以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係る防塵膜の製造方法においては、表面に微細凹凸構造が設けられたリール状樹脂モールドを作製し、このリール状樹脂モールドの微細凹凸構造を樹脂層に転写することにより表面に微細凹凸構造を有する防塵膜を製造する。
(A)モールド作製工程
まず、本発明の実施の形態に係る防塵膜の製造方法のモールド作製工程に用いられるモールドの製造装置の概略について簡単に説明する。図1は、本実施の形態に係るモールド作製工程に用いられる製造装置の概略図である。
図1に示すように、この製造装置は、基材11が巻回された原反ロール101と、基材11を用いて製造されたリール状樹脂モールド12を巻き取る巻き取りロール102とを備える。原反ロール101と巻き取りロール102との間には、基材11の搬送方向における上流側から下流側に向けて、基材11上に光硬化性樹脂を塗布する塗布装置103と、外周面に微細凹凸構造を有する円筒状金型104と、基材11上の光硬化性樹脂と円筒状金型104の外周面との間を密着させる加圧手段105と、円筒状金型104の外周面上に密着された基材11上の光硬化性樹脂に光を照射する光源106とがこの順に設けられている。なお、溶媒を用いて光硬化性樹脂を塗布する場合には、光硬化性樹脂中の溶媒を乾燥する乾燥炉107を更に備えた転写装置を用いてもよい。
次に、図2を参照して、本実施の形態に係る防塵膜の製造方法について詳細に説明する。図2は、防塵膜の製造工程の一例を示す概略図である。まず、図1に示した製造装置により防塵膜の製造に用いるリール状樹脂モールドを作製するモールド作製工程を実施する。図2Aに示すように、このモールド作製工程においては、原反ロール101から巻き出した光透過性の基材11上に塗布装置103により光硬化性樹脂を塗布して未硬化樹脂層13を形成する。
次に、外周面に微細凹凸構造を有する円筒状金型104を回転させながら、加圧手段105によって円筒状金型104の外周面に未硬化樹脂層13を密着させた状態で、光源106からの光を基材11側から未硬化樹脂層13に照射する。この結果、未硬化樹脂層13の光硬化性樹脂が光硬化され、円筒状金型104の外周面に設けられた微細凹凸構造が表面に転写された硬化樹脂層14が得られる。これにより、図2Bに示すように、光透過性の基材11及びこの基材11上に設けられ表面に微細凹凸構造を有する硬化樹脂層(光硬化性樹脂層)14を備えたリール状樹脂モールド12が作製される。次に、作製したリール状樹脂モールド12を巻き取りロール102で巻き取る。なお、モールド作製工程においては、円筒状金型104から転写した微細凹凸構造を保護するために、硬化樹脂層14上に保護フィルム(カバーフィルム)をラミネートしてもよい。
次に、図2Cに示すように、作製したリール状樹脂モールド12を用いて樹脂鋳型15を作製する樹脂鋳型作製工程を実施する。この樹脂鋳型作製工程においては、リール状樹脂モールド12の硬化樹脂層14表面の微細凹凸構造に、無機基板16の表面に光硬化性樹脂を塗布して設けた未硬化樹脂層17を貼り合せる。そして、リール状樹脂モールド12側から未硬化樹脂層17に光を照射して未硬化樹脂層17を光硬化することにより、リール状樹脂モールド12表面の微細凹凸構造が表面に転写された硬化樹脂層18を形成する。この結果、無機基板16及びこの無機基板16上に設けられ表面に微細凹凸構造を有する硬化樹脂層18を備えた樹脂鋳型15が得られる。この樹脂鋳型15の硬化樹脂層18は、無機基板16側の表面18A側から微細凹凸構造形成面18Bに向けてフッ素濃度が増大するフッ素濃度の濃度勾配を有する。
次に、リール状樹脂モールド12から樹脂鋳型15を剥離させて表面にリール状樹脂モールド12の微細凹凸構造が転写された樹脂鋳型15を得る。この樹脂鋳型15の微細凹凸構造は、リール状樹脂モールド12の微細凹凸構造が反転された形状を有する。
次に、図2Dに示すように、防塵膜材料層形成工程を実施する。この防塵膜材料層形成工程においては、樹脂鋳型15の硬化樹脂層18表面18Bの微細凹凸構造上に、未硬化状態の防塵膜材料を溶剤に溶解させ、塗布、乾燥して未硬化防塵膜材料層19を形成する。
次に、図2Dに示すように、防塵膜剥離工程を実施する。この防塵膜剥離工程においては、樹脂鋳型15及び未硬化防塵膜材料層19を加熱し、未硬化防塵膜材料層19を熱硬化する。そして、図2Eに示すように、未硬化防塵膜材料層19が十分に熱硬化して防塵膜20となってから、樹脂鋳型15から防塵膜20を剥離することにより防塵膜20が得られる。ここでは、樹脂鋳型15の硬化樹脂層18は、無機基板16側の表面18Aに対して微細凹凸構造側の表面18Bのフッ素濃度が相対的に高くなっているので、防塵膜20を樹脂鋳型15から容易に剥離できると共に、硬化樹脂層18が無機基板16から剥離することを防ぐことができる。
なお、上述した防塵膜の製造工程においては、図3Aから図3Cに示すように、防塵膜材料層形成工程と防塵膜剥離工程との間に、未硬化防塵膜材料層19上に反射防止膜21を積層する反射防止膜積層工程を実施してもよい。この反射防止膜積層工程においては、未硬化防塵膜材料層19上に反射防止膜材料を塗布、乾燥して反射防止膜21を設けた後、未硬化防塵膜材料層19及び反射防止膜21を熱硬化する。なお、未硬化防塵膜材料層19を熱硬化した後、反射防止膜材料を塗布、乾燥して反射防止膜21を設け、反射防止膜21を熱硬化してもよい。そして、未硬化防塵膜材料層19が十分に熱硬化して防塵膜20となってから、樹脂鋳型15から反射防止膜21及び防塵膜20を剥離することにより、微細凹凸構造形成面とは反対側の主面に反射防止膜21積層された防塵膜20を得ることができる。
なお、上述した実施の形態においては、樹脂鋳型15は、防塵膜剥離工程後、再び防塵膜材料層形成工程に用いることが可能である。また、樹脂鋳型15を用いて樹脂鋳型作製工程を実施することにより、樹脂鋳型15表面の微細凹凸構造が反転された形状、すなわち、リール状樹脂モールド12の微細凹凸構造に対応した微細凹凸構造を有する樹脂鋳型を作製することもできる。
次に、本実施の形態に係る防塵膜の製造方法における各工程で用いられる材料及び各工程の条件について詳細に説明する。
(A)モールド作製工程
(光透過性の基材)
基材11としては、紫外・可視光領域で使用する光源に対して実質的に光透過性を有する材料を主成分とするものであれば特に限定されないが、ハンドリング性、加工性に優れた樹脂材料であることが好ましい。また、基材11としては、樹脂材料を用いた透明シートを用いてもよい。
基材11に用いられる樹脂材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、トリアセチルセルロール(TAC)樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂などがあり、フィルム状やシート状であることが好ましい。基材21(透明シート)の表面には、光硬化性樹脂との密着性向上のため、プライマー処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理を施すことができる。
モールド作製工程においては、円筒状金型104と密着した状態で基材11上の未硬化樹脂層13に光を照射して光硬化させる。このため、使用する光硬化性樹脂にもよるが、基材11には、200nm〜500nmの範囲で良好な透過率が求められる。使用する光硬化性樹脂の感光性にもよるため、200nm〜500nmの範囲で具体的な透過率の値については特に限定しないが、365nm、405nm及び全光線透過率が良好であれば、光硬化性樹脂が十分に光硬化するため好ましい。また、波長200nm〜500nmの範囲における透過率が良好であれば、光硬化性樹脂の硬化に要する光照射エネルギーを低減でき、且つ、転写の迅速化を達成することができる。
(硬化樹脂層)
硬化樹脂層14は、光硬化性樹脂を含有する。光硬化性樹脂は、転写性、円筒状金型からの剥離性、基材11との密着性、粘度、製膜特性、感光性、硬化後の力学特性、樹脂鋳型15作製時の硬化樹脂層18との剥離性を考慮して選択する。
モールド作製工程に用いる硬化樹脂層14は、微細凹凸構造が形成された表面(以下、「微細凹凸構造形成面」ともいう)の表面部(以下、単に「表面部」ともいう)におけるフッ素元素濃度(Es)が、硬化樹脂層14中の平均フッ素元素濃度(Eb)より高いことが好ましい。この構成により、硬化樹脂層14における微細凹凸構造形成面側のフッ素元素濃度(Es)が、硬化樹脂層14中の平均フッ素元素濃度(Eb)に対して相対的に高くなるので、後工程である樹脂鋳型作製工程におけるリール状樹脂モールド12と樹脂鋳型15との離型性が向上する。
光硬化性樹脂としては、例えば、光重合開始剤により重合可能な各種アクリレート化合物及びメタクリレート化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、チオール化合物、シリコーン系化合物などを使用することができる。これらの中でも、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物、エポキシ化合物、シリコーン系化合物を用いることが好ましく、アクリレート化合物、メタクリレート化合物を用いることがより好ましい。これらの化合物は単独種類で用いてもよく、エポキシ化合物とアクリレート化合物との組合せなど、複数種類を組合せて用いてもよい。
アクリレート化合物及びメタクリレート化合物としては、(メタ)アクリル酸、フェノキシエチルアクリレート、及びベンジルアクリレートなどの芳香族系の(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタアエリスリトールトリアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの炭化水素系の(メタ)アクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリオキシエチレングリコールジアクリレート、及びトリプロピレングリコールジアクリレートなどのエーテル性酸素原子を含む炭化水素系の(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−ビニルピロリドン、及びジメチルアミノエチルメタクリレートなどの官能基を含む炭化水素系の(メタ)アクリレート、シリコーン系のアクリレートなどが挙げられる。
