JP6038287B2 - スクロール圧縮機及びそれを備えた冷凍サイクル装置 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載の技術は、R32冷媒を含む冷媒を用いながら圧縮機から吐出されるガス冷媒温度を抑制するため、凝縮器で凝縮した後に主減圧手段で減圧されて蒸発器を通過したガス冷媒と、過冷却熱交換器で冷却した冷媒とをバイパス配管を介して合流させてから圧縮機の吸入側に供給するように構成したものである。
しかし、この方法であっても、密閉容器外から圧縮室に至る間に、密閉容器内に設けられている電動機及び上述の摺動部などの発熱要素から、インジェクション配管に熱が伝達されてしまい、バイパス冷媒の冷却効果が低減し、圧縮機から吐出されるガス冷媒の温度を下げにくくなってしまうという課題がある。
また、冷媒としてHFO−1123とR32との混合冷媒、又はHFO−1123とHFO−1234yfとの混合冷媒などを採用した場合には、圧縮機から吐出されるガス冷媒の温度が下げにくいと、その分、不均化反応が起こってしまう可能性が高くなってしまう。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るスクロール圧縮機1の概略縦断面図である。図2は、図1に示す固定渦巻体11b及び揺動渦巻体12bと、吐出ポート11c及びインジェクションポート11eの説明図である。図1及び図2を参照してスクロール圧縮機1の構成について説明する。
本実施の形態1に係るスクロール圧縮機1は、スクロール圧縮機1から吐出される冷媒温度が下がりにくくなることを抑制する改良が加えられたものである。
スクロール圧縮機1は、外郭を構成する密閉容器21と、密閉容器21に冷媒を導く吸入管23及び圧縮された冷媒を吐出する吐出管24と、密閉容器21内に冷却した冷媒を供給するのに利用されるインジェクション配管27と、密閉容器21内の空間を区画するサブフレーム110と、冷凍機油が貯留される底部油溜22と、冷媒を圧縮するための固定渦巻体11bが形成された固定スクロール11と、固定スクロール11の上端面に設けられ、吐出管24が接続される吐出管接続部50とを有している。
また、スクロール圧縮機1は、冷媒を圧縮するのに利用される揺動渦巻体12bが形成された揺動スクロール12と、揺動スクロール12を収容するフレーム14と、揺動スクロール12を回転させる軸15と、冷凍機油を引き上げるオイルポンプ91と、軸15を回転させる電動機139と、揺動スクロール12を揺動運動させるオルダムリング13とを有している。
さらに、スクロール圧縮機1は、固定スクロール11の固定渦巻体11b及び揺動スクロール12の揺動渦巻体12bによって形成される圧縮室Aと、フレーム14の内側面、固定スクロール11及び揺動スクロール12によって形成され、圧縮室Aに連通する吸入室Bとを有している。
密閉容器21は、スクロール圧縮機1の外郭を構成するものである。密閉容器21内には、固定スクロール11、揺動スクロール12、フレーム14、軸15、電動機139、及びオルダムリング13などが設けられている。
また、密閉容器21の側面には密閉容器21内と連通する吸入管23が接続されている。さらに、密閉容器21の上部には最内室の圧縮室Aと連通する吐出管24及び圧縮室Aに冷媒を供給するのに利用されるインジェクション配管27が接続されている。
吸入管23は、スクロール圧縮機1に流入する冷媒を、密閉容器21内に導くための配管である。吸入管23は、密閉容器21内と連通するように、密閉容器21の側面に設けられている。
吐出管24は、スクロール圧縮機1で圧縮された冷媒を吐出させるための配管である。吐出管24は、密閉容器21を貫通して、一方の端部側が吐出管接続部50に接続されているものである。すなわち、吐出管24は、密閉容器21の内外に渡って設けられ、一方の端部側が吐出管接続部50に接続されて圧縮室Aと連通しているものである。
吐出管24のうちの密閉容器21内に設けられている部分は、図1に示すように、インジェクション配管27と同様に、上下方向に平行に延びるように設けられている。
インジェクション配管27は、密閉容器21内に設けられた固定スクロール11と揺動スクロール12との間に形成される圧縮過程の中間の圧縮室Aに冷媒を供給するのに利用される配管である。インジェクション配管27は、密閉容器21を貫通して、一方の端部側が吐出管接続部50に接続されているものである。すなわち、インジェクション配管27は、密閉容器21の内外に渡って設けられ、一方の端部側が吐出管接続部50に接続されて圧縮室Aと連通しているものである。
