JP6183074B2 - 反りの低減が可能なマルチワイヤー加工方法及びマルチワイヤー加工装置 - Google Patents

反りの低減が可能なマルチワイヤー加工方法及びマルチワイヤー加工装置 Download PDF

Info

Publication number
JP6183074B2
JP6183074B2 JP2013182101A JP2013182101A JP6183074B2 JP 6183074 B2 JP6183074 B2 JP 6183074B2 JP 2013182101 A JP2013182101 A JP 2013182101A JP 2013182101 A JP2013182101 A JP 2013182101A JP 6183074 B2 JP6183074 B2 JP 6183074B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
wire
saw
deflection
sic
ingot
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013182101A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015047673A (ja
Inventor
矢代 弘克
弘克 矢代
藤本 辰雄
辰雄 藤本
弘志 柘植
弘志 柘植
平野 芳生
芳生 平野
勝野 正和
正和 勝野
佐藤 信也
信也 佐藤
昌史 牛尾
昌史 牛尾
伊藤 渉
伊藤  渉
崇 藍郷
崇 藍郷
孝幸 矢野
孝幸 矢野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2013182101A priority Critical patent/JP6183074B2/ja
Publication of JP2015047673A publication Critical patent/JP2015047673A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6183074B2 publication Critical patent/JP6183074B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Processing Of Stones Or Stones Resemblance Materials (AREA)
  • Finish Polishing, Edge Sharpening, And Grinding By Specific Grinding Devices (AREA)
  • Mechanical Treatment Of Semiconductor (AREA)

