実施の形態.
図1は、この発明の実施の形態における空気調和機100の構成を模式的に示す構成図であり、冷凍サイクルの冷媒回路も合わせて図示している。ここで、図1を含め、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、以下に記載する実施の形態の全文において共通することとする。そして、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、明細書に記載された形態に限定するものではない。
この空気調和機100は、室内に設置される室内機1と屋外に設置される室外機2とから構成されるセパレート形であり、室内機1と室外機2とは接続配管11a、11bで接続されている。接続配管11aは凝縮工程を通過後の冷媒が流れる液側の接続配管であり、接続配管11bは蒸発工程を通過後の冷媒が流れるガス側の接続配管である。
室外機2には、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機3、冷媒の流れる方向を切換える冷媒流路切換弁4(以降、四方弁4と呼ぶ)、外気と冷媒との熱交換を行う室外熱交換器5、開度が変更可能で、高圧の冷媒を低圧に減圧する電子制御式膨張弁などの減圧装置6(以降、膨張弁6と呼ぶ)が配置されている。室内機1には、室内空気と冷媒との熱交換を行う室内熱交換器7が配置されている。これらを接続配管11a、11bを含む配管で順次接続して冷媒回路、すなわち圧縮機3により冷媒を循環する圧縮式冷凍サイクル(圧縮式ヒートポンプサイクル)を構成している。この発明の空調部は圧縮式冷凍サイクルを備えて構成され、室内機1の吹出口19(後述の図2参照)から吹き出される空気流の温度調整を行う。
この空気調和機100の運転を制御する制御装置が、室内機1と室外機2とにそれぞれ設置され、室内機1には室内側制御装置10a、室外機2には室外側制御装置10bが配置される。それぞれが制御基板を保有し、その基板上に空気調和機100を運転制御するための各種回路が構成されている。室内側制御装置10aと室外側制御装置10bとは室内外連絡ケーブル10cにより接続されている。この室内外連絡ケーブル10cは、接続配管11a、11bとともに束ねられている。
なお、室内側制御装置10aと室外側制御装置10bとは、室内外連絡ケーブル10cを介して互いに情報をやり取りして空気調和機100を制御しているので、ここでは、説明の便宜上、室内側制御装置10aと室外側制御装置10bとを合わせて制御装置10と定義する。
室外機2には、室外熱交換器5の近くに送風機である室外送風ファン8が設置され、室外送風ファン8を回転させることで、室外熱交換器5を通過する空気流を生成する。この室外機2では、室外送風ファン8としてプロペラファンを用いており、室外送風ファン8は、当該室外送風ファン8が生成する空気流において室外熱交換器5の下流側に位置している。
同様に、室内機1の内部には、室内熱交換器7の近くに室内送風ファン9が設置されていて、この室内送風ファン9の回転により室内熱交換器7を通過する空気流を生成する。この室内機1ではクロスフローファンを室内送風ファン9として使用しており、当該室内送風ファン9が生成する空気流において、室内熱交換器7の下流側に位置している。
室内機1には、室内温度センサー12aと人体検知センサー12bとが配置されている。室内温度センサー12aは、当該室内機1が設置される室内の空気温度である室内温度Taを測定し、その情報信号を室内側制御装置10aに送る。人体検知センサー12bは、人体の位置を検出し、その情報信号を室内側制御装置10aに送る。人体検知センサー12bは、室内機1の前面側に室内を臨むように設置されているもので、CCDやCMOSなどのイメージセンサーを用いたカメラか、人体から発生している赤外線を検出する赤外線センサーが用いられる。
室内機1にはさらにリモコン受信部14が設置されている。リモコン受信部14は、この空気調和機100の使用者が、空気調和機100に対して運転入切や運転内容の指示を行うワイヤレスのリモコン13から発信された指示信号を受信し、これを室内側制御装置10aに伝達するものである。
圧縮機3は、起動時等を除き、通常運転時では、例えば10〜130rps程度の範囲で運転回転数を変更可能で、回転数の増加に伴って冷媒回路の冷媒循環量が増加する。圧縮機3の回転数は、室内温度センサー12aの検出に基づく現在の室内温度Taと、使用者がリモコン13を使って指示した設定温度Tsとの温度差ΔTに応じて、室外側制御装置10bが制御している。温度差ΔTが大きいと圧縮機3で高回転で運転し、冷媒循環量を増加させる。
