JP6052054B2 - 金属板材の曲げ成形方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属板材の曲げ成形方法に関する。
鋼板をプレス加工した後に金型から取り出すと、プレス加工中に鋼板に生じていた残留応力により、スプリングバックと呼ばれる形状変化が発生することが知られている。このようなスプリングバックが生じると、プレス加工された鋼板の寸法精度が悪化し、最終製品の外観品質を損なうばかりでなく、プレス加工後に行われる組立作業においても結合不良を生じさせることになる。
図10は、プレスブレーキにより鋼板の曲げ成形を行った際にスプリングバックが生じる様子を概略的に示している。図10に示した例では、曲げ軸線(図10の紙面に対して垂直な軸線)を中心に鋼板Mの曲げ成形を行う様子を示している。図10に示すように、プレスブレーキ1は、上金型2と、下金型3とを具備する。上金型2は曲げ軸線に沿って下向きに凸状に形成されており、一方、下金型3は曲げ軸線に沿って上向きに凹状に形成されている。これら上金型2の凸形状と下金型3の凹形状は、互いに相補的に形成されている。
このプレスブレーキ1によって鋼板の曲げ成形を行う際には、まず、図10(a)に示したように、鋼板Mが上金型2と下金型3との間に配置される。次いで、図10(b)に示したように、上金型2が下金型3に対して押圧されて金型2、3が閉じられる。これにより、鋼板Mに曲げ成形が行われる。その後、曲げ成形終了後に上金型2が上昇せしめられて金型2、3が開かれると、図10(c)に示したように、鋼板Mが図10(b)に示した状態よりも曲率の小さな状態に戻る。このように、加工後に鋼板Mが曲率の小さな状態に戻ることはスプリングバックと呼ばれ、曲げ成形中に凹状の下金型3に当接する鋼板Mの表面側に残留圧縮応力が、凸状の上金型2に当接する鋼板Mの表面側に残留引張応力が生じることが原因とされる。
このようなスプリングバックによる寸法精度悪化を抑制するために、プレス装置によるプレス加工の前に、プレス加工される鋼板に予めエンボスを設けておき、プレス加工時にそのエンボスを潰すことによって、プレス加工された鋼板内の残留応力を調整することが提案されている(例えば、特許文献1、2)。特に、特許文献1に記載のプレス加工方法では、プレス加工される鋼板に凸状及び凹状のエンボスを縦方向及び横方向に交互に並べて形成するようにしている。また、特許文献2に記載のプレス加工方法では、プレス加工される鋼板に直線部が存在していないY字状のエンボスを相互に入り組むように並べて形成するようにしている。
或いは、上述したようなスプリングバックによる寸法精度悪化を抑制するために、プレス加工において縮んで圧縮変形する部位に余肉ビードを設けることで、圧縮残留応力を低減させると共に、プレス加工において伸びて引張変形する部位に潰しビード(エンボス)を設けることで引張残留応力を低減させることも提案されている(例えば、特許文献3)。
特開2006−35245号公報 特開2000−51959号公報 特開2009−255117号公報
ところで、特許文献1、2に記載のプレス加工方法は、プレス加工を受ける鋼板の少なくとも大部分が金型間に挟まれてプレスされるプレス加工を対象としている。このため、特許文献1、2に記載されたような鋼板に設けられたエンボスは、斯かるプレス加工に対しては効果的に作用しうる。しかしながら、プレスブレーキによって鋼板の曲げ成形を行う場合には、曲げ成形における曲げ軸線に対して垂直な平面においてスプリングバックが生じ、斯かるスプリングバックに対して特許文献1、2に記載されたようなエンボスは必ずしも有効ではない。
また、特許文献3では、伸びフランジ部と縮みフランジ部とを有するハット形断面形状の鋼板のプレス加工が対象であるとともに、伸びフランジ部に余肉ビードを設け且つ縮みフランジ部に潰しビード(エンボス)を設けるようにしているため、プレスブレーキによって鋼板の曲げ成形を行う場合に適用することはできない。
そこで、本発明の目的は、プレスブレーキ等によって鋼板の曲げ成形を行う場合にスプリングバックを抑制するのに最適なエンボスを利用した金属板材の曲げ成形方法を提供することにある。
