JP6160704B2 - エンジンマウント部を備える車両 - Google Patents

Description

本発明は、複数のエンジンマウント部を備える車両に関し、特に、複数のエンジンマウント部を介してパワーユニットが車体に搭載される車両に関する。

従来、複数のエンジンマウント部を介してエンジン及びトランスミッション等から構成されるパワーユニットが車体に搭載される車両が知られている（例えば、特許文献１参照）。

上記特許文献１に開示されたエンジンマウント部は、車体（フレーム）側に固定される車体側ブラケットと、パワーユニット側に固定されるパワーユニット側ブラケットとを備えている。

車体側ブラケット及びパワーユニット側ブラケットには、互いのブラケットを固定するためのボルトを挿通するボルト孔が形成されている。また、パワーユニット側ブラケットのボルト孔は、長孔形状に形成されている。

一般的に、車体（フレーム）は、板金部品を溶接する構成になっているため、比較的大きな製造ばらつきを有している。パワーユニットはエンジンマウント部を介して車体に搭載されるが、上記のような車体の製造ばらつきを調整（吸収）する機構を有していない場合には、車体の製造ばらつきやエンジンマウント部の組み付けのばらつきによってパワーユニットの所定の姿勢を保持できなくなる等の不都合が生じる。

このため、従来では、パワーユニット側ブラケットのボルト孔を長孔形状に形成することによって、ボルト孔の長辺方向にパワーユニットと車体との位置を調整することが可能（ばらつき吸収可能）となっている。

特開平１１−０２０４８２号公報

上記特許文献１に開示された構造では、パワーユニット側ブラケットに形成された長孔形状のボルト孔の長辺方向に沿った方向（一方向）に車体の製造ばらつきを調整（吸収）することが可能である。その一方で、車両の複数の方向（例えば、車両幅方向及び高さ方向等）へのばらつきを調整することが困難であるという問題点がある。

本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、複数のエンジンマウント部を介してパワーユニットが車体に搭載される車両において、車両の複数の方向へのばらつきを調整することが可能なエンジンマウント部を備える車両を提供することを目的としている。

上述の課題を解決するための手段として、本発明によるエンジンマウント部を備える車両は、以下のように構成されている。

すなわち、本発明は、第１、第２、第３、および第４エンジンマウント部を介してパワーユニットが車体に搭載される車両において、前記第１エンジンマウント部には、前記パワーユニットの荷重が配分されておらず、前記第２〜第４エンジンマウント部には、前記パワーユニットの荷重が配分されており、前記第１エンジンマウント部は、前記パワーユニット側に取り付けられるパワーユニット側ブラケットと、前記車体側に取り付けられる車体側ブラケットと、前記パワーユニット側ブラケットと前記車体側ブラケットとの間に設けられたインシュレータとを含み、前記第１エンジンマウント部の前記パワーユニット側ブラケットと前記車体側ブラケットとの取付部分において、前記パワーユニット側ブラケット又は前記車体側ブラケットのいずれか一方には第１の方向へのばらつきを調整する第１ばらつき調整機構が設けられているとともに、前記インシュレータには前記第１の方向と交差する第２の方向へのばらつきを調整する第２ばらつき調整機構が設けられ、前記第１の方向は、車両の幅方向であり、前記第２の方向は、車両の高さ方向であり、前記パワーユニット側ブラケット又は前記車体側ブラケットのいずれか一方に設けられた第１ばらつき調整機構は、前記車両の幅方向のばらつきを調整するように形成され、前記インシュレータに設けられた第２ばらつき調整機構は、前記車両の高さ方向のばらつきを調整するように形成され、前記第１および第２エンジンマウント部が、前記パワーユニットの重力方向上側に設けられ、前記第３および第４エンジンマウント部が、前記パワーユニットの重力方向下側に設けられ、前記パワーユニット側ブラケットと前記車体側ブラケットと前記インシュレータとを固定し、且つ車両の前後方向に沿って設けられる締結部材をさらに備え、前記パワーユニット側ブラケット又は前記車体側ブラケットのいずれか一方に設けられた第１ばらつき調整機構と前記インシュレータに設けられた第２ばらつき調整機構とに前記締結部材を挿通させた状態で、前記パワーユニット側ブラケットと前記車体側ブラケットとの相対的な位置を調整可能に構成されていることを特徴とするものである。

