JP5976559B2 - ナノ微粒子状のチタン酸バリウムとその製造方法 - Google Patents

ナノ微粒子状のチタン酸バリウムとその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ナノ微粒子に関する。より詳しくは、チタン酸バリウムの表面にポリビニル系高分子化合物が被覆されたナノ微粒子に関する。
チタン酸バリウムは、高い比誘電率を示すことからコンデンサ材料、圧電材料および各種センサの材料として広く用いられている。例えば、誘電体層(セラミック層)とチタン酸バリウムを含む内部電極層とを交互に積層して焼成することにより作製される積層セラミックコンデンサは、他のコンデンサに比べて小型且つ高容量なため、電子機器に多用されている。近年、電子機器の小型・軽量化に伴い、その構成部品である積層セラミックコンデンサにも同様の改良が求められている。かかる小型・軽量化は、例えばチタン酸バリウムを微粒化(例えば100nm以下のナノ微粒子化)し、内部電極層を薄層化することで実現し得る。これに係る従来技術として、特許文献1〜5には種々の形状のチタン酸バリウムを製造する方法が記載されている。例えば、特許文献1には、水熱法により立方体形状のチタン酸バリウムの微粒子を合成する手法が開示されている。また、特許文献2には、いわゆるゾルゲル法によりナノ微粒子状のチタン酸バリウムを合成する手法が開示されている。
特開2008−230872号公報 特開2010−64938号公報 国際公開2009−008392号公報 特開2002−211926号公報 特開2010−30861号公報
しかしながら、上記技術で得られた微粒子は一般的な微粒子にみられるように付着力や凝集力が非常に高く、例えば粉末の状態で保管した場合に意図しない凝集を生じ解砕が困難となる場合があった。また、従来技術に開示される合成方法では、高温高圧環境が必要であったり(水熱法)、凡そ700℃以上の高温環境が必要であったり(共沈法(シュウ酸法))、作業工程が煩雑であったり(ゾルゲル法)と、概して製造コストが高くなりがちであった。このため、より安価にチタン酸バリウムのナノ微粒子を合成する方法が求められている。加えて、例えば内部電極層の更なる薄層化を実現するためには、上記技術以上に均質な(例えばサイズや形状のバラつきが少ない)微粒子が望まれている。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、粒子間の付着力や凝集力が抑制され、且つより均質なチタン酸バリウムのナノ微粒子を提供することである。関連する他の目的は、該微粒子をより安価に製造する方法を提供することである。
本発明によれば、チタン酸バリウムを主体とするナノ微粒子が提供される。かかるナノ微粒子は、実質的にチタン酸バリウムからなるコア部と、上記コア部の表面の少なくとも一部を被覆する被覆部であって、ポリビニル系高分子化合物を主体とする被覆部と、を備えている。好適には、上記ナノ微粒子の動的光散乱法に基づく平均粒径は30nm以上100nm以下である。
ここで開示されるナノ微粒子は、ポリビニル系高分子化合物で表面を被覆されているため、従来に比べ粒子間の付着力や凝集力が低減されたものであり得る。このため、例えば粉体の状態で保管した場合であっても、凝集等の問題が生じ難い。また、従来に比べ粒径のバラつきが小さく抑えられ、より均質なものであり得る。したがって、ここで開示されるナノ微粒子によれば、より薄く緻密な(高密度な)電極層(例えば積層セラミックコンデンサの内部電極層)の形成を安定的に行い得る。
なお、本明細書において「平均粒径」とは、動的光散乱法に基づく粒度分布測定により、キュムラント解析法から算出した平均粒子径を指す。具体的には、例えば、型式「Zetasizer Nano ZS ZEN3600」(Malvern Instruments社製)等の動的光散乱法を用いた粒度分布測定装置により測定することができる。
好ましい一態様では、上記ナノ微粒子は平均アスペクト比が1.0以上2.0以下の略球状である。
かかる範囲を満たすナノ微粒子は、粒子の形状が従来に比べより均質であり、電子材料として抵抗が低減されたものであり得る。このため、例えば内部電極層内に好適な導電パス(導電経路)を形成することができる。また、各粒子に印加される電圧をより均等なものとし得、充放電に伴う局所的な劣化を抑制し得る。したがって、例えば、抵抗が低く、優れた性能(例えば高容量)を長期に渡り安定的に発揮し得るコンデンサを好適に実現することができる。
上記「平均アスペクト比」は、一般的な電子顕微鏡(例えばSEM;Scanning Electron Microscope)画像に基づいて算出することができる。より具体的には、先ず上記観察画像において、粒子の最も短い辺の長さと最も長い辺の長さとを求め、長辺の長さを短辺の長さで除してアスペクト比を求める。これを複数の粒子に対して行い算術平均値を算出することで平均アスペクト比を得ることができる。この場合、粒子の数を多くするほどアスペクト比が平均値に収束し、適切に評価することができる。通常は少なくとも5個(例えば10個以上)のナノ微粒子について観察を行うことが好ましい。
好ましい他の一態様では、被覆部の平均厚みが0.1nm以上10nm以下である。
