本発明者らは、金属石鹸と窒化ホウ素(以下、BNともいう)とを主成分とする保護剤ブロックにおいて、保護剤ブロックが薄い状態では、良好な保護剤ブロックが製造できるのであるから、薄い保護剤ブロックを作製し、その上にさらに保護剤ブロックを形成すれば、厚い保護剤ブロックができるのではないかと考えた。そこで、保護剤ブロックを作製してみたが、最初に作製した保護剤ブロックとその上に作製した保護剤ブロックとの界面で亀裂が起きやすかった。また一回に作製する保護剤ブロックの厚みを薄くすればするほど各保護剤ブロックの界面に亀裂が生じることはなくなるのであるが、厚い保護剤ブロックを作製するための時間がかかりすぎ、製造コストが増大してしまった。
なお、金属石鹸と窒化ホウ素とを主成分とするとは、保護剤ブロック全体に対して、金属石鹸と窒化ホウ素の合計が占める割合が50%以上であることをいい、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。
本発明者らは、検討の過程で、薄く作製した保護剤ブロックを粉砕してみた。そうすると、粉砕した粒子は、投入前の粒子に比べてはるかに大きいにもかかわらず、粉砕した粒子中の金属石鹸とBNは一体になっており、BNが脱離しているということが特にないことを突き止めた。この粒子を、保護剤ブロックを製造する成形型に投入して保護剤ブロックの厚みが15mm以上の保護剤ブロックを作製し、画像形成装置に組み込み、画像形成を行ったところ、長期にわたって、高品質の画像形成を行うことができることを見出した。
長期にわたって高画質の画像形成を行うことのできる保護剤ブロックの粉砕した粒子は、金属石鹸が、BNを包みこむようにしていることを見出した。金属石鹸は、圧縮されることにより扁平な粒子となり、扁平になった粒子同士が圧力により融合する。その際、金属石鹸の粒子の隙間に、BNが保持されていることを見出した。
逆に、大きな金属石鹸粒子の周囲にBNを付着させた粒子を作製し、保護剤ブロックを作製したところ、保護剤ブロックはもろくて崩れやすく、ブラシを押し当てて微粉化すると、大きな粒子になってしまうことが分かった。これは、BN自体は、圧力で融合することがないため、金属石鹸粒子の外側にBNがあると、金属石鹸粒子同士の融合を妨げてしまうことが分かった。
このため、金属石鹸粒子が、BN粒子を抱え込むような大きな粒子を作製し、その大きな粒子を圧縮成形すれば、保護剤ブロックの厚みが15mm以上であっても、形状的には全く問題のない保護剤ブロックを作成することができた。
作製した保護剤ブロックについて、ATR法によりIRスペクトルを測定したところ、原料の金属石鹸とBNとの配合比と異なり、BNのピークが小さめに検出された。これは、ATR法の測定領域の性質によるものである。ATR法は、測定するIR光の波長により、測定されるサンプルの深さが異なる。金属石鹸のピークである1538cm−1、BNのピークである1378cm−1では、IR光の侵入深さは0.6μm程度しかなく、金属石鹸粒子がBN粒子を包み込むようにして作製した大きな粒子から作製した保護剤ブロック表面は、金属石鹸の割合の方が多く、IRスペクトルでは、金属石鹸が多めに検出されるためである。保護剤ブロックを粉砕し、十分混合すると、原料の金属石鹸とBNの配合比通りのIRスペクトルが得られるようになる。
保護剤ブロック表面は、扁平に引き伸ばされた金属石鹸粒子が、配向したような形である。この保護剤ブロックにブラシを押し付けて摺擦することにより、扁平に引き伸ばされた金属石鹸は保護剤ブロックから剥がれていき、金属石鹸に包み込まれていたBN粒子も順次、剥がれていく。このようにして微粉化された保護剤粒子は、金属石鹸、BNともに一次粒子に近い粒子になっているため、像担持体に供給される時には、均一な微粉末の保護剤粒子となっている。そのため、感光体に供給される保護剤粉末のIRスペクトルをATR法により測定すると、原料の金属石鹸とBNの配合比通りのIRスペクトルが得られる。このような構成にすることにより、高画質の画像形成を、長期にわたって行うことができる画像形成装置を提供することができることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、金属石鹸と窒化ホウ素とを主成分とする保護剤ブロックに、ブラシ、あるいは弾性体を押し付けて微粉化し、像担持体上に保護剤を塗布する画像形成装置において、保護剤ブロックをATR法(クリスタル:Ge、入射角:45°、1回反射、加圧力:3kg/1.5mmφ)により測定したIRスペクトルから得られるピーク面積比Mr 2 =ABN/ASPが、保護剤ブロックにブラシあるいは弾性体を押し付けて微粉化した保護剤粉のピーク面積比Mr 1 よりも小さいことを特徴とする画像形成装置である。
図1に、本発明の一例である、保護剤ブロックと像担持体に供給される保護剤粉のIRスペクトルを示す。このIRスペクトルは、ATR法(クリスタル:Ge、入射角:45°、1回反射、加圧力:3kg/1.8mmφ)で測定されている。保護剤ブロックを加圧力3kg/1.5mmφで測定すると、保護剤ブロックは潰れるが、潰れたままの状態で測定している。
金属石鹸のピークは1538cm−1であり、BNのピークである1378cm−1であることから、像担持体に供給される保護剤粉の方が、保護剤ブロックよりも、BNのピークと金属石鹸のピークの大きさの比が大きいことが分かる。即ち、像担持体に供給される保護剤粉の方が、保護剤ブロックよりも、BNの割合が大きいことを意味している。これは、前述のように、ATR法によるものであり、サンプルを溶解して元素分析を行うICP−AESでBNと金属石鹸の重量比は、像担持体に供給される保護剤粉と保護剤ブロックで変わらないことを確認している。また、保護剤ブロックを作製する原料、及び保護剤ブロックを粉砕し、十分混合したものをATR法によりIRスペクトルを測定しても、像担持体に供給される保護剤粉と変わらないことを確認している。
本発明におけるABN、ASPの求め方の一例を図2−a、図2−bにそれぞれ示す。各IRスペクトルのベースの線よりも上で、領域の範囲の面積が、それぞれABN、ASPとなる。
ABNとASPの面積比Mr=ABN/ASPは、ATRの測定領域におけるBNと金属石鹸の重量比と相関している。
本発明の画像形成装置においては、保護剤ブロックのMr1は、像担持体に供給される保護剤粉のMr2よりも大きく、好ましくはMr2/Mr1は0.50〜0.85、更に好ましくは0.60〜0.80である。
Mr1がMr2以下であると、15mm以上の厚みの保護剤ブロックを作製することが難しく、かつ、像担持体に供給される保護剤粉は大きな粒子となり、保護剤を像担持体上に、均一な薄膜とすることが難しくなり好ましくない。
本発明の画像形成装置において、Mr2は、0.85〜5.60、好ましくは1.00〜5.00、さらに好ましくは1.20〜4.50である。Mr2が0.85より大きいことにより、保護剤粉中のBNの割合が少なすぎず、金属石鹸粉のブレードをすり抜ける量が多くなることがなく、スジ状の異常画像を引き起こすことがなく、好ましい。Mr2が5.6以下であることにより、高価なBNを多く使うことがなく、保護剤ブロックのコストが高くならず、BNが像担持体上に堆積して、高温高湿環境でシャープな画像が得られにくくなるということがない。
本発明の画像形成装置において、Mr1とMr2を適切なものとするためには、保護剤ブロック及び、保護剤ブロックを摺擦して保護剤粉を作製する工程が重要となる。
(保護剤ブロック)
本発明における保護剤ブロックは、ATR法でIRスペクトルを測定すると、原料の保護剤粉を十分混合したものよりも、金属石鹸が多く検出されるようになる。このためには、保護剤ブロックを製造する際、金属石鹸の一次粒子が、BNの粒子を包み込むように造粒された、大きな保護剤の粒子を用いる。この大きな保護剤の粒子を用いて保護剤ブロックを作製することにより、15mm以上の厚い保護剤ブロックであっても、圧縮成形により問題なく作製することができる。
また本発明画像形成装置に用いる保護剤ブロックの厚みは、Mr1、Mr2を満たすのであれば、どのような厚みであっても高画質の画像形成を行うことができるが、保護剤ブロックの厚みが15mm以上で特に有効であり、好ましくは16〜30mm、さらに好ましくは17〜28mmに好適である。なお、保護剤ブロックの厚みは、保護剤ブロックを画像形成装置に搭載した際、保護剤ブロックを掻き取るブラシが接する面と、保護剤ブロックを固定した基材との距離である。保護剤ブロックの厚みが15mmよりも薄いと、像担持体の寿命よりも保護剤ブロックの寿命の方が短くなり、像担持体の交換頻度が高くなる。
また、本発明で使用する金属石鹸は、ステアリン酸亜鉛及び/又はパルミチン酸亜鉛、すなわちステアリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物のいずれかであることが好ましい。これらの金属石鹸は、ほとんど同じIRスペクトルを持っているため、どの金属石鹸を用いても、基本的にはMr1、Mr2の関係は保たれる。
これらの金属石鹸の中で、ステアリン酸亜鉛−パルミチン酸亜鉛の混合物は像担持体像の線速が速い場合、像担持体上に、均一に被覆されやすく、またAC帯電による像担持体の保護効果も高く好ましい。
ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛は、何れも脂肪酸金属塩であるが、脂肪酸部分は、ステアリン酸が炭素数18であり、パルミチン酸は炭素数16である。そのため、ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛は構造が似ていてよく相溶し、ほぼ、同じ材料としてふるまい、何れも像担持体を同じように保護することができる。
なお、パルミチン酸亜鉛はステアリン酸亜鉛に比べて融点が低いため、ステアリン酸亜鉛に一定量以上含有していると、ブレードにより保護剤が引伸ばされやすくなるため、像担持体の線速が速くても、保護剤は十分像担持体を被覆できる。
また、像担持体の線速が速くなると、像担持体に降り注ぐ帯電のエネルギー、特にAC帯電のエネルギーはより強くなるため、保護剤による像担持体の保護効果を高めるように、像担持体上の保護剤の厚みを厚くしておく必要がある。
また、ステアリン酸亜鉛は、像担持体上にランダムに付着しているのではなく、2分子で付着した状態が安定といわれている。すなわち、ステアリン酸亜鉛を像担持体上に塗布しても、ステアリン酸亜鉛の2分子分の厚みで飽和してしまう。ここにステアリン酸亜鉛に比べ、分子の長さが若干小さいパルミチン酸亜鉛が一定量以上含有すると、分子層の高さは一定ではなくなり、低い部分と高い部分とが共存するようになる。すると次の分子が低い部分に入り込み、分子層を形成するようになる。そのため、結果的に2分子よりも厚い保護剤層を形成することができ、像担持体の保護効果が向上する。当然、パルミチン酸亜鉛の量が多くなりすぎると、パルミチン酸亜鉛の2分子層が形成されやすくなり、保護剤の厚みは厚くはならない。そればかりか、パルミチン酸亜鉛は、ステアリン酸亜鉛よりも小さいため、ステアリン酸亜鉛単独に比べても像担持体の保護効果は低下する。
また、本発明の保護剤ブロックには、金属石鹸とBNの他に、フィラーの役割をする微粒子を含有していることが好ましい。BNと共にフィラーが含有されていることにより、フィラーが、保護層中にも含まれることとなり、像担持体上に付着しすぎたBNを削り取る役割を果たしてくれる。BNと共に含有するフィラーとしては、発明の目的を阻害しないものであれば、特にその種類が制限ざれるものではない。例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の金属酸化物微粒子や金属複酸化物微粒子、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子等の有機微粒子等を用いることができる。これらの中でも、アルミナ粒子がその安定性、硬度、各種の粒子形状の微粒子の入手容易性等の面から好ましい。
本発明におけるこのような保護剤ブロックは、像担持体等を保護する金属石鹸と窒化ホウ素(BN)を主成分とする保護剤を、本発明における保護剤ブロックの製造方法により、ブロック状(棒状、円柱状、四角柱状、六角柱状等)に成形することによって得られる。
本発明の保護剤ブロックは、像担持体の保護に非常に有用であるが、中間転写体の保護にも用いることができる。
(保護剤ブロックの製造方法)
つぎに、本発明の画像形成装置に用いる保護剤ブロックの製造方法について説明する。
金属石鹸粒子とBN粒子をそのまま用いて圧縮成形した場合、特に厚さ15mm以上の保護剤ブロックを製造する場合は、金属石鹸粒子やBN粒子が成形型の隙間から漏れ出たりして、均一な組成分布の保護剤ブロックを製造することが難しかった。
本発明の画像形成装置に用いる保護剤ブロックを得るには、まず、少なくとも金属石鹸の粉体と窒化ホウ素(BN)の粉体を含む混合物(粉体混合物)を圧縮成形する。そして、この成形物を粉砕処理して、平均粒径30〜300μmの金属石鹸と窒化ホウ素を主成分とする保護剤粒子を得る粒子化工程と、前記保護剤粒子を圧縮成形して保護剤ブロックとする圧縮成形工程とを含む製造方法によって製造される。
