JP6070218B2 - サイジング剤塗布炭素繊維、サイジング剤塗布炭素繊維の製造方法、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料 - Google Patents

サイジング剤塗布炭素繊維、サイジング剤塗布炭素繊維の製造方法、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料 Download PDF

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Description

本発明は、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材および船舶部材をはじめとして、ゴル
フシャフトや釣竿等のスポーツ用途およびその他一般産業用途に好適に用いられるサイジ
ング剤塗布炭素繊維および該サイジング剤塗布炭素繊維の製造方法、プリプレグならびに
炭素繊維強化複合材料に関するものである。より詳しくは、本発明は、低温下等の厳しい
環境下での機械特性に優れ、構造材料として好適なエポキシ樹脂をマトリックス樹脂とし
て使用した場合、該マトリックス樹脂と炭素繊維との接着性に優れ、長期保管における物
性低下を抑制しうるサイジング剤塗布炭素繊維および該サイジング剤塗布炭素繊維の製造
方法、プリプレグならびに炭素繊維強化複合材料に関する。
炭素繊維は、軽量でありながら、強度および弾性率に優れるため、種々のマトリックス
樹脂と組み合わせた複合材料は、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材、船舶部材、土木
建築材およびスポーツ用品等の多くの分野に用いられている。炭素繊維を用いた複合材料
において、炭素繊維の優れた特性を活かすには、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性
が優れることが重要である。
炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性を向上させるため、通常、炭素繊維に気相酸化
や液相酸化等の酸化処理を施し、炭素繊維表面に酸素含有官能基を導入する方法が行われ
ている。例えば、炭素繊維に電解処理を施すことにより、接着性の指標である層間剪断強
度を向上させる方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、近年、複合材
料への要求特性のレベルが向上するにしたがって、このような酸化処理のみで達成できる
接着性では不十分になりつつある。
一方、炭素繊維は脆く、集束性および耐摩擦性に乏しいため、高次加工工程において毛
羽や糸切れが発生しやすい。このため、炭素繊維に塗布する方法が提案されている(特許
文献2および3参照)。
例えば、サイジング剤として、脂肪族タイプの複数のエポキシ基を有する化合物が提案
されている(特許文献4、5、6参照)。また、サイジング剤としてポリアルキレングリ
コールのエポキシ付加物を炭素繊維に塗布する方法が提案されている(特許文献7、8お
よび9参照)。
また、芳香族系のサイジング剤としてビスフェノールAのジグリシジルエーテルを炭素
繊維に塗布する方法が提案されている(特許文献2および3参照)。また、サイジング剤
としてビスフェノールAのポリアルキレンオキサイド付加物を炭素繊維に塗布する方法が
提案されている(特許文献10および11参照)。また、サイジング剤としてビスフェノ
ールAのポリアルキレンオキサイド付加物にエポキシ基を付加させたものを炭素繊維に塗
布する方法が提案されている(特許文献12および13参照)。
上記したサイジング剤により、炭素繊維に接着性や集束性を付与することができるもの
の、1種類のエポキシ化合物からなるサイジング剤では十分とは言えず、求める機能によ
り2種類以上のエポキシ化合物を併用する手法が近年提案されている。
例えば、表面エネルギーを規定した2種以上のエポキシ化合物を組み合わせたサイジン
グ剤が提案されている(特許文献14〜17参照)。特許文献14では、脂肪族エポキシ
化合物と芳香族エポキシ化合物の組み合わせが開示されている。該特許文献14では、外
層に多くあるサイジング剤が、内層に多くあるサイジング剤成分に対し、大気との遮断効
果をもたらし、エポキシ基が大気中の水分により開環するのを抑止するとされている。ま
た、該特許文献14では、サイジング剤の好ましい範囲について、脂肪族エポキシ化合物
と芳香族エポキシ化合物との比率は10/90〜40/60と規定され、芳香族エポキシ
化合物の量が多いほうが好適とされている。
また、特許文献16および17では、表面エネルギーの異なる2種以上のエポキシ化合
物を使用したサイジング剤が開示されている。該特許文献16および17は、マトリック
ス樹脂との接着性の向上を目的としているため、2種以上のエポキシ化合物の組み合わせ
として芳香族エポキシ化合物と脂肪族エポキシ化合物の併用は限定されてなく、接着性の
観点から選択される脂肪族エポキシ化合物の一般的例示がないものである。
さらに、ビスフェノールA型エポキシ化合物と脂肪族ポリエポキシ樹脂を質量比50/
50〜90/10で配合するサイジング剤が開示されている(特許文献18参照)。しか
しながら、この特許文献18も、芳香族エポキシ化合物であるビスフェノールA型エポキ
シ化合物の配合量が多いものである。
また、芳香族エポキシ化合物および脂肪族エポキシ化合物の組み合わせを規定したサイ
ジング剤として、炭素繊維束の表面に多官能の脂肪族化合物、上面にエポキシ樹脂、アル
キレンオキシド付加物と不飽和二塩基酸との縮合物、フェノール類のアルキレンオキシド
付加物を組み合わせたものが開示されている(特許文献19参照)。
さらに、2種以上のエポキシ化合物の組み合わせとして、脂肪族エポキシ化合物と芳香
族エポキシ化合物であるビスフェノールA型エポキシ化合物の組み合わせが開示されてい
る。脂肪族エポキシ化合物は環状脂肪族エポキシ化合物および/または長鎖脂肪族エポキ
シ化合物である(特許文献20参照)。
また、性状の異なるエポキシ化合物の組み合わせが開示されている。25℃で液体と固
体の2種のエポキシ化合物の組み合わせが開示されている(特許文献21参照)。さらに
、分子量の異なるエポキシ樹脂の組み合わせ、単官能脂肪族エポキシ化合物とエポキシ樹
脂の組み合わせが提案されている(特許文献22および23参照)。
しかしながら、接着性とプリプレグでの長期保管時の安定性は、前述の2種類以上を混
合したサイジング剤(例えば、特許文献20〜23など)においても同時に満たすものと
は言えないのが実情であった。その理由は、高い接着性とプリプレグでの長期保管時の物
性低下の抑制を同時に満たすには、以下の3つの要件を満たすことが必要と考えられるが
、従来の任意のエポキシ樹脂の組み合わせではそれらの要件を満たしていなかったからで
あるといえる。前記3つの要件の一つ目は、サイジング層内側(炭素繊維側)に接着性の
高いエポキシ成分が存在し、炭素繊維とサイジング中のエポキシ化合物が強固に相互作用
を行うこと、二つ目が、サイジング層表層(マトリックス樹脂側)には、内層にある炭素
繊維との接着性の高いエポキシ化合物とマトリックス樹脂との反応を阻害する機能を有し
ていること、そして三つ目が、マトリックス樹脂との接着性を向上させるため、サイジン
グ剤表層(マトリックス樹脂側)にはマトリックス樹脂と強い相互作用が可能な化学組成
が必要であることである。
例えば、特許文献14には、炭素繊維とサイジング剤との接着性を高めるため、サイジ
ング剤に傾斜構造を持たせることは開示されているが、特許文献14およびその他いずれ
の文献(特許文献15〜18など)においても、サイジング層表面は炭素繊維と接着性の
高いエポキシ化合物とマトリックス中の成分との反応を抑制し、かつマトリックス樹脂と
の高接着を実現することを同時に満たす思想は皆無と言える。
また、特許文献19には、サイジング剤内層に多官能脂肪族化合物が存在し、外層に反
応性の低い芳香族エポキシ樹脂および芳香族系反応物が存在するものが開示されており、
長期間保持した場合にはプリプレグの経時変化の抑制を期待できるが、サイジング剤表層
に接着性の高い多官能脂肪族化合物が存在しないため、マトリックス樹脂との高い接着性
を実現することは困難である。
特開平04−361619号公報 米国特許第3,957,716号明細書 特開昭57−171767号公報 特公昭63−14114号公報 特開平7−279040号公報 特開平8−113876号公報 特開昭57−128266号公報 米国特許第4,555,446号明細書 特開昭62−033872号公報 特開平07−009444号公報 特開2000−336577号公報 特開昭61−028074号公報 特開平01−272867号公報 特開2005−179826号公報 特開2005−256226号公報 国際公開第03/010383号公報 特開2008−280624号公報 特開2005−213687号公報 特開2002−309487号公報 特開平02−307979号公報 特開2002−173873号公報 特開昭59−71479号公報 特開昭58−41973号公報
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、接着性および保存安定性に優れるとと
もに、優れた耐熱性と低温下等の厳しい使用環境での機械強度に優れた炭素繊維強化複合
材料を得ることができるサイジング剤塗布炭素繊維、サイジング剤塗布炭素繊維の製造方
法、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、脂肪族エポキシ化合物(A
)および芳香族化合物(B)として少なくとも芳香族エポキシ化合物(B1)を含むサイ
ジング剤を炭素繊維に塗布したサイジング剤塗布炭素繊維であって、前記炭素繊維の表面
粗さ(Ra)は6.0〜100nmであり、前記炭素繊維に塗布したサイジング剤表面を
、X線光電子分光法によって光電子脱出角度15°で測定されるC1s内殻スペクトルの
(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の
高さ(cps)と、(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分
の高さ(cps)との比率(a)/(b)が0.50〜0.90であることを特徴とする
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維は、上記発明において、アセトニトリル/ク
ロロホルム混合溶媒により前記サイジング剤塗布炭素繊維を超音波処理して塗布されたサイジング剤を溶出した場合、溶出された脂肪族エポキシ化合物(A)の割合は、前記サイジング剤塗布炭素繊維100質量部に対し0.3質量部以下であることを特徴とする。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維は、上記発明において、塗布されたサイジン
グ剤のエポキシ当量は350〜550g/eq.であることを特徴とする。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維は、上記発明において、前記サイジング剤は
、溶媒を除いたサイジング剤全量に対して、少なくとも前記脂肪族エポキシ化合物(A)
を35〜65質量%、前記芳香族化合物(B)を35〜60質量%含むことを特徴とする
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維は、上記発明において、前記サイジング剤中
の脂肪族エポキシ化合物(A)と芳香族エポキシ化合物(B1)の質量比は、52/48
〜80/20であることを特徴とする。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維は、上記発明において、前記脂肪族エポキシ
化合物(A)は、分子内にエポキシ基を2以上有するポリエーテル型ポリエポキシ化合物
および/またはポリオール型ポリエポキシ化合物であることを特徴とする。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維は、上記発明において、前記脂肪族エポキシ
化合物(A)は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール
、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロ
ピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロ
ピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタン
ジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ポリブチレングリコール
、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1
,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール
、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、およびアラビトール
と、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物で
あることを特徴とする。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維は、上記発明において、前記芳香族エポキシ
化合物(B1)は、ビスフェノールA型エポキシ化合物またはビスフェノールF型エポキ
シ化合物であることを特徴とする。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維は、上記発明において、前記サイジング剤は
、溶媒を除いたサイジング剤全量に対して、分子内にエポキシ基を持たないエステル化合
物(C)を2〜35質量%含有することを特徴とする。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維は、上記発明において、前記脂肪族エポキシ
化合物(A)の前記炭素繊維への付着量は、前記サイジング剤塗布炭素繊維に対して0.
2〜2.0質量%であることを特徴とする。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維は、上記発明において、化学修飾X線光電子
分光法により測定される前記炭素繊維の表面カルボキシル基濃度COOH/Cは0.00
3〜0.015、表面水酸基濃度COH/Cは0.001〜0.050であることを特徴
とする。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法は、脂肪族エポキシ化合物(A)
および芳香族化合物(B)として少なくとも芳香族エポキシ化合物(B1)を含むサイジ
ング剤を炭素繊維に塗布したサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法であって、前記炭素繊
維に前記サイジング剤を塗布した後、160〜260℃の温度範囲で30〜600秒熱処
理することにより上記のいずれか一つに記載のサイジング剤塗布炭素繊維を製造すること
を特徴とする。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法は、上記発明において、芳香族エ
ポキシ化合物(B1)を少なくとも含む水エマルジョン液と脂肪族エポキシ化合物(A)
を少なくとも含む組成物とを混合したサイジング剤含有液を前記炭素繊維に塗布すること
を特徴とする。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法は、上記発明において、前記炭素
繊維をアルカリ性電解液中で液相電解酸化した後、前記サイジング剤を塗布することを特
徴とする。
また、本発明のプリプレグは、上記のいずれか一つに記載のサイジング剤塗布炭素繊維
、または上記のいずれか一つに記載のサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法により製造さ
れたサイジング剤塗布炭素繊維と、熱硬化性樹脂とを含むことを特徴とする。
また、本発明のプリプレグは、上記発明において、前記熱硬化性樹脂はエポキシ化合物
(D)と潜在性硬化剤(E)とを含有することを特徴とする。
また、本発明のプリプレグは、上記発明において、前記潜在性硬化剤(E)は芳香族ア
ミン硬化剤(E1)であることを特徴とする。
また、本発明のプリプレグは、上記発明において、前記芳香族アミン硬化剤(E1)は
ジフェニルスルフォン骨格を含有する芳香族アミン硬化剤であることを特徴とする。
また、本発明のプリプレグは、上記発明において、前記潜在性硬化剤(E)はジシアン
ジアミドまたはその誘導体(E2)であることを特徴とする。
また、本発明のプリプレグは、上記発明において、前記熱硬化性樹脂は硬化促進剤(F
)としてウレア化合物(F1)を含有することを特徴とする。
また、本発明のプリプレグは、上記発明において、前記サイジング剤および前記芳香族
アミン硬化剤(E1)は、前記サイジング剤と前記芳香族アミン硬化剤(E1)とをアミ
ン当量/エポキシ当量が0.9の割合で混合後、25℃、60%RHの雰囲気下で20日
間保管した場合のガラス転移点の上昇が25℃以下となる組み合わせで使用することを特
徴とする。
また、本発明のプリプレグは、上記発明において、前記サイジング剤および前記ジシアンジアミドまたはその誘導体(E2)は、前記サイジング剤と前記ジシアンジアミドまたはその誘導体(E2)とを、アミン当量/エポキシ当量が1.0の割合で混合後、25℃、60%RHの雰囲気下で20日保管した場合のガラス転移点の上昇が10℃以下となる組み合わせで使用することを特徴とする。
また、本発明のプリプレグは、上記発明において、前記エポキシ化合物(D)は、グリ
シジルアミン骨格を少なくとも1つ有し、かつ、3個以上の官能基を有する芳香族エポキ
シ化合物(D1)を50質量%以上含有することを特徴とする。
また、本発明の炭素繊維強化複合材料は、上記のいずれか一つに記載のプリプレグを成
形してなることを特徴とする。
また、本発明の炭素繊維強化複合材料は、上記のいずれか一つに記載のサイジング剤塗
布炭素繊維、または上記のいずれか一つに記載のサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法に
より製造されたサイジング剤塗布炭素繊維と、熱硬化性樹脂の硬化物とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、マトリックス樹脂との接着性が優れるとともに、保存時の経時変化が
少なく、耐熱性および強度特性に優れた炭素繊維強化複合材料を製造可能なサイジング剤
塗布炭素繊維を得ることができる。
以下、更に詳しく、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維およびサイジング剤塗布炭素繊
維の製造方法を実施するための形態について説明をする。
本発明は、脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族化合物(B)として少なくとも芳
香族エポキシ化合物(B1)を含むサイジング剤を炭素繊維に塗布したサイジング剤塗布
炭素繊維であって、前記炭素繊維の表面粗さ(Ra)は6.0〜100nmであり、前記
炭素繊維に塗布したサイジング剤表面を、X線光電子分光法によって光電子脱出角度15
°で測定されるC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合
エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と、(b)C−Oに帰属される結
合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)との比率(a)/(b)が0.