かかる構成を備えるエンジンマウント部を備える車両によれば、例えば、まず荷重が配分されるエンジンマウント部を介してパワーユニットが車体に搭載され、さらに荷重が配分されないエンジンマウント部を介してパワーユニットが車体に搭載される場合に、パワーユニットと車体との取付位置のばらつき（製造ばらつき等）を第１ばらつき調整機構及び第２ばらつき調整機構により、第１の方向及び第２の方向（例えば、車両の幅方向及び高さ方向）に調整することができる。すなわち、パワーユニットの荷重が配分されないエンジンマウント部において、パワーユニット側ブラケットと車体側ブラケットとの相対的な位置が第１方向及び第２方向に調整されるので、車両の複数の方向へのばらつき（製造ばらつき等）を調整（吸収）することができる。具体的には、パワーユニット側ブラケットと車体側ブラケットとの相対的な位置を車両幅方向及び高さ方向に調整することができる。これにより、第１ばらつき調整機構及び第２ばらつき調整機構においてパワーユニットと車体との車両幅方向及び高さ方向への取付位置のばらつきを吸収することができる。

また、パワーユニットの荷重が主に配分されるエンジンマウント部では、パワーユニットを車体に搭載した場合に大きな荷重がかかるため、車両の複数の方向への位置調整ができないという不都合がある。これに対して、本発明では、パワーユニットの荷重が配分されないエンジンマウント部にて車両の複数の方向への位置調整を実施することによって、精度よくパワーユニットと車体との位置調整ができる。

本発明の具体的な構成として、以下の複数のものが挙げられる。

また、本発明によるエンジンマウント部を備える車両において、好ましくは、前記パワーユニット側ブラケット又は前記車体側ブラケットのいずれか一方に設けられた第１ばらつき調整機構は、前記第１の方向に延びるように形成された第１長孔部であり、前記インシュレータに設けられた第２ばらつき調整機構は、前記第１の方向と交差する第２の方向に延びるように形成された第２長孔部であることを特徴とする。このように構成すれば、第１長孔部の第１の方向（長辺方向）及び第２長孔部の第２の方向（長辺方向）にパワーユニット側ブラケットと車体側ブラケットとの相対的な位置を調整することができる。これにより、第１長孔部及び第２長孔部においてパワーユニットと車体との取付位置のばらつきを吸収することができる。

また、本発明によるエンジンマウント部を備える車両において、好ましくは、前記車体側ブラケットには、前記第１ばらつき調整機構が設けられ、前記パワーユニット側ブラケットには、前記第２ばらつき調整機構が設けられた前記インシュレータが設けられていることを特徴とする。このように構成すれば、パワーユニットと車体との取付位置のばらつき（製造ばらつき等）を、車体側ブラケットに設けられた第１ばらつき調整機構と、パワーユニット側ブラケットに設けられたインシュレータに設けられた第２ばらつき調整機構により、パワーユニット側ブラケット（インシュレータ）と車体側ブラケットとの相対的な位置を第１の方向及び第２の方向（例えば、車両の幅方向及び高さ方向）に調整することができる。これにより、パワーユニットの荷重が配分されないエンジンマウント部において、パワーユニット側ブラケット（インシュレータ）と車体側ブラケットとの相対的な位置が調整されるので、車両の複数の方向へのばらつき（製造ばらつき等）を調整（吸収）することができる。

上記のように、本発明によるエンジンマウント部を備える車両によれば、車両の複数の方向へのばらつきを吸収することができる。

本発明の一実施形態による車両（自動車）の前方側に形成されるエンジンルーム付近を示す斜視図である。 パワーユニットとエンジンマウント部との配置関係を示す斜視図である。 パワーユニットの荷重が配分されていないエンジンマウント部（第１エンジンマウント部）付近を示す斜視図である。 パワーユニット側ブラケットおよびマウントゴムを示す斜視図である。 車体側ブラケットを示す斜視図である。 パワーユニット側ブラケットと車体側ブラケットとの取付部分（長孔部）近傍を示す図である。

