以下に、本願の開示する情報提供方法及び情報提供装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例は開示の技術を限定するものではない。そして、各実施例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
[情報提供システムの構成]
まず、本実施例に係る情報提供システムの構成について説明する。図1は、実施例1に係る情報提供システムの構成を示す図である。図1に示すように、情報提供システム1には、情報提供装置10と、ドライブレコーダ30A〜30Cと、センサ群31A〜31Cと、ナビゲーション装置50と、GPS受信機54とが収容される。なお、図1の例では、車両3A〜3Cが交差点を通行する場合にセンサ群31A〜31Cから得られる走行状態が危険状態に合致する事例を交差点の車両の進行方向別に集計してサービス加入者の車両5のナビゲーション装置50へ提供する場合を想定する。
これら情報提供装置10、ドライブレコーダ30A〜30C及びナビゲーション装置50の間は、ネットワーク9を介して通信可能に接続される。かかるネットワーク9には、有線または無線を問わず、インターネット(Internet)、LAN(Local Area Network)やVPN(Virtual Private Network)などの通信網を採用できる。なお、図1の例では、1つの情報提供装置、3つのドライブレコーダ、1つのナビゲーション装置を収容する場合を例示したが、開示のシステムはこれに限定されない。すなわち、開示のシステムは、任意の数のドライブレコーダ及びナビゲーション装置が収容される場合に適用することができる。
このうち、ドライブレコーダ30A〜30Cは、車両3A〜3Cに搭載されるセンサ群31A〜31Cのセンサ出力を記録するレコーダである。かかるセンサ群31A〜31Cの一態様としては、後述するGPS(Global Positioning System)受信機32、加速度センサ33、車速センサ34及びカメラ35などが挙げられる。また、車両3A〜3Cの一態様としては、ドライブレコーダ30A〜30Cを搭載する車両であり、例えば、一般車両、業務車両や特殊車両などの任意の車両が挙げられる。なお、以下では、車両3A〜3C、ドライブレコーダ30A〜30C及びセンサ群31A〜31Cを区別なく総称する場合には、それぞれ「車両3」、「ドライブレコーダ30」、「センサ群31」と記載する場合がある。
一例としては、ドライブレコーダ30は、センサ群31のうち後述する加速度センサ33によって出力される加速度が所定の条件を満たすか否かを判定する。ここで、所定の条件とは、車両3の走行状態がヒヤリハットとして検出すべき事例に当てはまるか否かを判断するための条件である。例えば、加速度センサが出力する値が、急ブレーキを示す閾値以上であるか否か、または、急ハンドルがなされた時に車体に発現する加速度の挙動に当てはまるか否か等の危険状態が定義された条件である。なお、加速度センサのほかに、舵角センサなど他のセンサによって出力される値に基づく条件を用いてもよい。さらに、ドライブレコーダ30は、2つ以上のセンサからの出力に基づいて判定してもよい。かかる「危険状態」とは、センサの出力が所定の条件に合致した場合である。また、「走行状態」とは、加速度センサや舵角センサによって採取される出力値または出力値の組合せを指す。
このとき、ドライブレコーダ30は、先の条件を満たす加速度が計測された場合に、加速度が条件を満たした時点の前後でセンサ群31によって採取されたセンサ出力が時刻ごとに対応付けられたデータを蓄積する。これによって、車両3の運転者が急ブレーキや急ハンドルを行ったと推定される時点、すなわちヒヤリハットの発生が推定された時点を基準とする前後の期間でセンサ群31によって採取された位置情報、加速度、速度および映像が蓄積される。このとき、ヒヤリハットと推定された時点前後にけるセンサの出力が蓄積されるにあたり、ヒヤリハットから実際に事故に発展した事例についてもセンサの出力が結果的に蓄積されることもある。なお、以下では、ヒヤリハットの発生が推定された時点を基準する前後の期間で位置情報、加速度、速度および映像のフレーム番号が時刻ごとに対応付けられたデータのことを「ヒヤリ候補データ」と記載する場合がある。
その後、ドライブレコーダ30は、前回にヒヤリ候補データを情報提供装置10へアップロードしてから所定の期間が経過した場合に、前回にアップロードしてから今までに蓄積していたヒヤリ候補データを情報提供装置10へアップロードする。なお、ここでは、ヒヤリ候補データを一定間隔で情報提供装置10へアップロードする場合を例示したが、これに限定されない。例えば、ドライブレコーダ30は、ヒヤリハットの発生を検知した時点でヒヤリ候補データをリアルタイムにアップロードしたり、定期時刻にアップロードしたり、また、情報提供装置10からの要求に応じてアップロードしたりすることもできる。
情報提供装置10は、ドライブレコーダ30からアップロードされたヒヤリ候補データに基づいて、ヒヤリハットの発生量を交差点における車両の進行方向別に集計する装置である。また、情報処理装置10は、進行方向別に集計されたヒヤリハットの発生量をサービス加入者の車両5のナビゲーション装置50へ提供するサービスを実行する。ここで、以下では、ヒヤリハットの発生量のことを「ヒヤリ量」と呼ぶ場合がある。一例としては、情報提供装置10は、サービス加入者の車両5に搭載されたナビゲーション装置50から位置情報を受け付けた場合に、その位置から所定の範囲内に所在する交差点に関するヒヤリ量をナビゲーション装置50へ返信する。
ここで、本実施例に係る情報提供装置10は、加速度センサ33等によって採取された走行状態が危険状態に合致する場合にドライブレコーダ30により生成されたヒヤリ候補データを、道路上の領域で車両が直進、左折または右折する進行方向別に集計する。その上で、本実施例に係る情報提供装置10は、他の装置へ情報を提供する場合に、進行方向別に集計されたヒヤリ量に基づく支援情報を出力する。
このため、本実施例に係る情報提供装置10では、道路上の領域、例えば交差点でヒヤリハットが多発している場合に、交差点をいずれの進行方向へ通行する場合に、危険である可能性が高いのかを、ユーザに把握させることができる。それゆえ、本実施例に係る情報提供装置10では、車両が交差点をヒヤリハットが多発している進行方向へ通行する場合に、運転者へ他の進行方向へ通行する場合よりも注意を払うとともに、進行方向に合った認知、判断及び操作を行う準備をさせることができる。したがって、本実施例に係る情報提供装置10によれば、ユーザに対して、特に注意すべき進行方向を認知させることで、過去にヒヤリハットが発生した時と同じ原因の事故が再発するリスクを低減できる結果、事故予防に寄与することが可能になる。なお、進行方向は、直進、右折、左折に限られない。例えば、より詳細に、交差点を形成する複数の道路のうち、侵入時の道路と脱出時の道路との組合せとして定義しても良い。
ナビゲーション装置50は、車両5の走行予定経路に含まれる道路上の位置と図示しない電子地図とを照らし合わせることにより運転者に経路を案内する装置である。ここで、一例として、ナビゲーション装置50がサービス加入者の車両5の現在位置を情報提供装置10へ送信し、情報提供装置10によって車両5の現在位置から所定の範囲内における進行方向別のヒヤリ量が提供される場合を想定して以下の説明を行う。
例えば、ナビゲーション装置50は、GPS受信機54によって測定されたサービス加入者の車両5の現在位置が交差点から所定の距離以内に接近したか否かを監視する。このとき、ナビゲーション装置50は、現在位置が交差点から所定の距離以内に接近した場合に、次のような処理を実行する。すなわち、ナビゲーション装置50は、情報提供装置10によって進行方向別に提供されたヒヤリ量のうち現在位置から直近に案内が予定されている交差点の進行方向におけるヒヤリ量が所定の閾値を超過しているか否かを判定する。そして、ナビゲーション装置50は、ヒヤリ量が閾値を超過している場合に、当該交差点におけるヒヤリハットの注意を喚起するナビゲーションを実行する。
なお、ここでは、ナビゲーション装置50がサービス加入者の車両5の現在位置を情報提供装置10へ送信する場合を例示したが、必ずしも現在位置を送信する必要はない。すなわち、ナビゲーション装置50は、自装置に対する検索が行われた走行予定経路に含まれる道路上の位置を任意に選択して情報提供装置10へ送信することができる。例えば、ナビゲーション装置50は、現在位置から走行予定経路上にある交差点をカウントして所定数先にある交差点の位置や目的地の位置を送信することもできる。これによって、直近に案内が予定される交差点のみならず、以降に走行する予定の交差点を対象に進行方向別のヒヤリ量を取得することもできる。
