以下、この発明に係る燃料電池システムの制御方法について、これを実施する燃料電池自動車との関係において好適な実施形態を挙げ添付の図面を参照しながら説明する。
図1は、この実施形態に係る燃料電池システム12(以下、「FCシステム12」という。)が適用された燃料電池自動車10(以下、「FC自動車10」又は「車両10」という。)の概略全体構成図である。
図2は、1次側1sfと2次側2s側との間に配置される燃料電池側コンバータであり電圧変換装置(昇圧器)としてのチョッパ方式の昇圧コンバータ21(以下、SUC21という。SUC:Step Up Converter)、及び1次側1sbと2次側2s側との間に配置されるチョッパ方式の電圧変換装置(昇降圧器)としての昇降圧コンバータ22(以下、SUDC22という。SUDC:Step Up/Down Converter)の一例の詳細構成を含むFC自動車10の模式的回路図である。
図1及び図2に示すように、FC自動車10は、FCシステム12と、車両走行用のモータ・ジェネレータである駆動モータ14と、駆動モータ14を駆動する負荷駆動回路としてのインバータ16(以下、「INV16」という。INV:Inverter)と、を有する。
FCシステム12は、一方の1次側1sfに配置される燃料電池18(以下、「FC18」という。)と、他方の1次側1sbに配置される蓄電装置である高電圧バッテリ20(以下「BAT20」という。)と、前記SUC21と、前記SUDC22と、高電圧{蓄電装置電圧(BAT電圧)Vbat}入力の燃料電池補機(以下、「FC補機」という。)31と、高電圧入力の車室内空気調和装置である空調補機32と、降圧器としてのチョッパ方式の降圧コンバータ23(以下、「SDC23」という。SDC:Step Down Converter)と、制御装置としての電子制御装置24(以下、「ECU24」という。ECU:Electronic Control Unit)と、を有する。
FC18の出力端がSUC21の入力端(1次側1sf)に接続され、SUC21の出力端(2次側2s)がINV16の直流端側とSUDC22の一端(昇圧端側)側に接続される。
BAT20の入出力端がSDC23の入力側(1次側1sb)、SUDC22の他端側(降圧端側)、及び高圧補機35(FC補機31、空調補機32)に接続される。
SDC23の出力端側(2次側)には、電圧Vbb=+12V等の低圧バッテリ29と、ECU24及びライト等の低圧補機33が接続される。なお、低圧補機33とSDC23とECU24とを併せて低圧補機(低圧負荷)33´という。
駆動モータ14は、FC18から供給されるFC発電電力(FC電力)Pfc(Pfc=Vfc×Ifc)とBAT20から供給される蓄電電力であるBAT放電電力Pbatd(Pbatd=Vbat×Ibd)の合成電力値(Pfc+Pbatd)がINV16を通じて供給されることで駆動力を生成し、当該駆動力によりトランスミッション26を通じて車輪28を回転させる。
INV16は、例えば3相フルブリッジ型の構成とされて、直流/交流変換を行い、FC18からSUC21を介してFC電圧Vfcが昇圧された直流電圧である負荷端電圧Vinvを3相の交流電圧に変換して駆動モータ14に供給する(力行時)。
INV16は、また、BAT20からSUDC22を介してBAT電圧Vbatが昇圧された直流電圧である前記負荷端電圧Vinvを3相の交流電圧に変換して駆動モータ14に供給する(力行時)。
つまり、駆動モータ14は、FC18及び/又はBAT20の電力により駆動される(力行時)。
この実施形態において、INV16と駆動モータ14とを合わせて負荷30という。負荷には、負荷30の他に、FC補機31、空調補機32等の高圧補機35及び前記した低圧補機33´が含まれる。
一方、駆動モータ14の回生動作に伴う交流/直流変換後のINV16の入力端(直流端側)に発生する負荷端電圧(直流端側電圧)Vinvは、降圧コンバータとして動作するSUDC22を通じてBAT電圧Vbatに降圧されてBAT20に供給され、あるいはSUDC22が直結状態(スイッチング素子22b:オフ、スイッチング素子22d:オン)にされてBAT20に供給され、BAT20を充電する。
また、BAT20には、FC18による駆動モータ14の駆動用の電力が余剰になった場合に、その余剰電力が、昇圧状態のSUC21又は直結状態のSUC21を介し、降圧状態又は直結状態のSUDC22を通じて供給され、BAT20が充電される。前記余剰電力は、余剰の程度に応じて、高圧補機35(FC補機31、空調補機32)、及び低圧補機33´にも供給される。
FC補機31は、FC18のアノード流路(不図示)に対して水素(燃料ガス)を供給する水素タンク(不図示)と、FC18のカソード流路(不図示)に対して酸素を含む圧縮された空気(酸化剤ガス)を供給するエアポンプ(不図示)と、FC18の冷却流路に対して冷却媒体(冷媒)を供給するウォータポンプ(不図示)とを備える。なお、水素と酸化剤ガスをそれぞれ反応ガスという。
FC18は、例えば、電解質膜をアノード電極とカソード電極とで両側から挟み込んで形成された燃料電池セル(以下、「FCセル」という。)を積層したスタック構造を有し、前記アノード流路を介して前記アノード電極に供給された水素含有ガスが、電極触媒上で水素イオン化され、前記電解質膜を介して前記カソード電極へと移動し、その移動の間に生じた電子が外部回路に取り出され、直流電圧(FC電圧Vfc)を発生する電気エネルギとして利用に供される。カソード電極には、前記カソード流路を介して酸化剤ガス(酸素含有ガス)が供給されているために、このカソード電極において、水素イオン、電子及び酸素ガスが反応して水が生成される。
