検出腕に凹溝が形成されたりしてもよい。