本発明に係る一実施形態の緩衝器を図面を参照して以下に説明する。
図1に示すように、本実施形態の緩衝器は、液体あるいは気体等の流体が封入されるシリンダ11を有している。このシリンダ11は、内筒12と、内筒12よりも大径で内筒12を覆うように同心状に設けられる外筒13とを有し、これら内筒12と外筒13との間にリザーバ室14が形成された二重筒構造をなしている。
シリンダ11の内筒12内には、ピストン17が摺動可能に嵌装されている。このピストン17は、内筒12内つまりシリンダ11内に上室18と下室19とを画成している。シリンダ11内には、具体的に、上室18および下室19内に流体としての作動液が封入され、リザーバ室14内に流体としての作動液およびガスが封入されている。
シリンダ11には、一端がシリンダ11の外部へと延出されるロッド22の他端が内筒12内に挿入されており、ピストン17は、このロッド22の内筒12内の他端にナット23によって締結されている。ロッド22の一端側は、図示は略すが、内筒12および外筒13の上端部に装着されたロッドガイドおよびオイルシールに挿通されて外部へと延出されている。
ロッド22は、主軸部25と、シリンダ11内側の端部にあって主軸部25より小径の取付軸部26とを有しており、これにより、主軸部25には取付軸部26側の端部に軸直交方向に沿う段面27が形成されている。取付軸部26には、主軸部25とは反対側の所定範囲に上記したナット23を螺合させるオネジ28が形成されている。
ピストン17は、シリンダ11の内筒12内に嵌装されて内筒12内を上室18および下室19の2室に仕切る略円板状のピストンバルブボディ31と、ピストンバルブボディ31の外周面に装着されて、内筒12内を摺接する摺接部材32とを有している。ピストンバルブボディ31には、その下室19側の外周側に、軸方向に突出する円筒状部34が形成されている。
ピストンバルブボディ31は、径方向の中央にロッド22の取付軸部26が挿通される貫通孔35が軸方向に貫通するように形成されて円環状をなしている。また、ピストンバルブボディ31には、その軸方向の円筒状部34とは反対側に、貫通孔35を径方向外側にて囲むようにして軸方向に突出する環状のボス部36と、径方向のボス部36よりも外側にて軸方向に突出する環状の内側シート部37と、径方向の内側シート部37よりも外側にて軸方向に突出する環状の外側シート部38とが形成されている。さらに、ピストンバルブボディ31には、その軸方向の円筒状部34側に、径方向の貫通孔35の外側にて軸方向に突出する環状のボス部40と、径方向のボス部40よりも外側かつ円筒状部34よりも内側にて軸方向に突出する環状のシート部41とが形成されている。
ここで、ピストンバルブボディ31の軸方向において、ボス部36、内側シート部37および外側シート部38は、互いに高さ位置を一致させており、また、シート部41は、ボス部40よりも突出方向の高さが若干高くなっている。
ピストンバルブボディ31には、軸方向の一端がボス部36と内側シート部37との間に開口し、他端がボス部40とシート部41との間に開口して軸方向に貫通する連通孔43が、周方向に間隔をあけて複数カ所(図1では断面とした関係上1カ所のみ図示)形成されている。また、ピストンバルブボディ31には、軸方向の一端が内側シート部37と外側シート部38との間に開口し、他端がシート部41と円筒状部34との間に開口して軸方向に貫通する連通孔44が周方向に間隔をあけて複数カ所(図1では断面とした関係上1カ所のみ図示)形成されている。
内側の連通孔43は、上室18と下室19との2室間を連通するもので、上室18と下室19との間で作動液を流通させる一方の流路45を形成している。外側の連通孔44は、上室18と下室19との2室間を連通するもので、上室18と下室19との間で作動液を流通させる他方の流路46を形成している。よって、これら流路45,46は、ピストンバルブボディ31に設けられている。ピストンバルブボディ31には、連通孔44を挟んで中央側(内周側)に内側シート部37が外周側に外側シート部38が形成されている。
ピストン17は、ピストンバルブボディ31の軸方向の円筒状部34側に、ピストンバルブボディ31側から順に、ディスクバルブ50、スペーサ51および規制部材52を有している。また、ピストン17は、ピストンバルブボディ31の軸方向の円筒状部34とは反対側に、ピストンバルブボディ31側から順に、ディスクバルブ55、スペーサ56、バネ部材57、規制部材58を有している。
