JP6068561B2 - 生糸によるパイル織製品の製造方法及びパイル織製品 - Google Patents
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Description
この発明は、繭から抽出した生糸のセリシンを定着させると共に、片撚り生糸によりパイル形態に製織した生糸によるパイル織製品の製造方法及びパイル織製品に関する。
従来、繭から抽出した生糸は二本のフィブロイン繊維をセリシンで***して構成されており、フィブロイン繊維は極細のフィブリル数100本から成り立っており一般にこのフィブリル繊維は摩擦に弱く乱反射して白っぽく見える。
かかる生糸からセリシンを除去したもの、すなわち、フィブロイン繊維そのものを絹糸と称しており、この絹糸の特性は吸湿性、放湿性等に優れ、肌触りが自然感触となり着心地が他の繊維の追従を許さないものであるが、上記した摩擦に弱く乱反射の白っぽい形態となる欠点を有していることも周知のことである。
そこで、かかるセリシンを含んだ生糸の特性を利用してパイル織物を製織し、肌触りの良好なタオル地等のパイル生地を織成する技術が知られている。かかるパイル織りに際しては、パイル生地のパイル基部を架橋剤を介したセリシンの定着化により固定してタオル地を織成する技術が、特許文献1、特許文献2等にすでに開示されている。
かかる生糸によるパイル織物は、パイル独自の風合いにより柔軟性を有したタオル等のパイル生地とすることはできるが、あくまで、パイルの特性に依存した織成技術であった。他方、紡績糸によってパイル織りではなくてふんわり感のある生地を織成する技術が開示されている。すなわち、水溶性糸と紡績糸(木綿、麻、絹、ウール等の天然繊維や合成繊維)とを撚り合わせた混合撚糸から織編物をつくり、該織編物中の水溶性糸を水に溶解して除去することで、軽量性、通気性、速乾性などの特性に優れた織編物を作成できる技術が開示(特許文献3参照)されている。同様に、生地を織成する糸そのものにふんわり感を付与する技術として、水溶性糸と紡績糸とからなる混合撚糸の状態で、水溶性糸を水に溶解して除去することで、軽量性、通気性、速乾性などの特性に優れた紡績糸を作成し、この紡績糸を使用して種々の織編物を作成する技術が開示(特許文献4参照)されている。
通常、かかるパイル織に用いる生糸は、諸撚り(モロヨリ)と称される撚糸をパイル経糸としてパイル織りする。ここで、諸撚りとは、繭から抽出した二本のフィブロイン繊維を包含する1本の生糸を2本以上引揃えて片撚りとした撚糸を2本合わせ、その状態で片撚りと反対の方向に撚合わせる技術である。これは、撚りが安定して加熱しなくても撚りが解撚することがなく、安定した撚りによりパイル地を製造し易く、通常生糸によるパイル織の製織はこの諸撚り糸をパイル経糸として用いている。
しかし、諸撚りの生糸でパイル地を製織する場合は、セリシン定着による固化現象と複雑な撚り技術を用いるために感触がごわつきやすく、また、諸撚りを構成する生糸が多数本となり、しかも、複雑な反対方向の撚りにより生糸の撚り戻しが生起し各糸条間に間隙が生起して織り密度が過度に希薄化して吸湿性や放湿性、保温性、耐摩耗性、弾力性、手触り感触等の点で不利となる欠点を有していた。
このように、パイル地に諸撚りを用いるために上記欠点を生起する現象が生じるが、そもそも諸撚りを用いる理由としては、従来生糸を用いて諸撚りではなく片撚りでパイル織物を製織するという発想そのものがなかったことに起因する。なぜならば、片撚りは前述のように繭から抽出したセリシン***の生糸を数本、通常4本を撚って織糸を形成するため、製織工程時に各生糸がバラバラになり易くそのため撚り止めの作業手間を要し、他方バラバラになる欠点を防止するためにはきつい撚りとせざるを得なかったからである。そうすると風合いがなくなり絹本来の手触りと風合いを減殺してしまうことになる。
そこで、生糸を諸撚りではなく片撚りで行うことにより、諸撚りにともなう上記欠点を解消し、更には、片撚りに際して水溶性糸を織り込み溶解するという技術を付加して片撚りにともなう上記欠点を解消するという生糸のパイル織成の技術が考えられる。すなわち、本発明では、片撚りした生糸と水溶性糸とを合わせた撚りによってパイルを織成してタオル地等を織編せんとした。
すなわち、本発明では、生糸を用いたパイル織りに際して、架橋剤によりセリシン定着処理を施した4本〜8本の生糸による片撚りの撚糸を用いるものの、生糸の片撚りを行うに際して撚りを非緊締の甘撚りとし、更には、かかる撚糸に水溶解性の水溶糸を用いて逆撚りした後で水溶性糸を溶解し、パイル抜けがなく安定性と絹本来の風合いが良好となり、しかも、撚糸間の空気層を充分に形成し、ふんわり感があって、吸湿性、放湿性等に優れた生糸によるパイル織製品ができる。
