本発明の一実施形態によるクレーン2は、図1に示すように、クレーン本体3と、カウンタウェイト台車4と、連結ビーム5とを備える。以下、カウンタウェイト台車4を単に台車4と称する。
クレーン本体3は、下部走行体6と、上部旋回体7と、走行体駆動装置18(図10参照)と、旋回体駆動装置8(図10参照)と、走行操作装置9と、旋回操作装置10と、コントローラ11と、導出装置12と、解除装置13とを備える。
下部走行体6は、クローラ式であり、自走可能に構成されている。下部走行体6は、図2に示すように、トラックフレーム14と、そのトラックフレーム14に設けられた一対のクローラ装置17と、を備える。
一対のクローラ装置17は、トラックフレーム14の左右に分かれて配置されている。各クローラ装置17は、トラックフレーム14に取り付けられて前後方向に延びるクローラフレーム17a(図1参照)と、そのクローラフレーム17aの外周に周回運動可能に設けられたクローラ17bと、クローラフレーム17aの前端部に設けられた遊動輪17cと、クローラフレーム17aの後端部に設けられた駆動輪17dとを有する。右側のクローラ装置17のクローラフレーム17aは、トラックフレーム14の右端部に取り付けられており、左側のクローラ装置17のクローラフレーム17aは、トラックフレーム14の左端部に取り付けられている。
走行体駆動装置18は、走行操作装置9の走行操作レバー9a(後述)の操作に応じて下部走行体6を走行させる駆動力を生成するものである。具体的には、走行体駆動装置18は、各クローラ装置17の駆動輪17dを回転駆動することにより対応するクローラ17bを周回運動させ、それによって各クローラ装置17のクローラ17bに下部走行体6の走行のための駆動力を発生させるものである。走行体駆動装置18は、図11に示すように、作動油を吐出する油圧ポンプ20と、作動油が供給されることによって作動して駆動輪17dを回転駆動する油圧モータ21と、油圧ポンプ20から吐出される作動油を油圧モータ21へ導くとともにその作動油の供給量を制御する作動油制御装置22とを有する。なお、図11では、一対のクローラ装置17のうちの一方のクローラ装置17の駆動輪17dを回転駆動する走行体駆動装置18について示しているが、この走行体駆動装置18と同様のものがもう一方のクローラ装置17の駆動輪17dを回転駆動するための駆動装置として設けられている。
油圧モータ21は、第1給排口21a及び第2給排口21bを有する。油圧モータ21は、第1給排口21aに作動油が供給されることにより駆動輪17dを一方の回転方向(例えば下部走行体6を前進させる方向にクローラ17bを周回運動させる回転方向)へ回転させるように作動し、第2給排口21bに作動油が供給されることにより駆動輪17dを前記一方の回転方向と逆の回転方向(例えば下部走行体6を後進させる方向にクローラ17bを周回運動させる回転方向)へ回転させるように作動する。
作動油制御装置22は、油圧回路24と、第1切換弁26と、第2切換弁28とを有する。
油圧回路24は、油圧モータ21を作動させるときに油圧ポンプ20から吐出される作動油を油圧モータ21へ導くとともに油圧モータ21から排出された作動油をタンク30へ導くことが可能なように構成されている。油圧回路24は、図11に示すように、制御弁32と、供給配管34と、戻し配管36と、第1管路38と、第2管路40とを備える。
制御弁32は、油圧モータ21への作動油の供給状態の制御を行うための切換弁である。制御弁32は、供給配管34を介して油圧ポンプ20と接続されるとともに、戻し配管36を介してタンク30と接続されている。また、制御弁32は、第1管路38を介して油圧モータ21の第1給排口21aに接続されるとともに、第2管路40を介して油圧モータ21の第2給排口21bに接続されている。
制御弁32は、供給配管34を第1管路38に接続するとともに戻し配管36を第2管路40に接続する第1供給位置32aと、供給配管34を第2管路40に接続するとともに戻し配管36を第1管路38に接続する第2供給位置32bと、供給配管34及び戻し配管36を第1管路38及び第2管路40と接続しない供給停止位置32cとをとり得るように構成されている。
制御弁32は、第1パイロットポート33a及び第2パイロットポート33bを有する。制御弁32は、第1パイロットポート33aにパイロット圧が供給されることによって第1供給位置32aになり、第2パイロットポート33bにパイロット圧が供給されることによって第2供給位置32bになり、第1及び第2パイロットポート33a,33bのいずれにもパイロット圧が供給されない場合に供給停止位置32cになるように構成されている。
制御弁32は、第1供給位置32aでは、油圧ポンプ20から供給配管34に吐出された作動油を第1管路38へ導き、それによって、第1管路38から油圧モータ21の第1給排口21aへ作動油が供給される。その結果、油圧モータ21が駆動輪17dを前記一方の回転方向へ回転させるように作動し、その油圧モータ21の第2給排口21bから作動油が排出される。また、制御弁32は、第1供給位置32aでは、油圧モータ21の第2給排口21bから第2管路40に排出された作動油をその第2管路40から戻し配管36へ導き、それによって、作動油が戻し配管36を通じてタンク30へ戻る。
また、制御弁32は、第2供給位置32bでは、油圧ポンプ20から供給配管34に吐出された作動油を第2管路40へ導き、それによって、第2管路40から油圧モータ21の第2給排口21bへ作動油が供給される。その結果、油圧モータ21が駆動輪17dを前記逆の回転方向へ回転させるように作動し、その油圧モータ21の第1給排口21aから作動油が排出される。また、制御弁32は、第2供給位置32bでは、油圧モータ21の第1給排口21aから第1管路38に排出された作動油をその第1管路38から戻し配管36へ導き、それによって、作動油が戻し配管36を通じてタンク30へ戻る。
また、制御弁32は、供給停止位置32cでは、供給配管34及び戻し配管36と第1管路38及び第2管路40との接続を遮断し、それによって、油圧ポンプ20から油圧モータ21の第1給排口21a及び第2給排口21bのいずれへも作動油が供給されなくなる。その結果、油圧モータ21の作動が停止し、駆動輪17dに回転駆動力が付与されなくなる。
