自動車用自動変速機を構成する回転軸の回転速度と、この回転軸により伝達しているトルクとを測定し、その測定結果を当該変速機の変速制御又はエンジンの出力制御を行う為の情報として利用する事が、従来から行われている。一方、前記トルクを測定する為に利用可能な装置として従来から、トルクを伝達している回転軸の弾性的な捩れ変形量を1対のセンサの出力信号の位相差に変換し、この位相差に基づいて前記トルクを測定する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この様な従来構造に就いて、図3を参照しつつ、以下に簡単に説明する。
この図3に示した従来構造の第1例の場合、対象となる回転軸1の軸方向2箇所位置に、1対のエンコーダ2、2を外嵌固定している。被検出部である、これら両エンコーダ2、2の外周面の磁気特性は、円周方向に関して交互に且つ等ピッチで変化している。又、これら両外周面の磁気特性が円周方向に関して変化するピッチは、これら両外周面同士で互いに等しくなっている。又、これら両外周面に、1対のセンサ3、3の検出部を対向させた状態で、これら両センサ3、3を、図示しないハウジングに支持している。これら両センサ3、3は、それぞれ自身の検出部を対向させた部分の磁気特性の変化に対応して、その出力信号を変化させるものである。
上述の様な前記両センサ3、3の出力信号は、前記回転軸1と共に前記両エンコーダ2、2が回転する事に伴い、それぞれ周期的に変化する。この変化の周波数(及び周期)は、前記回転軸1の回転速度に見合った値をとる。この為、この周波数(又は周期)に基づいて、この回転速度を求められる。又、前記回転軸1によりトルクを伝達する事に伴って、この回転軸1が弾性的に捩れ変形すると、前記両エンコーダ2、2が回転方向に相対変位する。この結果、前記両センサ3、3の出力信号同士の間の位相差比(=位相差/1周期)が変化する。又、この位相差比は、前記トルク(前記回転軸1の弾性的な捩れ変形量)に見合った値をとる。この為、この位相差比に基づいて、前記トルクを求められる。
ところが、上述した様な従来構造の第1例を、自動車用自動変速機に組み込んで使用する場合には、測定対象となる回転軸1の捩れ剛性が高い為、この回転軸1の弾性的な捩れ変形量を十分に確保する事が難しく、トルク測定の分解能が低くなると言う問題がある。又、軸方向に離隔して設置した2個のセンサ3、3を使用する為、これら両センサ3、3から引き出された2本のハーネス4、4の配設が難しくなると言う問題がある。又、ハウジングには、前記両センサ3、3毎の支持固定部を、高精度な相対位置関係で設ける必要がある為、前記ハウジングの加工が難しくなると言う問題がある。
一方、前記特許文献1には、図4に示す様に、回転軸1の軸方向2箇所位置に固定した1対のエンコーダ2a、2aの被検出部を、軸方向中央部に向け延出させると共に、この軸方向中央部に配置した1個のセンサユニット5を構成する1対のセンサの検出部を、前記両エンコーダ2a、2aの被検出部に対向させる構造が記載されている。但し、この従来構造の第2例の場合も、自動車用自動変速機に組み込んで使用する場合には、対象となる回転軸1の捩れ剛性が高い為、この回転軸1の弾性的な捩れ変形量を十分に確保する事が難しい。従って、上述した従来構造の第2例によっても、トルク測定の分解能が低くなると言った問題を解消できない。
又、特許文献2には、それぞれの外周面にエンコーダを固定した1対の回転軸を、同一直線上に配置すると共に、これら両回転軸の端部を、これら両回転軸よりも弾性的に捩れ変形し易いトーションバーの両端部に連結した構造が記載されている。この特許文献2に記載された従来構造の第3例の場合には、トルクの伝達時に生じる前記トーションバーの弾性的な捩れ変形に基づいて、前記両エンコーダの回転方向の相対変位量を多くできる。この為、その分だけ、トルク測定の分解能を向上させる事ができる。但し、この様な従来構造の第3例を、自動車用自動変速機のカウンタ軸に適用する場合には、トルク測定の分解能を十分に向上させる事が難しい。即ち、このカウンタ軸の軸方向2箇所位置には、入力歯車と出力歯車とが固定されており、このカウンタ軸のうちで、トルクの伝達時に弾性的に捩れ変形する部分は、前記両歯車同士の間部分のみとなる。この為、この様なカウンタ軸に、上述の様な従来構造の第3例を適用する場合には、前記トーションバーを、前記両歯車同士の間に設置する必要がある。従って、このトーションバーの軸方向寸法は、前記両歯車同士の軸方向間隔以下となる。ところが、前記カウンタ軸の場合には、これら両歯車同士の軸方向間隔が狭い為、前記トーションバーの軸方向寸法を十分に長くできない。従って、トルクの伝達時に生じる、前記トーションバーの弾性的な捩れ変形量を十分に確保できない。この結果、トルク測定の分解能を十分に向上させる事が難しい。
[未公開の先発明に係る構造の第1例]
図5〜14は、上述の様な事情に鑑みて先に考えた、トルク測定装置付回転伝達装置の第1例(特願2013−132497、特願2013−183072)を示している。この先発明に係るトルク測定装置付回転伝達装置は、前輪駆動車、又は、前輪駆動車と同様の原動機及び変速機配置を採用する四輪駆動車等、所謂横置きエンジン(トランスバースエンジン)を搭載した自動車用の自動変速機のカウンタ軸及びカウンタギヤ部分に組み込んで使用する。この様な先発明に係るトルク測定装置付回転伝達装置の第1例は、図示しないハウジング(ミッションケース)と、カウンタ軸として機能する回転軸ユニット6と、それぞれがカウンタギヤとして機能する、第一歯車である入力歯車7及び第二歯車である出力歯車8と、連結軸9と、第一エンコーダ10と、第二エンコーダ11と、1個のセンサユニット12とを備える。尚、図11は、図10の簡略図である為、一部の部品及び部位の図示や符号の記入を省略している。
