JP6195374B2 - トナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真、静電荷像を顕像化するための画像形成方法及びトナージェットに使用されるトナーに関する。
近年、環境負荷に対する消費者の意識レベルが高まっている。そのため、電子写真法を用いた画像形成装置は、更なる省電力化が求められている。電子写真法を用いた画像形成装置の省電力化の方法の1つとして、定着工程での消費電力を低減させる方法がある。そのため、トナーとしては、従来以上に低い温度で紙に定着させる技術が必要とされている。一般的にトナーの定着性能はトナーの軟化点(Tm)と関係がある。そのため、定着時の熱により素早く融ける性質(いわゆるシャープメルト性)が求められる。
近年、トナーにシャープメルト性を付与する目的で、結着樹脂として非晶性樹脂だけでなく、結晶性樹脂を用いたトナーが数多く提案されている。トナー中の非晶性樹脂と結晶性樹脂を定着時に相溶させることで、トナー中の非晶性樹脂を可塑し、トナーのTmを低下させることができるので、トナーの低温定着性を改良できることが知られている。
一方、トナーに用いられる非晶性樹脂のTmとガラス転位温度(Tg)には相関がある。そのため、非晶性樹脂のTmが下がるとTgも下がる傾向にあるので、トナーのTgも低下する。
例えば特許文献1では、非晶性樹脂に相溶しやすい結晶性樹脂を併用することで、トナーの低温定着性を向上している。しかしながら、非晶性樹脂に相溶しやすい結晶性樹脂は、結晶化速度が遅いため、結晶化度が低くなってしまう傾向にある。そのため、結晶性樹脂の結晶化度が低いトナー中では、結晶性樹脂と非晶性樹脂が部分的に相溶した状態で存在し、非晶性樹脂の可塑に伴うTg低下が生じてしまう。その結果、両面印刷を複数枚行った際に、積載した両面印刷画像上のトナー同士が接着してしまう現象(排紙接着)が起こる場合があった。
そこで、結晶性樹脂の結晶化速度を促進する方法として核剤を用いることが提案されている。例えば特許文献2では、有機系結晶材料を核剤として用いることで、結晶性樹脂の結晶化速度を促進させ、低温定着性と耐排紙接着性を向上させている。このトナーを用いた場合、例えば40枚/分の速度で印刷できる印刷速度の遅い画像形成装置においては、低温定着性と耐排紙接着性を向上させることができる。しかしながら、例えば60枚/分の速度で印刷できる高速の画像形成装置を用いた場合、40枚/分の速度の画像形成装置と比べて排紙温度が高い状態で印刷画像を積載するため、排紙接着が起こる場合がある。そのため、40枚/分の速度の画像形成装置と同等の低温定着性を維持したまま、60枚/分の速度の画像形成装置における耐排紙接着性を満足することが困難である。画像形成装置の高速化が求められている昨今、高速化した画像形成装置においても良好な耐排紙接着性を有するトナーが求められているので、耐排紙接着性の更なる改善が必要である。
また、特許文献2の有機系結晶材料からなる核剤は水分を吸着しやすいため、高温高湿環境下において電気抵抗が下がりやすい。そのため、有機系結晶材料を含有したトナーは水分吸着により電気抵抗が低下し、トナーの帯電量が低下してしまう。このような帯電量の低下したトナーを用いて画像形成を行った際、帯電量の低いトナーが非画像部に現像されるため、画像かぶりという現象が生じる場合がある。そのため、画像かぶりを抑制するために更なる改良が必要である。
特開2002−284866号公報 特開2007−79329号公報
本発明の目的は、低温定着性に優れ、高速両面印刷した画像の耐排紙接着性に優れ、高温高湿環境下における画像かぶりの発生が抑制されたトナーを提供することである。
本発明は、結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、高級脂肪酸塩、及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーにおいて、該結晶性ポリエステル樹脂は、分子鎖の末端に結晶核剤部位を有し、且つ該結晶性ポリエステル樹脂のSP値であるSPa((cal/cm1/2)が9.00以上11.00以下であり、該結晶核剤部位は、炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコール及び/又は、炭素数11以上31以下の脂肪族モノカルボン酸に由来する部位であり、該高級脂肪酸塩は炭素数が11以上31以下である高級脂肪酸塩であることを特徴とするトナーである。
本発明によれば、低温定着性に優れ、高速両面印刷した画像の耐排紙接着性に優れ、高温高湿環境下における画像部かぶりの発生が抑制されたトナーを提供することができる。
結晶性ポリエステル樹脂を用いる効果と弊害を述べた後、本発明に至った経緯について述べる。
一般的に、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂をトナーの定着時に相溶させることで、結晶性ポリエステル樹脂が非晶性ポリエステル樹脂を可塑する。その結果、トナーのTmが下がり、低温定着性を向上させることができる。また、トナーのTmとTgには相関があり、Tmの低下に伴いTgも低下する傾向にある。
一方、排紙接着は、排紙温度がトナーのTgを超えた場合に、紙上のトナー同士が接着することで発生する。排紙接着を抑制するためには、紙上のトナーのTgを排紙温度よりも高くすることが重要である。そのため、結晶性ポリエステル樹脂で低温定着性を良化させたトナーは、定着後の排紙温度より紙上のトナーのTgが低いため、排紙接着という弊害が生じる場合がある。
この弊害を解決するためには、排紙上のトナーのTgを排紙温度よりも高くする必要があるので、定着後の排紙上のトナーのTgを、可塑する前のトナーのTgに素早く戻さなければならない。そのためには、トナーの定着時に非晶性ポリエステル樹脂と相溶した結晶性ポリエステル樹脂を素早く結晶化させる(結晶化速度を上げる)必要がある。結晶性ポリエステル樹脂の結晶化は、結晶性ポリエステル樹脂の分子が配向して結晶核を生成し、その結晶核を基点として結晶性ポリエステル樹脂の分子が配向して結晶を成長させることで起こる。つまり、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化速度を上げるためには、(1)結晶核の生成時間を短縮すること、及び(2)結晶成長の速さを上げることが必要となる。
そこで本発明者らが鋭意検討した結果、低温定着性に優れ、高速両面印刷した画像の耐排紙接着性に優れ、高温高湿環境下における画像部かぶりの発生を抑制したトナーを提供できることを見出した。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