水が生成されることで、前記電解質膜を湿潤な状態、すなわち膜含水率(膜湿度と同意。)を高い状態に保持することができ、前記反応を円滑に遂行することができる。
BAT20は、複数のバッテリセルを含む蓄電装置(エネルギストレージ)であり、例えば、リチウムイオン2次電池、ニッケル水素2次電池等を利用することができる。蓄電装置としてキャパシタを利用することもできる。本実施形態ではリチウムイオン2次電池を利用している。BAT20は、BAT電圧(バッテリ電圧)Vbat、BAT電流(バッテリ電流)Ib(放電電流Ibd、充電電流Ibc)、BAT温度(バッテリ温度)、及びBAT20の残容量であるSOC(State Of Charge)がECU24により検出乃至管理される。
上記したように、FC18のFC電力Pfcは、FC電圧VfcがSUC21を介して負荷端電圧Vinvに昇圧されINV16を通じて駆動モータ14に供給される(力行時)と共に、FCシステム12の電力状況に応じて、FC18からSUC21及びSUDC22を通じて1次側1sbの各機器(高圧補機35、低圧補機33´、BAT20)に分配される。
一方、BAT20のBAT放電電力Pbatdは、BAT電圧VbatがSUDC22を通じて負荷端電圧Vinvに昇圧され、INV16を通じて駆動モータ14に供給される(力行時)と共に、FCシステム12の電力状況に応じて1次側1sbの各機器である高圧補機35(FC補機31、空調補機32)、及び低圧補機33´(SDC23、ECU24、低圧補機33)に供給される。
ここで、SUC21、SUDC22及びSDC23は、種々の構成を採用できるが、公知のように、基本的には、MOSFETやIGBT等のスイッチング素子と、ダイオードと、リアクトルと、コンデンサ(平滑コンデンサも含む)とから構成され、接続される負荷の要求電力に基づきECU24により前記スイッチング素子がオン・オフスイッチング制御(デューティ制御)される。
具体的には、図2に示すように、SUC21は、リアクトル(インダクタ)21aと、スイッチング素子21bとダイオード21c(単方向電流通過素子、逆方向電流阻止素子)と、1次側1sf間に配置される平滑コンデンサC1fと、2次側2s間に配置される平滑コンデンサC2fとから構成され、コンバータ制御器として機能するECU24を通じてスイッチング素子21bがスイッチング状態(デューティ制御)とされることで、FC電圧Vfcを所定の負荷端電圧Vinvに昇圧する。
なお、デューティ(駆動デューティ)が0[%]とされて、スイッチング素子21bがオフ状態(開状態)に維持されると、リアクトル21aとダイオード21cを通じてFC18と負荷30とが直結状態(FC直結状態又はFCVCU直結状態という。)とされ、FC電圧Vfcが負荷端電圧Vinvに直結される(Vinv=Vfc−Vd≒Vfc、Vd<<Vfc、Vd:ダイオード21cの順方向降下電圧)。ダイオード21cは、昇圧用又は直結用且つ逆流防止用として動作する。従って、SUC21は、昇圧動作(力行時等)の他に逆流防止動作、直結動作(力行時等)を行う。
一方、SUDC22は、図2に示すように、リアクトル22aと、スイッチング素子22b、22dと、これらスイッチング素子22b、22dにそれぞれ並列に接続されるダイオード22c、22eと、1次側1sb間に配置される平滑コンデンサC1bと、2次側2s間に配置される平滑コンデンサC2bとから構成される。
昇圧時には、ECU24により、スイッチング素子22dがオフ状態とされ、スイッチング素子22bがスイッチング(デューティ制御)されることでBAT電圧Vbat(蓄電装置電圧)が所定の負荷端電圧Vinvまで昇圧される(力行時)。
降圧時には、ECU24により、スイッチング素子22bがオフ状態とされ、スイッチング素子22dがスイッチング(デューティ制御)されることで、スイッチング素子22dがオフ状態であるときにダイオード22cがフライホイールダイオードとして機能し、負荷端電圧VinvがBAT20のBAT電圧Vbatまで降圧される(回生充電時及び/又はFC18による充電時)。
また、スイッチング素子22bをデューティが0[%]でのオフ状態、スイッチング素子22dをデューティが100[%]でのオン状態とすることで、BAT20と負荷30とが直結状態(BAT直結状態又はBATVCU直結状態という。力行時、充電時、又は補機負荷等の駆動時)とされる。
BAT直結状態においては、BAT20のBAT電圧Vbatが負荷端電圧Vinvになる(Vbat≒Vinv)。実際上、BAT直結状態におけるBAT20による力行時の負荷端電圧Vinvは、「Vbat−ダイオード22eの順方向降下電圧」となり、充電時(回生充電時含む)の負荷端電圧Vinvは、「Vbat=Vinv−スイッチング素子22dのオン電圧=Vbat(スイッチング素子22dのオン電圧を0[V]と仮定した場合。)」になる。
なお、図3に示すように、低電圧側と高電圧側との間に接続されるスイッチング素子21b、22b、22dには、上述したMOSFET又はIGBT等の電力素子が用いられる。
また、FCシステム12において、それぞれ図示はしないが、SUC21の直結時(FC18の直結時と同意)、又はSUDC22の直結時(力行時)(BAT20の直結時と同意)におけるSUC21又はSUDC22の直流電圧降下を低減するために、SUC21の1次側1sfにアノード端子が接続され2次側2sにカソード端子が接続されたダイオード及び/又はSUDC22の1次側1sbにアノード端子が接続され2次側2sにカソード端子が接続されたダイオードを設けてもよい。