上記範囲を満たすナノ微粒子は、電子材料としての優れた性質(例えば高い比誘電率)を維持しつつ、高分子化合物の被覆による効果(例えば粒子間の付着力や凝集力の低減)を好適に発揮し得る。したがって、上記範囲を満たすナノ微粒子は、例えば、より一層優れた性能を安定的に発揮し得るコンデンサを好適に実現することができる。
上記「被覆部の厚み」は、コア部と被覆部とで電子の透過率が異なることを利用して、ナノ微粒子の電子顕微鏡(典型的にはTEM;Transmission Electron Microscope)観察画像に基づいて算出することができる。より具体的には、上記観察画像において、被覆部の内側面の複数の位置について被覆部の外側面への最短距離を求め、それらの算術平均値を算出するとよい。この場合、上記最短距離を求めるポイントの数を多くするほど被覆部の厚さが平均値に収束し、適切に評価することができる。通常は少なくとも10個(例えば20個以上)のナノ微粒子に基づいて被覆部の厚さを求めることが好ましい。また、少なくともナノ微粒子の任意の3箇所(例えば5箇所以上)における電子顕微鏡観察画像に基づいて被覆部の厚さを求めることが好ましい。
また、本発明により、上述したナノ微粒子からなる粉体が提供される。かかる粉体は、ナノ微粒子全体の70個数%以上が相互に凝集することなく独立して存在する分散状態を実現している。
ここで開示されるナノ微粒子は、表面にポリビニル系高分子化合物を主体とする被覆部を備える。このため、例えば空気中の水分の付着等が抑制され、従来に比べ粒子間の付着力や凝集力が抑制されたものであり得る。したがって、例えば粉体の状態で保管した場合であっても凝集等の問題が生じ難く、例えば、コンデンサの材料として好適に使用し得る。
また、本発明により、上述したナノ微粒子を所定の分散媒体に分散させてなるペースト状(スラリー状、インク状を包含する。以下同じ。)の組成物が提供される。
ここで開示されるナノ微粒子は、例えば積層セラミックコンデンサの内部電極層を形成するために用いられ得る。かかる際には、該ナノ微粒子を1種以上の溶媒に分散させたペースト状組成物を用いることで、効率よく内部電極層を作製することができる。ここで開示されるナノ微粒子は、ポリビニル系高分子化合物で表面を被覆されているため、例えば有機溶媒中でも凝集等を生じ難く、均質な内部電極層を安定して作製することができる。
また、本発明により、上述したナノ微粒子を用いて形成された内部電極層を備える積層セラミックコンデンサが提供される。
ここで開示されるナノ微粒子を含む内部電極層は、緻密で低抵抗なものであり得、より一層の薄層化を好適に実現し得るものである。したがって、かかる内部電極層を備えた積層セラミックコンデンサでは、小型・軽量化と高容量化とを同時に実現し得る。
また、本発明により、チタン酸バリウムを主体とするナノ微粒子を製造する方法が提供される。かかる製造方法は、以下の工程を包含する。
(1)チタン源、バリウム源およびポリビニル系高分子化合物を溶媒中で混合して、原料混合液を調製すること。
(2)上記原料混合液を所定の温度で加熱還流し、前駆体を析出させること。
(3)上記加熱還流後の原料混合液を所定の冷却速度で冷却し、ナノ微粒子を得ること。
上記製造方法によれば、チタン酸バリウムを主体とするナノ微粒子であって、粒子間の付着力や凝集力が抑制され且つ均質なナノ微粒子を、比較的簡便且つ安価に製造することができる。このため作業効率や製造コストの観点からも好ましい。
ここで開示される製造方法において、ナノ微粒子の性状(例えばサイズや形状)は、例えば上記(2)おける加熱温度やpH、上記(3)における冷却速度に依存し得る。好ましい一態様では、上記(2)おける加熱温度を50℃以上200℃以下に調整する。好ましい他の一態様では、上記(2)おける原料混合液のpHを、10〜14に調整する。好ましい他の一態様では、上記(3)における冷却速度を0.5℃/s以上5℃/s以下に調整する。かかる態様によれば、所望の性状(例えばサイズや形状)のナノ微粒子を安定的に製造することができる。例えば、平均粒子径が30nm以上100nm以下の(好ましくは、上記に加えて平均アスペクト比が1.0以上2.0以下の)ナノ微粒子を好適に製造することができる。
上記有機溶媒としては、沸点が180℃以上のポリオール(例えば、ジエチレングリコールやエチレングリコール)を好ましく用いることができる。ポリオール類は2個以上のヒドロキシル基を有するため高い還元能力を発揮し(すなわち、加熱すると好適にアルデヒドを生じ)得る。このため、かかる溶媒を用いることで所望の性状(例えばサイズや形状)のナノ微粒子を効率よく製造することができる。また、上記ポリビニル系高分子化合物としては、ポリビニルピロリドン(PVP)を好ましく用いることができる。PVPは様々な溶媒に可溶であり、高いキレート形成能を有する。すなわち、上記(2)の温度調整工程において、金属元素からなる前駆体の表面に好適に配位結合を形成し得るため、微粒子の性状を制御するために好適である。したがって、かかる態様によれば、所望の性状(例えばサイズや形状)のナノ微粒子を好適に製造することができる。