また、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物としては、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ECH変性フェノキシアクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、シリコーン系アクリレート化合物などが挙げられる。なお、EO変性とはエチレンオキシド変性をECH変性とはエピクロロヒドリン変性を、PO変性とはプロピレンオキシド変性を意味する。これらは1種又は2種以上の組合せで用いることができる。また、市販のナノインプリント用樹脂であるPAKシリーズ(東亞合成社製)、NIFシリーズ(AGC社製)、NIACシリーズ(ダイセル化学工業社製)などを使用することができる。これらの中でも、PAK−02、NIAC−702が樹脂シートへの塗布特性とパターン転写性から特に好ましい。
また、光硬化性樹脂としては、上記アクリレート化合物及びメタクリレート化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、シリコーン系化合物のうち、炭化水素中の水素がフッ素に置換されたフッ素含有化合物を用いることができる。フッ素含有化合物を用いることにより、硬化後の表面自由エネルギーが減少し、モールド作製工程における円筒状金型104からのリール状樹脂モールド12の離型性が向上する。これは、樹脂鋳型作製工程において、リール状樹脂モールド12と樹脂鋳型15とを貼合した後、離型する際にも同様の効果がある。
フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、ポリフルオロアルキレン鎖及び/又はペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖と、重合性基とを有することが好ましく、直鎖状ペルフルオロアルキレン基、又は炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されかつトリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基がさらに好ましい。また、トリフルオロメチル基を分子側鎖又は分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖及び/又は直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖が特に好ましい。
ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基が好ましい。また、ポリフルオロアルキレン基は、官能基を有していてもよい。
ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、(CF2CF2CF2O)単位及び(CF2O)単位からなる群から選ばれた1種以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位からなることが好ましく、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、又は(CF2CF2CF2O)単位からなることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、含フッ素重合体の物性(耐熱性、耐酸性など)が優れることから、(CF2CF2O)単位からなることが特に好ましい。ペルフルオロ(オキシアルキレン)単位の数は、含フッ素重合体の離型性と硬度が高いことから、2〜200の整数が好ましく、2〜50の整数がより好ましい。
重合性基としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ジオキタセン基、シアノ基、イソシアネート基又は式−(CH2)aSi(M1)3−b(M2)bで表される加水分解性シリル基が好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基がより好ましい。ここで、M1は加水分解反応により水酸基に変換される置換基である。このような置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基又はエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。M1としては、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。M2は、1価の炭化水素基である。M2としては、アルキル基、1以上のアリール基で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基などが挙げられ、アルキル基又はアルケニル基が好ましい。M2がアルキル基である場合、炭素数1〜炭素数4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。M2がアルケニル基である場合、炭素数2〜炭素数4のアルケニル基が好ましく、ビニル基又はアリル基がより好ましい。aは1〜3の整数であり、3が好ましい。bは0又は1〜3の整数であり、0が好ましい。加水分解性シリル基としては、(CH3O)3SiCH2−、(CH3CH2O)3SiCH2−、(CH3O)3Si(CH2)3−又は(CH3CH2O)3Si(CH2)3−が好ましい。
重合性基の数は、重合性に優れることから1〜4の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましい。2種以上の化合物を用いる場合、重合性基の平均数は1〜3が好ましい。
光硬化性樹脂としては、官能基を有するフッ素含有(メタ)アクリレートを用いることにより、硬化樹脂層14と基材11との密着性に優れる。官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、エステル結合を有する官能基、アミド結合を有する官能基、水酸基、アミノ基、シアノ基、ウレタン基、イソシアネート基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基などが挙げられる。特に、カルボキシル基、ウレタン基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基の少なくとも一つの官能基を含むことが好ましい。なお、イソシアヌル酸誘導体には、イソシアヌル酸骨格を有するもので、窒素原子に結合する少なくとも一つの水素原子が他の基で置換されている構造のものが包含される。フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、フルオロ(メタ)アクリレート、フルオロジエンなどを用いることができる。フッ素含有(メタ)アクリレートの具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
フルオロ(メタ)アクリレートとしては、CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)10F、CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)8F、CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)6F、CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)10F、CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)8F、CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)6F、CH2=CHCOOCH2(CF2)6F、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)6F、CH2=CHCOOCH2(CF2)7F、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)7F、CH2=CHCOOCH2CF2CF2H、CH2=CHCOOCH2(CF2CF2)2H、CH2=CHCOOCH2(CF2CF2)4H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2CF2)H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2CF2)2H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2CF2)4H、CH2=CHCOOCH2CF2OCF2CF2OCF3、CH2=CHCOOCH2CF2O(CF2CF2O)3CF3、CH2=C(CH3)COOCH2CF2OCF2CF2OCF3、CH2=C(CH3)COOCH2CF2O(CF2CF2O)3CF3、CH2=CHCOOCH2CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)3F、CH2=CHCOOCH2CF(CF3)O(CF2CF(CF3)O)2(CF2)3F、CH2=C(CH3)COOCH2CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)3F、CH2=C(CH3)COOCH2CF(CF3)O(CF2CF(CF3)O)2(CF2)3F、CH2=CFCOOCH2CH(OH)CH2(CF2)6CF(CF3)2、CH2=CFCOOCH2CH(CH2OH)CH2(CF2)6CF(CF3)2、CH2=CFCOOCH2CH(OH)CH2(CF2)10F、CH2=CFCOOCH2CH(OH)CH2(CF2)10F、CH2=CHCOOCH2CH2(CF2CF2)3CH2CH2OCOCH=CH2、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2CF2)3CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、CH2=CHCOOCH2CyFCH2OCOCH=CH2、CH2=C(CH3)COOCH2CyFCH2OCOC(CH3)=CH2などのフルオロ(メタ)アクリレートが挙げられる(但し、CyFはペルフルオロ(1,4−シクロへキシレン基)を示す。)。