以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。

本実施形態による車両１は、図１及び図２に示すように、車両前後方向（Ｌ方向）に延びるように配設されたサイドメンバ２ａ及び２ｂと、サイドメンバ２ａ及び２ｂの上方（矢印Ｈ１方向）に配置されたアッパメンバ２ｃ及び２ｄと、サイドメンバ２ａ及び２ｂの間に配置されたサブフレーム３とを備えている。また、サイドメンバ２ａ及び２ｂ、アッパメンバ２ｃ及び２ｄ、及び、サブフレーム３等によりエンジンルーム４が形成されている。なお、以下の説明において、サイドメンバ２ａ及び２ｂ、アッパメンバ２ｃ及び２ｄ、及び、サブフレーム３を便宜上「車体」と呼ぶ場合がある。

エンジンルーム４内には、エンジン７と変速機８とを含むパワーユニット９が配置されている。また、パワーユニット９は、第１エンジンマウント部１１と、第２エンジンマウント部１２と、第３エンジンマウント部１３と、第４エンジンマウント部１４とを介して車体（エンジンルーム４内）に搭載されている。

第１エンジンマウント部１１は、エンジンルーム４の車両幅方向（Ｗ方向）の左側（矢印Ｗ１方向側）で、かつ、パワーユニット９の重力方向上側に配置されている。第２エンジンマウント部１２は、エンジンルーム４の車両幅方向（Ｗ方向）の右側（矢印Ｗ２方向側）で、かつ、パワーユニット９の重力方向上側に配置されている。第３エンジンマウント部１３は、エンジンルーム４の車両前後方向（Ｌ方向）の前方側（矢印Ｌ１方向側）で、かつ、パワーユニット９の重力方向下側に配置されている。第４エンジンマウント部１４は、エンジンルーム４の車両前後方向（Ｌ方向）の後方側（矢印Ｌ２方向側）で、かつ、パワーユニット９の重力方向下側に配置されている。

パワーユニット９は、第１エンジンマウント部１１を介してサイドメンバ２ａに支持され、第２エンジンマウント部１２を介してサイドメンバ２ｂに支持され、第３エンジンマウント部１３を介してサブフレーム３の前方側（矢印Ｌ１方向側）の部分３ａに支持され、第４エンジンマウント部１４を介してサブフレーム３の後方側（矢印Ｌ２方向側）の部分３ｂに支持されている。

ここで、パワーユニット９を４つのエンジンマウント部１１〜１４により支持する場合（４点支持の場合）には、不静定の支持となるため、４点のうち１点（第１エンジンマウント部１１）はパワーユニット９の荷重を分担しておらず、４点のうち他の３点（第２エンジンマウント部１２、第３エンジンマウント部１３、第４エンジンマウント部１４）はパワーユニット９の荷重を分担している。換言すると、４点のうち１点（サイドメンバ２ａ）にはパワーユニット９の荷重が配分されておらず、４点のうち他の３点（サイドメンバ２ｂ、サブフレーム３の前方側の部分３ａ、後方側の部分３ｂ）にはパワーユニット９の荷重が配分されている。

また、パワーユニット９の荷重は、第３エンジンマウント部１３及び第４エンジンマウント部１４により主に支持され、第２エンジンマウント部１２により補助的に支持されている。なお、「主に支持する」とはパワーユニット９の荷重の大部分を支持することであり、「補助的に支持する」とは、「主に支持する」場合と比べて比較的小さい荷重を支持していることである。

次に、図３〜図６を参照して、第１エンジンマウント部１１の詳細な構成について説明する。

第１エンジンマウント部１１は、図３〜図５に示すように、パワーユニット側ブラケット１５と、車体側ブラケット１６とを備えている。パワーユニット側ブラケット１５は、図３に示すように、４本のボルト２１によりパワーユニット９（変速機８）の上部に固定されている。車体側ブラケット１６は、４本のボルト２０によりサイドメンバ２ａの上部及び側部に固定されている。

