JP6007664B2 - 窓ガラスおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、室内側に防曇膜および室外側に撥水膜を有する窓ガラスおよびその製造方法に関する。
自動車等の輸送機器の窓ガラスや建築物の窓ガラス等、屋外用途で使用される窓ガラスについて、ガラス表面が露点温度以下になった場合に微細な水滴が付着して透明性が損なわれる、いわゆる「曇り」の現象が発生することが知られている。曇りの発生を防ぐ手段として、例えば、窓ガラスの室内側表面に吸水性樹脂層を設けることで、該表面に付着した微細水滴を吸水除去したり該表面付近の雰囲気湿度を低減したりする防曇方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、室内側表面に防曇処理がなされた窓ガラスであっても、室外側表面に雨等で水滴が付着すると、その箇所は気化熱により温度が低下し、それにともない、室内側表面において吸水性樹脂層の防曇性能が低下して、対応する箇所が部分的に曇ることが問題であった。
一方、窓ガラスの主に室外側表面に設けることで水滴除去性を付与する撥水膜が知られている(例えば、特許文献2参照)が、このような撥水膜を防曇膜と組合せて使用することで防曇膜の防曇性能を向上させる試みはなされていない。
国際公開第2007/052710号パンフレット 国際公開第2011/016458号パンフレット
本発明は、上記観点からなされたものであり、雨天等の室外の天候に影響されることなく優れた防曇性能が発揮可能な窓ガラスおよびその製造方法の提供を目的とする。
本発明は、以下の構成を有する窓ガラスおよびその製造方法を提供する。
[1] 合わせガラスからなる透明基体と、前記透明基体の室内側の主面のみに配設されるJIS K 7121に準拠して測定したガラス転移点が10〜110℃である樹脂膜を含む吸水性防曇膜と、前記透明基体の室外側の主面のみに配設される撥水膜とを有する、自動車用の窓ガラス。
] 前記吸水性防曇膜を構成する材料の飽和吸水量が50mg/cm以上である、[1]に記載の窓ガラス。
] 前記撥水膜表面における水に対する転落角が15度以下である、[1]または[2]に記載の窓ガラス。
] 前記撥水膜表面における水に対する接触角が90度以上である、[1]〜[]のいずれかに記載の窓ガラス。
] 前記窓ガラスの主面と水平面がなす角度が25〜155度となるように窓枠に取り付けられている、[1]〜[]のいずれかに記載の窓ガラス。
] 前記透明基体の室内側の主面に吸水性防曇膜を形成する工程(a)と、前記透明基体の室外側の主面に撥水膜を形成する工程(b)とを有し、工程(a)の後に工程(b)を行う[1]〜[]のいずれかに記載の窓ガラスの製造方法。
] 前記工程(b)は、撥水膜形成用組成物のスプレー塗布を含む[]記載の窓ガラスの製造方法。
本発明によれば、雨天等の室外の天候に影響されることなく優れた防曇性能が発揮可能な窓ガラスおよびその製造方法が提供できる。
本発明の一実施形態の窓ガラスの構成を示す図で、図1(a)は室内側から見た平面図、図1(b)はそのX−X線に沿う断面図である。 本発明の他の実施形態の窓ガラスの構成を示す図で、図2(a)は室内側から見た平面図、図2(b)はそのX−X線に沿う断面図である。 実施例で用いた窓ガラスの防曇性能を評価するための装置を説明する断面図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下では本発明の実施の形態を図面に基づいて説明するが、それらの図面は図解のために提供されるものであり、本発明はそれらの図面に何ら限定されるものではない。
本発明の窓ガラスは、透明基体と、前記透明基体の室内側の主面に配設される吸水性防曇膜と、前記透明基体の主として室外側の主面に配設される撥水膜とを有する。
本発明の窓ガラスは、室外側の主面に撥水膜を有することで、雨等で水滴が室外側表面に当たった場合でも、その場所に留まることなく流れ落ちる。そのため、本発明の窓ガラスは気化熱等による局所的な温度変化が少なく、室内側に設けられた防曇膜は天候に左右されることなく一定レベルの防曇機能を維持することができる。
本発明の窓ガラスにおいて、前記吸水性防曇膜は、前記透明基体の室内側主面の全領域に配設され、前記撥水膜は、前記透明基体の室外側主面の全領域および前記吸水性防曇膜表面の周縁領域に配設されてなる構成であってもよい。これにより、窓ガラスの室内側は十分な防曇機能を有するとともに、周縁領域は防汚性を有し、滑り性を有する点で好ましい。この性能は特に自動車等の車両用の窓ガラスにおいて有することが望まれる性能である。
図1(a)は本発明の実施形態による窓ガラスの一例を示す室内側から見た平面図、図1(b)はそのX−X線に沿う断面図である。図1(a)および図1(b)に示すように、本実施形態の窓ガラス1Aは、透明基体2と、透明基体2の室内側の主面の全領域にわたって配設された吸水性防曇膜4と、透明基体2の室外側の主面の全領域にわたって配設された撥水膜3とを有する。
ここで、窓ガラスは、通常、周縁部が窓枠等に取り付けられて使用される。したがって、窓ガラス1Aにおいて、吸水性防曇膜4は、必ずしも透明基体2の室内側の主面の全領域に配設される必要はなく、少なくとも取り付け後に雰囲気に直接曝される領域について配設されていればよい。また、同様に撥水膜3についても、窓ガラス1Aが取り付けられた後に少なくとも雰囲気に直接曝される領域について配設されていればよい。
本発明の窓ガラスが取り付けられる角度については、窓ガラスの室外側の主面上の撥水膜に水滴が接した際に、その水滴が留まらずに滑落する角度であることが好ましい。具体的には、本発明の窓ガラスは、使用に際して窓ガラスの主面と水平面がなす角度が25〜155度となるように窓枠に固定されることが好ましい。図1(b)は、窓ガラス1Aが、その室外側の主面と水平面がなす角度が90度となるように取り付けられた場合(取り付け部は図示されず)を示す断面図である。窓ガラスの主面は撥水膜側の主面であっても吸水性防曇膜側の主面であっても、該主面と水平面とがなす角度は同じである。図1(b)に窓ガラス1Aが、その室外側の主面と水平面がなす角度が30度となるように取り付けられた場合と、150度となるように取り付けられた場合について、窓ガラス1Aの主面の位置を破線で示す。
また、図2(a)に本発明の実施形態による窓ガラスの別の一例を示す室内側から見た平面図、図2(b)にそのX−X線に沿う断面図を示す。図2(a)および図2(b)に示すように、本実施形態の窓ガラス1Bは、透明基体2と、透明基体2の室内側の主面の全領域にわたって配設された吸水性防曇膜4と、透明基体2の室外側の主面の全領域および吸水性防曇膜4表面の周縁領域に配設された撥水膜3とを有する。図2(b)に示すように撥水膜3は、透明基体2の室外側の主面から透明基体2の端部を覆うようにして透明基体2の室内側の吸水性防曇膜4表面の周縁領域まで連続的に形成されている。吸水性防曇膜4表面の周縁領域に形成される撥水膜3は額縁状に形成され、その幅は概ね10〜50mm程度が好ましい。
窓ガラス1Aと同様に窓ガラス1Bにおいても吸水性防曇膜4および撥水膜3は透明基体2の取り付け部にまでわたって形成される必要はない。しかしながら、吸水性防曇膜4および撥水膜3を形成する際に、取り付け部や端部に各膜を形成させないことが工程数を増加させる等、生産効率の低下を招く場合には、取り付け部や端部に各膜が形成されてもよい。これは、窓ガラス1Aにおいても同様である。
なお、図2(b)は、窓ガラス1Bが、その室外側の主面と水平面がなす角度が90度となるように取り付けられた場合(取り付け部は図示されず)を示す断面図であるが、この取り付け角度については特に限定されず、窓ガラス1Aと同様に、その主面と水平面がなす角度が好ましくは25〜155度となるように適宜調整される。
以下、窓ガラス1Aを例として、本発明の実施形態の窓ガラスを構成する各構成要素について説明する。
[透明基体]
本発明の窓ガラスに用いる透明基体2としては、通常の窓ガラスに用いられる透明基体が特に制限なく使用可能である。透明基体2として、具体的には、プラスチック、ガラス、またはその組み合わせ(積層材料等)からなる透明基体が好ましく使用される。
ガラスとしては、通常のソーダライムガラス(ソーダライムシリケートガラスともいう)、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が特に制限なく用いられる。これらのうちでもソーダライムガラスが特に好ましい。紫外線や赤外線を吸収するガラスを用いてもよい。成形法についても特に限定されないが、例えば、フロート法等により成形されたフロート板ガラスが好ましい。プラスチックとしては、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂やポリフェニレンカーボネートなどの芳香族ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられ、これらのうちでもポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
透明基体2としては、上記ガラス材料からなる単板ガラスや、プラスチック中間膜を用いて複数のガラス板が積層された合わせガラスが好ましい。
透明基体2の形状は平板でもよく、全面または一部が曲率を有していてもよい。透明基体2が曲率を有する場合、上記窓ガラスが取り付けられる角度については、窓ガラスの下端部において、窓ガラスが取り付けられる構造体の取り付け部、例えば、自動車ではボデーとの接点を確定し、その接点における接線と水平面がなす角度として上記範囲になることが好ましい。透明基体2の厚さは窓ガラス1Aの用途により適宜選択できるが、一般的には1〜10mmであることが好ましい。
透明基体2がフロート法で製造された単板ガラスである場合は、表面錫量の少ないトップ面を室外側にして撥水膜3を設け、フロート面を室内側にして吸水性防曇膜4を設けることが耐久性の点で好ましい。
