[第1の実施形態]
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は集合住宅10の斜視図、図2は集合住宅10の各階の平面図、図3は図2のA−A線断面図、図4は集合住宅10の正面図である。なお、図2においては、(a)に一階部分11の平面図を示し、(b)に二階部分12の平面図を示す。
図1、図2に示すように、集合住宅10は、鉄骨軸組工法により構築された2階建ての建物であり、下階部分としての一階部分11と、下階部分の上に設けられた上階部分としての二階部分12と、二階部分12の上に設けられた屋根部としての屋根部分13とを有している。集合住宅10は、複数の住戸15を有するメゾネットタイプの集合住宅となっており、例えば3つの住戸15が横並びに配置されている。
集合住宅10は、その集合住宅10の外周面を形成する外周壁16と、隣り合う住戸15を仕切る戸境壁としての界壁17とを有している。外周壁16は、集合住宅10の周縁部に沿って延びており、平面視略矩形枠状に形成されている。界壁17は、住戸15同士の各境界に沿って延びるように複数設けられており、各界壁17は、外周壁16における各住戸15の並び方向と直交する方向に延びる壁部16aに対して平行に延びている。また、各界壁17は、外周壁16における各住戸15の並び方向に沿って延びる一対の壁部16bを連結している。なお、各住戸15の外周部は、外周壁16及び界壁17により形成されている。集合住宅10においては、一対の壁部16bの一方によりファサード(正面)が形成され、他方により背面が形成されている。
各住戸15は、屋内空間として、一階部分11の一階屋内空間21と二階部分12の二階屋内空間22とを有しており、各住戸15には、一階屋内空間21と二階屋内空間22との行き来を可能とする階段(図示略)が設けられている。
屋根部分13は、平屋根やフラットルーフといった陸屋根により形成されている。屋根部分13は、各住戸15の並び方向とは直交する方向において、屋根部分13の端部に向けて屋根面(屋根部分13の上面)の高さレベルが徐々に低くなるように水勾配を有しており、その水勾配の傾斜は、切妻や寄棟といった傾斜屋根の傾斜よりも小さくされている。この場合、各住戸15の並び方向において、屋根面の両端の高さレベルが同じになっており、各住戸15においては、屋根面に付着した雨水や雪が、隣の住戸15が存在する側ではなく、隣の住戸15が存在しない側に向けて流れ落ちるようになっている。
各住戸15は、屋内空間21,22に加えて、上方に向けて屋外側に開放された住戸屋外空間32を有している。屋根部分13には、住戸屋外空間32を上方に向けて開放する屋根開放部33が設けられており、屋根開放部33は、屋根部分13を切り欠いた切欠部となっている。また、屋根開放部33が設けられた部分は、屋根部分13が設置されていない非設置部分ともなっている。
各住戸15のそれぞれにおいて、住戸屋外空間32は、自住戸の周縁部よりも内側に設けられた半屋外空間にされており、周囲を壁部により囲まれた中庭空間になっている。また、住戸屋外空間32は、車両C(図3参照)を駐車させることが可能な駐車スペースともなっている。
各住戸15は、住戸屋外空間32を挟んで互いに対向する一対の対向壁35,36を有している。一対の対向壁35,36は、各住戸15の並び方向とは直交する方向に沿って互いに平行に延びており、それら対向壁35,36の間に屋根部分13の屋根開放部33及び住戸屋外空間32が配置されている。この場合、屋根開放部33及び住戸屋外空間32は、集合住宅10のファサード側から背面側に向けて、対向壁35,36に沿って延びている。なお、各住戸15においては、対向壁35,36の延びる方向を奥行方向とし、対向壁35,36の並び方向を幅方向とする。
一対の対向壁35,36のうち第1対向壁35は、自住戸において住戸屋外空間32と屋内空間21,22とを仕切る外壁になっている。第1対向壁35は、自住戸と隣の住戸とを仕切る界壁17と平行に延びており、住戸屋外空間32の奥行き方向においてその長さ寸法が界壁17よりも小さくされている。第1対向壁35は、集合住宅10のファサードを形成する壁部16bに接続された状態でファサードとは反対側に向けて延びているが、他方の壁部16bには届いておらずに離間している。また、第1対向壁35は、上下方向において、一階部分11と二階部分12とに跨るように住戸屋外空間32に沿って延びている。
