JP6303580B2 - 熱処理用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱処理用鋼板およびその製造方法に関する。本発明は、特に自動車のボデー構造部品、足回り部品等を始めとする機械構造部品等の素材に好適な熱処理用鋼板およびその製造方法に関する。
近年、自動車の軽量化のため、鋼材の高強度化を図り、使用重量を減ずる努力が進められている。自動車に広く使用される薄鋼板においては、鋼板強度の増加に伴って、プレス成形性が低下し、複雑な形状を製造することが困難になってきている。具体的には、延性が低下して加工度が高い部位で破断が生じる、スプリングバックや壁反りが大きくなって寸法精度が劣化するという問題が発生する。したがって、高強度、特に780MPa級以上の鋼板を用いて、プレス成形で部品を製造することは容易ではない。プレス成形ではなくロール成形によれば、高強度の鋼板の加工が可能であるが、長手方向に一様な断面を有する部品にしか適用できない。
しかしながら、特許文献1により開示されるように、加熱した鋼板をプレス成形する熱間プレスと呼ばれる方法によれば、鋼板が高温で軟質、高延性になっているため、複雑な形状を寸法精度よく成形することが可能である。さらに、鋼板をオーステナイト域に加熱しておき、金型内で急冷(焼入れ)することにより、マルテンサイト変態による鋼板の高強度化が同時に達成できる。
また、特許文献2には、室温で予め所定の形状に成形後、オーステナイト域に加熱し、金型内で急冷することにより鋼板の高強度化と成形性とを同時に達成する予プレスクエンチ法が開示されている。このような熱間プレス法や予プレスクエンチ法は、部材の高強度化と成形性を同時に確保できる優れた成形方法である。
ところで、これらの工法は、超高強度の部材を製造する方法として有望である一方、通常は大気中で鋼板を800〜1000℃といった高温に加熱する工程を有するため、表面に酸化スケールが生成し、プレス時に脱落して金型に付着して生産性が低下したり、プレス後の製品にスケールが残存して外観が不良となったりするという問題がある。このようなスケールが残存すると、次工程で塗装する場合には、鋼板に対する塗膜の密着性が劣り、耐食性の低下を招く。例えば、通常の熱間プレス前の加熱では、スケール生成を抑制するため、非酸化性雰囲気(例えば空燃比0.9のガス炉)にて加熱が施されることが多いが、それでも通常の鋼板では、スケール生成量が多く、熱間プレス時にそのようなスケールは剥離し易く、金型を汚染することが問題となっている。
英国特許第1490535号明細書 特開平10−96031号公報
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、熱処理後の鋼板部材において優れたスケール密着性を備える熱処理用鋼板を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、鋼板の表面近傍の成分偏析を適正化するとともに鋼組織を適正化することによって、熱処理後の鋼板部材において優れたスケール密着性を備える熱処理用鋼板を得ることができるという新たな知見を得た。この知見に基づき完成された本発明の要旨は次のとおりである。
(1)質量%で、C:0.07%以上0.50%以下、Si:0.005%以上0.35%以下、Mn:0.3%以上1.50%以下、P:0.0002%以上0.2%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.0002%以上0.05%以下、Ti:0.005%以上0.30%以下、Cr:0.25%以上1.0%以下、B:0.0003%以上0.0200%以下、Cu:0.03%以上0.1%以下およびN:0.01%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、
CuおよびCrの表面濃化状況が下記(1)式を満足し、
表面の算術平均粗さ(Ra)が0.5μm以上2.0μm以下であり、
表面のNi付着量が11mg/m以上であること
を特徴とする熱処理用鋼板。
[Cu+Cr]s≧1.1×[Cu+Cr]b ・・・・・(1)
ここで、式中の[Cu+Cr]sは鋼板表面から5μm深さ位置までの表層部におけるCuおよびCrの合計最大濃化量(質量%)を示し、式中の[Cu+Cr]bはバルク中のCuおよびCrの合計濃度(質量%)を示し、Cuを含有しない場合には(1)式中のCu濃度は0%とする。
)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Ni:0.5%以下およびW:0.5%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)項記載の熱処理用鋼板。