室内送風ファン9の回転数も複数段階に変更(切換え)可能であり、この室内機1では、冷房や暖房の通常運転時に、強風、中風、弱風とその回転数が3段階に切換え可能なタイプである。室内機1の風速設定が自動モードとされている場合では、圧縮機3と同様に、室内送風ファン9の回転数の切換えも、現在の室内温度Taと設定温度Tsとの温度差ΔTに応じて行われる。具体的には、温度差ΔTが大きく、圧縮機3が高回転数で運転されているときには、室内送風ファン9において切換え可能な回転数範囲で最も高い回転数である強風にて室内送風ファン9が回転し、室内熱交換器7を通過する空気流の流量(風量)を最大とする。風速自動モードでは、室内送風ファン9の回転数は概ね圧縮機3の回転数と連動しており、圧縮機3が高回転であれば、室内送風ファン9も高回転となっている。
室内送風ファン9の回転数の切換えは、室内側制御装置10aが制御している。同様に、室外送風ファン8も複数段階に回転数の切換えが可能であり、現在の室内温度Taと設定温度Tsとの温度差ΔTに応じて回転数の切換えが行われる。室外送風ファン8の回転数の切換えは、室外側制御装置10bが制御している。また、四方弁4の冷媒流れ方向の切換えおよび膨張弁6の開度も、室外側制御装置10bが制御している。
室内機1の吹出口19(後述の図2参照)には、調和空気の吹き出す風向を左右方向に変更可能とする左右風向板15(後述の図2参照)と、上下方向に変更可能とする上下風向板16(後述の図2参照)とが設けられている。室内機1の風向設定が自動モードである場合には、左右風向板15と上下風向板16のそれぞれの向き(角度)、すなわち室内への吹き出し気流の風向は、室内側制御装置10aが制御する。左右風向板15および上下風向板16は、この発明の風向調整部を構成する。
冷房運転では、四方弁4が図1の実線で示すような冷媒回路に切換えられ、圧縮機3から吐出された高温高圧のガス冷媒は室外熱交換器5へ流入し、室外熱交換器5が凝縮機として動作する。室外送風ファン8の回転により生成される空気流が室外熱交換器5を通過する際に、冷媒と通過する屋外空気とが熱交換して、冷媒の凝縮熱が屋外空気に付与される。こうして冷媒は、室外熱交換器5で凝縮して低温高圧な液冷媒となり、次に膨張弁6で断熱膨張して低温低圧二相冷媒となる。
続いて室内機1にて、冷媒は室内熱交換器7に流入し、室内熱交換器7が蒸発器として動作する。室内送風ファン9の回転で生じる空気流が室内熱交換器7を通過する際に、冷媒と通過する室内空気とが熱交換して、冷媒が室内空気から蒸発熱を奪って蒸発し、通過する室内空気は冷却される。冷媒は、室内熱交換器7にて蒸発して低温低圧な冷媒となり、圧縮機3で再び高温高圧な冷媒に圧縮される。冷房運転ではこのサイクルが繰り返される。
四方弁4を点線で示すような回路に切換えれば、冷媒は冷房運転時と逆方向に流れ、室内熱交換器7を凝縮機、室外熱交換器5を蒸発器として動作させ、室内熱交換器7を通過する室内空気に凝縮熱を与えて暖め、暖房運転となる。
なお、図1では室内送風ファン9の形態はクロスフローファンとしているが、特にクロスフローファンに限定するものではなく、例えばプロペラファン等の別の形態を採用してもよく、送風機の形態を特に限定するものではない。また、室内送風ファン9の回転数の段階数を強風、中風、弱風の3段階としているが、この段階数も特に3段階に限定するものではない。
図2は、この発明の実施の形態における空気調和機100の室内機1の模式的な縦断面図であり、室内機1本体の左右方向の略中央での縦断面である。
この室内機1は、室内の壁面の天井に近い上部に据付けられる壁掛けタイプのもので、左右方向が長手方向となるような略長方体の筺体20の内部に室内熱交換器7および室内送風ファン9を収納している。筺体20の前面側(正面)には、上下方向に回動して筺体20の前面を開閉可能な正面意匠パネル17が取り付けられている。
図2に示すように、筺体20の上面には、室内送風ファン9の回転で生じる空気流の室内機1への入口となる吸込口18が形成され、筺体20の下部には、その空気流の出口となる吹出口19が形成されている。吹出口19は、室内機1本体の左右方向を長手方向とする細長い形状で形成されている。吸込口18から吹出口19に至る風路の途中に、空気流でいうと上流側に室内熱交換器7、下流側に室内送風ファン9が配置される。室内送風ファン9は、クロスフローファンの回転軸線が室内機1本体の左右方向となるように水平に設置され、その室内送風ファン9の上流側を囲うように、フィンアンドチューブ型の室内熱交換器7が設置される。
