JP5978200B2 - 磁気記録用磁性粉、磁気記録媒体、および磁気記録用磁性粉の製造方法 - Google Patents
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Description
更に本発明は、上記磁気記録用磁性粉を磁性層の強磁性粉末として含む磁気記録媒体、および上記磁気記録用磁性粉の製造方法にも関する。
しかし六方晶フェライトの粒子サイズを小さくすると、磁性粒子が磁化方向を保とうとするエネルギー(磁気エネルギー)が熱エネルギーに抗することが困難となり、いわゆる熱揺らぎにより記録の保持性が低下してしまい、磁気エネルギーが熱エネルギーに負けて記録が消失する現象が無視できなくなってくる。この点について説明すると、磁化の熱的安定性に関する指標として「KuV/kT」が知られている。Kuは磁性体の異方性定数、Vは粒子体積(活性化体積)、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。磁気エネルギーKuVを熱エネルギーkTに対して大きくすることで熱揺らぎの影響を抑えることができるが、粒子体積V、即ち磁性体の粒子サイズ、は前述のように媒体ノイズを低減するために小さくする必要がある。上記の通り磁気エネルギーはKuとVとの積であるため、Vが小さい領域で磁化エネルギーを高めるためにはKuを大きくすればよいことになるが、Kuと異方性磁界HKはHK=2Ku/Msの関係があり、Kuを大きくするとMsが変わらなければHKも大きくなる。異方性磁界HKは磁化困難軸方向から飽和磁化させるために必要な磁場強度であり、HKが大きいと磁気ヘッドによる磁化の反転が起こりにくくなり記録(情報の書き込み)が困難となって再生出力が低下してしまう。つまり、磁性粒子のKuを高めるほど、情報の書き込みは困難となる。
以上説明したように、高密度記録化、熱的安定性、書き込み容易性の3つの特性を満たすことはきわめて困難であり、これは磁気記録のトリレンマと呼ばれ、今後更なる高密度記録化を進めるうえで大きな課題となっている。
ただし本発明者は、上記のカルシウム含有M型六方晶ストロンチウムフェライトに含まれる元素から、希土類元素およびFe以外の遷移金属元素は排除することとした。これは以下の理由による。
M型六方晶フェライトは、組成式MFe12O19で表される結晶構造を有し、Mで表されるアルカリ土類金属元素として主にストロンチウムを含むものがストロンチウムフェライトであるが、主にカルシウムを含むカルシウムフェライトも知られている。一方、アルカリ土類金属のイオン半径の大きさがBa>Sr>Caの順であること等が理由で、カルシウムフェライトは、置換元素を含まなければM型の結晶構造を取ることができないと言われている。そのためカルシウムフェライトについては、M型の結晶構造を形成するために、La等の希土類元素やCo等の遷移金属元素を置換元素として含めることが行われている(例えば特開2010−1171号公報参照)。しかし、希土類元素や遷移金属元素(フェライト形成に必須のFeは除く。)の存在は、粒子間の組成分布のバラつきをもたらし、その結果、記録の保持性に劣る粒子(記録してもすぐに減磁してしまう粒子)や磁気特性に劣り記録に関与できない粒子の占める割合が多くなる。これにより磁気特性分布が劣化し、具体的には反転磁界分布SFD(Switching Field Distribution)が上昇し、電磁変換特性の低下を引き起こしてしまう。
そこで本発明者は、M型六方晶ストロンチウムフェライトに含まれる元素から、希土類元素およびFe以外の遷移金属元素を排除することとした。なお本発明において、希土類元素とは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luをいい、Fe以外の遷移金属元素とは、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Hf、Ta、Wをいう。六方晶フェライトを構成する主なアルカリ土類金属元素としてストロンチウムを採用したため、希土類元素およびFe以外の遷移金属元素を存在させずにM型の結晶構造を取ることができるのである。こうして、熱的安定性に優れ、しかも低SFDであり、磁気記録用磁性粉として好適なM型六方晶ストロンチウムフェライトの提供が可能になった。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