FC18は、図4のIV(電流電圧)特性70に示すように、FC電圧VfcがFC開回路電圧Vfcocvより低下するに従い、FC電流Ifcが増加する公知の電流電圧(IV)特性70を有する。すなわち、FC電圧Vfcが相対的に高いFC電圧VfchであるときのFC電流Ifclに比較して、FC電圧Vfcが相対的に低いFC電圧VfclであるときのFC電流Ifchが大きな電流になる。なお、FC電力Pfcは、FC電流Ifcが大きくなるほど(FC電圧Vfcが低くなるほど)大きくなる。
FC18のFC電圧Vfcは、SUC21の直結時においては、昇圧状態(スイッチング状態)にあるSUDC22の昇圧比(Vinv/Vbat)又は降圧状態(スイッチング状態)にあるSUDC22の降圧比(Vbat/Vinv)で決定される負荷端電圧Vinv{SUDC22の指令電圧(目標電圧)になる。}により制御され、FC電圧Vfcが決定されると、IV特性70に沿ってFC電流Ifcが制御(決定)される。
また、SUC21の昇圧時及びSUDC22の直結時においては、SUC21の1次側1sfの電圧、すなわちFC電圧VfcがSUC21の指令電圧(目標電圧)とされ、IV特性70に沿ってFC電流Ifcが決定され、所望の負荷端電圧VinvとなるようにSUC21の昇圧比(Vinv/Vfc)が決定される。
なお、この実施形態では、SUC21の昇圧時に、FC電圧Vfcが指令値(設定値、目標値)になるようにコンバータ制御器としてのECU24によりスイッチング素子21bのデューティが調整されるフィードバック(F/B)制御がなされているが、FC電圧VfcとFC電流Ifcとの間にはIV特性70に基づく一意の関係があるのでFC電流Ifcが指令値(設定値、目標値)になるようにECU24によりスイッチング素子21bのデューティを調整するフィードバック(F/B)制御をすることも可能である。
さらに、この実施形態において、SUC21の各部品中、SUC21の電力増加等に応じて最も耐熱温度に達し易い部品、ここではリアクトル21aにリアクトル温度Tr1を検出するサーミスタ等の温度センサ51が付設されると共に、SUDC22の各部品中、SUDC22の電力増加等に応じて最も耐熱温度に達し易い部品、ここではリアクトル22aにリアクトル温度Tr2を検出するサーミスタ等の温度センサ52が付設される。なお、最も耐熱温度に達し易い部品は、コスト等を考慮した設計時における部品の選択に依存するので、リアクトル21a、22a以外のダイオード21c、22c、22e、スイッチング素子21b、22b、22d、コンデンサC1f、C2f、C1b、C2bになる場合もあり、この場合には、最も早く耐熱温度に達し易い部品に温度センサ51、52が付設される。
ECU24は、通信線68(図2参照)を介して、駆動モータ14、INV16、FC18、BAT20、SUC21、SUDC22、SDC23、FC補機31、空調補機32、及び低圧補機33´等の各部を制御する。当該制御に際しては、ECU24のメモリ(ROM)に格納されたプログラムを実行し、また、各種センサ(図示しない電圧センサ、電流センサ、温度センサ、圧力センサ、水素濃度センサ、各種回転数センサ、及びアクセルペダルの開度センサ等)の検出値及び各種スイッチ(空調スイッチやイグニッションスイッチ等)のオンオフ情報等を用いる。
ECU24は、マイクロコンピュータを含む計算機であり、CPU(中央処理装置)、メモリであるROM(EEPROMも含む。)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、その他、A/D変換器、D/A変換器等の入出力装置、計時部としてのタイマ等を有しており、CPUがROMに記録されているプログラムを読み出し実行することで各種機能実現部(機能実現手段)、例えば制御部、演算部、及び処理部等として機能する。なお、ECU24は、1つのECUのみから構成するのではなく、駆動モータ14、FC18とFC補機31、BAT20、SUC21とSUDC22とSDC23毎の複数のECUで構成することもできる。
ECU24は、FC18の状態、BAT20の状態及び駆動モータ14の状態の他、各種スイッチ及び各種センサからの入力値に基づき決定したFC自動車10全体としてFCシステム12に要求される負荷(負荷電力)から、FC18が負担すべき負荷(負荷電力)と、BAT20が負担すべき負荷(負荷電力)と、回生電源(駆動モータ14)が負担すべき負荷(負荷電力)の配分(分担)を調停しながら決定し、駆動モータ14、INV16、FC18、BAT20、SUC21、SUDC22及びSDC23を制御する。すなわち、ECU24は、FC18、BAT20、負荷30、高圧補機35及び低圧補機33´を含めた燃料電池自動車10全体のエネルギ管理(エネルギマネジメント)制御を行う。
この実施形態に係る燃料電池システム12が適用されたFC自動車10は、基本的には、以上のように構成される。
次に、ECU24による制御処理例について、第1実施例として、設計上、「Vfc>Vbat」となっている場合、第2実施例として、設計上、「Vbat>Vfc」となっている場合に分けて説明する。
[第1実施例:Vfc>Vbatとなっている場合]
図5のタイミングチャート及び図6のフローチャートを参照して説明する。なお、図6のフローチャートの他、以下に示すフローチャートに係るプログラムの実行主体は、ECU24のCPUである。