本発明は、結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、高級脂肪酸塩、及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーにおいて、該結晶性ポリエステル樹脂は、ポリエステル分子鎖の末端に結晶核剤部位を有し、且つ該結晶性ポリエステル樹脂のSP値であるSPa((cal/cm1/2)が9.00以上11.00以下であり、該結晶核剤部位は、炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコール及び/又は、炭素数11以上31以下の脂肪族モノカルボン酸に由来する部位であり、該高級脂肪酸塩は炭素数が11以上31以下である高級脂肪酸塩であることを特徴とする。
本発明のトナー粒子は、重量平均粒径(D4)が3.0〜9.0μm程度の粒子である。
以下に本発明のトナー粒子に含有される結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、高級脂肪酸塩、及び着色剤について具体的に述べる。
〔結晶性ポリエステル樹脂〕
本発明のトナーは、結晶性ポリエステル樹脂の分子鎖の末端に結晶核剤部位を有することと、高級脂肪酸塩を併用することを特徴とする。これらの二つを併用することで、定着時に可塑したトナーのTgを可塑前のトナーのTgに素早く戻すことができ、高速化した画像形成装置においても良好な耐排紙接着性と低温定着性を両立できる。この理由は定かではないが、本発明者らは以下のように考えている。
定着時にトナーは溶融状態となり、定着後に冷却され、紙上に定着される。そのため、定着後の紙上のトナーは、冷却時には融点の高い成分から結晶化を始める。そのため、結晶性ポリエステル樹脂よりも融点の高い高級脂肪酸塩を併用することで、結晶性ポリエステル樹脂が結晶核を生成する前に高級脂肪酸塩が結晶核を生成する。よって、結晶性成分として結晶性ポリエステル樹脂だけを使用した系に比べ、結晶核の生成時間は短縮される。
さらに、この結晶核に対して、本発明の結晶性ポリエステル樹脂の分子鎖の末端の結晶核剤部位が配向することで結晶成長の速さが向上していると考えている。なぜならば、結晶性ポリエステル樹脂は非晶性ポリエステル樹脂と相溶するが、分子鎖末端の結晶核剤部位は極性が低いため、非晶性ポリエステル樹脂に相溶しにくい。一方、結晶性ポリエステル樹脂の分子鎖末端の結晶核剤部位と高級脂肪酸塩の結晶核は極性が近い。そのため、結晶性ポリエステル樹脂の分子鎖末端の結晶核剤部位が高級脂肪酸塩の結晶核に配向しやすいから、結晶性ポリエステル樹脂が結晶核に次々と配向する。そのため、結晶性ポリエステル樹脂の分子鎖の末端に結晶核剤部位を有することと、高級脂肪酸塩を併用することで、結晶成長の速さが向上している。
よって、本発明のトナーは、トナー中の結晶核の生成時間の短縮だけでなく、結晶性ポリエステル樹脂の結晶成長の速さも向上することができるので、結晶化速度を向上させることができる。その結果、結晶性ポリエステル樹脂の可塑効果で低下したトナーのTgを素早く戻すことができるので、耐排紙接着性と低温定着性を両立することができている。
一方、従来の結晶性ポリエステル樹脂と高級脂肪酸を併用した系においては、高級脂肪酸塩が結晶核となるので、結晶核の生成時間を短縮することができる。しかしながら、結晶性ポリエステル樹脂の結晶成長の速さは、結晶核への結晶性ポリエステル樹脂の分子の配向のしやすさで決まるため、結晶性ポリエステル樹脂の分子の結晶成長の速さを向上させることはできない。そのため、本発明のトナーほど結晶化速度を向上させることができないので、結晶性ポリエステル樹脂の可塑効果で低下したトナーのTgを可塑する前のトナーのTgに戻すのに時間がかかっていた。また、このようなトナーを使用した場合、低速の画像形成装置においては、定着後の排紙が積載する前に、排紙の温度がトナーのTgよりも低くなるため、良好な耐排紙接着性を有していた。しかし、高速の画像形成装置においては、排紙の温度がトナーのTgよりも低くなる前に、排紙を積載してしまうため、排紙接着が発生していた。
更に本発明のトナーは、結晶性ポリエステル樹脂の分子鎖末端の結晶核剤部位が、炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコール及び/又は、炭素数11以上31以下の脂肪族モノカルボン酸に由来する部位であることを特徴とする。
結晶核剤部位が炭素数10以上のアルキル鎖(即ち、脂肪族モノアルコールの場合は炭素数10以上、脂肪族モノカルボン酸の場合は炭素数11以上)であることで、本発明のトナーは耐排紙接着性が向上している。本発明者らは、この理由を以下のように考えている。結晶核剤部位が炭素数10以上のアルキル鎖になることで、結晶性ポリエステル樹脂の末端の分子鎖の極性が高級脂肪酸塩の極性と近くなるので、結晶性ポリエステル樹脂が高級脂肪酸塩の結晶核に配向しやすくなる。その結果、結晶性ポリエステル樹脂の結晶成長を速めることができているので、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化速度が向上し、耐排紙接着性が向上していると考えている。
一方、結晶核剤部位のアルキル鎖の炭素数が30を超える場合(即ち、脂肪族モノアルコールの場合は炭素数30を超える場合、脂肪族モノカルボン酸の場合は炭素数31を超える場合)、結晶性ポリエステル樹脂の分子鎖末端の極性が低くなりすぎるため、トナーの帯電量が低下する場合がある。そのため、低帯電量トナーによる画像部かぶりが発生する恐れがある。
また、結晶核剤部位は結晶性ポリエステル樹脂の結晶化速度を上げるという観点から、結晶性ポリエステル樹脂中に、0.1モル以上、7.0モル以下、好ましくは0.4モル以上、4.0モル以下含有されている事が好ましい。結晶核剤部位が結晶性ポリエステル樹脂と結合しているか否かの判別方法は、後述する。
更に、本発明のトナーは、結晶性ポリエステル樹脂のSPa値(cal/cm1/2が9.00以上11.00以下であることを特徴とする。
結晶性ポリエステル樹脂において、SP値が小さいという事は、結晶性ポリエステル樹脂を構成する脂肪族アルコール単位と脂肪族カルボン酸単位のアルキル基の鎖長が長い事を示す。アルキル基の鎖長の長い成分から構成される結晶性ポリエステル樹脂は、極性基が少ないため、トナーの帯電量が低くなる。そのため、SPa値が9.00未満の場合、トナーの帯電量の低下に伴う画像かぶりが生じる懸念がある。一方、SPa値が11.00よりも大きい場合は、結晶性ポリエステル樹脂中の極性基が増えるため、結晶性ポリエステル樹脂の吸湿性が高まり、トナーの吸湿性も高まる。吸湿性の高いトナーは、高温高湿環境下において電気抵抗値が下がるため、このような環境に放置することでトナーの帯電量が低下する。そのため、画像かぶりを生じる懸念がある。SPa値は9.18以上10.87以下であることが好ましい。
なお、本発明で用いられるSP値は、一般的に用いられている方法により、樹脂を構成するモノマーの種類と比率から算出される値である。また、結晶性ポリエステル樹脂のSPa値は、結晶核剤部位を含むポリエステル分子鎖のSP値を表している。
また、本発明のトナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂のSPa値と非晶性ポリエステル樹脂のSP値であるSPbが下記数式(1)を満足する事が好ましい。