ディスクバルブ50の径方向の中央にはロッド挿通孔60が、スペーサ51の径方向の中央にはロッド挿通孔61が、規制部材52の径方向の中央にはロッド挿通孔62が、それぞれ軸方向に貫通して形成されている。また、ディスクバルブ55の径方向の中央にはロッド挿通孔63が、スペーサ56の径方向の中央にはロッド挿通孔64が、バネ部材57の径方向の中央にはロッド挿通孔65が、規制部材58の径方向の中央にはロッド挿通孔66が、それぞれ軸方向に貫通して形成されている。
ロッド22の取付軸部26を、規制部材58のロッド挿通孔66、バネ部材57のロッド挿通孔65、スペーサ56のロッド挿通孔64、ディスクバルブ55のロッド挿通孔63、ピストンバルブボディ31の貫通孔35、ディスクバルブ50のロッド挿通孔60、スペーサ51のロッド挿通孔61、規制部材52のロッド挿通孔62に挿通させて、オネジ28にナット23を螺合させる。これにより、規制部材58の内周側、バネ部材57の内周側、スペーサ56、ディスクバルブ55の内周側、ピストンバルブボディ31の内周側、ディスクバルブ50の内周側、スペーサ51および規制部材52の内周側が、ロッド22の主軸部25の段面27とナット23とによって軸方向にクランプされる。
ディスクバルブ50、スペーサ51、規制部材52、ディスクバルブ55、スペーサ56、バネ部材57および規制部材58は、ロッド22の取付軸部26によって、ロッド22およびピストンバルブボディ31に対し径方向の移動が規制されている。
下室19側のディスクバルブ50は、シート部41より若干大径の外径を有しており、ピストンバルブボディ31のボス部40とシート部41とに当接して内側の流路45を閉じる。そして、ディスクバルブ50は、ロッド22がシリンダ11内から突出する突出量を増やす伸び側に移動したときに、ロッド22とともに移動するピストン17によって上室18の圧力が下室19よりも高められることによってシート部41から離座して流路45を開く。これにより、ピストンバルブボディ31に設けられた内側の流路45は、ロッド22が伸び側に移動したときに流体が上室18から下室19に向け流通することになり、ディスクバルブ50は、この流路45を開閉する伸び側のディスクバルブとなっている。流路45には、このようにロッド22およびピストン17が伸び側に移動したときに流体が流通する。
スペーサ51は、その外径が、ディスクバルブ50の外径よりも小径であってボス部40の外径と略同径となっている。規制部材52は、その外径が、スペーサ51の外径よりも大径であってディスクバルブ50の外径よりも若干小径となっている。規制部材52は、ディスクバルブ50がシート部41から離れる方向に所定量変形したときに、ディスクバルブ50に当接してそれ以上の変形を規制する。
上室18側のディスクバルブ55は、その外径がピストンバルブボディ31の外側シート部38よりも若干大径となっている。ディスクバルブ55には、内側シート部37との当接位置よりも径方向内側に切欠部68が形成されており、切欠部68を介して内側の流路45を常に上室18に連通させている。
ディスクバルブ55は、ピストンバルブボディ31のボス部36と内側シート部37と外側シート部38とに当接して外側の流路46を閉じる。そして、ディスクバルブ55は、ロッド22がシリンダ11への進入量を増やす縮み側に移動したときに、ロッド22とともに移動するピストン17によって下室19の圧力が上室18よりも高められることによって外側シート部38から離座して外側の流路46を開く。これにより、ピストンバルブボディ31に設けられた外側の流路46は、ロッド22が縮み側に移動したときに流体が下室19から上室18に向け流通することになり、ディスクバルブ55は、この流路46を開閉する縮み側のディスクバルブとなっている。流路46には、このようにロッド22およびピストン17が縮み側に移動したときに流体が流通する。
バネ部材57は、中央にロッド挿通孔65が形成された平坦な円板状のベース67と、ベース67の外周部から径方向外方且つ軸方向一側に斜めに延出する複数カ所の弾性脚70とからなる板状のバネとなっている。バネ部材57は、ベース67においてスペーサ56と規制部材58とにクランプされ、スペーサ56よりも径方向外方に延出する複数カ所の弾性脚70の先端でディスクバルブ55に当接しこれを軸方向に押圧してピストンバルブボディ31に当接させる。