Description

本発明は、炭化珪素単結晶インゴット、シリコン単結晶インゴット、サファイアインゴット、ガーネットインゴット等の各種のインゴットを始めとする種々のブロック状の加工対象物を切断(スライス)し、基板(ウェハ)等の板状体の多数枚を同時に切り出すマルチワイヤー加工方法であり、スライス時に発生する板状体の反りを低減することができるマルチワイヤー加工方法及びマルチワイヤー加工装置に関する。
例えば、半導体材料として広く利用されている単結晶シリコンウェハの製造過程では、シリコン単結晶インゴットを製造した後、このインゴットからウェハを切り出すスライス工程が必須である。そして、このスライス工程では、従来、内周スライサに依るウェハ切断加工が行われてきたが、この方法はウェハを一枚ずつスライスして切り出すために能率が悪く、近年では多数枚のウェハを同時にスライスして切り出すことができるマルチワイヤーソーによるマルチワイヤー加工技術が開発され、実用化された。
このマルチワイヤー加工技術については、対向して平行に配設された一対の多溝滑車(ワークローラー)を有し、これら多溝滑車の多数の溝内に互いに平行に多数のソーワイヤーを配列し、これら多数のソーワイヤーを高速で走行させ、この高速で走行するソーワイヤーに加工対象物を押し付けると共にこれら加工対象物とソーワイヤーの摺動部に遊離砥粒やクーラントを供給して加工対象物の切断加工を行なう方法や、ソーワイヤーとしてその表面に砥粒を固定した固定砥粒ワイヤーを用い、遊離砥粒を用いずにクーラントだけを用いる方法が知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。
これらのマルチワイヤー加工方法において、理想的な条件でスライスすることができれば、用いるソーワイヤーの直径程度の切り代で、かつ、切断面が完全に平坦な板状体を切り出せるはずである。しかしながら、実際には、様々な要因が複雑に原因して、完全に平坦な板状体を切り出すことはできず、切り出された板状体には厚みのバラつきと反りという二つの問題が発生する。
そこで、例えば、特許文献2においては、ワーク(加工対象物)をスライス加工する際に、スライス加工用ワイヤ(ソーワイヤー)の走行停止時にワークの指示方向を調節してワイヤー走行方向とスライス開始面との間の平行出しを行い、これによってマルチワイヤーソーでスライスされて切り出されたウェハの厚みのバラつきを低減する方法が開示されている。しかしながら、この特許文献2を始めとして、上記の特許文献1〜4においては、切り出されたウェハの反りの問題については触れられていない。
特開2000‐094,297号公報 特開2011‐79,135号公報 特開2012-682号公報 特開2009‐102,196号公報
ところで、マルチワイヤー加工方法でスライスされたウェハは、ラップとポリッシュの研磨工程を経て、ベアウェハ製品としてユーザーに提供される。そして、切り出されたウェハにおける厚みのバラつきと反りは上記の研磨工程で改善されるが、これら厚みのバラつきと反りが大きいと研磨工程での負荷が大きくなって時間とコストが嵩むことから、スライス工程では切り出されたウェハの厚みのバラつきと反りを極力小さくすることが求められている。特に、厚みのバラつきは研磨工程で両面研磨プロセスを採用することによって効果的に低減できるが、反りについては研磨工程での低減が難しい。例えば研磨工程で両面研磨プロセスを採用した場合、両面研磨プロセス途中においてはウェハが上下定盤に挟まれて反りの程度が小さく見えるが、上下定盤を外すと再び大きな反りとして現れる。従って、厚みのバラつきは研磨工程で挽回できるが、反りについては、研磨工程では挽回し難いので、スライス工程で極力小さくする必要がある。
そして、マルチワイヤー加工方法で切り出されたウェハの反りの問題については、原因が明確でない場合が多い。原因の可能性としては、例えば、加工時の発熱による加工装置内部品の熱膨張、加工時の摩耗による加工装置内部品の変形、インゴットに残留する歪等々、様々な要因が考えられるが、これら様々な要因が複雑に絡み合って反りを発生させているので、反りの要因やその影響力、本質的な反りのメカニズムを解明するのは容易ではない。
しかし、たとえ反りのメカニズムが解明できなくても、工業的には反りを低減して真直ぐにスライスすることが求められており、特にウェハを電子デバイスに加工して利用するユーザーからは強く求められている。すなわち、ウェハの表面に電子デバイス等を作製する場合、化学気相成長法等の方法でウェハ表面に薄いエピタキシャル膜を形成するが、その際に、ウェハは、雰囲気ガスが制御された成長室の中で、サセプタと呼ばれる発熱体に載せて高温に加熱される。そして、この際にウェハの反りが大きいと、サセプタとの接触(密着性)が不均一になり、ウェハ表面の温度が不均一になって、エピタキシャル膜の品質が低下し、良質な電子デバイス等の作製が困難になる。従って、ウェハの反りは、その原因の如何に拘らず、可及的に小さくすることが求められる。
ここで、加工対象物の材料が柔らかく、切り出される板状体の大きさに比べて比較的薄くスライスする場合には、反りの問題はさほど深刻ではない。例えば、5インチ角のポリシリコンを0.15mm厚さにスライスしてウェハを得る場合には、切り出されたウェハは柔軟に曲がるために反りは容易に矯正される。このため、ウェハが地面と垂直なスライス直後の状態で反りが大きくみえても、これを水平な定盤上に載置し地面と水平にすれば、ウェハの反りは弾性変形により自然に低減し解消される。
これに対して、加工対象物の材料が硬く、ウェハの大きさに比べて比較的厚くスライスする場合には、反りは深刻な問題となる。例えば、6インチφの炭化珪素単結晶インゴットを0.5mm厚さにスライスして炭化珪素単結晶ウェハを得る場合についてみると、ウェハは、その剛性が大きいために、反りが容易には矯正されない。そして、反りが大きいウェハを定盤上に載置して地面と水平にしても、反りは低減しない。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために、図1に示すマルチワイヤー加工装置を用い、炭化珪素単結晶インゴット(SiCインゴット)をスライスして切り出された炭化珪素単結晶ウェハ(SiCウェハ)の反りに関する多くのデータを蓄積し、スライス途中でのソーワイヤーの変位(たわみ)との関係を詳細に調べた。このマルチワイヤー加工装置において、SiCインゴット1とソーワイヤー2とは図1中のXYZ座標系に示す配置関係にあり、ソーワイヤー2はX方向に走行し、また、SiCインゴット1はZ方向にゆっくりとソーワイヤー2に対して押し付けられて切断される。そして、このXYZ座標系内においてスライスして切り出されたSiCウェハの表面は、スライス直後には理想的にはXZ面を形成するはずであるが、実際には、スライス途中にソーワイヤー2にたわみ(複雑な変位)が発生する。そして、本発明者らは、このソーワイヤー2のたわみとSiCウェハの反りとの関係を検討する中で、SiCウェハの反りがソーワイヤー2のたわみに起因して発生し、また、このたわみのZ方向変位成分はSiCウェハの反りに影響しないが、Y方向変位成分についてはSiCウェハの反りに影響を及ぼすことを突き止めた。
なお、図1において、符号3はワークローラーであり、符号4はダイヤモンドスラリー又は加工液であり、符号5はインゴットの移動方向、すなわちソーワイヤー切断方向(Z方向)である。また、SiCウェハの反りの測定は、測定機として市販の表面粗さ測定機又は輪郭形状測定機を用い、スライスして切り出されたSiCウェハの表面に沿って触針式プローブを走査させて行った。
すなわち、上記のマルチワイヤー加工装置を用いて得られた反りのデータを解析したところ、プローブをZ方向に走査して測定した反りは大きくなるが、それに対してプローブをX方向に走査して測定した反りは無視できる程度に小さいことが明らかになった。具体的には、プローブをZ方向に走査して測定された反りの大きさが数10μmから100μm程度までの大きさであるのに対して、プローブをX方向に走査して測定した反りの大きさは10μm以下であった。従って、プローブをZ方向に走査して測定される反り(ウェハ表面形状のY方向の変位)のみに着目し、その際に求められる反りを低減させることが結果的にSiCウェハの反りを防止する上で効果的であることが判明した。そして、同じマルチワイヤー加工装置で1つのSiCインゴットから同時にスライスして切り出された複数のSiCウェハの反りについては、互いに類似した傾向があることが判明し、また、同じマルチワイヤー加工装置を用いて同じ条件でスライスし切り出すことにより、実質的に同じ方法及び条件で製造された複数のSiCインゴットから切り出されたSiCウェハの反りについても、互いに類似した傾向があることが判明した。更に、複数のSiCウェハから得られた複数の反りのデータにおける平均的な反りのデータ(例えば、平均値や中央値等)に対応して反り防止の対策を採ることが効果的であることも判明した。
