以下、本発明の側突用エアバッグ装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、実施形態において、前後・左右・上下の方向は、特に断らない限り、車両の前進方向時における前後方向、車幅方向における左右・天井面が上方で床面が下方とするものである。なお、実施形態は後述の通り、第1実施形態と第2実施形態とがあるが、この両者は、収納用形態は同一の態様であり、第1折り部11C、11C’及び第2折り部11D、11D’の折り畳み工程が異なるのみである。従って、両実施形態については、図1〜図5は同じ図面を用いて説明を行い、第1折り部11C、11C’及び第2折り部11D、11D’についてのみ異なる図面(第1実施形態が図6、第2実施形態が図7)を用いて説明を行う。
第1実施形態の側突用エアバッグ装置10は、図1および図2に示すように車両用シート100に着座した乗員200の側方部で、車両側壁部120との間で展開膨張する。図1に示されるように、車両用シート100の座部101には、図示しないヒンジを介して背もたれ103が取り付けられ、背もたれ103の側方部のサイドサポート部104には、図1に破線で示されるように、本実施形態に係る側突用エアバッグ装置10が収納されている(図3を参照)。
図1の下方に示されるように、車両Vには、その側方部分(例えば、図示しないサイドピラー部等)に配置された衝撃センサ131が配置されている。衝撃センサ131は、加速度センサからなり、側面衝突等による車両Vの側方(車両用シート100の側方)からの衝撃を検知する。制御装置130は、車室内に配置され、衝撃センサ131から出力された検出信号に基づき、側突用エアバッグ装置10に対し、エアバッグ11を展開膨張させるための制御信号を出力する。
図3に示されるように、側突用エアバッグ装置10は、後述のように、エアバッグ11が折り畳まれた状態である収納用形態で、サイドサポート部104の収納部105内に収納されており、制御装置130から制御指令が出力されると、それに基づいてエアバッグ11が図1及び図2に二点鎖線で示されるように展開膨張されるようになっている。なお、図2にあっては、図面の右側が車両前方になっており、図面の上側が車室中央側になっている。また、車両Vには、車両用シート100に着座した乗員200を拘束するシートベルト装置が装備されているが、図1及び図2ではこのシートベルト装置の図示が省略されている。
図2に破線示されるように、側突用エアバッグ装置10はシート100の背もたれ部103の車両側壁部120側の部分であるサイドサポート部104内(図3参照)の収納部105に収納されている。これにより、衝撃センサ130によって車両側方からの衝撃が検知されると、エアバッグ11は二点差線で示されるように、乗員200と車両側壁部120との狭い空間に入り込むように展開膨張し、乗員200と車両側壁部120との間に介在して側方からの衝撃を緩和、吸収して乗員200を保護する。
次に、図3を参照して、側突用エアバッグ装置10の構成と、側突用エアバッグ装置10が収納されている背もたれ部103の構造について説明する。なお、図3にあっては図面の上側が車両前方に、図面の下側が車両後方になっており、図面の左側が車室内(車両中央)側に、図面の右側が車外(車両側壁部120)側になっている。
図3に示されるように、背もたれ部103の車両側壁部120側のサイドサポート部104内には、同背もたれ部103の骨格をなすフレーム106が配置されている。フレーム106は金属板を曲げ加工などすることによって形成されており、背もたれ部103(サイドサポート部104)におけるフレーム106の周囲、即ち、乗員200がもたれかかる部分にはウレタンフォーム等の弾性材からなるパッド107が充填されている。なお、パッド107はシート表皮によって被覆されているが図3ではシート表皮の図示を省略している。一方で、背もたれ部103における車両V後方側の部分から、サイドサポート部104の車両側壁部120側の側面後方部にかけては、合成樹脂等によって形成された硬質の背板108で覆われている。