この発明は、生糸に行うセリシン定着処理と、数本の生糸を弛緩状の甘撚りにより片撚り撚糸とする片撚り処理と、片撚り撚糸に水溶性糸を片撚りと逆方向に撚ることで混合撚糸を生成する混合処理と、水溶性糸を溶解する溶解処理と、混合撚糸により行うパイル織成処理と、を順不同で行うことを特徴とする生糸によるパイル織製品の製造方法を提供せんとするものである。
また、数本のセリシン定着処理生糸による弛緩状の甘撚りで片撚り撚糸とした片撚り撚糸と、溶解処理を施す水溶性糸を片撚り撚糸と逆方向に撚った混合撚糸とによってパイル織製としたことを特徴とするパイル織製品を提供せんとするものである。
この発明によれば、生糸を用いたパイル織に際して、生糸に行うセリシン定着処理と、数本の生糸を弛緩状の甘撚りにより片撚り撚糸とする片撚り処理と、片撚り撚糸に水溶性糸を片撚りと逆方向に撚ることで混合撚糸を生成する混合処理と、水溶性糸を溶解する溶解処理と、混合撚糸により行うパイル織成処理と、を順不同で行うことにより、セリシンがパイルの基端で定着してバラバラになりがちな片撚りの撚糸を束ねてパイル織の形状を強固に保型可能とし、パイル織りの織布としての使用に際して風合いを感じさせながら吸湿性を向上することができる。
更には、特に風合いを勘案した片撚りの甘撚り状態としたことにより、パイル織とした場合に隣接するパイル間が均等に整順した並びとなって緻密なパイル地となりパイル形態の安定性を向上し、絹特有の特性である吸湿性、放湿性等をより発揮することができる効果があり、また耐摩耗性も良好となり、パイル地が整順したパイル保型状となり弾力性も向上する効果がある。
特に片撚りの生糸において撚り方を緊締した状態ではなく、弛緩状態の甘撚りとしたことにより、生糸による片撚り撚糸がパイル織りに製織(パイル立て運動)される際に定着セリシンに内包されたフィブロイン繊維が互いに隣接する片撚り撚糸のフィブロイン繊維と絡む時に片撚りが弛緩状態の甘撚りであることから、その間に風合いに最適の間隙を生起すると共にその間隙がパイル間の間隙と相俟って生地表面にざらつき感を生起することになり、パイル生地とした場合に人肌に生地表面のざらつきの存在感を付与し、例えば石鹸の泡立ちを良好にし、赤ちゃんのような敏感な肌に乾布摩擦布として心地よい刺激を付与することができる効果がある。
このような、生糸の甘撚りで片撚り撚糸としたことによる効果と共に、更に生糸の片撚り撚糸に水溶性糸を片撚りとは逆方向に撚っていることにより、水溶性糸を溶解した後に、水溶性糸の溶解した部分が空隙となり、その分空気を含み、更には、逆撚りの水溶性糸が溶解するときに既に片撚り撚糸となった生糸に逆撚りのほどき応力が作用して、甘撚りの効果を更に増大することができ、生糸によるパイル織成後のふわふわ感が倍増できる効果がある。
また、数本のセリシン定着処理生糸による弛緩状の甘撚りで片撚り撚糸とした片撚り撚糸と、溶解処理を施す水溶性糸を片撚り撚糸と逆方向に撚った混合撚糸とによってパイル織製としたことを特徴とするパイル織製品を提供せんとするものである。
また、生糸に行うセリシン定着処理と、数本の生糸を弛緩状の甘撚りにより片撚り撚糸とする片撚り処理と、片撚り撚糸に水溶性糸を片撚りと逆方向に撚ることで混合撚糸を生成する混合処理と、水溶性糸を溶解する溶解処理と、混合撚糸により行うパイル織成処理と、を順不同で行うことを特徴とする生糸によるパイル織製品の製造方法により製造したパイル織製品を提供せんとするものである。
この発明の実施例を図面に基づき詳説する。
本発明におけるパイル織製品は、以下の主な(A)〜(E)の各処理内容により製造されるが、処理工程は、後述する第一〜第六実施例のように、各処理の順序を異ならせた複数パターンの処理工程が考えられる。
(A)生糸へのセリシン定着処理
(B)生糸の片撚り処理
(C)片撚り生糸と水溶性糸との逆撚りによる混合撚糸の生成処理
(D)水溶性糸の溶解処理
(E)混合撚糸によるパイル織成処理
(A)生糸へのセリシン定着処理
(B)生糸の片撚り処理
(C)片撚り生糸と水溶性糸との逆撚りによる混合撚糸の生成処理
(D)水溶性糸の溶解処理
(E)混合撚糸によるパイル織成処理
以下、上述した各処理内容について説明する。
[(A)生糸へのセリシン定着処理]
繭から解舒した状態の糸、すなわち生糸(きいと)は、内部にフィブロイン繊維(絹)を二本含んでセリシンで***されている。通常、セリシンが重量比約25%でフィブロイン繊維が重量比約75%より構成されており、フィブロイン繊維中には、数100本の極細のフィブリルという繊維が含まれている。一般的にかかる極細繊維のフィブリルは摩擦に弱くその乱反射で白っぽく見える。