そして、吸込口18と室内熱交換器7の間には、エアフィルター21が設置されている。また、図2には図示していないが、室内機1には、室内温度Taを検出する室内温度センサー12aと人体の位置を検出する人体検知センサー12bとが取り付けられている。
以下、空気調和機100の基本的な動作について説明する。リモコン13からの空気調和機100の運転開始指示をリモコン受信部14が受け取ると、制御装置10は、空気調和機100の各種機器の制御を開始し、運転が始まる。室内機1においては、室内送風ファン9が回転を始める。室内送風ファン9の回転により、筺体20上面の吸込口18から室内機1本体(筺体20)の内部に吸い込まれ、筺体20下部の吹出口19から吹き出される室内空気の空気流が生成される。また、室外機2にて圧縮機3も運転を開始し、冷媒回路に冷媒が循環して冷凍サイクルが稼働状態になる。同時に室外送風ファン8も回転を始める。
室内機1において、吸込口18から吸い込まれた室内空気は、まずエアフィルター21を通過するが、その時に、吸い込み空気中に含まれている塵埃等がエアフィルター21で除去される。そして塵埃等が除去された空気は、エアフィルター21の下流側に位置する室内熱交換器7を通過する際に、室内熱交換器7内を流れる冷媒と熱交換する。冷房運転であれば、室内熱交換器7が蒸発器として作用し、室内熱交換器7を通過する室内空気は冷媒に蒸発熱を奪われることで冷やされる。一方、暖房運転であれば、室内熱交換器7が凝縮機として作用し、室内熱交換器7を通過する室内空気は冷媒から凝縮熱を付与されることで暖められる。
室内熱交換器7で冷媒と熱交換した室内空気は温度が調整された調和空気となり、調和空気は、室内送風ファン9の送風作用によりクロスフローファンである室内送風ファン9を横断して、吹出口19へと導かれる。室内送風ファン9から吹出口19に至る風路の途中には左右風向板15が設置され、また、吹出口19には上下風向板16が設置されており、調和空気は、左右風向板15によって左右方向の風向、上下風向板16によって上下方向(天井−床方向)の風向が調整されて、吹出口19から吹き出される。
空気調和機100の運転中は、リモコン13からの使用者の運転内容の指示に基づき、制御装置10が室内機1および室外機2の各種機器を制御している。制御装置10は、例えば室内温度センサー12aが検出(測定)する現在の室内温度Taが、使用者がリモコン13を使って指示する設定温度Tsに早く到達させるように圧縮機3の回転数、膨張弁6の開度、室外送風ファン8の回転数、室内送風ファン9の回転数などを制御する。そして、現在の室内温度Taが設定温度Tsに到達したならば、制御装置10は、その温度の状態が維持されるように、圧縮機3の回転数、膨張弁6の開度、室外送風ファン8の回転数、室内送風ファン9の回転数などを制御する。また、制御装置10は、四方弁4の切換えにより、冷房運転、暖房運転等の各運転モードの運転を行う。
また、制御装置10は、空調空間を室内全体として空調(冷房運転または暖房運転)を行う通常モードと、快適エリアモードとを有している。快適エリアモードは、空調空間である室内空間を分割した複数の空調エリアの中から、使用者が所望の空調エリアを設定するとともに設定温度Tsとは別に設定エリアに対して空調温度を設定し、使用者が設定エリアに存在する場合に、室内温度Taが空調温度となるように空調(冷房運転または暖房運転)を行うモードである。なお、快適エリアモードにおける温度指定は、直接、空調温度を指定してもよいし、設定温度Tsに対する差分量(以下、空調温度調節量)(例えば、+1℃、−1℃)等で指定してもよい。以下では、空調温度調節量を指定するものとして説明する。
図3は、この発明の実施の形態における空気調和機100の制御装置10を中心とする構成ブロック図である。制御装置10には、マイクロコンピューター22(以下、マイコン22と呼ぶ)を有し、マイコン22には、入力回路23、演算回路24、出力回路25が組み込まれている。
入力回路23は、リモコン13からの運転入切、運転モード、設定温度Ts、風量(風速)および風向の設定(自動モードを含む)を指示する信号を受け取って、これらを演算回路24へ提供する。入力回路23はさらに、快適エリアモードの設定状態などの指示信号、室内温度センサー12aからの現在の室内温度Taの検出信号、人体検知センサー12bの人体検出信号を受け取って、これらを演算回路24へ提供する。リモコン13の指示信号は実際には、室内機1本体側のリモコン受信部14が中継ぎして入力回路23へ入力される。
