JP6179600B2 - 質量分析データ解析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、試料上の測定領域内の複数の測定点に対しそれぞれ質量分析を実行することで収集された質量分析イメージジングデータを解析し、試料に含まれる物質の2次元的な分布などの有意な情報を取得するための質量分析データ解析装置に関する。
生体組織等の試料の形態観察を行うと同時に、その試料上の所定領域に存在する物質(分子)の分布を測定する装置として、質量顕微鏡或いはイメージング質量分析装置などと呼ばれる装置が開発されている。こうした装置によれば、試料をすり潰したり破砕したりすることなく試料の形態をほぼ維持したまま、顕微観察で得られた画像に基づいて指定された試料上の任意の測定領域に含まれる特定の質量電荷比m/zをもつイオンの2次元分布画像(質量分析イメージング画像)を得ることが可能である。そのため、特に、生化学分野、医療・薬学分野などにおいて、例えば生体内細胞に含まれる特定のタンパク質などの成分の分布情報を得るといった応用が期待されている。
イメージング質量分析装置による分析では、2次元的な測定領域内の測定点毎に所定の質量電荷比範囲に亘る、質量電荷比と信号強度との関係を示すマススペクトルデータが得られる。また、イメージング質量分析装置においてMSn分析を行う場合には、測定点毎に1又は複数のプリカーサイオンに対するプロダクトイオンの質量電荷比と信号強度との関係を示すMSnスペクトルデータも得られる。このため、試料全体又は試料上の測定領域全体で得られるデータ量は極めて膨大なものとなる。こうした膨大なデータから、人間が目で見て有意な情報を引き出すことは、多大な時間と労力を要し実用的でない。
例えばイメージング質量分析装置を利用した生体試料の測定においては、しばしば、試料上で特異的に分布している物質を特定することが重要である。そこで、2次元的な測定領域内で特異的に分布しているイオンの質量電荷比を求めるために、主成分分析(PCA=Principal Component Analysis)や階層的クラスタ分析(HCA=Hierarchical Cluster Analysis)などの多変量解析を利用する方法が報告されている(例えば非特許文献1参照)。
質量分析によって得られたマススペクトルに現れるピークには、多数のノイズ由来のピークが含まれるし、試料に含まれる成分由来ではあるものの有意ではないピークも含まれる。そこで、上記のような多変量解析処理を実行する場合には、その処理に先立って、収集された質量分析イメージングデータに対してピーク抽出処理を実施することにより、適宜の個数の解析対象ピークを選出するのが一般的である。そして、各測定点におけるマススペクトルデータの中で、上記解析対象ピークの質量電荷比値に対応するデータを抽出し、このデータに基づいて各測定点におけるスペクトル強度を決定する。これにより、ノイズピーク等を極力排除し、有意な情報を引き出すことができるとともに処理対象のデータを減らして処理時間を短縮することができる。
適切な解析対象ピークを選出するためのピーク抽出方法として、非特許文献2に記載されている方法がよく知られている。このピーク抽出方法では、主として2種類のスペクトルにおいて信号強度が大きい順に指定された個数のピークを選出することで解析対象ピークを選出している。この2種類のスペクトルのうちの一つは、測定領域内の全測定点におけるマススペクトルにおける信号強度値を質量電荷比値毎に積算することで作成したスペクトル、又はこれを測定点数で除して信号強度値の平均値を求めたスペクトルである。以下、このスペクトルを平均スペクトルという。他の一つは、測定領域内の全測定点におけるマススペクトルに対し、質量電荷比値毎に最大強度を示すピークを抽出し、該ピークを集めて再構築したマススペクトルである。以下、このマススペクトルをベースピークスペクトルという。例えば、非特許文献2の図4には、平均スペクトル(mean spectrum)とベースピークスペクトル(basepeak spectrum)の例が開示されている。
