JP5203985B2 - 熱可塑性エラストマー及びこれを用いた複合成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、各種基材樹脂との接着性が高く、成形加工性が良好で、べとつき感が低く耐ブリード性が良好でゴム的感触も良好な熱可塑性エラストマーとこれを用いた複合成形体に関する。
自動車部品、家電部品、電動工具部品、電線被覆、雑貨等さまざまな用途における素材として熱可塑性エラストマーが多様に使用されており、なかでも、柔軟性や加工性に優れる、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック重合体であるスチレン系熱可塑性エラストマーは広く使用されている。
上記のようなさまざまな用途で、スチレン系熱可塑性エラストマーで異種の樹脂からなる基材樹脂を射出成形等で一体的に積層したい場合等に、スチレン系熱可塑性エラストマーと該基材樹脂との熱融着性を強化するための技術が提案されている。例えば、特許文献1には、スチレン系熱可塑性エラストマーにポリエステル系熱可塑性エラストマーやポリウレタン系熱可塑性エラストマーを混合して得る熱可塑性エラストマーが開示され、特許文献2では、スチレン系熱可塑性エラストマーに、ポリエステル系熱可塑性エラストマーやポリウレタン系熱可塑性エラストマーだけでなく特定量のパラフィン系オイルを配合することが提案されている。
しかし、近年の熱可塑性エラストマーの用途の拡大に伴い、素材の加工しやすさや素材のデザイン性が重視されるようになり、より高度な成形性と樹脂間の接着性が要求されている。かかる要求に対して、特許文献1、特許文献2等の従来技術でも、成形加工性、低べとつき性や耐ブリード性というゴム的感触の良さを高度にバランスよく共存させることが困難であった。
特開平6−65467号公報 特開平8−72204号公報
本発明は前記従来の問題を解決するため、各種基材樹脂との接着性が高く、成形加工性が良好で、べとつき感が低く、耐ブリード性が良好でゴム的感触も良好な熱可塑性エラストマーと、これを用いた複合成形体を提供する。
本発明の熱可塑性エラストマーは、下記成分A、成分B及び成分Cを含む組成の熱可塑性エラストマーであって、前記成分Aは、スチレン系モノマーを主成分とするブロック成分と、共役ジエン系モノマーを主成分とするブロック成分とを含むスチレン系熱可塑性樹脂:10〜75質量部の範囲であり、前記成分Bは、ポリエステル系熱可塑性樹脂及びポリウレタン系熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂:90〜25質量部の範囲であり、前記成分Cは、下記一般式(1)
Figure 0005203985
(但し、R1及びR2は炭素数2〜16の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、同一でも異なっていてもよい。)で表されるシクロヘキサンジカルボン酸アルキルエステルであり、前記成分A100質量部に対して前記成分Cは25〜250質量部の範囲であることを特徴とする。
本発明の複合成形体は、前記の熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性エラストマー層と、前記熱可塑性エラストマーと易接着性を有する基材樹脂を含む基材樹脂層とで構成される。
本発明は、各種基材樹脂との接着性が高く、成形加工性が良好で、べとつき感が低く、耐ブリード性が良好でゴム的感触も良好な熱可塑性エラストマーとすることができる。また、これを用いた複合成形体は熱可塑性エラストマーとの接着性と一体性が高く、成形加工性が良好で、べとつき感が低く、耐ブリード性が良好でゴム的感触も良好なものとすることができる。
図1は本発明の一実施例における複合成形体の断面図である。 図2は本発明の一実施例の剥離強度を測定するための剥離試験用部材の断面図Aと正面図Bである。 図3は本発明の一実施例の剥離強度を測定するための剥離試験用試験片の断面図Aと正面図Bである。 図4は本発明の一実施例の剥離強度の測定時の剥離態様の断面図である。 図5は本発明の一実施例の耐ブリード性測定用試験片の断面図である。
1.成分A
本発明で使用するスチレン系熱可塑性樹脂(成分A)とはスチレン系モノマーを主成分とするブロック成分(ブロック成分(a))を少なくとも1個と、共役ジエン系モノマーを主成分とするブロック成分(ブロック成分(b))を含むスチレン系熱可塑性樹脂、好ましくはスチレン系熱可塑性エラストマー樹脂である。本発明において「主成分とする」とは、ブロック成分(a)中の、スチレン系モノマーの含有量が60質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、ブロック成分(b)中の、共役ジエン系モノマーの含有量が60質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることを言う。
ブロック成分(a)は、スチレン系モノマーを主成分とする重合体ブロックであり、複数の種類のスチレン系モノマー類の共重合体を主成分とする共重合体ブロックであっても良い。スチレン系モノマー類としては、炭素数8〜12のビニル芳香族化合物など(以下、スチレン系化合物ともいう)が用いられ、そのビニル基の1位又は2位がメチル基などのアルキル基などで置換されていてもよい。例えば、p−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどをあげることができ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることもできる。これらの中でも入手が容易であるとの観点から、スチレンモノマー単独が特に好ましい。