前記回転軸ユニット6は、中空状の第一回転軸である入力軸13と、中空状の第二回転軸である出力軸14と、中空状のトーションバー15とを備える。このうちの入力軸13及び出力軸14は、それぞれ炭素鋼の如き合金鋼により円筒状に造られたもので、互いに同心に配置されると共に、互いの一端部同士を相対回転可能に組み合わされている。尚、本明細書及び特許請求の範囲中、これら入力軸13(第一回転軸)及び出力軸14(第二回転軸)のそれぞれに関して、一端部とは、互いに近い側の端部を言い、他端部とは、互いに遠い側の端部を言う。
図示の構造の場合には、前記入力軸13と前記出力軸14との一端部同士を相対回転可能に組み合わせる為に、この入力軸13の一端部に入力側組み合わせ用筒部16を設けると共に、前記出力軸14の一端部に、この入力側組み合わせ用筒部16よりも大径の、出力側組み合わせ用筒部17を設けている。そして、この出力側組み合わせ用筒部17の内径側に、前記入力側組み合わせ用筒部16を挿入している。又、この状態で、これら両組み合わせ用筒部16、17の互いに対向する円筒状の周面同士の間に、ラジアルニードル軸受18を設置している。これと共に、前記入力側組み合わせ用筒部16の外周面の基端部に設けた段差面19と、この段差面19と対向する前記出力側組み合わせ用筒部17の先端面20との間に、スラスト滑り軸受である、円輪状のスラストワッシャ21を挟持している。そして、この様な構成を採用する事により、前記入力軸13と前記出力軸14との一端部同士を、相対回転可能に、且つ、軸方向に関して互いに近づき合う方向の変位を阻止した状態で組み合わせている。
又、前記スラストワッシャ21は、図13の(A)に詳示する様に、円輪状の本体部分の円周方向等間隔の複数箇所に、径方向に長いスリット22、22を、前記本体部分の内周縁に開口する状態で形成している。これと共に、この本体部分の外周縁に、この外周縁から軸方向に直角に折れ曲がった補強用円筒部23を、全周に亙り設けている。この様なスラストワッシャ21の補強用円筒部23は、この補強用円筒部23の先端縁を前記入力軸13の他端側に向けた状態で、前記入力側組み合わせ用筒部16の基端部に、径方向に関する大きながたつきなく外嵌されている。これと共に、前記スラストワッシャ21の本体部分の径方向中間部は、前記段差面19と前記先端面20との間に挟持されている。又、この状態で、前記各スリット22、22は、前記段差面19と前記先端面20との間部分を径方向両側から挟む位置に存在する1対の空間である、前記ラジアルニードル軸受18を設置した環状空間と、前記出力側組合せ用筒部17の外径側に存在する空間とを連通している。即ち、この様な連通状態を実現する為に、前記各スリット22、22の内接円の直径(前記本体部分の内径)を前記先端面20の内周縁の直径よりも小さくすると共に、前記各スリット22、22の外接円の直径を、前記先端面20の外周縁の直径よりも大きくしている。
又、前記トーションバー15は、十分なばね性を有する鋼材により、中空状である円管状に造られたもので、前記入力軸13及び出力軸14の内径側に、これら入力軸13及び出力軸14と同心に配置されている。又、この状態で、前記トーションバー15は、一端部(図9〜11の右端部)を前記入力軸13に、他端部(図9〜11の左端部)を前記出力軸14に、それぞれ相対回転不能に連結されている。この様な連結状態を実現する為に、図示の構造の場合には、前記トーションバー15の外径寸法を、中間部に比べて両端部で少しだけ大きくすると共に、これら両端部の外周面を、それぞれ前記入力軸13の内周面の他端寄り部分と、前記出力軸14の内周面の他端寄り部分とに、相対回転不能に係合させている。具体的には、これら両係合部を、それぞれインボリュートスプライン係合部24a、24b(雄、雌両インボリュートスプライン部同士を周方向のがたつきなく係合させて成る係合部)としている。つまり、前記トーションバー15の一端部外周面に設けた第一雄インボリュートスプライン部50を、前記入力軸13の他半部内周面に設けた第一雌インボリュートスプライン部51に、周方向のがたつきなく係合させる事で、前記インボリュートスプライン係合部24aを構成している。これと共に、前記トーションバー15の他端部外周面に設けた第二雄インボリュートスプライン部52を、前記出力軸14の他端部内周面に設けた第二雌インボリュートスプライン部53に、周方向のがたつきなく係合させる事で、前記インボリュートスプライン係合部24bを構成している。尚、これら両係合部として、キー係合部等の、他の回転防止構造を持った係合部を採用する事もできる。又、この状態で、前記入力軸13及び出力軸14の内周面に係止した1対の止め輪25a、25bにより、前記トーションバー15を軸方向両側から挟持する事で、このトーションバー15の、前記入力軸13及び前記出力軸14に対する軸方向変位を阻止している。
又、図示の構造の場合、前記トーションバー15の軸方向中間部のうち、前記両インボリュートスプライン係合部24a、24b同士の間に挟まれた部分を、トルクを伝達する際に弾性的に捩れ変形する、ばね部65としている。そして、このばね部65の軸方向寸法Lを、次述する入力歯車7と出力歯車8との軸方向間隔Wよりも大きく(L>Wに)している。尚、図示の例では、LをWの4倍強の大きさ(L>4W)としている。
