本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る切削方法及び切削装置を図面に基いて説明する。図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例の斜視図である。図2は、実施形態1に係る切削装置のチャックテーブル及び被加工物を示す斜視図である。図3は、図2に示された被加工物の他の例を示す斜視図である。図4は、図2に示された被加工物の更に他の例を示す斜視図である。図5は、実施形態1に係る切削装置の切削手段の構成例を示す斜視図である。図6は、実施形態1に係る切削装置の切削ブレードと混合物供給部とを示す図である。図7(a)は、実施形態1に係る切削装置の切削ブレードに切削屑が付着した状態を示す図であり、図7(b)は、図7(a)に示す切削屑を除去する状態を示す図である。図8は、実施形態1に係る切削装置の切削ブレードの刃先の断面図である。図9は、実施形態1に係る切削装置の混合物供給部が切削ブレードの刃先をドレッシングする状態を示す断面図である。
実施形態1に係る切削装置1は、切削ブレード22を有する切削手段20と被加工物Wを保持した保持部10とを相対移動させることで、被加工物Wを切削するものである。切削装置1は、図1に示すように、被加工物Wを表面11aで吸引保持する保持部10と、切削手段20と、入力手段100と、制御手段90と、を備えている。また、切削装置1は、保持部10をX軸方向に移動せしめるX軸移動手段30(移動手段に相当)と、切削手段20をX軸方向に直交するY軸方向に移動せしめるY軸移動手段40と、切削手段20をX軸方向及びY軸方向に直交するZ軸方向に移動せしめるZ軸移動手段50とを少なくとも含んで構成されている。なお、切削装置1は、装置本体2上に門型の柱部3が設けられている。
ここで、被加工物Wは、切削装置1により加工される板状の加工対象である。実施形態1では、図2に示すように、互いに直交する複数の分割予定ラインLで区画される各領域に樹脂封止部Sにより封止されたデバイスDが配設され、分割予定ラインLに図示しない電極が配設されたパッケージ基板(例えば、QFN(Quad Flat Non-leaded package)基板)である。被加工物Wとしてのパッケージ基板は、切削装置1の制御手段90が保持部10と切削ブレード22を有する切削手段20とを相対移動させて、分割予定ラインLに切削加工が施されることで、個々のデバイスDに分割される。
また、本発明では、被加工物Wは、パッケージ基板に限らず、図3に示す表面に絶縁膜と回路を形成する機能層FLが表面に積層された円板状のウエーハでも良く、図4に示す分割予定ラインLにTEG(Test Element Group)やCMP(Chemical Mechanical Polishing)用のダミーパターン等の金属Mが形成されたシリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハでも良い。また、本発明では、被加工物Wは、ガラスにより構成されても良く、BGA(Ball Grid Array)基板、絶縁膜を有する基板でもよい。なお、機能層FLを形成する絶縁膜は、SiO2膜または、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)からなる。
保持部10は、図1に示すように、表面11aを有した保持テーブル11と、回転テーブル19とを含んで構成されている。保持テーブル11は、表面11a上に被加工物Wを載置し、表面11aに設けられた吸引孔13(図2に示す)を通して吸引することで、負圧により被加工物Wを吸引保持する。吸引孔13は、被加工物WのデバイスDと1対1で対応して設けられている。保持テーブル11の表面11aには、各分割予定ラインLに対応した切削ブレード22用の逃げ溝15が形成されている。逃げ溝15には、被加工物Wを各デバイスDに分割する際に、切削手段20の切削ブレード22が侵入する。回転テーブル19は、表面11aと直交するZ軸方向と平行な図示しない軸線回りに保持テーブル11を回転可能なものである。また、保持部10は、X軸移動手段30によりX軸方向に移動自在に設けられている。
切削手段20は、保持部10に保持された被加工物Wに図示しない切削水を供給しながら被加工物Wを切削ブレード22で切削するものである。切削手段20は、Y軸移動手段40、Z軸移動手段50などを介して柱部3に設けられている。切削手段20は、Y軸移動手段40によりY軸方向に移動自在に設けられかつZ軸移動手段50によりZ軸方向に移動自在に設けられている。
切削手段20は、図5に示すように、中心軸線がY軸方向(割り出し方向に相当)と一致するスピンドル21と、スピンドル21の先端に装着された切削ブレード22と、ブレードカバー24とを有する。スピンドル21は、スピンドルハウジング23に回転可能に支持され、スピンドルハウジング23に収納されている図示しないブレード駆動源に連結されている。ブレード駆動源は、図示しない電源から供給される電力によりスピンドル21を中心軸線回りに回転させる。なお、ブレード駆動源に供給される電力の電流をスピンドル電流という。スピンドル電流は、図5に示すスピンドル電流検出部25により検出される。スピンドル電流検出部25は、検出結果を制御手段90に出力する。なお、スピンドル21が中心軸線回りに回転する際、即ち、切削ブレード22が被加工物Wを切削する際の抵抗(負荷ともいう)が大きくなると、スピンドル電流が上昇する。要するに、切削ブレード22が切削しにくくなると、スピンドル電流が上昇する。
切削ブレード22は、略リング形状を有する極薄の切削砥石であり、スピンドル21に着脱自在に装着される。切削ブレード22は、ブレード駆動源により発生した回転力により回転駆動する。切削ブレード22は、電鋳・電着ボンド、メタルボンド、レジンボンド、ビトリファイドボンド等をボンド剤とし、これらのボンド剤のうちの一つでダイヤモンド等の砥粒26(図7(a)及び図7(b)に示す)を固定した円環状のブレードである。なお、本実施形態1では、図5及び図6に示すように、切削ブレード22として、基台(ハブともいう)22bを有し、電鋳ボンドでダイヤモンド砥粒を固定した切削ブレードを用いている。
