JP2008208171A - 油性インクジェットインク - Google Patents

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Abstract

【課題】保存安定性に優れ、バインダ樹脂や着色剤が凝集したり沈降したりせず、かつ、前記両者を、塩化ビニル系樹脂の表面に強固に定着させて、耐水性、耐光性、耐摩擦性等に優れた画像や文字を印刷することができる上、インクジェットヘッドを構成する樹脂部品等の部品や接着剤等を腐食させたり劣化させたりするおそれがない油性インクジェットインクを提供する。
【解決手段】着色剤と、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体と含む油性インクジェットインクの有機溶媒として、前記有機溶媒の総量の5〜30質量%の非プロトン性極性有機溶媒と、40〜60質量%のジエチレングリコールモノエチルエーテルと、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、およびジエチレングリコールジエチルエーテルのうちの少なくとも1種とを併用する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ塩化ビニルシート等の、塩化ビニル系樹脂の表面に、耐水性、耐光性、耐摩擦性等に優れた画像や文字を印刷することができる油性インクジェットインクに関するものである。
従来、インクジェットヘッドのノズルから吐出させた微小なインク滴によって画像や文字を印刷する、いわゆるインクジェット印刷は、主に、紙等の吸水性の表面への印刷に利用されており、前記印刷に使用するインクジェットインクとしては、水に、水溶性染料等の着色剤を加えた水性のインクジェットインクが、広く一般的に用いられてきた。しかし、近年、様々な分野において、様々な表面への印刷に、インクジェット印刷が利用されるようになってきており、前記表面に、それに見合う良好な耐水性、耐光性、耐摩擦性等を有する上、画質の良好な画像や文字を印刷するために、先に説明した水性のインクジェットインクに代えて、溶媒として、実質的に水を含まず、有機溶媒のみを使用した、いわゆる油性インクジェットインクが実用化されつつある。
例えば、屋外の広告等の媒体として多用されているポリ塩化ビニルシート等の、塩化ビニル系樹脂の表面に、前記各特性に優れた、画質の良好な画像や文字を印刷するための油性インクジェットインクとしては、耐光性に優れた顔料と、前記顔料を、塩化ビニル系樹脂の表面に定着させるためのバインダ樹脂と、前記バインダ樹脂を溶解しうる有機溶媒とを含むものが好適に使用される。また、前記バインダ樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等の、塩化ビニル系樹脂の表面に対する定着性に優れた樹脂が挙げられ、中でも、塩化ビニル系樹脂の表面に対して最も定着性のよい塩化ビニル系樹脂が好適に使用される。また、塩化ビニルに酢酸ビニルを共重合させると、バインダ樹脂の、有機溶媒に対する溶解性を向上したり、塩化ビニル系樹脂の表面に印刷された画像や文字の可撓性を高めて、印刷の耐擦過性を向上したりできるため、前記塩化ビニル系樹脂としては、特に塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
また、有機溶媒としては、前記バインダ樹脂を良好に溶解させると共に、バインダ樹脂と顔料とを、塩化ビニル系樹脂の表面に、強固に定着させることを考慮して、印刷対象としての前記塩化ビニル系樹脂や、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等を良好に溶解させることができる、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素化合物や、γ−ブチロラクトン等のラクトン化合物等の、非プロトン性極性有機溶媒を使用し、前記非プロトン性極性有機溶媒を、それよりも沸点の高い、アルキレングリコールエーテル等のアルキレングリコール誘導体と併用して、油性インクジェットインクの表面張力、粘度等を調整するのが一般的である(例えば特許文献1〜3参照)。
特開2005−15672号公報 特開2006−56990号公報 再公表特許WO2002/055619 A1
しかし、前記特許文献1〜3に記載された併用系の有機溶媒では、塩化ビニル系樹脂や、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等に対する溶解性が、未だ不十分であったり、逆に強すぎたりする結果、様々な不良を生じることが明らかとなった。すなわち、印刷対象である塩化ビニル系樹脂や、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等に対する、前記併用系の有機溶媒の全体としての溶解性が不十分である場合には、油性インクジェットインクの保存安定性が低くなって、バインダ樹脂や顔料が凝集したり沈降したりしやすくなる上、前記バインダ樹脂や顔料を、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂の表面に、強固に定着させることができないため、前記表面に印刷された画像や文字の耐水性、耐光性、耐摩擦性等が低下するという問題がある。一方、有機溶媒の全体としての溶解性が強すぎる場合には、インクジェットヘッドを構成する部品、特に樹脂部品(ナイロン、ゴム等)や、それらを接着するためのエポキシ樹脂系接着剤等の接着剤を腐食させたり劣化させたりするという問題がある。
本発明の目的は、従来に比べて保存安定性に優れ、バインダ樹脂や、顔料等の着色剤が凝集したり沈降したりせず、かつ、前記バインダ樹脂と着色剤とを、塩化ビニル系樹脂の表面に強固に定着させて、前記表面に、耐水性、耐光性、耐摩擦性等に優れた画像や文字を印刷することができる上、インクジェットヘッドを構成する樹脂部品等の部品や接着剤等を腐食させたり劣化させたりするおそれがない油性インクジェットインクを提供することにある。
