以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法について説明する。本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法は、ロール・ツー・ロール法を用いる。また、金型としては、フィルム状モールドを用いる。以下では、金型としてのフィルム状モールドを、第1のフィルム状モールド、第1のフィルム状モールドから複製されるフィルム状モールドを第2のフィルム状モールドとして説明する。
第1のフィルム状モールドは、円筒状金型を原版として使用した、ロール・ツー・ロール法により製造できる。まず、第1のフィルム状モールドのためのフィルム状基材(以下、モールド基材と言う)の表面に光硬化性樹脂を塗布して光硬化性樹脂層を形成する。未硬化の光硬化性樹脂層に対して円筒状金型の周面上に設けられた微細凹凸構造を密着させ、その後、光硬化性樹脂層を光硬化させて、表面に微細凹凸構造が転写された樹脂硬化物層を形成する。
ここで、「フィルム状」とは、長さや幅に対して極めて膜厚が薄く、可撓性でありロール状にできる性質を有するものである。
また「微細凹凸構造」とは、表面に多数の微細凸部、或いは多数の微細凹部、又は多数の微細凸部及び微細凹部が形成された表面構造であり、凹凸の大きさを限定するものではないが、凸部間の平均ピッチ或いは凹部間の平均ピッチが数十ミクロンメートル程度以下の微細構造に好ましく適用される。平均ピッチの下限値については概ね数十ナノメートルであるが、さらに小さいピッチを実現できる場合にも適用できる。微細凹凸構造はナノサイズのピッチを備えるものであることが好ましい。「ナノサイズ」とは、1000nm程度以下を指す。またこのスケールは、ピッチ以外(微細構造体一つの大きさ、径、深さなど)であっても構わない。また、ランダムな構造も微細構造体の一つとすることができる。
また微細凹凸構造は、矩形状、円錐形状、角錐形状若しくは楕円錘形状の凸部を複数含むピラー形状、又は、円錐形状、角錐形状若しくは楕円錘形状の凹部を複数含むホール形状、長穴状、或いはラインアンドスペース形状等にできる。ここで、「ピラー形状」とは、「柱状体(錐状態)が複数配置された形状」であり、「ホール形状」とは、「柱状(錐状)の穴が複数形成された形状」である。
図1は、本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法に用いる第1のフィルム状モールドの断面概略図及び平面概略図である。図1Aに断面概略図を、図1Bに平面概略図を示す。
図1に示すように第1のフィルム状モールド1は、モールド基材11と、モールド基材11の表面に形成された樹脂硬化物層(光硬化性樹脂層)12とを有して構成される。モールド基材11はフィルム状であり可撓性に優れる材質で構成される。限定するものでないが、モールド基材11の厚みは25μm〜200μm程度である。図1Aに示すように、モールド基材11の表面11aは平坦面で形成されている。
図1A、及び図1Bに示すように、モールド基材11の表面に形成された樹脂硬化物層12は、その両側がカットされており、樹脂硬化物層12の幅寸法はモールド基材11の幅寸法よりも小さく形成されている。これは、モールド基材11の幅と同等の被転写樹脂層を形成した場合、金型と貼合押付により、被転写樹脂層が広がり、モールド基材11の幅を超え、モールド基材11の端部或いは裏面に回り込む。その後に光硬化した樹脂硬化物層が、微細凹凸構造のエリアに異物汚染源として混入することがあるためである。また樹脂硬化物層12の厚みは、微細凹凸構造のサイズにもよるが、微細凹凸構造を含んで500nm〜5000nm程度である。
図1Aに示すように、樹脂硬化物層12の表面には微細凹凸構造12aが形成されている。なお図1Bには微細凹凸構造12aを省略した。
本実施の形態では、第1のフィルム状モールド1を金型とし、第2のフィルム状モールドを製造する。第2のフィルム状モールドのモールド基材の表面に光硬化性樹脂を塗布して光硬化性樹脂層を形成する。未硬化の光硬化性樹脂層に対して第1のフィルム状モールド1の表面に設けられた微細凹凸構造12aを密着させ、その後、光硬化性樹脂層を光硬化させて、表面に微細凹凸構造が転写された被転写樹脂層を形成する。
本発明者は、第2のフィルム状モールドを製造する際の、光硬化性樹脂層である被転写樹脂層と第1のフィルム状モールドを貼合する地点(貼合地点)から被転写樹脂層を光硬化させ、第1のフィルム状モールドと第2のフィルム状モールドとを剥離する地点(離型地点)までにおいて、従来に比べ気泡を発生させることなく、高精度に微細凹凸形状を得ることができる構成を見出した。
図2は、従来におけるフィルム状モールドの製造方法に用いられる製造装置を示す概略図である。図2Aは、製造装置の貼合地点から離型地点までを示す概略図であり、図2Bは、バックロールの部分を拡大して示した概略図である。
図2Aに示すように従来では、貼合工程において、光源300と相対する位置にバックロール301を配置し、バックロール301の周面に第1のフィルム状モールド302と第2のフィルム状モールド303とを密着させて搬送していた。しかしながら、この構成では、第1のフィルム状モールド302と第2のフィルム状モールド303との貼合地点aから離型地点bまでにおいて、フィルム状モールドの両端部から気泡が侵入することが発生するという問題があった。
ここでバックロール301とは、ニップロール304、305との組み合わせにより第1のフィルム状モールド302と第2のフィルム状モールド303とをバックロール301の周面に密着させながら搬送方向を変え、その際、第2のフィルム状モールド303に対して光源300からの光照射エリアを確保できるロールを指す。
図2Aに示すように、貼合地点aから離型地点bまでの間に、バックロール301が存在する。そのため、バックロール301に第1のフィルム状モールド302を介した状態で、第2のフィルム状モールド303を密着させると、第1のフィルム状モールド302の搬送距離d1と第2のフィルム状モールド303の搬送距離d2が異なる。それぞれ、第1のフィルム状モールド302の搬送距離d1と第2のフィルム状モールド303の搬送距離d2は以下の式で表される。
d1=L1+2(r+t)π×(θ/360)+L2
d2=L1+2(r+2t)π×(θ/360)+L2
L1:貼合地点aからバックロール301までの距離(図2A参照)
r :バックロール301の半径(図2B参照)
t :フィルム状モールドの厚み(図2B参照)
θ :バックロール301とフィルム状モールドが密着している抱き角度(図2B参照)
L2:バックロール301から離型地点bまでの距離(図2A参照)
図2Aに示すように、L1は、第1のフィルム状モールド302と第2のフィルム状モールド303とが貼合された地点(密着した地点)から内側に位置する第1のフィルム状モールド302のモールド基材がバックロール301に当接するまでの搬送距離で示される。フィルム状モールドの厚みtは、図2では、第1のフィルム状モールド302も第2のフィルム状モールド303も同じとした。また、L2は、バックロール301に当接していた第1のフィルム状モールド302のモールド基材がバックロール301から離れる地点から第1のフィルム状モールド302と第2のフィルム状モールド303とが剥離させられた地点(2つのフィルム状モールドが互いに離れる地点)までの搬送距離で示される。
また、L1、L2を省略し、L1=0、または、L2=0、または、L1=L2=0として考えることもできる。つまり、貼合地点aと、ニップロール304とバックロール301の押圧地点を同じにした状態、離型地点bと、ニップロール305とバックロール301の押圧地点を同じにした状態を指す。
なお図2Bでは、図面上、わかりやすくするために、第1のフィルム状モールド302及び第2のフィルム状モールド303を、間隔を空けて図示しているが、実際には第1のフィルム状モールド302はバックロール301に密着し、第1のフィルム状モールド302と第2のフィルム状モールド303とは密着した状態にある。
また貼合地点aから離型地点bまでにガイドロールが存在する場合、ガイドロールの周面を移動する搬送距離を追加するために上記式の第二項に準ずる項が追加される。この項は、ガイドロールの個数分必要となる。