第1切換弁26は、制御弁32の第1パイロットポート33aに管路を介して接続されており、第2切換弁28は、制御弁32の第2パイロットポート33bに管路を介して接続されている。第1切換弁26は、第1パイロットポート33aへのパイロット圧の供給と供給停止とを切り換えるソレノイドバルブであり、第2切換弁28は、第2パイロットポート33bへのパイロット圧の供給と供給停止とを切り換えるソレノイドバルブである。第1及び第2切換弁26,28は、後述の制御部82から指令信号が入力されることによって対応するパイロットポート33a,33bへのパイロット圧の供給を許容する開状態になる一方、後述の制御部82からの指令信号の入力が停止されることによって対応するパイロットポート33a,33bへのパイロット圧の供給を遮断する閉状態になるように構成されている。
上部旋回体7(図1参照)は、縦軸回りに旋回可能となるように下部走行体6のトラックフレーム14(図2参照)上に搭載されている。上部旋回体7は、図1に示すように、上部旋回体本体42と、ブーム43と、マスト44と、吊具45と、ブームガイライン46と、台車ガイライン47と、を備える。
上部旋回体本体42は、トラックフレーム14上に旋回可能となるように取り付けられている。ブーム43は、上部旋回体本体42の前端部に起伏自在となるように取り付けられている。このブーム43の先端部から吊具45が吊り下げられる。吊具45は、クレーン2による吊作業時に吊荷を吊るものである。
マスト44は、ブーム43の後側の位置でその基端部(下端部)を支点として水平軸回りに回動可能となるように上部旋回体本体42に取り付けられている。マスト44の先端部(上端部)は、ブームガイライン46を介してブーム43の先端部と接続されている。これにより、マスト44は、起立状態のブーム43を後方からブームガイライン46を介して支える。また、マスト44の先端部は、台車ガイライン47を介して台車4に連結される。
なお、上部旋回体7、台車4及び連結ビーム5に関する「前側」は、上部旋回体7のブーム43が設けられた側を意味し、上部旋回体7、台車4及び連結ビーム5に関する「後側」は、ブーム43が設けられた側に対して反対側を意味する。また、上部旋回体7、台車4及び連結ビーム5に関する「右側」は、上部旋回体7、台車4及び連結ビーム5が一体となった状態でそれらの後側から前側へ向かって見た場合での右側を意味し、上部旋回体7、台車4及び連結ビーム5に関する「左側」は、上部旋回体7、台車4及び連結ビーム5が一体となった状態でそれらの後側から前側へ向かって見た場合での左側を意味する。また、上部旋回体7についての「左右方向」は、上部旋回体7の前後方向(連結ビーム5の軸方向)及び上部旋回体7の旋回軸(縦軸)の延びる方向に対して直交する方向であり、台車4についての「左右方向」は、台車4の前後方向(連結ビーム5の軸方向)及び上部旋回体7の旋回軸(縦軸)の延びる方向に対して直交する方向である。
旋回体駆動装置8(図10参照)は、旋回操作装置10の旋回操作レバー10a(後述)の操作に応じて上部旋回体本体42(図1参照)を縦軸回りに旋回駆動するものである。旋回体駆動装置8は、図11に示した走行体駆動装置18の構成と同様の構成を有する。ただし、旋回体駆動装置8の油圧モータ21は、作動油が供給されることによって作動して上部旋回体本体42を縦軸回りに一方の回転方向又は逆の回転方向に旋回させる駆動力をその上部旋回体本体42に付与するものであり、作動油が供給されない場合には作動を停止して上部旋回体本体42の旋回を停止させる。
台車4は、その上にカウンタウェイト50を積載し、クレーン本体3の安定性を高めてクレーン2の吊能力を向上するものである。台車4は、上部旋回体7からその上部旋回体7の後側へ離れた位置に配置される。台車4は、前記のように台車ガイライン47(図1参照)を介してマスト44の先端部と連結されるとともに連結ビーム5を介して上部旋回体本体42の後部と連結されることにより、吊作業時に上部旋回体7の前部にかかる吊荷重やブーム43の荷重等とのバランスを取ってクレーン2の安定性を高め、それによってクレーン2の吊能力を向上する。台車4は、自走可能に構成されており、クレーン本体3の動き、すなわちクレーン本体3の下部走行体6による走行や上部旋回体7の旋回に応じて移動可能となっている。
台車4(図4参照)は、右側車輪ユニット52と、左側車輪ユニット54と、台車フレーム56と、図略の右側車輪操向装置と、図略の左側車輪操向装置とを有する。
右側車輪ユニット52と左側車輪ユニット54は、台車4の左右方向の中心を境に左右に分かれて配置されている。すなわち、台車4の左右方向の中心に対して右側に右側車輪ユニット52が配置され、台車4の左右方向の中心に対して左側に左側車輪ユニット54が配置されている。
右側車輪ユニット52は、縦軸回りに旋回可能となるように台車フレーム56に取り付けられている。右側車輪ユニット52は、複数の車輪58と、車輪58を回転駆動して台車4を走行させる台車駆動装置60(図10参照)とを備える。台車駆動装置60は、図11に示した走行体駆動装置18の構成と同様の構成を有する。ただし、台車駆動装置60の油圧モータ62(図4参照)は、作動油が供給されることによって作動して車輪58をその軸回りに一方の回転方向又は逆の回転方向に回転させるものであり、作動油が供給されない場合には作動を停止して車輪58の回転を停止させる。
左側車輪ユニット54は、台車駆動装置を有していない点以外は、右側車輪ユニット52と同様に構成されている。すなわち、左側車輪ユニット54の車輪58は、フリーに回転するようになっている。
台車フレーム56は、上から見て左右方向に長い略矩形状に形成された台車フレーム本体64と、その台車フレーム本体64の左右方向の中央部上に載置されて台車フレーム本体64に結合される蓋部65とを有する。台車フレーム56は、その左右方向の中心が上部旋回体本体42(図1参照)及び連結ビーム5の左右方向の中心と一致するように配置され、その状態で連結ビーム5の後部に結合されている。
台車フレーム本体64の下側に右側車輪ユニット52及び左側車輪ユニット54が配置され、それらの車輪ユニット52,54が台車フレーム本体64に結合されている。台車フレーム本体64の左右方向の中央部には、凹部64aが形成されている。凹部64aは、上向きに開口しており、連結ビーム5の後部が嵌め込まれる。この連結ビーム5の後部が凹部64aに嵌め込まれた状態で、蓋部65が連結ビーム5の後部上に被せられるとともに台車フレーム本体64に固定されることにより、連結ビーム5と台車フレーム56とが相互に固定されている。カウンタウェイト50は、台車フレーム本体64及び蓋部65の上に積載される。
図略の右側車輪操向装置は、クレーン2の走行時には各車輪58の転動方向が下部走行体6の進行方向に概ね一致する向きに右側車輪ユニット52を旋回させて操向し、上部旋回体7の旋回時には各車輪58の転動方向が上部旋回体7の旋回方向に沿う向きに右側車輪ユニット52を旋回させて操向するものである。また、図略の左側車輪操向装置は、右側車輪操向装置が右側車輪ユニット52を操向するのと同様に左側車輪ユニット54を操向するものである。