−1.00≦SPb−SPa≦0.80 ・・・(1)
また、「SPb−SPa」の値は、−0.93以上であることがより好ましく、0.78以下であることがより好ましい。
SP値(溶解度パラメーター)は、樹脂同士の混ざりやすさを示す指標として用いられている。「SPb−SPa」の値は、トナーの熱溶融時における結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂との相溶しやすさを示す指標である。この範囲内で各樹脂のSP値を制御する事で、トナーの低温定着性と耐排紙接着性をさらに向上させることができる。
本発明のトナーに用いられる結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば以下のものが挙げられる。
〔結晶性ポリエステル樹脂の原料〕
結晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコールユニットと多価カルボン酸ユニットを有する樹脂である。多価アルコールユニットの原料に用いられるアルコール成分としては、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を高める観点から、炭素数6以上、18以下の脂肪族ジオールを用いることが好ましい。これらの中でも、トナーの低温定着性及び耐排紙接着性の観点から、炭素数6以上、12以下の脂肪族ジオールが好ましい。脂肪族ジオールとしては、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。上記脂肪族ジオールの含有量は、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性をより高める観点から、アルコール成分中に80.0モル%以上、100.0モル%以下含有されることが好ましい。
アルコール成分としては、上記の脂肪族ジオール以外の多価アルコール成分を含有していても良く、例えば以下のものが挙げられる。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等を含む下記化学式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール。
Figure 0006195374
上式中、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基を示す。x及びyは、正の数を示し、xとyの和は、1以上16以下、好ましくは1.5以上5以下である。
多価カルボン酸ユニットの原料に用いられるカルボン酸成分としては、炭素数6以上、18以下の脂肪族ジカルボン酸化合物が好ましい。これらの中でも、トナーの定着性及び耐排紙接着性の観点から、炭素数6以上、12以下の脂肪族ジカルボン酸化合物が好ましい。脂肪族ジカルボン酸化合物としては、1,8−オクタン二酸、1,9−ノナン二酸、1,10−デカン二酸、1,11−ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸等が挙げられる。炭素数6以上、18以下の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中に80.0モル%以上、100.0モル%以下含有されることが好ましい。
カルボン酸成分としては、上記脂肪族ジカルボン酸化合物以外のカルボン酸成分を含有していても良い。例えば、芳香族ジカルボン酸化合物、3価以上の芳香族多価カルボン酸化合物等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。芳香族ジカルボン酸化合物には、芳香族ジカルボン酸誘導体も含まれる。芳香族ジカルボン酸化合物の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの酸の無水物、並びにそれらのアルキル(炭素数1以上3以下)エステルが好ましく挙げられる。該アルキルエステル中のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。3価以上の多価カルボン酸化合物としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、及びこれらの酸無水物、アルキル(炭素数1以上3以下)エステル等の誘導体が挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーとして用いられるアルコール成分とカルボン酸成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、0.80以上1.20以下であることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは、トナーの低温定着性と耐熱保存性の観点から、8000以上、100,000以下であることが好ましく、12,000以上、45,000以下であることがより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂は、示差走査熱量計(DSC)測定において昇温時に観測される吸熱ピークの面積から求められる融解熱量(ΔH)が、100J/g以上、140J/g以下であることが好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、トナーの低温定着性の観点から、60℃以上、120℃以下であることが好ましく、70℃以上、90℃以下であることがより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、2mgKOH/g以上、40mgKOH/g以下である事が、トナーの良好な帯電特性の観点から好ましい。
〔非晶性ポリエステル樹脂の原料〕
非晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコールユニットと多価カルボン酸ユニットを有する樹脂である。多価アルコールユニットの原料に用いられるアルコール成分としては下記のものが挙げられる。2価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等を含む前記化学式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等。3価以上のアルコール成分としては、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。上記2価のアルコール成分及び3価以上の多価アルコール成分は、一種類を単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
また、多価カルボン酸ユニットの原料に用いられるカルボン酸成分としては、下記のものが挙げられる。2価のカルボン酸成分としては、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、n−ドデセニルコハク酸、及びこれらの酸の無水物、もしくは低級アルキルエステル等が挙げられる。3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸及びこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。