又、前記入力歯車7は、炭素鋼の如き合金鋼製のはすば歯車であり、前記入力軸13の中間部に外嵌固定されている。これら入力歯車7の内周面と入力軸13の外周面との嵌合部は、同心性を確保する為の円筒面嵌合部26a(外径側、内径側両円筒面同士を圧入嵌合させて成る嵌合部)と、相対回転を防止する為のインボリュートスプライン係合部24cとを、軸方向に隣接配置する事により構成されている。又、前記入力軸13に対する前記入力歯車7の軸方向の位置決めは、この入力軸13の外周面の中間部一端寄り部分に形成した段差面27に、前記入力歯車7の片側面(図5、6、9、10の左側面)の内周寄り部分を当接させる事により図っている。又、この入力歯車7の片側面の内周寄り部分には、パーキングロック用歯車28が一体に形成されている。パーキングロック時には、このパーキングロック用歯車28の外周面の円周方向一部分に、図示しないロック部材の先端部を係合させる事で、前記回転軸ユニット6の回転を不能とする。又、前記出力歯車8は、炭素鋼の如き合金鋼製のはすば歯車であり、前記出力軸14の外周面の中間部一端寄り部分に、この出力軸14と一体に形成(固定)されている。図示の構造の場合、前記回転軸ユニット6の正回転時(自動車が前進している状態での回転時)に、前記入力歯車7から前記入力軸13に入力されたトルクは、前記トーションバー15を介して前記出力軸14に伝達され、前記出力歯車8から出力される。この際に、前記トーションバー15のばね部65は、前記トルクの大きさに見合った量だけ、弾性的に捩れ変形する。
又、前記回転軸ユニット6は、互いの接触角を逆向きに配置された1対の円すいころ軸受29a、29bにより、前記ハウジングに対して回転自在に支持されている。図示の構造の場合には、これら両円すいころ軸受29a、29bを前記回転軸ユニット6に組み付ける為に、一方の円すいころ軸受29aを構成する内輪30aを、前記入力軸13の他端寄り部分に外嵌している。これと共に、この内輪30aの大径側端面と、前記入力歯車7の他側面との間で、間座31を挟持している。そして、この状態で、前記入力軸13の外周面の他端部に螺合し更に締め付けたナット32aにより、前記内輪30aの小径側端面を押圧する事で、前記入力軸13に対して前記内輪30a及び前記入力歯車7を結合固定している。又、前記他方の円すいころ軸受29bを構成する内輪30bを、前記出力軸14の他端寄り部分に外嵌すると共に、この内輪30bの大径側端面を、前記出力軸14の外周面の他端寄り部分に形成した段差面33に当接させている。そして、この状態で、前記出力軸14の外周面の他端部に螺合し更に締め付けたナット32bにより、前記内輪30bの小径側端面を押圧する事で、前記出力軸14に前記内輪30bを支持固定している。
又、図示の構造の場合、それぞれがはすば歯車である、前記入力歯車7と前記出力歯車8との歯の傾斜方向を、これら両歯車7、8の正回転時(前記回転軸ユニット6の正回転時)に、これら両歯車7、8に作用するアキシアル方向のギヤ反力が互いに向き合う(互いに押し付け合う)方向となる様に規制している。これにより、前記両歯車7、8の正回転時に、これら両歯車7、8に作用するアキシアル方向のギヤ反力の少なくとも一部を相殺できる様にしている。これにより、前記両歯車7、8の正回転時に、前記両円すいころ軸受29a、29bに負荷されるアキシアル荷重を抑えて、その分だけ、これら両軸受29a、29bの摩擦損失(動トルク)を抑えられる様にしている。
又、前記連結軸9は、前記トーションバー15の内径側に、このトーションバー15と同心に配置されている。これと共に、前記連結軸9は、一端部(図10、11の右端部)を前記入力軸13に相対回転不能に連結された状態で、他端部(図10、11の左端部)を前記トーションバー15及び前記出力軸14の他端開口から突出させている。図示の構造の場合には、この様に前記連結軸9の一端部を前記入力軸13に相対回転不能に連結する為に、この連結軸9の一端部を前記トーションバー15の一端開口から突出させると共に、この突出した部分の外周面に、外向フランジ状の鍔部34を形成している。そして、この鍔部34の外周面と、前記入力軸13の他端部内周面とを、相対回転不能に係合させている。具体的には、この係合部を、インボリュートスプライン係合部24dとしている。尚、この係合部として、キー係合部等の、他の回転防止構造を持った係合部を採用する事もできる。又、この状態で、前記入力軸13の内周面に係止した、前記止め輪25aと別の止め輪25cとにより、前記鍔部34を軸方向両側から挟持する事で、前記連結軸9の軸方向変位を阻止している。尚、前記トーションバー15の一端部と、前記連結軸9の一端部とに存在する、前記両インボリュートスプライン係合部24a、24dは、それぞれの雌インボリュートスプライン部として、前記第一雌インボリュートスプライン部51を共用している。
又、前記第一エンコーダ10は、前記連結軸9の他端部に、この連結軸9と同心に外嵌固定されている。言い換えれば、この第一エンコーダ10は、この連結軸9を介して、前記入力軸13に支持固定されている。この為、この第一エンコーダ10は、この入力軸13と共に(同期して)回転可能である。又、前記第二エンコーダ11は、前記出力軸14の他端部に、この出力軸14と同心に外嵌固定されている。従って、この第二エンコーダ11は、この出力軸14と共に(同期して)回転可能である。
又、前記第一、第二両エンコーダ10、11は、それぞれ前記連結軸9の他端部又は前記出力軸14の他端部に外嵌固定された、磁性金属製で円環状の芯金35(36)と、この芯金35(36)の外周部に存在する円筒部の外周面に固定された、円筒状の永久磁石37(38)とから成る。そして、前記第一エンコーダ10を構成する永久磁石37の外周面を、第一被検出部39とし、又、前記第二エンコーダ11を構成する永久磁石38の外周面を、第二被検出部40としている。これら第一、第二両被検出部39、40は、互いの直径が等しく、互いに同心に、且つ、軸方向に隣り合う状態で近接(例えば軸方向に10mm以内、好ましくは5mm以内の間隔をあけて)配置されている。又、前記両被検出部39、40には、それぞれS極とN極とが、円周方向に関して交互に且つ等ピッチで配置されている。これら両被検出部39、40の磁極(S極、N極)の総数は、互いに一致している。
