JP6182004B2 - マスターバッチ - Google Patents
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Description
そこで、樹脂ペレットおよび発泡成分を、あらかじめ、樹脂ペレットの軟化温度以上で且つ発泡成分の発泡温度以下の温度で混練し、熱膨張性微小球を含有しペレット化したマスターバッチを作製する方法が行われている。
しかし、特許文献1では、発泡成形体における発泡成分の分散性は向上しているが、マスターバッチの硬度が高いので、押出成形機への供給時にマスターバッチが原料供給口でのシリンダーへの噛みこみが不安定となることがある。また、その影響により、シリンダー内にマスターバッチが安定に供給されないことで、得られる発泡成形体に発泡ムラが生じたり、成形機から吐出される発泡シートの吐出量が不安定になったりするという問題があった。
すなわち、本発明にかかるマスターバッチは、熱可塑性樹脂からなる外殻とそれに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球と、A硬度が15〜54である熱可塑性エラストマーとを含む。
(A)前記熱膨張性微小球の重量割合が前記熱膨張性微小球および熱可塑性エラストマーの合計量の20〜70重量%である。
(B)前記熱可塑性樹脂がニトリル系単量体を含む重合性成分を重合してなる。前記重合性成分がカルボキシル基含有単量体をさらに含むとよい。前記重合性成分がカルボキシル基含有単量体をさらに含む場合、前記熱膨張性微小球が周期表3〜12族に属する金属を含有する有機化合物で表面処理されてなるとよい。
(C)前記熱膨張性微小球の膨張開始温度が100℃以上である。
本発明の発泡成形体は、上記マスターバッチおよびマトリックス成分を含む組成物を成形してなる。
本発明の発泡成形体は、熱膨張性微小球の分散性に優れるマスターバッチを用いて成形してなるので、発泡倍率にばらつきがなく安定している。
熱膨張性微小球は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球である。
熱膨張性微小球の平均粒子径については特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、より好ましくは2〜80μm、さらに好ましくは3〜60μm、特に好ましくは5〜50μmである。平均粒子径が1μmより小さい場合、膨張性能が低くなることがある。平均粒子径が100μmより大きい場合、発泡成形体中における気泡径が大きくなり強度が低下する可能性がある。
熱膨張性微小球の膨張開始温度(Ts)は、有機基材成分の軟化温度より高ければ特に限定されないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上、特に好ましくは170℃以上、最も好ましくは190℃以上である。一方、膨張開始温度の上限値は、好ましくは300℃である。膨張開始温度が100℃未満であると、耐熱性が低く、十分な膨張性能が得られないことがある。膨張開始温度が300℃を超えると、耐熱性が高すぎて、十分な膨張性能が得られないことがある。
熱膨張性微小球の最大膨張温度(Tmax)は、特に限定されないが、好ましくは140℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180℃以上、特に好ましくは200℃以上、最も好ましくは230℃以上である。一方、最大膨張温度の上限値は、好ましくは350℃である。最大膨張温度が140℃未満であると、耐熱性が低く、十分な膨張性能が得られないことがある。膨張開始温度が350℃超であると、耐熱性が高すぎて、十分な膨張性能が得られないことがある。
発泡剤は、加熱することによって気化する物質であるが、発泡剤として熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する物質を内包すると、熱膨張性微小球の膨張温度において膨張に十分な蒸気圧を発生させることが可能で、高い膨張倍率を付与することが可能であるために好ましい。この場合、発泡剤として熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する物質と共に、熱可塑性樹脂の軟化点超の沸点を有する物質を内包していても良い。
次に、熱可塑性樹脂は、熱膨張性微小球の外殻を形成し、重合性成分を重合して得られる共重合体から構成される。
重合性成分は、重合することによって外殻を形成する熱可塑性樹脂である共重合体となる成分である。重合性成分は、単量体成分を必須とし架橋剤を含むことがある成分である。重合性成分は、単量体成分としてのニトリル系単量体やカルボキシル基含有単量体を必須として含有するものが好ましい。
ニトリル系単量体としては、ニトリル基を1分子当たり1個以上有するものであれば特に限定はないが、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられる。ニトリル系単量体を含むことによって、外殻を構成する熱可塑性樹脂のガスバリア性が向上するために好ましい。
アクリロニトリル(AN)およびメタクリロニトリル(MAN)の重量割合(AN/MAN)については、特に限定はないが、好ましくは3/97〜90/10、さらに好ましくは4/96〜70/30、特に好ましくは4/96〜60/40である。AN/MANが3/97未満であると、ガスバリア性が低く、十分な膨張性能が得られないことがある。一方、AN/MANが90/10を超えると、耐熱性が低く、十分な膨張性能が得られないことがある。
カルボキシル基含有単量体の重量割合については、特に限定はないが、熱膨張性微小球の耐熱性や耐溶剤性を高めるという観点からは、単量体成分に対して、好ましくは10〜95重量%、より好ましくは20〜90重量%であり、さらに好ましくは30〜85重量%であり、特に好ましくは40〜80重量%以下であり、最も好ましくは50〜75重量%である。カルボキシル基含有単量体が10重量%未満の場合は、耐熱性や耐溶剤性が不十分であり、膨張開始温度および最大膨張温度が低くなることがある。また、カルボキシル基含有単量体が95重量%超の場合は、熱膨張性微小球の膨張性能が低くなることがある。