ここで、前記粒子化工程で行う加工処理としては、平均粒径30〜300μmの金属石鹸と窒化ホウ素を主成分とする保護剤粒子が得られる処理である。例えば金属石鹸の粉体と窒化ホウ素(BN)の粉体を含む混合物を溶融した後に粉砕した場合、得られる保護剤微粒子は緻密で硬い粒子となる。この粒子を用いて圧縮成形した保護剤ブロックは保護剤塗布装置において動力系にかかる負荷が大きくなるとともに、像担持体に供給される保護剤の粉による保護剤の均一な薄膜化は難しく、好ましくない。また、この場合、Mr1とMr2はほぼ同じ値となる。
そこで、粒子化工程で行う加工処理としては、少なくとも金属石鹸の粉体と窒化ホウ素(BN)の粉体を含む粉体混合物を圧縮成形し、その成形物を粉砕する処理が好ましい。
このとき、必要に応じて粉砕したものを平均粒径30〜300μmの粒子のみを選び出すように分級するとよい。圧縮成形のときの加圧力により、粉体混合物の粉体同士の接触している部分の一部で融けあっており、粉砕後もその状態が保たれて一体となった保護剤粒子となっている。このような状態の保護剤粒子を用いると、保護剤塗布装置で塗布されたときに像担持体表面でほぐれやすく、容易に像担持体表面に拡がるようになる。
保護剤ブロック全体では金属石鹸の量がBNの量よりも多いため、基本的にはBNを包み込むように金属石鹸が引き伸ばされて融合されていくが、金属石鹸は、できるだけ一次粒子に近い粒子を用い、BNは二次粒子を保った状態で、混合すると良い。一次粒子の金属石鹸粒子と、二次粒子のBNを、それぞれの状態を保ったまま圧縮すると、金属石鹸粒子は引き伸ばされて扁平となり、その間にあったBNは、金属石鹸粒子が引き伸ばされるのに引きずられてBNの二次粒子は崩れ、保護剤ブロック中にBNが一次粒子に近い形で存在することになる。
また、前記粒子化工程で行う加工処理としては、少なくとも金属石鹸の粉体と窒化ホウ素(BN)の粉体を含む粉体混合物をローラで加圧する処理であることが好ましい。図3にその例を示す。ここでは、圧接した一対の加圧ローラ1を回転させながら、上方より少なくとも金属石鹸の粉体と窒化ホウ素(BN)の粉体を均一に混合した粉体混合物Pmを加圧ローラ1間に投入し、粉体混合物Pmを加圧ローラ1で加圧している。また、スクレバー2により加圧ローラ1表面に付着する粉体混合物Pmを掻き落とすようになっている。このとき、粉体混合物Pmの粉体同士で接触している部分の一部が結合する程度に加圧するとよい。これにより、粉体混合物Pmの粉体同士の接触している部分の一部で融けあった、平均粒径30〜300μmの扁平形状の保護剤粒子gmが得られる。
あるいは、図4に示すように、圧接した一対の加圧ローラ1を回転させながら、搬送ベルト3で少なくとも金属石鹸の粉体と窒化ホウ素(BN)の粉体を均一に混合した粉体混合物Pmを加圧ローラ1間に投入し、粉体混合物Pmを加圧ローラ1で加圧するようにしてもよい。これによっても、加圧ローラ1の加圧により粉体混合物Pmの粉体同士の接触している部分の一部で融けあって、平均粒径30〜300μmの扁平形状の保護剤粒子gmが得られる。
このようにして得られるいずれの保護剤粒子gmによっても、保護剤粒子gmから作製される保護剤ブロックを用いて保護剤塗布装置で塗布すると保護剤粒子gmが像担持体表面でほぐれやすく、金属石鹸と窒化ホウ素(BN)の成分が容易に像担持体表面に拡がるようになる。
なお、図3,図4では加圧ローラによる粉体混合物の加圧を例示しているが、ローラをギアに代えてもよい。また得られた粒子について、必要により分級し、必要な粒径の粒子のみにしたり、不要な粒子を除去したりして保護剤粒子gmとしてもよい。
また、金属石鹸の粉体と窒化ホウ素(BN)の粉体の混合は、水平円筒型、V型、ダブルコーン型、立方体型等の容器回転型混合機、あるいは混合羽根、気流、重力等を用いて混合する容器固定型混合機等、公知の混合機を用いて混合することができる。
また、本発明における保護剤ブロックの製造方法における各工程(粒子化工程、圧縮成形工程)では、熱の発生を抑え、金属石鹸が完全に溶融しない状態にすることが重要である。仮に熱がかかり金属石鹸が溶融してしまうと、厚みのある、特に15mm以上の厚さの保護剤ブロックを製造した場合、保護剤ブロックの硬さが、場所により大きく変わってしまう。このため、保護剤塗布装置のブラシで掻き取った際の保護剤の量や大きさに大きなバラツキが生じてしまう。そうすると、像担持体を被覆する保護剤にムラが生じ、保護剤の少ない場所のクリーニング性が低下するとともに、トナー成分が付着して鮮明な画像が得られなくなってしまう。
また、金属石鹸と窒化ホウ素(BN)を主成分とする保護剤粒子gmの平均粒径は、30〜300μmであることが好ましく、より好ましくは35〜270μm、さらに好ましくは40〜250μmである。平均粒径が30μm以上であることにより、厚い保護剤ブロック、特に厚みが15mm以上の保護剤ブロックを作製しても、保護剤ブロックの機械的強度が不均一になることがない。また平均粒径が300μm以下であることにより、作製された保護剤ブロックの表面の凹凸が大きくなることがない。また、保護剤粒子に部分的に大きな力がかかることがなく、その部分で溶融が起きてブラシで掻き取った際に、掻き取られた保護剤の大きさに差が生じることがなく、像担持体の保護機能にムラが生じることがない。
また、金属石鹸と窒化ホウ素(BN)を主成分とする保護剤粒子gmの金属石鹸は、特開2010−26461号公報記載の保護剤ブロックの断面のように、劈開面を有する形状をしていることが好ましい。これにより、保護剤粒子gmを用いて厚みのある、特に15mm以上の厚さの保護剤ブロックを製造しても、金属石鹸粒子が薄い形状となり、塗布後にブレードで引き延ばされて像担持体を被覆しやすくなり好ましい。
また、前記の保護剤ブロックを形成する前の保護剤粒子gmについてATR法によりMrを求めると、これは基本的には保護剤ブロックにブラシあるいは弾性体を押し付けて微粉化した保護剤粉についてのMrであるMr1と同じ値となる。
このような保護剤粒子gmを用いることにより、つぎの圧縮成形工程で本発明の保護剤ブロックを作製することができる。
本発明の保護剤ブロックの製造方法における圧縮成形工程では、保護剤粒子gmを圧縮して成形する圧縮成形法を用いる。この圧縮成形により保護剤ブロックを製造する際には、圧縮の度合いにより、保護剤ブロックの硬さが異なる。保護剤(保護剤粒子gm)の真比重、成形型への保護剤粒子gmの投入量は、予め分かっているため、求める圧縮度合いの厚さになるよう、圧縮することで、再現性よく、保護剤ブロックを製造することができる。
保護剤ブロックの圧縮度合いは、保護剤の嵩比重が、真比重の88〜98%、好ましくは90〜95%に圧縮されていることが好ましい。保護剤ブロックの嵩比重が、保護剤の真比重の88%以上であることにより、保護剤ブロックの機械的強度が十分に高くなり、保護剤ブロックの取扱の際に、割れが生じることがない。保護剤の嵩比重が、真比重の98%より大きいと以下であることにより、プレス機の能力を高くする必要がなく、部分的に溶融した箇所が生じて保護剤ブロックの硬さが場所により大きく異なるということがない。
保護剤の嵩比重が、真比重の88〜98%となるように圧縮成形した保護剤ブロックは、溶融成形により作製した保護剤ブロックよりもブラシを押し付ける力が弱くても保護剤を微粉化することができる。このため、ブラシを長期間使用しても劣化せず、安定して保護剤を像担持体に供給できるため好ましい。また、粒子化工程においてBNやアルミナ等の粉体を混合させる場合、粉体の状態での混合を十分に行なっておけば、その混合状態を維持したまま保護剤ブロックが作製できるので圧縮成形法は好ましい。
本発明の画像形成装置において、保護剤ブロックから保護剤を供給する像担持体は、像担持体、中間転写ベルトのどちらか、あるいは双方に用いることができる。また、最近のカラー画像形成装置においては、各色用の像担持体を複数用いる場合が多いが、それぞれの像担持体に対して用いても、用いない像担持体があっても良い。性能上は全ての像担持体及び中間転写ベルトに対して、本発明における保護剤ブロックを用いることが最も好ましいが、BNは金属石鹸に対してコストが非常に高いので、使用する保護剤ブロックは少なくしたいところである。
タンデム型のカラー画像形成装置においては、各色の画像を、各像担持体上に形成し、中間転写ベルトに転写してカラー画像とする。本発明の保護剤ブロック中のBNは、金属石鹸と共に像担持体に供給されるのであるが、ほとんどのBNは像担持体上に固定されておらず、像担持体とブレードの間に存在しており、過剰分は、画像を転写する際に、中間転写ベルトに移行する。中間転写ベルトに移行したBNの一部は、再び像担持体へ移動することが分かっている。そのため、タンデム型のカラー画像形成装置においては、一色の像担持体あるいは中間転写ベルトのみに本発明の保護剤ブロックを用い、他の色の像担持体には、従来からある金属石鹸の保護剤ブロックを用いても、スジ状の異常画像の発生を抑えることができる。
また、本発明の保護剤ブロックを用いる像担持体は、黒色用の像担持体が最も好ましい。黒色は、画像形成を行う頻度が他の色よりも圧倒的に高く、スジ状の異常画像が発生すると、非常に目立ってしまうため、本発明の保護剤ブロックを用いることは必須となる。
また、本発明の保護剤ブロックを用いる画像形成装置においては、帯電手段により像担持体を帯電させる帯電方式が、接触方式または近接方式であって、直流電圧に交流電圧を重畳したAC帯電方式を用いることが好ましい。DC帯電方式の場合は、帯電器を通過する間に、1回の正放電のみで像担持体を帯電させる。AC帯電方式を用いた場合は、周波数に応じて、1秒間に数百〜数千回の正負放電を繰り返して像担持体を帯電させる。このため、AC帯電方式は像担持体が受けるハザードはDC帯電方式と比較して非常に大きいため、像担持体を保護する機能がより重要となる。そのため、金属石鹸単独の場合よりも、放電による劣化への耐久性の高いBNを混合した保護剤を用いることが非常に有効になる。また、AC帯電を用いることで、像担持体や金属石鹸の劣化および磨耗が加速されると、ブレードの磨耗も一緒に加速されやすい。このため、ブレードの磨耗を抑制するためにも、ブレードの微細な振動を抑制し、ブレードの姿勢を安定させてくれる、BNの存在は非常に有効である。
本発明の保護剤ブロックを用いる画像形成装置は、プロセスカートリッジを準備して像担持体等の寿命に応じて交換することができることが好ましい。このため、本発明のプロセスカートリッジは、すでに説明した本発明の画像形成装置における、少なくとも像担持体、帯電手段、現像手段、クリーニング手段、及び保護剤供給手段を備えている。このようなプロセスカートリッジは、本発明の画像形成装置のスペア部品として交換されれば、上述の機能をすべて発揮でき、好適な本発明の画像形成装置を構成する。
次に、本発明の保護剤ブロックを用いる具体的な実施形態の例を、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態では像担持体が感光体である場合を例にして説明する。
[実施形態1]
図5は、画像形成装置に係る保護剤供給手段の像担持体への配置例である。
像担持体であるドラム状の感光体11に対向して配置された保護剤供給手段である保護剤塗布装置20は、本発明の保護剤ブロックであって感光体11を保護する保護剤をブロック状(棒状、円柱状、四角柱状、六角柱状等)に成形した保護剤ブロック21と、この保護剤ブロック21が左右前後に振れないように支持する保護剤ブロック支持ガイド(不図示)と、回転しながら保護剤ブロック21と接触するブラシ22aを有する保護剤供給部材22を備えている。さらに、保護剤塗布装置20は、保護剤ブロック21を保護剤供給部材22のブラシ22aに押し当てて保護剤を保護剤供給部材22のブラシ22aに移行させる押圧力付与機構(例えばバネ、スプリング等)23と、保護剤供給部材22により感光体11上に供給された保護剤を薄層化する保護層形成機構24等を備えている。
また図6は、画像形成装置に係る別の構成の保護剤供給手段の感光体への配置例である。
図6では、保護剤供給手段である保護剤塗布装置20は図5に示すものと同じである。
また、符号14は感光体11のクリーニング手段であるクリーニング装置であり、保護剤塗布装置20の感光体の回転方向上流側に設置されている。このクリーニング装置14は、保護剤塗布前に感光体11表面をクリーニングし、帯電を良好に行わせるだけでなく、保護剤の塗布が良好に行なわれるようにする機能も有するので、保護剤塗布装置20の構成部材と見做すこともできる。
本発明における保護剤ブロック21は、バネやスプリング等の押圧部材からなる押圧力付与機構23からの押圧力により、保護剤供給部材22のブラシ22aに押し当てられ、保護剤ブロック21の一部がブラシ22aに付着する。このとき、バネ、スプリングの押圧力を変化させることにより、保護剤のブラシ22aへの付着量を変化させることができる。保護剤供給部材22は感光体11と線速差をもって回転して、そのブラシ22aの先端で感光体11表面を摺擦し、この際に該ブラシ22aの表面に付着した保護剤を、感光体11の表面に供給する。