本発明者は、曲げ軸線を中心に金属板材を曲げ成形する方法であって、金属板材にエンボスを形成し、エンボスが形成された金属板材を凸状金型と凹状金型との間に配置し、その状態で凸状金型及び凹状金型のうち一方の金型を他方の金型に押圧することで金属板材を曲げ成形するにあたり、金属板材に設けたエンボスとスプリングバックとの関係について検討を行った。
その結果、各エンボスの曲げ軸線方向に平行な方向の寸法に対する曲げ軸方向に垂直な方向の寸法の比である寸法比を適切な値に設定することで、鋼板内に残る残留応力を適切に制御することができ、その結果、スプリングバックを効果的に低減させることを見いだした。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)曲げ軸線を中心に金属板材を曲げ成形する方法であって、前記金属板材にエンボスを形成する工程と、前記エンボスが形成された金属板材を、前記曲げ軸線に沿って凸状に延びる凸状金型と前記曲げ軸線に沿って凹状に延びる凹状金型との間に配置する工程と、両金型間に前記エンボスが形成された金属板材を配置した状態で前記凸状金型及び前記凹状金型のうち一方の金型を他方の金型に押圧することで前記金属板材を曲げ成形する工程とを含み、各エンボスは、曲げ軸線方向に平行な方向の寸法に対する曲げ軸方向に垂直な方向の寸法の比である寸法比が2.0〜10.0となるように形成されると共に、前記金属板材のうち両金型によって押圧されたときにこれら金型に接触する部分に形成される、金属板材の曲げ成形方法。
(2)前記エンボスはその深さが板厚の5〜40%となるように形成される、上記(1)に記載の金属板材の曲げ成形方法。
(3)前記エンボスは金属板材の一方の面側に突出するように形成され、前記金属板材を両金型間に配置する工程では、前記エンボスが突出した側の金属板材の面が前記凸状金型と対面するように配置される、上記(1)又は(2)に記載の金属板材の曲げ成形方法。
(4)前記エンボスは、前記金属板材の曲げ軸線方向の少なくとも一方の端部に隣接した領域に設けられる、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の金属板材の曲げ成形方法。
(5)前記金属板材のうち両金型によって押圧されたときにこれら金型に接触する部分の前記曲げ軸線方向に対して垂直な方向の長さを接触長さとすると、前記曲げ軸線方向に対して垂直な方向において前記エンボスが存在する長さが前記接触長さの90%以上である、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の金属板材の曲げ成形方法。
(6)前記エンボスは、前記曲げ軸線に対して対称に形成される、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の金属板材の曲げ成形方法。
(7)前記凹状金型は、固定部と該固定部に対して摺動可能な可動部とを具備し、前記エンボスは、前記金属板材のうち、両金型によって押圧されたときに前記固定部に接触する部分のみに形成される、上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の金属板材の曲げ成形方法。
本発明によれば、プレスブレーキ等によって鋼板の曲げ成形を行う場合にスプリングバックを抑制するのに最適なエンボスを利用した金属板材の曲げ成形方法が提供される。
図1は、本発明の第一実施形態に係る金属板材の曲げ成形方法を概略的に示す図である。 図2は、金属板材にエンボスを設ける際のエンボスの形状等の一つの例を示す図である。 図3は、一つのエンボスの拡大図である。 図4は、図3に示したようなエンボスを潰したときにエンボス周り生じる残留応力を概念的に示した図である。 図5は、エンボスの形状と残留応力との関係を示した図である。 図6は、エンボスの幅に対する長さの比(L/W)と引張残留応力の範囲との関係を示す図である。 図7は、金属板材にエンボスを設ける際のエンボスの形状等の一つの例を示す平面図である。 図8は、本発明の第二実施形態に係る金属板材の曲げ成形方法を概略的に示す図である。 図9は、金属板材にエンボスを設ける際のエンボスの形状等の一つの例を示す図である。 図10は、従来のプレスブレーキにより鋼板の曲げ成形を行った際にスプリングバックが生じる様子を概略的に示している。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
