以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
図1に、本発明を適用する抵抗測定装置1のブロック図を示す。この抵抗測定装置1は、CPU(中央処理演算装置)10、直流定電流源11、スイッチ12、アンプ13、A/D変換器14、プログラム記憶部15、測定用記憶部16、タッチパネル17、内部トリガ発生回路19、外部トリガ入力端子20、及びプローブ21a,21b,22a,22bを備えている。
CPU10は、プログラムに従って動作して、抵抗測定装置1全体の動作を統括的に制御するものである。同図では、CPU10の動作を判りやすくするために、CPU10内に、本発明における機能ブロック(各部)を図示している。CPU10の動作用のプログラムは、プログラム記憶部15に記憶されている。プログラム記憶部15は、ROM(リード・オンリー・メモリ)又はハードディスク等である。CPU10は、プログラムに従い抵抗値演算部として動作して、直流定電流源11、スイッチ12、アンプ13、A/D変換器、及びプローブ21a〜22bと共に、本発明における測定部になる。又、CPU10は、プログラムに従い動作して、タッチパネル17(表示部17a)への表示内容を制御する表示制御部になる。又、CPU10は、タッチパネル17(操作部17b)及び表示制御部と共に、ディレイ時間を設定するためのディレイ時間設定部になる。又、CPU10は、第一の収束時間判定部、第二の収束時間判定部になる。
CPU10には、測定開始用のトリガ信号が入力されるようになっている。トリガ信号は、外部トリガ信号又は内部トリガ信号の内から選択できるようになっている。外部トリガ信号は、装置外部から外部トリガ入力端子20を介してCPU10に入力される。内部トリガ信号は、内部トリガ発生回路19から入力される。内部トリガ発生回路19は、例えば操作部17bのスタートボタン(不図示)が押されたときにトリガ信号を発生する回路、又は周期的にトリガ信号を発生する回路である。
直流定電流源11は、DUT(測定対象体)101に流すための抵抗測定用電流Iを出力するものである。抵抗測定用電流Iの電流値は、予め設定された既知の値である。直流定電流源11の出力は、CPU10により開閉制御可能なスイッチ12を介して、プローブ21aに接続されている。プローブ21aをDUT101の一端に接触させると共に、基準電位に接続されているプローブ21bをDUT101の他端に接触させることで、DUT101が抵抗測定用電流Iの流路になる。
アンプ13は、一例として差動アンプであり、DUT101の両端に接触させたプローブ22a,22bを介して、DUT101の両端電圧を検出して、検出した両端電圧を適宜増幅してA/D変換器14に出力する。
A/D変換器14は、アンプ13が出力するDUT101の両端電圧をアナログ/デジタル変換して、デジタル値でCPU10に出力する。CPU10は、抵抗値演算部として、抵抗測定用電流Iの電流値、及びDUT101の両端電圧値からDUT101の抵抗値を算出する。
測定用記憶部16は、例えば、RAM(ランダムアクセスメモリ)、又はハードディスク等の書き換え可能なメモリであり、測定用に設定される条件や、測定した抵抗値を記憶する。
タッチパネル17は、表示部17a及び操作部17bを兼ねるものであり、例えば液晶パネルのような表示画面上に、タッチパッドのような接触式の操作パネルを設けたものである。
次に、抵抗測定装置1の動作について説明する。
抵抗測定装置1は、電源を起動して動作を開始したときに、一例として、通常の動作モードである抵抗測定モードで動作する。
図2に、抵抗測定モードにおけるタッチパネル17の表示例を示す。
抵抗測定モード時には、CPU10(表示制御部)は、タッチパネル17に、測定した抵抗値を数値で示す抵抗値表示81を表示させる。又、CPU10は、設定された測定条件を示す表示として、トリガ設定表示82及びディレイ時間表示83を表示させる。さらに、CPU10は、操作部17bとして、トリガ設定ボタン91、ディレイ時間数値設定ボタン92、及びディレイ時間設定支援モードボタン93を表示させる。なお、測定した抵抗値や測定条件を装置外部に出力するようにしてもよい。
