1.全体的な構成の説明
[1−1.全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池車両10(以下「FC車両10」又は「車両10」という。)の概略全体構成図である。FC車両10は、燃料電池システム12(以下「FCシステム12」という。)と、走行モータ14(以下「モータ14」という。)と、インバータ16とを有する。
FCシステム12は、燃料電池ユニット20(以下「FCユニット20」という。)と、高電圧バッテリ22(以下「バッテリ22」ともいう。)(蓄電装置)と、昇圧コンバータ24と、昇降圧コンバータ26と、補機28と、電子制御装置30(以下「ECU30」という。)とを有する。
[1−2.駆動系]
本実施形態のモータ14は、3相交流ブラシレス式である。モータ14は、FCユニット20及びバッテリ22から供給される電力に基づいて駆動力を生成し、当該駆動力によりトランスミッション32を通じて車輪34を回転させる。また、モータ14は、回生を行うことで生成した電力(回生電力Preg)[W]をバッテリ22等に出力する。モータ14の各相(U相、V相、W相)の電流は、電流センサ36u、36v、36wにより検出される。或いは、3相のうち2相のみ電流を検出し、これらの電流から残りの1相の電流を検出してもよい。
インバータ16は、3相ブリッジ型の構成を有し、直流−交流変換を行う。より具体的には、インバータ16は、直流を3相の交流に変換してモータ14に供給する一方、回生動作に伴う交流−直流変換後の直流を昇降圧コンバータ26を通じてバッテリ22等に供給する。なお、モータ14とインバータ16を併せて負荷40という。
[1−3.FCユニット20]
FCユニット20は、燃料電池スタック50(以下「FCスタック50」又は「FC50」という。)と、その周辺部品とを備える。FCスタック50は、例えば、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで両側から挟み込んで形成された燃料電池セルを積層した構造を有する。前記周辺部品には、FCスタック50のアノードに対して水素(燃料ガス)を給排するアノード系と、FCスタック50のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス)を給排するカソード系と、FCスタック50を冷却する冷却系と、セル電圧モニタとが含まれる。後述するように、前記周辺部品の一部は、補機28にも含まれる。なお、図1に示すように、FCユニット20(FC50)とインバータ16の間において昇圧コンバータ24と並列に、逆流防止ダイオード52が配置されている。
FC50の出力電圧(以下「FC電圧Vfc」という。)は、電圧センサ54により検出され、FC50の出力電流(以下「FC電流Ifc」という。)は、電流センサ56により検出され、いずれもECU30に出力される。
[1−4.高電圧バッテリ22]
バッテリ22は、複数のバッテリセルを含む蓄電装置(エネルギストレージ)であり、例えば、リチウムイオン2次電池、ニッケル水素2次電池又はキャパシタ等を利用することができる。本実施形態ではリチウムイオン2次電池を利用している。バッテリ22の出力電圧(以下「バッテリ電圧Vbat」という。)[V]は、電圧センサ60により検出され、バッテリ22の出力電流(以下「バッテリ電流Ibat」という。)[A]は、電流センサ62により検出され、それぞれECU30に出力される。ECU30は、バッテリ電圧Vbatとバッテリ電流Ibatとに基づいて、バッテリ22の残容量(SOC)[%]を算出する。
[1−5.昇圧コンバータ24]
昇圧コンバータ24は、FC50の出力電圧(FC電圧Vfc)を昇圧してインバータ16に供給する昇圧チョッパ型の電圧変換装置(DC/DCコンバータ)である。昇圧コンバータ24は、FC50とインバータ16との間に配置される。換言すると、昇圧コンバータ24は、一方がFC50のある1次側1Sfに接続され、他方がバッテリ22と負荷40との接続点である2次側2Sに接続されている。以下では、昇圧コンバータ24を、FC50用電圧制御ユニットの意味で「FC−VCU24」とも称する。
図2は、FC−VCU24の構成例を示す模式的回路図である。FC−VCU24は、インダクタ70、スイッチング素子72、ダイオード74及び平滑コンデンサ76を備え、ECU30を通じてスイッチング素子72がスイッチング(デューティ制御)されることでFC電圧Vfcを昇圧する。昇圧された電圧は、インバータ16の入力端電圧(以下「インバータ入力端電圧Vinv」又は「入力端電圧Vinv」という。)となる。インバータ入力端電圧Vinvは、電圧センサ78(図1)により検出される。また、FC−VCU24の出口端電流(以下「出口端電流Ifcvcu」という。)は、電流センサ80により検出される。
スイッチング素子72がオフ状態(開状態)に維持されると、FC50からの電力(以下「FC電力Pfc」という。)は、ダイオード52を有する配線又はインダクタ70及びダイオード74を有する配線を通じて昇圧なしに供給可能となる。以下では、昇圧なしにFC電力Pfcが供給させる状態を「直結状態」といい、直結状態を実現するための動作を「直結処理」といい、直結状態を実現するための処理を「直結処理」という。
直結状態では、FC−VCU24による昇圧が行われないため、インバータ入力端電圧Vinvは、FC電圧Vfcと等しくなる。より正確には、直結状態では、入力端電圧Vinvは、FC電圧Vfcからダイオード52、74による電圧降下分を引いた値となるが、以下では、入力端電圧VinvがFC電圧Vfcと実質的に等しいものとして説明をする。
なお、ダイオード74は、ダイオード52と同じように、直結用且つ逆流防止用として動作するので、ダイオード52を省略してもよい。
[1−6.昇降圧コンバータ26]
昇降圧コンバータ26は、昇降圧チョッパ型の電圧変換装置(DC/DCコンバータ)である。すなわち、昇降圧コンバータ26は、バッテリ22の出力電圧(バッテリ電圧Vbat)を昇圧してインバータ16に供給すると共に、モータ14の回生電圧(以下「回生電圧Vreg」という。)又はFC電圧Vfcとしてのインバータ入力端電圧Vinvを降圧してバッテリ22に供給することが可能である。昇降圧コンバータ26は、バッテリ22とインバータ16との間に配置される。換言すると、昇降圧コンバータ26は、一方がバッテリ22のある1次側1Sbに接続され、他方がFC50と負荷40との接続点である2次側2Sに接続されている。以下では、昇降圧コンバータ26を、バッテリ22用電圧制御ユニットの意味で「BAT−VCU26」とも称する。
図3は、BAT−VCU26の構成例を示す模式的回路図である。BAT−VCU26は、インダクタ90と、スイッチング素子92、94と、これらスイッチング素子92、94にそれぞれ並列に接続されるダイオード96、98と、平滑コンデンサ100、102とを備える。
昇圧時(バッテリ22を用いた力行時)には、ECU30により、スイッチング素子94がオフ状態とされ、スイッチング素子92がスイッチング(デューティ制御)されることでバッテリ電圧Vbatを昇圧する。昇圧された電圧は、インバータ入力端電圧Vinvとなる。
降圧時(回生時又はバッテリ22を用いない力行時)には、ECU30により、スイッチング素子92がオフ状態とされ、スイッチング素子94がスイッチング(デューティ制御)されることでインバータ入力端電圧Vinvをバッテリ電圧Vbatまで降圧する。
上記のように、インバータ入力端電圧Vinvは、電圧センサ78(図1)により検出される。また、BAT−VCU26の出口端電流(以下「出口端電流Ibatvcu」という。)は、電流センサ104により検出される。
BAT−VCU26においても、FC−VCU24と同様の直結状態を実現することが可能であり、BAT−VCU26は、直結動作又は直結処理を行うことができる。
本実施形態では、ECU30によりFC−VCU24及びBAT−VCU26を制御することにより、FCユニット20からのFC電力Pfcと、バッテリ22から供給される電力(以下「バッテリ電力Pbat」という。)[W]と、モータ14からの回生電力Pregとの供給先を制御する。
[1−7.補機28]
補機28としては、例えば、エアポンプ、ウォータポンプ、エアコンディショナ、降圧型DC−DCコンバータ、低電圧バッテリ、アクセサリ、ラジエータファン及びECU30の少なくとも1つを含むことができる。
前記エアポンプは、FC50にエアを供給する。前記ウォータポンプは、FC50を冷却する冷媒としての水を循環させる。前記エアコンディショナは、車両10内の気温等を調整する。前記降圧型DC−DCコンバータは、昇降圧コンバータ26(BAT−VCU26)の1次側1Sbにおける電圧を降圧して前記低電圧バッテリ、前記アクセサリ、前記ラジエータファン及びECU30に供給する。前記低電圧バッテリは、低電圧機器を作動させるためのバッテリ(例えば、12Vバッテリ)である。前記アクセサリは、オーディオ機器、ナビゲーション装置等の機器を含む。前記ラジエータファンは、前記ウォータポンプにより循環させる冷媒をラジエータにおいて冷却させるためのファンである。
補機28のうち前記エアポンプ、前記ウォータポンプ及び前記ラジエータファンは、FCユニット20にも含まれる。
[1−8.ECU30]
ECU30は、通信線106(図1)を介して、モータ14、インバータ16、FCユニット20、バッテリ22、昇圧コンバータ24、昇降圧コンバータ26及び補機28を制御する。当該制御に際しては、ECU30は、記憶部に記憶されたプログラムを実行する。また、ECU30は、電圧センサ54、60、78、電流センサ36u、36v、36w、56、62、80、104等の各種センサの検出値を用いる。