尚、図示の構造の場合、前記第一エンコーダ10を構成する芯金35の内周面と、前記連結軸9の他端部外周面との嵌合部は、同心性を確保する為の円筒面嵌合部26bと、相対回転を防止する為のインボリュートスプライン係合部24eとを、軸方向に隣接配置する事により構成されている。又、前記芯金35は、前記連結軸9の他端部外周面に係止した止め輪25dにより、この連結軸9に対する抜け止めを図られている。又、前記第二エンコーダ11を構成する芯金36は、前記出力軸14の他端部に締り嵌めで外嵌固定されている。
又、前記センサユニット12は、合成樹脂製のホルダ41と、このホルダ41の先端部に包埋された、第一、第二両センサ42a、42bとを備える。これら両センサ42a、42bの検出部には、それぞれホール素子、ホールIC、MR素子、GMR素子等の磁気検出素子が組み込まれている。この様なセンサユニット12は、前記第一センサ42aの検出部を前記第一被検出部39に、前記第二センサ42bの検出部を前記第二被検出部40に、それぞれ近接対向させた状態で、前記ハウジングに支持されている。
又、図示の構造の場合、前記連結軸9の径方向中心部に、この連結軸9の一端面にのみ開口する油導入路43を設けている。そして、この油導入路43の端部開口を通じて、この油導入路43内に導入した潤滑油を、前記両円すいころ軸受29a、29bの内部に供給する様にしている。この為に、前記連結軸9と前記トーションバー15と前記入力軸13及び出力軸14との両端寄り部分に、それぞれ油路44a、44bを設けている。そして、これら両油路44a、44bにより、前記油導入路43の両端寄り部分と、前記両円すいころ軸受29a、29bの内輪30a、30bの小径側端部の内径側に存在する微小な環状空間45a、45bとを連通している。更に、前記両ナット32a、32bの先端面の円周方向1乃至複数箇所に、それぞれ径方向に亙る油溝46a、46bを形成している。これにより、前記油導入路43の端部開口からこの油導入路43内に導入した潤滑油を、前記両油路44a、44bと前記両環状空間45a、45bと前記各油溝46a、46bとを通じて、前記両円すいころ軸受29a、29bの内部に供給する様にしている。
更に、図示の構造の場合には、前記両油路44a、44bに送り込んだ潤滑油の一部を、これら両油路44a、44bの中間部から前記両インボリュートスプライン係合部24a、24bに存在する隙間を通じて、前記トーションバー15のばね部65の外周面と、前記入力軸13及び出力軸14の中間部内周面との間に存在する、円筒状空間47内に送り込む様にしている。そして、この円筒状空間47内に送り込んだ潤滑油を、前記入力側組み合わせ用筒部16の先端面48と、前記出力側組み合わせ用筒部17の内周面の基端部に存在する段差面49との間に存在する隙間を通じて、前記ラジアルニードル軸受18の設置部と、前記スラストワッシャ21の挟持部とに供給し、これら設置部及び挟持部を潤滑する様にしている。この際に、この挟持部に到達した潤滑油は、この挟持部の潤滑に供されつつ、前記スラストワッシャ21に設けた複数のスリット22、22を通じて、この挟持部を円滑に通過する。この結果、前記ラジアルニードル軸受18の設置部及び前記スラストワッシャ21の挟持部への潤滑油の給排が効率良く行われ、これら設置部及び挟持部の潤滑状態が良好になる。
尚、この先発明に係る構造の第1例を実施する場合には、図13の(A)に示した様なスラストワッシャ21に代えて、同図の(B)に示す様な、外周部の補強用円筒部を省略したスラストワッシャ21aや、同図の(C)に示す様な、外周部の補強用円筒部と複数のスリットとを省略した、単なる円輪状のスラストワッシャ21bを使用する事もできる。但し、上述した設置部及び挟持部の潤滑状態を良好にする観点からは、(A)(B)に示したスリット22、22付のスラストワッシャ21、21aを使用するのが好ましい。更に、外周部(特に前記各スリット22、22の基端部周辺)の強度を確保する観点からは、(A)に示した補強用円筒部23付のスラストワッシャ21を使用するのが好ましい。
又、図示の構造の場合、前記両油路44a、44bに送り込んだ潤滑油は、これら両油路44a、44bの中間部から、前記トーションバー15の内周面と前記連結軸9の外周面との間に存在する微小隙間(径方向厚さが0.2mm程度となる円筒状の隙間)内にも送り込まれる。特に、図示の構造の場合には、この様な微小隙間内への潤滑油の送り込みが円滑に行われる様にする為、前記連結軸9の外周面のうち、軸方向に関して前記両油路44a、44bと整合する部分に、全周に亙る凹溝54a、54bを設けている。運転時に、前記微小隙間に充満した潤滑油は、前記連結軸9の微小振動を減衰させる、フィルムダンパとしての機能を発揮する。
