以下に説明する実施例では、主に、検査或いは計測対象のパターンを撮像して得られた画像データから抽出したエッジの位置を用いた検査或いは計測において、ノイズ等の影響を低減し検査或いは計測結果の信頼性を向上させることを目的とするパターン検査・計測装置、及び上記処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムについて説明する。
上記のような目的を達成するために、以下に説明する実施例では主に、検査或いは計測対象パターンを撮像して得られた画像データからエッジ抽出パラメータを用いて抽出したエッジの位置を用いて検査或いは計測対象パターンの検査或いは計測を行うパターン検査・計測装置において、検査或いは計測の基準となる形状を表す基準パターンと前記画像データとを用いて前記エッジ抽出パラメータを生成するようにしたパターン検査・計測装置、及び、コンピュータプログラムについて説明する。
<第1実施形態>
以下、第1実施形態について図1乃至図16を参照して説明する。本実施形態は、評価対象となるパターンの寸法に対して相対的に大きな視野での画像取得(低倍率での画像の取得)を伴った検査によって、あらかじめ検査の基準として与えられた輪郭形状に対して局所的に変形しているパターン領域を「欠陥領域」(欠陥発生リスクの高い領域)として抽出する用途に好適なパターン検査装置の例である。
半導体のプロセスルールが進化し、より微細なパターンがウェハ上に転写されるようになるに伴って、マスクの設計不良等に起因するシステマティック欠陥を検出すべく、設計データを活用した検査の必要性が増している。マスクの設計や転写のためのパラメータの設定のマージンが減少し、システマティック欠陥が発生し易くなっていることに加え、ランダム欠陥と異なり発生原因を特定して改善策を施すことで効率よく対処が可能であることから、システマティック欠陥に対する対策の重要度が増しているためである。システマティック欠陥の場合、すべてのダイについて同じように欠陥が発生するため、従来から実施されているダイ同士の相互比較による検査では検出できず、設計データとの比較による検査によってのみ検出することが可能である。また、検査の観点についても、1次元特徴としての寸法の検査だけでなく、2次元形状の検査の必要性が高まっている。そのような検査の際、パターンの微細化の傾向に加え、低倍率画像を用いた検査となることで、検出すべき欠陥の大きさが画像上において小さくなる傾向にあることは、前述の通りである。
また、設計データとの比較によって局所的に変形しているパターン領域を欠陥領域として抽出する場合、ショット内の焦点距離や露光量のばらつきによるパターンの太りや細りの影響を分離する必要がある。前述の特許文献1に開示されている技術は、これらの影響を大域的パターン変形量として局所パターン変形量から分離し、局所パターン変形量を用いて欠陥検査を行っている点でこの課題への対処として有効であるが、前述のように、課題もある。
さらに、評価時間抑制の観点から、ステージ(試料台)を移動させながら取得した画像を用いた検査となる場合もある。その場合、ステージの移動速度の不均一を始めとする様々な要因により、ウェハ上の実際のパターン形状に対し、当該パターンを撮像して得られた画像上のパターン形状が歪んでいる場合がある。これらの歪みは、通常、補正された後に設計データとの比較が為されるが、検出したい欠陥の大きさに比べて十分緩やかな変形として表れる残留歪が残っている場合もある。
本実施形態は、上述のような検討を踏まえて、課題の解決を図った例である。以下に、詳細を説明する。
[パターン検査装置の構成]
図1は、本実施形態に係るパターン検査装置の構成を説明する図であり、撮像装置としてSEMを用いたパターン検査装置の一例を示す図である。本実施形態のパターン検査装置は、SEM101と当該SEMの制御装置102とを備えた撮像装置100、演算処理装置110、操作端末120、及び、記憶装置130を備えている。
SEM101は、電子銃101a、コンデンサレンズ101b、偏向器101c、ExB偏向器101d、対物レンズ101e、ステージ101h、及び、二次電子検出器101kを備えている。電子銃101aより射出された一次電子線はコンデンサレンズ101bで収束され、偏向器101c、ExB偏向器101d、対物レンズ101eを経てステージ101h上に置かれた試料(ウェハ)101g上に焦点を結んで照射される。電子線が照射されると、試料101gからは二次電子が発生する。試料101gから発生した二次電子は、ExB偏向器101dにより偏向され、二次電子検出器101kで検出される。偏向器101cによる電子線の二次元走査に同期して、或いは、偏向器101cによる電子線のX方向の繰り返し操作とステージ101hによる試料101gのY方向の連続的な移動に同期して、試料から発生する二次電子を検出することで、二次元の電子線像が得られる。二次電子検出器101kで検出された信号は、A/D変換器101mによってデジタル信号に変換され、制御装置102を介して演算処理装置110に送られる。
制御装置102は、SEM101を制御することによって、所望の条件での電子線走査を可能とする。制御装置102は、試料上の所望の位置に走査位置を設定するための偏向信号を偏向器101cに供給する。偏向器101cは、供給される信号に応じて、所望の大きさに視野の大きさ(倍率)を変化させる。制御装置102は、偏向器101cの走査と同期して検出器101kによって得られた検出信号を配列することによって得られる検査画像を演算処理装置110に送る。
尚、SEM101及び制御装置102の構成は、所望の条件で試料101gを撮像して得られた検査画像を演算処理装置110に提供できるものであればよく、例示した構成に限るものではない。
演算処理装置110は、メモリ111、図2のステップS201等の処理を実行する初期設定部112、図2のステップS202等の処理を実行するエッジ抽出パラメータ生成部113、図2のステップS203等の処理を実行する輪郭線形成部114、及び、図2のステップS204等の処理を実行する検査部115を備えており、撮像装置100から入力された検査画像と記憶装置130に格納された設計データから形成した基準輪郭線とを比較することで、試料101g上に形成されているパターンを検査する。演算処理装置110にて実行される処理に必要な情報は、演算処理装置110内のメモリ111に、検査用のレシピとして記憶されている。レシピは、パターン検査装置を自動的に動作させるための動作プログラムであり、検査対象となる試料の種類ごとに、上記メモリ111や外部の記憶媒体に記憶され、必要に応じて読み出される。
演算処理装置110は、キーボード等の入力手段を備えた操作端末120と接続され、当該入力手段を介して操作者からの入力を受け付けるとともに、当該操作端末120に設けられた表示装置に、操作者に提示するための画像や検査結果等を表示する機能を有する。これらの機能は、たとえば、GUI(Graphical User Interface)と呼ばれるグラフィカルなインタフェースによって実現される。
尚、演算処理装置110における制御や処理の一部又は全てを、CPUや画像の蓄積が可能なメモリを搭載した電子計算機等に割り振って処理・制御することも可能である。また、操作端末120は、検査に必要とされる電子デバイスの座標、位置決めに利用するパターンマッチング用の辞書データ(後述)、撮影条件等を含む撮像レシピを、手動で、或いは、記憶装置130に記憶された電子デバイスの設計データを活用して作成する撮像レシピ作成装置としても機能する。
記憶装置130は、設計データと辞書データを格納しておくものであり、例えばハードディスクである。尚、本実施形態における設計データとは、検査の評価基準となる二次元の輪郭形状を定めるためのものであり、電子デバイスの設計データそのものに限るものではない。例えば、ウェハ上に形成されるべきパターン図形のレイアウトを記述したレイアウトパターンであってもよいし、電子デバイスの設計データに基づいて形成されたマスクパターン形状からリソグラフィシミュレーション等の方法で求められる輪郭形状であってもよいし、良品パターンから抽出した輪郭形状であってもよい。本実施形態においては、設計データとして、リソグラフィシミュレータで得られた露光パターンの外形を形成する曲線(折れ線や多角形を含む)を用いる。設計データは、評価基準となる輪郭形状を表す多角形が定義できるように、パターン図形の個数と、各々のパターン図形に含まれる頂点の座標と、各々の頂点の接続関係の情報と、を含むように構成する。尚、接続関係の情報は、パターンの内外が判別できるように、向き付きの情報として構成する。また、後述(図2)のように、初期設定部112が基準輪郭線と検査画像との位置合わせをする際にテンプレートとして使用される領域に関する幾何情報である辞書データも、基準パターンと対応付けて記憶しておく。辞書データは、例えば、領域の中心位置の座標情報と、領域の大きさの情報とを備えた情報であり、「探索範囲内でのユニーク性」等を考慮して抽出された、テンプレート領域とするのに適した1つ以上の領域に関する情報を、あらかじめ生成して記憶しておく。位置合わせをする際のテンプレートの情報を画像データではなく辞書データとして保持しておくことで、画像データとして保持する場合と比べ、保持しておくべきデータ量を削減することができる。
また、必要に応じて、記憶装置130に記憶された設計データに基づきウェハ上に形成されるパターン形状を求めるシミュレータ140を備えた構成としてもよい。このような構成とすることで、記憶装置130に当初格納されている設計データによって定められる二次元の輪郭形状と、ウェハ上に形成されると想定されるパターン形状との差異が大きい場合に、当初格納されている設計データからウェハ上に形成されると想定されるパターン形状をシミュレータ140で求め、検査の評価基準とする基準パターンとすることができるため、虚報を低減することができ、検査の信頼性を向上させることができる。
[パターン検査装置の動作]
次に、本実施形態におけるパターン検査装置の動作について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係るパターン検査装置の動作を示すフローチャートである。
パターン検査処理が開始されると、まず、ステップS201において、初期設定部112が、検査画像と基準パターンの初期設定を行う。検査画像と基準パターンの初期設定に関する処理は、具体的には次のような処理である。
初期設定部112は、まず、撮像装置100から検査画像を読み込み、必要に応じて前処理を実施する。前処理の例としては、例えば、ノイズ除去のための平滑化処理等があり、これらの前処理については、適宜、公知の技術を用いて実施する。
初期設定部112は、続いて、記憶装置130から検査画像に対応する範囲の設計データを読み込み、必要に応じて、パターン図形の角の丸め処理等、設計データの変形処理を行った上で、変形後の設計データに基づいて基準輪郭線を求める。検査画像に対応する範囲の設計データの読み込みは、設計データが備える頂点の座標と接続関係の情報を用いて、評価基準とする輪郭形状を表す多角形の一部が検査画像に対応する範囲(検査画像取得時の位置ずれ誤差に相当するマージン等を考慮した範囲)に含まれ得るものすべてを読み込む。即ち、前記多角形の辺のうち、少なくとも一方の頂点が検査画像に対応する範囲内に含まれるものだけでなく、辺の一部分が検査画像に対応する範囲を横切るものについても読み込むようにする。また、基準輪郭線は基準エッジを設計データに基づいて繋げたものであり、本実施形態において検査の基準とする基準パターンとなる。初期設定部112の動作のうち、設計データに基づいて基準輪郭線を求める処理(基準輪郭線形成処理)に関する動作については、後で詳述する(図3参照)。
初期設定部112はさらに、記憶装置130から検査画像に対応する範囲の辞書データを読み込み、基準輪郭線と検査画像との位置合わせを実施する。基準輪郭線と検査画像との位置合わせは、公知の技術を用いて実施すればよい。例えば、正規化相互相関値を評価値とした、テンプレートマッチングを用いることができる。その際のテンプレート画像は、例えば、辞書データを参照して位置合わせに適した領域を求め、当該領域内に含まれる基準輪郭線を画像上に描画して、ガウスフィルタ等の平滑化フィルタを用いてぼかしたものを用いればよい。また、基準輪郭線と検査画像との位置合わせの別の方法の例としては、辞書データを参照して求めた、位置合わせに適した領域内に含まれる基準輪郭線と、検査画像からSobelフィルタ等を用いて抽出した輪郭線とを、輪郭線マッチングの手法を用いて位置合わせするようにしてもよい。輪郭線マッチングの手法としては、例えば、粗サーチとして一般化ハフ変換を用い、精サーチとしてICP(Iterative Closest Point)アルゴリズムを用いるような、二段階の手法によって精度よく実施することができる。或いは、辞書データを参照して求めた、位置合わせに適した領域内に含まれる基準輪郭線を画像上に描画してガウスフィルタ等の平滑化フィルタを用いてぼかしたものをテンプレート画像とし、検査画像からSobelフィルタ等を用いて抽出した輪郭線を画像上に描画してガウスフィルタ等の平滑化フィルタを用いてぼかしたものを被サーチ画像とした上で、正規化相互相関値を評価値としたテンプレートマッチングによって実施してもよい。基準輪郭線と検査画像との位置合わせの方法はこれらに限るものではなく、種々の方法によって実施することができる。尚、辞書データを参照して求められた「位置合わせに適した領域」が複数存在する場合には、そのうちの一つを用いて位置合わせをするような構成としてもよいし、各々の領域で独立に位置合わせを行った結果から最終的な位置合わせ結果を求めるような構成としてもよいし、複数の領域を組み合わせて同時に位置合わせをするような構成としてもよい。
次に、ステップS202において、エッジ抽出パラメータ生成部113が、エッジ抽出パラメータを生成する。ステップS202の処理は、具体的には、位置合わせがなされた状態の検査画像と基準輪郭線を用いて、基準エッジ毎に1つのエッジ抽出パラメータを求めるものである。本実施形態では、輪郭線形成部114が閾値法を用いるため、閾値法でエッジを抽出する際に用いられるパラメータである「閾値」がエッジ抽出パラメータとなる。エッジ抽出パラメータは、正常部において検査画像から抽出されるエッジと基準エッジとが略一致するように算出される。エッジ抽出パラメータ生成部113の動作については、後で詳述する(図6参照)。
続いて、ステップS203において、輪郭線形成部114が、ステップS202で生成されたエッジ抽出パラメータを用いて、測長エッジ(後述)を抽出し、測長輪郭線(後述)を形成する。ステップS203の処理は、具体的には、基準エッジ毎に生成された輝度プロファイルから当該基準エッジに対応するエッジ抽出パラメータに基づいて検査部115の処理で使用されるエッジを求める処理である。以下の説明では、輝度プロファイルを用いて求めたエッジを特に「測長エッジ」と呼ぶ。尚、本実施例では、後述の検査部115の処理においてEPE(Edge Placement Error;本実施形態では基準エッジから測長エッジまでの距離に相当する)の値を参照するため、基準エッジから測長エッジまでの距離のみを求めるが、検査或いは計測の用途によっては、測長エッジを検査画像の座標系における2次元座標の列として求め、基準エッジの繋がり方に倣って繋げて、輪郭線として扱ってもよい。そのようにして測長エッジを繋げたものを「測長輪郭線」と呼ぶ。輪郭線として扱うことにより、曲線近似等の公知の技術による幾何学的な平滑化処理を実施することができ、ノイズの影響による輪郭線の形状の乱れを低減することができるほか、必要に応じて、EPEの測り方を、「点と点」の距離ではなく「点と多角形」或いは「多角形と多角形」の距離として定義することで、EPEの測定精度を向上させることも可能である。また、互いに交差している線分同士の交差を検出し、該交差を解消するために測長エッジの削除や移動や並び順の変更を行う処理を実施してもよい。これらの処理を加えることで、例えば、基準輪郭線と測長輪郭線の食い違い部分の面積を指標として形状の差異を把握したい場合において、指標の信頼度を向上させることができる。
本明細書のこれ以降の記述においては、これらの変形例も踏まえ、測長エッジを抽出後、測長輪郭線を形成する必要が必ずしも無い場合についても、測長輪郭線を形成する処理として説明する。
その後、ステップS204において、検査部115が、輪郭線形成部114が形成した測長輪郭線と基準輪郭線との比較によってパターンを検査し、欠陥領域と判定された領域に関する情報を検査結果として出力後、パターン検査処理を終了する。検査部115の動作のうち、測長輪郭線と基準輪郭線との比較によるパターンの検査に関する動作については、図14及び図15を参照して後で詳述する。また、検査部115の動作のうち、検査結果の出力に関する動作については、図16を参照して後で詳述する。
[初期設定部112の動作のうち基準輪郭線形成処理に関する動作]
次に、初期設定部112の動作のうち基準輪郭線形成処理に関する動作について、図3乃至図5を参照して説明する。
図3は、本実施形態に係る演算処理装置110に含まれる初期設定部112の動作のうち基準輪郭線形成処理に関する動作を示すフローチャートである。
基準輪郭線形成処理が開始されると、初期設定部112は、ステップS301において、記憶装置130から設計データを読み込んで、読み込んだパターン図形の個数をカウンタMJに記憶する。
続いて、初期設定部112は、ステップS302において、基準エッジを抽出する。基準エッジは、設計データに含まれるパターン図形毎に、所与の最大間隔を超えない最大の間隔で、等間隔に抽出される。なお、曲率に応じて密度を変えて、即ち、曲率が高い部分の密度が曲率が低い部分の密度に対して高くなるように抽出するような構成としてもよく、その場合、曲率が高い部分の形状を、抽出される輪郭に、よりよく反映させることができる。ステップS302の処理の詳細は、後で詳述する(図5参照)。
続いて、初期設定部112は、ステップS303において、基準エッジを選別する。これは、ステップS302で抽出された基準エッジのうち、検査範囲に含まれ得る基準エッジのみを選択し、連続する基準エッジを1つのセグメントとして登録する処理である。位置ずれの補正が為されることを考慮し、検査画像の撮像範囲(FOV)に対して、所定の幅だけ広い範囲に含まれる基準エッジを選択する。尚、初期設定部112は、ステップS303において、「0」で初期化されたカウンタMSの値を、セグメントを登録する度に「1」増やしていくことにより、カウンタMSの値を処理の対象とすべきセグメントの個数に対応させる。また、S番目のセグメントに含まれる基準エッジの個数NSについても、セグメントに対応付けて記憶しておく。
ステップS302及びステップS303の処理の内容について、図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態に係る演算処理装置110に含まれる初期設定部112の動作のうち、基準輪郭線形成処理における基準エッジの抽出方法及び基準エッジの選別方法を説明する図である。