[吸水性防曇膜]
本発明の窓ガラスにおいて透明基体2の室内側主面に形成される吸水性防曇膜4は、主として吸水性樹脂により構成され、該吸水性樹脂の吸水作用により防曇性能を有する。吸水性防曇膜4は、吸水性の観点からは吸水性樹脂のみで構成されることが好ましいが、用いる樹脂の種類によっては耐摩耗性の観点から、吸水性を確保しながら機械的強度に優れる材料と組合せて吸水性防曇膜4を形成してもよい。
ここで、吸水性樹脂を主成分とする吸水性防曇膜4とは、吸水性防曇膜4の全体量に対して吸水性樹脂(硬化性樹脂の場合は、主剤と硬化剤)の占める割合が70〜100質量%であることをいい、その割合は好ましくは80〜100質量%である。
吸水性防曇膜4を構成する材料については、以下の方法で測定される飽和吸水量が、50mg/cm以上の材料が好ましく、70mg/cm以上がより好ましく、100mg/cm以上が特に好ましい。また、吸水性防曇膜4を構成する材料の飽和吸水量は、900mg/cm以下が好ましく、500mg/cm以下がより好ましい。飽和吸水量が、50mg/cm以上であれば、吸水性は十分であり、900mg/cm以下であれば吸水性防曇膜の耐久性が低下するのを防ぐことが可能となる。吸水性防曇膜4が、十分な吸水性を有することで、窓ガラス1Aは優れた防曇性能を有する。
(飽和吸水量の測定方法)
3cm×4cm×厚さ2mmの透明基体(例えば、ソーダライムガラス基板)に検体となる吸水性防曇膜を設け、これを10℃、95〜99%RH環境の恒温恒湿槽に2時間放置し、取り出し後、微量水分計を用いて吸水性防曇膜付き基板全体の水分量(1)を測定する。さらに、上記基板のみについて同様の手順で水分量(2)を測定する。上記水分量(1)から水分量(2)を引いた値を吸水性防曇膜の体積で除した値を飽和吸水量とする。なお、水分量の測定は、微量水分計FM−300(商品名、ケット科学研究所社製)によって次のようにして行う。測定サンプルを120℃で加熱し、サンプルから放出された水分を微量水分計内のモレキュラーシーブスに吸着させ、モレキュラーシーブスの質量変化を水分量として測定する。また、測定の終点は、25秒間当たりの質量変化が0.05mg以下となった時点とする。
吸水性防曇膜4の膜厚は、5μm以上であるのが好ましく、10μm以上であるのがより好ましい。これにより、必要な飽和吸水量を確保することが可能となる。一方、吸水性防曇膜4の耐久性が低くなるのを防ぐ観点から、吸水性防曇膜4の膜厚は、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であるのがより好ましい。
また、吸水性防曇膜4は、単層で構成されてもよいが、例えば、異なる種類の吸水性樹脂を用いて形成された吸水層や、同じ吸水性樹脂を含有するがその含有量が異なる吸水層等の積層構造であってもよい。好ましい積層構造としては、透明基体側に吸水性の低い下地層を形成しその上に吸水性の高い吸水層を形成する積層構造が挙げられる。下地層の吸水性が低いことで、透明基体と吸水性防曇膜、実際には透明基体と下地層との接着界面において膨張・収縮の程度差が小さくなり、透明基体から吸水性防曇膜が剥離するのを防ぐことが可能となる。また、下地層の上に設けられる吸水性の高い吸水層の作用により吸水性防曇膜の吸水性は十分に確保される。吸水性防曇膜が下地層と吸水層の2層で構成される場合、下地層の層厚は1〜10μmが好ましく、吸水層の層厚は5〜30μmが好ましい。より好ましくは、下地層の層厚は2〜6μmであり、吸水層の層厚は10〜20μmである。
吸水性防曇膜が、吸水層と下地層からなる場合には、吸水層を構成する材料の飽和吸水量は、50mg/cm以上が好ましく、70mg/cm以上がより好ましく、100mg/cm以上が特に好ましい。また、吸水層を構成する材料の飽和吸水量は、900mg/cm以下が好ましく、500mg/cm以下がより好ましい。また、下地層を構成する材料の飽和吸水量は、上記観点から、10mg/cm以下が好ましく、8mg/cm以下がより好ましい。一方、吸水性防曇膜内で下地層と吸水層との膨張・収縮の程度差を小さくする観点から、下地層を構成する材料の飽和吸水量は、1mg/cm以上が好ましく、3mg/cm以上がより好ましい。
吸水性防曇膜4の形成は、吸水性樹脂または吸水性樹脂の原料成分、具体的には、硬化性樹脂や架橋性樹脂、その他成分を含有する吸水性防曇膜形成用組成物を、透明基体2の室内側の主面に塗布し、乾燥して、または、必要に応じて乾燥後、硬化(架橋)を行うことで行われる。吸水性防曇膜が2層以上の積層構造の場合、例えば、低吸水性の下地層と高吸水性の吸水層からなる場合には、層毎に組成物を調製して層毎に塗布、乾燥、または、塗布、乾燥、硬化(架橋)を行う。以下、吸水性防曇膜4の形成を単層の場合を例にして、吸水性防曇膜形成用組成物が含有する各成分について説明し、該組成物を用いた吸水性防曇膜4の形成方法について説明する。
吸水性防曇膜4が下地層と吸水層からなる場合には、吸水層の形成は、吸水性防曇膜を単層で形成するのと同様である。下地層は、材料の吸水性を上記のように吸水層の材料より低く調整する以外は、吸水層の形成と同様にできる。すなわち、以下の説明に示す吸水性樹脂の吸水性を調整する方法において、これを下地層に求められる低い吸水性に調整することで、下地層形成用組成物が得られる。さらに、該組成物を用いれば、吸水層と同様にして下地層が形成できる。
(吸水性樹脂)
吸水性防曇膜4が主として含有する吸水性樹脂としては、これと他の材料を組合せて吸水性防曇膜4を形成した際に、上記飽和吸水量を保持できる吸水性樹脂であれば特に制限されない。吸水性防曇膜4が吸水性樹脂のみで構成される場合には、吸水性樹脂の飽和吸水量は50mg/cm以上が好ましく、70mg/cm以上がより好ましく、100mg/cm以上が特に好ましい。また、吸水性樹脂の飽和吸水量は、900mg/cm以下が好ましく、500mg/cm以下がより好ましい。
本発明において吸水性防曇膜4を主として構成する吸水性樹脂としては、親水性基や親水性連鎖(ポリオキシエチレン基など)を有する樹脂が特に制限なく用いられる。吸水性樹脂は線状重合体であっても非線状重合体であってもよいが、耐久性等の面から3次元網目構造を有する非線状の重合体である樹脂が好ましい。
線状重合体からなる吸水性樹脂として、具体的には、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニルの等が挙げられる。
3次元網目構造を有する非線状の重合体である樹脂としては、硬化性樹脂の硬化物や架橋性樹脂が架橋した架橋樹脂などがある。通常、硬化性樹脂の硬化物と架橋樹脂は区別されない。
本明細書においては、硬化性樹脂の硬化物と架橋樹脂とを同じ意味に使用する。以下、硬化性樹脂の硬化物(以下、硬化樹脂ともいう)は架橋樹脂を含む意味で使用し、硬化性樹脂は架橋性樹脂を含む意味で使用する。硬化性成分とは反応性基を有する化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマーなど)と硬化剤との組み合わせをいう。硬化性樹脂の一方の反応性化合物を主剤と呼ぶこともある。硬化剤とは、主剤と反応する他方の反応性化合物をいい、さらに、付加重合性不飽和基を反応させるラジカル発生剤などの反応開始剤やルイス酸などの反応触媒と呼ばれるものも意味する。
ここで、硬化樹脂の飽和吸水量は、硬化樹脂中の親水性基の量に比例するため、親水性基の量を調節することによりその樹脂の飽和吸水量を制御することができる。親水性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、スルホニル基、アミド基、アミノ基、第四級アンモニウム塩基、オキシアルキレン基が挙げられる。硬化樹脂中の親水性基の量は、主剤および/または硬化剤に含まれる親水性基の量(例えば、水酸基価)を調節することにより制御できる。また、硬化反応によって親水性基が形成されるような場合には、主剤および/または硬化剤の官能基数や架橋度を調節することにより飽和吸水量が制御可能である。
また、飽和吸水量は硬化樹脂中の架橋度にも依存する。ある単位量当たりの硬化樹脂に含まれる架橋点の数が多ければ、硬化樹脂が緻密な3次元網目構造となり、保水のための空間が小さくなるため吸水性が低くなると考えられる。一方、単位量当たりに含まれる架橋点が少なければ、保水のための空間が大きくなり、吸水性が高くなると考えられる。硬化樹脂のガラス転移点は、硬化樹脂中の架橋点の数と関連が深く、一般に、ガラス転移点が高い樹脂は、ある単位量当たりに含まれる架橋点の数が多いと考えられる。
したがって、一般的に吸水性・防曇性能を高くするには、硬化樹脂のガラス転移点を低く制御し、耐久性を高めるには、硬化樹脂のガラス転移点を高く制御することが好ましい。これらを考慮すると、吸水性防曇膜を形成する吸水性硬化樹脂のガラス転移点は、硬化樹脂の種類にもよるが、10〜110℃であることが好ましく、20〜70℃であることがより好ましい。
なお、ガラス転移点は、JIS K 7121に準拠して測定した値である。具体的には、透明基体上に検体となる吸水性防曇膜を設け、これを20℃、相対湿度50%の環境下に1時間放置した後、示差走査熱量計を用いて測定した値である。ただし、測定時の加熱速度は10℃/分とする。
硬化性樹脂の主剤は、2個以上の反応性基を有する化合物と硬化剤との組み合わせにより反応して硬化樹脂となるものであれば特に限定されない。この反応は、熱や紫外線等の光により反応が開始または促進される。反応性基としては、例えば、ビニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、スチリル基などの重合性不飽和基を有する基、および、エポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、メチロール基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基などの反応性基が挙げられる。なかでも、エポキシ基、カルボキシル基および水酸基が好ましく、エポキシ基がより好ましい。また、主剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