非晶性ポリエステル樹脂の縮重合の際には、反応を促進させるため、酸化ジブチル錫等の公知のエステル化触媒等を適宜使用してもよい。
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは、トナーの低温定着性と耐排紙接着性の観点から、8000以上、100,0000以下であることが好ましく、40,000以上、300,000以下であることがより好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の酸価は、2mgKOH/g以上、40mgKOH/g以下である事が、トナーの帯電特性の観点から好ましい。
トナー中に含有される、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂との質量比は、トナーの低温定着性及び耐排紙接着性の観点から、5:95〜40:60であることが好ましい。
〔高級脂肪酸塩〕
次に本発明に用いられる高級脂肪酸塩について述べる。
本発明のトナーは、炭素数が11以上31以下である高級脂肪酸塩を含有することを特徴とする。高級脂肪酸塩の炭素数が11未満の場合、高級脂肪酸塩の融点が低くなるため、結晶核を生成するのに必要な時間が長くなる。そのため、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化速度が向上しないので、トナーの耐排紙接着性を満足することが難しい。また、高級脂肪酸塩の炭素数が31を超える場合、高級脂肪酸塩の極性が低くなるため、トナー中に高級脂肪酸塩を均一分散させることが困難となる。そのため、トナー中に存在する結晶核の個数が減ってしまう。結晶性ポリエステル樹脂は結晶核から結晶成長を行うため、結晶核の個数が減ることで、結晶成長できる結晶性ポリエステル樹脂の量が減り、その結果、結晶成長は遅くなる。そのため、高級脂肪酸塩の炭素数が31を超える場合、結晶化速度は低下するので、トナーの耐排紙接着性を満足することが難しい。
また、本発明の結晶核剤部位の炭素数Cmと高級脂肪酸塩の炭素数Cnは、下記数式(2)を満足することが好ましい。
−12≦Cm−Cn≦12 ・・・(2)
「Cm−Cn」の値を−12以上12以下とすることで、結晶核剤部位の極性と高級脂肪酸塩の極性を近くすることができる。その結果、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化速度を更に向上させることができるので、トナーの耐排紙接着性の観点から好ましい。また、トナーの耐排紙接着性の観点から「Cm−Cn」の値は−8以上であることがより好ましく、8以下であることがより好ましい。
更に本発明のトナーは、結晶性ポリエステル樹脂の分子鎖末端に結晶核剤部位を有するため、高級脂肪酸塩と併用した場合であっても、高温高湿環境下に放置した際のトナーの帯電量低下を抑制することができる。その理由は、以下のように考えている。
結晶性ポリエステル樹脂の分子鎖末端に結晶核剤部位を有するため、高級脂肪酸塩の結晶核は、結晶性ポリエステル樹脂よりも極性の低い結晶核剤部位で覆われる。そのため、高級脂肪酸塩の吸湿は、結晶表面を覆う結晶核剤部位により阻害され、高級脂肪酸塩の吸湿性は下がる。そして、その結果トナーの吸湿性も下がる。よって、高温高湿環境下に放置した際もトナーの帯電量低下を抑制することができるので、画像かぶりを抑制することができる。
尚、従来の結晶性ポリエステル樹脂と高級脂肪酸塩を含有するトナーにおいて、結晶性ポリエステル樹脂の結晶は、高級脂肪酸塩の結晶核を、結晶性ポリエステル樹脂の末端で覆うため、結晶表面には結晶性ポリエステル樹脂の末端に由来した極性基が存在する。そのため、分子鎖末端に結晶核剤部位を有する結晶性ポリエステル樹脂を使用した場合に比べ、高級脂肪酸塩の吸湿性を阻害する効果が弱いため、高温高湿環境下にトナーを放置した場合、トナーの帯電量の低下を引き起こす場合があった。
更に、本発明の高級脂肪酸塩が高級脂肪酸金属塩であり、且つ該高級脂肪酸金属塩の金属イオンの価数が2価以上であることが好ましい。その理由は、高級脂肪酸塩の結晶核を結晶性ポリエステル樹脂の結晶核剤部位でより覆いやすくなるため、高温高湿環境下に放置した際のトナーの帯電量の低下に伴う画像かぶりを抑制することができるからである。
本発明のトナーに用いられる高級脂肪酸塩としては、例えば以下のものが挙げられる。脂肪酸としては、炭素数11〜31、好ましくは炭素数16〜26の脂肪酸が挙げられ、飽和、不飽和、直鎖、分岐鎖の何れでもよく、特に直鎖脂肪酸が好ましい。ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸が好ましく、特にステアリン酸が好ましい。これら脂肪酸に結合する金属としては、例えばナトリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムなどが挙げられ、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム等の2価以上の金属が好ましい。特にアルミニウムが好ましい。
また高級脂肪酸塩の含有量としては、高温高湿環境下におけるトナーの帯電量の低下を抑制する観点から、結晶性ポリエステル樹脂100質量部に対し、15質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以上10.0質量部以下であることがより好ましい。
また、高級脂肪酸塩の融点が、結晶性ポリエステル樹脂の融点以上であるものが結晶核の生成時間を短縮させる点で好ましい。
〔着色剤〕
本発明のトナーに用いられる着色剤としては、例えば以下のものが挙げられる。
マゼンタトナー用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1の如き油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28の如き塩基性染料。
シアントナー用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料。
シアン用着色染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
イエロー用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロー用着色染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤とマゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
着色剤の使用量は、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂の総量100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下で使用されることが好ましい。