上述の様に構成する先発明に係るトルク測定装置付回転伝達装置の第1例の場合、前記センサユニット12を構成する第一、第二両センサ42a、42bの出力信号は、前記回転軸ユニット6(前記入力軸13及び出力軸14)と共に前記第一、第二両エンコーダ10、11が回転する事に伴い、それぞれ周期的に変化する。ここで、この変化の周波数(及び周期)は、前記回転軸ユニット6の回転速度に見合った値をとる。従って、これら周波数(又は周期)と回転速度との関係を予め調べておけば、この周波数(又は周期)に基づいて、この回転速度を求められる。又、前記回転軸ユニット6により、前記入力歯車7と前記出力歯車8との間でトルクを伝達する際には、前記トーションバー15のばね部65が弾性的に捩れ変形する事に伴い、前記両歯車7、8同士(前記両軸13、14同士、前記両エンコーダ10、11同士)が回転方向に相対変位する。そして、この様に両エンコーダ10、11同士が回転方向に相対変位する結果、前記第一、第二両センサ42a、42bの出力信号同士の間の位相差比(=位相差/1周期)が変化する。ここで、この位相差比は、前記トルクに見合った値をとる。従って、これら位相差比とトルクとの関係を予め調べておけば、この位相差比に基づいて、このトルクを求められる。
特に、この先発明に係る構造の第1例の場合には、前記トーションバー15を前記入力軸13及び出力軸14の内径側に配置すると共に、このトーションバー15のばね部65の軸方向寸法Lを、前記両歯車7、8同士の軸方向間隔Wよりも大きく(L>Wに)している。従って、トルクの伝達時に生じる、前記ばね部65の弾性的な捩れ変形量を十分に確保できる。この結果、前記回転軸ユニット6を一体の回転軸とした構造と異なり、前記両歯車7、8同士の軸方向間隔Wの広狭に拘らず、前記トルクの伝達時に生じる、これら両歯車7、8同士の回転方向の相対変位量を十分に大きくできる。従って、トルク測定の分解能を十分に高める事ができる。又、この先発明に係る構造の第1例の場合には、設計の段階で、トーションバー15の材質や、前記ばね部65の軸方向寸法、外径寸法、径方向の肉厚等を調節する事により、このばね部65の捩れ剛性を容易に調節できる。この為、前記回転軸ユニット6を一体の回転軸とした構造に比べて、前記トルクと前記回転方向の相対変位量との関係(ゲイン)を、所望の値に設計し易くできる。
又、この先発明に係る構造の第1例の場合には、使用するセンサユニット12が1個で済む為、このセンサユニット12から引き出される図示しないハーネスの本数を1本にできて、このハーネスの配設を容易に行える。又、前記ハウジングに設ける前記センサユニット12の支持固定部も1箇所で済む為、このハウジングの加工を容易にできる。
図15は、上述した先発明に係る構造の第1例の変形例を示している。上述した先発明に係る構造の第1例の場合が、第一、第二両エンコーダ10、11及びセンサユニット12を、出力軸14の他端部周辺に集中して配置していたのに対し、本変形例の場合には、これら第一、第二両エンコーダ10、11及びセンサユニット12を、入力軸13の他端部周辺に集中して配置している。この為に、本変形例の場合、トーションバー15の内径側に配置した連結軸9の一端部(図15の左端部)外周面を、出力軸14の他端部内周面に、インボリュートスプライン係合、キー係合等により、相対回転不能に連結している。これと共に、図示しない止め輪等を使用して、前記出力軸14に対する、前記連結軸9の軸方向変位を阻止している。そして、この状態で、この連結軸9の他端部(図15の右端部)を、前記入力軸13の他端開口から突出させている。そして、この連結軸9の他端部に前記第一エンコーダ10を外嵌固定すると共に、前記入力軸13の他端部に前記第二エンコーダ11を外嵌固定している。更に、これら第一、第二両エンコーダ10、11の被検出部に、前記センサユニット12を構成する1対のセンサの検出部を対向させた状態で、このセンサユニット12を図示しないハウジングに支持している。
尚、図15は、図11と同様の簡略図である為、一部の部品及び部位の図示や符号の記入を省略しているが、その他の構成及び作用は、上述した先発明に係る構造の第1例の場合と同様である。
尚、上述した先発明に係る構造の第1例(及びその変形例)の場合には、前記入力軸13と前記入力歯車7とから成る第一回転体である入力側回転体55と、前記出力軸14と前記出力歯車8とから成る第二回転体である出力側回転体56との間でのトルク伝達を、このトルクの大小の如何に関わらず常に、前記トーションバー15のみを介して行う構成を採用している。この為、このトーションバー15のばね部65には、前記入力側、出力側両回転体55、56同士の間で伝達されるトルクが最大になった場合でも、塑性変形が生じない程度の捩れ剛性を持たせておく必要がある。
一方、上述した先発明に係る構造の第1例(及びその変形例)の場合には、前記トーションバー15のばね部65の捩れ剛性を低くする程、即ち、このばね部65の弾性的な捩れ変形量を多くする程、トルク測定の分解能を高くする事ができる。但し、上述した様に、先発明に係る構造の第1例(及びその変形例)の場合には、最大トルクの伝達時に前記ばね部65が塑性変形しない程度までしか、このばね部65の剛性を低くできない(トルク測定の分解能を高くできない)。
[未公開の先発明に係る構造の第2例]
図16〜19は、上述の様な事情に鑑みて先に考えた、先発明に係るトルク測定装置付回転伝達装置の第2例(特願2013−183072)を示している。尚、この先発明に係る構造の第2例の特徴は、前述の図5〜14に示した先発明に係る構造の第1例に対して、トルク測定の分解能をより向上させる為の構造を付加した点にある。その他の部分の構造及び作用は、一部を除き、前述した先発明に係る構造の第1例の場合と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略若しくは簡略にし、以下、先発明に係る構造の第2例の特徴部分、並びに、前述した先発明に係る構造の第1例と異なる部分を中心に説明する。