ここでの各種センサには、上記センサに加え、開度センサ110及びモータ回転数センサ112(図1)が含まれる。開度センサ110は、アクセルペダル114の開度θp[度]を検出する。回転数センサ112は、モータ14の回転数(以下「モータ回転数Nmot」又は「回転数Nmot」という。)[rpm]を検出する。ECU30は、回転数Nmotを用いてFC車両10の車速V[km/h]を検出する。さらに、ECU30には、メインスイッチ116(以下「メインSW116」という。)が接続される。メインSW116は、FCユニット20及びバッテリ22からモータ14への電力供給の可否を切り替えるものであり、ユーザにより操作可能である。
ECU30は、マイクロコンピュータを含み、必要に応じて、A/D変換器、D/A変換器等の入出力インタフェースを有する。なお、ECU30は、1つのECUのみからなるのではなく、モータ14、FCユニット20、バッテリ22、昇圧コンバータ24、昇降圧コンバータ26及び補機28毎の複数のECUから構成することもできる。
ECU30は、FCスタック50の状態、バッテリ22の状態及びモータ14の状態の他、各種スイッチ及び各種センサからの入力(負荷要求)に基づき決定したFC車両10全体としてFCシステム12に要求される負荷から、FCスタック50が負担すべき負荷と、バッテリ22が負担すべき負荷と、回生電源(モータ14)が負担すべき負荷の配分(分担)を調停しながら決定し、モータ14、インバータ16、FCユニット20、バッテリ22、昇圧コンバータ24及び昇降圧コンバータ26に指令を送出する。
2.本実施形態の制御
次に、ECU30における制御について説明する。
[2−1.基本制御]
図4には、ECU30における基本的な制御のフローチャートが示されている。メインSW116がオンでない場合(S1:NO)、ECU30は起動しない。メインSW116がオンである場合(S1:YES)、ECU30が起動し、ステップS2に進む。ステップS2において、ECU30は、FCシステム12に要求される負荷(システム負荷Psys)[W]を計算する。
ステップS3において、ECU30は、FCシステム12のエネルギマネジメントを行う。ここにいうエネルギマネジメントは、FCシステム12の各部の動作制御を行う処理である。例えば、エネルギマネジメントでは、システム負荷Psysを各電力源(力行時にはバッテリ22及び/又はFC50であり、回生時にはモータ14(及び該当する場合、FC50)である。)のいずれにどのように割り振るかを設定する。また、当該割り振りに伴い、FC50の発電量(FC電力Pfc)及びFC50の周辺機器の動作、各コンバータ24、26の動作等を設定する。
ステップS4において、ECU30は、ステップS3のエネルギマネジメントの演算結果に基づいて、FCスタック50の周辺機器の制御(FC発電制御)を行う。ここにいう周辺機器には、例えば、前記エアポンプ、前記ウォータポンプ及び前記ラジエータファンに加え、FCユニット20の各種の弁(循環弁、背圧弁等)が含まれる。
ステップS5において、ECU30は、ステップS3のエネルギマネジメントの演算結果に基づいて、モータ14のトルク制御(モータトルク制御)を行う。ここにいうモータトルク制御は、インバータ16の制御を含む。
ステップS6において、メインSW116がオフでない場合(S6:NO)、ステップS2に戻る。メインSW116がオフである場合(S6:YES)、ECU30は停止して処理を終了する。
[2−2.システム負荷Psysの計算]
図5には、システム負荷Psysを計算するフローチャート(図4のS2の詳細)が示されている。ステップS11において、ECU30は、開度センサ110からアクセルペダル114の開度θpを読み込む。ステップS12において、ECU30は、回転数センサ112からモータ14の回転数Nmotを読み込む。
ステップS13において、ECU30は、開度θpと回転数Nmotに基づいてモータ14の予想消費電力Pmot_cons[W]を算出する。具体的には、図6に示すマップにおいて、開度θp毎に回転数Nmotと予想消費電力Pmot_consの関係を記憶しておく。例えば、開度θpがθp1であるとき、特性120を用いる。同様に、開度θpがθp2、θp3、θp4、θp5、θp6であるとき、それぞれ特性122、124、126、128、130を用いる。なお、開度θ1〜θ6の関係は、θp1<θp2<θp3<θp4<θp5<θp6である。そして、開度θpに基づいて回転数Nmotと予想消費電力Pmot_consとの関係を示す特性を特定した上で、回転数Nmotに応じた予想消費電力Pmot_consを特定する。
ステップS14において、ECU30は、補機28から現在の動作状況を読み込む。ここでの補機28には、例えば、前記エアポンプ、前記ウォータポンプ及び前記エアコンディショナを含む高電圧系の補機や、前記低電圧バッテリ、前記アクセサリ、前記ラジエータファン及びECU30を含む低電圧系の補機が含まれる。例えば、前記エアポンプ及び前記ウォータポンプであれば、それぞれの回転数[rpm]を読み込む。前記エアコンディショナであれば、その出力設定を読み込む。
ステップS15において、ECU30は、各補機28の現在の動作状況に応じて補機28の消費電力Pa[W]を算出する。ステップS16において、ECU30は、モータ14の予想消費電力Pmot_consと補機28の消費電力Paの和をFC車両10全体での予想消費電力(すなわち、システム負荷Psys)として算出する。
[2−3.エネルギマネジメント]
上記のように、本実施形態におけるエネルギマネジメントでは、FCシステム12の各部の動作制御を行う。以下では、特に車両10が力行中である場合に絞って説明する。
(2−3−1.作動させるDC/DCコンバータの選択)
エネルギマネジメントの一環として、ECU30は、昇圧コンバータ24(FC−VCU24)及び昇降圧コンバータ26(BAT−VCU26)のいずれを作動させるかを選択する。例えば、寒冷地においてメインSW116がオンにされた直後には、FC50を暖機させるため、バッテリ22のみから電力供給する。この場合、BAT−VCU26のみを作動させる。また、車両10の加速時(特に急加速時)には、バッテリ22及びFC50の両方から電力供給する。この場合、FC−VCU24及びBAT−VCU26の両方を作動させる。さらに、車両10の巡航時には、FC50のみから電力供給する。この場合、FC−VCU24のみを作動させる。
作動させるDC/DCコンバータの選択方法としては、例えば、特開2009−165244号公報(図14等)の方法を用いてもよい。
(2−3−2.インバータ入力端電圧Vinvの制御)
本実施形態では、車両10の力行時には、インバータ入力端電圧Vinvを制御対象としてFC−VCU24及びBAT−VCU26の少なくとも一方を作動させる。すなわち、入力端電圧Vinvの目標値(以下「目標入力端電圧Vinv_tar」という。)を設定し、入力端電圧Vinvが目標入力端電圧Vinv_tarと等しくなるように、FC−VCU24及びBAT−VCU26を制御する。
図7は、インバータ入力端電圧Vinvを制御するフローチャートである。ステップS21において、ECU30は、モータ回転数Nmotを取得する。ここにいうモータ回転数Nmotは、実測値又は要求値のいずれであってもよい。本実施形態では、回転数センサ112からモータ回転数Nmot(実測値)を取得する。
ステップS22において、ECU30は、モータトルクTmotを取得する。ここにいうモータ回転数Nmotは、実測値(以下「検出モータトルクTmot_det」という。)又は要求値(以下「要求モータトルクTmot_req」)のいずれであってもよい。検出モータトルクTmot_detは、例えば、図示しないトルクセンサの検出値を用いることができる。また、要求モータトルクTmot_reqは、例えば、アクセルペダル114の開度θpに応じて設定される。或いは、要求モータトルクTmot_reqとして、後述する図18の処理で算出する目標トルクTtarを用いてもよい。なお、図4では、図18の処理(図4のS5)は本処理(図4のS3)よりも後に行われる。この場合、本処理では、例えば、前回の演算周期で用いた目標トルクTtarを用いることができる。
ステップS23において、ECU30は、複数の目標電圧マップ150a〜150c(以下「マップ150a〜150c」ともいうと共に、「目標電圧マップ150」又は「マップ150」と総称する。)の中から今回用いるものを選択する。各マップ150は、モータ回転数Nmot及びモータトルクTmotの組合せとインバータ入力端電圧Vinvの目標値(目標入力端電圧Vinv_tar)の関係を規定したものである。マップ150の内容については後述する。
ステップS24において、ECU30は、ステップS23で選択したマップ150を用いて、ステップS21のモータ回転数Nmot及びステップS22のモータトルクTmotに基づいて目標入力端電圧Vinv_tarを算出する。
ステップS25において、ECU30は、電圧センサ78からインバータ入力端電圧Vinv(実測値)を取得する。
ステップS26において、ECU30は、インバータ入力端電圧Vinv及び目標入力端電圧Vinv_tarに基づいて昇圧コンバータ24及び昇降圧コンバータ26の少なくとも一方を制御する。