[車両に搭載される装置の構成]
続いて、本実施例に係る車両に搭載される装置の機能的構成について説明する。図2は、実施例1に係る車両に搭載される装置の機能的構成を示すブロック図である。図2に示すように、車両3は、GPS受信機32、加速度センサ33、車速センサ34及びカメラ35等のセンサ群31と、通信I/F部36と、リーダライタ37と、ドライブレコーダ30とを搭載する。
このうち、GPS受信機32は、複数のGPS衛星からの電波を受信して各々のGPS衛星との距離を割り出すことにより、緯度および経度などの位置情報を測定するものである。また、加速度センサ33は、車両3の加速度を計測するセンサである。かかる加速度センサ11aの一態様としては、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の加速度を測定する3軸加速度センサを採用できる。なお、加速度の測定方式には、半導体式を始め、機械式や光学式などの任意の方式を採用できる。また、車速センサ34は、車軸の回転数に比例して発生される車速パルスから車両3の速度を測定するセンサである。また、カメラ35は、車両3に搭載される撮像装置である。かかるカメラ35の一態様としては、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などを用いた撮像装置を採用できる。
なお、図2の例では、GPS受信機32、加速度センサ33、車速センサ34及びカメラ35を設ける場合を例示したが、必ずしも4つのセンサを設ける必要はなく、少なくともGPS受信機32及び加速度センサ33が搭載されていればよい。さらに、他のセンサを用いても良い。例えば、舵角センサ等を有しても良い。
ドライブレコーダ30は、センサ群31A〜31Cのセンサ出力を記録するレコーダである。一例としては、ドライブレコーダ30は、加速度センサ33によって出力される加速度のうち加速度が所定の条件、例えば急ブレーキや急ハンドルがなされた時に車体に発現する加速度の挙動を満たすか否かを監視する。このとき、ドライブレコーダ30は、先の条件を満たす加速度が計測された場合に、加速度が条件を満たした時点の前後でセンサ群31によって採取されたセンサ出力が時刻ごとに対応付けられたヒヤリ候補データを図示しない内部メモリに蓄積する。その後、ドライブレコーダ30は、前回にヒヤリ候補データをアップロードしてから所定の期間が経過した場合に、前回にアップロードしてから今までに内部メモリに蓄積していたヒヤリ候補データを通信I/F部36を介して情報提供装置10へアップロードする。なお、ここでは、映像を含めてヒヤリ候補データを情報提供装置10へアップロードする場合を説明するが、必ずしも映像をアップロードする必要はなく、少なくとも位置情報及び加速度が時刻ごとに対応付けられたヒヤリ候補データをアップロードすればよい。
通信I/F部36は、他の装置、例えば情報提供装置10との間で通信制御を行うインタフェースである。例えば、通信I/F部36は、ドライブレコーダ30によって蓄積されたヒヤリ候補データを情報提供装置10へ送信する。かかる通信I/F部36の一態様としては、LANカードなどのネットワークインタフェースカード(NIC:Network Interface Card)やモデムを採用できる。
なお、ここでは、ドライブレコーダ30がヒヤリ候補データを通信I/F部36を介して情報提供装置10へ送信する場合を例示したが、必ずしも通信によるアップロードを実行する必要はない。例えば、ドライブレコーダ30は、ヒヤリ候補データを記録媒体を介してアップロードすることもできる。この場合には、ドライブレコーダ30によってリーダライタ37が制御され、ヒヤリ候補データがメモリーカード20へ書き込まれる。
リーダライタ37は、メモリーカード20に内蔵されたIC(Integrated Circuit)タグとの間で通信を行ってICタグ内の記録情報の読取または書込を行う装置である。このリーダライタ37は、近接型または近傍型の仕様で定められた有効距離内に電磁波を発射する。この電磁波を用いて、メモリーカード20のICタグに組み込まれたコイル式のアンテナにより発電が行われてデータ通信が可能となる。その上で、リーダライタ37は、ドライブレコーダ30から入力されたヒヤリ候補データをメモリーカード20のICタグに書き込む。
これによって、ヒヤリ候補データが書き込まれたメモリーカード20を情報提供装置10に設けられたリーダライタに読み取らせることにより、ドライブレコーダ30は、ヒヤリ候補データを情報提供装置10へ受け渡すことができる。なお、ここでは、ヒヤリ候補データを非接触型のメモリーカード20に書き込む場合を例示したが、必ずしもメモリーカード20は非接触型である必要はなく、また、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置を用いることもできる。
なお、ここでは、加速度センサ等のセンサ出力が所定の条件を満たした時刻、すなわち急ブレーキや急ハンドル等のイベントが発生したと推定される時刻前後のセンサ出力を記録するイベント型のドライブレコーダを採用する場合を例示した。しかしながら、開示の装置は、イベント型のドライブレコーダを使用する場合だけでなく、常時記録型のドライブレコーダを採用する場合にも適用できる。
例えば、ドライブレコーダが常時記録型である場合には、常時記録型のドライブレコーダは、センサ群31によって採取されたセンサ出力を時刻に関する情報に紐付けて記録する。このとき、常時記録型のドライブレコーダは、センサの出力が所定の条件を満たした場合、例えば加速度センサの出力値が急ハンドルや急加速に対応する条件を満たした場合に、当該条件を満たした時刻もしくは時刻を特定可能な情報をさらに記録する。その上で、常時記録型のドライブレコーダは、時刻ごとに紐付けられたセンサ出力と、条件を満たした時刻もしくは時刻を特定可能な情報とを情報提供装置10へ送信する。このとき、時刻と紐付けて記録されたセンサ出力のうち先の条件を満たした時刻前後のセンサ出力だけを常時記録型のドライブレコーダに抽出させることによりヒヤリ候補データを生成させた上で情報提供装置10へ出力させてもよい。また、ヒヤリ候補データの生成を情報提供装置10に実行させることとしてもよい。
また、図1及び図2の例では、ドライブレコーダ30を用いてヒヤリ候補データを採取する場合を例示したが、ドライブレコーダ30の代わりにデジタルタコグラフを採用してもよく、また、ドライブレコーダ及びデジタルタコグラフの両方を採用することもできる。このように、ドライブレコーダ及びデジタルタコグラフの両方を採用する場合には、両方の装置によって参照される時計の時刻を同期させるのが好ましい。例えば、ドライブレコーダによって映像のフレーム番号が時刻ごとに対応付けられたデータとデジタルタコグラフによって各種のセンサ出力が時刻ごとに対応付けられたデータを別系統で出力すればよい。この場合にも、ドライブレコーダ及びデジタルタコグラフは、ヒヤリハットの発生が推定された時刻を識別可能な情報を付加した上で情報提供装置10へ送信するのが好ましい。
[情報提供装置の構成]
次に、本実施例に係る情報提供装置の機能的構成について説明する。図3は、実施例1に係る情報提供装置の機能的構成を示すブロック図である。図3に示すように、情報提供装置10は、通信I/F部11と、記憶部13と、制御部15とを有する。また、情報提供装置10は、リーダライタ12をさらに有しても良い。なお、情報提供装置10は、図3に示した機能部以外にも既知のコンピュータが有する各種の機能部、例えば各種の入力デバイスや音声出力デバイスなどの機能を有するものとする。
通信I/F部11は、他の装置、例えばドライブレコーダ30やナビゲーション装置50との間で通信制御を行うインタフェースである。例えば、通信I/F部11は、ドライブレコーダ30からヒヤリ候補データを受信する。また、通信I/F部11は、ナビゲーション装置50から現在の位置情報を受け付けたり、後述の出力部15dからの指示に基づき、交差点の通行パターン別のヒヤリ量をナビゲーション装置50へ送信したりする。かかる通信I/F部11の一態様としては、LANカードなどのネットワークインタフェースカードやモデムを採用できる。
