JP6058843B1 - アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法 - Google Patents

アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 シリコーン構造を一定量以上含有するアクリルシリコーン樹脂エマルションを簡便に提供することができる製造方法を提供すること。【解決手段】 アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法であって、下記工程;水性媒体に塩基成分を加えて、水性媒体のpHを10以上に調整する、第一pH調整工程;シリコーンオリゴマー(A)、加水分解性シラン化合物(B)およびラジカル重合性不飽和単量体(C)の混合物、乳化剤(D)および水性媒体を混合して、反応前乳化混合物を調製する、反応前乳化混合物調製工程;得られた反応前乳化混合物および重合開始剤(E)を、上記第一pH調整工程で得られた水性媒体中で混合して、乳化重合する、乳化重合工程;および、上記乳化重合工程後、得られた乳化重合物の温度が50℃以上である条件下において、塩基成分を加えて、乳化重合物のpHを8〜10に調整する、第二pH調整工程;を包含し、上記シリコーンオリゴマー(A)および加水分解性シラン化合物(B)の合計質量と、ラジカル重合性不飽和単量体(C)の質量の質量比が、((A)+(B))/(C)=5/5〜9.5/0.5である、アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、水性塗料組成物の調製において好適に用いることができる、アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法に関する。
住宅、ビルなどの建築物の外装材は、風雨に晒されかつ日光の直射を受ける。このような外装材には、品質および外観を維持することを目的として、外装用塗料組成物が一般に塗装される。このような塗料組成物は、風雨そして光に対する耐久性、すなわち、耐候性、耐変色性、耐水性、および外装材などの被塗装物に対する密着性などの性能が求められる。
近年においては、環境汚染などの環境負荷低減に対する要請、そして塗装作業上の安全面および衛生面などの点から、塗料組成物の水性化が図られている。このような外装用塗料組成物においては、アクリル樹脂エマルションが広く用いられている。また、外装用塗料組成物において、長期の耐候性、耐久性が必要とされる場合は、アクリルシリコーン樹脂エマルションが用いられることもある。アクリルシリコーン樹脂エマルションは、例えば、アクリル樹脂エマルションの調製において、シリコーン構造を有する変性剤を用いてシリコーン変性することによって調製することができる。
このような外装用塗料組成物に対して、近年、さらなる性能向上が求められている。特に、例えば野外などの過酷な環境においても外観を長期間維持することができるといった、優れた耐候性および耐久性が求められつつある。優れた耐候性および耐久性を達成する手段として、例えば、アクリルシリコーン樹脂エマルションを含む塗料組成物において、アクリルシリコーン樹脂エマルションに含まれるシリコーン構造の割合を高めることが挙げられる。シリコーン構造の割合を高めるためには、シリコーン構造を有する変性剤(例えば、アルコキシシラン、ポリアルコキシシロキサン、アルコキシシリル基含有単量体など)によるシリコーン変性量を増加させる必要がある。しかしながら、例えばポリアルコキシシロキサンは、水性媒体中での加水分解や、縮合反応の進行によってアルコールを副生する。副生したアルコールは、樹脂エマルションの安定性を低下させるため、樹脂エマルションの調製において一般的に行われる乳化重合法において、シリコーン変性量を増加させることは困難であった。
上記課題を解決することを目的として、従来から種々の検討が行われてきた。例えば、特開2000−53919号公報(特許文献1)には、ポリアルコキシポリシロキサン(A)、不飽和単量体(B)、乳化剤(C)を含む水媒体中において油滴の径が1,000nm以下になるように予め乳化させた水性乳化液を重合開始剤(D)の存在下に重合することを特徴とするシリコン含有水性コーティング剤組成物の製造法が記載される。この特許文献1には、1,000nm以下に油滴を乳化するにあたっては、高圧ホモジナイザー、超音波処理装置等の乳化装置を用いることが必要である、と記載されている。
特開2001−172340号公報(特許文献2)には、ポリアルコキシポリシロキサン(a1)と該シロキサンと反応可能な官能基を有する高分子化合物(a2)とを反応させて得られるポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)の重合物(B’)およびシリケートオリゴマー(C)を含有してなることを特徴とする樹脂組成物が記載されている。
特開平5−194911号公報(特許文献3)には、特定のマクロモノマーを5〜90重量%およびPDMS(ポリジメチルシリコーン)を95〜10重量%の割合で含むアクリル酸エステル系共重合エマルジョンを含有することを特徴とするトップコート剤が記載されている。
特開2005−336436号公報(特許文献4)には、ラジカル重合性単量体〔A〕、シリコーンオリゴマー〔B〕、重合開始剤〔E〕および乳化剤〔D〕からなるプレ乳化液に、加水分解性シラン〔C〕を混合した後、水性媒体中において重合することを特徴とする高耐久性エマルジョンの製造方法が記載されている。
特開2001−302920号公報(特許文献5)には、(A)オルガノシラン、該オルガノシランの加水分解物および該オルガノシランの縮合物から選ばれる少なくとも1種と(B)ラジカル重合性ビニルモノマーを含有する混合物を、乳化状態で、加水分解・縮合反応およびラジカル重合して得られる水系分散体が記載されている。
特開2002−226507号公報(特許文献6)には、(A)オルガノシラン、(B)ラジカル重合性モノマー、(C)乳化剤、(D)水および(E)加水分解触媒を混合してエマルジョン化するとともに、(A)成分の加水分解を進めたのち、エマルジョンの平均粒子径を0.5μm以下に微細化し、次いで、(F)ラジカル重合開始剤を加えて、ラジカル重合を行なうことを特徴とする水系分散体の製造方法を記載されている。
特開2000−53919号公報 特開2001−172340号公報 特開平5−194911号公報 特開2005−336436号公報 特開2001−302920号公報 特開2002−226507号公報
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、その目的とするところは、優れた耐候性および耐久性を付与することができる水性塗料組成物の調製において好適に用いることができる、アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法であって、下記工程;
水性媒体に塩基成分を加えて、水性媒体のpHを10以上に調整する、第一pH調整工程;
シリコーンオリゴマー(A)、加水分解性シラン化合物(B)およびラジカル重合性不飽和単量体(C)の混合物、乳化剤(D)および水性媒体を混合して、反応前乳化混合物を調製する、反応前乳化混合物調製工程;
得られた反応前乳化混合物および重合開始剤(E)を、上記第一pH調整工程で得られた水性媒体中で混合して、乳化重合する、乳化重合工程;および
上記乳化重合工程後、得られた乳化重合物の温度が50℃以上である条件下において、塩基成分を加えて、乳化重合物のpHを8〜10に調整する、第二pH調整工程;
を包含し、
上記シリコーンオリゴマー(A)および加水分解性シラン化合物(B)の合計質量と、ラジカル重合性不飽和単量体(C)の質量の質量比が、((A)+(B))/(C)=5/5〜9.5/0.5である、
アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法。
[2]
上記反応前乳化混合物調製工程で得られた反応前乳化混合物の平均粒子径(L)が200〜2,000nmであるのが好ましい。
[3]
上記製造方法によって得られたアクリルシリコーン樹脂エマルションの平均粒子径(L)が70〜200nmであるのが好ましい。
[4]
反応前乳化混合物の平均粒子径(L)および上記製造方法によって得られたアクリルシリコーン樹脂エマルションの平均粒子径(L)が、下記式
/L=0.1〜0.5
を満たすのが好ましい。
[5]
上記第二pH調整工程の後に、さらに、生成したアルコール化合物の少なくとも一部を除去する、アルコール除去工程を包含する態様が挙げられる。
[6]
上記第二pH調整工程において、上記乳化重合工程後、10分〜3時間の間に、塩基成分を加えるのが好ましい。
[7]
本発明はさらに、
コアシェル型アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法であって、下記工程;
上記製造方法によって得られたアクリルシリコーン樹脂エマルションに、第2反応前乳化混合物を滴下して、コアシェル型アクリルシリコーン樹脂エマルションを調製する工程;
を包含する、
コアシェル型アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法、も提供する。
本発明の製造方法によれば、シリコーン構造を一定量以上含むアクリルシリコーン樹脂エマルションであっても、簡便に調製することができる。さらに、本発明の方法によって得られるアクリルシリコーン樹脂エマルションは保存安定性に優れている。また、本発明の方法によって得られるアクリルシリコーン樹脂エマルションを用いて塗料組成物を調製することによって、耐候性および耐久性に優れた水性塗料組成物を提供することができる。
発明に至った経緯
本発明に至った経緯を説明する。上記特許文献1〜6に示されるように、従来から、アクリルシリコーン樹脂エマルションの調製などにおいて種々の検討が行われてきた。しかしながら、本発明者らが検討を行ったところ、これらの従来技術は、次のような課題があることが判明した。
特許文献1、2、3、5、6に記載されるエマルションの製造方法においては、乳化重合に先だって、微細な粒子径を有する反応前乳化混合物を調製する必要がある。微細な粒子径を有する反応前乳化混合物の調製においては、高圧ホモジナイザーを用いた微粒子化工程が必要とされるため製造設備面での負担が大きい。
また、特許文献2に記載される樹脂組成物の調製においては、ポリアルコキシポリシロキサン(a1)と、このポリシロキサン(a1)と反応可能な官能基を有する高分子化合物(a2)とを反応させて得られる、ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)が用いられている。しかし、このようなポリシロキサン(a1)と高分子化合物(a2)とを予め反応させる方法においては、シリコーン構造の割合を大きく高めることが困難である。
特許文献4に記載される高耐久性エマルジョンの製造方法においては、プレ乳化液中に重合開始剤〔E〕が含まれる。そのため、プレ乳化液の調製段階から混合温度などの調製条件を厳密に管理する必要があり、さらにプレ乳化液の調製段階から可使時間を考慮する必要があるため、調製に多大な手順が必要とされる。また、ラジカル重合性単量体〔A〕に対して、加水分解性シラン化合物、ポリアルコキシポリシロキサンなどを多量に加えた反応系での重縮合は、加水分解性シラン化合物およびポリアルコキシポリシロキサンのアルコキシ基から多量のアルコールが副生され、乳化混合物が破壊されるまたは破壊されやすい状態となる。そのため、このような状態の混合液を、水性媒体中へ導入し乳化重合する方法では、エマルション中に多くの凝集物が発生し易くなるという課題がある。
特許文献5に記載される水系分散体の調製方法においては、加水分解・縮合反応が氷冷または室温で行われる。そのため、反応が十分に進行せず、得られる分散体が経時変化を起こしてしまい、品質安定性の確保が難しい。
このように、従来技術においては、各方法に応じた種々の課題があった。このような課題に対して、本発明の方法においては、エマルションの調製工程において各成分を混合する条件などを特定することによって、シリコーン構造を一定量以上含むアクリルシリコーン樹脂エマルションであっても、特殊な製造設備などを必要とすることなく、調製することが可能となった。さらに、本発明の方法によって得られるアクリルシリコーン樹脂エマルションは保存安定性に優れている。また、本発明の方法によって得られるアクリルシリコーン樹脂エマルションはシリコーン構造を一定量以上含むため、このエマルションを用いて塗料組成物を調製することによって、耐候性および耐久性に優れた水性塗料組成物を提供することができる。以下、本発明の方法について順次詳細に説明する。
アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法
本発明の方法は、アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法であって、下記工程を包含する:
水性媒体に塩基成分を加えて、水性媒体のpHを10以上に調整する、第一pH調整工程;
シリコーンオリゴマー(A)、加水分解性シラン化合物(B)およびラジカル重合性不飽和単量体(C)の混合物、乳化剤(D)および水性媒体を混合して、反応前乳化混合物を調製する、反応前乳化混合物調製工程;
得られた反応前乳化混合物および重合開始剤(E)を、上記第一pH調整工程で得られた水性媒体中で混合して、乳化重合する、乳化重合工程;および
上記乳化重合工程後、得られた乳化重合物の温度が50℃以上である条件下において、塩基成分を加えて、乳化重合物のpHを8〜10に調整する、第二pH調整工程。
ここで、上記シリコーンオリゴマー(A)および加水分解性シラン化合物(B)の合計質量と、ラジカル重合性不飽和単量体(C)の質量の質量比が、((A)+(B))/(C)=5/5〜9.5/0.5であることを条件とする。
第一pH調整工程
第一pH調整工程は、後の乳化重合工程で用いる水性媒体に塩基成分を加えることによって、上記水性媒体のpHを10以上に調整する工程である。pHの調整に用いることができる塩基成分として、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどのアミン類;および、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物;などが挙げられる。塩基成分として、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミノエタノールなどを用いるのがより好ましい。また、これらの塩基成分は、水溶液の形態で用いてもよい。
第一pH調整工程において、塩基成分を加え、混合する方法は、当業者において通常用いられる手法で行うことができる。混合方法として、例えば、10〜45℃で1〜30分間撹拌する方法などが挙げられる。
反応前乳化混合物調製工程
反応前乳化混合物調製工程は、シリコーンオリゴマー(A)、加水分解性シラン化合物(B)およびラジカル重合性不飽和単量体(C)の混合物、乳化剤(D)および水性媒体を混合して、反応前乳化混合物を調製する工程である。なお、本発明の方法において、上記第一pH調整工程および反応前乳化混合物調製工程については、工程を行う順序は任意の順序を選択することができる。そのため、第一pH調整工程に次いで反応前乳化混合物調製工程を行ってもよく、また、第一pH調整工程の前に反応前乳化混合物調製工程を行ってもよい。
シリコーンオリゴマー(A)
本発明で用いられるシリコーンオリゴマー(A)は、下記式(a)で示される加水分解性シランの縮合物であれば特に限定されない。
(Rn −Si−(R4-n・・・(a)