先ず、前記先発明に係る構造の第2例の場合には、回転軸ユニット6aを構成する入力軸13と出力軸14aとの一端部同士の組み合わせ部に設置されているラジアル軸受及びスラスト軸受が、前述した先発明に係る構造の第1例の場合と異なる。即ち、前記先発明に係る構造の第2例の場合には、前記ラジアル軸受を、ラジアル滑り軸受である円筒状のスリーブベアリング57とすると共に、前記スラスト軸受を、スラスト滑り軸受である円輪状のスラストワッシャ21cとしている。このうちのスラストワッシャ21cは、入力側組み合わせ用筒部16の基端部に径方向の大きながたつきなく外嵌される事で、径方向の位置決めを図られている。これと共に、前記スラストワッシャ21cは、段差面19に植設されたピン58を、自身の一部に設けられた係合孔59に係合させる事で、円周方向の位置決めを図られている。又、この先発明に係る構造の第2例の場合には、前記入力側組み合わせ用筒部16の基端部に径方向に貫通した油路60を形成している。そして、この油路60を通じて、円筒状空間47から、前記スリーブベアリング57を設置した空間と前記スラストワッシャ21cを設置した空間との間部分に、潤滑油を供給できる様にしている。これにより、これら両空間内に於ける潤滑性を向上させている。尚、先発明に係る各構造に関して、前記入力軸13と前記出力軸14(14a)との一端部同士の組み合せ部に設置するラジアル軸受及びスラスト軸受は、それぞれ滑り軸受と転がり軸受とのうちの何れを選択しても良い。
又、前記先発明に係る構造の第2例の場合、入力歯車7aに対して一体に形成されたパーキングロック用歯車28の内径側部分に、第一ストッパ部である、円周方向に関する凹凸形状(内歯歯車状)の入力側ストッパ部(雌側ストッパ部)61を設けている。この入力側ストッパ部61は、それぞれが前記パーキングロック用歯車28の一端面(図16、18の左端面)と内周面とに開口する複数の凹部62、62を、円周方向に関して等間隔に設けて成る。又、前記出力軸14aの一端部(図16、18の右端部)の外径側部分に、第二ストッパ部である、円周方向に関する凹凸形状(歯車状)の出力側ストッパ部(雄側ストッパ部)63を設けている。この出力側ストッパ部63は、それぞれが前記出力軸14aの一端面の外径側部分から軸方向に突出する複数(前記凹部62、62と同数)の凸部64、64を、円周方向に関して等間隔に設けて成る。
そして、前記入力側ストッパ部61と前記出力側ストッパ部63とを、所定角度範囲内での相対回転のみを可能に凹凸係合させている。この所定角度範囲は、トーションバー15が捩れ変形していない中立状態を基準として、正逆両方向に所定角度ずつの範囲である。即ち、前記入力側ストッパ部61を構成する各凹部62、62の円周方向幅を、前記出力側ストッパ部63を構成する各凸部64、64の円周方向幅よりも大きくし、且つ、中立状態でのこれら各凹部62、62とこれら各凸部64、64との円周方向に関する位相を互いに一致させた状態で、これら各凹部62、62の内側にこれら各凸部64、64を挿入している。つまり、これら各凹部62、62の内側にこれら各凸部64、64を、それぞれ円周方向両側に隙間を有する状態で緩く係合させている。これにより、前記入力側ストッパ部61と前記出力側ストッパ部63との相対回転が、前記所定角度範囲の正回転側又は逆回転側の上限値に達した場合に、前記各凹部62、62と前記各凸部64、64とがトルク伝達可能に係合する(これら各凹部62、62とこれら凸部64、64との円周方向側面同士が当接する)様にしている。又、これによって、前記入力歯車7aと前記入力軸13とから成る入力側回転体55aと、前記出力軸14aと出力歯車8とから成る出力側回転体56aとの相対回転を、前記所定角度範囲内に規制している。この所定角度範囲は、前記トーションバー15の軸方向中間部に設けたばね部65の捩れ変形が塑性変形に至らない範囲としている。
上述の様に構成する先発明に係るトルク測定装置付回転伝達装置の第2例の場合、前記入力側、出力側両回転体55a、56a同士の間で伝達されるトルクが比較的小さく、前記トーションバー15のばね部65の捩れ変形量(捩れ角)が比較的小さい状態、即ち、この捩れ変形量がこのばね部65の弾性範囲内で所定量(前記所定角度範囲の正回転側又は逆回転側の上限値に相当する量)に達しない状態では、前記各凹部62、62と前記各凸部64、64とがトルク伝達可能に係合しない(これら各凹部62、62とこれら凸部64、64との円周方向側面同士が当接しない)。従って、この状態では、前記入力側、出力側両回転体55a、56a同士の間でのトルク伝達が、前記トーションバー15のみを介して行われる事となる。
一方、前記トルクが大きくなり、前記ばね部65の捩れ変形量が、このばね部65の弾性範囲内で前記所定量に達すると、前記各凹部62、62と前記各凸部64、64とがトルク伝達可能に係合する(これら各凹部62、62とこれら各凸部64、64との円周方向側面同士が当接する)。この状態では、前記入力側、出力側両回転体55a、56a同士の間でのトルク伝達が、前記トーションバー15を介して行われるだけでなく、前記各凹部62、62と前記各凸部64、64との係合部を介しても行われる様になる。又、この様に各凹部62、62と各凸部64、64とがトルク伝達可能に係合した状態では、それ以上、前記ばね部65の捩れ変形量が大きくなる事を阻止される。この為、大きいトルクを伝達する場合でも、このばね部65が塑性変形する事を防止できる。
即ち、この先発明に係る構造の第2例の場合には、前記入力側、出力側両ストッパ部61、63同士の係合に基づいて、前記入力側、出力側両回転体55a、56a同士の相対回転可能範囲を、前記ばね部65に塑性変形が生じない範囲としている為、このばね部65の捩れ剛性を、所望とするトルク測定の分解能に合わせた大きさに設定できる。従って、例えば、前記入力側、出力側両回転体55a、56a同士の間で伝達される最大トルクを、前記トーションバー15のみを介して伝達する場合に、前記ばね部65に塑性変形が生じない最低限度の捩れ剛性よりも、更に小さい捩れ剛性を、このばね部65に設定する事ができる。そして、この様な設定を行う事により、前記入力側、出力側両ストッパ部61、63同士がトルク伝達可能に係合するまでの間の(少なくとも低トルク領域での)トルク測定の分解能を、前述した先発明に係る構造の第1例の場合よりも高くする事ができる。