このとき、カルボキシル基含有単量体とニトリル系単量体の混合物中におけるカルボキシル基含有単量体の混合比率は、好ましくは10〜95重量%、より好ましくは30〜90重量%、さらに好ましくは40〜85重量%、特に好ましくは50〜80重量%である。カルボキシル基含有単量体が10重量%未満であると耐熱性、耐溶剤性の向上が不十分であり、膨張開始温度および最大膨張温度が低くなることがある。一方、カルボキシル基含有単量体が90重量%超の場合は、熱膨張性微小球の膨張性能が低くなることがある。
その他の単量体成分としては、特に限定はないが、たとえば、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフイン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等を挙げることができる。
重合性成分は、単量体成分としての塩化ビニリデン系単量体を含むとガスバリア性が向上する。また、重合性成分が単量体成分としての(メタ)アクリル酸エステル系単量体および/またはスチレン系単量体を含むと熱膨張特性をコントロールし易くなる。重合性成分が単量体成分としての(メタ)アクリルアミド系単量体を含むと耐熱性が向上する。
重合性成分が単量体成分としてのカルボキシル基含有単量体を含む場合、重合性成分が、カルボキシル基含有単量体のカルボキシル基と反応する単量体を単量体成分として含有していてもよい。カルボキシル基と反応する単量体をさらに含む場合は、耐熱性がさらに向上し、高温における膨張性能が向上する。カルボキシル基と反応する単量体としては、たとえば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ビニルグリシジルエーテル、プロペニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。カルボキシル基と反応する単量体の重量割合は、単量体成分に対して、好ましくは0.1〜10重量%であり、さらに好ましくは3〜5重量%である。
架橋剤としては、特に限定はないが、たとえば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
熱膨張性微小球は金属含有有機化合物で表面処理されていると好ましく、熱膨張性微小球の外殻を構成する熱可塑性樹脂がカルボキシル基含有単量体を含む重合性成分を重合することによって得られる共重合体から構成される場合は、さらに好ましい。この表面処理によって、熱可塑性樹脂からなる外殻の外表面近傍に金属による架橋構造が形成されることになる。この金属による架橋構造は、カルボキシル基含有単量体に由来して熱可塑性樹脂に含まれているアニオン性のカルボキシレート基と、金属とが、共有結合(配位結合を含む)等の化学結合によって形成される構造であると考えられる。この構造は、複数のカルボキシレート基が金属を介して結び付けられる架橋の構造(金属架橋の構造)であると好ましい。金属をAとし、その電子価数をpとした場合、架橋構造は、たとえば(−COO)pAと示される。ここで、pが2の場合には、(−COO)2A、すなわち、−COO−A−OCO−と示される。上記金属による架橋構造は、熱膨張性微小球を水洗等することによって容易に破壊されるものではなく、耐熱性が向上する。
これらの金属のうちでも、遷移金属(3〜11族に属する金属)が好ましく、4〜10族に属する金属がさらに好ましく、4〜5族に属する金属が特に好ましい。
上記金属の原子価数については、特に限定はないが、1金属原子当りの架橋効率という点で、2〜5価が好ましく、3〜5価がさらに好ましく、4〜5価が特に好ましい。原子価数が1価であると、熱膨張性微小球の耐溶剤性および耐水性が低くなることがある。また、6価以上であると架橋効率が下がることがある。
熱膨張性微小球に含まれる金属が周期表3〜12族に属する金属を含む場合、その重量割合は、好ましくは熱膨張性微小球の0.05〜15重量%であり、より好ましくは0.10〜7重量%、さらに好ましくは0.13〜5重量%、さらに好ましくは0.14〜3重量%、さらに好ましくは0.15〜1.5重量%、特に好ましくは0.16〜0.8重量%、最も好ましくは0.20〜0.54重量%である。周期表3〜12族に属する金属の重量割合が0.05重量%未満では耐熱性の向上が不十分になることがある。一方、金属の重量割合が15重量%超の場合は外殻が剛直になり最大膨張倍率が低くなることがある。熱膨張性微小球に含まれる金属が、周期表3〜11族に属する金属を含む場合、周期表4〜10族に属する金属を含む場合、周期表4〜5族に属する金属を含む場合等でも、それらの重量割合が、上記に示す重量割合であると好ましい。
金属含有有機化合物の表面処理については、以下に説明する熱膨張性微小球の製造方法で詳しく説明するが、以下の製造方法に限定されない。
熱膨張性微小球の製造方法は、上記で説明した重合性成分および発泡剤を含有する油性混合物を分散させた水性分散媒中で、重合性成分を重合させる工程(以下、重合工程ということがある)を含む製造方法である。
重合開始剤としては、特に限定はないが、過酸化物やアゾ化合物等を挙げることができる。
アゾ化合物としては、たとえば、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、1種または2種以上を併用してもよい。重合開始剤としては、単量体成分に対して可溶な油溶性の重合開始剤が好ましい。上記重合開始剤のなかでも、パーオキシジカーボネートが好ましい。重合開始剤がパーオキシジカーボネートと共に他の開始剤を含む場合、パーオキシジカーボネートが重合開始剤に占める割合は、60重量%以上が好ましい。
重合工程では、油性混合物は連鎖移動剤等をさらに含有していてもよい。
水性分散媒は、電解質をさらに含有してもよい。電解質としては、たとえば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等を挙げることができる。これらの電解質は、1種または2種以上を併用してもよい。電解質の含有量については、特に限定はないが、水性分散媒100重量部に対して0.1〜50重量部含有するのが好ましい。
