以下に、本発明の一実施形態に係る配線基板を備えた実装構造体を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1(a)に示した実装構造体1は、例えば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ装置またはその周辺機器などの電子機器に使用されるものである。この実装構造体1は、電子部品2と、電子部品2が実装された配線基板3とを含んでいる。
電子部品2は、例えばICまたはLSI等の半導体素子であり、配線基板3に半田等の導電材料からなるバンプ4を介してフリップチップ実装されている。この電子部品2は、例えばシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム砒素リン、窒化ガリウムまたは炭化珪素等の半導体材料により形成されている。電子部品2の厚みは、例えば0.1mm以上1mm以下である。また、電子部品2の主面方向(XY平面方向)および厚み方向(Z方向)への熱膨張率は、例えば2ppm/℃以上7ppm/℃以下である。なお、電子部品2の熱膨張率は、市販のTMA(Thermo-Mechanical Analysis)装置を用いて、JIS K7197−1991に準じた測定方法により測定される。以下、各部材の熱膨張率は、電子部品2と同様に測定される。
配線基板3は、電子部品2を支持するとともに、電子部品2を駆動もしくは制御するための電源や信号を電子部品2へ供給する機能を有するものである。この配線基板3は、コア基板5と、コア基板5の上下面に形成された一対のビルドアップ層6とを含んでいる。
コア基板5は、配線基板3の剛性を高めつつ一対のビルドアップ層6間の導通を図るものである。このコア基板5は、ビルドアップ層6を支持する基体7と、基体7を厚み方向に貫通したスルーホール内に配された筒状のスルーホール導体8と、スルーホール導体8に取り囲まれた柱状の絶縁体9とを含んでいる。
基体7は、配線基板3を高剛性かつ低熱膨張率とするものである。この基体7は、例えば、エポキシ樹脂等の樹脂と樹脂に被覆されたガラスクロス等の基材と樹脂中に分散した
酸化珪素等からなるフィラー粒子とを含む。基体7の厚みは、例えば0.04mm以上2mm以下である。
スルーホール導体8は、一対のビルドアップ層6同士を電気的に接続するものである。このスルーホール導体8は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料によって形成することができる。
絶縁体9は、スルーホール導体8に取り囲まれた空間を埋めるものである。この絶縁体9は、例えばエポキシ樹脂等の樹脂材料によって形成することができる。
一方、コア基板5の上下面には、上述した如く、一対のビルドアップ層6が形成されている。一対のビルドアップ層6のうち、一方のビルドアップ層6は、バンプ3を介して電子部品2と接続し、他方のビルドアップ層6は、例えば半田ボール(図示せず)を介して外部回路と接続する。
ビルドアップ層6は、基体7上に積層された複数の絶縁層10と、基体7上または絶縁層10上に部分的に配された複数の導電層11と、絶縁層10を厚み方向に貫通した複数のビア導体12とを含んでいる。
絶縁層10は、厚み方向または主面方向に離れた導電層11同士の絶縁部材や主面方向に離れたビア導体12同士の絶縁部材として機能するものである。絶縁層10の詳細については後述する。
導電層11は、厚み方向または主面方向に互いに離れており、接地用配線、電力供給用配線または信号用配線等の配線として機能するものである。導電層11は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料からなる。また、導電層11の厚みは、3μm以上20μm以下であり、導電層11の厚み方向および主面方向への熱膨張率は、例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下である。また、導電層11のヤング率は、例えば70GPa以上150以下GPaである。なお、導電層11のヤング率は、MTS社製ナノインデンターXPを用いて、ISO14577−1:2002に準じた方法で測定される。以下、各部材のヤング率は、導電層11と同様に測定される。
ビア導体12は、厚み方向に互いに離れた導電層11同士を電気的に接続するものである。このビア導体12は、導電層11と同様の材料からなり、同様の特性を有する。また、ビア導体12は、コア基板5に向って幅狭となる柱状に形成されている。ビア導体12の幅は、例えば10μm以上75μm以下である。