マッコムビ(Gregor McCombie)、ほか3名、「スペイシャル・アンド・スペクトラル・コリレイションズ・イン・マルディ・マス・スペクトロメトリ・イメージズ・バイ・クラスタリング・アンド・マルチバリエイト・アナリシス(Spatial and Spectral Correlations in MALDI Mass Spectrometry Images by Clustering and Multivariate Analysis)」、アナリティカル・ケミストリ(Analytical Chemistry)、Vol.77、2005年、pp.6118-6124 マクドネル(Liam A. McDonnell)、ほか4名、「イメージング・マス・スペクトロメトリ・データ・リダクション:オートメイテッド・フューチャ・アイデンティフィケイション・アンド・イクストラクション(Imaging Mass Spectrometry Data Reduction: Automated Feature Identification and Extraction)」 、ジャーナル・オブ・アメリカン・ソサイエティ・フォー・マス・スペクトロメトリ(Journal of American Society for Mass Spectrometry)、2010年、Vol.21、pp.1969-1978 「アナライジング・ザ・テクスチュア・オブ・アン・イメージ(Analyzing the Texture of an Image)」、[平成25年9月30日検索]、米国マスワークス(MathWorks)社、インターネット<URL: http://www.mathworks.co.jp/jp/help/images/analyzing-the-texture-of-an-image.html?lang=en> ハラリック(Haralick R.M.)、「テクスチュラル・フューチャーズ・フォー・イメージ・クラシフィケイション(Textural Features for Image Classification)」、アイトリプルイー・トランザクションズ・オン・システムズ、マン・アンド・サイバネティクス(IEEE Transactions on Systems, Man and Cybernetics)、SMC-3、1973年、pp.610-621
上述した平均スペクトルやベースピークスペクトルを利用したピーク抽出方法によれば、全測定点の中で比較的大きい信号強度を示すイオン由来のピークが強度上位に現れる可能性が高い。しかしながら、平均スペクトルやベースピークスペクトルを作成する際に、質量分析イメージングデータとしての空間分布は考慮されていない。即ち、この従来のピーク抽出方法では、測定点全体として専ら信号強度が大きいピークが優先的に選出されることになる。しかしながら、大きな信号強度を示すピークに対応した物質が必ずしも特異的な空間分布を有しているとは限らない。例えば、測定領域全体に同じ物質が比較的多量に含まれているような場合には、該物質由来のピークは解析対象ピークとして選出されるものの、有意な情報を引き出すために有益ではない。そのため、従来のピーク抽出方法を用いた場合、分析者が意図しているような物質、つまり特異的に分布している物質が適切に抽出されないおそれがある。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、イメージング質量分析により収集されたデータの中で、一つの測定点あたりの信号強度が比較的大きく、しかもその空間的な分布が特異的であるようなピーク群を抽出することができるピーク抽出方法を用いることで、特異的に分布する物質に関する有意な情報を引き出すことができる質量分析データ解析装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明は、試料上の2次元的な測定領域内に設定された複数の測定点に対してそれぞれ質量分析を実行することにより収集されたマススペクトルデータを解析処理する質量分析データ解析装置であって、
a)測定領域内の各測定点に対するマススペクトルデータに基づいて、所定の質量電荷比範囲内の質量電荷値毎に作成される信号強度値の2次元分布を示す画像に対しそれぞれテクスチャ解析を実行し、該画像中の局所的な模様及び/又はパターンの特徴を反映した特徴量を求めるテクスチャ解析実行部と、
b)前記テクスチャ解析実行部により質量電荷比値毎に求められた特徴量に基づいて特徴量スペクトルを作成する特徴量スペクトル作成部と、
c)前記特徴量スペクトル作成部により作成された特徴量スペクトルに対しピーク検出を行い、得られた複数のピークの中で強度順に所定個数のピークを解析対象ピークとして抽出する解析対象ピーク決定部と、
を備え、前記解析対象ピーク決定部により決定された解析対象ピークを参照して前記測定領域内の各測定点におけるマススペクトルデータからデータを選択して処理することを特徴としている。