水性分散媒中に含まれる水溶性化合物の量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001〜1.0重量部、さらに好ましくは0.0003〜0.1重量部、特に好ましくは0.001〜0.05重量部である。水溶性化合物の量が少なすぎると、水溶性化合物による効果が十分に得られないことがある。また、水溶性化合物の量が多すぎると、重合速度が低下したり、原料である重合性成分の残存量が増加したりすることがある。
分散安定剤としては、特に限定はないが、たとえば、第三リン酸カルシウム、複分解生成法により得られるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムや、コロイダルシリカ、アルミナゾル、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。これらの分散安定剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
分散安定補助剤としては、特に限定はないが、たとえば、高分子タイプの分散安定補助剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を挙げることができる。これらの分散安定補助剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
重合工程では、水酸化ナトリウムや、水酸化ナトリウムおよび塩化亜鉛の存在下で重合を行ってもよい。
油性混合物を乳化分散させる方法としては、たとえば、ホモミキサー(たとえば、プライミクス株式会社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(たとえば、株式会社ノリタケエンジニアリング社製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜乳化法、超音波分散法等の一般的な分散方法を挙げることができる。
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは40〜90℃の範囲で制御される。反応温度を保持する時間は、0.1〜20時間程度が好ましい。重合初期圧力については特に限定はないが、ゲージ圧で0〜5.0MPa、さらに好ましくは0.1〜3.0MPaの範囲である。
表面処理工程は、原料微小球に対して金属含有有機化合物で表面処理する工程である。表面処理とは、操作としては、原料微小球と金属含有有機化合物とを接触させる処理である。ここでいう表面処理は、原料微小球の外殻の外表面に金属含有有機化合物を物理的に単に付着させることを本来的に意図するものではない。表面処理の目的は、たとえば、原料微小球の外殻を形成する熱可塑性樹脂に含まれているアニオン性のカルボキシレート基同士を、金属を介して結び付けることによって架橋の構造(金属架橋の構造)を化学的に形成すること等が挙げられる。金属架橋の構造が外殻の外表面近傍に形成されることによって、耐熱性が向上する。また、架橋効率とは、金属架橋の形成効率を意味する。
金属含有有機化合物については、特に限定はないが、表面処理効率の見地からは、水溶性であると好ましい。金属含有有機化合物に含まれる金属については、上記で説明したとおりである。
M−O−C (1)
(但し、Mは周期表3〜12族に属する金属原子であり、炭素原子Cは酸素原子Oと結合し、酸素原子O以外には水素原子および/または炭素原子のみと結合している。)
まず、一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物を詳しく説明する。
一般式(1)で示される金属原子−酸素原子間の結合(M−O間の結合)は、イオン結合、共有結合(配位結合を含む)のいずれであってもよいが、共有結合が好ましい。
上記一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物が、金属−アルコキシド結合および/または金属−アリールオキシド結合を有する化合物であると、高い耐溶剤性と、高温の広い温度域で安定した膨張性能とを熱膨張性微小球に付与することができる。以下では、簡単のために、「金属−アルコキシド結合および/または金属−アリールオキシド結合」を「MO結合」と記載し、「金属−アルコキシド結合および/または金属−アリールオキシド結合を有する化合物」を「MO化合物」と記載することがある。
MO化合物は、たとえば、以下に示す化合物(1)〜化合物(4)の4つに分類される。
化合物(1)は、金属アルコキシドおよび金属アリールオキシドであり、たとえば、以下の化学式(A)で示される化合物である。
M(OR)n (A)
(但し、Mは金属を示し;nは金属Mの原子価数であり;Rは炭素数1〜20の炭化水素基であり、n個あるそれぞれの炭化水素基は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。)
また、Rは、脂肪族であっても芳香族であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。Rとしては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、アリル基、n−デシル基、トリデシル基、ステアリル基、シクロペンチル基等の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
化合物(2)は上記化合物(1)のオリゴマーおよびポリマーであり、一般には化合物(1)を縮合して得られるものである。化合物(2)は、たとえば、以下の化学式(B)で示される化合物である。化学式(B)では、部分的に加水分解した構造を示している。
RO[−M(OR)2O−]x−1R (B)
(但し、MおよびRは化学式(A)と同じ;xが2以上の整数である。)
化合物(2)としては、たとえば、化学式(B)でx=2〜15を満足するチタンアルコキシポリマーやチタンアルコキシダイマー等が挙げられる。
