本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、スライドドアの全閉状態において、スライドドアのボデー本体に対する相対的な振れを有効に制限できると共に、スライドドアの開閉時および全閉時に異音の発生を防止できる、新規な構造のスライドドアストッパを提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
すなわち、本発明の第一の態様は、車両のボデー本体とスライドドアとの各一方に取り付けられる雄部材と雌部材を含み、該スライドドアの全閉時に該雄部材の係止突部が該雌部材の係止筒部に差し入れられることにより、該係止筒部の内周面に対する該係止突部の係止作用で該スライドドアの該ボデー本体に対する振れを制限するスライドドアストッパにおいて、前記係止突部と前記係止筒部が何れも硬質とされて、該係止突部が該係止筒部に対して内周面への当接状態で差し入れられるようになっていると共に、該係止筒部が筒状支持部材に内挿され且つ該筒状支持部材に対して弾性体で弾性連結されている一方、該係止筒部における前記係止突部の差入れ側の開口端部が該弾性体の表面から外方に突出されていると共に、該開口端部には外周側に突出するフランジ部が一体形成されて該フランジ部の内周面によって開口側に向かって次第に拡開するテーパ形状の案内面が形成されており、該筒状支持部材が前記ボデー本体又は前記スライドドアに取り付けられることにより、該係止筒部が該ボデー本体又は該スライドドアに対して該弾性体で弾性支持されるようにしたことを、特徴とする。
このような第一の態様に従う構造とされたスライドドアストッパによれば、係止突部が係止筒部に対して内周面への当接状態で差し入れられることにより、係止筒部の内周面に対する係止突部の係止作用でスライドドアのボデー本体に対する振れが有効に制限される。しかも、係止突部が係止筒部に対して内周面への当接状態で差し入れられることにより、スライドドアがボデー本体に対して振動しても、係止突部と係止筒部の打ち当たりによる打音が低減される。
さらに、係止突部と係止筒部が何れも硬質とされていることにより、係止突部が係止筒部に対して内周面への当接状態で差し入れられても、摩擦によるスティックスリップ等の異音の発生が防止される。
更にまた、係止筒部が、ボデー本体又はスライドドアに対して弾性体で弾性支持されることから、スライドドアの振れ等によって係止突部と係止筒部の位置ずれが生じても、弾性体の弾性変形によってそれら係止突部と係止筒部のずれが許容されて、係止筒部に対する係止突部の当接状態での差入れが高い信頼性をもって実現される。なお、弾性体の内部摩擦等に基づいた防振作用によって、スライドドアのボデー本体に対する振動が効果的に低減される。
加えて、本態様によれば、スライドドアの閉作動時に係止突部がテーパ形状とされた係止筒部の開口端部に当接すると、スライド方向と略直交する方向の力が弾性体に作用して、弾性体が弾性変形する。これにより、係止突部が係止筒部に対して位置合わせされることから、スライドドアのボデー本体に対する振れが許容されて、係止突部が係止筒部に対して容易に且つ安定して差し入れられる。
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載されたスライドドアストッパにおいて、前記係止筒部における前記係止突部の差入れ側と反対側の開口部を閉塞する底壁部が設けられて、該係止筒部が有底筒形状とされているものである。
第二の態様によれば、スライドドアが大きな力で閉じられた場合にも、係止筒部に対する係止突部の差入れ量が、係止突部の先端面と係止筒部の底壁部との当接によって制限される。
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に記載されたスライドドアストッパにおいて、前記係止突部が前記係止筒部への差入状態で該係止筒部の内周面に対して押し付けられるようになっているものである。