図3の中央に示されるように、サイドサポート部104内には空間が設けられており、この空間内は、側突用エアバッグ装置10が収納されている収納部105とされている。パッド107には、この空間(収納部105)の前方部の端部からサイドサポート部104の先端部分に向かって延びるスリット109が設けられている。これにより、このスリット109とサイドサポート部104の先端部とによって挟まれた部分(図3において二点差線で囲まれた部分X)は、エアバッグ11が展開膨張する際に破断されるようになっている。ここで、このスリット109と部分Xとは、エアバッグ11が展開膨張する際の開口予定部110を形成する。実施形態で、この開口予定部110は、スリット109と部分Xとで構成したが、これに限らず、例えば、部分Xを設けずに、スリット109が、収納部105の空間の端部からパッド107の先端部まで設けられている態様や、スリット109を設けずに、スリット109と部分Xの部分を、エアバッグ11の展開膨張時に破断する脆弱部として、設けることもできる。
側突用エアバッグ装置10は、折り畳まれたエアバッグ11と制御装置130が制御信号を出力した際に、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレータ14とを備えている。インフレータ14は、エアバッグ11を展開膨張させるための膨張用ガスを噴出する膨張用流体発生源とされており、図3に示されるようにリテーナ15に収容された状態で収納用形態とされたエアバッグ11の内側に配置されている。そして、インフレータ14は、図4に示されるように、エアバッグ11の一端部12側の内側に配置されている。
実施形態では、インフレータ14として、ハイブリッドタイプと呼ばれるタイプのものが採用されている。インフレータ14は、略円柱状をなしており、その内部には、エアバッグ11を膨張させる膨張用流体としての膨張用ガスを発生させる高圧ガスとガス発生剤(図示略)が収容されている。インフレータ14の長さ方向についての一方の端部(図4の上方側)には、同インフレータ14への制御信号の入力配線となるハーネス(図示略)が接続されている。
なお、インフレータ14としては、上記の高圧ガスとガス発生剤を用いたハイブリッドタイプに代えて、高圧ガスを用いないでガス発生剤だけが封入されたパイロタイプが用いられてもよい。
図3に示された通り、インフレータ14は、リテーナ15内に収容されている。このリテーナ15は、膨張用ガスの噴出方向を制御するディフューザとして機能するとともに、上記インフレータ14をエアバッグ11とともにフレーム106に締結する保持部材として機能する。リテーナ15は、金属板などの板材を曲げ加工することによって略筒状に形成されている。リテーナ15には、図示しない窓部が設けられており、インフレータ14から噴出された膨張用ガスは、この窓部を通じてエアバッグ11の内部に供給される。
リテーナ15には、これをフレーム106に固定するためのボルト16が複数(本実施形態にあっては2つ)設けられている。側突用エアバッグ装置10は、図3の中央に示されるように、このボルト16をフレーム106に挿通させた状態ナット17を螺合させることにより、サイドサポート部104で固定される。こうしてサイドサポート部104内の収納部105に収納された側突用エアバッグ装置10は、エアバッグ11内のインフレータ14を収容した部分である一端部12側から他端部13側に向けた部位を折り畳んで、図3に示すように、収納部105内でコンパクトな収納用形態とされている。
次に、図4を参照してエアバッグ11の構成を説明する。なお、図4は、エアバッグ11が膨張しておらず、かつ折り畳まれていない平面状の展開状態を示し、図4の左側即ち、インフレータ14が内側に配置されて膨張用ガスが供給される上流側が一端部12とされ、右側で膨張用ガスの下流側となる部位が他端部13側とされている。
エアバッグ11は、線対称な形状に形成された一枚の基布11Aをその中央に設定した折り線によって二つ折りにして重ね合わせ、図4に二重の破線S1で示されるようにその周縁部を縫合することで袋状に形成されている。なお、エアバッグ11では、図4に示されるように、図示の左端である一端部12側の部分で基布11Aが折り返されている。なお、基布11Aとしては強度が高く、且つ可撓性を有して容易に折り畳むことのできる素材、例えば、ポリエステル糸、ポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。