本発明に係る質量分析データ解析装置における解析処理対象であるマススペクトルデータは、各測定点に対する通常の質量分析を実施して得られたデータのほか、MSn分析(ただしnは2以上の整数)を実施して得られたデータも含む。
本発明に係る質量分析データ解析装置では、信号強度が空間的に特異的に分布する質量電荷比を見いだすために、画像マッチングや領域分類等によく利用される画像のテクスチャ解析を利用する。テクスチャ解析には大別して構造的テクスチャ解析と統計的テクスチャ解析とがあるが、イメージング質量分析でしばしば測定対象となる生体試料では、多くの場合、測定領域内における輝度や色パターンの構造性、規則性は乏しい。こうした画像に対するテクスチャ解析には統計的テクスチャ解析が適しているから、本発明において好ましくは、上記テクスチャ解析実行部は統計的テクスチャ解析を実行するものとするとよい。
本発明に係る質量分析データ解析装置において、測定領域内の各測定点に対するマススペクトルデータが処理対象として与えられると、テクスチャ解析実行部は、全ての測定点について所定の質量電荷比範囲内の或る質量電荷値に対する信号強度を示すデータを抽出し、その信号強度値の2次元分布を示す画像に対するテクスチャ解析を実行することで、該画像のテクスチャの特徴量を算出する。そして、このような処理を所定の質量電荷比範囲内の全ての質量電荷値に対して実行することで、その全ての質量電荷比値に対するテクスチャの特徴量をそれぞれ求める。
なお、所定の質量電荷比範囲は予めその範囲(つまり上限値と下限値)が例えばデフォルト値として定められていてもよいし、その都度、分析者により指定されるようにしてもよい。
特徴量スペクトル作成部は、上述したように質量電荷比値毎に求められた特徴量に基づいて、質量電荷比とテクスチャ特徴量との関係を示す特徴量スペクトルを作成する。解析対象ピーク決定部は、この特徴量スペクトルを上述した平均スペクトルやベースピークスペクトルの代わりとして、該特徴量スペクトルに対しピーク検出を行う。そして、得られた多数のピークの中で強度順(つまりはテクスチャ特徴量が大きい順)に所定個数のピークを解析対象ピークとして抽出する。これにより、解析対象とすべき質量電荷比が所定個数求まる。そこで例えば、測定領域内の各測定点におけるマススペクトルデータの中から、解析対象とすべき質量電荷比に対応するデータを選択し、そうして選択したデータを例えば適宜の多変量解析処理などに供することにより、空間的に特異的に分布する物質に関する情報を算出する。なお、本発明に係る質量分析データ解析装置において、各測定点におけるマススペクトルデータから選択されたデータを処理する手法は特に限定されない。
テクスチャ解析では、画像中に存在する模様やパターンに関する情報が得られ、これは空間的な分布を反映しているといえる。特に統計的テクスチャ解析では、画像中の局所的な模様やパターンの特徴を反映した様々な特徴量(統計量)を解析結果として求めることができる。そこで、適切な特徴量を用いることで、測定領域全体として信号強度が比較的大きく、且つそのイオンの空間分布が特異的であるような質量電荷比を抽出することができる。また、統計的テクスチャ解析にもいくつかの解析手法があり、適切な解析手法を選択し、適切な特徴量を利用することが好ましい。
本願発明者の実験的な検討によれば、統計的テクスチャ解析として、空間濃度レベル依存法(SGLDM=Spatial Gray Level Dependant Method)又は濃度レベル差分法(GLDM=Gray Level Differential Method)が特に効果的である。また、空間濃度レベル依存法の場合、特徴量として相関値を用いるとよく、濃度レベル差分法の場合には、特徴量としてコントラスト値を用いるとよい。もちろん、それら以外の統計的テクスチャ解析手法、特徴量を用いてもよい。
本発明に係る質量分析データ解析装置によれば、平均スペクトルやベースピークスペクトルを用いた従来のピーク選出手法に比べて、測定領域中に特異的に分布している物質由来のイオンの質量電荷比を的確に見いだすことができる。そのため、例えば、抽出された複数のピークに対応した質量分析イメージングデータを用いて多変量解析等を行うことで、従来は見つけることができなかった特定部位に局在する物質の質量電荷比値を特定し、該質量電荷比値における質量分析イメージング画像を分析者に提供することができる。