50〜0.90であることを特徴とする。
まず、本発明で使用するサイジング剤について説明する。本発明にかかるサイジング剤
は、脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族化合物(B)として芳香族エポキシ化合物
(B1)を少なくとも含む。
本発明者らの知見によれば、かかる範囲のものは、炭素繊維とマトリックスの界面接着
性に優れるとともに、そのサイジング剤塗布炭素繊維をプリプレグに用いた場合にもプリ
プレグを長期保管した場合の経時変化が小さく、複合材料用の炭素繊維に好適なものであ
る。
本発明にかかるサイジング剤は、炭素繊維に塗布した際、サイジング層内側(炭素繊維
側)に脂肪族エポキシ化合物(A)が多く存在することで、炭素繊維と脂肪族エポキシ化
合物(A)とが強固に相互作用を行い、接着性を高めるとともに、サイジング層表層(マ
トリックス樹脂側)には芳香族エポキシ化合物(B1)を含む芳香族化合物(B)を多く
存在させることで、内層にある脂肪族エポキシ化合物(A)とマトリックス樹脂との反応
を阻害しながら、サイジング層表層(マトリックス樹脂側)にはマトリックス樹脂と強い
相互作用が可能な化学組成として、所定割合のエポキシ基を含む芳香族エポキシ化合物(
B1)および脂肪族エポキシ化合物(A)が所定の割合で存在するため、マトリックス樹
脂との接着性も向上するものである。
サイジング剤が、芳香族エポキシ化合物(B1)のみからなり、脂肪族エポキシ化合物
(A)を含まない場合、サイジング剤とマトリックス樹脂との反応性が低く、プリプレグ
を長期保管した場合の物性変化が小さいという利点がある。また、剛直な界面層を形成す
ることができるという利点もある。しかしながら、芳香族エポキシ化合物(B1)はその
化合物の剛直さに由来して、脂肪族エポキシ化合物(A)と比較して、炭素繊維とマトリ
ックス樹脂との接着性が若干劣ることが確認されている。
また、サイジング剤が、脂肪族エポキシ化合物(A)のみからなる場合、該サイジング
剤を塗布した炭素繊維はマトリックス樹脂との接着性が高いことが確認されている。その
メカニズムは確かではないが、脂肪族エポキシ化合物(A)は柔軟な骨格および自由度が
高い構造に由来して、炭素繊維表面のカルボキシル基および水酸基との官能基と脂肪族エ
ポキシ化合物(A)が強い相互作用を形成することが可能であると考えられる。しかしな
がら、脂肪族エポキシ化合物(A)は、炭素繊維表面との相互作用により高い接着性を発
現する一方、マトリックス樹脂中の硬化剤に代表される官能基を有する化合物との反応性
が高く、プリプレグの状態で長期間保管すると、マトリックス樹脂とサイジング剤の相互
作用により界面層の構造が変化し、そのプリプレグから得られる炭素繊維強化複合材料の
物性が低下する課題があることが確認されている。
本発明において、脂肪族エポキシ化合物(A)と芳香族化合物(B)を混合した場合、
より極性の高い脂肪族エポキシ化合物(A)が炭素繊維側に多く偏在し、炭素繊維と逆側
のサイジング層の最外層に極性の低い芳香族化合物(B)が偏在しやすいという現象が見
られる。このサイジング層の傾斜構造の結果として、脂肪族エポキシ化合物(A)は炭素
繊維近傍で炭素繊維と強い相互作用を有することで炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性
を高めることができる。また、サイジング剤塗布炭素繊維をプリプレグにした場合には、
外層に多く存在する芳香族化合物(B)は、脂肪族エポキシ化合物(A)をマトリックス
樹脂から遮断する役割を果たす。このことにより、脂肪族エポキシ化合物(A)とマトリ
ックス樹脂中の反応性の高い成分との反応が抑制されるため、長期保管時の安定性が発現
される。なお、脂肪族エポキシ化合物(A)を芳香族化合物(B)でほぼ完全に覆う場合
には、サイジング剤とマトリックス樹脂との相互作用が小さくなり接着性が低下してしま
うため、サイジング剤表面の脂肪族エポキシ化合物(A)と芳香族化合物(B)の存在比
率が重要である。
本発明に係るサイジング剤は、溶媒を除いたサイジング剤全量に対して、脂肪族エポキ
シ化合物(A)を35〜65質量%、芳香族化合物(B)を35〜60質量%少なくとも
含むことが好ましい。脂肪族エポキシ化合物(A)を、溶媒を除いたサイジング剤全量に
対して、35質量%以上配合することにより、接着性が向上する。また、65質量%以下
とすることで、サイジング剤として脂肪族エポキシ化合物(A)以外の成分を用いること
ができ、当該サイジング剤塗布炭素繊維を用いて製造されるプリプレグを長期保管した場
合にも、その後炭素繊維強化複合材料に成形した際の物性が良好になる。脂肪族エポキシ
化合物(A)の配合量は、38質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ま
しい。また、脂肪族エポキシ化合物(A)の配合量は、60質量%以下がより好ましく、
55質量%以下がさらに好ましい。
本発明のサイジング剤において、芳香族化合物(B)を、溶媒を除いたサイジング剤全
量に対して、35質量%以上配合することで、サイジング剤の外層中の芳香族化合物(B
)の組成を高く維持することができるため、サイジング剤塗布炭素繊維を用いて製造され
るプリプレグにおいて、長期保管時に反応性の高い脂肪族エポキシ化合物(A)とマトリ
ックス樹脂中の反応性化合物との反応による物性低下が抑制される。また、60質量%以
下とすることで、サイジング剤中の傾斜構造を発現することができ、接着性を維持するこ
とができる。芳香族化合物(B)の配合量は、37質量%以上がより好ましく、39質量
%以上がさらに好ましい。また、芳香族化合物(B)の配合量は、55質量%以下がより
好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。
本発明におけるサイジング剤には、エポキシ成分として、脂肪族エポキシ化合物(A)
に加えて、芳香族化合物(B)である芳香族エポキシ化合物(B1)が含まれる。脂肪族
エポキシ化合物(A)と芳香族エポキシ化合物(B1)の質量比(A)/(B1)は、5
2/48〜80/20であることが好ましい。(A)/(B1)を52/48以上とする
ことにより、炭素繊維表面に存在する脂肪族エポキシ化合物(A)の比率が大きくなり、
炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が向上する。その結果、得られた炭素繊維強化複合材料の引張強度などのコンポジット物性が高くなる。また、(A)/(B1)を80/20以下とすることにより、反応性の高い脂肪族エポキシ化合物(A)が炭素繊維表面に存在する量が少なくなり、マトリックス樹脂との反応性が抑制できるため好ましい。(A)/(B1)の質量比は55/45以上がより好ましく、60/40以上がさらに好ましい。また、(A)/(B1)の質量比は75/35以下がより好ましく、73/37以下がさらに好ましい。
本発明における脂肪族エポキシ化合物(A)は、芳香環を含まないエポキシ化合物であ
る。自由度の高い柔軟な骨格を有していることから、炭素繊維と強い相互作用を有するこ
とが可能である。その結果、サイジング剤を塗布した炭素繊維とマトリックス樹脂との接
着性が向上する。
本発明において、脂肪族エポキシ化合物(A)は分子内に1個以上のエポキシ基を有す
る。そのことにより、炭素繊維とサイジング剤中のエポキシ基の強固な結合を形成するこ
とができる。分子内のエポキシ基は、2個以上であることが好ましく、3個以上であるこ
とがより好ましい。脂肪族エポキシ化合物(A)が、分子内に2個以上のエポキシ基を有
するエポキシ化合物であると、1個のエポキシ基が炭素繊維表面の酸素含有官能基と共有
結合を形成した場合でも、残りのエポキシ基がマトリックス樹脂と共有結合または水素結
合を形成することができ、接着性をさらに向上することができる。エポキシ基の数の上限
は特にないが、接着性の観点からは10個で十分である。
本発明において、脂肪族エポキシ化合物(A)は、2種以上の官能基を3個以上有する
エポキシ化合物であることが好ましく、2種以上の官能基を4個以上有するエポキシ化合
物であることがより好ましい。エポキシ化合物が有する官能基は、エポキシ基以外に、水
酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基から
選択されるものが好ましい。脂肪族エポキシ化合物(A)が、分子内に3個以上のエポキ
シ基または他の官能基を有するエポキシ化合物であると、1個のエポキシ基が炭素繊維表
面の酸素含有官能基と共有結合を形成した場合でも、残りの2個以上のエポキシ基または
他の官能基がマトリックス樹脂と共有結合または水素結合を形成することができ、接着性
がさらに向上する。エポキシ基を含む官能基の数の上限は特にないが、接着性の観点から
10個で十分である。
本発明において、脂肪族エポキシ化合物(A)のエポキシ当量は、360g/eq.未
満であることが好ましく、より好ましくは270g/eq.未満であり、さらに好ましく
は180g/eq.未満である。脂肪族エポキシ化合物(A)のエポキシ当量が360g
/eq.未満であると、高密度で炭素繊維との相互作用が形成され、炭素繊維とマトリッ
クス樹脂との接着性がさらに向上する。エポキシ当量の下限は特にないが、90g/eq
.以上であれば接着性の観点から十分である。
本発明において、脂肪族エポキシ化合物(A)の具体例としては、例えば、ポリオール
から誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ化合物、複数活性水素を有するアミンから
誘導されるグリシジルアミン型エポキシ化合物、ポリカルボン酸から誘導されるグリシジ
ルエステル型エポキシ化合物、および分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して
得られるエポキシ化合物が挙げられる。
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、ポリオールとエピクロロヒドリンとの
反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物が挙げられる。たとえば、グリ
シジルエーテル型エポキシ化合物として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、
トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピ
レングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレ
ングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジ
オール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、
ポリブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6
−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水
添ビスフェノールF、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロー
ルプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、およびアラビトールから選択される
1種と、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合
物である。また、このグリシジルエーテル型エポキシ化合物として、ジシクロペンタジエ
ン骨格を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物も例示される。
グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、例えば、1,3−ビス(アミノメチル)
シクロヘキサンが挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、例えば、ダイマー酸を、エピクロロヒ
ドリンと反応させて得られるグリシジルエステル型エポキシ化合物が挙げられる。
分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化させて得られるエポキシ化合物としては
、例えば、分子内にエポキシシクロヘキサン環を有するエポキシ化合物が挙げられる。さ
らに、このエポキシ化合物としては、エポキシ化大豆油が挙げられる。
本発明に使用する脂肪族エポキシ化合物(A)として、これらのエポキシ化合物以外に
も、トリグリシジルイソシアヌレートのようなエポキシ化合物が挙げられる。
本発明にかかる脂肪族エポキシ化合物(A)は、1個以上のエポキシ基と、水酸基、ア
ミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、カルボキシル基、エステル基
およびスルホ基から選ばれる、少なくとも1個以上の官能基を有することが好ましい。
脂肪族エポキシ化合物(A)が有する官能基の具体例として、例えば、エポキシ基と水酸
基を有する化合物、エポキシ基とアミド基を有する化合物、エポキシ基とイミド基を有す
る化合物、エポキシ基とウレタン基を有する化合物、エポキシ基とウレア基を有する化合
物、エポキシ基とスルホニル基を有する化合物、エポキシ基とスルホ基を有する化合物が
挙げられる。
エポキシ基に加えて水酸基を有する脂肪族エポキシ化合物(A)としては、例えば、ソ
ルビトール型ポリグリシジルエーテルおよびグリセロール型ポリグリシジルエーテル等が
挙げられ、具体的には“デナコール(登録商標)”EX−611、EX−612、EX−
614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−421、
EX−313、EX−314およびEX−321(ナガセケムテックス株式会社製)等が
挙げられる。
エポキシ基に加えてアミド基を有する脂肪族エポキシ化合物(A)としては、例えば、
アミド変性エポキシ化合物等が挙げられる。アミド変性エポキシ化合物は脂肪族ジカルボ
ン酸アミドのカルボキシル基に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物のエポキシ
基を反応させることによって得ることができる。
エポキシ基に加えてウレタン基を有する脂肪族エポキシ化合物(A)としては、例えば
、ウレタン変性エポキシ化合物が挙げられ、具体的には“アデカレジン(登録商標)”E
PU−78−13S、EPU−6、EPU−11、EPU−15、EPU−16A、EP
U−16N、EPU−17T−6、EPU−1348およびEPU−1395(株式会社
ADEKA製)等が挙げられる。または、ポリエチレンオキサイドモノアルキルエーテル
の末端水酸基に、その水酸基量に対する反応当量の多価イソシアネートを反応させ、次い
で得られた反応生成物のイソシアネート残基に多価エポキシ化合物内の水酸基と反応させ
ることによって得ることができる。ここで、用いられる多価イソシアネートとしては、ヘ
キサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシア
ネートなどが挙げられる。
エポキシ基に加えてウレア基を有する脂肪族エポキシ化合物(A)としては、例えば、
ウレア変性エポキシ化合物等が挙げられる。ウレア変性エポキシ化合物は脂肪族ジカルボン酸ウレアのカルボキシル基に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物のエポキシ基を反応させることによって得ることができる。
本発明で用いる脂肪族エポキシ化合物(A)は、上述した中でも高い接着性の観点から
、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレ
ングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコー
ル、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコー
ル、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,
4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ポリブチレングリコール、1,5−ペン
タンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、ジ
グリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソ
ルビトール、およびアラビトールから選択される1種と、エピクロロヒドリンとの反応に
より得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物がより好ましい。
上記の中でも本発明における脂肪族エポキシ化合物(A)は、高い接着性の観点から、
分子内にエポキシ基を2以上有するポリエーテル型ポリエポキシ化合物および/またはポ
リオール型ポリエポキシ化合物が好ましい。
本発明において、脂肪族エポキシ化合物(A)は、ポリグリセロールポリグリシジルエ
ーテルがさらに好ましい。
本発明において、芳香族化合物(B)は、分子内に芳香環を1個以上有する。芳香環と
は、炭素のみからなる芳香環炭化水素でも良いし、窒素あるいは酸素などのヘテロ原子を含むフラン、チオフェン、ピロール、イミダゾールなどの複素芳香環でも構わない。また
、芳香環はナフタレン、アントラセンなどの多環式芳香環でも構わない。サイジング剤を塗布した炭素繊維とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化複合材料において、炭素繊維近傍のいわゆる界面層は、炭素繊維あるいはサイジング剤の影響を受け、マトリックス樹脂とは異なる特性を有する場合がある。サイジング剤が芳香環を1個以上有する芳香族化合物(B)を含むと、剛直な界面層が形成され、炭素繊維とマトリックス樹脂との間の応力伝達能力が向上し、繊維強化複合材料の0°引張強度等の力学特性が向上する。また
、芳香環の疎水性により、脂肪族エポキシ化合物(A)に比べて炭素繊維との相互作用が弱くなるため、炭素繊維との相互作用により炭素繊維側に脂肪族エポキシ化合物(A)が多く存在し、サイジング層外層に芳香族化合物(B)が多く存在する結果となる。これにより、芳香族化合物(B)が脂肪族エポキシ化合物(A)とマトリックス樹脂との反応を抑制するため、本発明にかかるサイジング剤を塗布した炭素繊維をプリプレグに用いた場合、長期間保管した場合の経時変化を抑制することができ好ましい。芳香族化合物(B)として、芳香環を2個以上有するものを選択することで、プリプレグとした際の長期安定性をより向上することができる。芳香環の数の上限は特にないが、10個あれば力学特性およびマトリックス樹脂との反応の抑制の観点から十分である。
本発明において、芳香族化合物(B)は分子内に1種以上の官能基を有することができ
る。また、芳香族化合物(B)は、1種類であっても良いし、複数の化合物を組み合わせ
て用いても良い。芳香族化合物(B)は、分子内に1個以上のエポキシ基と1個以上の芳
香環を有する芳香族エポキシ化合物(B1)を少なくとも含むものである。エポキシ基以
外の官能基は水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、カル
ボキシル基、エステル基またはスルホ基から選択されるものが好ましく、1分子内に2種
以上の官能基を含んでいても良い。芳香族化合物(B)は、芳香族エポキシ化合物(B1
)以外には、化合物の安定性、高次加工性を良好にすることから、芳香族エステル化合物
、芳香族ウレタン化合物が好ましく用いられる。
本発明において、芳香族エポキシ化合物(B1)のエポキシ基は、2個以上であること
が好ましく、3個以上であることがより好ましい。また、10個以下であることが好まし
い。
本発明において、芳香族エポキシ化合物(B1)は、2種以上の官能基を3個以上有す
るエポキシ化合物であることが好ましく、2種以上の官能基を4個以上有するエポキシ化
合物であることがより好ましい。芳香族エポキシ化合物(B1)が有する官能基は、エポ
キシ基以外に、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、ま
たはスルホ基から選択されるものが好ましい。芳香族エポキシ化合物(B1)が、分子内
に3個以上のエポキシ基または1個のエポキシ基と他の官能基を2個以上有するエポキシ
化合物であると、1個のエポキシ基が炭素繊維表面の酸素含有官能基と共有結合を形成し
た場合でも、残りの2個以上のエポキシ基または他の官能基がマトリックス樹脂と共有結
合または水素結合を形成することができ、接着性がさらに向上する。エポキシ基を含む官
能基の数の上限は特にないが、接着性の観点から10個で十分である。
本発明において、芳香族エポキシ化合物(B1)のエポキシ当量は、360g/eq.