トリガ設定ボタン91は、内部トリガ/外部トリガの選択や、トリガ信号の立ち上がり(↑)/立ち下り(↓)/レベルの何れでトリガするかという設定など、トリガ条件を設定するためのものである。このボタン91が操作されると、図示しないが、CPU10はトリガ条件設定用の別画面をタッチパネル17に表示させ、測定者の操作でトリガ条件が設定される。
ディレイ時間数値設定ボタン92は、本発明におけるディレイ時間設定部の一例であり、このボタン92が操作される(押される)と、図示しないが、CPU10は、一例として数値設定用の数値キー(テンキー)を表示させる。その数値キーの操作で、ディレイ時間の数値設定が可能になっている。
抵抗測定モード時の動作を、図1を参照して説明する。CPU10(測定部)は、外部トリガ信号(又は内部トリガ信号)の入力時に、直ちにスイッチ12を断から接に制御することで、DUT101へ抵抗測定用電流Iの出力を開始する。CPU10は、トリガ信号の入力時からの経過時間を測定し始め、設定されたディレイ時間が経過した時のDUT101の両端電圧を、A/D変換器14から読み込んで、DUT101の抵抗値を測定する。CPU10は、測定した抵抗値をタッチパネル17に抵抗値表示81(図2参照)として表示させる。
この抵抗測定装置1は、例えばコイルの製造検査ラインで使用され、同様のコイルを順次、多数検査するために用いられる。測定者は、DUT101の抵抗値を測定後、別のコイルに交換し、外部トリガ信号を入力してコイルの抵抗を測定する。このような検査が繰り返し行われる。測定者は、コイルの検査を開始する前に、ディレイ時間の設定を行う。
ディレイ時間を適正な時間に設定するために、測定者は、図2に示すディレイ時間設定支援モードボタン93を操作する。
CPU10は、ディレイ時間設定支援モードボタン93が操作される(押される)ことで、ディレイ時間設定支援モードの動作を開始する。このディレイ時間設定支援モードが本発明における抵抗値波形表示機能に相当する。
ディレイ時間設定支援モードでは、CPU10(測定部)が、トリガ信号の入力時から抵抗測定用電流Iの出力を開始して、DUT101の抵抗値を時間の経過に従い順次測定(サンプリング)して、測定された各抵抗値を、経過時間と対応可能に測定用記憶部16に記憶させる。CPU10(表示制御部)は、測定用記憶部16に記憶された複数の抵抗値を、トリガ信号の入力時からの経過時間に対する波形でタッチパネル17に表示させる。
図3に、ディレイ時間設定支援モードにおけるタッチパネル17の表示例を示す。
CPU10は、タッチパネル17に、経過時間を横軸(時間軸)とし、抵抗値を縦軸(抵抗軸)として、測定用記憶部16に記憶させた時系列に沿った各抵抗値を、抵抗値波形24として表示させる。時間軸には、経過時間が目視で分かるように、適当な間隔で目盛りを付して、その目盛りの経過時間を示す数値(この例では、0、10、20、・・・50ms)を表示させることが好ましい。縦軸には、抵抗値が分かるように、適当な間隔で目盛りを付して、そこの目盛りの抵抗値を示す数値(この例では、0、5、10Ω)を表示させることが好ましいが、少なくとも抵抗値波形24の形を視認できればよい場合には、抵抗値を示す目盛りやその数値の表示は無くしてもよい。
又、CPU10は、タッチパネル17に、抵抗値波形24と同じ時間軸で、トリガ信号の波形をトリガ波形25として表示させることが好ましい。トリガ波形25を表示させると、測定者はトリガが掛かった時間軸上の位置を、より確実に視認することができる。トリガ波形25の表示をオン/オフできるようにしてもよい。