サブフレーム110は、密閉容器21内の空間を区画するように設けられ、軸15の下端側を回転自在に支持する副軸受20が設けられているものである。サブフレーム110の下側には、底部油溜22が設けられており、サブフレーム110の上側には、電動機139が設けられている。
底部油溜22は、冷凍機油を貯留するものである。この底部油溜22は、サブフレーム110の下側に設けられているものである。
なお、底部油溜22に貯留されている冷凍機油は、軸15の下側端部に設けられたオイルポンプ91によって、軸15に形成される冷凍機油通路(図示省略)を通って揺動スクロール12側に引き上げられるようになっている。
固定スクロール11は、揺動スクロール12とともに冷媒を圧縮するものである。固定スクロール11は、揺動スクロール12に対して対向配置されている。固定スクロール11は、水平面に対して略平行な台板11aと、台板11aの下面から下側に突出して形成された固定渦巻体11bとを有している。
凹状部11dは、上側から下側に向かって凹状となるように形成されているものであり、吐出ポート11cとの接続位置に、吐出弁11fが設けられている。凹状部11dは、一方が吐出ポート11cと連通し、他方が後述する吐出管接続部50の凹状部50aと連通するように台板11aに形成されているものである。
吐出弁11fは、予め設定された圧力より小さいと吐出ポート11cを閉塞し、圧縮室A側から吐出管24側に冷媒が流れることを規制するが、予め設定された圧力以上となると吐出ポート11cを開放するものである。
インジェクションポート11eは、台板11aを水平断面視したときにおける径方向において吐出ポート11c及び凹状部11dよりも外側に形成されている。
インジェクションポート11eは、一方が圧縮室Aと連通し、他方が後述する吐出管接続部50の凹状部50bと連通するように台板11aに形成されているものである。
インジェクションポート11eは、図2に示すように、吐出ポート11cを境にして、2つ形成されている。一方のインジェクションポート11eの形成位置は、後述する第1圧縮室Aaであり、他方のインジェクションポート11eの形成位置は、後述する第2圧縮室Abである。
しかし、本実施の形態1においてインジェクションポート11eは、固定スクロール11に形成されているため、その分、この摺動面から遠くなるとともに、摺動面が形成されるフレーム14とは別部材である分、摺動面で発生する摩擦熱がインジェクションポート11eを流れる冷媒に伝達されにくくなっている。
また、インジェクションポート11eは、揺動スクロール12を境にして、動力機構である電動機139が設けられている側とは反対側に位置するように設けられている。このため、電動機139に供給される電流によって生じる熱などが、インジェクションポート11eに伝達されにくくなっており、インジェクションポート11eを流れる冷媒が加温されてしまうことを抑制することができるようになっている。
また、本実施の形態1では、吐出ポート11c、凹状部11d及びインジェクションポート11eの水平断面形状は、円形であるものとして説明するが、それに限定されるものではなく、楕円形状であってもよいし、多角形であってもよい。
さらに、本実施の形態1では、インジェクションポート11eが2つ形成されているものとして説明したが、2つに限定されるものではなく、1つでも、3つ以上でもよい。なお、後述する第1圧縮室Aaに形成する個数及び第2圧縮室Abに形成する個数が等しくなるようにすると、第1圧縮室Aaの冷媒及び第2圧縮室Abの冷媒の両方の温度を均一に低減することができ、スクロール圧縮機1から吐出される冷媒の温度を効率的に低減することができる。
吐出管接続部50は、固定スクロール11の上端面に当接して設けられているものであり、吐出管24及びインジェクション配管27が接続されている。吐出管接続部50は、水平断面視したときの径方向の中央側に凹状部50aが形成され、凹状部50aの形成位置の外側に凹状部50bが形成されているものである。
凹状部50a及び凹状部50bは、下側から上側に向かって凹状となるように形成されているものである。凹状部50aの上端側は開口しており、吐出管24が接続されて吐出管24と連通している。