一実施形態に係るナノ微粒子の製造方法の概略を示すフロー図である。 一実施形態に係る積層セラミックコンデンサを模式的に示した部分断面図である。 ナノ微粒子の平均粒径とPVP添加量との関係を表すグラフである。 ナノ微粒子の平均粒径と還流温度との関係を表すグラフである。 ナノ微粒子の平均粒径と冷却速度との関係を表すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している以外の事項であって、本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。すなわち、本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
≪ナノ微粒子≫
ここで開示されるナノ微粒子は、チタン酸バリウムを主体とし、
(1)実質的にチタン酸バリウムからなるコア部と、
(2)上記コア部の表面の少なくとも一部を被覆する被覆部であって、ポリビニル系高分子化合物を主体とする被覆部と、
を備える。
コア部(すなわちナノ微粒子の本体部)は実質的にチタン酸バリウムからなる。ここで、「実質的に」とは、不可避的な不純物や微量の他の成分(例えば被覆部に含まれる成分)等の混入を許容することを意味し、チタン酸バリウムの含有量が大半を占めるものであれば特に限定されないが、典型的にはコア部の90質量%以上(好ましくは95質量%以上)がチタン酸バリウムであることをいう。チタン酸バリウムは、ペロブスカイト型の結晶構造を有する金属複合酸化物である。チタン酸バリウムのチタン元素に対するバリウム元素の比は、安定な結晶構造を維持する観点から、概ね0.95〜1.05(典型的には1)であることが好ましい。また、コア部の平均粒径は、通常10nm〜100nmであり、好ましくは20nm〜70nm、より好ましくは30nm〜60nmである。
上記コア部の少なくとも一部の表面はポリビニル系高分子化合物を主体とする被覆部によって被覆されており、典型的にはコア部の全表面積の50%以上、好ましくは70%以上(例えば80%以上)、より好ましくは実質的に全表面が被覆部により被覆されていることが好ましい。ナノメートルサイズの微粒子は、一般に単位重量あたりの比表面積が非常に大きいため、凝集や付着等の現象が生じ易い。しかしながら、ここで開示されるナノ微粒子は、ポリビニル系高分子化合物を主体とする被覆部を備えているため、かかる現象の発生が好適に抑制されている。なお、コア部の表面が被覆部で被覆されているか否かは、例えば一般的な電子顕微鏡(典型的にはTEM)により、少なくとも5個以上(例えば10〜20個、典型的には10個)のナノ微粒子を観察することで判断し得る。
被覆部はポリビニル系高分子化合物を主体とする。すなわち、ビニル基(−CH=CH−)を有するモノマーの単独重合体、或いはビニル基(−CH=CH−)を有するモノマーを含む2種以上のモノマーの共重合体、それらの変性物、修飾物等を主体とする。なお、ここで「主体とする」とは被覆部の全質量の50質量%以上がポリビニル系高分子化合物であることをいい、70質量%以上(好ましくは80質量%以上)がポリビニル系高分子化合物であることがより好ましい。
ビニル基を有するモノマーとしては、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジビニルベンゼン、スチレン、α―メチルスチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、フッ化ビニリデン等が例示される。具体的なポリビニル系高分子化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン等が例示され、なかでもポリビニルピロリドンを好適に用いることができる。
被覆部の平均厚みは、10nm以下(典型的には5nm以下、例えば3nm以下)であることが好ましい。被覆部が厚すぎると、チタン酸バリウムの特性(例えば高い比誘電率)を維持、発揮し難いことがあり得る。被覆部の平均厚みを上記範囲とすることで、コア部(チタン酸バリウム)に対する被覆部(ポリビニル系高分子化合物)の割合を小さく抑えることができ、電子材料として高い電気的特性を維持し得る。また、被覆部の平均厚みは0.1nm以上(典型的には0.5nm以上、例えば1nm以上)であることが好ましい。被覆部が薄すぎると、被覆による効果(すなわち粒子間の付着力や凝集力の低減効果)が減少したり、その効果の持続性が低下したりすることがあり得る。被覆部の平均厚みを上記範囲とすることで、ポリビニル系高分子化合物で被覆したことの効果を高いレベルで発揮することができる。また、好適な一態様では、測定粒子や測定位置によって被覆部の厚みにバラつきが少なく、全ての測定値が概ね同等である。かかる場合、上記被覆による効果を安定的に発揮することができる。なお、被覆部の厚みは、例えば後述するナノ微粒子の製造方法において、ポリビニル系高分子化合物の添加量を制御すること等で調整し得る。
ここで開示されるナノ微粒子の平均粒径は、30nm以上100nm以下(典型的には30nm以上90nm以下、例えば30nm以上85nm以下)である。上記粒径範囲を満たす場合、例えば内部電極層を好適に薄層化することができる。このため、ここで開示されるナノ微粒子によれば、例えば従来に比べより均質な内部電極層を安定的に作製することができる。なお、平均粒径の調整は、例えば後述するナノ微粒子の製造方法において、ポリビニル系高分子化合物の添加量、加熱還流の温度や時間、原料混合液のpH、冷却速度等を制御することで行い得る。