主剤が反応性基を有する低分子化合物やオリゴマーである場合は、1分子中に含まれる反応性基の数は2個以上であるのが好ましく、2〜10個であるのがより好ましい。場合によっては、反応性基を1個だけ有する成分を含んでいてもよいが、その場合には、硬化性成分における1分子当たりの平均の反応性基の数が1.5以上となるようにするのが好ましい。
このような硬化性樹脂としては、例えば、2個以上のアクリロイルオキシ基を有する低分子化合物(モノマー)やオリゴマーからなる主剤とラジカル発生剤である硬化剤との組み合わせからなる硬化性アクリル樹脂、2個以上のエポキシ基を有する低分子化合物やオリゴマーなどの主剤とアミノ基等のエポキシ基と反応性の反応性基を2個以上有する化合物である硬化剤との組み合わせからなるエポキシ樹脂、2個以上のエポキシ基を有する低分子化合物やオリゴマーなどの主剤と硬化触媒(ルイス酸や塩基など)である硬化剤との組み合わせからなるエポキシ樹脂、2個以上の水酸基を有する低分子化合物やオリゴマーなどのポリオールとイソシアネート基を2個以上有する化合物であるポリイソシアネート(硬化剤)との組み合わせからなる硬化性ウレタン樹脂などがある。硬化性アクリル樹脂の硬化剤として光重合開始剤を使用することにより光硬化性アクリル樹脂とすることができ、エポキシ樹脂の硬化剤として光硬化剤(例えば、光照射によりルイス酸など発生する化合物)を使用することにより、光硬化性エポキシ樹脂とすることができる。
本発明においては、吸水性樹脂としてエポキシ系樹脂の硬化物が好ましく用いられる。本発明においてエポキシ系樹脂は以下の硬化性成分を含む硬化性樹脂をいう。
(A)2個以上のエポキシ基を有する低分子化合物やオリゴマーと硬化剤の組み合わせ。
(B)2個以上のエポキシ基を有するポリマーと硬化剤の組み合わせ。
上記(A)のエポキシ系樹脂の主剤である低分子化合物やオリゴマーにおける1分子当たりのエポキシ基の数は2〜10であることが好ましい。硬化剤としては、アミノ基などの反応性基を2個以上有する低分子化合物や硬化触媒などが使用でき、両者を併用することもできる。硬化剤はオリゴマーやポリマーであってもよく、例えば、ポリアミドオリゴマー、ポリアミドポリマー、側鎖にアミノ基やカルボキシル基を有するオリゴマーやポリマー、などを硬化剤として使用することもできる。さらに硬化剤として光硬化剤を使用し、光硬化性のエポキシ系樹脂とすることもできる。
上記(B)のエポキシ系樹脂の主剤であるポリマーとしては、アクリレートやメタクリレートなどのアクリル系モノマーの共重合体やアクリル系モノマーと他のモノマーとの共重合体が好ましい。アクリル系モノマーの一部としてエポキシ基を有するアクリル系モノマーを使用することにより、エポキシ基を有するポリマーが得られる。アクリル系モノマー以外のエポキシ基を有するモノマーを使用しても同様なエポキシ基を有するポリマーが得られる。エポキシ基を有するポリマーにおける1分子あたりのエポキシ基の数は1〜20個であることが好ましい。硬化剤としては、アミノ基などの反応性基を2個以上有する低分子化合物やオリゴマーが好ましい。
通常エポキシ樹脂と呼ばれている(A)のタイプのエポキシ系樹脂は、主剤である、2個以上のエポキシ基を有する低分子化合物やオリゴマー(以下これらをポリエポキシドという)の種類により、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂などに分類される。
グリシジルエーテル系エポキシ樹脂の主剤は、フェノール性水酸基を2個以上有するポリフェノール類のフェノール性水酸基やアルコール性水酸基を2個以上有するポリオール類のアルコール性水酸基をグリシジルオキシ基に置換した構造を有するポリエポキシド(またはそのポリエポキシドのオリゴマー)からなる。
同様に、グリシジルエステル系エポキシ樹脂の主剤はカルボキシル基を2個以上有するポリカルボン酸のカルボキシル基をグリシジルオキシカルボニル基に置換した構造を有するポリエポキシドからなり、グリシジルアミン系エポキシ樹脂の主剤は窒素原子に結合した水素原子を2個以上有するアミンの窒素原子に結合した水素原子をグリシジル基に置換した構造を有するポリエポキシドからなる。さらに、環式脂肪族エポキシ樹脂の主剤は、環の隣接した炭素原子間に酸素原子が結合した脂環族炭化水素基(2,3−エポキシシクロヘキシル基など)を有するポリエポキシドからなる。
本発明における吸水性防曇膜の主成分である吸水性樹脂としては、芳香核を有しないポリエポキシドを主剤とするエポキシ系樹脂の硬化物であることが高い吸水性を得られる点から好ましく、具体的には、ポリオール類由来のグリシジルエーテル系ポリエポキシドを主剤とするエポキシ系樹脂の硬化物であることが好ましい。
これに対し、ポリフェノール類由来のグリシジルエーテル系ポリエポキシドを主剤とするエポキシ系樹脂の硬化物は相対的に吸水性が低い。これは、後者のポキシ系樹脂の硬化物はベンゼン環などの芳香核を有し、この芳香核が硬質で吸水性の低い性質を樹脂に与えていると考えられる。したがって、下地層には、ポリフェノール類由来のグリシジルエーテル系ポリエポキシドを主剤とするエポキシ系樹脂の硬化物が好ましく用いられる。エポキシ系樹脂の硬化物を用いて吸水層と下地層からなる吸水性防曇膜を形成する場合、吸水層形成用組成物と下地層形成用組成物では、このように主剤を変える以外は他の成分は同様とできる。
ポリフェノール類由来のグリシジルエーテル系ポリエポキシドとして、具体的には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)等のビスフェノール型ジグリシジルエーテル類、フェノールノボラック型ジグリシジルエーテル類、クレゾールノボラック型ジグリシジルエーテル類、フタル酸ジグリシジルエステル等の芳香族ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル類等が挙げられる。これらの芳香族ポリエポキシドのうちでは、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテルが好ましく用いられる。
グリシジルエステル系のポリエポキシド、グリシジルアミン系のポリエポキシド、環式脂肪族のポリエポキシドも、芳香核を有しない化合物であれば吸水性樹脂の原料であるエポキシ系樹脂の主剤として適している。なお、ポリエポキシドの原料ポリオール類として芳香族ポリオールも知られているが、上記ポリオール類由来のグリシジルエーテル系ポリエポキシドとは、芳香核を有しないポリオール類由来のグリシジルエーテル系ポリエポキシドをいう。
上記と同じ理由で、吸水性樹脂の原料であるエポキシ系樹脂としては、硬化剤もまた芳香核を有しない化合物であることが好ましい。ただし、硬化剤が反応触媒である場合は、その使用量が少ないことより芳香核を有する化合物であってもよい。硬化剤が主剤と反応する反応性基を有する反応性化合物である場合は、たとえポリエポキシドが芳香核を有しないものであってもその硬化剤との組み合わせから得られる硬化物は比較的多くの芳香核を有する硬化樹脂となり、吸水性が不充分となるおそれがある。
本発明に用いる吸水性樹脂としては、芳香核を有しないポリエポキシドからなる主剤と芳香核を有しない反応性化合物からなる組み合わせのエポキシ系樹脂が特に好ましい。芳香核を有しないポリエポキシドとしては、グリシジルエーテル系ポリエポキシドが好ましい。同様に、芳香核を有しないポリオール類や芳香核を有しないアミン類などから得られる、グリシジルエステル系ポリエポキシド、グリシジルアミン系ポリエポキシド、環式脂肪族ポリエポキシドなども、吸水性樹脂を得るためのエポキシ系樹脂の主剤として好ましい。最も好ましい芳香核を有しないポリエポキシドは、グリシジルエーテル系ポリエポキシドである。
ポリオール類由来のグリシジルエーテル系ポリエポキシドの原料ポリオールとしては、脂肪族ポリオールや脂環族ポリオールなどの芳香核を有しないポリオールがあり、その1分子当たりの水酸基の数は2〜8個が好ましく、2〜4個がより好ましい。以下このような芳香核を有しないポリオールを脂肪族ポリオール類という。脂肪族ポリオール類としては、アルカンポリオール、エーテル性酸素原子含有ポリオール、糖アルコール、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオールなどがある。ポリオキシアルキレンポリオールとしては、アルカンポリオール、エーテル性酸素原子含有ポリオール、糖アルコールなどの比較的低分子量のポリオールに、プロピレンオキシド、エチレンオキシドなどのモノエポキシドを開環付加重合して得られる。ポリエステルポリオールは、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸が縮合した構造を有する化合物や環状エステルが開環重合した構造を有する化合物などがある。
ポリオール類由来のグリシジルエーテル系ポリエポキシドとしては、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
これらのうちでも、特にグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルが好ましい。
グリシジルエーテル系ポリエポキシド以外のポリエポキシドとしては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートなどが挙げられる。