ブレードカバー24は、スピンドルハウジング23の前端部に固定され、切削ブレード22の下方を除く外周を覆うものである。ブレードカバー24は、図5に示すように、切削ブレード22に切削水を供給する一対の切削水供給ノズル27と、混合物供給部29と、を備える。
切削水供給ノズル27は、切削ブレード22に切削水を供給することで、被加工物Wに向けて切削水を供給する切削水供給部である。切削水供給ノズル27は、切削ブレード22を挟んでブレードカバー24の下端部のY軸方向の両側に配設され、切削ブレード22の両側方に切削水を供給するためのものである。切削水供給ノズル27は、ブレードカバー24の下端部に装着され、X軸方向と平行に水平方向に延伸し、且つその側面に切削水を噴射する噴射スリット27aを有する円筒形状に形成されている。切削水供給ノズル27には、ブレードカバー24の上端部に取り付けられた連結部28及びブレードカバー24の内部に形成された図示しない切削水供給路を介して、図示しない切削水源からの切削水が供給される。
混合物供給部29は、被加工物Wの切削中に流体と微粒子の混合物K(図9に示す)を切削ブレード22に向かって供給するものである。混合物供給部29は、流体と微粒子の混合物Kを切削ブレード22の刃先22aに吹き付けることで、切削屑CW(図7(a)に示す)を刃先22aから除去するとともに、切削ブレード22の刃先22aをドレッシングして当該刃先22aを断面においてY軸方向と平行に形成するものである。
混合物供給部29は、ブレードカバー24内に設けられ、図9に示すように、切削ブレード22の両側面と平行な直線状に形成されている。混合物供給部29は、切削ブレード22の刃先22a(図6及び図7に示す)と対面する混合物噴出口29aを備えている。混合物供給部29は、混合物噴出口29aの中央が切削ブレード22の厚み方向の中央と対面している。また、本実施形態1では、切削ブレード22が基台22bを有するので、混合物供給部29は、混合物噴出口29aから刃先22aに吹き付ける混合物Kが基台22bに吹き付けられることのない向きに配置されている。また、本発明では、切削ブレード22が、基台22aを有しない所謂ハブレスブレードである場合には、混合物供給部29は、混合物噴出口29aから刃先22aに吹き付ける混合物Kが切削ブレード22をスピンドル21の先端に装着するナットに吹き付けられることのない向きに配置される。
混合物供給部29は、混合物供給源29bから加圧された流体と微粒子との混合物Kが供給され、供給された混合物Kを切削ブレード22の刃先22aに向けて切削ブレード22の両側面と平行に吹き付ける。なお、本実施形態1では、加圧された流体として0.1MPa(ゲージ圧)〜0.6MPa(ゲージ圧)のエア又は窒素等の不活性ガスにより構成された気体を用い、微粒子として水溶性である重曹(炭酸水素ナトリウム)を用いている。重曹は、水溶時に弱アルカリ性となる。重曹は、一般に購入できるもの、例えば、(株)三和通商が輸入しているものを用いることができる。実施形態1では、重曹の平均粒径は、40μm程度である。
また、本実施形態1では、図9に示すように、混合物噴出口29aから切削ブレード22の刃先22aに直接吹きつけられる混合物Kの幅H1が切削ブレード22の厚みTよりも小さくなるように、混合物噴出口29aが形成されている。混合物噴出口29aから切削ブレード22の刃先22aに直接吹き付けられる混合物Kの幅H1とは、混合物噴出口29aから切削ブレード22の刃先22aに直接衝突する混合物KのY軸方向の幅をいう。このために、本実施形態1の混合物供給部29は、図8に示す断面においてY軸方向と平行な切削ブレード22の刃先22aに混合物Kを吹き付けると、図9に示すように、切削ブレード22の刃先22aのY軸方向の中央を消耗させることとなる。また、本発明では、切削ブレード22は、刃先22aの厚みTが30μm〜1mm程度のものが一般的に用いられ、混合物噴出口29aの径も切削ブレード22の刃先22aの厚みと同程度でよい。
また、本発明では、流体としては、液体である純水、又は、純水などの液体とエア又は窒素等の不活性ガスにより構成された気体の混合物(所謂、2流体)を用いてもよい。即ち、本発明では、流体としては、エア又は窒素等の不活性ガスにより構成された気体と、純水などの液体と、純水などの液体とエア又は窒素等の不活性ガスにより構成された気体の混合物(所謂、2流体)とのうちいずれかを用いてもよい。また、本発明では、微粒子としては、平均粒径が10μm〜100μmの水溶性のもので、水溶時に微酸性、微アルカリ性又は中性となるものを用いてよく、又は、プラスチックなどの非水溶性のものをでもよい。さらに、微粒子としては、アルミナ(Al2O3)、貝殻を粉砕して構成される酸化カルシウムを含む紛体、ナイロン(ポリアミド)等の樹脂でもよい。さらに、微粒子の平均粒径は、5μm〜50μmであることが望ましい。微粒子の種類、大きさは、切削ブレード22のボンド剤に応じて適宜選択される。例えば、大きな粒径のアルミナにより構成される微粒子を用いると、切削ブレード22へのインパクトが大きく、ドレッシング速度が速く、単位時間あたりのドレッシング量が多くなる。また、軽い樹脂などにより構成される微粒子を用いた場合は、切削ブレード22へのインパクトは小さく、ドレッシング速度及び単位時間あたりのドレッシング量を抑制したソフトなドレッシングを行うことができる。また、流体として純水を用い、微粒子として重曹などの水溶性のものを用いる場合には、流体と微粒子の混合を切削ブレード22の近く、即ち切削ブレード22に近接した位置で行うのが望ましい。この場合、流体を供給する供給管と微粒子を供給する供給管とを、切削ブレード22の近く、即ち切削ブレード22の直前で合流させて、混合物Kにするのが望ましい。