規制部材58は、その外径が、ディスクバルブ55の外径と略同径となっている。規制部材58には、内側の流路45を上記切欠部68を介して上室18に常時連通させる連通穴69が円周方向に間隔をあけて複数カ所、軸方向に貫通して形成されている。規制部材58は、ディスクバルブ55が外側シート部38から離れる方向に所定量変形したときに、ディスクバルブ55に当接してそれ以上の変形を規制する。
外筒13は、円筒状の円筒部材72と、円筒部材72の下端に嵌合してその下端の開口部を閉塞する底蓋部材73とからなっている。底蓋部材73は、外周部で円筒部材72の内周部に嵌合されることになり、この状態で中央側ほど軸方向の外側に位置するように段差状をなしている。底蓋部材73は円筒部材72に溶接により密閉状態で固定される。
内筒12の下端部には、シリンダ11内に下室19と上記したリザーバ室14とを画成し、縮み側の減衰力を発生する減衰バルブと、伸び側でリザーバ室14から下室19内に実質的に減衰力を発生せずに作動液を流すサクションバルブとを有するベースバルブ71が設けられている。
ベースバルブ71は、シリンダ11の内筒12内に嵌装されてシリンダ11内を下室19およびリザーバ室14の2室に仕切る環状のベースバルブボディ(バルブボディ)76を有している。ベースバルブボディ76は、焼結金属製であり、上部の外周部に下部よりも小径となる段差部77が形成されており、この段差部77において内筒12の下端の内周部に嵌合する。また、ベースバルブボディ76は、下部の外周側に軸方向に突出する円環状の突出足部78を有しており、この突出足部78において底蓋部材73に当接する。この突出足部78には、径方向に貫通する流路溝79が周方向に間隔をあけて複数カ所形成されている。流路溝79によって、内筒12と外筒13との間からベースバルブ71と底蓋部材73との間までの範囲が連通してリザーバ室14になっている。
図2に示すように、ベースバルブボディ76は、径方向の中央に貫通孔81が軸方向に貫通するように形成されて、円環状をなしている。また、ベースバルブボディ76には、その軸方向の突出足部78とは反対側に、貫通孔81を径方向外側にて囲むようにして軸方向に環状に突出するボス部84と、径方向のボス部84よりも外側にて軸方向に突出する環状の内側シート部85と、径方向の内側シート部85よりも外側にて軸方向に突出する環状の外側シート部86とが形成されている。内側シート部85および外側シート部86は軸方向高さを一致させており、ボス部84はこれら内側シート部85および外側シート部86よりも軸方向高さ(突出方向高さ)が低くなっている。つまり、ボス部84は、軸方向位置を内側シート部85および外側シート部86に対しベースバルブボディ76の内部方向にずらしている。
さらに、ベースバルブボディ76には、その軸方向の突出足部78側に、貫通孔81を径方向外側にて囲むようにして軸方向に突出する環状のボス部88と、径方向のボス部88よりも外側かつ突出足部78よりも内側にて軸方向に突出する環状のシート部89とが形成されている。ベースバルブボディ76の軸方向において、シート部89は、ボス部88よりも突出方向高さが若干高くなっている。
ベースバルブボディ76は、軸方向の一端がボス部84と内側シート部85との間に開口し、他端がボス部88とシート部89との間に開口して軸方向に貫通する連通孔92が、周方向に間隔をあけて複数カ所形成されている。また、ベースバルブボディ76には、軸方向の一端が内側シート部85と外側シート部86との間に開口し、他端がシート部89と突出足部78との間に開口して軸方向に貫通する連通孔93が周方向に間隔をあけて複数カ所形成されている。
内側の連通孔92は、下室19とリザーバ室14との2室間を連通するもので、下室19とリザーバ室14との間で作動液を流通させる一方の流路94を形成している。外側の連通孔93も、下室19とリザーバ室14との2室間を連通するもので、下室19とリザーバ室14との間で作動液を流通させる他方の流路95を形成している。言い換えれば、ベースバルブボディ76には、連通孔93を挟んで中央側(内周側)に内側シート部85が外周側に外側シート部86がそれぞれ形成されている。