ブラシ22aの代わりに、弾性体を用いることができる。弾性体は保護剤ブロックに押し付けられ、保護剤ブロックをかきとるため、弾性体の表面は荒れている必要があり、スポンジのような多孔体であることが好ましい。弾性体の形状は、保護剤ブロックからかきとられた保護剤を感光体へ供給させるため、円筒形であることが好ましい。
感光体11の表面に供給された保護剤は、供給時に十分均一な保護層にならない場合があるため、より均一な保護層を形成するために、感光体表面に供給された保護剤は、例えば展延部材である展延ブレード24aと、展延ブレード24aを感光体11の表面に押し当てるバネやスプリング等の押圧部材24bとを持つ保護層形成機構24により薄層化され、感光体11表面の保護層となる。なお、保護層形成機構24の展延ブレード24aはカウンター方式を用いており、展延ブレード24aは、像担持体表面に対してカウンター方式で接触している。
このように、感光体11に保護剤を適量供給するとともに、保護層形成機構24により保護剤を薄層化することにより、保護剤が感光体11上に保護層を形成する。これにより、帯電手段(例えば帯電ローラ等)13の汚れ等による異常画像が起こらず、消耗品の交換頻度が少なく、長期に渡って高画質画像を出力可能な画像形成装置を実現することができる。
保護層形成機構24に用いる展延ブレード24a(以下、ブレード24aと言う。)の材料は、特に制限されるものではない。例えばクリーニングブレード用材料として一般に公知の、ウレタンゴム、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体を、単独またはブレンドして使用することができる。また、これらのゴムブレードは、感光体11との接点部部分を低摩擦係数材料でコーティングや含浸処理しても良い。また、弾性体の硬度を調整するために、他の有機フィラーや無機フィラーに代表される充填材を分散しても良い。
これらのブレード24aは、ブレード支持体24cに、接着や融着等の任意の方法によって固定され、先端部が感光体表面へ押圧当接されている。ブレード24aの厚みについては、押圧で加える力との兼ね合いで一義的に定義できるものではないが、概ね0.5〜5mm程度であれば好ましく使用でき、1〜3mm程度であれば更に好ましく使用できる。
また、ブレード支持体24cから突き出し、たわみを持たせることができるブレード24aの長さ、いわゆる自由長についても同様に押圧で加える、力との兼ね合いで一義的に定義できるものではないが、概ね1〜15mm程度であれば好ましく使用でき、2〜10mm程度であれば更に好ましく使用できる。
保護層形成用のブレード24aの他の構成としては、バネ板等の弾性金属ブレード表面に、必要によりカップリング剤やプライマー成分等を介して、樹脂、ゴム、エラストマー等の層をコーティング、ディッピング等の方法で形成し、必要により熱硬化等を行い、更に必要であれば表面研摩等を施して用いても良い。弾性金属ブレードの厚みは、0.05〜3mm程度であれば好ましく使用でき、0.1〜1mm程度であればより好ましく使用できる。弾性金属ブレードでは、ブレードのねじれを抑止するために、取り付け後に支軸と略平行となる方向に、曲げ加工等の処理を施しても良い。弾性金属ブレードの表面層を形成する材料としては、ポリパーフルオロアルキルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレン−パーフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)等のフッ素樹脂や、フッ素系ゴム、メチルフェニルシリコーンエラストマー等のシリコーン系エラストマー等を、必要により充填剤と共に、用いることができるが、これに限定されるものではない。
なお、図5、図6に示すように、ブレード24aの感光体11と当接する先端は感光体11に対して鈍角となるように配置されている。ブレード先端が直角である場合は、ブレード先端が感光体表面の進行方向に引き込まれやすく、引き込まれと戻りの振動を起こすことがある。そうすると、均一な保護層を形成できないだけでなく、遊離しやすいBNなどが発生する。これに対し、図5,図6のように、鈍角ブレードを用いるとブレード先端が引き込まれ難くなり、金属石鹸やBNが均一に保護層を形成し、遊離しやすいBNがブレード24aをすり抜けて感光体上に過剰に付着することが抑制され、帯電ローラの汚れも抑制されるので非常に好ましい。
保護層形成機構24の押圧部材24bでブレード24aを感光体11に押圧する力は、感光体11表面の保護剤が延展し、均一な保護層の状態になる力で十分であり、線圧として5gf/cm以上80gf/cm以下であることが好ましく、10gf/cm以上60gf/cm以下であることがより好ましい。
ブラシ22aは、保護剤供給部材22として好ましく用いられるが、この場合、感光体表面への機械的ストレスを抑制するためには、ブラシ繊維は可撓性を持つことが好ましい。可撓性のブラシ繊維の具体的な材料としては、一般的に公知の材料から1種乃至2種以上を選択して使用することができる。具体的には、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン);ポリビニル及びポリビニリデン系樹脂(例えばポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン);塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;スチレン−ブタジエン樹脂;フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン);ポリエステル;ナイロン;アクリル;レーヨン;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;アミノ樹脂(例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂);などの内、可撓性を持つ樹脂を使用することができる。
また、撓みの程度を調整するために、ジエン系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ヒドリンゴム、ノルボルネンゴム等を複合して用いても良い。
保護剤供給部材22の支持体22bには、固定型と回転可能なロール状のものがある。
ロール状の供給部材としては、例えばブラシ繊維をパイル地にしたテープを金属製の芯金にスパイラル状に巻き付けてロールブラシとしたものがある。ブラシ繊維は繊維径10〜500μm、より好ましくは、20〜300μmである。10μm以下では、保護剤の供給スピードが非常に遅くなるため好ましくなく、500μm以上では、ブラシ繊維が単位面積当たりに存在できる本数がより少なくなるため、ブラシ22aが感光体11に当たる場所と当たらない場所での塗布ムラが顕著になったり、ブラシ22aが感光体11に当たったときに感光体11を傷つけやすくなったりする。また、保護剤を掻き取る力が強くなるため、保護剤の寿命が短くなったり、感光体11に供給される保護剤が大きな粒状になり、感光体11に供給された粒が帯電ローラ13に移動して帯電ローラ13を汚染してしまったり、ブラシ22aや感光体11を回転させるためのトルクがより大きくなるため好ましくない。
ブラシ22aの繊維の長さは1〜15mm、好ましくは3〜10mmである。ブラシ22aの繊維の長さが1mm以下では、ブラシ22aの芯金と感光体が非常に近い配置となるため芯金が感光体と接触して、感光体11に傷がつきやすくなるため好ましくない。また、15mm以上では、ブラシ繊維先端で保護剤を掻きとる力やブラシ繊維先端が感光体に当たる力が弱くなり、保護剤を充分な量供給するのが困難になったり、ブラシ22aの繊維が抜けやすくなるため好ましくない。
また、ブラシ密度は1平方インチ当たり1万〜30万本(1平方メートル当たり1.5×107〜4.5×108本)である。ブラシ密度が1平方インチ当たり1万本未満では、ブラシ22aが感光体11に当たる場所と当たらない場所での塗布ムラが顕著になったり、保護剤を充分な量供給することが困難になるため好ましくない。また、ブラシ密度を1平方インチ当たり30万本超にするためにはブラシ繊維の径を非常に小さくする必要があるため好ましくない。
保護剤供給部材22は、供給の均一性やその安定性の面から、極力ブラシ密度の高いものを使用することが好ましく、1本の繊維を数本〜数百本の微細な繊維から作ることも好ましい。例えば、333デシテックス=6.7デシテックス×50フィラメント(300デニール=6デニール×50フィラメント)のように6.7デシテックス(6デニール)の微細な繊維を50本束ねて1本の繊維として植毛することも可能である。
これらの保護剤供給部材22の中でも、28〜43μm、好ましくは30〜40μmの単繊維から作られたブラシ22aが保護剤の供給の効率が高く、最も好ましい。繊維は、撚って作製されることが多いことから、繊維の径は均一でないため、デニール、デシテックスの単位が用いられてきた。しかし、単繊維の場合は、繊維径は一定であるため、繊維径で規定することの方が、保護剤供給部材22を規定する上で好ましい。
単繊維の直径が28μm以上であることにより、保護剤を供給する効率が低すぎず、単繊維の直径が43μm以下であることにより、単繊維の剛性が高くなりすぎず、感光体を傷つけやすくなることがないので好ましい。また、28〜43μmの単繊維は、芯金に対してできるだけ垂直に植毛されていることが好ましく、ブラシ22aを製造する際には、静電気を利用した、所謂、静電植毛により製造していることが好ましい。静電植毛は、ブラシ22aの芯金上に接着剤を塗布し、芯金を帯電させることにより、静電電気力で28〜43μmの単繊維を飛翔させて、芯金上の接着剤に植毛し、接着剤を硬化させる方法である。このように静電植毛により、1平方インチ当たり5万〜60万本植毛したブラシが、好適に用いることができる。
また、ブラシ22aの表面には必要に応じてブラシ22aの表面形状や環境安定性などを安定化することなどを目的として、被覆層を設けても良い。被覆層を構成する成分としては、ブラシ繊維の撓みに応じて変形することが可能な被覆層成分を用いることが好ましく、これらは、可撓性を保持し得る材料であれば、何ら限定される事無く使用できる。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル(例えばポリメチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂またはその変成品(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変成品);パーフルオロアルキルエーテル,ポリフルオロビニル、ポリフルオロビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の弗素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂や、これらの複合樹脂等が挙げられる。
また、ブラシ22aの代わりに、高分子多孔体を用いても良い。高分子多孔体としては、ジエン系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ヒドリンゴム、ノルボルネンゴム等を発泡させたものが例示することができ、中でもウレタンゴムを発泡させたものが最も好ましい。
ブラシを保護剤ブロックに押し付ける力としては、4N〜9N、好ましくは5N〜8Nとすると良い。
このようにしてブラシにより摺擦した保護剤ブロック表面のSEM写真の一例を下図9に示す。引き伸ばされた扁平な金属石鹸粒子や、扁平なBN粒子は、うろこが剥がれるようにして掻き取られていき、非常に微細で、均一な保護剤粒子として感光体に供給される。このため、Mr1は、保護剤ブロックを微細に粉砕し、十分混合してATR法により測定したMrとほぼ同じものとなる。従って、Mr1は、Mr2よりも大きな値となる。
[実施形態2]
次に本発明に係るプロセスカートリッジと画像形成装置の実施形態を説明する。
図7は、本発明に係る画像形成装置の画像形成部に具備される、保護剤塗布装置20を備えたプロセスカートリッジの構成例の概略を説明するための断面図である。
図7に示す画像形成部10は、像担持体であるドラム状の感光体11と、感光体11を帯電する帯電手段である帯電装置(図示の例では帯電ローラ)13と、帯電された感光体11にレーザ光L等を照射して静電潜像を形成する潜像形成手段(レーザ光L以外図示せず)と、感光体11上の静電潜像をトナーで現像して可視像化する現像手段である現像装置15と、感光体11上のトナー像を転写媒体(または中間転写媒体)17に転写する転写手段16と、転写後の感光体11の表面に残留するトナーを除去するクリーニング手段であるクリーニング装置14と、クリーニング装置14から帯電装置13に至る部分に配置された保護剤供給手段である保護剤塗布装置20等を有している。そして、この画像形成部10では、感光体11とともに、保護剤塗布装置20、帯電装置13、現像装置15、クリーニング装置14をカートリッジ内に設けたプロセスカートリッジ10Cを用いている。なお、本発明においては、クリーニング装置14は、保護剤塗布前に感光体11表面をクリーニングし、保護剤の塗布が良好に行なわれるようにする機能もあるので、保護剤塗布装置20の構成部材と見做すことができる。