一対の対向壁35,36のうち第2対向壁36は、自住戸と隣の住戸とを仕切る界壁17により形成されている。第2対向壁36においては、住戸屋外空間32の奥行き方向においてその長さ寸法が第1対向壁35と同じにされている。また、第2対向壁36は、上下方向において、第1対向壁35と同様に、一階部分11と二階部分12とに跨るように住戸屋外空間32に沿って延びている。なお、各住戸15のうち、それら住戸15の並び方向の一端に配置された住戸15においては、第2対向壁36が、自住戸と隣の住戸とを仕切る界壁17により形成されているのではなく、集合住宅10の外周壁16により形成されている。
屋内空間21,22は、住戸15の幅方向において自住戸の住戸屋外空間32に対して横並びに配置された第1空間21a,22aと、住戸15の奥行き方向において自住戸の住戸屋外空間32に対して横並びに配置された第2空間21b,22bとをそれぞれ有している。第1空間21a及び第2空間21bは一階屋内空間21に含まれており、第1空間22a及び第2空間22bは二階屋内空間22に含まれている。
第1空間21a,22aと住戸屋外空間32とは、第1対向壁35により仕切られており、第1空間21a,22aは、集合住宅10のファサード側から背面側に向けて延びている。ここで、各住戸15の並び方向において、第1空間21a,22aと住戸屋外空間32との位置関係は、各住戸15のそれぞれにおいて同じとされており、各住戸15の住戸屋外空間32と第1空間21a,22aとは交互に配置されている。例えば、自住戸において住戸屋外空間32が第1空間21a,22aの東側に配置されている場合、他の住戸においても住戸屋外空間32が第1空間21a,22aの東側に配置されていることになる。この場合、全ての住戸15において、第2対向壁36が第1対向壁35よりも東側に配置されていることになる。
第2空間21b,22bと住戸屋外空間32とは、一対の対向壁35,36を連結する連結壁38により仕切られており、第2空間21b,22bは、住戸屋外空間32を挟んで集合住宅10のファサードとは反対側に配置されている。連結壁38は、住戸屋外空間32側に露出した外壁となっており、界壁17により連結されている一対の壁部16bに沿って延びている。
なお、屋内空間21,22は、住戸屋外空間32が屋内空間21,22の内側に入り込んだような状態にされており、平面視略L字状になっている。
界壁17においては、全ての部分が第2対向壁36を形成しているのではなく、自住戸の住戸屋外空間32と隣の住戸の屋内空間21,22とを仕切る部分が第2対向壁36を形成しており、自住戸と隣の住戸の屋内空間21,22同士を仕切る部分は第2対向壁36を形成していない。したがって、界壁17のうち、第2対向壁36を形成している部分は、住戸屋外空間32側に露出した外壁(屋外壁)になっている一方で、第2対向壁36を形成していない部分は、集合住宅10の内部に設けられた内壁(屋内壁)になっている。
図3に示すように、住戸屋外空間32には、二階部分12の床部の高さレベルに合わせて設けられた屋外床部41と、二階部分12の天井部の高さレベルに合わせて設けられた屋外梁42とが設けられている。屋外床部41及び屋外梁42は、鉄骨や鉄筋コンクリートを含んで構成された構造材であり、第1対向壁35と第2対向壁36とに架け渡された状態でそれら対向壁35,36を構造的に連結している。この場合、第1対向壁35と第2対向壁36とが構造的に連結されているため、それら対向壁35,36の強度が互いに補われている。なお、屋外床部41及び屋外梁42が連結構造材に相当する。
屋外床部41は、住戸屋外空間32の奥行き方向に沿って延びており、住戸屋外空間32を上下に仕切っている。屋外床部41は、二階部分12において住戸屋外空間32にバルコニーを形成しており、一階部分11において住戸屋外空間32に屋外天井を形成している。この場合、屋外床部41は、上下方向において一対の対向壁35,36の中間部分同士を連結していることになる。なお、屋外床部41により形成された二階部分12の屋外スペースは、ベランダや屋外テラスとして使用されてもよい。
住戸屋外空間32の奥行き方向において、屋外床部41の長さ寸法は第1対向壁35の長さ寸法よりも小さくされている。この場合、屋外床部41における手前側の端部が外周壁16の壁部16bに接続され、奥側の端部が連結壁38に届いておらずに離間しており、その離間部分が、吹抜空間やアトリウムのように、一階部分11と二階部分12とに跨るように上下方向に延びた空間となっている。
屋外梁42は、住戸屋外空間32の奥行き方向において複数並べられている。各屋外梁42は、所定間隔の間隔で横並びに配置されており、住戸屋外空間32の幅方向に沿って互いに平行に延びている。この場合、各屋外梁42は、一対の対向壁35,36の上部同士を連結していることになる。