ベースバルブ71は、ピン部材98を有しており、ピン部材98は、ベースバルブボディ76の貫通孔81に挿通される円柱状の軸部99と、軸部99の一端に設けられたこれよりも大径の円板状の頭部100とを有している。なお、軸部99の頭部100とは反対側の他端には、加締めにより軸部99よりも大径に拡径された拡径部101が形成されている。
ベースバルブ71は、ベースバルブボディ76の軸方向の突出足部78側に、ベースバルブボディ76側から順に、減衰バルブとして作用するディスクバルブ103、スペーサ104および規制部材105を有している。また、ベースバルブ71は、ベースバルブボディ76の軸方向の突出足部78とは反対側の内周側に、ベースバルブボディ76側から順に、ディスクバルブ106の内側環状部107、ガイド108、バネ部材109および規制部材110を有している。また、ベースバルブ71は、ベースバルブボディ76とバネ部材109との間の外周側に、サクションバルブとして作用するディスクバルブ106の外側環状部111を有している。
リザーバ室14側のディスクバルブ103は、径方向の中央にピン挿通孔112が軸方向に貫通して形成されており、円環状をなしている。ディスクバルブ103は、有孔円板状の複数枚の同一外径の単板ディスクが軸方向に重ねられて構成されるもので、その外径が、シート部89の外径より若干大径となっている。
スペーサ104は、径方向の中央にピン挿通孔113が軸方向に貫通して形成されており、円環状をなしている。スペーサ104は、その外径が、ディスクバルブ103の外径よりも小径であってボス部88の外径よりも若干大径となっている。
規制部材105は、径方向の中央にピン挿通孔114が軸方向に貫通して形成されており、円環状をなしている。規制部材105は、その外径が、ディスクバルブ103の外径よりも若干小径であってシート部89と略同径となっている。
ガイド108は、径方向の中央にピン挿通孔117が軸方向に貫通して形成されており、円環状をなしている。ガイド108の外径は、ボス部84の外径より若干大径となっている。
バネ部材109は、中央にピン挿通孔118が軸方向に貫通して形成された平坦な円板状のベース119と、ベース119の外周部から径方向外方且つ軸方向一側に斜めに延出する複数カ所の弾性脚120とからなる板状のバネとなっている。バネ部材109は、ベース119の外径が、ガイド108の外径より若干大径となっている。
規制部材110は、径方向の中央にピン挿通孔121が軸方向に貫通して形成されており、円環状をなしている。規制部材110は、ガイド108の外径より大径となっており、バネ部材109の外径よりも小径となっている。
本実施形態において、上記したディスクバルブ106は、図3に示すように、一枚の板部材からプレス成形で打ち抜かれて形成されるものであり、一定厚さの平坦な板状をなしている。ディスクバルブ106は、上記した内側環状部107と、外側環状部111と、これら内側環状部107および外側環状部111を接続する一カ所の支持部125とからなっている。
内側環状部107は、径方向の中央に円形状のピン挿通孔126が軸方向に貫通して形成されるとともに径方向に一定幅の円環状をなす主板部127と、主板部127の外周縁部から径方向外方に突出する二カ所の突出部128とを有している。これら突出部128は、径方向外側の円弧状の外周縁部が、同一円上に配置されており、この円の中心がピン挿通孔126の中心と一致している。内側環状部107の周方向における二カ所の突出部128の間に内側環状部107から径方向外方に突出するように上記した支持部125が形成されている。二カ所の突出部128の間と、二カ所の突出部128のそれぞれと支持部125との間の合計三カ所が、径方向内方に凹む凹状部129となっている。
三カ所の凹状部129は、内側環状部107の周方向の均等位置に配置されている。主板部127の外径はボス部84の外径と略同径となっており、二カ所の突出部128の外径はボス部84の外径より大径となっている。
支持部125は、突出部128よりも径方向外方に突出しており、径方向の内側環状部107側から順に、周方向に一定幅の等幅部131と、径方向外側ほど周方向の幅が狭くなる縮幅部132と、径方向外側ほど周方向の幅が広くなる拡幅部133とを有している。縮幅部132と拡幅部133との境界部分が、図4にも示すように支持部125の中で最も幅が狭く、後述するように荷重を受けたときの応力が最大となり容易に破断する易破断部134となっている。