フルオロジエンとしては、CF2=CFCF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF2CF=CF2、CF2=CFOCF(CF3)CF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF(CF3)CF=CF2、CF2=CFOCF2OCF=CF2、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF=CF2、CF2=CFCF2C(OH)(CF3)CH2CH=CH2、CF2=CFCF2C(OH)(CF3)CH=CH2、CF2=CFCF2C(CF3)(OCH2OCH3)CH2CH=CH2、CF2=CFCH2C(C(CF3)2OH)(CF3)CH2CH=CH2などのフルオロジエンが挙げられる。
また、上記フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、下記化学式(1)で示されるフッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート、及び/又は下記化学式(2)で示されるフッ素含有(メタ)アクリレートであることで、硬化樹脂層14の微細凹凸構造形成面の表面自由エネルギーをより低くできるので、硬化樹脂層14と基材11との間の密着性が向上する。また、硬化樹脂層14中の平均フッ素元素濃度(Eb)を減少させ硬化樹脂層14の強度を保つことができるため、繰り返し転写性がより向上するため好ましい。このようなウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイキン工業社製の「オプツールDAC」を用いることができる。
(化学式(1)中、R1は、下記化学式(3)を表し、R2は、下記化学式(4)を表す。)
化学式(2)
F(CF
2)
6CH
2CH
2OCOC(CH
3)=CH
2
(化学式(3)中、nは、1以上6以下の整数である。)
フッ素含有(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、耐摩耗性、耐傷付き、指紋付着防止、防汚性、レベリング性や撥水撥油性などの表面改質剤との併用もできる。例えば、ネオス社製「フタージェント」(例えば、Mシリーズ:フタージェント251、フタージェント215M、フタージェント250、FTX−245M、FTX−290M;Sシリーズ:FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTX−230S;Fシリーズ:FTX−209F、FTX−213F、フタージェント222F、FTX−233F、フタージェント245F;Gシリーズ:フタージェント208G、FTX−218G、FTX−230G、FTS−240G;オリゴマーシリーズ:フタージェント730FM、フタージェント730LM;フタージェントPシリーズ:フタージェント710FL、FTX−710HLなど)、DIC社製「メガファック」(例えば、F−114、F−410、F−493、F−494、F−443、F−444、F−445、F−470、F−471、F−474、F−475、F−477、F−479、F−480SF、F−482、F−483、F−489、F−172D、F−178K、F−178RM、MCF−350SFなど)、ダイキン社製「オプツール(登録商標)」(例えば、DSX、DAC、AES)、「エフトーン(登録商標)」(例えば、AT−100)、「ゼッフル(登録商標)」(例えば、GH−701)、「ユニダイン(登録商標)」、「ダイフリー(登録商標)」、「オプトエース(登録商標)」、住友スリーエム社製「ノベックEGC−1720」、フロロテクノロジー社製「フロロサーフ(登録商標)」などが挙げられる。
フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、重量平均分子量Mwが50〜50000であることが好ましく、相溶性の観点から重量平均分子量Mwが50〜5000であることが好ましく、重量平均分子量Mwが100〜5000であることがより好ましい。相溶性の低い高分子量を使用する際は希釈溶剤を使用しても良い。希釈溶剤としては、単一溶剤の沸点が40℃〜180℃の溶剤が好ましく、60℃〜180℃がより好ましく、60℃〜140℃がさらに好ましい。希釈剤は2種類以上使用もよい。
光硬化性樹脂としては、感光性を向上するため光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤などが挙げられる。光重合開始剤は、使用する光源波長及び基材(透明シート)、諸物性などを考慮し、選択することができる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、フェニルグリオキシル酸メチル、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1フェニルプロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシプロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウムなどが好ましい。また、これらは、単独種類で用いてもよく、複数種類を混合物として用いてもよい。市販されている開始剤の例としては、Ciba社製の「IRGACURE」(例えば、IRGACURE651、184、500、2959、127、754、907、369、379、379EG、819、1800、784、OXE01、OXE02)や「DAROCUR」(例えば、DAROCUR1173、MBF、TPO、4265)などが挙げられる。
光硬化性樹脂としては、光感度向上のため増感剤を含むものが好ましい。このような増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5−ビス(4’−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジメチルアミノベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、2−(4’−ジメチルアミノシンナミリデン)インダノン、2−(4’−ジメチルアミノベンジリデン)インダノン、2−(p−4’−ジメチルアミノビフェニル)ベンゾチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンジリデン)アセトン、1,3−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)アセトン、3,3’−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−アセチル−7−ジメチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンジロキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−メトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−p−トリルジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アニリン、4−モルホリノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、ベンズトリアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、1−シクロヘキシル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、1−(tert−−ブチル)−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2−p)チアゾール、2−(p−ジメチルアミノベンゾイル)スチレンなどが挙げられる。また、増感剤は、単独種類で用いてもよく、複数種類を混合物として用いてもよい。
光硬化性樹脂は、溶媒を添加して粘度を調整することができる。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アニソール、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが好ましい。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。これらの溶媒中でも、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン及びメチルエチルケトン、イソプロピルアルコールが好ましい。これらの溶媒は、光硬化性樹脂の塗布方法、塗布膜厚及び粘度に応じて、適宜添加することができ、限定されるものではないが、例えば光硬化性樹脂100重量部に対して溶媒を1重量部〜10000重量部添加することができる。
塗布装置103による基材11への光硬化性樹脂の塗布方法としては、公知の塗布コーター又は含浸塗布コーターを用いたコーティング法が挙げられる。具体的にはグラビアコーター、マイクログラビアコーター、ブレードコーター、ワイヤーバーコーター、エアーナイフコーター、ディップコーター、コンマナイフコーター、スプレーコーター、カーテンコーター、スピンコーター、ラミネーターなどを用いた塗布が挙げられる。これらの塗布方法は、必要に応じて1種の塗布方法を用いてもよく、2種以上の塗布方法を組合せて用いてもよい。また、これらの塗布方法は、枚葉方式で実施してもよく、連続方式で実施してもよい。生産性の観点から連続方式で塗布することが好ましい。また、ディップコーター、コンマナイフコーター、グラビアコーター又はラミネーターを使用した連続方式の塗布方法が特に好ましい。