繭から解舒した状態の糸、すなわち生糸(きいと)は、内部にフィブロイン繊維(絹)を二本含んでセリシンで***されている。通常、セリシンが重量比約25%でフィブロイン繊維が重量比約75%より構成されており、フィブロイン繊維中には、数100本の極細のフィブリルという繊維が含まれている。一般的にかかる極細繊維のフィブリルは摩擦に弱くその乱反射で白っぽく見える。
かかるセリシン***の生糸を架橋剤により、セリシンの定着処理を行う。このセリシンの定着処理は、架橋剤等を使用して、チーズ染色機、綛染色機等を用いて、70〜90°Cで70分間循環処理後水洗し、さらに、弱酸性液で10分間循環処理した後水洗して乾燥することによって、セリシンを生糸に固着することができる。
架橋剤としては、ジクロロトリアジン系架橋剤、ポリハロゲノピリミジン系架橋剤、ジフルオロモノクロロピリミジン系架橋剤、フロロメチルクロルピリミジン系架橋剤、ジクロロキノキザリン系架橋剤及び/又はグリシジルエーテル系架橋剤等の単独或いは混合物を使用する事が出来る。
なお、本発明においては、繭から解舒した状態の生糸の状態でセリシンの定着処理を行う場合の他に、次項(B)生糸の片撚り処理で説明するように、数本(例えば、4本)の生糸を片撚りの甘撚りした状態でセリシンの定着処理を行う場合がある。
[(B)生糸の片撚り処理]
この生糸の片撚り処理では、繭から解舒した生糸(きいと)を4本撚り合わせて片撚りとし、しかも撚り方は弛緩状態の甘撚りとした片撚り生糸を生成する。
この生糸の片撚り処理では、繭から解舒した生糸(きいと)を4本撚り合わせて片撚りとし、しかも撚り方は弛緩状態の甘撚りとした片撚り生糸を生成する。
通常生糸の撚り方としては、甘撚り、普通撚り、強撚りの三種が知られている。甘撚りとは、生糸1mあたり約300回以下の撚り数(300個の撚り部)の撚り方であり、普通撚りとは、生糸1mあたり約500〜600回の撚り数(500〜600個の撚り部)の撚り方であり、強撚りとは、生糸1mあたり約800回以上の撚り数(800個以上の撚り部)の撚り方を指す。
かかる生糸の撚り数によって織物の物性が異なってくる。すなわち、本発明ではパイル織の製織において使用する生糸を所定の甘撚り生糸とすることにより従来の生糸によるパイル地とは全く異なる風合いと機能を生成することに特徴を有する。
本発明では、繭から抽出した1本の生糸を数本束ね、束ねた生糸を数本引揃え片撚りし、60〜180デニールの糸とし、かかる片撚りの生糸を用いる。デニールとは糸の太さを表わす単位であり、1gで9,000mあるものを1デニールとしており、9,000mで重量が増えるほど糸が太くなり、デニール数も多くなる。
本発明では、60〜180デニール、又は、12〜20デニールの生糸を片撚りで1mあたり80回〜200回の甘撚りをかける。従って、通常のパイル織の製織で約3mmのパイル高さのパイル地とした場合は、例えば撚り回数を100回とした場合において約10mmの長さの生糸に1回の撚り(1個の撚り部)が形成されることになる。
すなわち、図3(a)に示すように、片撚りの撚り部dと撚り部dとの間隙Lは約10mmとなり、パイル高さを約3mmとするパイル地においては1個のパイルに1個の撚り部dが形成されるか、あるいはパイル基部に撚り部が存在してパイルそのものには撚り部dが存在しないことになる。
図3(b)に示すように、仮に撚り回数を約200回の片撚りとした場合においては、10mmの長さの生糸に2回の撚り(2個の撚り部d)が形成されるため、約3mmの高さのパイル地においては1個のパイルに最大で2個か或は1個の撚り部が存在することになる。
しかも、パイルの撚り部間には、繭から抽出した生糸の束ね糸が形成されているだけであるから、束ね糸表面がばらけやすく生糸の毛羽立った状態となる。以上より想定されることは、約3mmの高さのパイル地においては、片撚りの撚り部が1個のパイル(輪奈)に0〜2個しか存在しないことになり、かかる状況のパイル地の風合いや吸湿、保温機能等を考察すると次のような結論となる。
すなわち、撚り部がパイルに0〜2個しか存在しないため、パイルを構成した生糸間に所定の間隙が形成され、この間隙においては、20本〜60本束ねた束ね糸の生糸表面に微細な生糸がうぶ毛状の植生状態となり、かつ撚り部間で生糸がばらけた状態となっている。従って、各パイル間には生糸の微細な立毛或はばらけた生糸が密集して保温機能や毛細管現象による吸湿機能をより向上することができると共に、パイルの撚り部間では微細な生糸の立毛やばらけた細毛が密集状態となり風合いも良好となる。更には、撚り部が一定間隔毎に点在して数本の束ね糸を片撚り状態としているためパイルを可及的に整順して製織することができ、パイル地を全体的に均一な風合いとすることができる。
