JP6024040B2 - 非水性インクジェットインクおよびインクセット - Google Patents
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Description
前記大型のインクジェットプリンタ用の非水性インクジェットインクとしては、耐光性に優れた顔料等の着色剤と、前記着色剤をポリ塩化ビニルシート等の表面に良好に定着させるためのバインダ樹脂と、前記バインダ樹脂を良好に溶解ないしは分散するとともに、前記着色剤を良好に分散しうる有機溶媒とを含むものが主に用いられる。
塩化ビニルに酢酸ビニルを共重合させると、有機溶媒による溶解性を向上させたり、ポリ塩化ビニルシート等の表面に印刷される画像や文字の可撓性を高めて印刷の耐擦過性を向上したりできるためである。
しかし前記従来の有機溶媒の組み合わせでは、非水性インクジェットインクの保存安定性が低く、バインダ樹脂や着色剤が凝集したり沈降したりしやすいという問題があった。
第1の有機溶媒:(a)の溶解性および(b)の膨潤性の両方を有する、
第2の有機溶媒:(a)の溶解性は有しないが(b)の膨潤性は有する、
第3の有機溶媒:(a)の溶解性も(b)の膨潤性も有しない、
の3種に分類し、このうち第1および第2の2種の有機溶媒を併用するか、または第1ないし第3の3種の有機溶媒を併用して前記の効果を得ることが提案されている。
(a) 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体〔数平均分子量Mn=22,000、酢酸ビニル含量14質量%〕0.2gを、20mlの有機溶媒に加えて25℃で1時間かく拌することで、全量を溶解させることができる溶解性。
評価する有機溶媒20mlをビーカーに入れ、表面がテフロン(登録商標)でコートされたかく拌子を投入し、25±1℃に設定した恒温槽中で静置して液温を安定させる。
次いでマグネチックスターラを動作させ、かく拌子を回転させて、回転速度500rpm以上、1,000rpm以下の条件でかく拌する。
そして、先に説明したように溶液が透明になったものを溶解性あり、溶液が濁っていたり固形物が沈殿したりしたものを溶解性なしとして評価する。
(b) 日本工業規格JIS K6742:2004に規定された、外径の基準寸法が32.0mm、内径の呼び径が25mmの水道用硬質塩化ビニル管(VP)を、有機溶媒に浸漬させて、60℃で3日間静置した際に、内径の変化率が1%以上となるように膨潤させることができる膨潤性。
評価する有機溶媒300mlをビーカー中に入れ、60±1℃に設定した恒温槽中で静置して液温を安定させる。
次いで前記液中に、あらかじめ長さ80mmに切断すると共に内径を実測した水道用硬質塩化ビニル管(VP)を浸漬して3日間静置した後、液中から引き上げて直ちに内径を実測する。
しかし後者のようにポリ塩化ビニルシート等をつづら折り状に重ねる場合には、重ねる前の印刷が、見かけ上では乾燥していても、重ねた状態で静置すると重ねられた印刷同士が貼り付いて、再び拡げた際に、いずれか一方または両方の印刷が剥がれてしまうという問題を生じるおそれがある。
これらの原因としては、前記2種または3種の有機溶媒のうち、印刷の内部、さらにはポリ塩化ビニルシート等の内部に速やかに浸透して、非水性インクジェットインクによる印刷を見かけ上は速やかに乾燥状態とする、いわゆる浸透乾燥性を担う第2の有機溶媒が、それ自体が揮発して前記印刷を本質的に乾燥状態とする揮発乾燥性の点では不十分で、前記印刷やポリ塩化ビニルシート等の内部に残留しやすいことが考えられる。
そこで、かかる貼り付きを抑制するため、特許文献1においては、バインダ樹脂として、前記ポリ塩化ビニル系樹脂とともに、重量平均分子量Mwが8,000ないし40,000のアクリル系樹脂を併用することが検討されている。
ところが発明者が検討したところによると、前記の重量平均分子量Mwを有する従来のアクリル系樹脂を使用した場合、前記特許文献1に記載の条件よりもさらにシビアな条件下、例えば印刷後の静置時間を短縮して、より短時間でつづら折り状に重ねた際等に、貼り着きを防止する効果が未だ十分ではないことが明らかとなった。
また前記非水性インクジェットインクを用いて、例えば蛍光マーカのような蛍光色の印刷をすることは、未だ実用化されていない。
蛍光色の印刷をするための、蛍光色の着色剤としては、例えば無機または有機の蛍光顔料や蛍光染料等が挙げられる。
一方、有機の蛍光顔料は、例えば樹脂の微細な粒子を蛍光染料で染色するか、または前記蛍光染料のコアを樹脂のシェルで被覆する等して構成され、水性のインクジェットインク用の着色剤としては好適に使用できる。
また本発明の目的は、前記非水性インクジェットインクを含むインクセットを提供することにある。
で表されるアミド系溶媒とを、前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテル類の配合割合が、有機溶媒の総量の70質量%以上となるように併用することを特徴とするものである。
また前記有機溶媒と、バインダ樹脂としてのポリ塩化ビニル系樹脂とを併用することにより印刷の定着性を高めて、ポリ塩化ビニルシート等の表面に、耐水性、耐光性、耐摩擦性等に優れた画質の良好な画像や文字を印刷することができる。
これは、前記の重量平均分子量Mw、およびガラス転移温度Tgを有するあらかじめ重合体の状態で使用するアクリル系樹脂が化学的に安定でかつ物理的に高強度であるため、先に説明した、印刷の表面近傍に形成される領域による、印刷やポリ塩化ビニルシート等の内部に残留した第2の有機溶媒の染み出しによる膨潤や部分的な溶解等を抑制する機能を、さらに強化できるためと考えられる。
アクリル系樹脂の配合割合を前記範囲内とすることにより、前記アクリル系樹脂をポリ塩化ビニル系樹脂と併用することによる前記効果をより一層良好に発現させて、印刷後のポリ塩化ビニルシート等をつづら折り状に重ねた際に印刷同士の貼り付きを防止する効果をさらに向上することができる。
このうち前者の場合には、印刷の貼りつきを防止する効果や、印刷の定着性を高めて、ポリ塩化ビニルシート等の表面に、耐水性、耐光性、耐摩擦性等に優れた画質の良好な画像や文字を印刷する効果を実用的なレベルに維持しながら、特に非水性インクジェットインクの保存安定性を向上することができる。