リーダライタ12は、メモリーカード20に内蔵されたICタグとの間で通信を行ってICタグ内の記録情報の読取または書込を行う装置である。このリーダライタ12は、近接型または近傍型の仕様で定められた有効距離内に電磁波を発射する。この電磁波を用いて、メモリーカード20のICタグに組み込まれたコイル式のアンテナにより発電が行われてデータ通信が可能となる。その上で、リーダライタ12は、メモリーカード20のICタグに記録されたヒヤリ候補データを読み取る。
記憶部13は、フラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置である。なお、記憶部13は、上記の種類の記憶装置に限定されるものではなく、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)であってもよい。
記憶部13は、制御部15で実行されるOS(Operating System)や通行パターン別に集計されたヒヤリ量を提供する情報提供プログラムなどの各種プログラムを記憶する。さらに、記憶部13は、制御部15で実行されるプログラムの実行に必要なデータの一例として、ヒヤリデータ13aと、ノードリンクデータ13bと、ヒヤリ量データ13cと、ヒヤリリンクデータ13dとを記憶する。
ヒヤリデータ13aは、ヒヤリハットに関するデータである。一例として、ヒヤリデータ13aには、ドライブレコーダ30から収集したヒヤリ候補データのうち、ドライブレコーダ30により誤ってヒヤリハットと推定されたデータが後述のフィルタ処理部15aによって排除された後に残ったデータが登録される。
ヒヤリデータ13aの一態様としては、ヒヤリID、日時、緯度、経度及びファイル名が対応付けられたデータを採用できる。ここで言う「ヒヤリID」は、ヒヤリハットを識別する識別情報を指す。また、「ファイル名」は、ヒヤリハットが発生したと推定される時点の前後でカメラ35によって撮像された映像のファイルに付与された名称を指す。図4は、ヒヤリデータの一例を示す図である。図4の例では、ヒヤリID「00001」のヒヤリハットが3月9日の10時10分00秒に緯度「35.50.00」及び経度「139.55.00」で発生したものであることを示す。さらに、当該ヒヤリハットに関する映像のファイル名が「ID000010309101000.jpg」であることを示す。さらに、図4の例では、ヒヤリID「00002」のヒヤリハットが3月9日の12時13分14秒に緯度「34.55.00」及び経度「138.46.00」で発生したものであることを示す。さらに、当該ヒヤリハットに関する映像のファイル名が「ID000010309121314.jpg」であることを示す。
なお、図4の例では、ヒヤリハットが発生した日時、緯度や経度などの位置情報、映像のファイル名が対応付けられたヒヤリデータを図示したが、これ以外の他の情報を対応付けることもできる。一例としては、ヒヤリ候補データに含まれていた位置情報の推移、加速度の推移および速度の推移のうち、少なくとも一つがさらに対応付けられたヒヤリデータを採用できる。他の一例としては、ヒヤリハットが発生した天候、明るさなどの環境情報がさらに対応付けられたヒヤリデータを採用することもできる。更なる一例としては、車両や運転者のID、ウィンカ、シフト、ブレーキ、ハンドルの操舵角、ライト、ハザードランプやワイパーのON/OFFなどの運転情報がさらに対応付けられたヒヤリデータを採用することもできる。
ノードリンクデータ13bは、ノード及びリンクの関係が定義されたデータである。ノードは、緯度および経度で指定される地図上の領域である。ノードは、例えば、交差点や、ランドマークなどである。リンクは、2つのノードによって定義され、ノード間を接続する道路である。一例として、ノードリンクデータ13bは、ドライブレコーダ30から収集したヒヤリ候補データに含まれる位置情報の推移から車両の進行方向を特定するために、後述の集計部15cによって参照される。他の一例として、ノードリンクデータ13bは、ナビゲーション装置50から通知された位置から所定の範囲内に所在する交差点を特定するために、後述の出力部15dによって参照される。
ここで、ノードリンクデータ13bの一態様としては、交差点の形状が定義された交差点テーブルと、複数の交差点を接続する道路の形状が定義された道路テーブルとが含まれる。
このうち、交差点テーブルは、交差点ID、緯度、経度および接続道路IDが対応付けられたテーブルである。ここで言う「交差点ID」とは、道路上の交差点を識別する識別子を指し、また、「道路ID」とは、道路を識別する識別子を指す。また、「接続道路ID」とは、交差点に接続される各道路の道路IDを指す。例えば、交差点の北方向を基準とした場合には、交差点に接続される道路のうち交差点の北方向から時計回りに、交差点に接続する道路の道路IDが「道路ID1」として登録され、以降も時計回りに「道路ID2」・・・「道路ID5」として登録される。なお、ここでは、交差点の中心、例えば道路の交点の緯度および経度を交差点の領域を代表する座標として登録する場合を想定するが、交差点の領域の外延を特定する複数の地点の緯度および経度を登録することとしてもかまわない。このように、交差点の中心により交差点の領域を定義する場合には、例えば、交差点の中心から所定の範囲、例えば30m内を交差点の領域と定義したり、交差点の中心を重心とする多角形により交差点の領域を定義したりすることができる。また、ここでは、交差点をノードとする場合を例示したが、道路上の任意の領域、例えばランドマークや地物の所在位置などをノードに代用することもできる。
図5は、交差点テーブルの一例を示す図である。図5の例では、交差点ID「0011」の交差点の所在位置が緯度「35.50.01」及び経度「139.55.02」であり、道路ID「0056」、「0057」及び「0058」の3本の道路が接続されていることを示す。
また、道路テーブルは、道路ID、交差点ID及び接続方向が対応付けられたテーブルである。ここで言う「接続方向」とは、交差点を起点にして道路が延在している方向を指し、例えば、道路の延在方向が交差点の北方向からズレる角度によって表現される。この場合には、交差点から真北に延在する道路が0度となり、交差点から真南に延在する道路が180度となる。なお、ここでは、道路IDごとに交差点ID及び接続方向を対応付ける場合を例示したが、この他にも道路の車線数、交通規制などの情報をさらに対応付けるようにしてもよい。
図6は、道路テーブルの一例を示す図である。図6の例では、道路ID「0056」の道路が交差点ID「0011」の交差点の北方向に、道路ID「0057」の道路が交差点ID「0011」の交差点の東方向に、また、道路ID「0058」の道路が交差点ID「0011」の交差点の西方向に接続されていることを示す。加えて、図6の例では、道路ID「0056」〜道路ID「0061」の道路のうち道路ID「0057」の道路が交差点ID「0011」及び交差点ID「0012」の2つの交差点を東西に結ぶことを示す。
なお、ここでは、ノードリンクデータとして図5に示した交差点テーブルおよび図6に示した道路テーブルを図示したが、開示の装置は、図示のものに限らず、公知の道路ネットワーク情報をノードリンクデータとして適用することができる。
ヒヤリ量データ13cは、ヒヤリ量を示すデータである。一例として、ヒヤリ量データ13cには、後述の集計部15cによって車両の進行方向別に集計されたヒヤリ量が交差点別に登録される。他の一例として、ヒヤリ量データ13cは、サービス加入者の車両5の現在位置から所定の範囲内に所在する交差点を対象に進行方向別のヒヤリ量を出力するために、後述の出力部15dによって参照される。
かかるヒヤリ量データ13cの一態様としては、交差点における車両の進行方向ごとに当該交差点を同一の進行方向に向かって通行する車両のヒヤリ量が対応付けられたデータを採用できる。
ここで、本実施例では、車両が交差点に進入してから脱出するまでの経路を所定の基準にしたがって複数のパターンに分類した通行パターンによって交差点における車両の進行方向を定義している。図7及び図8は、通行パターンの設定方法の一例を示す図である。これら図7及び図8の例では、いずれも十字路交差点における通行パターンの設定例を示す。図7の例では、交差点へ進入する通行パターンp1〜p4および交差点から脱出する通行パターンp5〜p8が区別して設定される。この場合には、交差点に接続される4本の道路ごとに交差点への進入方向および交差点からの脱出方向の各2方向、すなわち合計8方向にp1〜p8までの通行パターンが設定される。また、図8の例では、交差点への進入方向および交差点からの脱出方向を1つのセットの進行方向として通行パターンP1〜P3が設定される。この場合には、交差点に接続される4本の道路ごとに、右折P1、左折P2および直進P3の3つの通行パターン、すなわち合計12方向に通行パターンが設定される。