ブロック成分(b)は、共役ジエン系モノマーを主成分とする重合体ブロック又は共重合体ブロック(以下、重合体ブロックと共重合体ブロックとを、まとめて共重合体ブロックともいう)である。共役ジエン系モノマーを主成分とする共重合体ブロックとしては、例えば、炭素原子数4〜8の共役ジエン系モノマー、さらに具体的には、例えば、ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、ペンタジエン、2−3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどを単独重合または共重合したものを主成分とする共重合体ブロックの1種又は2種以上組み合わせてなるものであっても良い。
これらの中でも、得られる成形体の機械的強度をより高める観点及び入手が容易であるとの観点から、ブタジエンの単独重合体ブロック、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)の単独重合体ブロック、または、ブタジエンと2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)の共重体合ブロックを主成分とすることがより好ましい。
前記成分Aは、例えば、ブロック成分(a)がスチレンの重合体ブロックであり、ブロック成分(b)がブタジエンの重合体ブロックであるスチレン−ブタジエンブロック共重合体、前記ブロック成分(b)がイソプレンの重合体ブロックであるスチレン−イソプレンブロック共重合体などがあげられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いられる。また、これらは例えば特開平3−72512号公報、特開平5−271325号公報、特開平5−271327号公報、特開平6−287365号公報などに記載された方法によって製造することができ、これらは1種または2種以上組み合わせて用いられる。
前記成分Aは、好ましくは、スチレン系化合物−共役ジエンブロック共重合体の共役ジエン系モノマーを含むブロック成分を水素添加(水添)することにより得られる重合体である。前記水添物としては、前述の構造が異なる2以上の共重合体ブロックから構成されるブロック共重合体中の共役ジエン系モノマーを含むブロック成分の水添物があげられ、これらは1種または2種以上組み合わせて用いられる。共役ジエン系モノマーを含むブロック成分を水素添加(水添)して得られる共重合体としては、前記水添の結果、ブロック成分(b)が、共役ジエン系モノマーを主成分とし、オレフィン系モノマーを副成分としてもよい。この場合のオレフィン系モノマーは、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマーを単独重合または共重合したものであっても良い。
前記スチレン系化合物−共役ジエンブロック共重合体としては、例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレンブロック共重合体などが挙げられ、これらは1種または2種以上組み合わせて用いられる。これらは公知の方法、例えば特昭40−23798号公報に記載された方法により、リチウム触媒又はチーグラー型触媒を用い、不活性媒体中でブロック重合させて得ることが出来る。

前記成分Aの一例としては、ブロック成分(a)をXと記載し、ブロック成分(b)をYと記載すると、例えば、X−Y、X−Y−X、Y−X−Y−Xなどの構造を有するスチレン系化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体である。ここで、可塑剤の吸収性を向上し耐ブリード性を良好 にすることと、ゴム的感触を向上する観点から、ブロック成分(a)は8質量%以上50質量%以下が好ましく、さらに好ましくは10質量%以上35質量%以下である。
前記成分Aは、本発明の熱可塑性エラストマーの各種基材樹脂との接着性、成形加工性、ゴム的感触を良好に確保する観点から、一例として下記が挙げられる。
(1)スチレン系モノマーを主成分とするブロック成分(a)と、ブタジエンを主成分とするブロック成分(b)とを主に含む熱可塑性エラストマー樹脂(SBS樹脂)、
(2)スチレン系モノマーを主成分とするブロック成分(a)と、イソプレンを主成分とするブロック成分(b)とを主に含む熱可塑性エラストマー樹脂(SIS樹脂)、
(3)スチレン系モノマーを主成分とするブロック成分(a)と、ブタジエン及びイソプレンを主成分とするブロック成分(b)とを主に含む熱可塑性エラストマー樹脂(SBIS樹脂)。なお、SBIS樹脂では、ブタジエンとイソプレンの質量比(ブタジエン/イソプレン)が、好ましくは15/85〜80/20、より好ましくは25/75〜65/35である。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマーは、各種基材樹脂との接着性、成形加工性、ゴム的感触を良好に確保する観点から、これらの熱可塑性エラストマー樹脂を用途に応じて種々変性したもの、例えば、成分Aが、共役ジエン系モノマーを含むブロック成分が水添されてなるブロック成分を含む熱可塑性樹脂、更には、熱可塑性エラストマー樹脂であることが好ましい。
成分Aの共役ジエン系モノマーを含むブロック成分の水添物である熱可塑性エラストマー樹脂は、一例として下記を挙げることができる。
(1)SBS樹脂のブロック成分(b)中のブタジエンが水添された、スチレン系モノマーを主成分とするブロック成分(a)と、ブタジエンを主成分とするブロック成分(b)とを主に含む熱可塑性エラストマー樹脂(SEBS樹脂)、
(2)SIS樹脂のブロック成分(b)中のイソプレンが水添された、スチレン系モノマーを主成分とするブロック成分(a)と、イソプレンを主成分とするブロック成分(b)とを主に含む熱可塑性エラストマー樹脂(SEPS樹脂)、
(3)SBIS樹脂のブロック成分(b)中のイソプレンが水添された、スチレン系モノマーを主成分とするブロック成分(a)と、ブタジエン及びイソプレンを主成分とするブロック成分(b)とを主に含む熱可塑性エラストマー樹脂(SEEPS樹脂)等。
なお、各ブロック成分内は、同種の構成モノマーが全てブロック状に共重合していても、各ブロック成分内が異種のモノマーで構成され、各ブロック成分内の一部又は全てがランダム状に共重合していてもよく、同種のブロック成分の分子量がほぼ同じあっても、異なっていてもよい。