ここで開示される好適な一態様では、ナノ微粒子の平均アスペクト比が1.0以上2.0以下の略球状である。より好適な一態様では、平均アスペクト比が1.0以上1.5以下の略真球状である。上記範囲を満たすナノ微粒子は、例えば内部電極層を高密度なものとし得、高容量化を実現し得る。また、粒子間に好適な導電パス(導電経路)を形成し得るため、抵抗を低減することができる。このように、電子材料として高い性能を発揮し得る。なお、粒子形状の調整は、例えば後述するナノ微粒子の製造方法において、加熱還流の温度や時間、冷却速度等を制御することで行い得る。
≪ナノ微粒子の製造方法≫
また、本発明によれば、チタン酸バリウムを主体とするナノ微粒子を製造する方法が提供される。かかる製造方法は、以下の工程:
(S10)チタン源、バリウム源およびポリビニル系高分子化合物を溶媒中で混合して、原料混合液を調製すること(混合工程);
(S20)原料混合液を所定の温度で加熱還流し、前駆体を析出させること(加熱還流工程);
(S30)加熱還流後の原料混合液を所定の冷却速度で冷却し、ナノ微粒子を得ること(冷却工程);
を包含する。典型的には、さらに(S40)析出したナノ微粒子を回収すること(回収工程);を包含する。
以下、各工程について順に説明する。なお、以下では図1のフロー図を参照しつつ、好ましい一態様を説明するが、本発明をかかる具体的態様に限定する意図ではない。
<S10;混合工程>
先ず、原料として少なくともチタン(Ti)源とバリウム(Ba)源とポリビニル系高分子化合物とを用意し、これらの原料を所定の溶媒中で混合して原料混合液を調製する。混合溶液に含まれる金属元素(Ti元素とBa元素)の量比は、目的物たるナノ微粒子の組成に応じて適宜調整することができ、例えば、TiとBaのモル比を上記ナノ微粒子におけるこれらの元素のモル比(すなわち、Ti元素に対するBa元素の比が0.95〜1.05)と概ね同程度とすることができる。原料混合液を調製する際は、全ての原料を一度に溶媒中に投入してもよく、逐次的にこれらの材料を溶媒中に投入してもよい。図1に示すフロー図では、先ずTi源とBa源とを溶媒中に添加して均一に分散させ、その後にポリビニル系高分子化合物を混合する例を示している。
チタン源やバリウム源としては、各金属の塩(すなわちTi塩やBa塩)を好ましく使用することができる。これら金属塩におけるアニオンは、それぞれ該金属塩が使用する溶媒に可溶性となるよう適宜選択することができ、例えば、塩化物イオン、炭酸イオン、水酸化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン等であり得る。これら金属塩のアニオンは、同じであってもよく、互いに異なってもよい。図1に示すフロー図には、各金属の塩化物塩(すなわち塩化チタンと塩化バリウム)を用いる例を示している。原料混合液の濃度は、例えば、金属元素(ここではTiとBa)の合計を1mol/L〜2.2mol/L程度とすることができる。
ポリビニル系高分子化合物としては、既に上述したものの中から1種または2種以上を特に限定することなく用いることができる。図1に示すフロー図には、ポリビニルピロリドン(PVP)を用いる例を示している。特に発明を限定するものではないが、かかる高分子化合物は、後述する加熱還流工程において、キレート化剤として働き得る。すなわち、該高分子化合物が析出した前駆体の表面に配位結合し得、これによって前駆体の成長が抑制されるため、微小な(ナノメートルサイズの)粒子を好適に得ることができる。加えて、得られた微粒子は表面が高分子化合物で薄く被覆されていることから、従来に比べ粒子間の付着力や凝集力が低減されたものであり得る。このため、例えば粉末状態で保管した場合であっても、凝集が生じ難いという格別の効果を奏する。
ポリビニル系高分子化合物の添加量はキレート形成に必要な化学量論量以上であればよく、原料混合液全体に占める高分子化合物の割合は、通常凡そ5質量%〜40質量%であり、10質量%〜30質量%とすることが好ましい。換言すれば、金属元素(TiおよびBa)に対する高分子化合物のモル比は、通常20倍以上とすることができ、例えば20倍〜100倍とすることが好ましく、40倍〜60倍とすることがより好ましい。上記範囲より少なすぎる場合には、前駆体(あるいは得られたナノ微粒子)の凝集力や付着力が増大する虞がある。また、あまりに多すぎる場合には、後述する加熱還流工程において前駆体の析出が生じ難くなる虞がある。なお、上記添加量の範囲においてポリビニル系高分子化合物の添加量とナノ微粒子の平均粒径とは概ね相関関係があり、添加量が増加するほど平均粒径は大きくなる傾向にある。これは、ポリビニル系高分子化合物を主体とする殻部の厚みが増すためである。