次に、絶縁層10について詳細に説明する。
絶縁層10は、コア基板5側に配された樹脂層13と、コア基板5と反対側に配された無機絶縁層14とを含んでいる。無機絶縁層14のコア基板5と反対側の一主面の一部には、導電層11が配されており、無機絶縁層14の一主面の他の部分には、隣接する絶縁層10の樹脂層13の一部が配されている。
樹脂層13は、絶縁層10において接着部材として機能するものである。また、樹脂層13は、その一部がコア基板5側に配された導電層11同士の間に配されており、主面方向に離れた導電層11同士の絶縁部材として機能するものである。また、樹脂層13は、無機絶縁層14よりもヤング率が小さく弾性変形しやすいため、配線基板3におけるクラックの発生を抑制するものである。樹脂層13の厚みは、例えば3μm以上30μm以下である。樹脂層13のヤング率は、例えば0.2GPa以上20GPa以下である。樹脂
層13の厚み方向および主面方向への熱膨張率は、例えば20ppm/℃以上50ppm/℃以下である。
この樹脂層13は、図1(b)に示すように、樹脂15と樹脂15中に分散した複数のフィラー粒子16とを含んでいる。
樹脂15は、樹脂層13において接着部材として機能するものである。この樹脂15は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂またはポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。樹脂15のヤング率は、例えば0.1GPa以上5GPa以下である。樹脂15の厚み方向および主面方向への熱膨張率は、例えば20ppm/℃以上50ppm/℃以下である。
フィラー粒子16は、樹脂層13を高剛性かつ低熱膨張率とするものである。このフィラー粒子16は、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウムまたは炭酸カルシウム等の無機絶縁材料からなる。フィラー粒子16の平均粒径は、例えば0.5μm以上5μm以下である。フィラー粒子16の熱膨張率は、例えば0ppm/℃以上15ppm/℃以下である。樹脂層13におけるフィラー粒子16の含有割合は、例えば3体積%以上60体積%以下である。なお、フィラー粒子16の平均粒径は、配線基板3の厚み方向への断面において、各粒子の粒径の平均値を算出することによって測定することができる。また、樹脂層13におけるフィラー粒子16の含有割合は、配線基板3の厚み方向への断面において、樹脂層13においてフィラー粒子16が占める面積の割合を含有割合(体積%)とみなすことによって測定することができる。以下、各部材の平均粒径および含有割合は、フィラー粒子16と同様に測定される。
無機絶縁層14は、コア基板5と反対側の一主面の一部に導電層11が配されており、導電層11の支持部材として機能するものである。また、無機絶縁層14は、絶縁層13を高剛性かつ低熱膨張率とすることによって、電子部品2と配線基板3との熱膨張率の差を低減し、電子部品2の実装時や作動時に実装構造体1に熱が加わった際に、電子部品2と配線基板3との熱膨張率の違いに起因した反りを低減するものである。無機絶縁層14の厚みは、例えば3μm以上30μm以下である。無機絶縁層14のヤング率は、例えば10GPa以上50GPa以下である。また、無機絶縁層14の厚み方向および主面方向への熱膨張率は、例えば0ppm/℃以上10ppm/℃以下である。
無機絶縁層14は、図1(b)ないし図3(b)に示すように、一部が互いに接続した複数の無機絶縁粒子17を含んでおり、複数の無機絶縁粒子17の間には間隙18が形成されている。すなわち、無機絶縁層14は、多孔質体であり、無機絶縁粒子17同士が互いに接続した三次元網目状構造をなしている。また、複数の無機絶縁粒子17同士の接続部19は、括れ状であり、また、ネック構造をなしている。無機絶縁層14においては、複数の無機絶縁粒子17同士が互いに接続して拘束し合うことから、樹脂層13中に分散したフィラー粒子16のように流動しないため、無機絶縁層14を高剛性かつ低熱膨張率とすることができる。