エアバッグ11の図4の左方の上端に近い部分、即ち、一端部12側の上下方向の上端より若干下方の部分は、インフレータ14を挿入するための開口になっており、この部分からインフレータ14がエアバッグ11の内側に挿入されている。なお、インフレータ14の挿入に当たっては、リテーナ15を予めエアバッグ11内部に載置しておき、リテーナ15の略筒状部分にインフレータ14を挿通した後、筒状部分の内径を小径とするようかしめてインフレータ14を保持可能としている。さらに、エアバッグ11には、インフレータ14が挿入された部位に隣接して、上下方向に2個の貫通孔(図示せず)が設けられており、この貫通孔には、インフレータ14をフレーム106に固定するためのボルト16が挿通されている。
なお、実施形態では、前述の通り、エアバッグ11において、インフレータ14が内側に配置されて膨張用ガスが供給される膨張用ガスの上流側の部位が、一端部12側を構成し、上流側である一端部12側から膨張用ガスが流動する下流側が、他端部13を構成している。なお、エアバッグ11が、展開膨張を完了した状態では、図1及び図2から明らかなように、エアバッグ11の一端部12側が車両後方側となり、他端部13側が車両前方側とされている。
次に、図5〜図6を参照して、第1実施形態の側突用エアバッグ装置10を、収納用形態とするための折り畳み工程について説明する。なお、図5にあっては、図面上方が一端部12側に、図面下方が他端部13側となっており、図面の右方が車両V上方に、図面左方が車両V下側として示されている。また、エアバッグ11の展開膨張の完了状態で、図4における紙面手前方向が車外側(即ち、車両側壁部120側)になっており、紙面の奥側が車内側として示されている。
図5Aに示されるように、まず、膨張しておらず、かつ折り畳まれていない展開状態である平面状のエアバッグ11について、図5Bに示されるように、インフレータ14が配置された一端部12よりも前方側部分11B(即ち、他端部13側の部分)を他端部13から一端部12側に向けてインフレータ14の近傍まで蛇腹状に折り畳む。ここでの蛇腹折りは、エアバッグ11を、一定幅ずつ順に折り畳むという、エアバッグ11の折り態様の一つである。この蛇腹折りに際しては、図5Bに示されるようにエアバッグ11に対し略上下方向(図示で左右方向)へ直線状に延びる複数本の折り線(山折り線18、谷折り線19)が設定される。これらの山折り線18及び谷折り線19の設定により、この前方側部分11Bの折り畳みによって、第1折り部11Cが形成される。山折り線18及び谷折り線19の間隔は、蛇腹折りにおける折り幅Hとなる。こうして、蛇腹折りの工程が完了したエアバッグ11は、折り幅Hを他端部13から一端部12への幅として、図5Cに示されるように、上下方向に縦長の中間状態とされる。
なお、実施形態での折り畳み工程では、エアバッグ11の第1折り部11Cを、山折り部18及び谷折り部19からなる蛇腹折りとしたが、エアバッグ11の前方側部分11Bを、前方側から後方側に向けてインフレータ14近傍までを、折り幅Hで渦巻状に折り畳むロール折りとすることもできる。
次いで、図6を参照して、第1実施形態における側突用エアバッグ装置10の次の折り工程を説明する。図6にあっては、図3における、収納部105への収納状態とされた側突用エアバッグ装置10の配置方向を基準として示されている。即ち、図面の上方を他端部13(即ち、車両側壁120側となる車外側)とし、図面の下方を車内側として示し、図面の右方が車両V上方、図面の左方が車両V下方として示され、紙面手前側が車両V前方方向、紙面奥側が車両V後方方向として示されている。なお、この状態では、ボルト16は、図3の収納部105での取り付け状態となるように、車内側に向くように、配置されている。