本発明の熱可塑性エラストマーの柔軟な質感と、耐ブリード性を良好に確保する観点から、本発明の熱可塑性エラストマーに係る成分Aのスチレン系モノマーは、スチレン系モノマーと共役ジエン系モノマーとの合計質量に対して、8〜50質量%が好ましく、10〜35質量%がより好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマーの各種基材樹脂との接着性、成形加工性、ゴム的感触を良好に確保する観点から、前記成分Aの含有量は、本発明の熱可塑性エラストマー全質量中、15〜40質量%が好ましく、20〜35質量%がより好ましく、25〜30質量%がさらに好ましい。
2.成分B
本発明に係るB成分としては、ポリエステル系熱可塑性樹脂もしくはポリウレタン系熱可塑性樹脂の少なくとも1種が用いられる。
本発明に用いられるポリエステル系熱可塑性樹脂としては、一例として下記が挙げられ、これらはポリエステル系熱可塑性エラストマー樹脂もしくはポリウレタン系熱可塑性エラストマー樹脂であることが好ましい。
(1)芳香族ポリエステルブロック(a)と非芳香族ポリエステルブロック(b)とからなるブロック共重合体
(2)芳香族ポリエステルブロック(a)と非芳香族ポリエーテルブロック(c)とからなるブロック共重合体
(3)前述の(a)、(b)、(c)とからなる共重合体
上記芳香族ポリエステルブロック(a)とは、芳香族ジカルボン酸またはそのアルキルエステルと炭素数2〜12の脂肪族/又は脂環族ジオールとがエステル化反応または、エステル交換反応により得られるポリエステルオリゴマーであり、結晶性であることが好ましい。具体的にはポリエチレンテレフタレートオリゴマー、ポリプロピレンテレフタレートオリゴマー、ポリブチレンテレフタレートオリゴマーなどが挙げることができる。
上記芳香族ジカルボン酸としてはポリエステルの原料として知られるものを使用することが出来、具体的には。テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等をあげることが出来る。これらは2種以上を併用して使用することもできる。上記芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとしては、ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、ジメチルフタレート、2,6−ジメチルナフタレート等のジメチルエステル等を挙げることができる。これらは2種以上を併用して使用することもできる。
上記非芳香族ポリエステルブロック(b)とは、脂肪族又は脂環族ジカルボン酸と脂肪族ジオールと縮合することにより得られるポリエステルオリゴマー、又は脂肪族ラクトン又は脂肪族モノオールカルボン酸から合成されたポリエステルオリゴマーであり、非結晶性であることが好ましい。具体例としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸または、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸のうち1種以上とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール等のジオールのうち1種以上とを縮合させて得られる構造のポリエステルオリゴマーを挙げることができ、またε−カプロラクトン、ω−オキシカプロ酸等から合成されたポリカプロラクトン系ポリエステルオリゴマーを挙げることができる。
上記芳香族ポリエーテルブロック(c)とは、例えばポリ(アルキレンオキシド)グリコール等の平均分子量が400〜6000、好ましくは600〜3000のポリエーテルオリゴマーを挙げることができる。具体的なポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−および1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレン)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック又はランダム共重合体等をあげることができる。非芳香族ポリエステルブロック(b)及びポリエーテルブロック(C)の含有量は、生成するブロック共重合体中の5〜95質量%であることが望ましく、特に20〜80質量%であることが望ましい。上記含有量が5重量%未満では共重合物としての特徴が得られず、また、含有量が95質量%より多くなると縮合重合によってポリマーを得るのが困難である。
ポリエステル系熱可塑性エラストマー樹脂の製造方法については、その成分からなるオリゴマーのブロックをそれぞれ別々に先に合成してから、更にこのオリゴマーのブロック間をエステル結合させて製造させてもよいし、別の方法として、例えばブロック(b)を先に重合しておいて、さらにブロック(a)の成分単量体と混合して縮合する方法なども取りえる。この様なポリエステル系エラストマーとしては市販のポリマーである「ペルプレン」(東洋紡績(株)製商品名)、「ハイトレル」(東レ・デュポン(株)製商品名)等をあげることができる。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマー樹脂としては、ジイソシアネートと分子量約50〜500のグリコールとからなるハードセグメンと、ジイソシアネートと長鎖ポリオールからなるソフトセグメントを有するものである。長鎖ポリオールとしては分子量約500〜10000のポリアルキレングリコールの様なポリエーテル系のもの、或いはポリアルキレンアジペート、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート等のようなポリエステル系のものが使用される。この種のポリウレタン系熱可塑性エラストマーは下記の一般式で表される化合物である。