集合住宅10のファサードにおいて外周壁16の壁部16bには、住戸屋外空間32への人や車両Cの出入りを可能とする屋外出入口45が、各住戸15のそれぞれについて設けられている。各屋外出入口45は、一対の対向壁35,36の間において一階部分11に設けられており、住戸屋外空間32の床面から上方に向けて延びている。なお、住戸屋外空間32の床面は、地表面GLと同じ高さレベルにされている。
二階部分12において屋外出入口45の上方には、複数の通気部を有するルーバ46が設置されている(図4参照)。ルーバ46は、互いに平行に配置された長尺板状のスラット47を複数含んで矩形板状に構成されており、壁部16bと共に集合住宅10のファサードを形成している。ルーバ46においては、隣り合うスラット47の間の離間部分により通気部が形成されている。この場合、集合住宅10のファサードでは屋外出入口45及びルーバ46にて通気が行われるため、一対の対向壁35,36の間のほぼ全体を通じて住戸屋外空間32の通気を行うことができる。各スラット47は、それぞれ水平方向に延びており、それぞれの板面が集合住宅10の外側の斜め下方を向いた状態で配置されている。したがって、集合住宅10の外側から人がルーバ46を見上げても、スラット47の隙間からは住戸屋外空間32が見えにくくなっている。
なお、ルーバ46の高さ寸法は、二階部分12の階高とほぼ同じにされているが、二階部分12の階高よりも小さくされていてもよい。例えば、ルーバ46の高さ寸法を、腰壁と同じくらいの高さ寸法にしてもよい。この場合、屋外床部41の上においてルーバ46をバルコニーの手摺として使用することもできる。
図1、図2に示すように、第1対向壁35には、その第1対向壁35を厚み方向に貫通する開放部としての窓部51が複数設けられている。窓部51は、一階部分11及び二階部分12のそれぞれに配置されており、各階のそれぞれにおいて横並びに複数設けられている。各窓部51は、掃き出し窓や腰窓、出窓などとされており、開閉方式としては、引き違い式や片開き式、嵌め殺し式などが挙げられる。
ここで、住戸15の奥行き方向において住戸屋外空間32の長さ寸法L1は、第2空間21b,22bの長さ寸法L2よりも小さくされている。この場合、住戸15の長さ寸法に対して第1対向壁35の長さ寸法が1/2以上の大きさになっており、第1対向壁35において複数の窓部51を住戸15の奥行き方向に横並びに配置することが可能な構成になっている。なお、住戸屋外空間32の長さ寸法L1は、界壁17における第2対向壁36を形成している部分の長さ寸法と同じになっており、第2空間21b,22bの長さ寸法L2は、界壁17における第2対向壁36を形成していない部分の長さ寸法と同じになっている。
例えば、二階部分12において屋外床部41に隣接する位置に窓部51aが設けられており、その窓部51aは、二階部分12の床面から上方に向けて延びる掃き出し窓とされている。この場合、住人等が二階屋内空間22からその窓部51aを通じて屋外床部41側のバルコニーに出入りすることが可能となっている。この窓部51aは、二階屋内空間22の床面から天井面に達するまで延びており、開口面積が極力大きくされている。つまり、屋外からの採光量が極力大きくされている。
また、一階部分11において屋外床部41の下方に窓部51bが設けられており、その窓部51bは、一階部分11の床面から上方に向けて延びる掃き出し窓とされている。この場合、住人等が一階屋内空間21からその窓部51bを通じて屋外床部41の下方空間に出入りすることが可能となっている。したがって、屋外床部41の下方空間が駐車スペースとして利用されていれば、屋外床部41が屋根としての役割を果たすことで、雨が降っていたとしても住人等は雨に濡れることなく、駐車スペースに駐車された車両Cへの乗り降りを窓部51bを通じて行うことが可能となる。
さらに、住戸屋外空間32において屋外床部41の非設置部分の下方に窓部51cが設けられており、その窓部51cは、一階部分11の床面と天井面とに架け渡されるように上下方向に延びた掃き出し窓とされている。この場合、屋外床部41の下方に設けられた窓部51bに比べて、屋外床部41の非設置部分を通じて窓部51cに当たりやすいため、窓部51cを介して一階屋内空間21への採光を好適に行うことができる。
ここで、集合住宅10が、そのファサードを南側に向け、且つ各住戸15の第1対向壁35の屋外面を東側に向けた状態で構築されている場合、仮にファサードに窓部が設けられていなくても、十分に大きい開口面積を確保した窓部51(51a〜51c)が屋内空間21,22を東側に向けて開放しているため、窓部51を通じて屋内空間21,22に太陽光を十分に取り込むことができる。この場合、窓部によりファサードの外観が損なわれるということや、ファサードに窓部があることで集合住宅10の外側からの視線が気になるということを回避できる。