第三の態様によれば、係止突部が係止筒部の内周面に対して押し付けられるように設計することで、製造時の寸法誤差やスライドドアの位置ずれ等が生じても、係止突部が係止筒部に対して確実に当接状態で差し入れられる。
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか1つの態様に記載されたスライドドアストッパにおいて、前記係止突部と前記係止筒部とが何れも硬質の樹脂で形成されていると共に、それら係止突部と係止筒部の少なくとも一方を形成する樹脂が自己潤滑性を有しているものである。
第四の態様によれば、係止突部と係止筒部が金属で形成される場合に比して、それら係止突部と係止筒部の当接時に生じる打音が低減される。更に、係止突部と係止筒部の少なくとも一方が、表面の摩擦係数が小さい自己潤滑性を有する樹脂で形成されることにより、係止突部と係止筒部の抜き差しに際して摩擦抵抗が小さくなって、スティックスリップ等による異音が低減される。
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか1つの態様に記載されたスライドドアストッパにおいて、前記ボデー本体又は前記スライドドアに対して前記弾性体で弾性支持される前記係止筒部において、該ボデー本体又は該スライドドアとの対向面上に突出する弾性ストッパ部が設けられているものである。
第五の態様によれば、スライドドアが大きな力で閉じられた場合に、ボデー本体又はスライドドアに弾性支持された硬質の係止筒部が、ボデー本体又はスライドドアに直接当たるのを防ぐことができる。しかも、係止筒部がボデー本体又はスライドドアに対して弾性ストッパ部を介して当接することで、係止筒部と筒状支持部材に対する相対変位量を制限するストッパ手段が構成されて、弾性体の過大な変形による損傷が防止される。
本発明の第六の態様は、第一〜第五の何れか1つの態様に記載されたスライドドアストッパにおいて、前記弾性体が前記係止筒部に接着されていると共に、該弾性体の外周面に前記筒状支持部材が接着されているものである。
第六の態様によれば、小径の筒状支持部材を採用しつつ、弾性体のゴムボリュームを大きく確保することができて、弾性体の耐久性の向上が図られる。
本発明の第七の態様は、第一〜第五の何れか1つの態様に記載されたスライドドアストッパにおいて、前記弾性体が前記係止筒部に接着されていると共に、該弾性体の外周面に中間スリーブが接着されており、該中間スリーブが前記筒状支持部材に圧入固定されているものである。
第七の態様によれば、弾性体の外周面に接着された中間スリーブに対して八方絞り等の縮径加工を施すことで、弾性体の成形後の収縮等に起因する引張り歪みを低減して、弾性体の耐久性をより向上させることができる。しかも、弾性体を成形時に中間スリーブに接着する場合には、弾性体を車両への取付部分を備える筒状支持部材に直接接着する場合に比して、弾性体の成形用金型が小型且つ簡単な構造とされ得る。
本発明の第八の態様は、第七の態様に記載されたスライドドアストッパにおいて、前記中間スリーブの軸方向端部には外周側に突出するストッパ突部が形成されて、前記係止突部が前記係止筒部に差し入れられた前記スライドドアの全閉状態において該ストッパ突部が前記ボデー本体又は該スライドドアに対して対向配置されていると共に、それらストッパ突部とボデー本体又はスライドドアとの対向面間に緩衝体が配設されているものである。
第八の態様によれば、中間スリーブのストッパ突部がボデー本体又はスライドドアに当接することで弾性体の変形量が制限されて、弾性体の過大な変形による損傷が回避されることにより、優れた耐久性が実現される。しかも、ストッパ突部とボデー本体又はスライドドアとの対向面間にゴム弾性体等で形成される緩衝体が配設されることで、ストッパ突部とボデー本体又はスライドドアとの当接による打音等が防止される。
なお、中間スリーブのストッパ突部は、例えば、雄部材におけるボデー本体又はスライドドアへの取付部分に対して対向配置されることによって、実質的にボデー本体又はスライドドアと対向して配置されていても良い。