外側環状部111は、径方向に一定幅の円環状をなす主板部136と、主板部136の内周縁部から径方向内方に突出する三カ所の凸状部137とを有している。三カ所の凸状部137は、外側環状部111の周方向の均等位置に配置されており、内側環状部107の三カ所の凹状部129と周方向位置を合わせて形成されている。三カ所の凸状部137は、突出先端側の内周縁部が円弧状に凹んでおり、これら内周縁部が同一円上に配置され、この円の中心は主板部136の外周縁部および内周縁部の中心と一致し、ピン挿通孔126の中心とも一致している。上記した支持部125の拡幅部133は、外側環状部111の周方向における二カ所の凸状部137の間に形成されている。
外側環状部111の外径は、外側シート部86の外径よりも若干大径となっており、外側環状部111の内径は、内側シート部85の内径よりも若干小径となっている。三カ所の凸状部137の内周縁部の円の直径は、内側環状部107の二カ所の突出部128の直径よりも大きく、内側環状部107の中心から等幅部131の縮幅部132側の端部の直径よりも小さくなっている。また、三カ所の凸状部137の内周縁部の円の直径は、ガイド108の直径よりも若干大きくなっている。
そして、ピン部材98の加締め前の軸部99を、規制部材105のピン挿通孔114、スペーサ104のピン挿通孔113、ディスクバルブ103のピン挿通孔112、ベースバルブボディ76の貫通孔81、ディスクバルブ106のピン挿通孔126、ガイド108のピン挿通孔117、バネ部材109のピン挿通孔118、規制部材110のピン挿通孔121に、この順に挿通させる。
ここで、ベースバルブボディ76のボス部84が内側シート部85および外側シート部86よりも軸方向高さが低くなっていることから、ディスクバルブ106は、ピン部材98の加締め前には、外側環状部111が内側シート部85および外側シート部86に当接し、外側環状部111に支持部125を介して繋がっている内側環状部107がボス部84との間に隙間を持った状態となる。この状態で内側環状部107の上に、ガイド108、バネ部材109および規制部材110が積み上げられる。
この状態で、規制部材110から突出する軸部99の頭部100とは反対側の端部を頭部100側に加締める。すると、ディスクバルブ106の内側環状部107がボス部84に当接するようにガイド108、バネ部材109および規制部材110とともに軸方向に移動する。そして、ディスクバルブ106の内側環状部107がボス部84に当接すると、規制部材105、スペーサ104、ディスクバルブ103、ベースバルブボディ76、ディスクバルブ106の内側環状部107、ガイド108、バネ部材109および規制部材110は、軸方向隙間がなくなる状態となり、この状態で、頭部100と拡径部101とがこれらを挟む。このようにして、規制部材105の内周側、スペーサ104、ディスクバルブ103の内周側、ベースバルブボディ76の内周側、ディスクバルブ106の内側環状部107、ガイド108、バネ部材109のベース119、規制部材110の内周側が、ピン部材98の頭部100と拡径部101とによって軸方向にクランプされる。
上記ベースバルブ71の中央側のクランプ時に、ディスクバルブ106は、内側シート部85よりもベースバルブボディ76の中央側にあるボス部84およびガイド108にクランプされる内側環状部107と、少なくとも内側シート部85に当接する外側環状部111とが軸方向にずれることになる。これにより、これら内側環状部107と外側環状部111とを繋ぐ支持部125の最も幅の狭い易破断部134に応力集中が生じ、この易破断部134が破断する。その結果、内側環状部107と外側環状部111とが分離される。その際に、支持部125の等幅部131および縮幅部132は内側環状部107と一体のまま外側環状部111から分離され、支持部125の拡幅部133は外側環状部111と一体のまま内側環状部107から分離される。なお、易破断部134は、少なくとも内側シート部85に外側環状部111が当接した状態で内側環状部107がクランプのための所定のクランプ軸力を受けると必ず破断するようにその幅等が設定されている。