一方で、第2対向壁36には窓部が設けられていない。ここで、仮に窓部が第2対向壁36に設けられている場合、一対の対向壁35,36のうち第1対向壁35に設けられた窓部51は自住戸のものになるが、第2対向壁36に設けられた窓部は隣の住戸のものになる。この場合、第2対向壁36に設けられた窓部を通じて隣の住戸の住人等から、自住戸の住戸屋外空間32が丸見えになり、隣の住戸に対するプライバシーを保護することができない状態になってしまう。
これに対して、第2対向壁36に窓部が設けられていない構成では、第2対向壁36が隣り合う住戸15の間で視線を遮る目隠しとしての役割を果たしており、隣の住戸からではその住人等が自住戸の住戸屋外空間32や屋内空間21,22を見ることができないようになっている。このため、窓部51(窓部51a〜51c)のように開口面積が極力大きくなるように開口部が設けられていても、隣の住戸に対する自住戸の住人のプライバシーを保護することができる。
なお、図示は省略するが、窓部は、第2対向壁36を除けば、連結壁38や外周壁16などに設けられていてもよい。
一階部分11において第1対向壁35には、住戸屋外空間32を挟んで対向する第2対向壁36から遠ざかる側に向けて凹んだ凹部55が形成されている。凹部55は、住戸屋外空間32の奥行き方向において屋外出入口45側に配置されており、凹部55の一端が外周壁16に接続されている。この場合、住戸屋外空間32の幅寸法は、凹部55が形成されていない部分(奥側部分)に比べて凹部55が形成されている部分(手前側部分)の方が大きくされている。
各住戸15のそれぞれには玄関61が設けられており、その玄関61に通じる玄関口62が第1対向壁35に設けられている。玄関口62は、第1対向壁35の凹部55における第2対向壁36と対向する部分(住戸15の奥行き方向に延びる部分)に配置されている。
玄関口62には玄関ドア63が設けられており、その玄関ドア63は、屋内側に向けて開く開き戸とされている。ここで、玄関口62の屋外側周辺には、凹部55の内側空間により出入り用のスペースが確保されているため、住戸屋外空間32に車両Cが駐車されていたとしても、その出入り用のスペースを利用することで、住人等は玄関口62から玄関61に容易に出入りすることができる。
なお、玄関ドア63は、屋外側に向けて開く開き戸とされていてもよい。この場合、凹部55の内側空間により玄関ドア63の開放用スペースが確保されるため、住戸屋外空間32に車両Cが駐車されていたとしても、その開放用スペースを利用することで、住人等は玄関ドア63を開放して玄関口62から玄関61に容易に出入りすることができる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
隣り合う住戸15のうち一方の住戸15において、他方の住戸15との境界部から離間した位置に第1対向壁35が設けられているため、その第1対向壁35に形成された窓部51を通じて、他方の住戸15が配置された側から太陽光や外気を屋内空間21,22に取り込むことができる。しかも、一方の住戸15の第2対向壁36には窓部51が設けられていないため、その第2対向壁36を挟んで隣接している一方の住戸15の住戸屋外空間32と他方の住戸15の屋内空間21,22とについて、互いの視線を第2対向壁36により遮ることができる。
この場合、一方の住戸15の住戸屋外空間32や窓部51(屋内空間21,22)から第2対向壁36を通じては他方の住戸15の屋内空間21,22を見ることができず、他方の住戸15の屋内空間21,22から第2対向壁36を通じては一方の住戸15の住戸屋外空間32や窓部51(屋内空間21,22)を見ることができない。したがって、隣の住戸15存在する側に窓部51が設けられた構成において、隣の住人同士についてのプライバシーを好適に保護することができる。以上により、住戸15内に太陽光や外気を好適に取り込むことができる。
各住戸15の並び方向において、各住戸15の住戸屋外空間32と第1空間21a,22aとが交互に配置されているため、隣り合う住戸15のうち一方の住戸15の第1空間21a,22aから第2対向壁36に騒音が伝わったとしても、その騒音は第2対向壁36から他方の住戸15の住戸屋外空間32に伝わり、その住戸屋外空間32にて屋外に放出される。したがって、隣り合う住戸15の各第1空間21a,22a同士で騒音が界壁を介して直接的に伝わるということを回避できる。