また、本発明のトナーは磁性トナーであっても良い。磁性トナーとして用いる場合は、磁性体及び着色剤として磁性酸化鉄を用いることが好ましい。磁性酸化鉄としては、マグネタイト,マグヘマタイト,フェライト等の酸化鉄が用いられる。トナーに含有される磁性酸化鉄の量は、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂の総量100質量部に対して25質量部以上、45質量部以下であることが好ましい。
〔ワックス〕
また、本発明のトナーは必要に応じてワックスを含んでもよく、例えば以下のものが挙げられる。ワックスとしては、トナー中での分散のしやすさ、離型性の高さの観点から、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスの如き炭化水素系ワックスが好ましい。必要に応じて、二種以上のワックスを併用してもかまわない。
ワックスとしては、具体的には以下のものが挙げられる。ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200(三洋化成工業社);ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学社);サゾールH1、H2、C80、C105、C77(シューマン・サゾール社);HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12(日本精鑞株式会社);ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋アドレ株式会社);木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(株式会社セラリカNODAにて入手可能)。
ワックスは、粉砕法によってトナーを製造する場合は、溶融混練時に添加することが好ましい。ワックスは、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂の総量100.0質量部に対して0.1質量部以上、20.0質量部以下を含有することが好ましい。
〔流動性向上剤〕
また、本発明のトナーには、無機微粉体等の流動性向上剤を含有させてもよい。流動性向上のための無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムの如き無機微粉体が好ましい。無機微粉体は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。無機微粉体は、比表面積が10m/g以上400m/g以下であることが好ましい。また、比表面積が上記範囲の無機微粒子を併用してもよい。
無機微粉体は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上8.0質量部以下使用されることが好ましい。トナー粒子と無機微粉体との混合は、ヘンシェルミキサーの如き公知の混合機を用いることができる。
〔その他の外部添加剤〕
トナーには、必要に応じて他の外部添加剤を添加しても良い。例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、ケーキング防止剤、熱ローラー定着時の離型剤、滑剤、研磨剤の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子である。滑剤としては、ポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末が挙げられる。中でもポリフッ化ビニリデン粉末が好ましい。研磨剤としては、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末が挙げられる。
〔磁性キャリア〕
本発明のトナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として用いることも可能である。磁性キャリアとしては、フェライトキャリアや、結着樹脂中に磁性体を分散させた磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)等、公知のものを使用できる。トナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、現像剤中のトナー濃度が2質量%以上、15質量%以下であることが好ましい。
〔トナーの製造方法〕
本発明のトナーの製造方法は、特に限定されるものではないが、低温定着性に優れたトナーとなる点から、粉砕法が好ましい。以下、粉砕法によって本発明のトナーを得るための方法を説明する。
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、高級脂肪酸塩、着色剤、その他の添加剤等を、所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
次に、混合した材料を溶融混練して、非晶性ポリエステル樹脂中に結晶性ポリエステル樹脂、高級脂肪酸塩、着色剤等を分散させる。溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーの如きバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。連続生産できる優位性から、1軸又は2軸の押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。更に、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルの如き粉砕機で粗粉砕した後、更に、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)の如き分級機や篩分機を用いて分級し、トナー粒子を得る。
必要に応じて、粉砕後に、ハイブリタイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、メカノフージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)、メテオレインボー MR Type(日本ニューマチック社製)を用いて、球形化処理の如きトナー粒子の表面処理を行うこともできる。更に必要に応じて所望の添加剤をヘンシェルミキサー等の混合機により十分混合することが出来る。
〔評価方法〕
上記トナー及び原材料の各種物性の測定法について以下に説明する。後述の実施例等においてもこれらの方法に基づいて物性値を測定している。
<1.結晶核剤部位の測定>
樹脂サンプルを2mg精秤し、クロロホルム2mlを加えて溶解させてサンプル溶液を作製する。樹脂サンプルとしては結晶核剤部位を有する結晶性ポリエステル樹脂を用いる。次に、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)20mgを精秤し、クロロホルム1mlを添加して溶解させてマトリックス溶液を調製する。また、トリフルオロ酢酸Na(NaTFA)3mgを精秤した後、アセトンを1ml添加して溶解させてイオン化助剤溶液を調製する。