)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.5以下、Mg:0.5以下、Bi:0.5以下およびREM:0.5以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)項または(2)項に記載の熱処理用鋼板。
)下記工程(A)〜(F)を有する(1)項から()項までのいずれかに記載の熱処理用鋼板の製造方法:
(A)スラブに熱間圧延を施して500℃以上の温度で巻取ることにより熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記工程(A)により得られた鋼板に下記(2)式を満足する条件で酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
(C)前記工程(B)により得られた鋼板に下記(3)式を満足する条件で研磨処理を施す研磨工程;
(D)前記工程(C)により得られた鋼板に90%以下の圧下率で冷間圧延を施す冷間圧延工程;
(E)前記工程(D)により得られた鋼板に700℃以上900℃以下の温度で焼鈍を施す焼鈍工程;および
(F)前記工程(E)により得られた鋼板の表面に11mg/m以上のNiを付着させるNiめっきを施すNiめっき工程。
30000≦酸濃度(質量%)×酸温度(℃)×酸浸漬時間(秒)≦150000 ・・・・・(2)
♯36≦研磨材粒度 JIS R 6001(1973)≦♯320 ・・・・・(3)
本発明に係る鋼板は、スケール密着性に優れているので、熱処理用鋼板、特に熱間プレス成形品の成形材料として好適である。その中で自動車や各種の産業機械に用いられる構造部材の素材、特に自動車のメンバーや足廻り部品に代表される構造部材の素材として最適である。また安価に製造できるので産業上格段の効果を奏する。
以下に本発明についてより詳しく説明する。以下の説明において、鋼板、めっき層、めっき浴その他の化学組成を規定する「%」は「質量%」である。
1.化学組成
本発明の熱処理用鋼板の限定理由について説明する。以下の説明において化学組成を示す「%」は「質量%」を意味する。
(C:0.07%以上0.50%以下)
Cは、熱処理後の鋼板の強度確保のために必要な元素である。C含有量が0.07%未満では熱処理後において980MPa以上の引張強度を確保することが困難となる。したがって、C含有量は0.07%以上とする。熱処理後において1480MPa以上の引張強度を確保するにはC含有量を0.18%以上とすることが好ましく、熱処理後において1780MPa以上の引張強度を確保するにはC含有量を0.28%以上とすることが好ましい。一方、C含有量が0.50%超では溶接性の劣化が著しくなる。したがって、C含有量は0.50%以下とする。
(Si:0.005%以上2.0%以下)
Siは、焼き入れ性を高める作用を有する。Si含有量が0.005%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Si含有量は0.005%以上とする。一方、Si含有量が2.0%超では、上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。したがって、Siの含有量は2.0%以下とする。
(Mn:0.3%以上4.0%以下)
Mnは、焼き入れ性を高める作用を有する。Mn含有量が0.3%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Mn含有量は0.3%以上とする。好ましくは0.5%以上である。一方、Mn含有量が4.0%超では、上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。したがって、Mn含有量は4.0%以下とする。好ましくは3.0%以下である。
(P:0.0002%以上0.2%以下)
Pは、焼き入れ性を高める作用を有する。P含有量が0.0002%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、P含有量は0.0002%以上とする。好ましくは0.004%以上である。一方、P含有量が0.2%超では、結晶粒界へのP偏析に起因する靭性の劣化が著しくなる。したがって、P含有量は0.2%以下とする。好ましくは0.05%以下である。
(S:0.01%以下)