そこで、本発明者らは、上記の知見に基づいて、マルチワイヤー加工装置を用いて加工対象物をスライスし板状体を切り出す際に、切り出された板状体に生じる反りの大きさを可及的に低減させることについて鋭意検討した結果、マルチワイヤー加工中に生じるソーワイヤーのたわみについて、スライスして切り出された板状体やスライス中のソーワイヤー等から、ソーワイヤーの走行方向と切断方向とが形成する平面に対して垂直な方向の変位成分(Y方向変位成分)の変位量変化情報を取得し、この変位量変化情報に基づいて、マルチワイヤー加工中に生じるソーワイヤーに対して前記Y方向変位成分の変位量を低減させるように加工対象物を移動させることにより、目的を達成できることを突き止めた。
従って、本発明の目的は、反りが発生するメカニズムの如何にかかわらず、加工対象物を工業的に簡便かつ容易にスライスし、切り出される板状体の反りを可及的に低減することができるマルチワイヤー加工方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、反りが発生するメカニズムの如何にかかわらず、加工対象物を工業的に簡便かつ容易にスライスし、切り出される板状体の反りを可及的に低減することができるマルチワイヤー加工装置を提供することにある。
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)ブロック状の加工対象物をマルチワイヤーソーで切断して複数の板状体に加工するマルチワイヤー加工方法において、ソーワイヤーの走行方向をX方向とし、ソーワイヤーが加工対象物を切断するソーワイヤー切断方向をZ方向とし、また、XZ面に垂直な方向をY方向として、マルチワイヤー加工中に生じるソーワイヤーのたわみのY方向変位量をソーワイヤーから取得し、この取得されたY方向変位量の変化情報に応じて前記加工対象物をソーワイヤーのたわみのY方向に移動させ、前記XZ面からのY方向変位量を低減させながら前記加工対象物を切断するに際し、前記Y方向変位量の変化情報が、複数のソーワイヤーのたわみのY方向変位成分を測定して得られた複数のY方向変位量の平均値又は中央値に基づく情報であることを特徴とするマルチワイヤー加工方法である。
(2)前記Y方向変位量の変化情報が、n枚の板状体を挟むn+1本のソーワイヤーの画像情報を取得し、これらn+1本のソーワイヤーの画像情報から得られたソーワイヤーのたわみのY方向変位量の平均値又は中央値である前記(1)に記載のマルチワイヤー加工方法である。
(3)ブロック状の加工対象物が炭化珪素単結晶インゴットであり、また、板状体が炭化珪素単結晶基板であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のマルチワイヤー加工方法である。
(4)インゴットが炭化珪素単結晶インゴットであり、また、基板が炭化珪素単結晶基板であることを特徴とする前記(3)に記載のマルチワイヤー加工方法である。
(5)ブロック状の加工対象物をマルチワイヤーソーで切断して複数の板状体に加工するマルチワイヤー加工装置において、ソーワイヤーの走行方向をX方向とし、ソーワイヤーが加工対象物を切断するソーワイヤー切断方向をZ方向とし、また、XZ面に垂直な方向をY方向としたとき、前記加工対象物を切断して板状体に加工するマルチワイヤー加工中に、前記ソーワイヤーのたわみのY方向変位量をソーワイヤーから検知するY方向たわみ成分検知手段と、マルチワイヤー加工中に生じるソーワイヤーのたわみのY方向変位量の変化情報に応じて前記加工対象物をソーワイヤーのたわみのY方向に移動させ、前記XZ面からのY方向変位量を低減させながら加工対象物のY方向位置を制御する際に、前記Y方向変位量の変化情報として複数のソーワイヤーのたわみのY方向変位成分を測定して得られた複数のY方向変位量の平均値又は中央値に基づく情報を使用する加工位置制御手段を備えていることを特徴とするマルチワイヤー加工装置である。
(6)前記Y方向変位量の変化情報が、n枚の板状体を挟むn+1本のソーワイヤーの画像情報を取得し、これらn+1本のソーワイヤーの画像情報から得られたソーワイヤーのたわみのY方向変位量の平均値又は中央値であることを特徴とする請求項5に記載のマルチワイヤー加工装置である。
本発明によれば、反りが発生するメカニズムの如何にかかわらず、工業的に簡便かつ容易に加工対象物をスライスし、切り出される板状体の反りを低減し、反りの小さな板状体が得られる。
図1は、本発明方法を実施する際に使用するマルチワイヤー加工装置におけるインゴット(加工対象物)とワイヤーとの配置関係を、XYZ座標系で説明するための説明図である。
図2は、スライスして切り出された6インチφウェハ(板状体)の表面形状を触針式プローブで走査して測定された反りのデータである。
図3は、一個のインゴット(加工対象物)から同時にスライスして切り出された25枚の6インチφウェハ(板状体)の内の3枚について、その表面形状を触針式プローブで走査して測定された反りのデータである。
図4は、一個のインゴット(加工対象物)から同時にスライスして切り出された25枚の6インチφウェハ(板状体)の全てについて、そのウェハの表面形状を触針式プローブで走査して測定された反りのデータの平均値データある。
図5は、一個のインゴット(加工対象物)から同時にスライスして切り出された25枚の6インチφウェハ(板状体)の全てについて、そのウェハの表面形状を触針式プローブで走査して測定された反りのデータの中央値データある。
図6は、本発明方法を実施する際に使用するマルチワイヤー加工装置におけるインゴット(加工対象物)とワイヤーとワイヤーたわみ変位Y方向成分検知手段(デジタルカメラ等)とインゴットY方向位置制御手段(アクチュエーター等)の配置関係を、XZ面内で説明するための説明図である。
本発明のマルチワイヤー加工方法は、ブロック状の加工対象物をマルチワイヤーソーで切断して複数の板状体に加工するマルチワイヤー加工方法において、ソーワイヤーの走行方向をX方向とし、ソーワイヤーが加工対象物を切断するソーワイヤー切断方向をZ方向とし、また、XZ面に垂直な方向をY方向としたとして、マルチワイヤー加工中に生じるソーワイヤーのたわみのY方向変位量をマルチワイヤー加工中のソーワイヤーから取得し、この取得されたY方向変位量の変化情報に応じて前記加工対象物をソーワイヤーのたわみのY方向に移動させ、前記XZ面からのY方向変位量を低減させながら、前記加工対象物を例えばZ方向に移動させて切断する際に、前記Y方向変位量の変化情報が、複数のソーワイヤーのたわみのY方向変位成分を測定して得られた複数のY方向変位量の平均値又は中央値に基づく情報であることにより実現される。
なお、以下の説明において、上記の「Y方向変位成分を測定して得られたY方向変位量の情報」を『Y方向変位成分の変位量変化情報』と言うことがある。
本発明において、マルチワイヤー加工の加工対象物については、それが板状体を製造するためのブロック状のものであれば特に制限されるものではないが、好適には、電子デバイスに加工して用いられるウェハを製造するための炭化珪素単結晶インゴット(SiCインゴット)、シリコン単結晶インゴット、サファイアインゴット、ガーネットインゴット等の各種のインゴットであり、特に切り出されたウェハについて反りの問題が発生し易い炭化珪素単結晶ウェハ(SiCウェハ)を製造するためのSiCインゴットである。
以下に、インゴットからウェハをスライスして切り出す場合を例にして、本発明のマルチワイヤー加工方法を説明する。
また、本発明において、マルチワイヤー加工中に生じるソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報は、予めマルチワイヤー加工により切り出されたウェハの表面をソーワイヤー切断方向(Z方向)に走査し測定して得られたウェハの反りのデータとして取得されるか、あるいは、マルチワイヤー加工中にソーワイヤーから例えばその画像情報として取得される。
ここで、マルチワイヤー加工中に生じるソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報として前者の「ウェハの反りのデータ」を用いる場合、このウェハの反りのデータは次のようにして取得する。