前記成分Bに係るポリウレタン系熱可塑性樹脂は、好ましくはポリウレタン系熱可塑性エラストマー樹脂であり、下記一般式(2)で示される化合物である。
Figure 0005203985
但し、式中のAはジイソシアネートとグリコールとからなるハードセグメントを表し、Bはジイソシアネートとポリオールからなるソフトセグメントを表し、Yはウレタン結合のジイソシアネート化合物の残基を表す。
本発明のポリウレタン系熱可塑性樹脂の各種基材樹脂との接着性、成形加工性、ゴム的感触を良好に確保する観点から、好ましくは、ジイソシアネートと分子量約50〜500のグリコールとからなるハードセグメンと、ジイソシアネートとポリオールからなるソフトセグメントを有することである。ポリオールとしては分子量約500〜10000のポリアルキレングリコールの様なポリエーテル系のもの、或いはポリアルキレンアジペート、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート等のようなポリエステル系のものが使用される。なお、ジイソシアネート化合物としては、フェニレンジイソシアネート、トリゲンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート4,4ジフェニツメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の公知慣用のものが好ましく使用される。前記ポリウレタン熱可塑性樹脂の市販品としてはポリウレタン熱可塑性エラストマー樹脂である「エラストラン(BASF社製商品名)」「パンデックス(DICバイエル社製商品名)」「レザミン(大日精化工業社製商品名)」等を上げることが出来る。
3.成分C
本発明の熱可塑性エラストマーは、前記成分A及び前記成分Bに加えて、成分Cとして、前記一般式(1)で表されるシクロヘキサンジカルボン酸アルキルエステル、好ましくは、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルを配合する。前記成分Cは、シクロヘキサンジカルボン酸もしくはその無水物と、所望のアルカノール、好ましくはイソノナノールとをエステル化して得ることができる。また、特開2006−188521号公報によれば、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル等のフタル酸アルキルエステル、好ましくはフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)フタル酸ジイソノニルの芳香環を水添して、反応後精製することによって得ることもできる。前記成分Cは、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルの市販品として「Hexamoll DINCH」(BASF社製商品名)を好ましく使用できる。
前記成分Cは、従来、特開2004−143177号公報、特開2006−188521号公報等により、ポリ塩化ビニル樹脂の粘度低減、ゲル化温度低減に好適な可塑剤として開示されたが、本発明では、成分Aを必須とする本発明の熱可塑性エラストマーに配合することで、本発明の熱可塑性エラストマーの各種基材樹脂との接着性がさらに良好で、成形加工性にも優れ、べとつき感が低く耐ブリード性が良好でゴム的感触にも優れるという、予想されない効果を奏する。
本発明の熱可塑性エラストマーは、各種基材樹脂との接着性、成形加工性、ゴム的感触を良好に確保する観点から、好ましい実施態様としては、前記成分Aを10〜75質量部と、前記成分Bを90〜25質量部と、前記成分Cを前記成分A100質量部に対して25〜250質量部とを配合してなり、好ましくは、前記成分Aを15〜65質量部と、前記成分Bを85〜35質量部と、前記成分Cを前記成分A100質量部に対して50〜120質量部とを配合してなり、より好ましくは、前記成分Aを25〜55質量部と、前記成分Bを75〜45質量部と、前記成分Cを前記成分A100質量部に対して70〜100質量部とを配合してなる。
4.成分D
本発明の熱可塑性エラストマーは、各種基材樹脂との接着性をより向上する観点から、前記A、前記B及び前記成分Cに加え、成分Dを加えることが好ましい。成分Dとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂とポリウレタン系熱可塑性エラストマー樹脂とを化学的に結合させてなる複合化熱可塑性エラストマー樹脂を、成分A及び成分Bの合計100質量部に対して、好ましくは10〜150質量部、より好ましくは20〜100質量部配合してなることが望ましい。
前記成分Dは、特開2005−239861号公報記載の成分(III)、又は、特開2003−119343号公報記載のポリウレタン系ブロック共重合体(II)として開示され、これらの公報に記載される方法で製造することができ、例えば、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー樹脂と、末端変性スチレン系熱可塑性エラストマーとを溶融混練して得た溶融混練物から、未反応のポリウレタン系熱可塑性エラストマー樹脂と未反応の末端変性スチレン系熱可塑性エラストマーとを除去して得られる。
前記末端変性スチレン系熱可塑性エラストマーとは、末端が変性剤により水酸基やカルボキシル基、酸無水基、アミノ基、エポキシ等により変性されたスチレン系熱可塑性エラストマー又はその水添物をいう。
前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマー樹脂は、前記成分Bに係るポリウレタン系熱可塑性エラストマー樹脂が好ましく、脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステル系のポリウレタン系熱可塑性エラストマー樹脂がより好ましく、市販品としては「クラミクロンU1180((株)クラレ製、脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステル系のポリウレタン系熱可塑性エラストマー樹脂)」等を挙げることができる。