図4において、矩形401は、検査画像の撮像範囲(FOV)であり、矩形402は、上下左右の各々の方向に対して、仕様上考えられる最大の位置ずれ量と基準エッジの最大間隔との和に相当する距離だけ、矩形401を拡大した矩形である。
図形410はパターン図形であり、有向閉路を成す多角形として表現されるものである。有向辺の右側か左側かによって、パターンの内外の判別が可能となっている。図4の例では、時計回りに向きが付けられているものとする。
基準エッジ411は、図形410のデータのうち最初に登録されている頂点に対応する基準エッジである。ステップS302の処理では、始点である基準エッジ411から等間隔に、有向辺の方向に沿って、基準エッジ412乃至415を含むような基準エッジ群を抽出する。
ステップS303の処理では、抽出された基準エッジ群に含まれる基準エッジの各々に対して、矩形402に含まれるか否かを判定し、矩形402に含まれると判定された基準エッジのうち連続する一連の基準エッジを、1つのセグメントとして登録する。具体的には、基準エッジ412から基準エッジ413までの一連の基準エッジを1つのセグメントとして登録し、基準エッジ414から基準エッジ415までの一連の基準エッジを別の1つのセグメントとして登録する。
図5は、本実施形態に係る演算処理装置110に含まれる初期設定部112の動作のうち、基準輪郭線形成処理における、基準エッジ抽出処理(S302)に関する動作を説明するフローチャートである。
ステップS501において、初期設定部112は、処理の対象とするパターン図形を識別するためのカウンタであるカウンタJの値を「0」にする。
ステップS502において、初期設定部112は、J番目のパターン図形の周長LJを計算する。パターン図形の周長LJは、公知の方法を用いて計算すればよい。
ステップS503において、初期設定部112は、周長LJと所与の最大サンプリング間隔PからJ番目のパターン図形に対するサンプリング間隔PJと基準エッジの個数NJを算出する。具体的には、LJがPで割り切れる場合は、最短経路を(LJ/P)等分する位置に基準エッジが配置される。この場合、PJはPに等しくなり、NJは両端を含めるため(P/LJ+1)となる。LJがPで割り切れない場合には、最短経路を(LJ/P+1)等分する位置に基準エッジが配置されることを考慮して、同様に求めればよい。
本実施形態では、Pの値は0.5画素であるとするが、Pの値はこれに限るものではない。
ステップS504において、初期設定部112は、処理の対象とする基準エッジを識別するためのカウンタであるカウンタNの値を「0」にする。
ステップS505において、初期設定部112は、始点からの道のりが「PJ×N」である点の座標としてN番目の基準エッジの座標を算出し、J番目のパターン図形のN番目の基準エッジとして登録する。
ステップS506において、初期設定部112は、必要な個数の基準エッジに対する処理を完了したか否かを、カウンタNと基準エッジの個数NJとを比較することによって判定する。必要な個数の基準エッジに対する処理を完了している場合(ステップS506・YES)、初期設定部112は、ステップS508の処理に進む。処理が完了していない基準エッジがある場合(ステップS506・NO)、初期設定部112は、ステップS507に進んで、カウンタNの値を「1」増やした後、ステップS505に進んで処理を続ける。
ステップS508において、初期設定部112は、必要な個数のパターン図形に対する処理を完了したか否かを、カウンタJと読み込んだパターン図形の個数を示すカウンタMJを比較することによって判定する。必要な個数のパターン図形に対する処理を完了している場合(ステップS508・YES)、初期設定部112は、基準エッジ抽出処理を終了する。処理が完了していないパターン図形がある場合(ステップS508・NO)、初期設定部112は、ステップS509に進んで、カウンタJの値を「1」増やした後、ステップS502に進んで処理を続ける。
[演算処理装置110に含まれるエッジ抽出パラメータ生成部113の動作]
次に、エッジ抽出パラメータ生成部113の動作について、図6乃至図13を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係る演算処理装置110に含まれるエッジ抽出パラメータ生成部113の動作を示すフローチャートである。
ステップS601において、エッジ抽出パラメータ生成部113は、基準エッジ毎に、輝度プロファイルを取得する方向を求め、輝度プロファイルを生成する。ステップS601の処理については、後で詳述する(図7参照)。
続いて、ステップS602において、エッジ抽出パラメータ生成部113は、検査画像と基準輪郭線を用いて、初期パラメータ算出処理を行う。ステップS602の処理については、後で詳述する(図9参照)。
続いて、ステップS603において、エッジ抽出パラメータ生成部113は、初期パラメータ平滑化処理を行う。ステップS603の処理については、後で詳述する(図13)。
図7は、本実施形態に係る演算処理装置110に含まれるエッジ抽出パラメータ生成部113の動作のうち、輝度プロファイル生成処理に関する動作を説明するフローチャートである。
ステップS701において、エッジ抽出パラメータ生成部113は、処理の対象とするセグメントを識別するためのカウンタであるカウンタSの値を「0」にする。
ステップS702において、エッジ抽出パラメータ生成部113は、処理の対象とする基準エッジを識別するためのカウンタであるカウンタNの値を「0」にする。
ステップS703において、エッジ抽出パラメータ生成部113は、S番目のセグメントのN番目の基準エッジにおけるプロファイル取得方向を計算する。ステップS703の処理については、後で詳述する(図8)。
ステップS704において、エッジ抽出パラメータ生成部113は、S番目のセグメントのN番目の基準エッジにおける輝度プロファイルを生成する。
ステップS705において、エッジ抽出パラメータ生成部113は、必要な個数の基準エッジに対する処理を完了したか否かを、カウンタNと基準エッジの個数NSとを比較することによって判定する。必要な個数の基準エッジに対する処理を完了している場合(ステップS705・YES)、エッジ抽出パラメータ生成部113は、ステップS707の処理に進む。処理が完了していない基準エッジがある場合(ステップS705・NO)、エッジ抽出パラメータ生成部113は、ステップS706に進んで、カウンタNの値を「1」増やした後、ステップS703に進んで処理を続ける。
ステップS707において、エッジ抽出パラメータ生成部113は、必要な個数のセグメントに対する処理を完了したか否かを、カウンタSとセグメントの個数を示すカウンタMSを比較することによって判定する。必要な個数のセグメントに対する処理を完了している場合(ステップS707・YES)、エッジ抽出パラメータ生成部113は、エッジ抽出パラメータ生成処理を終了する。処理が完了していないセグメントがある場合(ステップS707・NO)、エッジ抽出パラメータ生成部113は、ステップS708に進んで、カウンタSの値を「1」増やした後、ステップS702に進んで処理を続ける。
図8は、本実施形態に係るパターン検査装置の演算処理装置110に含まれるエッジ抽出パラメータ生成部113の動作のうち、輝度プロファイル生成処理における輝度プロファイルの取得方向を説明する図である。
着目しているN番目の基準エッジ802に対する輝度プロファイルの取得方向は、基準エッジ802の位置におけるセグメント800の接線方向に垂直な方向として求める。例えば、セグメント800上で基準エッジ802の1つ手前の基準エッジである基準エッジ801の座標と、セグメント800上で基準エッジ802の1つ後ろの基準エッジである基準エッジ803の座標を用いて求めればよい。基準エッジ801の座標が(X1,Y1)であり、基準エッジ803の座標が(X3,Y3)である場合に、まず、ベクトル(X3−X1,Y3−Y1)を長さが1になるように正規化したベクトル(TX,TY)として、基準エッジ802におけるセグメント800の接線に相当する直線810の方向ベクトルを求め、続いて、直線810に垂直な直線である直線820の方向ベクトル(DX,DY)を、(−TY,TX)として求めればよい。輝度プロファイルは、直線820上で、位置に関する座標原点を基準パターン802の位置として、1次元の関数として生成される。区間823はプロファイル取得区間である。本実施例では、基準エッジ802に対して、所定の距離Rだけ負側に離れた点821から、所定の距離Rだけ正側に離れた点822までを、プロファイル取得区間823とする。輝度プロファイルは、プロファイル取得区間823内において、サブ画素間隔(例えば0.5画素間隔)で画素値をサンプリングすることで生成される。尚、画素値のサンプリングについては、例えば、双線形補間等、公知の手法を用いて行えばよい。
図9は、本実施形態に係る演算処理装置110に含まれるエッジ抽出パラメータ生成部113の動作のうち、初期パラメータ算出処理に関する動作を説明するフローチャートである。
ステップS901において、エッジ抽出パラメータ生成部113は、処理の対象とするセグメントを識別するためのカウンタであるカウンタSの値を「0」にする。
ステップS902において、エッジ抽出パラメータ生成部113は、処理の対象とする基準エッジを識別するためのカウンタであるカウンタNの値を「0」にする。
ステップS903において、エッジ抽出パラメータ生成部113は、S番目のセグメントのN番目の基準エッジに関する輝度プロファイルにおいて、初期パラメータ算出区間を求める。初期パラメータ算出区間は「上に凸となる1つの区間とその両側の下に凸となる区間との和集合のうち、基準エッジを含むもの」として求めればよい。
そのような区間が見つからない場合、即ち、基準エッジの近傍の画素の画素値がノイズレベル程度のばらつきしか持たない程度に平坦である場合、「プロファイル取得区間内には測長エッジとするに適した部分が見つからない」ということであるため、後述のステップS1401の処理で欠陥候補として判定するべく、初期パラメータ算出区間の両端に例外値を入れておき、基準エッジに測長エッジが対応付かないようにする。尚、平坦であるか否かの判定は、レシピ等で指定された所定の閾値によって判定してもよいし、公知の方法で検査画像から別途推定したノイズレベルを用いて判定してもよいし、その他の方法を用いて判定してもよい。
ステップS904において、エッジ抽出パラメータ生成部113は、初期パラメータ算出区間内における正側最小値と負側最小値と最大値を求める。
ステップS905において、エッジ抽出パラメータ生成部113は、S番目のセグメントのN番目の基準エッジにおける初期パラメータを算出して登録する。
ステップS906において、エッジ抽出パラメータ生成部113は、必要な個数の基準エッジに対する処理を完了したか否かを、カウンタNと基準エッジの個数NSとを比較することによって判定する。必要な個数の基準エッジに対する処理を完了している場合(ステップS906・YES)、エッジ抽出パラメータ生成部113は、ステップS908の処理に進む。処理が完了していない基準エッジがある場合(ステップS906・NO)、エッジ抽出パラメータ生成部113は、ステップS907に進んで、カウンタNの値を「1」増やした後、ステップS903に進んで処理を続ける。
ステップS908において、エッジ抽出パラメータ生成部113は、必要な個数のセグメントに対する処理を完了したか否かを、カウンタSとセグメントの個数を示すカウンタMSを比較することによって判定する。必要な個数のセグメントに対する処理を完了している場合(ステップS908・YES)、エッジ抽出パラメータ生成部113は、初期パラメータ算出処理を終了する。処理が完了していないセグメントがある場合(ステップS908・NO)、エッジ抽出パラメータ生成部113は、ステップS909に進んで、カウンタSの値を「1」増やした後、ステップS902に進んで処理を続ける。
図10は、本実施形態に係るパターン検査装置の演算処理装置110に含まれるエッジ抽出パラメータ生成部113の動作のうち、初期パラメータ算出処理における初期パラメータの算出方法を説明する図である。
初期パラメータは、輝度プロファイル1000上で負側最小値を達成する点1001のプロファイル取得区間内の位置1011、正側最小値を達成する点1002のプロファイル取得区間内の位置1012、最大値を達成する点1003のプロファイル取得区間内の位置1013、及び、負側最小値VBM、正側最小値VBP、最大値VTを用いて算出する。区間1020は、プロファイル取得区間内において、エッジ抽出パラメータの定義域[−1.0,1.0]に対応する値域となる区間である。プロファイル1000における基準エッジの位置の画素値が、画素値VCである。画素値VCに対応するエッジ抽出パラメータが、初期パラメータとなる。尚、画素値からエッジ抽出パラメータへの変換は、図11の定義に従って行う。
図11は、本実施形態におけるエッジ抽出パラメータの値の意味を説明する図である。
輝度プロファイルの山の片側のみ(最大値を達成する点に対してどちら側を使用するかはレシピ等で指定される)を使用する従来の閾値法と異なり、本実施形態では、輝度プロファイルは最大値を達成する点1003の両側を利用するため、閾値の定義域として[0%,100%]という値ではなく、負の値も含めて、[−1.0,1.0]を定義域とする。また、輝度プロファイル上の点における値の連続性を確保するため、負側最小値に対応するエッジ抽出パラメータ1101の値を「−1」、最大値にエッジ抽出パラメータ1102の値を「±0」、正側最小値に対応するエッジ抽出パラメータ1103の値を「+1」とする。符号の正負は、最大値を達成する点1003のプロファイル取得区間内の位置1013に対する大小関係によって定義する。
例えば、エッジ抽出パラメータ1104に対応するエッジの位置は、輝度プロファイル1000との交点1124の位置である位置1114となり、エッジ抽出パラメータ1105に対応するエッジの位置は、輝度プロファイル1000との交点1125の位置である位置1115となる。これらの位置は、基準エッジの位置802を原点とした1次元の座標系として定義されているため、そのまま当該基準エッジに対応するEPEの値となる。本実施例では、検査部115の処理はEPEの値のみに基づく処理としているため、方向ベクトル(DX,DY)を用いて2次元の輪郭形状を算出する必要はないが、2次元の輪郭形状を算出する必要がある場合には、方向ベクトル(DX,DY)とEPEの値とを用いて座標変換を行えばよい。その際、必要に応じて、自己交差を解消するための処理を加えてもよい。
尚、画素値Vからエッジ抽出パラメータへの変換は、画素値Vを達成する位置が最大値を達成する位置1013よりも小さい場合は「(V−VT)/(VT−VBM)」のように変換し、大きい場合は「(VT−V)/(VT−VBP)」のように変換すればよい。
図12は、本実施形態に係る演算処理装置110に含まれるエッジ抽出パラメータ生成部113の動作のうち、初期パラメータ平滑化処理において使用する重み関数の例を表す図である。
曲線1201は、Δpの絶対値が小さいほど重みが重くなるように定義された、滑らかな関数である。Δpは、初期パラメータの関数であり、本実施例では、初期パラメータの理想値は「0.0」であるとして、初期パラメータの値そのものを用いる。曲線1201の具体的な例としては、例えば、「0.5+0.5×cos(π・|Δp|)」を用いればよい。初期パラメータの理想値を「0.0」以外に設定する場合には、理想値との差分が「−1.0」より小さい場合は「−1.0」であるとし、理想値との差分が「1.0」より大きい場合は「1.0」であるとして、Δpの絶対値が「1.0」以下となるようにする。尚、曲線1201として用いる関数は、例示したものに限るものではない。
図13は、本実施形態における、初期パラメータとエッジ抽出パラメータの例を表す図である。
図13(a)に示す基準パターンを描画した曲線1301と、図13(b)に示すホワイトバンドの尾根に相当する曲線1302が、実際には図13(c)のように重なっている場合、曲線1301の位置にエッジを抽出するためのパラメータ、即ち初期パラメータは、例えば、曲線1312のようになる。この曲線1312を、図12の曲線1201で示される重み関数と所定のサイズの窓を用いて加重平均を取ったものが曲線1313であり、この曲線1313が、初期パラメータ平滑化処理S603の結果として得られるエッジ抽出パラメータとなる。輪郭線形成部114における処理、即ち、ステップS203の処理では、基準エッジ毎に、該基準エッジに対応するエッジ抽出パラメータを用いてエッジを抽出するため、正常部では初期パラメータと平滑化された結果のパラメータとの差異が小さいために基準パターンの近傍にエッジが抽出され、欠陥部では初期パラメータと平滑化された結果のパラメータとの差異が大きいために基準パターンから離れた位置にエッジが抽出される結果となる。曲線1313、即ち、エッジ抽出パラメータを求める際に用いられる窓のサイズについては、検査用のレシピに記載されている値、或いは、操作端末120の備える入力手段を介して操作者から入力された値を用いる。窓のサイズが相対的に小さい場合、窓のサイズが相対的に大きい場合と比べて、基準パターンにより近い位置に測長エッジが抽出され、窓のサイズが相対的に大きい場合、窓のサイズが相対的に小さい場合と比べて、より細かな凹凸まで表現されるように測長エッジが抽出されるため、窓のサイズは検出したい欠陥の大きさを踏まえて設定すればよい。
尚、エッジ抽出パラメータを求める際に用いられる窓のサイズは、基準パターンの形状に応じて異なる値を用いてもよい。例えば、直線部分とコーナー部分で別々の値を用いるようにしてもよい。これは、例えば基準パターンをレイアウトパターンから角を丸めて作る場合に角の部分の乖離が大きくなると予想されるため、角の部分の窓のサイズを小さくすることで、当該部分における欠陥検出感度を下げることを目的としたものである。
[パターン検査装置の演算処理装置110に含まれる検査部115の動作]
次に、検査部115の動作について、図14乃至図16を参照して説明する。
図14は本実施形態に係るパターン検査装置の演算処理装置110に含まれる検査部115の動作を示すフローチャートである。本実施形態では、検査部115は、設計データからの形状変形が大きい部分を、欠陥領域として検出して出力する。
欠陥判定処理が開始されると、まず、検査部115は、ステップS1401において、EPEが第一の閾値以上である基準エッジを、欠陥候補として抽出し、欠陥候補のリストに登録する。第一の欠陥判定閾値は、「欠陥発生リスクが高いとされる、設計データからの乖離量」に相当する値であり、具体的な値としては、検査用のレシピに記載されている値、或いは、操作端末120の備える入力手段を介して操作者から入力された値を用いる。尚、「欠陥発生リスクが高いとされる、設計データからの乖離量」は、従来「公差」として与えられていた値に相当するものである。
欠陥候補のリストは、最終的に欠陥領域として出力される可能性のある基準輪郭線上の区間の情報であり、各欠陥候補に対して「第S番目のセグメントの第Ns番目の基準エッジから第Nt番目の基準エッジまで」という情報を保持するようにする。欠陥候補のリストの内容は、ステップS1401乃至S1403の処理において検査部115によって適宜更新されていき、ステップS1404の処理に到達した段階で欠陥候補のリストに残っている区間に対応する箇所が、最終的に欠陥領域として出力される。