上記式(a)中、各Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、ビニル基、フェニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基または炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基から選ばれ、
各Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、水酸基、エポキシ基、エチレンオキサイド基またはハロゲン原子から選ばれ、ただし、Rの少なくとも1つはアルコキシ基であることを条件とし、
nは0〜3の整数である。
nが2または3である場合において、各Rは同一であってもよく、それぞれ異なってもよい。また、nが0または1である場合において、各Rは同一であってもよく、それぞれ異なってもよい。
上記加水分解性シランの縮合物である、シリコーンオリゴマー(A)として、例えば、下記式(1)、(2)または(3)で示されるオリゴマーが挙げられる。
Figure 0006058843
Figure 0006058843
Figure 0006058843
上記式(1)〜(3)中、
各Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、ビニル基、フェニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基または炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基から選ばれ、
各Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、水酸基、エポキシ基、エチレンオキサイド基またはハロゲン原子から選ばれ、ただし、Rの少なくとも1つはアルコキシ基であることを条件とし、
mは1〜999の整数を表す。
上記各Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、フェニル基炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基または炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基から選ばれるのがより好ましく、
上記各Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、水酸基から選ばれ、ただし、Rの少なくとも1つはアルコキシ基であることを条件とする、のが好ましい。
上記mは、2〜50であるのが好ましく、2〜20であるのがより好ましい。mの値が上記好ましい範囲である場合は、水系溶媒中での分散性が向上するなどの利点がある。
上記シリコーンオリゴマー(A)は、直鎖状であってよく、また、分岐状であってもよい。
上記シリコーンオリゴマー(A)が有するアルコキシ基の量は2〜50%であるのが好ましく、2〜30%であるのがより好ましい。アルコキシ基の量が50%を超える場合は、アルコールが多量に副生し、重合安定性が損なわれるおそれがある。また、アルコキシ基の量が2%未満である場合は、シリコーン構造の架橋度が低下し、耐候性向上への寄与が低下するおそれがある。
上記シリコーンオリゴマー(A)は市販されているものを用いてもよい。市販品として、例えば、
KC−89、KR−500、X−40−9225、X−40−9246、X−40−9250などのメチルメトキシ基系オリゴマー、
KR−217などのフェニルメトキシ基系オリゴマー、
KR−9218、KR−213、KR−510、X−40−9227、X−40−9247、KR−401Nなどのメチル/フェニルメトキシ系オリゴマー(何れも、信越化学社製)、
MSE−100などのメチルメトキシ系オリゴマー(シリコーンワッカー社製) などが挙げられる。
これらのシリコーンオリゴマーは1種のみを用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。
上記シリコーンオリゴマー(A)は、上記式(a)で示される加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる調製物を用いてもよい。ただし、調製物を用いる場合は、縮合時に副生しうるアルコールは重合安定性を阻害するため、調製後に、アルコールの除去処理を行うのがより好ましい。
加水分解性シラン化合物(B)
本発明の方法においては、上記シリコーンオリゴマー(A)に加えて、加水分解性シラン化合物(B)を用いる。この加水分解性シラン化合物(B)は、シリコーン構造の架橋密度などを付与する成分として機能しうる成分である。
加水分解性シラン化合物(B)は、下記式(b)で表されるシラン化合物を少なくとも1種含むのが好ましい。
(R−Si−(R4−n (b)
上記式(b)中、各Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、ビニル基、フェニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基、または炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基から選ばれ、
各Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルコキシ基、または水酸基から選ばれ、
nは0〜3の整数である。
nが2または3である場合において、各Rは同一であってもよく、それぞれ異なってもよい。また、nが0または1である場合において、各Rは同一であってもよく、それぞれ異なってもよい。
上記式(b)において、Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、ビニル基、フェニル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基または炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基であるのが好ましく、それぞれ独立して、メチル基、フェニル基、ビニル基またはγ−(メタ)アクリロキシプロピル基であるのが特に好ましい。Rは、それぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基または水酸基であるのが好ましい。
上記式(b)においてn=1であるシラン化合物の具体例として、メチルトリメトシキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
上記式(b)においてn=2であるシラン化合物の具体例として、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。
上記式(b)においてn=0であるシラン化合物の具体例として、テトラエトキシシランなどが挙げられる。
加水分解性シラン化合物(B)として、上記シラン化合物の環状物である環状シランを用いてもよい。環状シランとして、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
上記加水分解性シラン化合物(B)は、1種のみを用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。例えば、n=1であるシラン化合物を主として用いることによって、架橋密度を高め、耐水性などを高めることができる。また、例えば、n=1であるシラン化合物と、n=2であるシラン化合物および/または上記環状シランとを組み合わせて用いることによって、架橋密度を調整し、得られる塗膜に可撓性を付与することができる。