また、第1空間21a,22aと住戸屋外空間32との位置関係が全ての住戸15について統一されているため、それら住戸15における第1対向壁35が配置される方角を同じにできる。つまり、各住戸15について、第1対向壁35の窓部51を通じて太陽光や外気を同じ方角から屋内空間21,22に取り込むことができる。この場合、第1対向壁35の窓部51を通じた太陽光や外気などの取り込み量が各住戸15について均一化されるため、それら住戸15において光熱費等の負担に不公平感が生じることを抑制できる。
各住戸15には屋外出入口45が設けられているため、住戸屋外空間32を中庭として使用することはもちろんのこと、集合住宅10の外側から住戸15の玄関口62まで移動するための通路として使用することができる。しかも、玄関口62が第1対向壁35と第2対向壁36との間に設けられているため、住人等が玄関口62から出入りするところが集合住宅10の外側からでは見えにくくなっている。この場合、住戸15に出入りすることが目立ちにくくなるため、他の住人が多数入居している集合住宅10において、外出に関してのプライバシーを保護することができる。
屋外出入口45が設けられたファサード側の壁部16bと、玄関口62が設けられた第1対向壁35とが交差する方向に延びているため、屋外出入口45と玄関口62との開放方向が交差していることになる。したがって、玄関ドア63を開放した場合に、屋外出入口45及び玄関口62を通じて、集合住宅10の外側から住戸15の屋内空間21,22が見えてしまうということを回避できる。これにより、集合住宅10の外側から玄関口62に視線が注がれてもプライバシーを保護することができる。
第1対向壁35の凹部55に玄関口62が設けられているため、住戸屋外空間32において、凹部55の内側空間を玄関口に出入りする際に用いるスペースとして利用することができる。したがって、住戸屋外空間32に車両Cなどの障害物があったとしても、住人等はその障害物を避けて玄関口62を使用することができる。特に、玄関ドア63が屋外側に向けて開く開き戸であれば、凹部55の内側空間を玄関ドア63の開放スペースとして利用することになるため、住人等が玄関口62に出入りすることが容易となる。
各住戸15が一階部分11及び二階部分12を有しているため、一階部分11の窓部51についてはプライバシーの保護を目的としてカーテン等が閉められていて太陽光や外気を住戸15内に取り込むことができない時でも、二階部分12の窓部51のサッシ戸やカーテンなどを開放することで太陽光や外気を住戸15内に十分に取り込むことができる。また、一階部分11の窓部51の開口面積が比較的小さくされていても、二階部分12の窓部51の開口面積を大きくすることで、住戸15内への太陽光や外気の取り込み量を十分に確保できる。したがって、一階部分11において住戸屋外空間32に訪問者等がいる場合でも、一階屋内空間21でのプライバシーを好適に保護することができ、しかも、住戸15内への太陽光や外気の取り込み量が不足することを抑制できる。
第1対向壁35と第2対向壁36との間において、屋外出入口45の上方にルーバ46が設けられているため、ファサード側の壁部16bにおける屋外出入口45の上方部分を通じて住戸屋外空間32の通気を行うことができる。しかも、ルーバ46においては、複数のスラット47により集合住宅10の外側から二階部分12の住戸屋外空間32への視線を遮ることができる。
住戸15の奥行き方向において住戸屋外空間32の長さ寸法L1が、第2空間21b,22bの長さ寸法L2の1/2よりも大きくされているため、第1対向壁35の壁面の表面積を極力大きくすることができる。これにより、住戸15の奥行き方向において、窓部51を複数横並びに配置することができるとともに、各窓部51の長さ寸法を極力大きくすることができる。この場合、第1対向壁35において窓部51の開口面積を極力大きくすることで、窓部51を通じて住戸15内に取り込まれる太陽光や外気の量を十分に確保することができる。
集合住宅10の屋根部分13が陸屋根により形成されているため、屋根面に付着した雨水や雪が住戸屋外空間32に向けて流れ落ちにくい構成を実現できる。これにより、屋根面に積もった雪が崩れ落ちて住戸屋外空間32に溜まるということや、屋根面に付着して流れ落ちた雨水が住戸屋外空間32に溜まるということを抑制できる。