図5において、縦軸の項目は、上側から順に、SUC21を構成するリアクトル21aのリアクトル温度Tr1[℃]、車速Vs[km/h]、各部電圧(効率要求負荷端電圧Vinvη、目標負荷端電圧Vinvtar、FC電圧Vfc、BAT電圧Vbat、駆動要求負荷端電圧Vinvd)、FC電力Pfc、SUC21の駆動デューティ(FCデューティ)Dfc[%]、FC電力Pfc(FC電圧Vfc)を制御するコンバータ名(SUC21又はSUDC22)、及びSUC21の昇圧フラグFsuc(Fsuc=1で昇圧、Fsuc=0で直結)を示し、各波形はそれぞれの時間変化状態を示している。
なお、図5中、同一項目で、実線で示す波形は対策後(第1実施例)の波形、一点鎖線で示す波形は対策前(比較例)の波形を示している。対策後の波形を示す場合、符号の末尾に“a”を付け、対策前の波形を示す場合、符号の末尾に“b”を付けている。
例えば、一点鎖線で示すリアクトル温度Tr1b[℃]はリアクトル21aの対策前の温度推移、FC電力Pfcb[kW]は対策前のFC電力Pfcの推移、昇圧フラグFsucbは、対策前のSUC21の昇圧フラグFsucの状態を示している。
なお、上記したように、昇圧フラグFsuc=1は、SUC21が昇圧状態であることを示し、昇圧フラグFsuc=0は、SUC21(FC18)が直結状態であることを示している。
図5において、リアクトル上限温度Tth2は、この温度以上の温度が比較的に短い時間である所定時間以上継続するとリアクトル21aが故障する閾値温度を示し、リアクトル上限付近温度Tth1は、リアクトル上限温度Tth2より若干低い温度に設定した連続通電が可能な上限の閾値温度を示している。
図5の時点t0〜時点t5の全期間で、FC自動車10は、車速Vs=120[km/h]と高車速で走行している。つまり、INV16及び駆動モータ14からなる負荷30は、高負荷状態になっている。
ステップS1にて、ECU24は、各種スイッチ及び各種センサからの入力値{Vfc、Ifc、Vbat、Ib、Vinv、I2(INV16に対する入出力電流、図1、図2参照)、Im(駆動モータ14に流れるモータ電流、通常2相分、図2参照)、Nm(駆動モータ14の回転数)、θp(図示しないアクセルペダルの操作量)等}を検出して、駆動モータ14に対するモータ要求電力(モータ必要電力)Pmreq[kW]を算出する。
より具体的には、駆動モータ14のモータ要求電力Pmreq[kW]が、アクセルペダルの操作量θpに対応したモータ回転数Nm[rpm]と必要トルクTreq[N・m]とに基づき算出される。このとき、同時に、モータ回転数Nmと必要トルクTreqとからFC自動車10に対して予め取得され記憶装置に格納されている効率要求負荷端電圧Vinvη[V]の特性が参照されて算出される。駆動モータ14が高効率となる効率要求負荷端電圧Vinvηは、駆動モータ14の高負荷領域では低負荷領域に比較して高電圧になる特性になっている。
図7は、モータ要求電力Pmreqと、このモータ要求電力Pmreqを実現するための最低電圧であるインバータ16の負荷端電圧Vinvとしての駆動要求負荷端電圧Vinvdとの関係を表す特性72を示している。特性72は、予めECU24内の記憶装置に記憶されている。
駆動要求負荷端電圧Vinvdは、効率要求負荷端電圧Vinvηより低い電圧になっている(Vinvd<Vinvη)。
そこで、ステップS1にて、さらに、モータ要求電力Pmreqに基づき図7の特性72を参照し駆動要求負荷端電圧Vinvd[V]を算出する。
次いで、ステップS2にて、駆動要求負荷端電圧VinvdよりFC電圧Vfcが高い(Vinvd<Vfc)か、否かを判定し、低い(ステップS2:NO)場合には、他の制御を実施する。
ステップS2の判定にて、駆動要求負荷端電圧VinvdがFC電圧Vfcより低い(ステップS2:YES)場合、ステップS3にて、リアクトル21aの温度を検出する温度センサ51によるリアクトル温度Tr1がリアクトル上限付近温度Tth1より高い(Tr1>Tth1)か、否かを判定する。
時点t0〜時点t1の間では、リアクトル温度Tr1がリアクトル上限付近温度Tth1より低い(ステップS3:NO)ので、ステップS4にて、目標負荷端電圧Vinvtarが効率要求負荷端電圧Vinvηに設定され(Vinvη←Vinvtar)、ステップS5にて、FC電力Pfcを制限しない(Pfc非制限)で、SUC21の昇圧比がVinvη/Vfcとなるように、スイッチング素子21bのデューティ、すなわちFCデューティDfcを設定し、通常の制御(通常のエネルギマネジメント制御という。)が実行される。
なお、時点t0〜時点t1の間では、BAT電圧Vbatが目標負荷端電圧Vinvtarになるように、SUDC22による昇圧制御が実施されるので、時点t0〜時点t1の間は、SUC21及びSUDC22とも電圧変換が実施される電圧変換工程(両方電圧変換工程)になっている。
時点t0〜時点t1の間では時点t1まで、ステップS1→ステップS2:YES→ステップS3:NO→ステップS4→ステップS5の処理が繰り返される。
SUC21の温度がさらに上昇し、時点t1にて、リアクトル21aのリアクトル温度Tr1がリアクトル上限付近温度Tth1を上回る(Tr1>Tth1)ことが検出されると、ステップS3の判定が肯定的(ステップS3:YES)になる。
この場合、ステップS6にて、SUC21のFCデューティDfcをFCデューティDfca(時点t1〜時点t3間)に示すように徐々に低減させることで目標負荷端電圧Vinvtarを徐々に低減させる。
徐々に低減させている間(Dfc>0[%])にも、FC電力Pfcを制限しないで、SUC21の昇圧比がVinvtar/Vfcとなるように、スイッチング素子21bのデューティ、すなわちFCデューティDfcaが設定されて通常の制御(通常のエネルギマネジメント制御)が実行される。