Sは、不純物として含有され、鋼中に硫化物を形成して靭性を劣化させる作用を有する。S含有量が0.01%超では靭性の低下が著しくなる。したがって、S含有量は0.01%以下とする。好ましくは0.008%以下である。S含有量は低ければ低いほど好ましいので、S含有量の下限は規定する必要はないが、製鋼コストの観点からは0.0002%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.0004%以上である。
(sol.Al:0.0002%以上2.0%以下)
Alは、鋼を脱酸して鋼板を健全化する作用を有する。sol.Al含有量が0.0002%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、sol.Al含有量は0.0002%以上とする。好ましくは0.0004%以上である。一方、sol.Al含有量が2.0%超では、粗大なアルミナ系介在物が増加して、靭性の劣化が著しくなる。したがって、sol.Al含有量は2.0%以下とする。好ましくは1.5%以下である。
(Cu:0.1%以下)
Cuは、焼き入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度を安定して確保するのに有効な元素である。また、高温での熱処理時にスケール生成を抑制するのに有効な元素である。このため、Cuは必要に応じて含有してもよい。しかし、Cu含有量が0.1%超では、上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。したがって、Cuを含有する場合には、Cu含有量は0.1%以下とする。一方、上記作用による効果を確実に得るためにはCu含有量は0.005%以上とすることが望ましい。
(Ti:0.005%以上0.30%以下)
Tiは、鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度を安定して確保するのに有効な元素である。Ti含有量が0.005%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Ti含有量は0.005%以上とする。一方、Ti含有量が0.30%超では、上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。したがって、Ti含有量は0.30%以下とする。
(Cr:0.21%以上1.0%以下)
Crは、鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度を安定して確保するのに有効な元素である。また、高温での熱処理時にスケール生成を抑制するのに有効な元素である。Cr含有量が0.21%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Cr含有量は0.21%以上とする。一方、Cr含有量が1.0%超では、上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。したがって、Crの含有量は1.0%以下とする。
(B:0.0003%以上0.0200%以下)
Bは、鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度を安定して確保するのに有効な元素である。B含有量が0.0003%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、B含有量は0.0003%以上とする。好ましくは0.0010%以上である。一方、B含有量が0.0200%超では、上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。したがって、Bの含有量は0.0200%以下とする。
(N:0.01%以下)
Nは、不純物として含有され、鋼中に窒化物を形成して靭性を劣化させる作用を有する。N含有量が0.01%超では靭性の低下が著しくなる。したがって、N含有量は0.01%以下とする。好ましくは0.008%以下である。N含有量は低ければ低いほど好ましいので、N含有量の下限は規定する必要はないが、製鋼コストの観点からは0.0002%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.0004%以上である。
(Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Ni:0.5%以下およびW:0.5%以下からなる群から選択された1種または2種以上)