パワーユニット側ブラケット１５は、図４に示すように、マウントゴム１５ａが圧入された円筒形状の外筒部１５ｂと、外筒部１５ｂの下部に配置された基部１５ｃとを備えている。マウントゴム１５ａは、エンジン７の振動がサイドメンバ２ａ（車体）に伝達されるのを抑制するための円柱状のゴム（弾性部材）などからなる。外筒部１５ｂは、マウントゴム１５ａの周囲を保持する機能を有する。基部１５ｃは、高さ方向（Ｈ方向）から見て略矩形形状を有している。また、基部１５ｃは、外筒部１５ｂを支持するとともに、パワーユニット９（変速機８）とボルト２１によって固定されている。

パワーユニット側ブラケット１５の外筒部１５ｂには、金属等からなる円筒形状の内筒部１５ｄの外周面にマウントゴム１５ａの内周面が加硫接着されたものが圧入されている。なお、マウントゴム１５ａおよび内筒部１５ｄは、本発明の「インシュレータ」の一例である。この内筒部１５ｄの中央部には、ボルト２２（図３参照）を貫通させてナット２３（図３参照）と螺合させるためのボルト孔１５ｅが貫通されている。なお、ボルト孔１５ｅは、本発明の「第２ばらつき調整機構及び第２長孔部」の一例であり、ボルト２２及びナット２３は、本発明の「締結部材」の一例である。また、本実施形態では、ボルト孔１５ｅを内筒部１５ｄの中央部に形成する例を示しているが、ボルト孔１５ｅをマウントゴム１５ａの中央部に直接形成してもよい。

ボルト孔１５ｅは、図６に示すように、車両高さ方向（Ｈ方向）に延びるような長孔形状（長孔部）に形成されている。より詳しくは、ボルト孔１５ｅは、車両高さ方向（Ｈ方向）の長さＬ１１（長辺）が車両幅方向（Ｗ方向）の長さＬ１２（短辺）よりも大きくなるように形成されている。

パワーユニット９が車体に搭載される際（組み付け時）には、長孔形状のボルト孔１５ｅにより、パワーユニット９とサイドメンバ２ａとの車両高さ方向（Ｈ方向）の位置を長さＬ１１の範囲内で調整することが可能となる。これにより、パワーユニット９とサイドメンバ２ａとの車両高さ方向（Ｈ方向）のばらつきを調整（吸収）することが可能となる。

パワーユニット側ブラケット１５の基部１５ｃには、図４に示すように、ボルト２１（図３参照）を貫通させるための４つのボルト孔１５ｆが貫通されている。基部１５ｃの矢印Ｌ１方向側（車両１の前方向側）には２つのボルト孔１５ｆが形成されているとともに、基部１５ｃの矢印Ｌ２方向側（車両１の後方向側）には２つのボルト孔１５ｆが形成されている。

車体側ブラケット１６は、図５に示すように、ボルト２０（図３参照）によってサイドメンバ２ａと固定される上側基部１６ａを備えている。この上側基部１６ａのサイドメンバ２ａとは反対側には、挟み部１６ｂ及び１６ｃが形成されている。これらの挟み部１６ｂ及び１６ｃは、上方（Ｈ方向）から見て略Ｕ字状に形成されているとともに、パワーユニット側ブラケット１５に圧入されたマウントゴム１５ａの円状の面を挟み込むように形成されている。

挟み部１６ｂ及び１６ｃには、それぞれ、ボルト孔１６ｄが形成されている。これらのボルト孔１６ｄは、車両前後方向（Ｌ方向）に沿って同軸上に配置されているとともに、挟み部１６ｂ及び１６ｃのパワーユニット側ブラケット１５に圧入されたマウントゴム１５ａに接着された内筒部１５ｄのボルト孔１５ｅに対応する位置に形成されている。なお、ボルト孔１６ｄは、本発明の「第１ばらつき調整機構及び第１長孔部」の一例である。

各ボルト孔１６ｄは、図６に示すように、車両幅方向（Ｗ方向）に延びるような長孔形状（長孔部）に形成されている。より詳しくは、ボルト孔１６ｄは、車両幅方向（Ｗ方向）の長さＬ２１（長辺）が高さ方向（Ｈ方向）の長さＬ２２（短辺）よりも大きくなるように形成されている。