尚、図示は省略するが、上述した先発明に係る構造の第2例の場合も、前述した先発明に係る構造の第1例の場合と同様、その変形例として、第一、第二両エンコーダ10、11及びセンサユニット12を、入力軸13の他端部周辺に集中して配置する構成(図15に示した様な構成)を採用する事ができる。
又、先発明を実施する場合には、上述した先発明に係る構造の第1〜2例(及びこれらの変形例)に於ける、第一、第二両エンコーダの被検出部と、センサユニットを構成する1対のセンサの検出部との対向方向を、径方向から軸方向に変更した構成を採用する事もできる。この様な変形例を実施する場合には、第一、第二両エンコーダの被検出部を、互いの径寸法が異なる1対の円輪状の被検出部とすると共に、これら両被検出部を、軸方向に関して同方向に向けた状態で、互いに同心に(径方向に重畳させて)配置する。そして、これら両被検出部にセンサユニットを構成する1対のセンサの検出部を軸方向に対向させる。
上述した様な先発明に係る構造の各例のトルク測定装置付回転伝達装置は、入力歯車7(7a)と出力歯車8との間の軸方向間隔に拘わらず、トルク伝達に伴うこれら両歯車7(7a)、8同士の回転方向の相対変位量を十分に確保して、トルク測定の分解能を十分に高める事ができるが、トルク測定の信頼性の向上を図る面からは、更なる改良の余地がある。
即ち、上述した先発明に係る構造の各例の場合、トルク測定の信頼性を確保する為には、第一、第二両エンコーダ10、11の第一、第二両被検出部39、40に対する、センサユニット12を構成する第一、第二センサ42a、42bの検出部の位置決め精度を良くする事が重要となる。この点に関して、前記先発明に係る構造の各例の場合には、前記センサユニット12と、前記第一、第二両エンコーダ10、11を支持した回転軸ユニット6(6a)とを、ハウジングに対し、それぞれ別々に支持する構造としている為、前記位置決め精度の確保が面倒である。即ち、前記先発明に係る構造の各例の場合には、前記センサユニット12と前記回転軸ユニット6(6a)との双方を前記ハウジングに対し、位置決めを厳密に図った状態で支持する必要がある。
又、前記先発明に係る構造の各例の場合には、前記ハウジングの内部に、前記第一、第二両エンコーダ10、11と前記センサユニット12とを剥き出しの状態で配置している。この為、前記ハウジングの内部の各箇所に循環供給される潤滑油(例えば、連結軸9に設けた油導入路43の端部開口から導入され、油路44a、44b及び油溝46a、46bを通じて円すいころ軸受29a、29bに供給され、これら両円すいころ軸受29a、29bを潤滑し、更に入力歯車7(7a)及び出力歯車8と相手歯車との噛合部に供給され、これら各噛合部を潤滑する等した潤滑油)が、前記第一、第二両エンコーダ10、11や前記センサユニット12の先端面に付着する可能性がある。この潤滑油には、歯車の歯面が摩耗する等により発生した鉄粉等の磁性を有する異物が含まれている為、前記第一、第二両エンコーダ10、11や前記センサユニット12の先端面に付着した場合、これら第一、第二両エンコーダ10、11の円周方向に亙る規則的・周期的な磁気変化が乱れ、前記センサユニット12の出力信号の信頼性が低下する可能性がある。
図1〜2は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本例の特徴は、第一、第二両エンコーダ10、11に対するセンサユニット12aの位置決めを容易化し、トルク測定の信頼性の向上を図る為に、このセンサユニット12aの構造、及び、図示しないハウジングに対する、このセンサユニット12aの支持構造を工夫した点にある。その他の部分の構造及び作用に就いては、前述の図5〜14に示した先発明に係る構造の第1例の場合と同様である為、重複する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
本例の場合も、前述した先発明の構造の第1例の場合と同様、特許請求の範囲に記載した他方の回転軸である、出力軸14は、この出力軸14の外周面の他端(図1の左端)寄り部分と前記ハウジングの内周面との間に設置された円すいころ軸受29cにより、このハウジングに対して回転自在に支持されている。但し、本例の場合には、この円すいころ軸受29cを構成する外輪66のうち、軸方向に関して前記出力軸14の他端側の半部を、この円すいころ軸受29cを構成する内輪30cの小径側端部よりも軸方向に突出した、延長筒部67としている。そして、この延長筒部67の内周面を、前記出力軸の14の外周面の他端部に螺合し更に締め付けた、ナット32bの外周面に対向させている。
又、本例の場合、前記センサユニット12aは、センサカバー68と、センサホルダ69と、第一、第二両センサ42a、42bとを備える。このうちのセンサカバー68は、金属板により全体を有底円筒状に造られたもので、カバー円筒部70と、このカバー円筒部70の基端開口を塞ぐカバー底板部71とを備える。又、このカバー円筒部70の外周面の先端寄り部分に、外向フランジ状の鍔部72を設けると共に、前記カバー底板部71の一部(図示の例では、外周寄り部分)に、通孔73を設けている。又、前記センサホルダ69は、合成樹脂により全体を有底円筒状に造られたもので、インサート成形又は接着により、前記センサカバー68の内面に保持固定されている。このセンサホルダ69のうち、前記カバー円筒部70の内径側に位置する円筒状部分には、前記第一、第二両センサ42a、42bが包埋されている。又、前記センサホルダ69の一部に設けたコネクタ部74を、前記通孔73を通じて前記センサカバー68の外部に突出させている。そして、このコネクタ部74に、前記第一、第二両センサ42a、42bの検出信号を取り出す為のハーネスの端部を着脱可能としている。