平均粒子サイズが10〜25nmの範囲であり、かつFe100原子%に対して0.05〜3原子%のCaを含み、ただし希土類元素およびFe以外の遷移金属元素を含まないマグネトプランバイト型六方晶ストロンチウムフェライト磁性粉である磁気記録用磁性粉、
に関する。
測定対象の粉末を、日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いて撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして粒子写真を得る。粒子写真から目的の粒子を選びデジタイザーで輪郭をトレースしカールツァイス製画像解析ソフトKS−400で粒子のサイズを測定する。500個の粒子のサイズを測定する。ここで粒子サイズとは、一次粒子サイズをいう。一次粒子とは、凝集のない独立した粒子である。上記方法により測定される粒子サイズの平均値(算術平均)を粉末の平均粒子サイズとする。
1.磁性層表面にヤマト科学製プラズマリアクターで1〜2分間表面処理を施し、磁性層表面の有機物成分(結合剤成分等)を灰化して取り除く。
2.シクロヘキサノンまたはアセトンなどの有機溶剤を浸したろ紙を金属棒のエッジ部に貼り付け、その上で上記1.の処理後の磁性層表面をこすり、磁性層成分を磁気テープからろ紙へ転写し剥離する。
3.上記2.で剥離した成分をシクロヘキサノンやアセトンなどの溶媒の中に振るい落とし(ろ紙ごと溶媒の中にいれ超音波分散機で振るい落とす)、溶媒を乾燥させ剥離成分を取り出す。
4.上記3.でかき落とした成分を十分洗浄したガラス試験管に入れ、その中にn−ブチルアミンを磁性層成分の20ml程度加えてガラス試験管を封緘する。(n−ブチルアミンは、灰化せず残留した結合剤を分解できる量加える。)
5.ガラス試験管を170℃で20時間以上加熱し、バインダー・硬化剤成分を分解する。
6.上記5.の分解後の沈殿物を純水で十分に洗浄後乾燥させ、粉末を取り出す。
7.上記6.で採取した粉末にネオジウム磁石を近づけ吸着した粉末(即ち磁性粉)を取り出す。
以上の工程により、磁性層から磁性粉を採取することができる。上記処理による粒子へのダメージはほとんどないため、上記方法により、磁性層に含まれていた状態の粉末の粒子サイズの測定が可能である。
非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
上記強磁性粉末は、上述の磁気記録用磁性粉である磁気記録媒体、
に関する。
Sr、CaおよびFeを少なくとも含む原料混合物を用いるガラス結晶化法により上述の磁気記録用磁性粉を得ることを含む、磁気記録用磁性粉の製造方法、
に関する。
Fe塩、Sr塩およびCa塩を塩基含有水系溶液中で混合することにより六方晶フェライト前駆体を調製すること;および、
調製した六方晶フェライト前駆体を含む水系溶液を、300℃以上に加熱し、かつ20MPa以上の圧力を加えながら反応流路に連続的に送液することにより、六方晶フェライト前駆体を六方晶フェライトに転換すること;
により、上述の磁気記録用磁性粉を得ることを含む。
調製した六方晶フェライト前駆体を含む水系溶液を有機修飾剤と混合し、次いで、
混合により得られた溶液を、加熱および加圧されつつ連続的に送液されている水と混合した後に、反応流路に送液することにより行う。
六方晶フェライト前駆体が転換することにより得られた六方晶フェライトとAl化合物とを含む水系溶液を加熱および加圧することにより、Alを六方晶フェライト表面に被着させることを更に含む。
加えて、所定量のカルシウムをM型六方晶ストロンチウムフェライトに含ませることにより高い飽和磁化σsを有する磁気記録用磁性粉の提供も可能となる。
上記磁気記録用磁性粉を磁性層の強磁性粉末として用いることにより、高密度記録に適した磁気記録媒体を提供することができる。
本発明の一態様にかかる磁気記録用磁性粉は、平均粒子サイズが10〜25nmの範囲であり、かつFe100原子%に対して0.05〜3原子%のCaを含むマグネトプランバイト型六方晶ストロンチウムフェライト磁性粉である。ただし先に記載した理由から、希土類元素およびFe以外の遷移金属元素を含まないものとする。
以下、上記磁気記録用磁性粉(以下、単に「磁性粉」ともいう。)について、更に詳細に説明する。
