JP6066030B2 - 容器用鋼板及び容器用鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
本願は、2015年1月9日に、日本に出願された特願2015−3597号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
塗装又はフィルム(以下、コーティング剤と呼称する)の下地に用いられる容器用鋼板には、コーティング剤との密着性及び耐食性を確保するために、6価クロム酸塩等を用いたクロメートによる防錆処理(以下、クロメート処理と呼称する)が施されることが多い(例えば、下記の特許文献1を参照)。
本発明は、上記課題を解決して、係る目的を達成するために以下の手段を採用する。
以下では、図1A〜図5を参照しながら、本実施形態に係る容器用鋼板10の構成について詳細に説明する。
図1A及び図1Bは、本実施形態に係る容器用鋼板10を側方から見た場合の層構造を模式的に示した説明図である。図2は、本実施形態に係る容器用鋼板10の複合めっき層の構成を模式的に示した説明図である。図3は、従来技術を用いた場合の、Sn酸化物層の形成について説明するための説明図である。図4A及び図4Bは、Sn酸化物の生成量の測定方法を説明するための説明図である。図5は、本実施形態に係る容器用鋼板10の表面にコーティング剤を塗布した場合に関する説明図である。図6は、Ni付着量の測定方法について説明するための説明図である。
なお、複合めっき層105は鋼板103の表面に接しており、第二Niめっき層(金属Niめっき層)107は複合めっき層105の表面に接しており、化成処理皮膜層109は金属Niめっき層(第二Niめっき層)107の表面に接している。
また、本実施形態では、複合めっき層105を形成するために鋼板103上に形成されるNiめっき層を第一Niめっき層(不図示)と呼称し、複合めっき層105上に形成されるNiめっき層を第二Niめっき層(金属Niめっき層)107と呼称する。
鋼板103は、本実施形態に係る容器用鋼板10の母材として用いられる。本実施形態で用いられる鋼板103については特に限定されるものではなく、通常、容器材料として用いられる公知の鋼板103を使用することが可能である。これらの公知の鋼板の製造方法や材質についても特に限定されない。通常の鋼片製造工程から、熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍、調質圧延等の公知の工程を経て製造された鋼板103を用いることができる。
鋼板103の表面には、鋼板103の上層として、Snを少なくとも含有するバリア型の複合めっき層105が形成される。ここで、バリア型のめっき層とは、母材である鋼板103を構成するFeよりも電気化学的に貴な金属であるSnを用い、鋼板103の表面にSnの金属膜を形成することで腐食因子を母材に作用させないようにして、鋼板103の腐食を抑制するめっき層である。
複合めっき層105中のNiの含有量は、より好ましくは、金属Ni量に換算して、5.0〜150mg/m2である。複合めっき層105が金属Ni量に換算して5.0mg/m2以上のNiを含有することで、上記の効果をより確実に実現することが可能となる。また、複合めっき層105が金属Ni量に換算して150mg/m2以下のNiを含有することで、製造コストをより削減することが可能となる。
Snめっき層(不図示)は、容器用鋼板10の耐食性及び溶接性を確保するために形成される。Snは、それ自体が高い耐食性を有していることから、金属Snとしても、また、以下で説明する溶融溶錫処理によって形成される合金Snとしても、優れた耐食性及び溶接性を発揮する。
一方、本実施形態の複合めっき層105では、Fe−Ni−Sn合金層105a上に島状Sn層105bが形成されている。これにより、容器用鋼板10がSnの融点以上に加熱された場合でも、海部に対応するFe−Ni−Sn合金層105a中のFe−Ni−Sn合金は溶融しない。これにより、容器用鋼板10とコーティング剤との好適な密着性が得られる。