このような撚り方(つまり、片撚りで撚り回数を約100回又は約200回の甘撚り)によって生成された片撚り生糸は、パイル経糸として使用する際に互いの糸条間の間隙が整順して形成されていくため、隣接のパイル同士が甘撚りの片撚り生糸によって密となっている。
[(C)片撚り生糸と水溶性糸との逆撚りによる混合撚糸の生成処理]
この混合撚糸の生成処理では、繭から解舒した生糸を片撚りで甘撚りして形成した片撚り生糸を用いて、片撚り生糸の撚方向とは逆方向に水溶性糸を撚糸して混合撚糸を生成する。
この混合撚糸の生成処理では、繭から解舒した生糸を片撚りで甘撚りして形成した片撚り生糸を用いて、片撚り生糸の撚方向とは逆方向に水溶性糸を撚糸して混合撚糸を生成する。
片撚り生糸と撚り合わせるための水溶性糸は、水性に対する溶解性を有していれば特に限定されるものではないが、特に、水溶性糸としては、水溶性糸自体を単独で所定温度(例えば、70℃以上)の熱水に浸漬して所定時間(例えば、30分間)放置したときに、水溶解性が所定割合(例えば、質量の95%以上)である水溶性糸が好ましい。つまり、水溶性糸の水溶解性が低いと、混合撚糸中の水溶性糸の溶解が十分でなく、軽量でボリュームがあり、非常に柔らかくて触感に優れる生糸によるパイル経糸が得られ難くなる。
水溶性糸としては、十分な水溶解性を有するものであればよく、水可溶性ポリビニルアルコール繊維、水可溶性エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維、水可溶性ポリアミド繊維などを用いることができる。特に、水可溶性ポリビニルアルコール繊維、水可溶性エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維が、繊維強力、水(熱水)への高い溶解性、生分解性、入手容易性などの点から好ましく用いられる。水可溶性ポリビニルアルコール系繊維は、従来から広く知られており、例えば、水溶性ビニロンなどとして販売されている。これらの水可溶性樹脂は、単独でも、又は、二種以上組み合わせても使用することができる。
また、水溶性糸は、水溶性である限りは、紡績糸であってもよく、フィラメント糸(長繊維)であってもよい。親水性溶媒で溶解除去し易いことからフィラメント糸が好ましい。さらに、水溶性糸を溶解除去する際に水溶性糸の除去が速やかに且つ良好に行うことができること、細い番手の紡績単糸を使用し易いこと、混合撚糸における水溶性糸の混率を低くできてコストを低減できることなどから、マルチフィラメント糸が特に好ましい。
水溶性糸の太さは、片撚り生糸との撚り合せの容易性、片撚り生糸からの水溶性糸の溶解除去の容易性、水溶性糸の生産性などの点から、例えば、片撚り生糸と同じ60〜180デニール又は12〜20デニールの太さが望ましい。また、複合生糸と水溶性糸との割合は、例えば、重量比で前者/後者=90/10〜70/30程度が好ましい。
上記片撚り生糸と水溶性糸との割合によれば、片撚り生糸から水溶性糸を水で溶解除去した後に、膨らみ、風合、軽量性、保温性、柔軟性、製織編性、撚の安定性などに優れた膨化糸を形成することができる。この膨化糸を用いて得られる織編物(パイル織製品)は軽量でボリュームがあり、非常に柔らかくて触感に優れ、保温性、吸水性に優れ、これらの性能の持続性に優れ、しかも毛羽落ちがなく、耐ピリング性に優れる。
混合撚糸において、複合生糸と水溶性糸との本数(糸本数)は、生糸によるパイル経糸の風合、軽量性、膨らみ、撚糸機のクリル本数の制限、品質管理の点から、片撚り生糸は1本とし、これに対して、水溶性糸が1〜2本であるのが好ましい。
そして、上記片撚り生糸と水溶性糸とを撚り合わせて織った混合撚糸では、混合撚糸の撚り方向(片撚り生糸と水溶性糸との2種類の糸の撚り合わせにおける撚り方向)は、片撚り生糸の撚り方向の逆方向としている。さらに、混合撚糸の撚数は、片撚り生糸と同じで1mあたり100回又は200回程度である。
このように、混合撚糸の撚数を片撚り生糸と同数とすることにより、混合撚糸を製造するための合撚時(上撚を行った際)に、混合撚糸の形態安定性(撚の安定性)を保ちながら、上撚が片撚り生糸の撚(下撚)を解撚する方向に働き、上撚の際に片撚り生糸の糸長が長くなる。さらに、片撚り生糸の撚方向と逆の方向に水溶性糸を伴って混合撚糸を形成するが、片撚り生糸を構成している生糸の繊維は、解撚されながらも、元の下撚の撚方向を保持している。そのため、片撚り生糸は、上撚の際に生糸が再配列する。その結果、片撚り生糸に膨らみが生じ、風合、軽量性、保温性、吸水性などに優れ、しかもこれらの性能の持続性に優れる本発明の膨化した混合撚糸を形成することができる。