SFDは、磁気特性の分布の指標であり、磁性粉に含まれる粒子間の組成のバラつきが大きいほどSFDは上昇するが、粒子間の粒子サイズのバラつきが大きいこともSFD上昇の原因となる。したがって、SFDをより一層低下させるためには、粒子間の粒子サイズのバラつきを低減する、即ち粒度分布をシャープにすることが有効である。ただし前述の特許文献1に記載されているように、ストロンチウムフェライトは、バリウムフェライトと比べて粒度分布が広くなる傾向がある。特許文献1は、この点をストロンチウムフェライトをガラス結晶化法により作製する際の原料混合物の組成調整により解決することを提案している。これに対し本発明者は、ストロンチウムフェライトの製造時に少量のBaを共存させることで、粒度分布がシャープなストロンチウムフェライトが得られることを新たに見出した。これは、バリウムフェライトの結晶化温度がストロンチウムフェライトの結晶化温度より低いため、少量のBaが存在すると、ストロンチウムフェライトの結晶化に先立ちバリウムフェライトが結晶化(析出)し、このバリウムフェライトを核としてストロンチウムフェライトの結晶化が進行することによるものと、本発明者は推察している。
以上のBa存在による効果を良好に得る観点からは、本発明の一態様にかかる磁性粉は、Baを、Sr、CaおよびBaの合計含有量100原子%に対するBa含有量が5〜40原子%の範囲となる量で含ませることが好ましい。また、Fe100原子%に対するBa含有量としては、1〜5原子%の範囲とすることが好ましい。
本発明の一態様にかかる磁気記録用磁性粉の製造方法は、特に限定されるものではない。製造方法としては、例えば、共沈法、逆ミセル法、水熱合成法、ガラス結晶化法等のM型六方晶フェライトの製造方法として公知の方法を採用することができる。各製造方法において、原料混合物に、ストロンチウムフェライトを得るために必須のSrおよびFeに加えてCaを含ませることにより、Ca含有M型ストロンチウムフェライトを得ることができる。
(1)六方晶フェライト形成成分およびガラス形成成分を含む原料混合物を溶融し、溶融物を得る工程(溶融工程);
(2)溶融物を急冷し非晶質体を得る工程(非晶質化工程);
(3)非晶質体を加熱処理し、六方晶フェライト粒子を析出させる工程(結晶化工程);
(4)加熱処理物から析出した六方晶フェライト磁性粒子を捕集する工程(粒子捕集工程)。
以上の工程の詳細については、例えば特開2011−213544号公報段落0018〜0035、特開2011−225417号公報段落0013〜0024等を参照できる。通常、原料混合物に含まれていたCaは全量またはほぼ全量が作製される磁性粉に含まれるものとなるため、得られる磁性粉におけるCa含有量は、原料混合物の組成により制御することができる。したがって、原料混合物としては、Fe100原子%に対して0.05〜3原子%の範囲のCaを含むものを用いることが好ましい。Caは、酸化物として、または溶融等の工程において酸化物に変わり得る各種の塩(例えば炭酸塩)として、原料混合物調製時に混合することができる。また前述のように、本発明の一態様にかかる磁性粉は、Baを含むことができるが、Baも同様に、通常、原料混合物に含まれていたBaは全量またはほぼ全量が作製される磁性粉に含まれるものとなるため、得られる磁性粉におけるBa含有量は、原料混合物の組成により制御することができる。例えば、Sr、CaおよびBaの合計含有量100原子%に対して5〜40原子%の範囲のBaを含む原料混合物を用いることにより、同様の量でBaを含む磁性粉を得ることができる。BaもCa等と同様に、酸化物として、または溶融等の工程において酸化物に変わり得る各種の塩(例えば炭酸塩)として、原料混合物調製時に混合することができる。先に説明した通り、原料混合物にBaを含ませることで、ストロンチウムフェライトの結晶化に先立ちバリウムフェライトが結晶化(析出)し、このバリウムフェライトが核となることで、シャープな粒度分布を示す磁性粉を得ることが可能になると、本発明者は推察している。
上記塩基含有水系溶液中では、通常、Feとアルカリ土類金属とを含む塩が粒子状、好ましくはコロイド粒子として析出する。ここで析出する粒子は、その後に高温高圧水、好ましくは亜臨界〜超臨界状態の水の存在下に置かれることによりフェライト化し六方晶フェライト磁性粒子となる。
有機化合物の使用量は、前駆体100質量部に対して0.01〜1000質量部の範囲とすることが好ましく、0.05〜500質量部の範囲とすることがより好ましく、0.1〜300質量部の範囲とすることがより好ましい。ここで基準とする前駆体量は、実測値または原材料仕込み量からの理論生成量である。この点は、以下に前駆体量を基準として記載する値についても、同様とする。