上述の効果を確実に発現させるためには、複合めっき層105全体のSn含有量が、金属Sn量に換算して0.10g/m2以上であることが必要である。また、Sn含有量が増加するほど耐食性は向上するが、金属Sn量に換算して10g/m2を超過すると、耐食性向上効果は飽和していく。そのため、経済的な観点から、複合めっき層105全体のSn含有量を、金属Sn量に換算して10g/m2以下とする。
複合めっき層105の全体におけるSn含有量は、より好ましくは、金属Sn量に換算して、0.5〜7.0g/m2である。金属Sn量に換算して0.5g/m2以上のSnを含有することで、上記の効果をより確実に実現することが可能となる。また、複合めっき層105全体のSn含有量を、金属Sn量に換算して7.0g/m2以下とすることで、複合めっき層105の製造コストをより削減することが可能となる。
複合めっき層105の表面には、図1A及び図1Bに模式的に示したように、Niを主成分とする第二Niめっき層107が形成される。第二Niめっき層107は、複合めっき層105の表面形状に沿って複合めっき層105を被覆するように形成される。そのため、形成された第二Niめっき層107の表面形状は、複合めっき層105の表面形状を反映する。
また、第二Niめっき層107を構成するNiは、密着性を向上させるだけでなく、溶接性にも優れている。従って、第二Niめっき層107を形成することで、容器用鋼板10の溶接性をも向上させることが可能となる。
第二Niめっき層107におけるNiの含有量は、金属Ni量に換算して、より好ましくは5.0mg/m2以上であり、更に好ましくは80mg/m2以上である。上述の範囲のNiを含有することにより、密着性及び溶接性をより確実に向上させることが可能となる。また、第二Niめっき層107におけるNiの含有量は、金属Ni量に換算して、より好ましくは1500mg/m2以下であり、更に好ましくは500mg/m2以下である。Ni含有量の上限値を上述の範囲に制限することにより、コストを抑えつつ、密着性及び溶接性を向上させることが可能となる。
図4A及び図4Bに示す方法は、電解処理を用いてSn酸化物層121の生成量を特定する方法である。この方法では、鋼板103上に、複合めっき層105、第二Niめっき層107及び後述する化成処理皮膜層109が形成された状態の容器用鋼板10そのものを、試験片として利用する。
その後、ポテンショスタットを利用して、所定の電解電圧(例えば、1V)、一定電流(例えば、約−1.55mA)のもとで、陰極電解処理を実施する。この陰極電解処理により、試験片のSn酸化物層121のみが還元され、電解される。この陰極電解処理において、図4Bに示すように、電解時間と電位とを測定する。これら2つの測定結果をチャート化した上で、チャートから得られた値を利用し、Sn酸化物層121の生成量を、還元(電解)に要した単位面積当たりの電気量(単位:mC/cm2)として特定する。
すなわち、図4Bに示すように、電位を横軸にとり、時間を縦軸にとった場合の時間−電位曲線において、電位軸の方向に延伸している接線と、時間軸の方向に延伸している接線と、を特定し、これら2つの接線の交点を特定する。その後、得られた交点から電位軸に下ろした垂線の長さを測定する。このような処理により得られた垂線の長さが、チャート長さLとなる。
従って、電解条件、及び、電解結果から得られたチャート長さLを利用して、上式(2)からSn酸化物層121を完全に除去するのに要した時間Tを算出し、得られた時間Tと電解条件とを利用して、上式(1)に基づいてSn酸化物層121の生成量Xを算出することができる。
なお、Sn酸化物層121の生成量の下限値は特に限定されず、上記の説明から明らかなように、Sn酸化物層121の生成量が少ないほど好ましい。
第二Niめっき層107上には、図1A及び図1Bに模式的に示したように、化成処理皮膜層109が形成される。化成処理皮膜層109は、金属Zr量で0.010〜150mg/m2のZr化合物と、P量で0.010〜80mg/m2のリン酸化合物と、を少なくとも含有する、Zr化合物を主体とする複合皮膜層である。