前記本発明の非水性インクジェットインクを用いて蛍光色の印刷をする場合には、前記着色剤として蛍光染料を用いるとともに、前記非水性インクジェットインクに、さらに前記有機溶媒に可溶で、かつ前記蛍光染料が前記媒体の表面から内部に移行するのを抑制する機能を有する第3の樹脂を配合する。
そのため前記有機溶媒が、従来の含窒素複素環化合物等に比べて、一般的にポリ塩化ビニルシート等に対する浸透性が低く、蛍光染料を伴ってポリ塩化ビニルシート等の内部に浸透しにくいことと相まって、前記ポリ塩化ビニルシート等の表面に、十分な濃度を有する良好な蛍光色の印刷をすることが可能となる。
例えば第3の樹脂として、ポリ塩化ビニルシート等の少なくとも表層を構成するポリ塩化ビニル系樹脂よりも蛍光染料に対する親和性、相溶性に優れた樹脂を用いる。そうすると前記第3の樹脂は、有機溶媒の浸透に伴って内部に浸透せずに、ポリ塩化ビニルシート等の表面に残留するため、蛍光染料は、ポリ塩化ビニルシート等の内部に浸透するものよりも、前記第3の樹脂とともに、前記ポリ塩化ビニルシート等の表面に残留するものの方が多くなり、結果としてポリ塩化ビニルシート等の表面に、十分な濃度を有する良好な蛍光色の印刷をすることができる。
本発明によれば、例えばインクジェットプリンタを用いた印刷で、少なくとも最後にポリ塩化ビニルシート等の表面に印刷される非水性インクジェットインクを本発明の構成とすることにより、前記ポリ塩化ビニルシート等をつづら折り状に重ねた際の、印刷同士の貼り付きをより確実に防止することが可能となる。
なお特許文献2には、非水性インクジェットインクを構成する有機溶媒中でアクリルモノマを溶液重合させてなるアクリル樹脂を、バインダ樹脂として含む非水性インクジェットインクが記載されている。前記アクリル樹脂のガラス転移温度Tgは80℃以上、重量平均分子量Mwは10,000〜100,000であるのが好ましいとされている。またバインダ樹脂としては、前記アクリル樹脂とともにポリ塩化ビニル系樹脂を併用してもよいとされている。
そのため前記アクリル樹脂は、本発明で使用している、あらかじめ重合体の状態で非水性インクジェットインクの製造に使用されるアクリル系樹脂と違い、印刷の乾燥過程で前記印刷の表面に十分に集中させることができず、前記表面の近傍に、十分に濃度の高い領域を形成することができない。
さらに本発明によれば、前記非水性インクジェットインクを含むインクセットを提供することができる。
本発明の非水性インクジェットインクは、着色剤、バインダ樹脂、および有機溶媒を含み、前記バインダ樹脂としては、あらかじめ重合体の状態で配合された、ガラス転移温度Tgが60℃以上、95℃以下で、かつ重量平均分子量Mwが50,000以上、140,000以下のアクリル系樹脂、およびポリ塩化ビニル系樹脂を併用し、前記アクリル系樹脂の配合割合は、前記ポリ塩化ビニル系樹脂、およびアクリル系樹脂の総量の10質量%以上、35質量%以下であるとともに、前記有機溶媒としては、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル類のみを用いるか、または前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテル類と、前記式(1)で表されるアミド系溶媒とを、前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテル類の配合割合が、有機溶媒の総量の70質量%以上となるように併用することを特徴とするものである。
本発明において、アクリル系樹脂のガラス転移温度Tgが前記範囲に限定されるのは、下記の理由による。
すなわちアクリル系樹脂のガラス転移温度Tgが60℃未満では、前述した、長尺のポリ塩化ビニルシート等の表面に印刷をしてつづら折り状に重ねる際に印刷同士の貼り付きを防止する効果が得られない。
すなわちアクリル系樹脂の重量平均分子量Mwが50,000未満では、前述した、長尺のポリ塩化ビニルシート等の表面に印刷をしてつづら折り状に重ねる際に印刷同士の貼り付きを防止する効果が得られない。
これに対し、ガラス転移温度Tg、および重量平均分子量Mwがいずれも前記範囲内であるアクリル系樹脂を用いることにより、前記はく離や保存安定性等の問題を生じることなしに、従来に比べてよりシビアな条件でも、ポリ塩化ビニルシート等をつづら折り状に重ねた際に、印刷同士の貼り付きを防止することが可能となる。
またアクリル系樹脂の重量平均分子量Mwや、あるいは後述するポリ塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnを、いずれも本発明では、TSKgelsuper HZM−Nカラム〔東ソー(株)製〕を2連で用いて、ゲル浸透クロマトグラフ装置〔東ソー(株)製のHLC−8220GPC〕により、流量:0.35ml/分、展開溶媒:THFの条件で測定した結果から、ポリスチレン換算で求めた重量平均分子量でもって表すこととする。
すなわちアクリル酸、メタクリル酸、これらの塩、またはアルキル、ポリエステル、ポリエーテル等とのエステル等のアクリル系モノマのうちのいずれか1種からなるホモポリマや、2種以上からなるコポリマ、あるいは1種または2種以上のアクリル系モノマと他のモノマとのコポリマ等で、なおかつガラス転移温度Tg、および重量平均分子量Mwが前記範囲内であるものの1種または2種以上がアクリル系樹脂として挙げられる。
前記アクリル系樹脂の具体例としては、これに限定されないが、例えばローム アンド ハース社製のPARALOID(パラロイド、登録商標)シリーズのうちA−11〔ガラス転移温度Tg:100℃、重量平均分子量Mw:125,000、基本組成:MMA〕、A−14〔ガラス転移温度Tg:100℃、重量平均分子量Mw:70,000、基本組成:MMA〕、B−44〔ガラス転移温度Tg:60℃、重量平均分子量Mw:140,000、基本組成:MMA/EA〕、B−60〔ガラス転移温度Tg:75℃、重量平均分子量Mw:50,000、基本組成:MMA/BMA〕、B−64〔ガラス転移温度Tg:60℃、重量平均分子量Mw:140,000、基本組成:MMA/EA〕等の1種または2種以上が挙げられる。
