JP5976559B2 - ナノ微粒子状のチタン酸バリウムとその製造方法 - Google Patents
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本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、粒子間の付着力や凝集力が抑制され、且つより均質なチタン酸バリウムのナノ微粒子を提供することである。関連する他の目的は、該微粒子をより安価に製造する方法を提供することである。
ここで開示されるナノ微粒子は、ポリビニル系高分子化合物で表面を被覆されているため、従来に比べ粒子間の付着力や凝集力が低減されたものであり得る。このため、例えば粉体の状態で保管した場合であっても、凝集等の問題が生じ難い。また、従来に比べ粒径のバラつきが小さく抑えられ、より均質なものであり得る。したがって、ここで開示されるナノ微粒子によれば、より薄く緻密な(高密度な)電極層(例えば積層セラミックコンデンサの内部電極層)の形成を安定的に行い得る。
かかる範囲を満たすナノ微粒子は、粒子の形状が従来に比べより均質であり、電子材料として抵抗が低減されたものであり得る。このため、例えば内部電極層内に好適な導電パス(導電経路)を形成することができる。また、各粒子に印加される電圧をより均等なものとし得、充放電に伴う局所的な劣化を抑制し得る。したがって、例えば、抵抗が低く、優れた性能(例えば高容量)を長期に渡り安定的に発揮し得るコンデンサを好適に実現することができる。
上記範囲を満たすナノ微粒子は、電子材料としての優れた性質(例えば高い比誘電率)を維持しつつ、高分子化合物の被覆による効果(例えば粒子間の付着力や凝集力の低減)を好適に発揮し得る。したがって、上記範囲を満たすナノ微粒子は、例えば、より一層優れた性能を安定的に発揮し得るコンデンサを好適に実現することができる。
ここで開示されるナノ微粒子は、表面にポリビニル系高分子化合物を主体とする被覆部を備える。このため、例えば空気中の水分の付着等が抑制され、従来に比べ粒子間の付着力や凝集力が抑制されたものであり得る。したがって、例えば粉体の状態で保管した場合であっても凝集等の問題が生じ難く、例えば、コンデンサの材料として好適に使用し得る。
ここで開示されるナノ微粒子は、例えば積層セラミックコンデンサの内部電極層を形成するために用いられ得る。かかる際には、該ナノ微粒子を1種以上の溶媒に分散させたペースト状組成物を用いることで、効率よく内部電極層を作製することができる。ここで開示されるナノ微粒子は、ポリビニル系高分子化合物で表面を被覆されているため、例えば有機溶媒中でも凝集等を生じ難く、均質な内部電極層を安定して作製することができる。
ここで開示されるナノ微粒子を含む内部電極層は、緻密で低抵抗なものであり得、より一層の薄層化を好適に実現し得るものである。したがって、かかる内部電極層を備えた積層セラミックコンデンサでは、小型・軽量化と高容量化とを同時に実現し得る。
(1)チタン源、バリウム源およびポリビニル系高分子化合物を溶媒中で混合して、原料混合液を調製すること。
(2)上記原料混合液を所定の温度で加熱還流し、前駆体を析出させること。
(3)上記加熱還流後の原料混合液を所定の冷却速度で冷却し、ナノ微粒子を得ること。
上記製造方法によれば、チタン酸バリウムを主体とするナノ微粒子であって、粒子間の付着力や凝集力が抑制され且つ均質なナノ微粒子を、比較的簡便且つ安価に製造することができる。このため作業効率や製造コストの観点からも好ましい。
ここで開示されるナノ微粒子は、チタン酸バリウムを主体とし、
(1)実質的にチタン酸バリウムからなるコア部と、
(2)上記コア部の表面の少なくとも一部を被覆する被覆部であって、ポリビニル系高分子化合物を主体とする被覆部と、
を備える。
ビニル基を有するモノマーとしては、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジビニルベンゼン、スチレン、α―メチルスチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、フッ化ビニリデン等が例示される。具体的なポリビニル系高分子化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン等が例示され、なかでもポリビニルピロリドンを好適に用いることができる。