このように、時間軸に対する抵抗値波形24を表示することで、測定者は、抵抗値波形24の形を視認して、抵抗値が定常状態に収束する経過時間を、一目瞭然に知ることができる。図3の例だと、抵抗値波形24から概ね40ms以上の経過時間で定常状態に収束していることが分かるので、測定者は、例えば、数値・条件設定ボタン38を操作して、ディレイ時間を数値(例えば45ms)で設定してもよいし、戻るボタン43を操作して、図2の抵抗測定モードに戻り、ディレイ時間数値設定ボタン92でディレイ時間を数値設定してもよい。CPU10は、設定されたディレイ時間を、測定用記憶部16に記憶させる。
さらに、抵抗測定装置1は、適正なディレイ時間を簡便に設定できるような種々の機能を有している。
図3に示すように、CPU10は、操作部17bとして、矢印キー30、Aマーカー表示ボタン31、Aマーカー収束位置ボタン32、変動ライン表示ボタン33、Bマーカー表示ボタン34、Bマーカー変動位置ボタン35、マーカー選択ボタン36、ディレイ時間決定ボタン37、数値・条件設定ボタン38、時間軸設定ボタン41、及び/又は抵抗軸設定ボタン42をタッチパネル17に表示させることが好ましい。又、CPU10は、抵抗測定モードに戻るための、戻るボタン43を表示させる。
Aマーカー表示ボタン31が操作されると、CPU10(表示制御部)は、抵抗値波形24上にAマーカー27を表示させる。このAマーカー27は、矢印キー30の左矢印(←)キー及び右矢印(→)キーの操作で、抵抗値波形24上の任意の位置に移動するようになっている。更に、CPU10は、Aマーカー27の位置の抵抗値波形24の情報であるAマーカー情報表示52を、タッチパネル17に数値で表示させる。抵抗値波形24の情報として、少なくとも経過時間を表示させることが好ましく、更に抵抗値を表示させることがより好ましい。同図の例では、Aマーカー情報表示52は、Aマーカー27の位置の経過時間が45.00msであり、抵抗値が10.000Ωであることを示している。なお、この波形や抵抗値(下記の抵抗値も同様)は模式的に例示したものである。
測定者は、抵抗値波形24を見ながら矢印キー30を操作して、Aマーカー27を、抵抗値波形24が定常状態(一定値)になる位置、つまりディレイ時間として適切な位置に移動させる。続いて、測定者は、ディレイ時間決定ボタン37(本発明におけるディレイ時間設定部の一例)を操作する。CPU10は、ディレイ時間決定ボタン37が操作されたときに、Aマーカー27の位置の経過時間を読み込んで、ディレイ時間として測定用記憶部16に記憶させる。又、CPU10は、タッチパネル17に、設定されたディレイ時間を数値(図の例では45.00ms)で示すディレイ時間表示51を表示させる。
測定者は、ディレイ時間を設定後、戻るボタン43を操作して、図2の抵抗測定モード画面に戻り、抵抗値の測定を行う。
このように、Aマーカー27の位置をディレイ時間として設定できるので、測定者が数値入力する必要がなく、適正なディレイ時間を迅速、簡便に設定することができる。
図4に、ディレイ時間設定支援モードにおける別の機能例を示す。
Aマーカー収束位置ボタン32は、抵抗値波形24が定常状態に収束する位置に、Aマーカー27を自動的に表示させるためのボタンである。Aマーカー収束位置ボタン32が操作されると、CPU10は、本発明における第一の収束時間判定部として動作して、測定用記憶部16に記憶されている抵抗値波形24の各抵抗値が、第一の所定条件内に収束した時の経過時間を第一の収束時間として判定する。続いて、CPU10は、判定した第一の収束時間に対応する抵抗値波形24上の位置に、Aマーカー27を表示させる。Aマーカー27の位置の情報は、Aマーカー情報表示52として数値で表示する。図4では、算出した収束時間が40.00msである場合のAマーカー27及びAマーカー情報表示52の表示例を示している。
第一の収束条件は、例えば、最後に測定した抵抗値(抵抗値波形24の最後の抵抗値)に対する偏差が所定条件内(例えば最後に測定された抵抗値に対し±0.01〜5%の範囲内)に初めて入ったときの経過時間を収束時間とする。又は、第一の収束条件は、抵抗値波形24の接線の傾きや接線の角度、若しくは抵抗値波形24の微分値が所定条件内に入ったときの経過時間を収束時間とする。これら収束条件は、数値・条件設定ボタン38を操作して、所望の条件に設定できるようにすることが好ましい。第一の収束条件として、公知の他の条件や計算方法を使用してもよい。