具体的には、入力端電圧Vinvが目標入力端電圧Vinv_tarよりも小さい場合(Vinv<Vinv_tar)、作動させるコンバータ24、26の昇圧率(デューティ比)を増加させる。入力端電圧Vinvが目標入力端電圧Vinv_tarよりも大きい場合(Vinv>Vinv_tar)、作動させるコンバータ24、26の昇圧率(デューティ比)を減少させる。入力端電圧Vinvが目標入力端電圧Vinv_tarと等しい場合(Vinv=Vinv_tar)、作動させるコンバータ24、26の昇圧率(デューティ比)を維持する。
(2−3−3.目標電圧マップ150a〜150cの選択)
図8は、目標電圧マップ150a〜150cを選択するフローチャート(図7のS23の詳細)である。ステップS31において、ECU30は、FC−VCU24の通過電力(以下「通過電力Pfcvcu」という。)及びBAT−VCU26の通過電力(以下「通過電力Pbatvcu」という。)を算出する。
具体的には、ECU30は、電圧センサ78が検出したインバータ入力端電圧Vinvと、電流センサ80が検出した通過電流Ifcvcuとを乗算して通過電力Pfcvcuを算出する(Pfcvcu=Vinv×Ifcvcu)。また、ECU30は、電圧センサ78が検出したインバータ入力端電圧Vinvと、電流センサ104が検出した通過電流Ibatvcuとを乗算して通過電力Pbatvcuを算出する(Pbatvcu=Vinv×Ibatvcu)。或いは、後述する別の方法で通過電力Pfcvcu、Pbatvcuを算出してもよい。
ステップS32において、ECU30は、通過電力Pfcvcuがゼロより大きく且つ通過電力Pbatvcuがゼロ以下であるか否か(すなわち、電力供給がFC50のみから行われているか否か)を判定する。通過電力Pfcvcuがゼロより大きく且つ通過電力Pbatvcuがゼロ以下である場合(S32:YES)、ステップS33において、ECU30は、第1マップ150a(図10)を選択する。第1マップ150aは、FC50のみから電力を供給し、バッテリ22からは電力を供給しない場合に用いるマップである(詳細は後述する。)。
通過電力Pfcvcuがゼロより大きくない又は通過電力Pbatvcuがゼロ以下でない場合(S32:NO)、ステップS34において、ECU30は、通過電力Pbatvcuがゼロより大きく且つ通過電力Pfcvcuの方が通過電力Pbatvcuよりも大きいか否か(すなわち、電力供給がバッテリ22及びFC50の両方から行われており且つFC50からの電力供給量の方が大きいか否か)を判定する。
通過電力Pbatvcuがゼロより大きく且つ通過電力Pfcvcuの方が通過電力Pbatvcuよりも大きい場合(S34:YES)、ステップS35において、ECU30は、第2マップ150b(図11)を選択する。第2マップ150bは、電力供給がバッテリ22及びFC50の両方から行われており且つFC50の方が電力供給量が大きい場合に用いるマップである(詳細は後述する。)。
通過電力Pbatvcuがゼロより大きくない又は通過電力Pbatvcuの方が通過電力Pfcvcuよりも大きくない場合(S34:NO)、ステップS36において、ECU30は、第3マップ150c(図12)を選択する。第3マップ150cは、電力供給がバッテリ22及びFC50の両方から行われており且つFC50の方が電力供給量が小さい場合に用いるマップである(詳細は後述する。)。
なお、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuのいずれも同じインバータ入力端電圧Vinvを用いて算出されるため、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuの比較は、通過電流Ifcvcu、Ibatvcuの比較と同義と考えることができる。そこで、ステップS31の処理として、通過電流Ifcvcu、Ibatvcuの取得を行い、ステップS32、S34では、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuの比較として、通過電流Ifcvcu、Ibatvcuの比較を行ってもよい。
また、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuの大小関係を判定するためには、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuを直接比較する代わりに、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuの比率、すなわち、Pfcvcu/Pbatvcu又はPbatvcu/Pfcvcuを用いてもよい。
(2−3−4.目標電圧マップ150)
次に、目標電圧マップ150の基本的な考え方について説明する。
(2−3−4−1.モータ14の電力効率を考慮した参考マップ140)
図9は、モータ回転数Nmot及びモータトルクTmotの組合せと要求モータ電圧Vmot_reqとの関係を規定した参考マップ140の一例を示す。ここにいうモータ回転数Nmot及びモータトルクTmotは、実測値又は要求値のいずれであってもよい。また、要求モータ電圧Vmot_reqは、例えば、アクセルペダル114の開度θpに応じて特定されるモータ14の目標入力電圧であり、モータ14の電力効率(以下「電力効率Emot」という。)を考慮して設定される。本実施形態の要求モータ電圧Vmot_reqは、モータ14の電力効率Emotに加え、インバータ16の電力効率(以下「電力効率Einv」という。)も考慮して設定される。要求モータ電圧Vmot_reqをモータ14の目標入力電圧としてそのまま用いた場合、要求モータ電圧Vmot_reqは、目標入力端電圧Vinv_tarと同じ値となる。
上記のように、図9の参考マップ140では、モータ14及びインバータ16の電力効率Emot、Einvを考慮して、モータ回転数Nmot及びモータトルクTmotと要求モータ電圧Vmot_reqとの関係を規定している。以下では、モータ14及びインバータ16の電力効率Emot、Einvを統合して負荷40の電力効率Eloadともいう。
モータ14の電力効率Emot及びインバータ16の電力効率Einv(すなわち、負荷40の電力効率Eload)は、負荷40への入力電圧(ここではインバータ入力端電圧Vinv)に応じて変化する。すなわち、特開2009−165244号公報の図24A〜図24Cにも示されているように、モータ14又は負荷40の高効率領域は、入力端電圧Vinvが高くなるほど、モータ回転数Nmotが高くなる方向又はモータトルクTmotが高くなる方向に移動する傾向にある。換言すると、モータ回転数Nmotが高い場合又はモータトルクTmotが高い場合、入力端電圧Vinvが高くなる程、モータ14の電力効率Emot及びインバータ16の電力効率Einvは高くなる傾向にある。
そこで、参考マップ140では、モータ回転数Nmotが高い場合又はモータトルクTmotが高い場合、要求モータ電圧Vmot_reqを高くする。本実施形態では、参考マップ140に基づく目標電圧マップ150を用いるが、参考マップ140自体は使用しないことに留意されたい。
(2−3−4−2.FCシステム12全体の電力効率を考慮した目標電圧マップ150a〜150cの概要)
図10は、モータ回転数Nmot及びモータトルクTmotの組合せとインバータ入力端電圧Vinvの目標値(目標入力端電圧Vinv_tar)との関係を規定した第1マップ150aの一例を示す。図11は、モータ回転数Nmot及びモータトルクTmotの組合せと目標入力端電圧Vinv_tarの関係を規定した第2マップ150bの一例を示す。図12は、モータ回転数Nmot及びモータトルクTmotの組合せと目標入力端電圧Vinv_tarの関係を規定した第3マップ150cの一例を示す。図10〜図12において、モータ回転数Nmot及びモータトルクTmotは、実測値又は目標値のいずれであってもよい。
第1マップ150aは、参考マップ140に基づいて設定されるものであり、本実施形態において実際に用いられる目標電圧マップ150の1つである。第1マップ150aは、FC50のみから電力を供給し、バッテリ22からは電力を供給しない場合に用いるマップである。すなわち、第1マップ150aは、通過電力Pfcvcuのみであり且つ通過電力Pbatvcuはゼロである場合(すなわち、FC−VCU24のみが昇圧動作又は直結動作を行っている場合)に用いられる。
第2マップ150bは、第1マップ150aに基づいて設定されるものであり、本実施形態において実際に用いられるマップ150の1つである。第2マップ150bは、電力供給がバッテリ22及びFC50の両方から行われており且つFC50の方が電力供給量(通過電流Ifcvcu)が大きい場合に用いるマップ150である。
第3マップ150cは、第1マップ150aに基づいて設定されるものであり、本実施形態において実際に用いられるマップ150の1つである。第3マップ150cは、電力供給がバッテリ22及びFC50の両方から行われており且つFC50の方が電力供給量(通過電流Ifcvcu)が小さい場合に用いるマップである。
(2−3−4−3.第1マップ150a)
(2−3−4−3−1.第1マップ150aの概要)
図10に示すように、第1マップ150aは、主として4つの領域(第1〜第4領域A1〜A4)を設ける。各領域A1〜A4は、FCシステム12全体としての電力効率(以下「電力効率Etotal」という。)を考慮して区分される。すなわち、FCシステム12の電力効率Etotalには、モータ14及びインバータ16の電力効率Emot、Einvに加え、昇圧コンバータ24(FC−VCU24)の電力効率(以下「電力効率Efcvcu」という。)も反映される。