硬化樹脂層14への光照射に用いる光源106としては、特に制限されるものではなく、用途及び設備に応じて種々の光源を用いることができる。光源106としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、無電極ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーランプ、LEDランプ、キセノンパルス紫外線ランプなどを用いることができる。また、光硬化性樹脂は、波長200nm〜500nmの紫外線又は可視光を露光量が100mJ/cm2〜2000mJ/cm2となるように照射することにより硬化することができる。また、酸素による光硬化反応の阻害を防止する観点から、光照射時には酸素濃度が低い状態で光を照射することが望ましい。
モールド作製工程においては、円筒状金型104と未硬化樹脂層13とを圧着する加圧手段105により、円筒状金型104と未硬化樹脂層13とが密着した状態で未硬化樹脂層13に光を照射して光硬化する。円筒状金型104の外周面の微細凹凸構造と未硬化樹脂層13とが密着した状態で、光を照射して転写することにより、円筒状金型104の外周面の微細凹凸構造を正確に転写できる。また、円筒状金型104の外周面の微細凹凸構造と未硬化樹脂層13とが密着した状態で転写することにより酸素による硬化不足を回避することができる。
また、モールド作製工程においては、窒素雰囲気下において、円筒状金型104と未硬化樹脂層13とを密着させて光照射を行うことが好ましい。これにより、未硬化樹脂層13の光硬化性樹脂への大気中の酸素の接触を避けることができ、酸素による光重合反応の阻害を低減できるので、硬化樹脂層14を十分に硬化させることができるため好ましい。
未硬化樹脂層13と円筒状金型104とを密着させて光を照射するためには、加圧手段105としてのニップロールにより未硬化樹脂層13と円筒状金型104とを直接圧着して光を照射してもよく、原反ロール101の巻き出し・巻取ロール102の巻き取り制御により基材11の張力を制御して未硬化樹脂層13と円筒状金型104とを圧着した状態で光を照射してもよい。これらの場合においては、未硬化樹脂層13の転写性により押し付け圧、張力は適宜調整することができる。
なお、上述した例においては、未硬化樹脂層13の形成に光硬化性樹脂を用いる例について説明したが、未硬化樹脂層13は、例えば、光硬化、熱硬化、電子線による硬化、及びマイクロウェーブなどにより硬化する各種硬化性樹脂を用いることができる。これらの中でも、光硬化性樹脂を用いることが好ましい。基材11に光硬化性樹脂を上記塗布方法により塗布した後、所定波長における任意の光量で光硬化性樹脂に光を照射することにより、光硬化性樹脂の硬化反応を促進することができる。なお、硬化性樹脂として光硬化性樹脂を用いない場合には、必ずしも光透過性の基材11を用いる必要はない。
なお、モールド作製工程においては、未硬化樹脂層13に微細凹凸構造を転写する金型としては、必ずしも円筒形状の金型を用いる必要はないが、連続生産性や歩留まりの観点から円筒状金型104を用いることが好ましい。また、継ぎ目のない円筒状金型104であればより好ましい。継ぎ目があった場合、継ぎ目部のパターンがない箇所を切り落とすため、歩留まりが悪化するだけでなく、切り落とす作業が余分に入るため連続生産性も悪化する。
また、円筒状金型104としては、外周面に防塵膜の表面に設ける微細凹凸構造の形状に応じた微細凹凸構造を有する円筒状金型104を用いる。円筒状金型104の微細凹凸構造は、レーザー切削法、電子線描画法、フォトリソグラフィー法、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法、干渉露光法、電鋳法、陽極酸化法などの加工方法により基材の外周面に直接形成することができる。これらの中でも、微細凹凸形状に継目のない円筒状金型104を得る観点から、フォトリソグラフィー法、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法、干渉露光法、電鋳法、陽極酸化法が好ましく、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法、干渉露光法、陽極酸化法がより好ましい。
また、円筒状金型104としては、上記加工方法で平板基板の表面に形成した微細凹凸構造を樹脂材料(フィルム)へ転写し、このフィルムを円筒状金型104の外周面に位置精度よく張り合わせたものを用いてもよい。また、上記加工方法で平板基板の表面に形成した微細凹凸構造を電鋳法によりニッケルなどの薄膜に転写し、この薄膜をローラーに巻き付けたものを用いてもよい。
円筒状金型104としては、微細凹凸構造の形成が容易であり、耐久性に優れたものを用いることが望ましい。このような観点から、円筒状金型104としては、ガラスロール、石英ガラスロール、ニッケル電鋳ロール、クロム電鋳ロール、アルミロール、又はSUSロール(ステンレス鋼ロール)などが好ましい。
ニッケル電鋳ロール及びクロム電鋳ロール用の母材としては、導電性を有する導電性材料を用いることができる。導電性材料としては、例えば、鉄、炭素鋼、クロム鋼、超硬合金、金型用鋼(例えば、マルエージング鋼など)、ステンレス鋼、アルミ合金などの材料が好適に用いられる。
円筒状金型104の表面には、離型処理を施すことが望ましい。離型処理を施すことにより、円筒状金型104の表面自由エネルギーを低下させることができるので、連続的に光硬化性樹脂へ転写した場合においても、良好な剥離性及び微細凹凸構造のパターン形状を保持することができる。離型処理には、市販の離型剤及び表面処理剤を用いることができる。市販の離型剤及び表面処理剤としては、例えば、オプツール(ダイキン化学工業社製)、デュラサーフ(ダイキン化学工業社製)、ノベックシリーズ(3M社製)などが挙げられる。また、離型剤、表面処理材としては、円筒状金型104の材料の種類、及び転写される光硬化性樹脂との組合せにより、適宜好適な離型剤、表面処理剤を選択することができる。
(B)樹脂鋳型作製工程
樹脂鋳型用の樹脂としては、モールド作製工程に用いた光硬化性樹脂を用いることができる。この光硬化性樹脂によって形成される硬化樹脂層18は、上述したように、微細凹凸構造が形成された表面18B(以下、「微細凹凸構造形成面18B」ともいう)の表面部(以下、単に「表面部」ともいう)におけるフッ素元素濃度(Es)が、硬化樹脂層18中の平均フッ素元素濃度(Eb)より高い濃度勾配を有する。
本実施の形態に係る防塵膜の製造方法においては、硬化樹脂層18の表面部におけるフッ素元素濃度(Es)硬化樹脂層18中の平均フッ素元素濃度(Eb)との比が下記式(1)を満たす。この構成により、硬化樹脂層18の微細凹凸構造形成面側の表面部におけるフッ素元素濃度(Es)が、硬化樹脂層18中の平均フッ素元素濃度(Eb)より十分高くなる。これにより、硬化樹脂層18の微細凹凸構造形成面の自由エネルギーが更に減少するので、硬化樹脂層18と防塵膜20との離型性が向上する。この結果、膜厚が薄く、かつ大面積の防塵膜20を製造する場合においても、防塵膜20の破れや破損及び防塵膜20の微細凹凸構造を破壊することなく硬化樹脂層18から防塵膜20を剥離できるので、異物が付着し難く、反射防止性能及び広い波長領域に亘って透過率に優れた防塵膜が得られる。そして、硬化樹脂層18中の平均フッ素元素濃度(Eb)が、硬化樹脂層18の表面部におけるフッ素元素濃度(Es)に対して相対的に低くなるので、硬化樹脂層18自体の強度が向上すると共に、硬化樹脂層18の無機基板16側の表面18Aでは、自由エネルギーを高く保つことができる。これにより、無機基板16と硬化樹脂層18との間の密着性、硬化樹脂層18からの防塵膜の離型性、及び繰り返し転写性がさらに向上する。これにより、硬化樹脂層18からの防塵膜20の離型性及び硬化樹脂層18と無機基板16との間の密着性がさらに向上する。
式(1)
20<Es/Eb≦200
硬化樹脂層18全体に大量にフッ素成分が導入される場合、表面フッ素元素濃度(Es)が偏析密度の観点からある一定の値で頭打ちとなり、且つ、平均フッ素元素濃度(Eb)が上昇していくため、Es/Ebの値は低下していく傾向がある。一方、硬化樹脂層18全体に極少量のフッ素成分が導入される場合には、フッ素成分の大部分は表面に偏析する。そのため、樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)が小さな値を示すことになり、Es/Ebの値が大きくなる傾向がある。しかし、これらの場合においても、上記式(1)を満たす範囲とすることにより、防塵膜を良好に離型できる剥離機能が得られる。
また、硬化樹脂層18の厚みは、無機基板16との密着性が担保できれば、特に問わない。硬化樹脂層18の厚みは、表面におけるミリスケールの大きなうねりの発生を防ぐ観点から、1mm以下が好ましい。
なお、硬化樹脂層18は、上記式(1)を満たす範囲であれば、フッ素濃度の濃度勾配はどのようなものであってもよい。例えば、濃度勾配は、硬化樹脂層18の無機基板16側の表面18Aから微細凹凸構造形成面18Bに向けて連続的に無段階に変化するものであってもよく、階段状に段階的に変化するものであってもよい。また、硬化樹脂層18の無機基板16側の表面18Aから微細凹凸構造形成面18Bへの厚み方向において、無機基板16側の表面18Aから硬化樹脂層18の中央部までの濃度勾配と、硬化樹脂層18の中央部から微細凹凸構造形成面18Bまでの濃度勾配とが同一であってもよく、異なる濃度勾配を有していてもよい。
また、硬化樹脂層18としては、上記式(1)の範囲内において、26≦Es/Eb≦189の範囲であれば、硬化樹脂層18の微細凹凸構造形成面の自由エネルギーがより低くなるので、繰り返し転写性が特に良好になるため好ましい。さらに、硬化樹脂層18は、上記式(1)の範囲内において、30≦Es/Eb≦160がより好ましく、31≦Es/Eb≦155であればさらに好ましく、46≦Es/Eb≦155であれば、上記効果をより一層発現できるため特に好ましい。