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルのホモポリマや、前記塩化ビニルと他のモノマとのコポリマ等の1種または2種以上が挙げられる。
中でもポリ塩化ビニル系樹脂としては、溶液重合法のように多量の有機溶媒を使用しないため、かかる有機溶媒を大気中に揮散させずに排気処理、廃液処理等によって回収する設備等を必要としない、懸濁重合法や乳化重合法によって合成されたポリ塩化ビニル系樹脂が好ましい。
前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の分子量や酢酸ビニル含量は任意に設定できるが、懸濁重合法によって合成される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、数平均分子量Mnが5,000以上、特に10,000以上であるのが好ましく、100,000以下、特に30,000以下であるのが好ましい。
また前記範囲を超える場合には、非水性インクジェットインクの粘度が高くなりすぎて、インクジェットプリンタのヘッドのノズルから液滴として良好に吐出できないおそれがある。
酢酸ビニル含量が前記範囲未満では、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の溶解性が低下して、前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が非水性インクジェットインク中に析出しやすくなり、当該非水性インクジェットインクの保存安定性が低下するおそれがある。
前記懸濁重合法によって合成される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、例えば日信化学工業(株)製のSOLBIN(ソルバイン、登録商標)シリーズの塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体のうち品番CL(数平均分子量Mn:25,000、酢酸ビニル含量:14質量%、ガラス転移温度Tg:70℃)、CNL(数平均分子量Mn:12,000、酢酸ビニル含量:10質量%、ガラス転移温度Tg:76℃)、C5R(数平均分子量Mn:27,000、酢酸ビニル含量:21質量%、ガラス転移温度Tg:68℃)、AL(数平均分子量Mn:22,000、酢酸ビニル含量:2質量%、ガラス転移温度Tg:76℃)、TA5R(数平均分子量Mn:28,000、酢酸ビニル含量:1質量%、ガラス転移温度Tg:78℃)、TAO(数平均分子量Mn:15,000、酢酸ビニル含量:2質量%、ガラス転移温度Tg:77℃)、TA3(数平均分子量Mn:24,000、酢酸ビニル含量:4質量%、ガラス転移温度Tg:65℃)等の1種または2種以上が挙げられる。
重量平均分子量Mwが前記範囲未満では、ポリ塩化ビニルシート等に対する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の定着性が低下して、前記ポリ塩化ビニルシート等の表面に、耐水性、耐光性、耐摩擦性等に優れた画質の良好な画像や文字を印刷する効果が十分に得られないおそれがある。
また乳化重合法によって合成される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量は1質量%以上、中でも10質量%以上、特に14質量%以上であるのが好ましく、36質量%以下、中でも20質量%以下、特に16質量%以下であるのが好ましい。
また前記範囲を超える場合には、ポリ塩化ビニルシート等に対する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の定着性が低下して、前記ポリ塩化ビニルシート等の表面に、耐水性、耐光性、耐摩擦性等に優れた画質の良好な画像や文字を印刷する効果が十分に得られないおそれがある。
前記アクリル系樹脂の配合割合は、ポリ塩化ビニル系樹脂とアクリル系樹脂との総量の10質量%以上、35質量%以下に限定される。
アクリル系樹脂の配合割合が前記範囲未満では、当該アクリル系樹脂を配合することによる、先に説明した、従来に比べてよりシビアな条件でも、ポリ塩化ビニルシート等をつづら折り状に重ねた際に、印刷同士の貼り付きを防止する効果が十分に得られない。
また、前記アクリル系樹脂とポリ塩化ビニル系樹脂の合計の配合割合は、非水性インクジェットインクの総量の1質量%以上、特に3質量%以上であるのが好ましく、10質量%以下、特に7質量%以下であるのが好ましい。
また前記範囲を超える場合には非水性インクジェットインクの粘度が高くなりすぎて、インクジェットプリンタのヘッドのノズルから液滴として良好に吐出できないおそれがある。
有機溶媒としては、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル類のみを用いるか、または前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテル類と、前記式(1)で表されるアミド系溶媒とを、前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテル類の配合割合が、有機溶媒の総量の70質量%以上となるように併用する。
後者の併用系において、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル類の配合割合が前記範囲未満では、非水性インクジェットインクの保存安定性が低く、バインダ樹脂や着色剤が凝集したり沈降したりしやすいという問題がある。
なおポリアルキレングリコールアルキルエーテル類の配合割合の上限は90質量%である。この範囲より式(1)で表されるアミド系溶媒の配合割合が少ない場合には、併用の効果が十分に得られないおそれがある。
で表されるアミド系溶媒に限定される。