本発明に係る質量分析データ解析装置を利用したイメージング質量分析装置の一実施例の概略構成図。 本実施例のイメージング質量分析装置における特徴的なデータ解析処理動作の概略説明図。 本実施例のイメージング質量分析装置における特徴的なデータ解析処理のフローチャート。 実測例1におけるピーク抽出結果及び各ピークの質量電荷比値に対する質量分析イメージング画像を示す図。 実測例1においてピーク抽出に用いたスペクトルを示す図。 実測例2におけるピーク抽出結果及び各ピークの質量電荷比値に対する質量分析イメージング画像を示す図。 実測例2においてピーク抽出に用いたスペクトルを示す図。
以下、本発明に係る質量分析データ解析装置を用いたイメージング質量分析装置の一実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は本実施例によるイメージング質量分析装置の概略構成図である。
このイメージング質量分析装置は、試料8上の2次元的な測定領域8aの顕微観察を行うとともに該測定領域8a内のイメージング質量分析を実行するイメージング質量分析本体部1と、イメージング質量分析本体部1で収集された質量分析イメージングデータを解析処理するデータ解析処理部2と、測定領域8a全体の質量分析イメージングデータを記憶しておくデータ記憶部3と、イメージング質量分析本体部1で撮影された光学画像信号を処理して顕微画像を構成する顕微画像処理部4と、それら各部を制御する制御部5と、制御部5に接続された操作部6及び表示部7と、を備える。
図示しないが、イメージング質量分析本体部1は例えば、MALDIイオン源、3次元四重極型イオントラップ、飛行時間型質量分析計、などを含み、測定領域8a内に設定された測定点(厳密にいえば、所定サイズの微小領域)に対して所定の質量電荷比範囲に亘る質量分析を実行する。また、イメージング質量分析本体部1は、試料8が載置されたステージを互いに直交するx、yの2軸方向に高精度で移動させる駆動部を含み、試料8をx軸又はy軸方向に所定ステップ長だけ移動させる毎に質量分析を実行することにより、測定領域8a内の全ての測定点に対するマススペクトルデータの収集が可能である。なお、イメージング質量分析本体部1では、イオントラップにおいて特定のイオンの選択操作及び選択したイオンに対する開裂操作を行うことにより、nが2以上であるMSn分析を実行することもできる。
後述する特徴的なデータ解析処理を実行するために、データ解析処理部2は、テクスチャ解析部21、特徴量スペクトル作成部22、解析対象ピーク決定部23、データ抽出部24、多変量解析処理部25などを機能ブロックとして含む。なお、データ解析処理部2、データ記憶部3、顕微画像処理部4、制御部5、などの機能の少なくとも一部は、パーソナルコンピュータ又はワークステーションに搭載された専用の処理・制御ソフトウエアを実行することにより達成されるようにすることができる。
本実施例のイメージング質量分析装置は、イメージング質量分析本体部1により得られた各測定点に対するマススペクトルデータ(或いはMSnスペクトルデータ)を集積した膨大な量の質量分析イメージングデータを解析処理して表示部7の画面上に表示するデータ解析処理部2におけるデータ処理にその特徴を有する。
図2は本実施例のイメージング質量分析装置におけるデータ解析処理動作の概略説明図、図3は本実施例のイメージング質量分析装置における特徴的なデータ解析処理の手順を示すフローチャートである。また、図4〜図7はこのデータ解析処理を適用した実測例の結果である。図2〜図7を参照して、本発明の特徴であるデータ解析処理の一例を説明する。
試料8に対する分析実行時に、イメージング質量分析本体部1は、図2(a)、(b)に示すように、試料8上に2次元的に設定された測定領域8a内をx軸方向、y軸方向にそれぞれ細かく区分した微小領域8b毎に、所定の質量電荷比範囲に亘るマススペクトルデータを取得する。なお、微小領域8b、つまり測定点は、図2に示すように測定領域8a内全体に密に設けられておらず、疎らに存在していてもよい。即ち、測定点のピッチや測定点のサイズは任意に定めることができる。
なお、一般に、或る質量電荷比を有するイオンの空間強度分布を示す質量分析イメージング画像では、微小領域8b毎にカラー2次元表示画像上の表示色が定められる。したがって、色付けなどの画像処理上では微小領域8bが最小単位となるので、画像処理上のピクセルと微小領域とは同義であり、以下の説明では、必要に応じて微小領域(測定点)をピクセルと呼ぶ。
図3のフローチャートに示すデータ解析処理は、試料8上の測定領域8aに対する質量分析イメージングデータがデータ記憶部3に格納されている状態で実行される。