図2に示すようにバックロール301を貼合地点aと離型地点bとの間に導入した場合、上記式に示す通り、第1のフィルム状モールド302の搬送距離d1と第2のフィルム状モールド303の搬送距離d2が異なる。特に第2のフィルム状モールド303の搬送距離d2が、第1のフィルム状モールド302の搬送距離d1よりも長い。このとき、バックロール301と対向する位置から第2のフィルム状モールド303に対して光照射すると、そのエリアにおいて光硬化性樹脂層(被転写樹脂層)の光硬化に伴う光硬化性樹脂層の体積収縮が発生する。この第2のフィルム状モールドの体積収縮により、光硬化直前の未硬化の光硬化性樹脂層が引っ張られ、両端部(幅方向の端部)から気泡が侵入し、転写不良となる。
上記したように、従来では、搬送距離d1、d2が異なるため、体積収縮に伴う単位長さ当たりの移動量をαとすると、第2のフィルム状モールド303の実質移動量はα×d2となる。このとき、d1<d2であるので、バックロールを介さず貼合地点aから離型地点bまでの距離を同じ距離とした場合(d1=d2)の実質移動量α×d1(d2)よりも大きくなる。この実質移動量が歪となり、歪を吸収するために端部から気泡が入ることになる。
加えて、第1のフィルム状モールド302は、バックロール301に接しているのに対し、第2のフィルム状モールド303におけるモールド基材は未硬化の光硬化性樹脂層を介して、第1のフィルム状モールド302の微細凹凸構造が形成された表面と接している。このため図2の構成では、光硬化に伴う体積収縮により、バックロール301と密着した第1のフィルム状モールド302は動くことがないため、流動性のある未硬化の光硬化性樹脂層だけが引っ張られ、その移動分だけ気泡が両端部(幅方向の端部)から入りやすい。
これらを解決するためには、第2のフィルム状モールド303の張力を強めることが考えられるが、図2Aに示すように、貼合地点aから離型地点bまでは、ニップロール304,305により張力がカットされている状態であるので、効果が期待できない。
そこで、第1のフィルム状モールドと第2のフィルム状モールドとの貼合地点から離型地点までの搬送距離をそれぞれ同じにすることで、上記課題を解決するに至った。
すなわち、第1のフィルム状モールドの搬送距離d1と第2のフィルム状モールドの搬送距離d2を同じにすることで、光硬化性樹脂層の光硬化に伴う光硬化性樹脂層の体積収縮による光硬化直前の未硬化の光硬化性樹脂層の移動量を小さくすることができるため、従来に比べて気泡の侵入を抑制することができる。具体的には、図2に示すようにバックロールを介した場合、単位長さ当たりの移動量をαとすると、実質移動量はα×d2となる。このとき、d1=d2であるので、バックロールを介さず同じ距離とした場合の実質移動量α×d1とα×d2とはほぼ同じにあり、したがって実質移動量の差は小さくなる。したがって端部からの気泡の侵入を抑制できる。
また、バックロールを介さず同じ距離とした場合、第1のフィルム状モールドは、バックロールが存在した場合のように移動を束縛されないため、第2のフィルム状モールドの未硬化の光硬化性樹脂層の実質移動量に対し、第1のフィルム状モールドが追従し、第1のフィルム状モールドと第2のフィルム状モールド密着したままの状態を保つため、気泡の侵入を効果的に抑制することができる。
ここで第1のフィルム状モールドの搬送距離d1と第2のフィルム状モールドの搬送距離d2が同じとは、[(d2―d1)/(d1とd2との平均距離)]×1000000(ppm)が、0ppm〜3000ppmの範囲内であることを意味し、0ppm〜1000ppmの範囲内であることが好ましい。また搬送距離d1、d2は、0.1m〜1.5m程度であり、d1とd2がそれぞれμmの単位まで同じであることが好ましい。
以下、本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法についてさらに詳細に説明する。
(第1のフィルム状モールド作製工程)
図3は、本実施の形態に係る第1のフィルム状モールドの作製工程に用いられる製造装置を示す概略図である。図3に示す製造装置100は、モールド基材101を送り出す原反ロール102と、第1のフィルム状モールド103を巻き取る巻き取りロール104とを備える。原反ロール102と巻き取りロール104との間には、モールド基材101の搬送方向MDにおける上流側から下流側に向けて順に、モールド基材101上に光硬化性樹脂を塗布する塗布手段105と、ガイドロール106と、外周面に微細凹凸構造を有する円筒状金型107と、モールド基材101上の光硬化性樹脂と円筒状金型107の外周面との間を密着させるニップロール108a及び108bからなる押圧手段108と、光硬化性樹脂に光を照射する光源109と、ガイドロール110と、が設けられている。
なお、溶媒を用いて光硬化性樹脂を塗布する場合には、光硬化性樹脂中の溶媒を乾燥する乾燥炉111をさらに備えていても良い。
上述のような構成からなる製造装置100を用いて、次のように第1のフィルム状モールドを作製する。まず、原反ロール102から送り出した光透過性でフィルム状のモールド基材101上に塗布手段105により光硬化性樹脂を塗布して光硬化性樹脂層を形成する。光硬化性樹脂層付きのモールド基材101は、ガイドロール106を経て円筒状金型107へ供給する。
次に、円筒状金型107を回転させながら、押圧手段108によって円筒状金型107の外周面を光硬化性樹脂層に密着させて光硬化性樹脂層の表面に微細凹凸構造を転写する。次に、光硬化性樹脂層に光源109から光を照射して光硬化性樹脂層を光硬化して樹脂硬化物層を形成して、第1のフィルム状モールド103を作製する。第1のフィルム状モールド103を、ガイドロール110を経て、巻き取りロール104で巻き取る。
なお、第1のフィルム状モールド103の作製工程においては、円筒状金型107から第1のフィルム状モールド103に転写された微細凹凸構造を保護するため、光硬化後の光硬化性樹脂層上に保護フィルム(カバーフィルム)をラミネートしてもよい。
第1のフィルム状モールド103の作製工程においては、円筒状金型107と光硬化性樹脂層とを圧着する押圧手段108により円筒状金型107と光硬化性樹脂層とが密着した状態で、光硬化性樹脂層に光を照射して光硬化する。円筒状金型107の外周面の微細凹凸構造と光硬化性樹脂層とが密着した状態であるため、円筒状金型107の外周面の微細凹凸構造を正確に光転写でき、また、酸素による硬化不足を回避することができる。
また、第1のフィルム状モールド103の作製工程においては、窒素雰囲気下において、円筒状金型107と光硬化性樹脂層とを密着させて光照射を行うことが好ましい。これにより、光硬化性樹脂層の光硬化性樹脂への大気中の酸素の接触を避けることができ、酸素による光重合反応の阻害を低減できるので、光硬化性樹脂を充分に硬化させることができるからである。
光硬化性樹脂層と円筒状金型107とを密着させて光を照射するためには、押圧手段108としてのニップロール108a、108bにより、光硬化性樹脂層と円筒状金型107とを直接圧着して光を照射してもよい。また、送り出し及び巻き取り制御によりモールド基材101の張力を制御して光硬化性樹脂層と円筒状金型とを圧着した状態で光を照射してもよい。これらの場合においては、光硬化性樹脂層の転写性により押し付け圧や張力は適宜調整することができる。
(第2のフィルム状モールドの複製工程)
図4は、本実施の形態に係る第2のフィルム状モールドの複製工程に用いられる製造装置を示す概略図である。
図4に示す製造装置200は、被転写基材201を送り出すための第1の送り出しロール(第1の送り出し手段)202と、完成した第2のフィルム状モールド203を巻き取るための第1の巻き取りロール(第1の巻き取り手段)204とを備える。また、第1のフィルム状モールド103を送り出すための第2の送り出しロール(第2の送り出し手段)206と、第1のフィルム状モールド103を巻き取るための第2の巻き取りロール(第2の巻き取り手段)212とを備える。第1の送り出しロール202と第2の送り出しロール206により送り出し手段220が構成され、第1の巻き取り手段204と第2の巻き取り手段212により巻き取り手段230が構成されている。
図4に示すように、送り出し手段220は製造装置200の上流側に、巻き取り手段230は製造装置200の下流側に位置している。図4に示すように、送り出し手段220と巻き取り手段230との間には、第1のフィルム状モールド103の搬送方向MDにおける上流側から下流側に向けて順に、第1のフィルム状モールド103と被転写基材201とを貼り合わせ、密着させるための貼合手段207と、光硬化性樹脂層に光を照射する光源(光照射手段)210と、離型手段211と、が設けられている。