成分Dは、例えば、片末端に水酸基を有する片末端変性SIS樹脂の水添物とポリウレタン系熱可塑性エラストマー樹脂をドライブレンドし、二軸押出機等で溶融混練した後、ペレット化し、該ペレットを溶剤により未反応のポリウレタンと未反応の片末端変性SIS樹脂の水添物を抽出除去し、残留固形物を乾燥して得られる。成分Dは、市販品として、例えば、「クラミロンTU−S5265」((株)クラレ製)を使用できる。
本発明の熱可塑性エラストマーは、さらに各種目的に応じて本発明の効果を損なわない範囲で任意の添加剤成分を配合することが出来る。具体的には酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、着色剤、帯電防止剤、無機充填材、有機充填材、難燃剤などである。
本発明の熱可塑性エラストマーは、例えば、粉末状又はペレット状の成分Aと、ペレット状の成分Bと、液体状の成分Cと、さらに必要に応じてペレット状の前記成分Dと、その他の添加剤とを、各成分を均一に混合し得る溶融混練装置に投入して、溶融混練して得ることができる。
溶融混練時の加熱温度は、成分Bの分解を抑制し、成分Cの揮発を抑制しつつ、均一混合を達成するとの観点から、180〜260℃が好ましく、190〜230℃がより好ましい。溶融混練時の回転速度は、均一混合の観点から、混練設備に応じて適切な範囲に設定すればよく、例えば、バンバリーミキサー、ニーダーミキサーでは、30〜70rpmが好ましく、50〜70rpmがより好ましい。
前記の溶融混練装置としては、例えば単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを挙げることができる。なかでも、混練中の剪断応力が大きく連続運転が可能な二軸押出機を使用するのが好ましい。材料の投入順序は特に限定されるものではないが、固体成分である成分A、B、必要に応じて投入されるD及びその他の添加剤を撹拌して均一混合した後、撹拌をしながら液体成分Cを徐々に添加して得たこれらの成分の混合物を溶融混練することが好ましい。
5.複合成形体
本発明の複合成形体は、前記の本発明の熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性エラストマー層と、前記熱可塑性エラストマーと易接着性を有する基材樹脂を含む基材樹脂層とで構成され、好ましくは両層が積層されており、好ましくは両層が界面を形成して積層されている。前記熱可塑性エラストマー層を使用するので、本発明の複合成形体は、成形前処理を必要とせず、成形時の熱だけで良好に熱可塑性エラストマー層と基材樹脂層とが剥離強度の高い界面を形成し、必ずしも剥離剤を塗布しなくても成形後の金型離れがよい等の良好な成形加工性と、熱可塑性エラストマー層と基材樹脂層との一体性が高く、かつ、熱可塑性エラストマー層のべとつき感が低く耐ブリード性が良好でゴム的感触も良好である。
基材樹脂が本願発明の熱可塑性エラストマーと易接着性を有するとは、基材樹脂が本願発明の熱可塑性エラストマーと十分な接着力をもって接着しうることをいい、好ましくは、基材樹脂を剛性被着材用樹脂として使用し、本願発明の熱可塑性エラストマーをたわみ性被着材用樹脂として使用して、後述の剥離強度試験をしたときに、剥離強度が1.0N/mm以上であることをいう。
本願発明の熱可塑性エラストマーと易接着性を有する基材樹脂は、本発明の複合成形体に係る基材樹脂層と熱可塑性エラストマー層の接着性を良好に確保する観点から、その基材樹脂の溶解度パラメーター(SP値)(SP=(△E/V)1/2(但し、単位は(cal/m1/2、△Eは蒸発エネルギー、Vはモル容積である。)が、好ましくは8.4〜15.8(cal/m1/2、より好ましくは9.0〜15.0(cal/m1/2であるものから選ぶことができる。
具体的には、本発明の複合成形体に係る基材樹脂層と熱可塑性エラストマー層の接着性を良好に確保する観点から、本願発明の熱可塑性エラストマーと易接着性を有する基材樹脂は、好ましくはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂及びポリ塩化ビニル(PVC)樹脂から選ばれる少なくとも一つの樹脂であり、より好ましくはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂から選ばれる少なくとも一つの樹脂である。
本発明の熱可塑性エラストマーは、射出成形等の成形加工時に、成形前処理を必要とせず、成形時の熱だけで良好に前記樹脂と剥離強度の高い界面を形成し、必ずしも剥離剤を塗布しなくても成形後の金型離れがよいという良好な成形加工性を有するだけでなく、べとつき感が低く耐ブリード性が良好でゴム的感触も良好である。
本発明の複合成形体の製造方法としてはTダイラミネート成形法、共押出成形法、ブロー成形法、インサート射出成形法、二色射出成形法、コアバック射出成形法、サンドイッチ射出成形法、インジェクションプレス成形法等の各種成形法を用いることができる。
上記成形法のうち、インサート射出成形法とは、射出成形等により賦形された本発明に係る基材樹脂層を金型内にインサートした後、該基材樹脂層と金型との間の空隙に本発明の熱可塑性エラストマーを射出成形して前記基材樹脂層と本発明に係る熱可塑性エラストマー層とが積層するように成形する方法である。また、二色射出成形法とは、二台以上の射出成形機を用いて、本発明に係る基材樹脂層を射出成形した後に、金型が回転、又は移動することにより、金型のキャビティーが交換され、該成形品と金型との間に空隙ができ、そこに本発明の熱可塑性エラストマーを射出成形して前記基材樹脂層と本発明に係る熱可塑性エラストマー層とが積層するように成形する方法である。さらに、コアバック射出成形法とは1台の射出成形機と1個の金型を用いて、本発明に係る基材樹脂層を射出成形した後に、金型のキャビティー容積を拡大させ、該成形品と金型との間の空隙に本発明の熱可塑性エラストマーを射出成形して、前記基材樹脂層と本発明に係る熱可塑性エラストマー層とが積層するように成形する方法である。前記積層の態様では、基材樹脂層と熱可塑性エラストマー層とは界面を形成して積層されている。