原料を分散させる溶媒(分散媒体)は、使用する原料化合物(すなわち、チタン源やバリウム源とポリビニル系高分子化合物)を均一に分散または溶解し得るものであれば特に限定なく使用することができる。かかる溶媒は、水性溶媒と有機溶媒とに大別される。水系溶媒としては、水または水を主体とする混合溶媒を用いることができる。混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)の1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。有機溶媒としては、例えば酸化によってアルデヒドを生成し得る官能基(例えばヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基)を含み、且つ沸点が比較的高い溶媒を好ましく使用し得る。特に好ましい溶媒として、ヒドロキシル基を含み、且つ沸点が100℃以上(典型的には沸点が150℃以上、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上)の有機溶媒が例示される。具体的としては、ジエチレングリコール(沸点245℃)、エチレングリコール(沸点196℃)、グリセリン(沸点290℃)、1,2−プロパンジオール(沸点187℃)、1,3−プロパンジオール(沸点214℃)、1,4−プロパンジオール(沸点230℃)等のポリオール類;テルピネオール(ターピネオールともいう、沸点219℃)等のアルコール類;等が挙げられ、なかでも2個以上のヒドロキシル基を有するポリオール類を好ましく採用し得る。このような溶媒は後述する加熱還流工程において酸化され、アルデヒドと水を生成し得る。かかるアルデヒドは還元剤として働き得るため、これによって反応混合液中のTi元素とBa元素とが好適に還元され、前駆体(核)が析出し得る。或いは、溶媒の沸点を調整するために、上記高沸点な溶媒と比較的沸点の低い溶媒(例えば水やエタノール)とを混合して用いることもできる。図1に示すフロー図には、ジエチレングリコール(DEG)を単独で用いる例を示している。
使用する溶媒の量は特に限定されないが、原料を完全に溶解し得る量(即ち、飽和溶液よりも低濃度となり得る量)であることが好ましい。例えば、金属塩(Ti塩およびBa塩)100質量部に対して凡そ1000質量部〜5000質量部とすることができ、凡そ2000質量部〜4000質量部とすることが好ましい。上記溶媒量であれば原料を均一に溶解(または分散)させることができ、より均質なナノ微粒子を製造し得る。
かかる混合の際には、必要に応じて攪拌を行ってもよい。攪拌により原料混合液の調製を短時間で安定して行うことができる。上記攪拌する操作は、例えばマグネティックスターラーや超音波等の適当な攪拌手段を用いて行うことができる。撹拌・混合に要する時間は特に限定されないが、例えば数分〜数時間(典型的には5分〜5時間、例えば30分〜3時間)とすることができる。これにより、より均質な原料混合液を調製することができる。
<S20;加熱還流工程>
次に、上記調製した原料混合液を所定の温度で加熱還流し、これによって原料混合液中に前駆体を析出させる。図1に示すフロー図では、加熱還流工程(S20)は、温度調整工程(S22)とpH調整工程(S24)と、を包含する。
<S22;温度調整工程>
温度調整工程(S22)では、原料混合液の温度を所定の範囲に調整する。一般に加熱還流工程(S20)における前駆体の析出は、温度環境に依存し得る。このため、本工程では原料混合液の温度を速やかに所定の温度まで昇温させることが好ましい。また、加熱還流時にほぼ一定の温度(例えば、所定の温度±1℃)となるよう保持することが好ましい。原料混合液を加熱処理する手段は特に限定されず、例えば、オイルバスや電気加熱炉等の任意の手段を採用することができる。加熱温度の上限は、使用する溶媒の沸点を下回る温度とすることが好ましい。例えば、溶媒としてジエチレングリコール(DEG)を用いる場合は、240℃以下(典型的には200℃以下、例えば190℃以下、好ましくは180℃以下)とすることができる。加熱温度の下限は、用いる溶媒の種類や製造するナノ微粒子の性状(例えば粒径や粒子形状)等によっても異なり得るため特に限定されないが、あまりに低い場合は還元速度が遅くなり、所定の方向のみが成長した形状(例えば平板形状)の前駆体が析出し得る。したがって、均質な球状のナノ微粒子を得るためには、温度環境を50℃以上とすることが好ましい。また、還元反応を効率よく進行させる観点からは、温度環境を80℃以上とすることがより好ましい。例えば、溶媒としてジエチレングリコール(DEG)を用いる場合は、40℃以上(典型的には50℃以上、例えば70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上)とすることができる。
反応混合液を上記温度範囲とすることで、還元反応を促進し得、比較的短時間で所望の前駆体を得ることができる。また、このとき、前駆体の表面にはポリビニル系高分子化合物が配位しているため、これによって前駆体の成長が適度に抑制され、微小な粉末状の前駆体を好適に得ることができる。なお、後述する実施例に示すように、上記温度の範囲においては還流温度とナノ微粒子の平均粒径とが概ね相関関係にあり、還流温度が高くなるほど平均粒径は大きくなる傾向にある。これは、還流温度を高く設定することで、溶媒の還元能力が高くなり、実質的にチタン酸バリウムからなるコア部の厚みが増すためである。
<S24;pH調整工程>
