JP6251603B2 - 車両用変速装置 - Google Patents
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Description
本明細書における有段変速機構とは、多段変速機構と同義ではなく、変速段が単段のものを含む概念である。
同文献に記載された車両用変速装置は、ベルト式無段変速機構、変速比が固定の歯車式変速機構、遊星歯車機構、および走行モード切替え用のクラッチを備えている。車両走行モードとしては、第1および第2の走行モードがある。第1の走行モードは、前記2種類の変速機構のうち、ベルト式無段変速機構のみを利用してエンジン出力が車軸側に伝達されるモードである。第2の走行モードは、トルクスプリットモードであり、このモードにおいては、エンジン出力がベルト式無段変速機構および歯車式変速機構の双方を利用して変速された上で、遊星歯車機構を利用してそれらの駆動力が合成され、この合成駆動力が車軸側に出力される。
ところが、そのような手段を単に採用しただけでは、走行モードの切り替えが連続して頻繁に繰り返されるハンチング現象を生じる場合がある。
具体的には、第1の走行モード時において、ベルト式無段変速機構の変速比が、たとえばハイ側に変化して歯車式変速機構の変速比に達すると、その時点で第2の走行モードへの変更が開始される。一方、このような第2の走行モードへの変更動作の直後に、目標エンジン回転数が上昇し、ベルト式無段変速機構の変速比が歯車式変速機構の変速比よりもロー側に戻る場合がある。この場合には、その時点で第1の走行モードへの復帰動作が開始されることとなる。このような原理に基づき、目標エンジン回転数が比較的変動し易く、これに伴ってベルト式無段変速機構の変速比も変動し易い車両運転状況下においては、走行モードの切り替えが連続的かつ頻繁に生じる虞がある。このような走行モードの変更動作のハンチング現象を生じたのでは、走行モード変更時のショックが多発し、車両の乗り心地が悪化する。また、走行モード変更用クラッチのオン・オフ動作が頻繁に実行されるために、アクセル操作に対する応答性も悪くなる。
すなわち、第1の走行モード時において、無段変速機構の変速比が第1のモード切替え変速比γ1に到達しても、第2の走行モードには変更されない。無段変速機構の変速比がさらにハイ側またはロー側に変化し、第2のモード切替え変速比γ2に到達した場合に限り、第2の走行モードに変更されることとなる。このような第2の走行モードの変更動作直後において、目標エンジン回転数が変動し、無段変速機構の変速比が元のロー側またはハイ側へ多少戻るように変化したとしても、この無段変速機構の変速比が第1のモード切替え変速比γ1まで戻らない限りは、第1の走行モードへ復帰しないこととなる。このような原理に基づき、第1の走行モードから第2の走行モードへの変更後に走行モード変更動作のハンチング現象が生じないようにすることが可能となる。その結果、前記ハンチング現象に起因して車両の乗り心地が悪化するといった不具合を適切に回避することができる。また、走行モード変更用クラッチのオン・オフ動作が頻繁に実行されることも回避されるために、アクセル操作に対する応答性をよくすることもできる。
一方、第1のモード切替え変速比γ1は、有段変速機構の変速比γGと略同一であるため、第2の走行モードから第1の走行モードへの変更時においては、無段変速機構と有段変速機構とを同期させて、走行モード変更時のショックを適切に抑制することが可能である。
ベルト式無段変速機構4は、本発明でいう「無段変速機構」の一例に相当する。歯車式変速機構5は、本発明でいう「有段変速機構」の一例に相当する。
から遊星歯車機構6に入力された駆動力の出力部とされている。遊星歯車機構6からの出力は、リングギヤ62に連結された出力軸81、ならびにギヤ82を介して、差動歯車装置2のリングギヤ20に伝達される。
第1の走行モードは、歯車式変速機構5およびベルト式無段変速機構4のうち、ベルト式無段変速機構4のみを利用したモードである。この第1の走行モードは、スプリットクラッチC1をオフ、ドライブクラッチC2をオンにすることにより設定される。前後進切り替え用のブレーキB1は、車両後進時にオンとされるものであり、車両前進時にはオフのままとされる。この第1の走行モード時においては、たとえば車速、スロットル開度、および目標エンジン回転数などをパラメータとする3次元マップに基づいて変速比γBが決定され、かつこの決定された変速比γBとなるようにベルト式無段変速機構4が制御される。