連結ビーム5(図1参照)は、クレーン本体3の上部旋回体7と台車4とを相互に連結するものである。連結ビーム5は、その前端部が上部旋回体本体42の後端部に取り付けられ、その取り付けられた状態で上部旋回体本体42の後端部から後方へ略水平に延びている。そして、前記のように、連結ビーム5の後部が台車フレーム56に結合されている。連結ビーム5は、上部旋回体本体42に取り付けられた状態で左右方向において上部旋回体本体42の略中央に相当する位置に配置されている。
連結ビーム5は、その長手方向(軸方向)、すなわち前後方向において伸縮可能に構成されている。連結ビーム5は、図7に示すように、ビームアウター66と、ビームインナー67とを有する。
ビームアウター66は、角筒状に形成されており、その後部が台車フレーム56に結合されている。すなわち、ビームアウター66の後部が台車フレーム本体64の凹部64aに嵌め込まれて蓋部65で固定されている。ビームアウター66は、台車フレーム56に結合された状態で台車フレーム56から前方へ延びている。ビームアウター66の前端は、開口している。
ビームアウター66は、図8に示すように、当該ビームアウター66の上面を形成する上板68と、当該ビームアウター66の下面を形成する下板69と、当該ビームアウター66の右側面を形成する右側板70と、当該ビームアウター66の左側面を形成する左側板71と、を有する。台車4(台車フレーム56)が傾いていない状態では、上板68及び下板69は水平方向に沿うように配置され、右側板70及び左側板71は鉛直方向に沿うように配置される。右側板70の前端に近い位置には、当該右側板70を板厚方向(左右方向)に貫通する穴70a(図5及び図7参照)が形成され、左側板71の前端に近い位置には、当該左側板71を板厚方向(左右方向)に貫通する穴71a(図7参照)が形成されている。
ビームインナー67は、上部旋回体本体42の後部に取り付けられる取付部74(図5〜図7参照)と、取付部74と一体に形成されてその取付部74から後方へ延びるインナー本体75(図7参照)とを有する。
取付部74は、左右に分かれた一対の結合部76(図7参照)を前端部に有する。一対の結合部76は、上部旋回体本体42の後端部と結合される部分である。具体的に、上部旋回体本体42は、一対の結合部76と対応する一対の被結合部42aを後端部に有する。各被結合部42aは、板状であり、その板厚方向が上部旋回体本体42の左右方向に一致する姿勢で配置されている。各被結合部42aには、左右方向に貫通する穴が形成されている。また、各結合部76は、左右方向において僅かに隙間をあけて配置された一対の結合板部76aをそれぞれ有する。各結合板部76aは、板状のものであり、その板厚方向が左右方向に一致する姿勢で配置されている。各結合板部76aには、左右方向に貫通する穴が形成されている。そして、各結合部76の一対の結合板部76a間に対応する被結合部42aが挿入され、その一対の結合板部76aに形成された穴及び被結合部42aに形成された穴に取付ピン77が挿嵌されることで、各結合部76と対応する被結合部42aとが相互に結合されている。
インナー本体75(図7参照)は、角筒状に形成されている。インナー本体75は、ビームアウター66内に挿入されてそのビームアウター66と同軸状に配置されている。インナー本体75の軸方向に直交する断面の形状(図8参照)は、ビームアウター66の軸方向に直交する断面の形状に対して一回り小さい相似形となっている。インナー本体75は、当該インナー本体75の上面を形成する上板78と、当該インナー本体75の下面を形成する下板79と、当該インナー本体75の右側面を形成する右側板80と、当該インナー本体75の左側面を形成する左側板81と、を有する。クレーン本体3(上部旋回体本体42)が傾いていない状態では、上板78及び下板79は水平方向に沿うように配置され、右側板80及び左側板81は鉛直方向に沿うように配置される。
右側板80には、当該右側板80を板厚方向(左右方向)に貫通する複数の穴80a(図7参照)が形成され、左側板81には、当該左側板81を板厚方向(左右方向)に貫通する複数の穴81a(図7参照)が形成されている。複数の穴80aは、右側板80の前端に近い位置から後側へ等間隔に並んでおり、複数の穴81aは、左側板81の前端に近い位置から後側へ等間隔に並んでいる。
インナー本体75は、その軸方向においてビームアウター66に対して進退可能となっている。インナー本体75がビームアウター66から進出することで連結ビーム5が伸長し、インナー本体75がビームアウター66内に退入することで連結ビーム5が縮小するようになっている。連結ビーム5の伸縮は、台車4が自走することで行われる。台車4が上部旋回体本体42からより後方へ離れた位置へ向かうときに連結ビーム5が伸長する一方、台車4が上部旋回体本体42により近い位置へ向かうときには連結ビーム5が縮小するようになっている。
ビームアウター66の右側板70の穴70aとインナー本体75の右側板80のいずれかの穴80aとを位置合わせしてピン100aがそれらの穴70a,80aに挿嵌されるとともに、ビームアウター66の左側板71の穴71aとインナー本体75の左側板81のいずれかの穴81aとを位置合わせしてピン100bがそれらの穴71a,81aに挿嵌されることにより、ビームアウター66に対するインナー本体75の進退位置が固定され、連結ビーム5の長さが固定されるようになっている。
インナー本体75の右側板80の各穴80aの内径は、ピン100aを各穴80aに遊びを持って挿嵌できるようにピン100aの外径よりも一回り大きくなっており、インナー本体75の左側板81の各穴81aの内径は、ピン100bを各穴81aに遊びを持って挿嵌できるようにピン100bの外径よりも一回り大きくなっている。これにより、ビームアウター66の穴70aとインナー本体75の穴80aとの位置決め精度が多少低い場合であっても、それらの穴70a,80aにピン100aを挿嵌できるようになっているとともに、ビームアウター66の穴71aとインナー本体75の穴81aとの位置決め精度が多少低い場合であっても、それらの穴71a,81aにピン100bを挿嵌できるようになっている。