測定者は、Aマーカー27の表示位置の経過時間を、ディレイ時間として設定してよいか判断し、よい場合には、ディレイ時間決定ボタン37を操作して設定する。測定者は、矢印キー30を操作して、表示されたAマーカー27の位置を例えばマージン分だけ更に右側に移動させてから、ディレイ時間決定ボタン37を操作して、ディレイ時間として設定してもよい。
図5に、ディレイ時間設定支援モードにおける別の機能例を示す。
変動ライン表示ボタン33は、Aマーカー27(又は後述するBマーカー28)の抵抗値に対する偏差を表すラインLsを表示させるためのボタンである。CPU10(表示制御部)は、変動ライン表示ボタン33が操作されると、Aマーカー27の抵抗値(例えば10.000Ω)を読み込み、予め設定された割合(例えば−20%)で演算して偏差を示す抵抗値(例えば8.000Ω)を算出する。CPU10は、算出した抵抗値によりラインLsを表示させる。又、CPU10は、ラインLsの情報を示すライン情報表示53を表示させる。基準となるAマーカー27の位置が判るように、Aマーカー27の抵抗値の位置を表す基準ラインLaも表示させることが好ましい。
ラインLsの偏差(割合)は、矢印キー30の上矢印(↑)キー及び下矢印(↓)キーで増減させて変更設定できるようにしてもよいし、数値・条件設定ボタン38で値を変更設定できるようにしてもよい。偏差を表すラインは1本に限られず、例えば+5%ライン、+10%ライン、20%ラインのように異なる偏差のラインを複数本表示させてもよい。
このように変動ラインLsを表示させることで、測定者は、変動ラインLsを目安として、抵抗値波形24が定常状態に収束する収束時間を簡便に判別することができる。
図6に、ディレイ時間設定支援モードにおける別の機能例を示す。
Bマーカー表示ボタン34が操作されると、CPU10(表示制御部)は、抵抗値波形24上にBマーカー28を表示させる。このBマーカー28は、Aマーカー27と同様に、矢印キー30の左矢印(←)キー及び右矢印(→)キーの操作で、抵抗値波形24上の任意の位置に移動させることができる。移動させるマーカーは、マーカー選択ボタン36で選択する。例えばマーカー選択ボタン36を操作するたびに、Aマーカー27とBマーカー28とが交互に選択される。選択されているマーカーは、例えば色つき(図では黒色)で表示させたり、明るく表示させたり、点滅して表示させたりすることで、判別可能に表示させる。
CPU10は、Bマーカー28の位置の抵抗値波形24の情報であるBマーカー情報表示54を、タッチパネル17に数値で表示させる。同図の例では、Bマーカー情報表示54として、Bマーカー28の位置の経過時間が34.00msであり、抵抗値が9.900Ωであることを示している。
マーカー選択ボタン36で、Bマーカー28を選択してから、ディレイ時間決定ボタン37を操作することで、Bマーカー28の位置の経過時間をディレイ時間として設定するようにしてもよい。又、Bマーカー28を選択してから、変動ライン表示ボタン33を操作することで、Bマーカー28の抵抗値に対する偏差を表すラインLs(図5参照)を表示させるようにしてもよい。
CPU10(表示制御部)は、Aマーカー27及びBマーカー28を表示させているときに、Aマーカー27(一方のマーカー)の抵抗値に対するBマーカー28(他方のマーカー)の抵抗値の変化の割合(変化率)を演算し、演算した変化率を示す変化率表示55を表示させることが好ましい。一例として、測定者が、Aマーカー27を抵抗値が十分に安定している位置に移動させておき、続いてBマーカー28を検査精度として許容される所望の変化率(例えば−1%)となる位置に変化率表示55を見つつ移動させる。移動させたBマーカー28の位置の経過時間が、検査精度として許容される適正なディレイ時間になる。なお、変化率表示55として、Bマーカー28の抵抗値に対するAマーカー27の抵抗値の変化率を演算して表示させるようにしてもよい。