本発明によれば、スライドドアの全閉時に、雄部材の係止突部が雌部材の係止筒部に対して内周面への当接状態で差し入れられることから、係止筒部に対する係止突部の係止作用によって、スライドドアのボデー本体に対するスライド方向以外への振れが効果的に制限されると共に、係止突部と係止筒部の打ち当たりによる打音も低減される。しかも、係止突部と係止筒部が何れも硬質とされていることによって、係止筒部に対する係止突部の差し入れに際して、摩擦抵抗に起因するスティックスリップ等の異音が防止される。
さらに、係止筒部が筒状支持部材に対して弾性体で弾性連結されており、ボデー本体又はスライドドアによって弾性的に支持されている。それ故、スライドドアの閉作動時の振れ等によって、係止突部が係止筒部に対して中心軸がずれた状態で差し入れられる場合にも、弾性体の変形によって係止突部と係止筒部が位置合わせされて、係止筒部に対して係止突部が確実に差し入れられる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1には、本発明の第一の実施形態としてのスライドドアストッパ10が、車両への装着状態で示されている。スライドドアストッパ10は、雄部材12と雌部材14で構成されており、本実施形態では、雄部材12がスライドドア16側に取り付けられるようになっていると共に、雌部材14がボデー本体としてのセンターピラー18側に取り付けられるようになっている。なお、以下の説明において、原則として、上下方向とは車両への装着時に鉛直上下方向となる図3中の上下方向を、左右方向とは車両への装着時に車両の左右方向となる図3中の左右方向を、それぞれ言う。
より詳細には、雄部材12は、図2〜図7に示すように、取付板金具20を備えている。取付板金具20は、角部を丸められた略等脚台形状の板部材であって、鉄やアルミニウム合金等の金属材料で形成されている。更に、取付板金具20には、上下方向の両端部にそれぞれボルト孔24が形成されて、厚さ方向に貫通していると共に、上下方向の中央部分には外周面に開口して厚さ方向に貫通する切欠き26が形成されている。更にまた、取付板金具20には、切欠き26の上下中央から突出する突片28が一体形成されている。この突片28は、切欠き26の開口側に向かって延び出していると共に、その先端部分が屈曲して厚さ方向一方の側に向かって突出している。
また、突片28には、係止突部30が固着されている。係止突部30は、略長円柱形状を呈する硬質の部材であって、取付板金具20の切欠き26内において厚さ方向一方の側に突出していると共に、取付板金具20に一体形成された突片28の先端部分が内部に埋設されている。更に、係止突部30は、突出先端面が先端側に向かって収縮する湾曲形状とされていると共に、外周面が先端側に向かって僅かに収縮するテーパ形状とされている。
係止突部30は、硬質であれば金属で形成されていても良いが、形状および寸法の精度や重量等を考慮して、好適には合成樹脂で形成される。特に、ポリアセタール(POM)や超高分子量ポリエチレン、フッ素樹脂等の自己潤滑性を有する合成樹脂で形成されて、係止突部30の表面の摩擦係数が小さくされていることが望ましく、本実施形態では耐摩耗性や成形性(成形品の形状や寸法の精度)に優れるポリアセタールで形成されている。
さらに、係止突部30の外周面上には、エア抜溝32が形成されている。エア抜溝32は、係止突部30の周上の一部に形成されて、軸方向に直線的に延びる凹溝であって、一方の端部が係止突部30の突出先端面に開口していると共に、他方の端部が係止突部30の基端付近まで延び出している。
また、係止突部30の基端側には、支持板34が一体形成されている。支持板34は、取付板金具20の切欠き26と略対応する板状とされており、切欠き26に差し入れられて、その内面に固着されている。本実施形態では、支持板34が切欠き26の開口から右方に突出していると共に、突出部分が上下に延び出して取付板金具20の外周面に固着されている。
一方、雌部材14は、図8〜図13に示すように、係止筒部36と筒状支持部材38を弾性体40で弾性連結した構造を有している。