前記式(1)で表されるアミド系溶媒は、ポリ塩化ビニルシート等に対する浸透乾燥性に優れるとともに、速やかに揮発して印刷を実質的に乾燥させる揮発乾燥性にも優れるため、印刷の貼り付きをより一層良好に防止することができる。しかも前記アミド系溶媒は非プロトン性極性有機溶媒の一種であるが、従来の非プロトン性極性有機溶媒と比べてポリアルキレングリコールアルキルエーテル類との相溶性、親和性に優れているため、保存安定性を損なうおそれもない。
(ポリアルキレングリコールアルキルエーテル類)
前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテル類は、先に説明したように第1ないし第3の3種に分類することができ、このうち第1および第2の2種の有機溶媒を併用するか、または第1ないし第3の3種の有機溶媒を併用するのが好ましい。
また第2の有機溶媒としては、例えばジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、およびプロピレングリコールジメチルエーテル等の1種または2種以上が挙げられる。中でも特に、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、およびプロピレングリコールジメチルエーテルのうちの1種または2種以上が好ましい。
一方、第1ないし第3の3種の有機溶媒を併用した混合系においては、第1の有機溶媒の配合割合は、前記混合系の総量の5質量%以上、特に8質量%以上であるのが好ましく、50質量%以下、特に40質量%以下であるのが好ましい。また第3の有機溶媒の配合割合は、混合系の総量の1質量%以上、特に2質量%以上であるのが好ましく、50質量%以下、特に40質量%以下であるのが好ましい。
かかる3種の併用系において、前記第1の有機溶媒は、含窒素複素環化合物等の非プロトン性極性有機溶媒ほどではないもののポリ塩化ビニルシート等、およびバインダ樹脂としてのポリ塩化ビニル系樹脂に対する溶解性を有しているのに対し、第3の有機溶媒は、前記ポリ塩化ビニルシート等、およびポリ塩化ビニル系樹脂に対する溶解性を有していない。また第2の有機溶媒も含めて、前記3種の有機溶媒は非常に相溶性に優れている。
また第3の有機溶媒は、分子中に含まれる水酸基の作用によってポリ塩化ビニルシート等の表面に対する表面張力が高いため、前記表面に到達した非水性インクジェットインクの液滴の、当該表面に対する接触角を大きくする働きをする。そのため、前記表面でのインクの面方向への広がりを抑制することもできる。
蛍光色の印刷をする場合、前記3種の併用系において、第3の有機溶媒の配合割合は、前記併用系の総量の1質量%以上、特に2質量%以上であるのが好ましく、7質量%以下、特に6質量%以下であるのが好ましい。
一方、前記範囲より配合割合が多い場合には、ポリ塩化ビニルシート等の表面に対する非水性インクジェットインクの定着性が低下したり、バインダ樹脂であるポリ塩化ビニル系樹脂の溶解性不足に起因してインクの安定性が低下したりするおそれがある。
前記範囲より配合割合が少ない場合には、ポリ塩化ビニルシート等の表面に対する非水性インクジェットインクの定着性が低下したり、バインダ樹脂であるポリ塩化ビニル系樹脂の溶解性不足に起因してインクの安定性が低下したりするおそれがある。
第2の有機溶媒の配合割合は、前記第1および第3の有機溶媒の配合割合の残量である。すなわち第2の有機溶媒を加えて3種の有機溶媒の総量が100質量%となるように配合割合を設定すればよい。
前記式(1)で表されるアミド系溶媒において、式中のR1〜R3に相当するアルキル基としては、それぞれ個別に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の、炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。
前記アミド系溶媒(1)の具体的化合物としては、例えば式(2):
前記式(1)のアミド系溶媒は、先の(a)の溶解性、および(b)の膨潤性で分類すると、第1の有機溶媒に相当する。そのため、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル類と、式(1)のアミド系溶媒とを併用する場合は、前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテル類のうち第1の有機溶媒の少なくとも一部を、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル類の配合割合が前記70質量%以上となる範囲内で、式(1)のアミド系溶媒で置換するのが好ましい。
〈着色剤(その1)〉
着色剤としては、耐光性等に優れた顔料が好ましい。また顔料としては、任意の無機顔料および/または有機顔料が挙げられる。
また有機顔料としては、例えばアゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、およびアニリンブラック等が挙げられる。
多環式顔料としては、例えばフタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、およびキノフタロン顔料等が挙げられる。
顔料は、非水性インクジェットインクの色目に応じて、1種または2種以上を、任意の割合で配合することができる。また顔料は、非水性インクジェットインク中での分散安定性を向上するために表面を処理してもよい。
(シアン顔料)
C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:3、15:4、15:6、15:34、16、22、60
(マゼンタ顔料)
C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、97、112、122、123、149、168、177、178、179、184、202、206、207、209、242、254、255
(イエロー顔料)
C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、14C、16、17、20、24、73、74、75、83、86、93、94、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、213、214
(ブラック顔料)