上部旋回体7及び台車4に傾きがない状態や上部旋回体7の左右方向の傾きと台車4の左右方向の傾きとが一致している状態では、ビームアウター66の内面とインナー本体75の外面との間に隙間が設けられている。具体的には、ビームアウター66の上板68とインナー本体75の上板78との間、ビームアウター66の下板69とインナー本体75の下板79との間、ビームアウター66の右側板70とインナー本体75の右側板80との間、及び、ビームアウター66の左側板71とインナー本体75の左側板81との間にそれぞれ隙間が設けられている。
穴80aに挿嵌されたピン100aがその穴80a内で遊びを持っているとともに穴81aに挿嵌されたピン100bがその穴81a内で遊びを持っていることにより、インナー本体75は、ビームアウター66に対してその軸心回りに相対的に僅かに回転することがある。このような回転は、上部旋回体7の左右方向の傾きと台車4の左右方向の傾きとの不一致に起因して生じる。なお、このような回転は、本発明における連結ビーム5の捩れ変形の概念に含まれるものである。
図8は、台車4が上部旋回体7に対して左に傾いてインナー本体75の外面がビームアウター66の内面にちょうど接触した状態での連結ビーム5の軸方向に垂直な断面を示しており、当該状態では、台車4が上部旋回体7の左右方向の傾きと台車4の左右方向の傾きとが一致した状態から上部旋回体7に対して左にA°傾いている。
また、図9は、図8の状態から台車4が上部旋回体7に対してさらに左に傾いた状態での連結ビーム5の軸方向に垂直な断面を示している。当該状態では、台車4は、上部旋回体7の左右方向の傾きと台車4の左右方向の傾きとが一致した状態から上部旋回体7に対して左に前記A°よりも大きいD°傾いている。当該状態では、図8の状態でビームアウター66の内面に接触したインナー本体75の各部位がさらに押圧されて変形又は破損する。このため、本実施形態では、後述するようにオペレータに警告を発する基準となる上部旋回体7と台車4との左右方向における相対角度の規定値として、前記A°と、そのA°よりも大きく前記D°よりも小さいB°と、そのB°よりも大きく前記D°よりも小さいC°とが設定されている。C°は、インナー本体75が変形又は破損に至る前記D°の手前の角度に設定されている。
走行操作装置9(図10参照)は、クレーン2の走行(前進又は後進)及び走行停止を指示するために用いられるものであり、上部旋回体7が有する図略の運転室内に設けられている。走行操作装置9は、クレーン2の走行(前進又は後進)及び走行停止を指示するために操作される走行操作レバー9aを備える。走行操作レバー9aは、本発明における走行操作部の一例である。以下、走行操作レバー9aのことを単にレバー9aと称する。
レバー9aは、クレーン2の走行の停止を指示する中立位置と、中立位置から一方側の位置であってクレーン2の例えば前進走行を指示する位置と、中立位置から前記一方側と逆の他方側の位置であってクレーン2の例えば後進走行を指示する位置との間で傾倒操作可能となっている。レバー9aの中立位置は、本発明における走行停止指示位置の一例であり、レバー9aの前記一方側の位置及び前記他方側の位置は、本発明における走行指示位置の一例である。
旋回操作装置10(図10参照)は、上部旋回体7の旋回及び旋回停止を指示するために用いられるものであり、図略の運転室内に設けられている。旋回操作装置10は、上部旋回体7の旋回及び旋回停止を指示するために操作される旋回操作レバー10aを備える。旋回操作レバー10aは、本発明における旋回操作部の一例である。以下、旋回操作レバー10aのことを単にレバー10aと称する。
レバー10aは、上部旋回体7の旋回の停止を指示する中立位置と、中立位置から一方側の位置であって上部旋回体7の例えば左旋回を指示する位置と、中立位置から前記一方側と逆の他方側の位置であって上部旋回体7の例えば右旋回を指示する位置との間で傾倒操作可能となっている。レバー10aの中立位置は、本発明における旋回停止指示位置の一例であり、レバー10aの前記一方側の位置及び前記他方側の位置は、本発明における旋回指示位置の一例である。
導出装置12(図10参照)は、上部旋回体7と台車4との左右方向における相対角度を導出するものである。この導出装置12が導出する相対角度は、本発明における捩れ指標値の一例である。すなわち、上部旋回体7の左右方向の傾きと台車4の左右方向の傾きとが一致していない場合には、図8及び図9に示すように連結ビーム5の捩れ変形が生じるため、上部旋回体7と台車4との左右方向における相対角度は、連結ビーム5に生じる捩れ変形の指標値となる。導出装置12は、旋回体傾斜センサ86と、台車傾斜センサ88と、演算部90とを有する。
旋回体傾斜センサ86は、水平面に対する上部旋回体7の左右方向の傾斜角度を検出するものである。具体的には、旋回体傾斜センサ86は、水平面に対する上部旋回体7の左右方向の傾斜角度として、水平面に対する下部走行体6の左右方向の傾斜角度を検出する。上部旋回体7は下部走行体6上に搭載されているので、下部走行体6の傾斜角度は、上部旋回体7の傾斜角度に相当する。旋回体傾斜センサ86は、図2及び図3に示すように、下部走行体6のトラックフレーム14に設けられており、そのトラックフレーム14の中央から前左側に少し外れた位置に配置されている。旋回体傾斜センサ86は、一定の周期で上部旋回体7の左右方向の傾斜角度を検出し、その検出した傾斜角度のデータを演算部90へ逐次送信するようになっている。
台車傾斜センサ88は、水平面に対する台車4の左右方向の傾斜角度を検出するものである。台車傾斜センサ88は、図4に示すように、台車フレーム本体64に設けられており、その台車フレーム本体64の中央から右側に少し外れた位置に配置されている。台車傾斜センサ88は、旋回体傾斜センサ86が上部旋回体7の傾斜角度を検出する周期と同じ一定の周期で台車4の左右方向の傾斜角度を検出し、その検出した傾斜角度のデータを演算部90へ逐次送信するようになっている。
演算部90は、コントローラ11に組み込まれており、旋回体傾斜センサ86から受信した傾斜角度のデータと台車傾斜センサ88から受信した傾斜角度のデータとに基づいて、上部旋回体7と台車4との左右方向における相対角度を算出する。具体的には、演算部90は、同一の周期において検出された上部旋回体7の左右方向の傾斜角度と台車4の左右方向の傾斜角度との差分を前記相対角度として算出する。
解除装置13は、後述するように前記相対角度が規定値を超えたことに応じてコントローラ11の制御部82(後述)により下部走行体6及び台車4の走行が停止されるとともに上部旋回体7の旋回が停止された後、その停止を解除するために用いられるものである。解除装置13は、図略の運転室内に設けられている。解除装置13は、下部走行体6及び台車4の走行の停止及び上部旋回体7の旋回の停止を解除するために操作されるスイッチである解除操作部13aを有する。解除操作部13aは、前記停止の解除を指示する解除位置と前記停止の解除を指示しない非解除位置との間で操作可能となっている。解除装置13は、解除操作部13aが解除位置に配置されたことに応じてコントローラ11へ前記停止の解除を指示する信号を出力する一方、解除操作部13aが非解除位置に配置されている状態ではその信号をコントローラ11へ出力しないようになっている。