なお、図7に示した通行パターンの設定方法の変形例として、交差点に接続される道路のうち一部の道路だけを往路および復路の2つの通行パターンを設定し、残りの道路は往路および復路の双方向を1つの通行パターンとして設定することもできる。また、図8に示した通行パターンの設定方法の変形例として、右折、左折および直進の3つの通行パターンを設定するのではなく、事故の原因となり易い右折と、右折に比べて事故の原因となりにくい直進+左折との2つの通行パターンを設定することもできる。さらに、図8に示した通行パターンの設定方法の変形例として、交差点におけるUターンという通行パターンを上記の3つのパターンに加えて設定することもできる。
一例として、図8に示した通行パターンが設定されたヒヤリ量データ13cを図9に示す。図9は、ヒヤリ量データ13cの一例を示す図である。図10は、図9に示したヒヤリ量データ13cに含まれる交差点の模式図である。なお、図9の例では、図5及び図6に示した交差点ID「0011」及び交差点ID「0012」の2つの交差点における通行パターン別のヒヤリ量が図示されている。また、図10の例では、図5及び図6に示した交差点ID「0011」及び交差点ID「0012」の2つの交差点と、道路ID「0056」〜道路ID「0061」の6つの道路とが模式化されている。
図9に示すように、ヒヤリ量データ13cは、交差点ID、通行パターンID、進入道路ID、脱出道路IDおよびヒヤリ量が対応付けられたデータである。さらに、図9に示すように、ヒヤリ量データ13cには、ヒヤリ量がタクシー及びトラックの車両種別ごとに対応付けられる。ここで言う「進入道路ID」とは、交差点へ進入する場合に使用される道路の道路IDを指す。また、「脱出道路ID」とは、交差点から脱出する場合に使用される道路の道路IDを指す。また、「通行パターンID」とは、交差点ID、進入道路ID及び脱出道路IDの組合せを一意に特定する識別子を指す。なお、図9の例では、車両種別としてタクシーおよびトラックの業種という区分を例示したが、一般車両および業務車両という区分でヒヤリ量を登録することとしてもよく、また、製造メーカー、排気量または塗装色によって区分してヒヤリ量を登録しても良い。
図10に示すように、交差点ID「0011」の交差点は、道路ID「0056」〜道路ID「0058」の3つの道路を含んでなるT字路の交差点である。よって、図9に示す交差点ID「0011」の交差点には、進入道路ID及び脱出道路IDの組合せが6通りであるので、6つの通行パターンが設定される。例えば、進入道路ID「0056」の道路から進入して脱出道路ID「0057」の道路から脱出する通行パターンID「0000011111」が設定される。さらに、進入道路ID「0056」の道路から進入して脱出道路ID「0058」の道路から脱出する通行パターンID「0000011112」が設定される。同様に、交差点ID「0011」の交差点には、進入道路ID及び脱出道路IDによって特定される通行パターンID「0000011113」〜通行パターンID「0000011116」の通行パターンが設定される。なお、交差点ID「0012」の交差点は、図10に示すように、十字路の交差点であるので、図8に示した通行パターンの設定方法と同様に、合計12方向の通行パターンが設定される。
ヒヤリリンクデータ13dは、各交差点の通行パターンごとに当該通行パターンで発生したヒヤリハットとのリンクが対応付けられたデータである。ここで言う「リンク」とは、各交差点の通行パターンをヒヤリデータ13aと紐付けるためのリンクを指し、例えば、ヒヤリIDや映像のファイル名などを使用することができる。かかるヒヤリリンクデータ13dの一態様としては、通行パターンID及びヒヤリIDが対応付けられたデータを採用できる。なお、ここでは、通行パターンIDにヒヤリIDを対応付ける場合を例示したが、通行パターンIDを用いることなく、交差点ID、進入道路ID及び脱出道路IDの組合せにヒヤリIDを対応付けることとしてもよい。
図11は、ヒヤリリンクデータ13dの一例を示す図である。図11の例では、交差点ID「0011」の交差点における進入道路ID及び脱出道路IDの全6通りの組合せのうち、通行パターンID「0000011111」〜通行パターンID「0000011114」の4つの通行パターンにおけるヒヤリデータ13aとのリンクを例示している。図11に示すように、通行パターンID「0000011111」の通行パターンには、ヒヤリID「00105」、「01882」、「32224」及び「07003」の4つのヒヤリデータがリンクされている。
制御部15は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。制御部15は、図3に示すように、フィルタ処理部15aと、演算部15bと、集計部15cと、出力部15dとを有する。
フィルタ処理部15aは、ドライブレコーダ30から収集したヒヤリ候補データをフィルタリングする処理部である。すなわち、フィルタ処理部15aは、ヒヤリ候補データに含まれる速度および加速度を用いて、ドライブレコーダ30よりも詳細に、ヒヤリハットの真偽判定を実行することにより、偽と判定したヒヤリ候補データを記憶部13への登録対象から除外する。
一態様としては、フィルタ処理部15aは、ドライブレコーダ30から通信I/F部11またはメモリーカード20を介してヒヤリ候補データが取得された場合に、処理を起動する。まず、フィルタ処理部15aは、ヒヤリ候補データに含まれる位置情報のうちドライブレコーダ30を作動させるトリガーとなった時刻に測定された位置情報、すなわちヒヤリハットの発生地点が、交差点として定義された領域に含まれるか否かを判定する。かかる判定によって、ヒヤリハットが交差点で発生したと推定されるヒヤリ候補データだけを、ヒヤリデータとして記憶部13へ登録する。
そして、フィルタ処理部15aは、ヒヤリハットの発生地点が交差点内である場合には、ヒヤリハットが発生したと推定された時点の前後における所定の観測区間、例えば2秒間にわたって速度差を観測する。続いて、フィルタ処理部15aは、トリガーの前後で所定の閾値、例えば10km/h以上の減速が観測されたか否かを判定する。これによって、急減速がなされたと推定できるヒヤリ候補データだけを抽出する。
さらに、フィルタ処理部15aは、上記の観測区間で所定の閾値の減速が観測された場合に、次のような処理を実行する。すなわち、フィルタ処理部15aは、上記の観測区間で加加速度が最大値と最小値を取る時刻の時間間隔が所定の期間、例えば2秒以内であり、加加速度の最大値及び最小値の差が所定の閾値、例えば0.06以上であるか否かをさらに判定する。これによって、急減速がなされたか否かをより詳細に判定し、急減速がなされたと推定できるヒヤリ候補データだけを抽出する。このとき、観測区間で加加速度の最大値と最小値が取る時刻の時間間隔が所定の期間以内であり、かつ加加速度の最大値及び最小値の差が所定の閾値以上である場合には、急減速がなされたと推定できる。なお、「加加速度」は、単位時間あたりの加速度の変化を指し、ジャークとも呼ばれる。
そして、フィルタ処理部15aは、上記の観測区間で加加速度の最大値と最小値が取る時刻の時間間隔が所定の期間以内であり、かつ加加速度の最大値及び最小値の差が所定の閾値以上である場合には、次のような処理を実行する。すなわち、フィルタ処理部15aは、上記の観測区間で加加速度の最小値を示してから所定の期間、例えば5秒間にわたる加加速度の積分値が所定の閾値、例えば−0.252以下であるか否かをさらに判定する。これによって、運転者が急ブレーキを行った後にブレーキを緩める余裕があったか否かを判定する。このとき、観測区間で加加速度の積分値が所定の閾値以下である場合には、運転者にブレーキを緩める余裕がなく、ヒヤリハットである可能性が高いと推定できる。
このように、フィルタ処理部15aは、ヒヤリ候補データに含まれる速度および加速度を用いて、ドライブレコーダ30によりも詳細なヒヤリハットの真偽判定を実行する。そして、フィルタ処理部15aは、ヒヤリハットである可能性が高い、すなわち真と判定されたヒヤリ候補データだけをヒヤリデータとして記憶部13へ登録する。