ポリエポキシドの分子量としては、耐久性、外観、等の観点から200〜3000が好ましく、300〜2000がより好ましく、300〜1800が特に好ましい。また、ポリエポキシドのエポキシ当量(1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数[g/eq])としては、120〜200g/eqであることが好ましく、130〜190g/eqがより好ましい。
なお、本明細書において分子量は、特に断りのある場合を除いて、質量平均分子量(Mw)をいう。また、本明細書における質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレンを標準とする質量平均分子量をいう。
エポキシ系樹脂における硬化剤としては、ポリアミン類、ポリカルボン酸無水物、ポリアミド類、ポリチオール類などのエポキシ基と反応性の反応性基を2個以上有する化合物と、3級アミン類、イミダゾール類、ルイス酸類、オニウム塩類、ジシアンジアミド類、有機酸ジヒドラジド類、ホスフィン類など硬化触媒が挙げられる。反応性基を2個以上有する化合物としては、芳香核を有しないポリアミン類やポリカルボン酸無水物が好ましく、硬化触媒としては3級アミン類、イミダゾール類、ホスフィン類、アリルスルホニウム塩が好ましい。また、硬化触媒として光硬化性のエポキシ系樹脂を構成する光硬化性触媒も好ましい。さらに、反応性基を2個以上有する化合物と硬化触媒を併用することができ、特にポリアミン類と硬化触媒の組み合わせが好ましい。以下、反応性基を2個以上有する化合物を重付加型硬化剤といい、触媒型硬化剤という。
重付加型硬化剤としては、ポリアミン類、ポリカルボン酸無水物、ポリアミド類などが使用でき、高吸水性樹脂を得るためには、ポリエポキシドと同様に芳香核を有しない反応性化合物であることが好ましい。重付加型硬化剤としては、芳香核を有しないポリアミン類と芳香核を有しないポリカルボン酸無水物が好ましく、特に芳香核を有しないポリアミン類が好ましい。ポリアミン類としてはアミノ基を2〜4個有するポリアミン類が好ましく、ポリカルボン酸無水物としては、ジカルボン酸無水物、トリカルボン酸無水物およびテトラカルボン酸無水物が好ましい。
芳香核を有しないポリアミン類としては、脂肪族ポリアミン化合物や脂環式ポリアミン化合物が好ましい。これらのポリアミン類として、具体的には、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。上記ポリオキシアルキレンポリアミンは、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基がアミノ基に置換された構造を有するポリアミンであり、例えば、2〜4個の水酸基を有するポリオキシプロピレンポリオールの水酸基をアミノ基に置換した構造を有する2〜4個のアミノ基を有する化合物がある。そのアミノ基1個あたりの分子量は1000以下が好ましく、特に500以下が好ましい。
芳香核を有しないポリカルボン酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
触媒型硬化剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、三フッ化ホウ素−アミン錯体、ジシアンジアミド等が挙げられる。また、光硬化性エポキシ樹脂を与える触媒型硬化剤としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートなどの紫外線等の光により分解してルイス酸触媒を発生するオニウム塩が挙げられる。
ポリエポキシドと硬化剤の組み合わせ割合は、硬化剤が重付加型硬化剤の場合、エポキシ基に対する重付加型硬化剤の反応性基の当量比が0.8〜1.2程度になる割合であることが好ましい。ただし、触媒型硬化剤と併用する場合はこの割合よりも少なくてよい。また、質量割合が多くなりすぎると硬化物の物性が不充分となりやすいので、ポリエポキド100質量部に対して40質量部以下であるのが好ましい。触媒型硬化剤の使用量は、ポリエポキド100質量部に対して2〜20質量部であるのが好ましい。触媒型硬化剤の使用量を2質量部以上とすれば、反応が充分に進行し、充分な吸水性や耐久性が実現できる。また、触媒型硬化剤使用量が20質量部以下であれば、得られる硬化物中に硬化剤残渣が残存して硬化物の黄変等の外観上の問題が発生するのを防ぎ易い。
ポリエポキシドと硬化剤の組み合わせからなるエポキシ系樹脂にはそれら以外の反応性添加剤や非反応性添加剤を配合することもできる。反応性添加剤としてはアルキルモノアミンなどのエポキシ基と反応性の反応性基を1個有する化合物、エポキシ基やアミノ基を有するカップリング剤などが挙げられる。ポリエポキシドと硬化剤と任意成分の添加剤の組み合わせからなるエポキシ系樹脂において、エポキシ系樹脂全量に対するポリエポキシドの含有量は40〜80質量%であるのが好ましい。また、硬化剤の総量は40質量%以下であることが好ましい。
上記のようなポリエポキシド、硬化剤、それらの組み合わせ(エポキシ樹脂)は市販品を用いることも可能である。このような市販品として、具体的には、脂肪族のグリシジルエーテル系ポリエポキシドとして、ナガセケムテックス社製のいずれも商品名で、グリセロールポリグリシジルエーテルである、デナコールEX−313(分子量(Mw):383、平均エポキシ基数:2.0個/分子)、デナコールEX−314(分子量(Mw):454、平均エポキシ基数:2.3個/分子)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルである、デナコールEX−512(分子量(Mw):630、平均エポキシ基数:4.1個/分子)、デナコールEX−521(分子量(Mw):1294、平均エポキシ基数:6.3個/分子)等が挙げられる。
また、脂肪族ポリグリシジルエーテルである、デナコールEX−1410(分子量(Mw):988、平均エポキシ基数:3.5個/分子)、デナコールEX−1610(分子量(Mw):1130、平均エポキシ基数:4.5個/分子)、デナコールEX−610U(分子量(Mw):1408、平均エポキシ基数:4.5個/分子)等が挙げられる。ソルビトールポリグリシジルエーテルとして、デナコールEX−614B(分子量(Mw):949、平均エポキシ基数:6.1個/分子)等が挙げられる。なお、これらのポリエポキシドは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、下地層に好適に用いられる、ビスフェノールAジグリシジルエーテルであるjER828(商品名、三菱化学社製、分子量(Mw):340、平均エポキシ基数:約2個/分子)等が挙げられる。
硬化剤としては、ポリオキシアルキレントリアミンとして、ジェファーミンT403(商名、ハンツマン社製)等が挙げられる。光硬化触媒であるトリアリールスルホニウム塩として、アデカオプトマーSP152(商品名、アデカ社製)等が挙げられる。
本発明の窓ガラスにおける吸水性防曇膜は、上記吸水性樹脂を主成分として構成されるが、必要に応じて各種機能を有する機能性添加成分を含有する。機能性添加成分としては、吸水性防曇膜の機械的強度を高めるための無機充填材、吸水性防曇膜が接するカラス基板や膜との密着性を高めるためのカップリング剤、製膜性の向上のために用いられるレベリング剤、消泡剤、粘性調整剤や、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等が挙げられる。
(無機充填材)
無機充填材は、これを添加することにより吸水性防曇膜により高い機械的強度と耐熱性を付与することができる成分である。また、吸水性樹脂として硬化樹脂を用いた場合には、硬化反応時の樹脂の硬化収縮を低減することもできる。このような無機充填材としては、金属酸化物からなる充填材が好ましい。金属酸化物としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアが挙げられ、なかでもシリカが好ましい。
また、上記金属酸化物からなる充填材のほかに、ITO(Indium Tin Oxide)からなる充填材も使用できる。ITOは赤外線吸収性を有するため、吸水性防曇膜に熱線吸収性を付与できる。よって、ITOからなる充填材を使用すれば、吸水性に加えて熱線吸収による防曇効果も期待できる。
吸水性防曇膜が含有するこれら無機充填材は粒子状であることが好ましい。また、その平均粒子径は、0.01〜0.3μmであることが好ましく、0.01〜0.1μmであることがより好ましい。また、無機充填材の配合量については、吸水性樹脂として硬化樹脂を用いる場合は、主剤と硬化剤との合計質量100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部がより好ましい。吸水性樹脂として線状重合体を用いる場合は吸水性樹脂の100質量部に対して、0.5〜5.3質量部であることが好ましい。吸水性樹脂の100質量部に対する無機充填材の配合量を上記下限値以上とすれば、吸水性防曇膜に機械的強度を付与できる。また、硬化樹脂を用いる場合には、硬化収縮の低減効果の低下を抑え易い。また、無機充填材の配合量を上記上限値以下とすれば、吸水するための空間が充分に確保でき、吸水性や防曇性を高くし易い。
なお、上記無機充填材として好ましく用いられるシリカ、より好ましくは、シリカ微粒子は、水またはメタノール、エタノール、イソブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ブチル等の有機溶媒中に分散されたコロイダルシリカとして後述の吸水性防曇膜形成用組成物に配合することができる。コロイダルシリカとしては、水に分散されたシリカヒドロゾル、水が有機溶媒に置換されたオルガノシリカゾルがあり、吸水性防曇膜形成用組成物に配合する場合には、該組成物に好ましく用いられる溶媒にあわせて、シリカヒドロゾルまたはオルガノシリカゾルが用いられる。例えば、吸水性防曇膜形成用組成物に用いられる溶媒が有機溶剤である場合には、これと同様の有機溶媒を分散媒として用いたオルガノシリカゾルを用いることが好ましい。