X軸移動手段30は、スピンドル21の中心軸線方向に対して垂直で且つ保持部10の表面11aに平行な方向にスピンドル21に対して保持部10を相対的に移動させるものである。
入力手段100は、制御手段90に接続され、加工動作の状態を表示する表示手段101に設けられている。表示手段101は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示パネルなどで構成される。表示手段101は、制御手段90から入力される信号に応じて、文字、図形、画像等の情報を表示する。入力手段100は、オペレータがキー操作するものであり、表示手段101の表示面全面に設けられたタッチパネルなどで構成される。入力手段100は、受け付けた操作に応じた信号を制御手段90へ入力する。
制御手段90は、切削装置1を構成する上述した構成要素をそれぞれ制御するものである。制御手段90は、被加工物Wに対する加工動作即ち実施形態1に係る切削方法を切削装置1に行わせるものである。なお、制御手段90は、例えばCPU等で構成された演算処理装置やROM、RAM等を備える図示しないマイクロプロセッサを主体として構成されている。制御手段90は、表示手段101や、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力手段100などと接続されている。
次に、実施形態1に係る切削装置1の加工動作、即ち、実施形態1に係る切削方法について説明する。実施形態1に係る切削方法は、被加工物Wを切削ブレード22を用いて切削する切削方法である。図10(a)は、実施形態1に係る切削方法を示すフローチャートの一例であり、図10(b)は、図10(a)に示された切削工程中に実行されるフローチャートの一例である。図11(a)は、実施形態1に係る切削方法の混合物を吹き付ける工程の切削ブレードの刃先の概要を示す断面図であり、図11(b)は、実施形態1に係る切削方法の混合物を吹き付けた後の切削ブレードの刃先の概要を示す断面図である。
切削方法では、まず、オペレータが加工内容情報を制御手段90に登録して、切削手段20から離間した保持部10に被加工物Wを載置し、オペレータから加工動作の開始指示があった場合に、切削装置1が加工動作を開始する。加工動作において、制御手段90は、保持部10に載置された被加工物Wを吸引保持し、被加工物Wを吸引保持した保持部10を切削手段20の下方に移動させる。
そして、制御手段90は、アライメントを実行した後、加工内容情報に基いて、切削水供給ノズル27から切削水を切削ブレード22に供給し、切削ブレード22を回転させながら保持部10と切削ブレード22とを分割予定ラインLに沿って相対的に移動させて被加工物Wを切削する切削工程を実行する(ステップST1)。制御手段90は、加工内容情報に基いて、切削工程が終了したか否かを判定し(ステップST2)、切削工程が終了していないと判定する(ステップST2:No)と、繰り返し切削工程を実行する。制御手段90は、切削工程が終了したと判定する(ステップST2:Yes)と、切削手段20をZ軸移動手段50により被加工物Wから離間させた後、X軸移動手段30により保持部10を切削手段20の下方から離間させる。そして、制御手段90は、保持部10が切削手段20の下方から離間すると、保持部10の吸引保持を解除し、オペレータが保持部10上の切削加工済みの被加工物Wを取り除き、切削加工前の被加工物Wを保持部10に載置する。このような工程を繰返して、切削装置1は、被加工物Wを切削する。
実施形態1に係る切削方法では、切削ブレード22と被加工物Wとの組み合わせにより、図11(a)に示すように、切削工程中に切削ブレード22の刃先22aのY軸方向の両端部が主に消耗する。制御手段90は、切削工程(ステップST1)中にスピンドル電流が所定値以上であるか否かを判定する(ステップST3)。なお、この所定値とは、切削ブレード22の刃先22aへの切削屑CWの付着や切削ブレード22の刃先22aの消耗が切削加工に悪影響を与える程度の値とするのが望ましい。
制御手段90は、スピンドル電流が所定値以上であると判定する(ステップST3:Yes)と、混合物供給源29bを作動させ又は作動させた状態を維持して、切削工程中に混合物供給部29から切削ブレード22の刃先22aに気体と微粒子の混合物Kを吹き付ける工程を実行して(ステップST4)、ステップST3に戻る。すると、図11(a)に示すように、混合物Kが主に切削ブレード22の刃先22aのY軸方向の中央に吹きつけられて、図7(b)に示すように、切削屑CWを除去するとともに、刃先22aのY軸方向の中央をドレッシングする。切削屑CWを除去し、刃先22aをドレッシングした混合物Kの微粒子は、水溶性の重曹であるので、切削水に溶けて、切削水とともに図示しない排出口を通して切削装置1外に排出される。このように、実施形態1に係る切削方法は、スピンドル電流が所定値以上であると、被加工物Wを切削しながら切削ブレード22に混合物Kを吹き付けて、切削ブレード22のドレッシングを行う。
制御手段90は、スピンドル電流が所定値以上でないと判定する(ステップST3:No)と、混合物供給源29bを停止させ又は停止させた状態を維持して(ステップST5)、ステップST3に戻る。このように、制御手段90は、切削工程中に、スピンドル21に流されるスピンドル電流をモニタし、このスピンドル電流の電流値の大きさに基づいて混合物Kを供給するかどうかを決定する。すると、図11(b)に示すように、切削ブレード22の刃先22aがY軸方向と平行に形成される。
以上のように、実施形態1に係る切削方法及び切削装置1によれば、切削工程中に切削ブレード22の刃先22aに気体と微粒子の混合物Kを吹き付け、切削ブレード22の刃先22aをドレッシングする。このために、切削工程中に切削ブレード22の刃先22aから切削屑CWを除去することができるとともに、断面において刃先22aをY軸方向と平行に保つことができる。したがって、実施形態1に係る切削方法及び切削装置1によれば、切削された被加工物Wの品質を低下させることを抑制することができる。また、切削工程中に切削ブレード22の刃先22aをドレッシングするので、ドレッシングのために専用の工程を設ける必要がない。したがって、実施形態1に係る切削方法及び切削装置1によれば、ドレッシング作業の効率化を達成し生産性を向上することができる。