また図4に示すように、第1の送り出しロール202と貼合手段207との間には、被転写基材201の表面に光硬化性樹脂を塗布する塗布手段205が設けられている。
貼合手段207は、一対のラミネートロール207a、207bで構成されている。貼合手段207は押圧手段を兼ねている。
離型手段211は、一対の剥離ロール211a、211bで構成されている。なお離型手段211は、剥離ロール211a、211bのみならず巻き取りロール204、212を含めて定義されてもよい。
また、光硬化性樹脂を溶媒に溶かして被転写基材201に塗布する場合には、塗布手段205の下流側に乾燥炉213を設けることができる。また、貼合手段207の下流側に乾燥炉214を設けても良い。
また、第1の送り出しロール202と、第2の送り出しロール206とを入れ替えても構わない。すなわち、第1のフィルム状モールド103の樹脂硬化物層に形成された微細凹凸構造(凹凸形成面)上に光硬化性樹脂(被転写樹脂層)を塗布しても良い。
このような構成からなる製造装置200を用いて、次のように第2のフィルム状モールドの複製を行う。
まず、第1の送り出しロール202から、被転写基材201を送り出し、その表面上に、塗布手段205により光硬化性樹脂を直接塗布し、光硬化性樹脂層を形成する。この光硬化性樹脂層は、被転写樹脂層である。
次に、貼合手段207によって第2の送り出しロール206から巻き出された第1のフィルム状モールド103の樹脂硬化物層の微細凹凸構造(凹凸形成面)を、被転写基材201上の光硬化性樹脂層に貼り合わせる。
図4に示すように貼合手段207を構成するラミネートロール207a、207bの間に第1のフィルム状モールド103と光硬化性樹脂層(被転写樹脂層)が形成された被転写基材201と通す。この際、被転写基材201上の光硬化性樹脂層は、第1のフィルム状モールド103の樹脂硬化物層に形成された微細凹凸構造(凹凸形成面)の樹脂塗布領域内に張り合わせる。第1のフィルム状モールド103と被転写基材201との位置合わせは、例えば、フィルムの蛇行調整装置を設置することにより行うことができる。
また、第1の送り出しロール202と、第2の送り出しロール206とを入れ替えて、第1のフィルム状モールド103の樹脂硬化物層に形成された微細凹凸構造(凹凸形成面)上に光硬化性樹脂(被転写樹脂層)を塗布した場合、貼合工程では、フィルム状の被転写基材201の表面に、第1のフィルム状モールド103側に塗布された光硬化性樹脂(被転写樹脂層)を貼合する。
第1のフィルム状モールド103及び光硬化性樹脂層が設けられた被転写基材201を、光照射手段(露光手段)である光源210まで供給する。このとき押圧手段も兼ねた貼合手段207により、第1のフィルム状モールド103の樹脂硬化物層に形成された微細凹凸構造(凹凸形成面)を光硬化性樹脂層(被転写樹脂層)に密着させることができる。このような密着状態で、光源210から光硬化性樹脂層に光を照射し、光硬化性樹脂層を光硬化させる。
貼合手段207と離型手段211との間では、第1のフィルム状モールド103と光硬化性樹脂層が設けられた被転写基材201とが、ラミネートロール207a、207bと剥離ロール211a、211bとの間に通されることで、第1のフィルム状モールド103と被転写基材201とを効果的に密着させることができ、気泡の抱き込みや、酸素による光硬化性樹脂層の未硬化を防止することができる。
この後、離型手段211では、第1のフィルム状モールド103から、表面に樹脂硬化物層(被転写樹脂層)が形成された被転写基材201、すなわち、第2のフィルム状モールド203を剥離する。このとき、第1のフィルム状モールド103に形成された微細凹凸構造の反転形状が第2のフィルム状モールド203の樹脂硬化物層(被転写樹脂層)に転写される。
この後、第2のフィルム状モールド203を、第1の巻き取りロール204に巻き取る。一方、第1のフィルム状モールド103を、第2の巻き取りロール212に巻き取る。
本実施の形態では上記のように、貼合地点aから離型地点bまでの第1のフィルム状モールドの搬送距離と第2のフィルム状モールドの搬送距離とを同じにしている。ここで貼合地点aとは、図4に示すラミネートロール207a、207bの間に第1のフィルム状モールドと第2のフィルム状モールド(被転写基材)とが入り込んだときに最初に接する地点であり、例えば、ラミネートロール207a、207bの間であってラミネートロール207a、207bの中点間を直線状に結んだときの交点を指す。また離型地点bとは、剥離ロール211a、211bの間から第1のフィルム状モールドと第2のフィルム状ロールとが抜け出た際に、最初に互いに離れる最初の地点であり、例えば、剥離ロール211a、211bの間であって剥離ロール211a、211bの中点間を直線状に結んだときの交点を指す。
図5は、本実施の形態に係る第2のフィルム状モールドの複製工程に用いられ、図4と一部が異なる製造装置を示す概略図である。図5に示す製造装置は、図4に対して貼合手段207から離型手段211までの構成が一部異なっている。図5では、図4に示す送り出し手段220や巻き取り手段230などが省略されている。
図5に示す製造装置を用いた場合においても、貼合手段207から離型手段211までの第1のフィルム状モールドの搬送距離及び第2のフィルム状モールドの搬送距離を同じにすることができる。貼合手段207から離型手段211までの間に、ガイドロール215a、215bを配置することで、貼合手段207から離型手段211までの搬送距離を第1のフィルム状モールドと第2のフィルム状モールドとで同じにしつつ、フィルム状モールドにガイドロール215a、215bを接触させることで、フィルム状モールド自体の自重による撓みや張力低下を回避した状態で、光硬化することができる。
ここでガイドロール215a、215bとは、バックロールと異なってニップロールとの組み合わせによりフィルム状モールドを挟持する構成ではなく、フィルム状モールドの一方の面側のみを周接させる表面を持つロールを指す。図5では、二つのガイドロール215a、215bが設けられているが、第1のフィルム状モールドの搬送距離及び第2のフィルム状モールドの搬送距離を同じにするには、第1のフィルム状モールドにおいて、ガイドロール215aとガイドロール215bとに密着しながら移動する距離と、第2のフィルム状モールドにおいて、ガイドロール215aとガイドロール215bとに密着しながら移動する距離とを同じになるように調整すればよい。例えば、同じ半径を持つガイドロールを偶数用意し、フィルム状モールドがガイドロール上を時計回りに移動するガイドロールと、フィルム状モールドがガイドロール上を反時計回りに移動するガイドロールとを等数配置して、且つガイドロールに対する抱き角度θ(図2Bのθに準ずる)を全てのガイドロールにて同じとすることで、第1のフィルム状モールドの搬送距離と第2のフィルム状モールドの搬送距離とを同じにできる。上記した抱き角度θやガイドロールの半径を変えることで、ガイドロールの配置を変えたり、ガイドロールを奇数配置することもできる。なお貼合地点aから離型地点bまでできる限り水平であることが好ましく、図5のようにガイドロールを設けた場合の抱き角度θとしては、0°〜45°程度であることが好適である。
以下、本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法の構成要素についてさらに詳細に説明する。
(フィルム基材)
第1のフィルム状モールドの作製において用いられるモールド基材101や第2のフィルム状モールドの複製に用いられる被転写基材201には光透過性があるフィルム状基材を用いることができる。
フィルム状基材としては、紫外・可視光領域で使用する光源に対して実質的に光透過性を有する材料を主成分とするものであれば特に限定されないが、ハンドリング性や加工性に優れた樹脂材料であることが好ましい。このような樹脂材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、トリアセチルセルロール(TAC)樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂、及び、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂が挙げられる。
フィルム状基材は、ロール・ツー・ロール法に適用するためフィルム状であることが好ましい。