図7において、帯電装置13、潜像形成手段(図示せず)、現像装置15は、画像形成手段を構成し、帯電装置13は、例えば図示しない高電圧電源により直流(DC)電圧に交流(AC)電圧を重畳させた電圧を印加したAC帯電方式の帯電ローラである。また、現像装置15は、トナー粒子、またはトナー粒子及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤を担持搬送する現像剤担持体である現像ローラ51と、現像剤を攪拌しながら搬送する現像剤攪拌搬送部材52,53等で構成される。
感光体11に対向して配設された保護剤塗布装置20は、図5,図6と同様に、保護剤ブロック21、保護剤供給部材22、押圧力付与機構23、保護層形成機構24、保護剤ブロック21が左右前後に振れないように支持する保護剤ブロック支持ガイド(不図示)等から主に構成される。
また、感光体11は、転写工程後に部分的に劣化した保護剤やトナー成分等が残存した表面となっているが、クリーニング装置14のクリーニングブレード41により表面残存物が清掃され、クリーニングされる。図7では、ブレード状のクリーニングブレード41はクリーニング押圧機構42で支持され、いわゆるカウンター方式(リーディングタイプ)に類する角度で当接されている。
クリーニング装置14により、表面の残留トナーや劣化した保護剤などが取り除かれた感光体11表面へは、保護剤ブロック21の保護剤がブラシ状の保護剤供給部材22により供給され、感光体11表面に供給された保護剤は、保護層形成機構24のブレード24aにより薄層化され、保護層が形成される。
保護層が形成された感光体11は、帯電ローラ13による帯電後、レーザ光Lなどの露光によって静電潜像が形成され、現像手段である現像装置15のトナーにより現像されて可視像化され、プロセスカートリッジ10C外の転写手段である転写装置(転写ローラ等)16により、転写紙等の転写媒体(または中間転写媒体)17へ転写される。
本発明のプロセスカートリッジ10Cに用いる帯電手段(帯電装置)13としては、装置が小型で、オゾン等の酸化性ガスの発生の少ない、帯電ローラが用いられる。帯電ローラ13は、感光体11と接触あるいは、20〜100μm近接した非接触状態で設置され、帯電ローラ13と感光体11の間に電圧を印加することにより、感光体11を帯電する。帯電ローラ13と感光体11の間に印加する電圧は、直流電圧に交流電圧を重畳したAC帯電を用いる。なお、AC帯電を行なう場合は、感光体11と帯電ローラ13の間で1秒間に数百回以上もの放電が起こることから、感光体11は、放電による劣化を受けやすい。また、感光体11へ保護剤の塗布をした場合でも、保護剤は放電により劣化し、消失してしまいやすいことから、常時一定の量の保護剤を感光体11上に塗布しておくことは非常に重要である。
帯電ローラ13の構成としては、導電性支持体上に、高分子層と、表面層から構成されることが好ましい。導電性支持体は、帯電ローラ13の電極及び支持部材として機能するもので、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金、クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄、導電剤を添加した樹脂、などの導電性の材質で構成される。
高分子層としては、106〜109Ωcmの抵抗を有する導電性層であることが好ましく、高分子材料に導電剤を混合して抵抗を調整したものが用いられる。本発明の画像形成装置に用いる帯電ローラの高分子層の高分子としては、ポリエステル系、オレフィン系の熱可塑性エラストマー、ポリスチレン、スチレンーブタジエン共重合体、スチレンーアクリロニトリル共重合体、スチレンーブタジエンーアクリロニトリル共重合体等のスチレン系熱可塑性樹脂、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、天然ゴム等、及びこれらのブレンドしたゴム材料が挙げられる。ゴム材料は中でも、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム及びこれらのブレンドゴムが好ましく用いられる。これらのゴム材は発泡したものであっても無発泡のものであってもよい。
導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が用いられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの微粉末を挙げることができる。また、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;を挙げることができる。これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は特に制限はないが、上記電子導電剤の場合は、高分子100質量部に対して、1〜30質量部の範囲であることが好ましく、15〜25質量部の範囲であることがより好ましい。一方、上記イオン導電剤の場合は、高分子100質量部に対して、0.1〜5.0質量部の範囲であることが好ましく、0.5〜3.0質量部の範囲であることがより好ましい。
前記表面層を構成する高分子材料としては、既述の如く、帯電ローラ13表面のダイナミック超微小硬度が0.04以上0.5以下であれば特に制限されないが、ポリアミド、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミド、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、メラミン樹脂、フッ素ゴム、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。これらの中では、トナーとの離型性等の観点から、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミドが好ましく用いられる。上記高分子材料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、当該高分子材料の数平均分子量は、1,000〜100,000の範囲であることが好ましく、10,000〜50,000の範囲であることがより好ましい。
表面層は、上記高分子材料に前記導電性弾性層に用いた導電剤や各種微粒子を混合して組成物として形成される。上記微粒子としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物及び複合金属酸化物、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等の高分子微粉体を単独または混合して用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明のプロセスカートリッジに用いる現像手段は、現像剤を感光体に接触させ、感光体上に形成した潜像をトナー像に現像する。現像剤としては、トナーとキャリアから構成される二成分現像剤や、キャリアを含まない一成分現像剤を使用することができる。現像装置15は、図7に示すように、そのケーシングの開口から現像剤担持体としての現像ローラ51が部分的に露出している。
図示しないトナーボトルから現像装置15内に補給されたトナーは、攪拌搬送スクリューである現像剤攪拌搬送部材52および53によってキャリアと撹拌されながら搬送され、現像ローラ51上に担持されることになる。この現像ローラ51は、磁界発生手段としてのマグネットローラと、その周りを同軸回転する現像スリーブとから構成されている。
現像剤中のキャリアは、マグネットローラが発生させる磁力により現像ローラ51上に穂立ちした状態となって感光体11と対向する現像領域に搬送される。ここで、現像ローラ51は、現像領域において感光体11の表面よりも速い線速で同方向に表面移動する。そして、現像ローラ51上に穂立ちしたキャリアは、感光体11の表面を摺擦しながら、キャリア表面に付着したトナーを感光体11の表面に供給する。このとき、現像ローラ51には、図示しない電源から現像バイアスが印加され、これにより現像領域には現像電界が形成される。そして、感光体11上の静電潜像と現像ローラ51との間では、現像ローラ51上のトナーに静電潜像側に向かう静電力が働くことになる。これにより、現像ローラ51上のトナーは、感光体11上の静電潜像に付着することになる。この付着によって感光体11上の静電潜像はトナー像に現像される。
本発明のプロセスカートリッジによれば、本発明の保護剤ブロック21を用いるので、長期に渡って高品質の画像形成を可能とする。
[実施形態3]
次に本発明に係る画像形成装置の実施形態を説明する。
図8は、本発明の保護剤ブロックを有する保護剤塗布装置を具備する画像形成装置100の構成例を示す概略構成図である。
この画像形成装置100は、画像形成を行う画像形成装置本体(プリンタ部)110と、この本体110の上部に設置された原稿読取部(スキャナ部)120と、その上に設置された原稿自動給紙装置(ADF)130と、画像形成装置本体110の下部に設置された給紙部200とを備えており、複写機の機能を有している。また、この画像形成装置100は、外部装置との通信機能を有しており、装置外部のパーソナルコンピュータ等と接続することにより、プリンタやスキャナとして用いることができる。また、電話回線や光回線と接続することにより、ファクシミリとして用いることができる。
画像形成装置本体110内には、同じ構成で現像装置15のトナー色が異なる画像形成部(画像形成ステーション)10が4つ並設されており、4つの画像形成部10でトナー色の異なる画像(例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像)を形成し、各色のトナー像を転写媒体または中間転写媒体に重ね合わせて転写して多色またはフルカラー画像を形成することができる。なお、図8の例では、4つの画像形成部10は、複数のローラに張架されたベルト状の中間転写媒体17に沿って並設されており、各画像形成部で形成された各色のトナー像は、一旦中間転写媒体17に順次重ね合わせて転写された後、二次転写装置12で紙等のシート状の転写媒体に一括して転写される。
各色の画像形成部10は、図7と同様の構成であり、ドラム状の感光体11(11Y,11M,11C,11K)の周囲に、保護剤塗布装置20、帯電装置13、潜像形成装置18からのレーザ光等の露光部、現像装置15、一次転写装置16、およびクリーニング装置14が配置されている。また、各色の画像形成部10には、感光体11とともに、保護剤塗布装置20(クリーニング装置14を含む)、帯電装置13、現像装置15をカートリッジ内に設けたプロセスカーリッジ10Cを用いている。そして、このプロセスカートリッジは、画像形成装置本体110に対して着脱自在に設けられている。
図8に示す画像形成装置100の動作を説明する。ここでは、画像形成のための一連のプロセスについて、ネガ−ポジプロセスで説明を行う。なお、各画像形成部の動作は同じであるので、ここでは一つの画像形成部の動作を説明する。
有機光導電層を有する有機感光体(OPC)等に代表される像担持体であるドラム状の感光体11は、除電ランプ(図示せず)等で除電され、帯電部材(例えば帯電ローラ)を有する帯電装置13で均一にマイナスに帯電される。帯電装置13による感光体11の帯電が行なわれる際には、電圧印加機構(図示せず)から帯電部材に、感光体11を所望の電位に帯電させるに適した、適当な大きさの電圧またはこれに交流電圧を重畳した帯電電圧が印加される。
帯電された感光体11は、例えば複数のレーザ光源と、カップリング光学系と、光偏向器と、走査結像光学系等からなる、レーザ走査方式の潜像形成装置18によって照射されるレーザ光で潜像形成(露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位となる)が行なわれる。すなわち、レーザ光源(例えば半導体レーザ)から発せられたレーザ光は、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴン)等からなる光偏向器により偏向走査され、走査レンズやミラー等からなる走査結像光学系を介して感光体11の表面を、感光体11の回転軸方向(主走査方向)に走査する。
このようにして形成された潜像が、現像装置15の現像剤担持体である現像ローラ51の現像スリーブ上に供給されたトナー粒子、またはトナー粒子及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤により現像され、トナー可視像が形成される。潜像の現像時には、電圧印加機構(図示せず)から現像ローラ51の現像スリーブに、感光体11の露光部と非露光部の間にある、適当な大きさの電圧またはこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。
