JP6007622B2 - 熱可塑性エラストマー樹脂組成物 - Google Patents
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また、従来組成では溶融粘度が高くなり流動性が不足するため薄肉成形品には向いてなく、射出成形性が悪くなる。このため可塑剤にて流動性向上を図るが多量添加が必要であるが、可塑剤のブリードアウトが激しくなり、さらには異種樹脂との接着性が大きく低下する問題も発生する。
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)は、上記高融点結晶性重合体セグメント(a)と上記低融点重合体セグメント(b)で70重量%以上占めることが好ましく、80重量%以上占めることがより好ましく、90重量%以上占めることがさらに好ましい。上記高融点結晶性重合体セグメント(a)と上記低融点重合体セグメント(b)で100重量%であっても良い。
本発明では、被着体であるポリエステル系樹脂に対する熱融着強度の観点から、芳香族ビニル化合物含有量が、ブロック共重合体中、好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下であり、好ましい下限としては1質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。また、被着体であるポリエステル系樹脂に対する熱融着強度の観点から、重合体ブロックAが、スチレンを主体とし、かつスチレン含有量がブロック共重合体中、好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、好ましい下限としては1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であるブロック共重合体であることが望ましい。
(C−1)成分は、マレイン酸変性されたスチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物であることが好ましい。スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加物であるスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)の水素添加物であるスチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−ブタジエン/イソプレン−スチレンブロック共重合体(SBIS)の水素添加物であるスチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(部分水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、SBBS)等を挙げることができる。マレイン酸変性したスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)が好ましい。
これら任意成分は、熱可塑性エラストマー樹脂組成物中、30質量%以下の範囲で用いることができる。より好ましくは、20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
JIS K6253に準拠し、表面硬度Aを測定した。
下記4.で得た厚さ2mm平板を数枚重ね合わせ、0、23、60℃の温度雰囲気下で30日間エージングし、成形品表面を目視で観察し、ブリードアウト物の有無を確認した。ここで、ブリードアウトとは、組成物中の配合物の一部が成形品の表面にしみ出てくる現象であり、下記の基準で評価を行った。
○:表面外観に変化無し
×:表面外観が全体的に曇っている
JIS K7210:1999に準じ、メルトインデクサーを用いて、試料を200℃で5分加熱後、2160gの荷重下で一定時間の間にオリフィスを通過した溶融試料の質量を測定した。これを10分当たりのg数に換算し、メルトインデックスを求めた。
射出成形性は、実際に100×100×2mmt平板を成形して、評価を行った。平板の成形は射出成形機(東芝機械株式会社製、IS80)でシリンダー温度200℃、金型温度35℃、冷却時間25秒にて平板を成形して評価に供した。その成形品の充填具合や外観に問題がないか、また金型への張り付きの有無に関して、下記の基準で評価を行った。
○:金型への張り付き無し
×:平板全体が金型へ張り付く
上記射出成形性評価において、成形品の表面及びゲート付近に表層剥離が発生していたかどうかを目視で確認した。
○: 成形品ゲート部の剥離無し
×:成形品ゲート部の剥離あり
上記射出成形性評価において、平板を50ショット成形したときの金型汚れを目視で確認した。
○:金型転写物が無し
×:金型転写物が有り
熱可塑性エラストマー樹脂組成物層と硬質樹脂層とが熱融着されてなる複合成形体であり、その製造方法としては、予め芯材(硬質樹脂)を100mm角厚さ1mmtの平板を射出成形し、平板の半分にテープでマスキングを行い、次にこの平板を100mm角深さ2mmのキャビティーに装着し、表皮材(熱可塑性エラストマー樹脂組成物)を射出成形した。これより得られた複合射出成形体より打抜いた幅25mm、長さ100mm、厚み2mmの短冊状試験片を用い、180℃ピール剥離試験を引張速度20mm/分で実施することで表皮材層/芯材層の融着界面剥離強度を測定した。ここで芯材の硬質樹脂としては、ポリカーボネイト(PC)樹脂(三菱エンジニアプラスチック(株)製ユーピロンS3000)、ABS樹脂(宇部興産(株)製3001G)、PMMA樹脂(三菱レイヨン(株)製アクリペットVH001)、PET樹脂(東洋紡績(株)製バイロペットEMC500)、PP樹脂((株)プライムポリマーJ−3000G)を用いた。
予備乾燥した成分を表1に示した配合比(質量比)に従い計量して、二軸押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM30)でシリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmにて溶融混練し、水浴にストランド状に押出して冷却後、樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物を射出成形機(東芝機械株式会社製、IS80)でシリンダー温度200℃、金型温度35℃にて各種試験用テストピースを成形して評価に供した。評価結果を表1に示した。