図6Aおよび図6Bに示されるように、縦長となった第1折り部11Cの折り畳みが完了した中間形態のエアバッグ11において、エアバッグ11のインフレータ14の下方部分11Eについて、図6Aの曲線状矢印で示されるように、インフレータ14の配置位置の下端より若干下方部を起点として、第1折り部11Cの折り方向についての他端部13側の方向にほぼ180度折り返して第11折り返し部11Hを形成する。この状態では、下方部分11Eの下端は、図6Bに示されるように、図面の右方(車両Vの上方側)に向けられて配置されるとともに、第11折り返し部11Hは、折り返されていない第1折り部11Cの上方部分の他端部13側に近接するか或いは当接して配置されている。
次に、図6Bで曲線状矢印に示されるように、第11折り返し部11Hの車両Vの上下方向(図面の方向)のほぼ中央より若干下方を折りの起点とし、上述の通り、上方を向いたエアバッグ11の下端が車両Vの下方を向くように、ほぼ180度折り返し、図6Cに示されるように、第12折り返し部11Jを形成した後、図6Cの曲線状矢印で示されるように、この下端が、折り返されていない第1折り部11Cの上方部分の一端部12側において、第11折り返し部11Hと対向するようにほぼ180度折り返して第13折り返し部11Kを形成する。この状態では、第13折り返し部11Kは、折り返されていない第1折り部11Cの上方部分の一端部12側に近接するか或いは当接して配置されている。ここで、第12折り返し部11Jと第13折り返し部11Kとの折り工程は、連続した折り工程である。
ここで、図6C及び図6Dに示されるように、第11折り返し部11Hと第12折り返し部11J及び第13折り返し部11Kとが、第2折り部11Dを形成している。そして、第2折り部11Dは、折り返されていない第1折り部11Cの上方部分を、一端側12及び他端側13の両方側から挟みこむように形成される。即ち、第2折り部11Dは、第1折り部11Cの上方部分の一端側12に配置される一端部側折り重ね部11Gとしての第13折り返し部11Kと、第1折り部11Cの上方部分の他端側13に配置される他端側折り重ね部11Fとしての第11折り返し部11Hと第12折り返し部11Jと、から構成されている。
こうして、折り畳まれたエアバッグ11は、図6C及び図6Dに示されるように、エアバッグ11において、一端部12側の内側にインフレータ14が配置された、第1折り部11Cの上方部分について、第1折り部11Cの下方部分を折り返して形成された、他端部側折り重ね部11Fと一端部側折り重ね部11Gが、第1折り部11Cの上方部分を挟み込むように形成されて収納用形態とされている。
以上の折り畳み工程によれば、他端部側折り重ね部11Fは、折り重ね層数が2層に重ね合わされており、一端部側折り重ね部11Gは、折り重ね層数が1層のみとされている。実施形態では、下方部分11Eを、図6で示されるように、車外側(他端部側13)に向けて先にほぼ180度の角度で折って第11折り返し部11Hを形成し、その後、車内側(一端部12側)に向けて360度の角度で再度折り返すことによって第12折り返し部11J及び第13折り返し部11Kを形成しているので、上記の形態となるが、この下方部分11Eの折りの方向で、車外内側を逆転させて、先に、車内側(一端部12側)に向けてほぼ180度折り返し、次いで、360度折り返してもよい。この態様では、上述の態様とは異なり、他端部側折り重ね部11Fの層数が1層のみとなる一方で、一端部側折り重ね部11Gの層数は2層となる。また、第1折り部11Cが形成されたエアバッグ11の縦方向の寸法が特に大きい場合は、この折り返しを繰り返し行って、各折り重ね部の層数を増やすことによって、収納用形態を上下方向に短くしたよりコンパクトにすることができる。
この他端部側折り重ね部11Fと一端部側折り重ね部11Gとは、上記の通りの工程で折り畳むため、重ね合わせ部の層の数は、いずれか一方が他方より1層多く折り重ねられることとなるが、エアバッグ11が下方へ向けて円滑に展開するためには、折り重ねの層の数は少ない方が好ましく、いずれか一方が1層のみで、他を2層とすることが好ましい。さらに、図3に示されるとおり、エアバッグ11の収納部105内への収納用形態では、第1折り部11Cと他端部側折り重ね部11F及びおよび一端部側折り重ね部11Gが、車幅方向に沿って並列に配設されることになるが、サイドサポート部104では、乗員200を適切にサポートするために、パッド107の厚みを極力大きくすることが好ましく、他端部側折り重ね部11Fと一端部側折り重ね部11Gとの層数を多くすることは好ましくなく、上述のとおり、いずれかが1層で、他方を2層とすることが望ましい。