なお、本明細書中、「硬化樹脂層18の表面部」とは、硬化樹脂層18の微細凹凸構造の表面部のことを示し、硬化樹脂層18の表面に直交する厚み方向において、硬化樹脂層18の表面側から略1%〜略10%の範囲の部分又は2nm〜20nmの範囲の部分を意味する。また、「硬化樹脂層18の表面部」とは、硬化樹脂層18全体の平均フッ素濃度(Eb)に対して、相対的に平均フッ素濃度が高い特定領域が存在する範囲を含むものとする。このため、必ずしも硬化樹脂層18の微細凹凸構造形成面側の全体に亘って均一に平均フッ素濃度(Es)が高い特定領域が存在している必要はない。また、本発明においては、硬化樹脂層18の表面部のフッ素元素濃度(Es)は、走査型X線光電子分光分析法(XPS法)により求めた値を採用する。本発明においては、XPS法におけるX線の侵入長である数nmの深さにおける測定値をもってフッ素元素濃度(Es)としている。
また、本明細書中、「硬化樹脂層18中の平均フッ素元素濃度(Eb)」とは、仕込み量から計算した値、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)から解析した値、又はイオンクロマトグラフ分析から解析した値を採用する。すなわち、硬化樹脂層18全体に含まれるフッ素元素濃度を意味する。例えば、フィルム状に形成された光重合性混合物の硬化物から構成される樹脂モールドの、樹脂部分を物理的に剥離した切片を、フラスコ燃焼法にて分解し、続いてイオンクロマトグラフ分析にかけることで樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を同定することができる。
また、樹脂鋳型15としては、図4に示すように、無機基板16と硬化樹脂層18との間に無機基板16と硬化樹脂層18とを接着する接着層22を有するものであってもよい。この接着層22を設けることにより、無機基板16と硬化樹脂層18との間の密着性がさらに向上する。
樹脂鋳型15用の無機基板16の材料としては十分な平坦性が確保できる材質の物が好ましく、合成石英、溶融石英、無アルカリガラス、低アルカリガラス、ソーダライムガラス、シリコン、ニッケル版などが好ましい。これらを用いると高い精度での基板表面の平坦性を確保することができるため好ましい。また、無機基板16が後述する防塵膜乾燥時の温度ムラにより割れる恐れがあることを考慮して、無機基板16の熱膨張係数は小さいほど好ましい。特に、0℃〜300℃における線膨張係数が50×10−7m/℃以下であることが好ましい。無機基板16表面の凸形状又は凹形状は上述した凸構造と対応した形状を設けておけばよい。
無機基板16は、表面処理を施すことにより、硬化樹脂層18との間の密着性が向上する。表面処理としては、接着剤塗布、表面処理剤、シランカップリング剤、UVオゾン洗浄、プラズマ洗浄などを適時選択することができる。これら表面処理は、各々組み合わせて使用することもできる。特に好ましい表面処理は、シランカップリング剤、接着剤塗布である。
シランカップリング剤としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、エポキシ基、グリシジル基、アリル基、オキセタニル基などの官能基を含む、シランカップリング剤であると、好ましい。特に、(メタ)アクリル基・(メタ)アクリロイル基・(メタ)アクリロキシ基・エポキシ基・グリシジル基、オキセタン基のいずれかであると、無機基板16との接着性と、樹脂モールドとの接着性がより、良好になるため、好ましい。これらのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシランであるKBM−1003(信越シリコーン社製)、ビニルトリエトキシシランであるKBE−1003(信越シリコーン社製)、ビニルトリメトキシシランであるSZ−6300(東レダウコーニング社製)、ビニルトリアセトキシシランであるSZ−6075(東レダウコーニング社製)、ビニルトリメトキシシランであるTSL8310(GE東芝シリコーン社製)、ビニルトリエトキシシランであるTSL8311(GE東芝シリコーン社製)、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランであるKMB−502(信越シリコーン社製)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランであるKMB−503(信越シリコーン社製)、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランであるKME−502(信越シリコーン社製)、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランであるKBM−503(信越シリコーン社製)、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシランであるSZ−6030(GE東芝シリコーン社製)、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシランであるTSL8370(GE東芝シリコーン社製)、γ―メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランであるTSL8375(GE東芝シリコーン社製)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランであるKBM−5103(信越シリコーン社製)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランであるKBM−303(信越シリコーン社製)、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランであるKBM−402(信越シリコーン社製)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランであるKBM−403(信越シリコーン社製)、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランであるKBE−402(信越シリコーン社製)、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランであるKBE−403(信越シリコーン社製)、p-スチリルトリメトキシシランであるKBM−1403(信越シリコーン社製)など、が挙げられる。
用いるシランカップリング剤及び接着層22には、モールド作製工程に用いることができる光重合開始剤を含むことができる。光重合開始剤は、光によりラジカル反応又はイオン反応を引き起こすものである。用いる光重合開始剤としては、反応速度の観点から、ラジカル反応を引き起こす光重合開始剤が好ましい。
シランカップリング剤及び接着層22の膜厚は、単分子層から3μmであると、接着性が良好であり、単分子層から1μmであると、より好ましい。単分子層から500nmであると、接着層22の膜厚均質性もより良好になるため、好ましい。
接着層22としては、市販の各種接着剤を用いることができる。接着層22としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリレート系接着剤、メタクリレート系接着剤、イソシアネート系接着剤、シリコーン系接着剤などを用いることができる。また、これらの接着剤に光硬化性樹脂を合わせて用いてもよい。また、これらは単独で用いてもよく、複数種を用いてもよい。無機材料との密着性が良好である観点から、接着層22としては、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤を用いることが好ましい。
また、接着層22としては、強度向上などの機能性付与のために機能性微粒子を含むものを用いることができる。機能性微粒子としては、金属酸化物、金属微粒子、炭素系微粒子などが挙げられる。金属酸化物としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、アルミナ、酸化亜鉛、酸化錫などが挙げられる。炭素系微粒子としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレンが挙げられる。機能性微粒子の形状としては、球状、粒状、棒状、針状、中空状、ランダム形状などがあり、これらは、微粒子表面に対しシランカップリング剤などの表面修飾をされていてもよい。
樹脂鋳型作製工程においては、無機基板16の主面上に未硬化樹脂層17を形成し、形成した未硬化樹脂層17の表面にリール状樹脂モールド12の微細凹凸構造を転写し、微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層18から樹脂モールドを離型する。
未硬化樹脂層17は、無機基板16上にスピンコートやバーコートなどにより、上述した光重合性樹脂などを塗布して成膜する。未硬化樹脂層17は、例えば、ディップ法、キャスト法、スピンコート法、バーコーティング法、ダイコーティング法などにより成膜できる。
未硬化樹脂層17を成膜する際には、必要に応じて、無機基板16にオゾン処理や酸素アッシング処理や、ピラニア溶液、KOH溶液、若しくはピラニア溶液又はKOH溶液と超音波処理とを組み合わせた処理などにより、表面処理を行ってもよい。このような表面処理により、無機基板16表面が活性化し、硬化樹脂層18と無機基板16との密着性が向上する。
未硬化樹脂層17に微細凹凸構造を転写する際には、未硬化樹脂層17の表面とリール状樹脂モールド12の微細凹凸構造形成面とが対向するようにリール状樹脂モールド12を未硬化樹脂層17に貼り合せて、リール状樹脂モールド12/未硬化樹脂層13/無機基板16の積層体とする。そして、UV照射又は加熱により未硬化樹脂層17を硬化させて硬化樹脂層18とすることによりリール状樹脂モールド12の微細凹凸構造を硬化樹脂層18の表面に転写する。リール状樹脂モールド12としては、フッ素含有樹脂から構成されるリール状樹脂モールド12であれば特に限定されないが、より好ましくは、硬化樹脂層18と同様に光重合性混合物を含有するものであることが好ましい。