このようにして調製したサンプル溶液25μl、マトリックス溶液50μl、イオン化助剤溶液5μlを混合してMALDI分析用のサンプルプレート上に滴下させ、乾燥させることで測定サンプルとする。分析機器として、MALDI−TOFMS(Bruker Daltonics製 Reflex III)を用い、マススペクトルを得る。得られたマススペクトルにおいて、オリゴマー領域(m/Zが2000以下)の各ピークの帰属を行い、分子末端に結晶核剤が結合した構造に対応するピークが存在するか否かを確認する。
<2.GPCによる樹脂の重量平均分子量の測定>
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流量で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては例えば、東ソー社製あるいは昭和電工社製の分子量が10〜10程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。又、検出器はRI(屈折率)検出器を用いる。尚、カラムとしては市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば以下の組み合わせが挙げられる。昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807,800Pの組み合せや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKgurd columnの組み合せ。
また、試料は以下のようにして作製する。
試料をTHF中に入れ、25℃で数時間放置した後、十分振とうし、THFとよく混ぜ(試料の合一体が無くなるまで)、更に12時間以上静置する。尚、THF中における放置時間の合計が24時間となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2μm以上0.5μm以下、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)など使用できる。)を通過させたものをGPCの試料とする。又、試料濃度は、樹脂成分が0.5mg/ml以上5.0mg/ml以下となるように調整する。
<3.結晶性ポリエステル樹脂、高級脂肪酸塩及びワックスの融点及び融解熱量の測定>
結晶性ポリエステル樹脂、高級脂肪酸塩及びワックスの融点は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定したDSC曲線において、最大吸熱ピークのピーク温度を融点とし、ピークの面積から求められる熱量を融解熱量(J/g)とする。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、試料約2mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。尚、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。
この2度目の昇温過程での温度30〜200℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピーク温度を融点とし、ピークの面積から求められる熱量を融解熱量とする。
<4.非晶性ポリエステル樹脂のTgの測定>
非晶性ポリエステル樹脂CのTgは、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。装置検出部の温度補正、試料の使用量、及び、昇温条件は前記の「融点及び融解熱量の測定」の場合と同じである。
2度目の昇温過程での温度40℃〜100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgとする。
<5.非晶性ポリエステル樹脂及びトナーの軟化点の測定>
非晶性ポリエステル樹脂及びトナーの軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行なう。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダ内に充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。尚、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2の値Xを求める(X=(Smax−Smin)/2)。そして、前記流動曲線においてピストンの降下量が「Smin+X」となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
測定試料としては、約1.0gの試料を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法。
昇温速度:4℃/min。
開始温度:50℃。
到達温度:200℃
ピストン断面積:1.000cm
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)。
予熱時間:300秒。
ダイの穴の直径:1.0mm。
ダイの長さ:1.0mm。
<6.樹脂の酸価の測定>
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。ポリエステル樹脂の酸価はJIS K 0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1モル/l塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕したポリエステル樹脂の試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。尚、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記数式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
<5.トナーの重量平均粒径(D4)の測定>
トナーの重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行ない、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムを脱イオン水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように専用ソフトの設定を行なう。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の(1)〜(7)の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去する。