また、凹状部50bは、水平断面形状が、たとえばドーナツ状の凹部である。そして、凹状部50bの上端側は開口しており、インジェクション配管27が接続されてインジェクション配管27と連通している。すなわち、インジェクション配管27から供給された冷媒は、図1の紙面左側のインジェクションポート11eに流れるとともに、凹状部50bを回り込んで図1の紙面右側のインジェクションポート11eにも流れ込む。
このように、圧縮室Aと吐出管24とは吐出ポート11c、凹状部11d及び凹状部50aを介して連通している。
また、インジェクション配管27と圧縮室Aとは凹状部50b及びインジェクションポート11eを介して連通している。
揺動スクロール12は、固定スクロール11とともに冷媒を圧縮するものである。揺動スクロール12は、固定スクロール11に対して対向配置されている。揺動スクロール12は、水平面に対して平行な台板12aと、台板12aの上面から上側に突出して形成された揺動渦巻体12bと、台板12aの下側に形成されたボス部12cとを有している。
台板12aは、フレーム14上で揺動するようにフレーム14に支持されて設けられているものである。そして、台板12aは、軸15が回転することによってフレーム14上で揺動運動する。
ボス部12cは、台板12aの下側に形成された中空円筒形状の部材である。ボス部12cには、軸15の上端側が接続される。すなわち、ボス部12cに接続されている軸15が回転することで揺動スクロール12が回転するということである。
フレーム14は、揺動スクロール12が摺動可能なように、揺動スクロール12を収容するものである。すなわち、フレーム14の上面と揺動スクロール12の台板12aの下面とによって、摺動面が形成されている。
フレーム14は、上部及び下部が開放された形状をしている。そして、フレーム14は、フレーム14の上部は固定スクロール11の台板11aが設けられて閉塞されているとともに、フレーム14の下部には軸15が挿入されている。
フレーム14は、その外周面が密閉容器21の内周面に対向するとともに、自身の外側上部と固定スクロール11の台板11aの下端面のうちの外側とが対向するように、密閉容器21内で固定されているものである。
軸15は、軸15の上側端部に揺動スクロール12のボス部12cに接続される偏心部15aと、揺動スクロール12の揺動運動のバランスをとる第1バランサ15bが設けられている。また、軸15の内部には、底部油溜22から揺動スクロール12側に冷凍機油を導く冷凍機油通路(図示省略)が形成されている。
偏心部15aは、軸15の中心軸に対して水平方向に予め設定された寸法をずらして形成されている部分である。
第1バランサ15bは、軸15のうちの電動機139の上側であってフレーム14の下側に設けられているものである。第1バランサ15bは、揺動スクロール12及びオルダムリング13の運動に伴うアンバランスを抑制するのに利用される。
オイルポンプ91は、底部油溜22から冷凍機油を引き上げるものである。オイルポンプ91は、軸15の下側端部に設けられている。このオイルポンプ91は、たとえば遠心ポンプあるいは容積型ポンプなどのように、軸15の回転によってポンプ作用(差圧の利用)が生じるものを採用するとよい。
電動機139は、軸15を回転させるものである。この電動機139は、密閉容器21に固着支持されたステータ19と、ステータ19と組み合わされることでトルクを発生するロータ18とから構成されている。
電動機139は、揺動スクロール12、及び固定スクロール11などが設けられる上部空間と、底部油溜22が設けられる下部空間とを区画するように設けられている。
ステータ19は、たとえば、積層鉄心に複数相の巻線を装着して構成されている。
ロータ18は、たとえば、内部に図示省略の永久磁石を有し、ステータ19の内周面との間に、予め設定された空隙が形成されるように軸15に支持されているものである。そして、ロータ18は、ステータ19への通電がなされると回転駆動し、軸15を回転させるものである。なお、ロータ18には、揺動スクロール12とオルダムリング13の運動に伴うアンバランスを抑制するのに利用される第2バランサ18aが設けられている。
オルダムリング13は、揺動スクロール12の台板12aの下面の下側に配設され、揺動スクロール12の揺動運動中における自転運動を阻止するのに利用されるものである。 すなわち、オルダムリング13は、揺動スクロール12の自転運動を阻止し、揺動スクロール12を揺動させる機能を果たしているものである。
圧縮室Aは、台板11aの下面及び固定渦巻体11bと、台板12aの上面及び揺動渦巻体12bとによって形成されている。圧縮室Aは、吸入室Bと連通している。また、圧縮室Aは、第1圧縮室Aa及び第2圧縮室Abから構成されている。