(1)六方晶フェライト前駆体を含む水系溶液を、内部を流れる流体を300℃以上に加熱し、かつ20MPa以上の圧力を加えて加圧する反応流路に連続的に送液することにより、上記反応流路内で六方晶フェライト前駆体を六方晶フェライトに転換する。
(2)六方晶フェライト前駆体粒子を含む水系溶液を、加熱および加圧された水、好ましくは200℃以上に加熱され、かつ20MPa以上の圧力が加えられた水、と混合した後に、内部を流れる流体を300℃以上に加熱し、かつ20MPa以上の圧力を加えて加圧する反応流路に連続的に送液することにより、六方晶フェライト前駆体を六方晶フェライトに転換する。
図1は、連続的水熱合成プロセスに好適な製造装置の概略説明図である。以下、図1に基づき本発明の一態様にかかる磁性粉の製造方法の具体的態様の一例を説明する。ただし本発明は、下記態様に限定されるものではない。
(3)六方晶フェライト磁性粒子およびAl化合物を含み、任意に有機修飾剤を含む水系溶液を、内部を流れる流体を300℃以上に加熱し、かつ20MPa以上の圧力を加えて加圧する反応流路に連続的に送液することにより、上記反応流路内でAlを六方晶フェライト磁性粒子表面に被着させる。
(4)六方晶フェライト磁性粒子およびAl化合物を含み、任意に有機修飾剤を含む水系溶液を、加熱および加圧された水、好ましくは200℃以上に加熱され、かつ20MPa以上の圧力が加えられた水と混合した後に、内部を流れる流体を300℃以上に加熱し、かつ20MPa以上の圧力を加えて加圧する反応流路に連続的に送液することにより、上記反応流路内でAlを六方晶フェライト磁性粒子表面に被着させる。
その他、連続的水熱合成プロセスの具体的態様については、上述の通りである。
本発明の一態様は、非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、強磁性粉末として、上述の本発明の一態様にかかる磁性粉を含む磁気記録媒体に関する。本発明の一態様にかかる磁性粉は、微粒子化と高Ku化の両立が可能であり、高密度記録領域において高い熱的安定性を発揮することができる。しかも低SFDを示すこともできる。かかる磁性粉を磁性層に含む本発明の一態様にかかる磁気記録媒体は、高密度記録用磁気記録媒体として好適である。
以下、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体について、更に詳細に説明する。
磁性層に使用される強磁性粉末およびその製造方法の詳細は、前述の通りである。
次に非磁性層に関する詳細な内容について説明する。本発明の一態様にかかる磁気記録媒体は、非磁性支持体と磁性層との間に非磁性粉末と結合剤を含む非磁性層を有することができる。非磁性層に使用される非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2010−24113号公報段落0036〜0039を参照できる。
非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドが好ましい。
これらの支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行ってもよい。また、本発明に用いることのできる非磁性支持体の表面粗さはカットオフ値0.25mmにおいて中心平均粗さRa3〜10nmが好ましい。
本発明の一態様にかかる磁気記録媒体の厚み構成は、非磁性支持体の厚みが、好ましくは3〜80μmである。磁性層の厚みは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものであるが、一般には0.01〜0.15μmであり、好ましくは0.02〜0.12μmであり、さらに好ましくは0.03〜0.10μmである。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
磁気記録媒体には、非磁性支持体の磁性層を有する面とは反対の面にバックコート層を設けることもできる。バックコート層には、カーボンブラックと無機粉末が含有されていることが好ましい。バックコート層形成のための結合剤、各種添加剤は、磁性層や非磁性層の処方を適用することができる。バックコート層の厚みは、0.9μm以下が好ましく、0.1〜0.7μmが更に好ましい。