例えば分析者が操作部6から解析対象であるデータ(例えば目的の測定領域に対する質量分析イメージングデータが格納されたファイル)を指定した上で解析開始を指示すると、データ解析処理部2においてテクスチャ解析部21は、データ記憶部3から指定された測定領域中の全てのマススペクトルデータを読み込む(ステップS1)。図2(b)に示すように、或る1つの測定点(微小領域又はピクセル)におけるマススペクトルは、各質量電荷比値に対する信号強度値から構成される。以下の説明では、マススペクトルにおいて信号強度値が得られている質量電荷比値をデータポイントといい、質量電荷比の小さい順にデータポイントを並べたときに各データポイントに付す連続番号をポイント番号ということとする。
テクスチャ解析部21は、データポイント毎に、測定領域8aに含まれる全ての測定点における信号強度値データで構成される画像に対し統計的テクスチャ解析を実行する。
具体的には、まず、指定されている質量電荷比範囲の下限値に対応するポイント番号smzを初期値として、マススペクトルデータのポイント番号を示す変数iに設定する(ステップS2)。そして、図2(c)に示すように、ポイント番号が変数iである信号強度値データを全ての測定点から収集し、それを再構成することでそのポイント番号に対する、つまりはそのポイント番号に対応する質量電荷比値に対する画像を作成する。その画像に対して所定の統計的テクスチャ解析を実行する(ステップS3)。
このときの統計的テクスチャ解析では、各質量電荷比値の空間強度分布の濃淡に着目し、その一様性、方向性、コントラスト変化などの特徴量を算出する。統計的テクスチャ解析には、濃度ヒストグラム法(GLHM=Gray Level Histogram Method)、空間濃度レベル依存法、濃度レベル差分法など、幾つかの解析手法が知られているが、本願発明者の実験的な検討によれば、空間濃度レベル依存法又は濃度レベル差分法が適当である。また、テクスチャ解析の結果として様々な特徴量を求めることが可能であるが、ここでは、空間濃度レベル依存法を用いた場合には特徴量として相関値を用い、濃度レベル差分法の場合には特徴量としてコントラスト値を用いるとよい。
画像の統計的テクスチャ解析についてはよく知られている(例えば非特許文献3、4など参照)ので詳細な説明は省き、概略的に説明する。
空間濃度レベル依存法は、画像における濃度がiである一つの画素から角度θ方向に距離dだけ離れた別の画素の濃度がjである確率P(i,j)を要素とする同時生起行列を求め、その行列から特徴量を算出する手法である。特徴量の一つである相関値aは、画素ペアの同時発生確率で重み付けされた相関の統計的な尺度であり、次の式で得られる。
a=Σ{(i−μi)(j−μj)P(i,j)}/σiσj
ここで、Σはi、jに関する総和であり、μi、σiはそれぞれ、濃度がiである確率P(i)の平均、標準偏差、μj、σjはそれぞれ、濃度がjである確率P(j)の平均、標準偏差である。ただし、P(i)=ΣjP(i,j)、P(j)=ΣiP(i,j)で、Σjはjに関する総和、Σiはiに関する総和である。画像の均質性が高い(つまり濃度の変化が小さい)場合には、相関値は低くなる。
一方、濃度レベル差分法は、或る一つの画素の濃度と該画素から角度θ方向に距離dだけ離れた別の画素の濃度との差がkである確率P(k)、(ただし、k=0,1,2,…,n−1)を要素とする行列を求め、その行列から特徴量を算出する手法である。特徴量の一つであるコントラストcは、行列の中の局所的な変化を示す尺度であり、次の式で得られる。
c=Σk2P(k)
ここで、Σはkが0からn−1までの総和である。
或る1つの変数iに対する統計的テクスチャ解析を実行して特徴量を求めたならば、その変数iが指定されている質量電荷比範囲の上限値に対応するポイント番号emzであるか否か判定し(ステップS4)、i=emzである場合には、指定された質量電荷比範囲に亘るテクスチャ解析を終了したのでステップS6へと進む。他方、i=emzでない場合には変数iをインクリメントして(ステップS5)ステップS3へと戻る。ステップS3〜S5を繰り返すことで、指定された質量電荷比範囲内の全てのデータポイントに対してテクスチャ解析を実施し、特徴量を求めることができる。
テクスチャ解析が終了すると、特徴量スペクトル作成部22は、各データポイントの特徴量を用いて、横軸が質量電荷比m/z、縦軸が特徴量の値である特徴量スペクトルを作成する(ステップS6)。これにより、上述した平均スペクトルやベースピークスペクトルとは異なる、質量分析イメージングデータの空間分布をより的確に反映したスペクトルが得られる。