予め1つのインゴットから切り出された複数のウェハの各々について、測定機として表面粗さ測定機や輪郭形状測定器等を用い、その表面をソーワイヤー切断方向(Z方向)に沿って触針式プローブを走査し測定して表面形状を反りのデータ(曲線)として取得する。
ここで、図2は、6インチφSiCウェハの表面形状を触針式プローブを走査して測定された反りのデータの一例である。この反りのデータの測定には、表面粗さ測定機〔(株)ミツトヨ社製:サーフテストSV-3100S8システム〕を使用した。また、この例では、プローブを6インチφSiCウェハの切り始めの点から切り終わりの点までZ方向に走査した。このSiCウェハの反りの最大値は、Z=45mmの位置での山の高さY=115μm(0.115mm)であった。
また、図3は、図2と同じ6インチφSiCインゴットからスライスしたSiCウェハ25枚の内から、例として選んだ3枚のSiCウェハについて、図2の場合と同様にして得られた反りのデータである。3枚各々反りの大きさは異なるが、3例とも表面形状は、全てにおいて凸型の二つ山が存在する。具体的にZ=100mmの位置での山の高さを読み取ると、左から、Y=92μm(0.092mm)、Y=73μm(0.073mm)、Y=75μm(0.075mm)であった。また、その他の22枚のSiCウェハも、それぞれ反りの大きさは異なるが、表面形状は類似している。
そこで、次に、1つのインゴットから切り出された全てのウェハの反りのデータを解析し、全てのウェハを代表する平均的な反りのデータ(曲線)を導出する。
例えば、1つのSiCインゴットから切り出されたSiCウェハが25枚であり、各々のSiCウェハのZ=100mmでの山の高さY(μm)は、Y(μm)=93、92、91、91、91、90、90、89、89、84、79、75、75、75、74、74、73、73、72、72、71、71、71、70、及び70であった。これらのデータの平均値は79.8μmであるから、このSiCインゴットにおけるZ=100mmでの山の高さY(μm)の平均値は79.8μmとなる。同様にしてZ=0〜150mmの範囲でそれぞれ山の高さY(μm)の平均値を求め、得られたZ=0〜150mmの範囲での各山の高さY(μm)の平均値から形成される曲線が全SiCウェハ25枚を代表する反りのデータの平均値曲線となり、その一例を示すと図4の通りである。
他方、これらの25点のデータの中央値は75μmであるから、このSiCインゴットにおけるZ=100mmでの山の高さY(μm)の中央値は75μmとなる。同様にしてZ=0〜150mmの範囲で中央値を求め、得られたZ=0〜150mmの範囲での各山の高さY(μm)の中央値から形成される曲線が全SiCウェハ25枚を代表する反りのデータの中央値曲線となり、その一例を示すと図5の通りである。
以上のようにして取得されたウェハの反りのデータ、好ましくはその平均値又は中央値をマルチワイヤー加工中に生じるソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報として用いる場合、このウェハの反りのデータをマルチワイヤー加工装置のインゴット移動手段にその制御機構として組み込み、インゴットのマルチワイヤー加工時に、このマルチワイヤー加工中に生じるソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報に応じて、前記XZ面からのY方向変位量を低減させる方向、すなわちソーワイヤーのたわみのY方向にインゴットを移動させる。この際に、ウェハの反りのデータの平均値曲線を用い、図1の配置でインゴットをZ方向(ソーワイヤー切断方向)に移動させて切断する際に、図4に従ってインゴットをY方向に移動させると、また、ウェハの反りのデータの中央値曲線を用い、図1の配置でインゴットをZ方向(ソーワイヤー切断方向)に移動させて切断する際に、図5に従ってインゴットをY方向に移動させると、いずれの場合も平均的に誤差が抑制されて、ウェハの反りが低減される。
また、マルチワイヤー加工中に生じるソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報として後者の「ソーワイヤーから取得される情報」を用いる場合には、デジタルカメラ等の手段でスライス中にソーワイヤーの画像を取得し、この取得した画像を解析してソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化を経時的に取得し、マルチワイヤー加工中にインゴットをY方向に移動させるインゴット移動手段の制御情報とする。そして、この際に、n枚のウェハを切り出す時はウェハを挟むn+1本のソーワイヤーの画像を取得し、これらn+1本のソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の平均値又は中央値を算出し、これらY方向変位成分の平均値又は中央値に相当するだけインゴットをY方向に移動させると、いずれの場合も平均的に誤差が抑制されて、ウェハの反りが低減される。
本発明のマルチワイヤー加工方法は、電気抵抗が比較的大きいインゴットをスライス加工する場合に一般的に採用されるマルチワイヤーソー加工技術に適用されるだけでなく、電気抵抗が比較的小さいインゴットをスライス加工する場合に採用されるマルチワイヤー放電加工技術(ワイヤーカット放電加工技術;特開平9‐248,719号、特開2000‐94,221号等の各公報参照)に対しても適用することができる。例えば、キャリア濃度が1×1017cm-3以上のSiCインゴットは、その電気抵抗が小さいので、このマルチワイヤー放電加工によりスライスしてウェハ化される。
マルチワイヤー放電加工技術では、ソーワイヤーとして、放電加工に耐え得る導電性と保持に耐え得る引張り強度とを備えたワイヤーが用いられ、具体的にはピアノ線等の鋼線、真鍮線、タングステン線、モリブデン線、等の金属ワイヤーを例示することができる。
そして、マルチワイヤーソー加工技術では、ソーワイヤーとしては、機械加工に耐え得る引張り強度を備えていればよく、具体的にはピアノ線等の鋼線、真鍮線、タングステン線、モリブデン線、等の金属ワイヤーや、カーボンファイバー等を例示することができ、また、砥粒については、インゴットより高い硬度を備えている必要があり、具体的には例えばダイヤモンド、CBN、B4C等の砥粒を例示することができる。
更に、ソーワイヤーとしてワイヤー本体表面に砥粒が固定された固定砥粒ワイヤーを用いる場合、ワイヤー本体に砥粒を固着するための固定手段としては、機械加工に耐えうる強度を備えていればよく、具体的には例えばNi、Ti等の固定剤を用いた電気メッキ、金属ハンダ、樹脂等の方法を例示することができる。ここで、特に高硬度のSiCインゴットの切断加工に用いる固定砥粒ワイヤーとして好ましいのは、ピアノ線の表面にダイヤモンド砥粒を金属ハンダあるいは電気メッキで固定したダイヤモンド固定砥粒ワイヤーである。
マルチワイヤー放電加工技術に本発明のマルチワイヤー加工方法を適用する際のソーワイヤーの走行速度は、放電でソーワイヤーが損耗して細くなるのを補うために必要な新線の繰出し速度に相当し、ウェハ一枚当たり、通常1m/分以上10m/分以下、好ましくは2m/分以上8m/分以下の速度である。この放電加工時のソーワイヤー走行速度が1m/分より遅いとワイヤーコストが大きくなるという問題が生じる虞があり、反対に、10m/分より速くなると損耗によりソーワイヤーが断線するという問題が生じる虞がある。
マルチワイヤーソー加工技術に本発明のマルチワイヤー加工方法を適用する際のソーワイヤー走行速度は、通常100m/分以上、好ましくは400m/分以上2000m/分以下であるのがよい。ソーワイヤー走行速度が100m/分より遅いと、スライス能率の低下という問題が生じる虞が生じる。
更に、本発明において、Z方向へのインゴットの移動速度(ソーワイヤーによるインゴットの切断速度)は、遅いほど切断精度が上がり、また、速いほど切断効率が上がるが、両者のバランスから、通常0.02mm/分以上10mm/分以下、好ましくは0.04mm/分以上2mm/分以下の範囲がよい。また、押付け圧力については特に規定しないが、インゴットの移動速度が好ましい範囲になるような条件で、ソーワイヤーにテンションを掛けると、ソーワイヤーがインゴットに押し付けられるので、ソーワイヤーを引っ張るテンションを規定すると、このテンションは、大きいほど切断精度が上がるが、大きすぎると断線を生じる虞があり、そこで、テンションの範囲としては通常100〜4000MPaの範囲に設定するのがよい。