本発明に係る基材樹脂層の成形は、通常の射出成形法を用いたものでも良く、ガスインジェクション成形をしたものでも良い。
二色押出成形法とは異なる2つの押出機の加熱筒内における各々の流路内のそれぞれに、色や材質等の異なる本発明に係る基材樹脂と本発明の熱可塑性エラストマーとを供給し、各流路内のスクリュを非連動下で別々に回転駆動させることにより、前記基材樹脂と本発明の熱可塑性エラストマーを各流路内で可塑化溶融せしめて、各流路の先端開口部からそれぞれ連続的に吐出させつつ、ダイス穴から押し出すことにより、前記基材樹脂で構成される本発明に係る基材樹脂層と本発明に係る熱可塑性エラストマー層とが積層するように成形する方法である。
図1は本発明の一実施例における複合成形体の断面図である。この複合成形体1は、前記熱可塑性エラストマー層2と、本発明の熱可塑性エラストマーと易接着性を有する基材樹脂を使用した基材樹脂層3とが積層されている。
実施例及び比較例で使用した成分A、成分B、成分C、成分Cの比較成分及び成分Dについては、内容を表1にまとめて示す。成分Aは粉末(パウダー)状又はペレット状で、成分B及び成分Dはペレット状で、成分Cは液体状であった。また、本発明の複合成形体に係る基材樹脂層の一例である、後述の硬質基材の内容も表1にまとめた。
Figure 0005203985
〔実施例で使用した本発明の熱可塑性エラストマーの製造条件〕
各実施例において、成分A、成分B及び成分Cについては、表2に記載された質量部を配合した。
なお、実施例1の成分Aの配合質量は10kgであり、これを50質量部とした。
固形成分である前記成分A、成分B及び成分Dを、スーパーミキサー(川田製作所製、撹拌容量100L)に投入し、室温にて、回転数375rpmで撹拌しながら成分Cを投入し、成分A、成分B、成分C及び成分Dの混合物を製造した。前記混合物の温度が65℃になるまで撹拌を続け、65℃になった時点で前記スーパーミキサーから前記混合物を排出した。この混合物を、加圧ニーダーDS10−20MW−H型((株)モリヤマ製)に投入し、回転数70rpmで樹脂温度が所定の温度(180℃〜210℃)になるまで溶融混練し、次いで、造粒機FR−65型フィールリーダー((株)モリヤマ製))にてペレット化して、成分Aを10〜75質量部と、成分Bを90〜25質量部と、成分Cを成分A100質量部に対して25〜250質量部とを配合してなる本発明の熱可塑性エラストマー(実施例1)と、さらに成分Dを成分A及び成分Bの合計100質量部に対して10〜150質量部を配合してなる本発明の熱可塑性エラストマー(実施例2〜13)とを得た。
〔比較例で使用した比較のための熱可塑性エラストマーの製造条件〕
各比較例において、成分A、成分B、成分C、成分Cの比較成分及び成分Dについては、表3に記載された質量部を配合した。比較例1〜4では成分A、成分B、成分C及び成分Dを用い、比較例5〜7では、このうち、成分Cを表2に記載される成分Cの比較成分に置き換えて、成分A、成分B、成分Cの比較成分及び成分Dを用い、実施例と同様に秤量し、実施例と同じ条件で比較のためのペレット化した熱可塑性エラストマーを得た。
〔試験条件〕
以下で行う射出成形に使用した射出成形機は、日精樹脂工業(株)製FS80S18ASEを使用した。射出成形用金型の内寸法は、長さ150mm、幅105mm、深さ2.5mmで、射出成形にあたって、射出成形用金型の内面に剥離剤は塗布しなかった。
(1)剥離強度
JISK6135−2に準じて試験した。本発明の複合成形体の基材樹脂層として使用できる表1に記載した樹脂を剛性被着材(以下、硬質基材という)用樹脂とした。各硬質基材用樹脂は以下の条件でプレスして、長さ150mm、幅105mm、厚さ1.0mmの硬質基材用シートとした。
前記硬質基材用樹脂がナイロンの場合、硬質基材用樹脂を予め100℃で3時間乾燥し、温度230℃で1分間予熱後、温度230℃、圧力50kgf/cmで1分間プレスした。
前記硬質基材用樹脂がポリカーボネートの場合、硬質基材用樹脂を予め100℃で3時間乾燥し、温度230℃で1分間予熱後、温度230℃、圧力50kgf/cmで2分間プレスした。
前記硬質基材用樹脂がアクリロニトリルブタジエン−スチレン共重合体樹脂の場合、硬質基材用樹脂を予め100℃で3時間乾燥し、温度190℃で3分間予熱後、温度190℃、圧力150kgf/cmで3分間プレスした。
実施例1〜13のために製造した本発明の熱可塑性エラストマーと、比較例1〜7のために製造した比較のための熱可塑性エラストマー(以下、まとめて熱可塑性エラストマーともいう)をたわみ性被着材(以下、軟質基材という)用樹脂とした。
前記硬質基材用シートを、射出成形金型にインサートした。この硬質基材と射出成形された軟質基材とが融着しない部分を残し、後述の剥離試験でのつかみ部分とするため、インサートされた硬質基材用シートの一部を紙で被覆した上で、前記軟質基材用樹脂を硬質基材用シート上に射出し、前記紙で被覆した部分以外は硬質基材用シートと軟質基材用樹脂とが融着した剥離試験用部材(図2)を得た。軟質基材用樹脂の射出は、実施例1においては、射出圧力1100Kg/cm、樹脂温度190℃〜220℃、金型温度30℃で行った。成分A100質量部に対して成分Cが同じ質量部である実施例2乃至8、12は実施例1と同一の射出条件で、他の実施例及び比較例については、実施例1の条件を基にして射出圧力1000Kg/cm〜1700Kg/cm、樹脂温度180℃〜230℃、及び金型温度30℃の範囲で調整して射出した。
図2で示す前記剥離試験用部材は本発明の複合成形体の一例でもあり、前述の紙で被覆した以外の部分は、硬質基材用シートと軟質基材とが融着しており、本発明の複合成形体の基材樹脂層の一例でもある硬質基材用シートと本発明の複合成形体の熱可塑性エラストマー層の一例でもある軟質基材とが積層されている。図2において、前記剥離試験用部材11の寸法は、