第2の走行モードは、歯車式変速機構5およびベルト式無段変速機構4の双方を利用したトルクスプリットモードである。この第2の走行モードは、スプリットクラッチC1をオン、ドライブクラッチC2をオフに切り替えることにより設定可能である。歯車式変速機構5の変速比γGは一定(固定)であるが、第2の走行モードにおいては、ベルト式無段変速機構4がサンギヤ60およびピニヨンギヤ61を回転させる結果、両変速機構4,5のトータルの変速比は、ベルト式無段変速機構4の変速比γBを変更することによって制御可能である。第2の走行モードでは、動力伝達効率が高い歯車式変速機構5が用いられるため、第2の走行モード時は、第1の走行モード時よりも動力伝達効率が高くなる(図3も参照)。
第2の走行モードから第1の走行モードへの変更点となる第1のモード切替え変速比γ1は、歯車式変速機構5の変速比γGと同一の値とされており、第1の切替えラインL1は、第1のモード切替え変速比γ1に対応する目標エンジン回転数を示している。
これとは反対に、第1の走行モードから第2の走行モードへの変更点となる第2のモード切替え変速比γ2は、第1のモード切替え変速比γ1よりもハイ側(変速比が小さい側)とされている。第2の切替えラインL2は、第2のモード切替え変速比γ2に対応する目標エンジン回転数を示している。
このように、第1および第2の切替えラインL1,L2が設けられている結果、図2および図3に示すように、第1の走行モードの範囲は、P1またはP1’で示す範囲となる。第2の走行モードの範囲は、P2またはP2’で示す範囲となる。
ドライブクラッチC2については、第2の走行モードから第1の走行モードへの変更時に接続側となるために、その際に行なうことが可能である。ただし、この場合において、ベルト式無段変速機構4の変速比γBを第1のモード切替え変速比γ1に直ちに一致させると、差回転が発生しない。したがって、トルク点の学習制御を行なう際には、予めベルト式無段変速機構4の変速比γBを第1のモード切替え変速比γ1よりもハイ側またはロー側にずれせるようにして、目標エンジン回転数および変速比γBを一定化させればよい。この状態において差回転が減少した時点がトルク点である。トルク点の検出後には、入力回転数および変速比γBを制御し、この変速比γBを第1のモード切替え変速比γ1に近付けるようにすれば、変速比γBが第1のモード切替え変速比γ1と一致する同期状態でのクラッチ接続が可能である。
本実施形態においては、前記実施形態とは反対に、第1の走行モードの範囲P1,P1’は高速側とされ、第2の走行モードの範囲P2,P2’は低速側とされている。これに対応して、第1および第2の切替えラインL1,L2の相対的な位置関係も、前記実施形態とは異なっている。すなわち、本実施形態では、第1の走行モードから第2の走行モードへの変更が行なわれる際の第2のモード切替え変速比γ2は、第2の走行モードから第1の走行モードへの変更が行なわれる際の第1のモード切替え変速比γ1よりもロー側(変速比が大きい側)に設定されている。
C1 スプリットクラッチ
C2 ドライブクラッチ
2 差動歯車装置
4 ベルト式無段変速機構(無段変速機構)
5 歯車式変速機構(有段変速機構)
6 遊星歯車機構
9a,9b 車軸
10 エンジン
Claims (1)
- 無段変速機構と、変速比が一定の有段変速機構と、これら両変速機構を利用してエンジン出力が車軸側へ伝達する経路を切り替えるためのクラッチと、を備えており、
前記クラッチの切り替えにより設定される車両の走行モードとして、前記両変速機構のうち、前記無段変速機構のみを利用した第1の走行モードと、前記無段変速機構が併用され、または併用されることなく前記有段変速機構を利用した第2の走行モードとが選択可能とされている、車両用変速装置であって、
前記第2の走行モードから前記第1の走行モードへの変更が行なわれる際の第1のモード切替え変速比γ1は、前記有段変速機構の変速比γGと略同一に設定されており、
前記第1の走行モードから前記第2の走行モードへの変更が行なわれる際の第2のモード切替え変速比γ2は、
前記第2の走行モードが前記第1の走行モードよりも車速の高速域側に設定された条件下において、前記第1のモード切替え変速比γ1よりもハイ側に設定された構成、または、前記第2の走行モードが前記第1の走行モードよりも車速の低速域側に設定された条件下において、前記第1のモード切替え変速比γ1よりもロー側に設定された構成とされており、
前記走行モードを変更すべく前記クラッチの接続動作が行なわれる際には、前記クラッチの入力側回転数および前記無段変速機構の変速比を一定に維持させた状態で、前記クラッチの差回転を検出し、この差回転が減少した時点を、前記クラッチのトルク点とする学習制御が実行されるように構成されていることを特徴とする、車両用変速装置。
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