JP4858126B2 - 高強度高延性缶用鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
製缶コストの低減策としては、素材の低コスト化が挙げられ、絞り加工を行う2ピース缶はもとより、単純な円筒成形が主体の3ピース缶であっても、使用する鋼板の薄肉化が進められている。
ただし、単に鋼板を薄肉化すると缶体強度が低下するので、DRD缶や溶接缶の缶胴部のような高強度材が用いられている箇所には薄肉化した鋼板を用いることができず、高強度で極薄の缶用鋼板が望まれていた。
現在、極薄で硬質な缶用鋼板は、焼鈍後に2次冷延を施すDuble Reduce法(以下、DR法と称す)で製造されている。DR法を利用して製造した鋼板は高強度かつ降伏伸びが小さいという特徴がある。ボトム加工を伴うDRD缶用途では、スレッチャーストレインの発生を防止するためにできるだけ降伏伸びが小さいことが望ましく、その点でDR法は有効である。しかし、DRD缶では耳割れ発生が小さいことが求められるが、DR法では異方性が大きくなる傾向があるため耳割れが発生し、耳割れ発生防止のために異方性(Δr)を小さくするという課題がある。
一方、最近市場に投入されている異形缶のような高い加工度の缶胴加工を伴う缶には、延性に乏しいDR材は加工性に劣るため適用が難しい。加えて、DR材は通常の焼鈍後調圧する鋼板に比べて、製造工程も増えるためコストが高い。
特許文献2でも、特許文献1と同様に、塗装後焼付け処理によって+50MPa程度高強度化している。
特許文献3では、Nb炭化物による析出強化やPによる固溶強化を複合的に組み合わせることで強度―延性バランスがとれた鋼板を提案している。
特許文献4では、降伏伸びを1.0%以下にすることでストレッチャーストレインの発生を防止し、かつT6相当の強度レベルの鋼を得る製造方法が提案されている。
特許文献5では、DI缶のフランジ加工性を高め、耳発生を防止するために箱焼鈍を利用する方法が提案されている。
特許文献6は、変態強化を利用して高強度鋼板を得る発明であり、低炭素鋼をα+γ域で熱間圧延し、高速で冷却し、焼鈍の加熱速度を規定することで、引張強度600MPa、全伸び30%以上を有する鋼板が提案されている。
上記特性を鑑みた場合、前述の従来技術では、強度、延性、降伏伸び、異方性の中のいずれかを満たす鋼板を製造することは可能であるが、全てを満足する鋼板は製造できない。
例えば、特許文献1に記載のC、Nを多量に添加して焼付硬化性により強度を上昇させる方法は、強度上昇には有効な方法ではあるが、調圧後の歪時効の懸念があり、ストレッチャ-ストレインが発生して缶の外観を損ねる恐れがある。
特許文献2では、焼付け処理により時効硬化させることと過時効処理により降伏伸びを小さくすることを挙げているが、ここで示す過時効処理で得られた鋼板ではストレッチャーストレインを完全に抑制できない。
特許文献3では降伏伸びに関して記載されていないが、低炭素鋼を連続焼鈍により製造しており、さらに過時効処理を行っていないため、数%の降伏伸びが生じることが予想される。
特許文献4では、降伏伸びがほぼ0になるT6レベルの鋼を記載しているものの、10%以上の圧延率で調質圧延を行う必要があり、実質的にDR材と同様な製造方法である。また、T6を超える鋼を製造する記述はみられない。また、明細書中には延性に関して記載されていないが、10%以上の圧下率で圧延を行うと延性には劣ることが予想される。
特許文献5では、箱焼鈍を用いることによりフランジ加工性の高く、耳発生を抑制する鋼板の製造方法が示されている。しかし、本発明が目標とする500MPa以上の強度には到達していない。
特許文献6で提案されている高速冷却による高強度化は、操業上コスト高になる。
固溶強化、析出強化、微細化強化の複合的な組み合わせに着目し、固溶強化元素を用いて固溶強化し、Nbによる析出強化および細粒化強化を図ることで伸びを損なわず高強度化でき、さらに、組織を実質的なフェライト単相とし、フェライト平均結晶粒径を規定することで強度−延性バランスが保て、500MPa以上の引張強度、20%以上の伸びが得られる。
さらに、冷却速度を規定した箱焼鈍を行うことで降伏伸びを1%未満にすることが可能となる。
そして、熱延条件を制御することで異方性を-0.5〜0とすることが可能となる。
本発明では、上記知見に基づき成分、製造方法をトータルで管理することで、高強度高延性缶用鋼板およびその製造方法を完成するに至った。