また、実施形態1に係る切削方法及び切削装置1によれば、被加工物Wとして、パッケージ基板、分割予定ラインLにTEGやCMP用のダミーパターン(ダミーパッド)等の金属Mが形成された半導体ウエーハや光デバイスウエーハを切削する場合には、切削ブレード22への金属Mの目詰まりを抑制することができる。実施形態1に係る切削方法及び切削装置1によれば、被加工物Wとして、ガラスにより構成されたものを切削する場合には、混合物Kによるドレッシングにより摩耗した砥粒26を脱落させて、チッピングを抑制することができる。実施形態1に係る切削方法及び切削装置1によれば、被加工物Wとして、BGA基板を切削する場合には、切削ブレード22の刃先22aを水平方向に平坦に維持することができる。実施形態1に係る切削方法及び切削装置1によれば、被加工物Wとして、絶縁膜を有する基板を切削する場合には、切削ブレード22への樹脂の目詰まりを抑制することができる。実施形態1に係る切削方法及び切削装置1によれば、被加工物Wとして、機能層FLが表面に積層された円板状のウエーハを切削する場合には、機能層FLの剥がれを抑制することができる。
また、切削方法及び切削装置1によれば、混合物供給部29が刃先22aのY軸方向の中央をドレッシングするので、切削工程においてY軸方向の両端部が消耗する切削ブレード22の刃先22aを断面においてY軸方向と平行に保つことができる。さらに、切削方法及び切削装置1によれば、混合物供給部29から切削ブレード22の刃先22aに直接吹き付けられる混合物Kの幅H1が切削ブレード22の厚みTよりも小さいので、混合物供給部29が切削ブレード22のY軸方向の中央をドレッシングすることができる。
切削方法及び切削装置1によれば、混合物供給部29が切削ブレード22の両側面と平行に直線状に延在し、混合物噴出口29aの中央が切削ブレード22の刃先22aのY軸方向の中央と対面しているので、切削ブレード22の刃先22aを断面においてY軸方向と平行に保つことができる。また、切削方法及び切削装置1によれば、混合物供給部29をブレードカバー24に設けているので、切削工程中に確実にドレッシングを行うことができる。
さらに、切削方法及び切削装置1によれば、スピンドル電流が所定値以上となり切削ブレード22が切削しにくくなると混合物Kを切削ブレード22の刃先22aに吹き付けるので、必要なタイミングでドレッシングを行うことができ、混合物Kを無駄にしたり、切削ブレード22を必要以上にドレッシングして、寿命を低下させることがない。
ここで、切削ブレード22として、硬質の被加工物Wを切削するにはメタルボンド(メタルからなる結合材)でダイヤモンド砥粒を強固に固定したブレード、電鋳ブレードが用いられる。切削が進むとダイヤモンド砥粒が摩耗するが、メタルボンドの保持力が大きいため摩耗したダイヤモンド砥粒は脱落しにくい。そこで、切削方法及び切削装置1によれば、混合物Kを切削ブレード22の刃先22aに吹き付けてドレッシングすることで、メタルボンドからダイヤモンド砥粒を脱落させやすく、摩耗していないダイヤモンド砥粒で適切に切削することができる。また、メタルボンドに限られないが、切削ブレード22のボンド部分に高圧の混合物Kが噴射されることで、図7(b)に示すように、切削ブレード22のボンド部分が凹状に浸食される。この浸食によって形成された凹状の部分により、切削屑CWが切削ブレード22から排出されやすくなるとともに、摩耗した砥粒26を脱落しやすくすることができる。
実施形態1に係る切削方法及び切削装置1によれば、混合物Kを構成する微粒子として水溶性の重曹を用いるので、混合物Kを回転中の切削ブレード22に吹き付けても、混合物Kの微粒子が速やかに切削水に溶けることとなる。したがって、切削工程中に混合物Kを吹き付けてドレッシングを行っても、混合物Kが辺りに飛散することを抑制することができる。さらに、混合物Kの微粒子を切削水とともに回収することができるので、別途回収手段などを設ける必要が生じない。
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る切削方法及び切削装置1を図面に基いて説明する。図12は、本発明の実施形態2に係る切削装置の混合物供給部を示す斜視図である。図13は、図12に示された混合物供給部が切削ブレードをドレッシングする状態を示す側断面図である。図12及び図13において、実施形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
実施形態2に係る切削装置1は、図12に示すように、切削手段20のブレードカバー24が混合物供給部29を備えずに、被加工物Wの切削の合間に、混合物Kを切削ブレード22に向かって供給する混合物供給部60を備える。混合物供給部60は、図13に示すように、チャックテーブル10の隣に固定されたドレッシング部61と、ドレッシング部61に混合物供給源29bから供給される混合物Kを導く供給管62と、ドレッシング部61内の混合物Kを吸引する吸引ユニット63と、吸引ユニット63にドレッシング部61内の混合物Kを導く排出菅64とを備える。なお、実施形態2において、混合物供給部60のドレッシング部61は、チャックテーブル10の隣に固定されているが、本発明では、これに限らず、混合物供給部60のドレッシング部61をチャックテーブル10に隣接して設けてもよい。また、本発明では、混合物供給部60のドレッシング部61を、切削装置1の装置本体2の如何なる箇所に設けてもよい。