コントローラ11は、旋回体駆動装置8、走行体駆動装置18及び後述の台車駆動装置60の制御を行うものであり、図略の運転室内に設けられている。コントローラ11は、機能ブロックとしての制御部82を有する。
制御部82は、走行操作装置9のレバー9aの操作に応じて走行体駆動装置18及び台車駆動装置60の各々の第1切換弁26又は第2切換弁28へ指令信号を出力することにより、クレーン2の走行時の走行体駆動装置18による下部走行体6の走行及び台車駆動装置60による台車4の走行を制御する。また、制御部82は、旋回操作装置10のレバー10aの操作に応じて旋回体駆動装置8及び台車駆動装置60の各々の第1切換弁26又は第2切換弁28へ指令信号を出力することにより、上部旋回体7の旋回時の旋回体駆動装置8による上部旋回体7の旋回及びその旋回方向への台車駆動装置60による台車4の移動を制御する。
具体的に、制御部82は、レバー9aが中立位置にある状態では、走行体駆動装置18及び台車駆動装置60の各々の第1切換弁26及び第2切換弁28へ指令信号を入力せず、その結果、第1及び第2切換弁26,28が閉状態になって制御弁32にパイロット圧が供給されないことにより、制御弁32が供給停止位置32cになって油圧モータ21に作動油が供給されず、油圧モータ21の作動を停止させる。これにより、下部走行体6及び台車4の走行が停止状態となる。
一方、制御部82は、レバー9aが中立位置から一方側又は他方側へ操作されることに応じて、その操作された側に対応する走行体駆動装置18及び台車駆動装置60の各々の第1切換弁26又は第2切換弁28へ指令信号を入力し、その結果、指令信号が入力された第1切換弁26又は第2切換弁28が開状態になって制御弁32の対応する第1パイロットポート33a又は第2パイロットポート33bにパイロット圧が供給されることにより、制御弁32が第1供給位置32a又は第2供給位置32bになって油圧モータ21に作動油が供給され、油圧モータ21が作動する。これにより、下部走行体6及び台車4がレバー9aの操作に応じて走行する。
また、制御部82は、レバー10aが中立位置にある状態では、旋回体駆動装置8及び台車駆動装置60の各々の第1切換弁26及び第2切換弁28へ指令信号を入力せず、それによって、上記の走行体駆動装置18及び台車駆動装置60の場合と同様にして油圧モータ21の作動を停止させて上部旋回体7の旋回及びその旋回に伴う台車4の移動を停止させる。また、制御部82は、レバー10aが中立位置から一方側又は他方側へ操作されることに応じて、その操作された側に対応する旋回体駆動装置8及び台車駆動装置60の各々の第1切換弁26又は第2切換弁28へ指令信号を入力し、それによって、上記の走行体駆動装置18及び台車駆動装置60の場合と同様にして油圧モータ21を作動させてレバー10aの操作に応じた上部旋回体7の旋回及びその旋回に伴う台車4の移動を実行する。
そして、制御部82は、導出装置12の演算部90によって算出される前記相対角度が規定値を超えたことに応じて警告を発する警告部としても機能する。具体的に、制御部82は、段階的に設定された複数の規定値(A°、B°、C°)を記憶しており、演算部90によって算出される前記相対角度が各規定値を超える毎に警告を発する。各規定値(A°、B°、C°)は、連結ビーム5に捩れ変形による破損を発生させる相対角度D°よりも低い値に設定されている。また、本実施形態では、制御部82は、警告として、走行体駆動装置18による下部走行体6の走行及び台車駆動装置60による台車4の走行をレバー9aの中立位置から一方側又は他方側への操作に反して停止させるとともに、旋回体駆動装置8による上部旋回体7の旋回及び台車駆動装置60による台車4の移動をレバー10aの中立位置から一方側又は他方側への操作に反して停止させることを行う。
また、制御部82は、前記警告として、前記相対角度が最大の規定値(C°)を超えたことに応じて下部走行体6及び台車4の走行の停止と上部旋回体7の旋回の停止及びその旋回に伴う台車4の移動の停止を行った場合には、その停止後、レバー9a,10aが中立位置に戻され且つ解除操作部13aが解除位置に操作されて解除操作部13aからコントローラ11にその停止の解除を指示する信号が入力されたことに応じて、走行体駆動装置18による下部走行体6の走行の停止及び台車駆動装置60による台車4の走行の停止を解除するとともに、旋回体駆動装置8による上部旋回体7の旋回の停止及び台車駆動装置60による台車4の移動の停止を解除する。また、制御部82は、前記警告として、前記相対角度が最大の規定値以外の規定値(A°、B°)を超えたことに応じて下部走行体6及び台車4の走行の停止と上部旋回体7の旋回の停止及びその旋回に伴う台車4の移動の停止を行った場合には、その停止後、レバー9a,10aが中立位置に戻されたことに応じて、走行体駆動装置18による下部走行体6の走行の停止及び台車駆動装置60による台車4の走行の停止を解除するとともに、旋回体駆動装置8による上部旋回体7の旋回の停止及び台車駆動装置60による台車4の移動の停止を解除する。
次に、図12のフローチャートを参照して、本実施形態のクレーン2において上部旋回体7と台車4との左右方向における相対角度に応じた警告が発せられるプロセスについて説明する。
まず、旋回体傾斜センサ86による上部旋回体7の傾斜角度の検出及び台車傾斜センサ88による台車4の傾斜角度の検出が行われる(ステップS1)。この際、旋回体傾斜センサ86は、水平面に対する上部旋回体7の左右方向の傾斜角度を検出し、台車傾斜センサ88は、水平面に対する台車4の左右方向の傾斜角度を検出する。
次に、演算部90がクレーン本体3に対する台車4の左右方向における傾斜の相対角度を算出する(ステップS3)。この際、演算部90は、旋回体傾斜センサ86により検出された上部旋回体7の左右方向の傾斜角度と、台車傾斜センサ88により検出された台車4の左右方向における傾斜の相対角度との差を相対角度として算出する。