より詳細には、第1圧縮室Aaは、固定渦巻体内側面11A、揺動渦巻体外側面12A、台板11aの下面及び台板12aの上面によって形成されている。
この第1圧縮室Aaには、インジェクションポート11eの一方が形成されている。ここで、第1圧縮室Aaのうちの吐出ポート11c側を最内室と定義し、第1圧縮室Aaのうちの吸入室B側を第1最外室と定義し、最内室と第1最外室との間を第1中間室と定義する。すなわち、図2に示す状態において、第1圧縮室Aaは、外側から第1最外室、第1中間室及び最内室を有しているということである。
このとき、図2に示す状態においては、一方のインジェクションポート11eが、第1最外室に位置していることが分かる。つまり、固定スクロール11のインボリュートの巻き終わりから内向面側に沿って約1周した位置に、一方のインジェクションポート11eが設けられている。
このとき、図2に示す状態においては、他方のインジェクションポート11eが、第2最外室に位置していることが分かる。つまり、揺動スクロール12のインボリュートの巻き終わりから内向面側に沿って約1周した位置に、他方のインジェクションポート11eが設けられている。
吸入室Bは、フレーム14の内側面、台板12aの外周部、固定渦巻体外側面11B、及び揺動渦巻体外側面12Aによって形成されている。吸入室Bは、圧縮室Aと連通している。このため、密閉容器21のうちのフレーム14の下側の空間から、フレーム14に供給された冷媒が吸入室Bに流れ込み、さらに、この吸入室Bに流れ込んだ冷媒が圧縮室Aに流れ込むこととなる。
ここで、スクロール圧縮機1の動作について簡単に説明する。
図1において、ステータ19に電力が供給されると、ロータ18がトルクを発生し、フレーム14の主軸受部と副軸受20とで支持された軸15が回転する。
揺動スクロール12は、ボス部12cを介して軸15の偏心部15aに接続されているため、軸15が回転すると揺動スクロール12も回転することとなる。なお、揺動スクロール12の自転運転はオルダムリング13によって規制されるため、揺動スクロール12は揺動運動することとなる。
このように、揺動スクロール12が揺動運転することで、圧縮室Aの容積が変化する。
揺動スクロール12の揺動運動に伴い、吸入管23から密閉容器21内にガス冷媒が吸入される。そして、この吸入されたガス冷媒は、吸入室Bを介して圧縮室Aに供給されて圧縮され、固定スクロール11に設けられている吐出ポート11cに送り込まれる。そして、この吐出ポート11cに送り込まれた冷媒の圧力が予め設定された圧力を超えると、吐出ポート11cの冷媒が吐出弁11fを上側に押しやることで吐出弁11fを通過して吐出管24に送り込まれる。
図3は、図1に示すスクロール圧縮機1を備えた冷凍サイクル装置100、101の構成例図及びこの冷凍サイクル装置100、101のモリエル線図である。
なお、図3(a1)は、中間圧まで減圧したバイパス冷媒をスクロール圧縮機1にインジェクションする場合の冷凍サイクル装置100の一例である。また、図3(b1)は、中間圧まで減圧したバイパス冷媒を、残りの主流冷媒と熱交換させることにより、主流冷媒の膨張弁前での過冷却度を大きくしてから、スクロール圧縮機1にインジェクションする場合の冷凍サイクル装置101の一例である。また、図3(a2)は図3(a1)における冷凍サイクル装置100のモリエル線図であり、図3(b2)は図3(b1)における冷凍サイクル装置101のモリエル線図である。
なお、インジェクション配管27は、スクロール圧縮機1が接続されている側とは反対側が、凝縮器2と第1膨張弁3との間に接続され、凝縮器2から流出する冷媒の一部を第2膨張弁28を介して圧縮室Aに供給する。
一方、インジェクション配管27に流入しない主流冷媒は、第1膨張弁3によって低圧まで減圧される。そして、主流冷媒は、蒸発器4を経てスクロール圧縮機1に吸入管23から吸入され、圧縮室A内で合流する。
高圧Pdである凝縮器2から流出した冷媒は、点expに対応しているが、この凝縮器2から流出した冷媒は、インジェクション配管27に流入するインジェクション分Yinjと、第1膨張弁3に流入する主流分(1−Yinj)に分かれる。
主流分(1−Yinj)は、第1膨張弁3によって低圧Psまで減圧され、インジェクション分Yinjは、第2膨張弁28で中間圧Pmまで減圧される。