尚、ステップS903の処理において初期パラメータ算出区間が見つからない等の理由によって、測長エッジと対応付けられていない基準エッジにおけるEPEの値は、無限大として扱う。
続いて、検査部115は、ステップS1402において、EPEが第二の欠陥判定閾値以上である基準エッジまで欠陥候補を拡張する。第二の欠陥判定閾値は、第一の欠陥判定閾値よりも小さな値であり、検査用のレシピに記載されている値、或いは、操作端末120の備える入力手段を介して操作者から入力された値を用いる。検査部115は、欠陥候補のリストにおける対応する欠陥候補の情報を更新(即ち、区間を拡張)し、複数の欠陥候補が連続する区間となった場合には、当該複数の欠陥候補を1つの区間として統合し、前記複数の欠陥候補を欠陥候補のリストから除外した上で、統合された区間を欠陥候補のリストに追加する。
ステップS1402の処理は、測長輪郭線の形状の細かな凹凸によって、欠陥領域が分断されてしまい、後述の第三の欠陥判定閾値を用いた判定において虚報として判定されてしまう、という誤判定を抑制するための処理である。尚、第二の欠陥判定閾値は、判別分析法(大津の方法)を用いて正常部のEPEの平均値と標準偏差を求め、それらの値を用いて算出する等、統計的な方法を用いて求めてもよい。
続いて、検査部115は、ステップS1403において、欠陥候補のリストに登録されている各々の欠陥候補に対して、虚報か否かを判定し、虚報の場合は欠陥候補のリストから除外する。具体的には、検出したい欠陥の大きさに相当する第三の欠陥判定閾値を用いて、抽出されている欠陥候補が基準輪郭線上で所定の長さを有しているか否かを判定し、基準輪郭線上で所定の長さに満たない欠陥候補を、虚報であるとして除外する。「長さ」としては、例えば、基準エッジの個数を用いる。
続いて、検査部115は、ステップS1404において、欠陥候補を統合し、欠陥情報を作成する。具体的には、抽出された欠陥候補のうち画像上で近接するものを1つの欠陥領域として統合した上で、統合された欠陥領域の外接矩形を求め、該外接矩形の中心位置を欠陥の位置として、また、外接矩形の大きさを欠陥の大きさとして、登録する。尚、出力される欠陥領域の数を減らす必要がない場合には、欠陥領域を統合する処理は省略することができる。
ステップS1404の処理の終了後、検査部115は、欠陥判定処理を終了する。
図15は本実施形態に係るパターン検査装置の演算処理装置110に含まれる検査部115の動作を直感的に説明する図である。図15において、図15(a)は欠陥判定処理の初期状態を表す図、図15(b)は第一の欠陥判定閾値を用いて欠陥候補を検出した状態を表す図、図15(c)は第二の欠陥判定閾値を用いて欠陥候補を拡張した状態を表す図である。
欠陥判定処理は、図15(a)のような初期状態から、基準輪郭線1500上の基準エッジ(例えば基準エッジ1501)と該基準エッジに対応する測長エッジ(例えば測長エッジ1511)の距離であるEPEの値を順次参照することによって行われる。
ステップS1401における処理では、EPEが第一の閾値以上である基準エッジが、欠陥候補として抽出される。図15(b)の場合、EPEが第一の欠陥判定閾値1521以上である基準エッジである、基準エッジ1502、基準エッジ1503、基準エッジ1504、基準エッジ1505、及び、基準エッジ1506が欠陥候補として抽出される。
ステップS1402における処理では、EPEが第二の閾値以上である基準エッジまで欠陥候補が拡張される。図15(c)の場合、基準輪郭線1500に沿って、欠陥候補として抽出された基準エッジである、基準エッジ1502、基準エッジ1503、基準エッジ1504、基準エッジ1505、及び、基準エッジ1506に隣接する基準エッジのEPEを順次参照していき、EPEが第二の欠陥判定閾値1522よりも小さくなる基準エッジの手前まで、欠陥候補を拡張する。そのような拡張によって得られた欠陥候補が、欠陥候補1530及び欠陥候補1531である。
ステップS1403における処理では、欠陥候補1530及び欠陥候補1531について、虚報であるか否かが判定される。本実施形態では、基準輪郭線上における長さを観察することで虚報か否かを判定するため、例えば、第三の欠陥判定閾値が「5」である場合、長さが「8」である欠陥候補1530は虚報として判定されず、最終的に欠陥として出力されるが、長さが「3」である欠陥候補1531は虚報として判定されて、欠陥候補のリストから取り除かれる。
図16は本実施形態に係るパターン検査装置から出力される検査結果の画像の内容を説明する図である。検査結果の画像は、図14乃至図15を参照して説明した欠陥判定処理の結果得られた欠陥情報に基づいて、検査部115によって生成され、例えば、演算処理装置110によって操作端末120が備える画像表示装置に表示される。
本実施形態では、基準輪郭線を描画すると図16(a)に示される画像のようになり、検査画像が図16(b)のように得られた場合に、検査部115は、図16(c)或いは図16(d)に示すような画像を、検査結果の画像として生成する。尚、図16(b)の検査画像は、正常でないパターンが画像中に含まれている状況を表したものである。即ち、パターン図形1601は全体的に細っており、パターン図形1602は一部に欠陥として検出される程度の太りが見られる、という状況を表している。
図16(c)は、検出された欠陥領域に関する情報を操作端末120の操作者が確認するための画像である。検査部115は、当該画像の左上領域1611には欠陥領域に対応する領域の検査画像を切り出して描画し、右上領域1612には欠陥領域に対応する領域の基準パターンを切り出して描画し、右下領域1613には欠陥領域に対応する領域の測長輪郭線と基準パターンを重畳して描画し、左下領域1614には具体的に欠陥であると判定された箇所1622を描画することにより、当該画像を生成する。尚、欠陥箇所1622は、図16(b)の検査画像におけるパターン図形1602の太りの部分に対応している。欠陥箇所1622の描画は、例えば、欠陥箇所に含まれる基準輪郭線とそれに対応する測長輪郭線、及び、対応する基準エッジと測長エッジを結んだ直線で囲まれた領域を塗り潰すことによって実施すればよいが、欠陥箇所1622の描画方法はこれに限るものではなく、例えば、欠陥個所に関連する輪郭線の描画後に、モルフォロジカルフィルタを用いるような方法であってもよい。
図16(d)は各局所領域のエッジ抽出パラメータが平均値からどれだけ乖離しているかを操作端末120の操作者が確認するための画像である。検査部115は、各基準エッジに対して、当該基準エッジに対応するエッジ抽出パラメータと、エッジ抽出パラメータの基準値(例えば、各々の基準エッジに対応するエッジ抽出パラメータを平均した値)との差の絶対値を計算し、算出された値が相対的に大きい場合には、当該基準エッジを相対的に太く或いは相対的に大きな画素値で描画し、算出された値が相対的に小さい場合には、当該基準エッジを相対的に細く或いは相対的に小さな画素値で描画することにより、図16(d)のような画像を生成する。このような方法で生成された図16(d)の画像では、図16(b)の検査画像において全体的に細っているパターン図形1601に対応する部分が太線部分1631として、図16(b)の検査画像におけるパターン図形1602の太りの部分が太線部分1632として、視覚的に捉えられるような形で表れてくる。
そのため、例えば、ショット内の露光条件のばらつきを観察し、「ダイのこの辺りのパターン形状が不安定になり易い」といった分析を行う用途や、スキャナの異常の有無をチェックする用途等に用いることができる。尚、エッジ抽出パラメータの代わりに初期パラメータ(即ち、エッジ抽出パラメータの初期値)を用いて、図16(d)と同様の画像を生成するようにしてもよい。また、エッジ抽出パラメータ自体を欠陥領域か否かを判定するための1つの評価指標として、エッジ抽出パラメータが他と異なる部分を欠陥領域と判定して出力するようにしてもよい。
このように、エッジ抽出パラメータに着目して画像を生成することにより、パターン間の寸法の評価による欠陥判定とは異なった観点から、他のパターン領域に対して相対的に欠陥発生リスクが高いと予想されるパターン箇所を抽出することができる。
以上、本発明の第1実施形態によれば、検査画像からエッジを抽出するためのエッジ抽出パラメータを、検査画像と基準輪郭線を用いて、正常部のエッジが基準輪郭線の近傍に抽出されるように生成し、生成されたエッジ抽出パラメータに基づいて検査画像から求めたエッジと基準エッジを比較して検査する構成としたことにより、ノイズ等の影響を低減し、検査結果の信頼性を向上させることができる。特に、検査の際に、被検査パターンが製造された際のショット内の焦点距離や露光量のバラツキによる大域的な形状変形の影響を低減させることができるため、マスク欠陥を探す用途に好適である。
尚、エッジ抽出パラメータ生成部104が生成するエッジ抽出パラメータの値として適当であるとする値の範囲を入力する範囲指定部を備え、操作端末120の操作者がエッジ抽出パラメータの値の範囲を指定できるような構成としてもよい。このような構成とすることで、エッジ抽出パラメータの調整範囲として適当であると判断される範囲を超えて生成されたエッジ抽出パラメータによってエッジが抽出されることによって本来欠陥として検出されるべき部分が検出されずに失報となってしまう現象を、抑制することができる。
エッジ抽出パラメータ生成部104が生成するエッジ抽出パラメータの値として適当であるとする値の範囲は、検査用のレシピで指定するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、初期パラメータからエッジ抽出パラメータを求める方法として、加重平均を用いたが、初期パラメータからエッジ抽出パラメータを求める方法はこれに限るものではなく、曲線近似等、別の手法を用いて求めるようにしてもよい。
また、前記実施形態ではΔpの値を「0.0」が理想値であるとして求めたが、本発明の実施形態はこれに限るものではなく、例えば、パターン図形毎、或いは、検査画像毎の初期パラメータの平均値を理想値として求めてもよい。
また、前述の実施形態では、基準エッジ毎に1つのエッジ抽出パラメータを求めるようにしたが、本発明の実施形態はこれに限るものではなく、例えば、パターン図形単位で1つのエッジ抽出パラメータを求めるようにしてもよい。具体的には、例えば、パターン図形に属する基準エッジの初期パラメータの平均値をエッジ抽出パラメータとしてもよいし、或いは、基準輪郭線に対して測長輪郭線の当てはまりが最も良くなるようなエッジ抽出パラメータを探索するようにしてもよい。このような構成とすることで、測長エッジが基準エッジに過度にフィッティングされる現象を抑制することができる。同様に、露光条件が検査画像内で一定であると想定される場合には、検査画像の全体として1つのエッジ抽出パラメータを求めるようにしてもよい。
また、測長輪郭線と基準輪郭線との比較の方法、及び、検査結果の出力形態及び出力先は、図14乃至図16、及び、対応する説明において例示したものに限るものではなく、用途に応じて種々変更可能である。例えば、検査結果の出力形態については、目視確認のための、例示した以外の画像情報であってもよいし、分析等のための、欠陥領域の座標や大きさ、欠陥種別、判定の信頼度のような情報であってもよいし、それらの両方を関連付けて出力するようなものであってもよい。また、検査結果の出力先は、操作端末120に限るものではなく、外部の記憶装置であってもよいし、ネットワークを介して他のシステムに送信するようなものであってもよい。
また、本実施形態は、例えば、リソグラフィ工程後とエッチング工程後のパターン形状比較等、異なる工程間のパターン形状の比較にも適用することができる。例えば、両者で共通の設計データを用いて検査を行うようにすればよい。或いは、一方から形成した輪郭線を基準輪郭線として、他方を検査するようにしてもよい。異なる工程間のパターン形状の比較の場合、プロファイル形状が互いに異なることが一般であるため、本発明のように、検査画像から適応的に求めたエッジ抽出パラメータを用いた処理とすることで、所与のエッジ抽出パラメータを用いる場合に比べ、検査結果の信頼性を向上させることができる。尚、異なる工程間のパターン形状の比較に適用する場合において、一方から形成した輪郭線を基準輪郭線として他方を検査するようにする場合には、「軽微なラフネスの影響を抑制できる」という点が本実施形態の一つの特徴であることを踏まえ、相対的にラフネスが小さい方の輪郭線を基準輪郭線とするのが好適である。従って、エッチング工程後のパターン形状を基準輪郭線として、リソグラフィ工程後のレジストのパターン形状を評価するのがよい。尚、異なる工程のパターン形状間に設計上の差異が想定される場合には、想定される差異の分だけ基準輪郭線を膨張あるいは縮小させてから処理をすることで、検査結果の信頼性をより一層向上させることができる。
<第1実施形態の第1の変形例>
以下、第1実施形態の第1の変形例について、図17乃至図25及び図43を参照して説明する。本変形例は、基準パターンからの乖離が大きく、ステップS903の処理において初期パラメータ算出区間が見つからないケースで、欠陥箇所の形状をより正しく把握したい場合のほか、ブリッジング或いはネッキングが発生しているケースで、当該領域を欠陥領域として検出するだけでなく、「ブリッジング」や「ネッキング」等の欠陥種別の判別も合わせて行いたい場合に、特に好適な例である。
本変形例のパターン検査装置は、第一実施形態のパターン検査装置に対して、主に輪郭線形成部114の動作が異なる。具体的には、本変形例では、輪郭線形成部114はエッジ抽出パラメータ生成処理によって生成されたエッジ抽出パラメータで欠陥検出用の測長輪郭線を形成した後、測長輪郭線補修処理を実施する。そのため、以下、測長輪郭線補修処理について詳細に説明する。
図17は本実施形態の変形例の演算処理装置に含まれる輪郭線形成部114の動作のうち、測長輪郭線補修処理に関する動作を説明するフローチャートである。
測長輪郭線補修処理が開始されると、輪郭線形成部114は、ステップS1701において、プロファイルのピーク位置に相当するエッジ抽出パラメータ(即ち「0.0」)を用いて第一の画像輪郭線を形成する。画像輪郭線とは、画像上の明るい部分を繋いで形成される輪郭線であり、画素値を高さとみなした時に尾根(稜線)に相当する輪郭線である。本実施形態では、輪郭画像(即ち、画像輪郭線を形成する画素の画素値を「1(前景)」、それ以外の画素の画素値を「0(背景)」とした画像)として画素単位で管理し、サブ画素精度の座標が必要となる場合にはその都度補間計算によって座標値を求めるようにする。但し、公知の方法(例えば特許文献1等)を用いて、予めサブ画素の座標精度を有する輪郭線として生成し、公知のデータ構造によって幾何情報として管理するようにしてもよい。第一の画像輪郭線は,対応する測長エッジが存在する各々の基準エッジに対して1つずつ、プロファイルのピーク位置に相当するエッジ抽出パラメータを用いてエッジを抽出することで形成する。尚、互いに隣接する基準エッジにそれぞれ対応する画像エッジ(本実施形態では画像輪郭線を構成する画素を指すが、幾何情報として管理するように構成した場合にはサブ画素精度のエッジの位置を意味することもある)が、輪郭画像上で同一の画素、或いは、互いに隣接する画素とならない場合には、それらの画素の間を例えば直線で補間して連結性を保つようにする。
次に、ステップS1702において、輪郭線形成部114は、検査画像を2値化して画像輪郭線候補領域を形成する。具体的には、検査画像を2値化した際に画素値が大きい側のクラスに属する画素の集合を、画像輪郭線候補領域とする。画像輪郭線候補領域を形成する処理は、公知の方法を用いて実施すればよい。例えば、判別分析法(Discriminant analysis;大津の方法)を始めとする公知の閾値決定方法を用いて求めた閾値に基づいて検査画像を2値化してもよいし、動的閾値処理によって検査画像の部分領域毎に異なる閾値を求めて2値化をしてもよい。また、閾値を求める際に、第一の画像輪郭線の情報を用いるようにしてもよい。
続いて、ステップS1703において、輪郭線形成部114は、画像輪郭線候補領域と第一の画像輪郭線からマスク付き細線化処理によって第二の画像輪郭線を形成する。具体的には、検査画像の座標系において、画像輪郭線候補領域と第一の画像輪郭線を重畳描画した上で、第一の画像輪郭線の位置を保ったまま細線化を行い、得られた細線上の画素のうち、第一の画像輪郭線に含まれない画素の集合を、第二の画像輪郭線とする。尚、マスク付き細線化処理の詳細については、後で詳述する(図18参照)。
続いて、ステップS1704において、輪郭線形成部114は、基準輪郭線に基づいて、欠損区間の両端に対応する第一の画像輪郭線上の2点を求める。具体的には、有向グラフとして保持されている、基準輪郭線上の基準エッジを順に辿っていき、「自分自身に対応する第一の画像エッジは存在するが、自分の次の基準エッジに対応する第一の画像エッジは存在しない」という条件を満たす基準エッジに対応する第一の画像エッジを「欠損区間の始点」、「自分自身に対応する第一の画像エッジは存在するが、自分の手前の基準エッジに対応する第一の画像エッジは存在しない」という条件を満たす基準エッジに対応する第一の画像エッジを「欠損区間の終点」として求める。求めた「欠損区間の始点」及び「欠損区間の終点」は、これらを組として欠損区間のリストに登録しておく。具体的には、「第S番目のセグメントの第Ns番目の基準エッジから第Nt番目の基準エッジまで」という情報を登録しておけばよい。欠損区間のリストは、ステップS1705の欠損内測長輪郭線補修処理、及び、ステップS1706の欠損間測長輪郭線補修処理において参照される。尚、検査画像を取得した際の視野(FOV)によっては、欠損区間の始点或いは終点の一方しか存在しない場合があり得る。そのような場合、欠損区間のリストに登録する際に、始点が存在しない場合には始点側の識別子Nsに例外値を格納し、終点が存在しない場合には終点側の識別子Ntに例外値を格納する。欠損領域の始点或いは終点の一方しか存在しない場合にも欠損区間のリストに登録しておくのは、ステップS1706の欠損間測長輪郭線補修処理において使用される可能性があるためである。欠損区間のリストに登録されている欠損区間の数は、ステップS1705の欠損内測長輪郭線補修処理、及び、ステップS1706の欠損間測長輪郭線補修処理において参照されるため、例えば、欠損区間の数を保持するカウンタKTを測長輪郭線補修処理の開始時に「0」に初期化しておき、欠損区間のリストに欠損区間を登録する際に当該カウンタKTの値も「1」増やすようにして、ステップS1704の処理において数えておく。
ステップS1704の処理の終了後、輪郭線形成部114は、ステップS1705において、図19を参照して後で詳述する欠損内測長輪郭線補修処理を行い、さらに、ステップS1706において、図20を参照して後で詳述する欠損間測長輪郭線補修処理を行った後、測長輪郭線補修処理を終了する。
図18は本実施形態の変形例の演算処理装置に含まれる輪郭線形成部の動作のうち、測長輪郭線補修処理におけるマスク付き細線化処理に関する動作を説明する図である。