さらに、実施形態の側突用エアバッグ装置10においては、図6Dに示されるように、収納用形態を維持するために、結束テープ30を外周面の要所に巻き回してエアバッグ11が保持されている。結束テープ30は、巻き回す裏面側に粘着剤が塗布された粘着テープであって、エアバッグ11の展開膨張によって破断させられることによってエアバッグ11が展開膨張することとなる。実施形態では、結束テープ30は、収納用形態とされたエアバッグ11において、他端部側折り重ね部11Fと一端部側折り重ね部11Gと第1折り部11Cとが、この順で車内側から車外側に配列された状態で、これらの外周面と、インフレータ14のボルト16下方部分が内側に存在する一端部12の外周とともに一体的に巻き回されている。こうして、折り畳まれたエアバッグ11が収納用形態に保持されている。
なお、上述の通り、エアバッグの基布11Aは、ポリエステル糸、ポリアミド糸等を用いて形成されており、折り畳むために可撓性を有しているので、折り畳まれた収納用状態においても、自身の折り畳まれた形状を保持するための十分な高い剛性を有しておらず、結束テープ30等の結束手段で保持しない状態では、容易に変形しやすくなるばかりでなく、第2折り部11Dが形成されたエアバッグ11の下方部分では、下方に向けて折り解けやすくなることとなる。実施形態においては、車外側から車内側に向けて、他端側折り重ね部11F、第1折り部11C、一端側折り重ね部11Gと、が、この順で配設された部位について、これらが、内側にインフレータ14が配置された一端部12側とともに結束テープ30で一体的に保持されている。インフレータ14は、上述の通り、高圧ガスを封入するために金属で形成された筒状部を有していて、剛性を備えているので、この部位においても、剛性を高くすることができ、安定的に収納用形態で保持することができる。
次に、本発明の第2実施形態について、図5及び図7を用いて説明する。第2実施形態は、上述の通り、第1実施形態とは、収納用形態とされたエアバッグ11’は同様であり、その収納状態も、図3に示されるように、収納部105内にエアバッグ11’が折り畳まれて収納用形態とされた側突用エアバッグ装置10’が、ボルト16’とナット17’によって、フレーム106に固定されている。従って、第2実施形態は、図7に示される折り畳み工程が異なるのみであるため、主に、この異なる点についてのみ説明する。
図5に示されるように、エアバッグ11’は、第1実施形態と同様に、他端部13’から一端部12’側に向けて、前方側部分11B’が、山折り線18’と谷折り線19’とで蛇腹状に折り畳まれて、第1折り部11C’が形成された縦長な中間形態とされる。
次いで、中間形態とされたエアバッグ11’は、図7Aに示されるように、下方部分11E’について、ボルト16’の配置位置と下方部分11E’の下端とのほぼ中間点を起点として、図7Aの曲線状矢印で示されるように、下端を一端部12’側へほぼ180度折り返して、図7Bに示されるように第21折り返し部21Lを形成する。この状態では、第21折り返し部21Lは、第1折り部11C’の一端部12’側に折り重ねられて、当接するか或いは近接して配置されている。また、下方部分11E’の下端が、ボルト14’に近接した下方で上方を向けて配置されている。