上記のような動作で各色に対応した画像形成部10の感光体11上に形成されたトナー像は、転写ローラ等からなる一次転写装置16にて中間転写媒体17上に順次重ね合わせて一次転写される。一方、画像形成動作及び一次転写動作にタイミングを合わせて、給紙部200の多段の給紙カセット201a,201b,201c,201dの中の選択された給紙カセットから、給紙ローラ及び分離ローラからなる給紙機構で紙等のシート状の転写媒体が給紙され、搬送ローラ及びレジストローラを経て二次転写部に搬送される。そして、二次転写部において、中間転写媒体17上のトナー画像が二次転写装置(例えば二次転写ローラ)12にて、搬送されてきた転写媒体に二次転写される。なお、上記の転写工程において、一次転写装置16や二次転写装置12には、転写バイアスとして、トナーの帯電極性と逆極性の電位が印加されることが好ましい。
上記の二次転写後、転写媒体は、中間転写媒体17から分離され、転写像が得られる。
また、一次転写後に感光体11上に残存するトナー粒子は、クリーニング装置14のクリーニングブレード41によって、クリーニング装置14内のトナー回収室へ、回収される。また、二次転写後に中間転写媒体17上に残存するトナー粒子は、ベルトクリーニング装置19のクリーニングブレードによって、クリーニング装置19内のトナー回収室へ、回収される。
図8に示した画像形成装置100は、上述の画像形成部10が中間転写媒体17に沿って複数配置された、いわゆるタンデム型で中間転写方式の画像形成装置であり、複数の画像形成部10によって各感光体11(11Y,11M,11C,11K)上に順次作成された色が異なる複数のトナー像を一旦中間転写媒体17上に順次転写した後、これを一括して紙のような転写媒体に転写する。そしてトナー像が転写された転写媒体を、搬送装置13により定着装置40へ送り、熱等によってトナーを定着する構成である。定着後の転写媒体は、搬送装置及び排紙ローラにより排紙トレイ70に排紙される。また、この画像形成装置100は両面プリント機能も備えており、両面プリント時には、定着装置40の下流の搬送路を切換え、片面の画像が定着された転写媒体を両面用搬送装置210を介して表裏反転し、搬送ローラ及びレジストローラで二次転写部に再給紙して、裏面側に画像の転写を行う。転写後の転写媒体は、上記と同様に定着装置40に搬送されて画像が定着され、定着後の転写媒体は排紙トレイ70に排紙される。
なお、上記の構成で、中間転写媒体を用いずに、タンデム型の直接転写方式の画像形成装置とすることもできる。直接転写方式の場合は、中間転写媒体に換えて、転写媒体を担持搬送する転写ベルト等を用い、各画像形成部10によって各感光体11(11Y,11M,11C,11K)上に順次作成された色が異なる複数のトナー像を直接、転写ベルトで搬送される紙のような転写媒体に順次転写した後、定着装置へ送り、熱等によってトナーを定着する構成としても良い。
本発明の画像形成装置によれば、本発明の保護剤ブロックを用いるので、異常画像の発生のない高品質の画像形成が可能である。
[実施形態4]
本発明に係るプロセスカートリッジや画像形成装置において好適に用いられる感光体11の例について説明する。本発明の画像形成装置に用いる像担持体である感光体は、導電性支持体の上に感光層が設けられている。感光層の構成は電荷発生材と電荷輸送材を混在させた単層型、あるいは電荷発生層の上に電荷輸送層を設けた順層型、あるいは電荷輸送層の上に電荷発生層を設けた逆層型がある。また、感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため、感光層の上に表面層を設けることもできる。感光層と導電性支持体の間には下引き層が設けられていてもよい。また各層には必要により可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
感光体の導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法でドラム状に素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。ドラム状の支持体としては、直径が20〜150mm、好ましくは、24〜100mm、さらに好ましくは28〜70mmのものを用いることができる。ドラム状の支持体の直径が20mm以下では、ドラム周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を配置することが物理的に難しく、ドラム状の支持体の直径が150mm以上では画像形成装置が大きくなってしまい好ましくない。特に、画像形成装置が図8に示すようなタンデム型の場合には、複数の感光体を搭載する必要があるため、直径は70mm以下、好ましくは60mm以下であることが好ましい。また、エンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
本発明の画像形成装置に用いる感光体の下引層としては樹脂、あるいは白色顔料と樹脂を主成分としたもの、及び導電性基体表面を化学的あるいは電気化学的に酸化させた酸化金属膜等が例示できるが、白色顔料と樹脂を主成分とするものが好ましい。白色顔料としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられ、中でも導電性基体からの電荷の注入防止性が優れる酸化チタンを含有させることが最も好ましい。下引層に用いる樹脂としてはポリアミド、ポリビニルアルコール、カゼイン、メチルセルロース等の熱可塑性樹脂、アクリル、フェノール、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ等の熱硬化性樹脂、これらの中の一種あるいは多種の混合物を例示することができる。
本発明の画像形成装置に用いる感光体の電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキスアゾ顔料等のアゾ顔料、トリアリールメタン系染料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機系顔料及び染料や、セレン、セレン−ヒ素、セレン−テルル、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アモルファスシリコン等の無機材料を使用することができ、電荷発生物質は一種あるいは多種混合して使用することができる。下引層は、一層であっても、複数の層で構成しても良い。
本発明の画像形成装置に用いる感光体の電荷輸送物質としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、テトラゾール誘導体、メタロセン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチリルヒドラゾン化合物、エナミン化合物、ブタジエン化合物、ジスチリル化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、トリフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリフェニルメタン誘導体等の一種あるいは多種を混合して使用することができる。
前記電荷発生層、電荷輸送層の感光層を形成するのに使用する結着樹脂としては、電気絶縁性であり、それ自体公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び光導電性樹脂等を使用することができ、適当な結着樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネ−ト、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の光導電性樹脂など一種の結着樹脂あるいは多種と結着樹脂の混合物を挙げることができるが、特にこれらのものに限定されるものではない。ただし、電荷輸送層が最表面になる場合には、ポリカーボネートを含有した結着樹脂を用いる。
酸化防止剤としては、例えば以下のものが使用される。
・モノフェノール系化合物
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−t−ブチル−4−ヒドロキシニソールなど。
・ビスフェノール系化合物
2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など。
・高分子フェノール系化合物
1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェノール類など。
・パラフェニレンジアミン類
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−tーブチル−p−フェニレンジアミンなど。
・ハイドロキノン類
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
・有機硫黄化合物類
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
・有機燐化合物類
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は結着樹脂100質量部に対して0〜30質量部程度が適当である。
電荷輸送層中にレベリング剤を添加してもかまわない。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用される。その使用量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0〜1質量部が適当である。
表面層は前述のように、感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため設けられる。表面層としては、感光層よりも機械的強度の高い高分子、高分子に無機フィラーを分散させたものが例示できる。表面層は薄い膜厚であれば、電荷輸送能力を有していなくても支障はないが、電荷輸送能力を有しない表面層を厚く形成すると、感光体の感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇を引き起こしやすいため、表面層中に前述の電荷輸送物質を含有させたり、表面層に用いる高分子を電荷輸送能力を有するものを用いることが好ましい。
感光層と表面層との機械的強度は一般に大きく異なるため、クリーニングブレードとの摩擦により表面層が磨耗し、消失すると、すぐに感光層は磨耗していってしまう。このため、表面層を設ける場合には、表面層は十分な膜厚とすることが重要であり、膜厚は、0.01〜12μm、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは2〜8μmである。表面層の膜厚が0.1μm以下では、薄すぎてクリーニングブレードとの摩擦により部分的に消失しやすくなり、消失した部分から感光層の磨耗が進んでしまうため好ましくない。表面層の膜厚が12μm以上では、感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇が生じやすく、特に電荷輸送能力を有する高分子を用いる場合には、電荷輸送能力を有する高分子のコストが高くなってしまうため好ましくない。
表面層に用いる高分子としては、画像形成時の書き込み光に対して透明で、絶縁性、機械的強度、接着性に優れた物質が望ましく、感光体の最表面層には、ポリカーボネートを用いる。
表面層中には表面層の機械的強度を高めるために金属、又は金属酸化物の微粒子を分散させることができる。金属酸化物としては酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、TiO、TiN、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。その他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂に等の無機材料を分散したもの等を添加することができる。
以上の実施形態では像担持体を感光体として説明したが、本発明における像担持体は、像担持体上に形成されたトナー像を一次転写して色重ねを行い、更に転写媒体へ転写を行う、いわゆる中間転写方式による画像形成を行う際に使用する中間転写媒体であってもよい。
中間転写媒体としては、体積抵抗105〜1011Ω・cmの導電性を示すものが好ましい。前記体積抵抗が105Ω・cmを下回る場合には、感光体から中間転写体上へトナー像の転写が行われる際に、放電を伴いトナー像が乱れるいわゆる転写チリが生じることがある。また、1011Ω・cmを上回る場合には、中間転写体から紙などの記録媒体へトナー像を転写した後に、中間転写体上へトナー像の対抗電荷が残留し、次の画像上に残像として現れることがある。また、中間転写媒体の表面抵抗は108〜1013Ω/sq.を示すものが好ましい。表面抵抗が108Ω/sq.を下回る場合には、トナー像が乱れる、転写チリが生じる等の不具合が起こることがあり、1013Ω/sq.を上回る場合には、一次転写がしにくくなることがある。