ドレッシング部61は、長手方向の一方の端に供給管62が接続し、他端に排出菅64が接続した箱状に形成されている。ドレッシング部61は、長手方向がX軸方向と平行に配置され、供給管62から供給された混合物Kを排出菅64に向けてX軸方向に沿って流す通路61bを内部に設けている。ドレッシング部61は、切削ブレード22に対向する上面61aにX軸方向に延びかつ切削ブレード22の刃先を侵入させる侵入孔65を設けている。
混合物供給部60は、侵入孔65内に侵入した切削ブレード22の刃先22aに混合物供給源29bから供給された混合物KをX軸方向と平行に吹き付けて、切削ブレード22をドレッシングする。また、混合物供給部60は、侵入孔65内に侵入した切削ブレード22の刃先22aの回転方向Rの逆向きに混合物Kを吹き付ける(切削ブレード22の一点と、混合物Kの相対速度が大きくなるように吹き付けてよい)。混合物供給部60は、侵入孔65内に侵入した切削ブレード22の刃先22aの回転方向Rの逆向きに混合物Kを吹き付けることで、ドレッシングの速度を高めることができる。混合物供給部60は、混合物KをX軸方向と平行に吹き付けて、混合物Kを被加工物Wに吹き付けることを規制するものである。
実施形態2に係る切削装置1が被加工物Wを切削ブレード22を用いて切削する切削方法は、切削水を被加工物Wに供給し、被加工物Wを該切削ブレード22を回転させて切削する切削工程と、該切削の合間に該切削ブレード22に流体としての気体と微粒子の混合物Kを吹き付ける工程、とを有する。具体的には、切削装置1の制御装置90は、分割予定ラインLを1ライン、又は、複数ライン切削する度に、X軸移動手段30、Y軸移動手段40及びZ軸移動手段50を駆動して切削ブレード22を移動させて、切削ブレード22の刃先を侵入孔65に侵入させ、切削ブレード22の刃先に所定時間混合物Kを吹き付けて、ドレッシングを行う。また、実施形態2に係る切削装置1は、一つの被加工物Wの切削を完了した後に切削前の被加工物Wに交換される前、即ち被加工物Wの切削の間に、X軸移動手段30、Y軸移動手段40及びZ軸移動手段50を駆動して切削ブレード22を移動させて、切削ブレード22の刃先を侵入孔65に侵入させ、切削ブレード22の刃先に所定時間混合物Kを吹き付けて、ドレッシングを行ってもよい。また、実施形態2に係る切削装置1の制御手段90は、実施形態1と同様に、スピンドル21に流れる電流をモニタし、電流値の大きさに基づいて、ドレッシングを行うかどうかを決定してもよい。実施形態2に係る切削装置1は、実施形態1と同様に、流体としては、エア又は窒素等の不活性ガスにより構成された気体を用いるが、気体に限らず、純水などの液体、又は、純水などの液体とエア又は窒素等の不活性ガスにより構成された気体の混合物(所謂、2流体)を用いてもよい。
以上のように、実施形態2に係る切削方法及び切削装置1によれば、切削の合間に切削ブレード22の刃先22aに流体と微粒子の混合物Kを吹き付け、切削ブレード22の刃先22aをドレッシングする。このために、切削の合間に切削ブレード22の刃先22aから切削屑CWを除去することができるとともに、断面において刃先22aをY方向と平行に保つことができる。したがって、実施形態2に係る切削方法及び切削装置1によれば、実施形態1と同様に、切削された被加工物Wの品質を低下させることを抑制することができる。
また、実施形態2に係る切削方法及び切削装置1によれば、切削の合間に切削ブレード22の刃先22aをドレッシングするので、ドレッシングのために専用の工程を設ける必要がないとともに、混合物Kが被加工物Wに影響を与えることがない。したがって、実施形態1に係る切削方法及び切削装置1によれば、ドレッシング作業の効率化を達成し生産性を向上することができるとともに、被加工物Wに品質が低下することを抑制することができる。さらに、混合物供給部60が、ドレッシング部61と供給管62と排出菅63とを備えているので、混合物Kが外部に拡散することを抑制することができる。
また、実施形態2に係る切削方法及び切削装置1によれば、チャックテーブル10に隣接して設けられた混合物供給部60のドレッシング部61に形成された侵入孔65内に切削ブレード22の刃先22aを侵入させて、ドレッシングするので、ドレッシング時に切削ブレード22を精密に位置決めする必要が無い。また、実施形態2に係る切削方法及び切削装置1によれば、チャックテーブル10に隣接された混合物供給部60のドレッシング部61に形成された侵入孔65内に切削ブレード22の刃先22aを侵入させて、ドレッシングするので、混合物Kが被加工物Wに吹き付けられて、被加工物Wがダメージを受けることを抑制することができる。
また、実施形態2に係る切削装置1は、以下に示す実施形態4と同様に切削ブレード22の摩耗量を検出する図示しないブレード摩耗検知手段を備えてもよい。ブレード摩耗検知手段は、実施形態4と同様に、切削ブレード22を挟む発光素子と、受光素子とを備え、受光素子が受光した光量を検出することで、切削ブレード22の摩耗量を検出し、検出結果を制御手段90に出力する。実施形態2に係る切削装置1は、ブレード摩耗検知手段を備える場合には、切削ブレード22の刃先22aの摩耗量を検出し、Z軸移動手段50を制御して、ドレッシング時の切削ブレード22のZ軸方向の位置の制御を行って、一定のドレッシング幅を得るように構成してもよい。この場合、混合物供給部60のドレッシング部61をZ軸方向に移動させる図示しない移動手段を備えて、Z軸移動手段50または/および図示しない移動手段を制御して、ドレッシング時の切削ブレード22のZ軸方向の位置の制御を行ってもよい。
実施形態2によれば、以下の切削方法及び切削装置1を得ることができる。
(付記1)
被加工物Wを切削ブレード22を用いて切削する切削方法であって、
切削水を被加工物Wに供給し、被加工物Wを該切削ブレード22を回転させて切削する切削工程と、
該切削の合間に該切削ブレード22に流体と微粒子の混合物Kを吹き付ける工程、とを有することを特徴とする切削方法。
(付記2)
表面に被加工物Wを保持する保持部10と、
回転自在なスピンドル21及び該スピンドル21に装着された切削ブレード22を有する切削手段20と、