磁性層、非磁性層またはバックコート層を形成するための塗布液を製造する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる強磁性粉末、非磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層塗布液、非磁性層塗布液またはバックコート層塗布液を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。このようなガラスビーズは、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。磁気記録媒体の製造方法の詳細については、例えば特開2010−24113号公報段落0051〜0057を参照できる。
SrCO3を1725g、H3BO3を666g、Fe2O3を1332g、Al(OH)3を52g、CaCO3を34gとなるよう秤量し、ミキサーにて混合し原料混合物を得た。
得られた原料混合物を、白金ルツボで熔融温度1380℃で溶解し、融液を攪拌しつつ白金ルツボの底に設けた出湯口を加熱し、融液を約6g/secで棒状に出湯させた。出湯液を水冷双ロールで急冷圧延して非晶質体を作製した。
得られた非晶質体280gを電気炉に仕込み、645℃(結晶化温度)まで昇温し、同温度で5時間保持し六方晶フェライト粒子を析出(結晶化)させた。
次いで六方晶フェライト粒子を含む結晶化物を乳鉢で粗粉砕し、ガラス瓶に1mmφジルコニアビーズ1000gと1%濃度の酢酸を800ml加えてペイントシェーカーにて3時間分散処理を行った後、分散液をビーズと分離させステンレスビーカーに入れた。分散液を100℃で3時間処理した後、遠心分離器で沈澱させてデカンテーションを繰り返して洗浄し、110℃で6時間乾燥させて粒子を得た。
原料混合物の調製に用いるCaCO3量を238gとした点以外は実施例1と同様に行った。
原料混合物の調製に用いるCaCO3量を136gとした点以外は実施例1と同様に行った。
原料混合物の調製に用いるCaCO3量を11gとした点以外は実施例1と同様に行った。
原料混合物の調製にCaCO3を用いなかった点以外は実施例1と同様に行った。
原料混合物の調製に用いるCaCO3量を6gとした点以外は実施例1と同様に行った。
原料混合物の調製に用いるCaCO3量を272gとした点以外は実施例1と同様に行った。
原料混合物の調製に用いるAl(OH)3量を13gとした点以外は実施例1と同様に行った。
原料混合物の調製に用いるAl(OH)3量を35gとした点以外は実施例1と同様に行った。
原料混合物の調製に用いるAl(OH)3量を95gとした点以外は実施例1と同様に行った。
原料混合物の調製に用いるAl(OH)3量を6.2gとした点以外は実施例1と同様に行った。
結晶化温度を635℃に変更した点以外は実施例1と同様に行った。
結晶化温度を630℃に変更した点以外は実施例1と同様に行った。
結晶化温度を660℃に変更した点以外は実施例1と同様に行った。
結晶化温度を670℃に変更した点以外は実施例1と同様に行った。
結晶化温度を620℃に変更した点以外は実施例1と同様に行った。
原料混合物の調製において、ZnOを14g、Nb2O5を22g添加した点以外は実施例1と同様に行った。
原料混合物の調製において、La2O3を108.8g、CoOを19g、ZnOを7g添加し、CaCO3量を408gとした点以外は実施例1と同様に行った。
原料混合物の調製において、BaCO3を57g添加した点以外は実施例1と同様に行った。
原料混合物の調製において、BaCO3を141g添加した点以外は実施例1と同様に行った。
原料混合物の調製において、BaCO3を76g添加した点以外は実施例1と同様に行った。
原料混合物の調製において、BaCO3を33g添加した点以外は実施例1と同様に行った。
(1)前駆体水溶液の調製
精製水に硝酸ストロンチウム(Sr(NO3)2・4H2O)、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2・4H2O)、硝酸鉄(III)(Fe(NO3)3・9H2O)、およびKOHを溶解することで、金属塩および金属水酸化物を含んだ水溶液(ゾル)を調製した。KOHは、反応溶液中のpHが9となる量、添加した。ゾル調製に用いる上記各塩の量は、調製した水溶液(ゾル)の濃度が0.01Mで、Ca/Fe比が0.5原子%になるように調整した。
(2)修飾剤溶液の調製