中間転写媒体としては、例えば、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物やカーボンブラック等の導電性粒子や導電性高分子を、単独または併用して熱可塑性樹脂と共に混練後、押し出し成形したベルト状もしくは円筒状のプラスチックなどを使用することができる。この他に、熱架橋反応性のモノマーやオリゴマーを含む樹脂液に、必要により上述の導電性粒子や導電性高分子を加え、加熱しつつ遠心成形を行い、無端ベルト上の中間転写媒体を得ることもできる。
中間転写媒体に表面層を設ける際には、上述の感光体表面層に使用した表面層材料の内、電荷輸送材料を除く組成物に、適宜、導電性物質を併用して抵抗調整を行い、使用することができる。
[実施形態5]
次に、本発明に係るプロセスカートリッジや画像形成装置において好適に用いられるトナーについて説明する。
本発明の画像形成装置に用いるトナーは、平均円形度が0.93〜1.00であることが好ましい。本発明では、下記の式(2)より得られた値を円形度と定義する。この円形度はトナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
円形度SR=粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長 (2)
平均円形度が0.93〜1.00の範囲では、トナー粒子の表面は滑らかであり、トナー粒子同士、トナー粒子と感光体との接触面積が小さいために転写性に優れる。トナー粒子に角がないため、現像装置内での現像剤の攪拌トルクが小さく、攪拌の駆動が安定するために異常画像が発生しない。ドットを形成するトナーの中に、角張ったトナー粒子がいないため、転写で転写媒体に圧接する際に、その圧がドットを形成するトナー全体に均一にかかり、転写中抜けが生じにくい。トナー粒子が角張っていないことから、トナー粒子そのものの研磨力が小さく、感光体の表面を傷つけたり、磨耗させたりしない。
円形度の測定方法について説明する。円形度は、東亜医用電子製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて測定することができる。具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、分散液濃度を3000〜10000個/μlとして前記装置によりトナーの形状、粒度を測定する。
本発明の画像形成装置に用いるトナーは、上記の円形度に加えて、トナーの質量平均径D4が3〜10μmであることが好ましい。この範囲では、微小な潜像ドットに対して、十分に小さい粒径のトナー粒子を有していることから、ドット再現性に優れる。質量平均径D4が3μm未満では、転写効率の低下、ブレードクリーニング性の低下といった現象が発生しやすい。また、質量平均径D4が10μmを超えると、文字やラインの飛び散りを抑えることが難しい。
本発明で用いるトナーは、質量平均径D4と個数平均径D1の比(D4/D1)が1.00〜1.40であることが好ましい。(D4/D1)の値が1に近づくほど、そのトナーの粒度分布がシャープであることを意味する。よって、(D4/D1)が1.00〜1.40の範囲では、トナー粒径による選択現像が起きないため、画質の安定性に優れる。トナーの粒度分布がシャープであることから、摩擦帯電量分布もシャープとなり、カブリの発生が抑えられる。また、トナー粒径が揃っていると、潜像ドットに対して、緻密に、かつ整然と並ぶように現像されるので、ドット再現性に優れる。
トナー粒子の粒度分布の測定方法について説明する。コールターカウンター法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)が挙げられる。以下に測定方法について述べる。
まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの質量平均径D4、個数平均径D1を求めることができる。
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とする。
また、このような略球形の形状のトナーとしては、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤、離型剤を含むトナー組成物を水系媒体中で樹脂微粒子の存在下で架橋及び/又は伸長反応させるトナーが好ましい。この反応で製造されたトナーは、トナー表面を硬化させることで、ホットオフセットを少なくすることができ、定着装置の汚れとなって、それが画像上に表れるのを抑えることができる。
トナー作成に使用できる変性ポリエステル系樹脂から成るプレポリマーとしては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)が挙げられ、また、該プレポリマーと伸長または架橋する化合物としては、アミン類(B)が挙げられる。
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させた物などが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)および3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独、または(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)および3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、ジカルボン酸(2−1)単独、およびジカルボン酸(2−1)と少量の3価以上のポリカルボン酸(2−2)の混合物が好ましい。
ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。
3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。
[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、通常0.5〜40質量%、好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは2〜20質量%である。0.5質量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40質量%を超えると低温定着性が悪化する。
イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
さらに、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり1/2未満では、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。本発明においては、ウレア結合で変性されたポリエステル(i)中に、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
これらの反応により、本発明で用いるトナーに用いられる変性ポリエステル、中でもウレア変性ポリエステル(i)が作成できる。これらウレア変性ポリエステル(i)は、ワンショット法、プレポリマー法により製造される。ウレア変性ポリエステル(i)の質量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステルの数平均分子量は、後述の変性されていないポリエステル(ii)を用いる場合は特に限定されるものではなく、前記質量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。(i)単独の場合は、数平均分子量は、通常20000以下、好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
また、本発明で用いるトナーにおいては、前記ウレア結合で変性されたポリエステル(i)単独使用だけでなく、この(i)と共に、変性されていないポリエステル(ii)を結着樹脂成分として含有させることもできる。(ii)を併用することで、低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上し、単独使用より好ましい。(ii)としては、前記(i)のポリエステル成分と同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられ、好ましいものも(i)と同様である。また、(ii)は無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えばウレタン結合で変性されていてもよい。(i)と(ii)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、(i)のポリエステル成分と(ii)は類似の組成が好ましい。(ii)を含有させる場合の(i)と(ii)の質量比は、通常5/95〜80/20、好ましくは5/95〜30/70、さらに好ましくは5/95〜25/75、特に好ましくは7/93〜20/80である。(i)の質量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
(ii)のピーク分子量は、通常1000〜30000、好ましくは1500〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。1000未満では耐熱保存性が悪化し、10000を超えると低温定着性が悪化する。(ii)の水酸基価は5以上であることが好ましく、さらに好ましくは10〜120、特に好ましくは20〜80である。5未満では耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。(ii)の酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。
本発明で用いるトナーにおいて、結着樹脂のガラス転移点(Tg)は通常50〜70℃、好ましくは55〜65℃である。50℃未満ではトナーの高温保管時のブロッキングが悪化し、70℃を超えると低温定着性が不十分となる。ウレア変性ポリエステル樹脂の共存により、本発明の乾式トナーにおいては、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。結着樹脂の貯蔵弾性率としては、測定周波数20Hzにおいて10000dyne/cm2となる温度(TG’)が、通常100℃以上、好ましくは110〜200℃である。100℃未満では耐ホットオフセット性が悪化する。結着樹脂の粘性としては、測定周波数20Hzにおいて1000ポイズとなる温度(Tη)が、通常180℃以下、好ましくは90〜160℃である。180℃を超えると低温定着性が悪化する。すなわち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、TG’はTηより高いことが好ましい。言い換えるとTG’とTηの差(TG’−Tη)は0℃以上が好ましい。さらに好ましくは10℃以上であり、特に好ましくは20℃以上である。差の上限は特に限定されない。また、耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、TηとTgの差は0〜100℃が好ましい。さらに好ましくは10〜90℃であり、特に好ましくは20〜80℃である。
結着樹脂は以下の方法などで製造することができる。ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を溜去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これにポリイソシアネート(3)を反応させ、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)を得る。さらに(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア結合で変性されたポリエステルを得る。(3)を反応させる際および(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(3)に対して不活性なものが挙げられる。ウレア結合で変性されていないポリエステル(ii)を併用する場合は、水酸基を有するポリエステルと同様な方法で(ii)を製造し、これを前記(i)の反応完了後の溶液に溶解し、混合する。
また、本発明に用いるトナーは概ね以下の方法で製造することができるが勿論これらに限定されることはない。
用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