該スピンドル21の中心軸線方向であるY軸方向、Y軸方向に対して垂直で且つ該保持部10の表面11aに平行な方向なX軸方向、及び、Y軸方向及び該保持部10の表面11aに対して垂直なZ軸方向に、該切削ブレード22を保持部10に対して相対的に移動させるX軸移動手段30、Y軸移動手段40及びZ軸移動手段50と、
被加工物Wに向けて切削水を供給する切削水供給部27と、を有する切削装置1であって、
前記保持部10に隣接して設けられ、かつ被加工物Wの切削の合間に、流体と微粒子の混合物Kを該切削ブレード22に向かって供給する混合物供給部60を備えることを特徴とする切削装置1。
(付記3)
該スピンドル21に流れる電流をモニタし、該電流値の大きさに基づいて、該混合物Kを供給するかどうかを決定する付記2に記載の切削装置1。
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係る切削方法及び切削装置1を図面に基いて説明する。図14は、本発明の実施形態3に係る切削装置の切削手段及び混合物供給部を示す側面図である。図14において、実施形態1及び実施形態2と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
実施形態3に係る切削装置1は、図14に示すように、切削手段20のブレードカバー24が混合物供給部29を備える。実施形態3の混合物供給部29は、図14に示すように、ブレードカバー24に固定されたドレッシング部29cと、ドレッシング部29cに混合物供給源29bから供給される混合物Kを導く供給管62と、ドレッシング部29c内の混合物Kを吸引する吸引ユニット63と、吸引ユニット63にドレッシング部29c内の混合物Kを導く排出菅64とを備える。
ドレッシング部29cは、長手方向の一方の端に供給管62が接続し、他端に排出菅64が接続した筒状に形成されている。ドレッシング部29cは、長手方向が切削ブレード22の刃先22aの接線と平行に配置され、供給管62から供給された混合物Kを排出菅64に向けて切削ブレード22の刃先22aの接線に沿って流す通路29dを内部に設けている。ドレッシング部29cは、切削ブレード22の刃先22aを常に侵入させる侵入孔29eを設けている。ドレッシング29cは、切削ブレード22の刃先22aのうちスピンドル21よりも被加工物Wから離れた箇所を侵入孔29eに侵入させ、混合物Kを切削ブレード22の刃先22aの接線方向に沿って流すことで、混合物Kが被加工物Wに吹き付けられることを規制する。
混合物供給部60は、侵入孔29e内に侵入した切削ブレード22の刃先22aに混合物供給源29bから供給された混合物Kを吹き付けて、切削ブレード22をドレッシングする。また、混合物供給部60は、侵入孔29e内に侵入した切削ブレード22の刃先22aの回転方向Rの逆向きに混合物Kを吹き付ける(切削ブレード22の一点と、混合物Kの相対速度が大きくなるように吹き付けてよい)。混合物供給部60は、切削ブレード22の刃先22aの回転方向Rの逆向きに混合物Kを吹き付けることで、ドレッシングの速度を高めることができる。
実施形態3に係る切削装置1が被加工物Wを切削ブレード22を用いて切削する切削方法は、切削水を被加工物Wに供給し、被加工物Wを該切削ブレード22を回転させて切削する切削工程と、該切削工程中に該切削ブレード22に流体としての気体と微粒子の混合物Kを吹き付ける工程、とを有する。また、実施形態3に係る切削装置1の制御手段90は、実施形態1と同様に、スピンドル21に流れる電流をモニタし、電流値の大きさに基づいて、ドレッシングを行うかどうかを決定してもよい。実施形態3に係る切削装置1は、実施形態1と同様に、流体としては、エア又は窒素等の不活性ガスにより構成された気体を用いるが、気体に限らず、純水などの液体、又は、純水などの液体とエア又は窒素等の不活性ガスにより構成された気体の混合物(所謂、2流体)を用いてもよい。
以上のように、実施形態3に係る切削方法及び切削装置1によれば、切削工程中に切削ブレード22の刃先22aに気体と微粒子の混合物Kを吹き付け、切削ブレード22の刃先22aをドレッシングする。このために、切削工程中に切削ブレード22の刃先22aから切削屑CWを除去することができるとともに、断面において刃先22aをY軸方向と平行に保つことができる。したがって、実施形態3に係る切削方法及び切削装置1によれば、実施形態1及び実施形態2と同様に、切削された被加工物Wの品質を低下させることを抑制することができる。
また、実施形態3に係る切削方法及び切削装置1によれば、切削工程中に切削ブレード22の刃先22aをドレッシングするので、ドレッシングのために専用の工程を設ける必要がない。したがって、実施形態3に係る切削方法及び切削装置1によれば、ドレッシング作業の効率化を達成し生産性を向上することができる。さらに、実施形態3に係る切削方法及び切削装置1によれば、切削手段20のブレードカバー24が混合物供給部29を備えているので、切削工程中以外(切削ブレード22で被加工物Wを切削していない時にも)の1ラインまたは複数ライン切削した後に(実施形態2のようにドレッシング部61に切削ブレード22を移動することなく)混合物Kを供給開始してドレッシングを行うことができる。したがって、実施形態3に係る切削方法及び切削装置1は、切削ブレード22の移動及びドレッシング部61との位置合せにともなう時間を不要とすることができる。さらに、実施形態3に係る切削方法及び切削装置1は、切削手段20のブレードカバー24が混合物供給部29を備えて、切削工程中以外でドレッシングを行うことができるので切削ブレード22をY軸方向に送る時間を活用してドレッシングを行うことができる。
また、実施形態3に係る切削方法及び切削装置1によれば、混合物供給部29が切削ブレード22の刃先22aのうちスピンドル21よりも被加工物Wから離れた箇所を侵入孔29eに侵入させて、ドレッシングするので、混合物Kが被加工物Wに吹き付けられて、被加工物Wがダメージを受けることを抑制することができる。実施形態3に係る切削方法及び切削装置1によれば、切削手段20のブレードカバー24が混合物供給部29を備えているので、チャックテーブル10の周りにドレッシングを行う物品を設ける必要がないので、チャックテーブル10周りの省スペース化を図ることができる。