Nb、V、Mo、NiおよびWは、いずれも、鋼の焼入性を高める作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、それぞれ上記上限値を超えて含有させても、上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。したがって、Nb、V、Mo、NiおよびWの含有量はそれぞれ上記のとおりとする。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Nb:0.005%以上、V:0.005%以上、Mo:0.005%以上、Ni:0.005%以上およびW:0.005%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
(Ca:0.5以下、Mg:0.5以下、Bi:0.5以下およびREM:0.5以下からなる群から選択された1種または2種以上)
Ca、Mg、BiおよびREMは、いずれも、鋼中の介在物の形態を微細化し、介在物による熱間プレス時の割れを防止する作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、しかしながら、それぞれ上記上限値を超えて含有させても、上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。したがって、Ca、Mg、BiおよびREMの含有量は、それぞれ上記のとおりとする。上記作用による効果をより確実に得るには、Ca:0.0005%以上、Mg:0.0005%以上、Bi:0.0005%以上およびREM:0.0005%以上のいずかを満足させることが好ましい。
2.CuおよびCrの表面濃化状況
CuおよびCrの表面濃化状況は下記(1)式を満足するものとする。
[Cu+Cr]s≧1.1×[Cu+Cr]b ・・・・・(1)
ここで、式中の[Cu+Cr]sは鋼板表面から5μm深さ位置までの表層部におけるCuおよびCrの合計最大濃化量(質量%)を示し、式中の[Cu+Cr]bはバルク中のCuおよびCrの合計濃度(質量%)を示し、具体的には実施例において後述する方法により測定される。なお、Cuを含有しない場合には(1)式中のCu濃度は0%とする。
下記(1)式を満足するCuおよびCrの表面濃化状況を実現することにより、熱処理の高温状態における酸化を抑制することができるので、熱処理後の鋼板部材における酸化スケールの厚みを薄くすることができる。その結果、スケール剥離が抑制され、スケール密着性が向上する。
3.表面粗さ
表面粗さRaは0.5μm以上2.0μm以下とする。表面粗さRaが0.5μm未満では、熱間プレス時に、鋼板と金型との摩擦が大きくなり、熱間プレス成形部材に表面疵およびスケール剥離が発生する場合がある。したがって、表面粗さRaは0.5μm以上とする。一方、表面粗さRaが2.0μm超であると、鋼板と金型との接触ムラが発生し、熱間プレス成形部材の表面においてスケール形状のバラツキを生じ易くなり、スケール剥離が発生し易くなる。したがって、鋼板の表面粗さRaは2.0μm以下とする。
4.Ni付着量
鋼板表面のNi付着量は11mg/m以上とする。鋼鈑表面にNiを付着させることにより、熱処理の高温状態における酸化を抑制することができるので、熱処理後の鋼板部材において酸化スケールの厚みを薄くすることができる。その結果、スケール剥離が抑制され、スケール密着性が一層向上する。Ni付着量が11mg/m未満では、上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Ni付着量は11mg/m以上とする。Ni付着量の上限は特に規定する必要はないが、Niは高価な金属であるので、コストの観点からはNi付着量を100mg/m以下とすることが好ましい。鋼板表面へのNiの付着は、電解めっきや無電解めっき等のように公知の方法によればよい。
5.製造方法
次に、本発明に係る熱処理用鋼板の好ましい製造方法について説明する。
(A)熱間圧延工程
上述の化学組成を有するスラブに対する熱間圧延工程における巻取温度は500℃以上とする。
巻取温度が500℃未満では鋼板が硬質化し、後工程において冷間圧延を施すことが困難になる場合がある。したがって、巻取温度は500℃以上とする。巻取温度の上限は特に限定しないが、巻取温度が750℃超では表層脱炭が発生し、熱間プレス後の硬度が低下する場合がある。したがって、巻取温度は750℃以下とすることが好ましい。
(B)酸洗工程
上記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板に下記式(2)を満足する条件で酸洗処理を施して酸洗鋼板とする。
30000≦酸濃度(質量%)×酸温度(℃)×酸浸漬時間(秒)≦150000 ・・・・・(2)
酸濃度(質量%)×酸温度(℃)×酸浸漬時間(秒)の値が30000未満では、熱延鋼板表面のスケールが除去されずに残存する場合がある。一方、酸濃度(質量%)×酸温度(℃)×酸浸漬時間(秒)の値が1500000超では、酸洗過多となり、冷間圧延後の鋼板の表面粗さRaが2.0μm超となる場合がある。したがって、上記式(2)を満足する条件で酸洗処理を施すものとする。なお、酸の種類は特に限定されるものでなく、塩酸や硫酸が例示される。