中間圧Pmは、インジェクションポート11eの位置に応じて決まるものである。すなわち、インジェクションポート11eが開口している圧縮室Aの容積は、揺動スクロール12が一回転する間に変化するが、この中間圧Pmはその一回転する間における平均値となっている。また、中間圧Pmは、圧縮室Aへの吸入が完了した時からの圧縮比で決まる。
このとき、「点d1に対応する比エンタルピの冷媒(主流分(1−Yinj))」と、「Yinjに対応する比エンタルピの冷媒(インジェクション分Yinj)」とが混合することにより「点s2に対応する比エンタルピの冷媒」となる。
そして、「点s2に対応する比エンタルピの冷媒」は、圧縮室Aで圧縮されていき吐出ポート11cから吐出される。これが、点d2に対応している。
なお、図3(b2)に示すように、仮にインジェクションがなされないと、冷媒が圧縮されて点sから点dに移行することが分かる。すなわち、インジェクションを行った場合には、行わない場合よりも、比エンタルピを低くでき、スクロール圧縮機1から吐出される冷媒の温度を低下させることができることが分かる。
モリエル線図上では、図3(b2)に示すように、インジェクション分Yinjは、高圧Pdの点expから第2膨張弁28で減圧されて中間圧Pmの冷媒となる。
一方、主流冷媒は、この減圧された中間圧Pmのインジェクション分Yinjと、内部熱交換器29で熱交換して過冷却がされ、高圧Pdの点expから高圧Pdの点exp2に移行する。
主流冷媒は、蒸発器4に流入して比エンタルピが増大した後に、スクロール圧縮機1に吸入されて固定スクロール11及び揺動スクロール12によって圧縮されることとなるが、ある一定圧力まで圧縮されたところで、すなわち点sから点d1まで圧縮されたところで、インジェクションポート11eからインジェクション分Yinjの冷媒がインジェクションされる。
このとき、「点d1に対応する比エンタルピの冷媒(主流分(1−Yinj))」と、「Yinjに対応する比エンタルピの冷媒(インジェクション分Yinj)」とが混合することにより「点s2に対応する比エンタルピの冷媒」となる。その後、「点s2に対応する比エンタルピの冷媒」は、圧縮室Aで圧縮され点d2に対応する冷媒となる。
このように、冷凍サイクル装置101も、インジェクションを行った場合には、行わない場合よりも、比エンタルピを低くでき、スクロール圧縮機1から吐出される冷媒の温度を低下させることができることが分かる。
hs2 =(1−Yinj)・hd1+Yinj・hinj …(1)
なお、図3(a2)の場合は、次の関係(2)が成立している。
hinj =hexp …(2)
また、図3(b2)の場合は、次の関係(3)が成立している。
hinj =hexp +(1−Yinj)/Yinj・(hexp −hexp2) …(3)
したがって、運転条件Pd(点exp)及びPs(点s)からインジェクションポート11eの位置で中間圧Pm(点d1)が与えられ、許容できる吐出温度から点d2→点s2がわかる。こうして、hs2 から図3(a2)では一義に、図3(b2)ではhexp2 に応じてYinjが定まる。
このように、第1膨張弁3及び第2膨張弁28の開度を制御して、インジェクション分Yinjと主流分(1−Yinj)との大小を変える、すなわち分流比を変えることにより、スクロール圧縮機1から吐出される冷媒の温度を調整することができる。
本実施の形態1に係るスクロール圧縮機1は、インジェクションポート11eが固定スクロール11に設けられ、また、インジェクション配管27のうちの密閉容器21内の部分が、揺動スクロール12及び固定スクロール11を境にして、動力機構である電動機139が設けられている側とは反対側に位置するように設けられている。
このため、揺動スクロール12とフレーム14との摺動面で発生する摩擦熱及び電動機139に供給される電流によって生じる熱などによってインジェクション配管27を流れる冷媒が加温されてしまうことを抑制することができ、スクロール圧縮機1から吐出される冷媒の温度を低下させにくくなることを抑制することができる。
そして、冷凍サイクル装置100、101にR32冷媒が採用されている場合においても、スクロール圧縮機1から吐出される冷媒の温度を低下させにくくなることを抑制することができ、装置の信頼性を高めることができる。