なお、本実施形態において、複合皮膜層とは、Zr化合物及びリン酸化合物が完全には混合せずに、部分的に混合した状態で存在している皮膜層を表す。
Zr化合物を有するZr皮膜上にリン酸化合物を有するリン酸皮膜を形成した場合には、耐食性及び密着性に関してある程度の効果は得られるが、実用的には十分ではない。しかしながら、本実施形態に係る化成処理皮膜層109のように、化成処理皮膜層109中でZr化合物とリン酸化合物とが部分的に混合した状態で存在していることにより、優れた耐食性及び密着性を得ることができる。
本実施形態に係るリン酸化合物は、耐食性、密着性及び加工密着性を向上させる機能を有する。本実施形態に係るリン酸化合物の例としては、リン酸イオンと鋼板103、複合めっき層105、第二Niめっき層107及び化成処理皮膜層109に含まれる化合物とが反応して形成されるリン酸Fe、リン酸Sn、リン酸Ni、リン酸Zr等が挙げられる。化成処理皮膜層109は、上述のリン酸化合物を少なくとも1種含む。
リン酸化合物は耐食性及び密着性に優れるため、リン酸化合物の量が多いほど容器用鋼板10の耐食性及び密着性が向上する。
リン酸化合物の含有量は、好ましくは、P量に換算して0.050mg/m2以上60mg/m2以下である。リン酸化合物の含有量を上記の範囲とすることで、より優れたコーティング剤との密着性及び耐食性を得ることができ、経済的にも好ましい。
上記の到達温度に到達するよう加熱処理を行うと、複合めっき層105の少なくとも一部が溶融する。その結果、複合めっき層105に含まれるSnと、第二Niめっき層107に含まれるNiとが反応して合金化し、図5に示すように、複合めっき層105と第二Niめっき層107との界面にNi−Sn合金層153が形成される。Ni−Sn合金層153は、耐食性に優れるため、化成処理皮膜層109の上層にコーティング層151を更に形成することで、容器用鋼板10の耐食性が更に向上する。
ここで、複合めっき層105中の金属Sn量及び金属Ni量、並びに、第二Niめっき層107中の金属Ni量は、例えば、蛍光X線法によって測定することができる。この場合、金属Sn量既知のSn付着量サンプルを用いて、金属Sn量に関する検量線を予め特定しておき、同検量線を用いて相対的に金属Sn量を特定する。同様に、金属Ni量既知のNi付着量サンプルを用いて、金属Ni量に関する検量線を予め特定しておき、同検量線を用いて相対的に金属Ni量を特定する。
また、化成処理皮膜層109中の金属Zr量及びP量は、例えば、蛍光X線分析等の定量分析法により測定することが可能である。また、化成処理皮膜層109中にどのような化合物が存在しているかについては、X線光電子分光測定法(X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)による分析を行うことで、特定することが可能である。
なお、各成分量の測定方法は上記の方法に限定されず、その他の公知の測定方法を適用することが可能である。
まず、Fe−Ni−Sn合金をXRDで分析することにより、第二Niめっき層107と複合めっき層105との界面を決定する。具体的には、まず、集束イオンビーム加工(Focused Ion Beam)を用いて、10μm程度の厚みを有する試料を作成する。このようにして得られた試料に対して、Fe−Ni−Sn合金をXRDで分析する。Fe−Ni−Sn合金が検出された深さ位置のうち最も表面側の深さ位置を、第二Niめっき層107と複合めっき層105との界面とする。また、Fe−Ni−Sn合金が検出された深さ位置のうち最も鋼板103側の深さ位置を、複合めっき層105と鋼板103との界面とする。
なお、金属FeのXRD結果に基づいて、複合めっき層105と鋼板103との界面を決定することも可能である。複合めっき層105には金属Feが含まれておらず、鋼板103には金属Feが含まれている。そのため、第二Niめっき層107と複合めっき層105との界面よりも鋼板103側の深さ位置において金属FeのXRDを行い、最初に金属Feが検出された深さ位置を複合めっき層105と鋼板103との界面と定めてもよい。