係止筒部36は、周壁部と底壁部を一体で備えた小径の略有底長円筒形状を呈する硬質の部材であって、アルミニウム合金等の金属で形成されていても良いが、本実施形態では合成樹脂で形成されている。更に、係止筒部36の開口端部には、開口側に向かって次第に拡開するテーパ部46が一体形成されていると共に、テーパ部46の拡開側端部には外周側に突出するフランジ部48が一体形成されている。更にまた、係止筒部36の周壁部における係止突部30の差入れ側とは反対側の開口部が底壁部で閉塞されていると共に、それら周壁部と底壁部の接続部分が湾曲形状をもって滑らかに連続しており、それら周壁部と底壁部の接続部分が底壁部側に向かって次第に収縮するテーパ形状とされている。なお、係止筒部36の形成材料は、後述する弾性体40の加硫成形時に形状を保持し得る耐熱性に優れた合成樹脂が採用される。より好適には、係止筒部36の内面の摩擦係数が小さくなるように、自己潤滑性を有する合成樹脂が採用される。
筒状支持部材38は、全体として大径の略長円筒形状を呈する高剛性の部材であって、鉄やアルミニウム合金等の金属で形成されている。また、筒状支持部材38の軸方向端部には、外周側に突出するフランジ状の取付片50が一体形成されており、取付片50に貫通形成されたボルト孔52に挿通される図示しない取付用ボルトによって筒状支持部材38がセンターピラー18に取り付けられるようになっている。なお、本実施形態の筒状支持部材38では、中心軸方向が取付片50の厚さ方向に対して相対的に傾斜しているが、センターピラー18側の構造等によっては、取付片50が筒状支持部材38に対して直交して広がるようにも設けられ得る。
かくの如き構造とされた係止筒部36が筒状支持部材38に内挿されて、それら係止筒部36と筒状支持部材38が弾性体40によって弾性連結されている。弾性体40は、厚肉の略長円筒形状であって、内周面が係止筒部36の外周面に接着されていると共に、外周面が筒状支持部材38の内周面に接着されている。また、本実施形態では、弾性体40の内周端部における軸方向端面が、フランジ部48に重ね合わされて固着されている。なお、本実施形態では、弾性体40がゴムで形成されており、筒状支持部材38に対して加硫接着されているが、弾性体40は、例えばゴム状弾性を有する樹脂エラストマ等でも形成され得る。
さらに、係止筒部36の底壁部は、その外面が弾性体40と一体形成された弾性被覆層53によって全体に亘って覆われていると共に、係止筒部36の底壁部の中央部分には弾性被覆層53と一体形成された弾性ストッパ部54が突出している。
そして、取付板金具20がスライドドア16にボルト固定されることによって、雄部材12がスライドドア16に取り付けられており、係止突部30がスライドドア16によって固定的に支持されるようになっている。一方、筒状支持部材38の取付片50がセンターピラー18にボルト固定されることにより、雌部材14がセンターピラー18に取り付けられており、係止筒部36がセンターピラー18に対して弾性体40で弾性支持されるようになっている。なお、雌部材14のセンターピラー18への装着状態において、係止筒部36の底壁部に設けられた弾性ストッパ部54が、センターピラー18側に向かって突出している。
このような雄部材12および雌部材14の車両装着状態において、スライドドア16の全閉時には、図1に示すように、雄部材12の係止突部30が、雌部材14の係止筒部36に対して、係止筒部36の内周面への当接状態で差し入れられるようになっている。本実施形態では、係止突部30の外周面が係止筒部36の内周面に対して略全周に亘って押し当てられた嵌合状態で、係止突部30が係止筒部36に差し入れられるようになっており、係止突部30の外周面と係止筒部36の内周面とが広い範囲で密着せしめられる。なお、係止筒部36に対する係止突部30の差入れ方向が、スライドドア16のセンターピラー18に対するスライド方向(略車両前後方向)と略一致しており、図1中の左右方向となっている。