また、冷凍サイクル装置100、101は、上述のようにスクロール圧縮機1から吐出される冷媒の温度を、低下させにくくなることを抑制することができるため、HFO−1123とR32との混合冷媒、又はHFO−1123とHFO−1234yfとの混合冷媒が採用されている場合においても不均化反応が発生することを抑制することができる。すなわち、冷凍サイクル装置100、101は、HFO−1123をR32、或いはHFO−1234yfを混合して用いることで、HFO−1123の割合が減る分、不均化反応を抑制することができるだけでなく、スクロール圧縮機1から吐出される冷媒の温度を、低下させにくくなることを抑制できるため、より一層不均化反応を抑制することができる。
図4は、実施の形態2に係るスクロール圧縮機1Aの概略縦断面図である。図5は、図1に示す固定渦巻体11b及び揺動渦巻体12bと、吐出ポート11c、インジェクションポート11e及びサブ吐出ポート11gの説明図である。なお、本実施の形態2では、実施の形態1と同一部分には同一符号とし、実施の形態1との相違点を中心に説明するものとする。
スクロール圧縮機1Aは、密閉容器21の内外に渡って設けられ、一方が圧縮室A側に連通し、他方がインジェクション配管27側に連通する中間冷却管9を有している。この中間冷却管9は、密閉容器21内の固定スクロール11内の流路(後述の第1通路11k及び第2通路11l)と連通するように、密閉容器21の側面に接続されている。
スクロール圧縮機1Aは、固定スクロール11が、固定スクロール11の中央部に形成され、圧縮室Aで圧縮された冷媒を吐出する吐出ポート11cに加えて、次の構成を有している。すなわち、固定スクロール11は、圧縮室Aに開口する第1開口部11iが、固定スクロール11の径方向における吐出ポート11cとインジェクションポート11eとの間に形成され、中間冷却管9と連通するサブ吐出ポート11gを有している。
なお、サブ吐出ポート11gは、インジェクションポート11eと同様に2つ設けられている。一方のサブ吐出ポート11gは、第1圧縮室Aaの第1中間室に設けられている。他方のサブ吐出ポート11gは、第2圧縮室Abの第2中間室に設けられている。
このとき、図5に示す状態においては、一方のインジェクションポート11eは、固定スクロール11のインボリュートの巻き終わりから内向面側に沿って約1周半した位置に設けられている。また、他方のインジェクションポート11eは、揺動スクロール12のインボリュートの巻き終わりから内向面側に沿って約1周半した位置に設けられている。
逆止弁11hは、第2開口部11jに設けられ、第1通路11kの冷媒が予め設定された圧力よりも大きくなると、第1通路11k側から吐出ポート11cの吐出側の空間である凹状部50a側に冷媒を流す機能を有するものである。
すなわち、高圧縮比の運転条件では、スクロール圧縮機1Aから吐出される冷媒の温度が上昇してしまうので、抽出された冷媒を冷却し、インジェクション配管27を介してインジェクションポート11eから圧縮室A内に戻し、圧縮室A内の冷媒の比エンタルピを下げる。これにより、スクロール圧縮機1から吐出される冷媒の温度を抑制することができる。
図6は、実施の形態2に係るスクロール圧縮機1Aの中間冷却運転時の動作を説明する模式図である。図7は、図4に示すスクロール圧縮機1Aを備えた冷凍サイクル装置102、103の構成例図及びこの冷凍サイクル装置102、103のモリエル線図である。
なお、図7(a)に示す冷凍サイクル装置102及び図7(b)に示す冷凍サイクル装置103は共に、サイクル的には同じことで図7(c)に示すモリエル線図となる。
ここで、図6(a)と図6(b)との間で第2最内室と第2中間室が連通して、最内室となる。また、それまで第2最外室であったものが第2中間室となる。そして、図6(c)の後であって図6(a)の前では、揺動渦巻体12bの巻終わりがシール点となって、新たに第2最外室を形成する。
そして、図7(a)の冷凍サイクル装置102では、蒸発器4は、第1膨張弁3とスクロール圧縮機1の冷媒吸入側との間に接続される第3流路と、一方が中間冷却管9に接続され、他方がインジェクション配管27に接続される第4流路及び第5流路とを有し、第3流路を流れる冷媒と第4流路を流れる冷媒とを熱交換させる熱交換器である。
なお、図7(b)の冷凍サイクル装置103では、蒸発器4は、第5流路が設けられていない。
このように、蒸発器4は、第1膨張弁3に接続される第3流路を流れる冷媒と、スクロール圧縮機1の中間冷却管9に接続される第4流路(或いは第4流路及び第5流路)を流れる冷媒と、を熱交換させて第4流路(或いは第4流路及び第5流路)を流れる冷媒を冷却する機能を有するものである。