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例及び比較例に制限されるものではない。
〔実施例1(参考例)
同じ装置を用いて同じ成長条件で昇華再結晶法(改良レイリー法)により合計7個の炭化珪素単結晶インゴット(SiCインゴット)を作製した。これらのSiCインゴットは、いずれも窒素濃度が5.8×1018cm-3以上1.2×1019cm-3以下で、キャリア濃度が1×1018cm-3以上2×1018cm-3以下で、比抵抗が0.008Ωcm以上0.017Ωcm以下であって、直径が150mmφであった。
先ず、上で得られたSiCインゴットの1つについて、直径0.2mmφの真鍮線を用い、5m/分で新線を繰り出し、インゴットを1mm/時でZ方向に移動させる条件で、SiCインゴットを図1のY方向に移動させることなく、従来と同様のマルチワイヤー放電加工技術の手法で、10枚の厚さ0.8mmの6インチφSiCウェハを切り出した。得られた各SiCウェハについて、表面粗さ測定機〔(株)ミツトヨ社製:サーフテストSV-3100S8システム〕を用い、プローブをウェハの切り始め切断開始点から切り終わり切断終点までZ方向に走査し、SiCウェハの反りを測定した。その結果、得られた10枚のSiCウェハの反りの値は、125、110、96、102、106、121、123、131、136、及び133であり、96〜136μmと大きかった。
上記の10枚のSiCウェハから得られた反りのデータを用い、その平均値曲線を導出し、マルチワイヤー加工中におけるワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報とした。
次に、上で得られたSiCインゴットの1つについて、上記のワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報(平均値曲線)に基づいてSiCインゴットを図1のY方向に移動させたこと以外は、上記と同様の条件でマルチワイヤー放電加工を実施し、上記と同様に10枚の厚さ0.8mmの6インチφSiCウェハを切り出し、上記と同じ表面粗さ測定機を用い、同じ条件で各SiCウェハの反りを測定した。その結果、得られた10枚のSiCウェハの反りの値は、25、26、21、32、27、31、29、33、35、及び35であり、全て35μm以下であって、効果的に反りの低減を達成することができた。
〔実施例2(参考例)
上記の実施例1で作製したSiCインゴットの1つを用い、9枚のSiCウェハを切り出した以外は、上記実施例1と同様にして各SiCウェハの反りを測定し、その中央値曲線を導出してマルチワイヤー加工中におけるワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報とした。
その時の9枚のSiCウェハの反りの値は、124、111、97、112、123、121、133、138、及び131であって、97〜138μmと大きかった。
次に、上記の実施例1で得られたSiCインゴットの1つについて、上で得られたワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報(中央値曲線)に基づいてSiCインゴットを図1のY方向に移動させたこと以外は、上記と同様の条件でマルチワイヤー放電加工を実施し、また、各SiCウェハの反りを測定した。
得られた9枚のSiCウェハの反りの値は、29、28、26、27、34、30、24、31、及び37であり、全て37μm以下であって、効果的に反りの低減を達成することができた。
〔実施例3〕
上記の実施例1で作製したSiCインゴットの1つを用い、5枚のSiCウェハを切り出す際に6本のワイヤー(直径0.2mmφの真鍮線)を使用し、実施例1と同様の条件でマルチワイヤー放電加工を行う際に、スライス中に各ワイヤーの画像を取得し、この画像をパーソナルコンピューターで解析してワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報を平均値として求め、得られた変位量変化情報(平均値曲線)に基づいてSiCインゴットをY方向に移動させながら、スライスして5枚のSiCウェハを切り出した。
得られた5枚のSiCウェハについて、上記の実施例1と同様にして反りを測定した結果、反りの値は、29、27、34、31、及び33であり、全て34μm以下であって、反りの小さなウェハが得られた。
〔実施例4〕
上記の実施例1で作製したSiCインゴットの1つを用い、4枚のSiCウェハを切り出す際に5本のワイヤー(直径0.2mmφの真鍮線)を使用し、実施例1と同様の条件でマルチワイヤー放電加工を行う際に、スライス中に各ワイヤーの画像を取得し、この画像をパーソナルコンピューターで解析してワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報を中央値として求め、得られた変位量変化情報(中央値曲線)に基づいてSiCインゴットをY方向に移動させながら、スライスして4枚のSiCウェハを切り出した。
得られた4枚のSiCウェハについて、上記の実施例1と同様にして反りを測定した結果、反りの値は、26、34、30、及び37であり、全て37μm以下であって、反りの小さなウェハが得られた。
〔比較例1〕
上記の実施例1で作製したSiCインゴットの1つを用い、ワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報に基づくSiCインゴットのY方向移動を行わなかったこと以外は、上記各実施例1〜4と同じ条件で、マルチワイヤー放電加工を実施し、5枚のSiCウェハを切り出して反りを測定した。
得られた反りの値は、127、107、139、101、及び113であり、全て100μm以上の反りの大きなウェハであった。
〔実施例5(参考例)
同じ装置を用いて同じ成長条件で昇華再結晶法(改良レイリー法)により合計14個の炭化珪素単結晶インゴット(SiCインゴット)を作製した。これらのSiCインゴットは、いずれも窒素濃度が2.9×1018cm-3以上5.8×1018cm-3以下で、キャリア濃度が5×1017cm-3以上1×1018cm-3以下で、比抵抗が0.017Ωcm以上0.034Ωcm以下であって、直径が150mmφであった。
先ず、上で得られたSiCインゴットの1つについて、直径0.16mmφのピアノ線を用い、20m/分で新線を繰り出し、ソーワイヤーを600m/分で走行させ、インゴットを1mm/時でZ方向に移動させる条件で、SiCインゴットを図1のY方向に移動させることなく、従来と同様のマルチワイヤーソー加工技術の手法で、10枚の厚さ0.74mmの6インチφSiCウェハを切り出した。得られた各SiCウェハについて、実施例1と同様に表面粗さ測定機を用いてウェハの切断開始点から切断終点までZ方向に走査し、SiCウェハの反りを測定した。その結果、得られた10枚のSiCウェハの反りの値は、123、111、97、112、126、125、124、133、135、及び131であり、97〜135μmと大きかった。
上記の10枚のSiCウェハから得られた反りのデータを用い、その平均値曲線を導出し、マルチワイヤー加工中におけるソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報とした。
次に、上で得られたSiCインゴットの1つについて、上記のソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報(平均値曲線)に基づいてSiCインゴットを図1のY方向に移動させたこと以外は、上記と同様の条件でマルチワイヤーソー加工を実施し、上記と同様に10枚の厚さ0.74mmの6インチφSiCウェハを切り出し、上記と同じ表面粗さ測定機を用い、同じ条件で各SiCウェハの反りを測定した。その結果、得られた10枚のSiCウェハの反りの値は、26、25、24、33、26、21、25、31、34、及び32であり、全て34μm以下であって、効果的に反りの低減を達成することができた。
〔実施例6(参考例)
上記の実施例5で作製したSiCインゴットの1つを用い、9枚のSiCウェハを切り出した以外は、上記実施例5と同様にして各SiCウェハの反りを測定し、その中央値曲線を導出してマルチワイヤー加工中におけるソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報とした。