演算回路24は、各種の制御設定値(予め設定されている閾値、条件値、定数)およびプログラムが記憶されているメモリ26と、演算処理や判断処理が行われるCPU27と、を備える。演算回路24は、入力回路23から提供された情報を用いて、メモリ26とCPU27とが協働して、演算、判断処理の最終結果を出力回路25へ提供する。出力回路25は受け取った最終結果に従って各種機器に制御信号を出力する。例えば、圧縮機3および室内送風ファン9に回転数の制御信号を出力したり、左右風向板15および上下風向板16のそれぞれの駆動手段に回動角度の信号を出力したりする。
前述のとおり、この空気調和機100は、室内機1と室外機2とにそれぞれ室内側制御装置10a、室外側制御装置10bを備えているが、これらは室内外連絡ケーブル10cを介して相互に情報をやり取りし、室内機1、室外機2のそれぞれが有する各種機器を運転制御している。このため、ここでは、便宜上、室内側制御装置10aと室外側制御装置10bとを合わせて制御装置10とみなしている。実際には、室内側制御装置10aと室外側制御装置10bとのそれぞれがマイコン22を有し、例えばメモリ26が記憶している制御設定値等は異なっている。なお、室内機1か室外機2のどちらか一方にのみ制御装置10を搭載し、その制御装置10が室内機1、室外機2のそれぞれが有する各種機器の運転を制御するようにしてもよい。
図4は、この発明の実施の形態における空気調和機100の制御ブロック図である。
演算回路24内に図示される各構成要素は、実際に図のようにそれぞれ独立して存在しているわけではなく、説明のために制御内容を機能的に区分けしたものであり、それぞれが演算回路24の保有する一連の制御プログラムに組み込まれているものである。
リモコン13からの指示信号を室内機1本体の前面側に設置されているリモコン受信部14が受信し、その信号がマイコン22の入力回路23を経て、演算回路24内でまず受信内容解析部28に伝わり、ここで指示内容が解析される。解析された情報のうち、設定温度Tsが温度差算出部31に伝えられる。設定温度Tsは、ここでは使用者が希望する室内温度であり、使用者がリモコン13にて、例えば28℃というように摂氏温度で設定できる。また、快適エリアモードの設定状態も受信内容解析部28にて解析され、快適エリアモードにおける設定エリアと空調温度調節量とが判明する。
一方、室内機1本体に取り付けられた室内温度センサー12aの検出信号は、入力回路23を経て、演算回路24内でまず室内温度換算部29に伝わり、ここで電気信号から温度データに変換され、現在の室内温度データとなる。そして、この現在の室内温度Taが温度差算出部31に伝えられる。
また、同じく室内機1本体に取り付けられた人体検知センサー12bの検出信号も、入力回路23を経て、演算回路24内でまず人体検出判断部30に伝わり、ここで人体の検出状況や、検出位置が解析され、その結果が快適エリア制御判断部32に伝えられる。
快適エリア制御判断部32は、人体検出判断部30から届いた人体の検出情報から、室内のどのエリアに人体が検出されたかを認識する。そして、快適エリア制御判断部32は、人体が検出されたエリアの位置が、受信内容解析部28が解析した快適エリアモードの設定エリアの位置と一致しているか否かを判断する。
快適エリア制御判断部32は、人体が検出されたエリアの位置と快適エリアモードの設定エリアの位置とが一致していると判断した場合には、温度差算出部31へ空調温度調節量を伝達する。この際の空調温度調節量は、受信内容解析部28で解析された快適エリアモードの設定温度調節量である。
また、快適エリア制御判断部32は、人体が検出されたエリアの位置と快適エリアモードの設定エリアの位置とが一致していないと判断した場合には、温度差算出部31へ空調温度調節量は0(調節なし)と伝達するように動作する。なお、人体検出判断部30から届いた情報では人体が検出されていない場合および運転モードが快適エリアモードに設定されていない場合も同様に、快適エリア制御判断部32は温度差算出部31へ空調温度調節量は0(調節なし)と伝達するように動作する。
一方、温度差算出部31では、室内温度換算部29から届いた現在の室内温度Taと受信内容解析部28から届いた設定温度Tsとの温度差ΔTが算出される。受信内容解析部28が解析した運転モードの情報が冷房運転であれば、温度差ΔT=Ta−Tsにて算出される。そして、温度差算出部31で算出された温度差ΔTは、快適エリア制御判断部32から伝達された空調温度調節量分だけ、算出した温度差ΔTに補正を加えるようにデータ処理を行う。このようにしてデータ処理された温度差ΔTが圧縮機3の運転を制御する圧縮機制御部33に伝達される。