第二Niめっき層107と複合めっき層105との界面及び複合めっき層105と鋼板103との界面の決定方法は上述の方法に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、FIBにより得られた試料に対して、XRD以外の分析方法を用いて、第二Niめっき層107と複合めっき層105との界面及び複合めっき層105と鋼板103との界面を決定することも可能である。
次に、図6を参照しながら、本実施形態に係る容器用鋼板10の製造方法について、詳細に説明する。図6は、本実施形態に係る容器用鋼板10の製造方法の流れの一例について説明するための流れ図である。
本実施形態に係る容器用鋼板10の製造方法では、まず、必要に応じて、鋼板103に対して公知の前処理が実施される(ステップS101)。
その後、鋼板103の表面に対して、第一Niめっき層(不図示)を形成する(ステップS103)。第一Niめっき層の形成方法としては、例えば、一般的に電気めっき法において行われている公知の方法(例えば、カソード電解法)を利用することができる。
拡散めっき法により第一Niめっき層(不図示)を形成する場合には、鋼板103表面にNiめっきを施した後で、焼鈍炉において拡散層を形成するための拡散処理が行われる。この拡散処理の前後又は拡散処理と同時に、窒化処理を行ってもよい。窒化処理を行っても、Niの耐食性向上効果は窒化処理層によって打ち消されない。
第一Niめっき層(不図示)を形成した後に、Snめっき層(不図示)を形成する(ステップS105)。Snめっき層(不図示)を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、公知の電気めっき法を用いることが好ましく、溶融したSnに第一Niめっき層(不図示)が形成された鋼板103を浸漬する方法等を用いてもよい。
Snめっき層(不図示)を形成した後に、溶融溶錫処理(リフロー処理)を行う(ステップS107)。溶融溶錫処理を行う目的は、Snを溶融して下地の鋼板103やNiめっきと合金化させ、Fe−Ni−Sn合金層105aを形成させ、合金層の耐食性を向上させるとともに、島状のSn合金からなる島状Sn層105bを形成させることにある。この島状のSn合金は、溶融溶錫処理を適切に制御することで形成することが可能である。
複合めっき層105を形成した後に、第二Niめっき層107を形成する(ステップS109)。
第二Niめっき層107は、Niイオンを含むNiめっき浴を利用した公知のめっき処理により形成することが可能である。本実施形態のNiめっき浴は、硫酸イオンを10g/L以上及びNiイオンを30g/L以上含む。
また、硫酸イオンの濃度を90g/L以下とし、Niイオンの濃度を55g/L以下とすることで、第二Niめっき層107中のNi含有量を好適な範囲とすることができ、経済的にも好ましい。
また、硫酸イオンの濃度を40g/L以下とし、Niイオンの濃度を55g/L以下とし、塩酸イオンの濃度を45g/L以下とすることで、第二Niめっき層107中のNi含有量を好適な範囲とすることができ、経済的にも好ましい。
続いて、陰極電解処理又は浸漬処理を行うことにより、第二Niめっき層107上に化成処理皮膜層109を形成する(ステップS111)。
Fイオンの添加量が10ppm未満である場合には、Zrイオンと錯体を形成するFが少なくなり、Zrが付着しなくなるため、好ましくない。また、Fイオンの添加量が20000ppm超過である場合には、Zrが過剰に付着するため、好ましくない。
硫酸イオンの添加量が100ppm未満である場合には、Zrイオンの付着効率を上昇させる硫酸が少なくなり、Zrの付着量が低減するため、好ましくない。また、硫酸イオンの添加量が30000ppm超過である場合には、Zrが過剰に付着するため、好ましくない。
なお、硝酸イオン及び硫酸イオンは、化成処理浴に両イオンの合計で100ppm以上30000ppm以下含まれていればよく、硝酸イオンと硫酸イオンとの両イオンが化成処理浴に含まれていてもよいし、硫酸イオンと硫酸イオンとのいずれか一方のみが化成処理浴に含まれていてもよい。