このとき、フィルタ処理部15aは、ヒヤリデータを記憶部13へ登録するにあたって容量を削減する観点から、ヒヤリ候補データに含まれるデータのうちヒヤリハットの発生地点におけるデータだけを抽出し、抽出したデータを「ヒヤリデータ」として登録する。一例としては、フィルタ処理部15aは、ヒヤリハットである可能性が高い、すなわち真と判定されたヒヤリ候補データにヒヤリIDを採番する。そして、フィルタ処理部15aは、ヒヤリ候補データとして時刻ごとに位置情報、加速度、速度および映像が対応付けられたデータのうち、ドライブレコーダ30を作動させるトリガーとなった時刻における緯度、経度および映像を抽出する。その上で、フィルタ処理部15aは、ドライブレコーダ30を作動させるトリガーとなった時刻をヒヤリハットが発生した日時とみなし、先に採番したヒヤリIDに日時、緯度、経度および映像を対応付けたデータを「ヒヤリデータ」として記憶部13へ登録する。なお、ここでは、ヒヤリハットの発生地点のデータだけをヒヤリデータとして登録する場合を例示したが、ドライブレコーダ30から収集したヒヤリ候補データをそのまま「ヒヤリデータ」として登録することとしてもかまわない。
かかるフィルタリングによって、つまり、ヒヤリ候補データ全てを対象として計数した場合と比較して、記憶部13に保持されるヒヤリデータにより、ヒヤリハットの発生量の信頼性を高めることができる。
演算部15bは、加速度センサ33によって採取された車両3の走行状態が危険状態に合致するとドライブレコーダ30によって判定された場合の該車両3の移動軌跡を、車両3のGPS受信機32の検出値に基づいて演算する処理部である。一態様としては、演算部15bは、フィルタ処理部15aによって記憶部13にヒヤリデータが登録された場合に、今回登録されたヒヤリデータに関するヒヤリ候補データに含まれる、複数の位置情報に基づいて、車両3の走行軌跡を演算する。例えば、演算部15bは、ヒヤリハットの発生が推測された時点を基準とする前後の期間の緯度および経度の時系列な変化から、走行軌跡を演算する。
集計部15cは、演算部15bによって演算された車両3の走行軌跡を、道路上の領域別かつ進行方向別に集計する処理部である。一態様としては、集計部15cは、演算部15bによって演算された車両3の走行軌跡と、記憶部13に記憶されたノードリンクデータ13bとのマップマッチングを実行することにより、当該交差点における車両3の通行パターンを特定する。このとき、集計部15cは、ヒヤリ量データ13cのヒヤリ量のうち、先に特定した車両3の通行パターンに対応する通行パターンIDのヒヤリ量をインクリメントする。さらに、集計部15cは、今回にヒヤリデータとして登録されたヒヤリIDを交差点の通行パターンIDに対応付けて記憶部13へ登録することにより、ヒヤリデータとのリンクを生成する。
出力部15dは、他のコンピュータからの要求に応じて、通行パターン別に集計されたヒヤリ量を他のコンピュータへ出力する処理部である。一態様としては、出力部15dは、サービス加入者の車両5に搭載されたナビゲーション装置50から位置情報を受け付けた場合に、その位置から所定の範囲、例えば500m内に所在する交差点を抽出する。このとき、出力部15dは、ナビゲーション装置50から受け付けた緯度および経度を中心とし、中心から500m以内の緯度および経度を持つ交差点IDを交差点テーブルから抽出する。その上で、出力部15dは、記憶部13に記憶されたヒヤリ量データ13cを参照して、交差点テーブルから抽出した交差点IDに関する通行パターン別のヒヤリ量をナビゲーション装置50へ出力する。
なお、ここでは、情報提供装置10及びナビゲーション装置50によって使用されるノードリンクデータのID体系が同一である場合を想定するが、必ずしもノードリンクデータのID体系が同一である必要はない。例えば、情報提供装置10及びナビゲーション装置50の間でノードリンクデータのID体系が異なる場合には、両装置における交差点ID及び道路IDの対応関係を保持する対応関係テーブルを情報提供装置10に保持させておく。その上で、出力部15dは、対応関係テーブルを参照して、交差点ID及び通行パターンを定義するための道路IDをナビゲーション装置50で使用されるノードリンクデータのID体系に変換した上で出力すればよい。これによって、情報提供装置10及びナビゲーション装置50の間でノードリンクデータのID体系が異なる場合でも、ナビゲーション装置50でヒヤリハットに関する報知を実行させることができる。
[サービス加入者の車両に搭載される装置の構成]
次に、本実施例に係るサービス加入者の車両に搭載された装置の機能的構成について説明する。図12は、実施例1に係るサービス加入者の車両5に搭載された装置の機能的構成を示すブロック図である。図12に示すように、サービス加入者の車両5は、表示入力部51と、音声出力部52と、通信I/F部53と、GPS受信機54と、ナビゲーション装置50とを搭載する。
表示入力部51は、液晶パネルやディスプレイなどの表示デバイス上で操作入力を受け付けることができる表示可能かつ入力可能なデバイスである。一例としては、表示入力部51は、ナビゲーション装置50によって出力された地図情報、経路案内やヒヤリハットの注意を喚起する報知画面を表示したり、また、ナビゲーション装置50に対する指示入力、例えば目的の設定などを受け付けたりする。
音声出力部52は、音声を出力するデバイスである。一例としては、音声出力部52は、ナビゲーション装置50によって出力された経路案内の音声やヒヤリハットの注意を喚起する音声を出力する。かかる音声出力部52の一態様としては、スピーカー(speaker)などが挙げられる。
通信I/F部53は、他の装置、例えば情報提供装置10との間で通信制御を行うインタフェースである。例えば、通信I/F部53は、GPS受信機54によって測定された位置情報を情報提供装置10へ送信したり、また、情報提供装置10から交差点に関する通行パターン別のヒヤリ量を受信したりする。かかる通信I/F部53の一態様としては、LANカードなどのネットワークインタフェースカードやモデムを採用できる。
GPS受信機54は、複数のGPS衛星からの電波を受信して各々のGPS衛星との距離を割り出すことにより、緯度および経度などの位置情報を測定するものである。
ナビゲーション装置50は、車両5の走行予定経路に含まれる道路上の位置と図示しない電子地図とを照らし合わせることにより運転者に経路を案内する装置である。一例としては、ナビゲーション装置50は、GPS受信機54によって測定されたサービス加入者の車両5の現在位置が交差点から所定の距離以内に接近したか否かを監視する。このとき、ナビゲーション装置50は、現在位置が交差点から所定の距離以内に接近した場合に、次のような処理を実行する。すなわち、ナビゲーション装置50は、情報提供装置10によって通行パターン別に提供されたヒヤリ量のうち案内中の経路に対応する通行パターンのヒヤリ量が所定の閾値を超過しているか否かを判定する。そして、ナビゲーション装置50は、ヒヤリ量が閾値を超過している場合に、当該交差点におけるヒヤリハットの注意を喚起するナビゲーションを実行する。なお、閾値としては、管理者が設計した値が設定される。また、時間帯や天気、地点によって、異なる閾値が設定されるとしても良い。さらに、閾値は、交通量調査結果の交通量に対し、ヒヤリハットの数が一定割合以上となる値が設定されても良い。
図13A及び図13Bは、ナビゲーション画面の一例を示す図である。これら図13A及び図13Bの例では、T字路を北方向へ直進する通行パターンのヒヤリ量が閾値を超過せず、T字路を東方向へ右折する通行パターンのヒヤリ量が閾値を超過する場合を示す。図13Aに示すように、サービス加入者の車両5がT字路を北方向へ直進する経路がルート指定されている場合には、ヒヤリ量が閾値を超過しない。よって、ナビゲーション装置50は、T字路を北方向へ直進する経路案内のみを表示入力部51に表示させることにより、通常のナビゲーションを実行する。一方、図13Bに示すように、サービス加入者の車両5がT字路を東方向へ右折する経路がルート指定されている場合には、ヒヤリ量が閾値を超過する。このため、ナビゲーション装置50は、T字路を東方向へ右折する経路案内とともにヒヤリハットに対する注意を喚起する報知を表示入力部51に表示させる。このとき、ナビゲーション装置50は、ヒヤリハットに対する注意を喚起する音声メッセージを音声出力部52から出力させることもできる。
[処理の流れ]