複数の無機絶縁粒子17は、一部が互いに接続した複数の第1無機絶縁粒子17aと、第1無機絶縁粒子17aよりも粒径が大きく、一部が第1無機絶縁粒子17aと接続しているとともに、第1無機絶縁粒子17aを挟んで互いに離れた複数の第2無機絶縁粒子17bとを含んでいる。複数の無機絶縁粒子17における第1無機絶縁粒子17aの含有割合は、例えば20体積%以上90体積%以下であり、複数の無機絶縁粒子17における第2無機絶縁粒子17bの含有割合は、例えば10体積%以上80体積%以下である。
第1無機絶縁粒子17aは、無機絶縁層14において接続部材として機能するものである。この第1無機絶縁粒子17aは、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウムまたは酸化カルシウム等の無機絶縁材料からなり、中でも、低熱膨張率および低誘電正接の観点から、酸化ケイ素を用いることが望ましい。この場合、第1無機絶縁粒子17aは、酸化ケイ素を90質量%以上含んでいればよい。また、酸化ケイ素は、結晶構造に起因した熱膨張率の異方性を低減するため、アモルファス(非晶質)状態であることが望ましい。
第1無機絶縁粒子17aは、例えば球状である。また、第1無機絶縁粒子17aの平均粒径は、3nm以上110nm以下である。このように第1無機絶縁粒子17aの粒径が微小であるため、無機絶縁層14を緻密なものとして高剛性かつ低熱膨張率とすることができるとともに、後述するように、無機絶縁層14を作製する際に第1無機絶縁粒子17a同士を容易に接続することができる。
第2無機絶縁粒子17bは、その粒径が大きいことから、無機絶縁層14に生じたクラックが迂回するためのエネルギーを増加させるため、このクラックの伸長を抑制するものである。第2無機絶縁粒子17bは、第1無機絶縁粒子17aと同様の材料を用いることができ、中でも、第1無機絶縁粒子17aと材料特性を近づけるため、第1無機絶縁粒子17aと同じ材料を用いることが望ましい。この第2無機絶縁粒子17bは、例えば球状である。また、第2無機絶縁粒子17bの平均粒径は、0.5mm以上5mm以下である。このように第2無機絶縁粒子17bの粒径が大きいため、無機絶縁層14に生じたクラックの伸長を良好に抑制できる。
間隙18は、開気孔であり、無機絶縁層14の一主面および他主面に開口20を有する。また、無機絶縁層14が多孔質体であり、また、三次元網目状構造であることから、間隙18の少なくとも一部は、無機絶縁層14の厚み方向への断面において、無機絶縁粒子17に取り囲まれている。この間隙18には、樹脂層13の一部が入り込んでおり、特に、樹脂15の一部が入り込んでいる。その結果、弾性変形しやすい樹脂15によって無機絶縁層14に加わった応力が緩和されるため、無機絶縁層14におけるクラックの発生を抑制できる。なお、無機絶縁層14および間隙18のうち間隙18が占める割合は、例えば10体積%以上50体積%以下である。
ここで、図1(b)に示すように、便宜上、1つの無機絶縁層14について、コア基板5と反対側の一主面に配された樹脂層13を第1樹脂層13aとし、コア基板5側の他主面に配された樹脂層13を第2樹脂層13bとする。また、第1樹脂層13aの樹脂15を第1樹脂15aとし、第2樹脂層13bの樹脂15を第2樹脂15bとする。また、第1樹脂層13aのフィラー粒子16を第1フィラー粒子16aとし、第2樹脂層13bのフィラー粒子16を第2フィラー粒子16bとする。
ところで、無機絶縁層14と導電層11とは熱膨張率が異なるため、電子部品2の実装時や作動時に配線基板3に熱が加わると、無機絶縁層14と導電層11との間に熱応力が加わることがある。
一方、本実施形態の配線基板3は、図2(a)に示すように、一部が互いに接続した複数の無機絶縁粒子17を有する無機絶縁層14と、無機絶縁層14の一主面の一部に配された導電層11と、無機絶縁層14の一主面の他の部分に配されているとともに導電層11の側面および無機絶縁層14と反対側の一主面を被覆した第1樹脂層13aとを備え、第1樹脂層13aの一部は、複数の無機絶縁粒子17同士の間隙18に入り込んでいる。
この第1樹脂層13aは、導電層11の側面および無機絶縁層14と反対側の一主面を
被覆することによって導電層11を無機絶縁層14に固定することができ、さらに、第1樹脂層13aが複数の無機絶縁粒子17同士の間隙18に入り込んでいることから、第1樹脂層13aと無機絶縁層14との接着強度を高め、ひいては第1樹脂層13aによって導電層11を固定する力を高めることができる。その結果、導電層11と無機絶縁層14との接着強度を高めることができ、導電層11と無機絶縁層14との剥離を抑制することができる。したがって、導電層11の断線を抑制し、ひいては電気的信頼性に優れた配線基板3を得ることができる。