このようなオルガノシリカゾルとしては、市販品を用いることが可能であり、市販品として、例えば、平均一次粒子径10〜20nmのシリカ微粒子がイソプロパノールに、オルガノシリカゾル全体量に対するSiO含有量として30質量%の割合で分散したオルガノシリカゾルIPA−ST(商品名、日産化学工業社製)、オルガノシリカゾルIPA−STの有機溶媒をイソプロパノールからメチルエチルケトンにかえたオルガノシリカゾルMEK−ST(商品名、日産化学工業社製)、オルガノシリカゾルIPA−STの有機溶媒をイソプロパノールから酢酸ブチルにかえたオルガノシリカゾルNBAC−ST(商品名、日産化学工業社製)等を挙げることができる。なお、シリカ微粒子としてコロイダルシリカを用いる場合には、吸水性防曇膜形成用組成物に配合する溶媒の量を、コロイダルシリカに含まれる溶媒量を勘案して、適宜調整する。
また、上記無機充填材は、吸水性防曇膜形成用組成物には、例えば、テトラエトキシシランのようなシリカ前駆体として配合され、吸水性防曇膜を形成した際にシリカとして被膜内に存在するものであってもよい。このようなシリカ前駆体としては、上記テトラエトキシシランのほかに、テトラメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、モノメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のケイ酸化合物を用いることができる。
上記シリカ以外に無機充填材として例示した、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどについては、その前駆体として、アルコキシド、アセチルアセトナートを用いることが可能であり、特にジルコニウムについては、塩化ジルコニウムも使用可能である。
(カップリング剤)
カップリング剤は、吸水性防曇膜形成用組成物に添加されて、吸水性防曇膜を形成する際に吸水性防曇膜とこれと接する透明基体や任意にかつ部分的に積層される撥水膜との間の密着性を高めるために作用する成分である。なお、カップリング剤が反応性基を有する場合は、該反応性基が吸水性防曇膜を構成する他の成分等と反応することで密着性を高めているため、吸水性防曇膜形成用組成物に配合したカップリング剤は、吸水性防曇膜を形成した後は多少形を変えて存在する。以下に、吸水性防曇膜形成用組成物に添加されるカップリング剤について説明する。
なお、上記吸水性樹脂として硬化樹脂を用い、さらに任意成分として配合されるカップリング剤が、主剤または硬化剤と反応性のある官能基を有している場合は、カップリング剤は、密着性を向上させる目的以外に、吸水性防曇膜の物性を調整する目的でも使用できる。
ここで、硬化性樹脂がエポキシ系樹脂を含む場合にも、吸水性防曇膜形成用組成物はカップリング剤を含有することが好ましく、このようなカップリング剤としては、有機金属系カップリング剤または多官能の有機化合物であることが好ましい。
上記有機金属系カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤が挙げられ、シラン系カップリング剤が好ましい。これらカップリング剤を、硬化性樹脂とともに用いる場合には、主剤や硬化剤の反応性基と反応し得る反応性基を有することが好ましい。ここで、カップリング剤は金属原子−炭素原子間の結合を1個以上(好ましくは、1個または2個)有する化合物であることが好ましい。有機金属系カップリング剤としては、特にシラン系カップリング剤が好ましい。
シラン系カップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
吸水性防曇膜形成用組成物におけるカップリング剤の使用量は、必須の成分でないことから下限はない。しかし、カップリング剤配合の効果を充分に発揮させるためには、吸水性樹脂(硬化樹脂の場合は、主剤と硬化剤)と、カップリング剤の合計質量に対して、カップリング剤の質量割合が0.1質量%以上であるのが好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。カップリング剤の使用量の上限は、カップリング剤の物性や機能によって制限されるが、吸水性樹脂(硬化性樹脂の場合は、主剤と硬化剤)と、カップリング剤の合計質量に対して、概ね20質量%以下であるのが好ましく、15質量%以下がより好ましい。
(その他機能性添加成分)
上記レベリング剤としては、ポリジメチルシロキサン系表面調整剤(市販品として、例えば、BYK307(商品名、ビックケミー社製))、アクリル系共重合物表面調整剤、フッ素変性ポリマー系表面調整剤等が、消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、界面活性剤、ポリエーテル、高級アルコールなどの有機系消泡剤等が、粘性調整剤としては、アクリルコポリマー、ポリカルボン酸アマイド、変性ウレア化合物等が、光安定剤としては、ヒンダードアミン類、;ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、ニッケルコンプレクス−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸モノエチラート、ニッケルジブチルジチオカーバメート等のニッケル錯体等が挙げられる。
光安定剤の市販品としては、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(市販品として、アデカスタブLA−72(商品名、ADEKA社製))を例示することができる。
酸化防止剤としては、ペルオキシラジカルを捕捉、分解することで樹脂の酸化を抑制するタイプのフェノール系酸化防止剤、過酸化物を分解することで樹脂の酸化を抑制するタイプのリン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられるが、本発明においてはフェノール系酸化防止剤を用いることが好ましい。フェノール系酸化防止剤の市販品としては、アデカスタブAO−50(商品名、ADEKA社製)等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、従来公知の紫外線吸収剤、具体的には、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられ、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、TINUVIN400(商品名、BASF社製)が挙げられる。
各成分はそれぞれに、例示した化合物の2種以上を併用してもよい。吸水性防曇膜形成用組成物中の各種成分の含有量は、それぞれの成分について、吸水性樹脂(硬化樹脂の場合は、主剤と硬化剤との合計)の100質量部に対して、0.001〜10質量部とすることができる。
(吸水性防曇膜の形成)
吸水性防曇膜は、吸水性樹脂(硬化樹脂の場合は、主剤と硬化剤)を必須成分として上記所定の割合で含有し、さらに、必要に応じて上記各種機能性添加成分を上記配合量で含有する吸水性防曇膜形成用組成物を調製し、この吸水性防曇膜形成用組成物を透明基体2の室内側の主面に塗布し、乾燥して、または、必要に応じて乾燥後、硬化(架橋)を行って形成される。吸水性防曇膜が2層以上の積層構造の場合、例えば、低吸水性の下地層と高吸水性の吸水層からなる場合には、層毎に所定の組成物を調製して層毎に用いる組成物に合わせて所定の塗布、乾燥、または、塗布、乾燥、硬化(架橋)を行う。
ここで、上記本発明の窓ガラスを製造する際には、透明基体の室内側の主面に吸水性防曇膜を形成する工程(a)と、前記透明基体の主として室外側の主面に撥水膜を形成する工程(b)とをその順に行う。工程(b)は後述の撥水膜形成用組成物を透明基体の室外側の主面に塗布し、乾燥、硬化させることで行われる。工程(b)の撥水膜の形成を先に行うと、操作中に撥水膜形成用組成物が透明基体の室内側に付着することが想定される。
撥水膜形成用組成物が僅かでも透明基体の室内側に付着するとその部分は撥水性となり、また除去も容易でないため、その後に透明基体の室内側主面に行う吸水性防曇膜形成用組成物の塗布が均一に行なえず問題である。その点、吸水性防曇膜形成用組成物が操作中に透明基体の室外側に付着しても、除去は容易であり、撥水膜の形成に問題はない。そのため、本発明においては工程(a)の後に工程(b)を行う。なお、吸水性防曇膜形成用組成物および撥水膜形成用組成物の調製については、同時並行で行っても、いずれかを先に行ってもよく、その順番は問わない。
以下に、吸水性樹脂として、上記硬化樹脂を用いる場合の吸水性防曇膜の形成方法について説明する。
吸水性防曇膜形成用組成物は、主剤と硬化剤を必須成分として上記所定の割合で含有し、さらに、必要に応じて上記各種機能性添加成分を上記配合量で含有する吸水性防曇膜形成用組成物を調製し、この吸水性防曇膜形成用組成物を上記透明基体の室内側の主面に塗布し、必要に応じて乾燥後、硬化(架橋)を行って形成される。
吸水性防曇膜形成用組成物は、固体や高粘度液体の硬化性樹脂を用いる場合には、塗布作業性を向上させるために溶剤を含むことが好ましい。一般的には、前記硬化性樹脂の主剤と硬化剤の反応は、吸水性防曇膜形成用組成物として透明基体の室内側の主面に塗布した後に行われるが、前記組成物が溶剤を含む場合には、透明基体の室内側の主面に塗布する前の組成物中でこれら成分を予めある程度反応させ、その後、透明基体の室内側の主面に塗布し、乾燥後、さらに反応させてもよい。このように吸水性防曇膜形成用組成物として溶剤中で、主剤と硬化剤とを予めある程度反応させる場合には、予め反応させるときの反応温度は、40℃以上とすれば硬化反応が確実に進行するため好ましい。