次に、本実施例に係る情報提供システムの処理の流れについて説明する。なお、ここでは、情報提供装置10によって実行される(1)集計処理を説明した後に、ナビゲーション装置50によって実行される(2)ナビゲーション処理を説明する。
(1)集計処理
図14は、実施例1に係る集計処理の手順を示すフローチャートである。この集計処理は、ドライブレコーダ30から通信I/F部11またはメモリーカード20を介してヒヤリ候補データが取得された場合に処理が起動される。
図14に示すように、フィルタ処理部15aは、ドライブレコーダ30から通信I/F部11またはメモリーカード20を介してヒヤリ候補データを取得する(ステップS101)。
そして、フィルタ処理部15aは、ヒヤリ候補データが含む位置情報のうちドライブレコーダ30を作動させるトリガーとなった時刻に測定された位置情報、すなわちヒヤリハットの発生地点が交差点に含まれるか否かを判定する(ステップS102)。なお、ヒヤリハットの発生地点が交差点として定義された領域に含まれない場合(ステップS102否定)には、ステップS109の処理に移行する。
そして、ヒヤリハットの発生地点が交差点として定義された領域に含まれる場合(ステップS102肯定)には、フィルタ処理部15aは、ヒヤリ候補データに含まれる速度、加速度及び加加速度が所定の条件を満たすか否かをさらに判定する(ステップS103)。なお、ヒヤリ候補データに含まれる速度、加速度及び加加速度が所定の条件を満たさない場合にも(ステップS103否定)、ステップS109の処理に移行する。
このとき、ヒヤリ候補データに含まれる速度、加速度及び加加速度が所定の条件を満たす場合(ステップS103肯定)には、ヒヤリ候補データからヒヤリハットの発生地点のデータを抽出した上でヒヤリデータとして記憶部13へ登録する(ステップS104)。
その後、演算部15bは、今回登録されたヒヤリデータに関するヒヤリ候補データに含まれる緯度および経度の時系列な変化から車両3の走行軌跡を演算する(ステップS105)。そして、集計部15cは、演算部15bによって演算された車両3の走行軌跡と、記憶部13に記憶されたノードリンクデータ13bとのマップマッチングを実行することにより、当該交差点における車両3の通行パターンを特定する(ステップS106)。
続いて、集計部15cは、ヒヤリ量データ13cのヒヤリ量のうち、先に特定した車両3の通行パターンに対応する通行パターンIDのヒヤリ量をインクリメントする(ステップS107)。
その後、集計部15cは、ヒヤリデータのヒヤリIDを交差点の通行パターンIDに対応付けて記憶部13へ登録することにより、ヒヤリデータと通行パターンとのリンクを生成する(ステップS108)。
そして、ドライブレコーダ30から取得した全てのヒヤリ候補データを処理するまで(ステップS109否定)、上記のステップS102〜S108までの処理を繰り返し実行する。その後、ドライブレコーダ30から取得した全てのヒヤリ候補データを処理すると(ステップS109肯定)、処理を終了する。
(2)ナビゲーション処理
図15は、実施例1に係るナビゲーション処理の手順を示すフローチャートである。このナビゲーション処理は、ナビゲーション装置50の電源がON状態である場合に繰り返し実行される処理である。
図15に示すように、所定の周期を経過すると(ステップS301肯定)、ナビゲーション装置50は、次のような処理を実行する。すなわち、ナビゲーション装置50は、GPS受信機54によって測定された位置情報を情報提供装置10に送信することにより、その応答として現在位置から所定の範囲内に所在する交差点に関する通行パターン別のヒヤリ量を取得する(ステップS302)。なお、所定の周期が経過していない場合(ステップS301否定)には、ステップS302を実行せずにステップS303へ移行する。
そして、ナビゲーション装置50は、GPS受信機54によって測定されたサービス加入者の車両5の現在位置が交差点から所定の距離以内に接近したか否かを監視する(ステップS303)。
このとき、ナビゲーション装置50は、現在位置が交差点から所定の距離以内に接近した場合(ステップS303肯定)に、次のような処理を実行する。すなわち、ナビゲーション装置50は、情報提供装置10によって通行パターン別に提供されたヒヤリ量のうち案内中の経路に対応する通行パターンのヒヤリ量を特定する(ステップS304)。続いて、ナビゲーション装置50は、案内中の経路に対応する通行パターンのヒヤリ量が所定の閾値を超過しているか否かを判定する(ステップS305)。
ここで、ヒヤリ量が閾値を超過している場合(ステップS305肯定)には、ナビゲーション装置50は、当該交差点におけるヒヤリハットの注意を喚起するナビゲーションを実行する(ステップS306)。一方、ヒヤリ量が閾値を超過していない場合(ステップS305否定)には、ナビゲーション装置50は、通常のナビゲーションを実行する(ステップS307)。
なお、図15にかかるナビゲーション処理を、情報提供装置が行っても良い。例えば、情報提供装置は、予めナビゲーション装置50から、走行予定のルールを含む情報を受信する。そして、情報提供装置は、走行予定のルートと、定期的にナビゲーション装置から受信する車両の位置情報とヒヤリ量とに基づいて、ナビゲーション情報をナビゲーション装置へ送信する。ナビゲーション情報は、ドライバーに対する注意喚起メッセージを含む情報である。言い換えれば、本実施例では、情報提供装置10が他のコンピュータ、例えばナビゲーション装置50へ出力する支援情報として、集計部15cによって交差点別および通行パターン別に集計されたヒヤリ量を出力する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、情報提供装置10は、ナビゲーション装置50から送信される車両の位置情報と記憶部13に記憶されたヒヤリ量データ13cとに基づいて生成したナビゲーション情報を支援情報としてナビゲーション装置50へ出力することもできる。このとき、情報提供装置10は、車両5の走行予定経路に該当する交差点の通行パターンのヒヤリ量が所定の閾値を超過している場合に、当該交差点におけるヒヤリハットの注意を喚起するナビゲーション情報を生成した上でナビゲーション装置50へ出力する。
[実施例1の効果]
上述してきたように、本実施例に係る情報提供装置10では、道路上の領域、例えば交差点でヒヤリハットが多発している場合に、交差点をいずれの進行方向へ通行する場合に、危険である可能性が高いのかを、ユーザに把握させることができる。それゆえ、本実施例に係る情報提供装置10では、車両が交差点をヒヤリハットが多発している進行方向へ通行する場合に、運転者へ他の進行方向へ通行する場合よりも注意を払うとともに、進行方向に合った認知、判断及び操作を行う準備をさせることができる。したがって、本実施例に係る情報提供装置10によれば、ユーザに対して、特に注意すべき進行方向を認知させることで、過去にヒヤリハットが発生した時と同じ原因の事故が再発するリスクを低減できる結果、事故予防に寄与することが可能である。
また、本実施例に係る情報提供装置10は、サービス加入者の車両5のナビゲーション装置50から受け付けた位置から所定の範囲内に存在する交差点に関する進行方向別のヒヤリ量をナビゲーション装置50に提供する。このため、本実施例に係る情報提供装置10では、サービス加入者の車両5が交差点に進入する場合に、当該交差点の進行方向別のヒヤリ量をリアルタイムで報知することができる。したがって、本実施例に係る情報提供装置10によれば、事故予防により効果的な運転を支援することができる。
さて、上記の実施例1では、ナビゲーション装置50から通知された現在位置に応じて交差点の通行パターン別のヒヤリ量を提供する場合を例示したが、他の提供方法によって交差点の通行パターン別のヒヤリ量を提供することもできる。そこで、本実施例では、交差点の通行パターン別のヒヤリ量を電子地図上に展開することにより、ヒヤリハットマップを提供する場合について説明する。
図16は、実施例2に係る情報提供システムの構成を示す図である。図16に示すように、情報提供システム2は、図1に示した情報提供システム1と比べて、情報提供装置70と、情報処理端末80とを有する点が異なる。なお、以下では、同様の機能を発揮するものには同一の符号を付し、その説明を省略する。