トナー粒子は、水系媒体中でイソシアネート基を有するプレポリマー(A)からなる分散体を、(B)と反応させて形成しても良いし、あらかじめ製造したウレア変性ポリエステル(i)を用いても良い。水系媒体中でウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体を安定して形成させる方法としては、水系媒体中にウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなるトナー原料の組成物を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。プレポリマー(A)と他のトナー組成物である(以下トナー原料と呼ぶ)着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、荷電制御剤、未変性ポリエステル樹脂などは、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、あらかじめトナー原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。また、本発明においては、着色剤、離型剤、荷電制御剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。たとえば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。高温な方が、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)を含むトナー組成物100部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000質量部、好ましくは100〜1000質量部である。50質量部未満ではトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000質量部を超えると経済的でない。また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
プレポリマー(A)からウレア変性ポリエステル(i)を合成する工程は水系媒体中でトナー組成物を分散する前にアミン類(B)を加えて反応させても良いし、水系媒体中に分散した後にアミン類(B)を加えて粒子界面から反応を起こしても良い。この場合製造されるトナー表面に優先的にウレア変性ポリエステルが生成し、粒子内部で濃度勾配を設けることもできる。
トナー組成物が分散された油性相を水が含まれる液体に乳化、分散するための分散剤としてアルキルベンゼンスルフォン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性荊、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガーフルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガーフルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。
商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−l29(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102、(タイキン工莱社製)、メガファックF−110、F−l20、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F−150(ネオス社製)などが挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級もしくは二級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−l32(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
水に難溶の無機化合物分散剤として、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなども用いることができる。また、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロ−ルメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエ一テル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ピニル、プロピオン酸ピニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、伸長および/または架橋反応後、洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
さらに、トナー組成物の粘度を低くするために、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)が可溶の溶剤を使用することもできる。溶剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになる点で好ましい。該溶剤は揮発性であることが除去が容易である点から好ましい。該溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましく、中でもトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒がより好ましい。プレポリマー(A)100部に対する溶剤の使用量は、通常0〜300部、好ましくは0〜100部、さらに好ましくは25〜70部である。溶剤を使用した場合は、伸長および/または架橋反応後、常圧または減圧下にて加温し除去する。
伸長および/または架橋反応時間は、プレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。あるいはまた、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。分級操作は液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことができる。もちろん乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行っても良いが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子、または粗粒子は再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際微粒子、または粗粒子はウェットの状態でも構わない。また、用いた分散剤は得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うのが好ましい。
得られた乾燥後のトナーの粉体は、離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって、表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。具体的な手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
トナーに使用される着色剤としては、従来からトナー用着色剤として使用されてきた顔料及び染料が使用でき、具体的には、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6Cレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドンレッド、ベンジジンイエロー、ローズベンガル等を単独あるいは混合して用いることができる。
必要により、トナー粒子自身に磁気特性を持たせるには、フェライト、マグネタイト、マグヘマイト等の酸化鉄類、鉄、コバルト、ニッケル等の金属あるいは、これらと他の金属との合金等の磁性成分を単独または混合して、トナー粒子へ含有させればよい。また、これらの成分は、着色剤成分として使用/併用することもできる。
本発明で用いられるトナー中の着色剤の個数平均径は0.5μm以下であることが望ましく、好ましくは0.4μm以下、より好ましくは0.3μm以下が望ましい。トナー中の着色剤の個数平均径が0.5μmより大きいときには、顔料の分散性が充分なレベルには到らず、好ましい透明性が得られないことがある。0.1μmより小さい微小粒径の着色剤は、可視光の半波長より十分小さいため、光の反射、吸収特性に悪影響を及ぼさないと考えられる。よって、0.1μm未満の着色剤の粒子は良好な色再現性と、定着画像を有するOHPシートの透明性に貢献する。一方、0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、入射光の透過が阻害されたり、散乱されたりして、OHPシートの投影画像の明るさ及び彩かさが低下する傾向がある。さらに、0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、トナー粒子表面から着色剤が脱離し、カブリ、ドラム汚染、クリーニング不良といった種々の問題を引き起こしやすいため、好ましくない。特に、0.7μmより大きな粒径の着色剤は、全着色剤の10個数%以下であることが好ましく、5個数%以下であることが、より好ましい。
また、着色剤を結着樹脂の一部もしくは全部と共に、予め湿潤液を加えた上で混練しておくことにより、初期的に結着樹脂と着色剤が十分に付着した状態となって、その後のトナー製造工程でのトナー粒子中における着色剤分散がより効果的に行なわれ、着色剤の分散粒径が小さくなり、一層良好な透明性を得ることができる。予めの混錬に用いる結着樹脂としては、トナー用結着樹脂として例示した樹脂類をそのまま使用することができるが、これらに限定されるものではない。
前記の結着樹脂と着色剤の混合物を予め湿潤液と共に混練する具体的な方法としては、例えば、結着樹脂、着色剤及び湿潤液を、ヘンシェルミキサー等のブレンダーにて混合した後、得られた混合物を二本ロール、三本ロール等の混練機により、結着樹脂の溶融温度よりも低い温度で混練して、サンプルを得る。湿潤液としては、結着樹脂の溶解性や、着色剤との塗れ性を考慮しながら、一般的なものを使用できるが、特に、アセトン、トルエン、ブタノン等の有機溶剤や水が、着色剤の分散性の面から好ましい。中でも、水の使用は、環境への配慮及び、後のトナー製造工程における着色剤の分散安定性維持の点から、一層好ましい。この製法によると、得られるトナーに含有される着色剤粒子の粒径が小さくなるばかりでなく、該粒子の分散状態の均一性が高くなるため、OHPによる投影像の色の再現性がより一層良くなる。
トナー中に結着樹脂や着色剤とともにワックスに代表される離型剤を含有させることもできる。離型剤としては公知のものが使用でき、例えばポリオレフィンワッックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(パラフィンワッックス、サゾールワックスなど);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、カルボニル基含有ワックスである。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど);およびジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。
これらカルボニル基含有ワックスのうち好ましいものは、ポリアルカン酸エステルである。これら離型剤の融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点が40℃未満のワックスは耐熱保存性に悪影響を与え、160℃を超えるワックスは低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすい。また、ワックスの溶融粘度は、融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cpsが好ましく、さらに好ましくは10〜100cpsである。1000cpsを超えるワックスは、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しい。トナー中のワックスの含有量は通常0〜40質量%であり、好ましくは3〜30質量%である。
トナー帯電量及びその立ち上がりを早くするために、トナー中に、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。ここで、電荷制御剤として有色材料を用いると色の変化が起こるため、無色、白色に近い材料が好ましい。帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的には第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5質量部の範囲がよい。10質量部を越える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させる事もできるし、有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えても良いし、トナー表面にトナー粒子作成後固定化させてもよい。