前記課題を解決するため、発明者は、非プロトン性極性有機溶媒と併用するアルキレングリコール誘導体について、検討を行った。その結果、前記アルキレングリコール誘導体は、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂や、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等に対する溶解性の強弱の観点で分類することができ、そのうち、溶解性の異なる2種以上のアルキレングリコール誘導体を併用することによって、有機溶媒の全体としての溶解性を調整できることを見出した。
そこで、組み合わせる2種以上のアルキレングリコール誘導体について、さらに検討すると共に、前記2種以上のアルキレングリコール誘導体と組み合わせる非プロトン性極性有機溶媒についても検討した結果、前記非プロトン性極性有機溶媒としては、
(1) ピロリドンまたはその誘導体、ラクトン化合物、および1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンからなる群より選ばれた少なくとも1種
を用いればよいこと、アルキレングリコール誘導体としては、
(2) ジエチレングリコールモノエチルエーテルと、
(3) ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、およびジエチレングリコールジエチルエーテルのうちの少なくとも1種と、
を組み合わせればよいこと、前記(1)の非プロトン性極性有機溶媒の、有機溶媒の総量に占める割合を5〜30質量%とし、かつ(2)のジエチレングリコールモノエチルエーテルの、有機溶媒の総量に占める割合を40〜60質量%とすればよいことを見出した。
すなわち、前記(3)の2種のアルキレングリコール誘導体のうち、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルは、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂や、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等を、良好に溶解させることができ、また、ジエチレングリコールジエチルエーテルは、前記塩化ビニル系樹脂や塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等を、前記ジエチレングリコールエチルメチルエーテルほど良好に溶解させることはできないものの、少なくとも膨潤はさせることができるものであるため、この2種のアルキレングリコール誘導体のうちの少なくとも一方を併用することで、(1)の非プロトン性極性有機溶媒による、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を溶解させる働きを助けて、油性インクジェットインクの保存安定性を向上させることができる。それと共に、前記非プロトン性極性有機溶媒による、印刷対象である塩化ビニル系樹脂を溶解させる働きを助けて、前記バインダ樹脂と、顔料等の着色剤とを、塩化ビニル系樹脂の表面に強固に定着させて、前記表面に、耐水性、耐光性、耐摩擦性等に優れた画像や文字を印刷することもできる。
また、(2)のジエチレングリコールモノエチルエーテルは、印刷対象である塩化ビニル系樹脂や、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、あるいはインクジェットヘッドを構成する樹脂部品や接着剤等を溶解も膨潤もしないものの、酢酸ビニルの単独重合体は、ある程度、膨潤させることができるものであるため、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の、油性インクジェットインク中での溶解を阻害して析出させるおそれがない。そのため、前記(2)のジエチレングリコールモノエチルエーテルを、有機溶媒の総量の40〜60質量%の範囲で含有させると共に、溶解性の強い成分である(1)の非プロトン性極性有機溶媒を、有機溶媒の総量の5〜30質量%の範囲で含有させると、先に説明した、非プロトン性極性有機溶媒と、(3)のアルキレングリコール誘導体との併用による、インクの保存安定性を向上させると共に、塩化ビニル系樹脂の表面に、耐水性、耐光性、耐摩擦性等に優れた画像や文字を印刷する効果を維持しながら、インクジェットヘッドを構成する樹脂部品や接着剤等に対する、有機溶媒の全体としての溶解性を抑えて、前記樹脂部品や接着剤等を腐食させたり劣化させたりするのを抑制することが可能となる。
したがって、本発明は、着色剤と、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体と、有機溶媒とを含有し、塩化ビニル系樹脂の表面に印刷するための油性インクジェットインクであって、前記有機溶媒が、
(1) ピロリドンまたはその誘導体、ラクトン化合物、および1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンからなる群より選ばれた少なくとも1種の非プロトン性極性有機溶媒と、
(2) ジエチレングリコールモノエチルエーテルと、
(3) ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、およびジエチレングリコールジエチルエーテルのうちの少なくとも1種と、
を含むと共に、前記(1)の非プロトン性極性有機溶媒の、有機溶媒の総量に占める割合が5〜30質量%で、かつ(2)のジエチレングリコールモノエチルエーテルの、有機溶媒の総量に占める割合が40〜60質量%であることを特徴とするものである。