圧縮機制御部33では、温度差算出部31からの温度差ΔTに応じて圧縮機3の回転数を制御する。冷房運転において、ΔT>0であれば圧縮機3を起動し、圧縮機3の回転数を予め定められたスピードで段階的に上昇させていく。ΔTの大きさに応じて最大で圧縮機3を許容最大回転数(ここでは130rps)まで上昇させ、冷凍サイクルの冷媒循環量を増して冷房能力を高める。冷房効果により、室内温度が低下し始めると、すなわち温度差ΔT(>0)が減少傾向を示すようになると、圧縮機制御部33は、ΔTの大きさに準ずるように圧縮機3の回転数を減少させていく。ΔTがゼロ近傍(ただしΔT>0)では、許容最小回転数(ここでは10rps)にて圧縮機3を運転する。
そして、温度差算出部31からの温度差ΔTが0以下(ΔT≦0)となると、圧縮機制御部33は、過冷房防止のために圧縮機3の運転を停止し、当該空気調和機100を圧縮機停止状態にする。温度差ΔTが再びΔT>0となれば、圧縮機制御部33は、圧縮機3を再起動させ、温度差ΔTに応じて圧縮機3の回転数を制御する。
図5は、この発明の実施の形態における快適エリアモードの操作設定の画面例をまとめて示す図である。
図5(a)の画面は、リモコン13の液晶画面などの表示部に表示される画面であり、この画面には、このリモコン13で設定できる各種設定内容が項目表示されている。この項目の中から快適エリアモードを指定するための図中Aの「エリア指定」の項目を選択すると、次に図5(b)の画面に遷移する。この画面では快適エリアモードの機能の概要が取り扱い説明書を見なくとも使用者にも分るように簡単なガイダンスが表示されている。この画面で図中Bの「エリア指定」を選択すると、次に図5(c)の画面に遷移する。この画面では室内空間が擬似的にエリア区画割りされた表示がされており、各空調エリアと空気調和機100の室内機1との位置関係が把握できるように空気調和機100の室内機1も図示されている。
使用者はこれら複数の空調エリアの中から所望の空調エリアを任意に指定することができる。例えば図中Cの空調エリアを選択すると、次に図5(d)の画面に遷移し、図5(c)で選択した空調エリアに対して空調温度調節量を選択設定する画面が表示される。すなわち、使用者が図5(c)で選択した空調エリアに存在する場合に、空調温度をどのくらい調節したいかを図5(d)の画面で選択設定する。この例では「+1℃」分、あるいは、「−1℃」分、といった空調温度調節量を選ぶことができる。「標準」は空調温度調節量なし、すなわち空調温度調節量0の意味であり、設定温度Tsから温度変更を行わない設定も選択することができる。
この画面で、例えば図中Dの「+1℃」を選択すると、次に図5(e)の画面に遷移する。この画面は快適エリアモードの全設定内容の最終確認画面であり、図5の例では、図中Eの空調エリアが、使用者の位置に応じた特別な空調制御を行いたい設定エリアとして指定され、そのときの空調温度調節量が+1℃分に指定された、という設定内容を表している。この設定内容で確定であれば、使用者は図中Fの「OK」を選択し、これにより最終的に設定内容が確定される。なお、ここでは、空調温度調節量を画面から選ぶようにしたが、空調温度そのものを画面から選ぶようにしてもよい。
図6は、この発明の実施の形態における空気調和機100における快適エリアモードの制御内容を示すフローチャートである。以下、図6を用いて快適エリアモードにおける制御処理の流れを説明する。なお、ここでは前述の図5に関しての説明のように、リモコン13にて快適エリアモードにおける設定エリアおよび空調温度調節量の設定が既に成されているものとして説明をすすめる。ここでは、冷房運転の例で説明する。
図6において、空気調和機100に対して使用者から冷房運転開始が指令されると、ステップS1で制御装置10、具体的には圧縮機制御部33は、冷房運転を開始する。すなわち、圧縮機制御部33は圧縮機3の運転を開始させる。この際、圧縮機制御部33は、上述したように温度差算出部31から温度差ΔT(ΔT=現在室内温度Ta[℃]−設定温度Ts[℃])を取り込む。そして、圧縮機制御部33は、その温度差ΔTが0より大きいか否かの条件判断を行い、判断結果に応じて圧縮機3の起動および運転停止を制御して室内の温度調節を行う。