情報処理端末80は、情報処理を実行する端末装置である。かかる情報処理端末80の一態様としては、パーソナルコンピュータ(PC:personal computer)を始めとする固定端末の他、携帯電話機、PHS(Personal Handyphone System)やPDA(Personal Digital Assistant)などの移動体端末も採用できる。なお、上記の情報処理端末80は、サービス加入者のみならず、一般のエンドユーザを含む任意の利用者に使用される。
[情報提供装置の構成]
図17は、実施例2に係る情報提供装置の機能的構成を示すブロック図である。図17に示す情報提供装置70は、図3に示した情報提供装置10と比べて、制御部71が正規化部71a及び検索部71cをさらに有する。また、図17に示す情報提供装置70は、図3に示した情報提供装置10と比べて、出力部71bの機能の一部が相違する点が異なる。さらに、図17に示す情報提供装置70は、図3に示した情報提供装置10と比べて、記憶部72に記憶されたヒヤリ量データ72aの一部が相違する点が異なる。
このうち、正規化部71aは、ヒヤリ量データ72aのヒヤリ量を正規化する処理部である。一態様としては、正規化部71aは、集計部15cによってヒヤリ量が更新された場合に、処理を起動する。このとき、正規化部71aは、ヒヤリ量データ72aのうちヒヤリ量が更新された交差点IDに所属する各通行パターンIDのヒヤリ量を正規化する。その上で、正規化部71aは、各通行パターンIDの正規化後のヒヤリ量を記憶部72のヒヤリ量データ72aへ登録する。なお、ここでは、集計部15cによってヒヤリ量が更新される度にヒヤリ量を正規化する場合を例示したが、ヒヤリ量の正規化は任意の契機で実行することができる。例えば、正規化部72aは、前回に正規化を実行してから所定の期間が経過した場合にヒヤリ量を正規化することもできる。
かかる正規化方法の一例としては、各交差点の全通行パターンのヒヤリ量を合計するとともに、合計した値に対する通行パターン別にヒヤリ量の割合を算出する方法が挙げられる。なお、正規化することにより、交差点毎にヒヤリ量が異なったとしても、通行パターン毎に発生するヒヤリ量の割合で、類似する傾向の交差点を評価することができる。図18及び図19は、ヒヤリ量の正規化を説明するための図である。これら図18及び図19の例では、四角で囲われた数字がヒヤリ量を指し、楕円で囲われた数字が正規化値を指し、矢印が図示されていない通行パターンのヒヤリ量はゼロであるものとする。
図18の例では、東の道路から交差点に進入して西の道路へ脱出する通行パターンPAのヒヤリ量が「1回」であり、北の道路から交差点に進入して南の道路へ脱出する通行パターンPBのヒヤリ量が「99回」である。この場合には、正規化部71aは、通行パターンPAのヒヤリ量「1」を全通行パターンのヒヤリ量の合計値「100=1+99」で除すことにより、通行パターンPAのヒヤリ量の正規化値「0.01」を算出する。さらに、正規化部71aは、通行パターンPBのヒヤリ量「99」を全通行パターンのヒヤリ量の合計値「100」で除すことにより、通行パターンPBのヒヤリ量の正規化値「0.99」を算出する。
図19の例では、東の道路から交差点に進入して西の道路へ脱出する通行パターンPαのヒヤリ量が「10回」であり、北の道路から交差点に進入して南の道路へ脱出する通行パターンPβのヒヤリ量が「990回」である。この場合には、正規化部71aは、通行パターンPαのヒヤリ量「10」を全通行パターンのヒヤリ量の合計値「1000=10+990」で除すことにより、通行パターンPαのヒヤリ量の正規化値「0.01」を算出する。さらに、正規化部71aは、通行パターンPβのヒヤリ量「99」を全通行パターンのヒヤリ量の合計値「100」で除すことにより、通行パターンPβのヒヤリ量の正規化値「0.99」を算出する。なお、図18及び図19の例では、タクシー及びトラック等の車両種別を問わずにヒヤリ量を正規化する場合を例示したが、車両種別毎にヒヤリ量を正規化することもできる。
ここで、交差点全体のマクロな視野で図18及び図19に示した交差点を比較すると、図19に示した交差点の方が図18に示した交差点よりもヒヤリ量の合計値が10倍大きい。このため、図19に示した交差点はヒヤリ量の多い交差点、図18に示した交差点はヒヤリ量の少ない交差点となる。しかしながら、交差点ごとのミクロな視野で図18及び図19に示した交差点を比較すると、合計値が1となる正規化値では、北から南へと通行した通行パターンが「0.99」、東から西が「0.01」の同じ値となる。図18及び図19に示した交差点は、ヒヤリの発生の傾向が互いに類似した性質の交差点であることが分かる。このように、正規化部71aは、ミクロな視野で比較するために、ヒヤリ量が更新された交差点の通行パターンIDのヒヤリ量を正規化する。
なお、ここでは、割合を算出することによってヒヤリ量を正規化する場合を例示したが、開示の装置はこれに限定されず、他の指標値に正規化することもできる。一例としては、開示の装置は、ヒヤリ量の合計値が「1」となる「0.0〜1.0」の数値に正規化した後に、「0.0〜0.1」をレベル1、「0.1〜0.2」をレベル2というように任意の階層に区切ったレベル値へと変換することもできる。他の一例としては、開示の装置は、交差点におけるヒヤリ量が高い通行パターンIDから順に「N」、「N−1」、「N−2」・・・というようにヒヤリ量を指標数値へ変換してもよい。
図20は、正規化後のヒヤリ量を含むヒヤリ量データ72aの一例を示す図である。図20に示すヒヤリ量データ72aは、図9に示したヒヤリ量データ13cに比べて、正規化する前のヒヤリ量に加えて正規化した後のヒヤリ量がさらにタクシー及びトラックの車両種別ごとに対応付けられる。図20は、車種の区別無く正規化を行った場合の例である。よって、図20では、正規化前の各通行パターンのヒヤリ量は、タクシーとトラックの間で異なるが、正規化後の各通行パターンのヒヤリ量は、タクシーとトラックの間で同一となる。なお、正規化時に、車種毎に正規化を行っても良い。
出力部71bは、記憶部72にヒヤリ量データ72aとして記憶された交差点の通行パターン別のヒヤリ量を電子地図上に展開することにより、ヒヤリハットマップを出力する処理部である。
一態様としては、出力部71bは、情報処理端末80からヒヤリハットマップの閲覧要求を受け付けた場合に、閲覧要求で指定された範囲、例えば都道府県や市町村などの地域に対応する電子地図を図示しない内部メモリから読み出す。そして、出力部71bは、閲覧要求で指定された地域の電子地図に含まれる交差点の全通行パターンのヒヤリ量の合計値に応じて交差点の表示態様が変更されたヒヤリハットマップを作成して情報処理端末80へ出力する。例えば、出力部71bは、ヒヤリ量がゼロである交差点を無地とし、ヒヤリ量が1〜10である交差点を黄色とし、ヒヤリ量が11〜20である交差点を赤色としたヒヤリハットマップを作成する。続いて、出力部71bは、情報処理端末80に表示されたヒヤリハットマップ上で交差点の指定を受け付けた場合に、当該指定を受け付けた交差点IDの通行パターン別のヒヤリ量とともに各通行パターンに含まれるヒヤリIDを情報処理端末80に表示させる。その後、出力部71bは、ヒヤリIDの選択を受け付けた場合に、選択を受け付けたヒヤリIDに対応するファイル名を用いて、記憶部13内に記憶されたヒヤリハットの映像を呼び出した上でその映像を情報処理端末80へ配信する。なお、出力部71bは、ヒヤリ量のかわりに、正規化したヒヤリ量を提供しても良い。
図21A及び図21Bは、ヒヤリハットマップの一例を示す図である。図21Aに示すように、ヒヤリハットマップ40Aでは、交差点ID「0011」及び「0012」の交差点でヒヤリハットが発生しており、表示態様が他の交差点との間で区別されている。このヒヤリハットマップ40A上で交差点ID「0011」の交差点が指定された場合には、図21Bに示すように、交差点ID「0011」の交差点の拡大図とともに通行パターン別のヒヤリ量が情報処理端末80に表示される。図21Bの例では、T字路において北方向から西方向へ右折する場合のヒヤリ量が「20」と最も高い。また、図21Bの例では、T字路において東方向から北方向へ右折する場合のヒヤリ量が「10」とその次に高い。また、図21Bの例では、T字路において西方向から東方向へ直進する場合のヒヤリ量が「5」とその次に高い。このように、図21Bに示す例では、T字路において北方向から西方向へ右折する場合のヒヤリ量が高いことから、T字路の突き当たりを右折する場合に東西方向に通行する車両に注意するのが肝要であることがわかる。
検索部71cは、ヒヤリハットマップ上で指定を受けた交差点と形状およびヒヤリ量が類似する交差点を検索する処理部である。