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4に係る切削方法及び切削装置1を図面に基いて説明する。図15は、本発明の実施形態4に係る切削装置の切削手段及び混合物供給部を示す側面図である。図15において、実施形態1、実施形態2及び実施形態3と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
実施形態4に係る切削装置1は、図15に示すように、実施形態3の混合物供給部29に加え、ブレード摩耗検知手段29fと、供給部移動手段29gとを備える。ブレード摩耗検知手段29fは、切削ブレード22を挟む発光素子と、受光素子とを備え、受光素子が受光した光量を検出することで、切削ブレード22の摩耗量を検出し、検出結果を制御手段90に出力する。
供給部移動手段29gは、制御手段90の命令にしたがって、混合物供給部29を切削ブレード22の径方向に沿って移動させるものである。供給部移動手段29gは、エアシリンダのロッドが伸縮することで混合物供給部29を切削ブレード22の径方向に沿って移動させる。
実施形態4に係る切削装置1が被加工物Wを切削ブレード22を用いて切削する切削方法は、切削水を被加工物Wに供給し、被加工物Wを該切削ブレード22を回転させて切削する切削工程と、該切削工程中に該切削ブレード22に流体(液体および/または気体)と微粒子の混合物Kを吹き付ける工程、とを有する。また、実施形態4に係る切削装置1の制御手段90は、実施形態1と同様に、スピンドル21に流れる電流をモニタし、電流値の大きさに基づいて、ドレッシングを行うかどうかを決定してもよい。実施形態4に係る切削装置1は、実施形態1と同様に、流体としては、エア又は窒素等の不活性ガスにより構成された気体を用いるが、気体に限らず、純水などの液体、又は、純水などの液体とエア又は窒素等の不活性ガスにより構成された気体の混合物(所謂、2流体)を用いてもよい。
さらに、実施形態4に係る切削装置1の制御手段90は、ブレード摩耗検知手段29fの検出結果に基づいて、混合物供給部29が供給する混合物Kが切削ブレード22の刃先22aに衝突するように、供給部移動手段29gを制御して、切削ブレード22の消耗具合に応じて、切削ブレード22と混合物供給部29との相対位置を調整する。具体的には、供給部移動手段29gは、切削ブレード22の摩耗が進むとブレードの径が小さくなるので、混合物供給部29を相対的に切削ブレード22の中心方向へ(平行)移動させる。また、本発明では、供給部移動手段29gは、混合物供給部29の水平面に対する傾き(切削ブレード22に対して混合物Kの供給される角度)を調整してもよい。要するに、本発明では、供給部移動手段29は、切削ブレード22の径方向の切削ブレード22と混合物供給部29との相対位置を調整してもよく、混合物供給部29の水平面に対する傾きを調整してもよく、切削ブレード22の径方向の切削ブレード22と混合物供給部29との相対位置と混合物供給部29の水平面に対する傾きとを調整してもよい。
以上のように、実施形態4に係る切削方法及び切削装置1によれば、切削工程中に切削ブレード22の刃先22aに気体または液体と微粒子の混合物Kを吹き付け、切削ブレード22の刃先22aをドレッシングする。このために、切削工程中に切削ブレード22の刃先22aから切削屑CWを除去することができるとともに、断面において刃先22aをY軸方向と平行に保つことができる。したがって、実施形態4に係る切削方法及び切削装置1によれば、実施形態1〜実施形態3と同様に、切削された被加工物Wの品質を低下させることを抑制することができる。
また、実施形態4に係る切削方法及び切削装置1によれば、切削工程中に切削ブレード22の刃先22aをドレッシングするので、ドレッシングのために専用の工程を設ける必要がない。したがって、実施形態4に係る切削方法及び切削装置1によれば、ドレッシング作業の効率化を達成し生産性を向上することができる。さらに、実施形態4に係る切削方法及び切削装置1によれば、切削手段20のブレードカバー24が混合物供給部29を備えているので、切削工程中以外(切削ブレード22で被加工物Wを切削していない時にも)の1ラインまたは複数ライン切削した後に(実施形態2のようにドレッシング部61に切削ブレード22を移動することなく)混合物Kを供給開始してドレッシングを行うことができる。したがって、実施形態3に係る切削方法及び切削装置1は、切削ブレード22の移動及びドレッシング部61との位置合せにともなう時間を不要とすることができる。さらに、実施形態3に係る切削方法及び切削装置1は、切削手段20のブレードカバー24が混合物供給部29を備えて、切削工程中以外でドレッシングを行うことができるので切削ブレード22をY軸方向に送る時間を活用してドレッシングを行うことができる。
また、実施形態4に係る切削方法及び切削装置1によれば、混合物供給部29が切削ブレード22の刃先22aのうちスピンドル21よりも被加工物Wから離れた箇所を侵入孔29eに侵入させて、ドレッシングするので、混合物Kが被加工物Wに吹き付けられて、被加工物Wがダメージを受けることを抑制することができる。実施形態4に係る切削方法及び切削装置1によれば、切削手段20のブレードカバー24が混合物供給部29を備えているので、チャックテーブル10の周りにドレッシングを行う物品を設ける必要がないので、チャックテーブル10周りの省スペース化を図ることができる。
さらに、実施形態4に係る切削方法及び切削装置1によれば、ブレード摩耗検知手段29fの検出結果に基づいて、供給部移動手段29gを制御して、混合物供給部29が供給する混合物Kが切削ブレード22の刃先22aに衝突する位置に位置付けるので、切削中にドレッシングを確実に行うことができる。