前記本発明の油性インクジェットインクは、25℃における表面張力が26〜31mN/mであるのが好ましい。表面張力が、前記範囲未満では、油性インクジェットインクの、インクジェットヘッドのノズル等を構成する部材に対する濡れ性が高くなり過ぎて、前記油性インクジェットインクのインク滴が、前記ノズルから、所定の吐出方向に向けて吐出されずに、その吐出方向が偏向したり、油性インクジェットインクがノズルから垂れ落ちたりする等、吐出性が悪化する結果、塩化ビニル系樹脂の表面に形成される画像や文字の画質が低下するおそれがある。また、表面張力が、前記範囲を超える場合には、塩化ビニル系樹脂の表面に対する濡れ性が低くなり過ぎて、前記表面においてはじかれて、形成される画像や文字の画質が低下したり、バインダ樹脂や着色剤を、前記表面に十分に定着させることができなくなったりするおそれがある。
なお、(3)のアルキレングリコール誘導体としては、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルと、ジエチレングリコールジエチルエーテルの2種を併用するのが好ましい。先に説明したように、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂や、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等に対する溶解性の異なる前記2種のアルキレングリコール誘導体を併用することで、有機溶媒の全体としての溶解性を微調整して、先に説明した各特性を、いずれも良好な範囲に維持することが可能となる。また、本発明の油性インクジェットインクは、エポキシ化物を含有してもよい。前記エポキシ化物は、その分子中のエポキシ基が、バインダ樹脂としての塩化ビニル系樹脂の脱塩酸反応によって発生した塩酸と反応して、前記塩酸を、分子中に取り込む働きをする。そのため、前記エポキシ化物の機能によって、油性インクジェットヘッドのpHが酸性側に移行するのを抑制して、前記油性インクジェットインクの保存安定性を、さらに向上できる上、インクジェットヘッドを構成する樹脂部品や接着剤等だけでなく、金属部品等の腐食や劣化をも防止することができる。
本発明の油性インクジェットインクに含有させる、(1)の非プロトン性極性有機溶媒のうち、ピロリドンまたはその誘導体としては、N−アルキル−2−ピロリドン、および2−ピロリドンからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。また、ラクトン化合物としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、およびδ−バレロラクトンからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
本発明によれば、従来に比べて保存安定性に優れ、バインダ樹脂や、顔料等の着色剤が凝集したり沈降したりせず、かつ、前記バインダ樹脂と着色剤とを、塩化ビニル系樹脂の表面に強固に定着させて、前記表面に、耐水性、耐光性、耐摩擦性等に優れた画像や文字を印刷することができる上、インクジェットヘッドを構成する樹脂部品等の部品や接着剤等を腐食させたり劣化させたりするおそれがない油性インクジェットインクを提供することが可能となる。
本発明は、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体と、有機溶媒とを含有し、塩化ビニル系樹脂の表面に印刷するための油性インクジェットインクであって、前記有機溶媒が、
(1) ピロリドンまたはその誘導体、ラクトン化合物、および1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンからなる群より選ばれた少なくとも1種の非プロトン性極性有機溶媒と、
(2) ジエチレングリコールモノエチルエーテルと、
(3) ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、およびジエチレングリコールジエチルエーテルのうちの少なくとも1種と、
を含むと共に、前記(1)の非プロトン性極性有機溶媒の、有機溶媒の総量に占める割合が5〜30質量%で、かつ(2)のジエチレングリコールモノエチルエーテルの、有機溶媒の総量に占める割合が40〜60質量%であることを特徴とするものである。
〈有機溶媒〉
前記(1)の非プロトン性極性有機溶媒としては、先に説明したように、ピロリドンまたはその誘導体、ラクトン化合物、および1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(以下「DMI」と略記することがある)からなる群より選ばれた少なくとも1種が用いられる。このうち、ピロリドンまたはその誘導体としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン等のN−アルキル−2−ピロリドンや、2−ピロリドン等が挙げられ、特にN−エチル−2−ピロリドンが好ましい。また、ラクトン化合物としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられ、特にγ−ブチロラクトンが好ましい。
(1)の非プロトン性極性有機溶媒の、有機溶媒の総量に占める割合は5〜30質量%である必要がある。非プロトン性極性有機溶媒の割合が、前記範囲未満では、前記非プロトン性極性有機溶媒による、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体や、印刷対象である塩化ビニル系樹脂に対する、有機溶媒の全体としての溶解性を高める効果が得られない。そのため、油性インクジェットインクの保存安定性が低くなって、バインダ樹脂や顔料が凝集したり沈降したりしやすくなる上、前記バインダ樹脂や顔料を、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂の表面に、強固に定着させることができないため、前記表面に印刷された画像や文字の耐水性、耐光性、耐摩擦性等が低下してしまう。一方、非プロトン性極性有機溶媒の割合が、前記範囲を超える場合には、有機溶媒の全体としての溶解性が強くなり過ぎるため、インクジェットヘッドを構成する樹脂部品や接着剤等を腐食させたり劣化させたりしてしまう。