次に、図7Bの曲線状矢印で示されるように、折り重ねられた下方部分11E’と第21折り返し部21Lとを、ボルト16’の下端から第21折り返し部21Lとのほぼ中間点を折りの起点として、一端部12’側へほぼ180度折り返して、図7Cに示されるように、第22折り返し部21Mを形成する。なお、第2実施形態においても、インフレータ14’は、第1実施形態と同様な態様で、リテーナ15’に収容されている(図3参照)。この状態では、図7Cに示されるように、第1折り部11C’の上方部分について、その一端部12’側には、第21折り返し部21Lが、第1折り部11C’の上方部分に近接或いは当接して配置されて、一端部側折り重ね部11G’が形成され、図7Bの折り工程によって、第1折り部11C’の上方部分について、その他端部13’側には、図7Cに示されるように、下方部分11E’の上方の部分と第22折り返し部21Mとが重なった状態で、下方部分11E’が、第1折り部11C’に近接或いは当接して配置され、下方部分11E’の第1折り部11C’の反対側である車外側に第22折り返し部21Mが配置されている。そして、この下方部分11E’と第22折り返し部21Mとで他端側折り重ね部11F’を構成している。
こうして、折り畳まれて収納用形態とされた、第2実施形態のエアバッグ11’では、第1折り部11C’に対して、他端側折り重ね部11F’と一端側折り重ね部11G’とが第2折り部11D’を構成する。また、第1実施形態と同様に、外周に結束テープ30が巻き回されて、収納用形態で保持される。また、図7から明らかなように、折り畳まれて収納用形態とされた第2実施形態のエアバッグ11C’は、第1実施形態のエアバッグ11Cと同じ態様である。従って、以下の説明では、第1実施形態での側突用エアバッグ装置10を前提として説明を行う。
以上のようにして、側突用エアバッグ装置10が、サイドサポート部104内の収納部105内に収納される、コンパクトな収納用形態とされる。
次に、収納用形態の側突用エアバッグ装置10の収納部105内への収納の形態について図3を参照して説明する。なお、図3の収納の態様は、第1実施形態と第2実施形態とは同じであるので、第1実施形態についてのみ説明する。
収納用形態の側突用エアバッグ装置10は、図3に示されるように、上記の収納用形態で、収納部105内、第1折り部11Cの折り方向に沿った方向が、車幅方向に略沿って、車両側壁部120に向けて配置されている。即ち、エアバッグ11でインフレータ14が内蔵されて膨張用ガスが供給される上流部側である一端部12側を後方側とし、一端部12側に対向する第1折り部11Cの折り畳の起点である他端部13側を前方側とした場合(この場合の前方と後方とは、車両の前後方向とは異なる)、第1折り部11Cの折り畳み方向が、車両Vの進行方向に対して交差する車幅方向に対して、後方側である一端部12側が車内側で、前方側である他端部13側が車外側となるように配置され、かつ、車外(車両側壁部120)側から車内側に向けて、他端部側折り重ね部11F、第1折り部11C、一端側折り重ね部11Gの順で配設されている。なお、実施形態では、他端部側折り重ね部11F、第1折り部11C、一端側折り重ね部11Gの配列の方向は、車両Vの進行方向に対してほぼ直交するよう配設されている。この配列の方向は、実施形態ではでは、ほぼ直行の方向としたが、他端部側折り重ね部11F、第1折り部11C、一端側折り重ね部11Gの順での配列であって、かつ、配列の方向の角度は、車両V進行方向とほぼ直交か、或いは直交方向より車両前後方向の前方側へ向けられた方向であることが好ましい。
次いで、収納用形態で収納部105に収納された側突用エアバッグ装置10の作動態様について説明する。なお、車両Vの進行方向を前方側、天井側を上方側として説明を行う。なお、作動態様についても、第1実施形態と第2実施形態とは、同様であるので、第1実施形態についてのみ説明する。
衝撃センサ131が、車両Vの側突等の衝撃を検知すると、制御装置130が側突用エアバッグ装置10に信号を発信する。この信号を受けて、収納用形態のエアバッグ11に、インフレータ14から膨張用ガスが供給されると、エアバッグ11は、結束テープ30を破断して、折り畳まれた順序の逆の順で展開を開始する。具体的には、第2折り部11Dの一端部側折り重ね部11Gが、パッド107と第1折り部11Cとの間隙から下方側へ向けて展開した後、エアバッグ11における下方部分11Eの下端部が円弧を描くように、図6の下方側(車内側)から上方側(車外側)に向けて展開する。次いで、他端部側折り重ね部11Fにも膨張用ガスの供給が開始されると、他端部側折り重ね部11Fは、その折りの下方側の基点部を中心に、上方側が円弧を描くように車両Vの下方側に向けて展開を開始する。こうして、第2折り部11Dの折りが解消される。次いで、エアバッグ11の下方部分11Eである第2折り部11Dは、下端部が車両Vの下方へ向けて、即ち下方側に向けて展開膨張することとなる。