第1領域A1は、参考マップ140と同じ特性を有する領域である。第2領域A2は、モータ14の高負荷状態において、モータ14、インバータ16及び昇圧コンバータ24(FC−VCU24)の電力効率Emot、Einv、Efcvcuを考慮して、参考マップ140よりも電圧を低くした領域である。図10の矢印152は、図10の第2領域A2の特性が、参考マップ140において第2領域A2に対応する領域の特性よりも電圧が低くなること、すなわち、モータ回転数Nmot及びモータトルクTmotが同じ場合、参考マップ140における要求モータ電圧Vmot_reqよりも目標電圧マップ150の目標入力端電圧Vinv_tarの方が低いことを示している。
図10の第3領域A3は、モータ14の低負荷状態において、モータ14の電力損失Lmot及びFC−VCU24の電力損失Lfcvcuを考慮して、参考マップ140よりも電圧を低くした領域である。図10の矢印154は、図10の第3領域A3の特性が、参考マップ140において第3領域A3に対応する領域の特性よりも電圧が低くなること、すなわち、モータ回転数Nmot及びモータトルクTmotが同じ場合、参考マップ140における要求モータ電圧Vmot_reqよりも目標電圧マップ150の目標入力端電圧Vinv_tarの方が低いことを示している。
第4領域A4は、モータ14、インバータ16及びFC−VCU24の電力効率Emot、Einv、Efcvcuを考慮して、FC−VCU24を直結状態とした領域である。本実施形態の第4領域A4は、FC電圧Vfcに応じて可変である。図10の矢印156は、図10の第4領域A4が、FC電圧Vfcに応じて可変であることを示している。
第1・第2領域A1、A2は、モータ14の高負荷状態に対応し、第3・第4領域A3、A4は、モータ14の低負荷状態に対応する。ここにいう「高負荷状態」及び「低負荷状態」は、例えば、次のように定義する。すなわち、モータ14、インバータ16及びFC−VCU24の電力効率Emot、Einv、Efcvcuを総合的に考えた際(すなわち、FCシステム12の電力効率Etotalを考えた際)、FC−VCU24により昇圧を行う場合よりも、FC−VCU24を直結状態にした場合の方がFCシステム12全体の電力効率Etotalが高くなる範囲を「低負荷状態」と定義する。反対に、FC−VCU24により昇圧を行う場合よりも、FC−VCU24を直結状態にした場合の方がFCシステム12全体の電力効率Etotalが低くなる範囲を「高負荷状態」と定義する。
「高負荷状態」及び「低負荷状態」のいずれであるかは、モータ14の負荷又は出力(以下「モータ出力Pmot」という。)が、所定の閾値(負荷閾値又はモータ出力閾値)を超えるか否かで判断する。換言すると、前記負荷閾値又は前記モータ出力閾値は、高負荷状態及び低負荷状態を判定するための閾値である。モータ出力閾値の一例が、後述する第2モータ出力閾値THpmot2(図14のS41)である。モータ14の負荷又はモータ出力Pmotは、モータ回転数NmotとモータトルクTmotの積(Nmot×Tmot)として定義される。図10において、曲線158は、高負荷領域(第1・第2領域A1、A2)と、低負荷領域(第3・第4領域A3、A4)の境界線を示す。
なお、FC−VCU24により昇圧を行う場合と、FC−VCU24を直結状態にした場合とのFCシステム12全体の電力効率Etotalの比較は、例えば、シミュレーション値又は理論値により行うことができる。
(2−3−4−3−2.昇圧コンバータ24(FC−VCU24)の電力損失)
FC50のみから電力を供給している場合、FCシステム12全体の電力効率Etotalには、モータ14、インバータ16の電力効率Emot、Einv又は電力損失(以下「電力損失Lmot、Linv」という。)に加え、FC−VCU24の電力効率Efcvcu又は電力損失(以下「電力損失Lfcvcu」という。)が影響する。以下では、FC−VCU24の電力損失Lfcvcuについて述べる。
図13は、FC−VCU24の通過電力Pfcvcuと電力損失Lfcvcuの関係をFC−VCU24の出力電圧(すなわち、インバータ入力端電圧Vinv)毎に示した図である。図13において、「Vfc」は、FC電圧Vfcであり、M1〜M4は昇圧率である(1<M1<M2<M3<M4)。図13では、FC電圧Vfcは一定であると仮定していることに留意されたい。
図13に示すように、通過電力Pfcvcuが等しいとすれば、FC−VCU24が直結状態にあるとき、FC−VCU24の電力損失Lfcvcuが小さく、FC−VCU24の出力電圧(インバータ入力端電圧Vinv)又は昇圧率が高くなる程、電力損失Lfcvcuが大きくなる。
なお、FC−VCU24が直結状態である場合、FC−VCU24が昇圧動作をしている場合と比べて極端に電力損失Lfcvcuが小さい。これは、昇圧動作をしているときには、FC−VCU24の電力損失Lfcvcuに固定分(固定損失)が発生するためである。
本実施形態では、上記を踏まえて第1〜第3マップ150a〜150cを設定又は選択する。
(2−3−4−3−3.第1マップ150aの第4領域A4)
本実施形態の第1マップ150aでは、FCシステム12全体の電力効率Etotalを考慮して第1〜第4領域A1〜A4(図10)を設定する。説明の都合上、以下では第4領域A4、第3領域A3、第2領域A2及び第1領域A1の順に説明する。
第4領域A4は、モータ14が低負荷状態であり且つモータ回転数Nmotが比較的低い状態に用いる領域である。モータ14が低負荷状態であれば、FC−VCU24の通過電力Pfcvcuは低くなる。このため、本実施形態において、FCシステム12全体としての電力効率Etotalは、モータ14の電力効率EmotよりもFC−VCU24の電力効率Efcvcuの方が支配的となる。また、モータトルクTmotが比較的高い状態(高トルク状態)であっても、FC−VCU24が直結状態であれば、FC50は比較的大きな電流を出力可能であるため、高トルク状態に対応可能である。
そこで、FC−VCU24の電力効率Efcvcuを中心に考えて、FC−VCU24を直結状態とする。図10においてモータ回転数Nmotの閾値(モータ回転数閾値THnmot)を設定しているのは、モータ14が低負荷であっても、モータ回転数Nmotを高く維持するためには、インバータ入力端電圧Vinvを高くする必要が生じるためである(図9の参考マップ140参照)。すなわち、高いモータ回転数Nmotを維持するため又は回転数Nmotを過度に低下させないために、インバータ入力端電圧Vinvを高くする場合、FC−VCU24の電力効率Efcvcuと比較してモータ14の電力効率Emotも無視できなくなるため、FC−VCU24を直結状態にはしないのである。
(2−3−4−3−4.第1マップ150aの第3領域A3)
第3領域A3は、モータ出力Pmotが比較的低い状態(低負荷状態)であり且つモータ回転数Nmotが比較的高い状態に用いる領域である。第4領域A4に関連して説明したように、モータ14が低負荷であっても、高いモータ回転数Nmotを維持するため又は回転数Nmotを過度に低下させないためには、インバータ入力端電圧Vinvを高くする必要が生じる(図9の参考マップ140参照)。高いモータ回転数Nmotを維持するため又は回転数Nmotを過度に低下させないために、入力端電圧Vinvを高くする場合、FC−VCU24の電力効率Efcvcuと比較してモータ14の電力効率Emotも無視できなくなる。さらに、低負荷状態且つ高回転状態の場合、モータトルクTmotは低くなる。そこで、FC−VCU24を直結状態とはせず、FC−VCU24による昇圧を行う。
但し、第3領域A3では、参考マップ140における特性よりもインバータ入力端電圧Vinvを低くする。これは、モータ14及びインバータ16の電力効率Emot、Einvに加え、FC−VCU24の電力効率Efcvcuを考慮したためである。
(2−3−4−3−5.第1マップ150aの第2領域A2)
第2領域A2は、モータ出力Pmotが比較的高い状態(高負荷状態)であり且つモータトルクTmotが比較的低い状態(低トルク状態)に用いる領域である。上記のように、モータ14が高負荷状態であれば、FC−VCU24の通過電力Pfcvcuは大きくなり、FC−VCU24の電力効率EfcvcuがFCシステム12の電力効率Etotalに与える影響が大きくなる。
そこで、モータ14及びインバータ16の電力効率Emot、Einvに加え、FC−VCU24の電力効率Efcvcuを考慮して、FC−VCU24の昇圧率を参考マップ140よりも低くする。これにより、FCシステム12全体としての電力効率Etotalを向上させることが可能となる。
(2−3−4−3−6.第1マップ150aの第1領域A1)
第1領域A1は、モータ出力Pmotが比較的高い状態(高負荷状態)であり且つモータトルクTmotが比較的高い状態(高トルク状態)に用いる領域である。第1領域A1では、参考マップ140の特性をそのまま用いる。これは、高負荷且つ高トルク状態では、モータ14及びインバータ16の電力効率Emot、Einvが、FCシステム12の電力効率Etotalにおいて支配的となるためである。
なお、図10では、第1領域A1と第2領域A2の境界線160が右上に向かって傾斜している。これは、FCシステム12の電力効率Etotalを反映した結果である。
(2−3−4−3−7.第1マップ150aにおける各領域A1〜A4の具体的設定方法)
図14は、第1マップ150aにおける各領域(第1〜第4領域A1〜A4)の設定方法を示すフローチャートである。本実施形態において、図14は、ECU30が実行する処理ではなく、ECU30が用いるマップ150aを設定する際の基準又は指標であることに留意されたい。但し、ECU30が実行する処理として図14の内容を用いてもよい。