上記のようにベースバルブ71の中央側がクランプされると、ディスクバルブ103、スペーサ104、規制部材105、内側環状部107、ガイド108、バネ部材109および規制部材110は、ピン部材98の軸部99によって、ピン部材98およびベースバルブボディ76に対し径方向の移動も規制される。また、内側環状部107に対し分離された外側環状部111は、三カ所の凸状部137がガイド108の外周面に当接することで、ガイド108、ピン部材98およびベースバルブボディ76に対する径方向の移動が規制されながら、軸方向に移動可能となる。
リザーバ室14側のディスクバルブ103は、外周側がシート部89に当接して内側の流路94を閉じる。そして、ディスクバルブ103は、図1に示すロッド22が縮み側に移動しピストン17が下室19側に移動して下室19の圧力が上昇すると、図2に示すシート部89から離座して内側の流路94を開く。これにより、ベースバルブボディ76に設けられた内側の流路94は、ロッド22が縮み側に移動したときに流体が下室19からリザーバ室14に向け流通することになり、ディスクバルブ103は、この流路94を開閉し減衰力を発生する縮み側のディスクバルブとなっている。このように、流路94には、ロッド22およびピストン17が縮み側に移動したときに流体が流通する。なお、ディスクバルブ103は、図1に示すピストン17に設けられた縮み側のディスクバルブ55との関係から、主としてロッド22のシリンダ11への進入により生じる液の余剰分を排出するように下室19からリザーバ室14に液を流す機能を果たす。なお、縮み側のディスクバルブをシリンダ内圧が高くなったときに圧力をリリーフするリリーフ弁としてもよい。規制部材105は、ディスクバルブ103がシート部89から離れる方向に所定量変形したときに、ディスクバルブ103の外周側に当接してそれ以上の変形を規制する。
ディスクバルブ106は、外側環状部111がバネ部材109の付勢力で外側シート部86および内側シート部85に同時に当接して外側の流路95を閉じ、内側シート部85と外側シート部86との間にバルブ室140を形成する。また、ディスクバルブ106は、凸状部137でガイド108の外周面を案内されながら外側環状部111が軸方向に全体的に移動して、外側シート部86および内側シート部85に対し離接する。つまり、ディスクバルブ106の分離後の外側環状部111は、内側シート部85および外側シート部86に離接可能に配置されている。そして、ディスクバルブ106は、図1に示すロッド22が伸び側に移動しピストン17が上室18側に移動して下室19の圧力が下降すると、図2に示す外側環状部111が外側シート部86および内側シート部85から離間して流路95を開く。これにより、ベースバルブボディ76に設けられた外側の流路95は、ロッド22が伸び側に移動したときに流体がリザーバ室14から下室19に向け流通することになり、ディスクバルブ106は、この流路95を開閉する伸び側のディスクバルブとなっている。
ここで、バネ部材109は、ガイド108よりも径方向外方に延出する複数カ所の弾性脚120の先端でディスクバルブ106の外側環状部111に当接してこれを軸方向に押圧してベースバルブボディ76の外側シート部86および内側シート部85に当接させる。ここで、バネ部材109の弾性脚120はバネ定数が極小に設定されており、変形してもディスクバルブ106を内側シート部85および外側シート部86に当接させるのに必要な最小限の付勢力しか発生しない。このため、ディスクバルブ106の外側環状部111は、下室19の圧力がリザーバ室14の圧力以上であれば、弾性脚120の付勢力で流路95を確実に閉じておくことができるものの、下室19の圧力がリザーバ室14の圧力を下回ると、変形容易な弾性脚120を押圧しつつ内側シート部85および外側シート部86から離れて即座に流路95を開くことになる。これにより、ディスクバルブ106は、それ自体は、実質的に減衰力を発生しない逆止弁となっており、ピストン17に設けられた伸び側のディスクバルブ50との関係から、主としてロッド22のシリンダ11からの突出に伴う液の不足分を補うようにリザーバ室14から下室19に液を実質的に抵抗なく(減衰力が出ない程度)流す機能を果たす。このように、流路95には、ロッド22およびピストン17が伸び側に移動したときに流体が流通する。