上記吸水性防曇膜形成用組成物に用いる溶剤としては、主剤や硬化剤等の成分の溶解性が良好な溶剤であり、かつこれらの成分に対して不活性な溶剤であれば特に限定されず、具体的には、アルコール類、酢酸エステル類、エーテル類、ケトン類、水等が挙げられる。
なお、主剤や硬化剤としてエポキシ基含有化合物を使用する場合は、溶剤としてプロトン性溶剤を用いると、種類によっては溶剤とエポキシ基とが反応して硬化樹脂が形成されにくい場合がある。したがって、プロトン性溶剤を使用する場合は、エポキシ化合物と反応し難い溶剤を選択することが好ましい。使用可能なプロトン性溶剤としてはエタノール、イソプロパノール等が挙げられる。また、それ以外の溶剤としては、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、プロピレンカーボネート、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が好ましい。
これら溶剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、主剤や硬化剤等の成分は溶剤との混合物として用意される場合がある。この場合には、該混合物中に含まれる溶剤をそのまま、吸水性防曇膜形成用組成物における溶剤として用いてもよく、さらに前記組成物にはそれ以外に同種のあるいは他の溶剤を加えてもよい。
また、吸水性防曇膜形成用組成物がエポキシ基含有化合物を含む場合は、溶剤の量は、エポキシ基含有化合物、硬化剤、および以下のカップリング剤の合計質量に対して1〜5倍量であることが好ましい。
透明基体の室内側主面に吸水性防曇膜を形成するために、上記で得られた吸水性樹脂形成用組成物を透明基体の室内側主面に塗布する方法としては、上記吸水性樹脂として線状重合体を用いる場合と同様の方法が挙げられる。透明基体の室内側主面に吸水性防曇膜形成用組成物を塗布した後は、必要に応じて乾燥により溶媒を除去し、用いる硬化性樹脂に合わせた条件で硬化処理を行い硬化樹脂の層とする。
硬化処理として具体的には、50〜180℃、10〜60分間程度の熱処理が挙げられる。室温硬化性の硬化性樹脂の場合は室温硬化もできる。光硬化性樹脂を用いた場合には、UV硬化装置等で50〜1000mJ/cmのUV照射を5〜10秒間行う等の処理が挙げられる。
[撥水膜]
本発明の窓ガラスにおいて透明基体2の室外側主面に形成される撥水膜3は、透明基体2の室外側主面に撥水性を付与するために設けられる。
ここで、検体表面の撥水性を評価する際に、一般的に水に対する接触角(以下、「水接触角」という)が用いられ、この角度が大きいほど検体表面の水濡れ性が悪く撥水性に優れる。また、本明細書で用いる、水に対する転落角(以下、「水転落角」という)とは、水平に保持した検体表面に50μlの水滴を滴下し、検体の一辺を持ち上げて徐々に傾けていき、水滴が落下し始めたときの検体表面と水平面との角度をいい、この角度が小さいほど検体表面の水滴除去性が優れることを意味する。
透明基体2の室外側主面に形成される撥水膜3は、透明基体2の室内側主面に形成される吸水性防曇膜4の防曇性能を十分に発揮させるために、水滴の付着および滞留によるカラス基板2の温度低下を防ぐことを目的に設けられており、水接触角が大きくかつ水転落角が小さい表面を有することが好ましい。具体的には、撥水膜3の表面における水接触角は90度以上が好ましく、95度以上がより好ましい。また、撥水膜3の表面における水転落角は15度以下が好ましく、10度以下がより好ましい。窓ガラス1Aは室外側の主面にこのような撥水膜3を有することで、雨等で水滴が室外側表面に当たった場合でも、その場所に留まることなく流れ落ちるため、気化熱により透明基体の温度を下げることが殆どない。
撥水膜3の膜厚は、形成材料や、透明基体の種類、用途等によって異なるが、通常、1nm〜200nm、好ましくは2nm〜150nmである。膜厚が1nm未満では、撥水膜の耐久性が不十分になるおそれがある。また、材料によっては、所望の撥水性を有する膜形成が困難になるおそれがある。膜厚が200nmを超えると、膜が不均一となりヘイズが上昇するおそれがある。また、膜厚が1nm未満の場合と同様、材料によっては膜形成が困難になるおそれがある。
撥水膜3は、単層で構成されてもよいが、少なくとも最外層が高撥水性を有する層となるように、異なる機能を有する2以上の層を積層した構造であってもよい。例えば、透明基体側に密着性の高い密着層を形成しその上に高撥水性の撥水層を形成する積層構造が挙げられる。密着層を設けることにより、撥水膜と透明基体との密着性が増し、また撥水膜全体としての緻密性が高まって、耐摩耗性、耐候性等の耐久性を向上させることが可能となる。撥水膜が密着層と撥水層の2層で構成される場合、密着層の層厚は、あまり厚すぎると損傷が目立ちやすくなるため、単分子層の厚さ〜50nmが好ましく、撥水層の層厚は、上記同様の観点から、撥水膜全体の膜厚が1nm〜200nm、特には2nm〜150nmとなる層厚が好ましい。
撥水膜3が単層で構成される場合の撥水膜、または撥水膜3が積層構造の場合の最外層の撥水層を構成する材料としては、ペルフルオロアルキル基含有加水分解性ケイ素化合物、ペルフルオロポリエーテル基含有加水分解性ケイ素化合物等の含フッ素有機ケイ素化合物や、ジメチルシリコーン化合物等のシリコーン化合物の硬化物、従来から知られる各種撥水性材料を使用することができる。また、撥水膜3が積層構造の場合の密着層を構成する材料としては、シリカを主体とする材料が挙げられる。
ここで、上記の通り、本発明の窓ガラスを製造する際には、透明基体の室内側の主面に吸水性防曇膜を形成する工程(a)と、前記透明基体の主として室外側の主面に撥水膜を形成する工程(b)とをその順に行う。したがって、撥水膜3は、室内側主面に吸水性防曇膜を有する透明基体の室外側主面に、工程(b)によって形成される。
撥水膜3が単層で構成される場合には、工程(b)は、各種撥水性材料の原料成分を含有する撥水膜形成用組成物を透明基体の室外側の主面に塗布し、乾燥、硬化させることで行われる。撥水膜3が積層構造の場合には、工程(b)は、シリカ原料を含有する密着層形成用組成物を透明基体の室外側の主面に塗布し、乾燥、硬化させて密着層を形成し、さらにその上に各種撥水性材料の原料成分を含有する撥水層形成用組成物を塗布し、乾燥、硬化させて撥水層を形成することで行われる。
撥水膜3が単層で構成される場合の撥水膜と、撥水膜3が積層構造の場合の最外層の撥水層は、同様の組成物を用いて同様の方法で形成できる。以下、撥水膜、撥水層の形成用組成物を撥水膜(層)形成用組成物と記す。
撥水膜(層)形成用組成物は、撥水性材料の原料成分を含有する。該原料成分のうちシリコーン化合物としては、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、アルコール変性ジメチルポリシロキサン、アルコキシ変性ジメチルポシロキシサン、フルオロアルキル変性ジメチルシリコーン等が挙げられる。
また、含フッ素有機ケイ素化合物としては、例えば下記一般式で表されるペルフルオロアルキル基含有加水分解性ケイ素化合物(A)(以下、化合物(A)ともいう)、ペルフルオロポリエーテル基含有加水分解性ケイ素化合物(B)(以下、化合物(B)ともいう)等が挙げられる。
(化合物(A))
F(CF(CHSiX
(化合物(B))
F1-O-(CFCFO)-CF-CONH(CHSi(R 3−h
ここで、上記各一般式中の記号は、以下の意味を示す。
:それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜6の炭化水素基。原料の入手や取り扱いが容易である点から、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
F1:炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基。炭素数は1〜8が好ましく、1〜6が特に好ましい。
、X:それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、またはイソシアネート基。複数個のX、Xは、互いに同一であっても異なってもよい。なお、ケイ素原子に結合するこれらの基は、加水分解してケイ素原子に結合する水酸基(シラノール基)を生成することが可能な加水分解性基である。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。アルコキシ基としては、炭素原子数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基がより好ましい。X、Xとしては、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。これらは、製造上の目的、用途等に応じて適宜選択され用いられる。X、Xは、同じ基であることが入手しやすさの点で好ましい。
e:1〜20の整数。1〜8が好ましく、1〜6が特に好ましい。
f:1〜6の整数。
g:1〜20の整数。
h:0または1
なお、上記各一般式で表わされる化合物(A)、化合物(B)は、それぞれ単独で使用できるほか、上記化合物(A)、化合物(B)から選ばれる1種以上の化合物の部分加水分解縮合物であってもよい。また、化合物(A)、化合物(B)から選ばれる1種以上とこれらの部分加水分解縮合物の混合物であってもよい。部分加水分解縮合物とは、溶媒中で酸触媒やアルカリ触媒等の触媒と水の存在下に加水分解性シリル基の全部または一部が加水分解し、次いで脱水縮合することによって生成するオリゴマーをいう。ただし、この加水分解縮合物の縮合度は、生成物が溶媒に溶解する程度である必要がある。
撥水膜(層)形成用組成物に用いる撥水性材料の原料成分としては、その他、市販の含フッ素有機ケイ素化合物系撥水剤、例えば、ダイキン社製のOptool DSX(商品名)等や、シリコーン系撥水剤、例えば、錦之堂社製のRAIN-X(商品名)等も使用することができる。