また、本発明によれば、チタン酸バリウムを主体とするナノ微粒子を製造する方法が提供される。かかる製造方法は、以下の工程:
(S10)チタン源、バリウム源およびポリビニル系高分子化合物を溶媒中で混合して、原料混合液を調製すること(混合工程);
(S20)原料混合液を所定の温度で加熱還流し、前駆体を析出させること(加熱還流工程);
(S30)加熱還流後の原料混合液を所定の冷却速度で冷却し、ナノ微粒子を得ること(冷却工程);
を包含する。典型的には、さらに(S40)析出したナノ微粒子を回収すること(回収工程);を包含する。
以下、各工程について順に説明する。なお、以下では図1のフロー図を参照しつつ、好ましい一態様を説明するが、本発明をかかる具体的態様に限定する意図ではない。
先ず、原料として少なくともチタン(Ti)源とバリウム(Ba)源とポリビニル系高分子化合物とを用意し、これらの原料を所定の溶媒中で混合して原料混合液を調製する。混合溶液に含まれる金属元素(Ti元素とBa元素)の量比は、目的物たるナノ微粒子の組成に応じて適宜調整することができ、例えば、TiとBaのモル比を上記ナノ微粒子におけるこれらの元素のモル比(すなわち、Ti元素に対するBa元素の比が0.95〜1.05)と概ね同程度とすることができる。原料混合液を調製する際は、全ての原料を一度に溶媒中に投入してもよく、逐次的にこれらの材料を溶媒中に投入してもよい。図1に示すフロー図では、先ずTi源とBa源とを溶媒中に添加して均一に分散させ、その後にポリビニル系高分子化合物を混合する例を示している。
次に、上記調製した原料混合液を所定の温度で加熱還流し、これによって原料混合液中に前駆体を析出させる。図1に示すフロー図では、加熱還流工程(S20)は、温度調整工程(S22)とpH調整工程(S24)と、を包含する。
温度調整工程(S22)では、原料混合液の温度を所定の範囲に調整する。一般に加熱還流工程(S20)における前駆体の析出は、温度環境に依存し得る。このため、本工程では原料混合液の温度を速やかに所定の温度まで昇温させることが好ましい。また、加熱還流時にほぼ一定の温度(例えば、所定の温度±1℃)となるよう保持することが好ましい。原料混合液を加熱処理する手段は特に限定されず、例えば、オイルバスや電気加熱炉等の任意の手段を採用することができる。加熱温度の上限は、使用する溶媒の沸点を下回る温度とすることが好ましい。例えば、溶媒としてジエチレングリコール(DEG)を用いる場合は、240℃以下(典型的には200℃以下、例えば190℃以下、好ましくは180℃以下)とすることができる。加熱温度の下限は、用いる溶媒の種類や製造するナノ微粒子の性状(例えば粒径や粒子形状)等によっても異なり得るため特に限定されないが、あまりに低い場合は還元速度が遅くなり、所定の方向のみが成長した形状(例えば平板形状)の前駆体が析出し得る。したがって、均質な球状のナノ微粒子を得るためには、温度環境を50℃以上とすることが好ましい。また、還元反応を効率よく進行させる観点からは、温度環境を80℃以上とすることがより好ましい。例えば、溶媒としてジエチレングリコール(DEG)を用いる場合は、40℃以上(典型的には50℃以上、例えば70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上)とすることができる。
加熱還流工程(S20)で析出する前駆体のサイズ(平均粒径)は、pHに依存し得る。このため、図1のフロー図に示すように、温度調整工程(S22)後にpH調整工程(S24)を包含することが好ましい。pHの調整は、例えばpH調整用として一般的に用いられるアルカリ性溶液(例えば、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液など)を原料混合液中に添加することで行い得る。なかでも、アンモニア水溶液を好適に用いることができる。特に好ましい態様では、上記原料混合液にアンモニウムイオンを随時供給することにより、原料混合液中のアンモニア濃度を所定の範囲に制御しつつ(例えば、所定値以下に制御しつつ)加熱還流を行う。より具体的には、先ず30質量%〜50質量%程度のアルカリ性水溶液(アンモニア水溶液)を用意する。次に、このアルカリ性水溶液を、温度調整工程(S22)で所定の温度に調整した原料混合液中に適切な速度で供給しつつ撹拌混合することで、原料混合液の初期pHを凡そ10〜14(典型的には11〜12、例えば11.5前後)に調整する。そして、この初期pHを維持しつつ(すなわち、必要に応じて上記原料混合液中にアルカリ性水溶液を逐次的に供給しながら)加熱還流を行うことが好ましい。