[(D)水溶性糸の溶解処理]
片撚り生糸と水溶性糸との混合撚糸からの水溶性糸の溶解処理においては、混合撚糸の状態で水溶性糸を溶解除去する場合と、混合撚糸によりパイル織成されたパイル織物の状態で水溶性糸を溶解除去する場合がある。混合撚糸の状態で水溶性糸を溶解除去する場合では、混合撚糸を綛(カセ)にとって抽出処理する方法、混合撚糸を染色用ボビンにチーズ状に巻いた状態で抽出処理する方法、混合撚糸を染色用ビームに巻いた状態で抽出処理する方法などを利用できるが、小ロットで効率良く生産できる点から、混合撚糸をチーズ状に巻いた状態で抽出処理する方法が好適に用いられる。
親水性溶媒としては、水の他、アルコール類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類、カルビトール類などを用いることができる。これらの親水性溶媒は、単独で使用してもよいし、又は、二種以上組み合わせて使用することもできる。
水溶性糸を抽出する方法は、特に限定されないが、簡便な方法で水溶性糸を効率よく除去できる点から、高温(例えば、90℃以上)の親水性溶媒に浸漬する方法が望ましい。親水性溶媒として水を用いる場合、抽出水は中性であってもよく、アルカリ又は酸性水溶液であってもよい。また、界面活性剤などを添加した水溶液であってもよい。
抽出処理温度は、水溶性糸を構成する繊維の種類や溶媒に対する溶解度、糸の形態や太さなどに応じて調節でき、除去効率の点から、急激に溶解が開始する温度(溶解温度)以上の温度(特に、溶解温度よりも10〜20℃程度高い温度)で処理するのが好ましい。
親水性溶媒の割合は、混合撚糸に対して2倍(質量基準)以上であり、例えば、5〜50倍程度であるのが好ましい。親水性溶媒の量が少なすぎると、水溶性糸の除去が不十分となる。なお、抽出除去が不十分な場合には、水溶性糸を含まないフレッシュな親水性溶媒を用いて、再度親水性溶媒浴中で水溶性糸を抽出除去してもよい。
溶解処理時間についても、水溶性糸の種類や使用する装置、処理温度に応じて、生産効率、安定性、得られる生糸によるパイル経糸の品質・性能などを考慮して適宜調整が可能である。
溶解処理を行うための処理機器は、特に限定されないが、糸染め染色機の釜を使用して水溶性糸を溶解除去すると、水溶性糸を効率よく溶解除去できる。糸染め染色機の釜を使用する場合は、水溶性糸を溶解除去した後に同じ釜を使用して水溶性糸を溶解除去して得られた膨化糸の染色を引き続いて行なってもよい。さらに、混合撚糸から水溶性糸を溶解除去した後は、糸に付着している水溶性糸の成分を除去するために、混合撚糸そのもの又は混合撚糸でパイル織成されたパイル織物を水洗することが好ましい。
[(E)混合撚糸によるパイル織成処理]
上記片撚り生糸と水溶性糸とを撚り合わせて織られた混合撚糸を、生糸によるパイル経糸として用いてパイル織成を行う。これにより、パイル織製品が織成される。
上記片撚り生糸と水溶性糸とを撚り合わせて織られた混合撚糸を、生糸によるパイル経糸として用いてパイル織成を行う。これにより、パイル織製品が織成される。
本発明においては、上述してきた(A)生糸へのセリシン定着処理、(B)生糸の片撚り処理、(C)片撚り生糸と水溶性糸との逆撚りによる混合撚糸の生成処理、(D)水溶性糸の溶解処理、(E)混合撚糸によるパイル織成処理を、順次実施するだけではなく、各処理の順番を適宜変更することができる。
本発明においては、図4のパイル織製品の処理手順のマトリクスに示すように、上記各処理の順番を異ならせた第一実施例〜第六実施例の6通りのパイル織製品の製造方法がある。つまり、第一実施例においては、第一処理として(A)セリシン定着処理を、第二処理として(B)生糸の片撚り処理を、第三処理として(C)混合撚糸の生成処理を、第四処理として(D)水溶性糸の溶解処理を、最後に第五処理として(E)パイル織成処理を行い、パイル織製品を製造する。
第二実施例においては、第一処理として(B)生糸の片撚り処理を、第二処理として(A)セリシン定着処理を、第三処理として(C)混合撚糸の生成処理を、第四処理として(D)水溶性糸の溶解処理を、最後に第五処理として(E)パイル織成処理を行い、パイル織製品を製造する。