図18(a)は第一の画像輪郭線が描画された状態を示す図であり、塗り潰されている画素が第一の画像輪郭線を構成する画素に対応する。図18(b)は第一の画像輪郭線に加えて画像輪郭線候補領域を重畳描画した図であり、太線で描かれた画素が画像輪郭線候補領域を構成する画素に対応する。図18(c)はマスク付き細線化処理を行った結果を示す図であり、太線で描かれた、塗り潰された画素が、第二の画像輪郭線を構成する画素に対応する。このように、マスク付き細線化処理は、第一の画像輪郭線に繋がる第二の画像輪郭線を、第一の画像輪郭線の位置を保ったまま求めることを目的としてなされる処理である。
図18(b)から図18(c)を作成する方法としては、公知の手法を用いればよく、本実施形態では一例として、Hilditchの細線化アルゴリズムを用いる。その際、予め、更新対象となる画素(即ち、細線化処理によって前景から背景へと変わる可能性のある画素)をラスタ順(左上から右下へ)でリストに登録しておき、奇数回目の反復処理ではリストを先頭から末尾に辿って処理を行い、偶数回目の反復処理ではリストを末尾から先頭に辿って処理を行う等、異なる方向から太線状の領域を削っていって細線状にしていくようにする。その際、収束判定は、奇数回目の反復処理と偶数回目の反復処理とを組として、偶数回目の処理が終了する度に実施する。更新対象となる画素のリストに第一の画像輪郭線を構成する画素を登録しないことで、第一の画像輪郭線の位置を保ったまま、細線化を行うことができる。
尚、第一の画像輪郭線が閉路を含み、当該閉路の内部全体が画像輪郭線候補領域となる場合、当該画像輪郭線候補領域については細線化されずに残ることになる。これに対して、本実施形態における測長輪郭線補修処理の目的を達成するには、以下のような処理を実施しておけばよい。即ち、図18(c)の状態で、第一の画像輪郭線を構成する画素を取り除き、第二の画像輪郭線を構成する画素を連結成分に分解する。得られた連結成分のうち、測長輪郭線補修処理で必要とされるのは第一の画像輪郭線における2つ以上の端点を連結する連結成分だけであるため、第一の画像輪郭線における2つ以上の端点を連結することのできない連結成分を構成する画素を、第二の画像輪郭線から削除する。ここで、第一の画像輪郭線における端点とは、第一の画像輪郭線を構成する1つの画素とだけ隣接するような、第一の画像輪郭線を構成する画素のことである。
図19は本実施形態の変形例の演算処理装置に含まれる輪郭線形成部の動作のうち、測長輪郭線補修処理における欠損内測長輪郭線補修処理に関する動作を説明するフローチャートである。欠損内測長輪郭線補修処理は、「求めたい測長エッジの位置が基準エッジから大きく乖離しているために、ステップS903の処理で初期パラメータ算出区間が見つからない」等の理由によって欠損区間となっているものの、輝度プロファイルを取得する区間を適切に設定することによって測長エッジを基準エッジに対応付けて求めることができる場合の処理であり、欠損区間内の各基準エッジについて、画像輪郭線を利用して輝度プロファイルを取得する区間を求め、内挿されたエッジ抽出パラメータを用いて測長エッジを求める処理を繰り返すことで、測長輪郭線を補修する処理である。欠損内測長輪郭線補修処理の直感的な説明は、図21乃至図23を参照して、後で詳述する。
欠損内測長輪郭線補修処理が開始されると、輪郭線形成部114は、まず、ステップS1901において、処理の対象とする欠損区間を識別するためのカウンタKの値を「0」とする。
次に、ステップS1902において、輪郭線形成部114は、第K番目の欠損区間の始点に対応する画像エッジと第K番目の欠損区間の終点に対応する画像エッジを結ぶ最短経路を、第二の画像輪郭線上で求める。具体的には、第K番目の欠損区間の始点に対応する画像エッジと、第K番目の欠損区間の終点に対応する画像エッジと、第二の画像エッジの各々と、を頂点とし、輪郭画像上において8近傍で隣接した画像エッジ同士を辺で結び、画素の中心間の距離を辺の重みとした重み付き無向グラフを作成し、ダイクストラ法等の公知の手法によって求めればよい。
尚、欠損区間のリストにおいて、第K番目の欠損区間の始点或いは終点の識別子として例外値が登録されている場合には、最短経路を求める処理はせず、「最短経路は見つからなかった」としてステップS1903の処理に進む。
続いて、ステップS1903において、輪郭線形成部114は、ステップS1902 の処理の結果、最短経路が見つかったか否かを判定する。最短経路が見つかった場合(ステップS1903・YES)、輪郭線形成部114は、ステップS1904の処理に進んで第K番目の欠損区間の補修処理を開始する。最短経路が見つからなかった場合(ステップS1903・NO)、輪郭線形成部114は、第K番目の欠損区間の補修処理は完了したものとして、ステップS1908の処理に進む。
ステップS1904において、輪郭線形成部114は、処理の対象とする基準エッジを識別するためのカウンタNの値を「0」とする。処理の対象とする基準エッジは、第K番目の欠損区間の始点の次の基準エッジが「N=0」に対応し、以下、順次、第K番目の欠損区間の終点の手前の基準エッジまで、Nの値を1ずつ増やしたものに対応付ける。
続いて、ステップS1905において、輪郭線形成部114は、第K番目の欠損区間に含まれるN番目の基準エッジについて、最短経路上の対応点を求める。最短経路上の対応点は、着目しているN番目の基準エッジの位置における基準輪郭線の接線方向に垂直な方向を図8と同様に求めた上で、前記着目しているN番目の基準エッジから該垂直な方向に伸びる直線と前記最短経路に対応する部分の画像輪郭線との交点として求めればよい。
続いて、ステップS1906において、輪郭線形成部114は、第K番目の欠損区間に含まれるN番目の基準エッジについて最短経路上の対応点を含む区間で輝度プロファイルを作成し、内挿したエッジ抽出パラメータを用いて測長エッジを求める。エッジ抽出パラメータの内挿は、第K番目の欠損区間の始点に対応する基準エッジに対応するエッジ抽出パラメータと、第K番目の欠損区間の終点に対応する基準エッジに対応するエッジ抽出パラメータとを用いて、線形補間によって実施するが、参照する基準エッジの数を増やしてより高次の補間式を用いる等、線形補間以外の手法を用いて実施してもよい。
ステップS1907において、輪郭線形成部114は、第K番目の欠損区間に含まれるすべての基準エッジについて測長エッジの算出が完了したか否かを、カウンタNの値と第K番目の欠損区間に含まれる基準エッジの個数とを比較することによって判定する。第K番目の欠損区間に含まれる基準エッジの個数は、第K番目の欠損区間の始点の識別子と終点の識別子から計算で求めればよい。第K番目の欠損区間に含まれるすべての基準エッジについて測長エッジの算出が完了している場合(ステップS1907・YES)、輪郭線形成部114は、第K番目の欠損区間の補修処理が完了したものとして、第K番目の欠損区間を「補修済み」としてマークし、ステップS1908の処理に進む。測長エッジの算出が完了していない基準エッジがある場合(ステップS1907・NO)、輪郭線形成部114は、ステップS1909に進んでカウンタNの値を「1」増やした後、ステップS1905に進んで第K番目の欠損区間の補修処理を続ける。
ステップS1908において、輪郭線形成部114は、すべての欠損区間について補修処理が完了したか否かを、カウンタKの値と欠損区間の個数KTとを比較することによって判定する。すべての欠損区間について補修処理が完了している場合(ステップS1908・YES)、輪郭線形成部114は、欠損内測長輪郭線補修処理を終了する。補修処理が完了していない欠損区間がある場合(ステップS1908・NO)、輪郭線形成部114は、ステップS1910に進んでカウンタKの値を「1」増やした後、ステップS1902に進んで処理を続ける。
図20は本実施形態の変形例の演算処理装置に含まれる輪郭線形成部の動作のうち、測長輪郭線補修処理における欠損間測長輪郭線補修処理に関する動作を説明するフローチャートである。欠損間測長輪郭線補修処理は、ネッキング或いはブリッジングの状態にある場合等、測長エッジを基準エッジに対応付けて求めることができない場合に必要となる処理であり、画像エッジに対応付けて作成した輝度プロファイルから、内挿されたエッジ抽出パラメータを用いて測長エッジを求める処理を繰り返すことで、測長輪郭線を補修する処理である。欠損間測長輪郭線補修処理の開始時に補修済みでない欠損区間については、欠損間測長輪郭線補修処理の終了時に補修済みである場合には、ネッキング或いはブリッジングの状態にあり、欠損間測長輪郭線補修処理の終了時に補修済みでない場合には、パターンの崩れ等によってホワイトバンドが消失している状態にある、というように、欠陥種の判別をすることができる。ネッキングとブリッジングのどちらの状態にあるかは、欠損部分の基準輪郭線の左右どちら側に測長輪郭線の補修部分が位置するか、によって判別すればよい。欠損間測長輪郭線補修処理の直感的な説明は、図21、図24、図25、及び、図43を参照して、後で詳述する。
欠損間測長輪郭線補修処理が開始されると、輪郭線形成部114は、まず、ステップS2001において、処理の対象とする欠損区間を識別するためのカウンタKの値を「0」とする。
次に、ステップS2002において、輪郭線形成部114は、第K番目の欠損区間が補修済みであるか否かを判定する。第K番目の欠損区間が補修済みであるか否かの判定は、第K番目の欠損区間が「補修済み」としてマークされているか否かで判定すればよい。尚、判定の方法はこれに限るものではなく、例えば、第K番目の欠損区間内の基準エッジに測長エッジが対応付けられているか否かで判定するようにしてもよい。第K番目の欠損区間が補修済みである場合(ステップS2002・YES)、輪郭線形成部114は、第K番目の欠損区間に関する補修処理は完了したものとして、ステップS2009の処理に進む。第K番目の欠損区間が補修済みでない場合(ステップS2002・NO)、輪郭線形成部114は、ステップS2003の処理に進む。
ステップS2003において、輪郭線形成部114は、第K番目の欠損区間の始点に対応する画像エッジと他の欠損区間の終点に対応する画像エッジを結ぶ最短経路を第二の画像輪郭線上で求める。具体的には、第K番目の欠損区間の始点に対応する画像エッジと、補修済みでない他の欠損区間すべての終点に対応する画像エッジと、第二の画像エッジの各々と、を頂点とし、輪郭画像上において8近傍で隣接した画像エッジ同士を辺で結び、画素の中心間の距離を辺の重みとした重み付き無向グラフを作成し、ダイクストラ法等の公知の手法によって求めればよい。
続いて、ステップS2004において、輪郭線形成部114は、最短経路が見つかったか否かを判定する。最短経路が見つかった場合(ステップS2004・YES)、輪郭線形成部114は、ステップS2005の処理に進んで第K番目の欠損区間に関する補修処理を開始する。最短経路が見つからなかった場合(ステップS2004・NO)、輪郭線形成部114は、第K番目の欠損区間に関する補修処理は完了したものとして、ステップS2009の処理に進む。ここで、「第K番目の欠損区間に関する補修処理」とは、第K番目の欠損区間の始点と他の欠損区間の終点を結ぶ測長輪郭線を求めるための処理のことである。
最短経路が見つかった場合、輪郭線形成部114は、ステップS2005において、見つかった最短経路を複数の補修用エッジで分割する。見つかった最短経路を複数の補修用エッジで分割する処理は、ステップS302及び図5で説明した基準エッジの抽出処理と同様の処理である。即ち、見つかった最短経路の長さLKを求め、所与の最大サンプリング間隔Pに基づいて、当該最短経路に対するサンプリング間隔PKと補修用エッジの個数NKを算出する。即ち、LKがPで割り切れる場合は、最短経路を(LK/P)等分する位置に補修用エッジが配置される。この場合、PKはPに等しく、NKは両端が除かれるため(P/LK−1)となる。LKがPで割り切れない場合には、最短経路を(LK/P+1)等分する位置に補修用エッジが配置されることを考慮して、同様に求めればよい。
ステップS2006において、輪郭線形成部114は、処理の対象とする補修用エッジを識別するためのカウンタNの値を「0」とする。
ステップS2007において、輪郭線形成部114は、第K番目の欠損区間に含まれるN番目の補修用エッジについて輝度プロファイルを作成し、内挿したエッジ抽出パラメータを用いて測長エッジを求める。欠損間測長輪郭線補修処理においては、欠損区間に対応する部分の基準輪郭線が存在しないため、輝度プロファイルの作成は、基準エッジの代わりに補修用エッジを用い、基準輪郭線に垂直な方向に輝度プロファイルを作成する代わりに画像輪郭線に垂直な方向に輝度プロファイルを作成することで実施する。また、エッジ抽出パラメータの内挿は、ステップS1906の処理と同様に、第K番目の欠損区間の始点に対応する基準エッジに対応するエッジ抽出パラメータと、第K番目の欠損区間の終点に対応する基準エッジに対応するエッジ抽出パラメータとを用いて線形補間によって実施する。参照する基準エッジの数を増やしてより高次の補間式を用いる等、線形補間以外の手法を用いて実施することができる点についても、ステップS1906と同様である。
ステップS2008において、輪郭線形成部114は、すべての補修用エッジについて測長エッジの算出が完了したか否かを、カウンタNの値と補修用エッジの個数NKとを比較することによって判定する。すべての補修用エッジについて測長エッジの算出が完了している場合(ステップS2008・YES)、輪郭線形成部114は、第K番目の欠損区間に関する補修処理が完了したものとして、第K番目の欠損区間を「補修済み」としてマークし、ステップS2009の処理に進む。測長エッジの算出が完了していない補修用エッジがある場合(ステップS2008・NO)、輪郭線形成部114は、ステップS2010に進んでカウンタNの値を「1」増やした後、ステップS2007に進んで第K番目の欠損区間に関する補修処理を続ける。
ステップS2009において、輪郭線形成部114は、すべての欠損区間に関する補修処理が完了したか否かを、カウンタKの値と欠損区間の個数KTとを比較することによって判定する。すべての欠損区間に関する補修処理が完了している場合(ステップS2009・YES)、輪郭線形成部114は、欠損間測長輪郭線補修処理を終了する。補修処理が完了していない欠損区間がある場合(ステップS2009・NO)、輪郭線形成部114は、ステップS2011に進んでカウンタKの値を「1」増やした後、ステップS2002に進んで処理を続ける。
[測長輪郭線補修処理の直感的な説明]
以下、図17乃至図20で説明した測長輪郭線補修処理の処理フローについて、図21乃至図25及び図43を参照して、より直感的に説明する。尚、図21乃至図25及び図43において、同一の符号は同一のものを表す。
図21は、図17で説明した測長輪郭線補修処理において、ステップS1701の処理が終了した状態である。基準輪郭線2100のうち測長輪郭線2110及び測長輪郭線2111が求められている各々の区間に対応して第一の画像輪郭線2120及び第一の画像輪郭線2121が形成され、基準輪郭線2130のうち測長輪郭線2140及び測長輪郭線2141が求められている各々の区間に対応して第一の画像輪郭線2150及び第一の画像輪郭線2151が形成されている。図21の状態では、基準輪郭線2100上の連続する3つの基準エッジである基準エッジ2102、基準エッジ2103、基準エッジ2104、のうち、基準エッジ2103に対応する測長エッジが存在していないため、基準エッジ2102から基準エッジ2104までの区間が「欠損区間」となり、測長輪郭線を補修する対象となる。同様に、基準エッジ2133に対応する測長エッジが存在していないため、基準エッジ2132から基準エッジ2134までの区間が「欠損区間」となり、測長輪郭線を補修する対象となる。
測長輪郭線の補修は、基準輪郭線との対応が取れるような形で補修することを優先するが、ブリッジングやネッキングが発生している場合等、基準輪郭線との対応が取れるような形で補修することが適切でない場合も存在する。そのため、本変形例では、欠損内測長輪郭線補修処理によって基準輪郭線との対応が取れるような形での補修を試みた後、基準輪郭線との対応が取れるような形での補修ができなかった欠損区間について、欠損間測長輪郭線補修処理によって基準輪郭線との対応が取れない場合の補修を行うようにした。
図21の状態において欠損内測長輪郭線補修処理(S1705)による測長輪郭線の補修がなされる場合、測長エッジ2112と測長エッジ2114の間に測長エッジが追加されて、測長輪郭線2110と測長輪郭線2111とが繋がり、1つの測長輪郭線となる、或いは、測長エッジ2142と測長エッジ2144の間に測長エッジが追加されて、測長輪郭線2140と測長輪郭線2141とが繋がり、1つの測長輪郭線となる、という挙動となる。後述の図22及び図23で説明する例が、このような場合に該当する。
図21の状態において欠損間測長輪郭線補修処理(S1706)による測長輪郭線の補修がなされる場合、測長エッジ2112と測長エッジ2144の間に測長エッジが追加されて、測長輪郭線2110と測長輪郭線2141とが繋がり、1つの測長輪郭線となる、或いは、測長エッジ2142と測長エッジ2114の間に測長エッジが追加されて、測長輪郭線2140と測長輪郭線2111とが繋がり、1つの測長輪郭線となる、といった挙動となる。後述の図24及び図25で説明する例が、このような場合に該当する。
図22は、ステップS1703で形成された第二の画像輪郭線と、基準輪郭線との対応が取れる場合の例である。図22の例の場合、まず、ステップS1703で、第二の画像輪郭線2220及び第二の画像輪郭線2250が形成される。次に、ステップS1704で、欠損区間の両端に対応する第一の画像輪郭線上の2点、始点2122及び終点2124、及び、始点2152及び終点2154が求められる。続いて、ステップS1902で、始点2122と終点2124を結ぶ最短経路である第二の画像輪郭線2220、及び、始点2152と終点2154を結ぶ最短経路である第二の画像輪郭線2250が求められる(以上、図22(a)参照)。続いて、ステップS1905で、基準エッジ2103から基準エッジ2103におけるプロファイル取得方向に探索をすることによって最短経路上の対応点2223が求められ、また、基準エッジ2133から基準エッジ2133におけるプロファイル取得方向に探索をすることによって最短経路上の対応点2253が求められる。続いて、ステップS1906で、基準エッジ2103におけるプロファイル取得方向に基づいて基準エッジ2103の対応点2223を含む範囲で輝度プロファイルが作成され、基準エッジ2102におけるエッジ抽出パラメータと基準エッジ2104におけるエッジ抽出パラメータから内挿されたエッジ抽出パラメータを用いて、測長エッジ2213が求められる。また、同様にして、基準エッジ2133に対応する測長エッジ2243も求められる(以上、図22(b)参照)。