時点t1から時点t3まで、ステップS1→ステップS2:YES→ステップS3:YES→ステップS6→ステップS7:NO→ステップS5の処理が繰り返される。
この時点t1〜時点t3の間では、SUC21の温度上昇は、時点t0〜時点t1間の温度上昇に比較して、緩やかになる。
その理由は、時点t1〜t3の間でSUC21を通過するFC電流Ifcの値(平均電流値)は変化しないが、昇圧比(FCデューティDfc)を徐々に低下させることで、リアクトル21aを通過するFC電流Ifcの交流成分(振幅値)が徐々に小さくなるので、リアクトル21aの交流損失が低減されてリアクトル21aの温度上昇が緩和されることによる。ここで、FC電力Pfcは変化しないので、FC電圧Vfcは一定値に保持される。このように、時点t1〜時点t3の間では、FC18から出力されるFC電力Pfcは変化しないが、FCデューティDfcを漸減させることでリアクトル21aで発生する電力損失が徐々に低減されるので、デューティ比漸減工程と称する。
時点t3にて、SUC21のFCデューティDfcが0[%](スイッチング素子21bがオフ状態)になったときには、ステップS7の判定が肯定的(ステップS7:YES、Dfc=0[%])となり、ステップS8にて、SUC昇圧フラグFsucをFsuc=1の状態からFsuc=0の状態に遷移させ、SUC21を直結状態(FC18を直結状態)として、FC18とインバータ16の入力端とを直結させる。すなわち、FC18のFC電力Pfcが、リアクトル21a、ダイオード21cを通じて直流電力として負荷30に供給される。時点t3以降、目標負荷端電圧Vinvtar及びFC電圧Vfcは、BAT20側のSUDC22によって制御されることになる。
時点t3以降、ステップS9にて、リアクトル21aのリアクトル温度Tr1がリアクトル上限温度Tth2より高い(Tr1>Tth2)か、否かを判定し、低い場合(ステップS9:NO)には、ステップS5のFC電力Pfcを制限しない通常の制御が実行される(時点t3〜時点t4間)。
なお、時点t1〜t3の間では、BAT電圧Vbatを目標負荷端電圧Vinvtarまで昇圧するSUDC22による昇圧制御が実施されているので、電圧変換工程(両方電圧変換工程)ではあるが、時点t3からSUC21(FC18)のみが直結状態になり時点t3以降を直結工程と称することを考慮して、時点t1〜t3の間のデューティ比漸減工程は、SUC21(FC18)の前置直結工程と称してもよい。
時点t3以降、時点t4に至るまで、ステップS1→ステップS2:YES→ステップS3:YES→ステップS6→ステップS7:YES→ステップS8→ステップS9:NO→ステップS5の処理での直結工程が繰り返される。
SUC21の温度がさらに上昇して、時点t4にて、リアクトル21aのリアクトル温度Tr1がリアクトル上限温度Tth2を上回る(Tr1>Tth2)ことが検出されると、ステップS9の判定が肯定的(ステップS9:YES)になる。
この場合、リアクトル21aの温度を直ちに下げるために、直結状態になっているSUC21のリアクトル21aを通過する電流であるFC電流Ifcを低下させる必要があることを考慮し、ステップS10にて、FC18のFC電力Pfcを絞る。このため、SUDC22の昇圧比を増加させてFC電圧Vfcを徐々に増加させるFC電力Pfcの制限制御(時点t4〜時点t5:電流制限工程)を行う。図4に示したIV特性70において、FC電圧Vfcを増加させる程、FC電力Pfcが低下することに留意する。
なお、ステップS10にて、FC電力Pfcを絞っているので、高負荷(Vs=120[km/h])要求を受け入れる場合には、BAT20のSOCを参照し、余裕がある場合には、FC電力Pfcの不足分をBAT20で補うように制御する。これにより、時点t4〜時点t5の間に示すように、BAT電圧Vbatの減少度合いが、時点t4から大きくなる。
ただし、ステップS10にて、FC電力Pfcを絞ったときに、BAT20のSOCに余裕がない場合には、第1実施例の変形例の図8のタイミングチャートに示すように、時点t4からBAT20のSOCを急減させることなく(BAT電圧Vbatを一点鎖線ではなく実線のように変化させるようにして)、駆動要求負荷端電圧Vinvdを、減少させているFC電力Pfcで賄える範囲で徐々に減少させるように制御してもよい。この場合、効率要求負荷端電圧Vinvηも駆動要求負荷端電圧Vinvdと同様に減少する。また、車速Vsも高車速である120[km/h]から徐々に低下することになる。
なお、上述した第1実施例(図5)及び第1実施例の変形例(図8)では、ステップS6(時点t1〜時点t3)にてFCデューティDfcを徐々に低下させるように制御しているが、第1実施例の他の変形例を示す図9のフローチャート及び図10のタイミングチャートに示すように、リアクトル温度Tr1がリアクトル上限付近温度Tth1を上回った(ステップS3:YES)場合に、ステップS6の処理(FCデューティDfc及び目標負荷端電圧Vinvtarの漸減処理)を省略し、ステップS7aにて、FCデューティDfcを瞬時に0[%]にしてもよい。すなわち、図10の時点t1に示すように、図5のデューティ比漸減工程の開始時点t1でSUC21(FC18)を直結状態(Dfc=Dfca=0[%])にしてもよい。