(C)研磨工程
上記酸洗工程により得られた酸洗鋼板に下記式(3)を満足する条件の研削ブラシを用い、研磨処理を施す。
♯36≦研磨材粒度 JIS R 6001(1973)≦♯320 ・・・・・(3)
研磨ブラシの研磨粒度が♯36未満であると冷間圧延および焼鈍後の表面粗さが2.0μm超となる場合がある。また、研磨粒度が♯320超であると、冷間圧延および焼鈍後の表面粗さが0.5μm未満となる場合がある。したがって、上記式(3)を満足する条件で研磨処理を施すものとする。
(D)冷間圧延工程
上記研磨工程により得られた鋼板には90%以下の圧下率の冷間圧延を施す。
冷間圧延の圧下率が90%超では、焼鈍後の表面粗さが0.5μm未満となる場合がある。したがって、冷間圧延の圧下率は90%以下とする。冷間圧延の圧下率の下限は特に規定しないが、通常は40%以上である。
(E)焼鈍工程
上記冷間圧延工程により得られた鋼板には700℃以上900℃以下の温度で焼鈍を施す。
焼鈍温度が700℃未満では、鋼板表面から5μm深さ位置までの表層部におけるCuおよびCrの合計最大濃化量(質量%)がバルク中のCuおよびCrの合計濃度(質量%)の1.1倍以上にならない場合がある。したがって、焼鈍温度は700℃以上とする。一方、焼鈍温度が900℃超では、製造コストや生産性の面で不利となる。したがって、焼鈍温度は900℃以下とする。好ましくは850℃以下である。
(F)Niめっき工程
上記焼鈍工程により得られた鋼板には、11mg/m以上のNiを付着させるNiめっきを施す。鋼板表面へのNiの付着は、電解めっきや無電解めっき等のように公知の方法によればよい。
本発明を、実施例を参照しながら、より具体的に説明する。
1.供試材の作製
表1に示す化学組成を有する鋼を転炉で溶製し、連続鋳造試験機を用いて連続鋳造を実施し、巾1000mmで250mm厚のスラブとした。このようにして得られたスラブを加熱し、熱間圧延試験機により熱間圧延を施して熱延鋼板とし、その後、ラボにて塩酸による酸洗処理を施して酸洗鋼板とした。酸洗処理後、冷間圧延試験機により冷間圧延を施して冷延鋼板とした。冷間圧延後、鋼板を焼鈍し、付着量11〜100mg/mでNiフラッシュめっきを施した。これらの製造条件を表2に示す。
Figure 0006303580
Figure 0006303580
このようにして得られた鋼板に、熱間プレス試験装置を用いて、熱間プレスを実施した。熱間プレスは、鋼板を加熱炉内で鋼板表面温度900℃に到達させ、その温度にて2分間保持し、加熱炉より取り出し、冷却装置付きの金型にてプレスを速やかに実施し、成形と同時に焼入れ処理を実施した。熱間プレス後の鋼板部材の形状は平板とした。熱間プレス用の試験片サイズは、板厚1.4mm×幅200mm×長さ80mmとした。
2.評価方法
(2−1)表層部におけるCuおよびCrの合計最大濃化量
表層部におけるCuおよびCrの合計最大濃化量の測定はEPMAの線分析にて実施した。すなわち、鋼板の板厚断面において、鋼板表面から50μm深さ位置までEPMAの線分析を実施した。表層から5μm深さ位置までのCuおよびCrの合計最大濃化量は、線分析から得られたCuおよびCrの合計濃度の波形を読み取ることにより行った。また、バルク中のCuおよびCrの合計濃度については、5μmから50μmまでのCuおよびCrの合計濃度の波形を読み取り、その平均値により求めた。
(2−2)鋼板の表面粗さ
表面粗さ計を用いて、各鋼板の圧延方向ならびに圧延直角方向について鋼板表面粗さ(Ra)を測定した。各鋼板について圧延方向をn=5ならびに圧延直角方向n=5のRaを測定し、算術計算にて平均値とした。
(2−3)熱間プレス鋼板部材の評価
熱間プレスした鋼板に対して、スケール密着性を次の方法により評価した。すなわち、粘着テープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標))を長さ200mmに切り取り、鋼板部材上に貼り付け、その後剥がして、スケールの剥離重量を測定した。
3.評価結果
(3−1)本発明
上記の評価試験の結果を表3に示す。なお、表1〜3における、化学組成、製造条件、組織特性および機械特性を示す数値に下線が付されたものは、本発明の規定の範囲外であることを示している。
Figure 0006303580