[1]質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.01〜0. 5%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.01〜0.2%、Al:0.1%以下、Nb:0.005〜0.1%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる組成と、実質的にフェライト単相組織を有し、フェライト平均結晶粒径が7μm以下、板厚0.18mm以下であり、引張強度が500MPa以上、全伸びが20%以上、降伏伸びが1%未満、異方性(Δr)が-0.5〜0である高強度高延性缶用鋼板。
[2]質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.01〜0. 5%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.01〜0.2%、Al:0.1%以下、Nb:0.005〜0.1%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼を、
870℃以上の仕上げ温度で熱間圧延し、巻取りまで40℃/s以下の速度で冷却し、620℃以上の巻取り温度で巻取り、酸洗し、次いで、80%以上の圧下率で冷間圧延を行った後に、600〜690℃の均熱温度、20℃/h以下の冷却速度の条件で箱焼鈍を行い、1.5%以下の調圧率で調質圧延を行うことを特徴とする板厚0.18mm以下である高強度高延性缶用鋼板の製造方法。
詳細には、本発明は、固溶強化元素を用いて固溶強化し、さらに、Nbによる析出強化および細粒化強化を行うことにより、他の特性に弊害なく、複合強化し強度を上昇させたので、箱焼鈍を行うにも関わらず、焼鈍工程後の調質圧延は圧下率1.5%以下で、確実に引張強度が500MPa以上の鋼板が製造できる。
加えて、箱焼鈍を利用し均熱後の冷却速度を20℃/h以下にすることで、鋼中の固溶C量を低減させるため、降伏伸びが1%未満となり、絞り加工やボトム加工時に懸念されていたストレッチャーストレインを防止できる。
また、DRD缶用途では缶のトリム代を小さくして歩留まりを上げるために耳発生を防止する必要がある。本発明では、仕上げ温度を870℃以上、巻取りまでの冷却速度を40℃/s以下、巻取り温度を620℃以上にすることで異方性を-0.5〜0の範囲に抑え、耳発生を防止することができる。
また、焼鈍時の生産性についても、従来は、0.18mm以下のような極薄材に関して連続焼鈍では破断や板の形状を損ねる恐れがあり高い歩留まりを確保できない恐れがあったが、本発明の箱焼鈍では上記の恐れはなく、高い歩留まりを確保できる。
本発明の缶用鋼板は、引張強度(以下、TSと称することもある)500MPa以上、伸び20%以上、降伏伸び1%未満、異方性(以下、Δrと称することもある)-0.5〜0の高強度高延性缶用鋼板である。通常、DR法を用いて高強度化した鋼板では、数%しか伸びを生じない。それに対して、連続焼鈍、調圧により作製した鋼板は10%以上の伸びを有するが、鋼中の固溶C量が高いため、降伏伸びが数%生じる。これらに対して、本発明は、Nb、P、Mnにより固溶強化、析出強化、微細化強化した鋼板を箱焼鈍により製造することで、高伸びを維持しつつ高強度化することを特徴とする。また、箱焼鈍後の冷却速度を小さくすることで、降伏伸びを1%未満にする。さらには、熱延時の仕上げ温度を870℃以上、その後の冷却速度を40℃/s以下に、巻取り温度を620℃以上にすることでΔrを-0.5〜0の範囲の値を得る。これらは、本発明の特徴であり、最も重要な要件である。このように、固溶強化元素、析出強化元素、微細化強化元素を中心とする成分、組織、そして、製造条件を適正化することで、C、Nが添加されているにも関わらず、降伏伸びが1%未満で、Δrが-0.5〜0、かつ、20%以上もの高伸びを有する高強度鋼板が得られることになる。
C:0.01〜0.12%
本発明の缶用鋼板においては、焼鈍後に所定以上の強度(500MPa以上)を達成すると同時に20%以上の伸びを有することが必須であり、そのためには結晶粒径が7μm以下になることが必要である。これらの特性を満たす鋼板を製造する際しては、C添加量は重要なとなってくる。特に強度と粒径には、炭化物の量や密度が大きく関わってくるので、析出に利用される炭素量を確保する必要がある。従って、C含有量は0.01%以上とする。一方、C添加量が0.12%を超えると、鋼の溶製中冷却過程の中で亜包晶割れを起こすため、0.12%以下とする。望ましくは0.04%以上0.1%以下である。