次にオレイン酸をエタノールに溶解して修飾剤溶液を調製した。調製した溶液の濃度は0.2Mであった。
(3)六方晶フェライトの合成
図1に示す製造装置の液槽2に水溶液(ゾル)を、液槽3に修飾剤溶液を導入した。なお製造装置の配管としては、SUS316BAチューブを用いた。
液槽1に導入した精製水を高圧ポンプ5aで送液しつつヒーター4で加熱することで配管100中に高温高圧水を流通させた。この際、加熱手段4cを通過後の高温高圧水の温度が450℃、圧力が30MPaとなるように温度および圧力を制御した。
一方、水溶液(ゾル)と修飾剤溶液は、体積比で水溶液:修飾剤溶液=5:5の割合となるように各々高圧ポンプ5b、5cを用いて液温25℃で配管101、102に送液し、途中2液を混合し、得られた混合液を混合部M1において上記高温高圧水と混合させ、引き続き、反応流路6において、400℃、30MPaで加熱・加圧することにより、六方晶フェライト磁性粒子を合成した。
その後、冷却部7において冷水により六方晶フェライト磁性粒子を含んだ液を冷却し、収集した。
収集した粒子をエタノールで洗浄し、続いて遠心分離することにより、オレイン酸に修飾された六方晶フェライト磁性粒子を分離した。
(4)Al被着処理
上記方法により得られた六方晶フェライト磁性粒子表面に超臨界合成法によりAl2O3を析出させるため、下記の操作を行った。
硝酸アルミニウム9水和物(純度99.9%)を0.1Mになるように精製水に溶解し、Al/Fe比が4原子%となるように六方晶フェライト磁性粒子を混合し混合液を得た。
図1に示す製造装置の液槽2に混合液を導入した。液槽3には、上記(3)と同様に修飾剤溶液を導入した。なお製造装置の配管としては、SUS316BAチューブを用いた。
液槽1に導入した精製水を高圧ポンプ5aで送液しつつヒーター4で加熱することで配管100中に高温高圧水を流通させた。この際、加熱手段4c通過後の高温高圧水の温度が450℃、圧力が30MPaとなるように温度および圧力を制御した。
一方、混合液と修飾剤溶液は、体積比で混合液:修飾剤溶液=50:50の割合になるように各々高圧ポンプ5b、5cを用いて25℃で配管101、102に送液し、途中2液を混合し、得られた混合液を混合部M1において上記高温高圧水と混合させ、引き続き、反応流路6において450℃、30MPaで加熱・加圧することにより、Al2O3に被覆された六方晶フェライト磁性粒子を得た。この粒子を含む液を冷却部7において冷水で冷却し、粒子を収集した。
前駆体水溶液の調製に用いる硝酸カルシウム(Ca(NO3)2・4H2O)量を、調製した水溶液(ゾル)におけるCa/Fe比が3.0原子%となるように変更した点以外は実施例16と同様に行った。
前駆体水溶液の調製に用いる硝酸カルシウム(Ca(NO3)2・4H2O)量を、調製した水溶液(ゾル)におけるCa/Fe比が1.5原子%となるように変更した点以外は実施例16と同様に行った。
前駆体水溶液調製時に、硝酸バリウム(Ba(NO3)2)を、調製した水溶液(ゾル)におけるBa/Fe比が1.5原子%となるように添加した点以外は実施例16と同様に行った。
(1)X線回折分析
実施例、比較例で得られた粒子についてX線回折分析を行ったところ、実施例1〜15、比較例2〜7で得られた粒子は、M型六方晶フェライトの単一相であることが確認された。
比較例1で得られた粒子では、M型六方晶フェライトの回折ピークに加えてCaFe2O4のピークが確認された。
実施例16〜19では、M型六方晶フェライトの回折ピークに加えてγ型Al2O3(アルミナ)のピークが確認された。
上記X線回折分析は、CuKα線を40kV、45mAの条件で走査し、XRDパターンを測定することにより行った。X線粉末回折スペクトルは、下記の実験条件下で測定した:
・PANalytical X’Pert Pro回折計、PIXcel検出器
・電圧45kV、強度40mA
・入射ビームおよび回折ビームのSollerスリット:0.017ラジアン
・分散スリットの固定角:1/4度
・マスク:10mm
・散乱防止スリット:1/4度
・測定モード:連続
・1段階あたりの測定時間:3秒
・測定速度:毎秒0.017度
・測定ステップ:0.05度
実施例、比較例で得られた磁性粉0.01gを10mLの4N−HCl溶液に浸漬し、ホットプレートにて80℃で3時間加熱することで溶解させた。溶解液を希釈後、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)分析装置にて元素分析を行い、得られた結果から、各元素比を求めた。