また、第2樹脂層13bの一部は、図2(b)に示すように、複数の無機絶縁粒子17同士の間隙18に入り込んでいる。その結果、第2樹脂層13bが複数の無機絶縁粒子17同士の間隙18に入り込んでいるため、第2樹脂層13bと無機絶縁層14との接着強度を高めることができる。したがって、第2樹脂層13bと無機絶縁層14との剥離を抑制することができるため、電子部品2の実装時や作動時に配線基板3に熱が加わった際に、配線基板3内部に含まれる水分がこの剥離した箇所で膨張することを抑制し、剥離部分におけるこの膨張に起因したクラック発生を抑制することができる。その結果、このクラックに起因した導電層11の断線やイオンマイグレーションによる短絡を抑制することができる。
また、無機絶縁層14は、図1(b)および図3(a)に示すように、第1樹脂層13aの一部が入り込んだ第1層領域21aと、第2樹脂層13bの一部が入り込んだ第2層領域21bとを含んでおり、第1層領域21aの厚みは、第2層領域21bの厚みよりも小さい。その結果、第1樹脂層13aの一部を充填する前の第1層領域21aの間隙18にめっき液、エッチング液または界面活性剤等の薬液が侵入して残存することを低減することができるため、残存した薬液に含まれる塩素などが配線の金属材料を溶解することに起因した、主面方向に離れた導電層11同士のイオンマイグレーションを低減することができる。なお、第1層領域21aの厚みは、例えば無機絶縁層14の厚みの1%以上30%以下であり、第2層領域21bの厚みは、例えば無機絶縁層14の厚みの70%以上99%以下である。
また、図3(a)に示すように、無機絶縁層14の内部において、第1樹脂層13aの一部および第2樹脂層13bの一部が接している。その結果、無機絶縁層14と第1樹脂層13aとの接着強度および無機絶縁層14と第2樹脂層13bとの接着強度の双方を高めることができる。また、第1樹脂層13aと第2樹脂層13bとの界面が無機絶縁層14の内部に位置するため、無機絶縁層14と導電層11との角部に集中しやすい応力に起因した第1樹脂層13aと第2樹脂層13bとの剥離を抑制できる。
また、第1樹脂層13aの無機絶縁層14に近接した領域(第1近接領域22a)における第1フィラー粒子16aの含有割合は、第2樹脂層13bの無機絶縁層14に近接した領域(第2近接領域22b)における第2フィラー粒子16bの含有割合よりも小さい。その結果、第1近接領域22aにおいては、第1フィラー粒子16aの含有割合を小さくすることによって、主面方向で隣接した導電層11同士の間における樹脂15の充填効率を高め、導電層11同士の間における絶縁性を高め、さらには導電層11同士の短絡を抑制しつつ導電層11のピッチを小さくして配線を高密度化することができる。また、第2近接領域22bにおいては、第2フィラー粒子16bの含有割合を大きくすることによって、無機絶縁層14との熱膨張率の差を低減して、第2樹脂層13bと無機絶縁層14との間に加わる熱応力を低減し、ひいては第2樹脂層13bと無機絶縁層14との剥離を低減できる。
第1近接領域22aは、無機絶縁層14の一主面から第1樹脂層13aの厚みの20%以内の領域であり、第2近接領域22bは、無機絶縁層14の他主面から第2樹脂層13
bの厚みの20%以内の領域である。この第1近接領域22aの厚みは、導電層11の厚みよりも小さく、第2近接領域22bの厚みは第1近接領域22aの厚みと同じである。第1近接領域22aにおける第1フィラー粒子16aの含有割合は、例えば70体積%以上85体積%以下である。また、第2近接領域22bにおける第2フィラー粒子16bの含有割合は、例えば80体積%以上90体積%以下である。
また、第1近接領域22aにおける第1フィラー粒子16aの含有割合は、第1樹脂層13aのコア基板5と反対側に配された他の無機絶縁層14に近接した領域(第3近接領域22c)における第1フィラー粒子16aの含有割合よりも小さい。その結果、上述した第1近接領域22aおよび第2近接領域22bにおける場合と同様の効果が得られる。なお、第3近接領域22cの厚みは、第2近接領域22bの厚みと同じである。また、第3近接領域22cにおける第1フィラー粒子16aの含有割合は、第2近接領域22bにおける第2フィラー粒子16bの含有割合と同様である。