化合物(3)は、MO結合を有する金属キレート化合物である。化合物(3)は、MO結合を少なくとも1つ有し、且つ、ヒドロキシル基、ケト基、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の電子供与性基を有する配位子化合物がMに配位した金属キレート化合物である。配位子化合物には、電子供与性基が1個以上あればよいが、2〜4個あるものが好ましい。化合物(3)には、MO結合、Mおよび配位子化合物が複数個あってもよい。
配位子化合物としては、特に限定はないが、たとえば、アルカノールアミン類、カルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸(塩)類、β−ジケトン、β−ケトエステル、ジオール類およびアミノ酸類等が挙げられる。
カルボン酸類としては、たとえば、酢酸等が挙げられる。
β−ジケトンとしては、たとえば、アセチルアセトン等が挙げられる。
ジオール類としては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、3−メチル−1,3ブンタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等が挙げられる。
配位子化合物がβ−ケトエステルである化合物(3)としては、たとえば、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等のβ−ケトエステル−アルコキシチタンキレート化合物;ジブトキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)等のβ−ケトエステル−アルコキシジルコニウムキレート化合物等が挙げられる。
配位子化合物がジオール類である化合物(3)としては、たとえば、ジオクチロキシチタンビス(オクチレングリコレート)等のアルコキシチタン−ジオールキレート化合物等が挙げられる。
化合物(3)は、タンタル、マンガン、コバルト、銅等の金属原子に上記配位子化合物が配位した金属キレート化合物およびその誘導体であってもよい。
化合物(4)はMO結合および金属−アシレート結合をそれぞれ少なくとも1つ有する化合物である。
化合物(4)は、たとえば、以下の化学式(C)で示される化合物である。
M(OCOR1)n−m(OR)m (C)
(但し、M、nおよびRは、化学式(A)と同じ;R1はRと同じであるが、同一であっても異なっていてもよい。;mは1≦m≦(n−1)を満足する正の整数である。)
化合物(4)としては、たとえば、トリブトキシジルコニウムモノステアレート等のアルコキシチタン−アシレート化合物;トリブトキシジルコニウムモノステアレート等のアルコキシジルコニウム−アシレート化合物;トリブトキシセリウムモノステアレート等のアルコキシセリウム−アシレート化合物等が挙げられる。
金属含有有機化合物は、金属アミノ酸化合物であってもよい。金属アミノ酸化合物は、周期表3〜12族に属する金属の塩と、以下に示すアミノ酸類との反応で得られるアミノ酸キレート金属化合物である。
アミノ酸類とは、アミノ基(−NH2)とカルボキシル基(−COOH)を同一分子内に有するアミノ酸のみならず、アミノ基の代りにイミノ基(−NH)を有するプロリンやヒドロキシプロリン等のイミノ酸をも包含する。アミノ酸は、通常α−アミノ酸であるが、β、γ、δまたはω−アミノ酸であってもよい。
アミノ酸類のpHは、好ましくは1〜7である。
上記アミノ酸類と反応する周期表3〜12族に属する金属の塩としては、塩基性塩化ジルコニルが好ましい。金属アミノ酸化合物の市販品としては、たとえば、オルガチックスZB−126(松本製薬工業社製)等が挙げられる。
表面処理工程において、金属含有有機化合物のモル比(金属含有有機化合物のモル数/原料微小球の原料となるカルボキシル基含有単量体のモル数)については、特に限定はないが、好ましくは0.001〜1.0、より好ましくは0.005〜0.5、さらに好ましくは0.007〜0.3、特に好ましくは0.009〜0.15、最も好ましくは0.009〜0.06である。金属含有有機化合物のモル比が0.001未満では、耐熱性の向上効果が少なく高温環境下に長時間さらされると膨張性能が低下することがある。一方、金属含有有機化合物のモル比が1.0を超えると熱膨張性微小球の外殻が強固になりすぎて膨張性能が低下し、断熱性が低下することがある。
表面処理工程を水性分散媒中で行う場合、原料微小球、金属含有有機化合物および水性分散媒等を含む分散混合物に対する原料微小球の重量割合は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜35重量%である。原料微小球の重量割合が1重量%未満では、処理効率が低くなることがある。一方、原料微小球の重量割合が50重量%超では、処理の不均一化が発生することがある。
また、表面処理に用いられる水性分散媒は、通常、原料微小球の調製に用いた水性分散媒や、新たに調製した水を含む水性分散媒であればよいが、必要により、メタノール、エタノールおよびプロパノール等のアルコール;ヘキサン、イソオクタンおよびデカン等の脂肪族炭化水素;グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、サリチル酸等のヒドロキシカルボン酸およびその塩(たとえば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等);テトラヒドロフラン、ジアルキルエーテルおよびジエチルエーテル等のエーテル;界面活性剤;帯電防止剤等のその他成分を含有していてもよい。
水性分散媒がその他の成分を含む場合、たとえば、以下に示すA)〜D)の方法で、表面処理工程を行うことができる。
B)金属含有有機化合物および原料微小球を含む成分1と、その他の成分を含む成分2とを混合する方法
C)その他の成分および金属含有有機化合物を含む成分1と、原料微小球を含む成分2とを混合する方法
D)原料微小球を含む成分1と、その他の成分を含む成分2と、金属含有有機化合物を含む成分3とを同時に混合する方法
(上記成分1〜3のうちの少なくとも1つの成分は水を含む。2つまたは3つの成分が水を含んでいてもよい。)
表面処理工程は、上記で説明した以外の方法で行ってもよく、たとえば、以下に示す1)および2)の方法がある。