ステップS41において、モータ14が低負荷状態であるか否かを判断する。具体的には、モータ14の出力(モータ出力Pmot)が第1閾値(以下「第1モータ出力閾値THpmot1」又は「閾値THpmot1」という。)を上回り且つ第2閾値(以下「第2モータ出力閾値THpmot2」又は「閾値THpmot2」という。)を下回るか否かを判断する。閾値THpmot1は、モータ14が回生状態ではなく駆動状態であるか否かを判定する値(下限値)であり、例えば、0kW又はその近傍値である。また、閾値THpmot2は、モータ14が低負荷状態であるかを判定するための上限値である。
なお、FC電圧Vfcに応じてマップ150aを変化させてもよい。具体的には、FC電圧Vfcに応じて閾値THpmot2を切り替えることにより、マップ150aを変化させることも可能である。
図15は、FC電圧Vfcと第2モータ出力閾値THpmot2の関係の一例を示す図である。図15に示すように、FC電圧Vfcが閾値(以下「FC電圧閾値THvfc」という。)以下であるときは、第2モータ出力閾値THpmot2を一定とする。また、FC電圧VfcがFC電圧閾値THvfcを上回るときは、第2モータ出力閾値THpmot2を徐々に増加させる。これにより、FC電圧Vfcが比較的高い場合、第2モータ出力閾値THpmot2が徐々に大きくなる。従って、FC電圧Vfcが高くなると、第4領域A4が広くなる(図14参照)。その結果、FC電圧Vfcが高い場合、直結処理を行い易くなる。
なお、上記のように、図10における矢印156は、FC電圧Vfcに応じて第2モータ出力閾値THpmot2を切り替えた結果、各領域A1〜A4(特に第4領域A4)が変化する様子を示している。
図14のステップS41においてモータ14が低負荷状態でない場合(S41:NO)、ステップS42において、モータトルクTmotが高いか否かを判定する。具体的には、モータトルクTmotがトルク閾値THtmotを上回るか否かにより判定する。
モータトルクTmotが高い場合(S42:YES)、ステップS43において、要求モータ電圧Vmot_reqをそのまま目標入力端電圧Vinv_tarに設定する(Vinv_tar←Vmot_req)。当該値は、第1マップ150aの第1領域A1の値となる。
モータトルクTmotが高くない場合(S42:NO)、ステップS44において、要求モータ電圧Vmot_reqから正の所定値αを引いた値を目標入力端電圧Vinv_tarに設定する(Vinv_tar←Vmot_req−α)。当該値は、第1マップ150aの第2領域A2の値となる。所定値αは、モータ14及びインバータ16の電力効率Emot、Einvに加え、FC−VCU24の電力効率Efcvcuを考慮した値(すなわち、FCシステム12の電力効率Etotalを考慮した値)である。
ステップS41に戻り、モータ14が低負荷状態である場合(S41:YES)、ステップS45において、モータ回転数Nmotが高いか否か(高回転状態であるか否か)を判定する。具体的には、モータ回転数Nmotが所定の閾値(回転数閾値THnmot)(図10参照)を上回るか否かを判定する。回転数閾値THnmotは、モータ回転数Nmotが高いか否かを判定するための閾値であり、高回転状態を維持するため又は回転数Nmotを過度に低下させないためのインバータ入力端電圧Vinv及びモータトルクTmotを考慮して設定される。
モータ回転数Nmotが高い場合(S45:YES)、ステップS46において、要求モータ電圧Vmot_reqから正の所定値βを引いた値を目標入力端電圧Vinv_tarに設定する(Vinv_tar←Vmot_req−β)。当該値は、第1マップ150aの第3領域A3の値となる。所定値βは、モータ14の電力損失Lmot及び昇圧コンバータ24の電力損失Lfcvcuを考慮した値である。例えば、電力損失Lmot、Lfcvcuの合計が最小値又はその近傍値となる値に設定する。或いは、所定値βは、モータ14及び昇圧コンバータ24の電力損失Lmot、Lfcvcuに加え、インバータ16の電力損失Linvを考慮した値としてもよい。例えば、電力損失Lmot、Linv、Lfcvcuの合計が最小値又はその近傍値となる値に設定する。
モータ回転数Nmotが高くない場合(S45:NO)、ステップS47において、FC電圧Vfcを目標入力端電圧Vinv_tarに設定する(Vinv_tar←Vfc)。当該値は、第1マップ150aの第4領域A4の値となる。また、FC電圧Vfcを目標入力端電圧Vinv_tarに設定するということは、昇圧コンバータ24を昇圧動作させないこと、すなわち、直結処理を意味する。なお、ここでは、実測値としてのFC電圧Vfcの代わりにその目標値を用いてもよい。
以上のように、図14では、モータ14が低負荷状態であるか否か(S41)、モータ14が高トルク状態であるか否か(S42)及びモータ14が高回転状態であるか否か(S45)に基づいて第1〜第4領域A1〜A4を区分する。
或いは、上記3つの基準を判断する順番を変更することにより第1〜第4領域A1〜A4を区分してもよい。或いは、領域の数を4つとせず、2、3又は5以上の領域に区分してもよい。
(2−3−4−4.第2マップ150b)
(2−3−4−4−1.第2マップ150bの概要)
図11に示すように、第1マップ150aと同様、第2マップ150bでは、主として4つの領域(第1〜第4領域A1〜A4)を設ける。しかしながら、FC−VCU24の通過電力Pfcvcuに加え、BAT−VCU26の通過電力Pbatvcuが存在すること、すなわち、FC50からの電力供給に加え、バッテリ22からも電力供給があることを考慮し、第2〜第4領域A2〜A4の特性又は範囲を第1マップ150aと比較して変化させる。より具体的には、FC−VCU24及びBAT−VCU26の電力効率特性の相違に基づいて第2〜第4領域A2〜A4の特性又は範囲を第1マップ150aと比較して変化させる。
(2−3−4−4−2.FC−VCU24及びBAT−VCU26の電力効率)
図16は、FC−VCU24及びBAT−VCU26の電力効率Efcvcu、Ebatvcuを説明するための図である。図16の横軸は、FC−VCU24及びBAT−VCU26の通過電力Pfcvcu、Pbatvcuを示す。図16の縦軸は、FC−VCU24及びBAT−VCU26それぞれの電力効率Efcvcu、Ebatvcuを示す。
図16では、FC−VCU24が昇圧動作を行っているときの特性の一例と、FC−VCU24が昇圧動作を行っていないとき(すなわち、直結状態にあるとき)の特性の一例と、BAT−VCU26が昇圧動作を行っているときの特性の一例と、BAT−VCU26が昇圧動作を行っていないとき(すなわち、直結状態にあるとき)の特性の一例とが示されている。図16では、FC電圧Vfcは一定であると仮定している。
図16からわかるように、いずれの特性についても、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuが大きくなると、電力効率Efcvcu、Ebatvcuが高くなる。但し、FC−VCU24及びBAT−VCU26のいずれについても昇圧動作を行っている場合には、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuが特定の値(図16中の通過電力閾値THp)を下回る場合、傾きが大きく、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuが特定の値(閾値THp)を上回る場合、傾きが小さくなる。これは、昇圧動作をしているときには、FC−VCU24及びBAT−VCU26の電力損失Lfcvcu、Lbatvcuに固定分(固定損失)が発生するためである。なお、図16の閾値THpは、FC−VCU24及びBAT−VCU26で共通しているが、FC−VCU24及びBAT−VCU26で異なる場合もある。
また、FC−VCU24及びBAT−VCU26いずれについても、昇圧時よりも直結時の方がよりも電力効率Efcvcu、Ebatvcuが高くなる。これは、昇圧時には上記固定損失が発生するためである。
さらに、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuが同じ値である場合、昇圧時及び直結時のいずれについても、FC−VCU24の電力効率Efcvcuの方がBAT−VCU26の電力効率Ebatvcuよりも高くなる。これは、FC−VCU24は、昇圧コンバータであり、回路構成が比較的簡素であり(図2参照)、動作時の電力消費が比較的小さいのに対し、BAT−VCU26は、昇降圧コンバータであり、回路構成が比較的複雑であり(図3参照)、動作時の電力消費が比較的大きいためである。
本実施形態では、上記を踏まえて第2・第3マップ150b、150cを設定又は選択する。
(2−3−4−4−3.第2マップ150bの第2・第3領域A2〜A3)
モータ回転数Nmot及びモータトルクTmotが一定である場合、第1マップ150aの第2・第3領域A2、A3(図10)と比較して、第2マップ150bの第2・第3領域A2、A3(図11)は、目標入力端電圧Vinv_tarを低くするような特性に設定される。図11の矢印172、174は、このことを示している。
このような設定をすることにより、FCシステム12全体としての電力効率Etotalを向上することが可能となる。すなわち、上記のように、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuが等しいとすれば、昇圧時及び直結時のいずれについても、FC−VCU24の電力効率Efcvcuの方がBAT−VCU26の電力効率Ebatvcuよりも高くなる。