図1は、本発明の第一実施形態に係る金属板材の曲げ成形方法を概略的に示す図である。図1(a)からわかるように、まず、コイル状に巻回された金属素材を適切な大きさで切断して形成された金属板材(ブランク材)Mに、プレス加工、ロール成形等によってエンボス10を予め形成する。エンボス10の形状や大きさ、数等については後述する。なお、本例では、金属素材を切断してからエンボス加工を行っているが、エンボス加工を行ってエンボスを形成した後に金属板材Mに切断するようにしてもよい。
次いで、プレスブレーキ1により曲げ軸線Yを中心に金属板材Mの曲げ成形が行われる。図1に示すように、プレスブレーキは上金型2と下金型3とを具備する。上金型2及び下金型3は所定の軸線に沿って延びるように配置される。また、上金型2はこの所定の軸線に沿って下向きに凸状に形成された下面2aを有する。一方、下金型3は曲げ軸線に沿って上向きに凹状に形成された上面3aを有する。これら上金型2の凸形状の下面2aと下金型3の凹形状の上面3aとは、互いに相補的に形成されている。
プレスブレーキ1により金属板材Mの曲げ成形を行う際には、まず、図1(b)に示したように、金属板材Mが上金型2と下金型3との間に配置される。このとき、金属板材Mの曲げ軸線Yが、上金型2の下面2aにおける凸形状の中心に沿って、及び下金型3の上面3aにおける凹形状の中心に沿って延びるように配置される。換言すると、上金型2の凸状の下面2a及び下金型3の凹状の上面3aが沿って延びる所定の軸線と、金属板材Mの曲げ軸線Yとが平行になるように配置される。
次いで、図1(c)に示したように、上金型2が下金型3に向かって下方に、すなわち上金型2の下面2aにおける凸形状の中心及び下金型3の上面3aにおける凹形状の中心を通って延びる軸線Xに沿って移動する。これに伴って、上金型2が下金型3に対して押圧され、金型2、3が閉じられる。これにより、上金型2と下金型3との間に配置されていた金属板材Mは曲げ成形される。なお、図示した例では、上金型2が下金型3に向かって下方に移動しているが、これら金型2、3は、下金型3が上金型2に向かって移動するように構成されてもよいし、両金型2、3が互いに向かって移動するように構成されてもよい。
このように上金型2が下金型3に対して押圧されると、金属板材Mは曲げ成形されるが、そのとき金属板材Mに形成されていたエンボス10も潰される。このため、金属板材Mのエンボス10が設けられていた領域では、上金型2及び下金型3によって押圧されることにより、平坦な面が形成される。
次いで、図1(d)に示したように、上金型2が上昇せしめられて金型2、3が開かれる。その後、金属板材Mは金型2、3から取り出され、金型2、3では次の金属板材Mの曲げ成形が行われる。
図2は、金属板材Mにエンボス10を設ける際のエンボス10の形状等の一つの例を示す図である。図2(a)は、金属板材Mに設けられるエンボス10の形状を示す金属板材Mの平面図であり、図2(b)は、図2(a)の金属板材Mを図2(a)の下方から見た側面図である。図2(a)に示した例では、金属板材Mの曲げ軸線方向の一方の端部に隣接した領域(図2(a)において金属板材Mの上側端部に隣接した領域)には千鳥状に配置された6つのエンボス10が形成され、他方の端部に隣接した領域(図2(a)において金属板材Mの下側端部に隣接した領域)には2つのエンボス10が形成されている。
ここで、金属板材Mのうち、曲げ成形中において両金型2、3によって押圧されたときにこれら金型に接触する部分(図1(c)に参照番号11で示された部分)を「接触部分」とすると、全てのエンボス10はこの接触部分11内に設けられている。このため、両金型2、3によって曲げ成形されるときに全てのエンボス10が潰されることになる。
また、図2に示した例では、エンボス10は曲げ軸線Yを中心に対称的に配置される。しかしながら、エンボス10は、必ずしも曲げ軸線Yを中心に対称的に配置されていなくてもよい。ただし、対称的に配置されていない場合でも、曲げ軸線Yの両側それぞれにエンボス10が配置されることが必要である。