未硬化樹脂層17に微細凹凸構造を転写する際には、リール状樹脂モールド12の微細凹凸構造形成面を未硬化樹脂層17の表面に押圧した状態、又は押圧した後に圧力を開放した状態で、UV照射又は加熱を行うことにより、転写精度、及び硬化樹脂層18の膜厚精度が向上するため好ましい。リール状樹脂モールド12を未硬化樹脂層17に押圧する際のプレス圧力としては、0MPa超〜10MPaが好ましく、0.01MPa〜5MPaがより好ましく、0.01MPa〜1MPaがさらに好ましい。
また、未硬化樹脂層17に微細凹凸構造を転写する際にUV照射を行う場合には、UV照射後に加熱処理を施すことが好ましい。この加熱処理を施すことにより、未硬化樹脂層17を構成する光重合性混合物中の未反応基を減少させることができ、離型が容易になる。加熱処理の温度としては、50℃〜120℃が好ましく、50℃〜105℃がより好ましく、60℃〜105℃がさらに好ましい。加熱処理の加熱時間としては、15秒〜10分が好ましく、15秒〜5分がより好ましく、30秒〜5分がさらに好ましい。
樹脂鋳型15を離型する際には、積層体の硬化樹脂層18からリール状樹脂モールド12を剥離する。樹脂鋳型15を剥離する際には、リール状樹脂モールド12の剥離後に加熱処理を行ってもよい。この加熱処理により、硬化樹脂層18を構成する光重合性混合物中の未反応基の反応が促進されるので、硬化樹脂層18からのリール状樹脂モールド12の離型性が向上する。さらに、加熱処理により、加熱温度において安定な樹脂鋳型を得ることができるので、樹脂鋳型15から転写材へ転写する際に、樹脂鋳型15から転写材への樹脂材料の浸透が抑制され、樹脂鋳型15の離型性が向上する。
加熱処理の温度としては、50℃〜250℃が好ましく、105℃〜200℃がより好ましい。加熱処理の加熱時間としては、30秒〜60分が好ましく、5分〜60分がより好ましく、10分〜30分がさらに好ましい。
なお、無機基板16と硬化樹脂層18との間に接着層22を有する樹脂鋳型15を製造する場合には、未硬化樹脂層17を形成する前に接着層22を塗布などにより形成する。接着層22として、例えば、シランカップリング剤を使用する場合、シランカップリング剤、又はシランカップリング剤と光重合開始剤との混合物を溶剤で希釈してから、必要に応じ、溶液のpHを低下させた状態で加水分解反応を促進させ、無機基板16上に溶液を塗布する。そして、溶剤を揮発させて接着層を形成する。接着層22の成膜方法としては、ディップ、キャスト、スピンコート、バーコート、ダイコート法などが挙げられる。溶剤を揮発させる際の温度としては、20℃〜200℃が好ましく、60℃〜180℃がさらに好ましい。また、接着層22は、シランカップリング剤の蒸気に無機基板16を晒し、単分子膜を形成することによって形成してもよい。
なお、上述した実施の形態においては、無機基板16上に未硬化樹脂層17を塗布により形成して樹脂鋳型15を作製する例について説明したが、樹脂鋳型15は、フィルム基材上に未硬化樹脂層を形成したリール状樹脂モールドを無機基板に貼り合せて製造することもできる。この場合、リール状樹脂モールドのフィルム基材としては、樹脂鋳型を使用する環境耐性を基準に選定すればよい。例えば、高沸点溶剤を揮発させる過程を経る用途においては、フィルム基材として、PC(ポリカーボネート)、PI(ポリイミド)、PES(ポリエーテルサルホン)やPEN(ポリエチレンナフタレート)などが挙げられる。
樹脂鋳型15は、防塵膜用途だけでなくナノインプリント用途において様々に用いられる。樹脂鋳型15は、例えば、マイクロレンズアレーやワイヤグリッド型偏光素子、モスアイ型無反射膜や回折格子、フォトニック結晶素子などの光デバイスや、パターンドメディアなどのナノインプリント用途として製造する際に用いられる。他にも、細胞培養シートや脂肪培養チップ、バイオセンサー電極などのバイオデバイスへの製造に用いることができる。その他にも、各種電池やキャパシタの電極や、マイクロ・ナノ流路、放熱面、断熱面などの製造へと応用できる。
(C)防塵膜材料層形成工程
防塵膜20の材料としては、特に制限はない。防塵膜20の材料は、防塵膜20が使用される露光波長において光透過率の高いものが好ましく、例えば、セルロース誘導体(ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなど、又はこれら2種以上の混合物)、シクロオレフィン樹脂(ノルボルネンの重合体又は共重合体(水素添加したものを含む)であり、例えば、アペル(登録商標)(三井化学社製)、トパス(登録商標)(ポリプラスチックス社製)、ゼオネックス(登録商標)又はゼオノア(登録商標)(日本ゼオン社製)、アートン(登録商標)(JSR社製)など)、フッ素系樹脂(テトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン)の3元コポリマー、パーフルオロアルキルエーテル環構造を有するフッ素系樹脂であるデュ・ポン社製のテフロンAF(登録商標)、旭硝子社製のサイトップ(商品名)、アウジモント社製のアルゴフロン(商品名)など)などの樹脂の使用が考えられる。上記樹脂の中でも特に、パーフルオロアルキルエーテル環構造を有するフッ素系樹脂、セルロースアセテートプロピオネート又はシクロオレフィン樹脂を反射防止膜材料及び凸構造に用いる材料(防塵膜)の主成分として使用すると、防塵膜20及び凹凸構造の形成性が良く特に好ましい。主成分とは、防塵膜材料中に含まれる目的とする樹脂成分の量が50重量%以上であることを意味する。
反射防止膜21の材料は、防塵膜材料と同じものを用いてもよく、材料としてもよく、異なる材料、つまり、反射防止膜21上に反射防止膜21とは異なる材料で形成された凹凸構造を有する凹凸構造層(防塵膜材料)を設けた構造としてもよい。反射防止膜21の材料としては、例えば、上述した防塵膜材料の他、パーフルオロトリブチルアミンなどを用いることができる。また、反射防止膜21の材料としては、製造の簡便性の観点から反射防止膜の膜材料と凹凸構造層の材料は同一とすることが好ましい。反射防止膜21上に凹凸構造層を有する防塵膜20は、上凸構造を有する樹脂鋳型15上に防塵膜材料を所定の膜厚になるように塗布することで作製することができる。
防塵膜20の作製には、防塵膜材料を有機溶媒に溶解させたポリマー溶液を使用することが好ましい。溶媒に関しては、周囲温度での揮発が極めて少なく、且つ、沸点が高すぎないものが好ましい。以上を考慮して溶媒としては、沸点が100〜200℃のものであることが望ましい。
このような溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素系化合物、芳香族系化合物、塩素系炭化水素などのハロゲン化系炭化水素、エステル系化合物、又はケトン系化合物などが挙げられる。これら中でも、シクロオレフィン系樹脂に対しては脂環式炭化水素などの飽和脂肪族炭化水素系化合物、芳香族系化合物、ハロゲン化炭化水素などの有機溶媒が好適に使用でき、セルロース誘導体に関しては塩素系炭化水素、ケトン、エステル、アルコキシアルコール、ベンゼン、アルコールなどの単一又は混合有機溶媒に可溶である。これらの有機溶媒の例としては、塩素系炭化水素やエステル系化合物、ケトン系化合物などの有機溶媒が挙げられる。塩素系炭化水素としては、塩化メチレン、塩化エチレン、塩化プロピレンなどが好適に使用され、ケトン系化合物有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが好適に使用される。エステル系化合物有機溶媒としては、酢酸エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、乳酸エステル類(乳酸エチル、乳酸ブチルなど)が好適に使用される。そのほかとしてはベンゼン、エタノール、メタノール、セルソルブアセテート、カルビトールなども単一又は混合溶媒として利用できる。防塵膜材料を溶解させたポリマー溶液は、防塵膜の光透過率を大きく、かつ防塵膜中の異物を少なくするため、吸光度が0.05以下のものが好ましい。
防塵膜の成膜方法及び凹凸構造の作製方法に関しては、スピンコート法、ロールコート法、ナイフコート法、キャスト法など、特に限定は無いが、均一性や異物の管理の点から、スピンコート法が好ましい。以下、スピンコート法による製膜方法について説明する。
防塵膜20の膜厚と膜の平坦性は、主にポリマー溶液の液温、周囲温度・湿度、樹脂鋳型の回転数によって決定される。ポリマー溶液の液温は周囲温度(10〜30℃)と同程度にすることが好ましく、樹脂鋳型15の温度も周囲温度と同程度にすることが好ましい。液温、周囲温度、樹脂鋳型15の温度が同程度であると膜厚ムラを抑えることができ、好ましい。湿度は30%〜60%が好ましい。ポリマー溶液を樹脂鋳型15上に適量滴下させた後、50〜5000回転の回転数で樹脂鋳型15を回転させ成膜する。
防塵膜20の膜厚は、0.2μm〜10μm程度が好適であり、防塵膜20の強度や均一な膜の作り易さから、1μm〜8μmが好ましい。防塵膜20の膜厚は、凹凸構造が防塵膜20の一方の面のみに設けられている場合は、凹凸構造の凸部頂点から凹凸構造形成面の反対面までの距離を指し、凹凸構造が防塵膜20の両面に設けられている場合は、一方の面の凹凸構造の凸部頂点から他方の面の凹凸構造の凸部頂点までの距離のうち、最も短い距離のものを指す。
ポリマー溶液を樹脂鋳型15上に塗布した後、溶媒を除去するため、加熱処理を行うことができる。加温処理の温度としては、60℃〜105℃が好ましく、70℃〜90℃がさらに好ましい。加温処理後、更に別の温度で加熱処理を行ってもよい。加温処理の時間としては、1分〜10分が好ましく、3分〜7分がさらに好ましい。加熱処理の温度としては、150℃〜200℃が好ましく、170℃〜190℃がさらに好ましい。加熱処理の時間としては、1分〜10分が好ましく、3分〜7分がさらに好ましい。
(D)防塵膜剥離工程