C.I.ピグメントブラック7
(オレンジ顔料)
C.I.ピグメントオレンジ36、43、51、55、59、61、71、74
(グリーン顔料)
C.I.ピグメントグリーン7、36
(バイオレット顔料)
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50
顔料の配合割合は、非水性インクジェットインクの総量の0.1質量%以上、特に0.4質量%以上であるのが好ましく、10質量%以下、特に8質量%以下であるのが好ましい。
顔料分散液を構成する溶媒としては、非水性インクジェットインクを構成する有機溶媒に可溶性で、しかも顔料を良好に分散させることができる種々の溶媒が使用可能である。特に、前記第1〜第3の3種の有機溶媒のうちの1種または2種以上が、顔料分散液を構成する溶媒として好ましい。
〈着色剤(その2)〉
本発明の非水性インクジェットインクを用いて蛍光色の印刷をする場合には、着色剤として蛍光染料を用いる。
(油溶性染料)
C.I.ソルベントイエロー44、82、116、C.I.ソルベントレッド43、44、45、49、60、C.I.ソルベントブルー5、C.I.ソルベントグリーン7
(分散染料)
C.I.ディスパーズイエロー82、83、121、124、C.I.ディスパーズオレンジ11、C.I.ディスパーズレッド58、60、C.I.ディスパーズブルー7
(塩基性染料)
ローダミンB、C.I.ベーシックレッド1:1、C.I.ベーシックイエロー40、44、C.I.ベーシックバイオレット7、11、C.I.ベーシックブルー45
(蛍光増白剤、Fluor Bright Agent)
C.I.FBA184
(その他の蛍光染料)
サリチル酸、フルオレセイン、エオシン、チオフラビン、ヘリオドンレッド
〈第3の樹脂〉
前記蛍光染料とともに併用する第3の樹脂としては、前記蛍光染料が前記媒体の表面から内部に移行するのを抑制する機能を有する種々の樹脂が、いずれも使用可能である。
かかる第3の樹脂は、有機溶媒の浸透に伴って内部に浸透せずに、ポリ塩化ビニルシート等の表面に残留するため、蛍光染料は、ポリ塩化ビニルシート等の内部に浸透するものよりも、前記第3の樹脂とともに、前記ポリ塩化ビニルシート等の表面に残留するものの方が多くなり、結果としてポリ塩化ビニルシート等の表面に、十分な濃度を有する良好な蛍光色の印刷をすることができる。
前記蛍光染料と第3の樹脂とは別個に配合してもよいが、例えば樹脂の微細な粒子を蛍光染料で染色するか、または前記蛍光染料のコアを樹脂のシェルで被覆する等して構成された有機の蛍光顔料を、前記蛍光染料と第3の樹脂の出発原料として用い、当該蛍光顔料を有機溶媒に溶解して使用するのが好ましい。
日本蛍光化学(株)製の、NKP−4000、NKP−8300、NKP−9200、NKP−9500C、NKP−9600、NKV−S、NKW−2000、NKW−2100、NKW−3000、NKW−3600、MPI−500C、NKS−1000の各シリーズの各色の蛍光顔料、
シンロイヒ(株)製のFZ−2000、FZ−2800、FZ−3040、FZ−5000、FZ−6000、FA−40、FA−200、FX−300、FA−000、SX−1000、SF−5000、SX−1000、SEL−100、FM−10、FM−100、FNPの各シリーズの各色の蛍光顔料、
デイグロ(DayGlo)社製のT、TM、GT、Z、ZQ、LFY、GPL、AGL、AGR、Phantomの各シリーズの各色の蛍光顔料、
(株)日本触媒製のエポカラーFPシリーズの各色の蛍光顔料、
御国色素(株)製のビクトリアカラーGシリーズの各色の蛍光顔料、
東ソー(株)製のコスモカラーS−1000Fシリーズの各色の蛍光顔料、および
スターリングカラー社製の各色の蛍光顔料、
の1種または2種以上が挙げられる。
蛍光顔料の配合割合は、非水性インクジェットインクの総量の0.1質量%以上、特に0.4質量%以上であるのが好ましく、10質量%以下、特に8質量%以下であるのが好ましい。
〈その他〉
非水性インクジェットインクには、前記各成分に加えてさらに、ポリ塩化ビニル系樹脂の脱塩酸反応によって生じる塩素を捕捉するためのエポキシ化物や、あるいは高分子分散剤、界面活性剤、可塑剤、帯電防止剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、ラジカル重合禁止剤、pH調整剤、金属配位化合物、紫外線吸収剤、光安定化剤、防かび剤、殺生剤等の種々の添加剤を、必要に応じて任意の割合で配合してもよい。
前記のうちエポキシ化物は、バインダ樹脂としてのポリ塩化ビニル系樹脂が脱塩酸反応を生じて、非水性インクジェットインクのpHが酸性側に移行するのを抑制し、それによってインクジェットプリンタのヘッドの損傷や腐食、顔料の凝集や沈降等を生じにくくするために添加される。
かかるエポキシ化物としては、例えばエポキシグリセリド、エポキシ脂肪酸モノエステル、エポキシヘキサヒドロフタレート、エポキシ樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。中でもエポキシグリセリド、エポキシ脂肪酸モノエステル、エポキシヘキサヒドロフタレート等が好ましい。
そのため、ポリ塩化ビニルシート等の表面へのポリ塩化ビニル系樹脂の定着を妨げて印刷の定着性を低下させたり、非水性インクジェットインクの粘度を上昇させて良好な吐出安定性を阻害したりすることなしに、前記ポリ塩化ビニル系樹脂から発生した塩酸をより確実に、分子中に取り込むことができる。
またエポキシグリセリドとしては、例えば大豆油、亜麻仁油、綿実油、紅花油、サフラワー油、ひまわり油、桐油、ひまし油、とうもろこし油、なたね油、ごま油、オリーブ油、パーム油、グレープシード油、魚油等の油類のエポキシ化物の1種または2種以上が挙げられる。
エポキシ化物の配合割合は、ポリ塩化ビニル系樹脂の総量の3質量%以上、特に10質量%以上であるのが好ましく、100質量%以下、特に40質量%以下であるのが好ましい。
また前記範囲を超える場合には、過剰のエポキシ化物が、ポリ塩化ビニル系樹脂の、ポリ塩化ビニルシート等の表面への定着を妨げて印刷の定着性を低下させたり、非水性インクジェットインクの粘度を上昇させて良好な吐出安定性を阻害したりするおそれがある。