Zrイオンの添加量を50ppm以上とすることで、Zrの付着量低下をより確実に防止することが可能となる。また、Fイオンの添加量を50ppm以上とすることで、リン酸塩の沈殿に伴う化成処理皮膜の白濁をより確実に防止することができる。同様に、リン酸イオンの添加量を50ppm以上とすることで、リン酸塩の沈殿に伴う化成処理皮膜の白濁をより確実に防止することができる。また、硝酸イオン及び硫酸イオンの合計添加量を300ppm以上とすることで、化成処理皮膜の付着効率の低下をより確実に防止することができる。なお、各添加成分の上限値を上記のような値とすることで、化成処理皮膜層109の製造コストをより確実に削減することができる。
また、化成処理浴に対して、更にタンニン酸を添加してもよい。化成処理浴にタンニン酸を添加することで、タンニン酸が鋼板103中のFeと反応し、鋼板103の表面にタンニン酸Feの皮膜を形成する。このタンニン酸Feの皮膜は、耐錆性及び密着性を向上させるため、好ましい。
また、化成処理浴の温度は、5℃以上90℃未満とすることが好ましい。化成処理浴の温度が5℃未満である場合には、化成処理皮膜層109の形成効率が悪く、経済的ではないため、好ましくない。また、化成処理浴の温度が90℃以上である場合には、化成処理皮膜層109の組織が不均一であり、欠陥、割れ、マイクロクラック等が発生し、その部分が腐食等の起点となるため、好ましくない。
電流密度が0.5A/dm2未満である場合には、化成処理皮膜層109の付着量が低下するとともに、陰極電解処理時間が長くなり生産性が低下するため、好ましくない。また、電流密度が20A/dm2超過である場合には、化成処理皮膜層109の付着量が過剰になり、場合によっては、化成処理後の洗浄工程で付着が不十分な化成処理皮膜層109が洗い流される(剥離する)ため好ましくない。
陰極電解処理時間が0.05秒未満である場合には、化成処理皮膜層109の付着量が低下し、耐食性及び塗装等密着性が低下するため好ましくない。陰極電解処理時間が10秒超過である場合には、化成処理皮膜層109の付着量が過剰となり、化成処理後の洗浄工程で付着が不十分な化成処理皮膜層109が洗い流される(剥離する)ため、好ましくない。
その後、必要に応じて、複合めっき層105、第二Niめっき層107及び化成処理皮膜層109の形成された鋼板103に対して、公知の後処理が実施される(ステップS113)。
このような流れで処理が行われることで、本実施形態に係る容器用鋼板10が製造される。
鋼板上に複合めっき層、第二Niめっき層及び化成処理皮膜層が形成された容器用鋼板を試験材として用いて、フィルム密着性を調べた。各実施例及び比較例の複合めっき層のSnの含有量及びNiの含有量、第二Niめっき層のNiの含有量、化成処理皮膜層のZr化合物の含有量及びリン酸化合物の含有量を表1に示した。なお、各めっき層の付着量は、蛍光X線法、XRD及びGDSにより測定した。
各試験材の片面に対して、厚さ20μmのPETフィルム160を容器用鋼板10上にラミネートした。その後、図7に示したような缶底型に打ち抜き、高圧蒸気滅菌器を用いて125℃の温度で30分間レトルト処理を行った。
PETフィルム160の剥離状況を観察し、PETフィルム160の缶底内側(缶内容物と接する側)の表面積全体のうち、剥離部の面積の占める割合に基づき4段階で評価した。フィルム密着性の評価基準は、以下に示した通りである。
なお、レトルト処理後の各試験材をXRDにより観察したところ、Ni−Sn合金層が形成されていることが確認された。
Very Good:剥離面積率:0%〜10%
Good:剥離面積率:10%超20%以下
Poor:剥離面積率:20%超50%以下
Bad:剥離面積率:50%超
複合めっき層が形成されためっき鋼板に対して、表2に示す成分を含有するNiめっき浴を用いてNiめっきを行った。形成した第二Niめっき層のNi含有量を表2に示した。