図23は、複数の異なる解釈が可能ではあるものの、ステップS1703で形成された第二の画像輪郭線と、基準輪郭線との対応が取れるように解釈できる場合の例である。図23の例の場合、まず、ステップS1703で、第二の画像輪郭線2320及び第二の画像輪郭線2350が形成される。但し、ステップS1703の時点では、第二の画像輪郭線2320及び第二の画像輪郭線2350は、各々別個のものとして形成されるわけではなく、「X」の形状をした1つの連結領域として形成される。次に、ステップS1704で、欠損区間の両端に対応する第一の画像輪郭線上の2点、始点2122及び終点2124、及び、始点2152及び終点2154が求められる。続いて、ステップS1902で、始点2122と終点2124を結ぶ最短経路である第二の画像輪郭線2220、及び、始点2152と終点2154を結ぶ最短経路である第二の画像輪郭線2250が求められる。即ち、ステップS1703の時点で「X」の形状をした1つの連結領域として形成されていた画像輪郭線が、ステップS1902の処理が終了した段階で、第二の画像輪郭線2220と第二の画像輪郭線2250という2つの画像輪郭線として認識される(以上、図23(a)参照)。続いて、ステップS1905で、基準エッジ2103から基準エッジ2103におけるプロファイル取得方向に探索をすることによって最短経路上の対応点2323が求められ、また、基準エッジ2133から基準エッジ2133におけるプロファイル取得方向に探索をすることによって最短経路上の対応点2353が求められる。ここで、図23(b)は、対応点2353が対応点2323と同じ位置にある場合の例を示している。続いて、ステップS1906で、基準エッジ2103におけるプロファイル取得方向に基づいて基準エッジ2103の対応点2323を含む範囲で輝度プロファイルが作成され、基準エッジ2102におけるエッジ抽出パラメータと基準エッジ2104におけるエッジ抽出パラメータから内挿されたエッジ抽出パラメータを用いて、測長エッジ2313が求められる。また、同様にして、基準エッジ2133に対応する測長エッジ2343も求められる(以上、図23(b)参照)。
図24は、ステップS1703で形成された第二の画像輪郭線と、基準輪郭線との対応が取れない場合の第一の例である。図24の例の場合、まず、ステップS1703で、第二の画像輪郭線2420及び第二の画像輪郭線2450が形成される。次に、ステップS1704で、欠損区間の両端に対応する第一の画像輪郭線上の2点、始点2122及び終点2124、及び、始点2152及び終点2154が求められる。続いて、ステップS1902で、始点2122と終点2124を結ぶ最短経路、及び、始点2152と終点2154を結ぶ最短経路を求めようとするが、求められないため、ステップS2003で始点2122と何れかの終点を結ぶ最短経路、及び、始点2152と何れかの終点を結ぶ最短経路を求める。図24の例の場合、そのような最短経路として、第二の画像輪郭線2420及び第二の画像輪郭線2450が求められる(以上、図24(a)参照)。続いて、ステップS2005で、始点2122に接続する最短経路である第二の画像輪郭線2420を分割して補修用エッジ2421及び補修用エッジ2422を得る。また、同様に、始点2152に接続する最短経路である第二の画像輪郭線2450を分割して補修用エッジ2451及び補修用エッジ2452を得る。続いて、ステップS2007において、補修用エッジ2421の位置における第二の画像輪郭線2420の法線方向をプロファイル取得方向として、補修用エッジ2421の位置における輝度プロファイルが作成され、基準エッジ2102におけるエッジ抽出パラメータと基準エッジ2134におけるエッジ抽出パラメータから内挿されたエッジ抽出パラメータを用いて、測長エッジ2411が求められる。補修用エッジ2422に対応する測長エッジ2412、補修用エッジ2451に対応する測長エッジ2441、補修用エッジ2452に対応する測長エッジ2442についても、同様に求められる(以上、図24(b)参照)。
図25は、ステップS1703で形成された第二の画像輪郭線と、基準輪郭線との対応が取れない場合の第二の例である。
図25(a)は、図17で説明した測長輪郭線補修処理において、ステップS1701の処理が終了した状態である。基準輪郭線2500のうち測長輪郭線2510及び測長輪郭線2511が求められている各々の区間に対応して第一の画像輪郭線2520及び第一の画像輪郭線2521が形成され、基準輪郭線2530のうち測長輪郭線2540及び測長輪郭線2541が求められている各々の区間に対応して第一の画像輪郭線2550及び第一の画像輪郭線2551が形成されている。図25の状態では、基準輪郭線2500上の連続する3つの基準エッジである基準エッジ2502、基準エッジ2503、基準エッジ2504、のうち、基準エッジ2503に対応する測長エッジが存在していないため、基準エッジ2502から基準エッジ2504までの区間が「欠損区間」となり、測長輪郭線を補修する対象となる。同様に、基準エッジ2533に対応する測長エッジが存在していないため、基準エッジ2532から基準エッジ2534までの区間が「欠損区間」となり、測長輪郭線を補修する対象となる。
図25の例の場合、まず、ステップS1703で第二の画像輪郭線2529及び第二の画像輪郭線2559が形成される。次に、ステップS1704で、欠損区間の両端に対応する第一の画像輪郭線上の2点、始点2522と終点2524、及び、始点2552と終点2554が求められる。続いて、ステップS1902で、始点2522と終点2524を結ぶ最短経路、及び、始点2552と終点2554を結ぶ最短経路を求めようとするが、求められないため、ステップS2003で始点2522と何れかの終点を結ぶ最短経路、及び、始点2552と何れかの終点を結ぶ最短経路を求める。図25の例の場合、そのような最短経路として、第二の画像輪郭線2529及び第二の画像輪郭線2559が求められる(以上、図25(b)参照)。続いて、ステップS2005で、始点2522に接続する最短経路である第二の画像輪郭線2529を分割して補修用エッジ2525及び補修用エッジ2526を得る。また、同様に、始点2552に接続する最短経路である第二の画像輪郭線2559を分割して補修用エッジ2555及び補修用エッジ2556を得る。続いて、ステップS2007において、補修用エッジ2525の位置における第二の画像輪郭線2529の法線方向をプロファイル取得方向として補修用エッジ2525の位置における輝度プロファイルが作成され、基準エッジ2502におけるエッジ抽出パラメータと基準エッジ2534におけるエッジ抽出パラメータから補間によって求められたエッジ抽出パラメータを用いて、測長エッジ2515が求められる。補修用エッジ2526に対応する測長エッジ2516、補修用エッジ2555に対応する測長エッジ2545、補修用エッジ2556に対応する測長エッジ2546についても、同様に求められる(以上、図25(c)参照)。
図43は、欠損間測長輪郭線補修処理において補修がなされる場合において、欠陥の状態がブリッジングなのかネッキングなのかを判別する方法を説明する図である。図43において、図24と同じ部分については図24と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。また、図43において、図25と同じ部分については図25と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
図43(a)は、図24の場合に対応するブリッジングの例であり、図43(b)は、図25の場合に対応するネッキングの例である。図43(a)において、基準輪郭線を描画した画像4310に対して、基準輪郭線の向きの情報を参照してパターンの存在する側に斜線を施したものが画像4311である。これらの画像と、測長輪郭線を描画した画像4320とを比較すると、測長輪郭線のうち欠損間測長輪郭線補修処理に関連する部分、即ち、例えば測長エッジ2112から測長エッジ2144までの区間が、基準エッジ2102と基準エッジ2104が含まれる基準輪郭線の左側に存在することが分かる。このことは、様々な方法で判定することができるが、例えば、画像4311を作成し、測長エッジ2112に対応する基準エッジ2102から測長エッジ2144に対応する基準エッジ2134まで、斜線が施されていない領域内を辿って行った場合の最短経路(第1の最短経路)の長さと、斜線が施された領域内を辿って行った場合の最短経路(第2の最短経路)の長さとを比較して、第1の最短経路の長さの方が短い場合には「ブリッジング」、第2の最短経路の長さの方が短い場合には「ネッキング」と判定すればよい。尚、最短経路が存在しない場合には、最短経路の長さを「無限大」であると定義する。第1の最短経路を求める方法としては、例えば、画像4311の各画素を頂点とし、斜線が施されていない領域内で隣接する画素に対応する頂点同士を辺で繋ぎ、辺の重みを画素間の距離として、ダイクストラ法等、公知の技術を用いて求めればよい。第2の最短経路を求める方法についても、斜線が施された領域内で隣接する画素に対応する頂点同士を辺で繋ぐこと以外は、同様である。尚、基準エッジ2102と基準エッジ2134に対応する画素に対応する頂点からは、隣接する各々の画素に対応する頂点に対して辺を繋ぐようにする。
また、図43(b)で示される場合についても、基準輪郭線を描画した画像4330に対して、基準輪郭線の向きの情報を参照してパターンの存在する側に斜線を施したものが画像4331であり、図43(a)の場合と同様にこれらの画像と測長輪郭線を描画した画像4340とを比較することで、ネッキングの状態にあることが判定できる。
以上、本変形例によれば、欠陥検出用の輪郭線を形成する際に測長輪郭線が欠損している区間において測長輪郭線を補修する処理を加えたことで、基準パターンからの変形量が大きく、ステップS903の処理において初期パラメータ算出区間が見つからないケースにおいて、欠陥箇所の形状をより正しく把握することができる。また、ブリッジング或いはネッキングが発生しているケースにおいて、当該領域を欠陥領域として検出するだけでなく、「ブリッジング」「ネッキング」等の欠陥種別を判別することができる。尚、判別した結果は、欠陥情報に付帯する情報として出力すればよい。
尚、図19を参照して説明した欠損内測長輪郭線補修処理のステップS1902の処理、及び、図20を参照して説明した欠損間測長輪郭線補修処理のステップS2003の処理において、最短経路を求めるために重み付き無向グラフを作成する際、輪郭画像上で第二の画像エッジを連結成分分解しておく処理を、前処理として追加してもよい。このような前処理を追加することにより、ステップS1902或いはステップS2003の処理において重み付き無向グラフを作成する際に、第二の画像エッジ全体ではなく、着目している欠損区間の始点に隣接する連結成分に含まれる第二の画像エッジのみを処理の対象とすればよいことになるため、処理時間を短縮することができる。
また、前記重み付き無向グラフは、辺の重みを「0」とし、頂点の重みを画素値が大きくなるほど小さくなる正の値となるようにして、作成してもよい。その場合、最短経路を求める代わりに、最小重みの経路を求めるようにする。最小重みの経路は、公知の手法を用いて求めればよい。このような構成とすることで、検査画像上で明るく見えている部分を優先して辿るような経路を用いて、輪郭線を補修することができる。
<第1実施形態の第2の変形例>
以下、第1実施形態の第2の変形例について、図44及び図45を参照して説明する。
本変形例は、帯電の影響によって電子線の走査方向に平行なエッジが不鮮明になる現象を抑制しつつ、検査対象となるウェハ上の広い範囲を高速に検査する用途に好適なパターン検査装置の例である。本変形例のパターン検査装置は、第1実施形態のパターン検査装置と比べて、主に、検査画像の取得方法、及び、パターン検査処理の処理フローが異なる。
よって、以下、検査画像の取得方法及びパターン検査処理の処理フローについて、詳細に説明する。
図44は、本変形例に係るパターン検査装置における検査画像の取得方法を説明する図である。本変形例では、図44(a)に示されるようなウェハ4400上のダイ4401に形成された半導体パターンのうち、広い範囲を検査の対象とする。また、当該検査対象範囲のSEM像を高速に取得するため、SEM像はステージ(試料台)を移動させながら取得する。例えば、検査対象範囲が図44(b)の検査範囲4402で示される場合に、1本目の検査ストライプ4410(帯状の検査範囲)、2本目の検査ストライプ4411、3本目の検査ストライプ4412、というように、境界部分を重複させながら、順次、矢印の方向に沿ってSEM像を取得する(即ち、ステージは矢印の反対向きに移動させる)。図44(b)は、3本目の検査ストライプ4412が取得途中である状態を示している。各検査ストライプからは縦長の画像データが取得され、取得された画像データは検査画像として演算処理装置110に入力されて、パターン検査処理が行われる。検査画像を取得する際、従来は、ステージの移動方向に垂直な方向に電子線を走査していたため、例えば図44(c)の検査画像4420において、電子線の走査方向に平行な、横方向のパターン4430が、帯電の影響で不鮮明になるという現象が発生していた。一般に、半導体の回路パターンは縦横のパターンで構成されることが多いため、当該現象に対しては、何らかの対策が望まれていた。これに対し本変形例では、電子線の走査方向をステージの移動方向に垂直な方向に対して傾ける(以下「斜めスキャン」とする)ことによって、図44(d)の検査画像4421のような画像を取得するようにした。このような構成とすることにより、電子線の走査方向と横方向のパターン4430の方向とが平行にならないため、帯電の影響で横方向のパターン4430が不鮮明になる度合いが低減される。尚、電子線の走査方向をステージの移動方向に垂直な方向に対して傾ける角度(以下「斜めスキャンの角度」とする)は本変形例では10度とするが、当該角度はこれに限るものではない。また、電子線の走査方向をステージの移動方向に垂直な方向に対して傾けるのではなく、ステージの移動方向に対してダイを相対的に傾けることによっても、図44(e)の検査画像4422に示すように、電子線の走査方向と横方向のパターン4430の方向とが平行にならないようにできるため、横方向のパターン4430が帯電の影響で不鮮明になるという現象を解決することができる。しかしその場合、ダイの全面を検査するために必要な検査ストライプの数が増加する上、検査ストライプ毎に検査画像の大きさが異なることにより処理が煩雑になる(例えば、並列化処理の際のプロセッサ割り当ての効率化のアルゴリズムが複雑になる等)ため、本変形例の方法とは異なり、高速な検査という観点において課題が残る。また、本変形例の方法では、各々の縦方向のパターンが同一の検査ストライプ内に含まれることで同一条件での検査となるため、縦方向のパターンが複数の検査ストライプ内に含まれる図44(e)の方法に比べて検査結果の信頼性が高いと言える。尚、図44(c)、図44(d)、及び、図44(e)の図においては、視認性の観点から、ホワイトバンドを黒線で描画した。
図45は本変形例に係るパターン検査装置の動作を示すフローチャートである。図45において図2と同じ部分については図2と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
パターン検査処理が開始されると、まず、ステップS4501において、初期設定部112が、検査画像と基準パターンの初期設定を行う。検査画像に関する前処理は、ステップS201と同様の処理である。設計データについては、記憶装置130から検査画像に対応する範囲の設計データを読み込み、必要に応じて、パターン図形の角の丸め処理等、設計データの変形処理を行った後、斜めスキャンの角度に基づいて斜交座標系への変換を行った上で、変換後の設計データに基づいて基準輪郭線を求める。また、基準輪郭線と検査画像との位置合わせについては、斜めスキャンによって辞書データで特定される範囲が平行四辺形となるため、辞書データが備えるユニーク性を損なわないよう、斜めスキャンの角度に基づいて当該平行四辺形を求めた後、当該平行四辺形に外接するような矩形領域に対応するテンプレート画像を生成して、テンプレートマッチングを行う。
尚、斜めスキャンへの対応方法としては、設計データではなく検査画像を座標変換する方法も考えられるが、本発明の一つの特徴は適切なエッジ抽出パラメータを生成して求めた測長エッジを用いることでサブ画素精度での検査を行うことにあるため、輝度プロファイルへの影響のない、設計データを変換する方法の方が好適である。
ステップS4501の処理の終了後に為されるステップS202及びステップS203の処理については、第一実施形態と同様の処理である。ステップS203の処理の終了後、ステップS4504において、検査部115が、ステップS203で形成された測長輪郭線と基準輪郭線との比較によってパターンを検査し、欠陥領域と判定された領域に関する情報を検査結果として出力した上で、パターン検査処理を終了する。ステップS4504の処理とステップS204の処理との違いは、処理の開始時に測長輪郭線及び基準輪郭線に対して、斜めスキャンの角度に基づいて斜交座標系から直交座標系への変換を実施するようにした点にある。これらの輪郭線は幾何学的な情報であるため、座標系の変換処理によって情報の劣化は発生せず、また、直交座標系に変換することで正しい距離に基づいて欠陥判定を行うことができる。測長輪郭線と基準輪郭線に対して座標系の変換処理を実施した後の処理は、ステップS204の処理と同様である。
以上、本変形例によれば、ステージ移動と斜めスキャンを伴う撮像によって得られた検査画像に対しても、輝度プロファイルへの影響が少なくなる構成によって本発明を適用することにより、検査結果の信頼性を向上させることができる。
尚、本変形例ではステージを移動させながらSEM像を取得する構成としたが、本発明のSEM像の取得方法はこれに限るものではなく、ステージ移動後に一旦ステージを停止させてSEM像を取得し、SEM像の取得が完了した後に次の検査位置にステージを移動する方法等、帯状の領域を検査するための種々の方法を用いることができる。その場合、電子線の走査方向を帯状領域の長手方向に垂直な方向に対して傾けるようにすればよい。
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、図26乃至図30を参照して説明する。本実施形態は、ノイズの影響や軽微なラフネスの影響を低減して評価対象パターンの寸法を測定するのに好適な、寸法測定装置の例である。
半導体製造の分野においては、従前より、CD‐SEMで撮像した画像(SEM像)から、例えば閾値法を用いて測定した寸法を用いて、寸法管理が為されている。寸法管理の対象としては、例えば、ラインパターンの幅やホールパターンの径などがある。プロセスルールの進化に伴い、パターン寸法が小さくなり、側壁の凹凸に伴う測長値のばらつきの影響がパターン寸法に対して相対的に大きくなることで、LER(Line Edge Roughness)やLWR(Line Width Roughness)と呼ばれる指標を正確に測定して管理する必要性が高まっている。LERやLWRの測定は、例えばCD‐SEMを用いて撮像したラインパターンの画像から、所定の計測範囲を長さ方向に多点分割し、分割された各々の範囲で閾値法等の手法で求めたエッジ位置の基準線からの乖離量のばらつき(3σ)や測長値のばらつき(3σ)を求めることで実施されているが、撮像した画像にノイズが重畳されている場合、パターンエッジを抽出する際に画像ノイズのため観測エッジの位置が真の位置からずれることに起因する「ノイズ起因バイアス」と呼ばれる誤差が存在することが知られており、その低減が望まれている。