本発明は、複数色の非水性インクジェットインクを含むインクセットであって、前記複数色のうち少なくとも1色の非水性インクジェットインクは、前記本発明の非水性インクジェットインクであることを特徴とするものである。
本発明によれば、例えばインクジェットプリンタを用いた印刷で、少なくとも最後にポリ塩化ビニルシート等の表面に印刷される非水性インクジェットインクを本発明の構成とすることにより、前記ポリ塩化ビニルシート等をつづら折り状に重ねた際の、印刷同士の貼り付きをより確実に防止することが可能となる。
前記複数色の非水性インクジェットインクの組み合わせとしては、例えばフルカラー画像等を形成するための、少なくともシアン(C)、マゼンタ(M)、およびイエロー(Y)の各色の非水性インクジェットインクを含む組み合わせが挙げられる。具体的には、前記C、M、Yの3色、または前記3色にブラック(K)を組み合わせた4色、あるいは前記3色または4色に、さらにライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、グレー(GY)等の淡色を組み合わせた多色のインクセットが挙げられる。このうち少なくとも1色の非水性インクジェットインクを本発明の構成とすればよい。
〈実施例1〉
バインダ樹脂のうちアクリル系樹脂としては、前出の、ローム アンド ハース社製のPARALOID(登録商標)B−60〔ガラス転移温度Tg:75℃、重量平均分子量Mw:50,000、基本組成:MMA/BMA〕を用いた。
第3の有機溶媒としてのジエチレングリコールモノエチルエーテル(2EG−1E)5質量部、第2の有機溶媒としてのジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E)30.5質量部、およびテトラエチレングリコールジメチルエーテル(4EG−2M)10質量部をかく拌しながら、前記アクリル系樹脂1質量部、およびポリ塩化ビニル系樹脂3質量部を加えて分散させるとともに前記両バインダ樹脂を膨潤させた。
次に、顔料としてのカーボンブラック〔三菱化学(株)製のMA8〕を15.0質量%の濃度で、前記第2の有機溶媒としてのジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E)に分散させた分散液30質量部を調製し、当該分散液を、かく拌下、先の混合物70質量部に加えたのち、均一相を形成するようにさらにかく拌して非水性インクジェットインクを製造した。
アクリル系樹脂として、前記B−60に代えて、同社製のPARALOID B−64〔ガラス転移温度Tg:60℃、重量平均分子量Mw:140,000、基本組成:MMA/EMA〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈実施例3〉
アクリル系樹脂として、前記B−60に代えて、同社製のPARALOID A−14〔ガラス転移温度Tg:95℃、重量平均分子量Mw:70,000、基本組成:MMA〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈実施例4〉
アクリル系樹脂としてのB−60の配合量を0.4質量部、ポリ塩化ビニル系樹脂の配合量を3.6質量部としたこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈実施例5〉
アクリル系樹脂としてのB−60の配合量を1.4質量部、ポリ塩化ビニル系樹脂の配合量を2.6質量部としたこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈比較例1〉
アクリル系樹脂としてのB−60の配合量を0.2質量部、ポリ塩化ビニル系樹脂の配合量を3.8質量部としたこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈比較例2〉
アクリル系樹脂としてのB−60の配合量を1.6質量部、ポリ塩化ビニル系樹脂の配合量を2.4質量部としたこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈実施例6〉
第1の有機溶媒としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM)に代えて、前記式(2)で表されるアミド系溶媒〔出光興産(株)製のエクアミド(登録商標)M100、分子量:131.2、沸点:216℃〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈比較例3〉
第1の有機溶媒としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM)に代えて、従来の非プロトン性極性有機溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈比較例4〉
アクリル系樹脂として、前記B−60に代えて、DSM NeoResins+社製のNeoCryl(ネオクリル、登録商標)B−813〔ガラス転移温度Tg:64℃、重量平均分子量Mw:40,000、基本組成:EMA〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈比較例5〉
アクリル系樹脂として、前記B−60に代えて、同社製のPARALOID B−66〔ガラス転移温度Tg:50℃、重量平均分子量Mw:70,000、基本組成:MMA/BMA〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈比較例6〉
アクリル系樹脂として、前記B−60に代えて、同社製のPARALOID A−21〔ガラス転移温度Tg:105℃、重量平均分子量Mw:120,000、基本組成:MMA〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈比較例7〉