住戸屋外空間32を挟んで対向する第1対向壁35と第2対向壁36とが屋外床部41や屋外梁42により構造的に連結されているため、窓部51a〜51cが開口面積の大きい掃き出し窓とされていることに起因して第1対向壁35の構造強度が低下したとしても、その低下分を屋外床部41や屋外梁42、第2対向壁36により補うことができる。したがって、住戸15ごとに住戸屋外空間32が設けられていても、集合住宅10全体の共同強度を好適に保持することができる。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。第1の実施形態では、集合住宅10の界壁17により、隣り合う住戸15のうち一方の住戸15の住戸屋外空間32と他方の住戸15の屋内空間21,22とが仕切られていたが、第2の実施形態では、界壁17により、隣り合う住戸15の住戸屋外空間32同士が仕切られている。図5は本実施形態における集合住宅10の斜視図、図6は集合住宅10の各階の平面図である。なお、図6においては、(a)に一階部分11の平面図を示し、(b)に二階部分12の平面図を示す。
図5、図6に示すように、本実施形態の集合住宅10においては、例えば2つの住戸15が横並びに配置されている。それら住戸15においては、第2対向壁36が自住戸の住戸屋外空間32と隣の住戸の屋内空間21,22とを仕切っているのではなく、自住戸と隣の住戸との住戸屋外空間32同士を仕切っている。この場合、第2対向壁36が、隣り合う住戸15を仕切る界壁17により形成されているのではなく、隣り合う住戸屋外空間32を仕切る屋外仕切壁により形成されていると解することもできる。
この場合、隣り合う住戸15の各住戸屋外空間32は界壁17を挟んで隣接しており、それら住戸15における住戸屋外空間32及び屋内空間21,22の配置は線対称になっている。また、各住戸15の第2対向壁36は1つの界壁17により形成されている。つまり、第2対向壁36は住戸15ごとに個別に設けられているのではなく、隣り合う住戸15に対して1つだけ設けられていることになる。
隣り合う住戸15においては、第1対向壁35の屋外面が互いに反対側を向いている。例えば、一方の住戸15の第1対向壁35の屋外面が東側を向いていれば、他方の住戸15の第1対向壁35の屋外面は西側を向いていることになる。この場合、一方の住戸15の屋内空間21,22は窓部51を通じて東側に向けて開放され、他方の住戸15の屋内空間21,22は窓部51を通じて西側に向けて開放されることになる。この場合でも、第2対向壁36には窓部51が設けられておらず、それによって、一方の住戸15から他方の住戸15に対する視線が第2対向壁36により遮られる。
各住戸15においては、第1空間21a,22aが一階部分11及び二階部分12にそれぞれ設けられているが、第2空間21bが一階部分11に設けられている一方で、第2空間22bは二階部分12に設けられていない。二階部分12においては、住戸屋外空間32が集合住宅10のファサードと背面との間で第1空間22aに沿って延びており、住戸15の奥行き方向について住戸屋外空間32の長さ寸法と第1空間22aの長さ寸法とは同じにされている。この場合、二階部分12の窓部51は、住戸15の奥行き方向のほぼ全体に亘って横並びに複数設けられており、それら窓部51の開口面積が極力大きくされている。
一階部分11においては、住戸屋外空間32が住戸15の奥行き方向の中間位置に設けられている。この場合、住戸15の奥行き方向において第2空間21bよりも手前側及び奥側の両方に住戸屋外空間32がそれぞれ配置されていることになる。この場合、第1対向壁35と第2対向壁36とを連結する連結壁38は第2空間21bを挟んで一対設けられており、それら連結壁38により第2空間21bが住戸屋外空間32に対して仕切られている。
本実施形態では、第2空間21bに玄関61が設けられており、一対の連結壁38のうちファサード側の連結壁38に玄関口62が設けられている。この場合でも、住人等は住戸屋外空間32を通って玄関口62から一階屋内空間21に出入りすることが可能になっている。ちなみに、玄関口62が第1対向壁35に設けられていないため、第1対向壁35には凹部55が形成されていない。
なお、第2空間21b(玄関61)の天井部分が一階部分11において屋根部分を形成しており、その屋根部分の上面が住戸屋外空間32において二階部分12のバルコニーの床面を形成している。
ルーバ46は、第1対向壁35と第2対向壁36との間において、集合住宅10のファサード側及び背面側の両方に設けられている。ファサード側においては、第1の実施形態と同様に、屋外出入口45の上方にルーバ46が設けられているが、背面側においては、一階部分11と二階部分12とに架け渡された状態でルーバ46が設けられている。このため、屋外出入口45とルーバ46とが上下に並べられた集合住宅10のファサードに加えて、集合住宅10の背面側においても、一対の対向壁35,36の間のほぼ全体を通じて住戸屋外空間32の通気を行うことができる。