また、第1樹脂層13aの第1近接領域22aおよび第3近接領域22c以外の領域(残部領域22d)における第1フィラー粒子16aの含有割合は、第1近接領域22aにおける第1フィラー粒子16aの含有割合よりも小さい。その結果、残部領域22dにおける第1フィラー粒子16aの含有割合が小さいことから、第1樹脂層13aを形成する際に後述する樹脂層前駆体が流動しやすくなるため、第1樹脂層13aの平坦性を高めることができる。また、第1近接領域22aにおける第1フィラー粒子16aの含有割合が大きいことから、第1近接領域22aと無機絶縁層14との熱膨張率の差を低減して、第1樹脂層13aと無機絶縁層14との間に加わる熱応力を低減することができる。なお、残部領域22dにおける第1フィラー粒子16aの含有割合は、例えば55体積%以上80体積%以下である。
一方、導電層11は、図1(b)および図3(b)に示すように、複数の無機絶縁粒子17同士の間隙18に入り込んだ第1部分23aと、無機絶縁層14上に配された第2部分23bとを含んでいる。その結果、第1部分23aにおいてアンカー効果が生じるため、導電層11と無機絶縁層14との接着強度を高めることができる。また、無機絶縁層14の間隙18に配される第1部分23aよりも電気抵抗を低減できる第2部分23bによって、導電層11の電気抵抗を低減して信号伝送特性を高めることができる。
第1部分23aの厚みは、第2部分23bの厚みよりも小さい。その結果、表皮効果によって電流密度が高くなりやすい導電層11の表面部分において、電気抵抗が第2部分23bよりも大きい第1部分23aが占める割合を小さくできるため、導電層11における信号伝送特性を高めることができる。また、導電層11において、電気抵抗が第1部分23aよりも小さい第2部分23bの占める割合を大きくすることによって、導電層11の電気抵抗を低減して信号伝送特性を高めることができる。なお、第1部分23aの厚みは、第1層領域21aの厚みと同じである。また、第1部分23aの厚みは、導電層11の厚みの例えば5%以上30%以下である。
無機絶縁層14の内部において、第1部分23aと第2層領域21bとは接しており、第1部分23aの厚みは、第2層領域21bの厚みよりも小さい。その結果、表皮効果によって電流密度が高くなりやすい導電層11の表面部分において第1部分23aが占める割合を小さくできるため、導電層11における信号伝送特性を高めることができる。また、導電層11よりもヤング率が小さく弾性変形しやすい第2樹脂層13bの一部が間隙18に入り込んだ第2層領域21bの厚みを大きくすることによって、無機絶縁層14におけるクラックの発生を良好に低減できる。
無機絶縁層14の内部において、第1部分23aと第2層領域21bとは接している。
その結果、無機絶縁層14の厚み方向において、第1部分23a以外の領域において第2樹脂層13bの一部を入り込ませることで、無機絶縁層14に加わった応力を良好に緩和することができる。
第1部分23aは、第2部分23bよりも主面方向に張り出した張出部24を有する。その結果、張出部24によって厚み方向(Z方向)にアンカー効果が生じ、厚み方向における導電層11と無機絶縁層14との接着強度を高めることができるため、例えばビア導体12と絶縁層10との厚み方向における熱膨張率の違いに起因した熱応力が導電層11に加わった際に、導電層11と無機絶縁層14との剥離を低減できる。なお、張出部24の張出量は、例えば0.5μm以上5μm以下である。
張出部24の張出量は、第2部分23b側から反対側に向かって小さくなっている。その結果、張出部24の張出量が第2部分23b側で大きいため、張出部24による厚み方向(Z方向)へのアンカー効果を高めることができる。なお、張出部24の第2部分23b側における張出量と、張出部24の第2部分23bと反対側における張出量との差は、例えば0.5μm以上2μm以下である。
次に、上述した実装構造体1の製造方法を、図4ないし図8に基づいて説明する。
(1)図4(a)に示すように、コア基板5を作製する。具体的には、例えば以下のように行なう。
プリプレグを硬化させてなる基体7と基体7の上下に配された銅等の金属箔とからなる積層板を準備する。次に、サンドブラスト加工、レーザー加工またはドリル加工を用いて、積層板にスルーホールを形成する。次に、例えば無電解めっき法、電解めっき法、蒸着法、CVD法またはスパッタリング法等を用いて、スルーホール内に導電材料を被着させてスルーホール導体8を形成する。次に、スルーホール導体8の内側に未硬化樹脂を充填して硬化させることによって、絶縁体9を形成する。次に、例えば無電解めっき法、電解めっき法、蒸着法、CVD法またはスパッタリング法等を用いて、絶縁体9上に導電材料を被着させた後、フォトリソグラフィー法およびエッチング法等を用いて、基体7上の金属箔および導電材料をパターニングして導電層11を形成する。その結果、コア基板5を作製することができる。