複合めっき層及び第二Niめっき層が形成されためっき鋼板に対して、表3に示す各成分を有する化成処理浴を用い、浸漬処理または陰極電解処理により化成処理皮膜層を形成した。
形成した化成処理皮膜層のZr化合物の含有量及びリン酸化合物の含有量を表4に示した。また、Sn酸化物層の生成量を、図4A及び図4Bに示した方法で測定した。測定結果を表4に示した。
鋼板上に複合めっき層、第二Niめっき層、化成処理皮膜層が形成された容器用鋼板を試験片として用い、実施例1と同様の方法でフィルム密着性を評価した。評価結果を表4に示した。
101 めっき鋼板
103 鋼板
105 複合めっき層
105a Fe−Ni−Sn合金層
105b 島状Sn層
107 第二Niめっき層(金属Niめっき層)
109 化成処理皮膜層
121 Sn酸化物層
151 コーティング層
153 Ni−Sn合金層
Claims (7)
- 鋼板と;
前記鋼板の上層として、金属Ni量に換算して2.0〜200mg/m2のNiと、金属Sn量に換算して0.10〜10.0g/m2のSnとを含み、Fe−Ni−Sn合金層上に島状Sn層が形成された複合めっき層と;
前記複合めっき層の上層として、金属Ni量に換算して1.0〜2000mg/m2のNiを含む金属Niめっき層と;
前記金属Niめっき層の上層として、金属Zr量に換算して0.010〜150mg/m2のZr化合物と、P量に換算して0.010〜80mg/m2のリン酸化合物と、を含有する化成処理皮膜層と;
を備える
ことを特徴とする、容器用鋼板。 - 前記複合めっき層が、金属Ni量に換算して5.0〜150mg/m2のNiと、金属Sn量に換算して0.5〜7.0g/m2のSnとを含む
ことを特徴とする、請求項1に記載の容器用鋼板。 - 前記金属Niめっき層が、金属Ni量に換算して、5.0〜1500mg/m2のNiを含む
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の容器用鋼板。 - 前記化成処理皮膜層が、金属Zr量に換算して、0.050〜120mg/m2の前記Zr化合物を含む
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の容器用鋼板。 - 前記化成処理皮膜層が、P量に換算して、0.050〜60mg/m2の前記リン酸化合物を含む
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の容器用鋼板。 - 前記複合めっき層と前記金属Niめっき層との間に、還元に要する電気量が3.0mC/cm2以下の酸化Snを含有するSn酸化物層を更に備える
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の容器用鋼板。 - 鋼板上に、金属Ni量に換算して2.0〜200mg/m2のNiを含む第一Niめっき層を形成する第一Niめっき層形成工程と;
前記第一Niめっき層上に、金属Sn量に換算して0.10〜10.0g/m2のSnを含むSnめっき層を形成するSnめっき層形成工程と;
溶融溶錫処理を行うことにより、Fe−Ni−Sn合金層上に島状Sn層を有する複合めっき層を形成する溶融溶錫処理工程と;
前記溶融溶錫処理工程後、10g/L以上の硫酸イオン及び30g/L以上のNiイオンを含むNiめっき浴を用いて、前記複合めっき層上に、第二Niめっき層を形成する第二Niめっき層形成工程と;
前記第二Niめっき層形成工程後、10〜20000ppmのZrイオン、10〜20000ppmのFイオン、10〜3000ppmのリン酸イオン及び合計で100〜30000ppmの硝酸イオン及び硫酸イオンを含み、温度が5〜90℃である化成処理浴を用い、0.5〜20A/dm2の電流密度及び0.05〜10秒間の陰極電解処理時間で行われる陰極電解処理又は0.2〜100秒間の浸漬処理時間で行われる浸漬処理を行うことにより、前記第二Niめっき層上に化成処理皮膜層を形成する化成処理皮膜層形成工程と;
を有する
ことを特徴とする、容器用鋼板の製造方法。
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