本発明である供試材No.1〜9,11〜13,15は、表面粗さ(Ra)が0.5μm以上2.0μm以下かつ鋼板表面のNi重量が11mg/m以上100mg/m以下であり、鋼板表面から5μm深さ位置までの表層部におけるCuおよびCrの合計最大濃化量がバルク中のCuおよびCrの合計濃度の1.1倍以上であり、熱間プレス後の鋼板のスケール剥離重量が40mg以下とスケール密着性に優れていた。
中でも、Ni付着量が50mg/m以上である(供試材No.1,2,5,6,7,8,9および11)もの、表面粗さ(Ra)が0.9μm以上1.5μm以下である(供試材No.1,2,7,11および13)もの、CuとCrの最大表層濃化量がバルク中のCuとCrの濃度の1.2倍以上である(供試材No.6,7,11〜13および15)ものについては、熱間プレス後の鋼板のスケール剥離重量が30mg以下であり、スケール密着性にさらに優れていた。
(3−2)比較例
これに対し、Cr:0.20%(供試材No.17)であるもの、Cu:0.003%(供試材No.18)であるもの、酸濃度(質量%)、酸温度(℃)および酸浸漬時間(秒)の積が155000、25000(供試材No.19,20)であるもの、研磨材粒度が♯30、400であるもの(供試材No.21,22)であるもの、冷間圧延の圧下率が93%であるもの(供試材No.23)、冷間圧延後の焼鈍温度が580℃であるもの(供試材No.24)、鋼板表面へのNi付着重量が5mg/mであるもの(供試材No.25)についてはスケール密着性が悪かった。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.07%以上0.50%以下、Si:0.005%以上0.35%以下、Mn:0.3%以上1.50%以下、P:0.0002%以上0.2%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.0002%以上0.05%以下、Ti:0.005%以上0.30%以下、Cr:0.25%以上1.0%以下、B:0.0003%以上0.0200%以下、Cu:0.03%以上0.1%以下およびN:0.01%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、
    CuおよびCrの表面濃化状況が下記(1)式を満足し、
    表面の算術平均粗さ(Ra)が0.5μm以上2.0μm以下であり、
    表面のNi付着量が11mg/m以上であること
    を特徴とする熱処理用鋼板。
    [Cu+Cr]s≧1.1×[Cu+Cr]b ・・・・・(1)
    ここで、式中の[Cu+Cr]sは鋼板表面から5μm深さ位置までの表層部におけるCuおよびCrの合計最大濃化量(質量%)を示し、式中の[Cu+Cr]bはバルク中のCuおよびCrの合計濃度(質量%)を示し、Cuを含有しない場合には(1)式中のCu濃度は0%とする。
  2. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Ni:0.5%以下およびW:0.5%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の熱処理用鋼板。
  3. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.5以下、Mg:0.5以下、Bi:0.5以下およびREM:0.5以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項に記載の熱処理用鋼板。
  4. 下記工程(A)〜(F)を有する請求項1から請求項までのいずれかに記載の熱処理用鋼板の製造方法:
    (A)スラブに熱間圧延を施して500℃以上の温度で巻取ることにより熱延鋼板とする熱間圧延工程;
    (B)前記工程(A)により得られた鋼板に下記(2)式を満足する条件で酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
    (C)前記工程(B)により得られた鋼板に下記(3)式を満足する条件で研磨処理を施す研磨工程;
    (D)前記工程(C)により得られた鋼板に90%以下の圧下率で冷間圧延を施す冷間圧延工程;
    (E)前記工程(D)により得られた鋼板に700℃以上900℃以下の温度で焼鈍を施す焼鈍工程;および
    (F)前記工程(E)により得られた鋼板の表面に11mg/m以上のNiを付着させるNiめっきを施すNiめっき工程。
    30000≦酸濃度(質量%)×酸温度(℃)×酸浸漬時間(秒)≦150000 ・・・・・(2)
    ♯36≦研磨材粒度 JIS R 6001(1973)≦♯320 ・・・・・(3)
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