未満であることが好ましく、より好ましくは270g/eq.未満であり、さらに好まし
くは180g/eq.未満である。芳香族エポキシ化合物(B1)のエポキシ当量が36
0g/eq.未満であると、高密度で共有結合が形成され、炭素繊維とマトリックス樹脂
との接着性がさらに向上する。エポキシ当量の下限は特にないが、90g/eq.以上で
あれば接着性の観点から十分である。
本発明において、芳香族エポキシ化合物(B1)の具体例としては、例えば、芳香族ポ
リオールから誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ化合物、複数活性水素を有する芳
香族アミンから誘導されるグリシジルアミン型エポキシ化合物、芳香族ポリカルボン酸か
ら誘導されるグリシジルエステル型エポキシ化合物、および分子内に複数の2重結合を有
する芳香族化合物を酸化して得られるエポキシ化合物が挙げられる。
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェ
ノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、フ
ェノールノボラック、クレゾールノボラック、ヒドロキノン、レゾルシノール、4,4’
−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、1,6−ジヒドロキシ
ナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、トリス(p−ヒドロ
キシフェニル)メタン、およびテトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンから選択さ
れる1種と、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ
化合物が挙げられる。また、グリシジルエーテル型エポキシ化合物として、ビフェニルア
ラルキル骨格を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物も例示される。
グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、例えば、N,N−ジグリシジルアニリン
、N,N−ジグリシジル−o−トルイジンのほか、m−キシリレンジアミン、m−フェニ
レンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよび9,9−ビス(4−アミノフ
ェニル)フルオレンから選択される1種と、エピクロロヒドリンとの反応により得られる
グリシジルエーテル型エポキシ化合物が挙げられる。
さらに、例えば、グリシジルアミン型エポキシ化合物として、m−アミノフェノール、
p−アミノフェノール、および4−アミノ−3−メチルフェノールのアミノフェノール類
の水酸基とアミノ基の両方を、エピクロロヒドリンと反応させて得られるエポキシ化合物
が挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、ヘ
キサヒドロフタル酸を、エピクロロヒドリンと反応させて得られるグリシジルエステル型
エポキシ化合物が挙げられる。
本発明に使用する芳香族エポキシ化合物(B1)として、これらのエポキシ化合物以外
にも、上に挙げたエポキシ化合物を原料として合成されるエポキシ化合物、例えば、ビス
フェノールAジグリシジルエーテルとトリレンジイソシアネートからオキサゾリドン環生
成反応により合成されるエポキシ化合物が挙げられる。
本発明において、芳香族エポキシ化合物(B1)は、1個以上のエポキシ基以外に、水
酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、カルボキシル基、エ
ステル基およびスルホ基から選ばれる、少なくとも1個以上の官能基を有するものが好ま
しく用いられる。例えば、エポキシ基と水酸基を有する化合物、エポキシ基とアミド基を
有する化合物、エポキシ基とイミド基を有する化合物、エポキシ基とウレタン基を有する
化合物、エポキシ基とウレア基を有する化合物、エポキシ基とスルホニル基を有する化合
物、エポキシ基とスルホ基を有する化合物が挙げられる。
エポキシ基に加えてアミド基を有する芳香族エポキシ化合物(B1)としては、例えば
、グリシジルベンズアミド、アミド変性エポキシ化合物等が挙げられる。アミド変性エポ
キシ化合物は芳香環を含有するジカルボン酸アミドのカルボキシル基に2個以上のエポキ
シ基を有するエポキシ化合物のエポキシ基を反応させることによって得ることができる。
エポキシ基に加えてイミド基を有する芳香族エポキシ化合物(B1)としては、例えば
、グリシジルフタルイミド等が挙げられる。具体的には“デナコール(登録商標)”EX
−731(ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
エポキシ基に加えてウレタン基を有する芳香族エポキシ化合物(B1)としては、ポリ
エチレンオキサイドモノアルキルエーテルの末端水酸基に、その水酸基量に対する反応当
量の芳香環を含有する多価イソシアネートを反応させ、次いで得られた反応生成物のイソ
シアネート残基に多価エポキシ化合物内の水酸基と反応させることによって得ることがで
きる。ここで、用いられる多価イソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネ
ート、メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ジフェニル
メタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートおよびビフェニル−2
,4,4’−トリイソシアネートなどが挙げられる。
エポキシ基に加えてウレア基を有する芳香族エポキシ化合物(B1)としては、例えば
、ウレア変性エポキシ化合物等が挙げられる。ウレア変性エポキシ化合物はジカルボン酸ウレアのカルボキシル基に2個以上のエポキシ基を有する芳香環を含有するエポキシ化合物のエポキシ基を反応させることによって得ることができる。
エポキシ基に加えてスルホニル基を有する芳香族エポキシ化合物(B1)としては、例
えば、ビスフェノールS型エポキシ等が挙げられる。
エポキシ基に加えてスルホ基を有する芳香族エポキシ化合物(B1)としては、例えば
、p−トルエンスルホン酸グリシジルおよび3−ニトロベンゼンスルホン酸グリシジル等
が挙げられる。
本発明において、芳香族エポキシ化合物(B1)は、フェノールノボラック型エポキシ
化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、またはテトラグリシジルジアミノジフ
ェニルメタン、ビスフェノールA型エポキシ化合物あるいはビスフェノールF型エポキシ化合物であることが好ましい。これらのエポキシ化合物は、エポキシ基数が多く、エポキシ当量が小さく、かつ、2個以上の芳香環を有しており、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性を向上させることに加え、繊維強化複合材料の0°引張強度等の力学特性を向上させる。また、プリプレグを長期保管した場合の安定性、接着性の観点から、芳香族エポキシ化合物(B1)はビスフェノールA型エポキシ化合物あるいはビスフェノールF型エポキシ化合物であることがより好ましい。
さらに、本発明で用いられるサイジング剤には、脂肪族エポキシ化合物(A)と芳香族
化合物(B)である芳香族エポキシ化合物(B1)以外の成分を1種類以上含んでも良い
。炭素繊維とサイジング剤との接着性を高める接着性促進成分、サイジング剤塗布炭素繊維に収束性あるいは柔軟性を付与する材料を配合することで取扱い性、耐擦過性および耐毛羽性を高め、マトリックス樹脂の含浸性を向上させることができる。本発明において、プリプレグでの長期安定性を向上させる目的で、(A)および(B1)以外の化合物を含有することができる。また、サイジング剤の安定性を目的として、分散剤および界面活性剤等の補助成分を添加しても良い。
本発明で用いられるサイジング剤には、脂肪族エポキシ化合物(A)と芳香族エポキシ
化合物(B1)以外に、分子内にエポキシ基を持たないエステル化合物(C)を配合する
ことができる。本発明にかかるサイジング剤は、エステル化合物(C)を、溶媒を除いた
サイジング剤全量に対して、2〜35質量%配合することができる。15〜30質量%で
あることがより好ましい。エステル化合物(C)を配合することで、収束性が向上し、取
り扱い性が向上すると同時に、マトリックス樹脂とサイジング剤との反応によるプリプレ
グを長期保管したときの物性の低下を抑制することができる。
エステル化合物(C)は、芳香環を持たない脂肪族エステル化合物でも良いし、芳香環
を分子内に1個以上有する芳香族エステル化合物でも良い。なお、エステル化合物(C)
として芳香族エステル化合物(C1)を用いた場合には、芳香族エステル化合物(C1)
は、分子内にエポキシ化合物を持たないエステル化合物(C)に含まれるのと同時に、本
発明において芳香族化合物(B)に含まれる。かかる場合、芳香族化合物(B)の全てが
、芳香族エステル化合物(C1)となることはなく、芳香族化合物(B)は、芳香族エポ
キシ化合物(B1)と芳香族エステル化合物(C1)とにより構成される。エステル化合
物(C)として芳香族エステル化合物(C1)を用いると、サイジング剤塗布炭素繊維の
取り扱い性が向上すると同時に、芳香族エステル化合物(C1)は、炭素繊維との相互作
用が弱いため、マトリックス樹脂の外層に存在することとなり、プリプレグの長期保管時
の物性低下の抑制効果が高くなる。また、芳香族エステル化合物(C1)は、エステル基
以外にも、エポキシ基以外の官能基、たとえば、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン
基、ウレア基、スルホニル基、カルボキシル基、およびスルホ基を有していてもよい。芳
香族エステル化合物(C1)として、具体的にはビスフェノール類のアルキレンオキシド
付加物と不飽和二塩基酸との縮合物からなるエステル化合物を用いるのが好ましい。不飽
和二塩基酸としては、酸無水物低級アルキルエステルを含み、フマル酸、マレイン酸、シ
トラコン酸、イタコン酸などが好ましく使用される。ビスフェノール類のアルキレンオキ
シド付加物としてはビスフェノールのエチレンオキシド付加物、プロピレンオキシド付加
物、ブチレンオキシド付加物などが好ましく使用される。上記縮合物のうち、好ましくは
フマル酸またはマレイン酸とビスフェノールAのエチレンオキシドまたは/およびプロピ
レンオキシド付加物との縮合物が使用される。
ビスフェノール類へのアルキレンオキシドの付加方法は限定されず、公知の方法を用い
ることができる。上記の不飽和二塩基酸には、必要により、その一部に飽和二塩基酸や少
量の一塩基酸を接着性等の特性が損なわれない範囲で加えることができる。また、ビスフ
ェノール類のアルキレンオキシド付加物には、通常のグリコール、ポリエーテルグリコー
ルおよび少量の多価アルコール、一価アルコールなどを、接着性等の特性が損なわれない
範囲で加えることもできる。ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物と不飽和二塩
基酸との縮合法は、公知の方法を用いることができる。
また、本発明にかかるサイジング剤は、炭素繊維とサイジング剤成分中のエポキシ化合
物との接着性を高める目的で、接着性を促進する成分である3級アミン化合物および/ま
たは3級アミン塩、カチオン部位を有する4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩およ
び/またはホスフィン化合物から選択される少なくとも1種の化合物を配合することがで
きる。発明にかかるサイジング剤は、該化合物を、溶媒を除いたサイジング剤全量に対し
て、0.1〜25質量%配合することが好ましく、2〜8質量%がより好ましい。
脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族エポキシ化合物(B1)に、接着性促進成分
として3級アミン化合物および/または3級アミン塩、カチオン部位を有する4級アンモ
ニウム塩、4級ホスホニウム塩および/またはホスフィン化合物から選択される少なくと
も1種の化合物を併用したサイジング剤は、該サイジング剤を炭素繊維に塗布し、特定の
条件で熱処理した場合、接着性がさらに向上する。そのメカニズムは確かではないが、ま
ず、該化合物が本発明で用いられる炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有
官能基に作用し、これらの官能基に含まれる水素イオンを引き抜きアニオン化した後、こ
のアニオン化した官能基と脂肪族エポキシ化合物(A)または芳香族エポキシ化合物(B
1)成分に含まれるエポキシ基が求核反応するものと考えられる。これにより、本発明で
用いられる炭素繊維とサイジング剤中のエポキシ基の強固な結合が形成され、接着性が向
上するものと推定される。
接着性促進成分の具体的な例としては、N−ベンジルイミダゾール、1,8−ジアザビ
シクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)およびその塩、または、1,5−ジア
ザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン(DBN)およびその塩であることが好ましく、
特に1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)およびその塩、
または、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン(DBN)およびその塩が
好適である。
上記のDBU塩としては、具体的には、DBUのフェノール塩(U−CAT SA1、サンアプロ株式会社製)、DBUのオクチル酸塩(U−CAT SA102、サンアプロ株式会社製)、DBUのp−トルエンスルホン酸塩(U−CAT SA506、サンアプロ株式会社製)、DBUのギ酸塩(U−CAT SA603、サンアプロ株式会社製)、DBUのオルソフタル酸塩(U−CAT SA810)、およびDBUのフェノールノボラック樹脂塩(U−CAT SA810、SA831、SA841、SA851、881、サンアプロ株式会社製)などが挙げられる。
本発明において、サイジング剤に配合する接着性促進成分としては、トリブチルアミン
またはN,N−ジメチルベンジルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリイソプロピ
ルアミン、ジブチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノー
ルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンであることが好
ましく、特にトリイソプロピルアミン、ジブチルエタノールアミン、ジエチルエタノール
アミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロピルエチルアミンが好適である。
上記以外にも、界面活性剤などの添加剤として例えば、ポリエチレンオキサイドやポリ
プロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド、高級アルコール、多価アルコール
、アルキルフェノール、およびスチレン化フェノール等にポリエチレンオキサイドやポリ
プロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイドが付加した化合物、およびエチレン
オキサイドとプロピレンオキサイドとのブロック共重合体等のノニオン系界面活性剤が好
ましく用いられる。また、本発明の効果に影響しない範囲で、適宜、ポリエステル樹脂、
および不飽和ポリエステル化合物等を添加してもよい。
次に、本発明で使用する炭素繊維について説明する。本発明において使用する炭素繊維
としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、レーヨン系およびピッチ系の炭
素繊維が挙げられる。なかでも、強度と弾性率のバランスに優れたPAN系炭素繊維が好
ましく用いられる。
本発明にかかる炭素繊維は、得られた炭素繊維束のストランド強度が、3.5GPa以
上であることが好ましく、より好ましくは4GPa以上であり、さらに好ましくは5GP
a以上である。また、得られた炭素繊維束のストランド弾性率が、220GPa以上であ
ることが好ましく、より好ましくは240GPa以上であり、さらに好ましくは280G
Pa以上である。
本発明において、上記の炭素繊維束のストランド引張強度と弾性率は、JIS−R−7
608(2004)の樹脂含浸ストランド試験法に準拠し、次の手順に従い求めることが
できる。樹脂処方としては、“セロキサイド(登録商標)”2021P(ダイセル化学工
業社製)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(東京化成工業(株)製)/アセトン=10
0/3/4(質量部)を用い、硬化条件としては、常圧、130℃、30分を用いる。炭
素繊維束のストランド10本を測定し、その平均値をストランド引張強度およびストラン
ド弾性率とした。
本発明において用いられる炭素繊維は、表面粗さ(Ra)が6.0〜100nmである
。好ましくは15〜80nmであり、30〜60nmが好適である。表面粗さ(Ra)が
6.0〜60nmである炭素繊維は、表面に高活性なエッジ部分を有するため、前述した
サイジング剤のエポキシ基等との反応性が向上し、界面接着性を向上することができる。
また、表面粗さ(Ra)が6.0〜100nmである炭素繊維は、表面に凹凸を有してい
るため、サイジング剤のアンカー効果によって界面接着性を向上することができる。
炭素繊維の表面粗さ(Ra)を前述の範囲に制御するためには、後述する紡糸方法として湿式紡糸方法が好ましく用いられる。また、炭素繊維の表面粗さ(Ra)は、紡糸工程での凝固液の種類(例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの有機溶剤の水溶液、塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウムなどの無機化合物の水溶液)及び濃度および凝固液温度、凝固糸の引取速度および延伸比、さらに耐炎化、前炭化、炭化それぞれの工程での延伸比を組み合わせることによって制御することもできる。さらに電解処理を組み合わせることにより、所定の炭素繊維の表面粗さ(Ra)に制御することもできる。
炭素繊維の表面粗さ(Ra)は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いることにより測定することができる。例えば、炭素繊維を長さ数mm程度にカットしたものを用意し、銀ペーストを用いて基板(シリコンウエハ)上に固定し、原子間力顕微鏡(AFM)によって各単繊維の中央部において、3次元表面形状の像を観測すればよい。原子間力顕微鏡としてはDigital Instuments社製 NanoScope IIIaにおいてDimension 3000ステージシステムなどが使用可能であり、以下の観測条件で観測することができる。
・走査モード:タッピングモード
・探針:シリコンカンチレバー
・走査範囲:0.6μm×0.6μm
・走査速度:0.3Hz
・ピクセル数:512×512
・測定環境:室温、大気中
また、各試料について、単繊維1本から1箇所ずつ観察して得られた像について、繊維
断面の丸みを3次曲面で近似し、得られた像全体を対象として、平均粗さ(Ra)を算出
し、単繊維5本について、平均粗さ(Ra)を求め、平均値を評価することが好ましい。
本発明において炭素繊維の総繊度は、400〜3000テックスであることが好ましい
。また、炭素繊維のフィラメント数は好ましくは1000〜100000本であり、さら
に好ましくは3000〜50000本である。
本発明において、炭素繊維の単繊維径は4.5〜7.5μmが好ましい。7.5μm以
下であることで、強度と弾性率の高い炭素繊維を得られるため、好ましく用いられる。6
μm以下であることがより好ましく、さらには5.5μm以下であることが好ましい。4
.5μm以上で工程における単繊維切断が起きにくくなり生産性が低下しにくく好ましい
本発明において、炭素繊維としては、X線光電子分光法により測定されるその繊維表面
の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度(O/C)が、0.05〜0
.50の範囲内であるものが好ましく、より好ましくは0.06〜0.30の範囲内のも
のであり、さらに好ましくは0.07〜0.25の範囲内のものである。表面酸素濃度(O/C)が0.05以上であることにより、炭素繊維表面の酸素含有官能基を確保し、マトリックス樹脂との強固な接着を得ることができる。また、表面酸素濃度(O/C)が0.50以下であることにより、酸化による炭素繊維自体の強度の低下を抑えることができる。
炭素繊維の表面酸素濃度は、X線光電子分光法により、次の手順に従って求めたもので
ある。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着している汚れなどを除去した炭素繊維を20mm
にカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてAlKα1,2を用い
、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保ち測定した。光電子脱出角度90°で測定した。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sのメインピーク(ピークトップ)の結合エネルギー値を284.6eVに合わせる。C1sピーク面積は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、O1sピーク面積は、528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求められる。表面酸素濃度(O/C)は、上記O1sピーク面積の比を装置固有の感度補正値で割ることにより算出した原子数比で表す。X線光電子分光法装置として、アルバック・ファイ(株)製ESCA−1600を用いる場合、上記装置固有の感度補正値は2.33である。
本発明に用いる炭素繊維は、化学修飾X線光電子分光法により測定される炭素繊維表面
のカルボキシル基(COOH)と炭素(C)の原子数の比で表される表面カルボキシル基
濃度(COOH/C)が、0.003〜0.015の範囲内であることが好ましい。炭素
繊維表面のカルボキシル基濃度(COOH/C)の、より好ましい範囲は、0.004〜
0.010である。また、本発明に用いる炭素繊維は、化学修飾X線光電子分光法により
測定される炭素繊維表面の水酸基(OH)と炭素(C)の原子数の比で表される表面水酸
基濃度(COH/C)が、0.001〜0.050の範囲内であることが好ましい。炭素
繊維表面の表面水酸基濃度(COH/C)は、より好ましくは0.010〜0.040の
範囲である。
炭素繊維表面のカルボキシル基濃度(COOH/C)、水酸基濃度(COH/C)は、
X線光電子分光法により、次の手順に従って求められるものである。
表面水酸基濃度(COH/C)は、次の手順に従って化学修飾X線光電子分光法により
求められる。先ず、溶媒でサイジング剤などを除去した炭素繊維束をカットして白金製の
試料支持台上に拡げて並べ、0.04モル/リットルの無水3弗化酢酸気体を含んだ乾燥
窒素ガス中に室温で10分間さらし、化学修飾処理した後、X線光電子分光装置に光電子
脱出角度を35゜としてマウントし、X線源としてAlKα1,2を用い、試料チャンバ
ー内を1×10−8Torrの真空度に保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正として、
まずC1sの主ピークの結合エネルギー値を284.6eVに合わせる。C1sピーク面
積[C1s]は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め
、F1sピーク面積[F1s]は、682〜695eVの範囲で直線のベースラインを引
くことにより求められる。また、同時に化学修飾処理したポリビニルアルコールのC1s
ピーク分割から反応率rが求められる。
表面水酸基濃度(COH/C)は、下式により算出した値で表される。
COH/C={[F1s]/(3k[C1s]−2[F1s])r}×100(%)
なお、kは装置固有のC1sピーク面積に対するF1sピーク面積の感度補正値であり
、米国SSI社製モデルSSX−100−206を用いる場合、上記装置固有の感度補正
値は3.919である。
表面カルボキシル基濃度(COOH/C)は、次の手順に従って化学修飾X線光電子分
光法により求められる。先ず、溶媒でサイジング剤などを除去した炭素繊維束をカットし
て白金製の試料支持台上に拡げて並べ、0.02モル/リットルの3弗化エタノール気体
、0.001モル/リットルのジシクロヘキシルカルボジイミド気体及び0.04モル/
リットルのピリジン気体を含む空気中に60℃で8時間さらし、化学修飾処理した後、X
線光電子分光装置に光電子脱出角度を35゜としてマウントし、X線源としてAlKα1,2を用い、試料チャンバー内を1×10−8Torrの真空度に保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値を284.6eVに合わせる。C1sピーク面積[C1s]は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、F1sピーク面積[F1s]は、682〜695eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求められる。また、同時に化学修飾処理したポリアクリル酸のC1sピーク分割から反応率rを、O1sピーク分割からジシクロヘキシルカルボジイミド誘導体の残存率mが求められる。
表面カルボキシル基濃度COOH/Cは、下式により算出した値で表した。
COOH/C={[F1s]/(3k[C1s]−(2+13m)[F1s])r}×100(%)
なお、kは装置固有のC1sピーク面積に対するF1sピーク面積の感度補正値であり
、米国SSI社製モデルSSX−100−206を用いる場合の、上記装置固有の感度補
正値は3.919である。
本発明に用いられる炭素繊維としては、表面自由エネルギーの極性成分が8mJ/m
以上50mJ/m以下のものであることが好ましい。表面自由エネルギーの極性成分が
8mJ/m以上であることで、脂肪族エポキシ化合物(A)がより炭素繊維表面に近づ
くことで接着性が向上し、サイジング層が偏在化した構造を有するため好ましい。表面自