塗布後、熱したオーブン中又はホットプレート上に樹脂鋳型15を置いて乾燥させて、溶媒を揮発させる。膜の乾燥後、樹脂鋳型15から膜を剥離する。このとき、膜に応力がかかるので、防塵膜20及び反射防止膜21には伸展性があるのが好ましい。また、剥離した防塵膜20の平坦面と同様に作製された防塵膜20の平坦面とを2枚張り合わせることができる。両面に微細凹凸構造が形成されていることによって、優れた透過率を有し、且つ透過率の入射角依存性が少ない防塵膜20を製造することができる。
防塵膜20表面の微細凹凸構造を設計する場合、透過率の向上と、入射角依存性の低減を行う場合では、光源から照射される光の、波長分布を全て考慮し、ピッチや高さといった構造を決定する必要がある。特に、光学性能をより発揮するために、光源から照射される光のうち、最も短波長の光を基準とし、凹凸構造を設計することが好ましい。以下、光源から照射される光のうち、もっとも短い波長のことを、基準波長と呼ぶ。例えば、i線であれば、365nm±10nmの波長分布を有すことから、基準波長は355nmとなり、基準波長に基づいて設計することが好ましい。g線であれば、436nm±5nmの波長分布を有すことから、基準波長は431nmとなり、基準波長を中心に設計することが好ましい。凹凸構造の隣接する凸部(又は凹部)間の距離であるピッチは、基準波長に対し、0.7倍以下であると、上述した、透過率の向上と、入射角依存性の低下を実現できるため好ましい。ピッチの下限値は50nmであると、防塵膜の剥離性が良好であり、生産性を維持できるため好ましい。凸部高さは、アスペクト比(防塵膜20の表面内における凸部頂部の長さ/凸部底部の長さ)が2以下であると、防塵膜の剥離性が良好であるため好ましい。下限値は30nm以上であると、上記光学性能を発現できるため、好ましい。また、上記光学性能をより発揮するため、充填率(凹凸構造の占有面積)が、70%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
防塵膜20を液晶用防塵膜として用いる場合、光源から照射される光は可視光領域(300nm〜800nm)にピークトップを持つため、液晶用防塵膜においては、この波長領域で優れた透過率を有することが求められる。可視光領域において反射率を抑え透過率を上げたい場合、好ましい凸部同士の隣接距離は150nm以上500nm以下、より好ましくは150nm以上200nm以下であり、好ましい凸部の高さは1nm以上5000nm以下、より好ましくは100nm以上500nm以下である。これらの凸部形状の充填構造に関しては、六方細密充填、正方格子、ランダムであっても構わない。
防塵膜20をArF用防塵膜として用いる場合、光源から照射される光は193nmにピークトップを持つため、ArF用防塵膜においては、この波長で優れた透過率を有することと透過率の入射角依存性が小さいことが求められる。193nmにおいて反射率を抑え透過率を上げたい場合、好ましい凸部同士の隣接距離は10nm以上500nm以下、より好ましくは50nm以上200nm以下であり、好ましい凸部の高さは1nm以上1000nm以下、より好ましくは50nm以上500nm以下である。さらに、表面微細凹凸形状は、反射防止機能や優れた透過特性を付与できるだけでなく、異物付着抑制効果も向上する。
防塵膜20の微細凹凸構造は、円錐形状、角錐形状、若しくは楕円錘形状の凸部を複数含むピラー形状、又は円錐形状、角錐形状、若しくは楕円錘形状の凹部を複数含むホール形状であり、隣接する凸部同士の距離が、1nm以上1000nm以下であり、凸部の高さが、1nm以上1000nm以下であることが好ましい。この構成により、入射角依存性が小さく、広い波長領域で優れた透過率を得ることができる。
(E)反射防止膜積層工程
反射防止膜21は、防塵膜20の凹凸構造形成面に設けてもよく、防塵膜20の微細凹凸構造を設けた面とは反対側の面に設けても良い。反射防止膜21は一層でもよく、多層でもよい。反射防止膜21の材料としては、テトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレンの3元コポリマー、パーフルオロアルキルエーテル環構造を有するフッ素系樹脂(特に、デュ・ポン社製のテフロンAF(登録商標)、旭硝子社製のサイトップ(商品名)、アウジモント社製のアルゴフロン(商品名)、ポリフルオロアクリレートが好ましい。)や、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化バリウムなど屈折率の低い材料を好適に使用することができる。反射防止層の作製方法は、スピンコート法、ロールコート法、ナイフコート法、キャスト法、蒸着法、スパッタリング法など、特に限定は無いが、均一性や異物の管理の点から、スピンコート法が好ましい。
以上説明したように、本実施の形態に係る防塵膜の製造方法においては、円筒状金型104の外周面に設けられた微細凹凸構造が、硬化樹脂層13の表面に連続的に転写されたリール状樹脂モールド12を用いて樹脂鋳型15を作製するので、樹脂鋳型15の作製に露光干渉法や電子線描画法を用いる必要がない。これにより、防塵膜20の製造に用いる大面積の樹脂鋳型15を容易に作製できるので、大面積の防塵膜20を高い生産性で作製することができる。特に、メーター角のような大面積の微細凹凸構造が賦型された防塵膜20を作製できるので、半導体用だけでなく、液晶ディスプレイ用の防塵膜として利用できる。
また、上記実施の形態に係る防塵膜の製造方法においては、樹脂鋳型は、微細凹凸構造面側の表面部におけるフッ素元素濃度(Es)と当該樹脂層中の平均フッ素濃度(Eb)とが上記式(1)を満たすことから、樹脂鋳型の一方の面側から他方の面側に向けて濃度勾配が形成される。この濃度勾配により微細凹凸構造側の表面部におけるフッ素濃度が樹脂中の平均フッ素濃度(Eb)に対して相対的に高くなるので、樹脂鋳型から微細凹凸構造側の表面上に設けられる防塵膜の剥離が容易となる。これにより、微細凹凸構造を有する防塵膜を大面積に亘って設けた場合においても、微細凹凸構造を破損することなく樹脂鋳型から防塵膜を剥離することが可能となる。この結果、異物が付着し難く、反射防止性能及び広い波長領域に亘って透過率に優れると共に、大面積化が可能な防塵膜が得られる生産性が高い防塵膜の製造方法を実現できる。
<実施例1>
(A)モールド作製工程
円筒状金型の基材として石英ガラスロールを用いた。この石英ガラスロールの外周面に半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法により、微細凹凸構造を石英ガラスロールの外周面に形成した。微細凹凸構造を形成した石英ガラスロールの外周面に対し、OPTOOL HD−1100Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置、固定化した。その後、OPTOOL HD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、離型処理を実施した。
基材(透明シート)としては、PETフィルム:A4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)を用いた。光硬化性樹脂としては、OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)とトリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)及びIrgacure 184(Ciba社製)を重量部で15:100:5.5の割合で混合し光硬化性樹脂を調合したものを用いた。この光硬化性樹脂をマイクログラビアコーティング(康井精機社製)により、塗布膜厚6μmになるように基材表面(PETフィルムの易接着面)に塗布した。
次いで、円筒状金型に対し、光硬化性樹脂が塗布された基材(PETフィルム)をニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度20℃、湿度50%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cm2となるように、UV露光装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製、Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に微細凹凸構造が転写されたリール状の樹脂モールド(長さ200m、幅300mm)を得た。リール状樹脂モールドの表面微細凹凸の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、凸部同士の隣接距離は250nmであり、凸部高さは250nmであった。
(B)樹脂鋳型作製工程
無機基板としては、8インチのシリコンウェハを使用した。シリコンウェハは使用前に、オゾン処理を15分行った。
・樹脂鋳型1
樹脂モールドを作製した樹脂と同様の樹脂に対し、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶剤を3倍添加した溶液を準備した。この溶液を、シリコンウェハ上に、スピンコートし、その後室温下で3分静置し、続いて、105℃で1分間加温した(積層体1)。
積層体1に対し、樹脂モールドを貼合し、その後、両面をゴムで挟んだ状態で、加圧した。加圧は0.05MPaで10分間行った。加圧後、UV光を、樹脂モールド側から照射し、続いて105℃で30秒加温した。加温後、樹脂モールドを剥離し、樹脂鋳型を得た。樹脂鋳型は180℃で30分間加熱し、安定化させた。得られた樹脂鋳型の表面微細凹凸の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、凹部同士の隣接距離は250nm、凹部高さは250nmであった。
・樹脂鋳型2
3APTMS(3アクリロキシプロピルトリメトキシシラン 信越化学社製 KBM5103)100質量部に対し、I.184(Irgacure 184 Ciba社製)を5質量部添加し、15分間室温下にて攪拌した。続いて、メチルエチルケトン溶剤で10倍に希釈し、オゾン処理を施したシリコンウェハ上にスピンコート法にて製膜した。製膜後、室温にて3分間静置し、その後、105℃で10分間加温した(積層体1)。