なお、有機溶媒の全体としての溶解性を、インクジェットヘッドを構成する樹脂部品や接着剤等を腐食させたり劣化させたりしない範囲でできるだけ強くして、油性インクジェットインクの保存安定性を、さらに向上すると共に、塩化ビニル系樹脂の表面に、より一層、耐水性、耐光性、耐摩擦性等に優れた画像や文字を印刷することを考慮すると、前記(1)の非プロトン性極性有機溶媒の割合は、前記範囲内でも7〜15質量%であるのが好ましい。
前記(1)の非プロトン性極性有機溶媒と併用する、(2)のジエチレングリコールモノエチルエーテル(以下「2EG−1E」と略記することがある。)は、有機溶媒の総量に占める割合が40〜60質量%である必要がある。2EG−1Eの割合が、前記範囲未満では、前記2EG−1Eによる、有機溶媒の全体としての溶解性が強くなり過ぎるのを抑えて、インクジェットヘッドを構成する樹脂部品や接着剤等を腐食させたり劣化させたりするのを防止する効果を得ることができない。一方、2EG−1Eの割合が、前記範囲を超える場合には、有機溶媒の全体としての溶解性が不十分になるため、油性インクジェットインクの保存安定性が低くなって、バインダ樹脂や顔料が凝集したり沈降したりしやすくなる。また、前記バインダ樹脂や顔料を、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂の表面に、強固に定着させることができなくなって、前記表面に印刷された画像や文字の耐水性、耐光性、耐摩擦性等が低下してしまう。
なお、有機溶媒の全体としての溶解性を、インクジェットヘッドを構成する樹脂部品や接着剤等を腐食させたり劣化させたりしない範囲でできるだけ強くして、油性インクジェットインクの保存安定性を、さらに向上すると共に、塩化ビニル系樹脂の表面に、より一層、耐水性、耐光性、耐摩擦性等に優れた画像や文字を印刷することを考慮すると、前記(2)の2EG−1Eの割合は、前記範囲内でも45〜55質量%であるのが好ましい。
前記(1)の非プロトン性極性有機溶媒、および(2)の2EG−1Eと組み合わせる(3)のアルキレングリコール誘導体としては、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(以下「2EG−EM」と略記することがある)、およびジエチレングリコールジエチルエーテル(以下「2EG−2E」と略記することがある)のうちの少なくとも1種が用いられる。すなわち、(3)のアルキレングリコール誘導体としては、(3-1) 2EG−EM単独、(3-2) 2EG−2E単独、および(3-3) 2EG−EMと2EG−2Mとの併用の3つの態様のいずれかが挙げられ、特に、(3-3)の併用系が好ましい。前記併用系では、先に説明したように、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂や、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等に対する溶解性の異なる前記2種のアルキレングリコール誘導体の割合を調整することで、有機溶媒の全体としての溶解性を微調整して、先に説明した各特性を、いずれも良好な範囲に維持することが可能となる。
前記併用系における、2種のアルキレングリコール誘導体の割合は、質量比(2EG−EM)/(2EG−2E)で表して5/95〜40/60、特に10/90〜35/65であるのが好ましい。前記範囲より2EG−EMが多い場合には、有機溶媒の全体としての溶解性が強くなりすぎて、インクジェットヘッドを構成する樹脂部品や接着剤等を腐食させたり劣化させたりするおそれがあり、逆に、少ない場合には、有機溶媒の全体としての溶解性が不十分になって、油性インクジェットインクの保存安定性が低くなったり、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂の表面に印刷された画像や文字の耐水性、耐光性、耐摩擦性等が低下したりするおそれがある。また、(3)のアルキレングリコール誘導体の、有機溶媒の総量に占める割合は、先に説明した(1)の非プロトン性極性有機溶媒、および(2)の2EG−1Eを除いた残量であればよいが、(3)の2種のアルキレングリコールによる、先に説明した(1)の非プロトン性極性有機溶媒の働きを助ける機能を有効に発揮させることを考慮すると、前記有機溶媒の総量の10〜60質量%、特に15〜55質量%であるのが好ましい。
〈エポキシ化物〉
本発明の油性インクジェットインクは、エポキシ化物を含有してもよい。前記エポキシ化物は、その分子中のエポキシ基が、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の脱塩酸反応によって発生した塩酸と反応して、前記塩酸を、分子中に取り込む働きをする。そのため、前記エポキシ化物の機能によって、油性インクジェットヘッドのpHが酸性側に移行するのを抑制して、前記油性インクジェットインクの保存安定性を、さらに向上できる上、インクジェットヘッドを構成する樹脂部品や接着剤だけでなく、金属部品等の腐食や劣化をも防止することができる。エポキシ化物としては、分子中にエポキシ基を有し、かつ、前記(1)〜(3)の各有機溶媒の混合物としての有機溶媒に溶解することができる、種々の化合物が使用可能であり、その具体例としては、エポキシグリセリド、エポキシ脂肪酸モノエステル、エポキシヘキサヒドロフタレート、エポキシ樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。