さらに、第2折り部11Dの展開中にも、第1折り部11Cには膨張用ガスは供給されているので、その折りを解消して、第1折り部11Cは、図6の下方側、即ち、第1折り部11Cの折り方向である他端側13部から一端側12部の逆方向に向けて展開を開始しようとするが、第1折り部11Cより後に折られて、第1折り部11Cに重ね合わされた第2折り部11Dにその展開を阻害されて、第2折り部11Dより遅れて展開を開始することとなる。
こうして、エアバッグ11は、第2折り部11D、第1折り部11Cの順に展開をすることとなって、開口予定部110としてのパッド107のスリット部分Xを破断させて、収納部105の外方側に向けて展開膨張することとなる。ここで、第1折り部11Cの展開膨張に関しては、膨張用ガスの供給初期では、上述の通り、展開方向が、車両Vの前後方向である前方側よりも車両Vの車幅方向である車外側に向けた方向である。こうして、エアバッグ11は、開口予定部110から突出する展開膨張の初期段階では、車幅方向である、車内側から車外側である車両側壁部120に向けて展開膨張を開始する。
次に、車両側壁部120に向けて展開膨張を開始した第1折り部11Cは、その先端側である他端部13が車両側壁部120に当接か或いは極めて近接した状態となる。この際には、第2折り部11Dの折りは解消されているので、エアバッグ11は、第1折り部11Cと第2折り部11Dとが、一体的に展開膨張することとなる。ここで、膨張用ガスが噴出される前述のリテーナ15の窓部は、インフレータ14のほぼ全周面に亘って設けられているが、収納用形態で収納部105収納されたエアバッグ11が展開膨張できるのは、図3に示されるように、インフレータ14が、車両Vの進行方向で後方側に配置されているので、車両Vの車幅方向と、進行方向の前方方向のみである。従って、展開膨張を開始したエアバッグ11は、展開膨張の先端部である他端部13が、車両側壁部120に当接か或いは極めて近接した状態となった後は、車両側壁面120に案内されるように展開膨張の方向を、車内側から車両側壁部120に向けた車幅方向から、車両V進行方向の後方側から前方側方向に変更して展開膨張を続行する。
こうして展開膨張を完了するエアバッグ11では、初期段階では、第2折り部11Dの折り解消とともに、先ず、車両Vの下方側へ向けて展開する。この段階では、第1折り部11Cの折りは、膨張用ガスは供給されているものの、まだ十分に折りが解消されておらず、エアバッグ11は、上下に長い縦長状態である。そして、更に展開膨張が進行すると、第1折り部11Cの折りが解消され始め、エアバッグ11は、第1折り部11Cが配置されている方向である車幅方向の車内側から車外側(車両側壁部120)に向けて展開膨張することとなる。この段階で、エアバッグ11は、開口予定部110を開口させて、収納部105の外側、即ち、車両用シート100の外側に向けて展開膨張を開始する。こうして、収納部105の外側に向けて展開膨張したエアバッグ11は、車両側壁部120に当接する。
次いで、車両側壁部120に当接したエアバッグ11は、インフレータ14の膨張用ガスの噴出方向が、主に、車両Vの前後方向の後方から前方であることもあって、車両側壁部120に案内されて、展開膨張の方向が、車幅方向から車両前後方向の前方側に変えられて、円滑に展開膨張することができ、乗員200の上腕部112(図1参照)等との干渉が効果的に抑制されて、乗員200の側方部分の適切な保護位置に配意されることとなる。
さらに、上記態様のエアバッグ11では、インフレータ14のボルト16下方側において、エアバッグ11内に配置されたインフレータ14と、折り畳まれたエアバッグ11の第1折り部11Cと第2折り部とが結束テープ30等の結束手段を用いて一体的に保持されている。インフレータ14は、膨張用ガスを噴出させるために、強固な構造とされ、剛性も有しているので、折り畳んで収納用形態とされた側突用エアバッグ装置10を、収納部105内で安定的に保持することができる。