このため、モータ出力Pmot(=回転数Nmot×モータトルクTmot)が等しければ、FC−VCU24及びBAT−VCU26のいずれも動作している場合は、FC−VCU24のみが動作している場合と比較して、FCシステム12全体の電力効率Etotalが下がる又はFCシステム12全体の電力損失Ltotalが大きくなる。そこで、第2マップ150bの第2・第3領域A2、A3では、第1マップ150aの場合よりも、目標入力端電圧Vinv_tarを下げることで通過電力Pfcvcu、Pbatvcuを抑制する。これにより、FC−VCU24及びBAT−VCU26それぞれにおける電力損失Lfcvcu、Lbatvcuを低減することにより、FCシステム12全体の電力損失Ltotalの低減又は電力効率Etotalの向上を図ることができる。
なお、上記のように、第2領域A2は、モータ14の高負荷状態に対応する。このため、上記のように通過電力Pfcvcu、Pbatvcuを低減することで、電力損失Ltotalの低減を大きくすることができる。
また、第3領域A3は、モータ14が低負荷状態の中でも、モータ回転数Nmotが高く、モータトルクTmotが低い状態(例えば、降坂時)に対応する。このため、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuを低減した場合でも、車両10の走行性能に対する影響を比較的小さく抑えることができる。
(2−3−4−4−4.第2マップ150bの第4領域A4)
モータ回転数Nmot及びモータトルクTmotが一定である場合、第1マップ150aの第4領域A4と比較して、第2マップ150bの第4領域A4は、モータ回転数Nmotの上限値(回転数閾値THnmot)を低くするように設定する。図11の矢印176は、このことを示している。その結果、第4領域A4が狭くなり、第3領域A3が広くなる。
本実施形態では、このような設定をすることにより、FCシステム12全体としての電力効率Etotalを向上することが可能となる。すなわち、上記のように、第4領域A4は、第3領域A3以外の低負荷状態に対応する。低負荷状態、すなわち、通過電力Pbatvcuが相対的に低い場合、電力効率Ebatvcuの低下(電力損失Lbatvcuの増大)が顕著となる(図16参照)。
そこで、第2マップ150bの第4領域A4では閾値THnmotを相対的に上げ、昇圧動作を起こり易くさせ、通過電力Pbatvcuを増加させ易くさせる。これにより、電力効率Ebatvcuを向上させる又は電力損失Lbatvcuを低減させる。従って、FC−VCU24の電力効率Ebatvcuの低下又は電力損失Lbatvcuの増大を招くものの、FCシステム12全体の電力効率Etotalの改善又は電力損失Ltotalの低下を図ることが可能となる。
なお、第1マップ150aの第4領域A4と同様、第2マップ150bの第4領域A4も、FC電圧Vfcに応じて変化させてもよい。
(2−3−4−5.第3マップ150c)
第1マップ150a及び第2マップ150bと同様、第3マップ150cでは、主として4つの領域(第1〜第4領域A1〜A4)を設ける。しかしながら、第2マップ150bの場合よりも、バッテリ22側からの電力供給の程度が大きくなっていることを考慮し、第2〜第4領域A2〜A4の特性又は範囲を第2マップ150bと比較してさらに変化させる。
上記のように、第2マップ150bでは、FC−VCU24とBAT−VCU26との間で電力効率特性に相違があること(図16)に基づき、第2〜第4領域A2〜A4の範囲を第1マップ150aと比較して変化させる。
第3マップ150cは、第2マップ150bの場合よりもバッテリ22側からの電力供給の程度が大きくなっている場合に選択される(図8のS34〜S36参照)。換言すると、第2マップ150bの場合よりも、BAT−VCU26の電力効率Ebatvcuが、FCシステム12全体の電力効率Etotalに与える影響が大きくなる。
そこで、第3マップ150cでは、第2〜第4領域A2〜A4の特性又は範囲を第2マップ150bと比較してさらに変化させる。このことは、第2マップ150bにおける矢印172、174、176と比較して、第3マップ150cにおける矢印182、184、186がそれぞれ長いことで示している。
より具体的には、第3マップ150cの第2・第3領域A2、A3では、第2マップ150bの場合よりも、目標入力端電圧Vinv_tarを下げることで通過電力Pfcvcu、Pbatvcuを抑制する。これにより、FC−VCU24及びBAT−VCU26それぞれにおける電力損失Lfcvcu、Lbatvcuを低減することにより、FCシステム12全体の電力損失Ltotalの低減又は電力効率Etotalの向上を図る。
また、第2マップ150bの第4領域A4と比較して、第3マップ150cの第4領域A4は、回転数閾値THnmotをさらに下げる。図12の矢印186は、このことを示している。その結果、第4領域A4がさらに狭くなり、第3領域A3がさらに広くなる。
なお、第1マップ150a及び第2マップ150bの第4領域A4と同様、第3マップ150cの第4領域A4も、FC電圧Vfcに応じて変化させてもよい。
(2−3−5.各種制御の例))
図17は、本実施形態に係る各種制御を用いた場合のタイムチャートの一例を示す。図17の時点t1〜t2の間は、車両10が相対的に低車速で巡航状態であり、モータ出力Pmot、モータ回転数Nmot、目標入力端電圧Vinv_tar及び通過電力Pfcvcu、Pbatvcuはいずれも略一定である。ここでは、FC−VCU24が直結状態(目標入力端電圧Vinv_tar=FC電圧Vfc)であり、モータ回転数Nmot及びモータトルクTmotから特定される目標入力端電圧Vinv_tarは第4領域A4に属する(図14のS47参照)。このため、通過電力Pfcvcuは正の値であり、通過電力Pbatvcuはゼロである。換言すると、ECU30は、FC−VCU24のみを動作させ、BAT−VCU26は動作させない。
時点t2になると、アクセルペダル114が踏み込まれ、モータ出力Pmotが増加する。なお、時点t2〜t3の間、通過電力Pbatvcuがゼロのままであるのは、モータ回転数Nmot及びモータトルクTmotの組合せが第4領域A4に属しているためである。
時点t3になると、所定の条件(例えば、アクセルペダル114の開度θpが閾値以上となったこと)が満たされたことに伴い、ECU30は、FC−VCU24のみの動作からFC−VCU24及びBAT−VCU26の動作に切り替える。これに伴い、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuが正の値となり(図8のS32:NO)、目標電圧マップ150が第1マップ150aから第2マップ150bに切り替わる。その結果、ECU30は、第2マップ150bを用いてモータ回転数Nmot及びモータトルクTmotに基づいて目標入力端電圧Vinv_tarを設定する。
すなわち、図17において、実線で示される目標入力端電圧Vinv_tarが本実施形態の制御による値であり、破線で示される目標入力端電圧Vinv_tarは、比較例に係る制御(図10の第1マップ150aのみをそのまま用いる制御)による値である。図17では、本実施形態の目標入力端電圧Vinv_tar(実線)は、時点t3において、比較例よりも大きくなる。これは、第2マップ150b(図11)のうち第3領域A3の特性を用いているためである。
[2−4.FC発電制御]
図4のFC発電制御(S4)について説明する。上記のように、FC発電制御として、ECU30は、FCスタック50の周辺機器を制御する。具体的には、ECU30は、エネルギマネジメント(図4のS3)で算出したこれらの機器の指令値を用いてこれらの機器を制御する。
[2−5.モータ14のトルク制御]
図18を参照して、図4のモータトルク制御(S5)について説明する。図18には、モータトルク制御のフローチャート(図4のS5の詳細)が示されている。ステップS51において、ECU30は、回転数センサ112からモータ回転数Nmotを読み込む。ステップS52において、ECU30は、開度センサ110からアクセルペダル114の開度θpを読み込む。
ステップS53において、ECU30は、モータ回転数Nmotと開度θpに基づいてモータ14の仮目標トルクTtar_p[N・m]を算出する。具体的には、回転数Nmot、開度θp及び仮目標トルクTtar_pを関連付けたマップを図示しない記憶手段に記憶しておき、当該マップと、回転数Nmot及び開度θpに基づいて仮目標トルクTtar_pを算出する。
ステップS54において、ECU30は、FCシステム12からモータ14に供給可能な電力の限界値(限界供給電力Ps_lim)[W]に等しいモータ14の限界出力(モータ限界出力Pm_lim)[W]を算出する。具体的には、限界供給電力Ps_lim及びモータ限界出力Pm_limは、FCスタック50からのFC電力Pfcとバッテリ22から供給可能な電力の限界値(限界出力Pbat_lim)[W]との和から補機28の消費電力Paを引いたものである(Pm_lim=Ps_lim←Pfc+Pbat_lim−Pa)。
ステップS55において、ECU30は、モータ14のトルク制限値Tlim[N・m]を算出する。具体的には、モータ限界出力Pm_limを車速Vで除したものをトルク制限値Tlimとする(Tlim←Pm_lim/V)。