原料微小球と、金属含有有機化合物と、水性分散媒とを(均一に)含み、原料微小球の重量割合が、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である混合物を準備し、気流乾燥、減圧加熱乾燥等の操作を行って水性分散媒を除去して熱膨張性微小球を得る方法。
2)(ほぼ)乾燥した原料微小球に表面処理
原料微小球の重量割合が、好ましくは90重量%以上、好ましくは95重量%以上である乾燥した原料微小球に、金属含有有機化合物を添加し、均一混合した後に、膨張しない程度に加熱することによって揮発分を除去して熱膨張性微小球を得てもよい。このとき、原料微小球は静置した状態でも、攪拌させた状態でも、流動層等を利用して空気中に流動化させた状態でも良い。金属含有有機化合物の添加は、金属含有有機化合物または金属含有有機化合物を含む液をスプレー等で均一に噴霧添加するのが好ましい。
表面処理工程における圧力については特に限定はないが、好ましくはゲージ圧で0〜5.0MPaの範囲である。
熱膨張性微小球に含まれる金属(たとえば、周期表3〜12族に属する金属)の量は表面処理工程の前後で増加する。表面処理工程後の熱膨張性微小球に含まれる金属量に対して表面処理工程によって増加した金属量が占める重量割合は、通常10重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上である。10重量%未満であると外殻全体が剛直になり良好な膨張性能を示さなくなることがある。
有機基材成分は、本発明のマスターバッチにおいて、熱膨張性微小球とともに混練される相手方となる基材の成分である。有機基材成分は、マスターバッチを利用して発泡成形体を作製する際、発泡成形体内部において熱膨張した微小球の分散性を向上させ、発泡倍率にばらつきが生じず安定するといった効果を発揮する成分である。
有機基材成分としては、上記で説明した熱膨張性微小球と混合できる有機物であって、そのA硬度が(23±2)℃において90以下である成分である。本発明においてA硬度とは、JIS K6253に準拠し、(23±2)℃の条件下でタイプAデュロメーター硬さ試験により測定した硬度である。また、A硬度が90を超えるときは、タイプDデュロメーター硬さ試験を行い、A硬度の代わりにD硬度を測定することがある。
有機基材成分の曲げ弾性率については、特に限定はなく、好ましくは150MPa以下、さらに好ましくは100MPa以下、特に好ましくは80MPa以下である。有機基材成分の曲げ弾性率の好ましい下限は0MPaである。有機基材成分の曲げ弾性率が150MPaを超える場合は、マスターバッチを用いて製造される発泡成形体の発泡倍率が不安定で比重にばらつきが生じ、外観不良が生じることがある。本発明において曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して測定した弾性率である。
有機基材成分の種類については、特に限定はないが、たとえば、ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリビニルアルコール;エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−ブチル(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン系共重合体;低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリテルペン等のポリオレフィン系樹脂;スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリアセタール;ポリメチルメタクリレート;酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;熱可塑性ポリウレタン;4フッ化エチレン;エチレン系アイオノマー、ウレタン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー、フッ素系アイオノマー等のアイオノマー樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
有機基材成分の種類のうちでも、熱可塑性エラストマーは、マスターバッチを利用して発泡成形体を作製する際、発泡成形体内部において熱膨張した微小球の分散性が向上するために好ましい。熱可塑性エラストマーのうちでも、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、アミド系エラストマー、エステル系エラストマー等から選択された少なくとも1種が好ましい。
オレフィン系エラストマーにおいて、ハードセグメントとしては、たとえば、ポリプロピレンからなるセグメント等を挙げることができる。また、ソフトセグメントとしては、たとえば、ポリエチレンや、エチレンと共に少量のジエン成分を共重合したもの(たとえば、エチレン−プロピレン−共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、EPDMに有機過酸化物を添加することにより部分架橋したもの等)からなるセグメント等を挙げることができる。
オレフィン系エラストマーの市販品としては、たとえば、エクソンモービル株式会社製「サントプレーン」、「ビスタマックス」、JSR株式会社製「エクセリンク」、昭和化成工業株式会社製「マキシロン」、住友化学株式会社製「エスポレックスTPEシリーズ」、ダウケミカル日本株式会社製「エンゲージ」、プライムポリマー株式会社製「プライムTPO」、三井化学株式会社製「ミラストマー」、三菱化学株式会社製「ゼラス」、「サーモラン」、リケンテクノス株式会社製「マルチユースレオストマー」、「オレフレックス」、「トリニティーFR」等を挙げることができる。
スチレン系エラストマーがブロック共重合体である場合、ハードセグメントとしては、たとえば、ポリスチレンからなるセグメント等を挙げることができる。また、ソフトセグメントとしては、たとえば、ポリブタジエン、水素添加されたポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加されたポリイソプレンからなるセグメント等を挙げることができる。このようなスチレン系エラストマーとしては、たとえば、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)共重合体、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン(SBBS)共重合体等のブロック共重合体を挙げることができる。
