図1は、本発明の第1の実施の形態に係る基板処理装置1の構成を示す図である。基板処理装置1は、略円板状の半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)に処理液を供給して基板9を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。
基板処理装置1は、基板保持部2と、第1処理液供給部31と、第2処理液供給部32と、第3処理液供給部33と、基板移動機構4(図10参照)と、基板回転機構5と、ガス供給部61と、吸引部62と、チャンバ7と、加熱部79と、これらの構成を制御する制御部11(図2参照)とを備える。図1では、基板回転機構5およびチャンバ7等を断面にて示している。基板保持部2は、基板9を保持可能であり、図1では、基板9を保持した状態を描いている。
チャンバ7は、チャンバ本体71と、チャンバ蓋部73と、蓋部移動機構74とを備える。チャンバ本体71およびチャンバ蓋部73は非磁性体により形成される。チャンバ本体71は、チャンバ底部711と、チャンバ側壁部712とを備える。チャンバ底部711は、上下方向を向く中心軸J1を中心とする略円板状であり、外周部に環状凹部714を有する。チャンバ側壁部712は、中心軸J1を中心とする略円筒状であり、チャンバ底部711の環状凹部714の外周に連続する。そして、環状凹部714とチャンバ側壁部712とに囲まれた空間が下部環状空間717となる。環状凹部714は、基板9の処理時に、基板保持部2に保持される基板9の外周縁が環状凹部714の幅の範囲内に収まるように形成される。このため、基板9の処理時には、基板9の外周縁の下方に下部環状空間717が位置する。チャンバ蓋部73は、中心軸J1を中心とする略円盤状であり、チャンバ本体71の上部開口を閉塞する。チャンバ蓋部73は、基板9の微細パターンが形成された一方の主面91(以下、「上面91」という。)と上下方向に対向し、チャンバ底部711は、基板9の他方の主面である下面92と上下方向に対向する。チャンバ底部711の内部には、加熱部79であるヒータが設けられる。
蓋部移動機構74は、チャンバ蓋部73を上下方向に移動する。基板処理装置1では、チャンバ蓋部73が上方に移動してチャンバ本体71から離間した状態にて、基板9のチャンバ7内への搬出入が行われる。また、チャンバ蓋部73がチャンバ側壁部712の上部に付勢されてチャンバ本体71の上部開口が閉塞されることにより、密閉された内部空間70が形成される。
チャンバ蓋部73は、下方に突出する蓋突出部731を備える。蓋突出部731は、中心軸J1を中心とする略円柱状であり、中心軸J1を中心とする筒状の外周面733を有する。チャンバ蓋部73によりチャンバ本体71の上部開口が閉塞されて内部空間70が形成された状態、すなわち、チャンバ7が密閉された状態では、蓋突出部731の外周面733とチャンバ側壁部712の内周面713との間の空間が、上部環状空間732となる。蓋突出部731の略円柱状の底面は、基板保持部2に保持された基板9よりも若干小さいため、基板9の処理時には、基板9の外周縁の上方に上部環状空間732が位置する。
チャンバ蓋部73の中央部には第1上部ノズル75が取り付けられ、第1上部ノズル75の周囲には、断面が円環状の第2上部ノズル78が設けられる。第1上部ノズル75には、上部切替部751を介して、第1処理液供給部31、第2処理液供給部32および第3処理液供給部33が接続される。第2上部ノズル78にはガス供給部61が接続される。
チャンバ底部711の中央部には、下部ノズル76が取り付けられる。下部ノズル76には、下部切替部761を介して、第1処理液供給部31および第2処理液供給部32が接続される。また、チャンバ底部711の外周部には、複数の下部排出部77が、中心軸J1を中心とする周方向に等ピッチにて設けられる。複数の下部排出部77には吸引部62が接続される。
図2は、制御部11の機能を示すブロック図である。図2では、制御部11に接続される各構成についても併せて描いている。図2に示すように、制御部11は、液供給制御部111と、圧力制御部112と、回転制御部113と、温度制御部114とを備える。
基板処理装置1では、液供給制御部111により第1処理液供給部31、上部切替部751および下部切替部761が制御されることにより、図1に示す第1上部ノズル75から基板9の上面91の中央部に向けて第1処理液が供給され、下部ノズル76から基板9の下面92の中央部に向けて第1処理液が供給される。また、液供給制御部111により第2処理液供給部32、上部切替部751および下部切替部761が制御されることにより、第1上部ノズル75から基板9の上面91の中央部に向けて第2処理液が供給され、下部ノズル76から基板9の下面92の中央部に向けて第2処理液が供給される。
さらに、液供給制御部111により第3処理液供給部33および上部切替部751が制御されることにより、第1上部ノズル75から基板9の上面91の中央部に向けて第3処理液が供給される。本実施の形態では、第1処理液は、フッ酸や水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液等のエッチング液であり、第2処理液は、純水(DIW:Deionized Water)である。また、第3処理液は、イソプロピルアルコール(IPA)である。なお、第1上部ノズル75および下部ノズル76からの処理液の供給を停止する際にも、上部切替部751および下部切替部761が制御される。
基板処理装置1では、図2に示す圧力制御部112によりガス供給部61が制御されることにより、図1に示す第2上部ノズル78からチャンバ7の内部空間70にガスが供給される。本実施の形態では、ガス供給部61により、窒素(N2)ガスがチャンバ7内に供給される。吸引部62は、複数の下部排出部77を介して吸引を行うことにより、チャンバ7の内部空間70のガスをチャンバ7外に排出する。このように、吸引部62および下部排出部77は、ガス排出部としての役割を果たす。
基板処理装置1では、圧力制御部112によりガス供給部61および吸引部62が制御されることにより、チャンバ7の内部空間70の圧力が制御される。具体的には、吸引部62による吸引が停止された状態で、ガス供給部61からチャンバ7内にガスが供給されることにより、チャンバ7の内部空間70の圧力が増大して常圧(大気圧)よりも高くなり、内部空間70が加圧雰囲気となる。また、ガス供給部61からのガスの供給が停止された状態で、吸引部62によりチャンバ7内のガスがチャンバ7外に排出されることにより、内部空間70の圧力が減少して常圧よりも低くなり、内部空間70が減圧雰囲気となる。
吸引部62は、また、複数の下部排出部77を介して吸引を行うことにより、第1処理液供給部31、第2処理液供給部32および第3処理液供給部33から基板9上に供給された処理液を、内部空間70の下部からチャンバ7外に排出する。このように、吸引部62および下部排出部77は、処理液排出部としての役割も果たす。
基板回転機構5は、いわゆる中空モータである。基板回転機構5は、環状のステータ部51と、環状のロータ部52とを備える。ロータ部52は、チャンバ7の内部空間70に配置される。ロータ部52の下部は、チャンバ本体71の下部環状空間717内に位置する。ロータ部52は、略円環状の永久磁石521を備える。永久磁石521の表面は、フッ素樹脂にてコーティングされている。ロータ部52には基板保持部2が取り付けられる。
ステータ部51は、チャンバ7外(すなわち、内部空間70の外側)においてロータ部52の周囲に配置される。本実施の形態では、ステータ部51は、チャンバ側壁部712の外周面に接触した状態で固定される。ステータ部51は、中心軸J1を中心とする周方向に配列される複数のコイル部を備える。
基板回転機構5では、ステータ部51に電流が供給されることにより、ステータ部51とロータ部52との間に、中心軸J1を中心とする回転力が発生する。これにより、ロータ部52が、基板9および基板保持部2と共に、中心軸J1を中心として水平状態で回転する。基板処理装置1では、ステータ部51に供給された電流によりステータ部51とロータ部52との間に働く磁力により、ロータ部52が、内部空間70において直接的にも間接的にもチャンバ7に接触することなく浮遊し、浮遊状態にて回転する。
ステータ部51への電流の供給が停止されると、ロータ部52は、永久磁石521とステータ部51のコア等の磁性体との間に働く磁力により、チャンバ側壁部712に向かって引き寄せられる。そして、ロータ部52の外周面の一部がチャンバ側壁部712の内周面713に接触し、チャンバ側壁部712を介してステータ部51により支持される。ロータ部52は、チャンバ底部711やチャンバ蓋部73に接触することなく静止する。
基板保持部2は、上述のように、ロータ部52に取り付けられてチャンバ7の内部空間70に配置される。基板9は、上面91を中心軸J1に略垂直に上側に向けた状態で基板保持部2により保持される。換言すれば、基板保持部2は、水平状態にて基板9を保持する。