その時の9枚のSiCウェハの反りの値は、125、121、96、114、129、115、113、138、及び137であって、96〜138μmと大きかった。
次に、上記の実施例5で得られたSiCインゴットの1つについて、上で得られたソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報(中央値曲線)に基づいてSiCインゴットを図1のY方向に移動させたこと以外は、上記と同様の条件でマルチワイヤーソー加工を実施し、また、各SiCウェハの反りを測定した。
得られた9枚のSiCウェハの反りの値は、35、29、28、23、34、35、27、24、及び36であり、全て36μm以下であって、効果的に反りの低減を達成することができた。
〔実施例7〕
上記の実施例5で作製したSiCインゴットの1つを用い、5枚のSiCウェハを切り出す際に6本のソーワイヤー(直径0.16mmφのピアノ線)を使用し、実施例5と同様の条件でマルチワイヤー加工を行う際に、スライス中に各ソーワイヤーの画像を取得し、この画像をパーソナルコンピューターで解析してソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報を平均値として求め、得られた変位量変化情報(平均値)に基づいてSiCインゴットをY方向に移動させながら、スライスして5枚のSiCウェハを切り出した。
得られた5枚のSiCウェハについて、上記の実施例1と同様にして反りを測定した結果、反りの値は、23、24、33、30、及び32であり、全て33μm以下であって、反りの小さなウェハが得られた。
〔実施例8〕
上記の実施例5で作製したSiCインゴットの1つを用い、4枚のSiCウェハを切り出す際に5本のソーワイヤー(直径0.16mmφのピアノ線)を使用し、実施例5と同様の条件でマルチワイヤー加工を行う際に、スライス中に各ソーワイヤーの画像を取得し、この画像をパーソナルコンピューターで解析してソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報を中央値として求め、得られた変位量変化情報(中央値)に基づいてSiCインゴットをY方向に移動させながら、スライスして4枚のSiCウェハを切り出した。
得られた4枚のSiCウェハについて、上記の実施例1と同様にして反りを測定した結果、反りの値は、29、35、36、及び30であり、全て36μm以下であって、反りの小さなウェハが得られた。
〔比較例2〕
上記の実施例5で作製したSiCインゴットの1つを用い、ソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報に基づくSiCインゴットのY方向移動を行わなかったこと以外は、上記各実施例5〜8と同じ条件で、マルチワイヤーソー加工を実施し、5枚のSiCウェハを切り出して反りを測定した。
得られた反りの値は、129、117、137、100、及び141であり、全て100μm以上の反りの大きなウェハであった。
〔実施例9(参考例)
上記の実施例5で作製したSiCインゴットの1つについて、ソーワイヤーとして直径0.23mmφのダイヤモンド固定砥粒ワイヤーを用い、10m/分で新線を繰り出し、ソーワイヤーを1000m/分で走行させ、インゴットを5mm/時でZ方向に移動させる条件で、SiCインゴットを図1のY方向に移動させることなく、従来と同様のマルチワイヤー放電加工技術の手法で、10枚の厚さ0.67mmの6インチφSiCウェハを切り出した。得られた各SiCウェハについて、実施例5と同様に表面粗さ測定機を用いてウェハの切断開始点から切断終点までZ方向に走査し、SiCウェハの反りを測定した。その結果、得られた10枚のSiCウェハの反りの値は、99、115、120、132、136、127、114、131、130、及び113であり、99〜136μmと大きかった。
上記の10枚のSiCウェハから得られた反りのデータを用い、その平均値曲線を導出し、マルチワイヤー加工中におけるソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報とした。
次に、上で得られたSiCインゴットの1つについて、上記のソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報(平均値曲線)に基づいてSiCインゴットを図1のY方向に移動させたこと以外は、上記と同様の条件でマルチワイヤー放電加工を実施し、上記と同様に10枚の厚さ0.67mmの6インチφSiCウェハを切り出し、上記と同じ表面粗さ測定機を用い、同じ条件で各SiCウェハの反りを測定した。その結果、得られた10枚のSiCウェハの反りの値は、27、28、22、33、28、29、27、32、30、及び31であり、全て33μm以下であって、効果的に反りの低減を達成することができた。
〔実施例10(参考例)
上記の実施例5で作製したSiCインゴットの1つを用い、9枚のSiCウェハを切り出した以外は、上記実施例9と同様にして各SiCウェハの反りを測定し、その中央値曲線を導出してマルチワイヤー加工中におけるソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報とした。
その時の9枚のSiCウェハの反りの値は、115、124、129、113、97、107、119、137、及び139であって、97〜139μmと大きかった。
次に、上記の実施例5で得られたSiCインゴットの1つについて、上で得られたソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報(中央値曲線)に基づいてSiCインゴットを図1のY方向に移動させたこと以外は、上記と同様の条件でマルチワイヤー放電加工を実施し、また、各SiCウェハの反りを測定した。
得られた9枚のSiCウェハの反りの値は、32、27、26、29、31、35、23、34、及び34であり、全て35μm以下であって、効果的に反りの低減を達成することができた。
〔実施例11〕
上記の実施例5で作製したSiCインゴットの1つを用い、5枚のSiCウェハを切り出す際に6本のソーワイヤー(直径0.23mmφのダイヤモンド固定砥粒ワイヤー)を使用し、実施例9と同様の条件でマルチワイヤー加工を行う際に、スライス中に各ソーワイヤーの画像を取得し、この画像をパーソナルコンピューターで解析してソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報を平均値として求め、得られた変位量変化情報(平均値)に基づいてSiCインゴットをY方向に移動させながら、スライスして5枚のSiCウェハを切り出した。
得られた5枚のSiCウェハについて、上記の実施例1と同様にして反りを測定した結果、反りの値は、32、30、33、31、及び34であり、全て34μm以下であって、反りの小さなウェハが得られた。
〔実施例12〕
上記の実施例5で作製したSiCインゴットの1つを用い、4枚のSiCウェハを切り出す際に5本のソーワイヤー(直径0.23mmφのダイヤモンド固定砥粒ワイヤー)を使用し、実施例5と同様の条件でマルチワイヤー加工を行う際に、スライス中に各ソーワイヤーの画像を取得し、この画像をパーソナルコンピューターで解析してソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報を中央値として求め、得られた変位量変化情報(中央値)に基づいてSiCインゴットをY方向に移動させながら、スライスして4枚のSiCウェハを切り出した。
得られた4枚のSiCウェハについて、上記の実施例1と同様にして反りを測定した結果、反りの値は、32、30、33、及び35であり、全て35μm以下であって、反りの小さなウェハが得られた。
〔比較例3〕
上記の実施例5で作製したSiCインゴットの1つを用い、ソーワイヤーのたわみのY方向変位成分の変位量変化情報に基づくSiCインゴットのY方向移動を行わなかったこと以外は、上記各実施例9〜12と同じ条件で、マルチワイヤー加工を実施し、5枚のSiCウェハを切り出して反りを測定した。
得られた反りの値は、120、139、127、106、及び143であり、全て100μm以上の反りの大きなウェハであった。
1…インゴット(加工対象物)、2…ワイヤー、3…ワークローラー、4…ダイヤモンドスラリー又は加工液、5…インゴットの移動方向〔切断方向(Z方向)〕、6…インゴットをY方向に制御移動させるアクチュエーター、7…デジタルカメラ。