上記加水分解性シラン化合物(B)は、上記Rの1つが、ビニル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基または炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基である、ラジカル重合性シラン化合物を含むのが好ましい。このようなラジカル重合性シラン化合物として、例えば、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルメトキシジメチルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シランなどが挙げられる。これらのラジカル重合性シラン化合物は1種のみを用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。上記化合物のうち、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種を用いるのが好ましい。
上記ラジカル重合性シラン化合物は、シリコーンオリゴマー(A)、加水分解性シラン化合物(B)およびラジカル重合性不飽和単量体(C)の総量100質量部に対して、好ましくは0.1〜3質量部、より好ましくは0.2〜2質量部で含まれる。上記ラジカル重合性シラン化合物を用いることによって、得られる塗膜の造膜性、耐ブロッキング性および耐水性を向上させることができる。
本発明の方法において、必要に応じて、上記加水分解性シラン化合物(B)に加えて、クロロシラン、例えばメチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、ビニルクロルシラン、γ−アクリロキシプロピルトリクロロシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリクロロシラン、γ−アクリロキシプロピルジクロロメチルシラン、γ−メタアクリロキシプロピルジクロロメチルシランなど、を用いてもよい。
ラジカル重合性不飽和単量体(C)
ラジカル重合性不飽和単量体(C)とは、分子中にビニル基などのラジカル重合性不飽和結合を少なくとも1つ有する単量体をいい、(メタ)アクリル酸およびこれらの誘導体が含まれる。ただし、本明細書において、上記ラジカル重合性シラン化合物は、ラジカル重合性不飽和単量体(C)ではなく、加水分解性シラン化合物(B)として分類するものとする。
上記ラジカル重合性不飽和単量体としては、特に限定されず、例えば、
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのエチレン系不飽和カルボン酸単量体;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどのエチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;
(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロオクチル、(メタ)アクリル酸シクロデシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシルなどの、エチレン系不飽和カルボン酸シクロアルキルエステル単量体;
マレイン酸エチル、マレイン酸ブチル、イタコン酸エチル、イタコン酸ブチルなどのエチレン系不飽和ジカルボン酸のモノエステル単量体;
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの反応物などのヒドロキシル基含有エチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ブチルアミノエチルなどのエチレン系不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル単量体;
アミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのエチレン系不飽和カルボン酸アミノアルキルアミド単量体;
アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メトキシブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのその他のアミド基含有エチレン系不飽和カルボン酸単量体;
アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどの不飽和脂肪酸グリシジルエステル単量体;
(メタ)アクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの飽和脂肪族カルボン酸ビニルエステル単量体;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系単量体;
などを挙げることができる。
これらのラジカル重合性不飽和単量体(C)は、1種のみを用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。なお、本明細書中(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸またはメタクリル酸を示す。
ラジカル重合性不飽和単量体(C)として、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルからなる群から選択される単量体を組み合わせて用いるのが好ましい。
ラジカル重合性不飽和単量体(C)は、エチレン系不飽和カルボン酸シクロアルキルエステル単量体を含むのがより好ましい。ラジカル重合性不飽和単量体(C)が、エチレン系不飽和カルボン酸シクロアルキルエステル単量体を含むことによって、優れた耐候性、耐変色性、耐加水分解性、耐クラック性、耐水性、光沢および光沢保持性を与えることができ、さらに、他の成分との反応により、優れた造膜性、耐ブロッキング性をも与えることができる。
本発明において、上記シリコーンオリゴマー(A)および加水分解性シラン化合物(B)の合計質量と、ラジカル重合性不飽和単量体(C)の質量の質量比は、((A)+(B))/(C)=5/5〜9.5/0.5である。本発明の製造方法においては、シリコーンオリゴマー(A)および加水分解性シラン化合物(B)の合計質量が上記範囲のように高く、シリコーン構造を比較的多く含むアクリルシリコーン樹脂エマルションを製造する場合であっても、簡便に製造することができる。さらに、本発明の製造方法によって得られるアクリルシリコーン樹脂エマルションは、保存安定性などに優れるという利点もある。
乳化剤(D)
本発明において、反応前乳化混合物は、上記成分(A)〜(C)に加えて、乳化剤(DD)および水性媒体を用いて調製される。乳化剤(D)としては、特に限定されず、通常用いられる乳化剤、例えば、分子中にビニル基などの重合性の不飽和結合を有しない非反応性乳化剤、および/または、分子中にビニル基などの重合性の不飽和結合を有する反応性乳化剤を用いることができる。
乳化剤(D)の具体例として、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエステルなど、および、市販品である、アクアロンHS−10などのアクアロンHSシリーズ(第一工業製薬社製);アクアロンRNシリーズ(第一工業製薬社製);エレミノールJS−2(三洋化成工業社製);ラテムルS−120、S−180A、PD−104などのラテムルシリーズ、およびエマルゲン109Pなどのエマルゲンシリーズ(花王社製);ニューコール706、707SNなどの、ニューコールシリーズ(日本乳化剤製);アントックス(Antox)MS−2N(2−ソジウムスルホエチルメタクリレート)などの、アントックスシリーズ(日本乳化剤社製);アデカリアソープNE−10(α−[1−[(アリルオキシ)メチル]−2−(ノニルフェノキシ)エチル]−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン)などの、アデカリアソープシリーズ(ADEKA社製);などを挙げることができる。
これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記乳化剤(D)の量は、上記シリコーンオリゴマー(A)、加水分解性シラン化合物(B)およびラジカル重合性不飽和単量体(C)の総量100質量部に対して、固形分量として、0.5〜10質量部であることが好ましい。乳化剤の量が0.5質量部未満である場合は、得られる反応前乳化混合物の安定性が低下するおそれがある。また、乳化剤の量が10質量部を超える場合は、得られる塗膜の耐水性が低下するおそれがある。
本明細書において、水性媒体とは、本質的に水からなる媒体である。この水性媒体は、場合によって、アルコールなどの水親和性有機溶媒を数質量%の範囲で含んでもよい。な、この反応前乳化混合物調製工程における水性媒体は、第一pH調整工程とは別途用意した水性媒体である。
反応前乳化混合物の調製において、シリコーンオリゴマー(A)、加水分解性シラン化合物(B)およびラジカル重合性不飽和単量体(C)の混合物に、乳化剤(D)および水性媒体を加えて混合して、反応前乳化混合物を調製してもよく、または、乳化剤(D)を含む水性媒体を調製しておき、この水性媒体と、シリコーンオリゴマー(A)、加水分解性シラン化合物(B)およびラジカル重合性不飽和単量体(C)の混合物とを混合してもよい。また、上記成分を混合する手段および混合条件は、特に限定されず、当業者において通常用いられる混合手段および混合条件を用いることができる。混合手段の具体例として、例えば、ホモミキサー、ホモディスパーなどの攪拌機を用いた混合手段が挙げられる。混合条件は、混合手段および製造スケールに応じて適宜選択することができる。混合条件の具体例として、例えば、上記各成分を加えて、10〜45℃で1〜120分間混合する条件などが挙げられる。
乳化重合工程
乳化重合工程は、上記反応前乳化混合物調製工程で得られた反応前乳化混合物および重合開始剤(E)を、上記第一pH調整工程で得られた水性媒体中で混合して、乳化重合する工程である。
本発明における乳化重合工程において、pHを10以上に調整した水性媒体中で、上記反応前乳化混合物を乳化重合することによって、乳化重合反応が生じると共に、上記成分が有する加水分解性基の加水分解が生じ、脱水・縮合反応も生じる。これにより、シリコーン構造を一定量以上含むアクリルシリコーン樹脂エマルションを調製する場合であっても、保存安定性に優れた樹脂エマルションを得ることができることとなる。理論に拘束されるものではないが、これは、乳化重合反応と併せて脱水・縮合反応が生じることによって、生成するアクリルシリコーン樹脂エマルションの分子量が適度な範囲で保たれ、アクリルシリコーン樹脂エマルションのアクリル部とシリコーン部が別々に偏在することを防止し、かつ、急激に分子量が増大することを防止していると推定する。これにより、樹脂エマルションの保存安定性が向上することとなると考えられる。
重合開始剤(E)
重合開始剤(E)は、熱または還元性物質などによりラジカルを生成して単量体を付加重合させるものであり、水溶性重合開始剤または油溶性重合開始剤を使用することができる。上記水溶性重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩系開始剤、または、過酸化水素などの無機系開始剤などを挙げることができる。上記油溶性重合開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス−シクロヘキサン−1−カルボニトリルなどのアゾビス化合物などを挙げることができる。これらは1種のみを用いてもよく、または2種またはそれ以上を併用してもよい。
本発明においては、上記乳化重合を水性媒体中で行うため、上記水溶性重合開始剤を用いるのが好ましい。より好ましい水溶性重合開始剤として、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどが挙げられる。
重合開始剤(E)は、上記シリコーンオリゴマー(A)、加水分解性シラン化合物(B)およびラジカル重合性不飽和単量体(C)の総量100質量部に対して0.02〜1質量部となる量で用いるのが好ましく、0.05〜0.5質量部となる量で用いるのがより好ましく、0.1〜0.3質量部となる量で用いるのがさらに好ましい。
上記重合開始剤(E)と併せて、亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリットなどの還元剤を併用してもよい。還元剤を併用することによって、乳化重合速度の調節することができ、また、乳化重合をより低温下において行うこともできる。
乳化重合工程は、例えば、反応前乳化混合物および重合開始剤(E)を、それぞれ、水性媒体中に滴下することによって行うことができる。反応前乳化混合物および重合開始剤(E)の滴下に要する時間は、反応スケールおよび反応容器などに依存して任意に選択することができ、例えば30分〜6時間の範囲で選択することができる。乳化重合工程は、例えば、50〜85℃の重合温度で行うことができる。重合温度は、60〜80℃であるのがより好ましい。乳化重合工程は、常圧条件下において行ってもよく、または単量体の蒸気圧などの物性に応じて高圧条件下において行ってもよい。重合温度が50度未満の場合は、反応が十分に進行しないおそれがある。また、重合温度が85℃を超える場合は、副生するアルコールの還流が起こるおそれがある。
第二pH調整工程
第二pH調整工程は、上記乳化重合工程後、得られた乳化重合物の温度が50℃以上である条件下において、塩基成分を加えて、乳化重合物のpHを8〜10に調整する工程である。乳化重合物のpHを8〜10に調整することによって、乳化重合物の有する加水分解性基の加水分解が促進され、脱水・縮合反応が促進される。重合反応物のpHが8未満の場合、乳化重合物の有する加水分解性基の加水分解が進行しにくくなるおそれがある。
塩基成分として、第一pH調整工程において挙げた塩基成分を用いることができる。塩基成分として、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミノエタノールなどを用いるのがより好ましい。またこれらの塩基成分は、水溶液の形態で用いてもよい。なお、第一pH調整工程において用いる塩基成分と、第二pH調整工程において用いる塩基成分とは、同一の種類のものであってもよく、異なる種類のものであってもよい。
塩基成分を加える温度は、得られた乳化重合物の温度が50℃以上であるのが好ましく、60〜85℃の範囲内であるのがより好ましく、70〜85℃の範囲内であるのがさらに好ましい。塩基成分を加える温度が50℃未満である場合は、乳化重合物が増粘し、ゲル化するおそれがある。
塩基成分を加える時間は、乳化重合工程後、10分〜3時間の間に加えるのが好ましい。乳化重合工程後、塩基成分を加えるまでの時間が10分未満の場合は、得られた乳化重合物がゲル化するおそれがある。また、上記時間が3時間を超える場合は生産性が低下するおそれがある。本発明においては、乳化重合工程が終了した後、冷却することなく、得られた乳化重合物の温度が50℃以上である条件下において、塩基成分を加える。また、本明細書における「乳化重合工程が終了した」とは、上記乳化重合工程における、反応前乳化混合物および重合開始剤(E)の滴下が完了した時点を意味する。
塩基成分を加えて、乳化重合物のpHを8〜10に調整した後、50℃以上に維持するのが好ましく、60〜85℃に維持するのがより好ましく、70〜85℃に維持するのがさらに好ましく、75〜85℃に維持するのが特に好ましい。温度を維持する時間は、維持する温度および反応スケールに応じて適宜選択することができ、例えば、0.5〜24時間、好ましくは1〜12時間、さらに好ましくは2〜8時間の範囲で選択することができる。塩基成分を加えた後、上記条件に維持することによって、脱水・縮合反応を良好に進行させることができ、保存安定性に優れたアクリルシリコーン樹脂エマルションを調製することができる。