図3は、基板保持部2の平面図である。図3では、基板保持部2を支持するチャック支持部26も併せて描いている。図1および図3に示すように、基板保持部2は、それぞれが基板9の外縁部を上下から挟んで保持する複数のチャック部21を備える。本実施の形態では、6つのチャック部21が、周方向に等角度間隔(60°間隔)にて配列される。チャック支持部26は、略円環板状の環状部261と、環状部261から径方向内方に突出する複数の突出部262とを備える。環状部261は、図1に示すように、ロータ部52の下端に固定される。複数の突出部262は、中心軸J1を中心とする径方向においてロータ部52よりも内側に位置し、各突出部262上には、チャック部21が取り付けられる。複数のチャック部21も、ロータ部52の径方向内側に配置される。また、各チャック部21の下部、および、チャック支持部26は、環状凹部714内に位置する。
図4は、1つのチャック部21を拡大して示す平面図である。他のチャック部21の構造も、図4に示すものと同様である。図4に示すように、各チャック部21は、基板9を下側から支持する1つの基板支持部22と、基板9を上側から押さえる2つの基板押さえ部23とを備える。チャック部21では、2つの基板押さえ部23が、基板支持部22の周方向における両側に、基板支持部22に隣接して配置される。
図5は、図4中のA−Aの位置にてチャック部21を切断した断面図である。図6は、図4中のB−Bの位置にてチャック部21を切断した断面図である。図5および図6では、チャック部21の断面よりも奥の部位、および、ロータ部52の断面を併せて描いている(図7および図8においても同様)。図4ないし図6に示すように、チャック部21は、フレーム24と、回転軸25とをさらに備える。図5および図6に示すように、フレーム24は、ロータ部52の内周面522の内側に配置される。フレーム24の下端部は、チャック支持部26を介してロータ部52の下端部に取り付けられる。回転軸25は、フレーム24の上端部に水平方向を向いて取り付けられる。
図5に示すように、基板支持部22は、支持部本体221と、第1ストッパ222とを備える。支持部本体221には、回転軸25が挿入される貫通穴が設けられており、支持部本体221は、回転軸25を中心として回転可能である。第1ストッパ222は、フレーム24の上部に設けられた上下方向を向くねじ穴に螺合することにより、フレーム24に取り付けられる。第1ストッパ222の上下方向の位置は、第1ストッパ222を回転させることにより容易に変更可能である。
支持部本体221は、第1基板当接部223と、第1錘部224とを有する。第1基板当接部223は、回転軸25よりも径方向内側に位置し、基板9の外縁部に下側から接する。第1錘部224は、回転軸25よりも下方に位置する。第1ストッパ222は、第1錘部224の上方に位置し、第1錘部224の上部に接する。これにより、第1錘部224が図5に示す状態よりも反時計回りに回転して上側に移動することが防止される。
基板支持部22では、支持部本体221の重心位置G1が、回転軸25よりも下方かつ径方向外側に位置する。したがって、基板9が第1基板当接部223上から取り除かれると、支持部本体221が図5に示す位置から時計回りに回転し、図7に示すように、重心位置G1が回転軸25の鉛直下方に位置する状態となる。以下の説明では、図5に示す支持部本体221の位置を「第1保持位置」と呼び、図7に示す支持部本体221の位置を「第1待機位置」と呼ぶ。
支持部本体221は、上述のように、回転軸25を中心として第1待機位置と第1保持位置との間で回転可能である。基板支持部22では、第1基板当接部223上に基板9が載置され、基板9の重量が第1基板当接部223に加わることにより、支持部本体221が、図7に示す第1待機位置から図5に示す第1保持位置へと回転して基板9を下側から支持する。また、第1基板当接部223上に基板9が載置された際の支持部本体221の移動は、第1錘部224が第1ストッパ222に接することにより制限される。
第1基板当接部223は、基板9の外縁部に接する面である第1当接面225を有する。第1当接面225は、図5に示すように、基板支持部22が第1保持位置に位置している状態では、径方向内方に向かうに従って下側へと向かう傾斜面である。正確には、第1当接面225は円錐面の一部である。第1当接面225は、また、図7に示すように、基板支持部22が第1待機位置に位置している状態では、略水平な円環面である。基板支持部22が第1待機位置に位置している状態における第1当接面225の径方向外側のエッジ226は、基板支持部22が第1保持位置に位置している状態におけるエッジ226よりも径方向外側に位置する。これにより、基板9の有無に関係なく基板支持部が第1保持位置にて固定される構造に比べて、基板9を載置可能な領域が大きくなるため、第1基板当接部223の第1当接面225への基板9の載置を容易とすることができる。
図6に示すように、基板押さえ部23は、押さえ部本体231を備える。押さえ部本体231には、回転軸25が挿入される貫通穴が設けられており、押さえ部本体231は、回転軸25を中心として回転可能である。上述の支持部本体221の回転中心を第1回転軸と呼び、押さえ部本体231の回転中心を第2回転軸と呼ぶと、基板支持部22の第1回転軸と、基板支持部22に近接して配置される基板押さえ部23の第2回転軸とは、同一の回転軸25である。
押さえ部本体231は、第2基板当接部233と、第2錘部234とを有する。第2基板当接部233は、回転軸25よりも径方向内側に位置し、基板9の外縁部に上側から接する。第2錘部234は、回転軸25よりも下方に位置する。
基板押さえ部23では、ロータ部52および基板保持部2が静止している状態では、押さえ部本体231は、その自重により図6の位置から回転し、図8に示すように、重心位置G2が回転軸25の鉛直下方に位置する。なお、第2錘部234の形状は、図8に示す状態で径方向内側のチャンバ底部711等に接触しない形状とされる。図8に示す状態では、第2基板当接部233は、基板9から上方に離間し、基板9の外周縁よりも径方向外側に位置する。以下の説明では、図6に示す押さえ部本体231の位置を「第2保持位置」と呼び、図8に示す押さえ部本体231の位置を「第2待機位置」と呼ぶ。
押さえ部本体231は、回転軸25を中心として第2待機位置と第2保持位置との間で回転可能である。基板処理装置1において、基板保持部2がロータ部52と共に回転すると、基板回転機構5による回転の遠心力が第2錘部234に作用することにより、押さえ部本体231が、図8に示す第2待機位置から図6に示す第2保持位置へと回転し、第2基板当接部233にて基板9を上側から押さえる。第2基板当接部233は、基板9の外縁部に接する面である第2当接面235を有する。第2当接面235は、図6に示すように、基板押さえ部23が第2保持位置に位置している状態では、径方向内方に向かうに従って上側へと向かう傾斜面である。
また、ロータ部52の回転が停止され、第2錘部234に作用する遠心力が解除されると、押さえ部本体231は第2保持位置から図6中における時計回りに回転する。そして、図8に示すように、第2錘部234の重心位置G2が回転軸25の鉛直下方に位置する状態で、押さえ部本体231の回転が停止され、押さえ部本体231が第2待機位置に位置する。
図9は、チャック部21が設けられない位置でロータ部52を切断した縦断面図である。図9では、基板保持部2(図3参照)に保持される基板9も併せて描いている。図9に示すように、ロータ部52は、上下方向に関して、基板9の上面91よりも上側の位置から基板9の下面92よりも下側の位置に亘って設けられる。ロータ部52の内周面522は、基板9の外周縁と径方向に対向して基板9の外周縁から飛散する処理液を受ける筒状の液受面523を含む。液受面523は、上下方向に関して基板9の上面91よりも上側に広がり、基板9の下面92よりも下側にも広がる。また、液受面523は、下方に向かうに従って漸次径方向外側に向かう傾斜面であり、基板9から受けた処理液を下方へと導く。本実施の形態では、図9に示す液受面523の断面は略円弧状である。なお、液受面523の断面は様々な形状であってよく、例えば、下方に向かうに従って径方向外側へと向かう直線状であってもよい。ロータ部52は、液受面523の上側にて径方向内側に向かって突出する環状突出部524を備える。
図10は、基板処理装置1を、中心軸J1を通るとともに図1とは異なる位置において切断した断面を示す図である。図10では、第1処理液供給部31、第2処理液供給部32、第3処理液供給部33、ガス供給部61および吸引部62等の構成の図示を省略し、基板移動機構4や蓋部移動機構74等の側面を図示する(図11,12,14,16,17においても同様)。