(2)図4(b)ないし図6(c)に示すように、銅箔等の金属箔またはPETフィルム等の樹脂シートからなる支持体25と、支持体25上に配された無機絶縁層14と、無機絶縁層14上に配された未硬化の樹脂層前駆体26とを含む積層シート27を作製する。具体的には、例えば以下のように行なう。
まず、図4(b)および図4(c)に示すように、無機絶縁粒子17と無機絶縁粒子17が分散した溶剤28とを有する無機絶縁ゾル29を準備し、無機絶縁ゾル29を支持体25の一主面に塗布する。次に、図5に示すように、無機絶縁ゾル29から溶剤28を蒸発させて、支持体25上に無機絶縁粒子17を残存させる。この残存した無機絶縁粒子17は、近接箇所で互いに接触している。次に、図6(a)および図6(b)に示すように、この無機絶縁粒子17を加熱して、隣接する無機絶縁粒子17同士を近接箇所で接続させることによって、無機絶縁層14を形成する。次に、図6(c)に示すように、無機絶縁層14上に樹脂層前駆体26を積層し、積層された無機絶縁層14および樹脂層前駆体26を厚み方向に加熱加圧することによって、樹脂層前駆体26の一部を間隙18内に充填する。その結果、積層シート27を作製することができる。
無機絶縁ゾル29における無機絶縁粒子17の含有割合は、例えば10%体積以上50
体積%以下であり、無機絶縁ゾル29における溶剤28の含有割合は、例えば50%体積以上90体積%以下である。溶剤28は、例えばメタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミドまたはこれらから選択された2種以上の混合物を含んだ有機溶剤等を用いることができる。
無機絶縁ゾル29の乾燥は、例えば加熱および風乾により行なわれる。乾燥温度は、例えば、20℃以上溶剤28の沸点未満であり、乾燥時間は、例えば20秒以上30分以下である。
無機絶縁粒子17同士を接続させる際の加熱温度は、溶剤28の沸点以上、無機絶縁粒子17の結晶化開始温度未満であり、さらには、100℃以上250℃以下である。また、加熱時間は、例えば0.5時間以上24時間以下である。第1無機絶縁粒子17aは、上述した如く、平均粒径が3nm以上110nm以下と微小であるため、このような低温であっても、第1無機絶縁粒子17a同士および第1無機絶縁粒子17aと第2無機絶縁粒子17bとを強固に接続することができる。これは、第1無機絶縁粒子17aが微小であることから、第1無機絶縁粒子17aの原子、特に表面の原子が活発に運動するため、このような低温下でも第1無機絶縁粒子17a同士および第1無機絶縁粒子17aと第2無機絶縁粒子17bとが強固に接続すると推測される。
さらに、このように低温で加熱することによって、第1無機絶縁粒子17aおよび第2無機絶縁粒子17bの粒子形状を保持しつつ、第1無機絶縁粒子17a同士および第1無機絶縁粒子17aと第2無機絶縁粒子17bとを近接領域のみで接続することができる。その結果、接続部19においてネック構造を形成するとともに、開気孔の間隙18を容易に形成することができる。なお、第1無機絶縁粒子17a同士を強固に接続することができる温度は、例えば、第1無機絶縁粒子17aの平均粒径を110nm以下に設定した場合は250℃程度であり、第1無機絶縁粒子17aの平均粒径を15nm以下に設定した場合は150℃程度である。
ここで、本実施形態においては、積層された無機絶縁層14および樹脂層前駆体26を加熱加圧することによって、樹脂層前駆体26の一部を開気孔である間隙18内に入り込ませる。この際、加熱加圧の条件を適宜調節することによって、樹脂層前駆体26側に位置する領域の間隙18には樹脂層前駆体26の一部を入り込ませるが、支持体25側に位置する領域の間隙18には樹脂層前駆体26の一部を入り込ませない。このような加熱加圧の条件としては、加圧圧力が小さく、加圧時間が短く、加熱温度が小さいことが望ましい。具体的には、加圧圧力は、例えば0.05MPa以上0.5MPa以下であり、加圧
時間は、例えば20秒以上5分以下であり、加熱温度は、例えば50℃以上100℃以下である。なお、この加熱温度は、樹脂層前駆体26の硬化開始温度未満であるため、樹脂層前駆体26を未硬化の状態で維持することができる。