集合住宅10の屋根部分13において、屋根開放部33は、二階部分12の住戸屋外空間32と同様に、住戸15の奥行き方向のほぼ全体に亘って延びるように設けられている。この場合、屋根部分13は、各住戸15の並び方向においてそれら住戸15に架け渡された状態ではなく、各住戸15の二階屋内空間22のそれぞれに対して個別に設けられた状態になっている。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
二階部分12においては、第2空間22bが設けられていないため、住戸15の奥行き方向において、第1対向壁35の長さ寸法を住戸15の長さ寸法と同じにすることができる。この場合、二階部分12においては第1対向壁35のほぼ全体が住戸屋外空間32に面しているため、窓部51の開口面積を極力大きくすることができる。これにより、窓部51を通じて二階屋内空間22に取り込まれる日射量や外気量が不足することをより確実に回避できる。
隣り合う住戸15において、それぞれの住戸屋外空間32がそれら住戸15の境界部側に配置されているため、屋内空間21,22同士が界壁17を介して隣接するという部分を極力小さくすることができる。これにより、各住戸15にて発生した騒音が界壁17を通じて伝わるということをより確実に抑制することができる。
各住戸15のそれぞれにおいて、二階部分12に第2空間22bが設けられていないため、二階屋内空間22が界壁17に面している部分が存在しない。したがって、二階部分12においては、各住戸15にて発生した騒音が界壁17に伝わるということ自体が生じないため、騒音が界壁17を通じて各住戸15の二階屋内空間22に伝わるということを回避できる。
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)屋根部分13は、切妻や寄棟といった傾斜屋根により形成されていてもよい。例えば、住戸15の奥行き方向において、傾斜屋根におけるファサード側の端部が上端とされ、背面側に向けて徐々に低くなるように傾斜している構成とする。この構成では、例えば傾斜屋根の屋根面に積もった雪がその屋根面に沿って流れ落ちたとしても、その雪は集合住宅10の背面側に溜まることになる。したがって、屋根に積もった雪が住戸屋外空間32や集合住宅10のファサード側に溜まることを抑制できる。
また、第2の実施形態においては、各住戸15の並び方向において、傾斜屋根における隣の住戸15側の端部が上端とされ、隣の住戸15とは反対側に向けて徐々に低くなるように傾斜している構成にされていれば、傾斜屋根の屋根面に積もった雪が隣の住戸15とは反対側に流れ落ちることになる。つまり、集合住宅10の側方における外周側に流れ落ちることになる。したがって、この場合でも、屋根に積もった雪が住戸屋外空間32や集合住宅10のファサード側に溜まることを抑制できる。
(2)上記第1の実施形態では、住戸屋外空間32が集合住宅10のファサード側から背面側に向けて延びるように形成されていたが、住戸屋外空間32は、集合住宅10の背面側からファサード側に向けて延びるように形成されていてもよい。また、住戸屋外空間32は、住戸15の奥行き方向において第2空間21b,22bの間に挟まれた状態で設けられていてもよい。この場合、住戸屋外空間32は、集合住宅10のファサード及び背面の両方から離間した位置に配置されていることになる。
(3)第1対向壁35には、窓部51に加えて、開閉扉が設けられた出入口や、屋内空間21,22の通気を可能とする通気口などが設けられていてもよい。
(4)上記第1の実施形態では、住戸15の奥行き方向において、住戸屋外空間32の長さ寸法L1が第2空間21b,22bの長さ寸法L2よりも大きくされていたが、L1=L2、又はL<L2でもよい。いずれの場合でも、第1対向壁35に窓部51を設けることは可能である。
(5)上記第2の実施形態では、二階部分12の第2空間22bが設けられていないが、一階部分11の第2空間21bが設けられていなくてもよい。例えば、一階部分11及び二階部分12の両方において第2空間21b,22bが設けられていない構成では、第1対向壁35の全ての部分が住戸屋外空間32に面することになるため、第1対向壁35において窓部51の開口面積をさらに大きくすることが可能となる。
(6)上記第1の実施形態では、第1対向壁35と第2対向壁36とを連結する連結構造体が、屋外床部41及び屋外梁42とされていたが、連結構造体は壁体とされていてもよい。この壁体は、鉄骨や鉄筋コンクリートを含んで構成された構造壁とされていることが好ましい。