エステル系エラストマーがブロック共重合体であると、マスターバッチを利用して発泡成形体を作製する際、発泡成形体内部において熱膨張した微小球の発泡性が向上するために好ましい。また、エステル系エラストマーがポリエーテルエステルエラストマーであると、柔軟性が付与されることにより、マスターバッチを利用して発泡成形体を作製する際、発泡成形体内部において熱膨張した微小球の分散性が向上するために好ましい。
ここで、ハードセグメントは、結晶相であり、高機械的強度や耐熱変形性、良加工性に寄与する。一方、ソフトセグメントは、非晶相であり、柔軟性や高衝撃吸収性、低温特性に寄与する。
ここで、エステル系エラストマーに占めるポリ(ポリオキシエチレン)テレフタレートであるソフトセグメントの含有量については、特に限定はないが、好ましくは5〜95重量%、さらに好ましくは10〜90重量%、特に好ましくは15〜85重量%である。このソフトセグメントの含有量が5重量%以下の場合は、得られるエステル系エラストマーが硬くなることがある。
エステル系エラストマーの市販品としては、たとえば、三菱化学株式会社製「プリマロイ」、東洋紡績株式会社製「ペルプレン」、東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」等を挙げることができる。
本発明のマスターバッチは、上記で説明した熱膨張性微小球および有機基材成分を含む。
マスターバッチに含まれる熱膨張性微小球の重量割合については、特に限定はないが、熱膨張性微小球および有機基材成分の合計量に対して、好ましくは20〜70重量%、さらに好ましくは30〜65重量%、特に好ましくは40〜65重量%である。熱膨張性微小球の重量割合が20重量%以下の場合は、マスターバッチの発泡性が低下することがある。一方、熱膨張性微小球の重量割合が70重量%を超える場合は、マスターバッチの作製が困難になることがある。
マスターバッチの長さについても、その用途等によって適宜決められるが、好ましくは1〜100mm、さらに好ましくは1.5〜80mm、特に好ましくは2〜70mmである。マスターバッチの長さが1〜100mmの範囲外の場合は、熱膨張性微小球の分散不良が原因で、マスターバッチを用いて製造される発泡成形体の発泡倍率が不安定で比重にばらつきが生じ、外観不良が生じることがある。
マスターバッチの密度については、特に限定はないが、好ましくは0.60〜1.5g/cm3、さらに好ましくは0.65〜1.3g/cm3、特に好ましくは0.7〜1.2g/cm3である。マスターバッチの密度が0.60〜1.5g/cm3の範囲外の場合は、マスターバッチ中の熱膨張性微小球の一部が既に膨張している状態または熱膨張性微小球の一部が破壊されているため、マスターバッチの発泡倍率が低下することがある。
マスターバッチの製造方法としては、熱膨張性微小球および有機基材成分を混合する方法であればよく、これらを均一分散させる方法が好ましい。マスターバッチの製造方法としては、たとえば、下記(1)に示す予備混練工程および下記(2)に示すペレット化工程を含む製造方法を挙げることができる。
(2)次いで、得られた予備混練物を1軸押出機、2軸押出機、多軸押出機等の押出機に投入して所望の太さで溶融混合物を押出し、ホットカットペレタイザーでペレット化するペレット化工程。
また、長尺のマスターバッチが必要な場合は、押出機より所望の太さのストランド状物を押し出し裁断機によって所望の長い長さにすることで製造することができる。このときストランドの太さについては押出機のストランドダイの径およびストランド巻き取り速度等で調整することができる。
安定剤としては、たとえば、ペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール系安定剤;トリス(モノノニルフェニル)フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系安定剤、ジラウロイルジプロピオネート等の硫黄系安定剤等が挙げられる。これら安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
滑剤としては、たとえば、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の飽和または不飽和脂肪酸のナトリウム、カルシウム、マグネシウム塩が挙げられる。これらの滑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
充填剤としては、繊維状、粒子状、粉体状、板状、針状等、種々の形状のものを用いることができる。充填剤としては、たとえば、ガラス繊維(金属を被覆したものを含む)、炭素繊維(金属を被覆したものを含む)、チタン酸カリウム、アスベスト、炭化珪素、窒化珪素、セラミック繊維、金属繊維、アラミド繊維、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、二硫化モリブデン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、マイカ、タルク、カオリン、パイロフィライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、ウォラストナイト、アルミナ、クレー、フェライト、黒鉛、石膏、ガラスビーズ、ガラスバルーン、石英等が挙げられる。これらの充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの充填剤の中でも、タルク、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム等が好ましい。
分散性向上剤としては、たとえば、脂肪族炭化水素、パラフィンオイル等のパラフィン系プロセスオイル、アロマオイル等の芳香族プロセスオイル、流動パラフィン、ペトロタム、ギルソナイト、石油アスファルト等が挙げられる。