第三実施例においては、第一処理として(A)セリシン定着処理を、第二処理として(B)生糸の片撚り処理を、第三処理として(C)混合撚糸の生成処理を、第四処理として(E)パイル織成処理を、最後に第五処理として(D)水溶性糸の溶解処理を行い、パイル織製品を製造する。
第四実施例においては、第一処理として(B)生糸の片撚り処理を、第二処理として(A)セリシン定着処理を、第三処理として(C)混合撚糸の生成処理を、第四処理として(E)パイル織成処理を、最後に第五処理として(D)水溶性糸の溶解処理を行い、パイル織製品を製造する。
第五実施例においては、第一処理として(B)生糸の片撚り処理を、第二処理として(C)混合撚糸の生成処理を、第三処理として(A)セリシン定着処理と(D)水溶性糸の溶解処理とを同時に、最後に第四処理として(E)パイル織成処理を行い、パイル織製品を製造する。
第六実施例においては、第一処理として(B)生糸の片撚り処理を、第二処理として(C)混合撚糸の生成処理を、第三処理として(E)パイル織成処理を、最後に第四処理として(A)セリシン定着処理と(D)水溶性糸の溶解処理とを同時に行い、パイル織製品を製造する。以下、図4に示す一実施例〜第六実施例の6通りのパイル織製品の製造方法を順番に説明する。
[第一実施例]
以下、本発明のパイル織製品の製造の第一実施例を、図5を参照して説明する。この実施例においては、上述した(A)〜(E)の各処理が、(A)→(B)→(C)→(D)→(E)の順序で実行される。
以下、本発明のパイル織製品の製造の第一実施例を、図5を参照して説明する。この実施例においては、上述した(A)〜(E)の各処理が、(A)→(B)→(C)→(D)→(E)の順序で実行される。
第一実施例においては、まず、上述した(A)生糸へのセリシン定着処理を行う(ステップS10)。これにより、繭から解舒した生糸にセリシンが定着する。
次に、上述した(B)生糸の片撚り処理を行う(ステップS11)。これにより、数本(例えば、4本)生糸を片撚りで甘撚り(100回又は200回)して形成した片撚り生糸が生成される。
続いて、上述した(C)片撚り生糸と水溶性糸との逆撚りによる混合撚糸の生成処理を行う(ステップS12)。これにより、片撚り生糸と水溶性糸とを片撚り生糸の撚方向と逆方向に撚糸した混合撚糸が生成される。
続いて、上述した(D)水溶性糸の溶解処理を行う(ステップS13)。これにより、混合撚糸から水溶性糸が溶解除去された膨化した混合撚糸が生成される。
最後に、上記ステップS10〜13で生成された膨化した混合撚糸をパイル経糸として用いて、(E)混合撚糸によるパイル織成処理を行い、パイル織製品が織成される(ステップS14)。
[第二実施例]
以下、本発明における第二実施例を、図6を参照して説明する。この実施例においては、上述した(A)〜(E)の各処理が、(B)→(A)→(C)→(D)→(E)の順序で実行される。
以下、本発明における第二実施例を、図6を参照して説明する。この実施例においては、上述した(A)〜(E)の各処理が、(B)→(A)→(C)→(D)→(E)の順序で実行される。
第二実施例においては、まず、上述した(B)生糸の片撚り処理を行う(ステップS20)。これにより、数本(例えば、4本)生糸を片撚りで甘撚り(100回又は200回)して形成した片撚り生糸が生成される。
次に、上述した(A)生糸へのセリシン定着処理を行う(ステップS21)。これにより、繭から解舒した状態の片撚り生糸にセリシンが定着する。
続いて、上述した(C)片撚り生糸と水溶性糸との逆撚りによる混合撚糸の生成処理を行う(ステップS22)。これにより、片撚り生糸と水溶性糸とを片撚り生糸の撚方向と逆方向に撚糸した混合撚糸が生成される。
続いて、上述した(D)水溶性糸の溶解処理を行う(ステップS23)。これにより、混合撚糸から水溶性糸が溶解除去された膨化した混合撚糸が生成される。
最後に、上記ステップS20〜23で生成された膨化した混合撚糸をパイル経糸として用いて、(E)混合撚糸によるパイル織成処理を行い、パイル織製品が織成される(ステップS24)。
[第三実施例]
以下、本発明における第三実施例を、図7を参照して説明する。この実施例においては、上述した(A)〜(E)の各処理が、(A)→(B)→(C)→(E)→(D)の順序で実行される。
以下、本発明における第三実施例を、図7を参照して説明する。この実施例においては、上述した(A)〜(E)の各処理が、(A)→(B)→(C)→(E)→(D)の順序で実行される。
第三実施例においては、まず、上述した(A)生糸へのセリシン定着処理を行う(ステップS30)。これにより、繭から解舒した生糸にセリシンが定着する。