Siは固溶強化により鋼を高強度化させる元素であるが、多量に添加すると耐食性が著しく損なわれる。よって、Si添加量は0.01%以上0.5%以下とする。
Mnは固溶強化により鋼の強度を増加させ、結晶粒径も小さくする。また、微細化強化としても強度を増加させる元素である。結晶粒径を小さくする効果が顕著に生じてくるのはMn添加量が0.3%以上であり、目標強度を確保するには少なくとも0.3%のMn添加量が必要とされる。よって、Mn添加量の下限は0.3%と限定する。一方、箱焼鈍を利用して製造する場合、Mnを多量に含有するとテンパーカラーが多量発生することにより耐食性が劣る。よって、上限は1.5%に限定する。
Pは固溶強化能が大きい元素で、その効果が顕著に生じるのは0.01%以上である。よって、P添加量の下限は0.01%と限定する。一方、多量に添加すると耐食性が劣化するので、上限は0.2%と限定する。
Al含有量が増加すると、再結晶温度の上昇がもたらされるので、焼鈍温度を高くする必要がある。本発明においては、強度を増加させるために添加した他の元素で再結晶温度の上昇がもたらされ、焼鈍温度が高くなるので、Alによる再結晶温度の上昇は極力回避することが得策である。よって、Al含有量は0.1%以下とする。
Nbは、本発明においては重要な添加元素である。Nbは炭化物生成能の高い元素であり、微細な炭化物を析出させて強度を上昇させる。また、細粒化することで強度を上昇させる。粒径、粒の形は強度だけでなく、絞り加工時の表面性状にも影響する。Nb添加量によって強度や表面性状を調整することができ、0.005%を超えるときにこの効果が生じる。よって、下限を0.005%と限定する。また、0.015%以上添加した時に強度上昇率が大きくなる傾向にあるため、著しい強度上昇が必要な場合には、0.015%以上添加することが望ましい。一方、Nbは再結晶温度の上昇をもたらすので、0.1%以上含有させると、本発明で記載している600〜690℃の焼鈍温度では未再結晶が一部残存するなど、焼鈍し難くなる。焼鈍温度を高くすることで、再結晶組織は得られるが、鋼中の元素が表層濃化するため、表面性状が劣る。よって、Nb添加量の上限は0.1%と限定する。
N添加量の規定は特に行わない。しかし、連続鋳造時、温度が低下する下部矯正帯でスラブ割れが生じやすくなる。箱焼鈍法により製造する場合には、焼鈍中にほとんどのNがALNとして析出するため、鋼中の固溶Nがなくなり、時効硬化が得られない。ゆえに、箱焼鈍法により製造する場合には、集合組織を制御するために必要なN量のみ添加することが好ましい。よって、集合組織に影響するALNが得られるレベルのN添加量として0.001%以上0.012%以下の範囲で添加することが好ましい。極力スラブ割れが起こらないようにするためには、0.005%以下にすることが好ましい。
フェライト単相組織、平均結晶粒径:7μm以下
まず、本発明では実質的にフェライト単相組織とする。セメンタイト等を1%程度含む場合でも、本発明の作用効果を奏する限り、実質的にフェライト単相組織であると判断する。
また、フェライト平均結晶粒径が7μmを超えると、製缶後の表面外観の美麗さが失われる。これは肌荒れ現象のような表面の粗度の極端な変化に対応するものと考えられる。そして、この現象は、発生する部位や程度は異なるものの、特に2ピース缶において確認される。以上より、フェライト平均結晶粒径は7μm以下とする。なお、フェライト結晶粒径は、例えば、ASTMの切断法によるフェライト平均結晶粒径に準じて測定するものとする。また、フェライト平均結晶粒径は、成分、冷間圧延率、焼鈍温度により目標値に制御する。具体的には、C:0.01〜0.12%、Si:0.01〜0. 5%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.01〜0.2%、Al:0.1%以下、N: 0.005%以下、Nb:0.005〜0.1%を添加して、870℃以上の仕上げ温度で熱間圧延し、巻取りまで40℃/s以下の速度で冷却して、620℃以上の温度範囲でコイルに巻き取ったのち、酸洗を経て80%以上の冷間圧延を行った後に、均熱温度が600〜690℃、冷却速度が20℃/h以下の条件で箱焼鈍を行うことで、7μm以下の結晶粒径が得られる。
本発明において、板厚は重要な因子である。板厚が0.18mmを超える鋼板であれば、容易に連続焼鈍を行うことができるが、0.18mm以下の鋼板では連続焼鈍時に破断や板の形状が悪くなる恐れがあり、生産性が低下する。よって、本発明では、箱焼鈍による生産性向上効果を顕著に表すため板厚は0.18mm以下に限定する。