次にステップS2では、人体検知センサー12bが室内に人体が存在するかどうかを検出するためのセンシング動作を行い、ステップS3へと処理が流れる。ステップS3では、制御装置10は、ステップS2での検出結果として、人体が検出されたか否かを判定する。制御装置10は、人体が検出された場合にはステップS4へと処理を移行する。
ステップS4では、制御装置10は、運転モードが快適エリアモードに設定されているかどうかを判定する。制御装置10は、運転モードが快適エリアモードに設定されていないと判定した場合には、ステップS2に戻ってこれまでと同様の空調制御(すなわち、室内温度Taが設定温度Tsになるようにする空調制御)を続ける。一方、制御装置10は、運転モードが快適エリアモードに設定されていると判定した場合にはステップS5へと処理を移行する。
ステップS5では、制御装置10は、ステップS3で認識された人体の検出エリアが、リモコン13で設定された快適エリアモードの設定エリアと一致するかどうかを判定する。制御装置10は、人体検出エリアと設定エリアとが一致すると判定した場合には、ステップS6へと処理を移行し、快適エリアモードで設定した空調温度調節量に基づく空調制御を開始する。具体的には、制御装置10は、空調温度調節量に基づいて温度差ΔTを補正し、補正後の温度差ΔTに基づいて圧縮機3の回転数を制御する。
ここで、温度差ΔTの補正について具体例で説明する。現在の室内温度Taが27℃、設定温度Tsが25℃の場合、温度差ΔTは+2℃である。そして、例えば、使用者が設定エリアに居るときには設定エリア外に居るときよりも弱い冷房を求めており、空調温度調節量を+1℃に設定している場合について考える。この場合、制御装置10は、室内温度Taを空調温度調節量に基づいて26℃に補正して、温度差ΔTを計算し直し、温度差ΔTを+1℃に補正する。このように補正することで、吹出口19から吹き出される空気流は、温度差ΔTが+2℃の場合に比べて温度が高い空気流となり、使用者が求める快適な空調を実現できる。なお、ここでは、室内温度Taを空調温度調節量に基づいて26℃に補正したが、設定温度Tsを空調温度調節量に基づいて26℃に補正するようにしてもよい。
以上のステップS6の処理を行った後、制御装置10は再び処理をステップS2へと戻し、以降、同様の処理を繰り返す。
また、ステップS3で人体が検出されなかった場合、また、人体は検出されたが、ステップS5でその人体検出エリアが設定エリアとは一致しなかった場合には、制御装置10は、ステップS7へと処理を移行する。ステップS7では、制御装置10は、現在、空調温度調節量に基づく空調制御を行っているかどうかを判断する。制御装置10は、ステップS7で空調温度調節量に基づく空調制御を行っていると判断した場合、ステップS8で、空調温度調節量に基づく空調制御を解除する。ステップS7でYESとなる場合とは、具体的には例えば快適エリアモードで運転中に使用者が設定エリア内に入り、空調温度調節量に基づく空調制御が開始されて以降、例えば使用者が設定エリアから空調空間の外に移動した場合、また、使用者が設定エリア内から設定エリア外に移動した場合が該当する。この場合、上述したように空調温度調節量に基づく空調制御を解除する。
空調温度調節量に基づく空調制御の解除とは、具体的には、空調温度調節量に基づく温度差ΔTの補正を解除(補正を0にする)し、人体が設定エリアに入る以前の空調制御に戻すことに相当する。すなわち、制御装置10は、空調温度調節量に基づく空調制御が解除されると、室内温度Taが設定温度Tsになるように空調制御を行うことになる。なお、空調温度調節量が「標準」(空調温度調節量0)に設定されていた場合には、ステップS8の解除処理を行っても実質、空調制御は解除処理前と変わらないことになる。一方、制御装置10は、ステップS7で空調温度調節量に基づく空調制御を行っていないと判断した場合には、ステップS8の処理を行わずにステップS2へ戻り、以降同じ処理を繰り返す。
ここで、ステップS5の処理内容についてさらに詳細な説明をする。図示していないが、室内機1の演算回路24の人体検出判断部30は、人体検知センサー12bのセンシング視野角内のエリア(以下、検出エリア)を便宜的に複数の分割検出エリアに区切っている。この実施の形態の場合、人体検出判断部30は、検出エリアを、図5(c)のようなリモコン13に表示されるエリア区画割りと同じエリア区画割り(横3エリア×縦3エリア)に区切っている。また、検出エリアの1つ1つの分割検出エリアは、図5(c)のようなリモコン13に表示されるエリア区画割りの1つ1つの空調エリアと各々対応するように関係づけられている。この対応関係に基づいて、快適エリア制御判断部32は、人体検知センサー12bにより検出された人体が存在するエリアがリモコン13の快適エリアモードで設定された空調エリアと一致するかどうかを判定している。