さらに、図2に示した例では、全てのエンボス10は金属板材の一方の面側に突出するように形成される。また、このように構成された金属板材Mを両金型2、3間に配置する際には、エンボス10が突出した側の金属板材Mの面が上金型2と対面するように、且つその逆の面が下金型3と対面するように配置される。これにより、下金型3上に金属板材Mを配置しても、エンボス10が下金型3に向かって突出していないため、金属板材Mを下金型3上に安定して配置することができる。
図3は、一つのエンボス10の拡大図である。特に、図3(a)は、一つのエンボス10の拡大平面図であり、図3(b)は、一つのエンボス10の拡大側面図である。図3に示したように、本明細書では、エンボス10の曲げ軸線Yに平行な方向における寸法をエンボス10の幅Wとして表し、エンボス10の曲げ軸線Yに垂直な方向における寸法をエンボス10の長さLとして表す。また、エンボス10の板厚方向における高さ(深さ)を高さHとして表す。特に、エンボス10の高さHは、エンボス10の板厚方向における高さのうち最も高い部分の高さを意味する。
エンボス10の幅W及び長さLを上述したように定義すると、本実施形態では、各エンボス10について幅に対する長さの比(L/W)が2.0〜10.0とされ、各エンボス10の高さHは金属板材Mの板厚Tに対して5〜40%とされる。以下では、各エンボス10をこのように形成することの作用効果について説明する。
一般に、金属板材Mにエンボス10を設けた上で金型2、3により曲げ成形した場合、金型2、3によってエンボス10が潰されることにより金属板材Mにはエンボス10周りにおいて塑性変形が生じる。このように塑性変形が生じると、弾性変形が生じた場合とは異なり曲げ成形後に金属板材Mが元の形状に戻ろうとしなくなる。このため、エンボス10を設けて塑性変形させると、スプリングバックが生じにくくなる。
また、金属板材Mにエンボス10を設けた上で金型2、3により曲げ成形した場合、金属板材Mにはエンボス10周りにおいて残留応力が生じる。図4は、図3に示したようなエンボス10を潰したときにエンボス10周り生じる残留応力を概念的に示した図である。図中の破線12は、曲げ成形によって潰される前におけるエンボス10の輪郭に対応する部分を示している。また、図中の反対向きの矢印はその部分に引張残留応力が生じていることを意味し、図中の向かい合う矢印はその部分に圧縮残留応力が生じていることを意味する。
図4からわかるように、エンボス10の輪郭に対応する破線12の内側では、破線12に平行な方向及び破線12に垂直な方向のいずれの方向においても圧縮残留応力が生じる。これは、突出していたエンボス10が潰されることによって縮められることにより生じるものである。したがって、エンボス10の輪郭に対応する破線12の内側では、曲げ軸線Yに平行な方向及び曲げ軸線Yに垂直な方向のいずれの方向についても圧縮残留応力が残る。
一方、図4からわかるようにエンボス10の輪郭に対応する破線12の外側では、破線12に平行な方向には引張残留応力が生じ、破線12に垂直な方向には圧縮残留応力が生じる。これは、突出していたエンボス10が潰されることによってエンボス10周りの金属板材は広げられることによるものである。したがって、曲げ軸線Y方向においてエンボス10の両側に位置する領域(図4にMで示した領域)では、曲げ軸線Y方向に圧縮残留応力が生じると共に、曲げ軸線Yに垂直な方向に引張残留応力が生じる。一方、曲げ軸線Yに垂直な方向においてエンボス10の両側に位置する領域(図4にNで示した領域)では、曲げ軸線Y方向に引張残留応力が生じると共に曲げ軸線Yに垂直な方向に圧縮残留応力が生じる。
図5(a)は、図5(a)中に一点鎖線で示した断面に作用する残留応力を示す図である。図4からわかるように、図5(a)中に一点鎖線で示した断面、すなわち曲げ軸線Yに対して垂直な方向に延びる断面に作用する残留応力は、エンボス10の輪郭に対応する破線12の内側では圧縮残留応力となり、エンボス10の輪郭に対応する破線12の外側では引張残留応力となる。
この様子を、図5(b)に示す。図5(b)では、位置に応じた残留応力の大きさを示しており、0よりも大きい値は引張残留応力を、0よりも小さい値は圧縮残留応力をそれぞれ示している。また、正の値が大きくなるほど引張残留応力が大きくなり、負の値が大きくなるほど圧縮残留応力が大きくなることを示している。