続いて、樹脂モールドを作製した樹脂と同様の樹脂に対し、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶剤を3倍添加した溶液を準備した。この溶液を、積層体1の製膜面に対し、スピンコートし、その後室温下で3分静置し、続いて、105℃で1分間加温した(積層体2)。
積層体2に対し、樹脂モールドを貼合し、その後、両面をゴムで挟んだ状態で、加圧した。加圧は0.05MPで10分間行った。加圧後、UV光を、樹脂モールド側から照射し、続いて105℃で30秒加温した。加温後、樹脂モールドを剥離し、樹脂鋳型を得た。樹脂鋳型は180℃で30分間加熱し、安定化させた。得られた樹脂鋳型の表面微細凹凸の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、凹部同士の隣接距離は250nm、凹部高さは250nmであった。それぞれの樹脂鋳型表面に対し、XPS解析を行い、Es値を導出し、Eb値は仕込み量から導出した。得られた樹脂鋳型表面のEs/Eb値は、樹脂鋳型1が38、樹脂鋳型2が37であった。
(C)防塵膜層形成工程
セルロースアセテートプロピオネート(CAP 480−20、Eastman Chemical Company製、降伏歪み約4%、引張伸度約15%)を乳酸エチルに溶かしたポリマー溶液を作製した。この溶液を、それぞれの樹脂鋳型の微細凹凸構造面上に、キャストし、スピンコートにより引き伸ばし製膜した。80℃、180℃のホットプレートで各5分間乾燥することによって、樹脂鋳型上に防塵膜層を形成した。
(D)防塵膜材料層剥離工程
続いて、80度で5分間乾燥し、その後、180℃で5分間乾燥した。室温に戻した後に、粘着剤のついた枠を押し当て、引き離すことで、防塵膜を剥離した。防塵膜表面を原子間力顕微鏡で観察したところ、凸部同士の隣接距離は250nm、凸部高さは250nmであった。得られた防塵膜の透過率(365nm、436nm)、膜厚、面積を下記表1に示す。
<実施例2>
(A)モールド作製工程
円筒状金型の基材としては、石英ガラスロールを用いた。この石英ガラスロールの外周面に半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法により、微細凹凸構造を石英ガラス表面に形成した。微細凹凸構造を形成した石英ガラスロール表面に対し、OPTOOL HD−1100Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置、固定化した。その後、OPTOOL HD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、離型処理を実施した。
基材(透明シート)としては、PETフィルム:A4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)を用いた。光硬化性樹脂としては、OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)とトリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)及びIrgacure 184(Ciba社製)を重量部で15:100:5.5の割合で混合し光硬化性樹脂を調合したものを用いた。この光硬化性樹脂をマイクログラビアコーティング(康井精機社製)により、塗布膜厚6μmになるように基材表面(PETフィルムの易接着面)に塗布した。
次いで、円筒状金型に対し、光硬化性樹脂が塗布された基材(PETフィルム)をニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度20℃、湿度50%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cm2となるように、UV露光装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製、Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に微細凹凸構造が転写されたリール状の樹脂モールド(長さ200m、幅300mm)を得た。リール状樹脂モールドの表面微細凹凸の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、凸部同士の隣接距離は250nm、凸部高さは250nmであった。
(B)樹脂鋳型作製工程
無機基板としては、8インチのシリコンウェハを使用した。シリコンウェハは使用前に、オゾン処理を15分行った。
・樹脂鋳型1
樹脂モールドを作製した樹脂と同様の樹脂に対し、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶剤を3倍添加した溶液を準備した。この溶液を、シリコンウェハ上に、スピンコートし、その後室温下で3分静置し、続いて、105℃で1分間加温した(積層体1)。
積層体1に対し、樹脂モールドを貼合し、その後、両面をゴムで挟んだ状態で、加圧した。加圧は0.05MPで10分間行った。加圧後、UV光を、樹脂モールド側から照射し、続いて105℃で30秒加温した。加温後、樹脂モールドを剥離し、樹脂鋳型を得た。樹脂鋳型は180℃で30分間加熱し、安定化させた。得られた樹脂鋳型の表面微細凹凸の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、凹部同士の隣接距離は250nm、凹部高さは250nmであった。
・樹脂鋳型2
3APTMS(3アクリロキシプロピルトリメトキシシラン 信越化学社製 KBM5103)100質量部に対し、I.184(Irgacure 184 Ciba社製)を5質量部添加し、15分間室温下にて攪拌した。続いて、メチルエチルケトン溶剤で10倍に希釈し、オゾン処理を施したシリコンウェハ上にスピンコート法にて製膜した。製膜後、室温にて3分間静置し、その後、105℃で10分間加温した(積層体1)。
続いて、樹脂モールドを作製した樹脂と同様の樹脂に対し、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶剤を3倍添加した溶液を準備した。この溶液を、積層体1の製膜面に対し、スピンコートし、その後室温下で3分静置し、続いて、105℃で1分間加温した(積層体2)。
積層体2に対し、樹脂モールドを貼合し、その後、両面をゴムで挟んだ状態で、加圧した。加圧は0.05MPで10分間行った。加圧後、UV光を、樹脂モールド側から照射し、続いて105℃で30秒加温した。加温後、樹脂モールドを剥離し、樹脂鋳型を得た。樹脂鋳型は180℃で30分間加熱し、安定化させた。得られた樹脂鋳型の表面微細凹凸の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、凹部同士の隣接距離は250nm、凹部高さは250nmであった。それぞれの樹脂鋳型表面に対し、XPS解析を行い、Es値を導出し、Eb値は仕込み量から導出した。得られた樹脂鋳型表面のEs/Eb値は、樹脂鋳型1が38、樹脂鋳型2が37であった。
(C)防塵膜層形成工程
セルロースアセテートプロピオネート(CAP 480−20、Eastman Chemical Company製、降伏歪み約4%、引張伸度約15%)を乳酸エチルに溶かしたポリマー溶液を作製した。この溶液を、それぞれの樹脂鋳型の微細凹凸構造面上に、キャストし、スピンコートにより引き伸ばし製膜した。80℃、180℃のホットプレートで各5分間乾燥することによって、樹脂鋳型上に防塵膜層を形成した。
(E)反射防止膜積層工程
さらにそれぞれの上記樹脂鋳型上の防塵膜層上に、CYTOP CTX−809SP2(旭硝子社製)を溶剤で2.0%になるように、パーフルオロトリブチルアミン(フロリナートFC−43 住友スリーエム社製)で希釈した溶液を、キャストし、スピンコートにより引き伸ばし製膜した。
(D)防塵膜材料層剥離工程
続いて、80度で5分間乾燥し、その後、180℃で5分間乾燥した。室温に戻した後に、粘着剤のついた枠を押し当て、引き離すことで、防塵膜を剥離した。剥離した防塵膜のセルロースアセテートプロピオネート(防塵膜側)表面を原子間力顕微鏡で観察したところ、凸部同士の隣接距離は250nm、凸部高さは250nmであった。得られた反射防止膜付き防塵膜の透過率(365nm、436nm)、膜厚、面積を下記表1に示す。
(比較例)
(B)樹脂鋳型作製工程
無機基板としては、8インチのシリコンウェハ(シリコン基板)を使用した。このシリコン基板を鋳型として用いた。
(C)防塵膜層形成工程
セルロースアセテートプロピオネート(CAP 480−20、Eastman Chemical Company製、降伏歪み約4%、引張伸度約15%)を乳酸エチルに溶かしたポリマー溶液を作製した。この溶液を、シリコン基板上に、キャストし、スピンコートにより引き伸ばし製膜した。80℃、180℃のホットプレートで各5分間乾燥することによって、シリコン基板上に防塵膜層を形成した。
(D)防塵膜材料層剥離工程
続いて、80度で5分間乾燥し、その後、180℃で5分間乾燥した。室温に戻した後に、粘着剤のついた枠を押し当て、引き離すことで、防塵膜を剥離した。得られた防塵膜の透過率(365nm、436nm)、膜厚、面積を下記表1に示す。
表1から分かるように、20≦Es/Eb≦200を満たす樹脂鋳型を用いた実施例1及び実施例2においては、透過率に優れた大面積の防塵膜が得られることが分かる。この結果は、樹脂鋳型のフッ素元素濃度(Es/Eb)が所定範囲内となることにより、樹脂鋳型中にフッ素元素濃度の濃度勾配が生じ、この濃度勾配によって樹脂鋳型1及び樹脂鋳型2からの防塵膜の剥離性が向上したためと考えられる。また、実施例2から分かるように、防塵膜に反射防止膜を積層することにより、特に、透過率に優れた防塵膜が得られることが分かる。これに対して、フッ素元素濃度(Es/Eb)が所定範囲外となるシリコンを鋳型として用いた比較例においては、防塵膜の透過率が低下することが分かる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。