図7に示すように、変化率設定ボタン(Bマーカー変動位置ボタン)35を操作して、変化率を数値設定し、設定した変化率になる位置に、Bマーカー28を自動的に移動させるようにしてもよい。変化率は、例えば、矢印キー30の上矢印(↑)キー及び下矢印(↓)キーで値を増減させて設定できるようにしてもよいし、数値・条件設定ボタン38を操作して数値キーを表示させ、数値の入力操作で設定できるようにしてもよい。CPU10は、Aマーカー27の抵抗値に対して、設定された変化率となる抵抗値波形24の位置を判別して、その位置にBマーカー28を表示させる。同図では、変化率として−3%に設定した例を示している。このBマーカー28の位置でよい場合、Bマーカー28を選択してから、ディレイ時間設定ボタン37を操作してディレイ時間として設定する。なお、変化率は、±3%のように正負の範囲で設定できるようにしてもよい。
このように変化率を設定できるようにすると、一層簡便に適正なディレイ時間を設定することができる。
又、図示しないが、Aマーカー27の抵抗値に対するBマーカー28の抵抗値の変化率を設定できるようにするだけでなく、更にAマーカー27とBマーカー28との時間間隔(Aマーカー27の経過時間とBマーカー28の経過時間との差の時間)を入力設定できるようにしておき、設定した時間間隔で、設定した変化率になる最初の位置(経過時間が最も早い位置)に、Aマーカー27及びBマーカー28を自動的に表示させるようにしてもよい。例えば時間間隔として20ms、変化率として−2%のように、適宜設定する。この場合、CPU10は、経過時間0ms側から時間を順次大きくしていき、設定された変化率(+2%)になるまで、設定された時間間隔(20ms)だけ離れた抵抗値の変化率を順次算出していき、Aマーカー27及びBマーカー28の表示すべき位置を検出する。この場合も、±2%のように変化率を正負の範囲で設定できるようにしてもよいし、Bマーカー28に対するAマーカーの変化率(例えば+2%)を設定できるようにしてもよい。
測定者は、表示されたBマーカー28(左側に表示されるマーカー)の位置の経過時間を、ディレイ時間として設定してよいか確認する。良い場合には、測定者は、Bマーカー28を選択して、ディレイ時間決定ボタン37でディレイ時間として設定する。又、Aマーカー27の位置をディレイ時間として設定してもよい。
このように変化率と時間間隔とを設定できるようにすると、抵抗値波形24が安定する位置(定常状態になる位置)を、自動的にマーカー27,28で表示させることができる。従って、適正で最小限のディレイ時間を設定することができる。
図3〜図7に表示した時間軸設定ボタン41は、時間軸を設定するためのものである。このボタン41が操作されると、図示しないが、CPU10は、時間軸設定用画面を表示させる。時間軸設定画面では、例えば、時間軸スケールの「手動設定」、「自動設定」の切り替えや、「手動設定」で表示させる場合の時間軸スケール(例えば「表示開始時間」、「表示終了時間」)や「測定期間」の設定が行えるようにする。例えば、図3では、時間軸を0〜50msで表示させているが、測定者が「手動設定」にして、「表示開始時間」を例えば10ms及び「表示終了時間」を例えば70msのように、所望の任意の値で設定できるようにする。又、矢印キー30の操作により、表示させる範囲を移動させてもよい。例えば右矢印(→)キーが操作されたときに、CPU10は、表示範囲を0〜50msから10〜60msに移動させるように、矢印の方向に、表示させる時間軸の範囲を移動させてもよい。抵抗測定装置1がディレイ時間設定支援モードで抵抗値を順次測定する測定期間は、測定前に表示されている時間軸の表示終了時間に合わせた期間としてもよいし、その期間の所定倍(例えば2倍)の期間としてもよい。つまり、測定期間を時間軸に基づいて決定してもよい。又、測定期間を所望の任意の期間に数値設定できるようにしてもよい。数値設定する場合、測定期間に基づいて(連動させて)時間軸を決定してもよい。