このように係止突部30が係止筒部36に差し入れられることにより、係止筒部36の内周面に対して係止突部30が差入れ方向と略直交する方向で当接係止されており、それら係止突部30と係止筒部36の係止作用によって雄部材12と雌部材14の相対変位が制限される。その結果、雄部材12が取り付けられたスライドドア16と、雌部材14が取り付けられたセンターピラー18との相対変位が制限されて、全閉状態におけるスライドドア16の車両左右方向への振れが防止される。
しかも、走行時の振動入力等によってスライドドア16が振動すると、係止筒部36が筒状支持部材38に対して相対的に変位して弾性体40が弾性変形することから、弾性体の内部摩擦等に起因するエネルギー減衰作用等に基づいて、有効な防振効果が発揮される。それ故、スライドドア16のセンターピラー18に対する振れが低減される。
また、係止突部30が係止筒部36に対して内周面への当接状態で差し入れられることから、スライドドア16の振れに際して係止突部30が係止筒部36の内周面に打ち当てられることによる打音が低減される。特に本実施形態では、係止突部30が係止筒部36の内周面に対してエア抜溝32を外れた略全周において当接していることから、係止突部30と係止筒部36の内周面との打ち当たりによる打音がより効果的に低減される。加えて、本実施形態では、係止突部30の外径寸法が係止筒部36の内法寸法よりも大きくされており、係止突部30が係止筒部36に対して内周面に押し付けられた状態で差し入れられるようになっていることから、係止突部30の係止筒部36に対する内周面への当接状態が、寸法誤差等の影響があっても安定して実現される。
また、係止突部30と係止筒部36が何れも硬質とされていることから、係止筒部36に対して係止突部30を抜き差しする際に係止突部30と係止筒部36の間で作用する摩擦抵抗が小さくされており、摩擦による異音の発生が防止される。しかも、係止突部30が自己潤滑性を有する合成樹脂で形成されており、係止突部30の表面(外周面)の摩擦係数が小さくされていることから、係止筒部36に対して係止突部30を抜き差しする際の異音がより効果的に低減乃至は回避される。
さらに、係止突部30の外周面に開口するエア抜溝32が形成されていることから、係止筒部36に対して係止突部30を抜き差しする際に、係止突部30の先端面と係止筒部36の底壁部との間に形成される空間が、エア抜溝32を通じて外部空間に連通される。それ故、係止筒部36に係止突部30を差し入れる際に、空気ばねによる差入れ不良が回避されると共に、係止筒部36から係止突部30を引き抜く際の異音が防止される。
また、係止筒部36に対して係止突部30を差し入れる際に、差入れ方向と直交する方向で係止突部30と係止筒部36の相対的な位置がずれている場合には、係止突部30が係止筒部36のテーパ部46に押し当てられることで、係止筒部36の位置が弾性体40の変形を伴って変更設定されて、係止突部30が係止筒部36に安定して差し入れられる。しかも、係止突部30の突出先端面が突出先端側に向かって収縮する湾曲面とされていることから、係止突部30と係止筒部36の中心軸を一致させる案内作用が、係止突部30の突出先端面とテーパ部46との当接によってより効果的に発揮される。
さらに、本実施形態では係止突部30と係止筒部36が何れも合成樹脂で形成されていることから、それら係止突部30と係止筒部36の中心軸がずれて、係止突部30が係止筒部36のテーパ部46に打ち当てられた場合の打音が、金属製の場合に比して抑えられる。
また、係止突部30の外周面が係止突部30の突出先端側に向かって次第に小径となるテーパ筒面とされていると共に、係止筒部36の内周面が底壁部側に向かって次第に小径となるテーパ筒面とされている。それ故、スライドドア16を閉める際に、係止筒部36に対する係止突部30の差入れ量が、係止突部30の外周面と係止筒部36の内周面との軸方向(スライド方向)での係止によって制限されるようになっている。