中でもエポキシグリセリド、エポキシ脂肪酸モノエステル、エポキシヘキサヒドロフタレートからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。これらのエポキシ化物は、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体や、エポキシ化物の、一方の代表例であるエポキシ樹脂に比べて分子量が小さいにも拘らず、1分子中に多数のエポキシ基を含有しているため、バインダ樹脂や着色剤の、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂の表面への定着性を低下させたり、油性インクジェットインクの粘度を上昇させたりすることなしに、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体から発生した塩酸を、より効率よく、かつ確実に、分子中に取り込んで、油性インクジェットヘッドのpHが酸性側に移行するのを抑制することができる。
前記のうち、エポキシグリセリドとしては、例えば大豆油、亜麻仁油、綿実油、紅花油、サフラワー油、ひまわり油、桐油、ひまし油、とうもろこし油、なたね油、ごま油、オリーブ油、パーム油、グレープシード油、魚油等の油類のエポキシ化物の1種または2種以上が挙げられる。また、エポキシ脂肪酸モノエステルとしては、例えばエポキシ化オレイン酸ブチル、エポキシ化オレイン酸オクチル、エポキシ化大豆脂肪酸ブチル、エポキシ化大豆脂肪酸オクチル、エポキシ化亜麻仁油脂肪酸ブチル、エポキシ化亜麻仁油脂肪酸オクチル等の1種または2種以上が挙げられる。中でも、エポキシグリセリドとしてのエポキシ化大豆油、および/またはエポキシ化亜麻仁油は、前記各種エポキシ樹脂の中でも、より多数のエポキシ基を分子中に含有しており、先に説明した効果に特に優れるため、好適に使用される。
エポキシ化物の割合は、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体100質量部あたり3〜100質量部、特に10〜40質量部であるのが好ましい。エポキシ化物の割合が、前記範囲未満では、前記エポキシ化物による、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の脱塩酸反応によって発生した塩酸を分子中に取り込んで、油性インクジェットヘッドのpHが酸性側に移行するのを抑制する働きが、十分に得られないおそれがある。また、前記範囲を超える場合には、過剰のエポキシ化物が、バインダ樹脂や着色剤の、印刷対象である塩化ビニル系樹脂の表面への定着性を低下させたり、油性インクジェットインクの粘度を上昇させて、良好な吐出安定性を阻害したりするおそれがある。
〈着色剤〉
油性インクジェットインクを任意の色に着色するための着色剤としては、例えば、屋外の広告等の媒体の印刷に使用した際に、それに見合う良好な耐水性、耐光性、耐摩擦性等を付与することを考慮すると、顔料が好ましい。前記顔料としては、油性インクジェットインク中に、良好に、分散させることができる、任意の、無機顔料および/または有機顔料が挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄等の金属化合物や、あるいはコンタクト法、ファーネスト法、サーマル法等の公知の方法によって製造された、中性、酸性、塩基性等の、種々のカーボンブラックの1種または2種以上が挙げられる。また、有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、またはキレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ベリレン顔料、ベリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、またはキノフタロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等の1種または2種以上が挙げられる。
顔料は、油性インクジェットインクの色目に応じて、1種または2種以上を用いることができる。また、顔料は、油性インクジェットインク中での分散安定性を向上するために、表面を処理してもよい。顔料の含有割合は、油性インクジェットインクの総量中の0.1〜10質量%、特に0.5〜8質量%であるのが好ましい。顔料の具体例としては、下記の各種顔料が挙げられる。
(イエロー顔料)
C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、14C、16、17、20、24、73、74、75、83、86、93、94、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、213、214
(マゼンタ顔料)
C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、97、112、122、123、149、168、177、178、179、184、202、206、207、209、242、254、255
(シアン顔料)
C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:3、15:4、15:6、15:34、16、22、60
(ブラック顔料)
C.I.ピグメントブラック7
(オレンジ顔料)
C.I.ピグメントオレンジ36、43、51、55、59、61、71、74
(グリーン顔料)
C.I.ピグメントグリーン7、36
(バイオレット顔料)
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50
〈バインダ樹脂〉