図5(b)からわかるように、エンボス10の輪郭に対応する破線12の内側では、ほぼ一定の大きさの圧縮残留応力が生じる。一方、エンボス10の輪郭に対応する破線12近傍で、圧縮応力と引張応力とが反転し、エンボス10の輪郭に対応する破線12の外側では、引張残留応力が生じる。引張残留応力は、エンボス10の輪郭に対応する破線12から遠ざかるほど小さくなる。
ここで、例えば50MPa以上の引張残留応力が生じる範囲を「引張残留応力の範囲」とすると、引張残留応力の範囲は各エンボス10の幅に対する長さの比(以下、「L/W比」という)に応じて変化する。この様子を図6に示す。
図6からわかるように、引張残留応力の範囲は、エンボス10のL/W比が大きくなるにつれて、広くなることがわかる。特に、エンボス10のL/W比が2以下であるときには、L/W比の増大に伴って引張残留応力の範囲が急激に広くなる。一方、エンボス10のL/W比が2以上であるときには、L/W比の増大に伴って引張残留応力の範囲が広がる程度は小さくなる。
すなわち、エンボス10のL/W比を2以上にすることにより、エンボス10を潰すことによって引張残留応力が生じる、曲げ軸線Yに垂直な方向における範囲は広くなる。また、同様な理由で、エンボス10のL/W比を2以上にすることにより、エンボス10を潰すことによって引張残留応力が生じる、曲げ軸線Y方向における範囲も広くなる。
ここで、エンボス10を潰すことによって残留応力が生じると、これに伴ってスプリングバックが生じにくくなる。このため、残留応力が生じる範囲が広くなるほど、スプリングバックが生じにくくなる。本実施形態では、エンボス10のL/W比を2.0以上としていることにより引張残留応力が生じる範囲が広くなり、この結果、残留応力が生じる範囲を広くすることができる。また、本実施形態では、エンボス10の高さHが板厚の5〜40%とされているため、曲げ成形後にエンボス10を完全に潰して金属板材Mの表面を平坦にすることができる。
なお、図5(a)に示した例では、曲げ軸線Yに平行な方向の残留応力のみを取り上げている。これは、曲げ軸線Yに対して垂直な方向の残留応力に比べて、曲げ軸線Yに対して平行な方向の残留応力の方が大きく、スプリングバックに対する影響が大きいためである。
なお、上記実施形態では、金属板材Mの曲げ軸線方向の一方の端部に隣接した領域に6つのエンボス10が形成され、他方の端部に隣接した領域に2つのエンボス10が形成されている。しかしながら、エンボス10はこれとは異なる態様で形成されてもよく、例えば、図7に示したように、曲げ軸線Yの両側で異なる形状で異なる数のエンボス10が設けられてもよい。
この場合、曲げ軸線Y方向に対して垂直な方向における接触部分11の長さを接触長さLcとすると、曲げ軸線Yに対して垂直な方向においてエンボスが存在する長さが接触長さLcの90%以上であるのが好ましい。図7に示したようにエンボス10が設けられている場合には、図中のエンボス10が存在する長さ、すなわちL1+L2+L3が接触長さLcの90%以上であることが好ましい。
また、上記実施形態では、エンボス10は金属板材Mの曲げ軸線Y方向の各端部に隣接した領域に設けられるとしているが、この各端部に隣接した領域とは、例えば、金属板材Mの曲げ軸線Y方向の端縁から接触長さLcに等しい長さの領域10aとされる。
次に、図8及び9を参照して本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態における曲げ成形方法は基本的に第一実施形態における曲げ成形方法と同様である。しかしながら、第二実施形態では、下金型が可動部と固定部とを有するように構成されている。
図8からわかるように、下金型23は、固定部23aと固定部23aに対して摺動可能な可動部(カウンターホルダ)23bとを具備する。可動部23bは弾性部材24によって上方に付勢されており、上金型22が下方に移動して下金型23の可動部23bを下方に押圧すると、これに伴って可動部23bも下方に移動する。