アクリル系樹脂を配合せず、ポリ塩化ビニル系樹脂の配合量を4質量部とし、また第1の有機溶媒としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM)に代えて、前記式(2)で表されるアミド系溶媒を35質量部配合するとともに、第2の有機溶媒としてのジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E)の量を41質量部としたこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈比較例8〉
アクリル系樹脂として、前記B−60に代えて、同社製のPARALOID B−48N〔ガラス転移温度Tg:50℃、重量平均分子量Mw:250,000、基本組成:MMA/BA〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈比較例9〉
アクリル系樹脂として、前記B−60に代えて、DSM NeoResins+社製のNeoCryl(ネオクリル、登録商標)B−818〔ガラス転移温度Tg:60℃、重量平均分子量Mw:38,000、基本組成:EA/EMA〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈比較例10〉
100℃に保持したジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E)300g中に、メタクリル酸メチル200gとt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.8gの混合物を1.5時間かけて滴下し、次いで100℃で2時間反応させたのち冷却して、無色透明のポリメタクリル酸メチルの重合体溶液を得た。
次いで前記重合体溶液に、当該重合体溶液中のポリメタクリル酸メチル1質量部あたり、実施例1で使用したのと同じポリ塩化ビニル系樹脂3質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E)29質量部、およびテトラエチレングリコールジメチルエーテル(4EG−2M)10質量部を加え、かく拌して前記ポリ塩化ビニル系樹脂を膨潤させた。
そして前記混合物70質量部に、かく拌下、実施例1で調製したのと同じカーボンブラックの分散液30質量部を加えたのち、均一相を形成するようにさらにかく拌して非水性インクジェットインクを製造した。
この比較例10は、特許文献2に記載の、有機溶媒中で溶液重合によって生成されたアクリル系樹脂を用いた非水性インクジェットインクを再現したものである。アクリル系樹脂の重合は、特許文献2の重合体2の合成に従った。
前記各実施例、比較例の非水性インクジェットインクを、ポリ塩化ビニル製ターポリンの表面に、ワイヤーバー(直径0.60mmのピアノ線を、金属の棒に巻きつけたもの)を用いて塗布し、25℃で1時間静置して乾燥させ、次いで2つ折りにして塗膜同士を重ね合わせて上から1kgの荷重をかけた状態でさらに3時間静置した後、2つ折りにしていたターポリンを拡げた際の状態を観察して、下記の基準で、貼り付きの有無を評価した。
○:塗膜を、ターポリンの表面から剥がれさせることなく、重ね合わされていた界面で分離させることができたが、その際にターポリンの一部に層間はく離が生じた。貼り付きは殆どなし。
前記1時間の乾燥は、特許文献1の実施例における2時間の乾燥に比べてよりシビアな条件であり、かかるシビアな条件で○以上の評価が得られるということは、特許文献1記載の発明に比べて、貼り付きの防止効果がより一層優れていることを意味している。
前記貼り付き試験で2つ折りにしたのち拡げたターポリンの折り目の部分の塗膜の上に、セロハンテープを貼り付け、引き剥がして塗膜の状態を観察して、下記の基準で、塗膜のはく離の有無を評価した。
○:はく離なし。
〈保存安定性試験〉
前記各実施例、比較例の非水性インクジェットインクを50℃で2週間、保存する前と保存した後の、それぞれの時点での粘度を、R型粘度計〔東機産業(株)製のRE500〕を用いて測定して、下記の基準で保存安定性を評価した。
○:粘度の変化率が±8%を超え、±10%以内であった。保存安定性良好。
×:粘度の変化率が±10%を超えていた。保存安定性不良。
〈定着性試験〉
前記各実施例、比較例の非水性インクジェットインクを、ポリ塩化ビニル製ターポリンの表面に、ワイヤーバー(ドクター0.25、直径0.25mmのピアノ線を、金属の棒に巻きつけたもの)を用いて塗布し、1.2kWのドライヤーを用いて1分間、熱風乾燥させた後、塗膜を、綿棒を用いて50gの荷重で擦って、下記の基準で定着性を評価した。
×:コーティングに擦過痕が残ったり、擦り取られてしまったりした。定着性不良。
以上の結果を表2〜表5に示す。
また表4の比較例8、9、4の結果より、アクリル系樹脂を併用したとしても、当該アクリル系樹脂の重量平均分子量Mwが50,000未満では印刷の貼り付きを生じ、140,000を超える場合には、非水性インクジェットインクの保存安定性が不良になることが判った。
また、特に実施例1〜5の結果より、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル類の配合割合を100質量%とすると、印刷の貼りつきを防止する効果や、印刷の定着性を向上する効果を実用的なレベルに維持しながら、特に非水性インクジェットインクの保存安定性を向上できることが判った。
着色剤としては、第3の樹脂としてのスチレン−ジビニルベンゼン共重合物のソディウムスルホン化物の粒子を、蛍光染料としてのC.I.ディスパーズイエロー82で染色してなる蛍光顔料〔シンロイヒ(株)製のFNP−35、レモンイエロー〕を用いた。
またポリ塩化ビニル系樹脂としては、前出の、ワッカーケミカル社製のVINNOL(登録商標)E15/45M〔塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、重量平均分子量Mw:50,000〜60,000、酢酸ビニル含量:15.0±1.0質量%、ガラス転移温度Tg:76℃〕を用いた。
また前記蛍光顔料を15質量%の濃度で、第2の有機溶媒としてのジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E)に加え、40℃で2時間かく拌して前記蛍光顔料を溶解させて、前記蛍光染料と第3の樹脂とを含む溶液(蛍光顔料の濃度15質量%)30質量部を調製し、当該溶液を、かく拌下、先の混合物70質量部に加えたのち、均一相を形成するようにさらにかく拌して非水性インクジェットインクを製造した。