また、樹脂層前駆体26の一部を間隙18内に充填する際に、第1無機絶縁粒子17aの平均粒径がフィラー粒子16の平均粒径よりも大きいと、間隙18にフィラー粒子16が入り込みにくいため、樹脂層前駆体26と無機絶縁層14との境界に近接した領域でフィラー粒子16が濃縮される。
(3)図7(a)および図7(b)に示すように、コア基板5上に積層シート27を積層して絶縁層10を形成し、絶縁層10に導電層11およびビア導体12を形成する。具体的には、例えば以下のように行なう。
まず、図7(a)に示すように、樹脂層前駆体26をコア基板5に接しつつ、コア基板5上に積層シート27を積層し、積層されたコア基板5および積層シート27を厚み方向に加熱加圧することによって、コア基板5に積層シート27を接着させた後、積層シート27の樹脂層前駆体26を硬化開始温度以上、熱分解温度未満の温度で加熱することによって、樹脂層前駆体26を硬化させて樹脂層13とする。その結果、この樹脂層13と積層シート27に含まれていた無機絶縁層14とを有する絶縁層10をコア基板5上に形成することができる。次に、図7(b)に示すように、無機絶縁層14から支持体15を機械的または化学的に剥離した後、レーザー加工等を用いて、絶縁層10を厚み方向に貫通するとともに導電層11を露出したビア孔を形成する。次に、無電解めっき法および電解めっき法等を用いたセミアディティブ法、サブトラクティブ法またはフルアディティブ法等によって、絶縁層10上に所望のパターンの導電層11を形成するとともに、ビア孔内にビア導体12を形成する。この際、導電層11は、絶縁層10における無機絶縁層14の一主面の一部に配される。
本工程で樹脂層前駆体26が硬化してなる樹脂層13は、積層シート27に含まれていた無機絶縁層14のコア基板5側の他主面に配された第2樹脂層13bとなり、この無機絶縁層14とコア基板5とを接着する。また、本工程で樹脂層前駆体26が硬化して第2樹脂層13bとなるため、工程(2)で間隙18に入り込んでいた樹脂層前駆体26の一部が本工程で間隙18に入り込んだ第2樹脂層13bの一部となり、さらに、工程(2)でフィラー粒子16が濃縮されていた樹脂層前駆体26と無機絶縁層14との境界に近接した領域が本工程で第2近接領域22bとなる。
また、本工程の加熱加圧の条件を適宜調節することによって、支持体25側に位置する領域において樹脂層前駆体26の一部が入り込んでいない間隙18を残しつつ、樹脂層前駆体26をコア基板5に接着させることができる。この樹脂層前駆体26を硬化させることによって、第1層領域21aの間隙18に第2樹脂層13bの一部が入り込んでいない無機絶縁層14を形成することができる。このような加熱加圧の条件としては、工程(2)と同様の条件を用いることができる。
第1層領域21aは、支持体25を剥離すると無機絶縁層14の一主面に露出することから、無機絶縁層14の一主面に導電層11を形成する際に、めっき液が第1層領域21aの間隙18に入り込むため、導電層11の第1部分23aが形成される。
また、導電層11を形成する際には、導電層11を所望のパターンとするため、無機絶縁層14上の一主面にはレジストが形成されているが、第1層領域21a内にはレジストが形成されていないため、第1層領域21aの間隙18に入り込んだめっき液が主面方向に広がって、張出部24が形成される。このめっき液は無機絶縁層14の一主面から離れるにつれて主面方向に広がりにくくなるため、張出部24の張出量は、第2部分23b側から反対側に向かって小さくなる。
(4)図8(a)および図8(b)に示すように、絶縁層10上に積層シート27を積層してさらに絶縁層10を形成し、この絶縁層10に導電層11およびビア導体12を形成することによって、コア基板5上にビルドアップ層6を形成し、配線基板3を作製する。具体的には、例えば以下のように行なう。なお、便宜上、本工程で形成する絶縁層10を第1絶縁層10aとし、工程(3)で形成した絶縁層10を第2絶縁層10bとする。
まず、図8(a)に示すように、樹脂層前駆体26を第2絶縁層10bに接しつつ、第2絶縁層10b上に積層シート27を積層し、積層された第2絶縁層10bおよび積層シート27を厚み方向に加熱加圧することによって、第2絶縁層10bに積層シート27を接着させた後、積層シート27の樹脂層前駆体26を硬化開始温度以上、熱分解温度未満