実施例、比較例で得た磁性粉の平均粒子サイズ(平均板径)を、前述の方法により求めた。
実施例、比較例で得た磁性粉の飽和磁化σsを、振動試料型磁束計(東英工業社製)を用い磁場強度1194kA/m(15kOe)で測定した。
振動試料型磁束計(東英工業社製)を用いてHc測定部の磁場スイープ速度を3分と30分で測定し、以下の熱揺らぎによるHcと磁化反転体積の関係式から異方性定数Kuを計算した。後述の表では、Kuを単位erg/ccで示す。表に示した値は、1erg/cc=10-1J/m3の換算式によりSI単位系に換算することができる。
Hc=2Ku/Ms{1−[(KuT/kV)ln(At/0.693)]1/2}
[上記式中、Ku:異方性定数、Ms:飽和磁化、k:ボルツマン定数、T:絶対温度、V:活性化体積、A:スピン歳差周波数、t:磁界反転時間]
実施例、比較例で得た磁性粉のSFDを、振動試料型磁束計(東英工業社製)を用いて、磁性粉試料に磁場をかけて第2象限の磁化曲線における微分曲線(dσ/dH)の半値幅を求め、その磁性粉の保磁力Hcの値で割ることで算出した。
実施例1〜15で作製した磁性粉について、高分解能TEM観察により粒子の断面を観察したところ、表層に被膜が形成されていることが確認された。
更に、実施例1〜15で作製した磁性粉末について、XPS(X線光電子分光)分析により粒子表面から深さ約0.5nmのAl/Fe比を測定したところ、上記(2)で得たICPによる測定値の1.5〜2.0倍の値が得られ、Alが表層に局在していることが確認された。
以上の結果から、実施例1〜15で作製した磁性粉では、粒子表面にAlが被着していることが確認できる。また、上記のTEMによる観察により、実施例1〜15で得た磁性粉末においては、一次粒子上に被膜が形成されていることが確認された。
(1)磁性層塗布液処方
六方晶フェライト磁性粉:100部
ポリウレタン樹脂:12部
質量平均分子量 10000
スルホン酸官能基含有量 0.5meq/g
ダイアモンド微粒子(平均粒径50nm):2部
カーボンブラック(旭カーボン社製#55、粒子サイズ0.015μm):0.5部
ステアリン酸:0.5部
ブチルステアレート:2部
メチルエチルケトン:180部
シクロヘキサノン:100部
(2)非磁性層塗布液
非磁性粉体 α酸化鉄:100部
平均一次粒子径 0.09μm
BET法による比表面積 50m2/g
pH 7
DBP吸油量27〜38g/100g
表面処理剤Al2O3 8質量%
カーボンブラック(コロンビアンカーボン社製コンダクテックスSC−U):25部
塩化ビニル共重合体(日本ゼオン社製MR104):13部
ポリウレタン樹脂(東洋紡社製UR8200):5部
フェニルホスホン酸:3.5部
ブチルステアレート:1部
ステアリン酸:2部
メチルエチルケトン:205部
シクロヘキサノン:135部
(3)磁気テープの作製
上記の塗布液のそれぞれについて、各成分をニ−ダで混練した。1.0mmφのジルコニアビーズを分散部の容積に対し65%充填する量を入れた横型サンドミルにポンプで通液し、2000rpmで120分間(実質的に分散部に滞留した時間)分散させた。得られた分散液にポリイソシアネートを非磁性層の塗布液には6.5部、さらにメチルエチルケトン7部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ調製した。
得られた非磁性層塗布液を、厚さ5μmのポリエチレンナフタレートベース上に乾燥後の厚さが1.0μmになるように塗布乾燥させた後、磁性層の厚さが70nmになるように逐次重層塗布を行い、乾燥後7段のカレンダで温度90℃、線圧300kg/cmにて処理を行った。1/4インチ巾にスリットし表面研磨処理を施して磁気テープを得た。
SNRの評価
各磁気テープの再生出力、ノイズ、SNRを、記録ヘッド(MIG、ギャップ0.15μm、1.8T)と再生用GMRヘッドをドラムテスターに取り付けて、トラック密度16KTPI、線記録密度400Kbpi(面記録密度6.4Gbpsi)の信号を記録した後に測定した。比較例1の測定値を基準とした。
表1に示すように、実施例の磁性粉は高Kuかつ低SFDを示し、これら磁性粉を用いて作製された磁気テープは高い電磁変換特性(SNR)を示した。本発明の一態様によれば、例えば2.0×106erg/cc以上(例えば2.0×106〜3.0×106erg/cc)のKu、1.2以下(例えば0.5〜1.2)のSFDを示す高Ku低SFD磁性粉を得ることができる。