塩基成分を加えて、乳化重合物のpHを8〜10に調整した後、必要に応じて、反応系解放または減圧などの手段により、アルコールの少なくとも一部を除去してもよい。除去されるアルコールとして、加水分解縮合反応によって副生したアルコールが挙げられる。副生したアルコールの少なくとも一部を取り除くことによって、保存安定性に優れたアクリルシリコーン樹脂エマルションを調製することができる。例えば減圧手段によってアルコールの少なくとも一部を取り除く場合は、減圧する前に、必要に応じて水性媒体を加えてもよい。
本発明の方法において、上記反応前乳化混合物調製工程で得られた反応前乳化混合物の平均粒子径(L)は、200〜2,000nmであるのが好ましい。上記平均粒子径(L)は、200〜1,000nmであるのがより好ましい。平均粒子径(L)が2,000nmを超える場合は、得られるアクリルシリコーン樹脂エマルションの平均粒子径(L)が200nmを超え、製造安定性および保存安定性が低下するおそれがある。また、200nm未満の場合は、得られる塗膜の耐水性が低下するおそれがある。
本明細書における平均粒子径は、動的光散乱法によって決定される平均粒子径であり、具体的には、電気泳動光散乱光度計ELSZシリーズ(大塚電子社製)などを使用して測定することができる。
本発明の製造方法によって得られるアクリルシリコーン樹脂エマルションの平均粒子径(L)は、70〜200nmであるのが好ましく、100〜180nmであるのがより好ましく、120〜160nmであるのがさらに好ましい。平均粒子径(L)が70nm未満の場合、得られる塗料の粘性制御が困難となり、塗装作業性が悪化するおそれがある。また、200nmを超える場合は、アクリルシリコーン樹脂エマルションの貯蔵安定性や、得られる塗膜の耐水性が低下するおそれがある。
本発明の製造方法においては、さらに、上記反応前乳化混合物の平均粒子径(L)およびアクリルシリコーン樹脂エマルションの平均粒子径(L)が、下記式
/L=0.1〜0.5
を満たすのが好ましい。
/Lの値に示されるように、本発明の製造方法においては、反応前乳化混合物の平均粒子径(L)と比較して、得られたアクリルシリコーン樹脂エマルションの平均粒子径(L)の方が小さくなるのが好ましく、そしてこれは本発明の特徴の1つである。そしてこのように、アクリルシリコーン樹脂エマルションの平均粒子径(L)の方が、反応前乳化混合物の平均粒子径(L)と比較して、上記範囲のように小さくなることによって、得られるアクリルシリコーン樹脂エマルションの保存安定性が向上することとなる。
本発明の製造方法によれば、シリコーン構造を一定量以上含むアクリルシリコーン樹脂エマルションであっても、高圧ホモジナイザーなどの、製造設備面での負担が大きい処理装置を必要とすることなく、より簡便に調製することができる。さらに、本発明の方法によって得られるアクリルシリコーン樹脂エマルションは保存安定性に優れており、例えば凝集物の発生などの不具合が生じ難いという利点がある。
本発明の方法によって得られるアクリルシリコーン樹脂エマルションを用いて塗料組成物を調製することによって、耐候性、耐汚染性、耐水性、耐クラック性などに優れた塗膜を形成する水性塗料組成物を提供することができる。水性塗料組成物の具体例として、例えば、住宅、ビルなどの建築物の外装材などに塗装される、外装用水性塗料組成物などが挙げられる。
コアシェル型アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法
上記製造方法によって得られたアクリルシリコーン樹脂エマルションを用いて、コアシェル型アクリルシリコーンエマルションを製造することができる。コアシェル型アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造は、下記工程;
上記製造方法によって得られたアクリルシリコーン樹脂エマルションに、第2反応前乳化混合物を滴下して、コアシェル型アクリルシリコーン樹脂エマルションを調製する工程;
を包含する。
上記第2反応前乳化混合物は、上記反応前乳化混合物と同様の組成、すなわち、シリコーンオリゴマー(A)、加水分解性シラン化合物(B)およびラジカル重合性不飽和単量体(C)の混合物、乳化剤(D)および水性媒体を含む、であってもよく、異なる組成であってもよい。第2反応前乳化混合物の好ましい例として、上記ラジカル重合性不飽和単量体(C)を少なくとも1種、そして乳化剤(D)および水性媒体を含む態様が挙げられる。第2反応前乳化混合物に好適に含まれるラジカル重合性不飽和単量体(C)として、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルからなる群から選択される単量体を1種またはそれ以上含む態様が挙げられる。第2反応前乳化混合物は、上記ラジカル重合性不飽和単量体(C)に加えて、上記シリコーンオリゴマー(A)、加水分解性シラン化合物(B)のうち少なくとも1種をさらに含んでもよい。
第2反応前乳化混合物は、上記反応前乳化混合物と同様に調製することができる。好ましくは、上記ラジカル重合性不飽和単量体(C)、および必要に応じたシリコーンオリゴマー(A)および加水分解性シラン化合物(B)のうち少なくとも1種との混合物;乳化剤(D)および水性媒体を混合することによって、第2反応前乳化混合物を調製する態様が挙げられる。
上記第2反応前乳化混合物によって調製される層は、コア層であってよく、またシェル層であってもよい。上記第2反応前乳化混合物の量は、上記方法によって製造されるアクリルシリコーン樹脂エマルションの樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは10〜900質量部、より好ましくは40〜200質量部となる範囲で用いることができる。
第2反応前乳化混合物は、例えば上記と同様の条件で、アクリルシリコーン樹脂エマルションに第2反応前乳化混合物を滴下して乳化重合することによって、重合することができる。乳化重合条件は、上記乳化重合工程における各条件と同様であってよい。例えば、上記重合開始剤(E)などを、上記量範囲で用いてもよい。
こうして得られるコアシェル型アクリルシリコーン樹脂エマルションは、平均粒子径が120〜200nmであるのが好ましい。また、コア層およびシェル層の質量比は、例えば、コア層/シェル層=1/9〜9/1の範囲であってよく、さらには3/7〜7/3の範囲であってよい。
水性塗料組成物
上記方法によって得られたアクリルシリコーン樹脂エマルションおよび上記方法によって得られたコアシェル型アクリルシリコーン樹脂エマルションからなる群から選択される少なくとも1種は、塗料分野において通常用いられる顔料などと混合することによって、水性塗料組成物を調製することができる。上記顔料は特に限定されるものではなく、例えば、体質顔料、無機着色顔料、有機着色顔料などが挙げられる。顔料は、塗料組成物の樹脂固形分に対する顔料質量濃度(PWC)が、5〜60質量%となる範囲内で用いるのが好ましい。
上記水性塗料組成物の調製において、通常用いられる添加剤、例えば、粘性調整剤、充填材、分散剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、凍結防止剤、防藻剤、消泡剤、造膜助剤、防腐剤、防かび剤などと混合してもよい。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
実施例1