由エネルギーの極性成分が50mJ/m以下であることで、炭素繊維間の収束性が大き
くなるためにマトリックス樹脂との含浸性が良好になるため、複合材料として用いた場合
に用途展開が広がり好ましい。
該炭素繊維表面の表面自由エネルギーの極性成分は、より好ましくは15mJ/m
上45mJ/m以下であり、最も好ましくは25mJ/m以上40mJ/m以下で
ある。炭素繊維の表面自由エネルギーの極性成分は、炭素繊維を水、エチレングリコール
、燐酸トリクレゾールの各液体において、ウィルヘルミ法によって測定される各接触角を
もとに、オーエンスの近似式を用いて算出した表面自由エネルギーの極性成分である。
本発明に用いられる脂肪族エポキシ化合物(A)は表面自由エネルギーの極性成分が9
mJ/m以上、50mJ/m以下のものであれば良い。また、芳香族エポキシ化合物
(B1)は表面自由エネルギーの極性成分が0mJ/m以上、9mJ/m未満のもの
であれば良い。
脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族エポキシ化合物(B1)の表面自由エネルギーの極性成分は、脂肪族エポキシ化合物(A)または芳香族エポキシ化合物(B1)のみからなる溶液中に炭素繊維束を浸漬して引き上げた後、120〜150℃で10分間乾燥後、上述の通り、水、エチレングリコール、燐酸トリクレゾールの各液体において、ウィルヘルミ法によって測定される各接触角をもとに、オーエンスの近似式を用いて算出した表面自由エネルギーの極性成分である。
本発明において、炭素繊維の表面自由エネルギーの極性成分ECFと脂肪族エポキシ化
合物(A)、芳香族エポキシ化合物(B1)の表面自由エネルギーの極性成分E、EB1がECF≧E>EB1を満たすことが好ましい。
次に、PAN系炭素繊維の製造方法について説明する。
炭素繊維の前駆体繊維を得るための紡糸方法としては、湿式、乾式および乾湿式等の紡
糸方法を用いることができる。高強度の炭素繊維が得られやすいという観点から、湿式あ
るいは乾湿式紡糸方法を用いることが好ましい。
炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性をさらに向上するために、表面粗さ(Ra)が
6.0〜100nmの炭素繊維を用いる。該表面粗さの炭素繊維を得るためには、湿式紡
糸方法により前駆体繊維を紡糸することが好ましい。
紡糸原液には、ポリアクリロニトリルのホモポリマーあるいは共重合体を溶剤に溶解し
た溶液を用いることができる。溶剤としてはジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミ
ド、ジメチルアセトアミドなどの有機溶剤や、硝酸、ロダン酸ソーダ、塩化亜鉛、チオシ
アン酸ナトリウムなどの無機化合物の水溶液を使用する。ジメチルスルホキシド、ジメチ
ルアセトアミドが溶剤として好適である。
上記の紡糸原液を口金に通して紡糸し、紡糸浴中、あるいは空気中に吐出した後、紡糸
浴中で凝固させる。口金から出てきた紡糸原液を紡糸浴中に吐出した湿式紡糸が好ましく用いられる。紡糸浴としては、紡糸原液の溶剤として使用した溶剤の水溶液を用いることができる。紡糸原液の溶剤と同じ溶剤を含む紡糸液とすることが好ましく、ジメチルスルホキシド水溶液、ジメチルアセトアミド水溶液が好適である。紡糸浴中で凝固した繊維を、水洗、延伸して前駆体繊維とする。得られた前駆体繊維を耐炎化処理ならびに炭化処理し、必要によってはさらに黒鉛化処理をすることにより炭素繊維を得る。炭化処理と黒鉛化処理の条件としては、最高熱処理温度が1100℃以上であることが好ましく、より好ましくは1400〜3000℃である。
得られた炭素繊維は、マトリックス樹脂との接着性を向上させるために、通常、酸化処
理が施され、これにより、酸素含有官能基が導入される。酸化処理方法としては、気相酸
化、液相酸化および液相電解酸化が用いられるが、生産性が高く、均一処理ができるとい
う観点から、液相電解酸化が好ましく用いられる。
本発明において、液相電解酸化で用いられる電解液としては、酸性電解液およびアルカ
リ性電解液が挙げられるが、接着性の観点からアルカリ性電解液中で液相電解酸化した後
、サイジング剤を塗布することがより好ましい。
酸性電解液としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、燐酸、ホウ酸、および炭酸等の無機
酸、酢酸、酪酸、シュウ酸、アクリル酸、およびマレイン酸等の有機酸、または硫酸アン
モニウムや硫酸水素アンモニウム等の塩が挙げられる。なかでも、強酸性を示す硫酸と硝
酸が好ましく用いられる。
アルカリ性電解液としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化
マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウム等の水酸化物の水溶液、炭酸ナト
リウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムおよび炭酸ア
ンモニウム等の炭酸塩の水溶液、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグ
ネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウムおよび炭酸水素アンモニウム等の炭酸
水素塩の水溶液、アンモニア、水酸化テトラアルキルアンモニウムおよびヒドラジンの水
溶液等が挙げられる。なかでも、マトリックス樹脂の硬化阻害を引き起こすアルカリ金属
を含まないという観点から、炭酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウムの水溶液、あ
るいは、強アルカリ性を示す水酸化テトラアルキルアンモニウムの水溶液が好ましく用い
られる。
本発明において用いられる電解液の濃度は、0.01〜5mol/Lの範囲内であるこ
とが好ましく、より好ましくは0.1〜1mol/Lの範囲内である。電解液の濃度が0
.01mol/L以上であると、電解処理電圧が下げられ、運転コスト的に有利になる。
一方、電解液の濃度が5mol/L以下であると、安全性の観点から有利になる。
本発明において用いられる電解液の温度は、10〜100℃の範囲内であることが好ま
しく、より好ましくは10〜40℃の範囲内である。電解液の温度が10℃以上であると
、電解処理の効率が向上し、運転コスト的に有利になる。一方、電解液の温度が100℃
未満であると、安全性の観点から有利になる。
本発明において、液相電解酸化における電気量は、炭素繊維の炭化度に合わせて最適化
することが好ましく、高弾性率の炭素繊維に処理を施す場合、より大きな電気量が必要で
ある。
本発明において、液相電解酸化における電流密度は、電解処理液中の炭素繊維の表面積
1m当たり1.5〜1000アンペア/mの範囲内であることが好ましく、より好ま
しくは3〜500アンペア/mの範囲内である。電流密度が1.5アンペア/m以上
であると、電解処理の効率が向上し、運転コスト的に有利になる。一方、電流密度が10
00アンペア/m以下であると、安全性の観点から有利になる。
本発明において、電解処理の後、炭素繊維を水洗および乾燥することが好ましい。洗浄
する方法としては、例えば、ディップ法またはスプレー法を用いることができる。なかで
も、洗浄が容易であるという観点から、ディップ法を用いることが好ましく、さらには、
炭素繊維を超音波で加振させながらディップ法を用いることが好ましい態様である。また
、乾燥温度が高すぎると炭素繊維の最表面に存在する官能基は熱分解により消失し易いた
め、できる限り低い温度で乾燥することが望ましく、具体的には乾燥温度が好ましくは2
50℃以下、さらに好ましくは220℃以下で乾燥することが好ましい。一方、乾燥の効
率を考慮すれば、乾燥温度は、110℃以上であることが好ましく、140℃以上である
ことがより好ましい。
次に、上述した炭素繊維にサイジング剤を塗布したサイジング剤塗布炭素繊維について
説明する。本発明にかかるサイジング剤は、脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族化
合物(B)である芳香族エポキシ化合物(B1)を少なくとも含み、それ以外の成分を含
んでも良い。
本発明において、炭素繊維へのサイジング剤の塗布方法としては、溶媒に、脂肪族エポ
キシ化合物(A)および芳香族エポキシ化合物(B1)を少なくとも含む芳香族化合物(
B)、ならびにその他の成分を同時に溶解または分散したサイジング剤含有液を用いて、
1回で塗布する方法や、各化合物(A)、(B1)、(B)やその他の成分を任意に選択
し個別に溶媒に溶解または分散したサイジング剤含有液を用い、複数回において炭素繊維
に塗布する方法が好ましく用いられる。本発明においては、サイジング剤の構成成分をす
べて含むサイジング剤含有液を、炭素繊維に1回で塗布する1段付与を採用することが効
果および処理のしやすさからより好ましく用いられる。
本発明にかかるサイジング剤は、サイジング剤成分を溶媒で希釈したサイジング剤含有
液として用いることができる。このような溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタ
ノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、お
よびジメチルアセトアミドが挙げられるが、なかでも、取扱いが容易であり、安全性の観
点から有利であることから、界面活性剤で乳化させた水分散液あるいは水溶液が好ましく
用いられる。
サイジング剤含有液は、芳香族化合物(B)を少なくとも含む成分を界面活性剤で乳化
させることで水エマルジョン液を作成し、脂肪族エポキシ化合物(A)を少なくとも含む
溶液を混合して調整することが好ましい。この時に、脂肪族エポキシ化合物(A)が水溶
性の場合には、あらかじめ水に溶解して水溶液にしておき、芳香族化合物(B)を少なく
とも含む水エマルジョン液と混合する方法が、乳化安定性の点から好ましく用いられる。
また、脂肪族エポキシ化合物(A)と芳香族化合物(B)およびその他の成分を界面活性
剤で乳化させた水分散剤を用いることが、サイジング剤の長期安定性の点から好ましく用
いることができる。
サイジング剤含有液におけるサイジング剤の濃度は、通常は0.2質量%〜20質量%
の範囲が好ましい。
サイジング剤の炭素繊維への付与(塗布)手段としては、例えば、ローラを介してサイ
ジング剤含有液に炭素繊維を浸漬する方法、サイジング剤含有液の付着したローラに炭素
繊維を接する方法、サイジング剤含有液を霧状にして炭素繊維に吹き付ける方法などがあ
る。また、サイジング剤の付与手段は、バッチ式と連続式いずれでもよいが、生産性がよ
くバラツキが小さくできる連続式が好ましく用いられる。この際、炭素繊維に対するサイ
ジング剤有効成分の付着量が適正範囲内で均一に付着するように、サイジング剤含有液濃
度、温度および糸条張力などをコントロールすることが好ましい。また、サイジング剤付
与時に、炭素繊維を超音波で加振させることも好ましい態様である。
サイジング液を炭素繊維に塗布する際のサイジング剤含有液の液温は、溶媒蒸発による
サイジング剤の濃度変動を抑えるため、10〜50℃の範囲であることが好ましい。また
、サイジング剤含有液を付与した後に、余剰のサイジング剤含有液を絞り取る絞り量を調
整することにより、サイジング剤の付着量の調整および炭素繊維内への均一付与ができる
炭素繊維にサイジング剤を塗布した後、160〜260℃の温度範囲で30〜600秒
間熱処理することが好ましい。熱処理条件は、好ましくは170〜250℃の温度範囲で
30〜500秒間であり、より好ましくは180〜240℃の温度範囲で30〜300秒
間である。熱処理条件が、160℃未満および/または30秒未満であると、サイジング
剤の脂肪族エポキシ化合物(A)と炭素繊維表面の酸素含有官能基との間の相互作用が促
進されず、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性が不十分となったり、溶媒を十分に乾
燥除去できない場合がある。一方、熱処理条件が、260℃を超えるおよび/または60
0秒を超える場合、サイジング剤の分解および揮発が起きて、炭素繊維との相互作用が促
進されず、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性が不十分となる場合がある。
また、前記熱処理は、マイクロ波照射および/または赤外線照射で行うことも可能であ
る。マイクロ波照射および/または赤外線照射によりサイジング剤塗布炭素繊維を加熱処
理した場合、マイクロ波が炭素繊維内部に侵入し、吸収されることにより、短時間に被加
熱物である炭素繊維を所望の温度に加熱できる。また、マイクロ波照射および/または赤
外線照射により、炭素繊維内部の加熱も速やかに行うことができるため、炭素繊維束の内
側と外側の温度差を小さくすることができ、サイジング剤の接着ムラを小さくすることが
可能となる。
上記のようにして製造した、本発明にかかるサイジング剤塗布炭素繊維は、炭素繊維に
塗布したサイジング剤表面を光電子脱出角度15°でX線光電子分光法によって測定され
るC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(
284.6eV)の成分の高さ(cps)と(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(
286.1eV)の成分の高さ(cps)の比率(a)/(b)が0.50〜0.90で
あることを特徴とする。本発明にかかるサイジング剤塗布炭素繊維は、この比率(a)/
(b)が、特定の範囲、すなわち、0.50〜0.90である場合に、マトリックス樹脂
との接着性に優れ、かつプリプレグの状態で長期保管したときも物性低下が少ないことを
見出してなされたものである。
本発明にかかるサイジング剤塗布炭素繊維は、炭素繊維に塗布したサイジング剤表面を
光電子脱出角度15°でX線光電子分光法によって測定されるC1s内殻スペクトルの(
a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高
さ(cps)と(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高
さ(cps)の比率(a)/(b)が、好ましくは、0.55以上、さらに好ましくは0
.57以上である。また、比率(a)/(b)が、好ましくは0.80以下、より好まし
くは0.74以下である。(a)/(b)が大きいということは、表面に芳香族由来の化
合物が多く、脂肪族由来の化合物が少ないことを示す。
X線光電子分光の測定法とは、超高真空中で試料の炭素繊維にX線を照射し、炭素繊維
の表面から放出される光電子の運動エネルギーをエネルギーアナライザーとよばれる装置
で測定する分析手法のことである。この試料の炭素繊維表面から放出される光電子の運動
エネルギーを調べることにより、試料の炭素繊維に入射したX線のエネルギー値から換算
される結合エネルギーが一意的に求まり、その結合エネルギーと光電子強度から、試料の
最表面(〜nm)に存在する元素の種類と濃度、その化学状態を解析することができる。
本発明において、サイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面の(a)、(b)のピ
ーク比は、X線光電子分光法により、次の手順に従って求められるものである。サイジン
グ剤塗布炭素繊維を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源
としてAlKα1,2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保ち測定が行
われる。測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギ
ー値を286.1eVに合わせる。このときに、C1sのピーク面積は282〜296e
Vの範囲で直線ベースラインを引くことにより求められる。また、C1sピークにて面積
を求めた282〜296eVの直線ベースラインを光電子強度の原点(零点)と定義して
、(b)C−O成分に帰属される結合エネルギー286.1eVのピークの高さ(cps
:単位時間あたりの光電子強度)と(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネ
ルギー284.6eVのピークの高さ(cps)を求め、(a)/(b)が算出される。
サイジング剤の内層を光電子脱出角度15°でX線光電子分光法によって測定されるC
1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(28
4.6eV)の成分の高さ(cps)と、(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(2
86.1eV)の成分の高さ(cps)との比率(a)/(b)が0.45〜1.0であ
ることが好ましい。サイジング剤の内層は、サイジング剤塗布炭素繊維をアセトン溶媒で
1〜10分間超音波洗浄した後、炭素繊維に付着している残存サイジング剤を0.10±0.1質量%の範囲に制御した後、上述した方法にて測定が行われる。
本発明において、炭素繊維に塗布されたサイジング剤のエポキシ当量は350〜550
g/eq.であることが好ましい。エポキシ当量が550g/eq.以下であることで、
サイジング剤を塗布した炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が向上する。また、炭素繊
維に塗布されたエポキシ当量が350g/eq.以上であることで、プリプレグに該サイ
ジング剤塗布炭素繊維を用いた場合に、プリプレグに用いているマトリックス樹脂成分と
サイジング剤との反応を抑制することができるため、プリプレグを長期保管した場合にも
得られた炭素繊維強化複合材料の物性が良好になるため好ましい。塗布されたサイジング
剤のエポキシ当量は360g/eq.以上が好ましく、380g/eq.以上がより好ま
しい。また、塗布されたサイジング剤のエポキシ当量は、530g/eq.以下が好まし
く、500g/eq.以下がより好ましい。塗布されたサイジング剤のエポキシ当量を上
記範囲とするためには、エポキシ当量180〜470g/eq.のサイジング剤を塗布す
ることが好ましい。313g/eq.以下であることで、サイジング剤を塗布した炭素繊
維とマトリックス樹脂の接着性が向上する。また、222g/eq.以上であることで、
プリプレグに該サイジング剤塗布炭素繊維を用いた場合に、プリプレグに用いている樹脂
成分とサイジング剤との反応を抑制することができるため、プリプレグを長期保管した場
合にも得られた炭素繊維強化複合材料の物性が良好になる。
本発明におけるサイジング剤のエポキシ当量は、溶媒を除去したサイジング剤をN,N
−ジメチルホルムアミドに代表される溶媒中に溶解し、塩酸でエポキシ基を開環させ、酸
塩基滴定で求めることができる。エポキシ当量は220g/eq.以上が好ましく、24
0g/eq.以上がより好ましい。また、310g/eq.以下が好ましく、280g/
eq.以下がより好ましい。また、本発明における炭素繊維に塗布されたサイジング剤の
エポキシ当量は、サイジング剤塗布炭素繊維をN,N−ジメチルホルムアミドに代表される溶媒中に浸漬し、超音波洗浄を行うことで繊維から溶出させたのち、塩酸でエポキシ基を開環させ、酸塩基滴定で求めることができる。なお、炭素繊維に塗布されたサイジング剤のエポキシ当量は、塗布に用いるサイジング剤のエポキシ当量および塗布後の乾燥での熱履歴などにより、制御することができる。
本発明において、サイジング剤の炭素繊維への付着量は、サイジング剤塗布炭素繊維に
対して、0.1〜10.0質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2〜
3.0質量%の範囲である。サイジング剤の付着量が0.1質量%以上であると、サイジ
ング剤塗布炭素繊維をプリプレグ化および製織する際に、通過する金属ガイド等による摩
擦に耐えることができ、毛羽発生が抑えられ、炭素繊維シートの平滑性などの品位が優れ
る。一方、サイジング剤の付着量が10.0質量%以下であると、サイジング剤塗布炭素
繊維の周囲のサイジング剤膜に阻害されることなくマトリックス樹脂が炭素繊維内部に含
浸され、得られる複合材料においてボイド生成が抑えられ、複合材料の品位が優れ、同時
に機械物性が優れる。
サイジング剤の付着量は、サイジング剤塗布炭素繊維を約2±0.5g採取し、窒素雰囲気中450℃にて加熱処理を15分間行ったときの該加熱処理前後の質量の変化を測定し、質量変化量を加熱処理前の質量で除した値(質量%)とする。
本発明において、炭素繊維に塗布され乾燥されたサイジング剤層の厚さは、2.0〜2
0nmの範囲内で、かつ、厚さの最大値が最小値の2倍を超えないことが好ましい。この
ような厚さの均一なサイジング剤層により、安定して大きな接着性向上効果が得られ、さ
らには、安定した高次加工性が得られる。
本発明において、脂肪族エポキシ化合物(A)の炭素繊維への付着量は、サイジング剤
塗布炭素繊維に対して、0.05〜5.0質量%の範囲であることが好ましく、より好ま
しくは0.2〜2.0質量%の範囲である。さらに好ましくは0.3〜1.0質量%であ
る。脂肪族エポキシ化合物(A)の付着量が0.05質量%以上であると、サイジング剤
塗布炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が向上するため好ましい。
また、本発明において、サイジング剤塗布炭素繊維をアセトニトリル/クロロホルム混
合溶媒により溶出した際、溶出された脂肪族エポキシ化合物(A)の割合は、サイジング
剤塗布炭素繊維100質量部に対し0.3質量部以下であることが好ましい。脂肪族エポキシ化合物(A)の溶出量が0.3質量部以下であると、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維を熱硬化性樹脂とともに用いてプリプレグとした場合に、熱硬化性樹脂の樹脂成分とサイジング剤による反応を抑制することができるため好ましい。かかる観点から、前記の溶出された脂肪族エポキシ化合物(A)の割合は、サイジング剤塗布炭素繊維100質量部に対し、0.1質量部以下がより好ましく、0.05質量部以下がさらに好ましい。
溶出された脂肪族エポキシ化合物(A)の割合は、サイジング剤塗布炭素繊維の試験片
を、アセトニトリル/クロロホルム混合液(体積比9/1)に浸漬し、20分間超音波洗
浄を行ない、サイジング剤をアセトニトリル/クロロホルム混合液に溶出した溶出液につ
いて、液体クロマトグラフィーを用いて下記条件で分析することができる。
・分析カラム:Chromolith Performance RP−18e(4.6×100mm)
・移動相:水/アセトニトリルを使用し、分析開始から7分で、水/アセトニトリル=6
0%/40%からアセトニトリル100%とした後、12分までアセトニトリル100%
を保持し、その後12.1分までに水/アセトニトリル=60%/40%とし、17分ま
で水/アセトニトリル=60%/40%を保持した。
・流量:2.5mL/分
・カラム温度:45℃
・検出器:蒸発光散乱検出器(ELSD)
・検出器温度:60℃
本発明のサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法では、表面自由エネルギーの極性成分が
8mJ/m以上50mJ/m以下の炭素繊維にサイジング剤を塗布することが好まし
い。表面自由エネルギーの極性成分が8mJ/m以上であることで脂肪族エポキシ化合
物(A)がより炭素繊維表面に近づくことで接着性が向上し、サイジング層が偏在化した
構造を有するため好ましい。50mJ/m以下で、炭素繊維間の収束性が大きくなるた
めにマトリックス樹脂との含浸性が良好になるため、複合材料として用いた場合に用途展
開が広がり好ましい。該炭素繊維表面の表面自由エネルギーの極性成分は、より好ましく
は15mJ/m以上45mJ/m以下であり、最も好ましくは25mJ/m以上4
0mJ/m以下である。
本発明のサイジング剤塗布炭素繊維は、例えば、トウ、織物、編物、組み紐、ウェブ、
マットおよびチョップド等の形態で用いられる。特に、比強度と比弾性率が高いことを要
求される用途には、炭素繊維が一方向に引き揃えたトウが最も適しており、さらに、マト
リックス樹脂を含浸したプリプレグが好ましく用いられる。
次に本発明におけるプリプレグおよび炭素繊維強化複合材料について詳細を説明する。
本発明において、プリプレグは、前述したサイジング剤塗布炭素繊維、または前述の方法で製造されたサイジング剤塗布炭素繊維とマトリックス樹脂を含む。
本発明において、マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂(ここで説明される樹脂は、樹脂組成物であってもよい)を使用することができるが、熱硬化性樹脂を好ましく用いることができる。
本発明で用いられる熱硬化性樹脂は、熱により架橋反応が進行して、少なくとも部分的
に三次元架橋構造を形成する樹脂であれば特に限定されない。かかる熱硬化性樹脂として
は、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ベンゾオキ
サジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂および熱硬化性ポリイミド樹脂等
が挙げられ、これらの変性体および2種類以上ブレンドした樹脂なども用いることができ
る。また、これらの熱硬化性樹脂は、加熱により自己硬化するものであっても良いし、硬
化剤や硬化促進剤などを配合するものであっても良い。
エポキシ樹脂に用いるエポキシ化合物(D)としては、特に限定されるものではなく、
ビスフェノール型エポキシ化合物、アミン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エ
ポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合
物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、
ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ビフェニル骨格を有するエポキシ化合物、イソ
シアネート変性エポキシ化合物、テトラフェニルエタン型エポキシ化合物、トリフェニル
メタン型エポキシ化合物などの中から1種以上を選択して用いることができる。
ここで、ビスフェノール型エポキシ化合物とは、ビスフェノール化合物の2つのフェノ
ール性水酸基がグリシジル化されたものであり、ビスフェノールA型、ビスフェノールF
型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、もしくはこれらビスフェノールのハロ