図10に示すように、時点t1〜時点t4の間(直結工程)では、FC18から出力されるFC電力Pfcが、時点t0〜時点t1の間(電圧変換工程)と同じで変化していない。しかし、リアクトル21aの温度の上昇(温度上昇勾配)は、図10中、SUC21が電圧変換(昇圧)されている時点t0〜時点t1の間のリアクトル温度Tr1aの上昇(温度上昇勾配)に比較して、SUC21(FC18)が直結されている時点t1〜時点t4の間のリアクトル温度Tr1aの上昇(温度上昇勾配)が緩和される。
この場合、時点t1以降、FC電圧Vfcは、SUDC22により制御される。図10に示す時点t1〜時点t4の直結工程(ステップS1→ステップS2:YES→ステップS7a→ステップS8→ステップS9(NO)→ステップS5)においても、FC電力Pfcは、FC電力Pfcaになり、対策前のようにFC電力Pfcbと絞る必要がなく、且つ直結にしているので、直結とされたSUC21のリアクトル21aで消費される交流電力分をゼロ値まで低減させることができる。
[第2実施例:Vbat>Vfcとなっている場合]
次に、第2実施例を、図11のフローチャート及び図12のタイミングチャートを参照して説明する。第2実施例の処理は、基本的には、第1実施例と同様であるので、第1実施例と異なる処理について簡潔に説明する。なお、図11に示すフローチャートのステップ番号は、図6に示したステップ番号の処理と同一又は同様の処理に対し、10の位に変更している。
この第2実施例では、BAT20のBAT電力Pbatを制御するSUDC22を構成するリアクトル22aのリアクトル温度Tr2の温度変化を制御対象としている。
図12において、縦軸の項目は、上側から順に、SUDC22を構成するリアクトル22aのリアクトル温度Tr2[℃]、車速Vs[km/h]、各部電圧(効率要求負荷端電圧Vinvη、目標負荷端電圧Vinvtar、FC電圧Vfc、BAT電圧Vbat、駆動要求負荷端電圧Vinvd)、BAT電力Pbat、SUDC22の駆動デューティ(BATデューティ)Dbat[%]、FC電力Pfcを制御するコンバータ名(SUC21又はSUDC22)、及びSUDC22の昇圧フラグFsudc(Fsudc=1で昇圧、Fsudc=0で直結)の状態をそれぞれ示している。
なお、図12例では、図5例と同様に、同一項目で、実線で示す波形は対策後(第2実施例)の波形、一点鎖線で示す波形は対策前(比較例)の波形を示している。なお、図5例と同様に、対策後の波形を示す場合、符号の末尾に“a”を付け、対策前の波形を示す場合、符号の末尾に“b”を付けている。例えば、リアクトル温度Tr2b[℃]は対策前のリアクトル22aの温度推移、BAT電力Pbatb[kW]は対策前のBAT電力Pbatの推移、昇圧フラグFsudcbは対策前のSUDC22の昇圧フラグFsudcの状態を示している。
なお、上記したように、昇圧フラグFsudc=1は、SUDC22が昇圧状態であることを示し、昇圧フラグFsudc=0は、SUDC22(BAT20)が直結状態であることを示している。
図12において、リアクトル上限温度Tth2は、この温度以上の温度が比較的に短い時間である所定時間以上継続するとリアクトル22aが故障する閾値温度を示し、リアクトル上限付近温度Tth1は、リアクトル上限温度Tth2より若干低い温度に設定した連続通電が可能な上限の閾値温度を示している。ただし、リアクトル上限温度Tth2及びリアクトル上限付近温度Tth1は、理解の便宜のために、図5例と同一の符号を用いているが、実際の温度は、リアクトル22aの仕様に応じた温度に設定される。
図12の時点t10〜時点t15の全期間で、FC自動車10は、車速Vs=120[km/h]と高車速で走行している。この場合、INV16及び駆動モータ14からなる負荷30は、高負荷状態になっている。
ステップS11〜ステップS20の処理は、上述したステップS1〜ステップS10の処理に対応しているので、要部を説明すると、ステップS12の判定にて、駆動要求負荷端電圧VinvdがBAT電圧Vbatより低い(ステップS12:YES)場合、ステップS13にて、リアクトル22aの温度を検出する温度センサ52によるリアクトル温度Tr2がリアクトル上限付近温度Tth1より高い(Tr2>Tth1)ことが検出される(時点t11)と、ステップS13の判定が肯定的(ステップS13:YES)となる。
この場合、ステップS16にて、SUDC22のBATデューティDbatをBATデューティDbata(時点t11から時点t13の間)に示すように徐々に低減させて目標負荷端電圧Vinvtarを徐々に低減させる。
この場合にも、BAT電力Pbatを制限しない(ステップS15:Pbat非制限)で、SUDC22の昇圧比がVinvtar/Vbatとなるように、スイッチング素子22bのデューティ、すなわちBATデューティDbataを設定して通常の制御(通常のエネルギマネジメント制御)を実行する。なお、昇圧時に、スイッチング素子22dは、オフ状態に維持される。
時点t11から時点t13まで、ステップS11→ステップS12:YES→ステップS13:YES→ステップS16→ステップS17:NO→ステップS15の処理(デューティ比漸減工程)が繰り返される。
この時点t11〜時点t13の間では、SUDC22(リアクトル22a)のリアクトル温度Tr2aの温度上昇は、時点t10〜時点t11間の温度上昇に比較して、緩やかになる。
その理由は、時点t11〜t13の間でSUDC22を通過するBAT電流Ibdの値(平均電流値)は変化しないが、昇圧比(BATデューティDbata)を徐々に低下させることで、リアクトル22aを通過するBAT電流Ibdの交流成分(振幅値)が徐々に小さくなるので、リアクトル22aの交流損失が低減されることからリアクトル22aの温度上昇が緩和されることによる。従って、BAT電力Pbatは変化しないが、BAT20のSOCは低下するので、BAT電圧Vbatが徐々に減少する。時点t11〜時点t13の間では、BAT20から出力されるBAT電力PbatはBAT電力Pbataと変化しないが、BATデューティDbatがBATデューティDbataと徐々に低減されるので、時点t11〜時点t13の間をデューティ比漸減工程と称する。