続いて、解析対象ピーク決定部23は、目的とする測定領域8aに対して一つのみ得られた特徴量スペクトルについてピーク検出を実行しピークを抽出する(ステップS7)。そして、抽出された多数のピークの強度(特徴量)を順に調べ、強度が大きい順に所定個数のピークを解析対象ピークとして選出し、その選出したピークの質量電荷比値を求める(ステップS8)。ここで選出するピークの数、つまり上記所定個数は、予め決められた値としておく、処理の過程で自動的に定められる、又は、分析者が操作部6から任意の値を入力設定することにより決定するようにすればよい。
上記ステップS8において、各測定点において得られたマススペクトルデータからデータ(信号強度データ)を抽出すべき質量電荷比値が定まる。そこで、データ抽出部24は、各測定点において得られているマススペクトルデータの中から、ステップS8で定められた質量電荷比値に対応する信号強度データを抽出する。したがって、例えば解析対象ピークの数が200である場合には、互いに異なる200個の質量電荷比値が求まり、各測定点からそれぞれ200個の信号強度データが得られることになる。
こうして選択されたデータが多変量解析処理部25に与えられ、多変量解析処理部25はそうして集められたデータに対して所定の多変量解析処理を実施し、測定領域8a内で広範囲に分布する物質や特定部分に局在する物質を判別する(ステップS10)。そして、最終的にその多変量解析結果を表示部7の画面上に表示し、分析者に情報を提供する(ステップS11)。
以下、図2、図3に基づいて説明したデータ解析処理を実際に分析を行って得られた質量分析イメージングデータに適用した実測例について説明する。
[実測例1]
実測例1として、生姜をスライスした切片を試料として正イオンモードでイメージング質量分析して得られたデータを解析処理した例について説明する。
図4はこのときのピーク抽出結果と各ピークの質量電荷比値における質量分析イメージング画像を示す図である。ここでは、平均スペクトル、ベースピークスペクトル(これら二つは従来法)、及び、空間濃度レベル依存法で算出した相関値に基づいて作成した特徴量スペクトル(図中では「SGLDM-corrスペクトル」と記載)それぞれに基づいて、強度が大きい順に200個のピークを解析対象ピークとして選出した。
図4中の数値は、m/z 109.92、m/z 191.09、m/z 333.15、m/z 357.18、m/z 381.09とい5種類の質量電荷比が、それぞれ選出された200個の解析対象ピークの中で強度順位が何番目であるのかを示しており、「×」はその質量電荷比を持つピークを選出できなかった(少なくとも強度上位200個に入っていない)ことを示している。なお、上記5種類の質量電荷比は比較的特異的に分布していることが予め分かっている物質に対応したものである。したがって、これら質量電荷比が選出されているほうが、特異的な空間分布を反映しているスペクトルであるということができる。
図5は解析対象ピークの選出に利用したスペクトルであり、(a)は平均スペクトル、(b)はベースピークスペクトル、(c)は特徴量(SGLDM-Corr)スペクトルである。これら各スペクトルにおいて、図4に挙げた5種類の質量電荷比値の中で、選出されたピークに○印、選出できなかったピークには×印を記してある。
図4に示したように、この実測例1の結果によれば、SGLDM-Corrスペクトルを用いたときに、従来法である平均スペクトルやベースピークスペクトルを用いた場合には選出できなかったm/z 357.18におけるピークが、高い強度順位で選出できていることが分かる。また、m/z 333.15におけるピークは、平均スペクトルやベースピークスペクトルを用いた場合に比べて、SGLDM-Corrスペクトルを用いたときのほうが高い強度上位で選出できていることが確認できる。図4に示した質量分析イメージング画像を見ると、m/z 333.15やm/z 357.18のように、SGLDM-corrスペクトルにおいて選出された質量電荷比は、比較的強度の大きいピクセルが局在した空間分布を示していることが分かる。このようなことから、本発明に係る装置で用いられているデータ解析方法によれば従来法に比べて、物質の空間分布を反映したスペクトルを作成できていると結論付けることができる。
[実測例2]
実測例2として、マウスの足裏部皮膚をスライスした切片を試料として正イオンモードでイメージング質量分析して得られたデータを解析処理した例について説明する。