シリコーンオリゴマー(A)として、メチルフェニルメトキシシリコーンオリゴマーである、KR−510(信越化学社製)22部およびKR−9218(信越化学社製)10部、加水分解性シラン化合物(B)として、ジメチルジメトキシシラン24.5部、メチルトリメトキシシラン23部、フェニルトリメトキシシラン9.4部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.1部、ラジカル重合性不飽和単量体(C)として、メタクリル酸メチル3部、メタクリル酸シクロヘキシル2部、アクリル酸ブチル4.8部およびメタクリル酸0.2部;を撹拌混合後、乳化剤(D)としてスルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩(ラテムルS−180A、花王社製)25部、水55部を添加し、ホモミキサーを用いて、室温で15分間撹拌し、反応前乳化混合物180部を得た(反応前乳化混合物調製工程)。得られた反応前乳化混合物の平均粒子径は、625nmであった。
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取りつけた反応容器に、水35部を入れ、表中に記載された量の25%アンモニア水を加えて、pHを11.0に調整した(第一pH調整工程)。
第一pH調整工程で得られた、pH調整した水を含む反応容器の温度を80℃に上げてから、上記反応前乳化混合物180部と、過硫酸アンモニウムの1.5%水溶液11部を、別々の滴下層から同時に2時間かけて滴下した。滴下が終了してから反応容器中の温度を80℃で1時間維持した。
次に、25%アンモニア水を加え、反応場のpHを9.75に調整した後、84℃まで昇温し、5時間かけて縮合反応を進行させた。
さらに、得られたエマルション水溶液を40℃まで冷却し、水14部を添加した後、減圧条件下において、副生したメタノールを水とともに留去し、アクリルシリコーン樹脂エマルション184.1部を得た。得られたエマルションは、固形分39.3%、平均粒子径150nmであった。
上記反応前乳化混合物およびアクリルシリコーン樹脂エマルションの平均粒子径は、電気泳動光散乱光度計ELSZ(大塚電子社製)を用いて、水分散体を信号レベルが適正となるようイオン交換水で希釈して測定した。
実施例2〜4 アクリルシリコーン樹脂エマルション(2)〜(4)の調製
反応前乳化混合物の調製に用いる原料種および/または量を、下記表に記載のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、アクリルシリコーン樹脂エマルションを調製した。反応前乳化混合物およびアクリルシリコーン樹脂エマルションの平均粒子径についても、実施例1と同様にして測定した。
実施例5 アクリルシリコーン樹脂エマルション(5)の調製
反応前乳化混合物の調製に用いる原料種および/または量を、下記表に記載のものに変更し、そして反応前乳化混合物および過硫酸アンモニウムの滴下が終了してから反応容器中の温度を80℃で1時間保った後に、25%アンモニア水を加えたこと以外は、実施例1と同様にして、アクリルシリコーン樹脂エマルションを調製した。反応前乳化混合物およびアクリルシリコーン樹脂エマルションの平均粒子径についても、実施例1と同様にして測定した。
実施例6 アクリルシリコーン樹脂エマルション(6)の調製
シリコーンオリゴマー(A)として、メチルフェニルメトキシシリコーンオリゴマー(KR−510、信越化学社製)13部、メチルフェニルメトキシシリコーンオリゴマー(KR−9218、信越化学社製)7部;加水分解性シラン化合物(B)として、ジメチルジメトキシシラン15部、メチルトリメトキシシラン15部、フェニルトリメトキシシラン9.5部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.5部;ラジカル重合性不飽和単量体(C)として、メタクリル酸メチル16部、メタクリル酸シクロヘキシル2部、アクリル酸ブチル21部、メタクリル酸1部;を撹拌混合後、乳化剤(D)としてニューコール−707SN(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルナトリウム塩の30%水溶液、日本乳化剤社製)13.3部、水55部を添加し、ホモミキサーを用いて、室温で15分間撹拌し、反応前乳化混合物168.3部を得た。得られた反応前乳化混合物の平均粒子径は、850nmであった(反応前乳化混合物調製工程)。
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を取りつけた反応容器に、水35部を入れ、25%アンモニア水でpHを10.5に調整した(第一pH調整工程)。
第一pH調整工程で得られた、pH調整した水を含む反応容器の温度を50℃に上げてから、上記反応前乳化混合物180部と、過硫酸アンモニウムの1.5%水溶液11部を、別々の滴下ロートから同時に2時間かけて滴下した。滴下が終了してから反応容器中の温度を50℃に10分間維持した。
次に、25%アンモニア水を加え、反応場のpHを9.8に調整した後、84℃まで昇温し、5時間かけて縮合反応を実施した。
次に、得られたエマルション水溶液を40℃まで冷却し、水14部を添加後、減圧条件下において、副生したメタノールを水とともに留去し、アクリルシリコーン樹脂エマルション180部を得た。得られたエマルションは、固形分40.3%、平均粒子径120nmであった。
比較例1
第一pH調整工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、アクリルシリコーン樹脂エマルションを調製した。反応前乳化混合物およびアクリルシリコーン樹脂エマルションの平均粒子径についても、実施例1と同様にして測定した。得られたエマルションは、固形分29.4% 平均粒子径250nmであった。
比較例2
乳化重合工程後に40℃までの冷却工程を加えたこと以外は実施例3と同様にして、アクリルシリコーン樹脂エマルションを調製しようとしたが、40℃まで冷却したところ反応液にゲル化物を生じたため、第二pH調整工程を実施せず、製造を中止した。
比較例3
25%アンモニア水を加えず、第一および第二pH調製工程を行わなかったこと以外は、実施例3と同様にして、アクリルシリコーン樹脂エマルションを調製した。反応前乳化混合物およびアクリルシリコーン樹脂エマルションの平均粒子径について、実施例1と同様にして測定した。
各実施例および比較例で得られたアクリルシリコーン樹脂エマルションについて、下記評価を行った。評価結果は下記表に示す。
アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造安定性評価(製造後の200メッシュ濾過における残渣量の測定)
上記実施例および比較例で得られたアクリルシリコーン樹脂エマルションを200メッシュのフィルターで濾過し、その濾過残渣量を測定した。
得られたアクリルシリコーン樹脂エマルションの貯蔵安定性評価(室温で3ヶ月間または40℃で1ヶ月間静置した後における200メッシュ濾過における残渣量の測定)
上記濾過後、室温で3ヶ月間または40℃で1ヶ月間静置したアクリルシリコーン樹脂エマルションを、200メッシュのフィルターで濾過し、その濾過残渣量と平均粒子径を測定した。
この試験において、凝集物の生成に基づく新たな残渣発生が無く、かつ、静置後において平均粒子径に変化の無いものを、合格品とした。
実施例1〜6および比較例1、3で得られたアクリルシリコーン樹脂エマルションの、室温または40℃での貯蔵安定性の評価結果を、下記表に示す。
Figure 0006058843

*1:pH調整を行っていない。この時点のpHは6.8であった。
*2:pH調整を行っていない。この時点のpHは6.8であった。
*3:pH調整を行っていない。この時点のpHは3.6であった。
上記表中の各記号は以下を意味する。
KR−510:メチルフェニルメトキシシリコーンオリゴマー、信越化学社製
KR−9218:メチルフェニルメトキシシリコーンオリゴマー、信越化学社製