図10に示すように、基板移動機構4は、複数のリフトピン41と、リフトピン移動機構42と、複数のリフトピン回転機構43と、リフトピン支持部44とを備える。複数(本実施の形態では、4つ)のリフトピン41は、基板9の外縁部の上方において、中心軸J1を中心とする周方向に等角度間隔にて配列される。4つのリフトピン41は、周方向において、複数のチャック部21(図3参照)を避けて配置される。各リフトピン41は、チャンバ蓋部73を貫通する貫通孔に挿入されており、当該貫通孔は、ガスの流れが生じないようにシールされている。
各リフトピン41の下部は、チャンバ蓋部73から下向きに突出する。チャンバ7が密閉された状態において、複数のリフトピン41は、蓋突出部731の周囲の上部環状空間732に配置される。換言すれば、チャンバ蓋部73の蓋突出部731は、複数のリフトピン41よりも径方向内側に位置する。各リフトピン41は、先端部411(すなわち、下端部)から略水平方向に突出するフック部412を有する。図10に示す状態では、リフトピン41の先端部411およびフック部412は、基板保持部2(図1参照)に保持された基板9の上面91よりも上方に位置する。以下の説明では、図10に示すリフトピン41および先端部411の位置を「退避位置」と呼ぶ。
各リフトピン41の上部は、チャンバ蓋部73の上方にて、リフトピン回転機構43を介してリフトピン支持部44により支持される。リフトピン支持部44は、リフトピン移動機構42を介して蓋部移動機構74に取り付けられる。基板移動機構4では、リフトピン移動機構42が駆動されることにより、リフトピン支持部44が上下方向に移動する。これにより、チャンバ蓋部73が静止した状態で、複数のリフトピン41がチャンバ蓋部73に対して相対的に上下方向に移動する。
基板保持部2に保持された基板9がチャンバ7外へと搬出される際には、リフトピン移動機構42が駆動されることにより、複数のリフトピン41が、図10に示す退避位置から下方へと移動し、図11に示すように、複数のリフトピン41の先端部411が基板9の下面92よりも僅かに下方に位置する。以下の説明では、図11に示すリフトピン41および先端部411のチャンバ蓋部73に対する相対位置を「受け渡し位置」と呼ぶ。各リフトピン41の移動中は、リフトピン41のフック部412は、周方向を向いている。続いて、複数のリフトピン回転機構43が駆動され、複数のリフトピン41がそれぞれ90°回転してフック部412が径方向内側を向く。この状態では、リフトピン41のフック部412は、基板9の下面92よりも僅かに下方に位置しており、基板支持部22に支持されている基板9とは接触していない。そして、蓋部移動機構74によりチャンバ蓋部73が上昇し、これにより複数のリフトピン41も僅かに上方に移動することにより、複数のリフトピン41のフック部412が基板9の下面92に接し、基板保持部2から複数のリフトピン41への基板9の受け渡しが行われる。
基板移動機構4では、このように、リフトピン移動機構42により、複数のリフトピン41のそれぞれの先端部411が、図10に示す退避位置から図11に示す受け渡し位置へと下降し、受け渡し位置にて複数のリフトピン41と基板保持部2(図1参照)との間で基板9の受け渡しが行われる。複数のリフトピン41がそれぞれ90°回転して、フック部412が径方向内側を向いて基板9の下方に位置すると、蓋部移動機構74が駆動されることにより、基板移動機構4の各構成がチャンバ蓋部73と共に上方に移動する。このとき、ロータ部52は静止しており、基板押さえ部23は図8に示す第2待機位置に位置している。したがって、基板押さえ部23の第2基板当接部233は、基板9から離間して基板9の外周縁よりも径方向外側に位置しており、基板押さえ部23が基板9の上昇を阻害することはない。また、基板9が基板支持部22から離間することにより、基板支持部22は、図5に示す第1支持位置から図7に示す第1待機位置へと回転する。
基板処理装置1では、図12に示すように、チャンバ蓋部73がチャンバ本体71から上方に離間した状態で、複数のリフトピン41のフック部412上に保持される基板9が、図示省略のアームにより搬出される。以下の説明では、図12に示すチャンバ蓋部73の位置、すなわち、チャンバ本体71から上方に離間した位置を「開放位置」と呼ぶ。また、図10および図11におけるチャンバ蓋部73の位置、すなわち、チャンバ蓋部73がチャンバ本体71の開口を閉塞して内部空間70を形成する位置を「閉塞位置」と呼ぶ。
基板9がチャンバ7内へと搬入される際には、図示省略のアームに保持された基板9が、図12に示す開放位置に位置するチャンバ蓋部73へと近づき、複数のリフトピン41のフック部412上に基板9を載置する。続いて、蓋部移動機構74により、チャンバ蓋部73が下方へと移動して閉塞位置に位置する。チャンバ蓋部73の下降の過程において、図11に示すように、受け渡し位置に位置する複数のリフトピン41のフック部412から基板保持部2の複数の基板支持部22(図5参照)へと基板9が受け渡される。
そして、複数のリフトピン41のフック部412が基板9から離れると、複数のリフトピン回転機構43によりリフトピン41がそれぞれ90°回転する。これにより、複数のフック部412が基板9の下方から基板9の外周縁よりも径方向外側へと移動する。その後、リフトピン移動機構42により、複数のリフトピン41が上昇して図10に示す退避位置に位置する。すなわち、チャンバ蓋部73が閉塞位置に位置し、リフトピン41が退避位置に位置する場合に、リフトピン41は図10に示すように上部環状空間732に格納される。
次に、基板処理装置1における基板9の処理の流れを図13を参照しつつ説明する。基板処理装置1では、まず、図12に示す複数のリフトピン41により基板9を保持したチャンバ蓋部73が、開放位置から図11に示す閉塞位置へと下降する。これにより、チャンバ7の内部空間70が形成されるとともに、基板9が複数の基板支持部22(図5参照)により下側から支持される。内部空間70が形成されると、ガス供給部61および吸引部62が駆動され、内部空間70が常圧の窒素雰囲気となる。そして、複数のリフトピン41が退避位置へと上昇し、制御部11の回転制御部113(図2参照)により基板回転機構5が制御されることにより、図1に示すロータ部52、基板保持部2および基板9の回転が開始される(ステップS11)。基板保持部2では、回転の遠心力が作用することにより、押さえ部本体231が回転して、図6に示すように、第2基板当接部233にて基板9を上側から押さえる。これにより、基板9が基板保持部2により保持される(ステップS12)。
続いて、温度制御部114(図2参照)により加熱部79が制御されることにより、常圧の内部空間70において、基板9の加熱が所定の時間だけ行われる(ステップS13)。基板9の加熱が終了すると、液供給制御部111により第1処理液供給部31が制御されることにより、回転中の基板9の上面91上に、図1に示す第1上部ノズル75からエッチング液である第1処理液が連続的に供給される。基板9の上面91の中央部に供給された第1処理液は、基板9の回転により外周部へと拡がり、上面91全体が第1処理液により被覆される(ステップS14)。また、下部ノズル76から基板9の下面92の中央部にも第1処理液が供給され、基板9の回転により外周部へと拡がる。基板9の上面91上から流れ出る第1処理液、および、基板9の下面92から流れ出る第1処理液は、吸引部62により吸引され、下部排出部77を介してチャンバ7外へと排出される。
第1処理液による基板9の上面91の被覆が終了すると、圧力制御部112によりガス供給部61および吸引部62が制御されることにより、チャンバ7の内部空間70の圧力が増大し、常圧よりも高い所定の圧力(好ましくは、常圧よりも高く、かつ、常圧よりも約0.1MPa高い圧力以下)となる。また、第1処理液供給部31および基板回転機構5が制御され、第1処理液供給部31からの第1処理液の単位時間当たりの供給量(以下、「流量」という。)が減少するとともに基板9の回転数が減少する。チャンバ7の内部空間70が所定の加圧雰囲気となると、ステップS14よりも低い回転数にて回転中の基板9の上面91上に、第1処理液が、ステップS14よりも少ない流量にて連続的に供給され、所定の時間だけエッチング処理が行われる(ステップS15)。
ステップS15では、基板9の上面91が第1処理液にて被覆された後に、チャンバ7の内部空間70の圧力を増大させて加圧雰囲気とすることにより、第1処理液が、基板9上の微細パターンの間隙(以下、「パターン間隙」という。)に押し込まれる。その結果、第1処理液をパターン間隙に容易に進入させることができる。これにより、パターン間隙内のエッチング処理を適切に行うことができる。また、常圧下に比べて基板9上の第1処理液が気化することを抑制し、基板9の中央部から外周部へと向かうに従って基板9の温度が気化熱により低くなることを抑制することができる。その結果、第1処理液によるエッチング処理中の基板9の上面91の温度の均一性を向上することができ、基板9の上面91全体におけるエッチング処理の均一性を向上することができる。また、基板9の下面92全体におけるエッチング処理の均一性も向上することができる。