次に、制御部82が、演算部90により算出された前記相対角度が前回算出された相対角度から上昇し且つ前記規定値としてのA°、B°又はC°のいずれかの角度を超えたか否かを判断する(ステップS5)。具体的には、演算部90による前記相対角度の算出は一定周期で繰り返し行われるため、制御部82は、前回算出された前記相対角度がA°以下で且つ今回算出された前記相対角度がA°を超えた、もしくは、前回算出された前記相対角度がB°以下で且つ今回算出された前記相対角度がB°を超えた、もしくは、前回算出された前記相対角度がC°以下で且つ今回算出された前記相対角度がC°を超えたという3つの状況のいずれかが該当するか否かを判断する。なお、今回の前記相対角度の算出が初回の算出である場合には、前回算出された相対角度として最低値である0°を用いる。
制御部82が前記3つの状況はいずれも該当しないと判断した場合には、通常操作が行われる(ステップS11)。前記3つの状況がいずれも該当しない場合とは、今回算出された前記相対角度が前回算出された相対角度から上昇したが前記規定値A°、B°又はC°を超えない場合、今回算出された前記相対角度が前回算出された前記相対角度から低下して前記規定値以下である場合、及び、今回算出された前記相対角度が前回算出された前記相対角度から上昇したか又は低下したかにかかわらず前記規定値よりも高い値で維持されている場合などが該当する。前記通常操作は、走行操作装置9のレバー9aが操作されている場合には、制御部82がそのレバー9aの操作に応じたクレーン本体3の下部走行体6の走行が行われるように走行体駆動装置18を制御するとともにそのレバー9aの操作に応じた台車4の走行が行われるように台車駆動装置60を制御するものである。また、前記通常操作は、旋回操作装置10のレバー10aが操作されている場合には、制御部82がそのレバー10aの操作に応じた上部旋回体7の旋回が行われるように旋回体駆動装置8を制御するものである。ステップS11の通常操作が行われた後、再度、前記ステップS1以降の処理が実施される。
一方、前記ステップS5において、制御部82は、前記3つの状況のいずれかが該当すると判断した場合には、次に、走行操作装置9のレバー9a及び旋回操作装置10のレバー10aの少なくとも一方が中立位置以外にあるか否かを判断する(ステップS7)。具体的には、制御部82は、走行操作装置9からレバー9aが中立位置から一方側又は他方側へ操作されたことを示す指令信号がコントローラ11に入力されているか否かを判断することにより、レバー9aが中立位置以外にあるか否かを判断する。また、制御部82は、旋回操作装置10からレバー10aが中立位置から一方側又は他方側へ操作されたことを示す指令信号がコントローラ11に入力されているか否かを判断することにより、レバー10aが中立位置以外にあるか否かを判断する。
ここで、制御部82がレバー9aとレバー10aは両方とも中立位置にあると判断した場合には、前記ステップS11の通常操作の処理が行われる。
一方、制御部82は、レバー9aとレバー10aの少なくとも一方が中立位置以外にあると判断した場合には、レバー9aによるクレーン本体3の下部走行体6の走行操作及び台車4の走行操作を停止するとともに、レバー10aによる上部旋回体7の旋回操作を停止する(ステップS9)。
この場合、制御部82は、具体的には、走行体駆動装置18、台車駆動装置60及び旋回体駆動装置8の各々の第1切換弁26及び第2切換弁28への指令信号の入力を停止することによりそれらの第1切換弁26及び第2切換弁28を閉状態にし、それによって各駆動装置18,60,8の制御弁32のパイロットポート33a,33bへのパイロット圧の供給を停止させる。その結果、各駆動装置18,60,8の制御弁32は、供給停止位置32cになり、対応する油圧モータ21への作動油の供給が停止されて各駆動装置18,60,8の油圧モータ21の作動が停止する。これにより、レバー9aとレバー10aの少なくとも一方が中立位置から操作されていたとしても、その操作に関係なく、各駆動装置18,60,8の作動が停止されて下部走行体6及び台車4の走行が停止されるとともに上部旋回体7の旋回が停止される。
次に、制御部82は、ステップS3で演算部90により算出された前記相対角度が前回算出された相対角度から上昇し且つA°又はB°のいずれかの角度を超えたか否かを判断する(ステップS13)。すなわち、制御部82は、前回算出された前記相対角度がA°以下で且つ今回のステップS3で算出された前記相対角度がA°を超えた、もしくは、前回算出された前記相対角度がB°以下で且つ今回のステップS3で算出された前記相対角度がB°を超えたという2つの状況のいずれかが該当するか否かを判断する。
制御部82は、前記2つの状況のいずれかが該当すると判断した場合には、次に、走行操作装置9のレバー9a及び旋回操作装置10のレバー10aが両方とも中立位置にあるか否かを判断する(ステップS15)。この際、制御部82は、走行操作装置9からコントローラ11に入力される指令信号及び旋回操作装置10からコントローラ11に入力される指令信号に基づいてこの判断を行う。
ここで、制御部82は、レバー9aとレバー10aは両方とも中立位置にあると判断した場合には、次に、前記ステップS11の通常操作の処理を行う。一方、制御部82は、レバー9aとレバー10aの少なくとも一方が中立位置にない(中立位置以外の位置にある)と判断した場合には、前記ステップS9の操作停止の処理を行う。
また、前記ステップS13において、制御部82は、前記2つの状況はいずれも該当しないと判断した場合には、次に、走行操作装置9のレバー9a及び旋回操作装置10のレバー10aが両方とも中立位置にあり且つ解除装置13による解除操作が有ったか否かを判断する(ステップS19)。なお、前記2つの状況が該当しない場合とは、前回算出された相対角度がC°以下で且つ今回のステップS3で算出された相対角度がC°を超えた場合に相当する。
制御部82は、レバー9a,10aが中立位置にあるか否かの判断については、走行操作装置9からコントローラ11に入力される指令信号及び旋回操作装置10からコントローラ11に入力される指令信号に基づいて行う。また、制御部82は、解除装置13による解除操作が有ったか否かの判断については、解除装置13からコントローラ11に入力される解除信号の有無に基づいて行う。具体的には、解除装置13の解除スイッチがオンされる解除操作が有った場合には、解除装置13はコントローラ11へ解除信号を出力する一方、解除操作がなくて解除装置13の解除スイッチがオフのままである場合には、解除装置13はコントローラ11へ解除信号を出力しない。このため、制御部82は、コントローラ11への解除信号の入力が有る場合には解除操作が有ったと判断し、コントローラ11への解除信号の入力が無い場合には解除操作が無いと判断する。