次に、上述した(B)生糸の片撚り処理を行う(ステップS31)。これにより、数本(例えば、4本)生糸を片撚りで甘撚り(100回又は200回)して形成した片撚り生糸が生成される。
続いて、上述した(C)片撚り生糸と水溶性糸との逆撚りによる混合撚糸の生成処理を行う(ステップS32)。これにより、片撚り生糸と水溶性糸を複合生糸の撚方向と逆方向に撚糸した混合撚糸が生成される。
続いて、上記ステップS10〜12で生成された混合撚糸をパイル経糸として用いて、(E)混合撚糸によるパイル織成処理を行い、パイル織製品が織成される(ステップS33)。
最後に、上述した(D)水溶性糸の溶解処理を行う(ステップS34)。これにより、織成されたパイル織製品から水溶性糸が溶解除去されて、膨化した混合撚糸で形成されたパイル織製品となる。
[第四実施例]
以下、本発明における第四実施例を、図8を参照して説明する。この実施例においては、上述した(A)〜(E)の各処理が、(B)→(A)→(C)→(E)→(D)の順序で実行される。
以下、本発明における第四実施例を、図8を参照して説明する。この実施例においては、上述した(A)〜(E)の各処理が、(B)→(A)→(C)→(E)→(D)の順序で実行される。
第四実施例においては、まず、上述した(B)生糸の片撚り処理を行う(ステップS40)。これにより、数本(例えば、4本)生糸を片撚りで甘撚り(100回又は200回)して形成した片撚り生糸が生成される。
次に、上述した(A)生糸へのセリシン定着処理を行う(ステップS41)。これにより、繭から解舒した状態の片撚り生糸にセリシンが定着する。
続いて、上述した(C)片撚り生糸と水溶性糸との逆撚りによる混合撚糸の生成処理を行う(ステップS42)。これにより、片撚り生糸と水溶性糸とを片撚り生糸の撚方向と逆方向に撚糸した混合撚糸が生成される。
続いて、上記ステップS40〜42で生成された混合撚糸をパイル経糸として用いて、(E)混合撚糸によるパイル織成処理を行い、パイル織製品が織成される(ステップS43)。
最後に、上述した(D)水溶性糸の溶解処理を行う(ステップS44)。これにより、完成したパイル織製品から水溶性糸が溶解除去されて、膨化した混合撚糸で形成されたパイル織製品となる。
[第五実施例]
以下、本発明における第五実施例を、図9を参照して説明する。この実施例においては、上述した(A)〜(E)の各処理が、(B)→(C)→(A)+(D)→(E)の順序で実行されてパイル織製品が完成する。
以下、本発明における第五実施例を、図9を参照して説明する。この実施例においては、上述した(A)〜(E)の各処理が、(B)→(C)→(A)+(D)→(E)の順序で実行されてパイル織製品が完成する。
第五実施例においては、まず、上述した(B)生糸の片撚り処理を行う(ステップS50)。これにより、数本(例えば、4本)生糸を片撚りで甘撚り(100回又は200回)して形成した片撚り生糸が生成される。
続いて、上述した(C)片撚り生糸と水溶性糸との逆撚りによる混合撚糸の生成処理を行う(ステップS51)。これにより、片撚り生糸と水溶性糸とを複合生糸の撚方向と逆方向に撚糸した混合撚糸が生成される。
続いて、上述した(A)生糸へのセリシン定着処理と、上述した(D)水溶性糸の溶解除去処理を同時に行う(ステップS52)。これにより、繭から解舒した状態の片撚り生糸にセリシンが定着するとともに、混合撚糸から水溶性糸が溶解除去された膨化した混合撚糸が生成され、生糸によるパイル経糸が生成する。
最後に、上記ステップS50〜52で生成された膨化した混合撚糸をパイル経糸として用いて、(E)混合撚糸によるパイル織成処理を行い、パイル織製品が織成される(ステップS53)。
[第六実施例]
以下、本発明における第六実施例を、図10を参照して説明する。この実施例においては、上述した(A)〜(E)の各処理が、(B)→(C)→(E)→(A)+(D)の順序で実行されてパイル織製品が完成する。
以下、本発明における第六実施例を、図10を参照して説明する。この実施例においては、上述した(A)〜(E)の各処理が、(B)→(C)→(E)→(A)+(D)の順序で実行されてパイル織製品が完成する。
第六実施例においては、まず、上述した(B)生糸の片撚り処理を行う(ステップS60)。これにより、数本(例えば、4本)生糸を片撚りで甘撚り(100回又は200回)して形成した片撚り生糸が生成される。
続いて、上述した(C)片撚り生糸と水溶性糸との逆撚りによる混合撚糸の生成処理を行う(ステップS61)。これにより、片撚り生糸と水溶性糸とを片撚り生糸の撚方向と逆方向に撚糸した混合撚糸が生成される。