パワーユニット９が車体に搭載される際（組み付け時）には、長孔形状のボルト孔１６ｄにより、パワーユニット９とサイドメンバ２ａとの車両幅方向（Ｗ方向）の位置を長さＬ２１の範囲内で調整することが可能となる。これにより、パワーユニット９とサイドメンバ２ａとの車両幅方向（Ｗ方向）のばらつきを調整（吸収）することが可能となる。

図５に示すように、車体側ブラケット１６の上側基部１６ａには、車両高さ方向（Ｈ方向）にボルト２０（図３参照）を貫通させる２つのボルト孔１６ｆが形成されている。上側基部１６ａ、挟み部１６ｂ及び１６ｃの下方（矢印Ｈ２方向）には、サイドメンバ２ａの側部とボルト２０によって固定される下側基部１６ｅが形成されている。下側基部１６ｅには、車両幅方向（Ｗ方向）にボルト２０を貫通させる２つのボルト孔１６ｇが形成されている。

また、パワーユニット側ブラケット１５に圧入されたマウントゴム１５ａに接着された内筒部１５ｄのボルト孔１５ｅの形状と、車体側ブラケット１６のボルト孔１６ｄの形状とは、略同形状である。図６に示すように、パワーユニット側ブラケット１５のボルト孔１５ｅの長辺と、車体側ブラケット１６のボルト孔１６ｄの長辺とは、略直交している。また、パワーユニット側ブラケット１５のボルト孔１５ｅの長辺Ｌ１１と、車体側ブラケット１６のボルト孔１６ｄの長辺Ｌ２１とは、略等しい長さである。同様に、パワーユニット側ブラケット１５のボルト孔１５ｅの短辺Ｌ１２と、車体側ブラケット１６のボルト孔１６ｄの短辺Ｌ２２とは、略等しい長さである。

また、図３に示すように、パワーユニット側ブラケット１５と車体側ブラケット１６とは、各ボルト孔１５ｅ及び１６ｄに貫通されたボルト２２とナット２３とにより締め付けられて互いに固定されている。

次に、図１、図４及び図５を参照して、パワーユニット９を第１エンジンマウント部１１〜第４エンジンマウント部１４を介して車体に搭載する手順の一例について説明する。

本実施形態では、上記のように、パワーユニット９の荷重は、第３エンジンマウント部１３及び第４エンジンマウント部１４によりサブフレーム３上で支持（配分）されている。また、パワーユニット９の荷重は、第２エンジンマウント部１２によりサイドメンバ２ｂ上で支持（配分）されている。また、第１エンジンマウント部１１は、パワーユニット９の荷重を支持しないエンジンマウント部であるとともに、車両幅方向（Ｗ方向）のばらつきと高さ方向（Ｈ方向）のばらつきとの両方を調整（吸収）する機能を有している。

一般的に、車体（フレーム）は、板金部品を溶接する構成になっているため、比較的大きな製造ばらつきを有している。パワーユニット９は、第１エンジンマウント部１１〜第４エンジンマウント部１４を介して車体に搭載されるが、車体の製造ばらつきやエンジンマウント部の組み付けのばらつきによって所定の姿勢を保持できなくなる等の不都合がある。このため、本実施形態では、エンジンマウント部には、適正なばらつき吸収機構（製造ばらつきを吸収する機構）が設けられている。

まず、パワーユニット９が車体に搭載される際（組み付け時）には、図１に示すように、第２エンジンマウント部１２を搭載基準として、第２エンジンマウント部１２を介してパワーユニット９がボルト等により車体に固定される。同様に、パワーユニット９は、第３エンジンマウント部１３及び第４エンジンマウント部１４を介してボルト等により車体に固定される。

ここで、本実施形態では、パワーユニット９と車体との締結部（取付位置）における車両幅方向（Ｗ方向）及び高さ方向（Ｈ方向）のばらつき（相対変位）は、第１エンジンマウント部１１により吸収されるように構成されているが、第３エンジンマウント部１３及び第４エンジンマウント部１４においても車体のばらつき吸収（アライメント補正）が行われる。