ゲン、アルキル置換体、水添品等が挙げられる。また、単量体に限らず、複数の繰り返し
単位を有する高分子量体も好適に使用することができる。
ビスフェノールA型エポキシ化合物の市販品としては、“jER(登録商標)”825
、828、834、1001、1002、1003、1003F、1004、1004A
F、1005F、1006FS、1007、1009、1010(以上、三菱化学(株)
製)などが挙げられる。臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物としては、“jER(
登録商標)”505、5050、5051、5054、5057(以上、三菱化学(株)
製)などが挙げられる。水添ビスフェノールA型エポキシ化合物の市販品としては、ST
5080、ST4000D、ST4100D、ST5100(以上、新日鐵化学(株)製
)などが挙げられる。
ビスフェノールF型エポキシ化合物の市販品としては、“jER(登録商標)”806
、807、4002P、4004P、4007P、4009P、4010P(以上、三菱
化学(株)製)、“エピクロン(登録商標)”830、835(以上、DIC(株)製)
、“エポトート(登録商標)”YDF2001、YDF2004(以上、新日鐵化学(株
)製)などが挙げられる。テトラメチルビスフェノールF型エポキシ化合物としては、Y
SLV−80XY(新日鐵化学(株)製)などが挙げられる。
ビスフェノールS型エポキシ化合物としては、“エピクロン(登録商標)”EXA−1
54(DIC(株)製)などが挙げられる。
また、アミン型エポキシ化合物としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニ
ルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラ
グリシジルキシリレンジアミンや、これらのハロゲン、アルキノール置換体、水添品など
が挙げられる。
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの市販品としては、“スミエポキシ(登録
商標)”ELM434(住友化学(株)製)、YH434L(新日鐵化学(株)製)、“
jER(登録商標)”604(三菱化学(株)製)、“アラルダイド(登録商標)”MY
720、MY721(以上、ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ(株)製)などが
挙げられる。トリグリシジルアミノフェノールまたはトリグリシジルアミノクレゾールの
市販品としては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM100、ELM120(以上、住
友化学(株)製)、“アラルダイド(登録商標)”MY0500、MY0510、MY0
600(以上、ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ(株)製)、“jER(登録商
標)”630(三菱化学(株)製)などが挙げられる。テトラグリシジルキシリレンジア
ミンおよびその水素添加品の市販品としては、TETRAD−X、TETRAD−C(以
上、三菱ガス化学(株)製)などが挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ化合物の市販品としては“jER(登録商標)”15
2、154(以上、三菱化学(株)製)、“エピクロン(登録商標)”N−740、N−
770、N−775(以上、DIC(株)製)などが挙げられる。
クレゾールノボラック型エポキシ化合物の市販品としては、“エピクロン(登録商標)
”N−660、N−665、N−670、N−673、N−695(以上、DIC(株)
製)、EOCN−1020、EOCN−102S、EOCN−104S(以上、日本化薬
(株)製)などが挙げられる。
レゾルシノール型エポキシ化合物の市販品としては、“デナコール(登録商標)”EX
−201(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
グリシジルアニリン型エポキシ化合物の市販品としては、GANやGOT(以上、日本
化薬(株)製)などが挙げられる。
ビフェニル骨格を有するエポキシ化合物の市販品としては、“jER(登録商標)”Y
X4000H、YX4000、YL6616(以上、三菱化学(株)製)、NC−300
0(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物の市販品としては、“エピクロン(登録商標)
”HP7200L(エポキシ当量245〜250、軟化点54〜58)、“エピクロン(
登録商標)”HP7200(エポキシ当量255〜260、軟化点59〜63)、“エピ
クロン(登録商標)”HP7200H(エポキシ当量275〜280、軟化点80〜85
)、“エピクロン(登録商標)”HP7200HH(エポキシ当量275〜280、軟化
点87〜92)(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、XD−1000−L(エポキ
シ当量240〜255、軟化点60〜70)、XD−1000−2L(エポキシ当量23
5〜250、軟化点53〜63)(以上、日本化薬(株)製)、“Tactix(登録商
標)”556(エポキシ当量215〜235、軟化点79℃)(Vantico Inc社製)などが挙げられる。
イソシアネート変性エポキシ化合物の市販品としては、オキサゾリドン環を有するXA
C4151、AER4152(旭化成エポキシ(株)製)やACR1348((株)AD
EKA製)などが挙げられる。
テトラフェニルエタン型エポキシ化合物の市販品としては、テトラキス(グリシジルオ
キシフェニル)エタン型エポキシ化合物である“jER(登録商標)”1031(三菱化
学(株)製)などが挙げられる。
トリフェニルメタン型エポキシ化合物の市販品としては、“タクチックス(登録商標)
”742(ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ(株)製)などが挙げられる。
不飽和ポリエステル樹脂としては、α,β−不飽和ジカルボン酸を含む酸成分とアルコ
ールとを反応させて得られる不飽和ポリエステルを、重合性不飽和単量体に溶解したもの
が挙げられる。α,β−不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン
酸等及びこれらの酸無水物等の誘導体等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい
。また、必要に応じてα,β−不飽和ジカルボン酸以外の酸成分としてフタル酸、イソフ
タル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等の飽和ジカル
ボン酸及びこれらの酸無水物等の誘導体をα,β−不飽和ジカルボン酸と併用してもよい
アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコ
ール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、
1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族グリコール、シクロペンタ
ンジオール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール、水素化ビスフェノールA、ビ
スフェノールAプロピレンオキシド(1〜100モル)付加物、キシレングリコール等の
芳香族ジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール等
が挙げられ、これらの2種以上を併用してもよい。
不飽和ポリエステル樹脂の具体例としては、例えば、フマル酸又はマレイン酸とビスフ
ェノールAのエチレンオキサイド(以下、EOと略す)付加物との縮合物、フマル酸又は
マレイン酸とビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下、POと略す。)付加物と
の縮合物及びフマル酸又はマレイン酸とビスフェノールAのEO及びPO付加物(EO及
びPOの付加は、ランダムでもブロックでもよい)との縮合物等が含まれ、これらの縮合
物は必要に応じてスチレン等のモノマーに溶解したものでもよい。不飽和ポリエステル樹
脂の市販品としては、“ユピカ(登録商標)”(日本ユピカ(株)製)、“リゴラック(
登録商標)”(昭和電工(株)製)、“ポリセット(登録商標)”(日立化成工業(株)
製)等が挙げられる。
ビニルエステル樹脂としては、前記エポキシ化合物とα,β−不飽和モノカルボン酸と
をエステル化させることで得られるエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。α,β
−不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、チグリン酸
及び桂皮酸等が挙げられ、これらの2種以上を併用してもよい。ビニルエステル樹脂の具
体例としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ化合物(メタ)アクリレート変性物(
ビスフェノールA型エポキシ化合物のエポキシ基と(メタ)アクリル酸のカルボキシル基
とが反応して得られる末端(メタ)アクリレート変性樹脂等)等が含まれ、これらの変性
物は必要に応じてスチレン等のモノマーに溶解したものでもよい。ビニルエステル樹脂の
市販品としては、“ディックライト(登録商標)”(DIC(株)製)、“ネオポール(
登録商標)”(日本ユピカ(株)製)、“リポキシ(登録商標)”(昭和高分子(株)製
)等が挙げられる。
ベンゾオキサジン樹脂としては、o−クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、m
−クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、p−クレゾールアニリン型ベンゾオキサ
ジン樹脂、フェノール−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−メチルアミン型
ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−シクロヘキシルアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フ
ェノール−m−トルイジン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−3,5−ジメチルアニ
リン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビ
スフェノールA−アミン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールF−アニリン型ベンゾ
オキサジン樹脂、ビスフェノールS−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ジヒドロキシジ
フェニルスルホン−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ジヒドロキシジフェニルエーテル
−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾフェノン型ベンゾオキサジン樹脂、ビフェニ
ル型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールAF−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビ
スフェノールA−メチルアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−ジアミノジフェ
ニルメタン型ベンゾオキサジン樹脂、トリフェニルメタン型ベンゾオキサジン樹脂、およ
びフェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂などが挙げられる。ベンゾオキサジン樹
脂の市販品としては、BF−BXZ、BS−BXZ、BA−BXZ(以上、小西化学工業
(株)製)等が挙げられる。
フェノール樹脂としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、t−ブチルフェノ
ール、ノニルフェノール、カシュー油、リグニン、レゾルシン及びカテコール等のフェノ
ール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びフルフラール等のアルデヒド類との
縮合により得られる樹脂が挙げられ、ノボラック樹脂やレゾール樹脂等が挙げられる。ノ
ボラック樹脂は、シュウ酸等の酸触媒存在下で、フェノールとホルムアルデヒドとを同量
又はフェノール過剰の条件で反応させることで得られる。レゾール樹脂は、水酸化ナトリ
ウム、アンモニア又は有機アミン等の塩基触媒の存在下で、フェノールとホルムアルデヒ
ドとを同量又はホルムアルデヒド過剰の条件で反応させることにより得られる。フェノー
ル樹脂の市販品としては、“スミライトレジン(登録商標)”(住友ベークライト(株)
製)、レヂトップ(群栄化学工業(株)製)、“AVライト(登録商標)”(旭有機材工
業(株)製)等が挙げられる。
尿素樹脂としては、尿素とホルムアルデヒドとの縮合によって得られる樹脂が挙げられ
る。尿素樹脂の市販品としては、UA−144((株)サンベーク製)等が挙げられる。
メラミン樹脂としては、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合により得られる樹脂が
挙げられる。メラミン樹脂の市販品としては、“ニカラック(登録商標)”((株)三和
ケミカル製)等が挙げられる。
熱硬化性ポリイミド樹脂としては、少なくとも主構造にイミド環を含み、かつ末端又は
主鎖内にフェニルエチニル基、ナジイミド基、マレイミド基、アセチレン基等から選ばれ
るいずれか一つ以上を含む樹脂が挙げられる。ポリイミド樹脂の市販品としては、PET
I−330(宇部興産(株)製)等が挙げられる。
これらの熱硬化性樹脂の中でも、機械特性のバランスに優れ、硬化収縮が小さいという
利点を有するため、エポキシ化合物(D)を少なくとも含むエポキシ樹脂を用いることが
好ましい。特にエポキシ化合物(D)として複数の官能基を有するグリシジルアミン型エ
ポキシ化合物を少なくとも含有するエポキシ樹脂が好ましい。複数の官能基を有するグリ
シジルアミン型エポキシ化合物を少なくとも含有するエポキシ樹脂は、多架橋密度が高く
、炭素繊維強化複合材料の耐熱性および圧縮強度を向上させることができるため好ましい
複数の官能基を有するグリシジルアミン型エポキシ化合物としては、例えば、テトラグ
リシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノールおよびトリグリシ
ジルアミノクレゾール、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−ト
ルイジン、N,N−ジグリシジル−4−フェノキシアニリン、N,N−ジグリシジル−4
−(4−メチルフェノキシ)アニリン、N,N−ジグリシジル−4−(4−tert−ブ
チルフェノキシ)アニリンおよびN,N−ジグリシジル−4−(4−フェノキシフェノキ
シ)アニリン等が挙げられる。これらの化合物は、多くの場合、フェノキシアニリン誘導
体にエピクロロヒドリンを付加し、アルカリ化合物により環化して得られる。分子量の増
加に伴い粘度が増加していくため、取扱い性の点から、N,N−ジグリシジル−4−フェ
ノキシアニリンが特に好ましく用いられる。
フェノキシアニリン誘導体としては、具体的には、4−フェノキシアニリン、4−(4
−メチルフェノキシ)アニリン、4−(3−メチルフェノキシ)アニリン、4−(2−メ
チルフェノキシ)アニリン、4−(4−エチルフェノキシ)アニリン、4−(3−エチル
フェノキシ)アニリン、4−(2−エチルフェノキシ)アニリン、4−(4−プロピルフ
ェノキシ)アニリン、4−(4−tert−ブチルフェノキシ)アニリン、4−(4−シ
クロヘキシルフェノキシ)アニリン、4−(3−シクロヘキシルフェノキシ)アニリン、
4−(2−シクロヘキシルフェノキシ)アニリン、4−(4−メトキシフェノキシ)アニ
リン、4−(3−メトキシフェノキシ)アニリン、4−(2−メトキシフェノキシ)アニ
リン、4−(3−フェノキシフェノキシ)アニリン、4−(4−フェノキシフェノキシ)
アニリン、4−[4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]アニリン、4−[3−(トリ
フルオロメチル)フェノキシ]アニリン、4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ
]アニリン、4−(2−ナフチルオキシフェノキシ)アニリン、4−(1−ナフチルオキ
シフェノキシ)アニリン、4−[(1,1’−ビフェニル−4−イル)オキシ]アニリン
、4−(4−ニトロフェノキシ)アニリン、4−(3−ニトロフェノキシ)アニリン、4
−(2−ニトロフェノキシ)アニリン、3−ニトロ−4−アミノフェニルフェニルエーテ
ル、2−ニトロ−4−(4−ニトロフェノキシ)アニリン、4−(2,4−ジニトロフェ
ノキシ)アニリン、3−ニトロ−4−フェノキシアニリン、4−(2−クロロフェノキシ
)アニリン、4−(3−クロロフェノキシ)アニリン、4−(4−クロロフェノキシ)ア
ニリン、4−(2,4−ジクロロフェノキシ)アニリン、3−クロロ−4−(4−クロロ
フェノキシ)アニリン、および4−(4−クロロ−3−トリルオキシ)アニリンなどが挙
げられる。
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの市販品として、例えば、“スミエポキシ
(登録商標)”ELM434(住友化学(株)製)、YH434L(東都化成(株)製)
、“アラルダイト(登録商標)”MY720(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ
(株)製)、および“jER(登録商標)604”(三菱化学(株)製)等を使用するこ
とができる。トリグリシジルアミノフェノールおよびトリグリシジルアミノクレゾールと
しては、例えば、“スミエポキシ(登録商標)”ELM100(住友化学(株)製)、“
アラルダイト(登録商標)”MY0510、“アラルダイト(登録商標)”MY0600
(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ(株)製)、および“jER(登録商
標)”630(三菱化学(株)製)等を使用することができる。
複数の官能基を有するグリシジルアミン型エポキシ化合物として、上述した中でもグリ
シジルアミン骨格を少なくとも1つ有し、かつエポキシ基を3以上有する芳香族エポキシ
化合物(D1)であることが好ましい。
エポキシ基を3以上有するグリシジルアミン型芳香族エポキシ化合物(D1)を含むエ
ポキシ樹脂は、耐熱性を高める効果があり、その割合は、エポキシ樹脂中に30〜100
質量%含まれていることが好ましく、より好ましい割合は50質量%以上である。グリシ
ジルアミン型芳香族エポキシ化合物の割合が30質量%以上で、炭素繊維強化複合材料の
圧縮強度が向上、耐熱性が良好になるため好ましい。
これらのエポキシ化合物(D)を用いる場合、必要に応じて酸や塩基などの触媒や硬化
剤を添加してよい。例えば、エポキシ樹脂の硬化には、ハロゲン化ホウ素錯体、p−トル
エンスルホン酸塩などのルイス酸や、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニル
メタンおよびそれらの誘導体や異性体などのポリアミン硬化剤などが好ましく用いられる
本発明のプリプレグにおいて、硬化剤には、潜在性硬化剤(E)を用いることが好まし
い。ここで説明される潜在性硬化剤は、本発明の熱硬化性樹脂の硬化剤であって、温度を
かけることで活性化してエポキシ基等の反応基と反応する硬化剤であり、70℃以上で反
応が活性化することが好ましい。ここで、70℃で活性化するとは、反応開始温度が70
℃の範囲にあることをいう。かかる反応開始温度(以下、活性化温度という)は例えば、
示差走査熱量分析(DSC)により求めることができる。具体的には、エポキシ当量18
4〜194程度のビスフェノールA型エポキシ化合物100質量部に評価対象の硬化剤1
0質量部を加えたエポキシ樹脂組成物について、示差走査熱量分析により得られる発熱曲
線の変曲点の接線とベースラインの接線の交点から求められる。
潜在性硬化剤(E)は、芳香族アミン硬化剤(E1)、またはジシアンジアミドもしく
はその誘導体(E2)であることが好ましい。芳香族アミン硬化剤(E1)としては、エ
ポキシ樹脂硬化剤として用いられる芳香族アミン類であれば特に限定されるものではない
が、具体的には、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS)、4,4
’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4’−DDS)、ジアミノジフェニルメタン(D
DM)、3,3’−ジイソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−
ジ−t−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−5,5’
−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジイソプロピル−5,5
’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジ−t−ブチル−5,
5’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエ
チル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジ
エチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−
ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトライソプロ
ピル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジ
イソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラ−t
−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル(DAD
PE)、ビスアニリン、ベンジルジメチルアニリン、2−(ジメチルアミノメチル)フェ
ノール(DMP−10)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(D
MP−30)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールの2−エチルヘ
キサン酸エステル等を使用することができる。これらは、単独で用いても、2種以上を混
合して用いてもよい。
芳香族アミン硬化剤(E1)の市販品としては、セイカキュアS(和歌山精化工業(株
)製)、MDA−220(三井化学(株)製)、“jERキュア(登録商標)”W(ジャ
パンエポキシレジン(株)製)、および3,3’−DAS(三井化学(株)製)、“Lonzacure(登録商標)”M−DEA、M−DIPA、M−MIPAおよびDETDA 80(以上、Lonza(株)製)などが挙げられる。
ジシアンジアミド誘導体またはその誘導体(E2)とは、アミノ基、イミノ基およびシアノ基の少なくとも一つを用いて反応させた化合物であり、例えば、o−トリルビグアニド、ジフェニルビグアニドや、ジシアンジアミドのアミノ基、イミノ基またはシアノ基にエポキシ樹脂組成物に用いるエポキシ化合物のエポキシ基を予備反応させたものである。
ジシアンジアミドまたはその誘導体(E2)の市販品としては、DICY−7、DIC
Y−15(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)などが挙げられる。
芳香族アミン硬化剤(E1)、ジシアンジアミドまたはその誘導体(E2)以外の硬化
剤としては、脂環式アミンなどのアミン、フェノール化合物、酸無水物、ポリアミノアミ
ド、有機酸ヒドラジド、イソシアネートを芳香族ジアミン硬化剤に併用して用いてもよい。
潜在性硬化剤(E)として使用するフェノール化合物としては、マトリックス樹脂とし
て上記で例示したフェノール化合物を任意に用いることができる。
本発明にかかるサイジング剤と、芳香族アミン硬化剤(E1)との組み合わせとしては
、次に示す組み合わせが好ましい。塗布されるサイジング剤と芳香族アミン硬化剤(E1
)のアミン当量とエポキシ当量の比率であるアミン当量/エポキシ当量が、0.9でサイ
ジング剤と芳香族アミン硬化剤(E1)とを混合し、混合直後と、温度25℃、60%RHの環境下で20日保管した場合のガラス転移点を測定する。20日経時後のガラス転移
点の上昇が25℃以下であるサイジング剤と、芳香族アミン硬化剤(E1)との組み合わ
せが好ましい。ガラス転移点の上昇が25℃以下であることで、プリプレグにしたときに
、サイジング剤外層とマトリックス樹脂中の反応が抑制され、プリプレグを長期間保管し
た後の炭素繊維強化複合材料の引張強度等の力学特性低下が抑制されるため好ましい。ま
たガラス転移点の上昇が15℃以下であることがより好ましい。10℃以下であることが
さらに好ましい。なお、ガラス転移点は、示差走査熱量分析(DSC)により求めること
ができる。
また、本発明にかかるサイジング剤と、ジシアンジアミド(E2)との組み合わせとしては、次に示す組み合わせが好ましい。塗布されるサイジング剤とジシアンジアミド(E2)のアミン当量とエポキシ当量の比率であるアミン当量/エポキシ当量が、1.0でサイジング剤とジシアンジアミド(E2)とを混合し、混合直後と、温度25℃、60%RHの環境下で20日保管した場合のガラス転移点を測定する。20日経時後のガラス転移点の上昇が10℃以下であるサイジング剤と、ジシアンジアミド(E2)との組み合わせが好ましい。ガラス転移点の上昇が10℃以下であることで、プリプレグにしたときに、サイジング剤外層とマトリックス樹脂中の反応が抑制され、プリプレグを長期間保管した後の炭素繊維強化複合材料の引張強度等の力学特性低下が抑制されるため好ましい。またガラス転移点の上昇が8℃以下であることがより好ましい。
また、硬化剤の総量は、全エポキシ樹脂成分のエポキシ基1当量に対し、活性水素基が
0.6〜1.2当量の範囲となる量を含むことが好ましく、より好ましくは0.7〜0.