(7)集合住宅10が住戸15を3つ以上有する場合、それら住戸15は一方向に横並びに配置されているのではなく、複数の方向に横並びに配置されていてもよい。この場合でも、集合住宅10が、隣り合う住戸15を仕切る界壁17により形成された第2対向壁36と、その第2対向壁36から離間して設けられた第1対向壁35とを有しており、それら第1対向壁35と第2対向壁36との間に住戸屋外空間32が形成されている構成であれば、第1対向壁35に窓部51を設けた構成を実現することができる。
(8)集合住宅10は、二階建ての建物ではなく、一階建ての建物(平屋)とされていてもよく、三階建て以上の複数階建ての建物とされていてもよい。例えば、三階建て以上の建物においては、住戸屋外空間32が各住戸15の少なくとも最上階に設けられていることが好ましい。これにより、最上階において第1対向壁35に開口面積の十分に大きな窓部51を設けることができる。また、三階建て以上の建物においても、住戸屋外空間32が最上階と最下階とに跨る状態で上下方向に延びるように設けられていることが好ましい。
また、窓部51は、少なくとも最上階の第1対向壁35に設けられていればよい。この場合、下階部では窓部51がないことによりプライバシーの保護を図ることができ、最上階では窓部51を通じて太陽光や外気を住戸15内に十分に取り込むことができる。
(9)上記第1の実施形態では、第1対向壁35の凹部55が一階部分11及び二階部分12のうち一階部分11にだけ設けられていたが、凹部55は一階部分11と二階部分12とに跨る状態で上下方向に延びるように設けられていてもよい。
(10)上記第1の実施形態では、玄関口62は、第1対向壁35の凹部55における第2対向壁36と対向する部分に設けられていたが、第2対向壁36と対向しない部分に設けられていてもよい。つまり、玄関口62は、凹部55における住戸15の幅方向に延びる部分に設けられていてもよい。
また、玄関口62は、第1対向壁35における集合住宅10の背面寄りの部分に設けられていてもよい。さらに、玄関口62は、第1対向壁35における凹部55ではない部分に設けられていてもよい。この場合、第1対向壁35には凹部55が設けられていないことが好ましい。
加えて、玄関口62は、二階部分12に設けられていてもよい。例えば、集合住宅10が外部階段を有しており、その外部階段を通じて玄関口62から二階屋内空間22に出入りする構成とする。また、集合住宅10が、隣接する道路に二階部分12の玄関口62が通じる構成にされていてもよい。
(11)上記各実施形態では、玄関口62が住戸屋外空間32に通じる位置に設けられていたが、玄関口62は、集合住宅10の外周壁16に設けられていてもよい。この構成によれば、住人等は集合住宅10の外側から玄関口62を通じて住戸15内に直接出入りすることが可能となる。この場合、屋外出入口45は設けられていなくてもよい。この場合でも、第1対向壁35や連結壁38に掃き出し窓等の出入口が設けられていれば、屋内空間21,22から住戸屋外空間32に出入りすることができる。これにより、住戸屋外空間32を中庭などとして使用することができる。
(12)住戸屋外空間32の屋外出入口45には、シャッタカーテンを有するシャッタ装置が設けられていてもよい。シャッタカーテンは複数のスラットを含んで構成されており、屋外出入口45を閉鎖することが可能となっている。各スラットは、通気状態及び非通気状態に移行可能とされており、シャッタカーテンにより屋外出入口45が閉鎖された状態でも、スラットが通気状態とされていることでシャッタカーテンを通じて住戸屋外空間32の通気が行われるようになっている。
また、住戸屋外空間32には、プラグインハイブリッド自動車(PHV)や電気自動車といった車両Cのバッテリを充電するための充電装置が設置されていてもよい。この場合、シャッタ装置により屋外出入口45が閉鎖されることで、例えば住人が外出している時間帯において充電装置が他人によって勝手に使用されるということを抑止できる。
なお、住戸屋外空間32には、車両Cの他に、自転車や、空調機器等の設備機器、物品収納庫、住戸15用の蓄電装置、太陽光発電装置などが設置されてもよく、この場合でも、シャッタ装置により屋外出入口45が閉鎖されることで、住戸屋外空間32における防犯性を高めることができる。
(13)住戸15の住戸屋外空間32には、その住戸15の一階屋内空間21と二階屋内空間22とを行き来可能とする階段が設置されていてもよい。この階段は、屋内階段及び屋外階段のいずれとされていてもよい。例えば、外部階段が住戸屋外空間32に設置された場合、住人等は玄関口62から一階屋内空間21に入らなくても、階段を通じて二階屋内空間22に直接移動することができる。