本例の場合には、上述の様な構成を有するセンサユニット12aを前記ハウジングに対し、前記外輪66を介して支持固定している。この為に具体的には、前記センサカバー68を構成するカバー円筒部70の先端部を、前記外輪66の延長筒部67の先端部内周面に圧入により(締り嵌めで)内嵌している。これと共に、前記カバー円筒部70の外周面の先端寄り部分に設けた前記鍔部72の側面を、前記延長筒部67の先端面に突き当てる事により、前記外輪66に対する前記センサユニット12aの軸方向の位置決めを図っている。そして、この状態で、前記センサカバー68の内側の空間に前記第一、第二両エンコーダ10、11を位置させると共に、これら第一、第二両エンコーダ10、11の第一、第二両被検出部39、40に、前記第一、第二両センサ42a、42bの検出部を対向させている。
更に、本例の場合には、前記円すいころ軸受29cを構成する複数個の円すいころ75、75を設置した空間と、前記第一、第二両被検出部39、40を配置した前記センサカバー68の内側の空間との間に、これら両空間同士の間を仕切るシール装置である、シールリング76を設置している。このシールリング76は、断面L字形で円環状の芯金77と、この芯金77により補強された円環状のシール材78とから成る。そして、このうちの芯金77を、円筒面である、前記ナット32bの先端部外周面に締り嵌めで外嵌すると共に、前記シール材78を構成するシールリップの先端縁を、やはり円筒面である、前記延長筒部67の基端部内周面に摺接させている。これにより、前記各円すいころ75、75を設置した空間に供給された、鉄粉等の磁性を有する異物を含んだ潤滑油が、前記延長筒部67の内周面と前記ナット32bの先端部外周面との間部分を通じて、前記センサカバー68の内側の空間に侵入する事を防止している。尚、本発明を実施する場合、上述した両空間同士の間を仕切るシール装置は、上述の様なシールリング76に限らず、各種形式のものを使用できる。例えば、芯金を前記延長筒部67の内周面に内嵌固定すると共に、シール材のシールリップの先端縁を前記ナット32b(又は前記出力軸14)の表面に摺接させる形式のものを使用する事もできる。何れにしても、前記シール装置としては、シール性能が良好であり、且つ、シールリップの先端縁と相手面との摺接抵抗を低く抑えられるものを使用する事が好ましい。
上述の様に構成する本例のトルク測定装置付回転伝達装置の場合には、前記センサユニット12aを、前記出力軸14と前記ハウジングとの間に設置した前記円すいころ軸受29cを構成する外輪66に支持固定している。この為、前述した先発明に係る構造の第1例の様に、センサユニット12と、第一、第二両エンコーダ10、11を支持する回転軸ユニット6(図10参照)とを、それぞれ別々にハウジングに対して支持固定した構造に比べて、前記第一、第二両エンコーダ10、11に対する前記センサユニット12aの位置決め精度の確保が容易になる。又、前記センサユニット12aと前記回転軸ユニット6とを、前記ハウジング内に組み付ける以前に所定の位置関係に組み付ける事ができ、この位置関係がその後ずれ動く事もない為、この面からも前記位置決め精度を確保し易くなる。
又、本例の場合には、前記第一、第二両被検出部39、40と、前記第一、第二両センサ42a、42bの検出部とを、前記センサカバー68の内側に配置すると共に、このセンサカバー68の内側の空間と、前記円すいころ軸受29cを構成する複数個の円すいころ75、75を設置した空間との間に、これら両空間同士の間を仕切るシールリング76を設置している。この為、前記ハウジングの内部に存在する、磁性を有する異物を含んだ潤滑油(前記各円すいころ75、75を設置した空間に供給された当該潤滑油を含む)が、前記第一、第二両被検出部39、40や前記第一、第二両センサ42a、42bの検出部に付着する事を抑制乃至防止できる。この結果、トルク測定の信頼性の向上を図れる。
更に、本例の場合には、前記第一、第二両エンコーダ10、11が前記センサカバー68の内側の空間に納められている為、例えば前記センサユニット12aと回転軸ユニット6(図10参照)とを組み立てた後、これらセンサユニット12a及び回転軸ユニット6を前記ハウジング内に組み付ける際等に、前記第一、第二両エンコーダ10、11が前記ハウジングの一部にぶつかって損傷する事を防止できる。又、当該ハウジング以外の部分を、このハウジングに組み付ける前の段階で、前記第一、第二両センサ42a、42bの出力信号の検定を行える。又、完成状態で、前記ハウジングに変形が生じたとしても、前記第一、第二両被検出部39、40と前記第一、第二両センサ42a、42bの検出部との位置関係にずれを生じにくくできる。この面からも、トルク測定の信頼性を向上できる。
尚、上述した実施の形態では、前述の図4〜13に示した先発明の構造の第1例に対して本発明を適用した例を示したが、本発明は、これに限らず、この先発明の構造の第1例の変形例(例えば図15)や、前述の図15〜18に示した先発明に係る構造の第2例(又はその変形例)に適用する事もできる。又、何れの場合も、ハウジングに対して入力軸及び出力軸を回転自在に支持する為の転がり軸受は、円すいころ軸受に限らず、アンギュラ玉軸受等の他の型式のものを使用する事もできる。