時点t13において、SUDC22のBATデューティDbataが0[%](スイッチング素子22bもオフ状態)になったときには、ステップS17の判定が肯定的(ステップS17:YES、Dbata=0[%])となり、ステップS18にて、SUDC昇圧フラグFsudcをFsudc=1の状態からFsudc=0の状態に遷移させ、SUDC22(BAT20)を直結状態として、BAT20とインバータ16の入力端とを直結させる。すなわち、BAT20のBAT電力Pbatが、リアクトル22a、ダイオード22eを通じて直流電力として負荷30に供給される。時点t13以降、FC電圧Vfcは、SUC21によって制御されることになる。
時点t13以降、ステップS19にて、リアクトル22aのリアクトル温度Tr2がリアクトル上限温度Tth2より高い(Tr2>Tth2)か、否かを判定し、低い場合(ステップS19:NO)には、ステップS15のBAT電力Pbatを制限しない(Pbat非制限)通常の制御が実行される(時点t13〜時点t14間の直結工程)。
時点t11〜t13の間では、FC電圧Vfcを目標負荷端電圧Vinvtarまで昇圧するSUC21による昇圧制御が実施されているので、電圧変換工程(両方電圧変換工程)ではあるが、時点t13からSUDC22(BAT20)のみが直結状態になり時点t13以降を直結工程と称することを考慮して、時点t11〜時点t13の間のデューティ比漸減工程は、SUDC22(BAT20)の前置直結工程と称してもよい。
時点t13以降、SUDC22の温度がさらに上昇して、時点t14にて、リアクトル22aのリアクトル温度Tr2がリアクトル上限温度Tth2を上回る(Tr2>Tth2)ことが検出されると、ステップS19の判定が肯定的(ステップS19:YES)になる。
この場合、リアクトル22aの温度を直ちに下げるためには、直結状態になっているSUDC22のリアクトル22aを通過する電流であるBAT電流Ibを低下させる必要があることを考慮し、ステップS20にて、FC18のFC電力Pfcを増加させるためにSUC21の昇圧比(Vinv/Vfc)を増加させてFC電圧Vfcを低下させ、FC電力Pfcを増加させることで、そのステップS20のBAT電力Pbatの負担分を比較的急に低下させる負担分の制限制御(時点t14〜時点t15)を行う。つまり、時点t14以降の電流制限工程に示すように、SUC21の2次側電圧である目標負荷端電圧Vinvtarが、直結しているBAT電圧Vbatの低下に沿って低下するので、SUC21の昇圧比(Vinvtar/Vfc)を比較的急に増加させると、結果として、SUC21の1次電圧であるFC電圧Vfcが比較的急に低下しFC電力Pfcが比較的急に増加するので、BAT電力Pbatの負担分が比較的急に軽減され、リアクトル22aを通過するBAT電流Ibが比較的急に低下してリアクトル22aの温度を直ちに下げることができる。
なお、上述した第2実施例では、ステップS16(時点t11〜時点t13)にてBATデューティDbatを徐々に低下させるように制御しているが、図9のフローチャート及び図10のタイミングチャートを参照して説明したのと同様に、リアクトル温度Tr2がリアクトル上限付近温度Tth1を上回った(ステップS13:YES)場合に、ステップS16の処理(BATデューティDbatの漸減処理)を省略し、BATデューティDbatを瞬時に0[%]にしてもよい{第2実施例の変形例:デューティ比漸減工程の開始時点t11でSUDC22(BAT20)を直結する直結工程の実施。}。
[実施形態のまとめ及びさらなる変形例]
以上説明したように上述した実施形態に係るFCシステム12は、FC電力Pfcを出力するFC18と、BAT放電電力(蓄電電力)Pbatdを出力するBAT20と、インバータ16とインバータ16を通じて駆動されるモータ14とからなる負荷30と、FC18の発電電圧であるFC電圧Vfcを電圧変換し負荷端電圧Vinvとしてインバータ16の直流端側に印加する第1電圧変換装置としてのSUC21と、BAT20の蓄電装置電圧であるBAT電圧Vbatを電圧変換し負荷端電圧Vinvとしてインバータ16の直流端側に印加する第2電圧変換装置としてのSUDC22と、を備える燃料電池システム12の制御方法において、SUC21及びSUDC22の温度Tr1、Tr2を温度センサ51、52で検出する温度検出工程(ステップS3、ステップS13)と、SUC21及びSUDC22の電圧変換工程(時点t0〜時点t1、時点t10〜時点t11)中に、SUC21及びSUDC22のうち少なくとも一方の温度Tr1、Tr2が温度閾値としてのリアクトル上限付近温度Tth1を上回った(ステップS3、S13:YES)場合に、リアクトル上限付近温度Tth1を上回った一方のSUC21、SUDC22のデューティ比であるFCデューティDfc、BATデューティDbatを徐々に低下させる(時点t1〜時点t3、時点t11〜時点t13)デューティ比漸減工程(ステップS6、ステップS16)と、前記デューティ比漸減工程後に、リアクトル上限付近温度Tth1を上回った一方のSUC21、SUDC22を直結させる直結工程(ステップS8、ステップS18)と、を有する。