固定のエッジ抽出パラメータを使用した場合、ノイズ等の影響によって測長に用いる輪郭線に凹凸が発生する。輪郭線の凹凸を低減するために輪郭線を幾何学的に平滑化する方法では、計測値に反映させたい凹凸形状まで平滑化される可能性がある。発明者の検討によれば、これはプロファイル形状を考慮せずに平滑化していることが原因の一つである。また、前記ばらつきを低減するために平均化した輝度プロファイルを用いる方法では、側壁の形状が異なる部分も平均化の際の計算に含まれてしまうため、例えば輝度プロファイルのピーク位置を合わせ込むというような処理の工夫を平均化処理の際に実施したとしても、平均化する範囲が広くなるほど、本来拾い上げるべき局所的な特徴が見えなくなってしまう。
発明者は上述のような問題の原因を、すべての輝度プロファイルにおいて同一のエッジ抽出パラメータを用いてエッジ位置を求めていることにあると捉え、それを解決する例として、本実施形態を提案する。本実施形態では、レシピ等で指定された所定のエッジ抽出パラメータで形成された輪郭線を基準輪郭線として、寸法測定に適したエッジ抽出パラメータを生成し、寸法測定用の輪郭線を形成する。以下に、詳細を説明する。
図26は本実施形態に係る寸法測定装置の構成を説明する図である。図26において、図1と同じ部分については、図1と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
本実施形態の演算処理装置2610は、メモリ111、図27のステップS2701等の処理を実行する初期設定部2611、図27のステップS2702等の処理を実行する基準輪郭線形成部2612、図27のステップS2703乃至S2708等の処理を実行するエッジ抽出パラメータ生成部2613、図27のステップS2709等の処理を実行する寸法測定用輪郭線形成部2614、及び、図27のステップS2710等の処理を実行するパターン寸法測定部2615を備えており、撮像装置100から入力されたSEM像を基に、試料101g上に形成されているパターンの寸法を測定する。「試料上のどの位置に存在するパターンのどの部分の寸法をどのように測定するか」等、演算処理装置2610にて実行される処理に必要な情報は、演算処理装置2610内のメモリ111に、寸法測定用のレシピとして記憶されている。レシピは、寸法測定装置を自動的に動作させるための動作プログラムであり、測定対象となる試料の種類ごとに、上記メモリ111や外部の記憶媒体に記憶され、必要に応じて読み出される。
また、演算処理装置2610は、操作端末120と接続されており、必要に応じて、操作端末120の備える入力手段を介して操作者からの入力を受け付けて測定処理の内容を変更し、或いは、操作端末120の備える表示装置に測定結果等を表示する。これらの機能は、例えば、GUIと呼ばれるグラフィカルなインタフェースによって実現される。
次に、本実施形態に係る寸法測定装置の動作について、図27乃至図30を参照して説明する。図27は本実施形態に係る寸法測定装置の動作を示すフローチャートであり、図28は、本実施形態に係る寸法測定装置の動作を説明するために、縦方向のラインパターンの線幅測定を想定したシミュレーションによって生成された図である。具体的には、図28におけるエッジ位置は、図30(a)のように縦方向のラインパターンに対して測長カーソル3001(後述)を配置した場合に左右両側の測長カーソル内に形成される輪郭線のうち、片側のエッジ位置を表している。そのため、図28において、各曲線はY座標(縦方向の位置)の関数として表現される。なお、区間2801は例外値やノイズの影響があった場合の挙動を観察することを意図した区間であり、区間2802は欠陥等、輝度プロファイルの形状の変化も伴った、緩やかで大きな変化に対する挙動を観察することを意図した区間である。
本実施形態における寸法測定の方法は、寸法測定用の測長輪郭線を生成するためのエッジ抽出パラメータとして演算処理装置2610が生成した値を用いること以外は、従来の寸法測定の方法と同様である。即ち、図30(a)のように、測定対象となる範囲を測長カーソル3001によって指定し、測定対象となる範囲内で所定の間隔で測長エッジを求めた上で、求められた複数の測長エッジを用いて寸法測定を行う。配置された測長カーソル3001の内側に向けて輝度プロファイルを作成するか外側に向けて輝度プロファイルを作成するかは演算処理装置2610内のメモリ111に記憶された寸法測定用のレシピ等によって指定され、また、測長エッジを求めるためのエッジ抽出パラメータは、閾値法を用いる場合の例で説明するため、「0%」以上「100%」以下の値を取る。
寸法測定処理が開始されると、まず、ステップS2701において、初期設定部2611が、処理の対象となるSEM像の初期設定を行う。具体的には、初期設定部2611は、まず、撮像装置100からSEM像を取得し、必要に応じて前処理を実施する。前処理の例としては、例えば、ノイズ除去のための平滑化処理等があり、これらの前処理については、適宜、公知の技術を用いて実施する。尚、本実施形態のこれ以降の説明では、必要に応じて前処理が為された状態のSEM像を、単に「SEM像」と呼ぶ。初期設定部2611は、続いて、演算処理装置2610のメモリ111に格納された寸法測定用のレシピに基づき、SEM像の所定の位置に測長カーソルを配置する。SEM像を取得する際に視野ずれが発生する可能性がある場合には、測長カーソルを配置する際に位置の補正を行う必要があるが、当該補正量は公知の技術を用いて求めればよく、例えば、位置合わせのための情報として良品部分の画像データが基準となる座標と共にレシピに登録されている場合には、正規化相互相関値等を評価値として用いたテンプレートマッチングによって求めればよいし、また、位置合わせのための情報としてレイアウトパターン等の設計データが基準となる座標と共にレシピに登録されている場合には、画像データから抽出した輪郭線と設計データとのマッチングによって求めればよい。
続いて、ステップS2702において、基準輪郭線形成部2612が、SEM像から、所定のエッジ抽出パラメータP0で基準輪郭線を求める(図28(a)参照)。所定のエッジ抽出パラメータP0は、演算処理装置2610のメモリ111等に格納された寸法測定用のレシピで指定されている値、或いは、操作端末120の備える入力手段を介して操作者から入力された値を用いる。操作者から入力された値を用いる場合の、GUIの形態としては、例えば、後述(図29参照)のようなものを用いればよい。本実施形態における基準輪郭線は、寸法測定の基準となる輪郭線であり、閾値法等、公知の技術を用いて所定のエッジ抽出パラメータP0に対応する測長エッジを順次求めることにより、形成する。その際、輝度プロファイルを取得する位置や方向は、寸法測定用のレシピ等で指定された寸法測定方法及び測長カーソルの配置によって決定される。例えば、図30(a)の例は、縦方向のラインパターンの線幅を測定する場合の例であり、測長カーソル内で所定の間隔毎に基準エッジが設定され、輝度プロファイルを取得する方向は横方向、即ち、X軸に平行な方向となる。
尚、輝度プロファイルの取得位置及び取得方向は、画像輪郭線に基づいて定めるようにしてもよい。例えば、SEM像から公知の技術を用いて画像輪郭線を求めた後、当該画像輪郭線に沿って等間隔にエッジを配置し、当該エッジの位置において、前記画像輪郭線の接線方向に垂直な方向に輝度プロファイルを取得するようにしてもよい。このような構成とすることで、測長カーソルが配置されない、例えば2次元形状評価を行いたい場合にも、本実施形態を適用することができる。
次に、ステップS2703において、エッジ抽出パラメータ生成部2613が、基準輪郭線を平滑化して平滑化基準輪郭線を求める(図28(b)参照)。具体的には、基準輪郭線に沿った単純移動平均や加重移動平均、或いは、曲線近似等、公知の技術を用いて実施すればよい。図28(b)は、Hann窓を重みとして用いた加重移動平均の例である。
続いて、ステップS2704において、エッジ抽出パラメータ生成部2613は、平滑化基準輪郭線に対応するエッジ抽出パラメータである第一のエッジ抽出パラメータP1を求める(図28(c)参照)。第一のエッジ抽出パラメータP1は、基準エッジ毎に固有の値である。ステップS2704の処理は、第1実施形態のステップS602と同様の処理であり、基準エッジ抽出時と同一の輝度プロファイル上で平滑化基準エッジ位置に対応するエッジ抽出パラメータを求める。尚、本実施形態においては、画像輪郭線のどちら側に測長エッジを抽出するかが寸法測定用のレシピによって予め定められているため、平滑化基準エッジの位置が輝度プロファイル上の0%から100%の区間に含まれない場合には、0%の側にはみ出していればエッジ抽出パラメータを「0%」とし、100%の側にはみ出していればエッジ抽出パラメータを「100%」とする。
続いて、ステップS2705において、エッジ抽出パラメータ生成部2613は、第一のエッジ抽出パラメータP1を平滑化して第二のエッジ抽出パラメータP2を求める(図28(d)参照)。第二のエッジ抽出パラメータP2は、基準エッジ毎に固有の値である。第一のエッジ抽出パラメータP1の平滑化は、具体的には、基準輪郭線に沿った単純移動平均や加重移動平均、或いは、曲線近似等、公知の技術を用いて実施すればよい。図28(d)は、単純移動平均の例である。
続いて、ステップS2706において、エッジ抽出パラメータ生成部2613は、第一のエッジ抽出パラメータP1と第二のエッジ抽出パラメータP2の差異を求める(図28(e)参照)。具体的には、基準エッジ毎に、「P1−P2」の絶対値を計算する。
続いて、ステップS2707において、エッジ抽出パラメータ生成部2613は、求めた差異に基づいて前記所定のエッジ抽出パラメータと第一のエッジ抽出パラメータの各々の寄与率を求める。具体的には、差異Dと所定の閾値TDのうち、小さい方の値Dcを用いて、前記所定のエッジ抽出パラメータの寄与率W0を「(TD−Dc)/TD」、第一のエッジ抽出パラメータの寄与率W1を「Dc/TD」のように計算する。即ち、第一のエッジ抽出パラメータと第二のエッジ抽出パラメータの差異が相対的に小さい場合は前記所定のエッジ抽出パラメータの寄与率を相対的に大きくし、第一のエッジ抽出パラメータと第二のエッジ抽出パラメータの差異が相対的に大きい場合は第一のエッジ抽出パラメータの寄与率を相対的に大きくする。より直感的に解釈するならば、エッジ抽出パラメータの変化が局所的に大きい部分については前記所定のエッジ抽出パラメータを尊重し、エッジ抽出パラメータの変化が局所的に大きい部分については、ノイズ等の影響が大きいと考えられるため、第一のエッジ抽出パラメータの寄与率を大きくすることで、平滑化基準エッジの近くに寸法測定用のエッジが抽出されるようなエッジ抽出パラメータとなるようにする。
寄与率の計算の際、差異Dと所定の閾値TDのうち、小さい方の値Dc(図28(g)参照)を用いるのは、以下の理由による。即ち、寄与率を求める意図は、ノイズ等の影響が大きい部分について平滑化基準エッジの近くに寸法測定用のエッジが抽出されるようなエッジ抽出パラメータを求めることであるが、ある程度以上の差異がある部分については、差異の大きさによらず、平滑化基準エッジの位置を採用するのが妥当であると考えられるためである。
続いて、ステップS2708において、エッジ抽出パラメータ生成部2613は、算出された寄与率に基づいて寸法測定用のエッジ抽出パラメータを求める(図28(h)参照)。具体的には、寸法測定用のエッジ抽出パラメータPmsrを、前記所定のエッジ抽出パラメータP0と第一のエッジ抽出パラメータP1の加重平均として、「Pmsr=W0×P0+W1×P1」のように求める。寸法測定用のエッジ抽出パラメータPmsrは基準エッジ毎に固有の値であり、基準エッジ毎に、対応する第一のエッジ抽出パラメータP1を用いて求める。
尚、後述(図29参照)の入力インタフェース等を用いて、エッジ抽出パラメータの最小値Pminと最大値Pmaxが操作端末120の操作者によって指定される場合、或いは寸法測定用のレシピで指定されている場合には、必要に応じて、加重平均によって求められた寸法測定用のエッジ抽出パラメータPmsrの値を修正する。具体的には、加重平均によって求められた寸法測定用のエッジ抽出パラメータPmsrの値がPminより小さい場合は寸法測定用のエッジ抽出パラメータPmsrの値をPminに等しくなるように修正し、加重平均によって求められた寸法測定用のエッジ抽出パラメータPmsrの値がPmaxより大きい場合は寸法測定用のエッジ抽出パラメータPmsrの値をPmaxに等しくなるように修正する。
続いて、ステップS2709において、寸法測定用輪郭線形成部2614は、寸法測定用のエッジ抽出パラメータPmsrを用いてSEM像から寸法測定用の輪郭線を求める(図28(k)参照)。具体的には、基準エッジ毎に、ステップS2702で取得した輝度プロファイル上で、当該基準エッジに対応する寸法測定用のエッジ抽出パラメータPmsrを用いて、寸法測定用の測長エッジを求める。
尚、寸法測定用のエッジ抽出パラメータPmsrで寸法測定用の輪郭線を求めた後、幾何学的な平滑化を行ってもよい(図28(m)参照)。この平滑化は、ステップS2707及びステップS2708の閾値処理によって、元々滑らかであった部分が微分不連続となる現象の緩和することが目的であるため、小さな半径のフィルタを用いて実施すればよい。図28(m)は、直径3のHann窓を用いた例である。
比較のため、ステップS2706乃至ステップS2707の処理において、エッジ抽出パラメータの違いではなく、距離の違いに基づいて求めたエッジ抽出パラメータで求めた輪郭線を図28(n)に示す。図28(a)に基づいて生成された、図28(b)、図28(m)、図28(n)の其々の輪郭線を比較した場合、区間2801に存在する例外値やノイズの影響の低減、という観点では図28(b)と図28(m)が、区間2802における輪郭形状への追従性の高さという観点では図28(m)が、それぞれ優れていることが分かる。これは、単なる幾何学的な情報だけを用いて平滑化を行うのではなく、輝度プロファイルの情報を反映した上での平滑化となっていることによって生じる効果である。
続いて、ステップS2710において、パターン寸法測定部2615は、寸法測定用の輪郭線を用いてパターンの寸法を測定する。ステップS2710の処理の内容は従来技術と同様であり、例えば、測長カーソルの範囲内で対応する測長エッジ間の距離を各々測定し、それらの距離の平均値、最大値、最小値、等の統計量を寸法測定の結果として求める。ステップS2710の処理の終了後、演算処理装置2610は寸法測定処理を終了する。
図29は、本実施形態に係る寸法測定装置において操作端末120の操作者が設定する処理パラメータの、入力インタフェースの例を説明する図である。図29(a)は、図27のステップS2702の処理で使用されるエッジ抽出パラメータ2901に加えて、図27のステップS2708の処理で使用されるエッジ抽出パラメータの変動範囲を上限値2902と下限値2903で指定するものである。また、図29(b)は、図27のステップS2702の処理で使用されるエッジ抽出パラメータ2901に加えて、図27のステップS2708の処理で使用されるエッジ抽出パラメータの変動範囲を、相対値2904で指定するものである。このように、変動範囲の範囲を設定することで、寸法測定用の輪郭線が過度に平滑化される現象を、抑制することができる。尚、図29におけるエッジ抽出パラメータ2901、上限値2902、下限値2903、及び、相対値2904は、閾値法における閾値(最小値を0%、最大値を100%としたときの%の値)の場合の例であり、閾値法以外の方法で寸法測定を実施する場合にはこれらの値を当該手法に適した値に適宜変更すればよい。また、処理パラメータの入力インタフェースについても、これらの例に限るものではない。
図30は、本実施形態に係る寸法測定装置の測定結果の提示方法を説明する図であり、操作端末120に設けられた表示装置に表示される内容を示すものである。図30(a)に示すような線幅の測定では、測長カーソル3001が配置され、その後、測定が実施される。その結果として、図30(b)のような画像が操作端末120の操作者に提示される。図30(b)に示すように、本実施形態では、従来提示されていた平均寸法値等の寸法測定結果に加えて、寸法測定用のエッジ抽出パラメータの平均値、標準偏差σ、最小値、最大値、等の値も提示するようにした。これにより、寸法測定に使用されたエッジ抽出パラメータの妥当性を、操作端末120の操作者が把握することができる。或いは、側壁形状の変化に伴う輝度プロファイル形状の変化等、抽出されたエッジそのものを用いて測定された寸法値には反映されていないが、「他の領域とは状態が異なっている領域」であることが読み取れる情報として、操作端末120の操作者が活用できる。尚、寸法測定用のエッジ抽出パラメータに関して提示する値としては、前述の何れかの効果が得られるようなものであれば、例示したものに限るものではない。
以上、本実施形態によれば、基準エッジ毎に寸法の測定に適したエッジ抽出パラメータを求め、該エッジ抽出パラメータを用いて抽出したエッジを用いて寸法を測定する構成としたことにより、ノイズや軽微なラフネスの影響を低減することができ、測定値の信頼性を高めることができる。
尚、本実施形態ではエッジ抽出パラメータの値を0%以上100%以下の値としたが、本発明の実施形態はこれに限るものではなく、例えば、第1実施形態と同様の定義としてもよい。また、本実施形態ではラインパターンに関する寸法を測定する例で説明したが、寸法測定の対象となるパターンはこれに限るものではなく、例えばホールパターンの径を測定する場合等にも適用することができる。
<第2実施形態の変形例>
第2実施形態に係る寸法測定装置は、計測対象パターンを撮像した画像データから、FEMウェハを用いてあらかじめ作成したモデルに基づいて露光条件を求める露光条件計測装置に適用することもできる。
半導体製造の分野では、微細化の進行に伴い、CDU(Critical Dimension Uniformity)に対する要求が厳しくなってきており、良好なCDUを達成するために、FEMウェハを用いて最適な露光条件(焦点位置及び露光量)を見つけることに加え、プロセス変動による影響を補償するための露光条件の管理、即ち、焦点位置のずれや露光量のずれの「定量化」が必要とされている。この定量化を行うために、計測対象パターンを撮像した画像データから、FEMウェハを用いてあらかじめ作成したモデルに基づいて露光条件を求める露光条件計測装置が提案されている。これらの露光条件計測装置では、FEMウェハ上の所定の位置を撮像して得られた画像データや計測対象パターンを撮像して得られた画像データから、焦点位置及び露光量の変化に伴うパターンの寸法の変化やフォトレジストの断面形状の変化が反映される数種の寸法特徴量を求め、それらの寸法特徴量を用いてモデルを作成し、或いは、寸法特徴量をモデルに当てはめることで露光条件の計測を行っている。