*1)成分A−i:テレフタル酸/1,4−ブタンジオール/ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG;数平均分子量2000)が100/78/22mol%のポリエステル・ポリエーテルブロック共重合体を製造した。表面硬度84A、溶融粘度ηA−1:182Pa・s
*2)成分A−ii:テレフタル酸/1,4−ブタンジオール/ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG;数平均分子量2000)が100/78/22mol%のポリエステル・ポリエーテルブロック共重合体を製造した。表面硬度84A 溶融粘度ηA−2:503Pa・s
成分A−iと同組成であるが重合時間を長くすることで粘度をアップさせている。
*3)成分A−iii:テレフタル酸/1,4−ブタンジオール/ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG;数平均分子量2000)が100/78/22mol%のポリエステル・ポリエーテルブロック共重合体を製造した。表面硬度84A 溶融粘度ηA−2:146Pa・s
成分A−iと同組成であるが重合時間を短くすることで粘度をダウンさせている。
*4)成分B−1−i:タフテックH1221;水素添加スチレン・エチレン・ブタジエンブロック共重合体の熱可塑性エラストマー(旭化成ケミカルズ(株)製)表面硬度A42溶融粘度ηB−1:1566Pa・s
*5)成分B−2:N504;水素添加スチレン・エチレン・ブタジエンブロック共重合体の熱可塑性エラストマー(旭化成ケミカルズ(株)製)表面硬度A79 溶融粘度ηB−2:3500Pa・s
*6)成分B−1−ii:タフテックH1272;水素添加スチレン・エチレン・ブタジエンブロック共重合体の熱可塑性エラストマー(旭化成ケミカルズ(株)製)表面硬度A35溶融粘度ηB−1:2430Pa・s
*7)成分B−1−iii:HYBRAR7311:水素添加スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体の熱可塑性エラストマー(クラレ(株)製)表面硬度A41 溶融粘度ηB−2:3550Pa・s
*8)成分C−1:タフテックM1943:無水マレイン酸変性水素添加スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体 表面硬度67A
*9)成分C−2:BF−7L:グリシジル変性エチレン・アクリル酸メチルコポリマー 表面硬度18D
*10)成分D−i:可塑剤 パラフィン系オイル ダイアナプロセスオイルPW−90(出光興産(株)製)
*11)成分D−ii:可塑剤 トリメリット酸エステル トリメックスT−08(花王(株)製)
また比較例1、2では、(A)成分の溶融粘度が高いため、相溶性が不十分であったため、離型性が悪く、表面剥離を生じた。比較例3では(B−1)成分を多量に添加したため、粘着性が生じてしまい、成形性が劣ってしまった。比較例4では(B−1)成分の添加量が少なすぎるため、柔軟性が不十分となった。比較例5では(B−2)成分が多く添加されており、高分子量のため、それ自身のドメインが非常に大きく二色成形性に影響している。比較例6では(B−1)成分が、A成分と相溶性が悪いため、コンパウンドが不可能であった。比較例7では可塑剤(D−i)を使用したため、成形時の金型汚れが激しい結果となった。比較例8では(B−2)成分が含有されず、低温から常温にかけての可塑剤を保持することが出来なくブリードアウトした。比較例9では可塑剤(D)成分が多く添加され、ブリードアウトするという問題が生じた。
Claims (3)
- 芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、分子量300以下の脂肪族ジオールから得られるポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)と、低融点重合体セグメント(b)を主たる構成成分とする、せん断速度γが60sec−1、樹脂温度210℃のときの溶融粘度ηAが100〜200Pa・sであるポリエステルブロック共重合体(A)30〜70質量部、
せん断速度γが60sec−1、樹脂温度210℃のときの溶融粘度ηB−1が1200〜2700Pa・sであるスチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物(B−1)55〜15質量部、
せん断速度γが60sec−1、樹脂温度210℃のときの溶融粘度ηB−2が3000Pa・s以上であるスチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物(B−2)1〜10質量部、
マレイン酸変性されたスチレン・共役ジエンブロック共重合体(C−1)0〜10質量部、
及びグリシジル変性されたオレフィン共重合体(C−2)1〜10質量部を含み、
(A)、(B−1)、(B−2)、(C−1)、及び(C−2)の合計100質量部に対して、エステル型可塑剤(D)1〜25質量部を配合したことを特徴とする熱可塑性エラストマー樹脂組成物。 - 前記ポリエステルブロック共重合体(A)の高融点結晶性重合体セグメント(a)が、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位からなり、低融点重合体セグメント(b)が脂肪族ポリエーテル単位からなる請求項1に記載の熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
- せん断速度γが60sec−1、樹脂温度210℃のときのポリエステルブロック共重合体(A)の溶融粘度ηAと前記スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物(B−1)の溶融粘度ηB−1の比(ηB−1/ηA)が7〜15であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
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