図7は、この発明の実施の形態における空気調和機の快適エリアモードで設定した設定エリアと空気調和機が認識する人体検出位置との関係について、(a)設定エリアと人体検出位置とが一致する場合と、(b)一致しない場合と、をまとめて示した模式図である。図7は人体検出判断部30が管理しているエリア区画割りを示しており、前述のようにリモコン13の快適エリアモードの設定画面(図5(c))における区画割りと各々対応付けられている。この例では図5(e)において「E」の空調エリアが快適エリアモードで設定した設定エリアとしており、これに相当する空調エリアは人体検出判断部30が認識しているエリア区画割り上では、図7(a)の「A」の空調エリアに相当していることを示している(図7で塗りつぶしたエリア)。図7(a)では人体検知センサー12bが検出した人体の位置がこの「A」の空調エリアと一致している状態を示している。
ステップS5ではこのようにしてリモコン13で設定した快適エリアモードの設定エリアと、検出した実際の人体検出エリアとが一致しているかどうかを快適エリア制御判断部32が処理判断している。図7(a)のようにこれらが一致している状況のときには、ステップS6で快適エリアモードで設定した空調温度調節量分だけ空調温度が調節されることになる。一方、図7(b)に示すように、リモコン13で設定した快適エリアモードの設定エリア「A」と、検出した実際の人体検出エリア「B」とが一致しない状況のときには、運転モードが快適エリアモードに設定されていても、快適エリアモードで設定した空調温度調節量分の空調温度の調節が行われることはない。
以上のように、本実施の形態では、使用者が所望の空調エリア(設定エリア)に居る場合においてのみ、特別な空調温度の調節を行いたい場合に、快適エリアモードを用いて設定エリアと空調温度調節量とを使用者の所望により選択して設定することができるようにした。さらに、設定エリアに実際に人体が検出されたときにのみ、この空調温度調節量が適用されるように構成した。このため、確実に使用者が必要とする状況においてのみ、使用者が所望する分だけ空調温度調節が行われる。
すなわち、室内居住域全体の中で、使用者がリモコン13で設定を都度変更することなく、自分で指定した設定エリアに移動するだけで、自分の所望した分だけ空調温度の調節が自動的に行われる。逆に自分で設定した設定エリアから外に移動するだけで、元の空調温度(設定温度Ts)に戻ることが自動的に行われる。このため、使用者の快適性と利便性とが大幅に向上する。また、設定エリアに使用者が居ない場合には不必要な空調温度調節をすることもないため、無駄なエネルギーを消費することがなく、省エネ性に優れた空気調和機100を得ることができる。
なお、図5のリモコン13による快適エリアモードの設定において、前述までの説明では設定エリアを1つだけ設定する例を説明したが、使用者が設定できる設定エリアは1つに限定するものではなく複数設定できるようにしてもよい。そして、複数設定した各設定エリアに対して個別の空調温度調節量を設定できるようにしてもよい。また、使用者毎に、個別に1または複数の設定エリアおよび空調温度調節量(空調温度)を指定できるようにしてもよい。これらの設定内容は制御装置10に記憶される。
例えば冬季に暖房を行うような場合において、窓際のエリアと、例えばキッチンに相当するエリアとをそれぞれ快適エリアモードの設定エリアに設定する。窓際は外気からの輻射の影響を強く受けるため、窓際の設定エリアにおける空調温度調節量を+1℃に設定する。また、キッチンにおいては料理中に火を扱うので暖かく感じるため、キッチンにおける空調温度調節量を−1℃に設定する。このように設定することで、使用者が窓際から離れたリビングで寛いでいるときには標準の空調温度(設定温度Ts)で空気調和機100が運転している。そして、使用者が窓際に移動すると、自動的に空調温度が+1℃分調節され、リビングにいたときよりも1℃分だけ暖めるように空気調和機100が自動的に暖房運転が強められるので、使用者の快適性が悪化することを抑制することができる。
また、使用者が窓側から離れてキッチンに移動すると、窓際に居たときの+1℃分の空調温度調節は自動的に解除され、空調温度が−1℃分の調節が自動的に行われる。これにより、リビングにいたときよりも1℃分だけ空気調和機100が自動的に暖房運転を弱めるように動作することになるため、快適性を同等に保ったまま省エネルギー化を図ることができる。このようにすることでさらに使用者の利便性や快適性、また省エネ性が高まるという効果を得ることができる。