Claims (6)

  1. ブロック状の加工対象物をマルチワイヤーソーで切断して複数の板状体に加工するマルチワイヤー加工方法において、ソーワイヤーの走行方向をX方向とし、ソーワイヤーが加工対象物を切断するソーワイヤー切断方向をZ方向とし、また、XZ面に垂直な方向をY方向として、マルチワイヤー加工中に生じるソーワイヤーのたわみのY方向変位量をマルチワイヤー加工中のソーワイヤーから取得し、この取得されたY方向変位量の変化情報に応じて前記加工対象物をソーワイヤーのたわみのY方向に移動させ、前記XZ面からのY方向変位量を低減させながら前記加工対象物を切断するに際し、前記Y方向変位量の変化情報が、複数のソーワイヤーのたわみのY方向変位成分を測定して得られた複数のY方向変位量の平均値又は中央値に基づく情報であることを特徴とするマルチワイヤー加工方法。
  2. 前記Y方向変位量の変化情報が、n枚の板状体を挟むn+1本のソーワイヤーの画像情報を取得し、これらn+1本のソーワイヤーの画像情報から得られたソーワイヤーのたわみのY方向変位量の平均値又は中央値であることを特徴とする請求項1に記載のマルチワイヤー加工方法。
  3. ブロック状の加工対象物がインゴットであり、また、板状体が基板であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチワイヤー加工方法。
  4. インゴットが炭化珪素単結晶インゴットであり、また、基板が炭化珪素単結晶基板であることを特徴とする請求項3に記載のマルチワイヤー加工方法。
  5. ブロック状の加工対象物をマルチワイヤーソーで切断して複数の板状体に加工するマルチワイヤー加工装置において、ソーワイヤーの走行方向をX方向とし、ソーワイヤーが加工対象物を切断するソーワイヤー切断方向をZ方向とし、また、XZ面に垂直な方向をY方向としたとき、前記加工対象物を切断して板状体に加工するマルチワイヤー加工中に、前記ソーワイヤーのたわみのY方向変位量をソーワイヤーから検知するY方向たわみ成分検知手段と、マルチワイヤー加工中に生じるソーワイヤーのたわみのY方向変位量の変化情報に応じて前記加工対象物をソーワイヤーのたわみのY方向に移動させ、前記XZ面からのY方向変位量を低減させながら加工対象物のY方向位置を制御する際に、前記Y方向変位量の変化情報として複数のソーワイヤーのたわみのY方向変位成分を測定して得られた複数のY方向変位量の平均値又は中央値に基づく情報を使用する加工位置制御手段を備えていることを特徴とするマルチワイヤー加工装置。
  6. 前記Y方向変位量の変化情報が、n枚の板状体を挟むn+1本のソーワイヤーの画像情報を取得し、これらn+1本のソーワイヤーの画像情報から得られたソーワイヤーのたわみのY方向変位量の平均値又は中央値であることを特徴とする請求項5に記載のマルチワイヤー加工装置。
JP2013182101A 2013-09-03 2013-09-03 反りの低減が可能なマルチワイヤー加工方法及びマルチワイヤー加工装置 Active JP6183074B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013182101A JP6183074B2 (ja) 2013-09-03 2013-09-03 反りの低減が可能なマルチワイヤー加工方法及びマルチワイヤー加工装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013182101A JP6183074B2 (ja) 2013-09-03 2013-09-03 反りの低減が可能なマルチワイヤー加工方法及びマルチワイヤー加工装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015047673A JP2015047673A (ja) 2015-03-16
JP6183074B2 true JP6183074B2 (ja) 2017-08-23