このように構成されたプレスブレーキ21では、まず、図8(a)に示したように、エンボス25が形成された金属板材Mが上金型22と下金型23との間に配置される。このとき、下金型23の可動部23bは弾性部材24の付勢力により上方に移動されている。次いで、図8(b)に示したように、上金型22が下金型23に向かって下方に、すなわち軸線Xに沿って下方に移動し、これに伴って上金型22が下金型23に対して押圧され、金型22、23が閉じられる。このとき、下金型23の可動部23bは上金型22により下方に押圧されて下方に移動する。なお、可動部23bは上下に摺動可能に構成されていることから、金属板材Mの曲げ成形は、実質的に上金型22と下金型23の固定部23aとによって行われる。その後、図8(c)に示したように、上金型22が上昇せしめられて金型22、23が開かれ、金属板材Mが金型22、23から取り出される。
図9は、金属板材Mにエンボス25を設ける際のエンボス25の形状等の一つの例を示す図である。図9(a)は、金属板材Mに設けられるエンボス25の形状を示す金属板材Mの平面図であり、図9(b)は、図9(a)の金属板材Mを図9(a)の下方から見た側面図である。図9からわかるように、本実施形態では、エンボスは、金属板材Mのうち、両金型22、23によって押圧されたときに固定部23aに接触する部分(図9の部分26)のみに形成される。上述したように、金属板材Mの曲げ成形は実質的に下金型23の固定部23aによって行われ、金属板材Mは可動部23bと上金型22との間ではプレスされない。このため、金属板材Mのうち固定部23aに接触する部分26にのみエンボス25を設けることによって、曲げ成形後にエンボス25が残ってしまうことを防止することができる。
本発明の効果を明らかにするため、鋼板を用いて曲げ成形試験を行った。鋼板は板厚0.5mmの270MPa級鋼板であり、これを幅100mm、長さ(曲げ軸線方向長さ)200mmに切断したものを用いた。曲げ成形試験は、まず鋼板に表1に示す寸法のエンボス一対を、鋼板の両端に隣接した領域それぞれに曲げ軸線に対して対称になるように予め加工した。次いで先端半径25.75mm、先端角度85°の凸形状上金型と、先端半径26.25mm、先端角度85°の凹形状下金型が取り付けられたプレスブレーキを用いて、両金型の間に鋼板を挟んで金型を押圧した。そして取り出した鋼板のエンボス加工部におけるスプリングバック後の角度(の平均値)を測定し、曲げ角度(=85°)に対するスプリングバックする角度の割合を求めた。この金型の接触長さは、19.3mmである。なお比較のためエンボス加工を行わない鋼板(No.1)も製作して曲げ成形試験を行った。これらの結果を表1に示す。
Figure 0006052054
表1のNo.2〜10はエンボスの曲げ軸方向に平行な方向の寸法Wに対する曲げ軸方向に垂直な方向の寸法Lの比が2.0〜10.0である実施例であり、曲げ角度に対するスプリングバックする角度の割合は、エンボスを加工しないNo.1に比べて3%以上、L/Wが上記以外の比較例No.2および11に比べて2%以上改善されており、本発明の方法が有効であることがわかった。
このうち、No.5〜8はエンボス高さが板厚の5〜40%である実施例であり、エンボス高さがその範囲外であるNo.4および9に比べてさらに曲げ角度に対するスプリングバックする角度の割合が2%以上改善されており、本発明の方法が有効であることがわかる。なお、エンボス高さが板厚の40%超であるNo.9は曲げ成形においてエンボスが完全に潰れずに残った。
さらにこのうちNo.6および7は、エンボスの突出した側の面が凸状金型と対面する実施例と、エンボスが凹んだ側の面が凸状金型と対面する実施例とを比較したものである。エンボスの突出した側の面が凸状金型と対面するNo.6はエンボスが凹んだ側が凸状金型と対面するNo.7に比べてさらに曲げ角度に対するスプリングバックする角度の割合が1%以上改善されており、本発明の方法が有効であることがわかる。