制御部82は、ステップS19において、レバー9a,10aが両方とも中立位置にあり且つ解除装置13による解除操作が有ったと判断した場合には、次に前記ステップS11の通常操作の処理を行う。一方、制御部82は、レバー9a,10aのうちの少なくとも一方が中立位置にないか又は解除装置13による解除操作が無いと判断した場合には、次に、前記ステップS9の操作停止の処理を行う。
本実施形態では、連結ビーム5の捩れ指標値としての上部旋回体7と台車4との左右方向における相対角度が規定値(A°、B°、C°)を超えた時に、制御部82が警告として走行体駆動装置18による下部走行体6の走行及び台車駆動装置60による台車4の走行をレバー9aの操作に反して停止させるとともに旋回体駆動装置8による上部旋回体7の旋回をレバー10aの操作に反して停止させる。このため、クレーン2を操作中のオペレータに連結ビーム5の捩れ変形が増大したことを気付かせることができるとともに、クレーン2の操作を中止することができる。このため、それ以上の連結ビーム5の捩れ変形の増大を抑制でき、連結ビーム5の破損を防ぐことができる。
また、本実施形態では、導出装置12の演算部90によって算出された前記相対角度が規定値(A°、B°、C°)を超えた時に警告として下部走行体6の走行、台車4の走行及び上部旋回体7の旋回が強制的に停止されるから、仮にオペレータが警告を無視したり警告に気付かなかったりした場合であっても、クレーン2の操作が継続されるのを防ぐことができる。このため、より確実に連結ビーム5の破損を防ぐことができる。
また、本実施形態では、演算部90によって算出される前記相対角度が段階的な複数の規定値(A°、B°、C°)をそれぞれ超える毎に下部走行体6の走行、台車4の走行及び上部旋回体7の旋回が停止されるため、オペレータは、連結ビーム5の捩れ変形の段階的な増大を認識することができる。
また、本実施形態では、下部走行体6の走行の停止、台車4の走行の停止及び上部旋回体7の旋回の停止が、前記相対角度が最大の規定値(C°)を超えたことに起因するものである場合には、前記停止の解除のためにレバー9a,10aの中立位置への配置に加えて解除操作部13aの操作が必要である一方、前記停止が、前記相対角度が最大の規定値以外の規定値(A°又はB°)を超えたことに起因するものである場合には、レバー9a,10aの中立位置への配置だけで前記停止を解除できる。すなわち、前記相対角度が最大の規定値(C°)を超えた場合の前記停止の解除に要する手間を前記相対角度が最大の規定値以外の規定値(A°又はB°)を超えた場合の前記停止の解除に要する手間よりも多くすることで、前記相対角度が最大の規定値を超えた場合の前記停止を解除するにあたってオペレータに連結ビーム5の捩れ変形が規定した中で最大になったことを認識させた上で操作再開後のクレーン2のより慎重な操作を促すことができる。
また、本実施形態では、導出装置12の演算部90によって算出される前記相対角度が規定値以下の値から上昇してその規定値を超えた時点で警告として下部走行体6の走行、台車4の走行及び上部旋回体7の旋回が停止され、その後、演算部90によって算出される前記相対角度が規定値以下に低下するか又は規定値よりも高い値に維持されている場合には、前記警告が停止される、すなわち前記警告としての下部走行体6の走行の停止、台車4の走行の停止及び上部旋回体7の旋回の停止が行われなくなり、前記通常操作が可能である。このため、オペレータが、あるクレーン操作を行って演算部90によって算出される前記相対角度が規定値を超えた後、別のクレーン操作を行った場合に当該別のクレーン操作によって前記相対角度が規定値を超えたと誤認するのを防ぐことができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
例えば、制御部82は、前記ステップS19において、レバー9a,10aが両方とも中立位置にあり且つ解除装置13による解除操作が有ったと判断した場合には、次に、レバー9a又は10aの新たな操作が前記ステップS9の操作停止処理時点で行われていたレバー9a又は10aの操作と異なるか否かに応じて、その後、通常操作の処理を行うか又は操作停止の処理を継続するかを決定してもよい。このような変形例によるプロセスのフローチャートが図13及び図14に示されている。
この変形例のうち前記実施形態のステップと同じ符号が付されたものについては、その前記実施形態のステップと同様の処理が行われる。一方、この変形例のプロセスでは、ステップS9a(図13参照)において、制御部82が前記実施形態のステップS9の操作停止の処理と同様の処理を行うとともに、その時点で行われていたレバー9a,10aの操作内容の情報をコントローラ11の図略の記憶装置に記憶させる。
例えば、レバー9aが中立位置からクレーン2の前進方向への走行を指示する側へ操作されていた場合には、その前進方向への走行操作が行われていたという情報を記憶装置に記憶させ、レバー9aが中立位置からクレーン2の後進方向への走行を指示する側へ操作されていた場合には、その後進方向への走行操作が行われていたという情報を記憶装置に記憶させる。また、レバー10aが中立位置から上部旋回体7の右旋回を指示する側へ操作されていた場合には、右旋回の操作が行われていたという情報を記憶装置に記憶させ、レバー10aが中立位置から上部旋回体7の左旋回を指示する側へ操作されていた場合には、左旋回の操作が行われていたという情報を記憶装置に記憶させる。
そして、ステップS19において、制御部82は、レバー9a,10aが両方とも中立位置にあり且つ解除装置13による解除操作が有ったと判断した場合には、その後に行われるレバー9a又は10aの新たな操作が記憶装置に記憶されているレバー9a又は10aの操作の情報と異なるか否かを判断する(ステップS21:図14参照)。
ここで、制御部82は、レバー9a又は10aの新たな操作が記憶装置に記憶されている操作の情報と異ならないと判断した場合、換言すれば、新たな操作が記憶装置に記憶されている操作の情報と同じであると判断した場合には、次に、前記ステップS9aの処理を行う。すなわち、操作停止が維持される。
一方、制御部82は、レバー9a又は10aの新たな操作が記憶装置に記憶されている操作の情報と異なると判断した場合には、次に、そのレバー9a又は10aの新たな操作に応じた通常操作の処理を行う(ステップS23)。この通常操作の処理は、前記実施形態のステップS11の通常操作の処理と同様である。なお、レバー9a又は10aの新たな操作が記憶装置に記憶されている操作の情報と異なるとは、具体的には、以下のような状況のことである。