しかも、係止筒部36が底壁部を備えた略有底長円筒形状とされていることから、係止突部30の突出先端面と係止筒部36の底壁部との当接によって、係止筒部36に対する係止突部30の差入れ量が規定される。加えて、係止突部30の突出先端面が湾曲面とされていると共に、係止筒部36の周壁部と底壁部が縦断面で円弧状とされた湾曲部で接続されていることから、係止突部30の突出先端面の外周端部と係止筒部36の湾曲部との当接によって、係止筒部36に対する係止突部30の差入れ量が規定されるようになっている。
さらに、係止筒部36の底壁部が弾性体40に一体形成された弾性被覆層53で覆われており、スライドドア16が大きな力で閉じられて係止筒部36が筒状支持部材38に対して軸方向に大きく変位した場合にも、硬質の係止筒部36がセンターピラー18に直接的に打ち当てられるのを防止できる。
更にまた、係止筒部36の底壁部中央には、厚肉の弾性ストッパ部54が弾性被覆層53と一体形成されて、センターピラー18側に突出していることから、係止筒部36とセンターピラー18の弾性ストッパ部54を介した当接によって、係止筒部36と筒状支持部材38の相対変位量を制限するストッパ手段が構成される。これにより、弾性体40の変形量がストッパ手段で制限されて、弾性体40の耐久性の向上が図られる。
また、本実施形態の雌部材14は、弾性体40の内周面が係止筒部36に接着されていると共に、筒状支持部材38の内周面に接着されていることから、小径の雌部材14において弾性体40のゴムボリュームを大きく得ることができて、弾性体40の耐久性を確保できる。特に、係止筒部36の形成材料を適宜に選択する等して、弾性体40の加硫成形時に係止筒部36と筒状支持部材38に弾性体40がそれぞれ加硫接着されるようにすれば、弾性体40と係止筒部36の接着を加硫成形と同時に行うことができて、接着工程を省略することができる。
なお、本実施形態では省略されているが、例えば、雄部材12の取付板金具20および支持板34と、雌部材14のフランジ部48との間に、発泡ウレタンやゴム弾性体等で形成されたシール体が配設されていても良い。より具体的には、略長円環状のシール体を、係止突部30に外挿して取付板金具20および支持板34に固着することで、雄部材12に固設する。そして、スライドドア16の全閉状態において、雄部材12の取付板金具20および支持板34と、雌部材14のフランジ部48との間で、シール体が挟み込まれることにより、雌部材64の係止筒部36内に砂塵等の異物が侵入するのを防ぐことができる。
また、図14には、本発明の第二の実施形態としてのスライドドアストッパ60が車両への装着状態で示されている。スライドドアストッパ60は、スライドドア16に取り付けられる雄部材62と、センターピラー18に取り付けられる雌部材64とを備えている。以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことで説明を省略する。
より詳細には、雄部材62は、図15に示すように、取付板金具20の突片28を覆うように係止突部68を設けた構造とされている。係止突部68は、第一の実施形態の係止突部30と同様の合成樹脂で形成されており、小径の略円柱形状とされていると共に、突出先端面が先端側に向かって収縮する湾曲面で構成されている。そして、取付板金具20がスライドドア16に対してボルト固定されることにより、雄部材62がスライドドア16に取り付けられて、係止突部68がスライドドア16によって固定的に支持されるようになっている。
一方、雌部材64は、図16,図17に示すように、係止筒部70と中間スリーブ72を弾性体74で弾性連結した一体成形品76を備えている。係止筒部70は、第一の実施形態の係止筒部36と同様の合成樹脂で形成されており、小径の略有底円筒形状とされていると共に、開口端部にはテーパ部46とフランジ部48が一体形成されている。中間スリーブ72は、薄肉大径の略円筒形状を有する硬質の部材であって、鉄やアルミニウム合金等の金属で形成されている。