具体的には、第３エンジンマウント部１３及び第４エンジンマウント部１４がそれぞれ取り付けられているサブフレーム３の前方側の部分３ａ及び後方側の部分３ｂの取付穴は、通常の大きさよりも大きく形成されている。すなわち、サブフレーム３の前方側の部分３ａ及び後方側の部分３ｂの取付穴は、取付穴に挿入されるボルトが取付穴内で車両前後方向（Ｌ方向）及び幅方向（Ｗ方向）に移動させることが可能な程度の大きさに形成されている。これにより、パワーユニット９がサブフレーム３の前方側の部分３ａ及び後方側の部分３ｂに組み付けられる際に、パワーユニット９と車体との車両前後方向（Ｌ方向）及び幅方向（Ｗ方向）に対するばらつき吸収（アライメント補正）が行われる。

最後に、パワーユニット９は、第１エンジンマウント部１１を介してサイドメンバ２ａに締結固定される。すなわち、パワーユニット側ブラケット１５に圧入されたマウントゴム１５ａに接着された内筒部１５ｄのボルト孔１５ｅ及び車体側ブラケット１６のボルト孔１６ｄにボルト２２を貫通させてナット２３により締結固定される。

この時、パワーユニット９の重力方向上側に配置された第１エンジンマウント部１１のパワーユニット側ブラケット１５の高さ方向（Ｈ方向）に延びるように形成されたボルト孔１５ｅ（図４参照）により、パワーユニット９が車体に搭載される際に高さ方向（Ｈ方向）のばらつき吸収が行われる。

また、パワーユニット９の重力方向上側に配置された第１エンジンマウント部１１の車体側ブラケット１６の幅方向（Ｗ方向）に延びるように形成されたボルト孔１６ｄ（図５参照）により、パワーユニット９が車体に搭載される際に幅方向（Ｗ方向）のばらつき吸収が行われる。

以上説明したように、本実施形態によれば、以下に列記するような効果が得られる。

本実施形態では、上記のように、４つのエンジンマウント部のうち第１エンジンマウント部１１にはパワーユニット９の荷重を配分せず、４つのエンジンマウント部のうち第２エンジンマウント部１２〜第４エンジンマウント部１４にはパワーユニット９の荷重を配分する。パワーユニット９の荷重を配分しない第１エンジンマウント部１１は、パワーユニット９側に取り付けられるパワーユニット側ブラケット１５と、車体側に取り付けられる車体側ブラケット１６と、パワーユニット側ブラケット１５に設けられたインシュレータ（マウントゴム１５ａおよび内筒部１５ｄ）を含む。パワーユニット９の荷重を配分しない第１エンジンマウント部１１のパワーユニット側ブラケット１５と車体側ブラケット１６との取付部分において、パワーユニット側ブラケット１５に圧入されたマウントゴム１５ａに接着された内筒部１５ｄに車両高さ方向（Ｈ方向）へのばらつきを調整するボルト孔１５ｅ（長孔部）を設けるとともに、車体側ブラケット１６に車両高さ方向（Ｈ方向）と交差する幅方向（Ｗ方向）へのばらつきを調整するボルト孔１６ｄ（長孔部）を設ける。

これにより、まず荷重が配分される第２エンジンマウント部１２〜第４エンジンマウント部１４を介してパワーユニット９が車体に搭載され、さらに荷重が配分されない第１エンジンマウント部１１を介してパワーユニット９が車体に搭載される場合に、パワーユニット９と車体との取付位置のばらつきをパワーユニット側ブラケット１５に圧入されたマウントゴム１５ａに接着された内筒部１５ｄのボルト孔１５ｅ及び車体側ブラケット１６のボルト孔１６ｄにより、車両幅方向（Ｗ方向）及び高さ方向（Ｈ方向）に調整することができる。すなわち、パワーユニット９の荷重が配分されていない第１エンジンマウント部１１において、パワーユニット側ブラケット１５と車体側ブラケット１６との相対的な位置が車両１の複数の方向（幅方向（Ｗ方向）及び高さ方向（Ｈ方向））に調整されるので、車両１の複数の方向へのばらつきを調整（吸収）することができる。