バインダ樹脂としては、先に説明したように、屋外の広告等の媒体として多用されているポリ塩化ビニルシート等の、塩化ビニル系樹脂の表面に対する定着性に優れる上、溶媒に対する溶解性にも優れており、しかも、前記塩化ビニル系樹脂の表面に印刷された画像や文字の可撓性を高めて、印刷の耐擦過性を向上する効果をも有する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が使用される。前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体における、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合比は、バインダ樹脂に求められる前記各特性に応じて、適宜、調整することができる。
〈その他〉
油性インクジェットインクには、前記各成分に加えて、さらに、高分子分散剤、界面活性剤、可塑剤、帯電防止剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、防かび剤、殺生剤等の種々の添加剤を、必要に応じて、任意の含有割合で含有させてもよい。
〈実施例1〉
かく拌下、(2)のジエチレングリコールモノエチルエーテル(2EG−1E)45.8質量部に、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体〔米国ダウ・ケミカル社製のVYHD〕3.6質量部を加えて分散させた後、(3)の2種のアルキレングリコール誘導体のうちジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E)2.9質量部を加えて、前記バインダ樹脂を膨潤させた。次に、かく拌を続けながら、(3)の2種のアルキレングリコール誘導体のうちジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM)7.2質量部と、(1)の非プロトン性極性有機溶媒としてのγ−ブチロラクトン10.0質量部とを加えて、バインダ樹脂を完全に溶解させた後、エポキシ化物としてのエポキシ化大豆油〔(株)ADEKA(アデカ)製のアデカサイザー(登録商標)O−130P〕0.5質量部を加えた。次に、顔料としてのカーボンブラック〔三菱化学(株)製のMA8〕を、15.0質量%の濃度で、前記2EG−2Eに分散させた分散液30.0質量部を、かく拌下、先の混合物70.0質量部に加えた後、均一相を形成するようにさらにかく拌して、油性インクジェットインクを製造した。有機溶媒の総量に対する、γ−ブチロラクトンの割合は10.9質量%、2EG−EMの割合は7.9質量%、2EG−2Eの割合は31.1質量%、2EG−1Eの割合は50.1質量%であった。
〈実施例2〉
(1)の非プロトン性極性有機溶媒として、γ−ブチロラクトンに代えて、同量のN−エチル−2−ピロリドンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、油性インクジェットインクを製造した。有機溶媒の総量に対する、N−エチル−2−ピロリドンの割合は10.9質量%、2EG−EMの割合は7.9質量%、2EG−2Eの割合は31.1質量%、2EG−1Eの割合は50.1質量%であった。
〈実施例3〉
(1)の非プロトン性極性有機溶媒として、γ−ブチロラクトンに代えて、同量のDMIを用いたこと以外は実施例1と同様にして、油性インクジェットインクを製造した。有機溶媒の総量に対する、DMIの割合は10.9質量%、2EG−EMの割合は7.9質量%、2EG−2Eの割合は31.1質量%、2EG−1Eの割合は50.1質量%であった。
〈実施例4〉
(2)の2EG−1Eの量を54.8質量部、(3)の2種のアルキレングリコール誘導体のうち2EG−EMの量を8.1質量部、2EG−2Eの量を18.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、油性インクジェットインクを製造した。有機溶媒の総量に対する、γ−ブチロラクトンの割合は10.9質量%、2EG−EMの割合は8.9質量%、2EG−2Eの割合は20.2質量%、2EG−1Eの割合は60質量%であった。
〈実施例5〉
(1)のγ−ブチロラクトンの量を4.6質量部、(2)の2EG−1Eの量を36.6質量部、(3)の2種のアルキレングリコール誘導体のうち2EG−EMの量を5.0質量部、2EG−2Eの量を45.2質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、油性インクジェットインクを製造した。有機溶媒の総量に対する、γ−ブチロラクトンの割合は5.0質量%、2EG−EMの割合は5.5質量%、2EG−2Eの割合は49.5質量%、2EG−1Eの割合は40.0質量%であった。
〈実施例6〉
(1)のγ−ブチロラクトンの量を25.6質量部、(2)の2EG−1Eの量を50.3質量部、(3)の2種のアルキレングリコール誘導体のうち2EG−EMの量を5.0質量部、2EG−2Eの量を10.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、油性インクジェットインクを製造した。有機溶媒の総量に対する、γ−ブチロラクトンの割合は28.0質量%、2EG−EMの割合は5.5質量%、2EG−2Eの割合は11.5質量%、2EG−1Eの割合は55.0質量%であった。
〈比較例1〉
(1)のγ−ブチロラクトンの量を1.9質量部、(2)の2EG−1Eの量を63.4質量部、(3)の2種のアルキレングリコール誘導体のうち2EG−EMの量を3.0質量部、2EG−2Eの量を23.1質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、油性インクジェットインクを製造した。有機溶媒の総量に対する、γ−ブチロラクトンの割合は2.1質量%、2EG−EMの割合は3.3質量%、2EG−2Eの割合は25.3質量%、2EG−1Eの割合は69.3質量%であった。
〈比較例2〉