加熱還流工程(S20)で析出する前駆体のサイズ(平均粒径)は、pHに依存し得る。このため、図1のフロー図に示すように、温度調整工程(S22)後にpH調整工程(S24)を包含することが好ましい。pHの調整は、例えばpH調整用として一般的に用いられるアルカリ性溶液(例えば、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液など)を原料混合液中に添加することで行い得る。なかでも、アンモニア水溶液を好適に用いることができる。特に好ましい態様では、上記原料混合液にアンモニウムイオンを随時供給することにより、原料混合液中のアンモニア濃度を所定の範囲に制御しつつ(例えば、所定値以下に制御しつつ)加熱還流を行う。より具体的には、先ず30質量%〜50質量%程度のアルカリ性水溶液(アンモニア水溶液)を用意する。次に、このアルカリ性水溶液を、温度調整工程(S22)で所定の温度に調整した原料混合液中に適切な速度で供給しつつ撹拌混合することで、原料混合液の初期pHを凡そ10〜14(典型的には11〜12、例えば11.5前後)に調整する。そして、この初期pHを維持しつつ(すなわち、必要に応じて上記原料混合液中にアルカリ性水溶液を逐次的に供給しながら)加熱還流を行うことが好ましい。
なお、本明細書中において、pHの値は、液温25℃を基準とするpH値をいうものとする。また、原料混合液のアンモニア濃度は、例えば、市販のイオンクロマトグラフ装置を用いたイオンクロマト法、電極式アンモニア計を用いたイオン電極法等により測定することができる。
加熱還流の時間(すなわち前駆体の析出を継続する時間)は、目的とするナノ微粒子の性状(典型的には粒径)に応じて適宜設定することができる。通常は、8時間〜24時間(好ましくは10時間〜15時間)程度とすることができる。傾向としては、より粒径の大きなナノ微粒子を得るためには、より保持時間を長くするとよい。
<S30;冷却工程>
そして、加熱還流後の(例えば50℃〜200℃の)原料混合液を、所定の冷却速度で冷却する。前駆体を含む原料混合液の冷却は、通常0.2℃/s〜8℃/s程度の速度で急冷することが適当であり、概ね0.5℃/s〜2℃/s(多少の誤差は許容される)の平均冷却速度で行うことが好ましい。還元速度が上記範囲より極端に遅かったり或いは速かったりする場合、微粒子が球状にならなかったり、ナノ微粒子の大きさにバラつきを生じる虞がある。上記冷却速度の範囲とすることにより、略球状で且つ粒径の揃ったナノ微粒子を好適に得ることができる。上記冷却速度の範囲において、冷却速度とナノ微粒子の平均粒径とは概ね相関関係があり、冷却速度が速くなるほど平均粒径は小さくなる傾向にある。これは、急冷することで粒子の成長が抑制されるためである。
<S40;回収工程>
さらに、典型的には、上記冷却後の原料混合液から溶媒を除去し、析出したナノ微粒子を回収する。かかる方法は特に限定されないが、例えば遠心分離機でナノ微粒子を沈殿させ、上澄み液(溶媒)を除去してから乾燥させるとよい。或いは、濾過によって溶媒から分離し、(典型的には、上記使用した溶媒と同種のものを用いて)洗浄し、乾燥させるとよい。乾燥手法としては、例えば熱風乾燥装置、低湿風乾燥装置、真空乾燥装置、各種赤外線乾燥装置、電磁誘導乾燥装置、マイクロ波乾燥装置、ドライエアー等や、送風、減圧、加熱等の乾燥促進手段を単独または組み合わせて用いることができる。乾燥の条件(例えば乾燥手法や所要時間)は、溶媒の種類や溶媒量によって適宜決定することができる。これによって、未反応の原料や副反応生成物等を好適に除去し得、純度の高いナノ微粒子を得ることができる。
≪粉体≫
また、本発明によれば、上述したナノ微粒子からなる粉体(微粒子群)が提供される。ここで開示されるナノ微粒子は、表面にポリビニル系高分子化合物を主体とする被覆部を備える。このため、従来に比べ粒子間の付着力や凝集力が低減されたものであり得、例えば粉体の状態で保管した場合であっても、凝集等の問題が生じ難い。したがって、ここで開示される粉体は、ナノ微粒子全体の70個数%以上(典型的には80個数%以上、好ましくは90個数%以上、より好ましくは95個数%以上)が相互に凝集することなく独立して存在する分散状態を実現し得る。なお、粒子間の付着力は、例えばJenikeセルを用いたせん断試験によって測定することができる。
≪ペースト状組成物≫
また、本発明によれば、上述したナノ微粒子を含むペースト状組成物が提供される。ここで開示されるペースト状組成物は、上述したナノ微粒子と、従来からペースト状組成物に用いられる分散媒体等を含む流動体である。ここで開示されるナノ微粒子はポリビニル系高分子化合物で表面を被覆されているため、例えば有機溶媒中でも凝集等を生じ難く、均質な内部電極層を安定して作製することができる。このため、例えば積層セラミックコンデンサの内部電極(誘電体層)を形成するために好適に使用し得る。
分散媒体としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、テルピネオール、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール等を用いることができる。