また表1に示すように、所定量のCaを含む実施例の磁性粉は高い飽和磁化σsを示し、中でもCaとともに所定量のAlを含む実施例1〜6、8〜19の磁性粉では、高σs化が顕著であった。
以上の結果から、本発明によれば、微粒子であるとともに高Kuかつ低SFDであり、高密度記録化に適する磁気記録用磁性粉の提供が可能となること、および高σs化も可能となること、が確認できる。
Claims (15)
- 平均粒子サイズが10〜25nmの範囲であり、かつFe100原子%に対して0.05〜3原子%のCaを含み、ただし希土類元素およびFe以外の遷移金属元素を含まないマグネトプランバイト型六方晶ストロンチウムフェライト磁性粉である磁気記録用磁性粉。
- SrおよびCaの合計含有量100原子%に対するCa含有量が1〜20原子%の範囲である請求項1に記載の磁気記録用磁性粉。
- Alを更に含み、かつFe100原子%に対するAl含有量が0.5〜6原子%の範囲である請求項1または2に記載の磁気記録用磁性粉。
- Alの少なくとも一部は磁性粉表面に存在する請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録用磁性粉。
- Baを更に含み、かつSr、CaおよびBaの合計含有量100原子%に対するBa含有量が5〜40原子%の範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録用磁性粉。
- 非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
前記強磁性粉末は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録用磁性粉である磁気記録媒体。 - Sr、CaおよびFeを少なくとも含む原料混合物を用いるガラス結晶化法により請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録用磁性粉を得ることを含む、磁気記録用磁性粉の製造方法。
- 前記原料混合物として、Alを更に含む原料混合物を用いる請求項7に記載の磁気記録用磁性粉の製造方法。
- 前記原料混合物として、Baを更に含む原料混合物を用いる請求項7または8に記載の磁気記録用磁性粉の製造方法。
- Fe塩、Sr塩およびCa塩を塩基含有水系溶液中で混合することにより六方晶フェライト前駆体を調製すること;および、
調製した六方晶フェライト前駆体を含む水系溶液を、300℃以上に加熱し、かつ20MPa以上の圧力を加えながら反応流路に連続的に送液することにより、前記六方晶フェライト前駆体を六方晶フェライトに転換すること;
により、請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録用磁性粉を得ることを含む、磁気記録用磁性粉の製造方法。 - 前記六方晶フェライトへの転換を、
前記調製した六方晶フェライト前駆体を含む水系溶液を有機修飾剤と混合し、次いで、
混合により得られた溶液を、加熱および加圧されつつ連続的に送液されている水と混合した後に、前記反応流路に送液することにより行う、請求項10に記載の磁気記録用磁性粉の製造方法。 - 前記転換により得られた六方晶フェライトとAl化合物とを含む水系溶液を加熱および加圧することにより、Alを六方晶フェライト表面に被着させることを更に含む、請求項10または11に記載の磁気記録用磁性粉の製造方法。
- 前記加熱および加圧を、前記転換により得られた六方晶フェライトとAl化合物とを含む水系溶液を、内部を流れる流体を300℃以上に加熱し、かつ20MPa以上の圧力を加えて加圧する反応流路に連続的に送液することにより行う、請求項12に記載の磁気記録用磁性粉の製造方法。
- 前記転換により得られた六方晶フェライトとAl化合物とを含む水系溶液を、加熱および加圧されつつ連続的に送液されている水と混合した後に、前記反応流路に送液する、請求項13に記載の磁気記録用磁性粉の製造方法。
- 前記塩基含有水系溶液中での混合において、Fe塩、Sr塩およびCa塩とともに、Ba塩を混合する、請求項10〜14のいずれか1項に記載の磁気記録用磁性粉の製造方法。
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