(1)のγ−ブチロラクトンの量を9.1質量部、(2)の2EG−1Eの量を9.1質量部、(3)の2種のアルキレングリコール誘導体のうち2EG−EMの量を9.1質量部、2EG−2Eの量を64.1質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、油性インクジェットインクを製造した。有機溶媒の総量に対する、γ−ブチロラクトンの割合は10.0質量%、2EG−EMの割合は10.0質量%、2EG−2Eの割合は70.0質量%、2EG−1Eの割合は10.0質量%であった。
〈比較例3〉
(1)のγ−ブチロラクトンの量を36.6質量部、(2)の2EG−1Eの量を27.4質量部、(3)の2種のアルキレングリコール誘導体のうち2EG−EMの量を15.1質量部、2EG−2Eの量を12.3質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、油性インクジェットインクを製造した。有機溶媒の総量に対する、γ−ブチロラクトンの割合は40.0質量%、2EG−EMの割合は16.5質量%、2EG−2Eの割合は13.5質量%、2EG−1Eの割合は30.0質量%であった。
〈比較例4〉
(2)の2EG−1Eに代えて、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下「2PG−1M」と略記することがある。)を使用すると共に、エポキシ化大豆油を配合せず、かつ、(1)のγ−ブチロラクトンの量を10.2質量部、前記2PG−1Mの量を46.0質量部、(3)の2種のアルキレングリコール誘導体のうち2EG−EMの量を7.2質量部、2EG−2Eの量を28.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、油性インクジェットインクを製造した。有機溶媒の総量に対する、γ−ブチロラクトンの割合は11.1質量%、2EG−EMの割合は7.8質量%、2EG−2Eの割合は31.0質量%、2PG−1Mの割合は50.1質量%であった。
実施例、比較例の組成を表1、表2に示す。
Figure 2008208171
Figure 2008208171
〈定着性試験〉
実施例、比較例の油性インクジェットインクを、ポリ塩化ビニル製ターポリンの表面に、ワイヤーバー(ドクター0.25、直径0.25mmのピアノ線を、金属の棒に巻きつけたもの)を用いて塗布し、1.2kWのドライヤーを用いて1分間、熱風乾燥させた後、前記コーティングを、綿棒を用いて、50gの荷重で擦って、下記の基準で定着性を評価した。
○:変化なし。定着性良好と評価した。
△:コーティングに擦過痕が残ったが、実用可能なレベルと評価した。
×:コーティングが擦り取られてしまった。定着性不良と評価した。
〈樹脂部品に対する溶解性評価〉
実施例、比較例の油性インクジェットインクに、インクジェットヘッドを構成する樹脂部品と同じナイロンフィルムを浸漬させて、60℃で2週間、静置した後の寸法変化率を求めた。そして、下記の基準で、樹脂部品に対する溶解性を評価した。
○:寸法変化率は±0.8%未満であった。ナイロンフィルムは、油性インクジェットインク中に溶出していない上、前記油性インクジェットインクによる膨潤もしておらず、油性インクジェットインクの、樹脂部品に対する溶解性は良好、つまり溶解せずと評価した。
△:寸法変化率は±0.8%以上で、かつ±1.0%未満であった。油性インクジェットインクの、樹脂部品に対する溶解性は実用可能なレベル、つまり殆ど溶解せずと評価した。
×:寸法変化率は±1.0%以上であった。油性インクジェットインクの、樹脂部品に対する溶解性は不良、つまり溶解が発生したと評価した。
〈保存安定性試験(バインダ樹脂の析出)〉
実施例、比較例の油性インクジェットインクを小型のビーカに注ぎ、次いで、前記ビーカから他の容器に注いだ後、洗浄せずに、その底面に、少量の油性インクジェットインクが薄い膜に残った状態として、室温(25±1℃)で1時間、静置した後、前記膜を観察して、下記の基準で保存安定性を評価した。
○:油性インクジェットインクの薄い膜は、静置前と同じ均一な黒色を呈しており、バインダ樹脂の析出は認められなかった。保存安定性良好と評価した。
×:油性インクジェットインクの薄い膜中に、顔料を含むバインダ樹脂が凝集した、黒い塊状を呈する部分と、透明な部分とが、まだらに分布しているのが見られた。保存安定性不良と評価した。
〈保存安定性試験(pH)〉
実施例、比較例の油性インクジェットインクを60℃で3週間、保存する前と、保存した後の、それぞれの時点でのpHを、pH測定器〔東亜ディーケーケー(株)製のHM−40V〕を用いて測定して、下記の基準で保存安定性を評価した。
○:保存前後でpHの低下が1未満であった。保存安定性良好と評価した。
△:pHの低下が1以上、2未満であった。実用可能なレベルと評価した。
×:pHの低下が2以上であった。保存安定性不良と評価した。
〈表面張力の測定および吐出性評価〉
実施例、比較例の油性インクジェットインクの、25℃における表面張力を、自動表面張力計〔クルス社製のK10ST〕を用いて測定した。また、前記測定値から、下記の基準で、インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインク滴の吐出性を評価した。
○:25℃における表面張力が26mN/m以上であった。インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインク滴に偏向が生じたり、油性インクジェットインクがノズルから垂れ落ちたりするおそれはなく、吐出性は良好と評価した。
△:25℃における表面張力が25mN/m以上、26mN/m未満であった。インク滴が若干の偏向を生じたり、油性インクジェットインクが、ノズルから僅かに垂れ落ちたりすおそれがあるものの、吐出性は実用可能なレベルと評価した。
×:25℃における表面張力が25mN/m未満であった。インク滴が大きな偏向を生じたり、油性インクジェットインクがノズルから垂れ落ちたりするおそれがあり、吐出性は不良と評価した。
〈はじき試験〉