フィルム状基材の厚みは、材料にもよるが、好ましくは20〜200μm、より好ましくは50〜150μm、さらに好ましくは50〜100μmである。200μm以下であれば、光ナノインプリントの光源に使用される紫外線の透過率が良好であり、光硬化に充分な光量を得ることができる。20μmであれば、フィルムとしての剛性を保持することができるため、ハンドリングが容易である。
フィルム状基材の表面には、光硬化性樹脂との密着性向上のため、プライマー処理や大気圧プラズマ処理、コロナ処理を施すことができる。
本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法において、上述のように、円筒状金型107又は第1のフィルム状モールド103の樹脂硬化物層に密着した状態で光硬化性樹脂層に光を照射して光硬化させる。このため、使用する光硬化性樹脂にもよるが、フィルム状基材には、波長200nm〜500nmの範囲で良好な透過率が求められる。使用する光硬化性樹脂の感光性にもよるため、波長200nm〜500nmの範囲で具体的な透過率の値については特に限定しないが、365nm、405nm及び全光線透過率が良好であれば、光硬化性樹脂が充分に光硬化するため好ましい。また、波長200nm〜500nmの範囲における透過率が良好であれば、光硬化性樹脂の硬化に要する光照射エネルギーを低減でき、且つ、転写の迅速化を達成することができる。
(光硬化性樹脂)
光硬化性樹脂層(樹脂硬化物層、被転写樹脂層)は光硬化性樹脂で形成される。光硬化性樹脂は、転写性、原版からの剥離性、フィルム状基材との密着性、粘度、成膜特性、感光性、硬化後の力学特性、樹脂鋳型作製時の樹脂層との剥離性を考慮して選択する。
光硬化性樹脂層を光硬化して得られる樹脂硬化物層は、微細凹凸構造(凹凸形成面)側の表層(10nm以下)におけるフッ素元素濃度(Es)が、光硬化性樹脂層中の平均フッ素元素濃度(Eb)より高いことが好ましい。
これによれば、樹脂硬化物層における微細凹凸形構造側(凹凸形成面側)のフッ素元素濃度(Es)が、樹脂硬化物層中の平均フッ素元素濃度(Eb)に対して相対的に高いことから、例えば、第2のフィルム状モールドの樹脂硬化物層の第1のフィルム状モールドからの離型性や、第2のフィルム状モールドから展開される微細構造付製品を作製する場合の第2のフィルム状モールドからの微細構造付製品の離型性が向上する。
樹脂硬化物層中のフッ素原子は、フッ素原子含有物質によって導入される。フッ素含有物質は、界面活性剤、フッ素含有重合性モノマー(アクリレート、メタクリレート、エポキシ)、離型剤、表面処理剤及びフッ素系溶媒を指す。光硬化性樹脂中での運動性の観点から、好ましくは、フッ素系界面活性剤及びフッ素含有重合性モノマーである。
本実施の形態に係るフィルム状モールドにおいては、樹脂硬化物層の微細凹凸構造側(凹凸形成面側)の表層におけるフッ素元素濃度(Es)が、樹脂硬化物層中の平均フッ素濃度(Eb)に対して相対的に大きくなるように、すなわちフィルム基材側の表層から凹凸形成面側の表層に向けて濃度勾配を設けることが好ましい。これにより、樹脂硬化物層とフィルム基材との間の密着性を維持しつつ、樹脂硬化物層の微細凹凸構造からの被処理体の離型性が向上する。つまり、第1のフィルム状モールドからの第2のフィルム状モールドの離型性や、第2のフィルム状モールドからの第3のフィルム状モールドの離型性や、第2のフィルム状モールドから微細構造付製品の離型性が向上する。
なお、樹脂硬化物層の濃度勾配としては、微細凹凸構造側(凹凸形成面側)の樹脂硬化物層のフッ素元素濃度(Es)が樹脂硬化物層中のフッ素元素濃度(Eb)に対して相対的に大きくなる範囲となればどのようなものであってもよい。例えば、濃度勾配としては、樹脂硬化物層のフィルム基材側の表層から微細凹凸構造側(凹凸形成面側)の表層に向けて連続的に無段階に変化するものであってもよく、階段状に段階的に変化するものであってもよい。また、樹脂硬化物層のフィルム基材側の表層から微細凹凸構造側(凹凸形成面側)への厚み方向において、フィルム状基材側の表層から樹脂硬化物層の中央部までの濃度勾配と、樹脂硬化物層の中央部から微細凹凸構造側(凹凸形成面側)の表層までの濃度勾配とが同一であってもよく、異なる濃度勾配を有していてもよい。
本発明においては、樹脂硬化物層の表層のフッ素元素濃度(Es)は、後述するXPS法により求めた値を採用する。本発明においては、XPS法におけるX線の侵入長である数nmの深さにおける測定値をもってフッ素元素濃度(Es)としている。
一方、本明細書中、樹脂硬化物層中の平均フッ素元素濃度(Eb)とは、仕込み量から計算した値、予め硬化樹脂表層を削り内面を露出してXPS法により求めた値、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)から解析した値、又はイオンクロマトグラフ分析から解析した値を採用する。すなわち、樹脂硬化物層全体に含まれるフッ素元素濃度を意味する。例えば、フィルム状に形成された光重合性混合物の硬化物から構成されるフィルム状モールドの、樹脂部分を物理的に剥離した切片を、フラスコ燃焼法にて分解し、続いてイオンクロマトグラフ分析にかけることで光硬化性樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を同定することができる。
光硬化性樹脂としては、例えば、光重合開始剤により重合可能な各種アクリレート化合物及びメタクリレート化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、チオール化合物、シリコーン系化合物などを使用することができる。これらの中でも、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物、エポキシ化合物、シリコーン系化合物を用いることが好ましく、アクリレート化合物、メタクリレート化合物を用いることがより好ましい。これらの化合物は単独種類で用いてもよく、エポキシ化合物とアクリレート化合物との組合せなど、複数種類を組合せて用いてもよい。
アクリレート化合物及びメタクリレート化合物としては、(メタ)アクリル酸、フェノキシエチルアクリレート、及びベンジルアクリレートなどの芳香族系の(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタアエリスリトールトリアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの炭化水素系の(メタ)アクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリオキシエチレングリコールジアクリレート、及びトリプロピレングリコールジアクリレートなどのエーテル性酸素原子を含む炭化水素系の(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−ビニルピロリドン、及びジメチルアミノエチルメタクリレートなどの官能基を含む炭化水素系の(メタ)アクリレート、シリコーン系のアクリレートなどが挙げられる。
また、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物としては、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ECH変性フェノキシアクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、シリコーン系アクリレート化合物などが挙げられる。なお、EO変性とはエチレンオキシド変性を、ECH変性とはエピクロロヒドリン変性を、PO変性とはプロピレンオキシド変性を意味する。これらは1種又は2種以上の組合せで用いることができる。また、市販のナノインプリント用樹脂であるPAKシリーズ(東亞合成社製)、NIFシリーズ(AGC社製)、NIACシリーズ(ダイセル化学工業社製)などを使用することができる。これらの中でも、PAK−02、NIAC−702が樹脂シートへの塗布特性とパターン転写性から特に好ましい。
また、光硬化性樹脂としては、上記アクリレート化合物及びメタクリレート化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、シリコーン系化合物のうち、炭化水素中の水素がフッ素に置換されたフッ素含有化合物を用いることができる。フッ素含有化合物を用いることにより、硬化後の表面自由エネルギーが減少し、転写工程における原版(円筒状金型107及び第1のフィルム状モールド103)からの被転写結果物(第1のフィルム状モールド103及び第2のフィルム状モールド203)の離型性が向上する。
フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、ポリフルオロアルキレン鎖及び/又はペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖と、重合性基とを有することが好ましく、直鎖状ペルフルオロアルキレン基、又は炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されかつトリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基がさらに好ましい。また、トリフルオロメチル基を分子側鎖又は分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖及び/又は直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖が特に好ましい。
ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基が好ましい。また、ポリフルオロアルキレン基は、官能基を有していてもよい。
ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、(CF2CF2CF2O)単位及び(CF2O)単位からなる群から選ばれた1種以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位からなることが好ましく、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、又は(CF2CF2CF2O)単位からなることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、含フッ素重合体の物性(耐熱性、耐酸性など)が優れることから、(CF2CF2O)単位からなることが特に好ましい。ペルフルオロ(オキシアルキレン)単位の数は、含フッ素重合体の離型性と硬度が高いことから、2〜200の整数が好ましく、2〜50の整数がより好ましい。
重合性基としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ジオキタセン基、シアノ基、イソシアネート基又は式−(CH2)aSi(M1)3−b(M2)bで表される加水分解性シリル基が好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基がより好ましい。ここで、M1は加水分解反応により水酸基に変換される置換基である。このような置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基又はエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。M1としては、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。M2は、1価の炭化水素基である。M2としては、アルキル基、1以上のアリール基で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基などが挙げられ、アルキル基又はアルケニル基が好ましい。M2がアルキル基である場合、炭素数1〜炭素数4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。M2がアルケニル基である場合、炭素数2〜炭素数4のアルケニル基が好ましく、ビニル基又はアリル基がより好ましい。aは1〜3の整数であり、3が好ましい。bは0又は1〜3の整数であり、0が好ましい。加水分解性シリル基としては、(CH3O)3SiCH2−、(CH3CH2O)3SiCH2−、(CH3O)3Si(CH2)3−又は(CH3CH2O)3Si(CH2)3−が好ましい。
重合性基の数は、重合性に優れることから1〜4の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましい。2種以上の化合物を用いる場合、重合性基の平均数は1〜3が好ましい。
フッ素含有(メタ)アクリレートは、官能基を有するとフィルム状基材との密着性に優れる。官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、エステル結合を有する官能基、アミド結合を有する官能基、水酸基、アミノ基、シアノ基、ウレタン基、イソシアネート基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基などが挙げられる。特に、カルボキシル基、ウレタン基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基の少なくとも一つの官能基を含むことが好ましい。なお、イソシアヌル酸誘導体には、イソシアヌル酸骨格を有するもので、窒素原子に結合する少なくとも一つの水素原子が他の基で置換されている構造のものが包含される。フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、フルオロ(メタ)アクリレート、フルオロジエンなどを用いることができる。フッ素含有(メタ)アクリレートの具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
フルオロ(メタ)アクリレートとしては、CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)10F、CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)8F、CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)6F、CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)10F、CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)8F、CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)6F、CH2=CHCOOCH2(CF2)6F、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)6F、CH2=CHCOOCH2(CF2)7F、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)7F、CH2=CHCOOCH2CF2CF2H、CH2=CHCOOCH2(CF2CF2)2H、CH2=CHCOOCH2(CF2CF2)4H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2CF2)H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2CF2)2H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2CF2)4H、CH2=CHCOOCH2CF2OCF2CF2OCF3、CH2=CHCOOCH2CF2O(CF2CF2O)3CF3、CH2=C(CH3)COOCH2CF2OCF2CF2OCF3、CH2=C(CH3)COOCH2CF2O(CF2CF2O)3CF3、CH2=CHCOOCH2CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)3F、CH2=CHCOOCH2CF(CF3)O(CF2CF(CF3)O)2(CF2)3F、CH2=C(CH3)COOCH2CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)3F、CH2=C(CH3)COOCH2CF(CF3)O(CF2CF(CF3)O)2(CF2)3F、CH2=CFCOOCH2CH(OH)CH2(CF2)6CF(CF3)2、CH2=CFCOOCH2CH(CH2OH)CH2(CF2)6CF(CF3)2、CH2=CFCOOCH2CH(OH)CH2(CF2)10F、CH2=CFCOOCH2CH(OH)CH2(CF2)10F、CH2=CHCOOCH2CH2(CF2CF2)3CH2CH2OCOCH=CH2、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2CF2)3CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、CH2=CHCOOCH2CyFCH2OCOCH=CH2、CH2=C(CH3)COOCH2CyFCH2OCOC(CH3)=CH2などのフルオロ(メタ)アクリレートが挙げられる(但し、CyFはペルフルオロ(1,4−シクロへキシレン基)を示す。)。