続いて、上記ステップS60及びS62で生成された混合撚糸を生糸によるパイル経糸として用いて(E)混合撚糸によるパイル織成処理を行い、パイル織製品を織成する(ステップS62)。
最後に、上述した(A)生糸へのセリシン定着処理と、上述した(D)水溶性糸の溶解除去処理を同時に行う(ステップS63)。これにより、混合撚糸を構成する生糸(複合生糸)にセリシンが定着するとともに、混合撚糸から水溶性糸が溶解除去されて膨化した生糸によるパイル経糸によるパイル織製品が織成される(ステップS63)。
上述した、第五実施例及び第六実施例においては、混合撚糸を構成する生糸へのセリシン定着処理と、混合撚糸からの水溶性糸の溶解除去処理を同時に行うところに特徴がある。すなわち、チーズ染色機、綛染色機等を用いて、架橋剤を入れた高温の水(例えば、70℃〜90℃)で所定時間(例えば、70分)循環処理後水洗することで、混合撚糸から水溶性糸が溶解除去されると共に、弱酸性液で10分間循環処理した後水洗して乾燥することによって、セリシンを生糸に固着することができる。このように、セリシン定着処理と水溶性糸の溶解除去処理とを同時に行うことで、本発明におけるパイル織製品の織成に至る工程を短縮することができる。
上述した各実施形態で形成された混合撚糸は、約3mmの高さのパイル地においては、片撚りの撚り部が1個のパイル(輪奈)に0〜2個しか存在しないことになり、パイルを構成した生糸間に所定の間隙が形成され、この間隙においては、20本〜60本束ねた束ね糸の生糸表面に微細な生糸がうぶ毛状の植生状態となり、かつ撚り部間で生糸がばらけた状態となっている。
このように、生糸を含む特定の混合撚糸自体から水溶性糸を親水性溶媒で溶解除去すると、除去前の混合撚糸に比べて大きく膨らみ、かつトルクの小さい膨化した複合生糸が得られ、風合いや軽量性、耐ピリング性を向上でき、かつ織編性及び生産性を向上させた生糸によるパイル経糸を形成することができる。
このような膨化加工が施された生糸によるパイル経糸は、用途などにより、膨らみ、軽量性、保温性、吸水性、風合などが低減しない条件で、必要に応じて、染色処理、潤滑を促すための油剤の付与処理、撥水処理、抗菌などの機能加工剤の付与処理、合撚などの糸加工などを行ってもよい。特に、染色した糸の色が変退色し易い水溶性糸の抽出工程を経ているため、パイル織物を製織する前に糸を先染めする方法に適している。
上述してきた各実施例で作成された生糸によるパイル経糸は、パイル織物を製織するための原糸であり、綛状又は管状に巻かれた巻糸として調製され、パイル織物を製織に好適に用いられる。
a 生糸
b フィブロイン繊維
c セリシン
d 撚り部
S 片撚り
b フィブロイン繊維
c セリシン
d 撚り部
S 片撚り
Claims (8)
- 生糸に行うセリシン定着処理と、
数本の生糸を弛緩状の甘撚りにより片撚り撚糸とする片撚り処理と、
片撚り撚糸に水溶性糸を片撚りと逆方向に撚ることで混合撚糸を生成する混合処理と、
水溶性糸を溶解する溶解処理と、
混合撚糸により行うパイル織成処理と、を順不同で行うことを特徴とする生糸によるパイル織製品の製造方法。 - 数本のセリシン定着処理生糸による弛緩状の甘撚りで片撚り撚糸とした片撚り撚糸と、
溶解処理を施す水溶性糸を片撚り撚糸と逆方向に撚った混合撚糸とによってパイル織製としたことを特徴とするパイル織製品。 - 前記セリシン定着処理→前記片撚り処理→前記混合処理→前記溶解処理→前記パイル織成処理の順序で行うことを特徴とする請求項1に記載の生糸によるパイル織製品の製造方法。
- 前記セリシン定着処理と前記片撚り処理とを前後逆に処理することを特徴とする請求項3に記載の生糸によるパイル織製品の製造方法。
- 前記溶解処理と前記パイル織成処理とを前後逆に処理することを特徴とする請求項3に記載の生糸によるパイル織製品の製造方法。
- 前記溶解処理と前記パイル織成処理とを前後逆に処理することを特徴とする請求項4に記載の生糸によるパイル織製品の製造方法。
- 前記片撚り処理→前記混合処理の順序で行い、次いで、前記セリシン定着処理と前記溶解処理とを同時に行い、最後に前記パイル織成処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の生糸によるパイル織製品の製造方法。
- 前記片撚り処理→前記混合処理の順序で行い、次いで、前記パイル織成処理を行い、最後に前記セリシン定着処理と前記溶解処理とを同時に行うことを特徴とする請求項1に記載の生糸によるパイル織製品の製造方法。
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