前述のように、プロセスルールの進化に伴ってパターン寸法が小さくなると、フォトレジストの側壁の凹凸に伴うエッジラフネスに起因する測長値のばらつきの影響がパターン寸法に対して相対的に大きくなり、モデルの推定精度を低下させる。そこで、例えば従来技術において寸法特徴量を求める際に、第2実施形態に係る寸法測定装置を用いることにより、軽微なエッジラフネスの影響が低減された測定値を用いてモデルを作成することで、より信頼性の高いモデルを得ることができ、ひいては、露光条件の計測値の信頼性向上にも繋げることができる。
本変形例では、さらに、二次元形状計測によって得られた特徴量を基に露光条件を推定する場合の例を説明する。フォーカスの変化に伴って、パターンの形状も変化することが知られており、発明者の検討によれば、輪郭形状を用いた2次元形状の評価とすることで形状変化の要素も推定に用いることができるため、より信頼性の高い推定結果を得ることができる。
露光条件の変動に関する凡その傾向として、上焦点(プラスフォーカス)では側壁の断面形状は下に凸となり、下焦点(マイナスフォーカス)では側壁の断面形状は上に凸となる傾向にあることが知られている。このことから、露光条件測定装置では、パターン上部の丸みやパターン下部の裾引きが反映される特徴量を用いることが、測定精度を向上させるために有効である。
発明者の検討によれば、側壁の断面形状の凹凸を特徴量に反映させるためには、少なくとも3本の測長輪郭線が必要となる。さらに、パターン上部の丸みやパターン下部の裾引きを反映させるためには、輝度プロファイル上で最も画素値が大きい位置を挟んで、各々3本以上、即ち、5本乃至6本の測長輪郭線が必要となる。これらの測長輪郭線は側壁の形状を特徴量に反映させることが目的であるため、独立に求めるのではなく、同一の輝度プロファイルから複数の測長エッジを求めることで形成するのが好適である。輝度プロファイルの取得位置及び取得方向は、設計データ或いは画像輪郭線に基づいて定めればよい。輝度プロファイルを生成後、測長輪郭線を求める処理は、第2実施形態と同様であり、複数の、所定のエッジ抽出パラメータ毎に処理をする。
測長輪郭線を求めた後、求めた測長輪郭線を用いて寸法特徴量を求める。寸法特徴量としては、測長輪郭線同士の相互比較によるEPEの統計量(平均値や標準偏差等)、設計データから求めた基準となる輪郭線形状と各測長輪郭線との比較によるEPEの統計量(平均値や標準偏差等)、測長輪郭線で囲まれた領域の面積、また、ホールパターンであれば、測長輪郭線から求められるホール径、等を用いればよい。
以上、本変形例によれば、露光条件の計測において、測長輪郭線を求める際に適切なエッジ抽出パラメータを用いること、或いは、複数(3つ以上)の測長輪郭線を用いた二次元形状計測によって得られた寸法特徴量を用いることにより、より信頼性の高い露光条件の推定結果を得ることができる。
尚、複数の寸法特徴量から露光条件を推定する方法としては、例示したものに限るものではない。例えば、重回帰分析の手法を用いて求めてもよい。
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、図31乃至図34を参照して説明する。本実施形態は、基準となる輪郭形状との形状比較によって、測定対象パターンの二次元形状を定量化して評価する用途に好適な寸法測定装置の例である。一次元の寸法による品質管理では基準となる寸法値との比較によって評価することが可能であるが、二次元形状による品質管理では基準とする輪郭線の形状との比較によって評価する必要があるため、通常、評価基準となる所与の輪郭線の形状と、評価対象となるパターンを撮像して得られた画像から求めた輪郭線の形状との比較によって評価が為されるが、画像から輪郭線を求める際に、第2実施形態と同様の課題がある。ここで、評価の基準とする輪郭線の形状は、設計データに基づいて生成されるものや、1つ以上の良品を撮像した画像データを用いて生成されるものがあり、例えば、次のような例が挙げられる。
設計データに基づいて生成される例としては、例えば、リソグラフィシミュレーションによって求められる輪郭形状が挙げられる。また、設計データ(レイアウトパターン)のコーナー部分を丸める等、ウェハ上に形成されると予想されるパターンの輪郭形状を模擬するように、設計データを幾何学的に変形して求めてもよい。
1つ以上の良品を撮像した画像データを用いて生成される例としては、例えば、操作端末の操作者によって「最も望ましい形状である」と判断された良品を撮像した、1枚の画像から抽出した輪郭形状が挙げられる。また、複数の良品の各々を撮像した複数の画像から抽出した複数の輪郭形状を用いて、評価の基準とするのに適した1つの輪郭形状を求めてもよい。
本実施形態では、用語の混同を避けるため、上述のような、基準となる輪郭線の形状について、設計データに基づいて生成されるものであるか否かに依存せず、一律に「設計パターン」と呼ぶことにする。これは、本実施形態においては、測長輪郭線を形成する際に基準とするパターン(即ち、寸法測定に好適であると想定されている、理想的な測長輪郭線の位置を表すパターン)と測長輪郭線を用いた形状評価の際に基準とするパターンとが異なるためである。そのため、前者について「基準パターン」「基準輪郭線」「基準エッジ」という用語を使用し、後者について「設計パターン」「設計輪郭線」「設計エッジ」という用語を使用する。
第1実施形態と比較した場合、相対的に高い倍率で撮像したSEM像が用いられるため設計データから抽出した輪郭形状とSEM像から抽出した輪郭形状の間の隔たりが相対的に大きくなること、また、輪郭形状同士の比較結果として、定量化された評価値を得る必要があること、が主たる相違点である。以下に、詳細を説明する。
図31は本実施形態に係る寸法測定装置の構成を説明する図である。図31において、図1と同じ部分については、図1と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。また、図26と同じ部分については、図26と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
本実施形態の演算処理装置3110は、メモリ111、図32のステップS3201等の処理を実行する初期設定部3111、図32のステップS3202等の処理を実行する基準輪郭線形成部3112、図32のステップS3203等の処理(即ち図27のステップS2703乃至S2708の処理)を実行するエッジ抽出パラメータ生成部2613、図32のステップS3204等の処理を実行する寸法測定用輪郭線形成部3113、及び、図32のステップS3205等の処理を実行するパターン間寸法測定部3114を備えており、撮像装置100から入力されたSEM像と試料101g上に形成されているパターンに関する設計データを基に、試料101g上に形成されているパターンの寸法評価値(例えば、SEM像から求めた輪郭線を構成する各々のエッジから基準となる輪郭線までの距離の平均値、標準偏差、最大値等)を求め、試料101g上に形成されているパターンの出来栄えを評価する。演算処理装置3110にて実行される処理に必要な情報は、演算処理装置3110内のメモリ111に、寸法測定用のレシピとして記憶されている。レシピは、寸法測定装置を自動的に動作させるための動作プログラムであり、測定対象となる試料の種類ごとに、上記メモリ111や外部の記憶媒体に記憶され、必要に応じて読み出される。
また、演算処理装置3110は、操作端末120と接続されており、必要に応じて、操作端末120の備える入力手段を介して操作者からの入力を受け付けて測定処理の内容を変更し、或いは、操作端末120の備える表示装置に測定結果等を表示する。これらの機能は、例えば、GUIと呼ばれるグラフィカルなインタフェースによって実現される。
図32は本実施形態に係る寸法測定装置の動作を示すフローチャートである。
寸法測定処理が開始されると、まず、ステップS3201において、初期設定部3111が、処理の対象となるSEM像及び比較評価の基準となる設計データの初期設定を行う。具体的には、初期設定部2611は、まず、撮像装置100からSEM像を取得し、必要に応じて前処理を実施する。前処理の例としては、例えば、ノイズ除去のための平滑化処理等があり、これらの前処理については、適宜、公知の技術を用いて実施する。尚、本実施形態のこれ以降の説明では、必要に応じて前処理が為された状態のSEM像を、単に「SEM像」と呼ぶ。初期設定部2611は、続いて、レシピで指定された範囲に対応する設計データを記憶装置130から読み込み、必要に応じて、パターン図形の角の丸め処理等、設計データの変形処理を行って、比較評価の基準となる設計パターンを生成する。初期設定部2611は、続いて、SEM像と設計パターンの位置合わせを行う。SEM像と設計パターンの位置合わせをする処理は、公知の技術を用いて実施すればよく、例えば、SEM像から輪郭線を抽出し、設計パターンとのマッチングを行うことで実施する。
次に、ステップS3202において、基準輪郭線形成部3112が、所定のエッジ抽出パラメータで基準輪郭線を求める。所定のエッジ抽出パラメータは、演算処理装置3110のメモリ111等に格納された寸法測定用のレシピで指定されている値、或いは、操作端末120の備える入力手段を介して操作者から入力された値を用いる。
設計データから抽出した輪郭形状とSEM像から抽出した輪郭形状の間の隔たりが大きいことを想定しているため、基準輪郭線は、画像輪郭線に基づいて求める。即ち、SEM像から公知の技術を用いて画像輪郭線を求めた後、当該画像輪郭線に沿って等間隔にエッジを配置し、当該エッジの位置において、前記画像輪郭線の接線方向に垂直な方向に輝度プロファイルを取得して、基準輪郭線を求めるようにする。
続いて、ステップS3203において、エッジ抽出パラメータ生成部2613が、基準輪郭線とSEM像とに基づいて寸法測定用のエッジ抽出パラメータPmsrを求める。ステップS3203の処理は、第2実施形態におけるステップS2703乃至S2708の処理と同様の処理である。
続いて、ステップS3204において、寸法測定用輪郭線形成部3113が、寸法測定用のエッジ抽出パラメータPmsrでSEM像から寸法測定用の測長輪郭線を求める。具体的には、基準エッジ毎に、ステップS3202で取得した輝度プロファイル上で、当該基準エッジに対応する寸法測定用のエッジ抽出パラメータPmsrを用いて、寸法測定用の測長エッジを求める。
続いて、ステップS3205において、パターン間寸法測定部3114が、寸法測定用の測長輪郭線と設計パターンとの間の寸法を測定し、寸法評価値を求める。寸法の測定は、各々の測長エッジに対して、最も近い設計パターン上の点を求めることで実施する。その際、設計パターンは多角形のままで扱ってもよいし、第1実施形態と同様に等間隔に配置された設計エッジの集合として扱ってもよい。設計パターンを設計エッジの集合として扱う場合には、例えば、以下のような方法を用いて誤った対応付けの発生を抑制するようにしてもよい。すなわち、第一の輪郭データ上の点と、第二の輪郭データ上の点を対応付ける場合に、第一の輪郭データ上の点と第二の輪郭データ上の点との第一の対応情報を生成し、当該第一の対応情報に含まれる対応関係の整合性を判定し、整合性が取れていない対応関係を修正して第二の対応情報を生成すればよい。また、寸法の測定は、設計パターンを基準として、例えば特許文献1で開示されているような方法を用いて実施してもよい。
寸法測定用の測長エッジと設計パターン上のエッジとの間の対応付けが完了後、パターン間寸法測定部3114は、評価用途に応じて、寸法測定用の測長エッジの各々に対応するEPEの平均値、標準偏差、最大値、等の統計量を求め、寸法評価値とする。必要に応じて、評価対象とする領域、即ち、欠陥発生リスクの高い領域をROI(Region Of Interest)として設定し、ROIの内部に存在する寸法測定用の測長エッジに対してのみ処理を行うようにしてもよい。ROIの設定は、演算処理装置3110のメモリ111等に格納された寸法測定用のレシピで指定された領域を用いるようにしてもよいし、或いは、操作端末120の備える入力手段を介して操作者から指定された領域を用いるようにしてもよい。
尚、寸法評価値としてEPEの平均値を採用する場合、例えば「寸法測定用の測長輪郭線が設計パターンに対して平均的にどれだけ乖離しているか」ということが数値として表れてくるため、露光条件の変動によるパターン図形の拡大縮小の度合いを評価する用途に好適である。また、寸法評価値としてEPEの標準偏差を採用する場合、例えば「寸法測定用の測長輪郭線の形状が設計パターンの形状に対してどれだけ歪んでいるか」ということが数値として表れてくるため、露光条件の変動によるパターン図形の崩れ具合を評価する用途に好適である。従って、これらの寸法評価値は、プロセスウィンドウの解析用途に適用するに好適である。また、寸法評価値としてEPEの最大値を採用する場合、例えば「寸法測定用の測長輪郭線の形状が、全体として、設計パターンの形状に対して公差内に収まっているか」ということが判定できるため、良品か否かの検査用途に好適である。
尚、寸法評価値は、例示したEPEに関する統計量の何れか1つに限定されるものではなく、測定された寸法に基づく他の指標であってもよいし、複数の値をベクトル値として保持するような形態としてもよい。ステップS3205の処理の終了後、演算処理装置3110は、寸法測定処理を終了する。
図33は本実施形態に係る寸法測定装置の動作を説明する図である。
図33(a)は設計パターンを示す図である。図33(b)は現像後のレジストを撮像した検査画像を示す図である。凹部3300の付近にレジストの残渣が残っているために、境界領域3301付近にうっすらとホワイトバンドが観察されている様子を示している。このような状態の場合、現像後の状態のウェハを撮像して検査した段階では欠陥には見えない部分が、エッチング後のウェハを撮像して検査してみると欠陥となっているという現象が発生する。発明者の検討によれば、これは、凹部3300の付近にレジストの残渣が残っているものの、厚みが薄く、階段状にもなっていないため、ホワイトバンドが明瞭に現れない、という現象である。
図33(c)は、図33(b)の検査画像から形成された寸法測定用の輪郭線を示す図である。図33(d)は、図33(b)と同じ領域のエッチング後の状態を撮像した画像であり、図33(c)の輪郭線の形状を観察しただけでは想定することが難しい欠陥が発生している様子を表している。図33(e)は、設計パターンと寸法測定用の輪郭線を重畳描画した図である。このような「位置合わせされた2つの輪郭線」の間の寸法を測定することにより、測定対象パターンの二次元形状の評価に寄与する寸法評価値、例えば、EPEの平均値や標準偏差が算出される。図33(g)は図33(e)の一部分を拡大した図であり、線分3310の距離が、EPEの一例である。
図33(h)は、エッジ抽出パラメータが異常であると判定された部分にマーカ3320を重畳した画像を示す図である。具体的には、例えば、着目する基準エッジの近傍の基準エッジに対応するエッジ抽出パラメータの平均値と標準偏差を求め、それらの値を用いてエッジ抽出パラメータの正常範囲を求め、着目する基準エッジのエッジ抽出パラメータが算出された正常範囲に含まれない場合に、異常であると判定すればよい。尚、エッジ抽出パラメータが異常であるか否かを判定する方法は、これに限るものではない。
寸法測定用の輪郭線は設計パターンの形状に基づいて求められるため、設計パターンの形状と位相構造が異なる部分、例えば、境界領域3301に現れているホワイトバンドのような部分には寸法測定用の輪郭線が形成されず、EPEの観点からだけでは異常があっても欠陥として判定されない。また、境界領域3301に現れているホワイトバンドのような部分は、画像上に明瞭に現れない場合が多いため、例えば画像上の所定の領域内で相対的に明るく見えている部分を抽出するような、輪郭線抽出のアプローチでは、閾値等のパラメータの設定が難しく、輪郭線として安定して検出できないことが多い。
本実施形態のように、エッジ抽出パラメータそのものを「他の領域と状態が異なるか否か」の評価指標として用いることで、上述のような場合においても、設計パターンの近傍に存在するものについては、欠陥となる可能性がある部分を検出することができる。
図34は本実施形態に係る寸法測定装置の測定結果の提示方法を説明する図であり、プロセスウィンドウを解析するためのFEMウェハの評価に本実施形態に係る寸法測定装置を適用した場合の、測定結果の提示方法の例である。
図34において、ショット領域3401を始めとする塗り潰された矩形領域は、当該領域に対応する露光条件に対応するSEM像を用いた評価において、寸法評価値に基づく評価で「欠陥」と判定された箇所が存在したことを表している。また、ショット領域3402を始めとする太枠で描かれた矩形領域は、当該領域に対応する露光条件に対応するSEM像を用いた評価において、寸法評価値に基づく評価で「欠陥」と判定された箇所は存在しなかったものの、エッジ抽出パラメータが異常であると判定された箇所が存在したことを表している。また、ショット領域3403を始めとするその他の矩形領域は、当該領域に対応する露光条件に対応するSEM像を用いた評価において、寸法評価値に基づく評価で「欠陥」と判定された箇所が存在せず、かつ、エッジ抽出パラメータが異常であると判定された箇所も存在しなかったことを表している。このような測定結果を踏まえて最適な露光条件を推定する場合、ショット領域3401に類する部分に加え、ショット領域3402に類する部分についても「不適」であるとしてプロセスウィンドウを定義することにより、最適な露光条件の推定結果の信頼性を向上させることができる。
このように、寸法評価値に基づく評価に加えて、エッジ抽出パラメータ自体も評価指標に加えることで、輪郭線の形状比較によって判定することのできる明らかな欠陥の有無に加えて、側壁の形状が他の領域と異なっている箇所や、底部のレジスト残渣の状態が他の領域と異なっている箇所等、欠陥発生リスクが相対的に高い箇所を検出することができる。
尚、図34は測定結果の提示方法の一例であり、FEMウェハの評価用途に限った場合であっても、測定結果の提示方法はこれに限るものではない。露光条件毎の危険度が把握できれば良いため、例えば、ショット領域3401を赤枠で、ショット領域3402を黄枠で、ショット領域3403を緑枠で、各々描画して提示するようにしてもよい。
以上、本実施形態によれば、基準エッジ毎に寸法の測定に適したエッジ抽出パラメータを求め、該エッジ抽出パラメータを用いて抽出したエッジを用いてパターン間の寸法を測定する構成としたことにより、パターン間の寸法を測定する用途においても、ノイズや軽微なラフネスの影響を低減することができ、測定値の信頼性を高めることができる。
また、寸法評価値に基づく評価に加えて、エッジ抽出パラメータ自体も評価指標とすることで、輪郭線の形状比較によって判定することのできる欠陥の有無に加えて、側壁の形状が他の領域と異なっている箇所や、底部のレジスト残渣の状態が他の領域と異なっている箇所等、「寸法評価値だけでは検出できない、欠陥発生リスクが相対的に高い箇所」を検出することができる。