フルオロジエンとしては、CF2=CFCF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF2CF=CF2、CF2=CFOCF(CF3)CF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF(CF3)CF=CF2、CF2=CFOCF2OCF=CF2、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF=CF2、CF2=CFCF2C(OH)(CF3)CH2CH=CH2、CF2=CFCF2C(OH)(CF3)CH=CH2、CF2=CFCF2C(CF3)(OCH2OCH3)CH2CH=CH2、CF2=CFCH2C(C(CF3)2OH)(CF3)CH2CH=CH2などのフルオロジエンが挙げられる。
また、上記フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、下記化学式(1)で示されるフッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート、及び/又は下記化学式(2)で示されるフッ素含有(メタ)アクリレートであることで、樹脂硬化物層の微細凹凸構造(凹凸形成面)の表面自由エネルギーをより低くできるので、樹脂硬化物層とフィルム状基材との間の密着性が向上する。また、樹脂硬化物層中の平均フッ素元素濃度(Eb)を減少させ、樹脂硬化物層の強度を保つことができるため、繰り返し転写性がより向上するため好ましい。
(化学式(1)中、R1は、下記化学式(3)を表し、R2は、下記化学式(4)を表す。)
(化学式(3)中、nは、1以上6以下の整数である。)
フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、耐摩耗性、耐傷付き、指紋付着防止、防汚性、レベリング性や撥水撥油性などの表面改質剤との併用もできる。例えば、ネオス社製「フタージェント(登録商標)」(例えば、Mシリーズ:フタージェント(登録商標)251、フタージェント(登録商標)215M、フタージェント(登録商標)250、FTX−245M、FTX−290M;Sシリーズ:FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTX−230S;Fシリーズ:FTX−209F、FTX−213F、フタージェント(登録商標)222F、FTX−233F、フタージェント(登録商標)245F;Gシリーズ:フタージェント(登録商標)208G、FTX−218G、FTX−230G、FTS−240G;オリゴマーシリーズ:フタージェント(登録商標)730FM、フタージェント(登録商標)730LM;フタージェント(登録商標)Pシリーズ:フタージェント(登録商標)710FL、FTX−710HLなど)、DIC社製「メガファック(登録商標)」(例えば、F−114、F−410、F−493、F−494、F−443、F−444、F−445、F−470、F−471、F−474、F−475、F−477、F−479、F−480SF、F−482、F−483、F−489、F−172D、F−178K、F−178RM、MCF−350SFなど)、ダイキン社製「オプツール(登録商標)」(例えば、DSX、DAC、AES)、「エフトーン(登録商標)」(例えば、AT−100)、「ゼッフル(登録商標)」(例えば、GH−701)、「ユニダイン(登録商標)」、「ダイフリー(登録商標)」、「オプトエース(登録商標)」、住友スリーエム社製「ノベック(登録商標)EGC−1720」、フロロテクノロジー社製「フロロサーフ(登録商標)」などが挙げられる。
フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、重量平均分子量Mwが50〜50000であることが好ましく、相溶性の観点から重量平均分子量Mwが50〜5000であることが好ましく、重量平均分子量Mwが100〜5000であることがより好ましい。相溶性の低い高分子量を使用する際は希釈溶剤を使用しても良い。希釈溶剤としては、単一溶剤の沸点が40℃〜180℃の溶剤が好ましく、60℃〜180℃がより好ましく、60℃〜140℃がさらに好ましい。希釈剤は2種類以上使用もよい。
光硬化性樹脂としては、感光性を向上するため光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤などが挙げられる。光重合開始剤は、使用する光源波長及び基材(透明シート)、諸物性などを考慮し、選択することができる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、フェニルグリオキシル酸メチル、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1フェニルプロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシプロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウムなどが好ましい。また、これらは、単独種類で用いてもよく、複数種類を混合物として用いてもよい。市販されている開始剤の例としては、Ciba社製の「IRGACURE(登録商標)」(例えば、IRGACURE(登録商標)651、184、1173、2959、127、907、369、379、379EG、819、819DW、784、OXE01、OXE02、500)や「DAROCUR(登録商標)」(例えば、DAROCUR(登録商標)1173、MBF)、「LUCIRIN(登録商標) TPO」などが挙げられる。
光硬化性樹脂としては、光感度向上のため増感剤を含むものが好ましい。このような増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5−ビス(4’−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジメチルアミノベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、2−(4’−ジメチルアミノシンナミリデン)インダノン、2−(4’−ジメチルアミノベンジリデン)インダノン、2−(p−4’−ジメチルアミノビフェニル)ベンゾチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンジリデン)アセトン、1,3−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)アセトン、3,3’−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−アセチル−7−ジメチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンジロキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−メトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−p−トリルジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アニリン、4−モルホリノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、ベンズトリアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、1−シクロヘキシル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、1−(tert−−ブチル)−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2−p)チアゾール、2−(p−ジメチルアミノベンゾイル)スチレンなどが挙げられる。また、増感剤は、単独種類で用いてもよく、複数種類を混合物として用いてもよい。