撥水膜(層)形成用組成物は、上記撥水性材料の原料成分のみからなるものであってもよいが、経済性、作業性、形成される撥水層の厚さの制御のしやすさ等の点から、通常、有機溶剤を含む。有機溶剤としては、アルコール類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、パラフィン系炭化水素類、エステル類等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、極性、蒸発速度等の異なる2種以上の有機溶剤を混合して使用してもよい。また、撥水性材料の原料成分として部分加水分解縮合物を含有する場合は、これを製造するために使用した溶媒を含んでもよい。
撥水膜(層)形成用組成物には、必要に応じて他の成分が含まれていてもよい。このような他の成分としては、例えば、含フッ素有機ケイ素化合物の部分加水分解縮合反応の際に用いた触媒(塩酸、硝酸等の酸等)が挙げられる。さらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、目的に応じて、機能性添加剤が含まれていてもよい。機能性添加剤としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物の微粒子、染料、顔料等の着色用材料、防汚性材料、硬化触媒、各種樹脂等が挙げられる。
上記のような撥水膜(層)形成用組成物を、室内側主面に吸水性防曇膜4を有する透明基体2の室外側主面に、または、該室外側主面に形成された密着層上に塗布する方法としては、スキージコート、ローラコート、フレキソコート、バーコート、ダイコート、グラビアコート、ロールコート、フローコート、スプレーコート、インクジェット、ディップコート等の方法が挙げられる。また、この塗布に次いで行われる硬化は、例えば、温度20〜50℃、湿度50〜90%RHの条件で行うことができる。硬化時間は、撥水層形成用材料の種類や濃度、硬化条件等にもよるが、通常、1〜72時間で硬化させることができる。なお、処理方法によっては、余剰成分が発生し外観の品質を損なうおそれがあるが、その場合には、溶剤拭き、または乾拭き等で余剰成分を除去するようにすればよい。
撥水膜3が密着層と撥水層の2層で構成される場合の密着層は、具体的には、下記一般式(2)で示される化合物、およびその部分加水分解縮合物から選ばれる化合物(C)を含む密着層形成用組成物を用いて形成することができる。
Si(X …(2)
上記式(2)中、Xはハロゲン原子、アルコキシ基またはイソシアネート基を表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。これらのうちでも、Xは、塩素原子、炭素数1〜4のアルコキシ基またはイソシアネート基であることが好ましく、さらに4個のXが同一であることが好ましい。
このような上記一般式(2)で示される化合物として、具体的には、Si(NCO)、Si(OCH、Si(OC等が好ましく用いられる。また、これらの部分加水分解縮合物は、化合物(A)、化合物(B)の部分加水分解縮合物の製造において説明したのと同様の方法で得ることができる。また、一般式(2)で示される化合物やその部分加水分解縮合物としては市販品があり、本発明にはこのような市販品を用いることが可能である。
上記密着層形成用組成物は、上記化合物(C)および/またはその部分加水分解縮合物のみからなっていてもよいが、経済性、作業性、処理層の厚さ制御のしやすさ等を考慮して、通常は有機溶剤を含有する。有機溶剤としては、アルコール類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、パラフィン系炭化水素類、エステル類等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、極性、蒸発速度等の異なる2種以上の有機溶剤を混合して使用してもよい。また、化合物(C)の部分加水分解縮合物を含有する場合は、これを製造するために使用した溶媒を含んでもよい。
また、密着層形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて機能性添加剤を含んでもよい。機能性添加剤としては、上記撥水膜(層)形成用組成物において記載したものが好ましく挙げられる。さらに、密着層形成用組成物は、上記撥水膜(層)形成用組成物と同様、必要に応じて酸触媒、水等の成分を含んでいてもよい。また、密着層形成用組成物を用いて密着層を形成する方法についても、上記記撥水膜(層)形成用組成物において説明した形成方法と同様の方法が好ましく挙げられる。
なお、密着層形成用組成物を透明基体2の室外側主面に塗布し一定時間保持して塗膜を形成させ、その表面に撥水層形成用組成物を塗布し塗膜を形成させた後に、適当な条件で硬化処理を行うことで、密着層形成のための硬化処理と撥水層形成のための硬化処理を同時に行うことも可能である。
以上、本発明の窓ガラスについて、実施形態の窓ガラス1Aを例にして説明した。図2に示す実施形態の窓ガラス1Bについては、窓ガラス1Aと、透明基体2および吸水性防曇膜4は同様とできる。窓ガラス1Bにおける撥水膜3については、構成材料は窓ガラス1Aの撥水膜3と同様とできる。窓ガラス1Bにおいて撥水膜3の形成領域は、窓ガラス1Aにおける撥水膜3の形成領域とは異なり、透明基体2の室外側の主面から透明基体2の端部を覆うようにして透明基体2の室内側の吸水性防曇膜4表面の周縁領域まで連続的に形成されている。
このような領域に撥水膜3を形成するには、撥水膜(層)形成用組成物の塗布を該領域に行う以外は、窓ガラス1Aの場合と同様に撥水膜3を形成すればよい。なお、この場合、撥水膜(層)形成用組成物の塗布を、透明基体2の室外側の主面からスプレー塗布で行えば、透明基体2の室外側の主面から透明基体2の端部を覆うようにして透明基体2の室内側の吸水性防曇膜4表面の周縁領域まで連続的に撥水膜(層)形成用組成物を塗布することができる。
本発明の窓ガラスは、建築用窓ガラス、輸送機器用窓ガラス等に適用でき、特に輸送機器用窓ガラスとして好適に用いられる。輸送機器用窓ガラスとしては、電車、自動車、船舶、航空機等におけるフロントガラス、サイドガラス、リアガラス等の窓ガラスが好ましく挙げられる。特に電車、自動車等の車両用の窓ガラスに好適である。
本発明の窓ガラスは、室外側に配設された撥水膜の機能により雨天等の場合でも、水滴が窓ガラスにとどまることが殆どないため、窓ガラスの局所的な温度低下が少なく、これによる室内側の吸水性防曇膜の機能低下を招くことが殆どない。したがって、本発明の窓ガラスは、室外の天候に影響されることなく優れた防曇性能が発揮できる。
本発明は以上説明した実施形態の記載内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更や修正を加えることができることはいうまでもない。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
実施例、比較例に用いた化合物の略号と物性について以下にまとめた。
(1)吸水性防曇膜の形成に用いた化合物
(1−1)ポリエポキシド
デナコールEX−521(脂肪族ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、商品名、ナガセケムテックス社製、Mw:1294、平均エポキシ基数:6.3個/分子)
デナコールEX−1610(脂肪族ポリグリシジルエーテル、商品名、ナガセケムテックス社製、Mw:1130、平均エポキシ基数:4.5個/分子)
jER828(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、商品名、三菱化学社製、Mw:340、平均エポキシ基数:約2個/分子)
(1−2)硬化剤、各種添加剤
ジェファーミンT403(ポリオキシアルキレントリアミン、商品名、ハンツマン社製):重付加型硬化剤
KBM903(3−アミノプロピルトリメトキシシラン、商品名、信越化学工業社製):シラン系カップリング剤
MEK−ST(商品名、日産化学工業社製、平均一次粒子径10〜20nmのシリカ粒子がメチルエチルケトンに分散したオルガノシリカゾル、商品名、日産化学工業社製、SiO含有量30質量%):無機充填材
(2)撥水膜の形成に用いた化合物
化合物(A−1):C13SiCl(シンクエスト社製)
化合物(B−1):CFO(CFCFO)CFCONHCSi(OCH(a=7〜8、平均値:7.3)(以下、の合成例1で合成した化合物)
化合物(C−1):Si(NCO)(SI−400、商品名、マツモトファインケミカル社製)
(合成例1)化合物(B−1)の合成
フラスコ内に、CHO(CHCHO)CHCHOH(市販のポリオキシエチレングリコールモノメチルエーテル、a=7〜8、平均値:7.3)の25g、R−225の20g、NaFの1.2g、およびピリジンの1.6gを入れ、内温を10℃以下に保ちながら激しく撹拌し、窒素をバブリングさせた。フラスコ内に、FC(O)−RF6(RF6:−CF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCF)の46.6gを、内温を5℃以下に保ちながら3.0時間かけて滴下した。滴下終了後、得られた反応粗液から、CHO(CHCHO)CHCHOC(O)−RF6の56.1gを精製した。
次に、オートクレーブ内でフッ素ガスにより、CHO(CHCHO)CHCHOC(O)−RF6(27.5g)の水素原子をフッ素原子に置換して、CFO(CFCFO)CFCFOC(O)−RF6の45.4gを得た。次いで、CFO(CFCFO)CFCFOC(O)−RF6(43.5g)の−RF6をエタノール交換してCFO(CFCFO)CFC(O)OCHCHの26.8gを得た。
100mLの丸底フラスコ内に、CFO(CFCFO)CFC(O)OCHCHの33.1g、NHCHCHCHSi(OCHの3.7gを入れ、室温で2時間撹拌した。得られた反応粗液から化合物(B−1):CFO(CFCFO)CFCONHCSi(OCH(a=7〜8、平均値:7.3)の32.3gを精製して、以下の実施例で撥水層形成用組成物の調製に用いた。