ピエゾ方式のインクジェットプリンタを使用して、実施例、比較例の油性インクジェットインクにより、塩化ビニル系樹脂の表面に、1.5cm×1.5cmのベタ印字を行った後、前記ベタ印字面を観察して、下記の基準で、はじきの有無を評価した。
○:ベタ印字面に色むらはなく、はじきは発生していないと評価した。
△:若干の色むらがあったものの、実用可能なレベルと評価した。
×:色むらが見れら、はじきが発生したと評価した。
以上の結果を、実施例、比較例における、各溶媒の、有機溶媒の総量に対する割合と合わせて表3、表4に示す。
Figure 2008208171
Figure 2008208171
表3、表4より、有機溶媒の総量に占める、(1)の非プロトン性極性有機溶媒の割合が5質量%未満で、かつ(2)の2EG−1Eの割合が60質量%を超える比較例1の油性インクジェットインクは、バインダ樹脂が析出しやすく、保存安定性が不良であると共に、塩化ビニル系樹脂の表面に対する定着性も不良であり、しかも、25℃における表面張力が31mN/mを超えるため、前記塩化ビニル系樹脂の表面に印刷した際にはじきを生じることが判った。
また、有機溶媒の総量に占める、(2)の2EG−1Eの割合が40質量%未満であった比較例2の油性インクジェットインクは、インクジェットヘッドを構成する樹脂部品に対する溶解性が強くなりすぎて、前記樹脂部品を腐食させたり劣化させたりすること、25℃における表面張力が26mN/m未満であって、吐出性が若干、良好でないことが判った。また、有機溶媒の総量に占める、(1)の非プロトン性極性有機溶媒の割合が30質量%を超えると共に、(2)の2EG−1Eの割合が40質量%未満であった比較例3の油性インクジェットインクは、インクジェットヘッドを構成する樹脂部品に対する溶解性が強くなりすぎて、前記樹脂部品を腐食させたり劣化させたりすること、25℃における表面張力が31mN/mを超えるため、前記塩化ビニル系樹脂の表面に印刷した際にはじきを生じることが判った。
また、(2)の2EG−1Eに代えて2PG−1Mを用いると共に、エポキシ化物を配合しなかった比較例4の油性インクジェットインクは、バインダ樹脂が析出しやすく、保存安定性が不良であると共に、保存時にpHが上昇するため保存安定性が不良であること、さらに、pHが上昇したことに起因して、インクジェットヘッドを構成する樹脂部材に対する溶解性が若干、強いことが判った。これに対し、実施例1〜6の油性インクジェットインクは、いずれも、前記各特性が○であって、良好な特性を有することが判った。
なお、前記比較例4の油性インクジェットインクと、ほぼ同量の2EG−1Eを用いた実施例1〜3の油性インクジェットインクとを比較した際に、比較例4の方が、バインダ樹脂が析出しやすい原因を、発明者は、次のように考えている。すなわち、比較例4で用いている2PG−1Mは、実施例1で用いている2EG−1Eに比べて、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等に対する溶解性が、さらに弱い溶媒である。また、2EG−1Eと2PG−1Mは、共に、前記バインダ樹脂を溶解することができる2EG−EMよりも蒸気圧が低い溶媒である。そのため、インクの乾燥過程においては、2EG−EMの方が蒸発速度が高いため、インク中での、バインダ樹脂の溶解性が刻々、低下して行くのであるが、その低下の度合いが、2EG−1Eを含む実施例1〜3よりも、2PG−1Mを含む比較例4の方が大きいため、比較例4においてバインダ樹脂が析出しやすいのである。

Claims (6)

  1. 着色剤と、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体と、有機溶媒とを含有し、塩化ビニル系樹脂の表面に印刷するための油性インクジェットインクであって、前記有機溶媒が、
    (1) ピロリドンまたはその誘導体、ラクトン化合物、および1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンからなる群より選ばれた少なくとも1種の非プロトン性極性有機溶媒と、
    (2) ジエチレングリコールモノエチルエーテルと、
    (3) ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、およびジエチレングリコールジエチルエーテルのうちの少なくとも1種と、
    を含むと共に、前記(1)の非プロトン性極性有機溶媒の、有機溶媒の総量に占める割合が5〜30質量%で、かつ(2)のジエチレングリコールモノエチルエーテルの、有機溶媒の総量に占める割合が40〜60質量%であることを特徴とする油性インクジェットインク。
  2. 25℃における表面張力が26〜31mN/mである請求項1に記載の油性インクジェットインク。
  3. (3)の有機溶媒が、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルとジエチレングリコールジエチルエーテルの2種である請求項1に記載の油性インクジェットインク。
  4. エポキシ化物を含む請求項1に記載の油性インクジェットインク。
  5. (1)の非プロトン性極性有機溶媒のうちピロリドンまたはその誘導体が、N−アルキル−2−ピロリドン、および2−ピロリドンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の油性インクジェットインク。
  6. (1)の非プロトン性極性有機溶媒のうちラクトン化合物が、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、およびδ−バレロラクトンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の油性インクジェットインク。
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