(2)ガラス製の100mlの平底ビーカー内に前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を脱イオン水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量の脱イオン水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液中に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
以下、製造例及び実施例により本発明を説明する。製造例1〜19は、結晶性ポリエステル樹脂の製造例であり、製造例21〜24は非晶性ポリエステル樹脂の製造例である。以下の説明において、部数は質量部基準である。
<製造例1>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に、アルコールモノマーとして1,10−デカンジオール、及びカルボン酸モノマーとしてセバシン酸を表1に示す量(各49モル%)で投入した。そして、触媒としてジオクチル酸錫を原料モノマーの総量100質量部に対して1.5質量部添加し、窒素雰囲気下で150℃に加熱して常圧下で水を留去しながら6時間反応させた。次いで、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させ、210℃に到達してから2時間反応させた後、反応槽内を5kPa以下に減圧して210℃で3時間反応させてポリエステル樹脂を得た。
その後、反応槽内の圧力を徐々に開放して常圧へ戻した後、表1に示す量(2モル%)の結晶核剤(ステアリン酸)を加え、常圧下にて210℃で2時間反応させた。その後、再び反応槽内を5kPa以下へ減圧して210℃で2時間反応させることにより結晶性ポリエステル樹脂No.1を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂のMALDI−TOFMSのマススペクトルには、結晶性ポリエステル樹脂の分子末端にステアリン酸が結合した構造のピークが確認されたことから、結晶性ポリエステル樹脂の分子末端と結晶核剤とが結合していることが確認された。結晶性ポリエステル樹脂No.1の物性を表2に示す。
<製造例2乃至19>
モノマー及び結晶核剤の種類及び使用量を表1に記載の様に変更し、それ以外は、製造例1と同様にして結晶性ポリエステル樹脂No.2乃至No.19を得た。また製造例2乃至17で得られた樹脂のMALDI−TOFMSのマススペクトルにおいて、分子末端に結晶核剤が結合した構造のピークが確認され、分子末端と結晶核剤とが結合していることが確認された。尚、製造例18及び19は、結晶核剤を使用しない製造例である。これらの結晶性ポリエステル樹脂の物性を表2に示す。
Figure 0006195374
Figure 0006195374
<製造例21>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に、表3に示す使用量のモノマーを入れた後、触媒としてジブチル錫をモノマー総量100質量部に対して1.5質量部添加した。次いで、窒素雰囲気下にて常圧で190℃まで素早く昇温した後、190℃から220℃まで10℃/時間の速度で昇温しながら水を留去して重縮合を行った。220℃に到達してから反応槽内を5kPa以下まで減圧し、220℃、5kPa以下の条件下にて重縮合を行い、非晶性ポリエステル樹脂No.21を得た。その際、得られるポリエステル樹脂No.21の軟化点が表4の値となるように重合時間を調整した。非晶性ポリエステル樹脂No.21の物性を表4に示す。
<製造例22乃至24>
モノマーの種類及び使用量を表3に記載の様に変更し、それ以外は、製造例21と同様にして非晶性ポリエステル樹脂No.22乃至No.24を得た。これらの非晶性ポリエステル樹脂の物性を表4に示す。
Figure 0006195374
Figure 0006195374
<実施例1>
下記表5に示す材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)内で混合した後、二軸混練機(池貝鉄工(株)製PCM−30型))にて回転数3.3/秒、混練温度130℃の条件で混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(ターボ工業(株)製T−250)にて微粉砕した。さらに、得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径7.0μmのトナー粒子を得た。
Figure 0006195374
得られたトナー粒子100.0質量部に、イソブチルトリメトキシシラン15.0質量%溶液で表面処理した一次平均粒子径50nmの酸化チタン微粒子1.0質量部、及びヘキサメチルジシラザン20.0質量%溶液で表面処理した一次平均粒子径16nmの疎水性シリカ微粒子0.8質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株)製FM−75型)で混合して、「トナー1」を得た。前記評価方法に従ってトナーの諸物性を測定した。評価結果を表6示す。また、以下の方法(1)〜(4)に従って、トナーの性能評価を行った。
<評価>
(1)低温定着性の評価
市販のカラーレーザープリンタColor Laser Jet CP4525(HP社製)を用いた。上記評価機から定着器を取り外し、定着温度、定着ニップ圧及びプロセススピードを任意に設定できるようにした外部定着器を取り付けた。記録媒体としては、高白色用紙GF−C081(キヤノンマーケティングジャパン製、81.4g/m)を使用した。そして、市販のブラックカートリッジから製品トナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、トナー1を150g充填した。なお、マゼンタ、イエロー、及びシアンの各ステーションには、それぞれ製品トナーを抜き取り、トナー残量検知機構を無効としたマゼンタ、イエロー、およびシアンカートリッジを挿入した。
温度23℃、相対湿度50%の環境下で、トナー載り量0.6mg/cmとなるようにベタ黒の未定着画像を出力した。 定着器の定着温度を130℃、定着ニップ圧を0.10MPaに改造し、プロセススピードを200mm/secから400mm/secまでの範囲で20mm/secごとに上げていき、上記ベタ黒の未定着画像の定着を行った。
得られたベタ黒画像を約100gの荷重をかけたシルボン紙で5往復摺擦し、摺擦前後の画像濃度の濃度低下率が10%以下になる点を定着可能な最高プロセススピードとした。この定着可能な最高プロセススピードが速い程、高速現像時の低温定着性に優れたトナーである。評価結果を表7に示す。尚、評価結果は以下の基準でA〜Dにランク付けしたが、本発明ではランクCまでが許容できるレベルである。
A(非常に良い):定着可能な最高プロセススピードが400mm/sec以上である。(60枚機以上)
B(良い):定着可能な最高プロセススピードが300mm/sec以上、400mm/sec未満である。(60枚機)