分散性向上剤の配合量については、特に限定はないが、熱膨張性微小球および有機基材成分の合計量に対して、好ましくは25重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下、特に好ましくは15重量%以下である。分散性向上剤の配合量が25重量%を超えると、分散向上剤の機能が損なわれることがある。
発泡成形体は、マスターバッチおよびマトリックス成分を含む組成物(以下、この組成物を「成形用組成物」ということがある。)を成形することによって得られる。
マトリックス成分としては、特に限定はないが、たとえば、ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリビニルアルコール;エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−ブチル(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン系共重合体;アイオノマー;低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリテルペン等のポリオレフィン系樹脂;スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリアセタール;ポリメチルメタクリレート;酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;熱可塑性ポリウレタン;4フッ化エチレン;エチレン系アイオノマー、ウレタン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー、フッ素系アイオノマー等のアイオノマー樹脂;ポリアセタール;ポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂;ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、アミド系エラストマー、エステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリ乳酸(PLA)、酢酸セルロース、PBS、PHA、澱粉樹脂等のバイオプラスチック等や、それらの混合物等が挙げられる。
成形用組成物に含まれる熱膨張性微小球の重量割合については、特に限定はないが、成形用組成物に対して、好ましくは0.01〜60重量%、さらに好ましくは0.1〜50重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%、最も好ましくは1〜10重量%である。熱膨張性微小球の重量割合が0.01重量%未満の場合には、軽量化効果が低下するおそれがある。一方、熱膨張性微小球の重量割合が60重量%超の場合には、後述の軽量化が飽和状態になり好ましくないことがある。
成形用組成物は、熱膨張性微小球を含むマトリックス成分およびマスターバッチとともに、安定剤、滑剤、充填剤、分散性向上剤等の上記で説明した添加剤をさらに含むものでもよい。
滑剤の配合量は、マトリックス成分100重量部に対して、0.1〜2.0重量部であることが好ましい。滑剤の配合量が0.1重量部未満であると、滑剤の配合効果が発現しないことがある。一方、滑剤の配合量が2.0重量部未満であると、得られる発泡成形体としての機能が損なわれることがある。
成形用組成物の成形方法としては、射出成形、押出成形、ブロー成形、カレンダー成形、プレス成形、真空成形等の種々の成形方法が使用される。成形時には熱膨張性微小球が熱膨張して中空粒子が得られるので、発泡成形体には、中空粒子が含有されることになる。
発泡成形体に含まれる中空粒子は、上記で説明した熱膨張性微小球を加熱膨張させたものである。中空粒子の平均粒子径については特に限定はないが、好ましくは1〜1000μm、さらに好ましくは5〜800μm、特に好ましくは10〜500μmである。また、中空粒子の粒度分布の変動係数CVについても、特に限定はないが、30%以下が好ましく、さらに好ましくは27%以下、特に好ましくは25%以下である。
発泡成形体に含まれるマトリックス成分の重量割合については、特に限定はないが、発泡成形体に対して、好ましくは40〜99.99重量%、さらに好ましくは50〜99.9重量%、特に好ましくは80〜99.5重量%、最も好ましくは90〜99重量%である。マトリックス成分の重量割合が40重量%未満の場合には、後述の軽量化が飽和状態になり好ましくないことがある。一方、マトリックス成分の重量割合が99.99重量%超の場合には、軽量化効果が低下するおそれがある。
そして、発泡成形体(たとえば、フィルム、シート、射出成形物等)を製造する場合、このマスターバッチを使用することによって、原料供給口でのシリンダーの強いせん断力で容易に変形する。その結果、得られる発泡成形体は比重にムラがなく、発泡倍率が全体に均一で安定する。そして、発泡成形体は外観も良好となる。
実施例に先立って、各種の熱膨張性微小球の製造例を示す。以下では、原料微小球および熱膨張性微小球を簡単のために「微小球」ということがある。
レーザー回折式粒度分布測定装置(SYMPATEC社製 HEROS&RODOS)を使用した。乾式分散ユニットの分散圧は5.0bar、真空度は5.0mbarで乾式測定法により測定し、D50値を平均粒子径とした。
測定装置として、DMA(DMA Q800型、TA instruments社製)を使用した。微小球0.5mgを直径6.0mm(内径5.65mm)、深さ4.8mmのアルミカップに入れ、微小球層の上部にアルミ蓋(直径5.6mm、厚み0.1mm)をのせて試料を準備した。その試料に上から加圧子により0.01Nの力を加えた状態でサンプル高さを測定した。加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、20℃から350℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定した。正方向への変位開始温度を膨張開始温度(Ts)とし、最大変位量を示したときの温度を最大膨張温度(Tmax)とした。
(重合工程)