の温度で加熱することによって、樹脂層前駆体26を硬化させて樹脂層13とする。その結果、この樹脂層13と積層シート27に含まれていた無機絶縁層14とを有する第1絶縁層10aを第2絶縁層10b上に形成することができる。次に、図8(b)に示すように、工程(3)と同様の方法で、第1絶縁層10aに導電層11およびビア導体12を形成する。
本工程で樹脂層前駆体26が硬化してなる樹脂層13は、第2絶縁層10bに含まれていた無機絶縁層14のコア基板5と反対側の一主面に配された第1樹脂層13aとなる。また、第2絶縁層10bに積層シート27を接着させる際に、樹脂層前駆体26は流動するため、樹脂層前駆体26は無機絶縁層14の一主面の他の部分に配されるとともに導電層11の側面および一主面を被覆する。したがって、第1樹脂層13aは、無機絶縁層14の一主面に配された導電層11の側面および一主面を被覆する。
ここで、本実施形態においては、工程(3)にて上述した如く、第2絶縁層10bにおいて無機絶縁層14の一主面に露出した第1層領域21aでは、間隙18に第2樹脂層13bの一部が入り込んでいない。そして、本工程の加熱加圧は、条件を適宜調節することによって、樹脂層前駆体26の一部を第1層領域21aの間隙18に入り込ませることができる。この樹脂層前駆体26を硬化させることによって、第1層領域21aの間隙18に入り込んだ第1樹脂層13aの一部を形成することができる。このような加熱加圧の条件として、工程(2)と同様の条件を用いることができる。このように工程(2)と同様の条件であっても、樹脂層前駆体26が第1層領域21aと接しているため、樹脂層前駆体26の一部を第1層領域21aの間隙18に良好に入り込ませることができる。
この際に、第1無機絶縁粒子17aの平均粒径が第1フィラー粒子16aの平均粒径よりも大きいと、間隙18に第1フィラー粒子16aが入り込みにくいため、第1樹脂層13aと無機絶縁層14との境界に近接した領域で第1フィラー粒子16aが濃縮され、上述した第1近接領域22aが形成される。
また、第1樹脂層13aの一部が間隙18に入り込んだ第1層領域21aの厚みを、第2樹脂層13bの一部が間隙18に入り込んだ第2層領域21bの厚みよりも小さくすると、第1近接領域22aにおいて濃縮される第1フィラー粒子16aの量が、第2近接領域22bにおいて濃縮される第2フィラー粒子16bの量よりも小さくなる。その結果、第1近接領域22aにおける第1フィラー粒子16aの含有割合が、第2近接領域22bにおける第2フィラー粒子16bの含有割合よりも小さくなる。
なお、本工程を繰り返すことにより、ビルドアップ層6をより多層化することができる。
(5)配線基板3に対してバンプ4を介して電子部品2をフリップチップ実装することにより、図1(a)に示した実装構造体1を作製する。なお、電子部品2は、ワイヤボンディングにより配線基板3と電気的に接続してもよいし、あるいは、配線基板3に内蔵させてもよい。
本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、改良、組合せ等が可能である。
また、上述した本発明の実施形態においては、本発明に係る配線基板3の例としてコア基板5およびビルドアップ層6からなるビルドアップ多層基板を挙げたが、本発明に係る配線基板3の例としては、ビルドアップ多層基板以外にも、例えば、コアレス基板も含まれる。
また、上述した本発明の実施形態においては、無機絶縁層14をビルドアップ層6に適用した構成を例に説明したが、無機絶縁層14を基体7に適用しても構わない。この場合には、基体7は、第2樹脂層13bおよび無機絶縁層14を有しており、ビルドアップ層6は、無機絶縁層14に配された第1樹脂層13aを有しており、無機絶縁層14の間隙18に第1樹脂層13aの一部が入り込んでいる。
また、上述した本発明の実施形態においては、1つのビルドアップ層6が絶縁層10を2層含む構成を例に説明したが、1つのビルドアップ層6は絶縁層10を3層以上含んでいても構わない。この場合は、各絶縁層10において、無機絶縁層14の間隙18に第1樹脂層13aの一部が入り込んでいても構わない。
また、上述した本発明の実施形態においては、無機絶縁粒子17が第1無機絶縁粒子17aおよび第2無機絶縁粒子17bを含んでいたが、無機絶縁粒子17は第1無機絶縁粒子17aのみを含んでいてもよい。
また、上述した本発明の実施形態においては、工程(2)において溶剤28の蒸発と無機絶縁粒子17の加熱とを別々に行なっていたが、これらを同時に行なっても構わない。