時間軸の「自動設定」が選択された場合、CPU10は、本発明における第二の収束時間判定部として動作して、測定用記憶部16に記憶されている複数の抵抗値が、第二の所定条件内に収束した時の経過時間を第二の収束時間として判定する。第二の所定条件は、定常状態になる経過時間を判定するための条件である。例えば、最後に測定した抵抗値に対する偏差が所定条件内(例えば測定した最後の抵抗値に対し±0.1〜5%の範囲内)に入ったときの経過時間を第二の収束時間とする。又は、例えば、抵抗値波形24の接線の傾きや角度、若しくは波形の微分値が所定条件内に入ったときの経過時間を第二の収束時間とする。これら第二の所定条件を設定できるようにすることが好ましい。抵抗値波形24の収束時間は、公知の他の方法で算出してもよい。CPU10は、トリガ信号の入力時(0ms)から、少なくとも第二の収束時間までが表示される時間軸スケールで抵抗値波形24をタッチパネル17に表示させる。時間軸スケールは、第二の収束時間よりも多少遅い時間まで表示されるようにしてもよい。この場合、例えば時間軸スケールとして、第二の収束時間に、表示用のマージン倍率(例えば1.1〜2倍)を乗じた時間を表示できるスケールとする。
時間軸スケールを自動設定することで、抵抗値波形24が収束する様子を測定者がちょうどよいスケールで目視でき、その抵抗値波形24の形から、測定者は適正なディレイ時間が判る。第二の収束条件は、例えば数値・条件設定ボタン38の操作で所望の条件に設定できるようにすることが好ましい。自動設定した時間軸スケールは、「手動設定」で任意の時間軸スケールに設定変更できるようにすることが好ましい。
なお、前述した第一の収束条件と第二の収束条件とを同じ条件にしてもよいし、異なる条件としてもよい。
抵抗軸設定ボタン42は、縦軸を設定するためのものである。手動設定で所望の縦軸スケールに設定することもできるし、自動設定することもできる。自動設定時は、CPU10が、測定用記憶部16に記憶されている複数の抵抗値の内の最大値を少なくとも表示できるように、縦軸の最大値を決定する。
なお、DUT101としてコイルを測定する例について説明したが、DUT101の種類はコイルに限定されない。インダクタンス成分やキャパシタンス成分を有する過渡期間の長いDUT101の抵抗値を測定する場合、本発明の抵抗測定装置1を使用することで、ディレイ時間を適正な時間に設定することができるので、抵抗値を正確に測定することができる。又、例えば抵抗器の抵抗値を測定する場合であっても、抵抗器のリード端子に起因して僅かに過渡現象が生じるので、短い時間ではあるがディレイ時間を適正な時間に設定することができる。
又、表示部17aに一対のAマーカー27及びBマーカー28を表示可能な例について説明したが、必要性に応じて、1つのAマーカー27だけを表示できるようにしてもよいし、例えば3つ、5つ等複数のマーカーを表示できるようにしてもよい。複数のマーカーを表示する場合、全てのマーカーの情報を表示可能とし、さらに一つのマーカーの抵抗値に対する残りの全てのマーカーの抵抗値の変化率を表示可能とすることが好ましい。又、複数のマーカーのうちの任意の一つのマーカーの位置の抵抗値と、任意の他のマーカーの位置の抵抗値との変化率を表示可能としてもよい。又、マーカー間の時間間隔を演算して、その演算結果を表示するようにしてもよい。
又、抵抗測定モードにおいても、トリガ信号の入力時から時間の経過と共に順次抵抗値の測定を行い、ディレイ時間が経過した時の抵抗値を数値で表示するようにしてもよい。又、ディレイ時間設定支援モード(抵抗波形表示機能)で動作させたときに、抵抗測定モードの表示画面(図2)内に、抵抗値が波形表示されるようにしてもよい。又、抵抗測定モードにおいても常に抵抗波形表示機能を動作させ、抵抗測定モードの表示画面内に、常に抵抗値を波形表示するようにしてもよい。