光硬化性樹脂は、溶媒を添加して粘度を調整することができる。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アニソール、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが好ましい。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。これらの溶媒中でも、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン及びメチルエチルケトン、イソプロピルアルコールが好ましい。これらの溶媒は、光硬化性樹脂の塗布方法、塗布膜厚及び粘度に応じて、適宜添加することができ、限定されるものではないが、例えば、硬化性樹脂100重量部に対して溶媒を1重量部〜10000重量部添加することができる。
光硬化性樹脂の粘度は、用いるアクリレート及びメタクリレートなどのモノマーと溶媒によって適宜調整することができる。光硬化によって、サブミクロン以下の微細凹凸構造を転写するためには、1000mPa・sec以下が好ましく、転写追従性及びスループットの向上を目指すためには、200mPa・sec以下がより好ましい。さらに、50mPa・sec以下であれば、瞬時にサブミクロン以下の微細凹凸構造を転写することができる。
光硬化性樹脂は、例えば、光硬化、熱硬化、電子線による硬化及びマイクロウェーブにより硬化させることができる。これらの中でも、光硬化を用いることが好ましい。フィルム基材に光硬化性樹脂を上記塗布方法により塗布した後、所定波長における任意の光量で光硬化性樹脂に光を照射することにより、光硬化性樹脂の硬化反応を促進することができる。
(塗布手段)
塗布手段105、205によるフィルム状基材への光硬化性樹脂の塗布方法としては、公知の塗布コーター又は含浸塗布コーターを用いた塗布方法が挙げられる。具体的には、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ブレードコーター、ワイヤーバーコーター、エアーナイフコーター、ディップコーター、コンマナイフコーター、スプレーコーター、カーテンコーター、スピンコーター、ラミネーターなどを用いた塗布方法が挙げられる。これらの塗布方法は、必要に応じて1種の塗布方法を用いてもよく、2種以上の塗布方法を組合せて用いてもよい。また、これらの塗布方法は、生産性の観点から連続方式で塗布することが好ましい。また、ディップコーター、コンマナイフコーター、グラビアコーター又はラミネーターを使用した連続方式の塗布方法が特に好ましい。
(光源)
光硬化性樹脂への光照射に用いる光源(光照射手段)109、210としては、特に制限されるものではなく、用途及び設備に応じて種々の光源を用いることができる。例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、無電極ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーランプ、LEDランプ、キセノンパルス紫外線ランプなどを用いることができる。また、光硬化性樹脂は、波長200nm〜500nmの紫外線又は可視光を露光量が100mJ/cm2〜2000mJ/cm2となるように照射することにより硬化することができる。また、酸素による光硬化反応の阻害を防止する観点から、光照射時には酸素濃度が低い状態で光を照射することが望ましい。
(円筒状金型)
第1のフィルム状モールド103の作製に用いる原版には、連続生産性や歩留まりの観点から円筒状金型107を用いることが好ましい。また、円筒状金型107は継ぎ目のないことがより好ましい。継ぎ目があった場合、最終的に得られる微細凹凸構造付製品において、継ぎ目部に対応する微細凹凸構造がない箇所を切り落とすため、歩留まりが悪化するだけでなく、切り落とす作業が余分に入るため連続生産性も悪化する。
円筒状金型107としては、外周面に微細凹凸構造を有する円筒状金型を用いる。微細凹凸構造は、製造しようとする微細凹凸構造付製品の微細凹凸構造の形状に応じたものである。
円筒状金型107の微細凹凸構造は、レーザー切削法、電子線描画法、フォトリソグラフィー法、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法、干渉露光法、電鋳法、陽極酸化法などの加工方法により、円筒状の基材の外周面に直接形成することができる。これらの中でも、微細凹凸構造に継目のない円筒状金型を得る観点から、フォトリソグラフィー法、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法、干渉露光法、電鋳法、陽極酸化法が好ましく、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法、干渉露光法、陽極酸化法がより好ましい。
また、円筒状金型107としては、上記加工方法で平板基板の表面に形成した微細構造を樹脂材料(フィルム)へ転写し、このフィルムを円筒状金型の外周面に位置精度よく張り合わせたものを用いてもよい。また、上記加工方法で平板基板の表面に形成した微細構造を電鋳法によりニッケルなどの薄膜に転写し、この薄膜をローラーに巻き付けたものを用いてもよい。
円筒状金型107の材料としては、微細凹凸構造の形成が容易であり、耐久性に優れた材料を用いることが望ましい。このような観点から、ガラスロール、石英ガラスロール、ニッケル電鋳ロール、クロム電鋳ロール、アルミロール、又はSUSロール(ステンレス鋼ロール)が好ましい。
ニッケル電鋳ロール及びクロム電鋳ロール用の母材としては、導電性を有する導電性材料を用いることができる。導電性材料としては、例えば、鉄、炭素鋼、クロム鋼、超硬合金、金型用鋼(例えば、マルエージング鋼など)、ステンレス鋼、アルミ合金などの材料が好適に用いられる。
円筒状金型107の表面には、離型処理を施すことが望ましい。離型処理を施すことにより、円筒状金型107の表面自由エネルギーを低下させることができるので、連続的に光硬化性樹脂へ転写した場合においても、良好な剥離性及び微細凹凸構造のパターン形状を保持することができる。また、第1のフィルム状モールド103から複製される第2のフィルム状モールド203まで、円筒状金型107の離型性が反映されるため、離型処理を行うことが好ましい。第1のフィルム状モールド103の作製には、対向する離型処理によって達成された低い表面自由エネルギーを有する円筒状金型107の表面に光硬化性樹脂が接触することで、フッ素成分が強く偏析される。第1のフィルム状モールド103から第2のフィルム状モールド203を複製する際にも、同様のメカニズムで進行するため、最初の第1のフィルム状モールド作製工程における金型の表面状態によって、後工程の離型性と転写性が支配される。
離型処理には、市販の離型剤及び表面処理剤を用いることができる。市販の離型剤及び表面処理剤としては、例えば、オプツール(登録商標)(ダイキン化学工業社製)、デュラサーフ(登録商標)(ダイキン化学工業社製)、ノベック(登録商標)シリーズ(3M社製)などが挙げられる。また、離型剤、表面処理剤としては、円筒状金型107の材料の種類及び転写される光硬化性樹脂との組合せにより、適宜好適な離型剤及び表面処理剤を選択することができる。
離型剤及び表面処理剤と円筒状金型の表面との密着性を向上させるために、金属膜及び酸化膜を成膜することができる。また、円筒状金型の表面に対し、UVオゾン処理やエキシマ処理、コロナ処理などの各種公知の表面処理を施すことができる。これらにより、円筒状金型の表面と離型剤の密着性だけでなく耐久性が向上する。
押圧手段108、貼合手段207及び離型手段211には、ゴム製ロールを用いることが好ましい。ゴム製ロールの材料としては、各種市販の材料を用いることができ、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリルゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体、天然ゴムなど各種使用することができる。耐摩耗性、耐薬品性、耐候性の観点から、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴムが好ましい。また、用いるゴム製ロールは、UV光源の反射を抑制させる観点から黒色であることが好ましい。