尚、本実施形態では、ステップS3205の処理において、パターン間寸法測定部3114が、寸法測定用の測長エッジと設計パターン上のエッジとの間の対応付けを行った後に寸法測定用の測長輪郭線と設計パターンの間の寸法評価値を求めるようにしたが、本発明の実施形態はこれに限るものではない。例えば、寸法測定用の測長エッジと設計パターン上のエッジとの間の対応付けを行わずに寸法評価値を求めるようにしてもよい。具体的には、まず、設計パターン上のエッジの位置の情報に基づいて、距離変換画像を生成する。距離変換画像の生成は、公知の方法を用いて実施すればよい。続いて、寸法測定用の測長エッジの位置に対応する距離変換画像の画素値を参照することにより、当該測長エッジに最も近い設計パターン上のエッジまでの距離を求め、当該測長エッジに対応するEPEの値とする。その後、評価用途に応じて寸法測定用の測長エッジの各々に対応するEPEの平均値、標準偏差、最大値、等の統計量を求めて寸法評価値とすること、及び、寸法評価値を求める際に必要に応じてROIを設定しROIの内部に存在する寸法測定用の測長エッジに対してのみ処理を行うようにしてもよいことは、前述のステップS3205の処理と同様である。このように、寸法測定用の測長エッジと設計パターン上のエッジとの間の対応付けを行わずに寸法評価値を求めるような構成とすることで、両者の対応付けを行ってから寸法評価値を求める構成とした場合に比べ、より短い処理時間で寸法評価値を求めることができる。尚、寸法測定用の測長エッジと設計パターン上のエッジとの間の対応付けを行わずに寸法評価値を求める場合、設計パターンが密に存在する領域では誤対応の可能性が高くなるため、寸法評価値の信頼性が低下する。従って、本変形例は、より高い倍率での撮像によってSEM像を取得する等、設計パターンが密に存在しない条件による寸法測定に適用するのが好適である。
また、ステップS3202における測長輪郭線の生成方法は例示したものに限るものではなく、例えば国際公開WO2011/152106A1で開示されている技術のように、画像輪郭線と設計パターンとに基づいて輝度プロファイルを取得する位置や方向を求めるようにしてもよい。また、画像輪郭線の求め方についても例示したものに限るものではなく、例えば、領域分割のアプローチによって求めるようにしてもよい。
<第5実施形態>
以下、第5実施形態について、図39乃至図42を参照して説明する。本実施形態は、異なる露光条件、或いは、異なる工程の検査対象パターンをそれぞれ撮像した複数の画像データを用いて欠陥になり易いパターン部位の候補を特定するのに好適な、パターン検査装置の例である。
半導体製造の分野では、パターンを転写する際の焦点距離と露光量の変動が許容できる範囲を求め、プロセスウィンドウを決定し、最適な焦点距離及び露光量等を求めるために、FEM(Focus Exposure Matrix)ウェハが使われている。FEMウェハとは、ショット(1回の露光単位)毎に焦点位置と露光量をマトリクス状に変えて同一のパターンを焼き付けたウェハである。プロセスウィンドウを求めるための評価では、例えば、各々のショットに対応する評価対象パターンを撮像して得られた画像のそれぞれに対して、所定のエッジ抽出パラメータを用いて抽出されたエッジから求めた輪郭形状と設計データから求めた輪郭形状とを比較してEPEを求め、EPEの平均値、標準偏差、最大値等の値を用いた評価によって、当該ショットの良否判定が為されていた。
本実施形態では、FEMウェハ上の互いに対応する位置に存在する評価対象パターンを撮像して得られた複数の画像を用い、焦点距離が一定の状態で露光量のみ変化する場合のパターンの挙動、或いは、露光量が一定で焦点距離のみ変化する場合のパターンの挙動を比較することにより、露光条件の変化によって形状が崩れ易いパターンの部位を検出するための、パターン検査装置を提案する。露光条件の変化によって形状が崩れ易いパターン部位、即ち、プロセスマージンが少ない部位を検出できれば、当該情報をフィードバックすることにより、マスクパターンの改善に繋げることができる。
露光条件の変化によって形状が崩れ易いパターンの部位を検出するためには、パターン形状の変化を2次元形状の比較によって観察する必要がある。しかし、露光条件が異なる場合、ウェハ上のパターンの変形は局所的な形状の変化だけではなく、大きさの変化としても現れてくるため、従来プロセスウィンドウを求めるための評価で利用されていた方法では、EPEの分布を画面上で観察するような構成としても、局所的な変形量が大域的な変形量に紛れてしまい、形状の変化が捉えにくいという問題があった。
発明者は、この問題の原因を「各々のショットに対応する評価対象パターンを撮像して得られた画像のすべてに対して、所定のエッジ抽出パラメータを用いて抽出されたエッジから求めた輪郭形状と設計データから求めた輪郭形状との比較によって評価する」という方法が、パターン形状の微妙な差異を検出する目的に適していないためであると捉え、それを解決する例として、本実施形態を提案する。以下に、詳細を説明する。
図39は本実施形態に係るパターン検査装置の構成を説明する図である。図39において、図1と同じ部分については、図1と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
本実施形態の演算処理装置3910は、メモリ111、図40のステップS4001等の処理を実行する初期設定部3911、図40のステップS4004等の処理を実行する基準パターン形成部3912、図40のステップS4005等の処理を実行する単体検査部3913、図40のステップS4002乃至S4003及びステップS4006乃至S4008等の処理を実行する状態更新部3914、及び、図40のステップS4009等の処理を実行する検査結果出力部3915を備えており、撮像装置100から入力された複数のSEM像を基に、試料101g上に形成されているパターンを検査する。演算処理装置3910にて実行される処理に必要な情報は、演算処理装置3910内のメモリ111に、検査用のレシピとして記憶されている。レシピは、パターン検査装置を自動的に動作させるための動作プログラムであり、検査対象となる試料の種類ごとに、上記メモリ111や外部の記憶媒体に記憶され、必要に応じて読み出される。
また、演算処理装置3910は、操作端末120と接続されており、必要に応じて、操作端末120の備える入力手段を介して操作者からの入力を受け付けて検査処理の内容を変更し、或いは、操作端末120の備える表示装置に検査結果等を表示する。これらの機能は、例えば、GUIと呼ばれるグラフィカルなインタフェースによって実現される。
図40は本実施形態に係るパターン検査装置の動作を示すフローチャートである。
パターン検査処理が開始されると、ステップS4001において、初期設定部3911がパターン検査の初期設定を実施する。具体的には、FEMウェハ上の各々のショットに対応する評価対象パターンを撮像したSEM像をすべて読み込み、読み込んだSEM像に対して、必要に応じて前処理を実施する。前処理の例としては、例えばノイズ除去のための平滑化処理等があり、これらの前処理については適宜、公知の技術を用いて実施する。
続いて、ステップS4002において、状態更新部3914が、欠陥領域リストを空リストとして初期化し、さらに、不感領域を空集合として初期化する。
欠陥領域リストは、最終的に欠陥領域として出力される領域の情報であり、欠陥と判定された領域毎に、例えば、欠陥と判定された領域の外接矩形の左上隅の座標と外接矩形の幅及び高さ、外接矩形内の画像情報等を、「どのSEM像に対する検査で欠陥であると判定されたか」という情報と紐付けて登録したリストである。
また、不感領域は、ステップS4005の検査において、検査対象外とする領域である。最適な露光条件からの露光条件の変動の影響で一旦欠陥であると判定された領域は、露光条件の更なる変動に伴って、パターンの形状が急激に劣化する。本実施形態における不感領域は、そのような領域を検査対象とすることによって、その他の領域も含めた検査処理全体が不安定となることを抑制するために設けられたものである。
続いて、ステップS4003において、状態更新部3914が、基準とするショットを識別するためのカウンタであるカウンタSの値を「0」にする。
続いて、ステップS4004において、基準輪郭線形成部3912が、第S番目のショットに対応するSEM像から、所定のエッジ抽出パラメータを用いて、基準輪郭線を形成する。尚、第2実施形態と同様に、生成される輪郭線の平滑化を目的として、エッジ毎に異なるエッジ抽出パラメータを用いて輪郭線を形成してもよい。また、所定のエッジ抽出パラメータとしては、演算処理装置3910のメモリ111に記憶された検査用のレシピに記載されている値、或いは、操作端末120の備える入力手段を介して操作者から入力された値を用いる。
続いて、ステップS4005において、単体検査部3913が、ステップS4004で形成した基準輪郭線に基づいて、第(S+1)番目のショットに対応するSEM像を検査する。ステップS4005の処理は、第1実施形態のパターン検査装置におけるパターン検査処理と同様に実施すればよい。第S番目のショットと第(S+1)番目のショットでは、露光条件が近いため、正常部においてはパターン形状が類似しており、基準エッジ毎に適切なエッジ抽出パラメータを用いて輪郭線(測長輪郭線)を形成して検査することで、形状が異なる部分のみを欠陥として検出することができる。
続いて、ステップS4006において、状態更新部3914が、新たに検出されたすべての欠陥領域に関する情報を欠陥領域リストに登録し、さらに、新たに検出されたすべての欠陥領域を不感領域に追加する。
続いて、ステップS4007において、状態更新部3914は、比較が必要なすべてのペアについて比較が完了したか否かを、カウンタSの値と、検査対象とするSEM像の数(後述)とを比較することによって判定する。比較が必要なすべてのペアについて比較が完了している場合(ステップS4007・YES)、演算処理装置3910は、ステップS4009の処理に進む。比較が完了していないペアがある場合(ステップS4007・NO)、状態更新部3914は、ステップS4008に進んで、カウンタSの値を「1」増やす。その後、演算処理装置3910は、ステップS4004に戻って処理を続ける。
ステップS4009では、検査結果出力部3915が、欠陥領域リストを参照し、これまでに検出されたすべての欠陥領域の情報を出力する。ステップS4009の処理の終了後、演算処理装置3910はパターン検査処理を終了する。尚、欠陥領域の情報としては、位置や大きさ、領域内の画像情報等に加えて、何番目のショットに対応するSEM像の検査で欠陥領域と判定されたか(即ち、図40のフロー図における「S+1」の値)も合わせて出力するようにする。このような情報を付与しておくことで、例えば露光条件の変化に対する欠陥領域毎のマージンを観察することができる。
図41は本実施形態に係るパターン検査装置における検査対象の指定方法を説明する図である。本実施形態では、操作端末120の操作者は、例えば、FEMウェハのウェハマップ上で、最適な焦点位置かつ最適な露光量であるショットに対応するSEM像4100を特定するための情報と、評価したいSEM像のうち、SEM像4100から最も離れた位置にあるSEM像4103を特定するための情報を、操作端末120上に実現された適切なGUI(Graphical User Interface)によって入力する。演算処理装置3910は、入力された情報に基づいて、初期設定部3911で、SEM像4100とSEM像4103を結ぶ最短経路を探索し、最短経路上にあるSEM像を含めた、SEM像4100、SEM像4101、SEM像4102、及び、SEM像4103を、パターン検査処理の検査対象として設定する。最短経路の探索は、FEMウェハ上の各ショットに対応するSEM像を頂点とし、4近傍の位置にあるSEM像に対応する頂点同士を辺で結んだグラフを作成して、公知の技術を用いて求めればよい。本実施形態のパターン検査処理では、後述(図42参照)のように、最短経路に沿った順序で、隣り合うSEM像をペアとして、最適な焦点位置かつ最適な露光量であるショットに対応するSEM像に近い方のSEM像を基準として、検査を実施する。
尚、操作端末120から入力される情報を、最適な焦点位置かつ最適な露光量であるショットに対応するSEM像4100を特定するための情報のみとし、FEMウェハのウェハマップ上のすべてのSEM像について、SEM像4100からの最短経路をそれぞれ探索し、当該最短経路に沿って、パターン検査処理を行うようにしてもよい。
図42は本実施形態に係るパターン検査装置における検査方法を説明する図である。
図42(a)は、図40の処理フローにおいて、Sの値が「0」の場合の例、即ち、SEM像4100とSEM像4101とを比較した場合の例を示す図であり、所定のエッジ抽出パラメータを用いた場合、SEM像4100から画像4200で示されるような輪郭線が抽出され、SEM像4101から画像4201で示されるような輪郭線が抽出される場合の例である。この場合に、SEM像4100から抽出した輪郭線を基準輪郭線としてSEM像4101から抽出した輪郭線を、基準輪郭線と重畳描画すると、画像4210のような状態となり、欠陥が検出されなかったことを示している。
図42(b)は、図40の処理フローにおいて、Sの値が「1」の場合の例、即ち、SEM像4101とSEM像4102とを比較した場合の例を示す図であり、所定のエッジ抽出パラメータを用いた場合、SEM像4101から画像4201で示されるような輪郭線が抽出され、SEM像4102から画像4202で示されるような輪郭線が抽出される場合の例である。この場合に、SEM像4101から抽出した輪郭線を基準輪郭線としてSEM像4102から抽出した輪郭線を、基準輪郭線と重畳描画すると、画像4220のような状態となり、領域4221が欠陥として抽出される。従って、領域4221に関する情報が欠陥領域リストに登録され、さらに、領域4221が不感領域に追加される。
図42(c)は、図40の処理フローにおいて、Sの値が「2」の場合の例、即ち、SEM像4102とSEM像4103とを比較した場合の例を示す図であり、所定のエッジ抽出パラメータを用いた場合、SEM像4102から画像4202で示されるような輪郭線が抽出され、SEM像4103から画像4203で示されるような輪郭線が抽出される場合の例である。この場合に、SEM像4102から抽出した輪郭線を基準輪郭線としてSEM像4103から抽出した輪郭線を、基準輪郭線と重畳描画すると、画像4230のような状態となり、領域4231及び領域4232が欠陥として抽出される。但し、領域4221については不感領域とされているため、欠陥判定が為されない。従って、領域4231及び領域4232に関する情報が欠陥領域リストに登録され、さらに、領域4231及び領域4232が不感領域に追加される。
以上、本実施形態によれば、隣り合うショットのダイ同士の輪郭線形状の比較による検査としたこと、また、その際に、比較に適したエッジ抽出パラメータによって形成された輪郭線を用いるようにしたことにより、局所的な変形を、大域的なパターンの太りや細りに紛れることなく検出することができる。
また、欠陥と判定された領域を、次回の検査の際の不感領域として設定し、不感領域を順次更新しながら最適条件からの差異が大きくなる方向に各ショットに対応するSEM像の評価を続けるような構成としたことで、欠陥発生リスクが最も高いパターン部位だけでなく、欠陥発生リスクが相対的には低いもののある程度のリスクが存在するパターン部位まで含めて自動で分析することが可能となるため、マスクパターンの改善をより効率的に行うことができる。
尚、露光条件の変動範囲が小さく、大域的なパターンの太りや細りが僅かである場合には、すべてのショットに対応するSEM像に対して、最適な露光条件のSEM像から求めた基準輪郭線、或いは、設計データから求めた基準輪郭線を用いて検査を行うようにしてもよい。
また、第2実施形態の変形例と同様に、基準エッジ単位で同一の輝度プロファイルから複数(3つ以上)の測長エッジを求め、対応する測長エッジ同士を繋いで形成される複数(即ち3つ以上)の測長輪郭線を用いて評価するような構成としてもよい。その場合、各輪郭線に関する評価はそれぞれ独立に行うが、いずれか1つの測長輪郭線で欠陥領域と判定された段階で欠陥領域である判定し、どの輪郭線を用いた検査で欠陥領域と判定されたのかという情報も合わせて出力するようにする。
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、前述の各実施形態及び各変形例における各々の構成を必要に応じて適宜組み合わせて使用しても良いほか、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば次のように変更することができる。
例えば、前記実施形態では、検査或いは測定対象とするSEM像を撮像装置100から取得するような構成としたが、本発明の実施形態はこれに限るものではない。例えば、事前に撮像されたSEM像を格納したハードディスク等の記憶装置から取得するような構成としてもよいし、ネットワーク等を介して他のシステムから取得するような構成としてもよい。また、SEM像に加えて該SEM像に対応する撮像条件等の情報も取得して、検査或いは測定に利用するようにしてもよい。さらに、設計データについても、記憶装置から取得する代わりに、ネットワーク等を介して他のシステムから取得するような構成としてもよい。また、前記実施形態では、検査或いは測定結果を操作端末が備える表示装置に出力するような構成としたが、本発明の実施形態はこれに限るものではない。例えば、ハードディスク等の記憶装置に出力するような構成としてもよいし、ネットワーク等を介して他のシステムに出力するような構成としてもよい。
また、前記実施形態では、測長エッジを求めるために閾値法を用いたため、エッジ抽出パラメータの値についても閾値法の閾値に相当する値を用いた例を示したが、本発明の実施形態はこれに限るものではない。例えば、測長エッジを求める方法として1次微分プロファイルを観察してエッジの位置を求めるような方法を用いる場合には、エッジ抽出パラメータの値についても1次微分値に関する値を用いるようにすればよい。
また、前記実施形態では検査或いは計測に用いる輪郭線として測長輪郭線を用いたが、本発明の実施形態はこれに限るものではない。例えば、得られた測長輪郭線を離散化して画素単位で定義されたエッジの集合とした上で、当該エッジの集合を検査或いは計測に用いるようにしてもよい。その際、各画素が備えるエッジの情報として、当該画素内を横切る線分の情報(例えば、当該線分上のある一点のサブ画素精度の位置情報と当該線分の方向を表すベクトル情報)を備えるような構成として、検査或いは計測で用いられるエッジ位置の精度を高めるようにしてもよい。
以上、本発明によれば、検査或いは計測対象パターンを撮像して得られた画像データからエッジを抽出するためのエッジ抽出パラメータを、前記検査或いは計測の基準となる基準パターンと前記画像データとを用いて生成し、生成されたエッジ抽出パラメータに基づいて前記画像データから求めたエッジを用いて前記検査或いは計測を行う構成としたことにより、検査或いは計測対象のパターンを撮像して得られた画像データから抽出したエッジの位置を用いた検査或いは計測において、ノイズ等の影響を低減し、検査或いは計測結果の信頼性を向上させることができる。