引張強度(TS)が500MPaに満たないと、本発明が対象とする0.18mm以下の鋼板では、缶体強度が不足して使用に際して不具合を生ずる。よって、引張強度(TS)は500Mpa以上とする。なお、TSは成分、冷間圧延率、焼鈍温度により目標値に制御する。具体的には、C:0.01〜0.12%、Si:0.01〜0. 5%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.01〜0.2%、Nb:0.005〜0.1%を添加して、冷間圧延率を80%以上として、均熱温度が600〜690℃、冷却速度が20℃/h以下の条件で箱焼鈍を行うことで目標値に制御する。
全伸びが20%を下回ると、例えば、拡缶加工のような高い缶胴加工を伴う缶への適用が困難になる。よって、全伸びは20%以上とする。
降伏伸びが1%以上発生する鋼板に対してDRD缶のボトム部に加工を施すと、ストレッチャーストレインが発生する。そのため、ボトム部に表面の肌荒れやリューダース帯のような模様が発生して外観が優れない。加工時にストレッチャーストレインが発生しないためには1%未満の降伏伸びとする必要がある。
本発明では、異方性の指標として、下記式にて表されるΔrを用いることとする。
Δr=(r0+r90−2×r45)/4
r0は圧延方向に引張試験を行った時、r45は圧延方向と45°方向に引張試験を行った時、r90は圧延方向と90°方向に引張試験を行った時のr値を示す。
Δrが-0.5未満の鋼板では、例えば、DRD缶に加工した際、耳発生が大きいためトリム代が大きくなり歩留まりが低下する。歩留まりの観点から耳発生量を抑制するために、Δrは-0.5〜0の範囲にする必要がある。また、耳発生を極力抑制するためには、Δrが-0.3〜0の範囲にするのが望ましい。なお、Δrは熱間圧延時の仕上げ温度、仕上げ後の冷却速度、巻取り温度により目標値に制御する。具体的には、Δrは870℃以上の仕上げ温度で熱間圧延し、巻取りまで40℃/s以下の速度で冷却して、620℃以上の温度範囲でコイルに巻き取ることで目標値に制御する。
上述した化学成分に調整された溶鋼を、転炉等を用いた通常公知の溶製方法により溶製し、次に連続鋳造法等の通常用いられる鋳造方法で圧延素材とする。
次に、上記により得られた圧延素材を用いて熱間圧延により、熱延板とする。圧延開始時には、圧延素材が、1250℃以上になるのが好ましい。仕上げ温度は870℃以上とする。また、巻取りまで40℃/s以下の速度で冷却し、620℃以上の巻取り温度で巻取る。なお、異方性の観点から、ここで得られた熱延材のフェライト粒径はできるだけ7μm以上にすることが望ましい。次いで、酸洗し、80%以上の圧下率で冷間圧延を行った後に、600〜690℃の均熱温度、20℃/h以下の冷却速度の条件で箱焼鈍を行い、1.5%以下の調圧率で調質圧延を行う。
熱間圧延における仕上げ圧延温度は、異方性を制御する上で重要な項目になる。Nb添加鋼で異方性を-0.5以上に確保するためには、熱延材のフェライト粒径を7μm以上にすることと集合組織を制御する必要がある。これを得るため、熱延仕上げ温度は870℃以上とする。
異方性は熱延材のフェライト粒径の影響を大きく受ける。Δrを-0.5〜0の範囲内にするには、熱延材のフェライト粒径は少なくとも7μm以上にする必要がある。熱延材のフェライト粒径を7μm以上にするためには、熱延後の冷却速度を小さくする必要があり、その条件として、仕上げ後の冷却速度を40℃/s以下とする。また、耳発生を極力抑制するΔrの好適範囲-0.3〜0の鋼を得るためには、冷却速度は20℃/s以下にする必要がある。
熱延材のフェライト粒径を7μm以上にするためには、巻取り温度を高くする必要があり、その条件として巻取り温度を620℃以上とする。熱延材のフェライト粒径を全幅で確実に7μm以上にするには、巻取り温度を640℃以上にすることが望ましい。また、耳発生を極力抑制するΔrの好適範囲−0.3〜0の鋼を得るためには、巻取り温度は700℃以上にする必要がある。
冷間圧延における圧下率は、本発明において重要な条件の一つである。冷間圧延での圧下率が80%未満では、TSが500MPa以上の鋼板を製造することは困難である。さらに、目的の板厚(0.18mm以下)を得るためには、80%未満の圧下率では、少なくとも熱延板の板厚を1mm以下にする必要があり、操業上困難である。よって、圧下率は80%以上とする。