C(普通):定着可能な最高プロセススピードが200mm/sec以上、300mm/sec未満である。(40枚機)
D(悪い):定着可能な最高プロセススピードが200mm/sec未満である。
(2)両面印刷における耐排紙接着性
市販のカラーレーザープリンタColor Laser Jet CP4525(HP社製)を用いた。記録媒体としては、高白色用紙GF−C081(キヤノンマーケティングジャパン製、81.4g/m)を使用した。市販のブラックカートリッジから製品トナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、トナー1を150g充填した。なお、マゼンタ、イエロー、及びシアンの各ステーションには、それぞれ製品トナーを抜き取り、トナー残量検知機構を無効としたマゼンタ、イエロー、およびシアンカートリッジを挿入した。
温度30℃、相対湿度80%の環境下で、トナー載り量0.6mg/cmとなるようにベタ黒の画像を両面印刷で10枚出力した。10枚出力終了後、出力画像を重ねたまま紙上に約2kgの荷重をかけ、10分間放置した。10分間放置後、印刷画像が接着していないか1枚ごとに評価した。結果は以下の基準でA〜Cにランク付けしたが、本発明ではランクBまでが許容できるレベルである。
A:接着した画像がなく、良好な画質を維持している。
B:接着した画像はあるが、容易に分離し、良好な画質を維持している。
C:接着した画像があり、分離後に画像欠陥がある。
(3)高速両面印刷における耐排紙接着性
市販のカラーレーザープリンタColor Laser Jet CP4525(HP社製)において、定着プロセススピード、現像プロセススピード、通紙間隔を変更し、60枚/分の速度で印刷できるように改造した。この改造器を用いて、上記(2)と同様に耐排紙接着性の評価を行った。結果は以下の基準でA〜Cにランク付けしたが、本発明ではランクBまでが許容できるレベルである。
A:接着した画像がなく、良好な画質を維持している。
B:接着した画像はあるが、容易に分離し、良好な画質を維持している。
C:接着した画像があり、分離後に画像欠陥がある。
(4)画像かぶり評価
上記(2)の評価と同様の評価紙、トナーカートリッジを用意した。温度23℃、相対湿度50%の環境下で、ベタ黒画像でトナー載り量が0.3mg/cmとなる現像条件に設定し、ベタ白画像を10枚印刷した。初期の画像かぶりは、ベタ白画像10枚目を評価した。また、このトナーカートリッジを3日3晩放置した後、初期の画像かぶり評価と同様の現像条件で、ベタ白画像を1枚印刷し、放置後の画像かぶりを評価した。また、温度30℃、相対湿度80%の環境下においても、ベタ黒画像でトナー載り量が0.3mg/cmとなる現像条件に設定し、同様の評価を行った。
画像かぶりの評価は、デジタル白色光度計(TC−6D型、有限会社東京電色製、グリーンフィルター使用)を用い、反射率(%)を測定することで行った。評価内容は、評価機を通していない紙の反射率(%)から、上記印刷後の白紙部の反射率(%)を引き、画像かぶり(%)とした。この画像かぶり(%)が低いほど、画像かぶりに優れたトナーであると判断した。結果は以下の基準でA〜Dにランク付けしたが、本発明ではランクCまでが許容できるレベルである。
A:画像かぶり(%)が0.5%未満である。
B:画像かぶり(%)が0.5%以上1.0%未満である。
C:画像かぶり(%)が1.0%以上1.5%未満である。
D:画像かぶり(%)が1.5%以上である。
トナー1について、以上の(1)〜(4)の何れの評価も良好な結果が得られた。
<実施例2乃至24、参考例25及び比較例1乃至6>
実施例1において、結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂及び高級脂肪酸塩の種類及び使用量等を表6に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー2乃至31を得た。得られた各トナーの物性及び性能評価を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表6及び表7に示す。
尚、比較例1及び2は、高級脂肪酸塩の炭素数が本発明の要件を満たさない例である。比較例3及び4は、結晶性ポリエステル樹脂のSPa値が本発明の要件を満たさない例である。比較例5及び6は、分子鎖の末端に結晶核剤部位を有しない結晶性ポリエステル樹脂を用いた例である。尚、参考例25は、結晶性ポリエステル樹脂の酸・アルコールの対称性が非常に高く、更に結晶核剤部位を有するため、他の結晶性ポリエステル樹脂と比べ、結晶成長速度が比較的速いと予想される。そのため、高級脂肪酸塩を用いなくとも本発明における評価基準において問題ないレベルに至ったと考える。
また、比較例1、2、5及び6は、高級脂肪酸塩の結晶核を基点とした結晶性ポリエステル樹脂の結晶成長が遅いため、耐排紙接着性が悪かったと考えている。比較例3は、非晶性ポリエステル樹脂と分離する傾向にあるため、高速で定着試験をした際に、結晶性ポリエステル樹脂による可塑効果が発現しなかったものと考えている。比較例4は、結晶性ポリエステル樹脂の極性が高いため、水分吸着性が高く、高温高湿環境下において画像かぶりが発生したものと考えている。
Figure 0006195374
Figure 0006195374

Claims (4)

  1. 結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、高級脂肪酸塩、及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーにおいて、
    該結晶性ポリエステル樹脂は、分子鎖の末端に結晶核剤部位を有し、且つ該結晶性ポリエステル樹脂のSP値であるSPa((cal/cm1/2)が9.00以上11.00以下であり、
    該結晶核剤部位は、炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコール及び/又は、炭素数11以上31以下の脂肪族モノカルボン酸に由来する部位であり、
    該高級脂肪酸塩は炭素数が11以上31以下である高級脂肪酸塩であることを特徴とするトナー。
  2. 前記結晶性ポリエステルのSPaと該非晶性ポリエステル樹脂のSP値であるSPb((cal/cm1/2)とが下記数式(1)を満足する事を特徴とする請求項1に記載のトナー。
    −1.00≦SPb−SPa≦0.80 ・・・(1)
  3. 前記結晶核剤部位の炭素数Cmと前記高級脂肪酸塩の炭素数Cnとが下記数式(2)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
    −12≦Cm−Cn≦12 ・・・(2)
  4. 前記高級脂肪酸塩が高級脂肪酸金属塩であり、且つ該高級脂肪酸金属塩の金属イオンの価数が2価以上であることを特徴する請求項1乃至3のいずれかの一項に記載のトナー。
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