9当量の範囲となる量を含むことである。ここで、活性水素基とは、硬化剤成分のエポキ
シ基と反応しうる官能基を意味し、活性水素基が0.6当量に満たない場合は、硬化物の
反応率、耐熱性、弾性率が不足し、また、繊維強化複合材料のガラス転移温度や強度が不
足する場合がある。また、活性水素基が1.2当量を超える場合は、硬化物の反応率、ガ
ラス転移温度、弾性率は十分であるが、塑性変形能力が不足するため、炭素繊維強化複合
材料の耐衝撃性が不足する場合がある。
また、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合、硬化を促進させることを目的に、硬化促進
剤(F)を配合することもできる。
硬化促進剤(F)としては、ウレア化合物、第三級アミンとその塩、イミダゾールとそ
の塩、トリフェニルホスフィンまたはその誘導体、カルボン酸金属塩や、ルイス酸類やブ
レンステッド酸類とその塩類などが挙げられる。中でも、保存安定性と触媒能力のバラン
スから、ウレア化合物(F1)が好適に用いられる。
特に、硬化促進剤(F)としてウレア化合物(F1)が用いられる場合、潜在性硬化剤
(E)としてジシアンジアミドまたはその誘導体(E2)と組み合わせて用いられること
が好適である。
ウレア化合物(F1)としては、例えば、N,N−ジメチル−N’−(3,4−ジクロ
ロフェニル)ウレア、トルエンビス(ジメチルウレア)、4,4’−メチレンビス(フェ
ニルジメチルウレア)、3−フェニル−1,1−ジメチルウレアなどを使用することがで
きる。かかるウレア化合物の市販品としては、DCMU99(保土谷化学(株)製)、“
Omicure(登録商標)”24、52、94(以上、Emerald Perfor
mance Materials,LLC製)などが挙げられる。
ウレア化合物(F1)の配合量は、全エポキシ樹脂成分100質量部に対して1〜4質
量部とすることが好ましい。かかるウレア化合物(F1)の配合量が1質量部に満たない
場合は、反応が十分に進行せず、硬化物の弾性率と耐熱性が不足することがある。また、
かかるウレア化合物の配合量が4質量部を超える場合は、エポキシ化合物の自己重合反応
が、エポキシ化合物と硬化剤との反応を阻害するため、硬化物の靭性が不足することや、
弾性率が低下することがある。
また、これらエポキシ樹脂と硬化剤、あるいはそれらの一部を予備反応させた物を組成
物中に配合することもできる。この方法は、粘度調節や保存安定性向上に有効な場合があ
る。
本発明のプリプレグには、靱性や流動性を調整するために、熱可塑性樹脂が含まれてい
ることが好ましく、耐熱性の観点から、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエー
テルイミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、フ
ェノキシ樹脂、ポリオレフィンから選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
また、熱可塑性樹脂のオリゴマーを含ませることができる。また、エラストマー、フィラ
ーおよびその他の添加剤を配合することもできる。なお、熱可塑性樹脂は、プリプレグを
構成する熱硬化性樹脂に含まれていると良い。さらに、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹
脂が用いられる場合、熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂に可溶性の熱可塑性樹脂や、
ゴム粒子および熱可塑性樹脂粒子等の有機粒子等を配合することができる。かかるエポキ
シ樹脂に可溶性の熱可塑性樹脂としては、樹脂と炭素繊維との接着性改善効果が期待でき
る水素結合性の官能基を有する熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
エポキシ樹脂可溶で、水素結合性官能基を有する熱可塑性樹脂として、アルコール性水
酸基を有する熱可塑性樹脂、アミド結合を有する熱可塑性樹脂やスルホニル基を有する熱
可塑性樹脂を使用することができる。
かかるアルコール性水酸基を有する熱可塑性樹脂としては、ポリビニルホルマールやポ
リビニルブチラールなどのポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、フェノキ
シ樹脂を挙げることができ、また、アミド結合を有する熱可塑性樹脂としては、ポリアミ
ド、ポリイミド、ポリビニルピロリドンを挙げることができ、さらに、スルホニル基を有
する熱可塑性樹脂としては、ポリスルホンを挙げることができる。ポリアミド、ポリイミ
ドおよびポリスルホンは、主鎖にエーテル結合、カルボニル基などの官能基を有してもよ
い。ポリアミドは、アミド基の窒素原子に置換基を有してもよい。
エポキシ樹脂に可溶で水素結合性官能基を有する熱可塑性樹脂の市販品を例示すると、
ポリビニルアセタール樹脂として、デンカブチラール(電気化学工業(株)製)、“ビニ
レック(登録商標)”(チッソ(株)製)、フェノキシ樹脂として、“UCAR(登録商
標)”PKHP(ユニオンカーバイド(株)製)、ポリアミド樹脂として“マクロメルト
(登録商標)”(ヘンケル白水(株)製)、“アミラン(登録商標)”(東レ(株)製)
、ポリイミドとして“ウルテム(登録商標)”(SABICイノベーティブプラスチック
スジャパン合同会社製)、“Matrimid(登録商標)”5218(チバ(株)製)
、ポリスルホンとして“スミカエクセル(登録商標)”(住友化学(株)製)、“UDE
L(登録商標)”、RADEL(登録商標)”(以上、ソルベイアドバンストポリマーズ
(株)製)、ポリビニルピロリドンとして、“ルビスコール(登録商標)”(ビーエーエ
スエフジャパン(株)製)を挙げることができる。
また、アクリル系樹脂は、エポキシ樹脂との相溶性が高く、増粘等の流動性調整のため
に好適に用いられる。アクリル系樹脂の市販品を例示すると、“ダイヤナール(登録商標)”BRシリーズ(三菱レイヨン(株)製)、“マツモトマイクロスフェアー(登録商標)”M、M100、M500(以上、松本油脂製薬(株)製)、“Nanostrength(登録商標)”E40F、M22N、M52N(以上、アルケマ(株)製)などを挙げることができる。
特に、耐熱性をほとんど損なわずにこれらの効果を発揮できることから、ポリエーテル
スルホンやポリエーテルイミドが好適である。ポリエーテルスルホンとしては、“スミカ
エクセル(登録商標)”3600P、5003P、5200P、7200P(以上、住友化学工業(株)製)、“Virantage(登録商標)”(登録商標)PESU VW−10200、“Virantage(登録商標)”PESU VW−10700(登録商標、以上、ソルベイアドバンスポリマーズ(株)製)、“Ultrason(登録商標)”2020SR(BASF(株)製)、ポリエーテルイミドとしては、“ウルテム(登録商標)”1000、1010、1040(以上、SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社製)などを使用することができる。
かかる熱可塑性樹脂は、特に含浸性を中心としたプリプレグ作製工程に支障をきたさな
いように、エポキシ樹脂組成物中に均一溶解しているか、粒子の形態で微分散しているこ
とが好ましい。
また、かかる熱可塑性樹脂の配合量は、エポキシ樹脂組成物中に溶解せしめる場合には
、エポキシ樹脂100質量部に対して1〜40質量部が好ましく、より好ましくは1〜2
5質量部である。一方、分散させて用いる場合には、エポキシ樹脂100質量部に対して
10〜40質量部が好ましく、より好ましくは15〜30質量部である。熱可塑性樹脂が
かかる配合量に満たないと、靭性向上効果が不十分となる場合がある。また、熱可塑性樹
脂が前記範囲を超える場合は、含浸性、タック・ドレープおよび耐熱性が低下する場合が
ある。
さらに、本発明のマトリックス樹脂を改質するために、上述した熱可塑性樹脂以外にエ
ポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、エラストマー、フィラー、ゴム粒子、熱可塑性樹脂粒子
、無機粒子およびその他の添加剤を配合することもできる。
本発明に好ましく用いられるエポキシ樹脂には、ゴム粒子を配合することもできる。か
かるゴム粒子としては、架橋ゴム粒子、および架橋ゴム粒子の表面に異種ポリマーをグラ
フト重合したコアシェルゴム粒子が、取り扱い性等の観点から好ましく用いられる。
架橋ゴム粒子の市販品としては、カルボキシル変性のブタジエン−アクリロニトリル共
重合体の架橋物からなるFX501P(JSR(株)製)、アクリルゴム微粒子からなる
CX−MNシリーズ(日本触媒(株)製)、YR−500シリーズ(新日鐵化学(株)製
)等を使用することができる。
コアシェルゴム粒子の市販品としては、例えば、ブタジエン・メタクリル酸アルキル・スチレン共重合物からなる“パラロイド(登録商標)”EXL−2655(呉羽化学工業(株)製)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体からなる“スタフィロイド(登録商標)”AC−3355、TR−2122(以上、武田薬品工業(株)製)、アクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共重合物からなる“PARALOID(登録商標)”EXL−2611、EXL−3387(以上、Rohm&Haas社製)、“カネエース(登録商標)”MX(カネカ(株)製)等を使用することができる。
熱可塑性樹脂粒子としては、先に例示した各種の熱可塑性樹脂と同様のものを用いるこ
とができる。中でも、ポリアミド粒子やポリイミド粒子が好ましく用いられ、ポリアミド
の中でも、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン11やナイロン6/12共重合体やエポキシ化合物で変性されたナイロン(エポキシ変性ナイロン)は、特に良好な熱硬化性樹脂との接着強度を与えることができることから、落錘衝撃時の炭素繊維強化複合材料の層間剥離強度が高く、耐衝撃性の向上効果が高いため好ましい。ポリアミド粒子の市販品として、SP−500、SP−10(東レ(株)製)、“オルガソール(登録商標)”(アルケマ(株)製)等を使用することができる。
この熱可塑性樹脂粒子の形状としては、球状粒子でも非球状粒子でも、また多孔質粒子
でもよいが、球状の方が樹脂の流動特性を低下させないため粘弾性に優れ、また応力集中
の起点がなく、高い耐衝撃性を与えるという点で好ましい態様である。本発明では、本発
明の効果を損なわない範囲において、エポキシ樹脂組成物の増粘等の流動性調整のため、
エポキシ樹脂組成物に、シリカ、アルミナ、スメクタイトおよび合成マイカ等の無機粒子
を配合することができる。
本発明のプリプレグは、炭素繊維同士の接触確率を高め炭素繊維強化複合材料の導電性
を向上させる目的で、導電性フィラーを混合して用いることも好ましい。このような導電
性フィラーとしては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、気相成長法炭素繊維(
VGCF)、フラーレン、金属ナノ粒子、カーボン粒子、金属めっきした先に例示した熱
可塑性樹脂の粒子、金属めっきした先に例示した熱硬化性樹脂の粒子などが挙げられ、単
独で使用しても併用してもよい。なかでも安価で効果の高いカーボンブラック、カーボン
粒子が好ましく用いられ、かかるカーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラッ
ク、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック
などを使用することができ、これらを2種類以上ブレンドしたカーボンブラックも好適に
用いられる。また、かかるカーボン粒子として“ベルパール(登録商標)”C−600、
C−800、C−2000(鐘紡(株)製)、“NICABEADS(登録商標)”IC
B、PC、MC(日本カーボン(株)製)などが具体的に挙げられる。金属めっきした熱
硬化性樹脂粒子としてはジビニルベンゼンポリマー粒子にニッケルをメッキし、さらにそ
の上に金をメッキした粒子“ミクロパール(登録商標)”AU215などが具体的に挙げ
られる。
次に、本発明のプリプレグの製造方法について説明する。
本発明のプリプレグは、マトリックス樹脂である熱硬化性樹脂組成物をサイジング剤塗
布炭素繊維束に含浸せしめたものである。プリプレグは、例えば、マトリックス樹脂をメ
チルエチルケトンやメタノールなどの溶媒に溶解して低粘度化し、含浸させるウェット法
あるいは加熱により低粘度化し、含浸させるホットメルト法などの方法により製造するこ
とができる。
ウェット法では、サイジング剤塗布炭素繊維束をマトリックス樹脂が含まれる液体に浸
漬した後、引き上げ、オーブンなどを用いて溶媒を蒸発させてプリプレグを得ることがで
きる。
また、ホットメルト法では、加熱により低粘度化したマトリックス樹脂を直接サイジン
グ剤塗布炭素繊維束に含浸させる方法、あるいは一旦マトリックス樹脂組成物を離型紙な
どの上にコーティングしたフィルムをまず作成し、ついでサイジング剤塗布炭素繊維束の
両側あるいは片側から該フィルムを重ね、加熱加圧してマトリックス樹脂をサイジング剤
塗布炭素繊維束に含浸させる方法により、プリプレグを製造することができる。ホットメ
ルト法は、プリプレグ中に残留する溶媒がないため好ましい手段である。
本発明のプリプレグを用いて炭素繊維強化複合材料を成形するには、プリプレグを積層
後、積層物に圧力を付与しながらマトリックス樹脂を加熱硬化させる方法などを用いるこ
とができる。
熱および圧力を付与する方法には、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング
成形法、ラッピングテープ法および内圧成形法などがあり、特にスポーツ用品に関しては
、ラッピングテープ法と内圧成形法が好ましく採用される。より高品質で高性能の積層複
合材料が要求される航空機用途においては、オートクレーブ成形法が好ましく採用される
。各種車輌外装にはプレス成形法が好ましく用いられる。
本発明のプリプレグの炭素繊維質量分率は、好ましくは40〜90質量%であり、より
好ましくは50〜80質量%である。炭素繊維質量分率が低すぎると、得られる複合材料
の質量が過大となり、比強度および比弾性率に優れる繊維強化複合材料の利点が損なわれ
ることがあり、また、炭素繊維質量分率が高すぎると、マトリックス樹脂組成物の含浸不
良が生じ、得られる複合材料がボイドの多いものとなり易く、その力学特性が大きく低下
することがある。
また、本発明において炭素繊維強化複合材料を得る方法としては、プリプレグを用いて
得る方法の他に、ハンドレイアップ、RTM、“SCRIMP(登録商標)”、フィラメ
ントワインディング、プルトルージョンおよびレジンフィルムインフュージョンなどの成
形法を目的に応じて選択し適用することができる。これらのいずれかの成形法を適用する
ことにより、前述のサイジング剤塗布炭素繊維と熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む繊維
強化複合材料が得られる。
本発明の炭素繊維強化複合材料は、航空機構造部材、風車の羽根、自動車外板およびI
Cトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)などのコンピュータ用途、さらにはゴル
フシャフト、バット、バトミントンやテニスラケットなどスポーツ用途に好ましく用いら
れる。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限
されるものではない。次に示す実施例のプリプレグの作製環境および評価は、特に断りのない限り、温度25℃±2℃、50%RH(相対湿度)の雰囲気で行ったものである。
(1)サイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面のX線光電子分光法
本発明において、サイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面の(a)、(b)のピーク比は、X線光電子分光法により、次の手順に従って求めた。サイジング剤塗布炭素繊維を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてAlKα1,2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保ち測定を行った。なお、光電子脱出角度15°で実施した。測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値を286.1eVに合わせた。この時に、C1sのピーク面積は282〜296eVの範囲で直線ベースラインを引くことにより求めた。また、C1sピークにて面積を求めた282〜296eVの直線ベースラインを光電子強度の原点(零点)と定義して、(b)C−O成分に帰属される結合エネルギー286.1eVのピークの高さ(cps:単位時間あたりの光電子強度)と(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー284.6eVの成分の高さ(cps)を求め、(a)/(b)を算出した。
なお、(b)より(a)のピークが大きい場合には、C1sの主ピークの結合エネルギ
ー値を286.1に合わせた場合、C1sのピークが282〜296eVの範囲に入らな
い。その場合には、C1sの主ピークの結合エネルギー値を284.6eVに合わせた後