本発明の効果を明らかにするため、表2のNo.21〜26についても、鋼板を用いて曲げ成形試験を行った。No.21〜26の例では、上記No.1〜11の例と同様に、鋼板は板厚0.5mmの270MPa級鋼板であり幅100mm、長さ200mmに切断したものを用いた。曲げ成形試験は、まず鋼板に表2に示す寸法・形状のエンボスを予め加工した。次いで、上記No.1〜11と同様に、先端半径25.75mm、先端角度85°の凸形状上金型と、先端半径26.25mm、先端角度85°の凹形状下金型が取り付けられたプレスブレーキを用いて、両金型の間に鋼板を挟んで金型を押圧し、取り出した鋼板の曲げ角度を測定した。この金型の接触長さは、19.3mmである。なお比較のためエンボス加工を行わない鋼板も製作して曲げ成形試験を行った。これらの結果を表2に示す。
Figure 0006052054
表2のNo.22〜24、26はエンボスの存在する長さが接触長さの90%以上である実施例であり、エンボスの存在する長さが接触長さの90%未満であるNo.21および25に比べて曲げ角度に対するスプリングバックする角度の割合が1°以上改善されており、本発明の方法が有効であることがわかる。
このうちNo.23および24は、エンボスが曲げ軸線に対して対称に形成された実施例と、非対称に形成された実施例(具体的には、左右のエンボスが曲げ軸線方向に20mmずれたもの)とを比較したものである。エンボスが曲げ軸線に対して対称に形成されたNo.23は非対称に形成されたNo.24に比べて曲げ角度に対するスプリングバックする角度の割合が0.5%以上改善されており、本発明の方法が有効であることがわかる。
以上のことから本発明の曲げ成形方法はスプリングバックの抑制に有効であることが判明した。
1 プレスブレーキ
2 上金型
2a 下面
3 下金型
3a 上面
10 エンボス
11 接触部分
H エンボスの高さ
L エンボスの長さ
M 金属板材
T 板厚
W エンボスの幅
X 軸線
Y 曲げ軸線

Claims (7)

  1. 曲げ軸線を中心に金属板材を曲げ成形する方法であって、
    前記金属板材にエンボスを形成する工程と、
    前記エンボスが形成された金属板材を、前記曲げ軸線に沿って凸状に延びる凸状金型と前記曲げ軸線に沿って凹状に延びる凹状金型との間に配置する工程と、
    両金型間に前記エンボスが形成された金属板材を配置した状態で前記凸状金型及び前記凹状金型のうち一方の金型を他方の金型に押圧することで前記金属板材を曲げ成形する工程とを含み、
    各エンボスは、曲げ軸線方向に平行な方向の寸法に対する曲げ軸方向に垂直な方向の寸法の比である寸法比が2.0〜10.0となるように形成されると共に、前記金属板材のうち両金型によって押圧されたときにこれら金型に接触する部分に形成される、金属板材の曲げ成形方法。
  2. 前記エンボスはその深さが板厚の5〜40%となるように形成される、請求項1に記載の金属板材の曲げ成形方法。
  3. 前記エンボスは金属板材の一方の面側に突出するように形成され、前記金属板材を両金型間に配置する工程では、前記エンボスが突出した側の金属板材の面が前記凸状金型と対面するように配置される、請求項1又は2に記載の金属板材の曲げ成形方法。
  4. 前記エンボスは、前記金属板材の曲げ軸線方向の少なくとも一方の端部に隣接した領域に設けられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属板材の曲げ成形方法。
  5. 前記金属板材のうち両金型によって押圧されたときにこれら金型に接触する部分の前記曲げ軸線方向に対して垂直な方向の長さを接触長さとすると、前記曲げ軸線方向に対して垂直な方向において前記エンボスが存在する長さが前記接触長さの90%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属板材の曲げ成形方法。
  6. 前記エンボスは、前記曲げ軸線に対して対称に形成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属板材の曲げ成形方法。
  7. 前記凹状金型は、固定部と該固定部に対して摺動可能な可動部とを具備し、前記エンボスは、前記金属板材のうち、両金型によって押圧されたときに前記固定部に接触する部分のみに形成される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属板材の曲げ成形方法。
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