そして、中間スリーブ72の内周側に係止筒部70が差し入れられて、それら係止筒部70と中間スリーブ72が弾性体74で相互に弾性連結されている。本実施形態では、略円筒形状とされた弾性体74の内周面が係止筒部70に接着されていると共に、弾性体74の外周面が中間スリーブ72に接着されており、弾性体74が係止筒部70と中間スリーブ72を備えた一体成形品76として形成されている。更に、一体成形品76は、弾性体74の成形後に、中間スリーブ72に対して八方絞り等の縮径加工が施されることによって、弾性体74の成形後収縮による歪み等が低減される。本実施形態では、中間スリーブ72が円筒形状とされていることから、縮径加工を容易に行うことができる。
また、弾性体74の一体成形品76は、略円筒形状の筒状支持部材78に取り付けられている。即ち、弾性体74の外周面に固着された中間スリーブ72が、筒状支持部材78に圧入固定されて、係止筒部70が筒状支持部材78に対して弾性体74で弾性連結されている。これにより、筒状支持部材78の取付片50がセンターピラー18にボルト固定されることで、雌部材64がセンターピラー18に取り付けられて、係止筒部70がセンターピラー18によって弾性支持されるようになっている。
このような構造とされた雄部材62と雌部材64は、スライドドア16の全閉状態において、図14に示すように、係止突部68が係止筒部70に差し入れられるようになっている。そして、係止突部68と係止筒部70の軸直角方向での係止作用によって、スライドドア16のセンターピラー18に対する全閉時の振れが防止されるようになっている。
特に本実施形態では、雌部材64が、弾性体74の一体成形品76の成形後に、中間スリーブ72に縮径加工を施した後で、一体成形品76を筒状支持部材78に後固定した構造とされている。それ故、弾性体74の成形後の収縮等に起因する引張り歪みが緩和されて、弾性体74の耐久性を向上させることができる。
また、弾性体74の成形時には、成形用金型にセットされる部品が係止筒部70と中間スリーブ72になることから、弾性体74を筒状支持部材78に直接固着する場合に比して、成形用金型を小さくすることができると共に、成形用金型の構造も簡単なものとすることができる。
また、図18には、本発明の第三の実施形態としてのスライドドアストッパ80が車両への装着状態で示されている。スライドドアストッパ80は、スライドドア16に取り付けられる雄部材82と、センターピラー18に取り付けられる雌部材84とを備えている。
より詳細には、雄部材82は、取付板金具20に対して係止突部68と一体形成された樹脂被覆層86が固着されている。
雌部材84は、係止筒部70と中間スリーブ88とが弾性体90で弾性連結された一体成形品92が、筒状支持部材78に圧入固定された構造を有している。中間スリーブ88は、略円筒形状とされていると共に、その軸方向一端には外周側に突出するストッパ突部94が一体形成されている。このストッパ突部94は、フランジ状に略軸直角方向で広がっており、略円環板形状とされて全周に亘って連続して形成されている。
弾性体90は、略円筒形状とされて、内周面が係止筒部70に接着されていると共に、外周面が中間スリーブ88に接着されている。更に、弾性体90の外周端部には、緩衝体96が一体形成されている。この緩衝体96は、弾性体90から軸方向外側に延び出して、中間スリーブ88におけるストッパ突部94の軸方向外面を覆うように接着されている。
そして、一体成形品92の中間スリーブ88が筒状支持部材78に圧入固定されることによって、本実施形態の雌部材84が形成されている。また、雌部材84では、中間スリーブ88のストッパ突部94が、筒状支持部材78の軸方向端面に対して、当接状態で重ね合わされている。
このような構造とされた雄部材82と雌部材84は、雄部材82がスライドドア16に取り付けられると共に、雌部材84がセンターピラー18に取り付けられるようになっている。かかる車両への装着状態において、スライドドア16の全閉時には、図18に示すように、雄部材82の係止突部68が雌部材84の係止筒部70に差し入れられるようになっている。