すなわち、記憶装置に記憶されている操作の情報がレバー9aによるクレーン2の前進方向への走行操作である場合において、新たな操作が、レバー9aによるクレーン2の後進方向への走行操作又はレバー10aによる上部旋回体7の旋回操作である。もしくは、記憶装置に記憶されている操作の情報がレバー9aによるクレーン2の後進方向への走行操作である場合において、新たな操作が、レバー9aによるクレーン2の前進方向への走行操作又はレバー10aによる上部旋回体7の旋回操作である。もしくは、記憶装置に記憶されている操作の情報がレバー10aによる上部旋回体7の右旋回の操作である場合において、新たな操作が、レバー9aによるクレーン2の走行操作又はレバー10aによる上部旋回体7の左旋回の操作である。もしくは、記憶装置に記憶されている操作の情報がレバー10aによる上部旋回体7の左旋回の操作である場合において、新たな操作が、レバー9aによるクレーン2の走行操作又はレバー10aによる上部旋回体7の右旋回の操作である。
前記ステップS23の処理の後、旋回体傾斜センサ86による上部旋回体7の左右方向の傾斜角度の検出及び台車傾斜センサ88による台車4の左右方向の傾斜角度の検出が行われ(ステップS25)、さらにその後、演算部90による相対角度の算出が行われる(ステップS27)。ステップS25の処理は、前記ステップS1の処理と同様であり、ステップS27の処理は、前記ステップS3の処理と同様である。
次に、制御部82は、演算部90により算出された相対角度がB°以下であるか否かを判断する(ステップS29)。ここで、制御部82が演算部90により算出された相対角度はB°以下ではないと判断した場合には、前記ステップS21以降の処理が再度行われる。一方、制御部82が、演算部90により算出された相対角度はB°以上であると判断した場合には、次に、前記ステップS11の通常操作の処理を行う。
また、参考例として、連結ビームの捩れ指標値は、必ずしも前記相対角度に限定されず、捩れ指標値を導出する導出装置は、前記実施形態のように旋回体傾斜センサ、台車傾斜センサ及び演算部からなるものに必ずしも限定されない。
例えば、連結ビームの捩れ指標値は、連結ビームの軸心回りの捩れ方向の歪み量であってもよい。その場合には、導出装置は、例えば、連結ビームに取り付けられて連結ビームの軸心回りの捩れ方向の歪み量を検出する歪み計等であってもよい。そして、警告部は、歪み計により検出された歪み量が上昇して規定値を超えた場合に警告を発すればよい。例えば、警告部が前記実施形態のように制御部である場合には、制御部は、検出された歪み量が上昇して規定値を超えた時点で前記操作停止の処理を行えばよい。
ビームインナーとビームアウターとの前後の配置は、前記実施形態における配置と逆であってもよい。すなわち、ビームインナーが台車フレームに取り付けられてその台車フレームから前側へ延びるとともに、ビームアウターが上部旋回体本体に取り付けられてその上部旋回体本体の後端部から後側へ延び、そのビームアウター内にインナー本体が挿入されていてもよい。
また、連結ビームは、必ずしも伸縮するものでなくてもよい。すなわち、参考例として、連結ビームは、前記実施形態のように、ビームインナーとビームアウターからなるものではなく、一体型のものであってもよい。
また、本発明による警告部は、警告として、走行体駆動装置による下部走行体の走行の停止、台車駆動装置による台車の走行の停止及び旋回体駆動装置による上部旋回体の旋回の停止を実施する制御部に必ずしも限定されるものではない。例えば、本発明による警告部は、警告としてのメッセージやその他の画面表示を行う表示装置、警告としての音声等を発する音声出力装置、又は、警告としての点灯や点滅を発する警告灯等であってもよい。
また、導出装置によって導出される捩れ指標値が最大の規定値以外の規定値を超えたことに応じて前記停止を行った場合であっても、その停止の解除に、走行操作部の走行停止指示位置への配置及び旋回操作部の旋回停止指示位置への配置に加えて解除操作部の解除位置への操作を要するようにしてもよい。また、導出装置によって導出される捩れ指標値が最大の規定値を超えたことに応じて前記停止を行った場合において、その停止が走行操作部の走行停止指示位置への配置及び旋回操作部の旋回停止指示位置への配置だけで解除されるようにしてもよい。
また、ビームアウター内に挿入されたインナー本体は、必ずしも、ビームアウターに対して同軸状に配置されていなくてもよい。すなわち、インナー本体の軸心は、ビームアウターの軸心からずれていてもよく、また、ビームアウターの軸心に対して多少斜めになっていてもよい。
また、インナー本体の軸方向に直交する断面の形状は、ビームアウターの軸方向に直交する断面の形状に対して必ずしも相似形になっていなくてもよい。
また、前記実施形態では、ビームアウター66に対するインナー本体75の進退位置を固定するためのピン100a,100bを挿嵌する穴として、ビームアウター66の右側板70に1つの穴70aを設けるとともにビームアウター66の左側板71に1つの穴71aを設け、インナー本体75の右側板80に複数の穴80aを設けるとともにインナー本体75の左側板81に複数の穴81aを設けたが、ビームアウター66の右側板70と左側板71にそれぞれ複数の穴を設け、インナー本体75の右側板80と左側板81にそれぞれ1つの穴を設けてもよい。また、インナー本体75の右側板80とビームアウター66の右側板70の両方に複数の穴を設けてもよく、インナー本体75の左側板81とビームアウター66の左側板71の両方に複数の穴を設けてもよい。
また、ピンを挿嵌する穴をビームアウター66の右側板70及び左側板71とインナー本体75の右側板80及び左側板81とに設ける代わりに、ビームアウター66の上板68及び下板69とインナー本体75の上板78及び下板79とに設けてもよい。ビームアウター66の上板68及び下板69に設ける穴はビームアウター66の右側板70及び左側板71に設けた穴70a,71aと同様に構成し、インナー本体75の上板78及び下板79に設ける穴はインナー本体75の右側板80及び左側板81に設けた穴80a,81aと同様に構成すればよい。
また、連結ビームの伸縮は、クレーン本体が走行することで行ってもよい。
また、旋回体傾斜センサは、上部旋回体に設置されて、その上部旋回体自体の水平面に対する左右方向の傾斜角度を検出するものであってもよい。また、ビームアウターに傾斜センサを設けて、その傾斜センサにより水平面に対するビームアウターの左右方向の傾斜角度を検出し、その検出した傾斜角度を前記相対角度の導出に用いてもよい。また、ビームインナーに傾斜センサを設けて、その傾斜センサにより水平面に対するビームインナーの左右方向の傾斜角度を検出し、その検出した傾斜角度を前記相対角度の導出に用いてもよい。