、上記手法にて(a)/(b)を算出した。
(2)炭素繊維束のストランド引張強度と弾性率
炭素繊維束のストランド引張強度とストランド弾性率は、JIS−R−7608(20
04)の樹脂含浸ストランド試験法に準拠し、次の手順に従い求めた。樹脂処方としては
、“セロキサイド(登録商標)”2021P(ダイセル化学工業社製)/3フッ化ホウ素
モノエチルアミン(東京化成工業(株)製)/アセトン=100/3/4(質量部)を用
い、硬化条件としては、常圧、温度125℃、時間30分を用いた。炭素繊維束のストラ
ンド10本を測定し、その平均値をストランド引張強度およびストランド弾性率とした。
(3)炭素繊維の表面酸素濃度(O/C)
炭素繊維の表面酸素濃度(O/C)は、次の手順に従いX線光電子分光法により求めた
。まず、溶媒で表面に付着している汚れを除去した炭素繊維を、約20mmにカットし、
銅製の試料支持台に拡げる。次に、試料支持台を試料チャンバー内にセットし、試料チャ
ンバー中を1×10−8Torrに保った。続いて、X線源としてAlKα1,2を用い、光電子脱出角度を90°として測定を行った。なお、測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sのメインピーク(ピークトップ)の結合エネルギー値を284.6eVに合わせた。C1sメイン面積は282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。また、O1sピーク面積は528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。ここで、表面酸素濃度とは、上記のO1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出したものである。X線光電子分光法装置として、アルバック・ファイ(株)製ESCA−1600を用い、上記装置固有の感度補正値は2.33であった。
(4)炭素繊維の表面カルボキシル基濃度(COOH/C)、表面水酸基濃度(COH/
C)
表面水酸基濃度(COH/C)は、次の手順に従って化学修飾X線光電子分光法により
求めた。
溶媒でサイジング剤などを除去した炭素繊維束をカットして白金製の試料支持台上に拡
げて並べ、0.04mol/Lの無水3弗化酢酸気体を含んだ乾燥窒素ガス中に室温で1
0分間さらし、化学修飾処理した後、X線光電子分光装置に光電子脱出角度を35゜とし
てマウントし、X線源としてAlKα1,2を用い、試料チャンバー内を1×10−8Torrの真空度に保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値を284.6eVに合わせる。C1sピーク面積[C1s]は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、F1sピーク面積[F1s]は、682〜695eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。また、同時に化学修飾処理したポリビニルアルコールのC1sピーク分割から反応率rを求めた。
表面水酸基濃度(COH/C)は、下式により算出した値で表した。
COH/C={[F1s]/(3k[C1s]−2[F1s])r}×100(%)
なお、kは装置固有のC1sピーク面積に対するF1sピーク面積の感度補正値であり、
米国SSI社製モデルSSX−100−206での、上記装置固有の感度補正値は3.9
19であった。
表面カルボキシル基濃度(COOH/C)は、次の手順に従って化学修飾X線光電子分
光法により求めた。先ず、溶媒でサイジング剤などを除去した炭素繊維束をカットして白
金製の試料支持台上に拡げて並べ、0.02モル/リットルの3弗化エタノール気体、0
.001モル/リットルのジシクロヘキシルカルボジイミド気体及び0.04モル/リッ
トルのピリジン気体を含む空気中に60℃で8時間さらし、化学修飾処理した後、X線光
電子分光装置に光電子脱出角度を35゜としてマウントし、X線源としてAlKα1,2を用い、試料チャンバー内を1×10−8Torrの真空度に保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値を284.6eVに合わせる。C1sピーク面積[C1s]は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、F1sピーク面積[F1s]は、682〜695eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。また、同時に化学修飾処理したポリアクリル酸のC1sピーク分割から反応率rを、O1sピーク分割からジシクロヘキシルカルボジイミド誘導体の残存率mを求めた。
表面カルボキシル基濃度COOH/Cは、下式により算出した値で表した。
COOH/C={[F1s]/(3k[C1s]−(2+13m)[F1s])r}×100(%)
なお、kは装置固有のC1sピーク面積に対するF1sピーク面積の感度補正値であり、米国SSI社製モデルSSX−100−206を用いた場合の、上記装置固有の感度補正値は3.919であった。
(5)サイジング剤のエポキシ当量、炭素繊維に塗布されたサイジング剤のエポキシ当量
サイジング剤のエポキシ当量は、溶媒を除去したサイジング剤をN,N−ジメチルホル
ムアミドに代表される溶媒中に溶解し、塩酸でエポキシ基を開環させ、酸塩基滴定で求め
た。炭素繊維に塗布されたサイジング剤のエポキシ当量は、サイジング剤塗布炭素繊維をN,N−ジメチルホルムアミド中に浸漬し、超音波洗浄を行うことで繊維から溶出させたのち、塩酸でエポキシ基を開環させ、酸塩基滴定で求めた。
(6)ガラス転移点の上昇温度
芳香族アミン硬化剤(E−1およびE−2)を硬化剤として使用する場合、アミン当量とエポキシ当量の比率であるアミン当量/エポキシ当量が0.9になるようにサイジング剤と潜在性硬化剤(E)とを混合し、JIS K7121(1987)に従い、示差走査熱量計(DSC)により調整した混合物のガラス転移温度の測定を行った。容量50μlの密閉型サンプル容器に、3〜10mgの試料(試験片)を詰め、昇温速度10℃/分で30〜350℃まで昇温し、ガラス転移温度を測定した。ここでは、測定装置として、TA Instruments社製の示差走査型熱量計(DSC)を使用した。
具体的には、得られたDSC曲線の階段状変化を示す部分において、各ベースラインの
延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線と
が交わる点の温度をガラス転移温度とした。
続いて、調整した混合物を温度25℃、60%RHの環境下で20日保管した後、上記
の方法でガラス転移温度を測定し、初期からの上昇温度をガラス転移点の上昇温度とした
(表中の「硬化剤とのΔTg」がそれに該当する)。
また、ジシアンジアミド(E−3)を硬化剤として使用する場合、アミン当量とエポキシ当量の比率であるアミン当量/エポキシ当量が1.0になるようにサイジング剤と潜在性硬化剤(E)とを混合し、上記と同様の方法で混合物のガラス転移温度の測定を行った。
続いて、調整した混合物を温度25℃、60%RHの環境下で20日保管した後、上記の方法でガラス転移温度を測定し、初期からの上昇温度をガラス転移点の上昇温度とした。
(7)サイジング付着量の測定方法
約2gのサイジング付着炭素繊維束を秤量(W1)(少数第4位まで読み取り)した後
、50ミリリットル/分の窒素気流中、450℃の温度に設定した電気炉(容量120c
m3)に15分間放置し、サイジング剤を完全に熱分解させる。そして、20リットル/
分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の炭素繊維束を秤量(W2)(少
数第4位まで読み取り)して、W1−W2によりサイジング付着量を求める。このサイジ
ング付着量を炭素繊維束100質量部に対する量に換算した値(小数点第3位を四捨五入
)を、付着したサイジング剤の質量部とした。測定は2回行い、その平均値をサイジング
剤の質量部とした。
(8)界面剪断強度(IFSS)の測定
界面剪断強度(IFSS)の測定は、次の(イ)〜(ニ)の手順で行った。
(イ)樹脂の調整
ビスフェノールA型エポキシ化合物“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製
)100質量部とメタフェニレンジアミン(シグマアルドリッチジャパン(株)製)14
.5質量部を、それぞれ容器に入れた。その後、上記のjER828の粘度低下とメタフ
ェニレンジアミンの溶解のため、75℃の温度で15分間加熱した。その後、両者をよく
混合し、80℃の温度で約15分間真空脱泡を行った。
(ロ)炭素繊維単糸を専用モールドに固定
炭素繊維束から単繊維を抜き取り、ダンベル型モールドの長手方向に単繊維に一定張力
を与えた状態で両端を接着剤で固定した。その後、炭素繊維およびモールドに付着した水
分を除去するため、80℃の温度で30分以上真空乾燥を行った。ダンベル型モールドは
シリコーンゴム製で、注型部分の形状は、中央部分巾5mm、長さ25mm、両端部分巾
10mm、全体長さ150mmだった。
(ハ)樹脂注型から硬化まで
上記(ロ)の手順の真空乾燥後のモールド内に、上記(イ)の手順で調整した樹脂を流
し込み、オーブンを用いて、昇温速度1.5℃/分で75℃の温度まで上昇し2時間保持
後、昇温速度1.5℃/分で125℃の温度まで上昇し2時間保持後、降温速度2.5℃
/分で30℃の温度まで降温した。その後、脱型して試験片を得た。
(ニ)界面剪断強度(IFSS)の測定
上記(ハ)の手順で得られた試験片に繊維軸方向(長手方向)に引張力を与え、歪みを
12%生じさせた後、偏光顕微鏡により試験片中心部22mmの範囲における繊維破断数
N(個)を測定した。次に、平均破断繊維長laを、la(μm)=22×1000(μ
m)/N(個)の式により計算した。次に、平均破断繊維長laから臨界繊維長lcを、
lc(μm)=(4/3)×la(μm)の式により計算した。ストランド引張強度σと
炭素繊維単糸の直径dを測定し、炭素繊維と樹脂界面の接着強度の指標である界面剪断強
度IFSSを、次式で算出した。実施例では、測定数n=5の平均を試験結果とした。
・界面剪断強度IFSS(MPa)=σ(MPa)×d(μm)/(2×lc)(μm)
IFSSの値が42MPa以上を○、35MPa以上42MPa未満を△、35MPa
未満を×とした。
(9)繊維強化複合材料の0°の定義
JIS K7017(1999)に記載されているとおり、一方向繊維強化複合材料の
繊維方向を軸方向とし、その軸方向を0°軸と定義し軸直交方向を90°と定義した。
(10)繊維強化複合材料の0°引張強度(c)測定
作成後24時間以内の一方向プリプレグを所定の大きさにカットし、これを一方向に6枚積層した後、真空バッグを行い、オートクレーブを用いて、温度180℃、圧力6kg/cm2、2時間で硬化させ、一方向強化材(炭素繊維強化複合材料)を得た。この一方向強化材を幅12.7mm、長さ230mmにカットし、両端に1.2mm、長さ50mmのガラス繊維強化プラスチック製のタブを接着し試験片を得た。このようにして得られた試験片について、インストロン社製万能試験機を用いてクロスヘッドスピード1.27mm/分で引張試験を行った。
本発明において、0°引張強度の値(c)MPaを(2)で求めたストランド強度の値で割り返したものを強度利用率(%)として、次式で求めた。
強度利用率=引張強度/((CF目付/190)×Vf/100×ストランド強度)×
100
CF目付=190g/m
Vf=56%
強度利用率が83%以上を◎、80%以上83%未満を○、78%以上80%未満を△
、78%未満を×とした。◎、○が本発明において好ましい範囲である。
(11)プリプレグ保管後の0°引張強度(d)
プリプレグを温度25℃、60%RHで20日保管後、(10)と同様にして0°引張強度(d)MPaを測定した。(10)で測定したプリプレグ作成後24時間以内に硬化させたときの0度引張強度(c)MPaとプリプレグ保管後に硬化したときの0度引張強度(d)MPaとの関係、すなわち引張強度低下率を、下記式(1)から算出した。
引張強度低下率(%)=((c)−(d))/(c) (1)
強度低下率が3%未満を◎、3以上5%未満を○、5〜8%未満を△、8%以上を×と
した。◎、○が本発明において好ましい範囲である。
(12)溶出された脂肪族エポキシ化合物(A)の割合
サイジング剤塗布炭素繊維の試験片を0.1g秤量し、該試験片を数cmに切断した。
切断した試験片を、アセトニトリル/クロロホルム混合液(体積比9/1)10mLに浸
漬し、20分間超音波洗浄を行ない、サイジング剤をアセトニトリル/クロロホルム混合
液に溶出した。溶出液を5mL採取し、採取した溶出液を窒素パージして溶媒を留去した
。溶媒留去後の残留物にアセトニトリル/クロロホルム混合液(体積比9/1)0.2m
Lを加えて分析用サンプルを調整した。脂肪族エポキシ化合物(A)の分析は液体クロマ
トグラフィーを用いて下記条件で行なった。
・分析カラム:Chromolith Performance RP−18e(4.6
×100mm)
・移動相:水/アセトニトリルを使用し、分析開始から7分で、水/アセトニトリル=6
0%/40%からアセトニトリル100%とした後、12分までアセトニトリル100%
を保持し、その後12.1分までに水/アセトニトリル=60%/40%とし、17分ま
で水/アセトニトリル=60%/40%を保持した。
・流量:2.5mL/分
・カラム温度:45℃
・検出器:蒸発光散乱検出器(ELSD)
・検出器温度:60℃
(13)炭素繊維表面の平均粗さ(Ra)
炭素繊維表面の平均粗さ(Ra)は、原子間力顕微鏡(AFM)により測定した。炭素
繊維を長さ数mm程度にカットしたものを用意し、銀ペーストを用いて基板(シリコンウ
エハ)上に固定し、原子間力顕微鏡(AFM)によって各単繊維の中央部において、3次
元表面形状の像を観測した。原子間力顕微鏡としてはDigital Instuments社製 NanoScope IIIaにおいてDimension 3000ステージシステムを使用し、以下の観測条件で観測した。
・走査モード:タッピングモード
・探針:シリコンカンチレバー
・走査範囲:0.6μm×0.6μm
・走査速度:0.3Hz
・ピクセル数:512×512
・測定環境:室温、大気中
各実施例および各比較例で用いた材料と成分は下記の通りである。
・(A)成分:A−1〜A−2
A−1:“デナコール(登録商標)”EX−611(ナガセケムテックス(株)製)
ソルビトールポリグリシジルエーテル
エポキシ当量:167g/eq.、エポキシ基数:4
水酸基数:2
A−2:“デナコール(登録商標)”EX−521(ナガセケムテックス(株)製)
ポリグリセリンポリグリシジルエーテル
エポキシ当量:183g/eq.、エポキシ基数:3以上
・(B1)成分:B−1〜B−4
B−1:“jER(登録商標)”152(三菱化学(株)製)
フェノールノボラックのグリシジルエーテル
エポキシ当量:175g/eq.、エポキシ基数:3
B−2:“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製)
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル
エポキシ当量:189g/eq.、エポキシ基数:2
B−3:“jER(登録商標)”1001(三菱化学(株)製)
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル
エポキシ当量:475g/eq.、エポキシ基数:2
B−4:“jER(登録商標)”807(三菱化学(株)製)
ビスフェノールFのジグリシジルエーテル
エポキシ当量:167g/eq.、エポキシ基数:2
・エポキシ化合物(D1):D−1、D−2、D−5
D−1:テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(住友化学(株)製)
エポキシ当量:120g/eq.
D−2:トリグリシジルパラアミノフェノール、“アラルダイド(登録商標)”MY0500(ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ(株)製)
エポキシ当量:110g/eq.
D−5:トリグリシジルメタアミノフェノール、“アラルダイド(登録商標)”MY0600(ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ(株)製)
エポキシ当量:106g/eq.
・エポキシ化合物(D)(D1以外):D−3、D−4、D−6、D−7
D−3:“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製)
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル
エポキシ当量:189g/eq.
D−4:“EPICLON(登録商標)”830(DIC(株)製)
ビスフェノールFのジグリシジルエーテル
エポキシ当量:172g/eq.
D−6:“EPICLON(登録商標)”HP7200L(DIC(株)製)
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂
エポキシ当量:247g/eq.
D−7:“jER(登録商標)”1007(三菱化学(株)製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂
エポキシ当量:1975g/eq.