蛍光顔料に代えて、第3の樹脂としてのスチレン−ジビニルベンゼン共重合物のソディウムスルホン化物1質量部と、蛍光染料としてのC.I.ディスパーズイエロー82 3.5質量部とを別個に配合したこと以外は実施例7と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈実施例9〉
第1の有機溶媒としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM)に代えて、前記式(2)で表されるアミド系溶媒〔出光興産(株)製のエクアミド(登録商標)M100、分子量:131.2、沸点:216℃〕を同量配合したこと以外は実施例7と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈実施例10〉
第3の有機溶媒としてのジエチレングリコールモノエチルエーテル(2EG−1E)を配合せず、第2の有機溶媒としてのジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E)の配合量を61質量部としたこと以外は実施例7と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈比較例11〉
蛍光顔料に代えて、蛍光染料としてのC.I.ディスパーズイエロー82 3.5質量部を配合したこと以外は実施例7と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈比較例12〉
蛍光顔料とジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E)とを、蛍光顔料が溶解しないようにチラーで冷却しながら混合して、前記蛍光顔料が溶解せずに分散した分散液を調製し、前記分散液を、バインダ樹脂の溶液に配合したこと以外は実施例7と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈比較例13〉
アミド系溶媒の量を32質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E)の量を合計で44質量部としたこと以外は実施例9と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
前記各実施例、比較例の非水性インクジェットインクについて、先の貼り付き試験、はく離試験、保存安定性試験、定着性試験と、下記の蛍光濃度評価、吐出安定性試験とを実施した。
前記各実施例、比較例の非水性インクジェットインクを、ポリ塩化ビニル製ターポリンの表面に、ワイヤーバー(ドクター0.1、直径0.1mmのワイヤーを金属の棒に巻きつけたもの)を用いて塗布し、乾燥させたのち、日本電色工業(株)製のハンディ型分光色差計NF−999を用いて、分光反射率と波長450nmでのOD値とを測定した。そして下記の基準で蛍光濃度を評価した。
△:波長500〜550nmの間に分光反射率の極大値があり、なおかつ波長450nmでのOD値が0.9以上、1.1未満であった。蛍光濃度通常レベル。
○:波長500〜550nmの間に分光反射率の極大値があり、なおかつ波長450nmでのOD値が1.1以上、1.3未満であった。蛍光濃度良好。
◎:波長500〜550nmの間に分光反射率の極大値があり、なおかつ波長450nmでのOD値が1.5以上であった。蛍光濃度極めて良好。
〈吐出安定性試験〉
ピエゾ方式のインクジェットプリンタを用いて、前記各実施例、比較例の非水性インクジェットインクにより、ポリ塩化ビニル製ターポリンの表面に、幅1ポイントの罫線を印刷し、その状態を観察して、下記の基準で、インクジェットプリンタのノズルからの吐出の安定性を評価した。
×:印刷の全般にわたって罫線にかすれが見られた。吐出安定性不良。
以上の結果を表7、表8に示す。
また比較例12の結果より、着色剤として蛍光染料と第3の樹脂とを含む蛍光顔料を使用して、それを有機溶媒に溶解させずに分散させた場合には分散させた蛍光顔料が凝集して、保存安定性が低下するとともに、吐出安定性が低下することが判った。
Claims (3)
- 着色剤、バインダ樹脂、および有機溶媒を含み、少なくとも表層がポリ塩化ビニル系樹脂からなる媒体の表面に印刷するための非水性インクジェットインクであって、前記バインダ樹脂としては、あらかじめ重合体の状態で配合された、ガラス転移温度Tgが60℃以上、95℃以下で、かつ重量平均分子量Mwが50,000以上、140,000以下のアクリル系樹脂、およびポリ塩化ビニル系樹脂を併用し、前記アクリル系樹脂の配合割合は、前記ポリ塩化ビニル系樹脂、およびアクリル系樹脂の総量の10質量%以上、35質量%以下であるとともに、前記有機溶媒としては、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル類のみを用いるか、または前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテル類と、式(1):
で表されるアミド系溶媒とを、前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテル類の配合割合が、有機溶媒の総量の70質量%以上となるように併用することを特徴とする非水性インクジェットインク。 - 前記着色剤は蛍光染料であるとともに、前記有機溶媒に可溶で、かつ前記蛍光染料が前記媒体の表面から内部に移行するのを抑制する機能を有する第3の樹脂をも含んでいる請求項1に記載の非水性インクジェットインク。
- 複数色の非水性インクジェットインクを含むインクセットであって、前記複数色のうち少なくとも1色の非水性インクジェットインクは、前記請求項1または2に記載の非水性インクジェットインクであることを特徴とするインクセット。
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