ラテムルS−180A:スルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩の20%水溶液、花王社製
ニューコール−707SN:ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルナトリウム塩の30%水溶液、日本乳化剤社製
実施例により調製したアクリルシリコーン樹脂エマルションは、いずれも、保存安定性に優れていた。
比較例1は、第一pH調整工程を行わなかった例である。この例では、製造後の200メッシュ濾過における残渣量が、実施例と比較して非常に多かった。さらに、得られたアクリルシリコーン樹脂エマルションの保存安定性が劣ることが確認された。これは、反応前乳化混合物中に含まれるシリコーンオリゴマー(A)および加水分解性シラン化合物(B)の合計質量が多いため、第二pH調整工程後に縮合反応が部分的かつ不均一に進み、アクリルシリコーン樹脂エマルションの分子量が幅広くなり、得られたアクリルシリコーン樹脂エマルションの保存安定性が劣ることとなったと考えられる。
比較例2は、乳化重合工程後の乳化重合物の温度が50℃未満となった後に、塩基成分を加えて、乳化重合物のpHを調整しようとした例である。この場合は、乳化重合工程後の乳化重合物の温度が40℃となった時点で、反応系の一部がゲル化してしまい、樹脂エマルションを調製することができなかった。
比較例3は、25%アンモニア水を加えず、第一および第二pH調製工程を行わなかった例である。この例では、製造後の200メッシュ濾過における残渣量が、実施例と比較して非常に多かった。さらに、アクリルシリコーン樹脂エマルションの調製後、24時間以内に、ゲル化が生じてしまい、保存安定性が劣ることが確認された。
実施例7 コアシェル型アクリルシリコーン樹脂エマルションの調製
実施例3で得られたアクリルシリコーン樹脂エマルションを用いて、コアシェル型アクリルシリコーン樹脂エマルションを、以下の手順で調製した。
メタクリル酸メチル25.4部、アクリル酸ブチル0.6部、メタクリル酸ブチル34.3部、アクリル酸エチルヘキシル6.8部および、メタクリル酸1部を撹拌混合後、乳化剤として、スルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩(ラテムルS−180A、花王製)5.0部と水26.7部を添加し、ホモミキサーを用いて、室温で15分撹拌し、第2反応前乳化混合物を得た。
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を取り付けた反応容器に、実施例1で得られたアクリルシリコーン樹脂エマルション185部と水65.3部を入れ、温度80℃に上げてから、上記第2反応前乳化混合物99.8部と、過硫酸アンモニウムの1.5%水溶液13部を別々の滴下ロートから、同時に2時間かけて滴下した。滴下が終了してから反応容器中の温度を80℃で1時間維持した後、30℃まで冷却し、コアシェル型アクリルシリコーン樹脂エマルション363.1部を得た。得られたエマルションは、固形分39.3%、平均粒子径175nmであった。
本発明の製造方法によれば、シリコーン構造を一定量以上含むアクリルシリコーン樹脂エマルションであっても、より簡便な手法により調製することができる。本発明の製造方法によって得られるアクリルシリコーン樹脂エマルションは、シリコーン構造を一定量以上含むため、例えば、長期の耐候性、耐久性が必要とされる、外装用水性塗料組成物の調製において好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法であって、下記工程;
    水性媒体に塩基成分を加えて、水性媒体のpHを10以上に調整する、第一pH調整工程;
    シリコーンオリゴマー(A)、加水分解性シラン化合物(B)およびラジカル重合性不飽和単量体(C)の混合物、乳化剤(D)および水性媒体を混合して、反応前乳化混合物を調製する、反応前乳化混合物調製工程;
    得られた反応前乳化混合物および重合開始剤(E)を、前記第一pH調整工程で得られた水性媒体中で混合して、乳化重合する、乳化重合工程;および
    前記乳化重合工程後、得られた乳化重合物の温度が50℃以上である条件下において、塩基成分を加えて、乳化重合物のpHを8〜10に調整する、第二pH調整工程;
    を包含し、
    前記シリコーンオリゴマー(A)は、下記式(a)
    (R n −Si−(R 4-n ・・・(a)
    [前記式(a)中、各R は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、ビニル基、フェニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基または炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基から選ばれ、
    各R は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、水酸基、エポキシ基、エチレンオキサイド基またはハロゲン原子から選ばれ、ただし、R の少なくとも1つはアルコキシ基であることを条件とし、
    nは0〜3の整数である。]
    で示される加水分解性シランの縮合物であり、
    前記シリコーンオリゴマー(A)および加水分解性シラン化合物(B)の合計質量と、ラジカル重合性不飽和単量体(C)の質量の質量比が、((A)+(B))/(C)=5/5〜9.5/0.5である、
    アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法。
  2. 前記反応前乳化混合物調製工程で得られた反応前乳化混合物の平均粒子径(L)が200〜2,000nmである、請求項1記載のアクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法。
  3. 前記製造方法によって得られたアクリルシリコーン樹脂エマルションの平均粒子径(L)が70〜200nmである、請求項1または2記載のアクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法。
  4. 反応前乳化混合物の平均粒子径(L)および前記製造方法によって得られたアクリルシリコーン樹脂エマルションの平均粒子径(L)が、下記式
    /L=0.1〜0.5
    を満たす、
    請求項3記載のアクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法。
  5. 前記第二pH調整工程の後に、さらに、生成したアルコール化合物の少なくとも一部を除去する、アルコール除去工程を包含する、請求項1〜4いずれかに記載のアクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法。
  6. 前記第二pH調整工程において、前記乳化重合工程後、10分〜3時間の間に、塩基成分を加える、請求項1〜5いずれかに記載のアクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法。
  7. コアシェル型アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法であって、下記工程;
    請求項1〜6いずれかに記載の製造方法によって得られたアクリルシリコーン樹脂エマルションに、第2反応前乳化混合物を滴下して、コアシェル型アクリルシリコーン樹脂エマルションを調製する工程;
    を包含する、
    コアシェル型アクリルシリコーン樹脂エマルションの製造方法。
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