ここで、第4流路(或いは第4流路及び第5流路)に対応する構成は、以下の説明において、中間冷却器10とも称するものとする。
サブ吐出ポート11gからインジェクションポート11eの途中に設けた中間冷却器10で冷却することにより、インジェクションポート11eが開口している圧縮室Aの比エンタルピを下げることができる。
図6(c)の状態では、サブ吐出ポート11gとインジェクションポート11eが同じ圧縮室Aに開口することになるので、両ポート間は均圧状態で中間冷却は行なわれない。
すなわち、「中間冷却管9からの冷媒の抽出」、「中間冷却器10での冷媒の冷却」及び「インジェクション配管27により圧縮室Aへのインジェクション」の動作は間欠的となる。これにより、サブ吐出ポート11gからインジェクションポート11e間の「差圧状態と均圧状態との時間的比率」及び「差圧の大きさ」は、サブ吐出ポート11g及びインジェクションポート11eの形成位置に依存する。
したがって、ポート形成位置の設定と、中間冷却流量調整弁7の開度制御により、中間冷却量を増減し、スクロール圧縮機1から吐出される冷媒の温度を調整することができるということである。
蒸発器4を出てスクロール圧縮機1に吸入(点s)された冷媒は、インジェクションポート11eに対応する中間圧Pmsまで圧縮されると、サブ吐出ポート11gに対応する中間圧Pmdで圧縮室Aから抽出(点md2)される。
そして、中間冷却管9を介して圧縮室Aから抽出された冷媒は、中間冷却器10に供給され、蒸発器4を通過する冷媒によって冷却される(点md1)。この冷却された冷媒がインジェクション配管27を介して圧縮室Aに戻されて混合することにより、比エンタルピが減少する(点s2)。
このため、中間冷却しなかった場合(点d)よりも、比エンタルピが低い、すなわちスクロール圧縮機1から吐出される冷媒の温度が低い状態で吐出することができる(点d2)。
このとき、スクロール圧縮機1から吐出される冷媒(点d2)の温度が、予め設定された値となるような、中間圧Pmsにおけるインジェクション後(点s2)の状態量は一義に決まる。
点s2から点d2への圧縮過程中の中間圧PmdでSPからの抽出量をサイクル全体の循環量1に対する分流比Ybpとし、分流比Ybp分の冷媒の中間冷却器出口(点md1)での比エンタルピをhmd1 とすると、IJPでのインジェクション後の状態量が、点d2で予め設定された吐出温度となるような点s2となるという制約条件に対して、比エンタルピhmd1 を与えれば分流比Ybpが決定される。
比エンタルピhd1で1の冷媒と比エンタルピhmd1 で分流比Ybpの冷媒が混合して、比エンタルピhs2となることから、
(1+Ybp)・hs2 = hd1 + Ybp・hmd1 …(4)
すなわち
hd1 − hs2 = Ybp・(hs2 − hmd1 ) …(5)
を満たすために、与えられた比エンタルピhs2と比エンタルピhd1に対して比エンタルピhmd1 が大きい(中間冷却量が小さい)場合は分流比Ybpを大きく、比エンタルピhmd1 が小さい(中間冷却量が大きい)場合は分流比Ybpを小さく、することになる。
△hW =1・(hd1 − hs )+(1 + Ybp)(hmd2 − hs2)+1・(hd2 −hmd2 )
=(hd1 − hs )+(hd2 − hs2)+Ybp・(hmd2 − hs2)…(6)
蒸発器4での冷凍能力に対応するエンタルピ差△hQ は(図7(c)の点expも参照して)
△hQ = 1・(hs − hexp )− Ybp・(hmd2 − hmd1 )…(7)
となり、△hQ /△hW がサイクルC.O.P.に相当する。
本実施の形態2に係るスクロール圧縮機1A及びそれを備えた冷凍サイクル装置102、103は、本実施の形態1に係るスクロール圧縮機1及びそれを備えた冷凍サイクル装置100、101と同様の効果を奏する。
Claims (8)
- 密閉容器と、
前記密閉容器に収容され、第1渦巻体が形成されている揺動スクロールと、
前記密閉容器の内周面に固定され、前記第1渦巻体とともに冷媒を圧縮する第2渦巻体が形成され、前記揺動スクロールとの間に圧縮室を形成する固定スクロールと、
前記密閉容器の内外に渡って設けられ、前記圧縮室に冷媒を供給するのに利用されるインジェクション配管と、
前記固定スクロールの上端面に当接して設けられ、前記インジェクション配管が接続された吐出管接続部と、
前記密閉容器に収容され、一方の端部が前記揺動スクロールのうちの前記固定スクロールが設けられている側とは反対側に接続され、前記揺動スクロールを揺動運動させる回転軸と、