硬質基材(基材樹脂層)12と軟質基材(熱可塑性エラストマー樹脂層)13の長さは150mm、幅は105mmで、硬質基材12と軟質基材13の長さと幅はちょうど重なっており、該長さと幅は剥離試験用部材11の長さと幅でもあり、
硬質基材12と軟質基材13との融着部分14の長さと非融着部分15の長さは後述の剥離試験用試験片21の該当する寸法がとれるように調整されており、
硬質基材12の厚さは1mm、
軟質基材13の厚さは1.1〜2mm、
である。
前記部材を打ち抜いて、前記融着した部分を含む図3のような剥離試験用試験片21を5枚得た。図3において、剥離試験用試験片21の寸法は、
硬質基材(基材樹脂層)12と軟質基材(熱可塑性エラストマー樹脂層)13の長さは125mm、幅は13mmで、硬質基材12と軟質基材13の長さと幅はちょうど重なっており、該長さと幅は剥離試験用試験片21の長さと幅でもあり、
硬質基材12と軟質基材13との融着部分14の長さは40〜50mm、
硬質基材12と軟質基材13との非融着部分15の長さは75〜85mm、
硬質基材12の厚さは1mm、
軟質基材13の厚さは1.1〜2mm、
である。
図4に示すように、硬質基材12はつかみ部22で把持され、軟質基材13はつかみ部23で把持され、剥離試験機(図示せず)で、つかみ部23は固定され、つかみ部分22はX1方向に引っ張られて剥離強度が測定される。
この剥離試験用試験片について、引張試験機ストログラフAPII((株)東洋精機製作所製)で、つかみ移動速度100mm/分で剥離試験を行った。得られた力−つかみ移動距離曲線から最大荷重(N)を求め、剥離試験用試験片の単位幅当りの最大荷重(N/mm)を算出し、又は、軟質基材が最大荷重(N)を有さず破断した場合は破断時の破断荷重(N)から剥離試験用試験片の単位幅当りの破断荷重(N/mm)を算出し、この剥離試験用試験片の剥離強度とした。熱可塑性エラストマーのそれぞれについて、剥離試験用試験片5枚についての剥離強度の平均値をその熱可塑性エラストマーの剥離強度(N/mm)とした。
後述する表2及び表3で示すように、本発明の熱可塑性エラストマーは、剥離強度が、1.0N/mm以上であるか、剥離せずに破断するので、硬質基材用樹脂として選んだ基材樹脂に対する接着性が良好であることがわかる。
(2)ベタツキ性
熱可塑性エラストマーを、それぞれ、温度175℃で2分間予熱後、温度175℃、圧力200kgf/cmで2分間加熱プレスし、さらに室温23℃、圧力200kgf/cmで2分間冷却プレスして、長さ290mm、幅210mm、厚さ1.0mmのシートを製造した。前記シートを、室温23℃、湿度50%Rhの環境下で24時間以上静置したものを、べたつき性測定用試験片とした。べたつき性測定用試験片の表面のベタツキ感を、室温23℃、湿度50%Rhの環境下で、触感にて確認した。ベタツキが全く無い場合は○、少しでもベタツキがある場合は×とした。
(3)耐ブリード性
べたつき性測定用試験片から、長さ125mm、幅13mm、厚さ1.0mmのシートを打ち抜き、図5に示すように、中央部で長さ方向に180度二つ折りにし、折り曲げ部32とは反対側の端部から40mmの部分のうち33と34の部分をクリップで固定し、耐ブリード性測定用試験片31とした。これを室温23℃、湿度50%Rhにて48時間静置した後、前記クリップを外して前記固定を開放し、肉眼で、折り曲げ部32の滲み出しの有無を観察した。滲み出しの無い場合は○、ある場合は×とした。
(4)成形加工性
剥離強度の測定のために作成した前記硬質基材用シート(基材樹脂層)を、射出成形金型にインサートしておいて、熱可塑性エラストマ−をインサート射出成形して二色成形をして、基材樹脂層とエラストマー樹脂層とが融着し、基材樹脂層と熱可塑性エラストマー層とが積層されている本発明の複合成形体を得た。熱可塑性エラストマーの射出は、実施例1においては、射出圧力1100Kg/cm、樹脂温度190℃〜220℃、金型温度30℃で行った。成分A100質量部に対して成分Cが同じ質量部である実施例2乃至8、12は実施例1と同一の射出条件で、他の実施例及び比較例については、実施例1の条件を基にして射出圧力1000Kg/cm〜1700Kg/cm、樹脂温度180℃〜230℃、及び金型温度30℃の範囲で調整して射出した。
成形加工性は、以下の基準で判定した。
○ 硬質基材(基材樹脂層)に積層された熱可塑性エラストマー層の表面に、
割れがなく、
著しいフローマークが存在せず、
かつ、熱可塑性エラストマー層が金型に付着せず、剥離性が良好だった。
△ 硬質基材(基材樹脂層)に積層された熱可塑性エラストマー層の表面に、
割れはないが、
著しいフローマークが存在し、
かつ/または、熱可塑性エラストマー層が金型に付着した。
× 硬質基材(基材樹脂層)に積層された熱可塑性エラストマー層の表面に、
割れがあり、
著しいフローマークが存在し、
かつ/または、熱可塑性エラストマー層が金型に付着した。
(5)硬度
熱可塑性エラストマーを、それぞれ、温度175℃で2分間予熱後、温度175℃、圧力200kgf/cmで2分間加熱プレスし、さらに室温23℃、圧力200kgf/cmで2分間冷却プレスして、長さ290mm、幅210mm、厚さ2.0mm〜2.5mmの硬度測定用試験部材を製造した。JISK6253のデュロメータ硬さ試験に準拠して、タイプAデュロメータにて測定した。3枚の硬度測定用試験部材を積層し、厚さ6.0mm以上の試験片とした。
(6)引張強さと引張伸び
JISK6723の引張試験で指定されるJISK7113に準拠した。べたつき性測定用試験片を打ち抜いて5片の3号ダンベル型試験片(3号形試験片)を作成し、引張試験機ストログラフAPII((株)東洋精機製作所製)で、各試験片のつかみ移動速度200mm/分で剥離試験を行い、引張応力−ひずみ曲線の最大引張応力(MPa)を読み取り、その試験片の引張強さとし、最大引張応力時の伸び率(%)を読み取り、その試験片の引張伸びとし、それぞれ5枚の試験片の平均を算出した。