焼鈍は箱焼鈍を用いる。均熱温度は、良好な加工性を確保するため、鋼板の再結晶温度以上とする必要があり、かつ、組織をより均一にするためには、600℃以上の温度で均熱する必要がある。一方で、焼鈍温度が高温になると鋼中の添加元素が表層に濃化して形成した酸化膜によりテンパーカラーが生じる。よって、均熱温度は600℃以上690℃以下とする。鋼中添加元素の表層濃化をより抑制するためには、焼鈍温度を670℃以下にすることがより望ましい。
また、降伏伸びを1%未満にするために、鋼中の固溶Cをカーバイドとして析出させる必要がある。鋼中の固溶Cは焼鈍時からの冷却速度によって決まる。よって、冷却速度は20℃/h以下とする。
調圧率が高くなるとDR材と同様に、加工時に導入される歪が多くなるため延性が低下する。本発明では極薄材で全伸び20%以上を確保する必要があるため、調圧率は1.5%以下とする。
なお、表1に示す鋼1〜7は成分組成が本発明範囲内の本発明例である。一方、鋼8は成分組成が本発明範囲外である比較例である。
結晶組織は、サンプルを研磨して、ナイタルで結晶粒界を腐食させて、光学顕微鏡で観察した。
平均結晶粒径は、上記のようにして観察した結晶組織について、ASTMの切断法を用いて測定した。
得られた結果を表2に示す。
一方、比較例8においては、延性については発明鋼に比べて優れるが、強度が不足する。
なお、本発明例は条件1〜3であり、条件4~10は製造条件が本発明範囲外となる比較例である。
異方性(Δr)は、圧延方向(r0)、圧延方向と45°方向(r45)、圧延方向と90°方向(r90)にそれぞれ引張試験を行った時のr値を求め、Δr=(r0+r90−2×r45)/4により算出した。
それ以外は実施例1と同様の方法で調査した。
一方、比較例(条件4、6、7)では、強度、延性、降伏伸びについては目標値に到達するものの、仕上げ圧延後の冷却速度が大きい、巻取り温度が低い、仕上圧延温度が低いため、異方性の大きい鋼板となっている。比較例(条件5、8)では、強度、延性、異方性については目標値に到達するものの、仕上げ圧延後の冷却速度が大きいもしくは冷却速度が高いため、降伏伸びの高い鋼板となる。比較例(条件9)では、強度、延性については目標値に到達するものの、仕上げ圧延温度が低く冷却速度が高いため、降伏伸びが高く異方性の大きい鋼板となる。比較例(条件10)では、延性、降伏伸び、異方性については目標値に到達するものの、均熱温度が高いため、強度が低い鋼板となる。
また、これらの鋼板に対して絞り加工すると、本発明例では、鋼板の表面性状は良好で、肌荒れやストレッチャーストレインも認められず、耳の発生量も小さい。
一方、降伏伸びが1%を超えた比較例では、微小なストレッチャーストレインが認められる。また、Δrが-0.5未満になる比較例では、耳発生量が大きくなる。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.01〜0. 5%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.01〜0.2%、Al:0.1%以下、Nb:0.005〜0.1%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる組成と、実質的にフェライト単相組織を有し、フェライト平均結晶粒径が7μm以下、板厚0.18mm以下であり、引張強度が500MPa以上、全伸びが20%以上、降伏伸びが1%未満、異方性(Δr)が-0.5〜0である高強度高延性缶用鋼板。
- 質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.01〜0. 5%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.01〜0.2%、Al:0.1%以下、Nb:0.005〜0.1%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼を、
870℃以上の仕上げ温度で熱間圧延し、
巻取りまで40℃/s以下の速度で冷却し、
620℃以上の巻取り温度で巻取り、酸洗し、
次いで、80%以上の圧下率で冷間圧延を行った後に、
600〜690℃の均熱温度、20℃/h以下の冷却速度の条件で箱焼鈍を行い、
1.5%以下の調圧率で調質圧延を行うことを特徴とする板厚0.18mm以下である高強度高延性缶用鋼板の製造方法。
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