また、係止突部68が係止筒部70に差し入れられたスライドドア16の全閉状態において、中間スリーブ88のストッパ突部94がスライドドア16に対して対向配置されており、それらストッパ突部94とスライドドア16の対向面間に緩衝体96が配設されている。本実施形態では、スライドドア16におけるストッパ突部94との対向面上に、雄部材82の取付板金具20および支持板34が当接状態で重ね合わされており、スライドドア16に固定された取付板金具20および支持板34に対してストッパ突部94が対向配置されている。なお、本実施形態では、取付板金具20におけるストッパ突部94との対向面が樹脂被覆層86で覆われており、雄部材82におけるストッパ突部94の対向面が全体に亘って合成樹脂で形成されている。
そして、スライドドア16がセンターピラー18に対して大きな力で閉方向へスライド変位されると、係止突部68を差し入れられた係止筒部70が、中間スリーブ88および筒状支持部材78に対して軸方向で大きく変位する。そこにおいて、スライドドア16側に取り付けられた雄部材82の取付板金具20および支持板34が、センターピラー18側に取り付けられた中間スリーブ88のストッパ突部94に対して軸方向(スライドドア16のスライド方向)で当接されて、係止筒部70と中間スリーブ88および筒状支持部材78との相対変位量が制限されるようになっている。これにより、弾性体90の変形量が制限されて、弾性体90の過大な変形による損傷が回避されることから、耐久性の向上が図られる。
さらに、ストッパ突部94と取付板金具20および支持板34との対向面間に緩衝体96が配設されており、それらストッパ突部94と取付板金具20および支持板34とが緩衝体96を介して当接する。それ故、ストッパ突部94と取付板金具20および支持板34との当接時の打音が低減される。
しかも、取付板金具20および支持板34におけるストッパ突部94の当接面が何れも合成樹脂で構成されていることから、金属への当接に比して当接時の衝撃がより低減されて、打音が効果的に防止され得る。
なお、中間スリーブ88のストッパ突部94は、必ずしも雄部材82を介してスライドドア16と対向している必要はなく、例えば、ストッパ突部94が雄部材82を外れた位置でスライドドア16と直接的に対向配置されて、それらストッパ突部94とスライドドア16の間に緩衝体96が配設された構造も採用され得る。
また、緩衝体96は、弾性体90と一体形成されていることが望ましいが、弾性体90とは別体とすることもできる。更に、緩衝体96を弾性体90とは別体で形成する場合には、例えば、緩衝体96が、スライドドア16や雄部材82に固着されて、ストッパ突部94に対する対向面を覆うように配設されていても良い。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、雄部材がボデー本体側に取り付けられると共に、雌部材がスライドドア側に取り付けられるようになっていても良い。
また、前記実施形態では、係止筒部36が筒状支持部材38に対して弾性体40で弾性連結されて、係止筒部36がセンターピラー18に対して弾性体40で弾性支持されるようにした構造が示されているが、例えば、係止突部が筒状支持部材に対して弾性体で弾性連結されて、係止突部がスライドドアに対して弾性体で弾性支持されるようになっていても良い。更に、係止突部又は係止筒部の何れか一方だけが、ボデー本体とスライドドアの何れかに弾性体で弾性支持されるようになっていても良いが、それら係止突部と係止筒部の両方が、ボデー本体とスライドドアの各一方に対して、それぞれ別の弾性体で弾性支持される構造も採用可能である。
また、係止突部は、係止筒部の内周面に対して、必ずしも略全周に亘って当接している必要はなく、周上の少なくとも一部で当接した状態で係止筒部に差し入れられるようになっていれば良い。
また、係止筒部において底壁部は必須ではなく、係止筒部の強度が充分に確保されると共に、係止筒部に対する係止突部の差入れ量が規定されれば、底壁部が省略された略円筒形状等も採用され得る。