[実施例1]
以下の方法で、図1に示す構成の窓ガラス1Aと同様の構成の窓ガラスサンプル1を製造した。窓ガラスサンプル1は、透明基体2と、その室内側主面に透明基体側から下地層、吸水層の順に形成された吸水性防曇膜4と、その室外側主面に透明基体側から密着層、撥水層の順に形成された撥水膜3とを有するものであった。
(下地層形成用組成物(X1)の調製)
撹拌機、温度計がセットされたガラス容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル(8.00g、大伸化学社製)、jER828(4.88g、)、ジェファーミンT403(2.01g)、KBM903(0.99g、)、酸化防止剤(0.04g、アデカスタブAO−50,ADEKA社製)、紫外線吸収剤(0.04g、TINUVIN400(商品名)、BASF社製)、光安定剤(0.04g、アデカスタブLA−72、ADEKA社製)を入れ、25℃にて30分間撹拌した。次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテル(大伸化学社製)を加えて5倍に希釈して、さらにレベリング剤(0.04g、BYK307(商品名)、ビックケミー社製)を添加して、下地層形成用組成物(X1)を得た。
(吸水層形成用組成物(Y1)の調製)
撹拌機、温度計がセットされたガラス容器に、混合アルコール(エタノール:イソプロピルアルコール:n−プロピルアルコール=88:4:8(質量比)、12.24g、ネオエタノールPIP(商品名)、大伸化学製)、デナコールEX−1610(9.80g)、デナコールEX−521(8.14g)、MEK−ST(6.44g)、2−メチルイミダゾール(0.42g、四国化成社製)、KBM903(3.29g)、ジェファーミンT403(3.20g)、酸化防止剤(0.14g、アデカスタブAO−50、ADEKA社製)を攪拌しながら添加し、25℃にて1時間撹拌した。
次いで、メチルエチルケトン(28.57g、大伸化学製)、MEK−ST(2.76g)、レベリング剤(0.04g、BYK307(商品名)、ビックケミー社製)を攪拌しながら添加し、吸水層形成用組成物(Y1)を得た。
(密着層形成用組成物(C1)の調製)
撹拌機および温度計がセットされたガラス容器に、酢酸ブチル(純正化学社製)を9.70gおよび化合物(C−1)を0.30g入れ、25℃にて30分間撹拌して、密着層形成用組成物(C1)を得た。
(撥水層形成用組成物(A1)の調製)
撹拌機および温度計がセットされたガラス容器に、酢酸ブチル(純正化学社製)を1.90g、ハイドロフルオロエーテル(AE3000、旭硝子社製)を7.60g、化合物(A−1)を0.40gおよび化合物(B−1)を0.10g入れ、25℃にて30分間撹拌して、撥水膜形成用組成物(A1)を得た。
(窓ガラスサンプル1の製造)
(工程(a))
透明基体として、酸化セリウムで表面を研磨洗浄し、乾燥した清浄なソーダライムガラス基板(水接触角3度、200mm×200mm×厚さ2mm)を用いた。該透明基体の一方の主面(室内側となる主面)に、上記で得た下地層形成用組成物(X1)をフローコートによって塗布して、100℃の電気炉で30分間保持し、下地層を形成した。次いで、形成した下地層表面に、上記で得た吸水層形成用組成物(Y1)をフローコートによって塗布して、100℃の電気炉で30分間保持して吸水層を形成し、下地層および吸水層の2層からなる吸水性防曇膜4を有する透明基体2を得た。
(工程(b))
上記で得られた2層からなる吸水性防曇膜4を有する透明基体2の他方の主面(室外側となる主面)を上記と同様に酸化セリウムで研磨洗浄し、乾燥した後、上記で得た密着層形成用組成物(C1)の2gをスキージコート法によって塗布して、25℃で1分間保持し、密着層を形成した。次いで、形成した密着層表面に、上記で得た撥水層形成用組成物(A1)の2gをスキージコート法によって塗布した。その後、25℃、80%RHに設定された恒温恒湿槽で1時間保持して撥水層を形成し、密着層および撥水層の2層からなる撥水膜3とした。
これにより、透明基体2と、その室内側主面に透明基体側から下地層、吸水層の順に形成された吸水性防曇膜4と、その室外側主面に透明基体側から密着層、撥水層の順に形成された撥水膜3とを有する窓ガラスサンプル1を得た。
[実施例2]
以下の方法で、図2に示す構成の窓ガラス1Bと同様の構成の窓ガラスサンプル2を製造した。窓ガラスサンプル2は、透明基体2と、その室内側主面に透明基体側から下地層、吸水層の順に形成された吸水性防曇膜4と、その室外側主面に透明基体側から密着層、撥水層の順に形成された撥水膜3とを有し、さらに、撥水層のみが撥水膜3として透明基体端部から室内側主面の吸水性防曇膜4の周縁領域に連続的に形成された構成であった。
(窓ガラスサンプル2の製造)
上記実施例1と同様にして、工程(a)を実行し、さらに工程(b)の密着層の形成を行った。次いで、形成した密着層表面に、上記で得た撥水層形成用組成物(A1)の100gをスプレーコート法によって塗布した。その後、25℃、80%RHに設定された恒温恒湿槽で1時間保持して撥水層を形成し、上記構成の撥水膜3として、窓ガラスサンプル2を得た。
[比較例1]
実施例1において、工程(a)まで行い、工程(b)を行わないことで、撥水膜を有しない、吸水性防曇膜付き窓ガラスサンプル3を得た。
[窓ガラスサンプルの評価]
実施例および比較例で得られた窓ガラスサンプル1〜3の評価を以下の通り行った。
(室外側(撥水膜)表面の撥水性)
(1)水接触角
窓ガラスサンプルの室外側の表面、すなわち、窓ガラスサンプル1、2については撥水膜表面、窓ガラスサンプル3については透明基体表面に置いた、直径1mmの水滴の接触角をCA−X150(協和界面科学社製)を用いて測定した。測定面における異なる5ヶ所で測定を行い、その平均値を算出した。
(2)水転落角
水平に保持した窓ガラスサンプルの室外側の表面、すなわち、窓ガラスサンプル1、2については撥水膜表面、窓ガラスサンプル3については透明基体表面に50μlの水滴を滴下し、窓ガラスサンプルの一辺を持ち上げて徐々に傾けていき、水滴が落下し始めたときの窓ガラスサンプルの室外側表面と水平面との角度を角度計によって測定した。
(室内側(吸水防曇膜)の評価)
(1)飽和吸水量
吸水防曇膜の飽和吸水量の測定を上記の方法(ただし、透明基体の大きさは各例による)で行った。
(2)遅曇性
図3に断面図を示す、窓ガラスサンプルの防曇性能を評価するための装置を用いて、遅曇性を評価した。
窓ガラスサンプルSを、評価装置10のサンプル設置部に吸水性防曇膜4側が断熱ボックス12の内側に面するようにセットする。大型恒温槽11の温度を10℃とし、断熱ボックス12へ空気を供給する温湿度制御装置13の温湿度を15℃95%に設定し30分間静置させる。30分の静置ののち、撥水膜3側(もしくは未コート側)にマイクロピペットを用いて15μLの水を付着させる。付着させた水の様子と窓ガラスサンプルSが曇る様子は、窓ガラスサンプルSの前面に設置した照明14を用いてビデオ15によって記録を行う。なお、断熱ボックス12内、大型恒温槽11内、および窓ガラスサンプルの吸水性防曇膜4表面の温湿度を、温湿度測定器16により測定する。
結果は、ビデオの記録を目視で判別し、水付着部に曇りが生じなかった場合を遅曇性有りとして、「○」で示し、水付着部に曇りが生じた場合を遅曇性無しとして、「×」で示した。
(3)防汚性
窓ガラスサンプルの吸水性防曇膜が形成された側の表面において、端部から50mm内側の位置に油性マジックで線を書き、その後ウェスで拭きとることによって、マジックの線の後が消えるか否かで防汚性を評価した。
結果は、マジックで書いた線が消える場合を防汚性有りとして、「○」で示し、マジックで書いた線が消えない場合を防汚性無しとして、「×」で示す。
上記評価結果を表1に示す。
Figure 0006007664
本発明の窓ガラスは、雨天等の室外の天候に影響されることなく優れた防曇性能を発揮可能であり、高い視認性が要求される自動車、電車、船舶、航空機等の輸送機器の窓材、建築物の窓材等の用途に有用である。
1A,1B…窓ガラス、2…透明基体、3…撥水膜、4…吸水性防曇膜、
10…評価装置、11…大型恒温槽、12…断熱ボックス、13…温湿度制御装置、14…照明、15…ビデオ、16…温湿度測定器、S…窓ガラスサンプル。

Claims (7)

  1. 合わせガラスからなる透明基体と、前記透明基体の室内側の主面のみに配設されるJIS K 7121に準拠して測定したガラス転移点が10〜110℃である樹脂膜を含む吸水性防曇膜と、前記透明基体の室外側の主面のみに配設される撥水膜とを有する、自動車用の窓ガラス。
  2. 前記吸水性防曇膜を構成する材料の飽和吸水量が50mg/cm以上である、請求項1に記載の窓ガラス。
  3. 前記撥水膜表面における水に対する転落角が15度以下である、請求項1または2に記載の窓ガラス。
  4. 前記撥水膜表面における水に対する接触角が90度以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の窓ガラス。
  5. 前記窓ガラスの主面と水平面がなす角度が25〜155度となるように窓枠に取り付けられている、請求項1〜のいずれか1項に記載の窓ガラス。
  6. 前記透明基体の室内側の主面に吸水性防曇膜を形成する工程(a)と、前記透明基体の室外側の主面に撥水膜を形成する工程(b)とを有し、工程(a)の後に工程(b)を行う請求項1〜のいずれか1項に記載の窓ガラスの製造方法。
  7. 前記工程(b)は、撥水膜形成用組成物のスプレー塗布を含む請求項記載の窓ガラスの製造方法。
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