前記密閉容器に収容され、前記回転軸の他方が接続され、前記回転軸を回転させる動力機構と、
前記密閉容器の内外に渡って設けられ、一方が前記圧縮室側に連通し、他方が前記インジェクション配管側に連通する中間冷却管と、
を有し、
前記インジェクション配管は、
前記密閉容器内の部分が、前記揺動スクロール及び前記固定スクロールを境にして、前記動力機構が設けられている側とは反対側に位置するように設けられ、
前記固定スクロールは、
一方が前記インジェクション配管と連通し、他方が前記圧縮室と連通するインジェクションポートと、
前記固定スクロールの中央部に形成され、前記圧縮室で圧縮された冷媒を吐出する吐出ポートと、
前記圧縮室に開口する第1開口部が、前記固定スクロールの径方向における前記吐出ポートと前記インジェクションポートとの間に形成され、前記中間冷却管と連通するサブ吐出ポートとを有するスクロール圧縮機。 - 前記サブ吐出ポートは、
前記固定スクロールの上下方向に延びるように形成され、前記第1開口部と前記吐出ポートの吐出側の空間に開口する第2開口部とを連通する第1通路と、
前記固定スクロールの径方向に延びるように形成され、一方が前記第1通路に連通し、他方が前記中間冷却管に連通する第2通路とを有する請求項1に記載のスクロール圧縮機。 - 前記第2開口部に設けられ、前記第1通路の冷媒が予め設定された圧力よりも大きくなると、前記第1通路側から前記吐出ポートの吐出側の空間側に冷媒を流す逆止弁を有する請求項2に記載のスクロール圧縮機。
- 請求項1に記載のスクロール圧縮機と、
前記スクロール圧縮機の冷媒吐出側に接続され、前記スクロール圧縮機から流出する冷媒を凝縮させる凝縮器と、
一方が前記凝縮器に接続され、前記凝縮器から流出する冷媒を減圧させる第1膨張弁と、
一方が前記第1膨張弁に接続され、他方が前記スクロール圧縮機の冷媒吸入側に接続され、前記第1膨張弁から流出する冷媒を蒸発させる蒸発器と、
前記スクロール圧縮機の前記インジェクション配管に接続される第2膨張弁と、
を有し、
前記インジェクション配管は、
前記スクロール圧縮機が接続されている側とは反対側が、前記凝縮器と前記第1膨張弁との間に接続され、前記凝縮器から流出する冷媒の一部を前記第2膨張弁を介して圧縮室に供給する冷凍サイクル装置。 - 前記凝縮器は、
前記凝縮器と前記第1膨張弁との間に接続される第1流路と、
前記インジェクション配管のうちの前記第2膨張弁よりも下流側に接続される第2流路とを有し、前記第1流路を流れる冷媒と前記第2流路を流れる冷媒とを熱交換させる熱交換器である請求項4に記載の冷凍サイクル装置。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機と、
一方が前記スクロール圧縮機の冷媒吐出側に接続され、前記スクロール圧縮機から流出する冷媒を凝縮させる凝縮器と、
一方が前記凝縮器に接続され、前記凝縮器から流出する冷媒を減圧させる第1膨張弁と、
一方が前記第1膨張弁に接続され、他方が前記スクロール圧縮機の冷媒吸入側に接続され、前記第1膨張弁から流出する冷媒を蒸発させる蒸発器と、
前記スクロール圧縮機の前記中間冷却管に接続される第2膨張弁と、
を有し、
前記蒸発器は、
前記第1膨張弁と前記スクロール圧縮機の冷媒吸入側との間に接続される第3流路と、
一方が前記中間冷却管に接続され、他方が前記インジェクション配管に接続される第4流路とを有し、前記第3流路を流れる冷媒と前記第4流路を流れる冷媒とを熱交換させる熱交換器であり、
前記インジェクション配管は、
前記中間冷却管及び前記第4流路を介して供給された冷媒を圧縮室に供給する冷凍サイクル装置。 - 前記冷凍サイクル装置を循環する冷媒をR32冷媒、HFO−1123とR32との混合冷媒、又はHFO−1123とHFO−1234yfとの混合冷媒としている請求項4〜6のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
- 前記スクロール圧縮機は、
前記密閉容器に接続され、前記密閉容器内に冷媒を供給する吸入管を有し、
前記スクロール圧縮機の前記圧縮室は、
前記密閉容器内のガス冷媒が供給され、ガス冷媒を圧縮する請求項4〜7のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
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