ゴム製ロールの硬度としては、ショア硬度50度以下が好ましく、ショア硬度30度以下であればさらに好ましい。ショア硬度50度以下であれば、微細構造の転写が良好で、低圧で押圧すれば、光硬化性樹脂の広がりを抑制することができ、ショア硬度30度以下であれば、0.1MPaの押圧でも粘度40cP以上の光硬化性樹脂であれば広がらない。上述のゴム製ロールのゴム層の厚みは、10mm以上が好ましい。10mm以上であれば、ゴム製ロールの芯材に使用される剛体の影響を受けることがない。
(第nのフィルム状モールドの作製)
以上説明した本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法では、円筒状金型107から微細凹凸構造を転写して作製した第1のフィルム状モールド103を原版として第2のフィルム状モールド203を複製する場合について説明した。しかし、第2のフィルム状モールド203を原版として第3のフィルム状モールドをさらに複製することも可能である。すなわち、本発明は、第n−1(nは2以上の整数)のフィルム状モールドから第nのフィルム状モールドの製造方法に適用することが可能である。
図6は、本実施の形態に係る第nのフィルム状モールドの製造方法を示す説明図である。図6に示すように、円筒状金型M−0を原版として第1のフィルム状モールドM−1を作製し、この第1のフィルム状モールドM−1を原版として第2のフィルム状モールドM−2を複製できる。さらに、第2のフィルム状モールドM−2を原版として第3のフィルム状モールドM−3を複製できる。同様にして、第(n−1)のフィルム状モールドM−(n−1)を原版として、第nのフィルム状モールドM−nを複製できる。
上述のようにして製造された第2〜第nのフィルム状モールドM−2〜M−nのいずれも、これを原版として微細凹凸構造付き製品Pを量産するために使用することができる。
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。実施例及び比較例の説明で使用する「Es/Eb」とは、微細凹凸構造を表面に具備する樹脂モールドの、XPS法により測定される表面フッ素元素濃度(Es)と、平均フッ素元素濃度(Eb)の比率を意味する。
また、樹脂モールドの表面フッ素元素濃度はX線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)にて測定した。XPSにおける、X線のサンプル表面への侵入長は数nmと非常に浅いため、XPSの測定値を本発明における樹脂モールド表面のフッ素元素濃度(Es)として採用した。樹脂モールドを約2mm四方の小片として切り出し、1mm×2mmのスロット型のマスクを被せて下記条件でXPS測定に供した。
XPS測定条件
使用機器 ;サーモフィッシャーESCALAB250
励起源 ;mono.AlKα 15kV×10mA
分析サイズ;約1mm(形状は楕円)
取込領域
Survey scan;0〜1, 100eV
Narrow scan;F 1s,C 1s,O 1s,N 1s
Pass energy
Survey scan; 100eV
Narrow scan; 20eV
一方、樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を測定するには、樹脂中が露出するように物理的に切り出した切片を、上記表面フッ素濃度解析と同様にXPSによって、樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を測定した。
(第1のフィルム状モールド作製工程)
(a)円筒状金型作製
円筒状金型の基材には石英ガラスロールを用い、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法により微細凹凸構造を石英ガラスロールの表面に形成した。石英ガラスロールの表面に対し、Cr膜を積層し、次いで、OPTOOL(登録商標)HD−1100Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置、固定化した。その後、OPTOOL(登録商標)HD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、離型処理を実施した。
(b)光硬化性樹脂
OPTOOL(登録商標)DAC HP(ダイキン工業社製)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)、Irgacure(登録商標)184(Ciba社製)及びIrgacure(登録商標)369(Ciba社製)を混合し、光硬化性樹脂を調液した。OPTOOL(登録商標)DAC HP(ダイキン工業社製)を、100質量部のトリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)に対し、10〜20質量部添加した。なお、後述する第1のフィルム状モールドから第2のフィルム状モールドを作るフィルム状モールド複製工程では、第1のフィルム状モールドを作製する際に使用した樹脂と同様の樹脂を使用し、第2のフィルム状モールドを作製した。
PETフィルム:A4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、第1の塗布幅(W1)が270mm、塗布膜厚が2μmになるように光硬化性樹脂を塗布した。次いで、円筒状金型に対し、光硬化性樹脂が塗布されたPETフィルムをニップロール(エチレンプロピレンゴム、硬度30、黒色、t10mm、0.1MPa)で押し付け、大気下、温度22℃、湿度40%で、ランプ中心下での積算露光量が1200mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に微細凹凸構造が転写された第1のフィルム状モールドを得た。第1のフィルム状モールドの微細凹凸構造の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、凸部同士の隣接距離は700nm、凸部高さは650nmであった。
得られた第1のフィルム状モールドの幅方向の中心付近の表面フッ素元素濃度(Es)は35atom%で、樹脂中のフッ素元素濃度(Eb)は9atom%であった。したがって比率(Es/Eb)は、3.89であった。
(第2のフィルム状モールド複製工程)
PETフィルム:A4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、第1のフィルム状モールドを作製した際に使用した樹脂と同様の光硬化性樹脂を塗布幅が250mm、塗布膜厚が2μmになるように塗布した。次いで、円筒状金型から直接転写し得られた第1のフィルム状モールドの微細凹凸構造の形成面に対し、光硬化性樹脂が塗布されたPETフィルムをニップロール(エチレンプロピレンゴム、硬度30、黒色、t10mm、0.1MPa)で貼合し、大気下、温度22℃、湿度40%で、ランプ中心下での積算露光量が1200mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に微細凹凸構造が転写され、剥離した後、円筒状金型と同様の微細凹凸構造を具備する第2のフィルム状モールドを得た。この時、ニップロールによる貼合地点から離型地点までの第1のフィルム状モールドの搬送距離と第2のフィルム状モールドの搬送距離はともに0.32mあり、同じであった。また、第2のフィルム状モールドの微細凹凸構造の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、凹部の開口幅がφ600nm、凹部同士の隣接距離が700nm、凹部高さが650nmであった。第2のフィルム状モールド作製において、気泡を抱き込む欠陥はなかった。
(第3のフィルム状モールド作製工程)
上記第2のフィルム状モールド複製工程と同様の手法で、第3のフィルム状モールドの塗布幅が第2のフィルム状モールドの塗布幅より狭くなるようにし、第3のフィルム状モールドを作製した。第2のフィルム状モールドを作製する際に使用した樹脂と同様の樹脂を使用し、第3のフィルム状モールドを作製した。得られた第3のフィルム状モールドの微細凹凸構造の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、凸部の開口幅がφ600nm、凸部同士の隣接距離が700nm、凸部高さが650nmであった。第3のフィルム状モールド作製において、気泡を抱き込む欠陥はなかった。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。