実施形態3及び実施形態4によれば、以下の切削装置1を得ることができる。
(付記4)
表面に被加工物Wを保持する保持部10と、
回転自在なスピンドル21及び該スピンドル21に装着された切削ブレード22を有する切削手段20と、
被加工物Wに向けて切削水を供給する切削水供給部27と、を有する切削装置1であって、
前記切削手段20に取り付けられ、かつ被加工物Wの切削中に、流体と微粒子の混合物Kを該切削ブレード22の刃先22aの接線に沿って供給する混合物供給部29を備えることを特徴とする切削装置1。
(付記5)
前記切削ブレード22の摩耗量を検出するブレード摩耗検知手段29fと、
前記ブレード摩耗検知手段29fの検出結果に応じて、前記混合物供給部29の位置を調整する供給部移動手段29gと
を備えることを特徴とする付記4に記載の切削装置1。
〔変形例〕
本発明の実施形態1〜実施形態4の変形例に係る切削方法及び切削装置1を図面に基いて説明する。図16は、実施形態1〜実施形態4の変形例に係る切削装置の混合物供給部が切削ブレードの刃先をドレッシングする状態を示す断面図である。図17(a)は、実施形態1〜実施形態4の変形例に係る切削方法の混合物を吹き付ける工程の切削ブレードの刃先の概要を示す断面図であり、図17(b)は、実施形態1〜実施形態4の変形例に係る切削方法の混合物を吹き付けた後の切削ブレードの刃先の概要を示す断面図である。なお、図16及び図17において、前述した実施形態1〜実施形態4と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
変形例では、図16に示すように、混合物噴出口29aから切削ブレード22の刃先22aに直接吹きつけられる混合物Kの幅H2が切削ブレード22の厚みTよりも大きくなるように、混合物噴出口29aが形成されている。このために、変形例の混合物供給部29は、断面においてY軸方向と平行な切削ブレード22の刃先22aに混合物Kを吹き付けると、図16に示すように、切削ブレード22の刃先22aのY軸方向の両端部を消耗させることとなる。
また、変形例の切削方法では、切削ブレード22と被加工物Wとの組み合わせにより、図17(a)に示すように、切削工程中に切削ブレード22の刃先22aのY軸方向の中央が主に消耗する。このために、変形例の切削方法では、切削工程中にスピンドル電流が所定値以上である時に切削ブレード22の刃先22aに混合物Kを吹き付けて、切削ブレード22の刃先22aのY軸方向の両端部をドレッシングする。したがって、変形例の切削方法では、切削工程においてY軸方向の中央が消耗する切削ブレード22の刃先22aを、図17(b)に示すように、断面においてY軸方向と平行に保つことができる。さらに、変形例の切削方法及び切削装置1によれば、実施形態1〜実施形態4と同様に、生産性を向上でき被加工物の品質の低下を抑制できるとともに、混合物供給部29から切削ブレード22の刃先22aに直接吹き付けられる混合物Kの幅H2が切削ブレード22の厚みTよりも大きいので、混合物供給部29が切削ブレード22のY軸方向の両端部をドレッシングすることができる。
前述した実施形態1〜実施形態4及び変形例では、ブレードカバー24に混合物供給部29を設けて切削工程と同時にドレッシングを行えるようにしているが、本発明では、ブレードカバー24に混合物供給部29を設けなくてもよい。この場合、切削装置1の例えば保持部10から離間する所定の位置に混合物供給部29を設けて、切削工程外に切削ブレード22の刃先22aに混合物Kを吹き付ける工程を実行するのが望ましい。
また、前述した実施形態1〜実施形態4及び変形例では、ブレードカバー24に混合物供給部29を設けてスピンドル電流が所定値以上となると混合物Kを切削ブレード22の刃先22aに吹き付けている。しかしながら、本発明では、ブレードカバー24に混合物供給部29を設けてスピンドル電流に基づくことなく、切削工程中において混合物Kを常時切削ブレード22の刃先22aに吹き付けてもよい。
前述した実施形態1〜実施形態4及び変形例では、切削手段20を一つのみ有する切削装置1に適用している。しかしながら、本発明では、切削手段20を二つ有する、所謂、デュアルダイサ型の切削装置に適用しても良い。なお、デュアルダイサ型の切削装置に適用する際にも、混合物供給部29をブレードカバー24に設けてもよく、保持部10から離間する所定の位置に設けてもよい。また、デュアルダイサ型の切削装置において、保持部10から離間する所定の位置に混合物供給部29を設ける場合には、混合物供給部29を少なくとも一つ設ければよい。さらに、本発明の切削装置1は、混合物供給部29をブレードカバー24に取り付けても、混合物供給部29がX軸方向と平行に混合物Kを切削ブレード22の刃先22aに供給しても良い。
また、実施形態1、実施形態3及び実施形態4では、X軸方向と平行に切削ブレード22のZ軸方向の中央の刃先22aに混合物Kを供給しても良い。また、実施形態1〜実施形態4では、スピンドルに流れる電流をモニタし、電流値の大きさに基づいて混合物Kを供給するかどうかを決定することに加えて、アライメントなどを実行するための図示しない撮像手段により、切削溝の状態(チッピングなどの大きさ)を常時または所定タイミングで撮像して、その撮像結果から切削溝の状態が許容範囲内にない場合に、ドレッシングを行ってもよい。なお、所定タイミングとは、切削加工を行った被加工物Wの枚数、被加工物Wの大きさ、切削ブレード22の駆動積算時間などの少なくとも1つに基づくものであってよい。また、実施形態1〜実施形態4では、撮像手段により切削溝の状態を撮像等せず、切削加工を行った被加工物Wの枚数、被加工物Wの大きさ、切削ブレードの駆動積算時間などの少なくとも1つに基づいて、判断される所定のタイミングでドレッシングを行ってもよい。
なお、本発明は上記実施形態、変形例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。