規制部材110は、ディスクバルブ106の外側環状部111が、ベースバルブボディ76の内側シート部85および外側シート部86から離れる方向に所定量変位すると、これに当接してそれ以上の変位を規制する。
以上に述べた本実施形態の緩衝器によれば、ディスクバルブ106は、内側環状部107と外側環状部111とを接続する一カ所の支持部125に設けられた易破断部134が破断してなるものである。このため、ベースバルブ71の組み立て時に、内側環状部107と外側環状部111とが支持部125で一体とされた状態のディスクバルブ106を、他の規制部材105、スペーサ104、ディスクバルブ103、ベースバルブボディ76、ガイド108、バネ部材109および規制部材110と同様、ピン挿通孔126にピン部材98の軸部99を通してから、軸部99を加締めれば良く、組み立て作業の容易化を図ることができる。つまり、ディスクバルブが組み付け前から別体であると、ピン部材の加締め時にディスクバルブをガイドに噛み込ませないように外部からセンタリングしたり、ガイドから外れないように押さえたりする必要があったが、他の部品と同様に軸部99を単純に串刺しして加締めれば良く、組み立て作業の容易化を図ることができる。また、易破断部134が破断されれば、外側環状部111は全体的に軸方向に移動して内側シート部85および外側シート部86から離間することになり、開弁量を確保することができる。
易破断部134が、少なくとも内側シート部85に外側環状部111が当接した状態で内側環状部107がクランプ軸力を受けると破断するように設定されているため、ベースバルブ71の組み立て作業で自動的に易破断部134を破断して、外側環状部111を内側環状部107から分離することができる。よって、組み立て作業のさらなる容易化を図ることができる。
なお、以上においては、支持部125が一カ所のディスクバルブ106を例にとり説明したが、支持部が複数カ所のディスクバルブにも適用可能であり、その場合は、すべての支持部に易破断部を形成することになる。
また、以上においては、易破断部134がクランプ軸力で破断するように設定したが、内側シート部85に外側環状部111が当接し内側環状部107がクランプされた状態では破断せず、連通孔93を介して流れる作動流体により外側環状部111が変位すると破断するように設定しても良い。この場合も、最初の作動時に自動的に外側環状部を内側環状部から分離することができるため、組み立て作業の容易化を図ることができる。
以上の実施形態において、上記したディスクバルブ106、ガイド108およびベースバルブボディ76の本発明の構造を、ディスクバルブ55およびその周囲部品に適用することも可能である。さらには、シリンダ11に外付けされるバルブに上記ディスクバルブ106等の構成を適用することも可能である。
以上に述べた実施形態は、2室間を連通する連通孔が形成されるとともに、該連通孔を挟んで中央側に内側シート部が外周側に外側シート部が形成されたバルブボディと、該バルブボディに対し径方向の移動が規制され、前記内側シート部および前記外側シート部に離接可能に配置される環状のディスクバルブとを備えた緩衝器において、前記ディスクバルブは、前記内側シート部と前記外側シート部とによりバルブ室を形成する外側環状部と、前記内側シート部の前記中央側にクランプされる内側環状部と、前記外側環状部と前記内側環状部とを接続する一カ所乃至複数カ所の支持部とからなり、少なくとも前記内側シート部に前記外側環状部が当接した状態で前記内側環状部がクランプ軸力を受けること、または、少なくとも前記内側シート部に前記外側環状部が当接し前記内側環状部がクランプされた状態で前記連通孔を介して流れる作動流体により前記外側環状部が変位することで、前記支持部が破断してなることを特徴とする。これにより、ディスクバルブを、組み付け時には内側環状部と外側環状部とが支持部で一体とされた状態で取り扱うことができる。そして、使用時には、支持部が破断して外側環状部が分離された状態となる。したがって、開弁量を確保しつつ組み立て作業の容易化を図ることができる。
また、内側環状部がクランプ軸力を受けること、または、連通孔を介して流れる作動流体により外側環状部が変位することで、支持部が破断するため、遅くとも最初の作動時には自動的に破断された状態になる。したがって、破断のためだけの作業が不要となり、組み立て作業のさらなる容易化を図ることができる。