トナー製造過程で水系媒体中にトナー組成物を分散させるに際して、主に分散安定化のための樹脂微粒子を添加してもよい。使用される樹脂微粒子は、水性分散体を形成しうる樹脂であればいかなる樹脂も使用でき、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂微粒子としては、上記の樹脂を2種以上併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用が好ましい。
ビニル系樹脂としては、ビニル系モノマーを単独重合また共重合したポリマーで、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。この無機微粒子の一次粒子径は、5mμ〜2μmであることが好ましく、特に5mμ〜500mμであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5質量%であることが好ましく、特に0.01〜2.0質量%であることが好ましい。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
この他、高分子系微粒子、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
感光体や中間転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
これらのトナーを用いることにより、上述の如く、現像の安定性に優れる、高画質なトナー像を形成することができる。しかしながら、転写装置にて転写媒体もしくは中間転写媒体に転写されず、像担持体上に残存してしまったトナーは、その微細さや転動性の良さのために、クリーニング装置による除去が困難で通過してしまうことがある。トナーを像担持体から完全に除去するには、例えばクリーニングブレードのようなトナー除去部材を像担持体に対して強力に押しつける必要がある。この様な負荷は、像担持体やクリーニング装置の寿命を短くするだけでなく、余計なエネルギーを使用してしまうことになる。像担持体に対する負荷を軽減した場合には、像担持体上のトナーや小径のキャリアの除去が不十分となり、これらはクリーニング装置を通過する際に、像担持体表面を傷つけ、画像形成装置の性能を変動させる要因となる。
本発明の画像形成装置は、前述の如く、像担持体表面状態の変動、特に低抵抗部位の存在に対しての許容範囲に優れ、像担持体への帯電性能変動等を、高度に抑制した構成であるため、上記構成のトナーと併用することにより、極めて高画質な画像を、長期にわたって安定して得ることができるものである。
また、本発明の画像形成装置は、上述のような、高品質な画像を得るに適した構成のトナーとの併用ばかりでなく、粉砕法による不定形のトナーに対しても適用でき、装置寿命を大幅に延ばすことは言うまでもない。このような、粉砕法のトナーを構成する材料としては、通常、電子写真用トナーとして使用されるものが、特に制限なく、適用可能である。
該トナーに使用される一般的な結着剤樹脂の例としては、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン/p−クロロスチレン共重合体、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、スチレン/ビニルナフタレン共重合体、スチレン/アクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリル酸エチル共重合体、スチレン/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリル酸オクチル共重合体、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体、スチレン/メタクリル酸エチル共重合体、スチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン/α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ビニルメチルケトン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等のスチレン系共重合体;ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル系単重合体やその共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等のポリビニル誘導体;ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、ポリオール系重合体、エポキシ系重合体、テルペン系重合体、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが挙げられ、単独あるいは混合して使用できるが特にこれらに限定するものではない。中でも、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂より選ばれる少なくとも1種以上であることが、電気特性、コスト面等から、より好ましいものである。更には、良好な定着特性を有するものとして、ポリエステル系樹脂および/またはポリオール系樹脂の使用が、一層好ましい。
粉砕法のトナーでは、これらの樹脂成分と共に、前述のような着色剤成分、ワックス成分、電荷制御成分等を、必要により前混合後、樹脂成分の溶融温度近傍以下で混練して、これを冷却後、粉砕分級工程を経て、トナーを作成すれば良く、また、必要により前述の外添成分を、適宜、添加混合すれば良い。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(1)保護剤ブロックの作製
次の手順で本発明において用いる保護剤ブロックを作製した。
(粒子化工程)
平均粒径が18μmのステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物(67:33(質量比))と、平均一次粒径が0.15μmで平均二次粒系が3μmの六方晶系窒化ホウ素と、平均粒径が0.27μmの球形アルミナとを8:2:0.5(質量比)で秤量し、オスターブレンダーにより6秒間混合し、30秒停止した。この操作を三回行い、各成分を混合した粉体(粉体混合物)を得た。
次に、混合した粉体を図3に示す加圧ローラ装置に上方から投入し、平均粒径が54μmの保護剤粒子を製造した。なお、平均粒径の測定は、島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−3100/2200を用いて行った。
製造した保護剤粒子を電子顕微鏡でSEM観察したところ、図9に示すように、扁平の粒子が重なり、融合した形状をしていた。
(圧縮成形工程)
製造した平均粒径54μmの保護剤粒子を、加圧成形型に投入し、プレス機により真密度の65%に相当する厚みまで圧縮し、その状態で10秒間停止し、さらに保護剤混合物の真比重の92%に相当する厚みまで圧縮して、幅8mm、厚さ18.1mm、長さ322mmの保護剤ブロックを5本作成した。
(2)保護剤ブロックの評価
作製した保護剤ブロック4本をタンデム型カラー画像形成装置(imagio MPC4500、株式会社リコー製)の各画像形成ステーションの保護剤塗布装置に搭載し、この画像形成装置においてA4縦サイズの用紙への画像形成を連続200000枚行った。なお、保護剤ブロックを摺擦し、保護剤を微粉化するブラシには、ポリイミド性ブラシ(断面:星型),6.5d,100kを用い、保護剤ブロクを3Nの力で押し付けた。
なお、評価用の出力チャートとして、ISOテストチャート(ISO/IEC JTC 1/SC 28 のホームページhttp://www.iso.org/jtc1/sc28)を用いた。
その結果、200000枚目の画像においても、非常に高画質の画像が得られた。
500枚、10000枚、200000枚画像形成を行った時点で、保護剤ブロックに付着している保護剤粉を採取し、ATR法(Ge、45°、1回反射、)により、3kg/1.5mmφでIRスペクトルを測定した。Mr1は、それぞれ4.1、4.0、4.1とほとんど変化がなかった。
一方、保護剤ブロックを同様にATR法によりIRスペクトルを測定し、Mr2を測定したところ、2.4であった。
評価結果を表2に示した。
[実施例2、3、4、比較例1]
実施例1において、保護剤ブロックをブラシに押し付ける力f(N)を、4N、5N、6N、8Nとした以外は実施例1と同様に画像形成を行った。
その結果、200000枚目の画像において保護剤ブロックをブラシに押し付ける力が4N、5N、6Nとした画像形成装置では、高画質の画像が得られたが、8Nで画像形成を行ったものは、スジ状の異常画像が多数発生してしまっていた。
500枚画像形成を行った時点で、保護剤ブロックに付着している保護剤粉を採取し、ATR法(Ge、45°、1回反射、)により、3kg/1.5mmφでIRスペクトルを測定したところ、それぞれ3.9、3.6、3.2、2.4であった。
評価結果を表3に示した。
[実施例5〜8、比較例2]
実施例1において、平均粒径が20μmのステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物(76:24(質量比))を用い、平均粒径が60μmの保護剤粒子から保護剤ブロックを製造する以外は実施例1〜4、比較例1と同様にして画像形成装置を作製し、画像形成を行った。
その結果、200000枚目の画像において保護剤ブロックをブラシに押し付ける力が3N、4N、5N、6Nで画像形成装置は、高画質の画像が得られたが、8Nで画像形成を行ったものは、スジ状の異常画像が多数発生してしまっていた。
500枚画像形成を行った時点で、保護剤ブロックに付着している保護剤粉を採取し、ATR法(Ge、45°、1回反射、)により、3kg/1.5mmφでIRスペクトルを測定したところ、それぞれ4.0、3.8、3.7、3.3、2.3であった。保護剤ブロックのMr2は、2.3であった。
評価結果を表4に示した。
[比較例3、4]
実施例1において、オイスターブレンダーで混合した粉体混合粉を150℃に加熱で加熱しながら攪拌し、成形型に溶融した保護剤を入れ、冷却することで保護剤ブロックを作製した。
この保護剤ブロックを用い、保護剤ブロックをブラシに押し付ける力が3N、8Nで画像形成を行う以外は、実施例1と同様に画像形成を行ったが、200000枚目の画像において何れの画像も、スジ状の異常画像が多数発生してしまっていた。
500枚画像形成を行った時点で、保護剤ブロックに付着している保護剤粉を採取し、ATR法(Ge、45°、1回反射、)により、3kg/1.5mmφでIRスペクトルを測定したところ、それぞれ2.6、2.5であった。保護剤ブロックのMr2は、2.7であった。
評価結果を表5に示した。
[実施例9,10]
実施例1において、粒子化工程に用いる粉体を、平均粒径が45μmのステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物(71:29(質量比))と、平均一次粒径が0.20μmで、平均二次粒子径が4μmの六方晶系窒化ホウ素と、平均粒径が0.29μmの球形アルミナとし、それ以外は実施例1と同じ条件で保護剤ブロックを作製した。
ついで、圧縮成形工程により厚み18.5mmの保護剤ブロックを作製した。
実施例1で用いたブラシの代わりに、導電性ポリイミドブラシ(断面:円形),5.4d,100kを用いる以外は実施例1、2と同様に画像形成装置を作製し、画像形成を行った。
その結果、200000枚目の画像においても、非常に高画質の画像が得られた。
500枚画像形成を行った時点で、保護剤ブロックに付着している保護剤粉を採取し、ATR法(Ge、45°、1回反射、)により、3kg/1.5mmφでIRスペクトルを測定した。Mr1は、それぞれ4.1、3.9であった。
一方、保護剤ブロックを同様にATR法によりIRスペクトルを測定し、Mr2を測定したところ、2.5であった。
評価結果を表6に示した。
[実施例11]
実施例9において、ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物(71:29(質量比))と六方晶系窒化ホウ素と、平均粒径が0.29μmの球形アルミナの混合比を8.6:1.4:0.3(質量比)とする以外は実施例9と同様に画像形成装置を作製し、画像形成を行った。
その結果、200000枚目の画像においても、非常に高画質の画像が得られた。
500枚画像形成を行った時点で、保護剤ブロックに付着している保護剤粉を採取し、ATR法(Ge、45°、1回反射、)により、3kg/1.5mmφでIRスペクトルを測定した。Mr1は、3.0であった。
一方、保護剤ブロックを同様にATR法によりIRスペクトルを測定し、Mr2を測定したところ、2.3であった。
評価結果を表7に示した。
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。