また、車体の重力方向下側に設けられた第３エンジンマウント部１３及び第４エンジンマウント部１４にてパワーユニット９の荷重が主に配分（支持）される場合、パワーユニット９を車体に搭載した場合に大きな荷重のかかる第３エンジンマウント部１３及び第４エンジンマウント部１４ではＨ方向（高さ方向）への位置調整ができないという不都合がある。これに対して、本実施形態では、第１エンジンマウント部１１が車体の重力方向上側に設けられているので、第１エンジンマウント部１１にてＷ方向（幅方向）に加えてＨ方向（高さ方向）への位置調整を実施することによって、精度よくパワーユニット９と車体との位置調整ができる。なお、第２エンジンマウント部１２を第１エンジンマウント部１１と同様に構成した場合には、第２エンジンマウント部１２にてＷ方向（幅方向）及びＨ方向（高さ方向）への位置調整を実施することができる。

また、本実施形態では、上記のように、パワーユニット側ブラケット１５に圧入されたマウントゴム１５ａに接着された内筒部１５ｄのボルト孔１５ｅを車両高さ方向（Ｈ方向）に延びるように形成された長孔部とし、車体側ブラケット１６に設けられたボルト孔１６ｄを車両幅方向（Ｗ方向）に延びるように形成された長孔部とする。これにより、ボルト孔（長孔部）１５ｄの長辺方向（高さ方向（Ｈ方向））及びボルト孔（長孔部）１６ｄの長辺方向（幅方向（Ｗ方向））にパワーユニット側ブラケット１５と車体側ブラケット１６との相対的な位置を調整することができる。これにより、ボルト孔１５ｅ及び１６ｄ（長孔部）においてパワーユニット９と車体との取付位置のばらつきを吸収することができる。

また、本実施形態では、上記のように、パワーユニット側ブラケット１５に圧入されたマウントゴム１５ａに接着された内筒部１５ｄのボルト孔１５ｅと車体側ブラケット１６のボルト孔１６ｄとにボルト２２を挿通させた状態で、パワーユニット側ブラケット１５と車体側ブラケット１６との相対的な位置を調整可能である。これにより、パワーユニット側ブラケット１５と車体側ブラケット１６との相対的な位置を、ボルト２２に対してボルト孔１５ｅ及び１６ｄの長辺方向（幅方向（Ｗ方向）及び高さ方向（Ｈ方向））に調整することができる。その結果、ボルト２２を用いて容易にボルト孔１５ｅ及び１６ｄにおいてパワーユニット９と車体との取付位置のばらつきを吸収することができる。

−他の実施形態−
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。

例えば、上記実施形態では、第１の方向を車両の高さ方向とするとともに、第２の方向を車両の幅方向とする例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第１（第２）の方向を車両の高さ方向とするとともに、第２（第１）の方向を車両の前後方向としてもよい。また、第１（第２）の方向を車両の幅方向とするとともに、第２（第１）の方向を車両の前後方向としてもよい。

また、上記実施形態では、第１及び第２ばらつき調整機構の一例として、長孔形状のボルト孔を形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、パワーユニットと車体との取付位置のばらつきを調整（吸収）することが可能であれば、長孔形状以外の形状でもよい。本発明では、第１及び第２ばらつき調整機構を矩形形状などの多角形形状により形成してもよい。

また、上記実施形態では、パワーユニット側ブラケットをパワーユニットの上部に取り付けるとともに、車体側ブラケットをサイドメンバに取り付ける例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、パワーユニット側ブラケットをサイドメンバに取り付けるとともに、車体側ブラケットをパワーユニットの上部に取り付けてもよい。

また、上記実施形態では、パワーユニット側ブラケットに設けられたマウントゴムに圧入された内筒部に高さ方向（Ｈ方向）に延びるボルト孔を形成するとともに、車体側ブラケットに幅方向（Ｗ方向）に延びるボルト孔を形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、パワーユニット側ブラケットに設けられたマウントゴムに圧入された内筒部に幅方向（Ｗ方向）に延びるボルト孔を形成するとともに、車体側ブラケットに高さ方向（Ｈ方向）に延びるボルト孔を形成してもよい。

また、上記実施形態では、パワーユニット側ブラケットに設けられたマウントゴムに圧入された内筒部のボルト孔と車体側ブラケットのボルト孔との形状を略同じにする例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、パワーユニットと車体との幅方向及び高さ方向のばらつきを調整（吸収）することが可能であれば、ボルト孔の形状を異ならせてもよい。