以上の試験結果を、表2及び表3にまとめた。表2及び表3から、成分Aと、成分Bと、成分Cとを所定量含む本発明の熱可塑性エラストマーは、各種基材樹脂との剥離強度がいずれも1N/mmを超えるか、界面が剥離することなく破断しており、各種基材樹脂との接着性が高いだけでなく、成形加工性が良好で、さらには、べとつき感が低く耐ブリード性も良好であり、柔らかさの指標となる硬さも抑制されて十分に軟質化されており、ゴム的感触が良好であることがわかる。
また、本発明の熱可塑性エラストマーにさらに成分Dを配合することで、成形加工性、低べとつき感、耐ブリード性及びゴム的感触を良好に維持しながら、各種基材樹脂との接着性をさらに向上できることがわかる。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマーの良好な成形加工性と各種基材樹脂との接着性に基づき、 複合成形体を、本発明の熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性エラストマー層と、本発明の熱可塑性エラストマーと易接着性を有する基材樹脂を含む基材樹脂層を含む基材樹脂層とで構成し、好ましくは両層を積層して構成し、より好ましくは両層が界面を形成して積層するように構成すると、成形加工性と積層構造の一体性が良好な本発明の複合成形体を得ることが期待できる。
Figure 0005203985
Figure 0005203985
表2〜3から明らかなとおり、実施例1〜13は成形品のベタツキ性と耐ブリード性と成形加工性が良好であり、かつ熱可塑性エラストマー層と基材樹脂層との剥離強度も高かった。これに対して比較例1,4,6はベタツキ性と耐ブリード性が好ましくなく、比較例2と7は熱可塑性エラストマー層と基材樹脂層との剥離強度が低く(比較例7は剥離してしまう)、比較例3は成形加工性が劣り、比較例5は耐ブリード性が低く、各々好ましくなかった。
本発明の複合成形体は、前記基材の表面の少なくとも一部を構成する樹脂と前記基材の形状を用途に応じて好ましいものを選択することで、各種工業部品として使用することができる。具体的には、インストルメントパネル、センターパネル、センターコンソールボックス、ドアトリム、ピラー、アシストグリップ、ハンドル、エアバックカバー等の自動車内装部品、モール等の自動車外装部品、掃除機バンパー、リモコンスイッチ、OA機器の各種キートップ等の家電部品、水中眼鏡、水中カメラカバー等の水中使用製品、各種カバー部品、密閉性、防水性、防音性、防振性等を目的とした各種パッキン付き工業部品、ラック&ピニオンブーツ、サスペンションブーツ、等速ジョイントブーツ等の自動車機能部品、電線被覆、ベルト、ホース、チューブ、消音ギア等の電気、電子部品、スポーツ用品、医薬用シリンジの外部滑り止め、電動工具のグリップ、建材の目地材・目隠材・止水材等に使用することができ、中でも柔軟性とべとつき性の観点から、グリップ用途が好ましく、電動工具のグリップ用途がより好ましい。
1 複合成形体
2 熱可塑性エラストマー層
3 基材樹脂層
11 剥離試験用部材
12 硬質基材(基材樹脂層)
13 軟質基材(熱可塑性エラストマー層)
14 融着部
15 非融着部
21 剥離試験用試験片
22 引張試験機のつかみ部分
23 引張試験機のつかみ部分
X1 基材樹脂層(硬質基材)の引張り方向(つかみ部分23は固定し、つかみ部分22のみ移動する)
31 耐ブリード性測定用試験片
32 折り曲げ部

Claims (7)

  1. 下記成分A、成分B及び成分Cを含む組成の熱可塑性エラストマーであって、
    前記成分Aは、スチレン系モノマーを主成分とするブロック成分と、共役ジエン系モノマーを主成分とするブロック成分とを含むスチレン系熱可塑性樹脂:10〜75質量部の範囲であり、
    前記成分Bは、ポリエステル系熱可塑性樹脂及びポリウレタン系熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂:90〜25質量部の範囲であり、
    前記成分Cは、下記一般式(1)
    Figure 0005203985
    (但し、R1及びR2は炭素数2〜16の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、同一でも異なっていてもよい。)で表されるシクロヘキサンジカルボン酸アルキルエステルであり、
    前記成分A100質量部に対して前記成分Cは25〜250質量部の範囲であることを特徴とする熱可塑性エラストマー。
  2. 前記成分Cは、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルである請求項1に記載の熱可塑性エラストマー。
  3. 前記成分Aは、共役ジエン系モノマーを含むブロック成分が水添されてなるブロック成分を含む請求項1に記載の熱可塑性エラストマー。
  4. 前記成分Aの共役ジエン系モノマーを主成分とするブロック成分は、ブタジエン及びイソプレンから選ばれる少なくとも1種のモノマーを主成分とするブロック成分である請求項1又は3に記載の熱可塑性エラストマー。
  5. 前記熱可塑性エラストマーに、さらに、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂とポリウレタン系熱可塑性エラストマー樹脂とを化学的に結合させた複合化熱可塑性エラストマー樹脂(成分D)が、前記成分Aと前記成分Bの合計100質量部に対して、10〜150質量部配合されている請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性エラストマー層と、前記熱可塑性エラストマーと易接着性を有する基材樹脂を含む基材樹脂層とで構成される複合成形体。
  7. 前記易接着性を有する基材樹脂層は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂及びポリ塩化ビニル(PVC)樹脂から選ばれる少なくとも一つの樹脂である請求項6に記載の複合成形体。
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