そして、加熱還流後の(例えば50℃〜200℃の)原料混合液を、所定の冷却速度で冷却する。前駆体を含む原料混合液の冷却は、通常0.2℃/s〜8℃/s程度の速度で急冷することが適当であり、概ね0.5℃/s〜2℃/s(多少の誤差は許容される)の平均冷却速度で行うことが好ましい。還元速度が上記範囲より極端に遅かったり或いは速かったりする場合、微粒子が球状にならなかったり、ナノ微粒子の大きさにバラつきを生じる虞がある。上記冷却速度の範囲とすることにより、略球状で且つ粒径の揃ったナノ微粒子を好適に得ることができる。上記冷却速度の範囲において、冷却速度とナノ微粒子の平均粒径とは概ね相関関係があり、冷却速度が速くなるほど平均粒径は小さくなる傾向にある。これは、急冷することで粒子の成長が抑制されるためである。
さらに、典型的には、上記冷却後の原料混合液から溶媒を除去し、析出したナノ微粒子を回収する。かかる方法は特に限定されないが、例えば遠心分離機でナノ微粒子を沈殿させ、上澄み液(溶媒)を除去してから乾燥させるとよい。或いは、濾過によって溶媒から分離し、(典型的には、上記使用した溶媒と同種のものを用いて)洗浄し、乾燥させるとよい。乾燥手法としては、例えば熱風乾燥装置、低湿風乾燥装置、真空乾燥装置、各種赤外線乾燥装置、電磁誘導乾燥装置、マイクロ波乾燥装置、ドライエアー等や、送風、減圧、加熱等の乾燥促進手段を単独または組み合わせて用いることができる。乾燥の条件(例えば乾燥手法や所要時間)は、溶媒の種類や溶媒量によって適宜決定することができる。これによって、未反応の原料や副反応生成物等を好適に除去し得、純度の高いナノ微粒子を得ることができる。
また、本発明によれば、上述したナノ微粒子からなる粉体(微粒子群)が提供される。ここで開示されるナノ微粒子は、表面にポリビニル系高分子化合物を主体とする被覆部を備える。このため、従来に比べ粒子間の付着力や凝集力が低減されたものであり得、例えば粉体の状態で保管した場合であっても、凝集等の問題が生じ難い。したがって、ここで開示される粉体は、ナノ微粒子全体の70個数%以上(典型的には80個数%以上、好ましくは90個数%以上、より好ましくは95個数%以上)が相互に凝集することなく独立して存在する分散状態を実現し得る。なお、粒子間の付着力は、例えばJenikeセルを用いたせん断試験によって測定することができる。
また、本発明によれば、上述したナノ微粒子を含むペースト状組成物が提供される。ここで開示されるペースト状組成物は、上述したナノ微粒子と、従来からペースト状組成物に用いられる分散媒体等を含む流動体である。ここで開示されるナノ微粒子はポリビニル系高分子化合物で表面を被覆されているため、例えば有機溶媒中でも凝集等を生じ難く、均質な内部電極層を安定して作製することができる。このため、例えば積層セラミックコンデンサの内部電極(誘電体層)を形成するために好適に使用し得る。
分散媒体としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、テルピネオール、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール等を用いることができる。
上記ペースト状組成物全体におけるナノ微粒子の割合は、例えば30質量%〜70質量%(例えば40質量%〜60質量%)にすることができる。
また、本発明によれば、上述したナノ微粒子(上記ペースト状組成物の形態であり得る。)を有する内部電極層を備えた積層セラミックコンデンサが提供される。以下、適宜図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