上述のように、ステップS15において基板9に対してエッチング処理を行う際の基板9の回転数は、ステップS14において基板9の上面91を第1処理液にて被覆する際の基板9の回転数よりも小さい。これにより、基板9からの第1処理液の気化がより抑制され、エッチング処理中の基板9の上面91の温度の均一性をさらに向上することができる。その結果、基板9の上面91全体におけるエッチング処理の均一性をより一層向上することができる。
続いて、圧力制御部112によりガス供給部61および吸引部62が制御されることにより、チャンバ7の内部空間70の圧力が常圧に戻される。そして、第1処理液供給部31からの第1処理液の供給が停止されるとともに、加熱部79による基板9の加熱も停止される。
次に、液供給制御部111により第2処理液供給部32が制御されることにより、回転中の基板9の上面91上に、第1上部ノズル75から純水である第2処理液が連続的に供給される。第1処理液にて被覆された上面91の中央部に供給された第2処理液は、基板9の回転により外周部へと拡がり、上面91上の第1処理液は、径方向外側へと移動して基板9の外周縁から外側へと飛散する。また、下部ノズル76から基板9の下面92の中央部に第2処理液が供給され、基板9の回転により外周部へと拡がる。そして、第1上部ノズル75および下部ノズル76からの第2処理液の供給が継続されることにより、基板9の上面91および下面92のリンス処理が所定の時間だけ行われる(ステップS16)。
基板9の上面91から飛散した第1処理液および第2処理液は、ロータ部52の液受面523(図9参照)により受けられて下方、すなわち、下部排出部77へと導かれる。そして、基板9の下面92からの第2処理液と共に、吸引部62により吸引され、下部排出部77を介してチャンバ7外へと排出される。
リンス処理が終了すると、第2処理液供給部32からの第2処理液の供給が停止され、液供給制御部111により第3処理液供給部33が制御されることにより、回転中の基板9の上面91上に、第1上部ノズル75からIPAである第3処理液が連続的に供給される。第2処理液にて被覆された上面91の中央部に供給された第3処理液は、第2処理液の液膜と基板9の上面91との間にて基板9の回転により外周部へと拡がり、基板9の上面91を被覆する。第2処理液の液膜は、基板9の上面91から離間し、第3処理液の液膜上に位置する。換言すれば、基板9の上面91上においてIPA置換処理が行われる(ステップS17)。
続いて、圧力制御部112によりガス供給部61および吸引部62が制御されることにより、チャンバ7の内部空間70が所定の加圧雰囲気となる(ステップS18)。内部空間70の圧力は、好ましくは、常圧よりも高く、かつ、常圧よりも約0.1MPa高い圧力以下である。これにより、第3処理液をパターン間隙に容易に進入させることができ、パターン間隙内の第2処理液を効率良く第3処理液に置換することができる。
第3処理液の液膜上の第2処理液は、基板9の回転により径方向外側へと移動し、基板9の外周縁から外側へと飛散する。基板9上から飛散した第2処理液は、ロータ部52の液受面523により受けられて下方へと導かれ、吸引部62により下部排出部77を介してチャンバ7外へと排出される。
内部空間70が加圧雰囲気となって所定の時間が経過すると、ガス供給部61および吸引部62が制御されることにより、チャンバ7の内部空間70の圧力が減少し、常圧よりも低い所定の圧力(好ましくは、常圧よりも低く、かつ、約15kPa以上の圧力)となる(ステップS19)。また、加熱部79が制御されることにより、基板9が加熱される。
そして、内部空間70が所定の減圧雰囲気となった状態で、基板回転機構5が制御されることにより、基板9の回転数が増大し、基板9が高速にて回転する。これにより、基板9の上面91の第3処理液が径方向外側へと移動し、基板9の外周縁から外側へと飛散する。基板9上から飛散した第3処理液も、ロータ部52の液受面523により受けられて下方へと導かれ、吸引部62により下部排出部77を介してチャンバ7外へと排出される。基板処理装置1では、基板9上から第3処理液が除去され、基板9の乾燥処理が終了する(ステップS20)。
ステップS20では、チャンバ7の内部空間70を減圧雰囲気とした状態で、基板9を回転して基板9の乾燥が行われるため、基板9の乾燥を常圧下に比べて短時間で行うことができる。また、基板9の減圧乾燥が行われている間、加熱部79による基板9の加熱が並行して行われることにより、基板9の乾燥を促進することができる。
基板9の乾燥が終了すると、基板9の回転が停止され(ステップS21)、チャンバ7の内部空間70が常圧に戻される。そして、基板保持部2から複数のリフトピン41へと基板9の受け渡しが行われ、チャンバ蓋部73が閉塞位置から開放位置へと上昇した後、図示省略のアームにより基板9が搬出される。基板9の処理の流れは、後述する第2ないし第4の実施の形態においても同様である。
以上に説明したように、基板処理装置1では、基板9を保持する基板保持部2、および、基板保持部2が取り付けられたロータ部52が、密閉空間であるチャンバ7の内部空間70に配置され、ロータ部52との間に回転力を発生するステータ部51が、チャンバ7外においてロータ部52の周囲に配置される。これにより、チャンバ外に基板を回転させるためのサーボモータ等を設ける装置に比べて、高い密閉性を有する内部空間70を容易に構成し、当該内部空間70内にて基板9を容易に回転させることができる。その結果、密閉された内部空間70における基板9の枚葉処理を容易に実現することができる。また、上記サーボモータ等をチャンバ底部の下方に設ける装置に比べて、チャンバ底部711に下部ノズル76等の様々な構造を容易に設けることができる。
基板処理装置1では、内部空間70にガスを供給するガス供給部61、内部空間70からガスを排出する吸引部62、および、内部空間70の圧力を制御する圧力制御部112が設けられることにより、様々な雰囲気(例えば、低酸素雰囲気)や様々な圧力下において基板9に対する処理を行うことができる。これにより、基板9の処理に要する時間を短くすることができるとともに、基板9に様々な種類の処理を行うことが可能となる。
上述のように、基板回転機構5では、ロータ部52が内部空間70において浮遊状態にて回転する。このため、ロータ部52を支持する構造を内部空間70に設ける必要がなく、基板処理装置1を小型化することができるとともに装置構造を簡素化することもできる。また、ロータ部52と支持構造との摩擦により粉塵等が発生することがないため、内部空間70の清浄性を向上することができる。さらに、支持構造による摩擦抵抗がロータ部52に作用しないため、ロータ部52の高速回転を容易に実現することができる。また、ロータ部52を、基板9の周囲に形成された環状空間(本実施の形態では、主に下部環状空間717)内に配置することにより、蓋突出部731の下面を基板9の上面91に近接させることができ、チャンバ底部711の上面を基板9の下面92に近接させることができる。これにより、内部空間70の容積が必要以上に大きくなることを防止し、内部空間70の加圧や減圧を効率良く行うことができる。
基板処理装置1では、上述のように、第1上部ノズル75がチャンバ蓋部73に取り付けられることにより、内部空間70に配置された基板9の上面91に容易に処理液を供給することができる。また、下部ノズル76がチャンバ底部711に取り付けられることにより、内部空間70に配置された基板9の下面92にも容易に処理液を供給することができる。
上述のように、基板処理装置1では、チャンバ蓋部73から下向きに突出する複数のリフトピン41により、基板保持部2との間で基板9の受け渡しが行われる。これにより、基板9の受け渡しのための機構をチャンバ7の下側に設ける必要がなくなるため、チャンバ7の下側に他の構造(例えば、超音波洗浄機構)を設ける際に、当該他の構造の配置の自由度を向上することができる。また、チャンバ蓋部73が、複数のリフトピン41よりも径方向内側において下方に突出する蓋突出部731を備えることにより、チャンバ7を密閉して内部空間70を形成した状態において、基板9上の処理空間を小さくすることができる。これにより、基板9の上面91とチャンバ蓋部73との間に処理液を満たして処理を行う場合に、当該処理を容易に行うことができる。また、基板9の処理時には、リフトピン41が上部環状空間717に格納されるため、基板9上から流れ出る処理液がリフトピン41に衝突して跳ね返り、基板9に付着してしまうことが防止される。