イオン交換水600gに、塩化ナトリウム150g、シリカ有効成分20重量%であるコロイダルシリカ50g、ポリビニルピロリドン1.0gおよびエチレンジアミン四酢酸・4Na塩の0.5gを加えた後、得られた混合物のpHを3に調整し、水性分散媒を調製した。
これとは別に、アクリロニトリル5g、メタクリロニトリル115g、メタクリル酸180g、1,9−ノナンジオールジアクリレート1.0g、イソオクタン50g、イソヘキサデカン30g、および有効成分70%のジ−(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート含有液8gを混合して油性混合物を調製した。
(表面処理工程)
重合後に得られた重合液に、室温で攪拌しながら、金属含有有機化合物としての有効成分80%のジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)含有液を20g添加した。得られた分散混合物を加圧反応器(容量1.5リットル)に移して窒素置換を行い、処理初期圧0.5MPaにし、80rpmで攪拌しつつ、80℃で5時間処理した。得られた処理生成物を濾過、乾燥して、熱膨張性微小球を得た。その物性を表1に示す。
製造例1の重合工程で用いた各種成分および量を、表1に示すものに変更し、製造例1の表面処理工程を実施しなかった以外は製造例1と同様にして熱膨張性微小球をそれぞれ得た。得られたそれぞれの微小球の物性を表1に示す。
上記製造例1〜7で得られた熱膨張性微小球をそれぞれ微小球(1)〜(7)とする。
(マスターバッチ)
容量10L加圧ニーダーを用いて、有機基材成分としてのエステル系エラストマー(東レ・デュポン社製のハイトレル、ソフトセグメント含有量80重量%、A硬度77、曲げ弾性率23.5MPa、融点160℃、比重1.07g/cm3)3.0kgを溶融混練し、その温度が165℃に到達したときに製造例1で得られた熱膨張性微小球2.0kgを配合して均一に混合し予備混合物とした。得られた予備混合物をシリンダー口径40mmの二軸押出機に供給して混練温度165℃で押出して、熱膨張性微小球の重量割合が40%、比重1.02g/cm3のマスターバッチを得た。
上記で用いたエステル系エラストマーは、ブロック共重合体であり、ポリエーテルエステルエラストマーであった。また、このエステル系エラストマーは、ポリブチレンテレフタレートからなるハードセグメントと、ポリ(ポリオキシエチレン)テレフタレートからなるソフトセグメントとから構成されていた。
次に、ラボプラストミル(東洋精機社製の2軸押出成形機ME−25)およびTダイ(リップ幅150mm、厚み2mm)を用いて、押出し成形機およびTダイの設定温度を290℃に設定し、スクリュー回転数を40rpmに設定した。発泡成形体のマトリックス成分として、上記で有機基材成分として用いたエステル系エラストマーを準備した。上記で得られたマスターバッチをポリエステル系エラストマーに対して5%添加し、ドライブレンドした混合物をラボプラストミルの原料ホッパーから投入し、発泡成形体(発泡倍率1.81倍、比重0.59g/cm3)を得た。
得られた発泡成形体に対して、以下に示すように発泡倍率の安定性を評価したところ、比重にムラがなく、発泡倍率が全体に均一で安定しており、外観が良好であった。これらの結果を表3に示す。
発泡成形体(幅150mm×長さ900mm)の比重測定は、長さ300mm間隔で切断し、3枚の試験片の比重を測定し、発泡倍率の安定性を以下の評価基準に基づいて評価した。発泡成形体の発泡倍率は、(発泡成形体に含まれるマトリックス成分の比重)/(発泡成形体の比重)を計算して算出した。
○:各試験片の比重差が0.05g/cm3以内であった。
×:各試験片の比重差が0.05g/cm3超であった。
実施例1で用いた有機基材成分、熱膨張性微小球の配合量、加工条件、マトリックス成分、マスターバッチ添加量、成形温度等について、それぞれ表3および4に示すものに変更する以外は実施例1と同様にして、マスターバッチおよび発泡成形体をそれぞれ得た。それぞれの物性を表3および4に示す。
実施例2、8および9で用いたエステル系エラストマーは、ブロック共重合体であり、ポリエーテルエステルエラストマーであった。また、これらのエステル系エラストマーは、ポリブチレンテレフタレートからなるハードセグメントと、ポリ(ポリオキシエチレン)テレフタレートからなるソフトセグメントとから構成されていた。
実施例4で使用したスチレン系エラストマーは、熱可塑性エラストマーの1種のスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体であった。
実施例6で使用したオレフィン系エラストマーは、熱可塑性エラストマーの1種であり、ポリプロピレンからなるハードセグメントと、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)が部分架橋されたソフトセグメントとから構成されていた。
比較例1〜3では、有機基材成分のA硬度はいずれも90を超えていた。
Claims (7)
- 熱可塑性樹脂からなる外殻とそれに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球と、A硬度が15〜54である熱可塑性エラストマーとを含む、
マスターバッチ。 - 前記熱膨張性微小球の重量割合が前記熱膨張性微小球および熱可塑性エラストマーの合計量の20〜70重量%である、請求項1に記載のマスターバッチ。
- 前記熱可塑性樹脂がニトリル系単量体を含む重合性成分を重合してなる、請求項1または2に記載のマスターバッチ。
- 前記重合性成分がカルボキシル基含有単量体をさらに含む、請求項3に記載のマスターバッチ。
- 前記熱膨張性微小球が周期表3〜12族に属する金属を含有する有機化合物で表面処理されてなる、請求項1〜4のいずれかに記載のマスターバッチ。
- 前記熱膨張性微小球の膨張開始温度が100℃以上である、請求項1〜5のいずれかに記載のマスターバッチ。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のマスターバッチおよびマトリックス成分を含む組成物を成形してなる、発泡成形体。
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