また、この出願は、２０１３年１０月２４日に日本で出願された特願２０１３−２２０８６８号に基づく優先権を請求する。これに言及することにより、その全ての内容は本出願に組み込まれるものである。

本発明は、エンジンマウント部を備える車両に利用することができ、より詳細には、複数のエンジンマウント部を介してパワーユニットが車体に搭載される車両に利用することができる。

１ 車両
７ エンジン
８ 変速機
９ パワーユニット
１１ 第１エンジンマウント部
１２ 第２エンジンマウント部
１３ 第３エンジンマウント部
１４ 第４ンジンマウント部
１５ パワーユニット側ブラケット
１５ａ マウントゴム（インシュレータ）
１５ｄ 内筒部（インシュレータ）
１５ｅ ボルト孔（第２ばらつき調整機構、第２長孔部）
１６ 車体側ブラケット
１６ｄ ボルト孔（第１ばらつき調整機構、第１長孔部）
２２ ボルト（締結部材）
２３ ナット（締結部材）

Claims (3)

1. 第１、第２、第３、および第４エンジンマウント部を介してパワーユニットが車体に搭載される車両において、
   前記第１エンジンマウント部には、前記パワーユニットの荷重が配分されておらず、
   前記第２〜第４エンジンマウント部には、前記パワーユニットの荷重が配分されており、
   前記第１エンジンマウント部は、前記パワーユニット側に取り付けられるパワーユニット側ブラケットと、前記車体側に取り付けられる車体側ブラケットと、前記パワーユニット側ブラケットと前記車体側ブラケットとの間に設けられたインシュレータとを含み、
   前記第１エンジンマウント部の前記パワーユニット側ブラケットと前記車体側ブラケットとの取付部分において、前記パワーユニット側ブラケット又は前記車体側ブラケットのいずれか一方には第１の方向へのばらつきを調整する第１ばらつき調整機構が設けられているとともに、前記インシュレータには前記第１の方向と交差する第２の方向へのばらつきを調整する第２ばらつき調整機構が設けられ、
   前記第１の方向は、車両の幅方向であり、
   前記第２の方向は、車両の高さ方向であり、
   前記パワーユニット側ブラケット又は前記車体側ブラケットのいずれか一方に設けられた第１ばらつき調整機構は、前記車両の幅方向のばらつきを調整するように形成され、
   前記インシュレータに設けられた第２ばらつき調整機構は、前記車両の高さ方向のばらつきを調整するように形成され、
   前記第１および第２エンジンマウント部が、前記パワーユニットの重力方向上側に設けられ、
   前記第３および第４エンジンマウント部が、前記パワーユニットの重力方向下側に設けられ、
   前記パワーユニット側ブラケットと前記車体側ブラケットと前記インシュレータとを固定し、且つ車両の前後方向に沿って設けられる締結部材をさらに備え、
   前記パワーユニット側ブラケット又は前記車体側ブラケットのいずれか一方に設けられた第１ばらつき調整機構と前記インシュレータに設けられた第２ばらつき調整機構とに前記締結部材を挿通させた状態で、前記パワーユニット側ブラケットと前記車体側ブラケットとの相対的な位置を調整可能に構成されていることを特徴とするエンジンマウント部を備える車両。
2. 請求項１に記載のエンジンマウント部を備える車両において、
   前記パワーユニット側ブラケット又は前記車体側ブラケットのいずれか一方に設けられた第１ばらつき調整機構は、前記第１の方向に延びるように形成された第１長孔部であり、
   前記インシュレータに設けられた第２ばらつき調整機構は、前記第１の方向と交差する第２の方向に延びるように形成された第２長孔部であることを特徴とするエンジンマウント部を備える車両。
3. 請求項１または２に記載のエンジンマウント部を備える車両において、
   前記車体側ブラケットには、前記第１ばらつき調整機構が設けられ、
   前記パワーユニット側ブラケットには、前記第２ばらつき調整機構が設けられた前記インシュレータが設けられていることを特徴とするエンジンマウント部を備える車両。

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