上述のように、基板保持部2では、各基板支持部22が、基板9が第1基板当接部223上に載置されることにより、第1待機位置から第1保持位置へと回転して基板9を下側から支持する。そして、各基板押さえ部23が、基板回転機構5による回転の遠心力により、第2待機位置から第2保持位置へと回転し、第2基板当接部233にて基板9を上側から押さえる。このように、基板保持部2では、基板支持部22および基板押さえ部23に機械的に接続されて基板支持部22および基板押さえ部23を駆動する駆動機構を設けることなく、密閉された内部空間70において基板9を容易に保持することができる。これにより、当該駆動機構を設ける場合に比べて、基板処理装置1を小型化することができるとともに装置構造を簡素化することができる。また、当該駆動機構がチャンバ外に設けられて基板保持部に接続される場合に比べて、チャンバ7の内部空間70の密閉性を向上することができる。
基板保持部2では、各チャック部21における基板支持部22の回転軸と基板押さえ部23の回転軸とが同一の回転軸25である。これにより、基板保持部2の構造を簡素化することができる。各チャック部21では、基板支持部22の周方向両側に隣接して2つの基板押さえ部23が設けられる。これにより、基板押さえ部23に作用する回転の遠心力が小さい場合、すなわち、ロータ部52の回転数が低い場合であっても、各チャック部21において基板9を上側から強い力で押さえ、基板9を強固に保持することができる。
基板支持部22では、支持部本体221が第1保持位置に位置している状態で、第1基板当接部223の第1当接面225が、径方向内方に向かうに従って下側へと向かう傾斜面である。第1当接面225上に載置された基板9は、自重により第1当接面225上を滑り、所定の位置へと移動する。これにより、上下方向および水平方向において、基板9を容易に位置決めすることができる。また、第1基板当接部223が、傾斜面である第1当接面225により基板9の外縁部に接することにより、第1基板当接部223と基板9との接触面積を小さくし、基板9が基板保持部2との接触により汚染される可能性を低減することができる。
基板押さえ部23では、押さえ部本体231が第2保持位置に位置している状態で、第2基板当接部233の第2当接面235が、径方向内方に向かうに従って上側へと向かう傾斜面である。第2基板当接部233が、傾斜面である第2当接面235により基板9の外縁部に接することにより、基板9の上面91に対する第2基板当接部233の接触が抑制される。その結果、基板9の上面91が基板保持部2との接触により汚染される可能性を低減することができる。
基板支持部22では、第1基板当接部223上に基板9が載置された際の第1錘部224の移動を制限する第1ストッパ222が設けられる。これにより、基板9の上下方向の位置を容易に決定することができる。また、第1ストッパ222の上下方向の位置を変更することにより、基板支持部22により支持される基板9の上下方向の位置を容易に変更することができる。基板押さえ部23では、押さえ部本体231の形状は、第2錘部234に作用する遠心力が解除された際に、第2錘部234等がチャンバ底部711等の周囲の構造に接触しない形状とされる。これにより、基板保持部2およびロータ部52の回転が停止している状態において、基板押さえ部23が周囲の構造と干渉することを防止することができる。なお、第2錘部234とチャンバ底部711等との接触や干渉を防止するために、第2錘部234に作用する遠心力が解除された際に、第2錘部234の回転範囲(移動範囲)を制限するストッパ(図示省略)が設けられてもよい。
基板処理装置1では、ロータ部52が、基板9の外周縁から飛散する処理液を受けて下方へと導く液受面523を備える。これにより、基板9から飛散した処理液が跳ね返って基板9に付着することを抑制することができる。また、基板9から飛散した処理液を、内部空間70の下部へと速やかに導き、チャンバ7外に迅速に排出することができる。基板処理装置1では、さらに、ロータ部52の液受面523が、基板9の上面91よりも上側に広がるとともに下方に向かうに従って径方向外側に向かうことにより、基板9から飛散した処理液が跳ね返ることをより一層抑制することができる。また、基板9から飛散した処理液をチャンバ7外にさらに迅速に排出することができる。
上述のように、ロータ部52では、液受面523の上側にて径方向内側に向かって突出する環状突出部524が設けられる。これにより、液受面523よりも上方に処理液が飛散することを抑制することができる。その結果、基板9から飛散した処理液が、チャンバ側壁部712の内周面713やチャンバ蓋部73の下面に付着することを抑制することができる。また、処理液が液受面523から基板9上まで跳ね返って基板9に付着することを抑制することもできる。
基板処理装置1では、図14に示すように、チャンバ蓋部73がチャンバ本体71から上方に離間した状態で、チャンバ蓋部73とチャンバ本体71との間に挿入されたスキャンノズル35から基板9の上面91に処理液が供給されてもよい。スキャンノズル35は、図示省略の処理液供給部に接続されて連続的に処理液を吐出しつつ、回転中の基板9の上方にて水平方向における往復移動を繰り返す。このように、基板処理装置1では、チャンバ7を開放した状態で、スキャンノズル35を用いた基板処理を行うこともできる。この場合も、基板9から飛散した処理液は、ロータ部52の液受面523により受けられて下方へと導かれる。これにより、基板9から飛散した処理液が跳ね返って基板9に付着することを抑制することができる。また、基板9から飛散した処理液を、チャンバ7外に迅速に排出することができる。なお、スキャンノズル35の上下方向の位置は、基板処理の種類等に応じて適宜変更されてよい。
図1に示す基板処理装置1では、所定枚数の基板9の処理(上述のステップS11〜S21に示す処理やスキャンノズル35による処理)が終了すると、チャンバ7内の洗浄処理が行われる。図15は、チャンバ7内の洗浄処理の流れを示す図である。基板処理装置1では、まず、図16に示すように、基板保持部2が基板9を保持しない状態で、チャンバ蓋部73によりチャンバ本体71の上部開口が閉塞されて内部空間70が形成される。図16では、基板保持部2等の側面を図示する(図17においても同様)。
続いて、制御部11の液供給制御部111(図2参照)により第2処理液供給部32が制御され、チャンバ7の内部空間70に純水である第2処理液320が供給される。基板処理装置1では、吸引部62(図1参照)が停止されているため、第2処理液供給部32からの第2処理液320は、チャンバ7の内部空間70に貯溜される(ステップS31)。
内部空間70において、ロータ部52および基板保持部2の全体が第2処理液320に浸漬すると、第2処理液供給部32からの第2処理液320の供給が停止される。このとき、基板保持部2およびロータ部52の上方の環状凹部732にはガスが存在している。そして、ロータ部52および基板保持部2の全体が第2処理液320に浸漬した状態で、回転制御部113(図2参照)により基板回転機構5が制御され、ロータ部52および基板保持部2が回転する。これにより、内部空間70の第2処理液320が攪拌され、チャンバ7内の洗浄処理が行われる(ステップS32)。
具体的には、ロータ部52および基板保持部2により攪拌された第2処理液320により、チャンバ7の内面に付着している他の処理液や異物が除去される。環状凹部732におけるチャンバ側壁部712の内周面713、チャンバ蓋部73の下面および蓋突出部731の外周面733も、攪拌された第2処理液320により洗浄される。なお、基板保持部2の回転は、ステップS31と並行して、あるいは、ステップS31よりも前に開始されてもよい。
ステップS32では、ロータ部52および基板保持部2は、周方向の一方向のみに回転してもよいが、好ましくは、周方向の一方向に回転した後、他方向に回転する。例えば、ロータ部52および基板保持部2が、反時計回りに所定時間だけ回転した後、時計回りに所定時間だけ回転する。
チャンバ7内の洗浄が終了すると、吸引部62により、内部空間70内の第2処理液320が、チャンバ7の内面から除去された異物等と共にチャンバ7外に排出される(ステップS33)。そして、ガス供給部61および吸引部62が制御されることにより、内部空間70が所定の減圧雰囲気となる(ステップS34)。内部空間70の圧力は、好ましくは、常圧よりも低く、かつ、約15kPa以上である。また、加熱部79が制御されることにより、チャンバ7の内面、および、チャンバ7内の各構成が加熱される。
その後、内部空間70が所定の減圧雰囲気となった状態で、基板回転機構5が制御されてロータ部52の回転数が増大し、ロータ部52および基板保持部2が高速にて回転する。これにより、ロータ部52および基板保持部2に付着している第2処理液320が周囲へと飛散し、内部空間70の下部へと導かれ、吸引部62によりチャンバ7外へと排出される。基板処理装置1では、チャンバ7の内面、および、チャンバ7内の各構成上から第2処理液が除去されて乾燥処理が終了する(ステップS35)。