上記ペースト状組成物には、必要に応じてバインダや各種添加剤(例えば、界面活性剤、消泡剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、重合禁止材等)を適宜添加することができる。バインダとしては、焼成時の脱バインダ処理(典型的には酸化雰囲気中での20℃〜500℃の加熱処理)によって蒸発除去(脱脂)することができるものを好ましく用いることができる。具体的には、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブラチール等を用いることができる。
上記ペースト状組成物全体におけるナノ微粒子の割合は、例えば30質量%〜70質量%(例えば40質量%〜60質量%)にすることができる。
≪積層セラミックコンデンサ≫
また、本発明によれば、上述したナノ微粒子(上記ペースト状組成物の形態であり得る。)を有する内部電極層を備えた積層セラミックコンデンサが提供される。以下、適宜図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
図2は、かかる積層セラミックコンデンサを模式的に示した部分断面図である。図2に示すように、積層セラミックコンデンサ1は、上記ナノ微粒子を用いて形成された内部電極層24および誘電体層(セラミック層)22を交互に積層、焼成してなる電子部品本体20と、該電子部品本体20の外側に設けられた外部電極10とを備える。ここで開示されるナノ微粒子は、平均粒子径が100nm以下であり、且つ性状が均質である(粒径や粒子形状が揃っている)ことを特徴とする。このため、該ナノ微粒子を主体として含む内部電極層24を、薄く緻密なものとし得、内部電極層24の薄層化や高容量化を好適に実現することができる。したがって、内部電極層24を備えた積層セラミックコンデンサ1は、小型化と高容量化とを実現することができる。
かかる積層セラミックコンデンサ1は、例えば以下のようにして構築することができる。先ず、上記ナノ微粒子を含むペースト状組成物を、誘電体材料からなるグリーンシート上に塗布(印刷、転写を含む)する。このグリーンシートを複数枚作製し、これらを積層、圧着することによって未焼成の積層チップを作製する。次いで、かかる積層チップを乾燥させた後に、所定の加熱条件(最高焼成温度が概ね1000℃〜1400℃)で所定時間(最高焼成温度を維持する時間としては、例えば、10分〜2時間程度)焼成する。これによって、内部電極層24と誘電体層22とが交互に積層した積層セラミックコンデンサ1の電子部品本体20を作製し得る。この電子部品本体20の所望の箇所に、外部電極形成用のペースト状組成物を塗布、焼成することによって外部電極10を形成する。このようにして、本発明の積層セラミックコンデンサ1を構築することができる。なお、上述した積層セラミックコンデンサ1の構築プロセスは、特に本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明を省略している。
以下、本発明に関する実施例を詳細に説明する。なお、以下に示す実施例は本発明を限定することを意図したものではない。
<ナノ微粒子の製造>
まず、Ti源としての塩化チタン(TiCl)と、Ba源としての塩化バリウム(BaCl)とを、Ti元素:Ba元素=1:1のモル比となるように秤量し、溶媒としてのジエチレングリコールに添加し、撹拌混合した。この溶液に、表1に示す割合となるようポリビニルピロリドン(PVP)を添加して、原料混合液を調製した(S10)。次に、この原料混合液を表1に示す還流温度まで加熱し、かかる温度を維持したまま凡そ10
時間還流させ、前駆体を析出させた(S20)。そして、この原料混合液を表1に示す冷却速度で室温(25℃)まで冷却した(S30)後、濾過、乾燥することで、ナノ微粒子を得た。なお、例14では、粒子の析出がみられず、粒子を得ることができなかった。また、例15では、加熱還流時に溶媒が蒸発、乾固したため、粒子を得ることができなかった。
Figure 0005976559
<粒度分布測定>
得られた例1〜13に係るナノ微粒子について、動的光散乱法に基づく粒度分布測定を行い、平均粒径を算出した。結果を表1の「平均粒径」の欄に示す。
<走査型電子顕微鏡観察>
得られた例1〜13に係るナノ微粒子を、SEM(日立製作所製、型式「S3100H」)およびTEM(日立製作所製、型式「H7600」)で観察した。そして、SEM観察画像に基づいて、上述した手法により平均アスペクト比を算出した。結果を表1の「平均アスペクト比」の欄に示す。また表1の「形状」の欄には、確認された粒子形状が球状のみで且つ粒径にバラつきがない場合は「球状」と、確認された粒子形状が球状のみで且つ粒径にバラつきがみられる場合には「不均一」と記載した。さらに球状以外の形状を(典型的には10個数%以上)有する場合には「非球状」と記載した。