逆に、快適エリアモードにおいてリモコン13で複数の設定エリアを設定できるようにしてしまうと、操作性の観点から使用者に理解されにくくなるという懸念が生じる可能性もある。このため、このような懸念がある場合には、設定エリアを1つだけに限定するようにしてもよい。このようにすることで快適エリアモードを使用する際に、使用者が操作に戸惑う懸念が払拭され、操作性が向上するという効果が得られる。
なお、使用者が設定エリアに存在する場合の吹出口19からの空気流の方向については前述までの説明で特に明記していないが、以下のように構成できる。例えば、空調空間全体に空気流が流れるようにしてもよいし、左右風向板15および上下風向板16を制御し、設定エリアに向けて空気流が流れるようにしてもよい。
また、リモコン13の操作部については前述までの説明で特に明記していないが、以下のように構成すればよい。例えば、画面外に物理的な選択ボタン(例えば、画面内の選択位置を上下左右に移動させるボタン、項目を決定するボタン等)が配置されたような操作部とすればよい。その他、画面を直接タッチするだけで直接操作が可能なタッチパネル操作式の操作部としてもよい。リモコン13に表示された各設定項目を選択する際には、このような操作部から選択ボタンを操作するか、画面をタッチすることで選択することが可能である。
タッチパネル操作式の操作部を用いた場合には、特に、図5(a)および図5(c)の画面のように一画面内に多数の選択項目がある中から選択させる場合、および、図5(c)の画面において使用者が直感的に所望のエリアを選択できるようにする状況において、操作性が飛躍的に向上するという効果が得られる。
また、前述までの説明では特に明記していないが、リモコン13は、快適エリアモードの設定情報(設定エリア、空調温度(空調温度調節量))を、暖房運転時用と冷房運転時用とで各々別々に不揮発性メモリ(記憶手段)に記憶するように構成していてもよい。このように暖房運転時用と冷房運転時用とで別々に設定情報を設定した場合、制御装置10は、快適エリアモード時に該当の設定情報を読み出して制御を行う。これにより、使用者が快適エリアモードの際に冷房運転時と暖房運転時とで別々の動作を行わせたい場合に、運転モードを冷房運転または暖房運転に切換える度毎にいちいち設定し直さなければならないという手間を省くことができ、利便性がさらに高まるという効果が得られる。なお、快適エリアモードの設定情報を記憶する記憶手段は、リモコン13の不揮発性メモリに限られたものではなく、制御装置10の不揮発性メモリとしてもよい。
また、前述までの説明ではリモコン13で設定する快適エリアモードのエリア区画割りと、人体検出判断部30が認識するエリア区画割りとにおいて、両者のエリア区画数を同一とし、個々のエリアの対応関係を1対1として扱ってきた。しかし、この発明はエリア区画割りに関し、この扱いに限るものではなく、リモコン13側のエリア区画数を人体検出判断部30が認識するエリア区画数よりも少なくなるように構成してもよい。このようにすることでリモコン13で快適エリアモードのエリアを設定する際に、そのエリアの区画数が多すぎると実際の室内とリモコン13で設定するエリアとの位置関係が把握しにくくなり、操作性が悪化するということを抑制する効果を得ることができる。
ただし、両者のエリア区画数を異ならせる場合、リモコン13側で設定するエリアと、人体検出判断部30が認識するエリアとの対応付けの際に、漏れが生じないように注意が必要がある。例えば、人体検出判断部30が認識するエリア区画割りが横6×縦4=24エリアであったとして、リモコン13側が横3×縦2=6エリアであった場合には、人体検出判断部30側も横3×縦2となるようにエリアの割り当てを変更する。
つまり人体検出判断部30が認識する24個のエリアにおいて、各エリアの横2×縦2=4エリアを1組として考えると、同じ組が横3組×縦2組=合計6組できることになる。この1組1組をリモコン13側の1個1個のエリアに相当するように割り当てることで両者の対応関係もれなく形成することができる。このような対応関係を構成しておくことで、リモコン13で設定したエリアと、人体検出判断部30が認識するエリアとの間で齟齬が生じることがなく、快適エリア制御判断部32でエリア一致と不一致との判定を適切に行うことができるようになる。