乾燥処理が終了すると、ロータ部52および基板保持部2の回転が停止され、チャンバ7の内部空間70が常圧に戻されて、チャンバ7内の洗浄処理が終了する。ステップS31〜S35に示すチャンバ7内の洗浄処理の流れは、後述する第2ないし第4の実施の形態においても同様である。
以上に説明したように、基板処理装置1では、基板9を保持しない状態の基板保持部2を、チャンバ7の内部空間70に貯溜された第2処理液320中において回転させることにより、チャンバ7内を容易に洗浄することができる。また、上述のように、チャンバ7内の洗浄は、チャンバ7が密閉された状態で行われるため、洗浄中に第2処理液320等がチャンバ7外へと飛散することを防止することができる。
上述のように、ステップS32において、ロータ部52および基板保持部2を、周方向の一方向に回転した後、他方向に回転することにより、チャンバ7内の第2処理液320の流れの方向や速度を変更することができる。その結果、一様な流れでは除去が容易でない異物等も除去することができ、チャンバ7内の洗浄効率を向上することができる。
ステップS35では、チャンバ7の内部空間70を減圧雰囲気とした状態で、ロータ部52および基板保持部2を回転して乾燥処理が行われる。これにより、常圧下に比べて短時間で乾燥処理を行うことができる。また、チャンバ7内の減圧乾燥が行われている間、加熱部79による加熱が並行して行われることにより、チャンバ7内の乾燥を促進することができる。なお、チャンバ7内の乾燥が比較的短い時間内に完了するのであれば、常圧下で乾燥処理が行われてもよい。
基板処理装置1では、基板保持部2が取り付けられるロータ部52が、ステータ部51との間に働く磁力により、内部空間70において浮遊状態にて回転する。このため、上述のように、ロータ部52と支持構造との摩擦による粉塵等が発生することが防止され、また、ロータ部52の高速回転が容易に実現される。その結果、チャンバ7内の洗浄処理を効率的に行うことができる。
ステップS32では、ロータ部52および基板保持部2の回転は、必ずしも、ロータ部52および基板保持部2の全体が第2処理液320に浸漬した状態で行われる必要はない。基板処理装置1では、基板保持部2の少なくとも一部が第2処理液320に浸漬した状態で、基板保持部2が回転されることによりチャンバ7内の洗浄処理が行われる。この場合であっても、上記と同様に、チャンバ7内を容易に洗浄することができる。
ステップS32では、また、図17に示すように、第2処理液320が内部空間70を満たす状態でロータ部52および基板保持部2が回転されることにより、チャンバ7内の洗浄が行われてもよい。この場合、ステップS31において、例えば、チャンバ蓋部73がチャンバ本体71から僅かに上方に離間した状態で第2処理液320が供給され、チャンバ本体71の上部開口の極近傍まで第2処理液320が供給される。そして、第2処理液320の供給を停止し、チャンバ蓋部73によりチャンバ本体71の上部開口を閉塞することにより、内部空間70に第2処理液320が満たされる。第2処理液320が内部空間70を満たす状態で洗浄処理が行われることにより、チャンバ7の内面全体を、第2処理液320と確実に接触させて容易に洗浄することができる。
図18は、本発明の第2の実施の形態に係る基板処理装置1aの一部を拡大して示す断面図である。基板処理装置1aは、ロータ部52が保護壁525を備える点を除き、図1に示す基板処理装置1と同様の構成を備える。以下の説明では、対応する構成に同符号を付す。
保護壁525は、基板9および基板保持部2の複数のチャック部21と永久磁石521との間に配置される薄い筒状の部材である。保護壁525の上端526は、チャンバ蓋部73近傍に位置し、チャンバ蓋部73の下面と微小間隙を介して対向する。保護壁525の下端527は、チャンバ底部711近傍に位置し、チャンバ底部711の上面と微小間隙を介して対向する。保護壁525の下端527は、チャンバ側壁部712近傍に位置し、チャンバ側壁部712の内周面713と微小間隙を介して対向してもよい。すなわち、保護壁525の下端527は、チャンバ本体71の内面と微小間隙を介して対向する。保護壁525により、ロータ部52の永久磁石521が基板9から隔離される。
保護壁525の上下方向における中央部の内周面は、基板9の外周縁と径方向に対向して基板9の外周縁から飛散する処理液を受ける筒状の液受面523となっている。換言すれば、保護壁525の上端526と下端527との間に液受面523が設けられる。液受面523は、上述のように、上下方向に関して基板9の上面91よりも上側に広がり、基板9の下面92よりも下側にも広がる。また、液受面523は、下方に向かうに従って径方向外側に向かう傾斜面であり、基板9から受けた処理液を下部排出部77に向けて下方へと導く。
保護壁525の内周面のうち液受面523よりも上側の部位528は、上下方向に略平行に広がる円筒面である。保護壁525の内周面のうち永久磁石521よりも下側の部位529も、上下方向に略平行に広がる円筒面であり、液受面523の下端に連続して液受面523が基板9から受けた処理液を下方へと導く。
基板処理装置1aでは、上述のように、保護壁525により永久磁石521が基板9から隔離されるため、仮に基板9が破損したとしても、基板9の破片が、永久磁石521の表面上の被膜(すなわち、フッ素樹脂のコーティングにより形成された被膜)や永久磁石521に衝突することを防止することができる。その結果、基板9の破片による永久磁石521および上記被膜の損傷を防止することができる。
図19は、本発明の第3の実施の形態に係る基板処理装置1bの一部を拡大して示す断面図である。図19では、チャック部21が設けられる位置から周方向に僅かにずれた位置における断面を示す。また、チャック部21も二点鎖線にて併せて描いている。基板処理装置1bでは、図1に示すステータ部51およびロータ部52に代えて、ステータ部51およびロータ部52とは形状が異なるステータ部51aおよびロータ部52aが設けられる。また、チャンバ側壁部712の形状も図1に示すものと異なる。その他の構成は、図1に示す基板処理装置1とほぼ同様であり、以下の説明では、対応する構成に同符号を付す。
図19に示すように、ロータ部52aは環状であり、下面531と、内周面532と、上面533とを備える。下面531は、水平方向に広がる略円環面である。内周面532は、下面531の内周縁から中心軸J1(図1参照)に略平行に上方に広がる略円筒面である。上面533は、内周面532の上端縁から径方向外方かつ下方に広がり、下面531の外周縁に至る。上面533は、径方向外側に向かうに従って漸次下方に向かう滑らかな傾斜面である。ロータ部52aの上面533の内周縁、すなわち、内周面532の上端縁は、チャック部21が設けられる部位を除き、基板9の上面91の外周縁に接する。チャック部21が設けられる部位では、ロータ部52aの内周部に凹部が形成され、当該凹部にチャック部21が収容される。
チャンバ側壁部712は、ロータ部52aの上面533と所定の間隙(後述する環状の流路534)を挟んで離間した状態で上面533の上方を覆う環状の流路形成部715を備える。流路形成部715は、ロータ部52aの上面533と対向する下面716を有し、下面716は、ロータ部52aの上面533のおよそ全体に沿うように配置される。流路形成部715の下面716も、ロータ部52aの上面533と同様に、径方向外側に向かうに従って漸次下方に向かう滑らかな傾斜面である。流路形成部715の下面716とロータ部52aの上面533との間には、環状の流路534が形成される。ロータ部52aの上面533の内周縁と流路形成部715の下面716の内周縁との間には、流路534の上部開口であるスリット状の環状開口535が形成される。ステータ部51aは、ロータ部52aの径方向外側から流路形成部715の上側に亘って設けられてロータ部52aの上方を覆う。
基板処理装置1bでは、上述のように、ロータ部52aの上面533の内周縁が、基板9の上面91の外周縁に接しており、ロータ部52aの上面533が基板9の上面91に連続する。このため、基板9の回転により基板9の上面91上を径方向外方へと移動する処理液が、表面張力等により基板9の上面91の外周縁にて留まることなく、環状開口535を介して流路534へと滑らかに導かれ、流路534により内部空間70の下方に設けられた下部排出部77へと導かれる。
このように、基板9の上面91の外周縁から径方向外方へと移動する処理液が、流路534に流入して下部排出部77へと導かれることにより、基板9の上面91上から除去された処理液が跳ね返って基板9に付着することを抑制することができる。また、基板9上から除去された処理液を、内部空間70の下部からチャンバ7外に迅速に排出することができる。さらに、流路形成部715の下面716が、径方向外側に向かうに従って漸次下方に向かう滑らかな傾斜面であるため、処理液が跳ね返って基板9に付着することを、より一層抑制することができる。また、第3の実施の形態においては、第1の実施の形態における上部環状空間732に相当する部分の容積を低減することができる。その結果、内部空間70の容積を低減することができ、内部空間70の加圧や減圧を効率良く行うことができる。