前記デューティ比漸減工程(ステップS6、ステップS16)では、前記デューティを低下させている前記一方の前記電圧変換装置(SUC21又はSUDC22)の電力出力は絞らずに負荷30(インバータ16と駆動モータ14)の要求(駆動要求負荷端電圧Vinvd)に対応する電力出力(時点t1〜時点t3間のFC電力Pfca、時点t11〜時点t13間のBAT電力Pbata)を継続するように制御している。
この実施形態によれば、温度閾値であるリアクトル上限付近温度Tth1を上回った場合でも、負荷30の要求に制限をかけずに対応できるので、対策前のFC電力Pfcb(時点t1〜時点t3の間の時点t2)又は対策前のBAT電力Pbatb(時点t11〜時点t13の間の時点t12)に示すように、リアクトル上限温度Tth2しか設けずに、そのリアクトル上限温度Tth2に達したらFC電力Pfcb又はBAT電力Pbatb(のSUC21又はSUDC22の通過電力)を絞る技術(比較例:図5、図8、図10の時点t2以降、図12の時点t12以降)に比較して、電力を絞るまでの期間を延ばす(時点t2、t12であったのを時点t4、t14まで延ばす)ことができるので、燃料電池自動車10等の振動ショックの発生を回避しながら商品性を向上させることができる。
つまり、対策前(比較例)は、対策後(実施形態)に比較して、例えば、図5の波形図に示すように、リアクトル上限付近温度Tth1を閾値温度とする制限をかけていなかったこと等を原因として、リアクトル上限温度Tth2(Tth2>Tth1)にかかった時点t2において、直ちに、FC18のFC電力Pfcを絞るようにしていたので、SUC21の出力制限が開始され、モータ14の入力電力が急激に変動する結果、モータ14の出力が急激に変動し、結果としてモータ14により推進される車両10の振動ショック(車両振動ショック)が発生してしまうという課題があったが、この実施形態に係る技術により、この課題が解決された。
なお、図9及び図10を参照して説明したように、時点t0〜時点t1の間の電圧変換工程中に、一方の電圧変換装置(SUC21及びSUDC22のどちらか、図9及び図10例ではSUC21)を構成するリアクトル21aのリアクトル温度Tr1が前記電力出力を制限すべきリアクトル上限付近温度Tth1を上回った場合に、SUC21及びSUDC22の一方の電圧変換動作を停止(図9及び図10例ではSUC21)して直結させる直結工程(図10の時点t1〜時点t4の間、図9のステップS3:YES、ステップS7a、ステップS8)を有するように制御してもよい。この場合においても、前記直結工程では、直結させたSUC21(又はSUDC22)の電力出力は絞らずに負荷30の要求に対応する前記電力出力を継続する。従って、リアクトル温度Tr1がリアクトル上限付近温度Tth1を上回った場合でも負荷30の要求に制限をかけずに対応できるので、商品性を向上させることができる。
ただし、温度検出工程は、前記直結(図5の時点t3、図10の時点t1、図12の時点t13)以降も継続し、リアクトル温度Tr1、Tr2がリアクトル上限付近温度Tth1より高いリアクトル上限温度Tth2を上回った場合には、直結させたSUC21又はSUDC22の電力通過出力を絞る。これにより、リアクトル上限温度Tth2を上回った直結中のSUC21又はSUDC22中のリアクトル21a、22aを保護し、耐久性の低下を抑制することができる。
[変形例A]
なお、図5の直結工程(時点t3〜時点t4)で直結させる(時点t3)際には、又は図10の直結工程(時点t1〜時点t4)で、直結させる(時点t1)際には、FC電圧VfcとBAT電圧Vbatの電圧差|Vfc−Vbat|を把握し、電圧差|Vfc−Vbat|が、FC18の制御性を確保することができない程低い値の所定値ΔV以下である(|Vfc−Vbat|≦ΔV)と判定された場合には直結させないようにすることが好ましい。
このように、FC電圧VfcをSUC21又はSUDC22では制御できない程、換言すれば、SUC21又はSUDC22を正常スイッチング動作できない程、電圧差|Vfc−Vbat|が低いときには、FC18の制御性が悪化すると予測されるので直結しない。
このため、FC18の制御性の悪化を確実に抑制でき、FC18の耐久性が低下することを防止できる。この電圧差把握工程は、図5の時点t1〜t3のデューティ比漸減工程及び図10の時点t1〜t4の直結工程と同時に実施される(図6のステップS6を実行する処理の繰り返し中、又は図9のステップS7aを実行する処理の繰り返し中)。
[変形例B]
デューティ比漸減工程(例えば、図5の時点t1〜時点t3、図6のステップS7:NO→ステップS5)及び直結工程(例えば、図10の時点t1〜時点t4、図12の時点t13〜時点t14)において、直結させようとするFC18のFC電圧Vfc又は直結させようとするBAT20のBAT電圧Vbatが、駆動要求負荷端電圧(負荷駆動要求電圧)Vinvdより低い値(Vfc<Vinvd又はVbat<Vinvd)である場合(不図示)には、直結させることを禁止し、駆動要求負荷端電圧Vinvdを目標負荷端電圧VinvtarとしてSUC21又はSUDC22の昇圧を継続することが好ましい。
直結させようとするFC18又はBAT20の電圧(FC電圧Vfc又はBAT電圧Vbat)が駆動要求負荷端電圧Vinvdを満たない場合には、SUC21及びSUDC22により駆動要求負荷端電圧Vinvdを満たすように昇圧を継続することで、商品性を向上させることができる。
なお、この発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。