まず、Ti源としての塩化チタン(TiCl2)と、Ba源としての塩化バリウム(BaCl2)とを、Ti元素:Ba元素=1:1のモル比となるように秤量し、溶媒としてのジエチレングリコールに添加し、撹拌混合した。この溶液に、表1に示す割合となるようポリビニルピロリドン(PVP)を添加して、原料混合液を調製した(S10)。次に、この原料混合液を表1に示す還流温度まで加熱し、かかる温度を維持したまま凡そ10
時間還流させ、前駆体を析出させた(S20)。そして、この原料混合液を表1に示す冷却速度で室温(25℃)まで冷却した(S30)後、濾過、乾燥することで、ナノ微粒子を得た。なお、例14では、粒子の析出がみられず、粒子を得ることができなかった。また、例15では、加熱還流時に溶媒が蒸発、乾固したため、粒子を得ることができなかった。
得られた例1〜13に係るナノ微粒子について、動的光散乱法に基づく粒度分布測定を行い、平均粒径を算出した。結果を表1の「平均粒径」の欄に示す。
得られた例1〜13に係るナノ微粒子を、SEM(日立製作所製、型式「S3100H」)およびTEM(日立製作所製、型式「H7600」)で観察した。そして、SEM観察画像に基づいて、上述した手法により平均アスペクト比を算出した。結果を表1の「平均アスペクト比」の欄に示す。また表1の「形状」の欄には、確認された粒子形状が球状のみで且つ粒径にバラつきがない場合は「球状」と、確認された粒子形状が球状のみで且つ粒径にバラつきがみられる場合には「不均一」と記載した。さらに球状以外の形状を(典型的には10個数%以上)有する場合には「非球状」と記載した。
S20 加熱還流工程
S22 温度調整工程
S24 pH調整工程
S30 冷却工程
S40 回収工程
1 積層セラミックコンデンサ
10 外部電極
20 電子部品本体
22 誘電体層
24 内部電極層
Claims (10)
- チタン酸バリウムを主体とするナノ微粒子であって;
実質的にチタン酸バリウムからなるコア部と、
前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆する被覆部であって、ポリビニル系高分子化合物を主体とする被覆部と、を備え、
動的光散乱法で測定しキュムラント解析法により得られる平均粒径が30nm以上100nm以下である、ナノ微粒子。 - 前記ナノ微粒子は、電子顕微鏡観察における平均アスペクト比が1.0以上2.0以下の略球状である、請求項1に記載のナノ微粒子。
- 前記被覆部の平均厚みは、0.1nm以上10nm以下である、請求項1または2に記載のナノ微粒子。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載のナノ微粒子からなる粉体であって、
前記ナノ微粒子全体の70個数%以上が相互に凝集することなく独立して存在する分散状態を実現している、粉体。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載のナノ微粒子を、所定の分散媒体に分散させてなるペースト状組成物。
- チタン酸バリウムを主体とするナノ微粒子を製造する方法であって:
チタン源、バリウム源およびポリビニル系高分子化合物を溶媒中で混合して、原料混合液を調製すること;
前記原料混合液を所定の温度で加熱還流し、前駆体を析出させること;および
前記加熱還流後の原料混合液を所定の冷却速度で冷却し、前記ナノ微粒子を得ること;
を包含し、
前記冷却速度を、0.5℃/s以上5℃/s以下に調整する、ナノ微粒子の製造方法。 - 前記加熱還流の温度を、50℃以上200℃以下に調整する、請求項6に記載の製造方法。
- 前記加熱還流において、前記原料混合液のpHを10〜14に調整する、請求項6または7に記載の製造方法。
- 前記溶媒として、沸点が180℃以上のポリオール溶媒を用いる、請求項6から8のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記ポリビニル系高分子化合物として、ポリビニルピロリドンを用いる、請求項6から9のいずれか1項に記載の製造方法。
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