基板処理装置1bでは、ロータ部52aの上面533の内周縁は、必ずしも、基板9の上面91の外周縁に接する必要はない。回転する基板9の上面91上の処理液が、表面張力等により基板9の上面91の外周縁にて留まることなく、流路534へと滑らかに導かれるのであれば、ロータ部52aの上面533の内周縁は、基板9の上面91の外周縁に近接して配置されてもよい。例えば、ロータ部52aの上面533の内周縁は、基板9の上面91の外周縁よりも僅かに径方向外側に離間して、あるいは、僅かに下方に離間して配置されてもよい。
なお、流路形成部715は、必ずしもチャンバ側壁部712に設けられる必要はなく、チャンバ蓋部73に設けられてもよい。あるいは、流路形成部715の径方向内側の部位がチャンバ蓋部73に設けられ、径方向外側の部位がチャンバ側壁部712に設けられてもよい。換言すれば、流路形成部715は、チャンバ7に設けられていればよい。
図20は、本発明の第4の実施の形態に係る基板処理装置1cを示す断面図である。図20では、図1に示すチャック部21およびロータ部52に代えて、チャック部21およびロータ部52とは構造が異なるチャック部21aおよびロータ部52bが設けられる。また、ステータ部51の下方に液回収部8が設けられており、チャンバ7の形状が図1に示すものと異なる。液回収部8は、後述するように、それぞれが処理液を一時的に貯溜可能な第1液受部81、第2液受部82および第3液受部83等を備える。その他の構成は、図1に示す基板処理装置1とほぼ同様であり、以下の説明では、対応する構成に同符号を付す。図20では、図1に示す第1処理液供給部31、第2処理液供給部32、第3処理液供給部33、ガス供給部61および蓋部移動機構74等の構成の図示を省略し、基板保持部2等は側面を図示する(図21および図22においても同様)。
基板処理装置1cでは、基板保持部2の複数のチャック部21aが、略円筒状のロータ部52bの下側に取り付けられる。複数のチャック部21aは、基板9の外縁部を上下から挟持する。複数のチャック部21aにより保持される基板9は、ロータ部52bの下方に配置され、基板9の上面91は、ロータ部52bの下端よりも下側に位置する。なお、ロータ部52bには、上述の液受面523(図9参照)は設けられない。
チャンバ蓋部73によりチャンバ本体71の上部開口が閉塞されて内部空間70が形成された状態では、チャンバ蓋部73の略円柱状の蓋突出部731が、ロータ部52bの略円筒状の内周面522よりも径方向内側に位置する。蓋突出部731は、基板保持部2および基板9の上方に位置し、蓋突出部731の外周面733が、ロータ部52の内周面522と近接しつつ径方向に対向する。
チャンバ底部711は、基板9の下面92に上下方向に対向する略円板状の中央部711aと、中央部711aの周囲にて中央部711aよりも下方に位置する段差部711bとを備える。中央部711aに設けられた下部ノズル76の周囲には、ガス供給部61(図1参照)に接続される断面が円環状の下部ノズル78aが設けられる。段差部711bは、基板回転機構5のステータ部51の下方に位置する。チャンバ側壁部712は、チャンバ底部711の段差部711bの外周縁から上方に広がる。これにより、チャンバ7の内部空間70がステータ部51の下部に広がる。
基板処理装置1cでは、チャンバ底部711の段差部711bとチャンバ側壁部712とにより、基板9から飛散する処理液を受ける環状の第1液受部81が形成される。第1液受部81は、内部空間70においてステータ部51の下方に位置し、基板9の周囲から下側へと広がる。第1液受部81は、基板9の周囲に位置する環状の開口(以下、「液受開口80」という)を有する。基板9から飛散した処理液は、液受開口80を介して第1液受部81内へと移動し、第1液受部81により受けられて一時的に貯溜される。
第1液受部81の底部には、第1液受排出部811が設けられ、第1回収部812が第1液受排出部811を介して第1液受部81に接続される。第1液受部81にて受けられた処理液は、第1液受部81内に一時的に貯溜され、第1回収部812により吸引されることにより、チャンバ7外へと排出されて回収される。なお、基板9の下面92等に供給されてチャンバ底部711の中央部711aに落下した処理液は、中央部711aに設けられた下部排出部77を介して吸引部62により吸引される。
第1液受部81の内部には、基板9から飛散する処理液を受ける他の液受部である第2液受部82が設けられる。さらに、第2液受部82の内部には、基板9から飛散する処理液を受ける他の液受部である第3液受部83が設けられる。第2液受部82および第3液受部83はそれぞれ、内部空間70においてステータ部51の下方に位置する環状の部材である。第2液受部82の上面は、基板9から飛散する処理液を受けて下方に誘導するための傾斜面(円錐面)となっており、第3液受部83の上面も同様に、基板9から飛散する処理液を受けて下方に誘導するための傾斜面(円錐面)となっている。第2液受部82および第3液受部83の上記傾斜面は、上下方向に重なるように配置される。第2液受部82の底部には、第2液受排出部821が設けられ、第2回収部822が第2液受排出部821を介して第2液受部82に接続される。また、第3液受部83の底部には、第3液受排出部831が設けられ、第3回収部832が第3液受排出部831を介して第3液受部83に接続される。さらに、第2液受部82には、液受部昇降機構823が接続され、第3液受部83には、他の液受部昇降機構833が接続される。液受部昇降機構823,833により、第2液受部82および第3液受部83は、互いの上面が接触しないように上下方向に移動する。
液回収部8では、図20に示す状態(以下、「第1液受状態」という。)から、液受部昇降機構823が駆動されることにより、第3液受部83が移動することなく、第2液受部82が図21に示す位置まで上昇する。以下、図21に示す液回収部8の状態を「第2液受状態」という。図21では、吸引部62の図示を省略している(図22においても同様)。第2液受状態では、第2液受部82が、第1液受部81の内部において基板9の周囲から下側へと広がっており、基板9から飛散した処理液は、液受開口80を介して第2液受部82内へと移動し、第2液受部82により受けられて一時的に貯溜される。第2液受部82にて受けられた処理液は、第2回収部822により吸引されることにより、チャンバ7外へと排出されて回収される。
また、液回収部8では、図21に示す第2液受状態から、液受部昇降機構833が駆動されることにより、第3液受部83が図22に示す位置まで上昇する。以下、図22に示す液回収部8の状態を「第3液受状態」という。第3液受状態では、第3液受部83が、第2液受部82の内部において基板9の周囲から下側へと広がっており、基板9から飛散した処理液は、液受開口80を介して第3液受部83内へと移動し、第3液受部83により受けられて一時的に貯溜される。第3液受部83にて受けられた処理液は、第3回収部832により吸引されることにより、チャンバ7外へと排出されて回収される。
このように、基板処理装置1cでは、液受部昇降機構823,833により、第2液受部82および第3液受部83が上下方向に移動されることにより、第1液受部81による処理液の受液と、第2液受部82による処理液の受液と、第3液受部83による処理液の受液とが選択的に切り替えられる。そして、第1液受部81、第2液受部82および第3液受部83にてそれぞれ受けられた処理液は、処理液排出部である第1回収部812、第2回収部822および第3回収部832によりチャンバ7外に排出される。
上述のステップS11〜S21に示す基板処理では、例えば、ステップS15のエッチング処理とステップS16のリンス処理との間において、液回収部8を図21に示す第2液受状態として、基板9の回転数が増大される。これにより、エッチング液である第1処理液が基板9上から飛散し、第2液受部82により受けられて第2回収部822により回収される。第2回収部822により回収された第1処理液は、不純物の除去等が行われた後、基板処理装置1cにおける基板処理等に再利用される。
続いて、液受部昇降機構833が駆動されて液回収部8が図22に示す第3液受状態とされた後、ステップS16のリンス処理が行われることにより、純水である第2処理液が、基板9上に残っている第1処理液と共に基板9上から飛散し、第3液受部83により受けられて第3回収部832により回収される。また、ステップS17,S18において、基板9上から飛散した第2処理液も、第3液受部83により受けられて第3回収部832により回収される。第3回収部832により回収された処理液は、廃棄される。