Family

ID=52698134

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013182101A Active JP6183074B2 (ja) 2013-09-03 2013-09-03 反りの低減が可能なマルチワイヤー加工方法及びマルチワイヤー加工装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6183074B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6579889B2 (ja) * 2015-09-29 2019-09-25 昭和電工株式会社 炭化珪素単結晶基板の製造方法
DE102018221921A1 (de) * 2018-12-17 2020-06-18 Siltronic Ag Verfahren zur Herstellung von Halbleiterscheiben mittels einer Drahtsäge
DE102018221922A1 (de) * 2018-12-17 2020-06-18 Siltronic Ag Verfahren zur Herstellung von Halbleiterscheiben mittels einer Drahtsäge, Drahtsäge und Halbleiterscheibe aus einkristallinem Silizium
CN113815138B (zh) * 2021-09-29 2023-08-22 西安奕斯伟材料科技股份有限公司 改善氮掺杂晶圆翘曲度的加工方法和***
CN117656266A (zh) * 2022-08-31 2024-03-08 天津市环智新能源技术有限公司 一种线网异常的处理方法及处理***

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10249700A (ja) * 1997-03-17 1998-09-22 Super Silicon Kenkyusho:Kk ワイヤソーによるインゴットの切断方法及び装置
JPH11165251A (ja) * 1997-12-04 1999-06-22 Tokyo Seimitsu Co Ltd 固定砥粒ワイヤソーのワイヤ列変位制御方法及び装置
JP2000061801A (ja) * 1998-08-18 2000-02-29 Hitachi Ltd 切断方法および装置ならびに半導体装置の製造方法
JP2005103683A (ja) * 2003-09-29 2005-04-21 Toshiba Ceramics Co Ltd ワイヤソー
JP2007326167A (ja) * 2006-06-07 2007-12-20 Toyo Advanced Technologies Co Ltd ワイヤソー
JP5003294B2 (ja) * 2007-06-08 2012-08-15 信越半導体株式会社 切断方法
JP5201086B2 (ja) * 2009-06-10 2013-06-05 信越半導体株式会社 ワークの切断方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015047673A (ja) 2015-03-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6183074B2 (ja) 反りの低減が可能なマルチワイヤー加工方法及びマルチワイヤー加工装置
JP5944873B2 (ja) 炭化珪素単結晶ウェハの内部応力評価方法、及び炭化珪素単結晶ウェハの反りの予測方法
CN110079862B (zh) 碳化硅单晶衬底、碳化硅外延衬底及它们的制造方法
JP7406914B2 (ja) SiCウェハ及びSiCウェハの製造方法
JP2008103650A (ja) SiC単結晶基板の製造方法、及びSiC単結晶基板
JP7080552B2 (ja) 切削ブレードのドレッシング方法
JP2011051025A (ja) ワイヤソー装置
WO2013061788A1 (ja) 炭化珪素基板の製造方法および炭化珪素基板
JP2017228660A (ja) 炭化珪素半導体装置の製造方法
JP5287571B2 (ja) シリコンウェーハの機械的強度測定装置および測定方法
US8469703B2 (en) Vertical boat for heat treatment and heat treatment method of semiconductor wafer using thereof
JP6489853B2 (ja) マルチワイヤー加工方法及びマルチワイヤー加工装置
JP6230112B2 (ja) ウェハの製造方法およびウェハの製造装置
JP5233241B2 (ja) 炭化珪素ウェハの製造方法
JP5806082B2 (ja) 被加工物の切断方法
JP2010021394A (ja) 半導体ウェーハの製造方法
JP2015225902A (ja) サファイア基板、サファイア基板の製造方法
JP2006294774A (ja) 半導体ウエーハの評価方法及び評価装置並びに半導体ウエーハの製造方法
JP6260603B2 (ja) 炭化珪素単結晶基板、炭化珪素エピタキシャル基板およびこれらの製造方法
JP4995103B2 (ja) 研磨用定盤
JP4962261B2 (ja) 炭化珪素半導体装置の製造方法
JP2018039731A (ja) 炭化珪素単結晶基板および炭化珪素エピタキシャル基板
JP2014017358A (ja) 炭化珪素基板およびその製造方法
JP5355249B2 (ja) ワイヤーソー装置
KR102477930B1 (ko) 웨이퍼의 양면연마방법 및 양면연마장치

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160512

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170228

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170227

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170501

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170523

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170607

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170627

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170710

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6183074

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350