これを説明すると、検索部71cは、情報処理端末80から類似交差点の検索要求を受け付けた場合に、交差点テーブルに記憶された交差点IDのうち、ヒヤリハットマップ上で指定を受けた指定交差点の交差点IDに対応付けられた道路IDを全て読み出す。これによって、指定交差点に接続される道路の本数が特定される。さらに、検索部71cは、道路テーブルに記憶された接続方向のうち、指定交差点に接続される道路の道路IDを持ち、かつ指定交差点の交差点IDに対応する接続方向を読み出す。これによって、指定交差点に接続される道路の接続方向が特定される。
その上で、検索部71cは、交差点テーブル及び道路テーブルから、指定交差点に接続される道路の本数及び接続方向が類似する交差点を類似候補の交差点として検索する。例えば、検索部71cは、指定交差点に接続される道路の本数が一致し、かつ指定交差点に接続される道路との間で接続方向のズレが所定の範囲、例えば「±5度」内である交差点を検索する。このとき、検索部71cは、指定交差点に接続される道路の接続方向を回転させながら、交差点テーブル及び道路テーブルに定義された交差点との間で互いの交差点の形状が類似するか否かを判定する。かかる形状類似判定は、既知のトポロジの等しい形状を検索する技術を好適に適用できる。なお、形状類似の判定基準とする道路の「本数」及び「接続方向」は、利用者が情報処理端末80を介して任意の値を設定できる。また、その他の道路の属性として、県道・国道などの道路種別、道路幅や道路車線数等の情報も同様に任意の値を設定し、それらを含めた類似候補を絞り込み検索してもよい。
その後、検索部71cは、類似候補の交差点が検索された場合に、ヒヤリ量データ72aを参照して、類似候補の交差点の中から指定交差点とヒヤリ量が類似する交差点を類似交差点として検索する。例えば、検索部71cは、指定交差点の交差点IDに対応する各通行パターンIDのヒヤリ量を読み出すとともに、類似候補の交差点の交差点IDに対応する各通行パターンIDのヒヤリ量を読み出す。このとき、検索部71cは、検索条件として正規化の要否が指定されている場合には、指定された正規化の要否に対応するヒヤリ量を読み出す。さらに、検索部71cは、検索条件として車両種別が指定されている場合には、指定された種別に対応するヒヤリ量を読み出す。その上で、検索部71cは、指定交差点及び類似候補の交差点の間で全ての通行パターンのヒヤリ量の差が所定の範囲内である交差点を検索する。このようにして形状およびヒヤリ量が類似する交差点が類似交差点として検索される。なお、交通量類似の判定基準とする「ヒヤリ量の差」は、利用者が情報処理端末80を介して任意の値を設定できる。
[処理の流れ]
続いて、本実施例に係る情報提供システムの処理の流れについて説明する。なお、ここでは、情報提供装置70によって実行される(1)情報提供処理を説明した後に、(2)類似検索処理の手順を説明する。
(1)情報提供処理
図22は、実施例2に係る情報提供処理の手順を示すフローチャートである。この情報提供処理は、情報処理端末80からヒヤリハットマップの閲覧要求を受け付けた場合に処理が起動される。
図22に示すように、出力部71bは、閲覧要求で指定された地域の電子地図に含まれる交差点の全通行パターンのヒヤリ量の合計値に応じて交差点の表示態様が変更されたヒヤリハットマップを作成して情報処理端末80へ出力する(ステップS501)。
続いて、出力部71bは、情報処理端末80に表示されたヒヤリハットマップ上で交差点の指定を受け付けると(ステップS502)、次のような処理を実行する。すなわち、出力部71bは、当該指定を受け付けた交差点IDの通行パターン別のヒヤリ量とともに各通行パターンに含まれるヒヤリIDを情報処理端末80に出力する(ステップS503)。
その後、ヒヤリIDの選択を受け付けた場合(ステップS504肯定)には、出力部71bは、次のような処理を実行する。すなわち、出力部71bは、選択を受け付けたヒヤリIDに対応するファイル名を用いて、記憶部13内に記憶されたヒヤリハットの映像を呼び出した上でその映像を情報処理端末80へ配信する(ステップS505)。なお、ヒヤリIDの選択を受け付けられなかった場合(ステップS504否定)には、ステップS506へ移行する。
また、情報処理端末80から類似交差点の検索要求を受け付けた場合(ステップS506肯定)に、検索部71cは、次のような処理を実行する。すなわち、検索部71bは、ヒヤリハットマップ上で指定を受けた交差点と形状およびヒヤリ量が類似する交差点を検索する類似検索処理を実行し(ステップS507)、ステップS504へ移行する。なお、情報処理端末80から類似交差点の検索要求を受け付けられなかった場合(ステップS506否定)には、上記のステップS504の処理へ移行する。
(2)類似検索処理
図23は、実施例2に係る類似検索処理の手順を示すフローチャートである。この類似検索処理は、図22に示したステップS507に対応する処理であり、情報処理端末80から類似交差点の検索要求を受け付けた場合(ステップS506肯定)に処理が起動される。
図23に示すように、検索部71cは、交差点テーブル及び道路テーブルから、ヒヤリハットマップ上で指定を受けた指定交差点に接続される道路の本数及び接続方向が類似する交差点を類似候補の交差点として検索する(ステップS701)。
このとき、類似候補の交差点が検索された場合(ステップS702肯定)には、検索部71cは、ヒヤリ量データ72aを参照して、類似候補の交差点の中から指定交差点とヒヤリ量が類似する交差点を類似交差点として検索する(ステップS703)。なお、類似候補の交差点が存在しない場合(ステップS702否定)には、そのまま処理を終了する。
ここで、類似交差点が検索された場合(ステップS704肯定)には、出力部71bは、類似交差点の交差点IDの通行パターン別のヒヤリ量とともに各通行パターンに含まれるヒヤリIDを情報処理端末80に出力し(ステップS705)、処理を終了する。なお、類似交差点が存在しない場合(ステップS704否定)には、そのまま処理を終了する。
[実施例2の効果]
上述してきたように、本実施例に係る情報提供装置70では、道路上の領域、例えば交差点でヒヤリハットが多発している場合に、交差点をいずれの進行方向へ通行する場合に、危険である可能性が高いのかを、ユーザに把握させることができる。それゆえ、本実施例に係る情報提供装置70では、車両が交差点をヒヤリハットが多発している進行方向へ通行する場合に、運転者へ他の進行方向へ通行する場合よりも注意を払うとともに、進行方向に合った認知、判断及び操作を行う準備をさせることができる。したがって、本実施例に係る情報提供装置70によれば、ユーザに対して特に注意すべき進行方向を認知させることで、過去にヒヤリハットが発生した時と同じ原因の事故が再発するリスクを低減できる結果、実施例1と同様、事故予防に寄与することが可能である。また、進行方向毎にヒヤリ量を提供することで、ユーザはヒヤリハットの発生が多い通行パターンを把握することができる。よって、ヒヤリハットの発生が多い交差点に対する対策等を、ヒヤリハットの発生が多い通行パターンに対して講じることができる。よって、ユーザは交差点に対する対策を効率的に講じることができる。
また、本実施例に係る情報提供装置70は、道路上の領域の一例として交差点の指定を受け付ける。さらに、本実施例に係る情報提供装置70は、交差点と形状およびヒヤリ量が類似する地点を検索する。その上で、本実施例に係る情報提供装置70は、検索結果として得られた交差点に関する進行方向別のヒヤリ量を提供する。このため、本実施例に係る情報提供装置70では、ヒヤリハットの発生地点や事故発生地点と交通環境が類似する交差点を検索できる。よって、本実施例に係る情報提供装置70によれば、標識、信号や道幅などを設計する都市設計や事故の危険性が高い交差点における注意事項などを教育する交通安全教育にも役立てることが可能になる。さらに、正規化したヒヤリ量に基づいて、類似検索を行うことで、より広い範囲での類似検索が可能となる。
さらに、本実施例に係る情報提供装置70は、ヒヤリIDおよびヒヤリハットの発生時点でカメラ35により撮像された映像のファイル名が関連付けられたヒヤリデータ13aを参照して、指定を受けたヒヤリIDに関連付けられた映像をさらに提供する。このため、本実施例に係る情報提供装置70では、ヒヤリハットが発生する原因を目視により確認することができる。よって、本実施例に係る情報提供装置70によれば、事故予防の抜本的な対策を立てることが可能である。