次に、液受部昇降機構823,833が駆動されて液回収部8が第1液受状態とされた後、ステップS20の乾燥処理が行われることにより、IPAである第3処理液が基板9上から飛散し、第1液受部81により受けられて第1回収部812により回収される。第1回収部812により回収された第3処理液は、不純物の除去等が行われた後、基板処理装置1cにおける基板処理等に再利用される。
以上に説明したように、基板処理装置1cでは、基板保持部2に保持される基板9の上面91が、ロータ部52bの下端よりも下側に位置する。これにより、基板9上から飛散する処理液が、ロータ部52bに衝突することを抑制することができる。その結果、ロータ部52bから基板9への処理液の跳ね返りを抑制しつつ処理液をチャンバ7外に容易に排出することができる。
上述のように、基板処理装置1cでは、チャンバ7の内部空間70にてステータ部51の下方に位置する第1液受部81が設けられ、第1液受部81にて受けられて一時的に貯溜された処理液が、第1回収部812によりチャンバ7外に排出される。これにより、チャンバ7が密閉された状態において多量の処理液を使用する処理が行われた場合であっても、基板9から飛散した処理液を基板9から離れた位置にて一時的に貯溜し、当該処理液が基板9に再付着することを防止しつつ処理液をチャンバ7外に容易に排出することができる。
また、液回収部8では、第1液受部81の内部に第2液受部82が設けられ、第2液受部82を上下方向に移動することにより、第1液受部81による処理液の受液と、第2液受部82による処理液の受液とが、選択的に切り替えられる。これにより、複数種類の処理液を個別に回収することが可能となり、処理液の回収効率を向上することができる。さらに、第2液受部82の内部に第3液受部83が設けられ、第3液受部83を第2液受部82とは独立して上下方向に移動可能とすることにより、第1液受部81による処理液の受液と、第2液受部82による処理液の受液と、第3液受部83による処理液の受液とが、選択的に切り替えられる。その結果、処理液の回収効率をより一層向上することができる。液回収部8では、第1液受部81、第2液受部82および第3液受部83が上下方向に互いに重なり合う(すなわち、平面視において重なる)ように配置され、液回収部8全体は、ステータ部51の下方に配置される。このように、ステータ部51の下方の空間を効率良く利用することにより、基板処理装置1cを小型化することができる。
基板処理装置1cでは、チャンバ蓋部73の蓋突出部731がロータ部52bの内周面522よりも径方向内側に位置し、蓋突出部731の外周面733が、ロータ部52の内周面522と径方向に対向する。これにより、仮に基板9が破損したとしても、基板9の破片が、広い範囲に飛散することを抑制することができる。なお、蓋突出部731は、中心軸J1を中心とする略円筒状であってもよい。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、基板回転機構5のステータ部51,51aおよびロータ部52,52a,52bの形状および構造は、様々に変更されてよい。基板保持部2のチャック部21,21aの構造や、ロータ部への取付位置も、様々に変更されてよい。例えば、チャック部がロータ部の上部に取り付けられ、基板9の下面92が、ロータ部の上端よりも上側に位置する状態で、基板9が基板保持部2に保持されてもよい。
図4に示すチャック部21では、基板支持部22の回転軸と基板押さえ部23の回転軸とは、必ずしも同一の回転軸である必要はなく、基板支持部22と各基板押さえ部23とが、個別に回転軸を有していてもよい。また、基板支持部22に隣接して1つ、または、3つ以上の基板押さえ部23が設けられてもよい。
上述のロータ部は、必ずしも浮遊状態にて回転する必要はなく、チャンバ7の内部空間70にロータ部を機械的に支持するガイド等の構造が設けられ、当該ガイドに沿ってロータ部が回転してもよい。
図9に示すロータ部52では、基板9からの処理液が、液受面523よりも上方にあまり飛散しないのであれば、必ずしも環状突出部524が設けられる必要はない。また、液受面523は、必ずしも下方に向かうに従って径方向外側に向かう傾斜面である必要はなく、例えば、上下方向に略平行な円筒面であってもよい。図19に示す基板処理装置1bでは、ロータ部52aと流路形成部715との間に流路534が形成されるのであれば、流路形成部715の下面716は、必ずしも径方向外側に向かうに従って漸次下方に向かう滑らかな傾斜面である必要はなく、様々な形状であってよい。
図20に示す基板処理装置1cでは、複数種類の処理液を個別に回収する必要がない場合、第2液受部82および第3液受部83は省略されてもよい。また、チャンバ7が密閉された状態において多量の処理液を使用する処理が行われた場合であっても、基板9から飛散した処理液が基板9に再付着することを抑制しつつチャンバ7外に排出することができるのであれば、第1液受部81も省略されてよい。
上述の基板処理装置では、チャンバ7に対する基板9の搬出入は、上述の基板移動機構4以外の様々な機構により行われてよい。また、チャンバ蓋部73では、蓋突出部731は必ずしも設けられなくてよい。
ステップS11〜S21の処理では、ステップS13における加熱部79による基板9の加熱は、チャンバ7の内部空間70が減圧雰囲気となった状態で行われてもよい。これにより、基板9から周囲のガスへの熱の移動が抑制され、基板9を常圧下に比べて短時間で加熱することができる。また、加熱部79はヒータには限定されない。例えば、チャンバ底部711およびチャンバ蓋部73が、石英等の透光性を有する部材により形成され、チャンバ底部711およびチャンバ蓋部73を介して光照射部から基板9に光が照射されることにより、基板9が加熱されてもよい。
ステップS14における第1処理液による基板9の上面91の被覆は、チャンバ7の内部空間70が減圧雰囲気となった状態で行われてもよい。これにより、第1処理液が上面91上にて中央部から外周部へと迅速に拡がるため、第1処理液による基板9の上面91の被覆を常圧下に比べて短時間で行うことができる。また、基板9上のパターン間隙に存在するガスの量が常圧下に比べて減少するため、基板9の上面91上に供給された第1処理液がパターン間隙に容易に進入する。これにより、パターン間隙内のエッチング処理をさらに適切に行うことができる。
ステップS16では、チャンバ7の内部空間70を減圧雰囲気とした状態で、第2処理液による基板9の上面91の被覆が行われた後、内部空間70の圧力が常圧に戻されてもよい。これにより、第2処理液が上面91上にて中央部から外周部へと迅速に拡がり、第1処理液の第2処理液への置換、および、第2処理液による基板9の上面91の被覆を常圧下に比べて短時間で行うことができる。また、第2処理液による基板9の上面91の被覆後に内部空間70の圧力を増大させることにより、第2処理液がパターン間隙に押し込まれる。その結果、第2処理液をパターン間隙に容易に進入させることができ、第1処理液の第2処理液への置換をより確実に行うことができる。
ステップS16では、チャンバ7の内部空間70を加圧雰囲気とした状態で、基板9のリンス処理が行われてもよい。これにより、常圧下に比べて基板9上の第2処理液が気化することを抑制し、基板9の中央部から外周部へと向かうに従って基板9の温度が気化熱により低くなることを抑制することができる。その結果、第2処理液によるリンス処理において、基板9の上面91の温度の均一性を向上することができ、基板9の上面91全体におけるリンス処理の均一性を向上することができる。また、基板9の下面92全体におけるリンス処理の均一性も向上することができる。
ステップS17における第3処理液による基板9の上面91の被覆は、チャンバ7の内部空間70が減圧雰囲気となった状態で行われてもよい。これにより、第3処理液が上面91上にて中央部から外周部へと迅速に拡がるため、第3処理液による基板9の上面91の被覆を常圧下に比べて短時間で行うことができる。
基板9に対する処理では、基板9の下面92に対する処理液の供給は必ずしも行われなくてもよい。また、上述の基板処理装置では、基板9に対して様々な処理液が供給され、ステップS11〜S21に示す処理以外の様々な処理が行われてよい。また、チャンバ7の内部空間70の雰囲気も様々に変更されてよい。
ステップS31〜S35では、純水以外の処理液(例えば、希塩酸や過酸化水素水)がチャンバ7の内部空間70に貯溜され、当該処理液によりチャンバ7内の洗浄処理が行われてもよい。また、純水以外の処理液による洗浄処理の後、純水を処理液として、ステップS31〜S35の洗浄処理が再度行われてもよい。さらに、ステップS31〜S35にて使用される処理液は、図1に示す第1処理液供給部31や第3処理液供給部33により第1上部ノズル75を介してチャンバ7内に供給されてもよく、あるいは、図14に示すスキャンノズル35や他のノズルを介してチャンバ7内に供給されてもよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。