図6はこのときのピーク抽出結果と各ピークの質量電荷比値における質量分析イメージング画像を示す図である。実測例1と同様に、平均スペクトル、ベースピークスペクトル、及びSGLDM-corrスペクトルに基づいて、強度上位200個のピークを解析対象ピークとして選出した。
図7は解析対象ピークの選出に利用したスペクトルであり、(a)は平均スペクトル、(b)はベースピークスペクトル、(c)はSGLDM-Corrスペクトルである。これらスペクトルにおいて、図6に挙げた8種類の質量電荷比値の中で、選出されたピークに○印、選出できなかったピークには×印を記してある。
図6に示したように、この実測例2の結果によれば、SGLDM-Corrスペクトルを用いたときに、従来法である平均スペクトルやベースピークスペクトルを用いた場合には選出できなかったm/z 630.4、m/z 866.6におけるピークが選出できていることが分かる。図6に示した質量分析イメージング画像を見ると、m/z 630.4、m/z 866.6のように、SGLDM-corrスペクトルにおいて選出された質量電荷比は、比較的強度の大きいピクセルが局在した空間分布を示していることが分かる。このようなことから、本発明に係る装置で用いられているデータ解析方法によれば従来法に比べて、物質の空間分布を反映したスペクトルを作成できていると結論付けることができる。
なお、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
例えば上記実施例では、通常の質量分析によって得られたマススペクトルデータを集めた質量分析イメージングデータに対し特徴的なデータ解析処理を適用したが、特定のプリカーサイオンを衝突誘起解離などによって開裂させて生じたプロダクトイオンを質量分析して得られたMSnスペクトルデータを集めた質量分析イメージングデータに対し特徴的なデータ解析処理を適用してもよい。
1…イメージング質量分析本体部
2…データ処理部
21…テクスチャ解析部
22…特徴量スペクトル作成部
23…解析対象ピーク決定部
24…データ抽出部
25…多変量解析処理部
3…データ記憶部
4…顕微画像処理部
5…制御部
6…操作部
7…表示部

Claims (6)

  1. 試料上の2次元的な測定領域内に設定された複数の測定点に対してそれぞれ質量分析を実行することにより収集されたマススペクトルデータを解析処理する質量分析データ解析装置であって、
    a)測定領域内の各測定点に対するマススペクトルデータに基づいて、所定の質量電荷比範囲内の質量電荷値毎に作成される信号強度値の2次元分布を示す画像に対しそれぞれテクスチャ解析を実行し、該画像中の局所的な模様及び/又はパターンの特徴を反映した特徴量を求めるテクスチャ解析実行部と、
    b)前記テクスチャ解析実行部により質量電荷比値毎に求められた特徴量に基づいて特徴量スペクトルを作成する特徴量スペクトル作成部と、
    c)前記特徴量スペクトル作成部により作成された特徴量スペクトルに対しピーク検出を行い、得られた複数のピークの中で強度順に所定個数のピークを解析対象ピークとして抽出する解析対象ピーク決定部と、
    を備え、前記解析対象ピーク決定部により決定された解析対象ピークを参照して前記測定領域内の各測定点におけるマススペクトルデータからデータを選択して処理することを特徴とする質量分析データ解析装置。
  2. 請求項1に記載の質量分析データ解析装置であって、
    前記テクスチャ解析実行部は統計的テクスチャ解析を実行することを特徴とする質量分析データ解析装置。
  3. 請求項2に記載の質量分析データ解析装置であって、
    前記テクスチャ解析実行部は空間濃度レベル依存法によるテクスチャ解析を実行することを特徴とする質量分析データ解析装置。
  4. 請求項3に記載の質量分析データ解析装置であって、
    前記テクスチャ解析実行部は特徴量として相関値を用いることを特徴とする質量分析データ解析装置。
  5. 請求項2に記載の質量分析データ解析装置であって、
    前記テクスチャ解析実行部は濃度レベル差分法によるテクスチャ解析を実行することを特徴とする質量分析データ解析装置。
  6. 請求項5に記載の質量分析データ解析装置であって、
    前記テクスチャ解析実行部は特徴量としてコントラスト値を用いることを特徴とする質量分析データ解析装置。
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