表1に示すように、例11,12に係るナノ微粒子は粒径が不均一であった。これは、S30における冷却速度が、極端に遅かったり(例11)、或いは極端に速かったり(例12)したためと考えられる。また、例13に係るナノ微粒子は、平均粒径が300nm以上と相対的に大きく、形状が板状に近いことがわかった。この原因としては、S10におけるポリビニルピロリドンの添加量が極端に多かったこと、および/または、S30における冷却速度が極端に速かったこと、が考えられる。すなわち、冷却速度が早すぎたため、結晶構造中で成長し易い一方向のみが発達したものと考えられる。換言すれば、冷却速度を調整することによって、所望の形状(例えば略球状)のナノ微粒子を好適に製造し得ることがわかった。これに対し、例1〜10に係るナノ微粒子は平均粒径が100nm以下と小さく抑えられていた。また、SEM観察の結果から、例1〜10に係るナノ微粒子は形状が真球状に近く、コアとなるチタン酸バリウムの表面はポリビニル系高分子化合物を含む被覆部で均質に被覆されていることがわかった。かかる結果は、本発明の技術的意義を示すものである。
図3に、還流温度および冷却速度の条件が等しい例3,5,6について、ナノ微粒子の平均粒径とポリビニルピロリドン(PVP)の添加量との関係を示す。表1および図3に示すように、ここで開示される範囲においては、ポリビニル系高分子化合物(ここではPVP)の添加量が増加するほどナノ微粒子の平均粒径は大きくなる傾向がみられた。これは、ポリビニル系高分子化合物の添加量が多いほど、ポリビニル系高分子化合物を主体とする殻部の厚みが増すためと考えられる。換言すれば、ポリビニル系高分子化合物の添加量を調整することによって、所望の厚みの殻部を備えたナノ微粒子を好適に製造し得ることがわかった。
また、図4に、ポリビニルピロリドン(PVP)の添加量および冷却温度の条件が等しい例3,8,9について、ナノ微粒子の平均粒径と還流温度との関係を示す。表1および図4に示すように、ここで開示される範囲においては、原料混合液の還流温度が高くなるほどナノ微粒子の平均粒径は大きくなる傾向がみられた。これは、還流温度を高く設定することで溶媒の還元能力が高まり、実質的にチタン酸バリウムからなるコア部の厚みが増すためと考えられる。換言すれば、還流温度を調整することによって、所望の粒径のコア部を備えたナノ微粒子を好適に製造し得ることが示された。
また、図5に、ポリビニルピロリドン(PVP)の添加量および還流温度の条件が等しい例1〜4の結果について、ナノ微粒子の平均粒径と冷却速度との関係を示す。表1および図5に示すように、ここで開示される範囲においては、加熱還流後の冷却速度が速くなるほどナノ微粒子の平均粒径は小さくなる傾向がみられた。これは、原料混合液を急冷することでナノ微粒子の成長が抑制されたためと考えられる。換言すれば、冷却速度を調整することによって、所望の粒径のナノ微粒子を好適に製造し得ることが示された。
S10 混合工程
S20 加熱還流工程
S22 温度調整工程
S24 pH調整工程
S30 冷却工程
S40 回収工程
1 積層セラミックコンデンサ
10 外部電極
20 電子部品本体
22 誘電体層
24 内部電極層

Claims (10)

  1. チタン酸バリウムを主体とするナノ微粒子であって;
    実質的にチタン酸バリウムからなるコア部と、
    前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆する被覆部であって、ポリビニル系高分子化合物を主体とする被覆部と、を備え、
    動的光散乱法で測定しキュムラント解析法により得られる平均粒径が30nm以上100nm以下である、ナノ微粒子。
  2. 前記ナノ微粒子は、電子顕微鏡観察における平均アスペクト比が1.0以上2.0以下の略球状である、請求項1に記載のナノ微粒子。
  3. 前記被覆部の平均厚みは、0.1nm以上10nm以下である、請求項1または2に記載のナノ微粒子。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載のナノ微粒子からなる粉体であって、
    前記ナノ微粒子全体の70個数%以上が相互に凝集することなく独立して存在する分散状態を実現している、粉体。
  5. 請求項1から3のいずれか1項に記載のナノ微粒子を、所定の分散媒体に分散させてなるペースト状組成物。
  6. チタン酸バリウムを主体とするナノ微粒子を製造する方法であって:
    チタン源、バリウム源およびポリビニル系高分子化合物を溶媒中で混合して、原料混合液を調製すること;
    前記原料混合液を所定の温度で加熱還流し、前駆体を析出させること;および
    前記加熱還流後の原料混合液を所定の冷却速度で冷却し、前記ナノ微粒子を得ること;
    を包含し、
    前記冷却速度を、0.5℃/s以上5℃/s以下に調整する、ナノ微粒子の製造方法。
  7. 前記加熱還流の温度を、50℃以上200℃以下に調整する、請求項に記載の製造方法。
  8. 前記加熱還流において、前記原料混合液のpHを10〜14に調整する、請求項またはに記載の製造方法。
  9. 前記溶媒として、沸点が180℃以上のポリオール溶媒を用いる、請求項からのいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 前記ポリビニル系高分子化合物として、ポリビニルピロリドンを用いる、請求項からのいずれか1項に記載の製造方法。
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