・潜在性硬化剤(E)芳香族アミン硬化剤(E1):E−1〜E−2
E−1:“セイカキュア(登録商標)”S(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、和歌
山精化(株)製)
E−2:3,3’−DAS(3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、三井化学ファイン
(株)製)
・潜在性硬化剤(E)ジシアンジアミドまたはその誘導体(E2):E−3
E−3:DICY−7(ジシアンジアミド、ジャパンエポキシレジン(株)製)
・硬化補助剤(F)成分:F−1
F−1:DCMU99(N,N−ジメチル−N’−(3,4−ジクロロフェニル)ウレア、保土谷化学(株)製)
・熱可塑性樹脂
“ビニレック(登録商標)”K(ポリビニルアセタール樹脂、チッソ(株)製)
“スミカエクセル(登録商標)”5003P(ポリエーテルスルホン、住友化学工業(株
)製)
(実施例1)
本実施例は、次の第Iの工程、第IIの工程および第IIIの工程からなる。
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
アクリロニトリル99モル%とイタコン酸1モル%からなる共重合体を湿式紡糸し、焼
成し、総フィラメント数12,000本、総繊度447テックス、比重1.8、ストラン
ド引張強度5.6GPa、ストランド引張弾性率300GPaの炭素繊維を得た。次いで
、その炭素繊維を、濃度0.1mol/Lの炭酸水素アンモニウム水溶液を電解液として
、電気量を炭素繊維1g当たり40クーロンで電解表面処理した。この電解表面処理を施
された炭素繊維を続いて水洗し、150℃の温度の加熱空気中で乾燥し、原料となる炭素
繊維を得た。このときの炭素繊維の表面粗さ(Ra)は23nm、表面酸素濃度O/Cは
、0.13、表面カルボキシル基濃度COOH/Cは0.005、表面水酸基濃度COH
/Cは0.018であった。これを炭素繊維Aとした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
(B1)成分として(B−1)を20質量部、(C)成分20質量部および乳化剤10
質量部からなる水分散エマルジョンを調合した後、(A)成分として(A−2)を50質
量部混合してサイジング液を調合した。なお、(C)成分として、ビスフェノールAのE
O2モル付加物2モルとマレイン酸1.5モル、セバチン酸0.5モルの縮合物、乳化剤
としてポリオキシエチレン(70モル)スチレン化(5モル)クミルフェノールを用いた
。なお(C)成分、乳化剤はいずれも芳香族化合物であり、(B)成分に該当することに
もなる。サイジング液中の溶液を除いたサイジング剤のエポキシ当量は表1の通りである
。このサイジング剤を浸漬法により表面処理された炭素繊維に塗布した後、210℃の温
度で75秒間熱処理をして、サイジング剤塗布炭素繊維束を得た。サイジング剤の付着量
は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1.0質量部となるように調整した。続いて、サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面のX線光電子分光法測定、サイ
ジング剤塗布炭素繊維の界面剪断強度(IFSS)、サイジング剤と潜在性硬化剤(E)との混合物のガラス転移点の上昇温度(△Tg)、サイジング剤塗布炭素繊維から溶出された脂肪族エポキシ化合物(A)量(実施例では(A−2))を測定した。結果を表1にまとめた。この結果、サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面の化学組成、△Tg、脂肪族エポキシ化合物(A)の溶出量ともに期待通りであることが確認できた。また、IFSSで測定した接着性も十分に高いことがわかった。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
混練装置で、(D1)成分として(D−1)を80質量部と(D)成分として(D−3
)を20質量部に、10質量部のスミカエクセル5003Pを配合して溶解した後、潜在性硬化剤(E)成分として、(E−1)4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを40質量部混練して、炭素繊維強化複合材料用のエポキシ樹脂組成物を作製した。
得られたエポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて樹脂目付52g/m2で離型
紙上にコーティングし、樹脂フィルムを作製した。この樹脂フィルムを、一方向に引き揃
えたサイジング剤塗布炭素繊維(目付190g/m)の両側に重ね合せてヒートロール
を用い、温度100℃、気圧1気圧で加熱加圧しながらエポキシ樹脂組成物をサイジング
剤塗布炭素繊維に含浸させプリプレグを得た。続いて、初期の0°引張試験および長期保
管後の0°引張試験を実施した。その結果を表1に示す。初期の0°引張強度利用率は十
分高く、20日後の引張強度の低下率は低いことが確認できた。
(実施例2)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
(B1)成分として(B−2)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤
塗布炭素繊維を得た。続いて、サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面のX線光
電子分光法測定、サイジング剤塗布炭素繊維の界面剪断強度(IFSS)を測定した。サ
イジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面の化学組成ともに期待通りであり、IFS
Sで測定した接着性も十分に高いことがわかった。結果を表1に示す。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
実施例1と同様にプリプレグを作製、成形、評価を実施した。初期の0°引張強度利用
率は十分高く、20日後の引張強度利用率の低下も小さいことが確認できた。結果を表1
に示す。
(実施例3)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
アクリロニトリル99モル%とイタコン酸1モル%からなる共重合体を湿式紡糸し、焼
成し、総フィラメント数12,000本、総繊度800テックス、比重1.8、ストラン
ド引張強度3.9GPa、ストランド引張弾性率240GPaの炭素繊維を得た。次いで
、その炭素繊維を、濃度0.1mol/Lの炭酸水素アンモニウム水溶液を電解液として
、電気量を炭素繊維1g当たり40クーロンで電解表面処理した。この電解表面処理を施
された炭素繊維を続いて水洗し、150℃の温度の加熱空気中で乾燥し、原料となる炭素
繊維を得た。このときの炭素繊維の表面粗さ(Ra)は39nm、表面酸素濃度O/Cは
、0.14、表面カルボキシル基濃度COOH/Cは0.005、表面水酸基濃度COH
/Cは0.018であった。これを炭素繊維Bとした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
実施例2と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。続いて、サイジング剤のエ
ポキシ当量、サイジング剤表面のX線光電子分光法測定、サイジング剤塗布炭素繊維の界
面剪断強度(IFSS)を測定した。サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面の
化学組成ともに期待通りであり、IFSSで測定した接着性も十分に高いことがわかった
。結果を表1に示す。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
実施例1と同様にプリプレグを作製、成形、評価を実施した。初期の0°引張強度利用
率は十分高く、20日後の引張強度利用率の低下も小さいことが確認できた。結果を表1
に示す。
(実施例4〜8)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
サイジング剤として表1に示す(A)成分、および(B1)成分を用いた以外は、実施
例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。続いて、サイジング剤のエポキシ
当量、サイジング剤表面のX線光電子分光法測定、サイジング剤塗布炭素繊維の界面剪断
強度(IFSS)を測定した。サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面の化学組
成ともに期待通りであり、IFSSで測定した接着性も十分に高いことがわかった。結果
を表1に示す。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
実施例1と同様にプリプレグを作製、成形、評価を実施した。初期の0°引張強度利用
率は十分高く、20日後の引張強度利用率の低下も小さいことが確認できた。結果を表1
に示す。
Figure 0006070218
(実施例9〜10)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
サイジング剤として表2に示す質量比にした以外は、実施例1と同様の方法でサイジン
グ剤塗布炭素繊維を得た。続いて、サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面のX
線光電子分光法測定、サイジング剤塗布炭素繊維の界面剪断強度(IFSS)を測定した
。サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面の化学組成ともに期待通りであり、I
FSSで測定した接着性も十分に高いことがわかった。結果を表2に示す。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
実施例1と同様にプリプレグを作製、成形、評価を実施した。初期の0°引張強度利用
率は十分高く、20日後の引張強度利用率の低下も小さいことが確認できた。結果を表2
に示す。
(実施例11)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
(A)成分として(A−2)を60質量部、(B1)成分として(B−3)を40質量
部をDMFに溶解してサイジング液を調合した。サイジング液中の溶液を除いたサイジン
グ剤のエポキシ当量は表2の通りである。実施例1と同様に、このサイジング剤を浸漬法
により表面処理された炭素繊維に塗布した後、210℃の温度で75秒間熱処理をして、
サイジング剤塗布炭素繊維束を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維
100質量部に対して1.0質量部となるように調整した。続いて、サイジング剤のエポ
キシ当量、サイジング剤表面のX線光電子分光法測定、サイジング剤塗布炭素繊維の界面
剪断強度(IFSS)を測定した。この結果、表2に示す通り、サイジング剤のエポキシ
当量、サイジング剤表面の化学組成ともに期待通りであることが確認できた。また、IF
SSで測定した接着性も十分に高いことがわかった。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
実施例1と同様にプリプレグを作製、成形、評価を実施した。初期の0°引張強度利用
率は十分高く、20日後の引張強度利用率の低下も小さいことが確認できた。結果を表2
に示す。
(実施例12)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
電解液として濃度0.05モル/lの硫酸水溶液を用い、電気量を炭素繊維1g当たり
5クーロンで電解表面処理したこと以外は、実施例1と同様とした。このときの表面酸素
濃度O/Cは、0.07、表面カルボキシル基濃度COOH/Cは0.003、表面水酸
基濃度COH/Cは0.002であった。これを炭素繊維Cとした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
サイジング剤として表2に示す質量比にした以外は、実施例1と同様の方法でサイジン
グ剤塗布炭素繊維を得た。続いて、サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面のX
線光電子分光法測定、サイジング剤塗布炭素繊維の界面剪断強度(IFSS)を測定した
。サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面の化学組成ともに期待通りであり、I
FSSで測定した接着性も十分に高いことがわかった。結果を表2に示す。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
実施例1と同様にプリプレグを作製、成形、評価を実施した。初期の0°引張強度利用
率は十分高く、20日後の引張強度利用率の低下も小さいことが確認できた。結果を表2
に示す。
Figure 0006070218
(実施例13〜16)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
実施例2と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。続いて、サイジング剤のエ
ポキシ当量、サイジング剤表面のX線光電子分光法測定、サイジング剤塗布炭素繊維の界
面剪断強度(IFSS)を測定した。サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面の
化学組成ともに期待通りであり、IFSSで測定した接着性も問題ないレベルであった。
結果を表3に示す。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
表3に示す質量比、種類のエポキシ化合物(D1、D)、硬化剤(E)を用いた以外は
実施例1と同様にプリプレグを作製、成形、評価を実施した。初期の0°引張強度利用率
は十分高く、20日後の引張強度利用率の低下も小さいことが確認できた。結果を表3に
示す。
Figure 0006070218
(比較例1)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
アルリロニトリル99モル%とイタコン酸1モル%からなる共重合体を乾湿式紡糸し、
焼成し、総フィラメント数12,000本、総繊度800テックス、比重1.8、ストラ
ンド引張強度6.2GPa、ストランド引張弾性率300GPaの炭素繊維を得た。次い
で、その炭素繊維を、濃度0.1モル/lの炭酸水素アンモニウム水溶液を電解液として
、電気量を炭素繊維1g当たり40クーロンで電解表面処理した。この電解表面処理を施
された炭素繊維を続いて水洗し、150℃の温度の加熱空気中で乾燥し、原料となる炭素
繊維を得た。このときの炭素繊維の表面粗さ(Ra)は3.0nm、表面酸素濃度O/C
は、0.14、表面カルボキシル基濃度COOH/Cは0.005、表面水酸基濃度CO
H/Cは0.017であった。これを炭素繊維Dとした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
実施例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。続いて、サイジング剤のエ
ポキシ当量、サイジング剤表面のX線光電子分光法測定、サイジング剤塗布炭素繊維の界
面剪断強度(IFSS)を測定した。サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面の
化学組成ともに期待通りであるが、IFSSで測定した接着性が十分ではなかった。結果
を表4に示す。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
実施例1と同様にプリプレグを作製、成形、評価を実施した。初期の0°引張強度利用
率十分高く、20日後の引張強度の低下率も問題なく低いことが分かった。
(比較例2〜4)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
サイジング剤として表4に示す質量比にした以外は、実施例1と同様の方法でサイジン
グ剤塗布炭素繊維を得た。続いて、サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面のX
線光電子分光法測定、サイジング剤塗布炭素繊維の界面剪断強度(IFSS)を測定した
。サイジング剤表面を光電子脱出角度15°でX線光電子分光法によって測定されるC1
s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284
.6eV)の成分の高さ(cps)と(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286
.1eV)の成分の高さ(cps)の比率(a)/(b)が0.90より大きく、本発明
の範囲から外れていた。また、比較例2および3は、IFSSで測定した接着性が低いこ
とが分かった。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
実施例1と同様にプリプレグを作製、成形、評価を実施した。比較例2および3は、2
0日後の引張強度の低下率は問題なく低いことが分かったが、初期の0°引張強度利用率
が低いことがわかった。一方、比較例4は、初期の0°引張強度利用率は高いが、20日
後の引張強度の低下率が大きいことがわかった。
(比較例5)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
サイジング剤として表4に示す質量比にした以外は、実施例1と同様の方法でサイジン
グ剤塗布炭素繊維を得た。続いて、サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面のX
線光電子分光法測定、サイジング剤塗布炭素繊維の界面剪断強度(IFSS)を測定した
。サイジング剤表面を光電子脱出角度15°でX線光電子分光法によって測定されるC1
s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284
.6eV)の成分の高さ(cps)と(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)の比率(a)/(b)が0.50より小さく、本発明の範囲から外れていた。IFSSで測定した接着性は十分高いことが分かった。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
実施例1と同様にプリプレグを作製、成形、評価を実施した。初期の0°引張強度利用
率は良好だったが、20日後の0°引張強度の低下率が大きいことが分かった。
(比較例6)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
サイジング剤のエポキシ化合物として、芳香族エポキシ化合物(B1)を用いず、脂肪
族エポキシ化合物(A)のみを用いて、実施例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊
維を得た。続いて、サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面のX線光電子分光法
測定、サイジング剤塗布炭素繊維の界面剪断強度(IFSS)を測定した。サイジング剤
表面を光電子脱出角度15°でX線光電子分光法によって測定されるC1s内殻スペクト
ルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成
分の高さ(cps)と(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)の比率(a)/(b)が0.50より小さく、本発明の範囲から外れていた。また、IFSSで測定した接着性は十分高いことが分かった。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
実施例1と同様にプリプレグを作製、成形、評価を実施した。初期の0°引張強度利用
率は高かったが、20日後の引張強度の低下率が大きいことが分かった。
(比較例7)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
サイジング剤のエポキシ化合物として、脂肪族エポキシ化合物(A)を用いず、芳香族
エポキシ化合物(B1)のみを用いて、実施例2と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊
維を得た。続いて、サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面のX線光電子分光法
測定、サイジング剤塗布炭素繊維の界面剪断強度(IFSS)を測定した。サイジング剤
表面を光電子脱出角度15°でX線光電子分光法によって測定されるC1s内殻スペクト
ルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成
分の高さ(cps)と(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)の比率(a)/(b)が0.90より大きく、本発明の範囲から外れていた。また、IFSSで測定した接着性が低いことが分かった。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
実施例1と同様にプリプレグを作製、成形、評価を実施した。20日後の引張強度の低
下率は小さいものの、初期の引張強度利用率が十分な値ではなかった。
(比較例8)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
(A)成分として(A−2)の水溶液を調整し、浸漬法により表面処理された炭素繊維
に塗布した後、210℃の温度で75秒間熱処理をして、サイジング剤塗布炭素繊維束を
得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して0.50
質量部となるように調整した。続いて、(B1)成分として(B−2)を20質量部、(
C)成分20質量部および乳化剤10質量部からなる水分散エマルジョンを調合した。な
お、(C)成分として、ビスフェノールAのEO2モル付加物2モルとマレイン酸1.5
モル、セバチン酸0.5モルの縮合物、乳化剤としてポリオキシエチレン(70モル)ス
チレン化(5モル)クミルフェノールを用いた。なお(C)成分、乳化剤はいずれも芳香
族化合物であり、(B)成分に該当することにもなる。このサイジング剤を浸漬法により
(A)成分を塗布した炭素繊維に塗布した後、210℃の温度で75秒間熱処理をして、
サイジング剤塗布炭素繊維束を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維
100質量部に対して0.50質量部となるように調整した。なお、用いたサイジング剤
のエポキシ当量、硬化剤と混合したときのガラス転移温度の上昇温度は、1回目、2回目
のそれぞれについて測定し、表中に1回目/2回目と記載した。続いて、サイジング剤の
エポキシ当量、サイジング剤表面のX線光電子分光法測定、サイジング剤塗布炭素繊維の
界面剪断強度(IFSS)を測定した。サイジング剤表面を光電子脱出角度15°でX線
光電子分光法によって測定されるC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=C
に帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と(b)C−O
に帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)の比率(a)/(b)が0.90より大きく、本発明の範囲から外れていた。また、IFSSで測定した接着性は十分に高いことがわかった。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
実施例1と同様にプリプレグを作製、成形、評価を実施した。20日後の引張強度の低
下率は小さいものの、初期の引張強度利用率が十分な値ではなかった。
Figure 0006070218
(実施例17〜20)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
実施例1と同様にした。サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面の化学組成、△Tg、脂肪族エポキシ化合物(A)の溶出量ともに期待通りであり、IFSSで測定した接着性も良好だった。結果を表5に示す。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
表5に示す質量比、種類のエポキシ化合物(D1、D1以外)、硬化剤(E−3)、硬化促進剤(F−1)、熱可塑性樹脂を用い、実施例1と同様にプリプレグを作製、成形、評価を実施した。初期の0°引張強度利用率は問題ないレベルであり、20日後の引張強度の低下率も問題なく低いことが分かった。結果を表5に示す。
(実施例21、22)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
実施例1と同様にした。サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面の化学組成、△Tg、脂肪族エポキシ化合物(A)の溶出量ともに期待通りであり、IFSSで測定した接着性も良好だった。結果を表5に示す。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
表5に示す質量比、種類のエポキシ化合物(D1以外)、硬化剤(E−3)、硬化促進剤(F−1)、熱可塑性樹脂を用い、実施例1と同様にプリプレグを作製、成形、評価を実施した。初期の0°引張強度利用率は問題ないレベルであり、20日後の引張強度の低下率も問題なく低いことが分かった。結果を表5に示す。
(比較例9、10)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
比較例6と同様にした。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
表5に示す質量比、種類のエポキシ化合物(D1、D1以外)、硬化剤(E−3)、硬化促進剤(F−1)、熱可塑性樹脂を表5の通りに用いて、実施例1と同様にプリプレグを作製、成形、評価を実施した。初期の0°引張強度利用率は問題ないレベルであり、20日後の引張強度の低下率が大きいことが分かった。
(比較例11、12)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
比較例7と同様にした。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
表5に示す質量比、種類のエポキシ化合物(D1、D1以外)、硬化剤(E−3)、硬化促進剤(F−1)、熱可塑性樹脂を用い、実施例1と同様にプリプレグを作製、成形、評価を実施した。20日後の引張強度の低下率は小さいものの、初期の引張強度利用率が十分な値ではなかった。
Figure 0006070218
本発明のサイジング剤塗布炭素繊維およびサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法は、優
れた接着性とプリプレグにしたときの長期安定性および高次加工性を有することから、織
物やプリプレグへの加工に適する。また、本発明のプリプレグおよび炭素繊維強化複合材
料は、軽量でありながら強度、弾性率が優れるため、航空機部材、宇宙機部材、自動車部
材、船舶部材、土木建築材およびスポーツ用品等の多くの分野に好適に用いることができ
る。

Claims (23)

  1. 分子内にエポキシ基を2以上有するポリエーテル型ポリエポキシ化合物および/またはポリオール型ポリエポキシ化合物である脂肪族エポキシ化合物(A)ならびに芳香族化合物(B)として少なくとも芳香族エポキシ化合物(B1)を、52/48〜80/20の質量比で含むサイジング剤を炭素繊維に塗布したサイジング剤塗布炭素繊維であって、
    前記炭素繊維の表面粗さ(Ra)は6.0〜100nmであり、
    前記炭素繊維に塗布したサイジング剤表面を、X線光電子分光法によって光電子脱出角度15°で測定されるC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と、(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)との比率(a)/(b)が0.50〜0.90であることを特徴とするサイジング剤塗布炭素繊維。
  2. アセトニトリル/クロロホルム混合溶媒により前記サイジング剤塗布炭素繊維を超音波処理してサイジング剤を溶出した場合、溶出された脂肪族エポキシ化合物(A)の割合は、前記サイジング剤塗布炭素繊維100質量部に対して0.3質量部以下であることを特徴とする、請求項1に記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  3. 塗布されたサイジング剤のエポキシ当量が350〜550g/eq.であることを特徴とする、請求項1または2に記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  4. 前記サイジング剤は、溶媒を除いたサイジング剤全量に対して、少なくとも前記脂肪族エポキシ化合物(A)を35〜65質量%、前記芳香族化合物(B)を35〜60質量%含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  5. 前記脂肪族エポキシ化合物(A)は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ポリブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、およびアラビトールと、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  6. 前記芳香族エポキシ化合物(B1)は、ビスフェノールA型エポキシ化合物またはビスフェノールF型エポキシ化合物であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一つに記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  7. 前記サイジング剤は、溶媒を除いたサイジング剤全量に対して、分子内にエポキシ基を持たないエステル化合物(C)を2〜35質量%含有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一つに記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  8. 前記脂肪族エポキシ化合物(A)の前記炭素繊維への付着量は、サイジング剤塗布炭素繊維に対して0.2〜2.0質量%であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一つに記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  9. 化学修飾X線光電子分光法により測定される前記炭素繊維の表面カルボキシル基濃度COOH/Cは0.003〜0.015、表面水酸基濃度COH/Cは0.001〜0.050であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一つに記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  10. 脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族化合物(B)として少なくとも芳香族エポキシ化合物(B1)を含むサイジング剤を炭素繊維に塗布したサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法であって、
    前記炭素繊維に前記サイジング剤を塗布した後、160〜260℃の温度範囲で30〜600秒熱処理することにより請求項1〜のいずれか一つに記載のサイジング剤塗布炭素繊維を製造することを特徴とするサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法。
  11. 芳香族エポキシ化合物(B1)を少なくとも含む水エマルジョン液と脂肪族エポキシ化合物(A)を少なくとも含む組成物とを混合したサイジング剤含有液を前記炭素繊維に塗布することを特徴とする、請求項1に記載のサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法。
  12. 前記炭素繊維をアルカリ性電解液中で液相電解酸化した後、前記サイジング剤を塗布することを特徴とする、請求項10または11に記載のサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法。
  13. 請求項1〜のいずれか一つに記載のサイジング剤塗布炭素繊維と、熱硬化性樹脂とを含むことを特徴とするプリプレグ。
  14. 前記熱硬化性樹脂はエポキシ化合物(D)と潜在性硬化剤(E)とを含有することを特徴とする、請求項1に記載のプリプレグ。
  15. 前記潜在性硬化剤(E)は芳香族アミン硬化剤(E1)であることを特徴とする、請求項1に記載のプリプレグ。
  16. 前記芳香族アミン硬化剤(E1)はジフェニルスルフォン骨格を含有する芳香族アミン硬化剤であることを特徴とする、請求項1に記載のプリプレグ。
  17. 前記潜在性硬化剤(E)はジシアンジアミドまたはその誘導体(E2)であることを特徴とする、請求項1に記載のプリプレグ。
  18. 前記熱硬化性樹脂は硬化促進剤(F)としてウレア化合物(F1)を含有することを特徴とする、請求項1に記載のプリプレグ。
  19. 前記サイジング剤および前記芳香族アミン硬化剤(E1)は、前記サイジング剤と前記芳香族アミン硬化剤(E1)とを、アミン当量/エポキシ当量が0.9の割合で混合後、25℃、60%RHの雰囲気下で20日間保管した場合のガラス転移点の上昇が25℃以下となる組み合わせで使用することを特徴とする、請求項15または16に記載のプリプレグ。
  20. 前記サイジング剤および前記ジシアンジアミドまたはその誘導体(E2)は、前記サイジング剤と前記ジシアンジアミドまたはその誘導体(E2)とを、アミン当量/エポキシ当量が1.0の割合で混合後、25℃、60%RHの雰囲気下で20日保管した場合のガラス転移点の上昇が10℃以下となる組み合わせで使用することを特徴とする、請求項17または18に記載のプリプレグ。
  21. 前記エポキシ化合物(D)は、グリシジルアミン骨格を少なくとも1つ有し、かつ、3個以上の官能基を有する芳香族エポキシ化合物(D1)を50質量%以上含有することを特徴とする、請求項14〜20のいずれか一つに記載のプリプレグ。
  22. 請求項13〜21のいずれか一つに記載のプリプレグを成形してなることを特徴とする炭素繊維強化複合材料。
  23. 請求項1〜のいずれか一つに記載のサイジング剤塗布炭素繊維と、熱硬化性樹脂の硬化物とを含むことを特徴とする炭素繊維化複合材料。
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