一方、ステップS54において、ECU30は、モータ14が回生中であると判定した場合には、限界供給回生電力Ps_reglimを算出する。限界供給回生電力Ps_reglimは、バッテリ22に充電可能な電力の限界値(限界充電Pbat_chglim)とFCスタック50からのFC電力Pfcとの和から補機28の消費電力Paを引いたものである(Ps_reglim=Pbat_chglim+Pfc−Pa)。回生中である場合、ステップS55において、ECU30は、モータ14の回生トルク制限値Treglim[N・m]を算出する。具体的には、限界供給回生電力Ps_reglimを車速Vsで除したものをトルク制限値Tlimとする(Tlim←Ps_reglim/Vs)。
ステップS56において、ECU30は、目標トルクTtar[N・m]を算出する。具体的には、ECU30は、仮目標トルクTtar_pに対してトルク制限値Tlimによる制限を加えたものを目標トルクTtarとする。例えば、仮目標トルクTtar_pがトルク制限値Tlim以下である場合(Ttar_p≦Tlim)、仮目標トルクTtar_pをそのまま目標トルクTtarとする(Ttar←Ttar_p)。一方、仮目標トルクTtar_pがトルク制限値Tlimを超える場合(Ttar_p>Tlim)、トルク制限値Tlimを目標トルクTtarとする(Ttar←Tlim)。
そして、算出した目標トルクTtarを用いてモータ14を制御する。
3.本実施形態の効果
以上説明したように、本実施形態によれば、モータ14の電力効率Emotを考慮してモータ回転数Nmot及びモータトルクTmotに基づいて特定される要求モータ電圧Vmot_reqを、FC−VCU24(第1DC/DCコンバータ)及びBAT−VCU26(第2DC/DCコンバータ)の通過電力Pfcvcu、Pbatvcuの比較結果に応じて重み付けした値を目標入力端電圧Vinv_tar(すなわち、モータ14への目標入力電圧)として算出する。これにより、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuの影響を反映して目標入力端電圧Vinv_tarを算出することが可能となる。従って、FCシステム12(電力システム)全体としての電力効率Etotal(エネルギ効率)を向上することが可能となる。
本実施形態において、ECU30(制御装置)は、FC−VCU24(第1DC/DCコンバータ)及びBAT−VCU26(第2DC/DCコンバータ)の通過電力Pfcvcu、Pbatvcuの比較を通過電流Ifcvcu、Ibatvcu(出口端電流)を用いて行うことができる。この場合、FC−VCU24及びBAT−VCU26の通過電力Pfcvcu、Pbatvcuを簡易に比較することが可能となる。
本実施形態において、ECU30(制御装置)は、モータ回転数Nmot及びモータトルクTmotと目標入力端電圧Vinv_tarとの関係を規定した目標電圧マップ150a〜150c(目標入力端電圧用マップ)を設定し、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuの比較結果に応じてマップ150a〜150cを切り替える(図8)。これにより、回転数Nmot及びトルクTmotから目標入力端電圧Vinv_tarを直接算出することが可能となるため、モータ14の駆動時に要求モータ電圧Vmot_reqの算出を省略することが可能となる。従って、演算速度の向上又は演算負荷の軽減等を図ることができる。
本実施形態において、ECU30(制御装置)は、FC−VCU24(第1DC/DCコンバータ)の昇圧を行わずにFC50からインバータ16への電力供給を行う直結処理が可能である(図10〜図12の第4領域A4)。そして、モータ回転数NmotとモータトルクTmotが一定である場合、BAT−VCU26(第2DC/DCコンバータ)よりもFC−VCU24の方が通過電力が小さい場合(図12)と比較して、BAT−VCU26よりもFC−VCU24の方が通過電力が大きい場合(図11)の方が、直結処理を行うタイミングが早い。これにより、直結処理に関連してエネルギ効率を向上することが可能となる。
本実施形態によれば、FC車両10はFCシステム12を有し、モータ14が走行用モータである。これにより、電力効率に優れたFC車両10を提供することが可能となる。
4.変形例
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
[4−1.搭載対象]
上記実施形態では、FCシステム12をFC車両10に搭載したが、これに限らず、例えば、FC電圧Vfcを昇圧してモータ14に供給するFC−VCU24(DC/DCコンバータ)を利用する観点からすれば、FCシステム12を別の対象に搭載してもよい。例えば、FCシステム12を船舶や航空機等の移動体に用いることもできる。或いは、FCシステム12を、ロボット、製造装置、家庭用電力システム又は家電製品に適用してもよい。
[4−2.FCシステム12の構成]
上記実施形態では、FC50と高電圧バッテリ22を並列に配置し、FC50の手前に昇圧コンバータ24を配置し、バッテリ22の手前に昇降圧コンバータ26を配置する構成としたが、これに限らない。例えば、バッテリ22の手前に配置するDC/DCコンバータを昇降圧式ではなく、昇圧式としてもよい。
上記実施形態では、モータ14を交流式としたが、例えば、FC電圧Vfcを昇圧してモータ14に供給するFC−VCU24(DC/DCコンバータ)を利用する観点からすれば、モータ14は、直流式とすることも可能である。この場合、インバータ16を省略することも可能である。
上記実施形態では、モータ14をFC車両10の走行用又は駆動用としたが、例えば、FC電圧Vfcを昇圧してモータ14に供給するFC−VCU24(DC/DCコンバータ)を利用する観点からすれば、これに限らない。例えば、モータ14を車載機器(例えば、電動パワーステアリング、エアコンプレッサ、エアコンディショナ)用に用いてもよい。
上記実施形態では、FC−VCU24の構成例として図2の回路を示し、BAT−VCU26の構成例として図3の回路を示した。しかしながら、DC/DCコンバータとしての機能の観点からすれば、FC−VCU24及びBAT−VCU26の構成はこれに限らない。例えば、図2の回路の代わりに、特開2009−165244号公報の図2に示される構成の昇圧コンバータ(及びそのための制御)を用いることも可能である。
[4−3.FCシステム12の制御]
(4−3−1.通過電力Pfcvcu、Pbatvcuの比較)
本実施形態において、ECU30(制御装置)は、FC−VCU24(第1DC/DCコンバータ)及びBAT−VCU26(第2DC/DCコンバータ)の通過電力Pfcvcu、Pbatvcuの比較を通過電流Ifcvcu、Ibatvcu(出口端電流)を用いて行うことができるものとした。しかしながら、その他の特徴に着目すれば、FC電流Ifc、バッテリ電流Ibat(入口端電流)を用いて当該比較を行うことも可能である。
(4−3−2.目標電圧マップ150a〜150c)
(4−3−2−1.第1〜第4領域A1〜A4)
上記実施形態では、目標電圧マップ150の領域を主として4つに分けたが、その他の特徴(例えば、第4領域A4をFC電圧Vfcに応じて変化させる点)に着目すれば、これに限らない。例えば、第1〜第4領域A1〜A4のうちいずれか2つ又は3つのみを用いてもよい。例えば、第1・第2・第4領域A1、A2、A4のみの組合せ、第1・第3・第4領域A1、A3、A4のみの組合せ、第1・第4領域A1、A4のみの組合せ又は第2・第4領域A2、A4のみの組合せも可能である。或いは、第1〜第4領域A1〜A4に加え、その他の領域を設定することも可能である。
上記実施形態では、目標電圧マップ150の第4領域A4をFC電圧Vfcに応じて変化可能とした(図10の矢印156及び図15の特性参照)。しかしながら、その他の特徴(例えば、第1〜第4領域A1〜A4に区分する点)に着目すれば、第4領域A4は固定としてもよい。
(4−3−2−2.マップ150の選択)
上記実施形態では、3つの目標電圧マップ150(第1〜第3マップ150a〜150c)を用いたが、その他の特徴に着目すれば、マップ150の数は、2又は4以上であってもよい。例えば、第1マップ150aと第2マップ150bの組合せのみ又は第1マップ150aと第3マップ150cの組合せのみを用いてもよい。
上記実施形態では、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuを用いてマップ150を選択したが(図8)、その他の特徴(例えば、複数のマップ150を用いる点)に着目すれば、その他の方法でマップ150を選択することも可能である。
図19は、図8の変形例として目標電圧マップ150a〜150eを選択するフローチャート(図7のS23の詳細)である。図19の変形例では、マップ150の数が5であると共に、マップ150を選択する際に、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuに加え、FC−VCU24及びBAT−VCU26の電力効率Efcvcu、Ebatvcuを用いる。
図19のステップS61〜S63は、図8のS31〜S33と同様である。
通過電力Pfcvcuがゼロより大きくない又は通過電力Pbatvcuがゼロ以下でない場合(S62:NO)、ステップS64において、ECU30は、電力効率Efcvcu、Ebatvcuを算出する。当該算出に当たっては、例えば、図16に示すような特性を予めマップとして記憶しておき、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuに応じて電力効率Efcvcu、Ebatvcuを特定する。
ステップS65において、ECU30は、電力効率Efcvcu、Ebatvcuの差(以下「差ΔE」という。)を算出する(ΔE=Efcvcu−Ebatvcu)。
ステップS66において、ECU30は、電力効率Efcvcu、Ebatvcuが互いに比較的近似しているか否かを判定する。具体的には、差ΔEが第1効率差閾値THΔE1(以下「閾値THΔE1」という。)以上であり且つ第2効率差閾値THΔE2(以下「閾値THΔE2」という。)以下であるか否かを判定する。差ΔEが閾値THΔE1以上であり且つ閾値THΔE2以下である場合(S66:YES)、ステップS63において、ECU30は、第1マップ150a(図10)を選択する。すなわち、電力効率Efcvcu、Ebatvcuが互いに比較的近似しているため、FC50のみが電力供給する場合の第1マップ150aを用いることで、FCシステム12の電力効率Etotalを向上させる。
ステップS66において、差ΔEが閾値THΔE1未満である又は閾値THΔE2を上回る場合(S66:NO)、ステップS67において、ECU30は、差ΔEが閾値THΔE2を上回るか否か、すなわち、BAT−VCU26よりもFC−VCU24の方が電力効率が高いか否かを判定する。差ΔEが閾値THΔE2を上回る場合(S67:YES)、ステップS68に進む。
ステップS68〜S70は、図8のステップS34〜S36と同様である。すなわち、ECU30は、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuに応じて第2マップ150b(図11)又は第3マップ150c(図12)を選択する。
差ΔEが閾値THΔE2を上回らない場合(S67:No)、差ΔEは閾値THΔE1未満であるということ、すなわち、BAT−VCU26よりもFC−VCU24の方が電力効率が低いということになる。この場合、ステップS71〜S73において、ECU30は、第4マップ150d(図20)又は第5マップ150e(図21)を選択する。
すなわち、ステップS71において、ECU30は、通過電力Pbatvcuがゼロより大きく且つ通過電力Pfctvcuの方が通過電力Pbatvcuよりも大きいか否か(すなわち、電力供給がバッテリ22及びFC50の両方から行われており且つFC50からの電力供給量の方が大きいか否か)を判定する。
通過電力Pbatvcuがゼロより大きく且つ通過電力Pfcvcuの方が通過電力Pbatvcuよりも大きい場合(S71:YES)、ステップS72において、ECU30は、第4マップ150d(図20)を選択する。
図20は、モータ回転数Nmot及びモータトルクTmotの組合せと目標入力端電圧Vinv_tarの関係を規定した第4マップ150dの一例を示す。第4マップ150dは、電力供給がバッテリ22及びFC50の両方から行われており、BAT−VCU26よりもFC−VCU24の方が電力効率が低く且つFC50の方が電力供給量が大きい場合に用いるマップである。
モータ回転数Nmot及びモータトルクTmotが一定である場合、第1マップ150aの第4領域A4と比較して、第4マップ150dの第4領域A4は、モータ回転数Nmotの上限値(回転数閾値THnmot)を低くするように設定する。これにより、昇圧状態に入り易くなり、低負荷状態における通過電力Pfcvcuを増加させ易くなる。その結果、電力効率Efcvcu、Ebatvcuを改善することが可能となる(図16参照)。図20の矢印180は、閾値THnmotを低く設定することを示している。閾値THnmotが低く設定されると、第4領域A4が狭くなり、第3領域A3が広くなる。
図19のステップS71において、通過電力Pbatvcuがゼロより大きくない又は通過電力Pfcvcuの方が通過電力Pbatvcuよりも大きくない場合(S71:NO)、ステップS73において、ECU30は、第5マップ150e(図21)を選択する。
図21は、モータ回転数Nmot及びモータトルクTmotの組合せと目標入力端電圧Vinv_tarの関係を規定した第5マップ150eの一例を示す。第5マップ150eは、電力供給がバッテリ22及びFC50の両方から行われており、BAT−VCU26よりもFC−VCU24の方が電力効率が低く且つFC50の方が電力供給量が小さい場合に用いるマップである。
このような場合、FC−VCU24の電力効率EfcvcuはFCシステム12全体の電力効率Etotalにほとんど寄与できない。そこで、第5マップ150eは、上記実施形態において説明した参考マップ140と同様の特性を有する。すなわち、第5マップ150eは、FC−VCU24の電力効率Efcvcuを考慮せず、モータ14、及びインバータ16の電力効率Emot、Einvを考慮した特性を有する。なお、第5マップ150eにおいて、BAT−VCU26の電力効率Ebatvcuを反映させてもよい。
図19の変形例によれば、FC−VCU24及びBAT−VCU26の電力効率Efcvcu、EbatvcuをFCシステム12の電力効率Etotalに大きく反映することが可能となる。
(4−3−2−3.マップ150の選択以外の方法)
上記実施形態では、FC−VCU24及びBAT−VCU26の通過電力Pfcvcu、Pbatvcuを用いてマップ150a〜150cを選択した(図8)。しかしながら、その他の特徴(例えば、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuに応じて目標入力端電圧Vinv_tarを変化させる点)に着目すれば、マップ150の選択を行わないことも可能である。
図22は、図7の変形例としてインバータ入力端電圧Vinvを制御するフローチャートである。図22の処理では、目標電圧マップ150は第1マップ150aのみを用いる。上記のように、第1マップ150aは、FC50のみから電力供給する場合等に用いるマップである。そして、FC50及びバッテリ22から電力供給する場合、第1マップ150aを用いて特定した目標入力端電圧Vinv_tar(ここでは、便宜的に「仮目標入力端電圧Vinv_tar_temp」と称する。)を補正することにより、目標入力端電圧Vinv_tarを算出する。
図22のステップS81、S82は、図7のステップS21、S22と同様である。
ステップS83において、ECU30は、第1マップ150aを用いて、ステップS81のモータ回転数Nmot及びステップS82のモータトルクTmotに基づいて仮目標入力端電圧Vinv_tar_tempを算出する。図22の変形例では、マップ150として第1マップ150a(仮要求入力電圧用マップ)のみ用いる。このため、マップ150の選択を行わない。
なお、図22の変形例の第1マップ150aでは、図10中の目標入力端電圧Vinv_tarを仮目標入力端電圧Vinv_tar_tempに置き換えればよい。
ステップS84において、ECU30は、FC−VCU24の通過電力Pfcvcu及びBAT−VCU26の通過電力Pbatvcuを算出する。当該処理は、図8のステップS31と同様である。
ステップS85において、ECU30は、ステップS84で算出した通過電力Pfcvcu、Pbatvcuに基づいて補正係数kを設定する。補正係数kは、BAT−VCU26からの通過電力Pbatvcuの影響を反映するための係数である。
すなわち、上記の通り、図22の変形例では、マップ150として第1マップ150aのみ用いる。また、第1マップ150aは、FC50のみから電力を供給し、バッテリ22からは電力を供給しない場合に用いるマップである。上記実施形態(図8)では、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuに応じて第1〜第3マップ150a〜150cを選択したが、図22の変形例では、マップ150a〜150cを選択する代わりに補正係数kを用いることでマップ150a〜150cを用いる場合と同様の効果を奏する。
図23は、補正係数kを設定するためのマップの一例を示す図である。図23の横軸は、通過電力Pfcvcuを通過電力Pbatvcuで割った商(以下「商Pfcvcu/Pbatvcu」という。)である。図23の縦軸は、補正係数kである。
図23に示すように、商Pfcvcu/Pbatvcuが小さい場合、すなわち、通過電力Pfcvcuと比較して通過電力Pbatvcuが比較的大きい場合、補正係数kを比較的小さくする。また、商Pfcvcu/Pbatvcuが増加していくと、すなわち、通過電力Pbatvcuと比較して通過電力Pfcvcuが相対的に増加していくと、補正係数kを1に近づけるように増加させる。
図22のステップS86において、ECU30は、仮目標入力端電圧Vinv_tar_tempに補正係数kを乗算した値を目標入力端電圧Vinv_tarとして設定する。
ステップS87、S88は、図7のステップS25、S26と同様である。
図24は、図22の変形例に係る各種制御を用いた場合のタイムチャートの一例を示す。上記実施形態に係る図17のタイムチャートとの相違は、マップ150切替えの代わりに、補正係数kが示されている点である。
図22の変形例によれば、ECU30(制御装置)は、FC50のみから電力供給する場合における第1マップ150a(目標入力端電圧用マップ)を設定し、FC50のみあら電力を供給する場合並びにFC50及びバッテリ22の両方から電力を供給する場合のいずれについても、通過電力Pfcvcu、Pbatvcuの比較結果に応じた補正係数kにより仮目標入力端電圧Vinv_tar_tempを補正して目標入力端電圧Vinv_tarを算出する。これにより、比較結果毎のマップ150を用意する必要がなくなる。従って、マップ150用の記憶容量を低減することが可能となると共に、マップ150を比較的容易に準備することが可能となる。